ハードディスク装置、ハードディスク装置の冷却装置及びハードディスク装置の冷却システム
【課題】多数枚の記録ディスクを装着した回転軸であっても、高速回転可能なハードディスク装置と、このハードディスク装置を効率よく冷却して高速回転性能を維持できるハードディスク装置の冷却装置及びハードディスク装置の冷却システムとを提供する。
【解決手段】ハウジング4に回転軸8を回転可能に支持し、永久磁石10を備えた回転子9及び記録ディスク13を回転軸8に装着する。回転軸8を両端支持構造とする。回転軸8の両端部を支持する軸受を、傾動自在な複数のティルティングパッド22を周方向に配列し当該ティルティングパッド22と回転軸8の端部との間に気体を介在させて回転軸8を支持する気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受19とする。
【解決手段】ハウジング4に回転軸8を回転可能に支持し、永久磁石10を備えた回転子9及び記録ディスク13を回転軸8に装着する。回転軸8を両端支持構造とする。回転軸8の両端部を支持する軸受を、傾動自在な複数のティルティングパッド22を周方向に配列し当該ティルティングパッド22と回転軸8の端部との間に気体を介在させて回転軸8を支持する気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受19とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に記録ディスクが装着されたハードディスク装置、ハードディスク装置の冷却装置及びハードディスク装置の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、ハードディスク装置には、大容量のデータを正確且つ高速で読込み及び書込みができることが要求されている。これらの要求に応える技術として液体動圧軸受及び気体動圧軸受を用いたハードディスク装置が検討されている。
液体動圧軸受を用いたハードディスク装置は、例えば特許文献1に開示されている。このハードディスク装置は、記録ディスクが装着された回転軸の両端部を、潤滑油による液体動圧で支持する構成である。
気体動圧軸受を用いたハードディスク装置は、例えば特許文献2に開示されている。このハードディスク装置は、記録ディスクが装着された回転軸の一端部を、空気による気体動圧で支持する構成である。
【特許文献1】特開2000−41360号公報
【特許文献2】特開2004−270850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、ハードディスク装置に装着される記録ディスクは多くても数枚である。しかし、サーバ等で使用されるハードディスク装置においては、一層の大容量化、高速処理化が要求されている。これに対処するために、単位面積当たりの記録密度を向上させる他に記録ディスクを多数枚装着し、回転振動が小さくなるよう高精度回転することが検討されている。更に、高速処理化のために記録ディスクを高速回転することが検討されている。一方、ハードディスク装置特有の使用条件として、ハードディスク装置が転倒したり落下したりした場合や運送時の衝撃などを想定して、据え置き型のハードディスク装置でも、動作時で70G、非動作時で300G程度の外部からの衝撃荷重に対しても耐えられることが要求されている。
【0004】
特許文献1のハードディスク装置の回転軸に多数枚の記録ディスクを装着した場合、潤滑油の粘性が大きいため、発熱が大きくなることや、潤滑油の漏れが生じる可能性があるため、高速回転に限界がある。
特許文献2のハードディスク装置の回転軸では、気体動圧軸受を用いていることにより、高速回転は可能である。しかし、気体の粘度は潤滑油の粘度の1000分の1と小さいため、ダンピング性能と軸受負荷容量が小さく、衝撃荷重に弱い問題がある。特に、回転軸が片持ち支持された構造であるので、衝撃時に回転軸の軸心まわりに作用する衝撃モーメントに対して弱い。更に、多数枚のディスクを装着した場合には、回転軸の質量が大きくなり衝撃荷重も大きくなり軸受の耐衝撃性の向上が課題となる。
【0005】
そこで、回転軸を気体動圧軸受により両端支持することが考えられる。しかしながら、多数枚の記録ディスクを回転軸に装着するためには回転軸を長くする必要がある。この場合、回転軸が長くなればなるほど、軸受を装着するハウジングの加工誤差や組立て誤差等によって回転軸の両端を支持する軸受同士が心ずれを生じやすくなる。又、衝撃時に回転軸と軸受が部分的に接触し損傷する等の不具合が生じやすくなり、その結果、やはり、高速回転の実現が困難となる。
【0006】
又、多数枚のディスクを高速回転させるとディスクの風損やモータの発熱等で高温になるため、ハードディスクを強制冷却する必要がある。従来はハードディスク装置の外側からハウジングを介してハードディスク装置内部の気体を通風冷却や水冷却をしている。しかしながら、ハウジングを介して熱交換が行われるため、効率が良くない。又、ハードディスク装置の内部の空気や回転する部材(回転軸等)をハウジング内面の限られた面積で冷却するため、ハウジングに固定された軸受と回転軸との間(軸受隙間)に温度差が生じやすい。軸受隙間が温度差によって縮小すると、最悪の場合には回転軸と軸受が焼付いてしまうため、軸受隙間を大きめに設定する必要がある。しかし、気体軸受は、潤滑剤である気体の粘度が小さく、軸受性能が軸受隙間に大きく左右されるため、軸受隙間が大きいとダンピング性能や軸受負荷容量が小さく、動作時の耐衝撃性が低くなり、又、非動作時においてもガタが大きいために耐衝撃性に欠けるという問題があった。
【0007】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、多数枚の記録ディスクを装着した回転軸であっても、高速回転可能で且つ衝撃荷重に耐えられるハードディスク装置を提供するところにあり、第2の目的は、上記ハードディスク装置を効率良く冷却して適正な軸受隙間を維持することによって、高速且つ高精度の回転性能を維持できるハードディスク装置の冷却装置及びハードディスク装置の冷却システムを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、記録ディスクが装着された回転軸を、両端支持構造とし、当該回転軸の両端部を支持する軸受を、傾動自在な複数のティルティングパッドを周方向に配列し当該ティルティングパッドと回転軸の端部との間に気体を介在させて回転軸を支持する気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受としたことを特徴としている。
【0009】
ティルティングパッドジャーナル軸受は、ティルティングパッド自体が傾動する機構により各ティルティングパッドで発生する圧力の合力の方向が回転軸の中心方向を向いているため、回転軸の軸がアンバランス等の変動荷重で偏心した場合でもティルティングパッドジャーナル軸受の中心方向に復元する。従って、ティルティングパッドジャーナル軸受は、軸受面が固定した軸受に見られるようなホワールを極力生じさせない特徴を持っている(例えば、社団法人 日本トライボロジー学会編、「トライボロジーハンドブック」、養賢堂出版、2001年3月30日発行、p.63 参照)。
【0010】
多数枚の記録ディスクを回転軸に装着するために回転軸が長い場合に、ティルティングパッドジャーナル軸受を装着するハウジングの加工誤差や組立て誤差等によって回転軸の両端を支持するティルティングパッドジャーナル軸受同士が心ずれすることがある。例えば、ハウジングの両端のティルティングパッドジャーナル軸受を取付ける嵌合孔が心ずれしている場合、径方向にも軸方向にも傾動可能なティルティングパッドジャーナル軸受による両端支持構造により、ティルティングパッドはピボットの先端の支持点周りの圧力によるモーメントがつり合うように傾動し、心ずれは解消される。
【0011】
又、ティルティングパッドジャーナル軸受に回転軸の衝撃荷重が作用した場合、ティルティングパッドが回転軸と平行になるように傾動するので、そのティルティングパッドの傾動により衝撃力が吸収され、又、回転軸がティルティングパッドに局部的ではなく広い範囲で受けられるようになり、更には、回転軸とティルティングパッドとの間に存在する気体がクッションの作用をなす等によって、回転軸やティルティングパッドの損傷を極力防止することができる。
【0012】
本発明は、固定子、記録ディスク及びティルティングパッドジャーナル軸受が、回転軸の軸方向の異なる位置に配置されている構成とすることができる。
このように構成によれば、固定子のコイルで発生した熱は、回転軸の軸方向の異なる位置に設けられているティルティングパッドジャーナル軸受に伝達されるまでに放熱されやすくなる。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受が固定子のコイルの熱の影響で膨張及び縮小してしまうことを極力防止することができる。
【0013】
本発明は、回転軸の軸方向の両端部に、回転軸と一体に回転する樹脂からなる円筒状のジャーナル部材を設け、このジャーナル部材がティルティングパッドジャーナル軸受に支持される構成とすることができる。
このように構成すれば、ジャーナル部材は、樹脂製で低摩擦係数である上に、径方向の厚さ寸法が長いために長期間使用でき、又、薄膜のコーティングのように母材から剥離することがない。従って、駆動モータの起動・停止を頻繁に繰返しても、ジャーナル部材は、ティルティングパッドジャーナル軸受との摩擦が小さく、又、低摩耗となるから、軸受性能の経年変化が小さく且つ軸受寿命を長くすることができる。
【0014】
本発明は、ハードディスク装置のハウジング内の気体の圧力を大気圧以下の圧力に減圧する構成とすることができる。
このように構成すれば、ハウジング内で発生する風損を小さくできる。更に、記録ディスクや、記録ディスクの読込み及び書込みを行うヘッドが記録ディスクの回転で生じる風で振動してしまうことを抑えることができる。これにより、記録ディスクをより高速に回転させることが可能になる。尚、ハウジング内を減圧すると、ティルティングパッドジャーナル軸受周辺の圧力も低下し気体軸受の負荷容量は低下するが、絶対圧力で0.05MPa程度であればティルティングパッドジャーナル軸受の寸法を大きくすることで必要な軸受負荷容量を得ることができる。
【0015】
本発明は、ハウジングに、記録ディスク側の空間とティルティングパッドジャーナル軸受側の空間とを仕切るシール部材を設け、このシール部材を、回転する部材と非接触のラビリンスシール部材から構成することができる。
【0016】
回転軸は、駆動モータの起動・停止時に気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受に接触するので、その際に摩耗紛が発生することがある。しかし、シール部材で記録ディスク側の空間とティルティングパッドジャーナル軸受側の空間とを仕切ることにより、駆動モータの起動・停止時にジャーナル部材とティルティングパッドの接触によって生じた摩耗粉が、記録ディスク側の空間へ飛散してしまうのを防ぎ、摩耗粉が原因となって記録ディスクとヘッドとが接触してしまうのを防ぐことができる。そして、このシール部材を、回転する部材と非接触のラビリンスシール部材から構成することで、回転する部材の回転を維持しつつ、摩耗粉の記録ディスク側の空間への飛散を防止することができる。尚、ここで言う回転する部材とは、回転軸、及び回転軸にジャーナル部材が設けられた場合にはジャーナル部材、回転軸にジャーナル部材以外の部材が設けられた場合にはその部材を指す。
【0017】
本発明は、ハウジングに、回転軸の軸方向の両端面を支持する2個のスラスト軸受を傾動可能に設け、この両スラスト軸受を気体動圧式の軸受で構成し、両スラスト軸受のうちの少なくともいずれか一方を、予圧手段により回転軸側に付勢するように構成することができる。
【0018】
このように回転軸を気体動圧式のスラスト軸受で支持することにより、低摩擦で回転軸を回転させることができると共に、液体動圧軸受を用いた構成よりも、回転軸を高速回転させることができる。そして、スラスト軸受は、傾動可能な構成であるので、回転軸の端面に対して平行になるように当たり、回転軸の端面とスラスト軸受との間で片当たりを防止でき負荷容量及び耐衝撃性を大きくすることができる。
スラスト軸受を予圧手段により回転軸側に付勢する構成としたので、回転軸が軸方向にふらつくことを極力防止でき、且つスラスト軸受と回転軸との隙間を小さくでき、気体動圧を発生しやすくすることができる。
【0019】
本発明は、駆動モータを回転子が固定子の内周側に径方向に隙間を介して配置された内転型とすることができる。
このように構成すれば、回転子の慣性モーメントを小さくすることができる。
【0020】
本発明は、ジャーナル部材の外径を、記録ディスクの装着部の外径よりも大きく設定することができる。
このように構成すれば、周速と軸受面積を大きくできるので、低速回転でも回転軸を非接触で支持できる。これにより、回転軸とティルティングパッドジャーナル軸受との接触時間を短くでき、ジャーナル部材の摩耗量を極力低減することができる。又、多数枚の記録ディスクを装着することで回転軸の総重量が重くなっても、回転軸を非接触支持することが可能である。
【0021】
本発明は、ジャーナル部材とティルティングパッドジャーナル軸受との線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内の材料から形成することができる。
