説明

ハードディスク装置、ディスク、およびヘッドの位置ずれ量または補正量の算出方法

【課題】ヘッドの位置ずれ量または位置ずれの補正量の算出にかかる時間をより短縮する。
【解決手段】ハードディスク装置は、ディスク21と、ヘッドと、算出部と、を備える。ディスクは、表面に周方向に間隔をあけて配置され第一のサーボデータが書かれた複数の第一の領域210と、周方向に隣接する第一の領域間にデータ書き換え可能な第二のサーボデータが書かれた第二の領域220と、を有する。ヘッドは、ディスクの表面に書かれた第一のサーボデータおよび第二のサーボデータを読む。算出部は、ヘッドによる第一のサーボデータおよび第二のサーボデータの読み結果に基づいてヘッドの位置ずれ量またはヘッドの位置ずれの補正量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ハードディスク装置、ディスク、およびヘッドの位置ずれ量または補正量の算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドの位置ずれ量またはヘッドの位置ずれの補正量を表すデータを用いてヘッドの位置決め制御を行うハードディスク装置が知られている。この種のハードディスク装置では、製造段階で、ディスクの表面に周方向に間隔をあけて配置されたサーボデータ領域にサーボデータが書かれ、そのサーボデータのヘッドによる読み結果に基づいて位置ずれ量が算出される。このとき、位置決め制御の精度をより高めるため、ディスクを複数回周回させることで、各サーボデータ領域についてサーボデータが複数回測定される。そして、複数の測定結果に基づく位置ずれ量または補正量の平均値等が、そのサーボデータ領域に対応した位置ずれ量または補正量として算出される。算出された位置ずれ量または補正量は、ハードディスクに記憶される。ハードディスク装置の使用時におけるヘッドの位置決め制御では、記憶された位置ずれ量または補正量が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−245549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、従来は、位置ずれ量または補正量の算出の際にディスクを複数回周回させる分、時間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、位置ずれ量または補正量の算出にかかる時間をより短縮することが可能なハードディスク装置、ディスク、およびヘッドの位置ずれ量または補正量の算出方法を得ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかるハードディスク装置は、ディスクと、ヘッドと、算出部と、を備える。ディスクは、表面に周方向に間隔をあけて配置され第一のサーボデータが書かれた複数の第一の領域と、周方向に隣接する前記第一の領域間にデータ書き換え可能な第二のサーボデータが書かれた第二の領域と、を有する。ヘッドは、ディスクの表面に書かれた第一のサーボデータおよび第二のサーボデータを読む。算出部は、ヘッドによる第一のサーボデータおよび第二のサーボデータの読み結果に基づいてヘッドの位置ずれ量またはヘッドの位置ずれの補正量を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態にかかるハードディスク装置の一例を示す模式的なブロック図である。
【図2】図2は、第1実施形態にかかるハードディスク装置のMPUの一例を示す模式的なブロック図である。
【図3】図3は、実施形態にかかるハードディスク装置に含まれるディスクのデータ領域の構成の一例を表す説明図である。
【図4】図4は、第1実施形態にかかる位置ずれ量算出方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施形態にかかるハードディスク装置に含まれるディスクのサーボデータおよびトラックの一例を示す模式図である。
【図6】図6は、第2実施形態にかかるハードディスク装置のMPUの一例を示す模式的なブロック図である。
【図7】図7は、第2実施形態にかかる位置ずれ量算出方法の一例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、図7のフローチャートのステップS23に含まれるサブステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に例示される非限定的な複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与され、重複する説明が省略される。
【0009】
<第1実施形態>
図1に示すように、ハードディスク装置20は、記憶部としてのディスク21や、ヘッド22、SPM(Spindle Motor、スピンドルモータ)23、VCM(Voice-Coil Motor、ボイスコイルモータ)24、サーボ制御部25、ヘッドIC(Integrated Circuit)26、リードチャネル27、暗号回路28、暗号回路制御部29、バッファメモリ31、ホストIF制御部33、フラッシュメモリ34、MPU(Micro Processing Unit)35等を、備えている。
