説明

ハードコート膜付基材およびハードコート膜形成用塗布液

【課題】耐アルカリ性に優れ、且つ、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度、耐水性等に優れハードコート膜付基材を提供する。
【解決手段】基材と、基材の一方の表面上に形成されたハードコート膜とからなり、該ハードコート膜が有機樹脂マトリックス成分と、表面処理金属酸化物粒子とを含んでなり、前記有機樹脂マトリックス成分が疎水性有機樹脂マトリックス成分であり、前記表面処理金属酸化物粒子の表面電荷量(QP)が15〜60μeq/gの範囲にあり、かハードコート膜表面に、金属酸化物粒子が露出していないことを特徴とするハードコート膜付基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなる基材であって、耐アルカリ性に優れ、且つ、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度、耐水性等に優れハードコート膜付基材および該ハードコート膜の形成に用いる塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ、樹脂フィルム、表示装置前面板等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート膜を形成することが知られており、このようなハードコート膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
また、ハードコート膜付の樹脂基材を表示装置前面板等に貼り付けて使用される場合があるが、この時、接着剤との接着性を向上させるためにハードコート膜付基材をアルカリ処理してハードコート膜の反対側の基材表面の平滑性を低下させたり表面に粗さを設けることが行われる。また、ハードコート膜上に他の被膜、例えば高屈折率膜、反射防止膜等を設ける場合、同様にアルカリ処理することが行われることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシリカ等の無機酸化物粒子を含むハードコート膜では少なくともこの無機酸化物粒子の一部がアルカリに溶解し、ハードコート機能が低下したり、透明性が低下して白化する等の問題があった。
このようなハードコート膜のアルカリによる浸食を防ぐためにハードコート膜上に耐アルカリ性の保護薄膜を形成することが行われているが、保護膜を形成する工程およびこれを剥離する工程を必要とし経済性が問題となることから耐アルカリ性を有するハードコート膜の開発が求められていた。
【0005】
また、ハードコート膜に五酸化アンチモン、ジルコニア、ITO、ATO等の無機酸化物粒子を用いる場合、耐アルカリ性はある程度改良されるものの、粒子の屈折率が高く、このためハードコート膜の屈折率も高くなるため、屈折率の低い基材を用いる場合は干渉縞を生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度、耐水性等に優れるとともに耐アルカリ性に優れたハードコート膜付基材および該ハードコート膜形成用塗布液の出現が望まれていた。
【0007】
このような状況の下、本発明者は、上記問題点を解消すべく鋭意検討した結果、ハードコート膜形成用塗布液のマトリックス形成性分に疎水性の有機樹脂を用い、金属酸化物粒子に親水性の粒子を用いることによってハードコート膜の表面に露出する粒子がなくなり、このためアルカリ処理の際にアルカリと直接接触することが抑制され、耐アルカリ性が向上することを見いだして本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の構成は以下の通りである。
[1]基材と、基材の一方の表面上に形成されたハードコート膜とからなり、
該ハードコート膜が有機樹脂マトリックス成分と、表面処理金属酸化物粒子とを含んでなり、該ハードコート膜が有機樹脂マトリックス成分と、表面処理金属酸化物粒子とを含んでなり、前記有機樹脂マトリックス成分が疎水性有機樹脂マトリックス成分であり、前記表面処理金属酸化物粒子の表面電荷量(QP)が15〜60μeq/gの範囲にあり、
かつハードコート膜表面に、金属酸化物粒子が露出していないことを特徴とするハードコート膜付基材。
[2]さらに親水性有機樹脂マトリックス成分を含み、ハードコート膜内で、親水性有機樹脂マトリックス成分が下層に偏在し、疎水性有機樹脂マトリックス成分が上層に偏在する[1]のハードコート膜付基材。
[3]親水性有機樹脂マトリックス成分と、疎水性有機樹脂マトリックス成分との混合比(重量比、疎水性マトリックス成分/親水性マトリックス成分の重量(WMB)/(WMA))が0.01〜2の範囲にある[2]のハードコート膜付基材。
[4]前記疎水性有機樹脂マトリックス成分がビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂から選ばれる1種以上であり、前記親水性有機樹脂マトリックス成分が水酸基(OH基)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂から選ばれる1種以上である[1]〜[3]のハードコート膜付基材。
[5]前記金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、透明被膜中の表面処理された金属酸化物粒子の含有量が5〜80重量%の範囲にある[1]〜[4]のハードコート膜付基材。
[6]前記基材がトリアセチルセルロース(TAC)からなるものである[1]〜[5]のハードコート膜付基材。
[7]有機樹脂マトリックス形成成分と表面処理された金属酸化物粒子と分散媒とを含んでなり、有機樹脂マトリックス形成成分が疎水性有機樹脂マトリックス形成成分であり、金属酸化物粒子の表面電荷量(QP)が15〜60μeq/gの範囲にあることを特徴とするハードコート膜形成用塗布液。
[8]さらに親水性有機樹脂マトリックス形成成分を含み、親水性有機樹脂マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMA)と疎水性有機樹脂マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMB)との比(CMB)/(CMA)が0.01〜2の範囲にある[7]のハード
コート膜形成用塗布液。
[9]前記疎水性有機樹脂マトリックス成分がビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂から選ばれる1種以上であり、前記親水性有機樹脂マトリックス成分が水酸基(OH基)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂から選ばれる1種以上である[7]または[8]のハードコート膜形成用塗布液。
[10]前記分散媒が、沸点の異なる2種以上の混合分散媒である[7]〜[9]のハードコート膜形成用塗布液。
[11]前記混合分散媒の最高沸点の分散媒が疎水性分散媒である[7]〜[10]のハードコート膜形成用塗布液。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、該ハードコート膜に含まれる表面処理された金属酸化物粒子がハードコート膜表面に露出していないので耐アルカリ性に優れ、且つ、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度、耐水性等に優れたハードコート膜付基材の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について説明する。
[ハードコート膜付基材]
本発明のハードコート膜付基材は、基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからな
る。
