説明

ハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物

【課題】本発明は、より洗浄性の高いハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物、及びそれを用いて行うハードディスク用ガラス基板の製造方法を提供する。
【解決手段】アルカリ剤(成分A)と、キレート剤(成分B)と、アンモニウム基及びアミノ基のうちの少なくとも1つを含む構成単位(c1)と、陰イオン性基を含む構成単位(c2)とを含む両性高分子化合物(成分C)と、水(成分D)と、を含有し、成分D以外の成分の含有量の合計を100重量%としたとき、成分Aの含有量が10〜55重量%であり、成分Bの含有量が5〜60重量%であり、成分Cの含有量が5〜60重量%であり、且つ、成分Aと成分Bと成分Cの合計含有量が30〜100重量%であるハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物、及びそれを用いて行うハードディスク用ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスハードディスクドライブには、高容量と小径化を目的として、記録密度を上げるために磁気ヘッドの浮上量を低下させて、単位記録面積を小さくすることが求められている。それに伴い、ガラスハードディスクの製造工程においても、研磨対象物を研磨して得られる研磨面に要求される清浄度等の表面品質が高くなってきている。
【0003】
ところでガラスハードディスクの製造過程には、セリアやコロイダルシリカ等の無機粒子による研磨工程が含まれている。研磨工程を経た基板表面に砥粒や研磨カス等の微細パーティクル(無機粒子)が残存していると、磁気ディスクの性能や歩留まりに悪影響が及ぶ。特に、微細パーティクルは一旦基板表面から剥離しても、基板表面へ再付着しやすいため、洗浄剤組成物には無機粒子の高い分散性を有することが求められる。このような無機粒子の再付着を防止するために、界面活性剤や高分子化合物等の分散剤を含有する洗浄剤組成物が開示されている(特許文献1〜特許文献3参照)。
【0004】
特許文献1に記載の洗浄剤には、分散剤として、多糖類およびその誘導体、またはポバール(ポリビニルアルコール)及びリン酸エステル等が含まれている。特許文献2に記載の洗浄剤組成物には、分散剤として、カチオンポリマーが含まれている。特許文献3に記載の洗浄剤組成物には、分散剤として、カルボン酸系共重合体等が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−87523号公報
【特許文献2】特開2007−16110号公報
【特許文献3】特開2009−84509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、ガラスハードディスクドライブの高容量化に伴い、研磨工程を経た基板表面に求められる清浄度のレベルが格段に高くなっており、前記特許文献1〜3記載の洗浄剤組成物の洗浄性が、高清浄化の要請に対して不十分であることが判明した。特に、砥粒として好適に使用されるコロイダルシリカは表面エネルギーが高いため、一旦基板表面へ付着すると基板表面からの剥離が困難であり、また一度剥離しても基板表面へ再付着しやすい。
【0007】
そこで、本発明は、より洗浄性の高いハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物、及びそれを用いて行うハードディスク用ガラス基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物は、
アルカリ剤(成分A)と、
キレート剤(成分B)と、
アンモニウム基及びアミノ基のうちの少なくとも1つを含む構成単位(c1)と、陰イオン性基を含む構成単位(c2)とを含む両性高分子化合物(成分C)と、
水(成分D)と、を含有し、
前記成分D以外の成分の含有量の合計を100重量%としたとき、
前記成分Aの含有量が10〜55重量%であり、
前記成分Bの含有量が5〜60重量%であり、
前記成分Cの含有量が5〜60重量%であり、
且つ、前記成分Aと前記成分Bと前記成分Cの合計含有量が30〜100重量%である。
【0009】
本発明のハードディスク用ガラス基板の製造方法は、
被研磨基板を、無機微粒子を含有する研磨液組成物で研磨した後、水で濯いで、被洗浄基板を得る工程と、
前記被洗浄基板を本発明のハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物を用いて洗浄する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より洗浄性の高いハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物を提供できる。故に、本発明のハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物を用いた本発明のハードディスク用ガラス基板の製造方法によれば、高度に清浄化されたハードディスク用ガラス基板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、分散剤として、従来から使用されている界面活性剤及び/又は高分子化合物ではなく、水(成分D)中において陽イオン性基と陰イオン性基の両方を有する特定の両性高分子化合物(成分C)を所定量含み、成分A、成分Bおよび成分Cについても各々所定量含有することで、洗浄性の高いハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物(以下、「本発明の洗浄剤組成物」と略称する場合もある。)