【0010】
ディスク21は、データを磁気的に記録する記録媒体である。ヘッド22は、ディスク21にデータを書く(記録する)とともに、ディスク21に書かれている(記録されている)データを読む。SPM23は、ディスク21を回転駆動する。VCM24は、図示しないマグネットや駆動コイル等を有し、ヘッド22を駆動する。サーボ制御部25は、SPM23およびVCM24を制御する。ヘッドIC26は、ヘッド22によりディスク21に書き込まれるデータの信号、ならびにディスク21から読み出されたデータの信号を増幅する。リードチャネル27は、例えば、フィルタや、AGC、ADC、ビタビ復号器等を含む回路である。暗号回路28は、ディスク21に書き込まれるデータを、所定の暗号鍵を用いてAES等の所定の暗号化方式で暗号化する。また、暗号回路28は、ディスク21より読み出されたデータを所定の暗号鍵を用いて復号化する。暗号回路制御部29は、暗号回路28の動作を制御する。
【0011】
バッファメモリ31は、ディスク21に書き込まれるデータやディスク21より読み出されたデータ等を一時的に記憶する。ホストIF制御部33は、ホストIF32を介した電子機器1とハードディスク装置20との間でのデータおよびコマンドの送信および受信を制御する。
【0012】
フラッシュメモリ34は、MPU35により実行されるプログラムや、ハードディスク装置20の動作に係る各種の設定情報等を記憶する不揮発性メモリである。
【0013】
MPU35は、フラッシュメモリ34等に記憶されたプログラムをロードして実行することで、後述する機能部(例えば、ヘッド位置測定部35a、第一の算出部35b、データ修正部35c、データライト部35d、フーリエ変換部35e、データ変更部35f、逆フーリエ変換部35g等、図2参照)として動作する。すなわち、プログラムには、ヘッド位置測定部35a、第一の算出部35b、データ修正部35c、データライト部35d、フーリエ変換部35e、データ変更部35f、逆フーリエ変換部35g等として動作するモジュールが含まれている。これら各機能部の動作については後述する。
【0014】
図3に例示されるように、ディスク21の表面21aには、複数の第一のデータ領域(第一の領域)210と、複数の第二のデータ領域(第二の領域)220とが設けられている。複数の第一のデータ領域210は、周方向に一定の間隔をあけて放射状かつ帯状に配置されている。第二のデータ領域220は、隣接した二つの第一のデータ領域210間に位置されている。ヘッド22は、ディスク21の表面21a上を同心円状の複数のトラック230に沿って、ディスク21に対して相対的に移動する。第一のデータ領域210の各トラック230に対応する位置には、サーボデータ(第一のサーボデータ、図3には示さず)が書かれている。すなわち、第一のデータ領域210は、所謂サーボフレームに相当する。各サーボデータには、複数(例えば四つ)のバーストデータが含まれている。また、第二のデータ領域220の各トラック230に対応する領域は、書き換え可能なデータ(以下、ユーザデータと記す)の記憶領域である。公知の手法により、サーボデータの読み結果からヘッドの位置ずれ量、あるいはヘッドの位置ずれを減らす(あるいは無くす)補正量が算出される。
【0015】
本実施形態では、図3の右側に拡大して示されているように、ユーザデータが書き換え可能に記録される第二のデータ領域220にも、当初は(すなわち、製造段階、ハードディスク装置20の使用前の段階では)、複数のサーボデータ(第二のサーボデータ、図3には示さず)が書かれている。第二のデータ領域220には、サーボデータが書かれた複数のサーボデータ領域220aが、等間隔で配置されている。また、第一のデータ領域210は、各トラック230についてサーボデータが書かれた複数のサーボデータ領域210aを含んでいる。そして、第二のデータ領域220に書かれるサーボデータの態様(含まれるデータや、その配置、数等)は、第一のデータ領域210に書かれるサーボデータの態様と同じである。すなわち、本実施形態では、各トラック230に沿って、同一態様のサーボデータを含む複数のサーボデータ領域210a,220aが、一定のピッチ(間隔)で配置されている。なお、図3の例では、各第二のデータ領域220には、N個のサーボデータ領域220a、すなわち、N個のサーボデータが含まれている。なお、サーボデータは、公知の手法によって(例えば、サーボトラックライタ(図示せず)等によって)ディスク21の表面21aに書かれる。また、第二のデータ領域220は、位置ずれ量または補正量の算出処理後は、ユーザデータ領域として使用されるため、第二のデータ領域220に当初書かれたサーボデータは、ユーザデータに書き換えられたり、消去されたりする。
【0016】
次に、図4を参照して、本実施形態にかかるハードディスク装置20における位置ずれ量または補正量の算出方法について説明する。なお、図4のフローは、ディスク21の第一のデータ領域210および第二のデータ領域220にサーボデータが書かれた後に実行される。また、図4のフローでは、位置ずれ量および補正量のいずれを算出することも可能であるが、ここでは、位置ずれ量を算出する場合が例示される。