このように構成すれば、ジャーナル部材及びティルティングパッドジャーナル軸受が熱の影響を受けても、両者の線膨張係数の差が比較的小さいので、回転中にジャーナル部材が大きく膨張して軸受隙間が小さくなり軸受性能が変化したり、ティルティングパッドに接触してしまうといった不具合の発生を極力防止することができる。又、ジャーナル部材とティルティングパッドジャーナル軸受が膨張していない場合に、ジャーナル部材とティルティングパッドとの間に大きな隙間が生じてしまうことも軸受性能が変化することも極力防止することができる。
【0022】
本発明は、ティルティングパッドジャーナル軸受側の空間と記録ディスク側の空間とを連通する循環路を形成し、ハウジングの内部の気体をティルティングパッドジャーナル軸受側の空間から循環路に送り、循環路から記録ディスク側の空間に気体を送るようし、循環路中にろ過手段を設けるように構成しても良い。
このように構成によれば、摩耗紛がろ過手段により回収されるので、摩耗粉が記録ディスク側の空間に飛散する不具合をより一層防止することができる。
【0023】
以上のようなハードディスク装置を冷却するために、本発明は、ハウジングの内部の気体を吸込んだ後に当該ハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、送風手段から吐出されてハウジングの内部に戻される気体を冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段とを備えた冷却装置を採用することができると共に、上記のハードディスク装置とこの冷却装置とを有してなるハードディスク装置の冷却システムを採用することができる。
【0024】
このように構成すれば、ハードディスク装置のハウジングの内部の気体を、直接冷却及び乾燥させることができる。又、記録ディスクや電気部品を熱的に保護するだけでなく回転軸を冷却できて回転軸の熱膨張を防止し軸受隙間の変化を小さくすることができると共に、水分が記録ディスクに付着して記録ディスクとヘッドとが張り付いてしまうことを極力防止することができる。
【0025】
又、本発明では、以上のようなハードディスク装置を複数台まとめたハードディスク装置群を冷却するために、各ハウジングの内部の気体を、並列の収集路を介して吸込んだ後に並列の配給路を介してそれぞれのハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、送風手段から吐出された気体を配給路に至るまでの間に冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段とを備えた冷却システムを採用することができる。
【0026】
このように構成すれば、ハードディスク装置群のハウジングの内部の気体を、冷却及び乾燥させることができる。又、ハードディスク装置群の各回転軸を冷却できて回転軸の熱膨張を防止し軸受隙間の変化を小さくすることができると共に、水分が記録ディスクに付着して記録ディスクとヘッドが張り付いてしまうことを極力防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の第1の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。
図1にハードディスク装置1の全体構成を示し、図2にハードディスク装置1を複数台備えたハードディスク装置群2、ハードディスク装置1の冷却装置101、及びハードディスク装置群2と冷却装置101とを有してなるハードディスク装置1の冷却システム102を示す。冷却装置101は、ハードディスク装置群2の各ハードディスク装置1のハウジング4の内部を冷却する装置である。この冷却装置101及び冷却システム102は、後で詳述する。
【0028】
ハードディスク装置1の外郭は、図1に示すようにハウジング4と2個の蓋部5とを組合せて構成されている。ハウジング4及び蓋部5は、軽量で熱伝導性に優れる材料、例えばアルミニウム製である。ハウジング4は、内部に円筒状の空間を有している。蓋部5は、ハウジング4の円筒部分の両端部を塞ぐように設けられている。尚、ハウジング4は実際には複数の部品を組合せて構成されている。
【0029】
ハウジング4の内部には、複数のコイル6を備えた円環状の固定子7が装着されている。この場合、固定子7の外周側はハウジング4に固定されており、コイル6の熱がハウジング4に伝達されやすくなっている。又、ハウジング4の内部には、回転軸8が回転可能に支持されている。この回転軸8は、磁性材料または軽金属材料、本実施形態ではアルミニウムでできており、回転軸8にモータの回転子9が装着されている。この回転軸8の軸は、固定子7の中心を通るように設けられている。
【0030】
回転子9は、回転軸8の外周面であって固定子7の内側に存する部分に設けられている。この回転子9は、円筒状の永久磁石10を有している。本実施形態では、回転軸8に円環状のヨーク11を介して永久磁石10を固定し回転子9が構成される。そして、固定子7及び回転子9及びヨーク11により永久磁石型の駆動モータ12が構成されている。この駆動モータ12は、回転子9が固定子7の内周側に径方向に隙間を介して配置された内転型である。
【0031】
回転軸8の軸方向中央部は、多数枚、この場合10枚の記録ディスク13を装着した装着部14とされている。即ち、この装着部14は、固定子7に対して回転軸8の軸方向に異なる位置にある。各記録ディスク13は、一般に用いられるハードディスクと同一構成の磁気ディスクである。尚、記録ディスク13は、光ディスクであっても良い。
【0032】
ハウジング4には、記録ディスク13からデータを読込んだり、記録ディスク13にデータを書込んだりするためのヘッド15が各記録ディスク13に対応して設けられている。各ヘッド15は、各記録ディスク13を挟むようにした構成であり、記録ディスク13の表面及び裏面に微小な隙間を介して設けられている。尚、ヘッド15は、図示しない駆動機構によって記録ディスク13の所定の位置に移動する構成である。
【0033】
ここで、回転軸8の軸受構成につき説明する。
回転軸8の両端部には、図1に示すように記録ディスク13が装着された装着部14の外径よりも小さい外径の径小部16が形成されている。回転軸8の径小部16の外周側には、回転軸8と一体に回転する円筒状の金属製のカラー17が固着されている。このカラー17の外周側には、回転軸8及びカラー17と一体に回転する円筒状のジャーナル部材18が固着されている。ジャーナル部材18の外径は、回転軸8の装着部14の外径よりも大きく設定されている。又、ジャーナル部材18は、後述するティルティングパッドジャーナル軸受19との線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内である樹脂からなる材料、例えばアラミド樹脂からなっている。ジャーナル部材18の軸方向の長さは、カラー17の軸方向の長さよりもやや長めに設定され、これにより、ジャーナル部材18の端面が回転軸8の端面及びカラー17の端面よりも軸方向の外側に突出している。
【0034】
ここで、回転軸8の外径仕上げ加工は、回転軸8の両端にカラー17及びジャーナル部材18を嵌め着けた後に、ジャーナル部材18の外径仕上げ加工と同時に行うようにしており、これによって回転軸8とジャーナル部材18との高い同心精度が確保される。尚、記録ディスク13は、一旦回転軸8からカラー17及びジャーナル部材18を取外した後に、回転軸8に嵌込まれる。そして、再度、回転軸8にカラー17及びジャーナル部材18が取付けられる。
【0035】
回転軸8は、両端部が気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受19,19で支持された、いわゆる両端支持構造である。本実施形態では、回転軸8の両端部の外周側にジャーナル部材18,18が位置しているので、ティルティングパッドジャーナル軸受19,19は、直接的にはジャーナル部材18,18を介して回転軸8を支持する構成である。又、このティルティングパッドジャーナル軸受19は、固定子7及び記録ディスク13と回転軸8の軸方向の異なる位置に配置されている。尚、本実施形態では、気体として空気を用いて説明する。
【0036】
ティルティングパッドジャーナル軸受19は、アルミニウムやステンレス等の金属製であり、図1及び図3に示すように円筒状の外輪20と、この外輪20の内周面から中心に向かって複数本、本実施形態では3本突出し各先端部が球面状であるピボット21と、各ピボット21の先端部に径方向にも軸方向にも傾動自在に支持されたティルティングパッド22とを有して構成されている。外輪20は、ハウジング4に形成された嵌合孔4a内に嵌合固定されている。ティルティングパッド22は、一つの円筒を相互間に隙間が生じるように3分割したような円弧面状をなしている。
【0037】
このティルティングパッド22の外周面には、円弧に沿った方向の一端に偏って凹部22aが形成されており、この凹部22a内にピボット21を嵌込むことによって、このティルティングパッド22が外輪20の周方向に配列されている。この場合、ティルティングパッド22は、外周側の面の中間よりもやや回転軸8が回転する方向(図3では、矢印の先端が位置する方向(反時計回り方向))側の部位にピボット21が位置するように、ピボット21に取付けられている。そして、ティルティングパッドジャーナル軸受19は、ティルティングパッド22の回転軸8の回転方向の前側が回転軸8の外周面に最も接近するように構成されている。
【0038】
ハウジング4の内部であって蓋部5の内側の面には、図1に示すように回転軸8の軸方向の両端面、この場合、ジャーナル部材18の端面を支持する2個のスラスト軸受23,23が設けられている。スラスト軸受23は、ステンレス製の気体動圧式の軸受である。即ち、図4及び図5に示すようにスラスト軸受23の回転軸8側に位置する表面部には、溝部24、傾斜部25及び平坦部26が周方向に等間隔に複数形成されている。溝部24は、径方向に延びる溝であり、溝の幅は外周側に向かって広くなっている。平坦部26は、回転軸8の端面に最も近づくように形成された面である。傾斜部25は、溝部24と平坦部26をつなぐ傾斜面であり、周方向に傾斜している。
【0039】
このスラスト軸受23は、図6に示すように両スラスト軸受23,23のうちの少なくともいずれか一方、本実施形態では両スラスト軸受23,23の裏面の中心部分に円錐状の凹部27が形成されている。又、蓋部5の内側の面にあってスラスト軸受23の凹部27に対応する位置には、凹部28が形成されている。
【0040】
凹部27と凹部28とで構成される空間には、スラスト軸受23を回転軸8のジャーナル部材18側の端面に付勢する予圧手段29が設けられている。予圧手段29は、球状の支持体30と、支持体30をスラスト軸受23側に付勢するバネ31とを有して構成されている。支持体30は、導電性に優れる材料、例えば金属製であり、支持体30の一部がスラスト軸受23の凹部27に当接し、他方の部分がバネ31に当接している。バネ31も、導電性に優れる材料、例えば金属製である。これらの構成により、スラスト軸受23は、支持体30を中心として傾動可能に支持された状態になり、又、回転軸8が回転した際に生じる静電気は、支持体30及びバネ31を介して蓋部5及びハウジング4側に逃がされる構成である。
【0041】
記録ディスク13とティルティングパッドジャーナル軸受19との間には、シール部材32が設けられている。このシール部材32は、回転する部材、この場合回転軸8及びジャーナル部材18と非接触のラビリンスシール部材である。シール部材32は、具体的には、ハウジング4に、回転軸8の外周面に向かって延び、記録ディスク13側の空間とティルティングパッドジャーナル軸受19側の空間とを仕切るように設けられている。この場合、シール部材32のハウジング4側は、ハウジング4に固定される。シール部材32の回転軸8側は、回転軸8(径小部16)とカラー17とジャーナル部材18とによって形成された回転軸8の軸中心側に凹む凹部33内に非接触に挿入されている。尚、シール部材32の回転軸8側の先端部は、凹凸が形成されていても、或いは平坦でも良い。図面では平坦で示している。
【0042】
このシール部材32は、ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19との摩擦によって生じる摩耗粉、及びジャーナル部材18とスラスト軸受23との摩擦によって生じる摩耗粉が記録ディスク13側の空間に移動することを極力防止するためのものである。尚、シール部材32をハウジング4に一体に形成しても良い。
【0043】
ハードディスク装置1のハウジング4には、図1及び図2に示すように排気孔34及び給気孔35が形成されている。排気孔34は、ハウジング4内の気体を外部に排出するための孔であり、記録ディスク13とティルティングパッドジャーナル軸受19との間、本実施形態ではティルティングパッドジャーナル軸受19とシール部材32との間に形成されている。給気孔35は、ハウジング4内に気体を供給するための孔であり、本実施形態ではハウジング4の記録ディスク13が位置する部分、即ち、シール部材32,32間に形成されている。給気孔35は、ハウジング4に1箇所以上形成されている。
【0044】
上記した冷却装置101は、上述したようにハードディスク装置群2の各ハードディスク装置1のハウジング4の内部を冷却する装置であり、送風手段である還流ファン36と、冷却手段である冷却器37と、乾燥手段である乾燥器38とを有して構成されている。