が得られることを見出した。尚、両性高分子化合物(成分C)の構成単位(c1)がアミノ基を含む場合、水(成分D)中において、アミノ基に水素イオンが配位結合することにより、両性高分子化合物(成分C)は陽イオン性基を有するようになる。また、両性高分子化合物(成分C)の構成単位(c2)は水(成分D)中においてイオン解離することにより陰イオン性基を有するようになる。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物が優れた効果を奏する理由については、以下のように考えている。アルカリ溶液中では一般的にシリカ粒子表面や基板表面は負に帯電されている。しかし、アルカリ剤のみによる電化付与力では、シリカ粒子が基板に再付着しやすく、再付着した一次粒子径が数nmのシリカ粒子を基板から除去することは容易ではない。そのため、洗浄剤組成物中におけるシリカ粒子の分散性を向上させる必要がある。本発明では、シリカ粒子表面や基板表面への両性高分子化合物の陽イオン性基の吸着、及び両性高分子化合物の陰イオン性基による電荷反発と両性高分子化合物の立体障害とによって、基板へのシリカ粒子の再付着が効果的に抑制される。
【0013】
以下、本発明の洗浄剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0014】
[アルカリ剤(成分A)]
本発明の洗浄剤組成物に含まれるアルカリ剤(成分A)は、無機アルカリ剤及び有機アルカリ剤のうちのいずれであってもよい。無機アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウム等が挙げられる。有機アルカリ剤としては、例えば、ヒドロキシアルキルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド及びコリンからなる群より選ばれる一種以上が挙げられる。これらのアルカリ剤は、単独で用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。
【0015】
ヒドロキシアルキルアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン、メチルジプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0016】
前記アルカリ剤のうち、洗浄性向上の観点、及び特にガラスに対するエッチング制御の容易化の観点から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、及びアミノエチルエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物中に含まれるアルカリ剤の含有量は、洗浄性向上の観点、及びガラスに対するエッチング制御のしやすさ観点から、水(成分D)以外の成分の含有量の合計を100重量%とすると、10〜55重量%であり、好ましくは15〜50重量%であり、より好ましくは20〜50重量%である。
【0018】
[キレート剤(成分B)]
本発明の洗浄剤組成物に含まれるキレート剤(成分B)は、グルコン酸、グルコヘプトン酸等のアルドン酸類;エチレンジアミン四酢酸等のアミノカルボン酸類;クエン酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸類;アミノトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸等のホスホン酸類;及びこれらのアルカリ金属塩、低級アミン塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられる。前記キレート剤のうち、シリカ粒子等の汚れに対する洗浄剤組成物の洗浄性の向上の観点から、グルコン酸ナトリウム、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸ナトリウム、又はアミノトリメチレンホスホン酸エチレンジアミン四酢酸4ナトリウムが好ましい。これらのキレート剤は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物中におけるキレート剤の含有量は、洗浄剤組成物のシリカ粒子等の汚れに対する洗浄性の向上の観点から、水(成分D)以外の成分の含有量の合計を100重量%とすると、5〜60重量%であり、好ましくは10〜50重量%であり、より好ましくは15〜45重量%である。
【0020】
[両性高分子化合物(成分C)]
本発明の洗浄剤組成物に含まれる両性高分子化合物(成分C)は、アンモニウム基およびアミノ基のうちの少なくとも1つを含む構成単位(c1)〔以下「構成単位(c1)」という。〕と、陰イオン性基を有する構成単位(c2)〔以下「構成単位(c2)」という。〕とを含む高分子化合物である。両性高分子化合物には、構成単位(c1)と構成単位(c2)とを含む高分子化合物のみならず、その塩も含まれる。前記アミノ基は、電荷付与力を高め、洗浄性を向上させる観点から、3級アミン基及び2級アミン基のうちの少なくとも1つが好ましい。
【0021】
構成単位(c1)は、洗浄性向上の観点、及びガラスに対するエッチング制御のしやすさから、下記一般式(1)で表される単量体及び下記一般式(2)で表される単量体から選ばれるいずれか一方の単量体に由来する構成単位が好ましく、下記一般式(3)で表される構成単位がより好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
