説明

ハードコート用組成物

【課題】光透過率に優れ、しかも、密着性、耐摩耗性に優れた特性を有する、ハードコート用組成物を提供する。
【解決手段】炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数6〜20のアリール基のうち少なくとも1種を含有するジアルコキシシラン(イ)1〜10モル%と(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)90〜99モル%(ただし、ジアルコキシシラン(イ)とトリアルコキシシラン(ロ)との合計を100モル%とする。)とからなるポリシロキサンであって、まずトリアルコキシシラン(ロ)を加水分解、縮合反応することによって得られるラダー型及び/又はランダム型のシルセスキオキサン誘導体の存在下で、つぎにジアルコキシシラン(イ)を反応系に加えて加水分解、縮合反応することによって得られるポリシロキサンを含有するハードコート用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過率に優れ、しかも耐熱性に優れるとともに、密着性、耐摩耗性に優れた特性を有する、ハードコート用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、タッチパネルあるいは樹脂レンズ、樹脂製窓材等の表面には表面保護のためにハードコート層が設けられている。このハードコート層には、従来、アクリル系樹脂が使用されてきた。しかしながら、アクリル樹脂は、傷がつきやすく、耐熱性に劣る。また、耐候性にも劣っていた。
【0003】
そこで、シルセスキオキサンラダーオリゴマーを用いてなるハードコート剤が耐候性、耐擦傷性、透明性に優れた保護層を形成するものとして提案された(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−167552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の知見によれば、シルセスキオキサンラダーオリゴマーを用いたハードコート層はPET、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の樹脂基材に対して密着性が充分ではなく、保護層が剥がれ易いという欠点を有する。
【0006】
上述の現状に鑑み、本発明は、光透過率に優れ、しかも耐熱性に優れるとともに、密着性、耐摩耗性に優れた特性を有する、ハードコート用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数6〜20のアリール基のうち少なくとも1種を含有するジアルコキシシラン(イ)1〜10モル%と(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)90〜99モル%(ただし、ジアルコキシシラン(イ)とトリアルコキシシラン(ロ)との合計を100モル%とする。)とからなるポリシロキサンであって、まずトリアルコキシシラン(ロ)を加水分解、縮合反応することによって得られるラダー型及び/又はランダム型のシルセスキオキサン誘導体の存在下で、つぎにジアルコキシシラン(イ)を反応系に加えて加水分解、縮合反応することによって得られるポリシロキサン(以下、ポリシロキサン(A)とも表記する。)を含有するハードコート用組成物である。
本発明はまた、上記組成物からなるハードコート層をその表面に有する樹脂材でもある。
本発明はまた、上記ポリシロキサン(A)でもある。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明のハードコート用組成物は上述の構成により、光透過率、耐候性に優れている。
(2)本発明のハードコート用組成物は上述の構成により、トリアルコキシシランを用いたラダー型又はランダム型のシルセスキオキサンにおける基材との密着性の不良という現象に対して、ランダム型及び/又はラダー型シルセスキオキサン存在下にジアルコキシシランを加水分解、縮合反応することで、シルセスキオキサンの長所を持ちつつも、D単位からなる線状ポリマー構造を含有するポリシロキサンを用いることにより、密着性を向上させるという予想外の効果を発揮し、耐摩耗性に優れ、高耐久性のハードコートを形成するのに適している。
(3)本発明の樹脂材は上述の構成により、樹脂窓、携帯電話、ゲーム機、スマートフォン等の液晶パネル等の用途における樹脂材において密着性に優れたハードコート層を有するものを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のハードコート用組成物は、上記ポリシロキサン(A)を必須成分とし、さらに光重合開始剤(B)を含有してもよい。なお、本明細書中、アクリル又はメタクリルを(メタ)アクリルと略記する。
【0010】
本発明におけるポリシロキサン(A)は、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数6〜20のアリール基のうち少なくとも1種を含有するジアルコキシシラン(イ)1〜10モル%と(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)90〜99モル%とからなる。ただし、ジアルコキシシラン(イ)とトリアルコキシシラン(ロ)との合計を100モル%とする。上記ポリシロキサンは、まずトリアルコキシシラン(ロ)を加水分解、縮合反応することによって得られるラダー型及び/又はランダム型のシルセスキオキサン誘導体の存在下で、つぎにジアルコキシシラン(イ)を反応系に加えて加水分解、縮合反応することによって得られるものである。
【0011】
