ハードディスク用ランプの製造方法
【課題】 成形性(ひけ、ばり、成形サイクル)に優れ、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が非常に小さい、ポリアセタール樹脂製ランプの製造方法の提供。
【解決手段】 ポリアセタール樹脂を金型温度を75〜135℃として成形することを特徴とする表面硬さが2.6GPa以上であるランプの製造方法。ポリアセタール樹脂としては、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜6×106であるポリアセタールコポリマーを用いることが好ましい。
【解決手段】 ポリアセタール樹脂を金型温度を75〜135℃として成形することを特徴とする表面硬さが2.6GPa以上であるランプの製造方法。ポリアセタール樹脂としては、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜6×106であるポリアセタールコポリマーを用いることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂を用いて成形される、ハードディスクドライブ内のヘッドを収納、ガイドするためのランプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク内部のヘッドを待機させる位置としては、磁気ディスク内周の上部が主流であった(CSS方式)が、この方式では、以下に述べるような問題がある。
すなわち、近年、ハードディスクの磁気記録密度を向上させるためヘッド浮上量をさらに小さくし、ヘッドとディスク間の間隙を小さくすることが求められており、そのためには、ヘッドスライダとディスクの表面平滑度を向上させる必要がある。しかしながら、このような平滑面同士の接触が起こると吸着現象が生じ、結果的に、ヘッドが浮上しなくなるという問題があった。特に、CSS方式ではこの問題が発生する確率が高かった。また、CSS方式では、ヘッドを待機させるディスク領域においてその表面を事前に荒らしておくため、かかるディスク領城には記録ができず、記録容量が必然的に低下してしまうという問題もあった。更に、CSS方式ではハードディスク装置に衝撃がかかった時にヘッドとディスクの衝突が起こる可能性が高く、ディスクの損傷やデータの破損を招きやすかった。
【0003】
このようなCSS方式の問題点を改良し信頼性を向上させるため、最近では、CSS方式から、ディスクの外側に、ハードディスクドライブ内のヘッドを収納、ガイドするためにランプという部品を用意するロード・アンロード方式へ移行する状況にある。特に、ノートパソコン、カーナビやモバイル用途に使用されるハードディスクにおいては、ほとんどロード・アンロード方式が採用されている。
ところで、ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、且つ良好な加工性を有していることから、代表的エンジニアリングプラスチックスとして、電気機器や電気機器の機構部品、自動車部品を中心に広く用いられている。また、近年では、その利用分野が拡大するに伴い、さまざまな機構部品にも広範囲に亘って用いられている。その例としてハードディスク内部のランプが挙げられる。
【0004】
例えば、特許文献1では、ランプ材料として4−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のコポリエステル(HAHN)、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトンが挙げられている。また、特許文献2では、ランプユニット材料としてポリイミド、ポリアセタール、PEEK、HAHN、液晶性重合体およびPTFE充填プラスチックが挙げられている。また、特許文献3では、ランプ材質としてポリアセタール等の合成樹脂が挙げられている。また、特許文献4では、ランプの支持部を熱可塑性ポリイミドで成形し、摺動部をポリテトラフルオロエチレン含有液晶ポリマーで成形したランプが挙げられている。また、特許文献5では、ランプの接触部(摺動面)に乾燥潤滑皮膜(四フッ化エチレン樹脂、イミド系樹脂等)を形成することが挙げられている。また、特許文献6〜8では、ランプのガイド部(摺動部)に摩擦係数の少ない高分子材料、摩擦摩耗特性に優れた樹脂材料を用いることが挙げられている。
【0005】
従来技術において使用されている4−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のコポリエステル(HAHN)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶性重合体およびPTFE充填プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン含有液晶ポリマーを使用する方法では、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が非常に大きく、また相手材となる金属製タブを削ってしまうという不具合があった。これらの摩耗紛はハードディスクをクラッシュさせたり、記録再生を妨げる原因になっていた。また、ランプの接触部(摺動面)に乾燥潤滑皮膜(四フッ化エチレン樹脂、イミド系樹脂等)を形成する方法等も、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗を十分に改善するものではなかった。
【0006】
一方、特許文献9では、ランプ材料としてASTMD638による引張り伸びが30%以上である材料が挙げられている。この先行技術にはポリアセタール製のランプを開示しているが、本発明で規定する表面硬さ、及び特定のせん断応力を有するポリアセタールコポリマーについては一切記載されていない。また、このASTMD638による引張り伸びが30%以上である材料を使用しても、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が小さく(往復運動による耐久試験後の摩耗量が少ない)、寸法変化が小さく、成形性に優れる(ひけ・ばりがなく、成形サイクルが短い)という要求性能の全てを満足するものは得られない。また、成形条件等によって大きく摺動性が損なわれ、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗量が多くなる場合がある。
【0007】
また、特許文献10においては、ランプ材料として熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂に、無機フィラーを4重量%以下添加した材料が挙げられている。この先行技術にもポリアセタール製のランプが開示されているが、本発明で規定する表面硬さ、及び特定のせん断応力を有するポリアセタールコポリマーについては一切記載されていない。また、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂に、無機フィラーを4重量%以下添加した材料を使用しても、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が小さく(往復運動による耐久試験後の摩耗量が少ない)、寸法変化が小さく、成形性に優れる(ひけ・ばりがなく、成形サイクルが短い)という要求性能の全てを満足するものは得られない。また、成形条件等によって大きく摺動性が損なわれ、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗量が多くなる場合がある。
【0008】
【特許文献1】特開平11−339411号公報
【特許文献2】特開2001−23325号公報
【特許文献3】特開平10−125014号公報
【特許文献4】特開平10−312657号公報
【特許文献5】特開平10−302421号公報
【特許文献6】特開2002−124051号公報
【特許文献7】特開2001−229634号公報
【特許文献8】特開2001−195853号公報
【特許文献9】特開2001−297548号公報
【特許文献10】特開2002−197820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術では得られなかった、成形性(ひけ、ばり、成形サイクル)に優れ、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が非常に小さい、ポリアセタール樹脂製のランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、ポリアセタール樹脂を成形して得られる、2.6GPa以上の表面硬さを有するランプの製造方法に関する。
また、本発明においては、ポリアセタール樹脂として、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜6×106であるポリアセタールコポリマーを用いることが、特に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の構成について詳しく説明する。
ポリアセタール樹脂を成形することで得られる本発明のランプは、表面硬さが2.6GPa以上であることが必要である。表面硬さが2.6GPaに満たない場合には、ハードディスク使用時において、成形されたランプが摩耗しやすくなり、製品としての価値が低いものとなってしまう。
また、ポリアセタール樹脂として、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜1×107であるものを用いた場合には、ひけやばりがなく、短い成形サイクルで成形でき、商品価値の高いランプを効率よく得ることが可能となり、好ましい。特に、せん断応力が1×106〜6×106であるポリアセタール樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
本発明でいうポリアセタール樹脂としては、ホルムアルデヒド単量体、またはその3量体(トリオキサン)もしくは4量体(テトラオキサン)等の環状オリゴマーを原料として製造された、実質的にオキシメチレン単位からなるオキシメチレンホモポリマーを末端安定化処理して得られたポリオキシメチレンホモポリマー;ならびに上記原料と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオール、グリコールのホルマールやジグリコールのホルマール等の環状ホルマール等のコモノマーから製造された、炭素数2〜8のオキシアルキレン単位を0.1〜20重量%含有する、オキシメチレン−オキシアルキレンコポリマーを末端安定化処理して得られたポリオキシメチレンコポリマーを挙げることができる。
【0013】
また、本発明におけるポリアセタール樹脂は、分岐した構造の分子鎖よりなるオキシメチレン−オキシアルキレンコポリマーでもよいし、またポリオキシメチレン(POM)ブロックを50重量%以上と、該POMとは異なるポリマーブロック50重量%以下とからなるオキシメチレン系ブロックコポリマーであってもよい。なお、ポリオキシメチレンコポリマーとしては、コモノマーに1,3−ジオキソランを使用して製造されたオキシメチレン−オキシアルキレンからなる、ポリオキシメチレンコポリマーが好ましい。
本発明のランプ用途においては、ランプがハードディスク内で使用される部品であるという点から、寸法安定性が良好なものが求められる。また、摺動部品であるランプには低磨耗性が要求される。この低摩耗性と寸法安定性の観点からコモノマー量の少ないコポリマーが好ましい。
【0014】
本発明で使用可能なポリアセタール樹脂の製造方法には特に限定はなく、例えば米国特許第2998409号公報などに記載される、従来公知の方法によって製造することができる。具体的には、コポリマーの場合には、トリオキサン及びコモノマーである環状エーテルを共重合し、得られたポリマーを2軸押し出し機等によって処理し、末端安定化することで得ることができる。
重合は通常塊状重合で行われ、バッチ式、連続式の何れの方法によっても重合可能である。バッチ式重合装置としては、一般に攪拌機付きの反応槽が使用できる。また、連続式としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出し混練機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型混合機が使用できる。重合条件は、常圧下で60℃〜200℃の温度範囲で行われる。
【0015】
重合触媒は、一般に三弗化硼素、三弗化硼素水和物及び酸素原子または硫黄原子を含む有機化合物と三弗化硼素との配位錯化合物が用いられ、ガス状または適当な有機溶剤の溶液として使用される。得られたポリマーは活性な重合触媒を含有しているため、重合触媒の失活を行うことが望ましい。