【0045】
冷却装置101の入り口とハウジング4の排気孔34の出口とは収集路40で連通されている。収集路40は、一方側が複数の排気孔34と連通するように並列の形状になっており、他方側が冷却装置101につながるように一つの経路になっており、中間部で合流するように形成されている。冷却装置101の出口とハウジング4の給気孔35の入り口とは配給路41で連通されている。配給路41は、一方側が冷却装置101につながるように一つの経路になっており、他方側が複数の給気孔35と連通するように並列の形状になっており、中間部で分岐するように形成されている。この収集路40と配給路41とから循環路42が形成される。この循環路42により、ティルティングパッドジャーナル軸受19側の空間と記録ディスク13側の空間とが連通された構成になる。
【0046】
還流ファン36は、複数台のハードディスク装置1の各ハウジング4の内部の気体を、収集路40を介して吸込んだ後に冷却装置101及び配給路41を介してそれぞれのハウジング4の内部に戻す循環用のファンであり、冷却装置101の上流部に設けられている。
冷却器37は、還流ファン36から吐出された気体を配給路41に至るまでの間に冷却するものであり、この場合、冷凍サイクルの冷却器又は空冷、水冷の熱交換器によって構成されている。
乾燥器38は、還流ファン36から吐出された気体、具体的には冷却器37で冷却された気体を配給路41に至るまでの間に乾燥するものである。
【0047】
配給路41中の分岐する部分(分岐点)より上流側には、ハウジング4内の気体の圧力を大気圧以下の圧力に減圧する減圧手段44が設けられている。この減圧手段44は、減圧ポンプ45と圧力制御弁46とを有して構成されている。又、ハウジング4内には、図示しない圧力センサが設けられている。減圧ポンプ45は、圧力センサが所定の圧力、例えば大気圧の半分の圧力以上を検出したときに、減圧する作動が開始されるように設定されており、この場合、絶対圧力で0.05MPaになるまで減圧される。この減圧時のハウジング4内の余分な気体は、外部に放出される。圧力制御弁46は、この圧力制御弁46の出口側(排出側)の気体の圧力が絶対圧力で0.05MPaになるように、圧力制御弁46からの排出量を調整している。
【0048】
配給路41中の減圧手段44と分岐点との間には、ろ過手段である除塵器48が設けられている。除塵器48は、還流する気体に含まれる摩耗粉等を取り除く装置であり、フィルタや遠心分離器、いわゆるサイクロン等により構成される。
【0049】
次に上記構成のハードディスク装置1の作用及び効果について説明する。尚、ハードディスク装置1は横軸形に設置されている場合で説明するが、縦軸形に設置された場合であっても良い。
固定子7のコイル6に電流を流すことにより、回転子9と共に回転軸8も回転し、記録ディスク13も回転する。
そして、回転軸8の回転が開始すると、当初、回転軸8のジャーナル部材18,18はティルティングパッドジャーナル軸受19,19の内周面に摺接しながら回転する。
【0050】
一方、回転軸8が回転し始めると、回転軸8の周りの気体、この場合空気がジャーナル部材18とティルティングパッド22との隙間に引込まれる。隙間内に引込まれた気体は、回転軸8の回転方向の前側に送られ、回転軸8の回転速度の上昇と共に、隙間内の気体の圧力は次第に高くなる。そして、回転軸8がある回転速度に達すると、ジャーナル部材18は、ティルティングパッド22との間に介在する気体の動圧により、非接触で支持される。
【0051】
更に、ティルティングパッドジャーナル軸受19にあっては、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との隙間内の各部の気体圧力を合成した圧力は、一点(回転軸8の回転中心)を通る方向に作用するという特性がある。このため、回転軸がほぼ回転数の約1/2の周波数で旋回するホワール現象を生ずることなく回転する。従って、回転軸8は、低速回転域から、所定の高速回転まで安定且つ高精度に回転する。
【0052】
ところで、多数枚の記録ディスク13を回転軸8に装着するために回転軸8が長い場合に、ティルティングパッドジャーナル軸受19を装着するハウジング4の加工誤差や組立て誤差等によって回転軸8の両端を支持するティルティングパッドジャーナル軸受19同士が心ずれすることがある。この場合、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との隙間内の気体の圧力について、円周方向各位置において大きさは異なるが、円周方向各位置の軸方向に沿った圧力については、モーメントがつり合うように傾動する。これにより、回転軸8の両端部を支持するティルティングパッドジャーナル軸受19,19の軸心が一致するようになる。従って、回転軸8は、軸心が一致した2つのティルティングパッドジャーナル軸受19によって支持され、心ぶれや片当たり等を生ずることなく回転する。
【0053】
又、回転軸8の回転が開始すると、ジャーナル部材18の端面はスラスト軸受23の表面に摺接しながら回転する。回転軸8が回転すると、回転軸8のスラスト荷重はスラスト軸受23によって支持される。即ち、回転軸8のジャーナル部材18がスラスト軸受23の溝部24から平坦部26の周方向に回転すると、ジャーナル部材18とスラスト軸受23との間に存在する気体は平坦部26に移動し、ジャーナル部材18とスラスト軸受23の平坦部26との隙間内の気体の動圧は次第に高くなる。そして、回転軸8がある回転速度に達すると、ジャーナル部材18は、スラスト軸受23との間に介在する気体の動圧により非接触で支持される。
【0054】
このような実施形態によれば、多数の記録ディスク13を装着することにより、回転軸8の総重量が重くなっても才差運動を生じさせることなく正常に支持できる。しかも、ティルティングパッドジャーナル軸受19による両端支持構造であるから、ハウジング4の両端の嵌合孔4a,4aが心ずれを生じていても、ティルティングパッド22がピボット21の先端の支持点周りのモーメントがつり合うように傾動するので、心ずれが解消される。
【0055】
又、衝撃荷重が作用した場合、ティルティングパッド22が回転軸8と平行になるように傾動するので、そのティルティングパッド22の傾動により衝撃力が吸収され、又、回転軸8がティルティングパッド22に局部的ではなく広い範囲で受けられるようになり、更には、回転軸8とティルティングパッド22との間に存在する気体がクッションの作用をなす等によって、回転軸8やティルティングパッド22の損傷を極力防止することができる。
【0056】
ティルティングパッドジャーナル軸受19を用いることにより、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との摩擦で生じた摩耗粉を、ジャーナル部材18が回転する際に周方向に並ぶティルティングパッド22の間から外輪20側に排除させることができる。これより、ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19との間に摩耗粉が存在することによる焼付を極力防止することができる。
【0057】
固定子7、記録ディスク13及びティルティングパッドジャーナル軸受19が、回転軸8の軸方向の異なる位置に配置されているので、固定子7のコイル6で発生した熱が回転軸8の軸方向の異なる位置に設けられているティルティングパッドジャーナル軸受19に伝達されるまでに放熱されやすくなる。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受19が固定子7のコイル6の熱の影響で膨張及び縮小してしまうことを極力防止することができる。
【0058】
樹脂からなるジャーナル部材18を回転軸8の軸方向の両端部に設けて、このジャーナル部材18をティルティングパッドジャーナル軸受19に支持されるように構成した。ジャーナル部材18は、樹脂製で低摩擦係数である上に、径方向の厚さ寸法が長いために長期間使用でき、又、薄膜のコーティングのように母材から剥離することがない。従って、駆動モータ12の起動・停止を頻繁に繰返しても、ジャーナル部材18は、ティルティングパッドジャーナル軸受19との摩擦が小さく、又、低摩耗となるから、軸受性能の経年変化が小さく且つ軸受寿命を長くすることができる。
【0059】
本発明者は、ジャーナル部材が、金属製である場合、金属製の上に薄膜のコーティングを施した場合、樹脂製である場合の耐久性及び耐衝撃性の効果の違いを確認した。本発明者は、次の表1及び表2に示す試料(実施例1〜4及び比較例1,2)を製作し、耐久性試験及び耐衝撃性試験を行った。表1に耐久性試験の結果を示し、表2に耐衝撃性試験の結果を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
実施例1は、回転軸8をステンレスで形成し、その回転軸8の表面に、PAI(ポリアミドイミド)と40%のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とを混合して得られる樹脂でコーティングし、この樹脂コーティングした回転軸8をステンレスのティルティングパッドジャーナル軸受19のティルティングパッド22で支持した構成である。
実施例2は、回転軸8にアラミド樹脂で製作したジャーナル部材18(アラミドロッド)を取付け、ジャーナル部材18を実施例1と同様のティルティングパッドジャーナル軸受19のティルティングパッド22で支持した構成である。
比較例1は、実施例1と同様にして得た樹脂コーティングした回転軸8をステンレス製の動圧溝付気体軸受で支持した構成である。
【0063】
このようにして得られた実施例1,2及び比較例1の試料に対して行った耐久性試験は、駆動モータ12をオンオフして、試料が取付けられた回転子9(回転軸8)を繰返し起動・停止させ、試料が何回まで損傷しなかったかを確認する試験である。
表1中の「起動・停止繰返し回数」は、起動・停止の運転を繰返し、起動摩擦トルクが急増したときの回数、言い換えると、摩擦係数が1.0を超えたときまでの回数を表している。試料に当てる軸受の面圧は、4kPa及び8kPaの2通りで行った。尚、駆動モータ12の停止から15000rpmに達するまでを約0.5秒間とし、15000rpmを3秒間維持し、15000rpmから駆動モータの停止までを約0.5秒間とし、この一連の制御を起動・停止の1回とした。
【0064】
実施例3,4及び比較例2の試料に対して行った耐衝撃性試験は、ジャーナル軸受としてのティルティングパッドジャーナル軸受19(実施例3,4)と溝付気体動圧軸受(比較例2)との耐衝撃性の比較の試験である。この試験では、各試料の回転軸8を両端支持し、回転軸8の質量を500g、ジャーナル径を25mm、軸受幅を15mmに設定している。そして、回転軸8と各試料の軸受はステンレスで、実施例3及び比較例2では回転軸8の表面に一般的な固体潤滑剤である二硫化モリブデンを塗布している。実施例4は、回転軸8にジャーナル部材18が取付けられている。このジャーナル部材18は、実施例2と同様のアラミドロッドで形成されている。この耐衝撃性試験は軸受装置を落下させることによって段階的に衝撃荷重を与え、試験後に回転試験を行った。そして、回転軸8の非繰返し振動が規定値の50nm以下であるときの最大の衝撃加速度を求めた。
【0065】
次に、耐久性試験及び耐衝撃性試験の試験結果について説明する。
耐久性試験の結果において、実施例1,2と比較例1との比較から、樹脂コーティングした回転軸8及び回転軸8に取付けたジャーナル部材18をティルティングパッドジャーナル軸受19で支持することで、摺動面の損傷を低減することができる。更に、実施例1と実施例2との比較から、回転軸8にジャーナル部材18を取付けることにより、樹脂コーティングが母材(回転軸8)から剥離する問題はなく、又、樹脂の径方向の厚さ寸法が長くなり、摺動面の損傷を長期間低減することができる。
【0066】
耐衝撃性試験の結果において、実施例3,4と比較例2との比較から、回転軸8及び回転軸8に取付けたジャーナル部材18をティルティングパッドジャーナル軸受19で支持することで、耐衝撃性が向上することが理解できる。更に、実施例3と実施例4との比較から、回転軸8にジャーナル部材18を取付けることにより、樹脂の径方向の厚さ寸法が長くなり、耐衝撃性を一層向上させることができる。
【0067】
又、実使用時においては、ハードディスク装置1は、常に回転軸8をアイドリング回転させておき、読込み及び書込み時に所定の高回転数まで立ち上げていく制御を行う。このとき、ジャーナル部材18が樹脂製であるから、金属で形成する場合に比べて、回転軸8の総重量が軽くなり、上記所定の高回転数まで回転速度を上昇させていくときの加速性に優れたものとなる。
【0068】
ジャーナル部材18の外径を、記録ディスク13の装着部14の外径よりも大きくすることにより、周速と軸受面積とが大きくなり、低速回転でも回転軸8を非接触で支持できる。これにより、回転軸8とティルティングパッドジャーナル軸受19との接触時間を短くでき、ジャーナル部材18の摩耗量を極力低減することができる。又、多数枚の記録ディスク13を装着することで回転軸8の総重量が重くなっても、回転軸8を非接触支持することが可能である。
【0069】