前記一般式(1)(2)中、R1、R2、R3、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。X、Yは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR12−、−CONHR12−、−OCOR12−、−R13−OCO−R12−から選ばれる基である。ここでR12、R13は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R4は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又はR12C=C(R3)−X−である。R5は炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、R6は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基であり、Z-は陰イオンを示す。R10は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又はR78C=C(R9)−Y−である。R11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。
【0024】
前記構成単位(c1)のうち、洗浄性向上の観点から、アンモニウム基を含む構成単位が好ましく、4級アンモニウム基を含む構成単位がより好ましく、下記一般式(3)で表される構成単位がさらに好ましい。
【0025】
【化2】

【0026】
一般式(3)中、R1bは炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、m及びnはそれぞれ0又は1の数であり、m+n=1である。m=1、n=0であると、前記構成単位(c1)は五員環を含み、m=0、n=1であると、前記構成単位(c1)は六員環を含む。両性高分子化合物(成分C)の構成単位(c1)の全てが、一般式(3)で表される構成単位である場合、両性高分子化合物は、洗浄性向上の観点から、構成単位(c1)の全てが、前記五員環を含む構成単位(c1)であると好ましく、又は、前記六員環を含む構成単位(c1)であると好ましい。Z-は陰イオンを示す。
【0027】
一般式(3)中、R1bは、洗浄性向上の観点からメチル基が好ましく、Z-は、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオン、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。nは0が好適である。
【0028】
構成単位(c2)としては、洗浄性向上の観点から、下記一般式(4)で表される構成単位が好適である。
【0029】
【化3】

【0030】
一般式(4)中、R2bは水素原子、メチル基、又は−COOMであり、R3bは水素原子、メチル基、又はヒドロキシ基である。Aは−COOM、又は−ph−SO3Mである。ここで、Mは、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、phはフェニレン基を示す。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物に含まれる両性高分子化合物(成分C)は、成分Cの構成単位に対応する単量体を通常の重合反応で重合させることにより製造できる。あるいは、成分Cの構成単位に対応する単量体とは異なる単量体の重合により得られた高分子化合物にイオン性基を導入してイオン化処理し、最終的に両性高分子化合物(成分C)を製造してもよい。例えば、陽イオン性基を有する単量体と陰イオン性基を有する単量体とを重合させて成分Cを得る方法の他に、陽イオン性基を有していない単量体と陰イオン性基を有する単量体との重合により得られた高分子化合物を陽イオン化することにより、最終的に前記陰イオン性基と陽イオン性基の両方を有する成分Cを得てもよい。具体的には、両性高分子化合物(成分C)が陽イオン性基として4級アンモニウム基を含む場合、単量体中に4級アンモニウム基を有する単量体と陰イオン性基を有する単量体とを重合反応させて成分Cを得る方法の他に、アミノ基を有する単量体と陰イオン性基を有する単量体とを重合させて得た高分子化合物に4級化処理を施して成分Cを得てもよい。また、陰イオン性基を有していない単量体と陽イオン性基を有する単量体との重合により得られた高分子化合物を陰イオン性化することにより、最終的に陰イオン性基と陽イオン性基の両方を有する成分Cを得てもよい。尚、前記「成分C分の構成単位に対応する単量体」とは、前記イオン性化をしなくても成分C分の構成単位となり得る単量体を意味する。また、「陰イオン性基を有する単量体」とは、水中においてイオン解離することにより陰イオン性基を有するようになる単量体を意味する。
【0032】
一般式(1)で表される単量体としては、アクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N−(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらに由来する一般式(3)の構成単位が両性高分子化合物(成分C)の一部を構成する。
【0033】
また、一般式(2)で表される単量体としては、アクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、N−(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N−アルキル(炭素数1〜3)アミン、アリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン等が挙げられる。