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等を用いることができるが、なかでも屈折率が低く耐アルカリ性を要求されるトリアセチルセルロース(TAC)基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリエーテルスルフォン系樹脂機材等が好適に用いられる。
【0011】
これらの基材は表示装置前面板等に貼り付けて使用する際にアルカリ処理をすることによって接着性よく貼り付けることができる。
なかでも、TACは透明性高く、機械的強度に優れ、且つ、温度、湿度等の変化に対する寸法安定性がよく、また、屈折率が低く汎用性の高い基材であるので好ましい。
このような基材は、屈折率が1.45〜1.55、さらには1.48〜1.52の範囲にあることが好ましい。
ハードコート膜
ハードコート膜は、有機樹脂マトリックス成分と表面処理された金属酸化物粒子とを含んでなり、ハードコート膜表面に露出した金属酸化物粒子が存在しないことを特徴としている。
金属酸化物粒子
本発明に用いる金属酸化物粒子は、得られるハードコート膜が透明性を有し、耐擦傷性を向上できれば特に制限はなく従来公知の金属酸化物粒子を用いることができる。例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、酸化アンチモン、ボリア、およびこれら金属酸化物からなるシリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・酸化アンチモン等の複合酸化物粒子、コアシェル構造を有する粒子が挙げられる。さらに、これら粒子は鎖状に連結した鎖状粒子であってもよい。また、シリカを主成分とし、内部に空洞を有する中空粒子は屈折率が低く好適に用いることができる。このような中空粒子としては本願出願人の出願による特開2001−167637号公報、特開2001−233611号公報等に開示した内部に空洞を有するシリカ系粒子は屈折率が低く好適に用いることができる。さらに、特開2005−119909号公報に開示した、反射防止・帯電防止膜に用いた表面を酸化アンチモンで被覆した多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子は好適に採用することができる。
【0012】
ハードコート膜に用いる金属酸化物粒子は、基材の屈折率、得られるハードコート膜の屈折率(有機樹脂マトリックス成分の屈折率、金属酸化物の配合割合)等によって適宜選択して用いるが、この時、基材の屈折率とハードコート膜の屈折率との差が小さいことが好ましい。具体的には屈折率差が0.3以下であることが好ましく、屈折率差が大きいと干渉縞を生じることがある。
【0013】
本発明に用いる金属酸化物粒子の平均粒子径は5〜500nm、さらには10〜200nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が小さいと、金属酸化物粒子が凝集することがあり、ハードコート膜中に均一に分散しない場合があり、このためハードコート膜表面に露出し、後述するアルカリ処理の際に直接アルカリと接触して溶出したり、ハードコート膜が白化して透明性が損なわれたり、さらに耐擦傷性が不充分となる、即ち、耐アルカリ性が不充分となることがある。また、平均粒子径が大きいと、ハードコート膜のヘーズが悪化する傾向にある。
【0014】
なお、本発明の平均粒子径は電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として、測定される。
ハードコート膜中の金属酸化物粒子の含有量が5〜80重量%、さらには10〜60重量%の範囲にあることが好ましい。この金属酸化物粒子を含むことで、ハードコート膜の
硬度や密着性、耐擦傷性などが高められる。金属酸化物粒子の含有量が少ないと、ハードコート膜の硬度が不充分であったり、耐擦傷性が不充分となることがある。金属酸化物粒子の含有量が多すぎると、ヘーズが高くなったり、マトリックス成分が少ないために基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れたハードコート膜を得ることが困難である。
【0015】
なお、本発明では、金属酸化物粒子は必ずしも球状である必要はなく前記金属酸化物粒子が鎖状に連結した金属酸化物粒子も好適に用いることができる。鎖状に連結した金属酸化物粒子を用いると硬度の高いハードコート膜を得ることができる。
【0016】
本発明に用いる金属酸化物粒子は表面処理されている。かかる表面処理することよって、ハードコート膜表面から。金属酸化物粒子が突出しないようにすることができる。特に、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されて、かつ、後述するマトリックス成分と組みあわせることで、
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
このような式(1)で表される有機珪素化合物としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプ
ロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0017】
金属酸化物粒子がこのような有機ケイ素化合物で表面処理されていると有機樹脂マトリックス成分への分散性に優れるとともに前記炭化水素基が金属酸化物粒子の表面を覆うために仮にハードコート膜表面に露出してもアルカリ溶解性を抑制することができ、このため耐アルカリ性が向上し好適に用いることができる。
【0018】
なかでも、nが0または1の有機珪素化合物で金属酸化物粒子が表面処理されていると金属酸化物粒子の表面電荷量(QP)が15〜60μeq/gの範囲となり、疎水性有機
樹脂マトリックス成分へ凝集することなく分散することができ、さらに、後述する下層に偏在する親水性有機樹脂マトリックス成分へ高分散し、ハードコート膜表面に露出することがないので耐アルカリ性が向上し好適に用いることができる。
【0019】
金属酸化物粒子の表面処理は従来公知の方法を採用することができ、金属酸化物粒子のアルコール分散液に前記有機ケイ素化合物を所定量加え、これに水を加え、必要に応じて有機ケイ素化合物の加水分解用触媒として酸またはアルカリを加え、有機ケイ素化合物を加水分解する。この時の有機ケイ素化合物の使用量は前記式(1)のnの値によっても異な
るが、Rn-SiO(4-n)/2として金属酸化物粒子の概ね2〜50重量%、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
【0020】
金属酸化物粒子が前記範囲で表面処理されていると有機樹脂系マトリックス成分へ凝集することなく分散し、さらに前記炭化水素基が金属酸化物粒子の表面を覆うためにアルカリ溶解性を抑制することができ、このため耐アルカリ性が向上し好適に用いることができる。
【0021】
つぎに、本発明に用いる表面処理金属酸化物粒子は表面電荷量(QP)が15〜60μ
eq/g、さらには20〜50μeq/gの範囲にあることが好ましい。表面電荷量(QP)が小さいと、疎水性が強いために、後述する疎水性マトリックス成分へ高分散し、こ
のためハードコート膜表面に露出する金属酸化物粒子が存在するようになり耐アルカリ性が不充分となることがある。表面電荷量(QP)が大きいと、親水性が強くなるために疎
水性マトリックス成分中に高分散できず凝集する傾向があり、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等が不充分となることがある。
【0022】
金属酸化物粒子の表面電荷量の測定方法は、表面電位滴定装置(Mutek(株) pcd-03)を用いて、粒子の分散液を0.001Nのpoly-塩化ジアリルジメチルアンモニウムを用い
て滴定し、粒子単位グラム当たりの表面電荷量(μeq/g)求めることができる。
【0023】
なお、表面電荷量は、例えば、有機ケイ素化合物の種類、表面処理量の変更などによって調整することが可能である。具体的には、nが0の場合は比較的表面電荷量の高い粒子が得られ、nが2、3の場合は、表面電荷量の低い粒子が得られる。
マトリックス成分