トリアルコキシシラン(ロ)の加水分解、縮合反応により、(RSiO3/2)nの構造を有するシルセスキオキサン誘導体が生成する。上記シルセスキオキサン誘導体は、ラダー型及び/又はランダム型構造のものである。従って、上記シルセスキオキサン誘導体は、好ましくは、ラダー型構造のもののみ、ランダム型構造のもののみ、又は、ラダー型構造のものとランダム型構造のものの混合物のいずれかであり、より好ましくはラダー型構造のものとランダム型構造のものの混合物である。
【0012】
上記シルセスキオキサン誘導体は、(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)を加水分解、縮合反応させることによって得ることができ、加水分解、縮合反応の条件によりラダー型構造、ランダム型構造のものを得ることができることがすでに知られている。例えば、ラダー型又はランダム型の構造体の製造方法としては、本明細書の実施例に記載の方法、又は、特開平6−306173号公報に記載のラダーシリコーンの製造方法等により製造することができる。その際に、必要に応じた触媒の使用、反応温度、溶媒等の反応に関する事項は当業者に知られており、周知技術に属する事項については、当業者は適宜用いることができる。トリアルコキシシランの加水分解、縮合反応により、一般には籠型構造、ランダム型構造、ラダー型構造のシルセスキオキサンが混合されて生成される可能性があるが、本発明においては、籠型構造体シルセスキオキサンの含有量は少ないほどよく、例えば、籠型構造、ランダム型構造、ラダー型構造の合計中10重量%より少ないことが好ましく、5重量%より少ないことがより好ましい。
【0013】
上記トリアルコキシシラン(ロ)としては、具体的には、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができ、これらのうち、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0014】
シルセスキオキサン誘導体がラダー型又はランダム型構造体であることは、以下のようにして確かめることができる。すなわち、IR分析による、Si−O−Si結合の逆対照伸縮振動に基づく1100cm−1と1050cm−1付近のダブルピークによってその存在が裏付けられる。
【0015】
ラダー型構造のシルセスキオキサン誘導体は、例えば、以下のような構造を有する。
【0016】
【化1】

【0017】
上記式中、複数のXは同一又は異なって(メタ)アクリル基を、複数のYは同一又は異なって炭素数1〜12のアルキル基を表すか、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。
【0018】
本発明における、トリアルコキシシラン(ロ)を加水分解、縮合反応することによって得られるラダー型及び/又はランダム型のシルセスキオキサン誘導体の重量平均分子量は、1500〜30000であることが好ましい。重量平均分子量が1500未満であると、機械強度が不充分となり、30000を超えると、耐熱性が低下する可能性がある。より好ましくは2000〜15000である。重量平均分子量は、ポリスチレン換算GPCにより求めた分子量分布から求めた値である。
【0019】
つぎに、得られたシルセスキオキサン誘導体の存在下、ジアルコキシシラン(イ)を加えて加水分解、縮合反応させることによりジアルコキシシランの線状ポリマー構造を形成するとともに、シルセスキオキサン誘導体の再縮合が生じ、シルセスキオキサン誘導体にジアルコキシシランの線状ポリマー構造が結合され、あるいはジアルコキシシランの線状ポリマー構造の両端にシルセスキオキサン誘導体が結合したポリシロキサン等を生じうる。本発明のポリシロキサンは、2段階重合により、T単位からなる3次元的構造のシルセスキオキサン構造とD単位からなる線状シロキサンポリマー構造からなる。このことにより、T単位とD単位とを混合して用いて加水分解、縮合反応してなるシロキサンポリマーと区別されている。
【0020】
上記ジアルコキシシラン(イ)において、炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−又はt−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、オクチル、イソオクチル、ドデシル等を挙げることができる。これらのうち、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。また炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、ビフェニル、ナフチルを挙げることができる。好ましくは、フェニルである。上記トリアルコキシシラン(イ)としては、具体的には、たとえば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらのうち、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0021】
上記ジアルコキシシラン(イ)と上記トリアルコキシシラン(ロ)との配合量は、上記ジアルコキシシラン(イ)と上記トリアルコキシシラン(ロ)との合計を100モル%として、上記ジアルコキシシラン(イ)1〜10モル%に対して上記トリアルコキシシラン(ロ)90〜99モル%である。ジアルコキシシラン(イ)の配合量が1モル%未満であると硬化後の架橋密度が高くなり、耐熱衝撃性が悪くなるおそれがあり、配合量が10モル%より大きいと耐熱性が低くなるおそれがある。好ましくは、上記ジアルコキシシラン(イ)2〜8モル%に対して上記トリアルコキシシラン(ロ)92〜98モル%である。
【0022】