重合触媒の失活方法は、塩基性物質を含む水溶液中または有機溶媒中で行われる。その他の失活方法としては、塩基性物質を末端安定化前のポリアセタール樹脂に添加し、押し出し機を用いて溶融状態で失活する方法も使用可能である。失活に使用される塩基性物質としては、ヒンダードアミン、アンモニア、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等の窒素化合物などが挙げられる。
【0016】
重合触媒失活後のポリマーの末端安定化処理は、例えば、(1)溶融状態のポリマーに塩基性物質を注入し、ついで混練する工程、及び(2)注入された上記塩基性物質の蒸気及び遊離のホルムアルデヒドを開放する工程、という少なくとも2段階の工程からなる末端安定化のための操作を連続的に実施できる2軸スクリュー押し出し機等によって、溶融したポリアセタール樹脂から揮発成分を除去することで行うことができる。上記の塩基性物質としては、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の窒素化合物が挙げられる。また、塩基性物質と共に水が共存してもよい。
【0017】
末端安定化処理においては、重合終了後の不安定末端を熱処理することが重要である。この操作には触媒として特定の第4級アンモニウム化合物を用いるのが好適である。本発明に用いる第4級アンモニウム化合物としては、下記一般式(1)で表わされるものが好ましい。
[R1R2R3R4N+]nX−n (1)
(式中、R1、R2、R3、R4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;または炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、またはアミド基である。また上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、または炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
この内、一般式(1)におけるR1、R2、R3、およびR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらに、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であることが特に好ましい。
【0018】
第4級アンモニウム化合物として、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1、6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクタデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウムなどの、水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩などが挙げられる。
【0019】
中でも、第4級アンモニウム化合物が、水酸化物(OH−)、硫酸(HSO4−、SO42−)、炭酸(HCO3−、CO32−)、ホウ酸(B(OH)4−)、カルボン酸の塩であることが好ましい。また、カルボン酸の中でも、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。
これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、従来から公知の不安定末端部の分解剤であるアンモニアやトリエチルアミンなどのアミン類などを併用しても良い。
第4級アンモニウム化合物の添加量は、ポリオキシメチレンコポリマーおよび第4アンモニウム化合物の合計重量に対して、下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、好ましくは0.05〜50重量ppmである。
P×14/Q (2)
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリオキシメチレンコポリマーおよび第4アンモニウム化合物の合計重量に対する量(重量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。)
【0020】
第4級アンモニウム化合物の添加量が0.05重量ppm未満であると不安定末端部の分解速度が低下し、50重量ppmを超えると不安定末端部の分解後のポリオキシメチレンコポリマーの色調が悪化する。好ましい熱処理は、該コポリマーの融点以上260℃以下の樹脂温度で押し出し機、ニーダーなどを用いて行う。260℃を超えると着色の問題、およびポリマー主鎖の分解(低分子量化)の問題が生ずる恐れがある。分解で発生したホルムアルデヒドは、減圧下で除去される。
第4級アンモニウム化合物の添加方法は、特に制約はなく、重合触媒を失活させる工程にて水溶液として加える方法、コポリマーパウダーに吹きかける方法などがある。いずれの添加方法を用いても、コポリマーを熱処理する工程で添加されていれば良く、押し出し機の中に注入したり、押し出し機などを用いてフィラーやピグメントの配合を行う場合であれば、樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端の分解を実施してもよい。不安定末端の分解は、重合で得られたポリオキシメチレンコポリマー中の重合触媒を失活させた後に行なうことも可能であるし、また重合触媒を失活させる前に行なうことも可能である。
重合触媒の失活は、アミン類などの塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒の失活を行なわずに、オキシメチレンコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下で加熱し、重合触媒を揮発低減した後に、本発明の不安定末端の分解を行なっても良い。
【0021】
本発明における「表面硬さ」とは、5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件で、第1図に示す形状のランプを成形し、得られたランプを試料として、TRIBOSCOPE(NanomechanicalTest Instruments)(HysitronIncorporated製)とSPM 300HV(セイコーインスツルメンツ社製)とを組み合わせた装置により測定された、第1図に示したランプの摺動面のほぼ中央部の表面硬さをいう。ここで、圧子としては、90°3角錐のダイヤモンド圧子を用い、校正は溶融石英020822を標準物質として行う。また、測定条件は最大設定荷重100μN、押し込み・引き抜き時間3秒にて実施し、解析条件としてUpper/Lower:79/20、AreaFunction No.8を選択する。尚、詳細は文献:Handbook ofMicro/Nanotribology.(Mechanics and Materials Science)2nd ed.(1998)、著編者Bhushan,B.(eds.)、出版社CRCPress LLCの記載に従えばよい。
【0022】
上述の通り、ランプ用途においては、ランプ樹脂部の磨耗が小さいことが要求される。磁気記録媒体上に落ちた摩耗紛は、ヘッドをクラッシュさせたり、ヘッド表面に付着し記録再生の悪影響、ひいては動作不能に陥る可能性がある。そこで、本発明では、この摩耗紛を少なくするために摺動性に優れるポリアセタール樹脂を用いているが、さらに摩耗紛の発生は、ポリアセタール樹脂製ランプの表面硬さに依存することを見出した。すなわち、ハードディスク内のランプにとって、摩耗紛を少なくするためには、表面硬さが2.6GPa以上であることが必要である。さらに、表面硬さが2.7GPa以上であることが摩耗量を少なくする意味で好ましく、表面硬さが2.8GPa以上であることが最も好ましい。なお、表面硬さの上限に関しては特に制限はないが、ランプの成形サイクルが長くならないように、例えば、表面硬さの上限を6.0GPaとすることが好ましく、4.0GPaとすることがより好ましい。
【0023】
ランプの表面硬さを上げるためには、いくつか方法がある。金型温度を上げて成形する方法、ポリアセタール樹脂に核剤を入れて成形する方法、成形したランプをアニーリングする方法等が挙げられる。
まず、ランプの表面硬さを上げるための成形時の金型温度については、75〜135℃とすることが好ましい。さらに好ましい温度範囲は95〜135℃であり、最も好ましい温度範囲は110〜135℃である。金型温度が75℃以上であれば、耐久試験後の低磨耗性に必要な一定の表面硬さを有するランプが得られる。また、この金型温度が135℃以下であれば、成形サイクルを極端に長くすることなしに生産性よく成形することが可能である。金型温度が120℃程度までであれば、通常の水温調金型が使用できる。金型温度が120℃以上の場合は、ヒーター付金型、オイル式金型温調機等の装置を使ったり、金型に保温材付けることが必要となる。
金型温度は、ポリアセタールコポリマー(融点170±3℃)については75℃以上、ポリアセタールコポリマー(融点165±3℃)については95℃以上、ポリアセタールホモポリマー(融点175±3℃)については75℃以上とすることが好ましい。より表面硬さを上げるためには、金型温度を、ポリアセタールコポリマー(融点170±3℃)については80℃以上、ポリアセタールコポリマー(融点165±3℃)については110℃以上、ポリアセタールホモポリマー(融点175±3℃)については80℃以上とすることが更に好ましい。
【0024】
ポリアセタール樹脂に核剤を入れて成形する方法としては、あらかじめポリアセタール樹脂に窒化硼素、タルク、マイカ、アルミナ、ホウ酸化合物などを溶融混練して均一分散させておき、それを射出成形する方法が挙げられる。これらの結晶核剤は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜0.1重量部配合することが好ましい。
成形したランプをアニーリングする方法としては、ランプ成形品を120〜150℃の温度雰囲気下で、約30〜180分間、ポリアセタール樹脂のアニーリングを行い、ポリアセタール樹脂の結晶化を進める方法がある。
本発明に用いるポリアセタール樹脂は、後述する(実施例)方法で測定した結晶化度が50%以上であることが好ましい。この結晶化度は68%以上であることがさらに好ましい。
ポリアセタール樹脂の結晶化度が50%以上であれば、成形されたランプをハードディスクに用いた際においても、ランプの摩耗量が少なく、製品として価値があるものが得られる傾向にある。つまり、本発明でいう表面硬さは、ある程度、ポリアセタール樹脂の結晶化度と相関がある。結晶化度が高くなれば、それに応じて表面近傍の結晶化度も高くなり、表面硬さも高くなる。したがって、ポリアセタール樹脂の結晶化度は、本発明のランプ性能に大きな影響を与えるファクターの1つである。しかし、厳密にいうと、本発明においては、さらなる研究の結果、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗量を少なくするための真のパラメーターとして、ポリアセタール樹脂の結晶化度よりもランプの表面硬さを用いる方がより有効であることを見出した。
【0025】
本発明でいうせん断応力は、以下の方法に従って測定される。
温度を210℃に設定し、ポリアセタール樹脂をキャピログラフ(東洋精機製)を用いてシェアレートを100〜50000(1/s)の範囲で変化させ、せん断応力のシェアレート依存性を測定する。ポリアセタール樹脂サンプルは、射出成形用のペレット又はペレット大の大きさにカッティングしたものを用いる。210℃に加熱したバレルの底に装着するオリフィスは、径0.5mm、長さ5.05mmの穴のオリフィスを選択する。
薄肉形状を有するランプにおいては、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜1×107であるポリアセタール樹脂を用いて成形することが、成形品のひけ、充填度合い、表面外観の点で好ましい。さらに、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜6×106であるポリアセタール樹脂を用いることがより好ましい。この範囲をはずれるポリアセタール樹脂を用いて成形するには、特別に金型温度を上げる必要があったり、ランプに薄肉形状を設けられないなどの形状的制約が生じたりする。
【0026】