ハードコート膜に含まれているマトリックス成分としては、有機樹脂マトリックスが用いられる。有機樹脂マトリックス成分として、たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
【0024】
これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化性樹脂の場合、紫外線硬化型のものであっても、電子線硬化型のものであってもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
【0025】
なお、熱硬化性樹脂の場合、マトリックス成分は通常硬化物で重合体または変性体となっている。
本発明では、有機樹脂マトリックスとして疎水性有機樹脂マトリックスが好適に用いられる。疎水性有機樹脂マトリックス成分としては、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エ
ステル樹脂が挙げられ、具体的にはペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘ、サンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル等の前駆体から誘導される重合体である。なお、2種の共重合体であっても、2種以上の樹脂の混合物であってもさらに変性体であってもよい。
【0026】
疎水性有機樹脂マトリックス成分を用いると、前記した金属酸化物粒子が凝集することなく分散し、ハードコート膜の表面に金属酸化物粒子が露出することがなく、耐アルカリ性に優れたハードコート膜が得られる。さらに、ハードコート膜の表面は平滑で、撥水性を有しているために耐水性に優れ、指紋付着性のないハードコート膜が得られる。なお、本発明で撥水性とは、透明被膜上に水を滴下し、30分間放置した後、拭き取り、目視観察で水滴跡の有無、程度を意味する。
【0027】
本発明ではさらに、疎水性有機樹脂マトリックスとともに、親水性有機樹脂マトリックス成分が含まれていることが好ましい。
親水性有機樹脂マトリックス成分として、具体的には、水酸基(OH基)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂が挙げられ、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の他、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクレート、2−ヒドロキシプロピルメタクレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクレート、2−ヒドロキシ3フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールジメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクロイロキシエチルコハク酸、2−アクロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクロイロキシエチルアシッドフォスフェート、2ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物などの多官能(メタ)アクリル酸エステルおよびこれらの混合物等の前駆体から誘導される重合体である。なお、2種以上の共重合体や変性体であってもよい。親水性有機樹脂マトリックス成分を用いると、前記した金属酸化物粒子が親水性有機樹脂マトリックスに高分散し、親水性有機樹脂マトリックスが前記疎水性マトリックスの下層に偏在し、疎水性マトリックスに分散した金属酸化物粒子が減少、さらには無くなるのでハードコート膜の表面に金属酸化物粒子が露出することがなく、耐アルカリ性に優れたハードコート膜が得られる。
【0028】
疎水性有機樹脂マトリックス成分に加えて親水性有機樹脂マトリックス成分を含む場合、親水性有機樹脂マトリックス成分の固形分としての含有量(WMA)と疎水性有機樹脂マトリックス成分の固形分としての含有量(WMB)との比(WMB)/(WMA)が0.01〜2、さらには0.05〜1の範囲にあることが好ましい。前記(WMB)/(WMA)が小さいと、疎水性マトリックス成分が少ないために金属酸化物粒子が表面に露出したり、表面が異物で擦り合わされた場合に容易に露出することがあり、このため耐アルカリ性が不充分となることがある。
【0029】
前記(WMB)/(WMA)が多すぎると、金属酸化物粒子の含有量によっても異なるが、親水性マトリックス成分が少なく、金属酸化物粒子が上部に偏在する疎水性マトリックス成分中に多く存在するようになり、金属酸化物粒子が表面に露出することがあり、このため耐アルカリ性が不充分となることがある。
【0030】
ハードコート膜の厚さは、目的に応じて適宜選択される。通常厚さは、0.1〜30μ
m、さらには0.2〜20μm、特に0.2〜10μmの範囲にあることが好ましい。ハードコート膜の厚さが前記範囲の下限未満の場合は、ハードコート膜が薄いためにハードコート膜表面に加わる応力を充分吸収することがでないために、ハードコート機能が不充分となる。ハードコート膜の厚さが前記範囲の上限を越えると、膜の厚さが均一になるように塗布したり、均一に乾燥することが困難となり、さらに収縮が大きくなるのでカーリング(ハードコート膜付基材が湾曲)が生じることがある。また、膜厚が厚すぎて透明性が不充分となることがある。
【0031】
このようなハードコート膜の屈折率は、透明性が要求される用途であれば、基材の屈折率との差が0.3以下、さらには0.2以下であることが好ましい。この屈折率差であれば干渉縞を生じることもない。
接着剤層
本発明に係るハードコート膜付基材は、基材のハードコート膜が形成されていない面上に接着剤層が設けられていてもよい。
【0032】
接着剤層の接着剤としては透明性の良好なものであれば特に制限はなく従来公知の接着剤を用いることができる。例えば、アクリル系、ゴム系、ポリビニルエーテル系、シリコーン系等の接着剤が挙げられる。接着剤層を設けるには、前記接着剤を、必要に応じて架橋剤を添加し、溶剤を用いて所望の濃度、粘度になるように調節後、ハードコート膜を設けた反対側に塗布し、ついで、加熱、乾燥等により溶剤を除去する。また、別の方法としては、接着剤層を有する剥離紙の接着剤層の面を貼り付けることによっても設けることができる。
【0033】
このようなハードコート膜は、後述する本発明に係るハードコート膜形成用塗布液を塗布、乾燥、硬化することによって形成することができる。
[ハードコート膜形成用塗布液]
本発明に係るハードコート膜形成用塗布液は、有機樹脂マトリックス形成成分と表面処理金属酸化物粒子と分散媒とを含んでなり、有機樹脂マトリックス形成成分が疎水性有機樹脂マトリックス形成成分であり、表面処理金属酸化物粒子の表面電荷量(QP)が15
〜60μeq/gの範囲にあることを特徴としている。
金属酸化物粒子
金属酸化物粒子としては前記した金属酸化物粒子が用いられる。
ハードコート膜形成用塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、ハードコート膜中の金属酸化物粒子の含有量が前記したように5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%となるように用いるが、固形分として0.1〜36重量%、さらには0.5〜32重量%の範囲にあることが好ましい。
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、前記した疎水性有機樹脂マトリックス成分を形成しうる成分が用いられる。さらに、前記した親水性有機樹脂マトリックス成分を形成しうる成分が含まれていることが好ましい。これらのマトリックス形成成分は、上記熱可塑性樹脂の場合は、上記したマトリックス成分をそのまま使用することが可能であり、熱硬化性樹脂の場合、マトリックス成分を誘導する前駆体のモノマー、プレポリマーなどが使用される。
【0034】