【0034】
一般式(2)で表される単量体と構成単位(c2)の供給源である単量体とを重合させて得られる高分子化合物中の一般式(2)で表される単量体に由来の構成単位(c1)を、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の4級化剤を用いてアルキル化することで、成分Cを製造することもできる。尚、4級化剤として、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを用いる場合には、ZH(Zは前記陰イオンZ-に対応する基)で示される酸でアミノ基を中和する。
【0035】
一般式(4)で表される構成単位の供給源である単量体としては、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、クロトン酸又はその塩、α−ヒドロキシアクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸塩が挙げられる。また、スチレンスルホン酸塩に由来の構成単位は、スチレンに由来の構成単位を含む高分子化合物を、3酸化イオウ、クロルスルホン酸、硫酸等のスルホン化剤を用いてスルホン化した後、中和することでも得られる。
【0036】
両性高分子化合物は、洗浄性向上の観点から、構成単位(c1)として、4級アンモニウム基を有する構成単位を含むと好ましいが、4級アンモニウム基を有する構成単位としては、同様の観点から、N,N−ジアリル−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩に由来の構成単位、又はN,N−ジアリル−N−アルキル(炭素数1〜3)アミンに由来の構成単位をメチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の4級化剤を用いてアルキル化した構成単位が好ましい。陰イオン性基を有する構成単位としては、同様の観点から、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来の構成単位が好ましい。N,N−ジアリル−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアリルジヒドロキシメチルアンモニウム、塩化ジアリルジエチルアンモニウム、塩化ジアリルジヒドロキシエチルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム塩酸塩、ジアリルジエチルアンモニウム硫酸塩、塩化ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。N,N−ジアリル−N−アルキル(炭素数1〜3)アミンとしては、例えば、ジアリルメチルアミン、ジアリルヒドロキシメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリルヒドロキシエチルアミン等が挙げられる。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物に含まれる両性高分子化合物(成分C)では、洗浄性向上の観点から、〔アンモニウム基およびアミン基の総モル数〕/〔陰イオン性基の総モル数〕のモル比が、30/70〜95/5が好ましく、40/60〜70/25がより好ましく、50/50〜70/25がさらに好ましい。また、同様の観点から、1つの構成単位(c1)に含まれるアンモニウム基およびアミン基の総モル数と、1つの構成単位(c2)に含まれる陰イオン性基の総モル数とが等しい場合、前記構成単位(c1)と前記構成単位(c2)とのモル比(c1/c2)は、30/70〜95/5が好ましく、40/60〜70/25がより好ましく、50/50〜70/25が更に好ましい。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物に含まれる両性高分子化合物(成分C)では、洗浄性向上の観点から、構成単位(c1)及び構成単位(c2)の合計のモル百分率、好ましくは前記一般式(3)で表される構成単位及び前記一般式(4)で表される構成単位の合計のモル百分率は、成分Cを構成する全構成単位を100モル%とすると、50〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましく、90〜100モル%がより一層好ましい。また、本発明の洗浄剤組成物に含まれる成分Cでは、洗浄性向上の観点から、アンモニウム基及びアミン基のうちの少なくとも1つを含む構成単位(c1)の合計のモル百分率(好ましくは、構成単位(c1)の全てが4級アンモニウム基である場合の構成単位(c1)のモル百分率)は、成分Cを構成する全構成単位を100モル%とすると、30〜90モル%が好ましく、40〜80モル%がより好ましく、50〜70モル%がさらに好ましい。
【0039】
本発明では、構成単位(c1)及び構成単位(c2)以外に、好ましくは前記一般式(3)で表される構成単位及び前記一般式(4)で表される構成単位以外に、本発明の効果を損なわない程度に、構成単位(c3)を含んでいてもよい。構成単位(c1)、構成単位(c2)及び構成単位(c3)の供給源である単量体は、相互に共重合可能である。
【0040】