本発明においては、所望に応じてポリアセタール樹脂に通常用いられる公知の顔料を、本願の目的を妨げない範囲で用いることができる。例えば、硫化亜鉛、塩素性炭素鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性珪酸鉛、金属硫化物からなる無機顔料、又はアゾ系、アゾメチン系、メチン系、インダンスロン系、アントラキノン系、ピランスロン系、フラバンスロン系、ベンゼンスロン系、フタロシアニン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、イソインドリノン系、キナクリドン系、ピルールピロール系、キノフタロン系の有機顔料等が挙げられる。
本発明においては、これらの顔料の1種又は2種以上を併用して用いることができるが、必要とする色調を得るため通常は2種以上の顔料を併用する。
顔料のトータル添加量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.005〜5.0重量部である。
【0027】
本発明においては、所望に応じてポリアセタール樹脂に通常用いられる公知の添加剤を、本願の目的を妨げない範囲で用いることができる。例えば、酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤、光安定剤、離型剤、充填剤等が挙げられる。これらの添加剤各々の使用量は、添加する種類によっても異なるが、概略でポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部である。
【0028】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の1種又は2種以上を用いることができる。具体的には、例えばn−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3′−メチル−5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N′−ビス−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N′−テトラメチレン−ビス−3−(3′−メチル−5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N′−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N′−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N′−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等がある。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びテトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。
【0029】
ホルムアルデヒドやギ酸等の捕捉剤の例としては、(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、(ロ)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、およびカルボン酸塩等が挙げられる。(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げることができる。また他に、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。その他にアミノ置換トリアジン化合物と、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物と、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物を挙げることができる。
【0030】
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、例えば、グアナミン(2、4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2、4、6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N′−ジフェニルメラミン、N,N′−ジアリルメラミン、N,N′,N″−トリフェニルメラミン、ベンゾグアナミン(2、4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2、4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン、2−オキシ−4、6−ジアミノ−sym−トリアジン、N,N′,N″−テトラシアノエチルベンゾグアナミンを挙げることができる。
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N′−ジメチロールメラミン、N,N′,N″−トリメチロールメラミンを挙げることができる。
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物を挙げることができる。
【0031】
これらのアミノ置換トリアジン類化合物、アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は、1種で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。(ロ)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、およびカルボン酸塩としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。具体的にはカルシウム塩が好ましく、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、および脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)であり、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が好ましい。これらのホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。
【0032】
光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の1種以上を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′,5′−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、2−エトキシ−2′−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2′−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3′−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0033】
また、ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネイト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β′,β′−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、前述のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤と組み合わせてもよい。
離型剤の例としては、ポリアルキレングリコール、アミド基を有する脂肪族化合物から選ばれる1種以上を挙げることができる。
ポリアルキレングリコールとしては、下記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールを用いることができる。
【0034】
【化1】
(式中、R5は水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換アルキル基、置換アリル基より選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、Xは2〜6、Yは1000〜20000を表す。)
【0035】
このポリアルキレングリコールは、アルキレンオキシドの開環重合によって得ることができる。アルキレンオキシドの具体的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3、3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、オキセパンを挙げることができる。これらのポリアルキレングリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
アミド基を有する脂肪族化合物としては、下記一般式(4)で表される脂肪族化合物である。
【0036】
【化2】
(式中、R6及びR8は、炭素数9〜35のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なってもよい。R7は、炭素数1〜6のアルキレン基を示す。)
【0037】
具体的な例としては、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等、及びエチレン(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)アミド、エチレン(モノステアリン酸・モノヘプタデシル酸)アミド等を挙げることができる。これらのアミド基を有する脂肪族化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0038】
充填剤としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ウォラストナイト、炭素繊維、タルク、マイカ、チタンウイスカー等の各種補強剤、及び窒化硼素等に代表される核剤が挙げられる。
ポリアセタール樹脂に上記の添加剤を配合する方法については、特に制限はない。一般的には、押し出し機を用い、ポリアセタール樹脂とここで規定された任意成分である添加剤とを溶融・混練することで、本発明のポリアセタール樹脂を製造することができる。この際、添加剤単独、若しくは添加剤とポリアセタール樹脂を、溶融・混練する前に予め混合することが好ましく、また、その予め混合する方法としては公知の手法を適宣選択すれば良く、特に制限はない。使用する押し出し機は、1軸であっても2軸であっても構わない。また、ポリアセタール樹脂の重合時に添加剤を加えても構わない。押し出し機の温度は、通常170℃〜240℃の範囲で適宜選択すれば良く、特に制限するものではない。
本発明のランプを成形する方法については特に制限はなく、押し出し成形、射出成形、圧縮成形、真空成形、吹き出し成形、発泡成形、ガスインジェクション、インサート成形、アウトサート成形等の公知の成形方法のいずれかによって、成形することができる。その中でも生産効率、寸法変化量等の観点から射出成形、圧縮成形が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定される訳ではない。
[実施例1]
熱媒を通すことができるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整し、トリオキサン(12kg/Hr)、コモノマーとしてアセトアルデヒド含有量100ppmの1,3−ジオキソラン(148g/Hr;トリオキサン1モルに対して0.015モル)、分子量調節剤としてメチラール(23.3g/Hr;トリオキサン1モルに対して2.3×10−3モル)を連続的に添加した。さらに、重合触媒として、三フッ化ホウ素がトリオキサン1モルに対して1.5×10−5モルになるように、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラート1重量%のシクロヘキサン溶液(39.6g/Hr)を連続的に添加し重合を行った。
混合機から排出されたポリオキシメチレンコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を行った。失活されたポリオキシメチレンコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ろ過後のポリオキシメチレンコポリマ100重量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1重量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は窒素の量に換算して20ppmとした。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。この乾燥後のポリオキシメチレンコポリマー100重量部に対して、酸化防止剤として、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕を0.3重量部添加し、ベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。