疎水性有機樹脂マトリックス形成成分に加えて親水性有機樹脂マトリックス形成成分を含む場合、親水性有機樹脂マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMA)と疎水性有機樹脂マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CME)との比(CME)/(CMA)が0.01〜2、さらには0.05〜1の範囲にあることが好ましい。前記(CMB)/(CMA)が少ないと得られるハードコート膜中の疎水性マトリックス成分が少ないために金属酸化物粒子が表面に露出することがあり、このため耐アルカリ性が不充分となることがある。前記(CMA)/(CMB)が多すぎると、金属酸化物粒子の含有量によっても異なるが、親水性マトリックス形成成分が少なく、得られるハードコート膜中で金属酸化物粒子が上部に偏在する疎水性マトリックス成分中に多く存在するようになり、金属酸化物粒子が表面に露出することがあり、このため耐アルカリ性が不充分となることがある。
【0035】
ハードコート膜形成用塗布液中の有機樹脂マトリックス形成成分の濃度は、樹脂を固形分として1〜40重量%、さらには2〜30重量%の範囲にあることが好ましい。有機樹脂マトリックス形成成分が少ないと、一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、塗布、乾燥を繰り返すと密着性等が不充分となり、経済性や作業効率などの点でも不十分である。有機樹脂マトリックス形成成分の濃度が多すぎると、得られるハードコート膜の厚さが不均一になる傾向がある。
分散媒
分散媒としては水分散媒であってもアルコールなどの有機溶媒であってもよく、適宜選択して用いることができる。
【0036】
分散媒としては前記有機樹脂マトリックス形成成分、必要に応じて用いる重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに表面処理された金属酸化物微粒子を均一に分散することができる、従来公知の分散媒を用いることができる。
【0037】
本発明では沸点の異なる2種以上の分散媒を混合して用いることが好ましい。このとき、沸点の最も高い分散媒は疎水性の分散媒であることが好ましい。沸点の最も高い分散媒が疎水性の分散媒であると、疎水性のマトリックス形成成分がハードコート膜の上層に偏在し、金属酸化物粒子を多く含む親水性マトリックス形成性分が下層に偏在することになり、このため金属酸化物粒子がハードコート膜の表面に露出しにくくなり耐アルカリ性に優れたハードコート膜を得ることができる。
【0038】
本発明では、50〜100℃に沸点有する分散媒(A)と100超〜200℃に沸点を有
する分散媒(B)とを組合わせて使用する。
具体的には、分散媒(A)として、水;メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロ
パノール(IPA)等などのアルコール類を含む親水性溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプルピルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ト
ルエン等の疎水性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。分散媒(B)としては、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフ
リルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールものエチルエーテルなどのエーテル類を含む親水性溶媒、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールものアセタートなどのエステル類;メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、等の疎水性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0039】
このとき、混合分散媒中の分散媒(A)の割合が50〜90重量%の範囲にあり、分散媒(B)の割合が10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
混合分散媒中の分散媒(A)の割合がこれ以上多くすると、塗膜の乾燥が速すぎてハード
コート膜が緻密にならないことがあり、硬度や耐擦傷性、耐アルカリ性が不充分となることがある。混合分散媒中の分散媒(A)の割合を少なくしすぎると、逆に分散媒(B)が多くなり、塗膜の乾燥が遅くなり、分散媒が残留してハードコート膜は充分に硬化しない場合があり、硬度や耐擦傷性が不充分となることがある。
【0040】
混合分散媒中の分散媒(B)のさらに好ましい割合は20〜40重量%の範囲の範囲であ
る。
透明被膜形成用塗料中の分散媒の割合は概ね50〜99重量%、さらには60〜98重量%の範囲にあることが好ましい。また、混合溶媒を用いる際の疎水性分散媒/親水性分散媒の混合比は概ね0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0041】
また、本発明の塗布液には、マトリックス形成成分を溶解するとともに、容易に揮発しうる溶剤が含まれていてもよく、マトリックス形成成分が熱硬化性樹脂の場合は、必要に応じて硬化剤(重合開始剤)が配合されていてもよい。さらに、塗布液には分散性、安定性を高めるために界面活性剤等を添加することもできる。
【0042】
このような塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で前記した基材に塗布し、乾燥し、加熱処理、紫外線照射等によって硬化させることによってハードコート膜を形成することができる。
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
金属酸化物粒子(1)分散液の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイドSI−45P、SiO2濃度40重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)の分散液を、限外濾過膜を用いて洗浄し、ついでメタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度30重量%になるまで濃縮した。ついで、このゾル100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン3.6g(信越シ
リコ−ン(株)製 KBM−503 SiO2成分81.9%)を混合し、50℃で15時間加熱撹拌して表面処理した金属酸化物粒子分散液を得た。
【0043】
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度3
0重量%の金属酸化物粒子(1)分散液を得た。この金属酸化物粒子の表面電荷量を測定し
たところ23.0μeq/gであった。また、金属酸化物粒子(1)の平均粒子径および屈
折率を表1に示した。屈折率は標準屈折液としてCARGILL 製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定した。
粒子の屈折率の測定方法
(1)金属酸化物微粒子分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを120℃で乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の既知の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率を微粒子の屈折率とする。
ハードコート膜形成用塗布液(1)の調製
このシリカ系酸化物微粒子分散液(1)100gと疎水性マトリックス形成成分であるペ
ンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A