ジャーナル部材18を、ティルティングパッド22との線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内である材料から形成した。具体的には、ジャーナル部材18をアラミド樹脂から成形し、ティルティングパッド22をステンレスから形成した。この場合、アラミド樹脂の線膨張係数は5×10−5℃−1であり、ティルティングパッド22の線膨張係数は1.7×10−5℃−1であり、これらの線膨張係数の差は、3.3×10−5℃−1である。
【0070】
ティルティングパッドジャーナル軸受19の性能に対しては、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との隙間(軸受隙間)の影響が大きく、設定した軸受隙間は、ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19の温度差によって変化する。ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19の実用上想定される温度差を約30℃、軸受隙間の許容変化率を10%とすると、両者の線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内である必要がある。尚、一般にジャーナル部材18である樹脂材料の線膨張係数は大きく方向性を持つ場合が多いが、ジャーナル部材18の線膨張係数の小さな方向とティルティングパッドジャーナル軸受19の線膨張係数の差を4×10−5℃−1以内とし、その方向をジャーナル部材18の径方向にすれば軸受隙間の変化を小さくできる。
【0071】
この構成により、ジャーナル部材18及びティルティングパッドジャーナル軸受19が熱の影響を受けても、両者の線膨張係数の差が比較的小さいので、ジャーナル部材18の回転中に、ジャーナル部材18が大きく膨張して軸受隙間が小さくなり軸受性能が変化したり、ティルティングパッド22に接触したりしまうといった不具合の発生を極力防止することができる。又、ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19が膨張していない場合に、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との間に大きな隙間が生じてしまうことも軸受性能が変化することも極力防止することができる。
【0072】
回転軸8の軸方向の両端面を気体動圧式のスラスト軸受23で支持する構成としたので、低摩擦で回転軸8を回転させることができると共に、液体動圧軸受を用いた構成よりも、回転軸8を高速回転させることができる。そして、スラスト軸受23を傾動可能な構成としたので、回転軸8の端面に対して平行になるように当たり、回転軸8の端面とスラスト軸受23との間で片当たりを防止でき負荷容量を大きくすることができる。
【0073】
スラスト軸受23を予圧手段により回転軸8側に付勢する構成としたので、回転軸8が軸方向にふらつくことを極力防止でき、且つスラスト軸受23と回転軸8との隙間を小さくでき、気体動圧を発生しやすくすることができる。又、予圧手段29を構成する支持体30及びバネ31を伝導性に優れる材料で構成したので、回転軸8側で発生する静電気を蓋部5及びハウジング4側に逃がすことができる。
【0074】
駆動モータ12を回転子9が固定子7の内周側に径方向に隙間を介して配置された内転型としたので、回転子9の慣性モーメントを小さくすることができる。又、コイル6を有した固定子7をハウジング4側に設ける構成としたので、コイル6で発生する熱はハウジング4を伝って外部に拡散されやすくなる。従って、コイル6の熱がティルティングパッドジャーナル軸受19に伝達されて、ティルティングパッドジャーナル軸受19が熱の影響により膨張、縮小しまうことを極力防止することができる。
【0075】
シール部材32で記録ディスク13側の空間とティルティングパッドジャーナル軸受19側の空間とを仕切る構成としたので、駆動モータ12の起動・停止時にジャーナル部材18とティルティングパッド22の接触によって生じた摩耗粉が、記録ディスク13側の空間へ飛散してしまうのを防ぎ、摩耗粉が原因となって記録ディスク13とヘッド15とが接触してしまうのを防ぐことができる。そして、このシール部材32を、回転する部材(回転軸8、ジャーナル部材18)と非接触のラビリンスシール部材から構成することで、回転する部材の回転を維持しつつ、摩耗粉の記録ディスク13側の空間への飛散を防止することができる。
【0076】
ハードディスク装置1のハウジング4内の気体の圧力を大気圧以下の圧力に減圧する構成としたので、ハウジング4内で発生する風損を小さくできる。更に、記録ディスク13やヘッド15が、記録ディスク13の回転で生じる風で振動してしまうことを抑えることができる。これにより、記録ディスク13をより高速に回転させることが可能になる。尚、ハウジング4内を減圧すると、ティルティングパッドジャーナル軸受19周辺の圧力も低下し気体軸受の負荷容量は低下するが、絶対圧力で0.05MPa程度であればティルティングパッドジャーナル軸受19の寸法を大きくすることで必要な軸受負荷容量を得ることができる。
【0077】
ティルティングパッドジャーナル軸受19側の空間と記録ディスク13側の空間とを連通する循環路42を形成し、循環路42中に除塵器48を設けて、除塵器48でハウジング4内の摩耗粉等を回収するように構成したので、摩耗粉等が記録ディスク13側の空間に飛散する不具合を一層防止することができる。
【0078】
ハードディスク装置群2の各ハードディスク装置1のハウジング4の内部の気体を、冷却装置101に通して冷却及び乾燥を行い、再び各ハウジング4に戻す構成とした。この構成により、各ハードディスク装置1のハウジング4の内部の気体を、直接冷却及び乾燥させることができる。又、記録ディスク13や電気部品を熱的に保護するだけでなく回転軸8を冷却できて回転軸8の熱膨張を防止することができると共に、水分が記録ディスク13に付着して記録ディスク13とヘッド15とが張り付いてしまうことを極力防止することができる。
【0079】
次に、本発明の第2の実施形態を図7を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第2の実施形態のハードディスク装置51が、第1の実施形態のハードディスク装置1と異なるところは、多数枚の記録ディスク13を駆動モータ12の片側だけでなく、駆動モータ12の両側に位置させたところによる。即ち、固定子7及び永久磁石10を中心にして左右対称に記録ディスク13、ジャーナル部材18、ティルティングパッドジャーナル軸受19等が配置された構成である。尚、給気孔35は回転軸8の長さに応じて適宜設けられている。
【0080】
第2の実施形態のハードディスク装置51においても、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。
更に、このハードディスク装置51の固定子7と各ティルティングパッドジャーナル軸受19との距離は、第1の実施形態の構成と比較して記録ディスク13が介在する分だけ長くなる。従って、固定子7のコイル6が発熱しても、この熱はティルティングパッドジャーナル軸受19に伝達され難くなる。これにより、ジャーナル部材18やティルティングパッドジャーナル軸受19のティルティングパッド22が熱の影響により膨張或いは縮小してしまうことを、第1の実施形態の構成に比較してより良く防止することができる。
【0081】
次に、本発明の第3の実施形態を図8及び図9を参照して説明する。尚、上記第2の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第3の実施形態のハードディスク装置61が、第2の実施形態のハードディスク装置51と異なるところは、回転軸8の両端部にカラー17及びジャーナル部材18が設けられておらず、その代わりに回転軸8の両端部が径大に形成され、ティルティングパッドジャーナル軸受19が回転軸8を直接支持する構成である。
【0082】
又、第3の実施形態は、第1の実施形態の予圧手段29の少なくとも一方を予圧手段62に変更した構成である。即ち、図9に示すように、回転軸8の両端部うちの少なくともいずれか一方の端部の中央部に、凹部63が形成されている。この凹部63内に予圧手段62が設けられている。この予圧手段62は、支持体30と同じ構成の支持体64と、バネ31と同じ構成のバネ65とから構成されている。又、予圧手段62が設けられている側の蓋部5には、凹部28よりも浅い凹部66が形成されている。この凹部66内には、自動調心のために支持体30と同じ構成の支持体67が設けられている。
【0083】
これらの構成により、スラスト軸受23は、支持体67を中心として傾動可能に支持された状態になる。又、回転軸8が回転した際に生じる静電気は、回転軸8から直接スラスト軸受23に、又はバネ65及び支持体64を介してスラスト軸受23に伝達される。そして、スラスト軸受23に伝達された静電気は、直接蓋部5に、又は支持体67を介して蓋部5に伝達されるようになる。
第3の実施形態のハードディスク装置61においても、第2の実施形態のハードディスク装置51と同様の作用効果を奏する。
【0084】
次に、本発明の第4の実施形態を図10を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第4の実施形態のハードディスク装置71が、第1の実施形態のハードディスク装置1と異なるところは、駆動モータ72が外転型の構成である。即ち、固定子7が回転軸8に近接して配置されるように、ハウジング4の一部、この場合、ハウジング4の支持部73が回転軸8側まで延びている。支持部73は、図10に示すように縦断正面がL字状をなしている。そして、固定子7とティルティングパッドジャーナル軸受19とは、支持部73によって仕切られている。又、固定子7の径方向の外側には、固定子7に隙間を介して永久磁石10が設けられている。永久磁石10は、ヨーク11及び保持部材74を介して回転軸8に取付けられている。保持部材74は、円筒状で記録ディスク13側が閉塞され、回転軸8に固定されている。そして、永久磁石10が保持部材74の内周面に固定されており、固定子7が保持部材74に内包されている。
【0085】
第4の実施形態のハードディスク装置71においても、固定子7のコイル6に電流を流すことにより、回転軸8及び回転子9は回転する。これにより、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。又、本実施形態は、回転軸8の外径が大きくなるので、大きなトルクが得られる。
更に、固定子7のコイル6が発熱しても、この熱は支持部73を介してハウジング4に伝達されて拡散される。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受19が固定子7のコイル6の熱の影響を受けてしまうことを極力防止することができる。
【0086】
次に、本発明の第5の実施形態を図11を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第5の実施形態のハードディスク装置81が、第1の実施形態のハードディスク装置1と異なるところは、駆動モータ82が外転型の構成である。即ち、固定子7は、蓋部5から回転軸8側に延びる円柱状の支持部83に固定されている。回転軸8は、この固定子7を内包するように、回転軸8の端部のうちの固定子7が位置する側の端部が円筒状に形成されている。この回転軸8の空間内に内周面には、永久磁石10が固定されている。固定子7と永久磁石10との間には、隙間が設けられている。又、固定子7が位置する側(図11で左側)のスラスト軸受84には、支持部83が貫通する孔が形成されている。そして、ハウジング4のスラスト軸受84側には予圧手段29は設けられていない。尚、回転軸8の端部のうちの固定子7が位置しない側(図11で右側)の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0087】
第5の実施形態のハードディスク装置81においても、固定子7のコイル6に電流を流すことにより、回転軸8及び回転子9は回転する。これにより、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。尚、駆動モータ82は外転型であるので、外転型の効果を奏する。
更に、固定子7のコイル6が発熱しても、この熱は支持部83を介して蓋部5に伝達されて拡散される。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受19が固定子7の熱の影響を受けてしまうことを極力防止することができる。
【0088】
次に、本発明の第6の実施形態を図12を参照して説明する。尚、上記第3の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第6の実施形態のハードディスク装置91が、第3の実施形態のハードディスク装置61と異なるところは、駆動モータ92が外転型の構成である。即ち、固定子7が回転軸8に近接して配置されるように、ハウジング4の一部、この場合、支持部93が回転軸8側まで延びている。支持部93は、縦断正面がL字状をなし、先端側に固定子7が固定されている。この固定子7は、記録ディスク13間、即ち、回転軸8の軸方向の中央に相当する位置に配置されている。又、固定子7の径方向の外側には、固定子7に隙間を介して永久磁石10が設けられている。永久磁石10は、ヨーク11及び保持部材94を介して回転軸8に取付けられている。保持部材94は、円筒状で記録ディスク13側が閉塞され、回転軸8に固定されている。そして、永久磁石10が保持部材94の内周面に固定されており、固定子7が回転軸8に内包されている。