押出機中の溶融しているポリオキシメチレンコポリマー100重量部に対して水0.5重量部を添加し、押出機の設定温度200℃、押出機における滞留時間5分で不安定末端部の分解を行った。不安定末端部の分解されたオキシメチレン共重合体は、ベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出されペレタイズされた。このペレット100重量部にさらに、ジステアリン酸カルシウムを0.1重量部、ジパルミチン酸カルシウムを0.05重量部、ナイロン66を0.05重量部、エチレングリコールジステアレートを0.025重量部、エチレングリコールジパルミテートを0.005重量部混合し、ベント付き単軸押出機で溶融混錬することにより、最終のポリオキシメチレンコポリマーペレットを得た。
得られたポリオキシメチレンコポリマーを用い、以下の測定方法に従って、せん断応力、表面硬さ、結晶化度、成形性(ひけ、ばり、成形サイクル)、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
<せん断応力>
温度を210℃に設定し、ポリアセタール樹脂をキャピログラフ(東洋精機製)を用いてシェアレート100〜50000(1/s)と変化させ、せん断応力のシェアレート依存性を測定した。210℃に加熱したバレルの底に装着するオリフィスは、径0.5mm、長さ5.05mmの穴のオリフィスを選択した。
<表面硬さ>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃、金型温度:80℃に設定し、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件で、第1図に示す形状のランプを成形し、得られたランプを試料として、TRIBOSCOPE(NanomechanicalTest Instruments)(HysitronIncorporated製)とSPM300HV(セイコーインスツルメンツ社製)を組み合わせた装置を用いて、第1図に示したランプの摺動面のほぼ中央部の表面硬さを測定した。圧子は90°3角錐のダイヤモンド圧子を用い、校正は溶融石英020822を標準物質として行った。また、測定条件は最大設定荷重100μN、押し込み・引き抜き時間3秒にて実施し、解析条件としてUpper/Lower:79/20、AreaFunction No.8を選択した。尚、詳細は文献:Handbook ofMicro/Nanotribology.(Mechanics and Materials Science)2nd ed.(1998)、著編者Bhushan,B.(eds.)、出版社CRCPress LLCに従った。
<結晶化度>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃、金型温度:80℃に設定し、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件で、得られたポリアセタール樹脂を用い60×60×3(mm)の平板を成形した。得られた平板成形片を試料として、X線回折装置(リガク製)を用いて管電圧50KV、管電流120mAでゴニオメーターで回折角2θ10〜30°までを反射法でスキャンした。使用スリットは1/2°を選択した。
<成形性>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃に設定し、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件で、第1図に示す形状のランプを成形し、得られた成形品のひけ、ばりを目視確認した。判定は以下の基準に従い判定した。
ひけ、ばりが認められない :○
ひけ、ばりがわずかに認められる :△
ひけ、ばりが認められる :×
<成形サイクル>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃に設定し、第1図に示す形状のランプを成形する際、ゲートシール時間を確認し、さらに十分に冷却され突き出しピンで突き出し可能な時間を測定した。ここでいうゲートシール時間とは、まさに射出の際にゲートがシールされる時間で、これ以上の時間保圧をかけても樹脂がキャビティに注入されない。ゲートシール時間を確認するには、短い時間から徐々に保圧時間を長くし、その際にランプ成形品の重量が増えていくのを確認し、その重量増加が止まり重量が一定になる時間をゲートシール時間とする。さらに十分に冷却され突き出しピンで突き出し可能な時間まで冷却時間を追加した。このゲートシール時間、冷却時間と金型を開閉する時間を合わせてここでは成形サイクルとする。
<寸法変化量>
SG−50(住友重機械工業製)射出成形機を使用し、シリンダー温度:195℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10秒/15秒に設定し、φ60平歯車(m=1、b=5、z=60)/金型寸法 φ63.24mmを成形した。成形直後から恒温恒湿室(23℃・50%Rh)に保管し、成形24時間後に寸法測定した値を基準[Zero]とし、14日後の歯先円直径(約φ62)の寸法変化量をマイクロ・ノギスにて測定した。
<耐久試験後の摩耗量>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃、射出時間:20秒、冷却時間:15秒の条件で、厚さ2mmの平板を成形した。得られた成形品を往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製AFT−15MS型)を用いて荷重100g、線速度100mm/sec、往復距離20mm、および環境温度23℃の条件で50,000回往復し、耐久試験後の摩耗量を測定した(第2図)。相手材料としては、タブに用いられる材料に相当するSUS304試験片(直径5mmの球)を用いた。尚、実際のランプにかかる応力は約3〜5g程度で、50万回程度の往復回数であるが、ここでは評価時間の短縮、効率化のためより高い荷重を用い少ない往復回数で実験を行った。
【0041】
[実施例2〜4]
実施例1と同様のポリオキシメチレンコポリマーペレットを用い、金型温度を100℃、120℃、130℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例5]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.015モル及び1.0×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、結晶化度、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例6]
ポリオキシメチレンコポリマーの代わりにポリオキシメチレンホモポリマー(旭化成(株)製テナック7010)を用いた以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、結晶化度、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例7]
ポリオキシメチレンコポリマーの代わりにポリオキシメチレンホモポリマー(旭化成(株)製テナック4010)を用い、金型温度を120℃とした以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例8]
ポリオキシメチレンコポリマーの代わりにポリオキシメチレンホモポリマー(旭化成(株)製テナック4010)を用い、金型温度を130℃とした以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例9〜10]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.038モル及び2.3×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を120℃、150℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例11]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.015モル及び0.8×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を100℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例12]
ポリオキシメチレンコポリマーの代わりにポリオキシメチレンホモポリマー(旭化成(株)製テナック3010)を用い、金型温度を120℃とした以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例13]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.038モル及び0.8×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を120℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
実施例1と同様のポリオキシメチレンコポリマーペレットを用い、金型温度を40℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.12モル及び2.3×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を120℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例3]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.12モル及び1.0×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を120℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例4]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.038モル及び1.0×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造し、また、実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、結晶化度、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
以上の実施例および比較例から、表面硬さが2.6GPa以上のポリアセタール樹脂製ランプは、成形性(ひけ、ばり、成形サイクル)に優れ、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が非常に小さい(耐久試験後における平板の摩耗量が少ない)ことが明らかである。
【0046】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のポリアセタール樹脂製ランプは、成形性(ひけ、ばり、成形サイクル)に優れ、且つハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が非常に小さい。この為、本発明のランプは、ハードディスクドライブ内のヘッドを収納、ガイドするランプとして、全てのハードディスク及びハードディスク近似製品に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のランプ形状の一態様を示す概略図である。
【図2】本発明の耐久試験に用いられる装置の概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂を用いて成形される、ハードディスクドライブ内のヘッドを収納、ガイドするためのランプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク内部のヘッドを待機させる位置としては、磁気ディスク内周の上部が主流であった(CSS方式)が、この方式では、以下に述べるような問題がある。