構成単位(c3)の供給源である単量体としては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアクリル(又はメタクリル)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリル酸(又はメタクリル酸)アルキル(炭素数1〜5)、アクリル酸(又はメタクリル酸)2−ヒドロキシエチル、アクリル酸(又はメタクリル酸)−N,N−ジメチルアミノアルキル(炭素数1〜5)、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、N−ブチレン、イソブチレン、N−ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、N−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、二酸化硫黄等が挙げられる。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物に含まれる両性高分子化合物(成分C)は、洗浄性向上の観点から、構成単位(c1)と構成単位(c2)と構成単位(c3)とを含む共重合体及び/又はその塩が好ましく、両性高分子化合物(成分C)を構成する全構成単位を100モル%とすると、二酸化硫黄に由来する構成単位(c3)の合計のモル百分率は、1〜15モル%であると好ましい。なお、二酸化硫黄に由来する構成単位(c3)は、下記式(5)により示される。
【0042】
【化4】

【0043】
成分Cは、いかなる重合法によって得てもよいが、ラジカル重合法が特に好ましく、塊状、溶液、又は乳化系にてこれを行うことができる。ラジカル重合は、加熱によりこれを開始してもよいが、開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤;過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、及び過安息香酸等の有機過酸化物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、Fe3+等のレドックス開始剤;、既存のラジカル開始剤等を用いてもよい。又は、光増感剤の存在/又は非存在下での光照射や、放射線照射により重合を開始させてもよい。
【0044】
成分Cの重量平均分子量は、1,000〜6,000,000が好ましく、5,000〜3,000,000がより好ましく、10,000〜2,000,000がさらに好ましい。該重量平均分子量は、具体的には、実施例に記載の測定方法により測定される。
【0045】
本発明の洗浄剤組成物中における両性高分子化合物(成分C)の含有量は、洗浄性向上の観点から、水(成分D)以外の成分の含有量の合計を100重量%とすると、5〜60重量%であり、5〜50重量%が好ましく、9〜40重量%がより好ましい。
【0046】
[水(成分D)]
本発明の洗浄剤組成物に含まれる水(成分D)は、溶媒としての役割を果たすことができるものであれば特に制限はなく、例えば、超純水、純水、イオン交換水、又は蒸留水等を挙げることができるが、超純水、純水、又はイオン交換水が好ましく、超純水がより好ましい。尚、純水及び超純水は、例えば、水道水を活性炭に通し、イオン交換処理し、さらに蒸留したものを、必要に応じて所定の紫外線殺菌灯を照射、又はフィルターに通すことにより得ることができる。例えば、25℃での電気伝導率は、多くの場合、純水で1μS/cm以下であり、超純水で0.1μS/cm以下を示す。尚、本発明の洗浄剤組成物は、溶媒として前記水に加えて水溶性の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)をさらに含んでいてもよいが、本発明の洗浄剤組成物に含まれる溶媒は水のみからなると好ましい。
【0047】
[任意成分]
本発明の洗浄剤組成物には、成分A〜D以外に、非イオン性界面活性剤、可溶化剤、酸化防止剤、防腐剤等が含まれてもよい。
【0048】
[非イオン性界面活性剤(成分E)]
本発明の洗浄剤組成物には、洗浄剤組成物の洗浄性の向上の観点から、非イオン性界面活性剤(成分E)が含まれてもよい。本発明の洗浄剤組成物に含まれる、非イオン性界面活性剤(成分E)としては、例えば、下記の一般式(6)で表される非イオン性界面活性剤が、洗浄剤組成物の洗浄性の向上の観点から好ましい。
14−O−(EO)o(PO)p−H (6)
【0049】
前記一般式(5)中、R14は炭素数8〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であると好ましく、EOはエチレンオキシ基であり、POはオキシプロピレン基である。o及びpは、それぞれEO及びPOの平均付加モル数である。oは5〜20の数、pは0〜4の数であると好ましい。
【0050】
一般式(6)で示される化合物としては、具体的には、デカノール、イソデシルアルコール、トリデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等のフェノール類に、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が付加された化合物等が挙げられる。一般式(6)で示される化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いても良い。
【0051】
本発明の洗浄剤組成物中における前記非イオン性界面活性剤(成分E)の含有量は、洗浄剤組成物の有機系汚れに対する洗浄性向上の観点から、水(成分D)以外の成分の含有量の合計を100重量%とすると、1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、1〜15重量%がさらに好ましい。