【0089】
第6の実施形態のハードディスク装置91においても、固定子7のコイル6に電流を流すことにより、回転軸8及び回転子9は回転する。これにより、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。更に、駆動モータ92は外転型であるので、外転型の効果を奏する。
又、固定子7のコイル6が発熱しても、この熱は支持部93を介してハウジング4に伝達されて拡散される。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受19が固定子7の熱の影響を受けてしまうことを極力防止することができる。
【0090】
次に、本発明の第7の実施形態を図13を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第7の実施形態のスラスト軸受96が、第1の実施形態のスラスト軸受23と異なる。即ち、スラスト軸受96は、スラスト軸受23と同様に気体動圧式の軸受であるが、第1の実施形態の溝部24、傾斜部25及び平坦部26の代わりに、渦巻き状の溝部97及び平坦部98が形成されている。溝部97及び平坦部98は、周方向に交互に配置され、外周側に向かって広くなっている。尚、第7の実施形態では、傾斜部は設けられていない。
【0091】
このスラスト軸受96をスラスト軸受23の代わりに使用した場合において、回転軸8のジャーナル部材18がスラスト軸受96の溝部97及び平坦部98の渦巻き方向に回転すると、ジャーナル部材18とスラスト軸受96との間に存在する気体はスラスト軸受96の内周側に移動し、ジャーナル部材18とスラスト軸受96との間の気体動圧が高くなる。その結果、スラスト軸受23がジャーナル部材18、即ち、回転軸8を気体動圧で支持するようになる。これにより、スラスト軸受96は、第1の実施形態のスラスト軸受23と同様の作用効果を奏する。
【0092】
次に、本発明の第8の実施形態を図14を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第8の実施形態のハードディスク装置111は、冷却装置101と連結されない構成のものである。即ち、第8の実施形態のハウジング4には、排気孔34及び給気孔35は形成されていない。尚、第1の実施形態のハウジングの排気孔34及び給気孔35を閉塞する構成でも良い。
上記構成においては、ハウジング4内の冷却、減圧、除塵が行われない以外は、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。
【0093】
尚、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
軸受の潤滑流体である気体は、空気が一般的であるが、窒素ガス、ヘリウム等の気体を使用しても良い。
第1,第2,第4,第5,第8の実施形態ではカラー17が用いられているが、回転軸8にジャーナル部材18を直接取付ける構成としても良い。
回転軸の両端部の構成は、互いが異なった形状でも良く、例えば第1から第6の実施形態の構成の端部を適宜組合せても良い。
冷却装置、減圧手段、除塵手段は、必要に応じて単独で或いはこれらを適宜組合せて構成しても良い。
【0094】
予圧手段29及び予圧手段62とを適宜組合せても良く、必要がない場合には予圧手段を省略しても良い。
複数台のハードディスク装置の内部の気体を冷却装置101に送る構成であるが、このハードディスク装置の種類は、第1から第7の実施形態のハードディスク装置1,51,61,71,81,91の異なる種類を組合せても良い。
上記した構成部品の数及び材料等について、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるハードディスク装置を示す縦断正面図
【図2】ハードディスク装置ユニットの縦断正面図と冷却システムの概略図
【図3】ティルティングパッドジャーナル軸受の縦断側面図
【図4】スラスト軸受の正面図
【図5】ジャーナル部材とスラスト軸受との関係を示す図
【図6】予圧手段を拡大して示す縦断正面図
【図7】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図8】本発明の第3の実施形態を示す図1相当図
【図9】図6相当図
【図10】本発明の第4の実施形態を示す図1相当図
【図11】本発明の第5の実施形態を示す図1相当図
【図12】本発明の第6の実施形態を示す図1相当図
【図13】本発明の第7の実施形態を示す図4相当図
【図14】本発明の第8の実施形態を示す図1相当図
【符号の説明】
【0096】
図面中、図中、1,51,61,71,81,91,111はハードディスク装置、4はハウジング、6はコイル、7は固定子、8は回転軸、9は回転子、10は永久磁石、12,72,82,92は駆動モータ、13は記録ディスク、14は装着部、15はヘッド、18はジャーナル部材、19はティルティングパッドジャーナル軸受、21はピボット、22はティルティングパッド、23,96はスラスト軸受、29,62は予圧手段、32はシール部材、36は還流ファン(送風手段)、37は冷却器(冷却手段)、38は乾燥器(乾燥手段)、40は収集路、41は配給路、42は循環路、44は減圧手段、48は除塵器(ろ過手段)、101は冷却装置、102は冷却システムを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に記録ディスクが装着されたハードディスク装置、ハードディスク装置の冷却装置及びハードディスク装置の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、ハードディスク装置には、大容量のデータを正確且つ高速で読込み及び書込みができることが要求されている。これらの要求に応える技術として液体動圧軸受及び気体動圧軸受を用いたハードディスク装置が検討されている。
液体動圧軸受を用いたハードディスク装置は、例えば特許文献1に開示されている。このハードディスク装置は、記録ディスクが装着された回転軸の両端部を、潤滑油による液体動圧で支持する構成である。
気体動圧軸受を用いたハードディスク装置は、例えば特許文献2に開示されている。このハードディスク装置は、記録ディスクが装着された回転軸の一端部を、空気による気体動圧で支持する構成である。
【特許文献1】特開2000−41360号公報
【特許文献2】特開2004−270850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、ハードディスク装置に装着される記録ディスクは多くても数枚である。しかし、サーバ等で使用されるハードディスク装置においては、一層の大容量化、高速処理化が要求されている。これに対処するために、単位面積当たりの記録密度を向上させる他に記録ディスクを多数枚装着し、回転振動が小さくなるよう高精度回転することが検討されている。更に、高速処理化のために記録ディスクを高速回転することが検討されている。一方、ハードディスク装置特有の使用条件として、ハードディスク装置が転倒したり落下したりした場合や運送時の衝撃などを想定して、据え置き型のハードディスク装置でも、動作時で70G、非動作時で300G程度の外部からの衝撃荷重に対しても耐えられることが要求されている。
【0004】
特許文献1のハードディスク装置の回転軸に多数枚の記録ディスクを装着した場合、潤滑油の粘性が大きいため、発熱が大きくなることや、潤滑油の漏れが生じる可能性があるため、高速回転に限界がある。
特許文献2のハードディスク装置の回転軸では、気体動圧軸受を用いていることにより、高速回転は可能である。しかし、気体の粘度は潤滑油の粘度の1000分の1と小さいため、ダンピング性能と軸受負荷容量が小さく、衝撃荷重に弱い問題がある。特に、回転軸が片持ち支持された構造であるので、衝撃時に回転軸の軸心まわりに作用する衝撃モーメントに対して弱い。更に、多数枚のディスクを装着した場合には、回転軸の質量が大きくなり衝撃荷重も大きくなり軸受の耐衝撃性の向上が課題となる。
【0005】
そこで、回転軸を気体動圧軸受により両端支持することが考えられる。しかしながら、多数枚の記録ディスクを回転軸に装着するためには回転軸を長くする必要がある。この場合、回転軸が長くなればなるほど、軸受を装着するハウジングの加工誤差や組立て誤差等によって回転軸の両端を支持する軸受同士が心ずれを生じやすくなる。又、衝撃時に回転軸と軸受が部分的に接触し損傷する等の不具合が生じやすくなり、その結果、やはり、高速回転の実現が困難となる。
【0006】
又、多数枚のディスクを高速回転させるとディスクの風損やモータの発熱等で高温になるため、ハードディスクを強制冷却する必要がある。従来はハードディスク装置の外側からハウジングを介してハードディスク装置内部の気体を通風冷却や水冷却をしている。しかしながら、ハウジングを介して熱交換が行われるため、効率が良くない。又、ハードディスク装置の内部の空気や回転する部材(回転軸等)をハウジング内面の限られた面積で冷却するため、ハウジングに固定された軸受と回転軸との間(軸受隙間)に温度差が生じやすい。軸受隙間が温度差によって縮小すると、最悪の場合には回転軸と軸受が焼付いてしまうため、軸受隙間を大きめに設定する必要がある。しかし、気体軸受は、潤滑剤である気体の粘度が小さく、軸受性能が軸受隙間に大きく左右されるため、軸受隙間が大きいとダンピング性能や軸受負荷容量が小さく、動作時の耐衝撃性が低くなり、又、非動作時においてもガタが大きいために耐衝撃性に欠けるという問題があった。
【0007】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、多数枚の記録ディスクを装着した回転軸であっても、高速回転可能で且つ衝撃荷重に耐えられるハードディスク装置を提供するところにあり、第2の目的は、上記ハードディスク装置を効率良く冷却して適正な軸受隙間を維持することによって、高速且つ高精度の回転性能を維持できるハードディスク装置の冷却装置及びハードディスク装置の冷却システムを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、記録ディスクが装着された回転軸を、両端支持構造とし、当該回転軸の両端部を支持する軸受を、傾動自在な複数のティルティングパッドを周方向に配列し当該ティルティングパッドと回転軸の端部との間に気体を介在させて回転軸を支持する気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受としたことを特徴としている。
【0009】
ティルティングパッドジャーナル軸受は、ティルティングパッド自体が傾動する機構により各ティルティングパッドで発生する圧力の合力の方向が回転軸の中心方向を向いているため、回転軸の軸がアンバランス等の変動荷重で偏心した場合でもティルティングパッドジャーナル軸受の中心方向に復元する。従って、ティルティングパッドジャーナル軸受は、軸受面が固定した軸受に見られるようなホワールを極力生じさせない特徴を持っている(例えば、社団法人 日本トライボロジー学会編、「トライボロジーハンドブック」、養賢堂出版、2001年3月30日発行、p.63 参照)。
【0010】
多数枚の記録ディスクを回転軸に装着するために回転軸が長い場合に、ティルティングパッドジャーナル軸受を装着するハウジングの加工誤差や組立て誤差等によって回転軸の両端を支持するティルティングパッドジャーナル軸受同士が心ずれすることがある。例えば、ハウジングの両端のティルティングパッドジャーナル軸受を取付ける嵌合孔が心ずれしている場合、径方向にも軸方向にも傾動可能なティルティングパッドジャーナル軸受による両端支持構造により、ティルティングパッドはピボットの先端の支持点周りの圧力によるモーメントがつり合うように傾動し、心ずれは解消される。
【0011】
又、ティルティングパッドジャーナル軸受に回転軸の衝撃荷重が作用した場合、ティルティングパッドが回転軸と平行になるように傾動するので、そのティルティングパッドの傾動により衝撃力が吸収され、又、回転軸がティルティングパッドに局部的ではなく広い範囲で受けられるようになり、更には、回転軸とティルティングパッドとの間に存在する気体がクッションの作用をなす等によって、回転軸やティルティングパッドの損傷を極力防止することができる。
【0012】
本発明は、固定子、記録ディスク及びティルティングパッドジャーナル軸受が、回転軸の軸方向の異なる位置に配置されている構成とすることができる。
このように構成によれば、固定子のコイルで発生した熱は、回転軸の軸方向の異なる位置に設けられているティルティングパッドジャーナル軸受に伝達されるまでに放熱されやすくなる。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受が固定子のコイルの熱の影響で膨張及び縮小してしまうことを極力防止することができる。
【0013】
本発明は、回転軸の軸方向の両端部に、回転軸と一体に回転する樹脂からなる円筒状のジャーナル部材を設け、このジャーナル部材がティルティングパッドジャーナル軸受に支持される構成とすることができる。