すなわち、近年、ハードディスクの磁気記録密度を向上させるためヘッド浮上量をさらに小さくし、ヘッドとディスク間の間隙を小さくすることが求められており、そのためには、ヘッドスライダとディスクの表面平滑度を向上させる必要がある。しかしながら、このような平滑面同士の接触が起こると吸着現象が生じ、結果的に、ヘッドが浮上しなくなるという問題があった。特に、CSS方式ではこの問題が発生する確率が高かった。また、CSS方式では、ヘッドを待機させるディスク領域においてその表面を事前に荒らしておくため、かかるディスク領城には記録ができず、記録容量が必然的に低下してしまうという問題もあった。更に、CSS方式ではハードディスク装置に衝撃がかかった時にヘッドとディスクの衝突が起こる可能性が高く、ディスクの損傷やデータの破損を招きやすかった。
【0003】
このようなCSS方式の問題点を改良し信頼性を向上させるため、最近では、CSS方式から、ディスクの外側に、ハードディスクドライブ内のヘッドを収納、ガイドするためにランプという部品を用意するロード・アンロード方式へ移行する状況にある。特に、ノートパソコン、カーナビやモバイル用途に使用されるハードディスクにおいては、ほとんどロード・アンロード方式が採用されている。
ところで、ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、且つ良好な加工性を有していることから、代表的エンジニアリングプラスチックスとして、電気機器や電気機器の機構部品、自動車部品を中心に広く用いられている。また、近年では、その利用分野が拡大するに伴い、さまざまな機構部品にも広範囲に亘って用いられている。その例としてハードディスク内部のランプが挙げられる。
【0004】
例えば、特許文献1では、ランプ材料として4−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のコポリエステル(HAHN)、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトンが挙げられている。また、特許文献2では、ランプユニット材料としてポリイミド、ポリアセタール、PEEK、HAHN、液晶性重合体およびPTFE充填プラスチックが挙げられている。また、特許文献3では、ランプ材質としてポリアセタール等の合成樹脂が挙げられている。また、特許文献4では、ランプの支持部を熱可塑性ポリイミドで成形し、摺動部をポリテトラフルオロエチレン含有液晶ポリマーで成形したランプが挙げられている。また、特許文献5では、ランプの接触部(摺動面)に乾燥潤滑皮膜(四フッ化エチレン樹脂、イミド系樹脂等)を形成することが挙げられている。また、特許文献6〜8では、ランプのガイド部(摺動部)に摩擦係数の少ない高分子材料、摩擦摩耗特性に優れた樹脂材料を用いることが挙げられている。
【0005】
従来技術において使用されている4−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のコポリエステル(HAHN)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶性重合体およびPTFE充填プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン含有液晶ポリマーを使用する方法では、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が非常に大きく、また相手材となる金属製タブを削ってしまうという不具合があった。これらの摩耗紛はハードディスクをクラッシュさせたり、記録再生を妨げる原因になっていた。また、ランプの接触部(摺動面)に乾燥潤滑皮膜(四フッ化エチレン樹脂、イミド系樹脂等)を形成する方法等も、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗を十分に改善するものではなかった。
【0006】
一方、特許文献9では、ランプ材料としてASTMD638による引張り伸びが30%以上である材料が挙げられている。この先行技術にはポリアセタール製のランプを開示しているが、本発明で規定する表面硬さ、及び特定のせん断応力を有するポリアセタールコポリマーについては一切記載されていない。また、このASTMD638による引張り伸びが30%以上である材料を使用しても、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が小さく(往復運動による耐久試験後の摩耗量が少ない)、寸法変化が小さく、成形性に優れる(ひけ・ばりがなく、成形サイクルが短い)という要求性能の全てを満足するものは得られない。また、成形条件等によって大きく摺動性が損なわれ、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗量が多くなる場合がある。
【0007】
また、特許文献10においては、ランプ材料として熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂に、無機フィラーを4重量%以下添加した材料が挙げられている。この先行技術にもポリアセタール製のランプが開示されているが、本発明で規定する表面硬さ、及び特定のせん断応力を有するポリアセタールコポリマーについては一切記載されていない。また、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂に、無機フィラーを4重量%以下添加した材料を使用しても、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が小さく(往復運動による耐久試験後の摩耗量が少ない)、寸法変化が小さく、成形性に優れる(ひけ・ばりがなく、成形サイクルが短い)という要求性能の全てを満足するものは得られない。また、成形条件等によって大きく摺動性が損なわれ、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗量が多くなる場合がある。
【0008】
【特許文献1】特開平11−339411号公報
【特許文献2】特開2001−23325号公報
【特許文献3】特開平10−125014号公報
【特許文献4】特開平10−312657号公報
【特許文献5】特開平10−302421号公報
【特許文献6】特開2002−124051号公報
【特許文献7】特開2001−229634号公報
【特許文献8】特開2001−195853号公報
【特許文献9】特開2001−297548号公報
【特許文献10】特開2002−197820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術では得られなかった、成形性(ひけ、ばり、成形サイクル)に優れ、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が非常に小さい、ポリアセタール樹脂製のランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、ポリアセタール樹脂を成形して得られる、2.6GPa以上の表面硬さを有するランプの製造方法に関する。
また、本発明においては、ポリアセタール樹脂として、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜6×106であるポリアセタールコポリマーを用いることが、特に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の構成について詳しく説明する。
ポリアセタール樹脂を成形することで得られる本発明のランプは、表面硬さが2.6GPa以上であることが必要である。表面硬さが2.6GPaに満たない場合には、ハードディスク使用時において、成形されたランプが摩耗しやすくなり、製品としての価値が低いものとなってしまう。
また、ポリアセタール樹脂として、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜1×107であるものを用いた場合には、ひけやばりがなく、短い成形サイクルで成形でき、商品価値の高いランプを効率よく得ることが可能となり、好ましい。特に、せん断応力が1×106〜6×106であるポリアセタール樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
本発明でいうポリアセタール樹脂としては、ホルムアルデヒド単量体、またはその3量体(トリオキサン)もしくは4量体(テトラオキサン)等の環状オリゴマーを原料として製造された、実質的にオキシメチレン単位からなるオキシメチレンホモポリマーを末端安定化処理して得られたポリオキシメチレンホモポリマー;ならびに上記原料と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオール、グリコールのホルマールやジグリコールのホルマール等の環状ホルマール等のコモノマーから製造された、炭素数2〜8のオキシアルキレン単位を0.1〜20重量%含有する、オキシメチレン−オキシアルキレンコポリマーを末端安定化処理して得られたポリオキシメチレンコポリマーを挙げることができる。
【0013】
また、本発明におけるポリアセタール樹脂は、分岐した構造の分子鎖よりなるオキシメチレン−オキシアルキレンコポリマーでもよいし、またポリオキシメチレン(POM)ブロックを50重量%以上と、該POMとは異なるポリマーブロック50重量%以下とからなるオキシメチレン系ブロックコポリマーであってもよい。なお、ポリオキシメチレンコポリマーとしては、コモノマーに1,3−ジオキソランを使用して製造されたオキシメチレン−オキシアルキレンからなる、ポリオキシメチレンコポリマーが好ましい。
本発明のランプ用途においては、ランプがハードディスク内で使用される部品であるという点から、寸法安定性が良好なものが求められる。また、摺動部品であるランプには低磨耗性が要求される。この低摩耗性と寸法安定性の観点からコモノマー量の少ないコポリマーが好ましい。
【0014】
本発明で使用可能なポリアセタール樹脂の製造方法には特に限定はなく、例えば米国特許第2998409号公報などに記載される、従来公知の方法によって製造することができる。具体的には、コポリマーの場合には、トリオキサン及びコモノマーである環状エーテルを共重合し、得られたポリマーを2軸押し出し機等によって処理し、末端安定化することで得ることができる。
重合は通常塊状重合で行われ、バッチ式、連続式の何れの方法によっても重合可能である。バッチ式重合装置としては、一般に攪拌機付きの反応槽が使用できる。また、連続式としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出し混練機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型混合機が使用できる。重合条件は、常圧下で60℃〜200℃の温度範囲で行われる。
【0015】
重合触媒は、一般に三弗化硼素、三弗化硼素水和物及び酸素原子または硫黄原子を含む有機化合物と三弗化硼素との配位錯化合物が用いられ、ガス状または適当な有機溶剤の溶液として使用される。得られたポリマーは活性な重合触媒を含有しているため、重合触媒の失活を行うことが望ましい。
重合触媒の失活方法は、塩基性物質を含む水溶液中または有機溶媒中で行われる。その他の失活方法としては、塩基性物質を末端安定化前のポリアセタール樹脂に添加し、押し出し機を用いて溶融状態で失活する方法も使用可能である。失活に使用される塩基性物質としては、ヒンダードアミン、アンモニア、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等の窒素化合物などが挙げられる。
【0016】
重合触媒失活後のポリマーの末端安定化処理は、例えば、(1)溶融状態のポリマーに塩基性物質を注入し、ついで混練する工程、及び(2)注入された上記塩基性物質の蒸気及び遊離のホルムアルデヒドを開放する工程、という少なくとも2段階の工程からなる末端安定化のための操作を連続的に実施できる2軸スクリュー押し出し機等によって、溶融したポリアセタール樹脂から揮発成分を除去することで行うことができる。上記の塩基性物質としては、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の窒素化合物が挙げられる。また、塩基性物質と共に水が共存してもよい。
【0017】
末端安定化処理においては、重合終了後の不安定末端を熱処理することが重要である。この操作には触媒として特定の第4級アンモニウム化合物を用いるのが好適である。本発明に用いる第4級アンモニウム化合物としては、下記一般式(1)で表わされるものが好ましい。
[R1R2R3R4N+]nX−n (1)