【0017】
MPU35は、ホストとしての電子機器1や検査装置(図示せず)等からの指令を受けて、サーボ制御部25を制御し、ディスク21を回転させる。この状態で、MPU35は、さらにヘッド位置測定部35aとして動作し、各サーボデータ領域210a,220aについてのサーボデータの読み結果に基づいて、各サーボデータ領域210a,220aにおけるヘッド22の位置を測定する(ステップS10)。このステップS10では、公知の手法により、サーボデータの読み結果から、各サーボデータ領域210a,220aにおける位置ずれ量が算出される。また、ステップS10は、予め規定された測定周回数分行われ(ステップS11)、各周回におけるヘッド22の位置ずれ量が所定の記憶部(例えばフラッシュメモリ34やレジスタ(図示せず)等)に保持される。
【0018】
次に、MPU35は、第一の算出部35bとして動作し、第一のデータ領域210に含まれるサーボデータ領域210aのそれぞれに対応した位置ずれ量を算出する(ステップS12)。本実施形態では、このステップS12で、第一の算出部35bは、各サーボデータ領域210aの位置ずれ量を、上記ステップS10で所定の記憶部に保持された、サーボデータ領域210aにおけるヘッド22の位置ずれ量、ならびにサーボデータ領域220aにおけるヘッド22の位置ずれ量に基づいて算出する。すなわち、本実施形態では、位置ずれ量は、サーボデータ領域210aに書かれたサーボデータの読み結果、ならびにそのサーボデータ領域210aに周方向に隣接したサーボデータ領域220aに書かれたサーボデータの読み結果に基づいて算出される。
【0019】
具体的に、このステップS12で、第一の算出部35bは、まず、一周回での測定結果について、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)を、例えば、当該サーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)、ならびに当該サーボデータ領域210aと同じトラック230上で当該サーボデータ領域210aと隣接した複数のサーボデータ領域220aでの位置ずれ量(δ(−n)〜δ(−1)、δ(1)〜δ(n))の平均値として算出する。すなわち、第一の算出部35bは、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)を、複数のサーボデータに対応した位置ずれ量δ(i)(ただし、−n≦i≦n、1≦n≦N、i,n,Nは整数)の平均値(相加平均値、算術平均値)として算出する。ここに、iは、サーボデータ領域210a,220aのトラック230に沿った周方向の列の各位置を表すパラメータである。本実施形態では、一例として、サーボデータ領域210aの位置でiを0とし、時計回り方向にiが増大し、反時計回り方向にiが減少するものとする。よって、iが正の数の場合、サーボデータ領域220aがサーボデータ領域210aに対して時計回り方向に位置していることを表し、iが負の数の場合、サーボデータ領域220aがサーボデータ領域210aに対して反時計回り方向に位置していることを表す。よって、一つのサーボデータ領域220aについては、基準とするサーボデータ領域210aによって、iは異なる値になる。例えば、一つのサーボデータ領域220aのiは、当該サーボデータ領域220aに対して時計回り方向に位置するサーボデータ領域210aから見ると負の数(マイナスの値)になり、当該サーボデータ領域220aに対して反時計回り方向に位置するサーボデータ領域210aから見ると正の数(プラスの値)になる。また、Nは、第二のデータ領域220内に設けられたサーボデータ領域220aの数である。また、nについては、例えば、Nが偶数の場合にはn=N/2とし、Nが奇数の場合にはn=(N+1)/2、あるいはn=(N−1)/2とすることができる。
【0020】
さらに、このステップS12で、第一の算出部35bは、各周回について算出された位置ずれ量δ(0)の平均値(相加平均値、算術平均値)として、位置ずれ量δ(0)を算出する。
【0021】
このように、本実施形態では、サーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)の位置ずれ量δ(0)が、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)と、当該サーボデータ領域210aに周方向に隣接したサーボデータ領域220a(第二のデータ領域220)の位置ずれ量δ(i)とから算出されるため、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)がそのまま用いられる場合に比べて、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)(補正量)の精度ひいては位置決め制御の精度を高めやすくなる。また、サーボデータ領域220a(第二のデータ領域220)に書かれたサーボデータを用いて位置ずれ量δ(0)または補正量が算出されるため、サーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)に書かれたサーボデータのみを用いて位置ずれ量δ(0)または補正量が算出される場合に比べて、少ない周回数でもサンプル数を増やしてより精度の高い結果を得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、位置ずれ量または補正量の算出にかかる時間をより短縮することができる。