【0052】
[可溶化剤(成分F)]
本発明の洗浄剤組成物には、洗浄剤組成物の保存安定性向上の観点から、p-トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、2-エチルヘキサン酸、およびこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の可溶化剤(成分F)が含まれてもよい。可溶化剤は、非イオン性界面活性剤(成分E)等の洗浄剤組成物中おける分散性を向上させる。
【0053】
本発明の洗浄剤組成物中における成分Fの含有量は、洗浄剤組成物の保存安定性向上の観点から、水(成分D)以外の成分の含有量の合計を100重量%とすると、1〜60重量%が好ましく、3〜50重量%がより好ましく、5〜50重量%がさらに好ましく、10〜50重量%がより一層好ましい。
【0054】
本発明の洗浄剤組成物は、例えば、希釈して用いられる。希釈倍率は、洗浄効率を考慮すると、好ましくは20〜500倍である。希釈用の水は、前記記載の成分Dと同様のものでよい。本発明の洗浄剤組成物が希釈して用いられる場合、希釈前の洗浄剤組成物に含まれる各成分の含有量は、洗浄性向上の観点から、アルカリ剤(成分A)は5〜12重量%が好ましく、キレート剤(成分B)は2〜10重量%が好ましく、両性高分子化合物(成分C)は0.5〜10重量%が好ましく、水(成分D)は68〜92.5重量%が好ましい。
【0055】
希釈された洗浄剤組成物に含まれる各成分の含有量は、例えば、洗浄性向上の観点から、アルカリ剤(成分A)は0.009〜0.7重量%が好ましく、0.01〜0.5重量%がより好ましく、0.04〜0.4重量%がさらに好ましく、キレート剤(成分B)は0.003〜0.6重量%が好ましく、0.01〜0.5重量%がより好ましく、0.01〜0.3重量%がさらに好ましく、両性高分子化合物(成分C)は0.001〜0.5重量%が好ましく、0.002〜0.4重量%がより好ましく、0.005〜0.3重量%がさらに好ましく、水(成分D)は,97〜99.98重量%が好ましく、98〜99.98重量%がより好ましく、99〜99.98重量%がさらに好ましい。また、希釈しなくてよいように、前記記載の希釈後の組成の洗浄剤組成物を作製し、そのまま用いてもよい。
【0056】
本発明の洗浄剤組成物に含まれる両性高分子化合物(成分C)とキレート剤(成分B)の重量比(成分C(重量%)/成分B(重量%))は、洗浄性向上の観点から、1/0.1〜1/5が好ましく、1/0.5〜1/5がより好ましく、1/0.5〜1/4.5がさらに好ましい。
【0057】
本発明の洗浄剤組成物中における、前記成分Aと前記成分Bと前記成分Cの合計含有量は、水(成分D)以外の成分の含有量の合計を100重量%とすると、洗浄性向上の観点から30〜100重量%であることを要するが、同様の観点から、40〜100重量%が好ましく、50〜100重量%がより好ましい。
【0058】
[pH]
本発明の洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、ガラス表面を損傷させない限りその上限について特に制限がないが、洗浄性向上の観点から、11〜14が好ましく、12以上がより好ましく、12〜13がさらに好ましい。尚、前記のpHは、pHメータ(東亜電波工業社製、HM−30G)を用いて測定でき、電極の洗浄剤組成物への浸漬後40分後の数値である。
【0059】
[ハードディスク用ガラス基板の製造方法]
本発明のハードディスク用ガラス基板の製造方法では、例えば、ガラス表面を有し当該ガラス表面に対して研磨組成物を用いた研磨が施された被洗浄基板を、本発明の洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含む。前記研磨では、例えば、粗研磨処理と仕上げ研磨処理をこの順で行う。前記粗研磨処理の際に用いられる研磨剤組成物に含まれる無機微粒子は、高速研磨が可能であるという理由から、酸化セリウム粒子が好ましい。前記仕上げ研磨処理の際に用いられる研磨剤組成物に含まれる無機微粒子は、表面の平坦性(低粗さ)を向上させるという理由から、シリカ粒子が好ましい。
【0060】
本発明のハードディスク用ガラス基板の製造方法の一例では、粗研磨処理の後、本発明の洗浄剤組成物を用いた洗浄処理(第1洗浄処理)、すすぎ処理(第1すすぎ処理)、乾燥処理(第1乾燥処理)、仕上げ研磨処理、本発明の洗浄剤組成物を用いた洗浄処理(第2洗浄処理)、すすぎ処理(第2すすぎ処理)、及び乾燥処理(第2乾燥処理)がこの順で行われる。
【0061】
これらのハードディスク用ガラス基板上に、スパッタ等の方法により、磁気記録領域を有し、金属薄膜を含む磁性層が形成されることによって、ハードディスクが得られる。前記金属薄膜を構成する金属材料としては、例えば、クロム、タンタル、又は白金等とコバルトとの合金である、コバルト合金等が挙げられる。尚、磁性層は、ハードディスク用ガラス基板の両主面側に形成されてもよいし、一方の主面側にのみ形成されてもよい。
【0062】
[ハードディスク用ガラス基板表面の洗浄方法]
本発明のハードディスク用ガラス基板の洗浄方法(以下「本発明の洗浄方法」と略称する場合もある。)では、例えば、ガラス表面を有し当該ガラス表面に対して研磨剤組成物を用いた研磨が施された被洗浄基板を、本発明の洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含む。前記洗浄工程では、例えば、(a)被洗浄基板を洗浄剤組成物に浸漬するか、及び/又は、(b)洗浄剤組成物を射出して、被洗浄基板の表面上に洗浄剤組成物が供給される。