このように構成すれば、ジャーナル部材は、樹脂製で低摩擦係数である上に、径方向の厚さ寸法が長いために長期間使用でき、又、薄膜のコーティングのように母材から剥離することがない。従って、駆動モータの起動・停止を頻繁に繰返しても、ジャーナル部材は、ティルティングパッドジャーナル軸受との摩擦が小さく、又、低摩耗となるから、軸受性能の経年変化が小さく且つ軸受寿命を長くすることができる。
【0014】
本発明は、ハードディスク装置のハウジング内の気体の圧力を大気圧以下の圧力に減圧する構成とすることができる。
このように構成すれば、ハウジング内で発生する風損を小さくできる。更に、記録ディスクや、記録ディスクの読込み及び書込みを行うヘッドが記録ディスクの回転で生じる風で振動してしまうことを抑えることができる。これにより、記録ディスクをより高速に回転させることが可能になる。尚、ハウジング内を減圧すると、ティルティングパッドジャーナル軸受周辺の圧力も低下し気体軸受の負荷容量は低下するが、絶対圧力で0.05MPa程度であればティルティングパッドジャーナル軸受の寸法を大きくすることで必要な軸受負荷容量を得ることができる。
【0015】
本発明は、ハウジングに、記録ディスク側の空間とティルティングパッドジャーナル軸受側の空間とを仕切るシール部材を設け、このシール部材を、回転する部材と非接触のラビリンスシール部材から構成することができる。
【0016】
回転軸は、駆動モータの起動・停止時に気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受に接触するので、その際に摩耗紛が発生することがある。しかし、シール部材で記録ディスク側の空間とティルティングパッドジャーナル軸受側の空間とを仕切ることにより、駆動モータの起動・停止時にジャーナル部材とティルティングパッドの接触によって生じた摩耗粉が、記録ディスク側の空間へ飛散してしまうのを防ぎ、摩耗粉が原因となって記録ディスクとヘッドとが接触してしまうのを防ぐことができる。そして、このシール部材を、回転する部材と非接触のラビリンスシール部材から構成することで、回転する部材の回転を維持しつつ、摩耗粉の記録ディスク側の空間への飛散を防止することができる。尚、ここで言う回転する部材とは、回転軸、及び回転軸にジャーナル部材が設けられた場合にはジャーナル部材、回転軸にジャーナル部材以外の部材が設けられた場合にはその部材を指す。
【0017】
本発明は、ハウジングに、回転軸の軸方向の両端面を支持する2個のスラスト軸受を傾動可能に設け、この両スラスト軸受を気体動圧式の軸受で構成し、両スラスト軸受のうちの少なくともいずれか一方を、予圧手段により回転軸側に付勢するように構成することができる。
【0018】
このように回転軸を気体動圧式のスラスト軸受で支持することにより、低摩擦で回転軸を回転させることができると共に、液体動圧軸受を用いた構成よりも、回転軸を高速回転させることができる。そして、スラスト軸受は、傾動可能な構成であるので、回転軸の端面に対して平行になるように当たり、回転軸の端面とスラスト軸受との間で片当たりを防止でき負荷容量及び耐衝撃性を大きくすることができる。
スラスト軸受を予圧手段により回転軸側に付勢する構成としたので、回転軸が軸方向にふらつくことを極力防止でき、且つスラスト軸受と回転軸との隙間を小さくでき、気体動圧を発生しやすくすることができる。
【0019】
本発明は、駆動モータを回転子が固定子の内周側に径方向に隙間を介して配置された内転型とすることができる。
このように構成すれば、回転子の慣性モーメントを小さくすることができる。
【0020】
本発明は、ジャーナル部材の外径を、記録ディスクの装着部の外径よりも大きく設定することができる。
このように構成すれば、周速と軸受面積を大きくできるので、低速回転でも回転軸を非接触で支持できる。これにより、回転軸とティルティングパッドジャーナル軸受との接触時間を短くでき、ジャーナル部材の摩耗量を極力低減することができる。又、多数枚の記録ディスクを装着することで回転軸の総重量が重くなっても、回転軸を非接触支持することが可能である。
【0021】
本発明は、ジャーナル部材とティルティングパッドジャーナル軸受との線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内の材料から形成することができる。
このように構成すれば、ジャーナル部材及びティルティングパッドジャーナル軸受が熱の影響を受けても、両者の線膨張係数の差が比較的小さいので、回転中にジャーナル部材が大きく膨張して軸受隙間が小さくなり軸受性能が変化したり、ティルティングパッドに接触してしまうといった不具合の発生を極力防止することができる。又、ジャーナル部材とティルティングパッドジャーナル軸受が膨張していない場合に、ジャーナル部材とティルティングパッドとの間に大きな隙間が生じてしまうことも軸受性能が変化することも極力防止することができる。
【0022】
本発明は、ティルティングパッドジャーナル軸受側の空間と記録ディスク側の空間とを連通する循環路を形成し、ハウジングの内部の気体をティルティングパッドジャーナル軸受側の空間から循環路に送り、循環路から記録ディスク側の空間に気体を送るようし、循環路中にろ過手段を設けるように構成しても良い。
このように構成によれば、摩耗紛がろ過手段により回収されるので、摩耗粉が記録ディスク側の空間に飛散する不具合をより一層防止することができる。
【0023】
以上のようなハードディスク装置を冷却するために、本発明は、ハウジングの内部の気体を吸込んだ後に当該ハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、送風手段から吐出されてハウジングの内部に戻される気体を冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段とを備えた冷却装置を採用することができると共に、上記のハードディスク装置とこの冷却装置とを有してなるハードディスク装置の冷却システムを採用することができる。
【0024】
このように構成すれば、ハードディスク装置のハウジングの内部の気体を、直接冷却及び乾燥させることができる。又、記録ディスクや電気部品を熱的に保護するだけでなく回転軸を冷却できて回転軸の熱膨張を防止し軸受隙間の変化を小さくすることができると共に、水分が記録ディスクに付着して記録ディスクとヘッドとが張り付いてしまうことを極力防止することができる。
【0025】
又、本発明では、以上のようなハードディスク装置を複数台まとめたハードディスク装置群を冷却するために、各ハウジングの内部の気体を、並列の収集路を介して吸込んだ後に並列の配給路を介してそれぞれのハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、送風手段から吐出された気体を配給路に至るまでの間に冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段とを備えた冷却システムを採用することができる。
【0026】
このように構成すれば、ハードディスク装置群のハウジングの内部の気体を、冷却及び乾燥させることができる。又、ハードディスク装置群の各回転軸を冷却できて回転軸の熱膨張を防止し軸受隙間の変化を小さくすることができると共に、水分が記録ディスクに付着して記録ディスクとヘッドが張り付いてしまうことを極力防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の第1の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。
図1にハードディスク装置1の全体構成を示し、図2にハードディスク装置1を複数台備えたハードディスク装置群2、ハードディスク装置1の冷却装置101、及びハードディスク装置群2と冷却装置101とを有してなるハードディスク装置1の冷却システム102を示す。冷却装置101は、ハードディスク装置群2の各ハードディスク装置1のハウジング4の内部を冷却する装置である。この冷却装置101及び冷却システム102は、後で詳述する。
【0028】
ハードディスク装置1の外郭は、図1に示すようにハウジング4と2個の蓋部5とを組合せて構成されている。ハウジング4及び蓋部5は、軽量で熱伝導性に優れる材料、例えばアルミニウム製である。ハウジング4は、内部に円筒状の空間を有している。蓋部5は、ハウジング4の円筒部分の両端部を塞ぐように設けられている。尚、ハウジング4は実際には複数の部品を組合せて構成されている。
【0029】
ハウジング4の内部には、複数のコイル6を備えた円環状の固定子7が装着されている。この場合、固定子7の外周側はハウジング4に固定されており、コイル6の熱がハウジング4に伝達されやすくなっている。又、ハウジング4の内部には、回転軸8が回転可能に支持されている。この回転軸8は、磁性材料または軽金属材料、本実施形態ではアルミニウムでできており、回転軸8にモータの回転子9が装着されている。この回転軸8の軸は、固定子7の中心を通るように設けられている。
【0030】
回転子9は、回転軸8の外周面であって固定子7の内側に存する部分に設けられている。この回転子9は、円筒状の永久磁石10を有している。本実施形態では、回転軸8に円環状のヨーク11を介して永久磁石10を固定し回転子9が構成される。そして、固定子7及び回転子9及びヨーク11により永久磁石型の駆動モータ12が構成されている。この駆動モータ12は、回転子9が固定子7の内周側に径方向に隙間を介して配置された内転型である。
【0031】
回転軸8の軸方向中央部は、多数枚、この場合10枚の記録ディスク13を装着した装着部14とされている。即ち、この装着部14は、固定子7に対して回転軸8の軸方向に異なる位置にある。各記録ディスク13は、一般に用いられるハードディスクと同一構成の磁気ディスクである。尚、記録ディスク13は、光ディスクであっても良い。
【0032】
ハウジング4には、記録ディスク13からデータを読込んだり、記録ディスク13にデータを書込んだりするためのヘッド15が各記録ディスク13に対応して設けられている。各ヘッド15は、各記録ディスク13を挟むようにした構成であり、記録ディスク13の表面及び裏面に微小な隙間を介して設けられている。尚、ヘッド15は、図示しない駆動機構によって記録ディスク13の所定の位置に移動する構成である。
【0033】
ここで、回転軸8の軸受構成につき説明する。
回転軸8の両端部には、図1に示すように記録ディスク13が装着された装着部14の外径よりも小さい外径の径小部16が形成されている。回転軸8の径小部16の外周側には、回転軸8と一体に回転する円筒状の金属製のカラー17が固着されている。このカラー17の外周側には、回転軸8及びカラー17と一体に回転する円筒状のジャーナル部材18が固着されている。ジャーナル部材18の外径は、回転軸8の装着部14の外径よりも大きく設定されている。又、ジャーナル部材18は、後述するティルティングパッドジャーナル軸受19との線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内である樹脂からなる材料、例えばアラミド樹脂からなっている。ジャーナル部材18の軸方向の長さは、カラー17の軸方向の長さよりもやや長めに設定され、これにより、ジャーナル部材18の端面が回転軸8の端面及びカラー17の端面よりも軸方向の外側に突出している。
【0034】
ここで、回転軸8の外径仕上げ加工は、回転軸8の両端にカラー17及びジャーナル部材18を嵌め着けた後に、ジャーナル部材18の外径仕上げ加工と同時に行うようにしており、これによって回転軸8とジャーナル部材18との高い同心精度が確保される。尚、記録ディスク13は、一旦回転軸8からカラー17及びジャーナル部材18を取外した後に、回転軸8に嵌込まれる。そして、再度、回転軸8にカラー17及びジャーナル部材18が取付けられる。
【0035】
回転軸8は、両端部が気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受19,19で支持された、いわゆる両端支持構造である。本実施形態では、回転軸8の両端部の外周側にジャーナル部材18,18が位置しているので、ティルティングパッドジャーナル軸受19,19は、直接的にはジャーナル部材18,18を介して回転軸8を支持する構成である。又、このティルティングパッドジャーナル軸受19は、固定子7及び記録ディスク13と回転軸8の軸方向の異なる位置に配置されている。尚、本実施形態では、気体として空気を用いて説明する。
【0036】
ティルティングパッドジャーナル軸受19は、アルミニウムやステンレス等の金属製であり、図1及び図3に示すように円筒状の外輪20と、この外輪20の内周面から中心に向かって複数本、本実施形態では3本突出し各先端部が球面状であるピボット21と、各ピボット21の先端部に径方向にも軸方向にも傾動自在に支持されたティルティングパッド22とを有して構成されている。外輪20は、ハウジング4に形成された嵌合孔4a内に嵌合固定されている。ティルティングパッド22は、一つの円筒を相互間に隙間が生じるように3分割したような円弧面状をなしている。
【0037】
このティルティングパッド22の外周面には、円弧に沿った方向の一端に偏って凹部22aが形成されており、この凹部22a内にピボット21を嵌込むことによって、このティルティングパッド22が外輪20の周方向に配列されている。この場合、ティルティングパッド22は、外周側の面の中間よりもやや回転軸8が回転する方向(図3では、矢印の先端が位置する方向(反時計回り方向))側の部位にピボット21が位置するように、ピボット21に取付けられている。そして、ティルティングパッドジャーナル軸受19は、ティルティングパッド22の回転軸8の回転方向の前側が回転軸8の外周面に最も接近するように構成されている。