本発明において、上記ポリシロキサン(A)は、不飽和結合含有基が反応して重合体を形成し、硬化物となるのであるが、この反応に必要な光重合開始剤(B)としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリ)−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、p,p−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のアントラキノン類、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2,4,6−トリス−S−トリアジン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等)等を挙げることが出来る。
【0023】
上記光重合開始剤(B)の配合量は、開始剤の種類により異なり得るので一概に規定することはできないが、例えば、上記ポリシロキサン(A)100重量部に対して、一般的には、2〜8重量部が好ましく、3〜5重量部がより好ましい。
【0024】
本発明の目的を損なわない範囲で、各種のモノ又は多官能アクリレート類を本発明の組成物に添加することができ、具体的には例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を本発明の組成物に添加することができる。
【0025】
本発明のハードコート用組成物には、本発明の目的を阻害しないかぎり、その他各種のオリゴマー配合することができ、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アクリルアクリレートオリゴマーなどが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上を混合して使用しても良い。
【0026】
本発明のハードコート用組成物には、本発明の目的を阻害しないかぎり、その他の各種の添加剤を配合することができ、例えば、耐熱性、耐候性を向上させる紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0027】
上記紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{(2′−ヒドロキシ−3′,3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネート等のヒンダードアミン類などが挙げられる。これらは、単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0028】
これらの紫外線吸収剤は、上記ポリシロキサン(A)100重量部に対して好ましくは0.01から10重量部配合される。
【0029】
上記光安定剤の具体例としては、例えば、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}]等のヒンダードアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0030】
これらの光安定剤は、上記ポリシロキサン(A)100重量部に対して好ましくは0.01から10重量部配合される。
【0031】
上記酸化防止剤の具体例としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0032】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′−ビス−(4′−ヒドロキシ−3′−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が挙げられる。
【0033】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、2,2、−ビス({[3−(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)−1,3−プロパンジイル=ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート]等が挙げられる。
【0034】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類が挙げられる。
【0035】
これらの酸化防止剤は、上記ポリシロキサン(A)100重量部に対して好ましくは0.01から10重量部配合される。
【0036】
本発明のハードコート用組成物は、室温、例えば25℃、での粘度が1〜100cPであることが、作業性の観点から好ましい。
【0037】
本発明のハードコート用組成物は、粘度調節のために、溶剤を使用してもよい。上記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、3−メトキシプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類を等を挙げることができる。また、その配合量は、組成物中0~80重量%であることが好ましい。
【0038】
本発明のハードコート用組成物は、樹脂材の表面に施して表面保護をすることができる。上記樹脂材としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ用樹脂板、樹脂レンズ、タッチパネル用樹脂板あるいは自動車等の樹脂製窓材等を挙げることができる。
【0039】
ハードコート層の形成は、本発明の組成物を、スピンコーター、スプレーコーター、ディップコーター等を用いて、乾燥厚み5μmになるように樹脂材等に塗布し、80〜90℃で1〜5分程度乾燥させればよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の記載は専ら説明のためであって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