)27gと疎水性マトリックス形成成分1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート1.6HX-A)3gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イ
ルガキュア184)1.8gおよび溶媒イソプロパノ−ル18.2g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(1)を調製した。
ハードコート膜付基材(1)の作製
ハードコート膜形成用塗布液(1)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコ
ーター法(#10)で塗布し、70℃で120秒間乾燥した後、高圧水銀灯で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(1)を作製した。このときのハードコート膜の膜厚は3μmであった。
【0044】
得られたハードコート膜付基材(1)の全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(日
本電色(株)製:NDH2000)により測定し、また干渉縞の有無を観察し、結果を表1に示した。さらに、密着性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。 表面観察
ハードコート膜付基材(1)に蛍光灯(三波長蛍光管)の光をあて、目視で干渉縞の有無
を観察し、結果を表1に示す。
密着性
ハードコート膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付
け100個の升目を作り、これにセロハンテ−プを接着し、ついで、セロハンテ−プを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することにより密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数90〜99個 :○
残存升目の数85〜89個 :△
残存升目の数84個以下 :×
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で50回摺動し、膜の表面を
目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
耐アルカリ性の評価(1)
ハードコート膜付基材(1)の透明被膜上に、2NのNaOH水溶液を滴下し、3分間放
置した後拭き取り、全光線透過率を測定し、結果を表1に示した。
耐アルカリ性の評価(2)
ハードコート膜付基材(1)の透明被膜上に、2NのNaOH水溶液を滴下し、3分間放
置した後拭き取り、上記と同様の耐擦傷性の測定を行い、同様の基準で評価し、結果を表1に示した。
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
[実施例2]
ハードコート膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1で調製した金属酸化物粒子分散液(1)100gと水酸基を有する親水性マトリックス形成成分であるネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルアクリレート(新中村化学(株):NKオリゴEA-5320)15g、と疎水性マトリックス形成成分であるペンタエリ
スリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)15g
に光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)1.8gおよび溶媒イソプロパノ−ル18.2g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(2)を調製した。
ハードコート膜付基材(2)の作製
ハードコート膜形成用塗布液(2)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコ
ーター法(#10)で塗布し、70℃で120秒間乾燥した後、高圧水銀灯で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(2)を作製した。このときのハードコート膜の膜厚は3μmであった。
【0045】
得られたハードコート膜付基材(2)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着
性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[実施例3]
ハードコート膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1で調製した金属酸化物粒子分散液(1)100gと水酸基を有する親水性マトリックス形成成分であるネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルアクリレート(新中村化学(株):NKオリゴEA-5320)24g、と疎水性マトリックス形成成分であるペンタエリ
スリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)6gに
光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)1.8gおよび溶媒イソプロパノ−ル18.2g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(3)を調製した。
ハードコート膜付基材(3)の作製
ハードコート膜形成用塗布液(3)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコ
ーター法(#10)で塗布し、70℃で120秒間乾燥した後、高圧水銀灯で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(3)を作製した。このときのハードコート膜の膜厚は3μmであった。
【0046】
得られたハードコート膜付基材(3)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着
性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[実施例4]
ハードコート膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1で調製した金属酸化物粒子分散液(1)100gと水酸基を有する親水性のマトリックス形成成分であるネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルアクリレート(新中村化学(株):NKオリゴEA-5320)6g、と疎水性のマトリックス形成成分であるペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)24gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)1.8gおよび溶媒イソプロパノ−ル18.2g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(4)を調製した。
ハードコート膜付基材(4)の作製
ハードコート膜形成用塗布液(4)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコ
ーター法(#10)で塗布し、70℃で120秒間乾燥した後、高圧水銀灯で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(4)を作製した。このときのハードコート膜の膜厚は3μmであった。
【0047】
得られたハードコート膜付基材(4)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着