【0038】
ハウジング4の内部であって蓋部5の内側の面には、図1に示すように回転軸8の軸方向の両端面、この場合、ジャーナル部材18の端面を支持する2個のスラスト軸受23,23が設けられている。スラスト軸受23は、ステンレス製の気体動圧式の軸受である。即ち、図4及び図5に示すようにスラスト軸受23の回転軸8側に位置する表面部には、溝部24、傾斜部25及び平坦部26が周方向に等間隔に複数形成されている。溝部24は、径方向に延びる溝であり、溝の幅は外周側に向かって広くなっている。平坦部26は、回転軸8の端面に最も近づくように形成された面である。傾斜部25は、溝部24と平坦部26をつなぐ傾斜面であり、周方向に傾斜している。
【0039】
このスラスト軸受23は、図6に示すように両スラスト軸受23,23のうちの少なくともいずれか一方、本実施形態では両スラスト軸受23,23の裏面の中心部分に円錐状の凹部27が形成されている。又、蓋部5の内側の面にあってスラスト軸受23の凹部27に対応する位置には、凹部28が形成されている。
【0040】
凹部27と凹部28とで構成される空間には、スラスト軸受23を回転軸8のジャーナル部材18側の端面に付勢する予圧手段29が設けられている。予圧手段29は、球状の支持体30と、支持体30をスラスト軸受23側に付勢するバネ31とを有して構成されている。支持体30は、導電性に優れる材料、例えば金属製であり、支持体30の一部がスラスト軸受23の凹部27に当接し、他方の部分がバネ31に当接している。バネ31も、導電性に優れる材料、例えば金属製である。これらの構成により、スラスト軸受23は、支持体30を中心として傾動可能に支持された状態になり、又、回転軸8が回転した際に生じる静電気は、支持体30及びバネ31を介して蓋部5及びハウジング4側に逃がされる構成である。
【0041】
記録ディスク13とティルティングパッドジャーナル軸受19との間には、シール部材32が設けられている。このシール部材32は、回転する部材、この場合回転軸8及びジャーナル部材18と非接触のラビリンスシール部材である。シール部材32は、具体的には、ハウジング4に、回転軸8の外周面に向かって延び、記録ディスク13側の空間とティルティングパッドジャーナル軸受19側の空間とを仕切るように設けられている。この場合、シール部材32のハウジング4側は、ハウジング4に固定される。シール部材32の回転軸8側は、回転軸8(径小部16)とカラー17とジャーナル部材18とによって形成された回転軸8の軸中心側に凹む凹部33内に非接触に挿入されている。尚、シール部材32の回転軸8側の先端部は、凹凸が形成されていても、或いは平坦でも良い。図面では平坦で示している。
【0042】
このシール部材32は、ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19との摩擦によって生じる摩耗粉、及びジャーナル部材18とスラスト軸受23との摩擦によって生じる摩耗粉が記録ディスク13側の空間に移動することを極力防止するためのものである。尚、シール部材32をハウジング4に一体に形成しても良い。
【0043】
ハードディスク装置1のハウジング4には、図1及び図2に示すように排気孔34及び給気孔35が形成されている。排気孔34は、ハウジング4内の気体を外部に排出するための孔であり、記録ディスク13とティルティングパッドジャーナル軸受19との間、本実施形態ではティルティングパッドジャーナル軸受19とシール部材32との間に形成されている。給気孔35は、ハウジング4内に気体を供給するための孔であり、本実施形態ではハウジング4の記録ディスク13が位置する部分、即ち、シール部材32,32間に形成されている。給気孔35は、ハウジング4に1箇所以上形成されている。
【0044】
上記した冷却装置101は、上述したようにハードディスク装置群2の各ハードディスク装置1のハウジング4の内部を冷却する装置であり、送風手段である還流ファン36と、冷却手段である冷却器37と、乾燥手段である乾燥器38とを有して構成されている。
【0045】
冷却装置101の入り口とハウジング4の排気孔34の出口とは収集路40で連通されている。収集路40は、一方側が複数の排気孔34と連通するように並列の形状になっており、他方側が冷却装置101につながるように一つの経路になっており、中間部で合流するように形成されている。冷却装置101の出口とハウジング4の給気孔35の入り口とは配給路41で連通されている。配給路41は、一方側が冷却装置101につながるように一つの経路になっており、他方側が複数の給気孔35と連通するように並列の形状になっており、中間部で分岐するように形成されている。この収集路40と配給路41とから循環路42が形成される。この循環路42により、ティルティングパッドジャーナル軸受19側の空間と記録ディスク13側の空間とが連通された構成になる。
【0046】
還流ファン36は、複数台のハードディスク装置1の各ハウジング4の内部の気体を、収集路40を介して吸込んだ後に冷却装置101及び配給路41を介してそれぞれのハウジング4の内部に戻す循環用のファンであり、冷却装置101の上流部に設けられている。
冷却器37は、還流ファン36から吐出された気体を配給路41に至るまでの間に冷却するものであり、この場合、冷凍サイクルの冷却器又は空冷、水冷の熱交換器によって構成されている。
乾燥器38は、還流ファン36から吐出された気体、具体的には冷却器37で冷却された気体を配給路41に至るまでの間に乾燥するものである。
【0047】
配給路41中の分岐する部分(分岐点)より上流側には、ハウジング4内の気体の圧力を大気圧以下の圧力に減圧する減圧手段44が設けられている。この減圧手段44は、減圧ポンプ45と圧力制御弁46とを有して構成されている。又、ハウジング4内には、図示しない圧力センサが設けられている。減圧ポンプ45は、圧力センサが所定の圧力、例えば大気圧の半分の圧力以上を検出したときに、減圧する作動が開始されるように設定されており、この場合、絶対圧力で0.05MPaになるまで減圧される。この減圧時のハウジング4内の余分な気体は、外部に放出される。圧力制御弁46は、この圧力制御弁46の出口側(排出側)の気体の圧力が絶対圧力で0.05MPaになるように、圧力制御弁46からの排出量を調整している。
【0048】
配給路41中の減圧手段44と分岐点との間には、ろ過手段である除塵器48が設けられている。除塵器48は、還流する気体に含まれる摩耗粉等を取り除く装置であり、フィルタや遠心分離器、いわゆるサイクロン等により構成される。
【0049】
次に上記構成のハードディスク装置1の作用及び効果について説明する。尚、ハードディスク装置1は横軸形に設置されている場合で説明するが、縦軸形に設置された場合であっても良い。
固定子7のコイル6に電流を流すことにより、回転子9と共に回転軸8も回転し、記録ディスク13も回転する。
そして、回転軸8の回転が開始すると、当初、回転軸8のジャーナル部材18,18はティルティングパッドジャーナル軸受19,19の内周面に摺接しながら回転する。
【0050】
一方、回転軸8が回転し始めると、回転軸8の周りの気体、この場合空気がジャーナル部材18とティルティングパッド22との隙間に引込まれる。隙間内に引込まれた気体は、回転軸8の回転方向の前側に送られ、回転軸8の回転速度の上昇と共に、隙間内の気体の圧力は次第に高くなる。そして、回転軸8がある回転速度に達すると、ジャーナル部材18は、ティルティングパッド22との間に介在する気体の動圧により、非接触で支持される。
【0051】
更に、ティルティングパッドジャーナル軸受19にあっては、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との隙間内の各部の気体圧力を合成した圧力は、一点(回転軸8の回転中心)を通る方向に作用するという特性がある。このため、回転軸がほぼ回転数の約1/2の周波数で旋回するホワール現象を生ずることなく回転する。従って、回転軸8は、低速回転域から、所定の高速回転まで安定且つ高精度に回転する。
【0052】
ところで、多数枚の記録ディスク13を回転軸8に装着するために回転軸8が長い場合に、ティルティングパッドジャーナル軸受19を装着するハウジング4の加工誤差や組立て誤差等によって回転軸8の両端を支持するティルティングパッドジャーナル軸受19同士が心ずれすることがある。この場合、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との隙間内の気体の圧力について、円周方向各位置において大きさは異なるが、円周方向各位置の軸方向に沿った圧力については、モーメントがつり合うように傾動する。これにより、回転軸8の両端部を支持するティルティングパッドジャーナル軸受19,19の軸心が一致するようになる。従って、回転軸8は、軸心が一致した2つのティルティングパッドジャーナル軸受19によって支持され、心ぶれや片当たり等を生ずることなく回転する。
【0053】
又、回転軸8の回転が開始すると、ジャーナル部材18の端面はスラスト軸受23の表面に摺接しながら回転する。回転軸8が回転すると、回転軸8のスラスト荷重はスラスト軸受23によって支持される。即ち、回転軸8のジャーナル部材18がスラスト軸受23の溝部24から平坦部26の周方向に回転すると、ジャーナル部材18とスラスト軸受23との間に存在する気体は平坦部26に移動し、ジャーナル部材18とスラスト軸受23の平坦部26との隙間内の気体の動圧は次第に高くなる。そして、回転軸8がある回転速度に達すると、ジャーナル部材18は、スラスト軸受23との間に介在する気体の動圧により非接触で支持される。
【0054】
このような実施形態によれば、多数の記録ディスク13を装着することにより、回転軸8の総重量が重くなっても才差運動を生じさせることなく正常に支持できる。しかも、ティルティングパッドジャーナル軸受19による両端支持構造であるから、ハウジング4の両端の嵌合孔4a,4aが心ずれを生じていても、ティルティングパッド22がピボット21の先端の支持点周りのモーメントがつり合うように傾動するので、心ずれが解消される。
【0055】
又、衝撃荷重が作用した場合、ティルティングパッド22が回転軸8と平行になるように傾動するので、そのティルティングパッド22の傾動により衝撃力が吸収され、又、回転軸8がティルティングパッド22に局部的ではなく広い範囲で受けられるようになり、更には、回転軸8とティルティングパッド22との間に存在する気体がクッションの作用をなす等によって、回転軸8やティルティングパッド22の損傷を極力防止することができる。
【0056】
ティルティングパッドジャーナル軸受19を用いることにより、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との摩擦で生じた摩耗粉を、ジャーナル部材18が回転する際に周方向に並ぶティルティングパッド22の間から外輪20側に排除させることができる。これより、ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19との間に摩耗粉が存在することによる焼付を極力防止することができる。
【0057】
固定子7、記録ディスク13及びティルティングパッドジャーナル軸受19が、回転軸8の軸方向の異なる位置に配置されているので、固定子7のコイル6で発生した熱が回転軸8の軸方向の異なる位置に設けられているティルティングパッドジャーナル軸受19に伝達されるまでに放熱されやすくなる。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受19が固定子7のコイル6の熱の影響で膨張及び縮小してしまうことを極力防止することができる。
【0058】
樹脂からなるジャーナル部材18を回転軸8の軸方向の両端部に設けて、このジャーナル部材18をティルティングパッドジャーナル軸受19に支持されるように構成した。ジャーナル部材18は、樹脂製で低摩擦係数である上に、径方向の厚さ寸法が長いために長期間使用でき、又、薄膜のコーティングのように母材から剥離することがない。従って、駆動モータ12の起動・停止を頻繁に繰返しても、ジャーナル部材18は、ティルティングパッドジャーナル軸受19との摩擦が小さく、又、低摩耗となるから、軸受性能の経年変化が小さく且つ軸受寿命を長くすることができる。
【0059】
本発明者は、ジャーナル部材が、金属製である場合、金属製の上に薄膜のコーティングを施した場合、樹脂製である場合の耐久性及び耐衝撃性の効果の違いを確認した。本発明者は、次の表1及び表2に示す試料(実施例1〜4及び比較例1,2)を製作し、耐久性試験及び耐衝撃性試験を行った。表1に耐久性試験の結果を示し、表2に耐衝撃性試験の結果を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
実施例1は、回転軸8をステンレスで形成し、その回転軸8の表面に、PAI(ポリアミドイミド)と40%のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とを混合して得られる樹脂でコーティングし、この樹脂コーティングした回転軸8をステンレスのティルティングパッドジャーナル軸受19のティルティングパッド22で支持した構成である。