【0063】
前記方法(a)において、被洗浄基板の洗浄剤組成物への浸漬条件としては、特に制限はないが、例えば、洗浄剤組成物の温度は、洗浄剤組成物の洗浄性、安全性及び操業性の観点から20〜100℃であると好ましく、浸漬時間は、洗浄剤組成物による洗浄性と生産効率の観点から10秒〜30分間であると好ましい。また、洗浄性向上の観点から、洗浄剤組成物には超音波振動が付与されていると好ましい。超音波の周波数としては、20〜2000kHzが好ましくは、30〜2000kHzがより好ましく、30〜1500kHzがさらに好ましい。
【0064】
前記方法(b)では、無機粒子の洗浄性や油分の溶解性を促進させる観点から、超音波振動が与えられている洗浄剤組成物を射出して、被洗浄基板の表面に洗浄剤組成物を接触させて当該表面を洗浄するか、又は、洗浄剤組成物を被洗浄基板の表面上に射出により供給し、洗浄剤組成物が供給された当該表面を洗浄用ブラシでこすることにより洗浄することが好ましい。さらには、超音波振動が与えられている洗浄剤組成物を射出により洗浄対象の表面に供給し、かつ、洗浄剤組成物が供給された当該表面を洗浄用ブラシでこすることにより洗浄することが好ましい。
【0065】
洗浄剤組成物を被洗浄基板の表面上に供給する手段としては、スプレ−ノズル等の公知の手段を用いることができる。また、洗浄用ブラシとしては、特に制限はなく、例えばナイロンブラシやPVA(ポリビニルアルコール)スポンジブラシ等の公知のものを使用することができる。超音波の周波数としては、前記方法(a)で好ましく採用される値と同様であればよい。
【0066】
本発明の洗浄方法は、前記方法(a)及び/又は前記方法(b)に加えて、揺動洗浄、スピンナー等の回転を利用した洗浄、パドル洗浄等の公知の洗浄を用いる工程を1つ以上含んでもよい。
【0067】
本発明の洗浄方法が好適に適用される被洗浄基板としては、例えば、ボロシリケートガラス基板、アルミノシリケートガラス又は結晶化ガラスを含むガラス基板、アルミノシリケートガラス又は結晶化ガラスからなるガラス基板である。
【0068】
本発明のガラス表面の洗浄方法では、被洗浄基板を一枚ずつ洗浄してもよいが、複数枚の洗浄すべき被洗浄基板を一度にまとめて洗浄してもよい。また、洗浄の際に用いる洗浄槽の数は1つでも複数でも良い。
【実施例】
【0069】
[洗浄剤組成物の調製]
表1および表2に記載の組成となるように各成分を重量%で配合し、混合することにより、実施例及び比較例の洗浄剤組成物を得た。尚、表中のKOH、NaOHには、市販の水溶液(濃度:48重量%)を用いた。尚、両性高分子化合物1〜3の重量平均分子量は下記の通り測定した。
【0070】
(両性高分子化合物の重量平均分子量の測定方法)
両性高分子化合物1〜3の重量平均分子量は、下記測定条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
〔GPC条件〕
カラム:TSKgel G4000PWXL+TSKgel G2500PWXL(東ソー社製)
ガードカラム:TSKguardcolumn PWXL(東ソー社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1(体積比)
温度:40℃
流速:1.0mL/min
試料サイズ:5mg/mL
検出器:RI
換算標準:ポリエチレングリコール
【0071】
[ハードディスク用ガラス基板の洗浄性試験方法]
下記組成の研磨液スラリー(研磨剤組成物)を用いた研磨を施すことにより、研磨液スラリー由来の砥粒及び基板材料由来の研磨屑等によって汚染された被洗浄基板を用意した。前記被洗浄基板を用いて洗浄剤組成物の洗浄性を評価した。
【0072】
(評価用基板)
評価用基板として、アルミノシリケ−ト製のガラス基板(外径:65mmφ、内径:20mmφ、厚さ:0.635mm)を用意した。
【0073】
(研磨条件)
研磨機:両面9B研磨機(浜井産業社製)
研磨パッド:FILWEL社製仕上げ研磨用スウェードパッド
研磨剤組成物:コロイダルシリカスラリ−(コロイダルシリカ粒子の個数平均粒径24nm、コロイダルシリカ粒子の濃度:8重量%、媒体:水;花王社製)
予備研磨:荷重 40g/cm2、時間 60秒、研磨液流量 100mL/min
本研磨:荷重 100g/cm2、時間 1200秒、研磨液流量 100mL/min
水リンス:荷重 40g/cm2、時間 60秒、リンス水流量 約2L/min
【0074】
(洗浄)
汚染された被洗浄基板(5枚)を、洗浄装置にて以下の条件で洗浄した。洗浄槽、すすぎ槽は2セットづつ用意した。
(1)洗浄−1:洗浄剤組成物を450gを入れた洗浄槽(1500l)を40℃に設定し、被洗浄基板を浸漬し、超音波(40kHz)を照射しながら120秒間洗浄する。
(2)すすぎ−1:超純水を入れたすすぎ槽(40℃)に被洗浄基板を移し、超音波(40kHz)を照射しながら120秒間すすぎを行う。
(3)未使用の洗浄剤組成物を入れた洗浄槽、未使用の超純水を入れたすすぎ槽を使用して再度(1)と(2)を繰り返す。
(4)洗浄−2:すすぎ槽内から被洗浄基板を、洗浄ブラシがセットされたスクラブ洗浄ユニット(A)に移し、洗浄ブラシに常温(25℃)の洗浄剤組成物を射出し、該洗浄剤組成物の存在下で洗浄ブラシを該基板の両面に400rpmで回転させながら押し当てることにより、洗浄を25℃で5秒間行う。洗浄剤組成物には、「(1)洗浄−1」で用いた洗浄剤組成物と同組成のものを用いる。
(5)すすぎ−2:未使用のスクラブ洗浄ユニット(B)に被洗浄基板を移し、25℃の超純水を射出し、洗浄ブラシを該基板の両面に(4)と同様にしてすすぎを5秒間行う。
(6)再度(4)と(5)を繰り返す。