合成例1
ポリシロキサン誘導体(A−1)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK100g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液6.0g(水酸化テトラメチルアンモニウム13.2mmol)、蒸留水17.0gを仕込んだ後、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン99.3g(400mmol)を50〜55℃で徐々に加え、2時間撹拌した。次いで、フェニルメチルジメトキシシラン0.7g(4mmol)加え、2時間撹拌した。反応終了後、系内にMIBK100gを加え、さらに50gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に減圧下でMIBKを留去して、目的の化合物(A−1)を得た。Mwは5422、分散度Mw/Mn=1.5であった。IR分析したところ、シルセスキオキサンラダーもしくはランダムポリマーを含むことを支持する、Si−O−Si結合の伸縮振動に基づく1100cm−1と1050cm−1付近のダブルピークを確認した。
【0042】
合成例2
ポリシロキサン誘導体(A−2)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK100g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液6.3g(水酸化テトラメチルアンモニウム13.8mmol)、蒸留水17.7gを仕込んだ後、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン55.0g(222mmol)、フェニルトリメトキシシシラン39.5g(199mmol)を50〜55℃で徐々に加え、2時間撹拌した。次いで、ジフェニルジメトキシシラン5.4g(22mmol)加え、2時間撹拌した。反応終了後、系内にMIBK100gを加え、さらに50gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に減圧下でMIBKを留去して、目的の化合物(A−2)を得た。Mwは6122、分散度Mw/Mn=1.6であった。IR分析したところ、シルセスキオキサンラダーもしくはランダムポリマーを含むことを支持する、Si−O−Si結合の伸縮振動に基づく1100cm−1と1050cm−1付近のダブルピークを確認した。
【0043】
合成例3
ポリシロキサン誘導体(A−3)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK100g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液6.9g(水酸化テトラメチルアンモニウム15.2mmol)、蒸留水19.6gを仕込んだ後、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン17.8g(76mmol)、フェニルトリメトキシシシラン77.3g(390mmol)を50〜55℃で徐々に加え、2時間撹拌した。次いで、ジメチルジメトキシシラン4.9g(41mmol)加え、2時間撹拌した。反応終了後、系内にMIBK100gを加え、さらに50gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に減圧下でMIBKを留去して、目的の化合物(A−3)を得た。Mwは5422、分散度Mw/Mn=1.6であった。IR分析したところ、シルセスキオキサンラダーもしくはランダムポリマーを含むことを支持する、Si−O−Si結合の伸縮振動に基づく1100cm−1と1050cm−1付近のダブルピークを確認した。
【0044】
合成例4
シルセスキオキサン誘導体(SQ−1)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK100g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液6.0g(水酸化テトラメチルアンモニウム13.2mmol)、蒸留水16.9gを仕込んだ後、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン100g(403mmol)を50〜55℃で徐々に加え、3時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK100gを加え、さらに50gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に減圧下でMIBKを留去して、目的の化合物(SQ−1)を得た。Mwは2773、分散度Mw/Mn=1.4であった。IR分析したところ、シルセスキオキサンラダーもしくはランダムポリマーを含むことを支持する、Si−O−Si結合の伸縮振動に基づく1100cm−1と1050cm−1付近のダブルピークを確認した。
【0045】
実施例1
合成例1で得られたポリシロキサン誘導体(A−1)を10重量部、イルガキュア907(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリ)−プロパン−1−オン、BASF社製)を0.5重量部、固形分濃度が45重量%になるように2−メトキシプロパノールに溶解させ、樹脂組成物を得た。
【0046】
実施例2