性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[実施例5]
ハードコート膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1で調製した金属酸化物粒子分散液(1)80gと水酸基を有する親水性のマトリックス形成成分である1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート(新中
村化学(株):NKオリゴEA-5521)18g、と疎水性のマトリックス形成成分であるペンタ
エリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)1
8gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)2.2gおよび溶媒イソプロパノ−ル31.8g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(5)を調製した。
ハードコート膜付基材(5)の作製
ハードコート膜形成用塗布液(5)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコ
ーター法(#10)で塗布し、70℃で120秒間乾燥した後、高圧水銀灯で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(5)を作製した。このときのハードコート膜の膜厚は3μmであった。
【0048】
得られたハードコート膜付基材(5)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着
性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[実施例6]
ハードコート膜形成用塗布液(6)の調製
実施例1で調製した金属酸化物粒子分散液(1)120gと水酸基を有する親水性のマトリックス形成成分である1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート(新中村化学(株):NKオリゴEA-5521)12g、と疎水性のマトリックス形成成分であるペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)12gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)1.5gおよび溶媒イソプロパノ−ル4.5g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(6)を調製した。
ハードコート膜付基材(6)の作製
ハードコート膜形成用塗布液(6)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコ
ーター法(#10)で塗布し、70℃で120秒間乾燥した後、高圧水銀灯で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(6)を作製した。このときのハードコート膜の膜厚は3μmであった。
【0049】
得られたハードコート膜付基材(6)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着
性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[実施例7]
金属酸化物粒子(2)分散液の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイドSI−45P、SiO2濃度40重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)の分散液を、限外濾過膜を用いて洗浄し、ついでメタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度30重量%になるまで濃縮した。ついで、このゾル100gに正珪酸エチル15.6g(多摩化学(株)製 エチルシリケート28 SiO2成分28.8%)を混合し、50℃で15時間加熱撹拌して表面処理した金属酸化物粒子分散液を得た。
【0050】
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%の金属酸化物粒子(2)分散液を得た。この金属酸化物粒子(2)の表面電荷量を測定したところ32.0μeq/gであった。また、金属酸化物粒子(2)の平均粒子径および屈折率を表1に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(7)の調製
金属酸化物粒子(1)分散液100gと水酸基を有する親水性のマトリックス形成成分で
ある1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート(新中村化学(株):NK
オリゴEA-5521)15g、と疎水性のマトリックス形成成分であるジペンタエリスリトー
ルヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)15gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)1.8gおよび溶媒イソプロパノ−ル18.2g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(7)を調製した。
ハードコート膜付基材(7)の作製
ハードコート膜形成用塗布液(7)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコ
ーター法(#10)で塗布し、70℃で120秒間乾燥した後、高圧水銀灯で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(7)を作製した。このときのハードコート膜の膜厚は3μmであった。
【0051】
得られたハードコート膜付基材(7)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着
性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[実施例8]
シリカ系酸化物微粒子(3)分散液の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイドSI−45P、SiO2濃度40重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)の分散液を限外濾過膜を用いて洗浄し、ついでメタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度30重量%になるまで濃縮した。ついで、このゾル100gにγ-アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン5.5g(信越化学(株)製:KBM−5103 SiO2成分81.2%)を混合し、50℃で15時間加熱撹拌して表面処理した金属酸化物粒子分散液を得た。
【0052】
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%の金属酸化物粒子(3)分散液を得た。この金属酸化物粒子(3)の表面電荷量を測定したところ20.0μeq/gであった。また、金属酸化物粒子(3)の平均粒子径および屈折率を表1に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(8)の調製
金属酸化物粒子分散液(3)100gと水酸基を有する親水性のマトリックス形成成分で
ある1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート(新中村化学(株):NK
オリゴEA-5521)15g、と疎水性のマトリックス形成成分であるジペンタエリスリトー
ルヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)15gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)1.8gおよび溶媒イソプロパノ−ル18.2g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(8)を調製した。
ハードコート膜付基材(8)の作製
ハードコート膜形成用塗布液(8)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコ
ーター法(#10)で塗布し、70℃で120秒間乾燥した後、高圧水銀灯で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(8)を作製した。このときのハードコート膜の膜厚は3μmであった。
【0053】
得られたハードコート膜付基材(8)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着
性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[実施例9]
金属酸化物粒子(4)分散液の調製
シリカ系中空微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:スルーリア1420、平均粒子径60nm、濃度20.5重量%、分散媒:イソプロパノ−ル、粒子屈折率1.30)を用いた。このゾル100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン2.5g
(信越シリコ−ン(株)製 KBM−503 SiO2成分81.9%)を混合し、超純水を10g添加し50℃で5時間攪拌し表面処理した金属酸化物粒子分散液を得た(固形分20.0%)。
【0054】
この金属酸化物粒子(4)の表面電荷量を測定したところ21.0μeq/gであった。
また、金属酸化物粒子(4)の平均粒子径および屈折率を表1に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(9)の調製
金属酸化物粒子(4)分散液44gと水酸基を有する親水性のマトリックス形成成分であ
るネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルアクリレート(新中村化学(株):NKオリゴEA-5320)25.5g、と疎水性のマトリックス形成成分であるペンタエリスリトール
テトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)25.5gに光開
始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)3.1gおよび溶媒イソプロパノ−ル77.4g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(9)を調製した。
ハードコート膜付基材(9)の作製
実施例1において、ハードコート膜形成用塗料(9)を用いた以外は同様にしてハードコ
ート膜付基材(9)を作製した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0055】
得られたハードコート膜付基材(9)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着
性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[実施例10]
金属酸化物粒子(5)分散液の調製
シリカゾル(触媒化成工業株式会社(株)製:カタロイドSI−550、BET法により測定された平均粒子径:5nm、比表面積:545m2/g、SiO濃度:20重量%
)100gについて、pHが2.8になるまで、強酸性陽イオン交換樹脂SK1BH(三
菱化学社製)0.4Lに空間速度3.1で通液を繰り返した。次に、このシリカゾルを強
塩基性イオン交換樹脂SANUPC(三菱化学社製)0.4Lに空間速度3.1で通液させ、pHを4.1とした後、pHが8.5になるようにアルカリ性水溶液として5%水酸化ナトリウム水溶液を5g添加した。
【0056】
pH調整したシリカゾルを180℃にて2時間加熱した。このシリカゾルをエバポレーターにてSiO濃度20重量%まで濃縮してシリカ粒子が鎖状に連結した金属酸化物粒子分散ゾルを調製した。
【0057】
鎖状に連結した金属酸化物粒子の透過型電子顕微鏡写真(日立製作所製:H−800)
の観察により、平均粒子径5nmのシリカ粒子が平均10個鎖状に連結していた。
ついで、この鎖状に連結した金属酸化物粒子分散ゾルを、限外濾過膜を用いて洗浄し、メタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度20重量%になるまで濃縮した。このゾル100gに正珪酸エチル6.9g(多摩化学(株)製 エチルシリケート28 SiO2成分28.8%)を加え、50℃で15時間加熱撹拌して表面処理した金属酸化物粒子分散液を得た。
【0058】
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%の金属酸化物粒子(5)分散液を得た。この金属酸化物粒子(5)の表面電荷量を測定したところ35.0μeq/gであった。
ハードコート膜形成用塗布液(10)の調製
金属酸化物粒子(5)分散液70gと水酸基を有する親水性のマトリックス形成成分であ
る2ヒドロキシ-3アクリロイロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学(株)製:NKオ
リゴEA-5521)45g、と疎水性のマトリックス形成成分であるペンタエリスリトールト
リアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)15gに光開始剤(チバスプシャリティ(株)製イルガキュア184)3gおよ
び溶媒イソプロパノ−ル75g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合してハードコート膜形成用塗布液(10)を調製した。
ハードコート膜付基材(10)の作製
実施例1において、ハードコート膜形成用塗料(10)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(10)を作製した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0059】
得られたハードコート膜付基材(10)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[比較例1]
金属酸化物粒子(R1)分散液の調製
金属酸化物粒子として、シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイドSI−45P、SiO2濃度40重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)の分散液を、限外濾過膜を用いて洗浄し、ついでメタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度30重量%になるまで濃縮し、濃度30重量%の金属酸化物粒子(R1)分散液を得た。この金属酸化物粒子(R1)の表面電荷量を測定したところ60.0μeq/gであった。金属酸化物粒子(R1)の平均粒子径および屈折率を表1に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1において、金属酸化物粒子(R1)分散液120gを用いた以外は実施例1と同様
にしてハードコート膜形成用塗布液(R1)を調製した。
ハードコート膜付基材(R1)の作製
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R1)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0060】