(式中、R1、R2、R3、R4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;または炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、またはアミド基である。また上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、または炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
この内、一般式(1)におけるR1、R2、R3、およびR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらに、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であることが特に好ましい。
【0018】
第4級アンモニウム化合物として、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1、6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクタデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウムなどの、水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩などが挙げられる。
【0019】
中でも、第4級アンモニウム化合物が、水酸化物(OH−)、硫酸(HSO4−、SO42−)、炭酸(HCO3−、CO32−)、ホウ酸(B(OH)4−)、カルボン酸の塩であることが好ましい。また、カルボン酸の中でも、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。
これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、従来から公知の不安定末端部の分解剤であるアンモニアやトリエチルアミンなどのアミン類などを併用しても良い。
第4級アンモニウム化合物の添加量は、ポリオキシメチレンコポリマーおよび第4アンモニウム化合物の合計重量に対して、下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、好ましくは0.05〜50重量ppmである。
P×14/Q (2)
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリオキシメチレンコポリマーおよび第4アンモニウム化合物の合計重量に対する量(重量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。)
【0020】
第4級アンモニウム化合物の添加量が0.05重量ppm未満であると不安定末端部の分解速度が低下し、50重量ppmを超えると不安定末端部の分解後のポリオキシメチレンコポリマーの色調が悪化する。好ましい熱処理は、該コポリマーの融点以上260℃以下の樹脂温度で押し出し機、ニーダーなどを用いて行う。260℃を超えると着色の問題、およびポリマー主鎖の分解(低分子量化)の問題が生ずる恐れがある。分解で発生したホルムアルデヒドは、減圧下で除去される。
第4級アンモニウム化合物の添加方法は、特に制約はなく、重合触媒を失活させる工程にて水溶液として加える方法、コポリマーパウダーに吹きかける方法などがある。いずれの添加方法を用いても、コポリマーを熱処理する工程で添加されていれば良く、押し出し機の中に注入したり、押し出し機などを用いてフィラーやピグメントの配合を行う場合であれば、樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端の分解を実施してもよい。不安定末端の分解は、重合で得られたポリオキシメチレンコポリマー中の重合触媒を失活させた後に行なうことも可能であるし、また重合触媒を失活させる前に行なうことも可能である。
重合触媒の失活は、アミン類などの塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒の失活を行なわずに、オキシメチレンコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下で加熱し、重合触媒を揮発低減した後に、本発明の不安定末端の分解を行なっても良い。
【0021】
本発明における「表面硬さ」とは、5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件で、第1図に示す形状のランプを成形し、得られたランプを試料として、TRIBOSCOPE(NanomechanicalTest Instruments)(HysitronIncorporated製)とSPM 300HV(セイコーインスツルメンツ社製)とを組み合わせた装置により測定された、第1図に示したランプの摺動面のほぼ中央部の表面硬さをいう。ここで、圧子としては、90°3角錐のダイヤモンド圧子を用い、校正は溶融石英020822を標準物質として行う。また、測定条件は最大設定荷重100μN、押し込み・引き抜き時間3秒にて実施し、解析条件としてUpper/Lower:79/20、AreaFunction No.8を選択する。尚、詳細は文献:Handbook ofMicro/Nanotribology.(Mechanics and Materials Science)2nd ed.(1998)、著編者Bhushan,B.(eds.)、出版社CRCPress LLCの記載に従えばよい。
【0022】
上述の通り、ランプ用途においては、ランプ樹脂部の磨耗が小さいことが要求される。磁気記録媒体上に落ちた摩耗紛は、ヘッドをクラッシュさせたり、ヘッド表面に付着し記録再生の悪影響、ひいては動作不能に陥る可能性がある。そこで、本発明では、この摩耗紛を少なくするために摺動性に優れるポリアセタール樹脂を用いているが、さらに摩耗紛の発生は、ポリアセタール樹脂製ランプの表面硬さに依存することを見出した。すなわち、ハードディスク内のランプにとって、摩耗紛を少なくするためには、表面硬さが2.6GPa以上であることが必要である。さらに、表面硬さが2.7GPa以上であることが摩耗量を少なくする意味で好ましく、表面硬さが2.8GPa以上であることが最も好ましい。なお、表面硬さの上限に関しては特に制限はないが、ランプの成形サイクルが長くならないように、例えば、表面硬さの上限を6.0GPaとすることが好ましく、4.0GPaとすることがより好ましい。
【0023】
ランプの表面硬さを上げるためには、いくつか方法がある。金型温度を上げて成形する方法、ポリアセタール樹脂に核剤を入れて成形する方法、成形したランプをアニーリングする方法等が挙げられる。
まず、ランプの表面硬さを上げるための成形時の金型温度については、75〜135℃とすることが好ましい。さらに好ましい温度範囲は95〜135℃であり、最も好ましい温度範囲は110〜135℃である。金型温度が75℃以上であれば、耐久試験後の低磨耗性に必要な一定の表面硬さを有するランプが得られる。また、この金型温度が135℃以下であれば、成形サイクルを極端に長くすることなしに生産性よく成形することが可能である。金型温度が120℃程度までであれば、通常の水温調金型が使用できる。金型温度が120℃以上の場合は、ヒーター付金型、オイル式金型温調機等の装置を使ったり、金型に保温材付けることが必要となる。
金型温度は、ポリアセタールコポリマー(融点170±3℃)については75℃以上、ポリアセタールコポリマー(融点165±3℃)については95℃以上、ポリアセタールホモポリマー(融点175±3℃)については75℃以上とすることが好ましい。より表面硬さを上げるためには、金型温度を、ポリアセタールコポリマー(融点170±3℃)については80℃以上、ポリアセタールコポリマー(融点165±3℃)については110℃以上、ポリアセタールホモポリマー(融点175±3℃)については80℃以上とすることが更に好ましい。
【0024】
ポリアセタール樹脂に核剤を入れて成形する方法としては、あらかじめポリアセタール樹脂に窒化硼素、タルク、マイカ、アルミナ、ホウ酸化合物などを溶融混練して均一分散させておき、それを射出成形する方法が挙げられる。これらの結晶核剤は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜0.1重量部配合することが好ましい。
成形したランプをアニーリングする方法としては、ランプ成形品を120〜150℃の温度雰囲気下で、約30〜180分間、ポリアセタール樹脂のアニーリングを行い、ポリアセタール樹脂の結晶化を進める方法がある。
本発明に用いるポリアセタール樹脂は、後述する(実施例)方法で測定した結晶化度が50%以上であることが好ましい。この結晶化度は68%以上であることがさらに好ましい。
ポリアセタール樹脂の結晶化度が50%以上であれば、成形されたランプをハードディスクに用いた際においても、ランプの摩耗量が少なく、製品として価値があるものが得られる傾向にある。つまり、本発明でいう表面硬さは、ある程度、ポリアセタール樹脂の結晶化度と相関がある。結晶化度が高くなれば、それに応じて表面近傍の結晶化度も高くなり、表面硬さも高くなる。したがって、ポリアセタール樹脂の結晶化度は、本発明のランプ性能に大きな影響を与えるファクターの1つである。しかし、厳密にいうと、本発明においては、さらなる研究の結果、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗量を少なくするための真のパラメーターとして、ポリアセタール樹脂の結晶化度よりもランプの表面硬さを用いる方がより有効であることを見出した。
【0025】
本発明でいうせん断応力は、以下の方法に従って測定される。
温度を210℃に設定し、ポリアセタール樹脂をキャピログラフ(東洋精機製)を用いてシェアレートを100〜50000(1/s)の範囲で変化させ、せん断応力のシェアレート依存性を測定する。ポリアセタール樹脂サンプルは、射出成形用のペレット又はペレット大の大きさにカッティングしたものを用いる。210℃に加熱したバレルの底に装着するオリフィスは、径0.5mm、長さ5.05mmの穴のオリフィスを選択する。
薄肉形状を有するランプにおいては、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜1×107であるポリアセタール樹脂を用いて成形することが、成形品のひけ、充填度合い、表面外観の点で好ましい。さらに、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜6×106であるポリアセタール樹脂を用いることがより好ましい。この範囲をはずれるポリアセタール樹脂を用いて成形するには、特別に金型温度を上げる必要があったり、ランプに薄肉形状を設けられないなどの形状的制約が生じたりする。
【0026】
本発明においては、所望に応じてポリアセタール樹脂に通常用いられる公知の顔料を、本願の目的を妨げない範囲で用いることができる。例えば、硫化亜鉛、塩素性炭素鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性珪酸鉛、金属硫化物からなる無機顔料、又はアゾ系、アゾメチン系、メチン系、インダンスロン系、アントラキノン系、ピランスロン系、フラバンスロン系、ベンゼンスロン系、フタロシアニン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、イソインドリノン系、キナクリドン系、ピルールピロール系、キノフタロン系の有機顔料等が挙げられる。
本発明においては、これらの顔料の1種又は2種以上を併用して用いることができるが、必要とする色調を得るため通常は2種以上の顔料を併用する。
顔料のトータル添加量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.005〜5.0重量部である。
【0027】
本発明においては、所望に応じてポリアセタール樹脂に通常用いられる公知の添加剤を、本願の目的を妨げない範囲で用いることができる。例えば、酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤、光安定剤、離型剤、充填剤等が挙げられる。これらの添加剤各々の使用量は、添加する種類によっても異なるが、概略でポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部である。