合成例2で得られたポリシロキサン誘導体(A−2)を10重量部、イルガキュア907(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリ)−プロパン−1−オン、BASF社製)を0.5重量部、固形分濃度が45重量%になるように2−メトキシプロパノールに溶解させ、樹脂組成物を得た。
【0047】
実施例3
合成例3で得られたポリシロキサン誘導体(A−3)を10重量部、イルガキュア907(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリ)−プロパン−1−オン、BASF社製)を0.5重量部、固形分濃度が45重量%になるように2−メトキシプロパノールに溶解させ、樹脂組成物を得た。
【0048】
比較例1
合成例4で得られたシルセスキオキサン誘導体(SQ−1)を10重量部、イルガキュア907(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリ)−プロパン−1−オン、BASF社製)を0.5重量部、固形分濃度が45重量%になるように2−メトキシプロパノールに溶解させ、樹脂組成物を得た。
【0049】
実施例1〜3及び比較例1の各樹脂組成物をスピンコーターを用いてポリカーボネート基材(厚み2mm)上に塗布した後、ホットプレート上で80℃2分間プリベークし、次いで、250Wの高圧水銀ランプを用いて、露光量1500mJ/cm照射することで、膜厚約5.0μmの塗膜を得た。
【0050】
評価方法
実施例1〜3及び比較例1の組成物を用いて塗膜を作成し、それぞれについて、以下の方法で、性能を評価した。結果を表1に示した。
(1)全光線透過率、ヘイズ値:積分球式光線透過率測定装置(JIS K 7105に準拠)を用いて測定した。
(2)耐摩耗性:テーバー社製CS−10Fの摩耗輪を用い、荷重500g、500回転でテーバー摩耗試験を行い、テーバー摩耗試験後のヘーズ(%)とテーバー摩耗試験前のヘーズ(%)との差△H(%)を測定して評価した(JIS K 7204に準拠)。
(3)密着性:コーティング表面にカッターガイド(JIS K 5400に準拠)を用い、カッターナイフにて1mm間隔で切れ目を入れ1mmのマス目を100個形成させる。その上へセロファン粘着テープ(JIS Z 1522に準拠)を強く押し付け、剥離後に残っているマス目をカウントした。
【0051】
【表1】

【0052】
表1の結果から、本発明におけるハードコート用組成物を使用した実施例1〜3は、耐摩耗性、密着性が比較例1より有意に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数6〜20のアリール基のうち少なくとも1種を含有するジアルコキシシラン(イ)1〜10モル%と(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)90〜99モル%(ただし、ジアルコキシシラン(イ)とトリアルコキシシラン(ロ)との合計を100モル%とする。)とからなるポリシロキサンであって、まずトリアルコキシシラン(ロ)を加水分解、縮合反応することによって得られるラダー型及び/又はランダム型のシルセスキオキサン誘導体の存在下で、つぎにジアルコキシシラン(イ)を反応系に加えて加水分解、縮合反応することによって得られるポリシロキサン。
【請求項2】
炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数6〜20のアリール基のうち少なくとも1種を含有するジアルコキシシラン(イ)1〜10モル%と(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)90〜99モル%(ただし、ジアルコキシシラン(イ)とトリアルコキシシラン(ロ)との合計を100モル%とする。)とからなるポリシロキサンであって、まずトリアルコキシシラン(ロ)を加水分解、縮合反応することによって得られるラダー型及び/又はランダム型のシルセスキオキサン誘導体の存在下で、つぎにジアルコキシシラン(イ)を反応系に加えて加水分解、縮合反応することによって得られるポリシロキサン、を含有するハードコート用組成物。
【請求項3】
さらに光重合開始剤を含有する請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ジアルコキシシラン(イ)は、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である請求項2又は3記載の組成物。
【請求項5】
トリアルコキシシラン(ロ)は、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン群から選択される少なくとも1種である請求項2〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
光重合開始剤は、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリ)−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンからなる群から選択される少なくとも1種類である請求項3〜5のいずれか記載の組成物。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか記載の組成物からなるハードコート層をその表面に有する樹脂材。

【公開番号】特開2013−35918(P2013−35918A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171818(P2011−171818)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】