得られたハードコート膜付基材(R1)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[比較例2]
金属酸化物粒子分散液(R2)の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイドSI−45P、SiO2濃度40重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)を限外濾過膜を用いて洗浄し、ついでメタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度30重量%になるまで濃縮したもの100gに有機ケイ素化合物としてパーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン(東レダウコーニング(株)製:AY43-158E、SiO2成分26.6%)を5.6g加え、50℃で15時間加熱撹拌してフッ素系有機ケイ素化合物で表面処理した金属酸化物粒子分散ゾルを調製した。ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%の金属酸化物粒子(R2)分散液を得た。この金属酸化物粒子(R2)の表面電荷量を測定したところ7.0μeq/gであった。金属酸化物粒子(R2)の平均粒子径および屈折率を表1に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の金属酸化物粒子(R2)分散液を用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R2)を調製した。
ハードコート膜付基材(R2)の作製
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R2)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜付基材(R2)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
[比較例3]
金属酸化物粒子分散液(R3)の調製
五酸化アンチモン微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:ELCOM V−4560、平均粒
子径20nm、濃度30.5重量%、分散媒:イソプロパノ−ル、粒子屈折率1.64)を用いた。このゾル100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン3.
76g(信越シリコ−ン(株)製 KBM−503 SiO2成分81.9%)を混合し超純水を10g添加し50℃で15時間攪拌し表面処理した金属酸化物粒子(R3)分散液を得た(固形分29.5%)。この金属酸化物粒子(R3)の表面電荷量を測定したところ9.8μeq/gであった。金属酸化物粒子(R3)の平均粒子径および屈折率を表1に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例1において、金属酸化物粒子(R3)分散を用いた以外は実施例1と同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R3)を調製した。
ハードコート膜付基材(R3)の作製
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R3)を調製した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0061】
得られたハードコート膜付基材(R3)の全光線透過率およびヘーズ、干渉縞の有無、密着性、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示す。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材の一方の表面上に形成されたハードコート膜とからなり、
該ハードコート膜が有機樹脂マトリックス成分と、表面処理金属酸化物粒子とを含んでなり、前記有機樹脂マトリックス成分が疎水性有機樹脂マトリックス成分であり、前記表面処理金属酸化物粒子の表面電荷量(QP)が15〜60μeq/gの範囲にあり、かつ
ハードコート膜表面に、金属酸化物粒子が露出していないことを特徴とするハードコート膜付基材。
【請求項2】
さらに親水性有機樹脂マトリックス成分を含み、ハードコート膜内で、親水性有機樹脂マトリックス成分が下層に偏在し、疎水性有機樹脂マトリックス成分が上層に偏在することを特徴とする請求項1に記載のハードコート膜付基材。
【請求項3】
親水性有機樹脂マトリックス成分と、疎水性有機樹脂マトリックス成分との混合比(重量比、疎水性マトリックス成分/親水性マトリックス成分の重量(WMB)/(WMA))が0.01〜2の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載のハードコート膜付基材。
【請求項4】
前記疎水性有機樹脂マトリックス成分がビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹
脂から選ばれる1種以上であり、前記親水性有機樹脂マトリックス成分が水酸基(OH基
)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載
のハードコート膜付基材。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、透明被膜中の表面処理された金属酸化物粒子の含有量が5〜80重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項6】
前記基材がトリアセチルセルロース(TAC)からなるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項7】
有機樹脂マトリックス形成成分と表面処理された金属酸化物粒子と分散媒とを含んでなり、有機樹脂マトリックス形成成分が疎水性有機樹脂マトリックス形成成分であり、金属酸化物粒子の表面電荷量(QP)が15〜60μeq/gの範囲にあることを特徴とする
ハードコート膜形成用塗布液。
【請求項8】
さらに親水性有機樹脂マトリックス形成成分を含み、親水性有機樹脂マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMA)と疎水性有機樹脂マトリックス形成成分の固形分としての濃度(CMB)との比(CMB)/(CMA)が0.01〜2の範囲にあることを特徴とする請求項7に記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項9】
前記疎水性有機樹脂マトリックス成分がビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹
脂から選ばれる1種以上であり、前記親水性有機樹脂マトリックス成分が水酸基(OH基
)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項7または8に記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項10】
前記分散媒が、沸点の異なる2種以上の混合分散媒であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項11】
前記混合分散媒の最高沸点の分散媒が疎水性分散媒であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のハードコート膜形成用塗布液。

【公開番号】特開2009−35595(P2009−35595A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199151(P2007−199151)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】