【0022】
また、本実施形態では、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)は、当該サーボデータ領域210aの周方向両側に隣接したサーボデータ領域220aの位置ずれ量δ(i)を用いて算出される。よって、サーボデータ領域210aの周方向片側に隣接したサーボデータ領域220aの位置ずれ量δ(i)のみを用いて算出する場合に比べて、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)(補正量)の精度ひいては位置決め制御の精度を高めやすくなる。
【0023】
ステップS12の後、MPU35は、データ修正部35cとして動作し、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)の修正を行う。すなわち、MPU35は、まずは、フーリエ変換部35eとして動作し、トラック230毎に、ステップS12で算出された各サーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)での位置ずれ量δ(0)を周方向に並べたデータ列に対してフーリエ変換(離散フーリエ変換)を実行する(ステップS13)。このステップS13によって、各トラック230のサーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)のデータ列の周波数成分が得られる。
【0024】
次いで、MPU35は、データ変更部35fとして動作し、ステップS13で算出された各トラック230のサーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)のデータ列の周波数成分に対して、周波数成分の大きさの調整を行う(ステップS14)。これにより、データ変更部35fは、例えば、ディスク21や、ヘッド、アーム、その他の機構の固有振動数等に起因した誤差として重畳しやすい特定の周波数成分の値を小さくすることができる。このステップS14では、例えば、特定の周波数成分、ならびに当該周波数成分に対する減少量(カット量)は、ハードディスク装置20やディスク21のスペックに応じて適宜に設定され、フラッシュメモリ34等の不揮発性の記憶部に記憶されている。また、周波数を予め特定せず、他の周波数成分と比べて特に高いピークが得られた周波数で、その周波数成分の値を小さくすることも可能である。
【0025】
次いで、MPU35は、逆フーリエ変換部35gとして動作し、ステップS14で修正された各トラック230のサーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)のデータ列の周波数成分に対して逆フーリエ変換(逆離散フーリエ変換)を実行する(ステップS15)。このステップS15によって、特定の周波数成分の影響が抑制された、各トラック230のサーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)のデータ列が得られる。上記ステップS13〜S15によって、各サーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)での位置ずれ量δ(0)の精度をより高めることができる。
【0026】
次いで、MPU35は、データライト部35dとして動作し、ヘッド22を用いて、各サーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)を、対応するサーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)に書く(ステップS16)。具体的には、例えば、サーボデータ領域210a内のバーストデータの後にポストデータとして書かれる。以降、ハードディスク装置20の使用時には、図4のフローによって決定されて、ディスク21に書かれたサーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)(または補正量)に基づいて、位置決め制御が実行される。
【0027】