【0028】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の1種又は2種以上を用いることができる。具体的には、例えばn−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3′−メチル−5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N′−ビス−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N′−テトラメチレン−ビス−3−(3′−メチル−5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N′−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N′−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N′−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等がある。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びテトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。
【0029】
ホルムアルデヒドやギ酸等の捕捉剤の例としては、(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、(ロ)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、およびカルボン酸塩等が挙げられる。(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げることができる。また他に、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。その他にアミノ置換トリアジン化合物と、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物と、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物を挙げることができる。
【0030】
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、例えば、グアナミン(2、4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2、4、6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N′−ジフェニルメラミン、N,N′−ジアリルメラミン、N,N′,N″−トリフェニルメラミン、ベンゾグアナミン(2、4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2、4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2、4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン、2−オキシ−4、6−ジアミノ−sym−トリアジン、N,N′,N″−テトラシアノエチルベンゾグアナミンを挙げることができる。
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N′−ジメチロールメラミン、N,N′,N″−トリメチロールメラミンを挙げることができる。
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物を挙げることができる。
【0031】
これらのアミノ置換トリアジン類化合物、アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は、1種で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。(ロ)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、およびカルボン酸塩としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。具体的にはカルシウム塩が好ましく、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、および脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)であり、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が好ましい。これらのホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。
【0032】
光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の1種以上を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′,5′−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、2−エトキシ−2′−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2′−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3′−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0033】
また、ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネイト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β′,β′−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、前述のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤と組み合わせてもよい。
離型剤の例としては、ポリアルキレングリコール、アミド基を有する脂肪族化合物から選ばれる1種以上を挙げることができる。
ポリアルキレングリコールとしては、下記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールを用いることができる。
【0034】
【化1】
(式中、R5は水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換アルキル基、置換アリル基より選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、Xは2〜6、Yは1000〜20000を表す。)
【0035】
このポリアルキレングリコールは、アルキレンオキシドの開環重合によって得ることができる。アルキレンオキシドの具体的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3、3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、オキセパンを挙げることができる。これらのポリアルキレングリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
アミド基を有する脂肪族化合物としては、下記一般式(4)で表される脂肪族化合物である。
【0036】
【化2】
(式中、R6及びR8は、炭素数9〜35のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なってもよい。R7は、炭素数1〜6のアルキレン基を示す。)
【0037】
具体的な例としては、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等、及びエチレン(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)アミド、エチレン(モノステアリン酸・モノヘプタデシル酸)アミド等を挙げることができる。これらのアミド基を有する脂肪族化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0038】
充填剤としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ウォラストナイト、炭素繊維、タルク、マイカ、チタンウイスカー等の各種補強剤、及び窒化硼素等に代表される核剤が挙げられる。
ポリアセタール樹脂に上記の添加剤を配合する方法については、特に制限はない。一般的には、押し出し機を用い、ポリアセタール樹脂とここで規定された任意成分である添加剤とを溶融・混練することで、本発明のポリアセタール樹脂を製造することができる。この際、添加剤単独、若しくは添加剤とポリアセタール樹脂を、溶融・混練する前に予め混合することが好ましく、また、その予め混合する方法としては公知の手法を適宣選択すれば良く、特に制限はない。使用する押し出し機は、1軸であっても2軸であっても構わない。また、ポリアセタール樹脂の重合時に添加剤を加えても構わない。押し出し機の温度は、通常170℃〜240℃の範囲で適宜選択すれば良く、特に制限するものではない。
本発明のランプを成形する方法については特に制限はなく、押し出し成形、射出成形、圧縮成形、真空成形、吹き出し成形、発泡成形、ガスインジェクション、インサート成形、アウトサート成形等の公知の成形方法のいずれかによって、成形することができる。その中でも生産効率、寸法変化量等の観点から射出成形、圧縮成形が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定される訳ではない。
[実施例1]
熱媒を通すことができるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整し、トリオキサン(12kg/Hr)、コモノマーとしてアセトアルデヒド含有量100ppmの1,3−ジオキソラン(148g/Hr;トリオキサン1モルに対して0.015モル)、分子量調節剤としてメチラール(23.3g/Hr;トリオキサン1モルに対して2.3×10−3モル)を連続的に添加した。さらに、重合触媒として、三フッ化ホウ素がトリオキサン1モルに対して1.5×10−5モルになるように、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラート1重量%のシクロヘキサン溶液(39.6g/Hr)を連続的に添加し重合を行った。
混合機から排出されたポリオキシメチレンコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を行った。失活されたポリオキシメチレンコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ろ過後のポリオキシメチレンコポリマ100重量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1重量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は窒素の量に換算して20ppmとした。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。この乾燥後のポリオキシメチレンコポリマー100重量部に対して、酸化防止剤として、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕を0.3重量部添加し、ベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。
押出機中の溶融しているポリオキシメチレンコポリマー100重量部に対して水0.5重量部を添加し、押出機の設定温度200℃、押出機における滞留時間5分で不安定末端部の分解を行った。不安定末端部の分解されたオキシメチレン共重合体は、ベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出されペレタイズされた。このペレット100重量部にさらに、ジステアリン酸カルシウムを0.1重量部、ジパルミチン酸カルシウムを0.05重量部、ナイロン66を0.05重量部、エチレングリコールジステアレートを0.025重量部、エチレングリコールジパルミテートを0.005重量部混合し、ベント付き単軸押出機で溶融混錬することにより、最終のポリオキシメチレンコポリマーペレットを得た。
得られたポリオキシメチレンコポリマーを用い、以下の測定方法に従って、せん断応力、表面硬さ、結晶化度、成形性(ひけ、ばり、成形サイクル)、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