(7)すすぎ−3: 被洗浄基板を、超純水を入れた樹脂槽に移し、600秒間25℃ですすぎを行う。
(8)乾燥:被洗浄基板を、温純水を入れた樹脂槽に移し、60秒間浸漬した後、250mm/minの速度で被洗浄基板を引き上げた後、完全に基板表面を乾燥させる。
【0075】
(洗浄性評価)
10000rpmで回転している洗浄された基板に、光学式微細欠陥検査装置(Candela6100、KLA Tencor社製)のMODE Q−Scatterでレーザーを照射して、欠陥数(基板上の異物数)の測定を実施した。各実施例、比較例の洗浄剤組成物について10枚ずつの基板について前記測定を行い平均を取り、洗浄性を、比較例2の場合の欠陥数を100としたときの相対値で評価した。結果を表1および表2に示す。
【0076】
表1および表2に示されるように、実施例1〜7の洗浄剤組成物を用いた場合は、比較例1〜6の洗浄剤組成物を用いた場合よりも欠陥数が少ないことから、成分A〜成分Dを各々所定量含む実施例1〜7の洗浄剤組成物は、比較例1〜6の洗浄剤組成物よりも洗浄性が高いことが分かる。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表1および表2中の各成分の詳細は下記のとおりである。
(1)ヒドロキシエチリデンジホスホン酸:ソルーシア・ジャパン社製 ディクエスト2010
(2)両性高分子化合物1:塩化ジアリルジメチルアンモニウム、マレイン酸、二酸化硫黄の共重合体〔塩化ジアリルジメチルアンモニウム/マレイン酸/二酸化硫黄=66.7/26.7/6.6(モル比)、重量平均分子量2万〕
(3)両性高分子化合物2:塩化ジアリルジメチルアンモニウム、マレイン酸の共重合体〔塩化ジアリルジメチルアンモニウム/マレイン酸=50/50(モル比)、重量平均分子量1.3万〕
(4)両性高分子化合物3:塩化ジメチルアミノエチルメタクリレートとアクリル酸の共重合体〔塩化ジメチルアミノエチルメタクリレート/アクリル酸=50/50(モル比)、重量平均分子量45万〕
(5)水溶性高分子:アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の共重合体ナトリウム塩、〔東亞合成社製、商品名アロンA−6017、重量平均分子量6000、AA/AMPSの重量比80:20、モル比:90:10%〕
(6)非イオン性界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(アルキル:12〜14(R14の炭素数) EOの平均付加モル数o:10 POの平均付加モル数p:1.5 重量平均分子量700(花王社製))
(7)可溶化剤:p-トルエンスルホン酸Na(花王社製)
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の洗浄剤組成物を使用することにより、ハードディスク用ガラス基板について高度に清浄化されたガラス表面を得ることができる。よって、本発明は、製品の歩留まり向上に寄与し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤(成分A)と、
キレート剤(成分B)と、
アンモニウム基及びアミノ基のうちの少なくとも1つを含む構成単位(c1)と、陰イオン性基を含む構成単位(c2)とを含む両性高分子化合物(成分C)と、
水(成分D)と、を含有し、
前記成分D以外の成分の含有量の合計を100重量%としたとき、
前記成分Aの含有量が10〜55重量%であり、
前記成分Bの含有量が5〜60重量%であり、
前記成分Cの含有量が5〜60重量%であり、
且つ、前記成分Aと前記成分Bと前記成分Cの合計含有量が30〜100重量%であるハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項2】
pHが12以上である、請求項1に記載のハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記構成単位(c1)と前記構成単位(c2)とのモル比(c1/c2)が30/70〜95/5である、請求項1又は2に記載のハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項4】
非イオン性界面活性剤(成分E)をさらに含む請求項1から3のいずれかの項に記載のハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項5】
p-トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、2-エチルヘキサン酸、およびこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の可溶化剤(成分F)をさらに含む請求項1〜4のいずれかの項に記載のハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項6】
被研磨基板を、無機微粒子を含有する研磨液組成物で研磨した後、水で濯いで、被洗浄基板を得る工程と、
前記被洗浄基板を請求項1〜5のいずれかの項に記載のハードディスク用ガラス基板用のアルカリ洗浄剤組成物を用いて洗浄する工程と、を含むハードディスク用ガラス基板の製造方法。

【公開番号】特開2012−140523(P2012−140523A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293625(P2010−293625)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】