また、上述したステップS12では、サーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)(または補正量)の算出に際し、サーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)に書かれたサーボデータの読み結果から算出された位置ずれ量δ(0)と、サーボデータ領域220a(第二のデータ領域220)に書かれたサーボデータの読み結果から算出された位置ずれ量(δ(−n)〜δ(−1)、δ(1)〜δ(n))とで、算出される位置ずれ量δ(0)または補正量への重み付け係数(寄与度)は同じであった。これに対し、サーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)からの周方向の距離に応じて、当該距離が大きいほど重み付け係数を小さくし、当該距離が小さいほど重み付け係数を大きくすることができる。具体的には、サーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)を、下の式(1)によって算出することができる。
【数1】

・・・(1)
一例として、各トラック230での第二のデータ領域220内におけるサーボデータの数Nが8(すなわちN=8)で、n=4である場合、上記式(1)は下の式(2)のように書き表せる。
【数2】

・・・(2)
サーボデータ領域210aとサーボデータ領域220aとが周方向に離間するほど、サーボデータ領域210aのサーボデータとサーボデータ領域220aのサーボデータとの径方向の位置ずれが大きくなると考えられる。よって、周方向に離間するほど重み付け係数(寄与度)を小さくした上記式(1)を用いて、複数の位置ずれ量δ(i)(i=−n〜n)の加重平均としてサーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)を算出することで、当該重み付けを行わず(寄与度を考慮せず)複数の位置ずれ量δ(i)の単純な相加平均(算術平均)として算出する場合に比べて、サーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)の精度をより高めやすくなる。なお、上記式(1),(2)における加重平均の重み付け係数はあくまで一例であって、重み付け係数は種々に設定することができる。
【0028】
また、本実施形態では、第二のデータ領域220は、書き換え可能なデータの記録領域であるため、第二のデータ領域220に当初書かれたサーボデータは、書き換えられたり消去されたりする。すなわち、図5に示すように、第二のデータ領域220に当初書かれたサーボデータ240(バーストデータ)のうち、トラック230と重なり合う領域Aeは、ハードディスク装置20の使用によって消去される場合がある。しかし、本実施形態では、トラック230と重なり合わない領域Arは、ハードディスク装置20の使用開始後も、ディスク21の表面21a上に残存する可能性があり、当該領域Arが第二のデータ領域220に当初書かれたサーボデータ240の痕跡となる。なお、サーボデータ240の領域Arが書かれたディスク21の表面21a上の領域が、本実施形態における第三の領域に相当する。
【0029】
<第2実施形態>
図6を図2と比較して参照すれば明らかとなるように、本実施形態では、MPU35は、第二の算出部35hとして機能する部分を有する。図6に示す第二の算出部35hを含む各機能部の動作については後述する。MPU35が第二の算出部35hを有して異なる演算を行う点以外、第2実施形態にかかるハードディスク装置20は、第1実施形態にかかるハードディスク装置20と同様の構成を有している。
【0030】
ここで、図7,8を参照して、本実施形態にかかるハードディスク装置20における位置ずれ量または補正量の算出方法について説明する。なお、図7,8のフローも、上記第1実施形態と同様、ディスク21の第一のデータ領域210および第二のデータ領域220にサーボデータが書かれた後に実行される。また、図7,8のフローでも、位置ずれ量および補正量のいずれを算出することも可能であるが、ここでは、位置ずれ量を算出する場合について例示される。
【0031】
ステップS20は、第1実施形態のステップS10と同様であり、ステップS21は、第1実施形態のステップS11と同様である。
【0032】
ステップS21の後、MPU35は、第二の算出部35hとして動作し、各サーボデータ領域210a,220aでのサーボデータの読み結果から、各サーボデータ領域210a,220aでの位置ずれ量を算出する(ステップS22)。このステップS22では、各サーボデータ領域210a,220aでの位置ずれ量δ(i)を、複数周回分の位置ずれ量δ(i)の平均値(加算平均値、算術平均値)として算出する。なお、この段階では、サーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)での位置ずれ量δ(0)には、サーボデータ領域220a(第二のデータ領域220)での位置ずれ量δ(i)(例えば、δ(−n)〜δ(−1),δ(1)〜δ(n))は反映されていない。
【0033】
ステップS22の後、MPU35は、データ修正部35cとして動作し、サーボデータ領域210a,220a毎に、位置ずれ量δ(i)(i=1〜N)のデータを修正する(ステップS23(S30〜S35))。
【0034】