<せん断応力>
温度を210℃に設定し、ポリアセタール樹脂をキャピログラフ(東洋精機製)を用いてシェアレート100〜50000(1/s)と変化させ、せん断応力のシェアレート依存性を測定した。210℃に加熱したバレルの底に装着するオリフィスは、径0.5mm、長さ5.05mmの穴のオリフィスを選択した。
<表面硬さ>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃、金型温度:80℃に設定し、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件で、第1図に示す形状のランプを成形し、得られたランプを試料として、TRIBOSCOPE(NanomechanicalTest Instruments)(HysitronIncorporated製)とSPM300HV(セイコーインスツルメンツ社製)を組み合わせた装置を用いて、第1図に示したランプの摺動面のほぼ中央部の表面硬さを測定した。圧子は90°3角錐のダイヤモンド圧子を用い、校正は溶融石英020822を標準物質として行った。また、測定条件は最大設定荷重100μN、押し込み・引き抜き時間3秒にて実施し、解析条件としてUpper/Lower:79/20、AreaFunction No.8を選択した。尚、詳細は文献:Handbook ofMicro/Nanotribology.(Mechanics and Materials Science)2nd ed.(1998)、著編者Bhushan,B.(eds.)、出版社CRCPress LLCに従った。
<結晶化度>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃、金型温度:80℃に設定し、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件で、得られたポリアセタール樹脂を用い60×60×3(mm)の平板を成形した。得られた平板成形片を試料として、X線回折装置(リガク製)を用いて管電圧50KV、管電流120mAでゴニオメーターで回折角2θ10〜30°までを反射法でスキャンした。使用スリットは1/2°を選択した。
<成形性>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃に設定し、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件で、第1図に示す形状のランプを成形し、得られた成形品のひけ、ばりを目視確認した。判定は以下の基準に従い判定した。
ひけ、ばりが認められない :○
ひけ、ばりがわずかに認められる :△
ひけ、ばりが認められる :×
<成形サイクル>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃に設定し、第1図に示す形状のランプを成形する際、ゲートシール時間を確認し、さらに十分に冷却され突き出しピンで突き出し可能な時間を測定した。ここでいうゲートシール時間とは、まさに射出の際にゲートがシールされる時間で、これ以上の時間保圧をかけても樹脂がキャビティに注入されない。ゲートシール時間を確認するには、短い時間から徐々に保圧時間を長くし、その際にランプ成形品の重量が増えていくのを確認し、その重量増加が止まり重量が一定になる時間をゲートシール時間とする。さらに十分に冷却され突き出しピンで突き出し可能な時間まで冷却時間を追加した。このゲートシール時間、冷却時間と金型を開閉する時間を合わせてここでは成形サイクルとする。
<寸法変化量>
SG−50(住友重機械工業製)射出成形機を使用し、シリンダー温度:195℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10秒/15秒に設定し、φ60平歯車(m=1、b=5、z=60)/金型寸法 φ63.24mmを成形した。成形直後から恒温恒湿室(23℃・50%Rh)に保管し、成形24時間後に寸法測定した値を基準[Zero]とし、14日後の歯先円直径(約φ62)の寸法変化量をマイクロ・ノギスにて測定した。
<耐久試験後の摩耗量>
5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃、射出時間:20秒、冷却時間:15秒の条件で、厚さ2mmの平板を成形した。得られた成形品を往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製AFT−15MS型)を用いて荷重100g、線速度100mm/sec、往復距離20mm、および環境温度23℃の条件で50,000回往復し、耐久試験後の摩耗量を測定した(第2図)。相手材料としては、タブに用いられる材料に相当するSUS304試験片(直径5mmの球)を用いた。尚、実際のランプにかかる応力は約3〜5g程度で、50万回程度の往復回数であるが、ここでは評価時間の短縮、効率化のためより高い荷重を用い少ない往復回数で実験を行った。
【0041】
[実施例2〜4]
実施例1と同様のポリオキシメチレンコポリマーペレットを用い、金型温度を100℃、120℃、130℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例5]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.015モル及び1.0×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、結晶化度、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例6]
ポリオキシメチレンコポリマーの代わりにポリオキシメチレンホモポリマー(旭化成(株)製テナック7010)を用いた以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、結晶化度、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例7]
ポリオキシメチレンコポリマーの代わりにポリオキシメチレンホモポリマー(旭化成(株)製テナック4010)を用い、金型温度を120℃とした以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例8]
ポリオキシメチレンコポリマーの代わりにポリオキシメチレンホモポリマー(旭化成(株)製テナック4010)を用い、金型温度を130℃とした以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例9〜10]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.038モル及び2.3×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を120℃、150℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例11]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.015モル及び0.8×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を100℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例12]
ポリオキシメチレンコポリマーの代わりにポリオキシメチレンホモポリマー(旭化成(株)製テナック3010)を用い、金型温度を120℃とした以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例13]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.038モル及び0.8×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を120℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
実施例1と同様のポリオキシメチレンコポリマーペレットを用い、金型温度を40℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.12モル及び2.3×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を120℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例3]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.12モル及び1.0×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造した。また、金型温度を120℃に変更した以外は実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例4]
1,3−ジオキソラン及びメチラールの量を、トリオキサン1モルに対して、それぞれ、0.038モル及び1.0×10−3モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオキシメチレンコポリマーペレットを製造し、また、実施例1と同様にして、せん断応力、表面硬さ、結晶化度、成形性、寸法変化量、耐久試験後の摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
以上の実施例および比較例から、表面硬さが2.6GPa以上のポリアセタール樹脂製ランプは、成形性(ひけ、ばり、成形サイクル)に優れ、ハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が非常に小さい(耐久試験後における平板の摩耗量が少ない)ことが明らかである。
【0046】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のポリアセタール樹脂製ランプは、成形性(ひけ、ばり、成形サイクル)に優れ、且つハードディスクの使用に伴うランプ樹脂部の摩耗が非常に小さい。この為、本発明のランプは、ハードディスクドライブ内のヘッドを収納、ガイドするランプとして、全てのハードディスク及びハードディスク近似製品に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のランプ形状の一態様を示す概略図である。
【図2】本発明の耐久試験に用いられる装置の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂を金型温度を75〜135℃として成形することを特徴とする表面硬さが2.6GPa以上であるランプの製造方法。
【請求項2】
ポリアセタール樹脂として、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜1×107であるポリアセタール樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のランプの製造方法。
【請求項1】
ポリアセタール樹脂を金型温度を75〜135℃として成形することを特徴とする表面硬さが2.6GPa以上であるランプの製造方法。
【請求項2】
ポリアセタール樹脂として、210℃、シェアレート10000(1/s)で測定したせん断応力が1×106〜1×107であるポリアセタール樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のランプの製造方法。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2006−224682(P2006−224682A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119146(P2006−119146)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【分割の表示】特願2003−551208(P2003−551208)の分割
【原出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【分割の表示】特願2003−551208(P2003−551208)の分割
【原出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
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