ステップS23では、各トラック230において、複数のサーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)を周方向に沿って並べたデータ列、複数のサーボデータ領域210aに対して時計回り方向に1領域分ずれた位置に配置されたサーボデータ領域220aの位置ずれ量δ(1)を周方向に沿って並べたデータ列、複数のサーボデータ領域210aに対して時計回り方向に2領域分ずれた位置に配置されたサーボデータ領域220aの位置ずれ量δ(2)を周方向に沿って並べたデータ列、・・・、複数のサーボデータ領域210aに対して時計回り方向にi領域分ずれた位置に配置されたサーボデータ領域220aの位置ずれ量δ(i)を周方向に沿って並べたデータ列、・・・、ならびに、複数のサーボデータ領域210aに対して時計回り方向にN領域分ずれた位置に配置されたサーボデータ領域220aの位置ずれ量δ(N)を周方向に沿って並べたデータ列、の合計N+1個のデータ列毎に、図8のステップS31〜S33の処理が実行される。
【0035】
本実施形態では、MPU35は、サーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)での位置ずれ量δ(0)のデータ列に対しては(ステップS30でYes)、ステップS31〜S33、すなわちデータの修正を実行しない。パラメータiが0のときには(i=0)、ステップS34ではNoであるためステップS35に進み、ステップS35でパラメータiがカウントアップされて、ステップS30に戻る。
【0036】
MPU35は、サーボデータ領域220aでの位置ずれ量δ(i)(i=1〜N)のデータ列に対しては(ステップS30でNo)、ステップS31〜S33、すなわちデータの修正を実行する。ステップS31〜S33で、MPU35は、上記第1実施形態と同様、データ修正部35cとして動作する。ただし、本実施形態では、フーリエ変換部35eとして動作するMPU35は、上述した位置ずれ量δ(i)のデータ列に対してフーリエ変換(離散フーリエ変換)を実行する(ステップS31)。このステップS31によって、各トラック230のサーボデータ領域220aでの位置ずれ量δ(i)のデータ列の周波数成分が得られる。
【0037】
次いで、MPU35は、データ変更部35fとして動作し、ステップS31で算出された各トラック230のサーボデータ領域220aでの位置ずれ量δ(i)のデータ列の周波数成分に対して、周波数成分の大きさの調整を行う(ステップS32)。このステップS32では、一例としては、所定値以上の周波数の周波数成分(すなわち、高次成分)が除去、すなわち0にされる。なお、ステップS32では、さらに、特定の周波数成分の値を小さくするなど、上記第1実施形態のステップS14と同様のデータの変更を実行してもよい。
【0038】
次いで、MPU35は、逆フーリエ変換部35gとして動作し、ステップS32で修正された各トラック230のサーボデータ領域220aでの位置ずれ量δ(i)のデータ列の周波数成分に対して逆フーリエ変換(逆離散フーリエ変換)を実行する(ステップS33)。このステップS33によって、高次成分の影響が抑制された、各トラック230のサーボデータ領域220aでの位置ずれ量δ(i)のデータ列が得られる。
【0039】
ステップS35で順次カウントアップされ、サーボデータ領域220aでの全てのデータ列の処理が終わると(すなわち、i=N、ステップS34でYes)、図7のステップS24へ進む。ステップS24で、MPU35は、第一の算出部35bとして動作し、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)を、例えば、当該サーボデータ領域210aでの位置ずれ量δ(0)、および当複数のサーボデータ領域220aでの位置ずれ量(δ(−n)〜δ(−1)、δ(1)〜δ(n))の平均値として算出する。すなわち、第一の算出部35bは、サーボデータ領域210aの位置ずれ量δ(0)を、複数のサーボデータに対する位置ずれ量δ(i)(ただし、−n≦i≦n、1≦n≦N、i,n,Nは整数)の平均値(相加平均値、算術平均値)として算出する。次いで、MPU35は、ステップS16と同様に、データライト部35dとして動作する(ステップS25)。
【0040】
以上の本実施形態によれば、サーボデータ領域210a(第一のデータ領域210)でのサーボデータの読み結果はそのまま用いられ、サーボデータ領域220a(第二のデータ領域220)でのサーボデータの読み結果からは高次成分による悪影響が抑制されるため、位置決め精度をより一層高めやすくなる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、複数の位置ずれ量を加重平均する際の重み付け係数は、種々に変更することが可能である。また、第一のデータ領域における位置ずれ量または補正量を算出するのに用いる第二のデータ領域のサーボデータの数も、上記実施形態には限定されず種々に変更することが可能である。また、第一のデータ領域から離間した第二のデータ領域のサーボデータは用いず、第一のデータ領域に近接した第二のデータ領域のサーボデータを用いるようにしてもよい。また、位置ずれ量または補正量の算出に関わる演算を、ハードディスク装置のMPU以外の制御部や、ハードディスク装置以外の電子機器で実行することも可能である。また、ハードディスク装置、ディスク、ヘッド、第一のデータ領域、第二のデータ領域、サーボデータ領域、サーボデータ等のスペック(構造や、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、色彩、模様、柄、形式等)は、適宜変更して実施することができる。
【0042】
本発明の実施形態によれば、位置ずれ量または補正量の算出にかかる時間をより短縮することが可能なハードディスク装置、ディスク、およびヘッドの位置ずれ量または補正量の算出方法を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
20…ハードディスク装置、21…ディスク、22…ヘッド、35b…(第一の)算出部、35e…フーリエ変換部、35f…データ変更部、35g…逆フーリエ変換部、35h…(第二の)算出部、210…第一のデータ領域(第一の領域)、220…第二のデータ領域(第二の領域)、240…サーボデータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に周方向に間隔をあけて配置され第一のサーボデータが書かれた複数の第一の領域と、周方向に隣接する前記第一の領域間にデータ書き換え可能な第二のサーボデータが書かれた第二の領域と、を有するディスクと、
前記ディスクの表面に書かれた前記第一のサーボデータおよび前記第二のサーボデータを読むためのヘッドと、
前記ヘッドによる前記第一のサーボデータおよび前記第二のサーボデータの読み結果に基づいて前記ヘッドの位置ずれ量または前記ヘッドの位置ずれの補正量を算出する算出部と、
を備えたハードディスク装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記第一の領域に対して周方向の両側の前記第二の領域に書かれた前記第二のサーボデータの読み結果に基づいて前記第一の領域に対応した前記位置ずれ量または前記補正量を算出する請求項1に記載のハードディスク装置。
【請求項3】
前記算出部での前記位置ずれ量または前記補正量の算出では、前記第一のサーボデータの読み結果、および前記第二のサーボデータの読み結果について、前記位置ずれ量または前記補正量への重み付け係数がそれぞれ設定され、
前記第二のサーボデータの読み結果の前記重み付け係数が、前記第一のサーボデータの読み結果の前記重み付け係数より小さい請求項2に記載のハードディスク装置。
【請求項4】
前記第二の領域には、周方向に配置された複数の前記第二のサーボデータが書かれ、
前記第一の領域から周方向に離間するほど、前記第二の領域に書かれた前記第二のサーボデータの読み結果の前記重み付け係数が小さい請求項3に記載のハードディスク装置。
【請求項5】
前記算出部で算出された位置ずれ量または前記補正量が周方向に沿う順に並んだデータ列をフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換された結果としてのデータを変更するデータ変更部と、
前記変更されたデータを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、
をさらに備えた請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のハードディスク装置。
【請求項6】
前記データ変更部は、前記第二のサーボデータの読み結果から算出された位置ずれ量または前記補正量のデータ列が前記フーリエ変換部でフーリエ変換されたデータに対して所定の周波数成分以上の値を小さくする請求項5に記載のハードディスク装置。
【請求項7】
表面に周方向に間隔をあけて配置され第一のサーボデータが書かれた複数の第一の領域と、
周方向に隣接する前記第一の領域間に位置するデータ書き換え可能な第二の領域と、
を有し、
前記第二の領域に対して径方向に隣接した第三の領域に第二のサーボデータが書かれているハードディスク装置用のディスク。
【請求項8】
ディスクの表面に書かれたデータを読むためのヘッドを備えたハードディスク装置での前記ヘッドの位置ずれ量または前記ヘッドの位置ずれの補正量を算出する方法であって、
前記ディスクの表面に周方向に間隔をあけて配置された複数の第一の領域に第一のサーボデータを書くステップと、
前記ディスクの表面に周方向に隣接する前記第一の領域間に位置するデータ書き換え可能な第二の領域に第二のサーボデータを書くステップと、
ヘッドによる前記第一のサーボデータおよび前記第二のサーボデータの読み結果に基づいて前記位置ずれ量または前記補正量を算出するステップと、
を備えたハードディスクのヘッドの位置ずれ量または補正量の算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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