実施例2は、回転軸8にアラミド樹脂で製作したジャーナル部材18(アラミドロッド)を取付け、ジャーナル部材18を実施例1と同様のティルティングパッドジャーナル軸受19のティルティングパッド22で支持した構成である。
比較例1は、実施例1と同様にして得た樹脂コーティングした回転軸8をステンレス製の動圧溝付気体軸受で支持した構成である。
【0063】
このようにして得られた実施例1,2及び比較例1の試料に対して行った耐久性試験は、駆動モータ12をオンオフして、試料が取付けられた回転子9(回転軸8)を繰返し起動・停止させ、試料が何回まで損傷しなかったかを確認する試験である。
表1中の「起動・停止繰返し回数」は、起動・停止の運転を繰返し、起動摩擦トルクが急増したときの回数、言い換えると、摩擦係数が1.0を超えたときまでの回数を表している。試料に当てる軸受の面圧は、4kPa及び8kPaの2通りで行った。尚、駆動モータ12の停止から15000rpmに達するまでを約0.5秒間とし、15000rpmを3秒間維持し、15000rpmから駆動モータの停止までを約0.5秒間とし、この一連の制御を起動・停止の1回とした。
【0064】
実施例3,4及び比較例2の試料に対して行った耐衝撃性試験は、ジャーナル軸受としてのティルティングパッドジャーナル軸受19(実施例3,4)と溝付気体動圧軸受(比較例2)との耐衝撃性の比較の試験である。この試験では、各試料の回転軸8を両端支持し、回転軸8の質量を500g、ジャーナル径を25mm、軸受幅を15mmに設定している。そして、回転軸8と各試料の軸受はステンレスで、実施例3及び比較例2では回転軸8の表面に一般的な固体潤滑剤である二硫化モリブデンを塗布している。実施例4は、回転軸8にジャーナル部材18が取付けられている。このジャーナル部材18は、実施例2と同様のアラミドロッドで形成されている。この耐衝撃性試験は軸受装置を落下させることによって段階的に衝撃荷重を与え、試験後に回転試験を行った。そして、回転軸8の非繰返し振動が規定値の50nm以下であるときの最大の衝撃加速度を求めた。
【0065】
次に、耐久性試験及び耐衝撃性試験の試験結果について説明する。
耐久性試験の結果において、実施例1,2と比較例1との比較から、樹脂コーティングした回転軸8及び回転軸8に取付けたジャーナル部材18をティルティングパッドジャーナル軸受19で支持することで、摺動面の損傷を低減することができる。更に、実施例1と実施例2との比較から、回転軸8にジャーナル部材18を取付けることにより、樹脂コーティングが母材(回転軸8)から剥離する問題はなく、又、樹脂の径方向の厚さ寸法が長くなり、摺動面の損傷を長期間低減することができる。
【0066】
耐衝撃性試験の結果において、実施例3,4と比較例2との比較から、回転軸8及び回転軸8に取付けたジャーナル部材18をティルティングパッドジャーナル軸受19で支持することで、耐衝撃性が向上することが理解できる。更に、実施例3と実施例4との比較から、回転軸8にジャーナル部材18を取付けることにより、樹脂の径方向の厚さ寸法が長くなり、耐衝撃性を一層向上させることができる。
【0067】
又、実使用時においては、ハードディスク装置1は、常に回転軸8をアイドリング回転させておき、読込み及び書込み時に所定の高回転数まで立ち上げていく制御を行う。このとき、ジャーナル部材18が樹脂製であるから、金属で形成する場合に比べて、回転軸8の総重量が軽くなり、上記所定の高回転数まで回転速度を上昇させていくときの加速性に優れたものとなる。
【0068】
ジャーナル部材18の外径を、記録ディスク13の装着部14の外径よりも大きくすることにより、周速と軸受面積とが大きくなり、低速回転でも回転軸8を非接触で支持できる。これにより、回転軸8とティルティングパッドジャーナル軸受19との接触時間を短くでき、ジャーナル部材18の摩耗量を極力低減することができる。又、多数枚の記録ディスク13を装着することで回転軸8の総重量が重くなっても、回転軸8を非接触支持することが可能である。
【0069】
ジャーナル部材18を、ティルティングパッド22との線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内である材料から形成した。具体的には、ジャーナル部材18をアラミド樹脂から成形し、ティルティングパッド22をステンレスから形成した。この場合、アラミド樹脂の線膨張係数は5×10−5℃−1であり、ティルティングパッド22の線膨張係数は1.7×10−5℃−1であり、これらの線膨張係数の差は、3.3×10−5℃−1である。
【0070】
ティルティングパッドジャーナル軸受19の性能に対しては、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との隙間(軸受隙間)の影響が大きく、設定した軸受隙間は、ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19の温度差によって変化する。ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19の実用上想定される温度差を約30℃、軸受隙間の許容変化率を10%とすると、両者の線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内である必要がある。尚、一般にジャーナル部材18である樹脂材料の線膨張係数は大きく方向性を持つ場合が多いが、ジャーナル部材18の線膨張係数の小さな方向とティルティングパッドジャーナル軸受19の線膨張係数の差を4×10−5℃−1以内とし、その方向をジャーナル部材18の径方向にすれば軸受隙間の変化を小さくできる。
【0071】
この構成により、ジャーナル部材18及びティルティングパッドジャーナル軸受19が熱の影響を受けても、両者の線膨張係数の差が比較的小さいので、ジャーナル部材18の回転中に、ジャーナル部材18が大きく膨張して軸受隙間が小さくなり軸受性能が変化したり、ティルティングパッド22に接触したりしまうといった不具合の発生を極力防止することができる。又、ジャーナル部材18とティルティングパッドジャーナル軸受19が膨張していない場合に、ジャーナル部材18とティルティングパッド22との間に大きな隙間が生じてしまうことも軸受性能が変化することも極力防止することができる。
【0072】
回転軸8の軸方向の両端面を気体動圧式のスラスト軸受23で支持する構成としたので、低摩擦で回転軸8を回転させることができると共に、液体動圧軸受を用いた構成よりも、回転軸8を高速回転させることができる。そして、スラスト軸受23を傾動可能な構成としたので、回転軸8の端面に対して平行になるように当たり、回転軸8の端面とスラスト軸受23との間で片当たりを防止でき負荷容量を大きくすることができる。
【0073】
スラスト軸受23を予圧手段により回転軸8側に付勢する構成としたので、回転軸8が軸方向にふらつくことを極力防止でき、且つスラスト軸受23と回転軸8との隙間を小さくでき、気体動圧を発生しやすくすることができる。又、予圧手段29を構成する支持体30及びバネ31を伝導性に優れる材料で構成したので、回転軸8側で発生する静電気を蓋部5及びハウジング4側に逃がすことができる。
【0074】
駆動モータ12を回転子9が固定子7の内周側に径方向に隙間を介して配置された内転型としたので、回転子9の慣性モーメントを小さくすることができる。又、コイル6を有した固定子7をハウジング4側に設ける構成としたので、コイル6で発生する熱はハウジング4を伝って外部に拡散されやすくなる。従って、コイル6の熱がティルティングパッドジャーナル軸受19に伝達されて、ティルティングパッドジャーナル軸受19が熱の影響により膨張、縮小しまうことを極力防止することができる。
【0075】
シール部材32で記録ディスク13側の空間とティルティングパッドジャーナル軸受19側の空間とを仕切る構成としたので、駆動モータ12の起動・停止時にジャーナル部材18とティルティングパッド22の接触によって生じた摩耗粉が、記録ディスク13側の空間へ飛散してしまうのを防ぎ、摩耗粉が原因となって記録ディスク13とヘッド15とが接触してしまうのを防ぐことができる。そして、このシール部材32を、回転する部材(回転軸8、ジャーナル部材18)と非接触のラビリンスシール部材から構成することで、回転する部材の回転を維持しつつ、摩耗粉の記録ディスク13側の空間への飛散を防止することができる。
【0076】
ハードディスク装置1のハウジング4内の気体の圧力を大気圧以下の圧力に減圧する構成としたので、ハウジング4内で発生する風損を小さくできる。更に、記録ディスク13やヘッド15が、記録ディスク13の回転で生じる風で振動してしまうことを抑えることができる。これにより、記録ディスク13をより高速に回転させることが可能になる。尚、ハウジング4内を減圧すると、ティルティングパッドジャーナル軸受19周辺の圧力も低下し気体軸受の負荷容量は低下するが、絶対圧力で0.05MPa程度であればティルティングパッドジャーナル軸受19の寸法を大きくすることで必要な軸受負荷容量を得ることができる。
【0077】
ティルティングパッドジャーナル軸受19側の空間と記録ディスク13側の空間とを連通する循環路42を形成し、循環路42中に除塵器48を設けて、除塵器48でハウジング4内の摩耗粉等を回収するように構成したので、摩耗粉等が記録ディスク13側の空間に飛散する不具合を一層防止することができる。
【0078】
ハードディスク装置群2の各ハードディスク装置1のハウジング4の内部の気体を、冷却装置101に通して冷却及び乾燥を行い、再び各ハウジング4に戻す構成とした。この構成により、各ハードディスク装置1のハウジング4の内部の気体を、直接冷却及び乾燥させることができる。又、記録ディスク13や電気部品を熱的に保護するだけでなく回転軸8を冷却できて回転軸8の熱膨張を防止することができると共に、水分が記録ディスク13に付着して記録ディスク13とヘッド15とが張り付いてしまうことを極力防止することができる。
【0079】
次に、本発明の第2の実施形態を図7を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第2の実施形態のハードディスク装置51が、第1の実施形態のハードディスク装置1と異なるところは、多数枚の記録ディスク13を駆動モータ12の片側だけでなく、駆動モータ12の両側に位置させたところによる。即ち、固定子7及び永久磁石10を中心にして左右対称に記録ディスク13、ジャーナル部材18、ティルティングパッドジャーナル軸受19等が配置された構成である。尚、給気孔35は回転軸8の長さに応じて適宜設けられている。
【0080】
第2の実施形態のハードディスク装置51においても、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。
更に、このハードディスク装置51の固定子7と各ティルティングパッドジャーナル軸受19との距離は、第1の実施形態の構成と比較して記録ディスク13が介在する分だけ長くなる。従って、固定子7のコイル6が発熱しても、この熱はティルティングパッドジャーナル軸受19に伝達され難くなる。これにより、ジャーナル部材18やティルティングパッドジャーナル軸受19のティルティングパッド22が熱の影響により膨張或いは縮小してしまうことを、第1の実施形態の構成に比較してより良く防止することができる。
【0081】
次に、本発明の第3の実施形態を図8及び図9を参照して説明する。尚、上記第2の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第3の実施形態のハードディスク装置61が、第2の実施形態のハードディスク装置51と異なるところは、回転軸8の両端部にカラー17及びジャーナル部材18が設けられておらず、その代わりに回転軸8の両端部が径大に形成され、ティルティングパッドジャーナル軸受19が回転軸8を直接支持する構成である。
【0082】
又、第3の実施形態は、第1の実施形態の予圧手段29の少なくとも一方を予圧手段62に変更した構成である。即ち、図9に示すように、回転軸8の両端部うちの少なくともいずれか一方の端部の中央部に、凹部63が形成されている。この凹部63内に予圧手段62が設けられている。この予圧手段62は、支持体30と同じ構成の支持体64と、バネ31と同じ構成のバネ65とから構成されている。又、予圧手段62が設けられている側の蓋部5には、凹部28よりも浅い凹部66が形成されている。この凹部66内には、自動調心のために支持体30と同じ構成の支持体67が設けられている。
【0083】
これらの構成により、スラスト軸受23は、支持体67を中心として傾動可能に支持された状態になる。又、回転軸8が回転した際に生じる静電気は、回転軸8から直接スラスト軸受23に、又はバネ65及び支持体64を介してスラスト軸受23に伝達される。そして、スラスト軸受23に伝達された静電気は、直接蓋部5に、又は支持体67を介して蓋部5に伝達されるようになる。
第3の実施形態のハードディスク装置61においても、第2の実施形態のハードディスク装置51と同様の作用効果を奏する。
【0084】
次に、本発明の第4の実施形態を図10を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第4の実施形態のハードディスク装置71が、第1の実施形態のハードディスク装置1と異なるところは、駆動モータ72が外転型の構成である。即ち、固定子7が回転軸8に近接して配置されるように、ハウジング4の一部、この場合、ハウジング4の支持部73が回転軸8側まで延びている。支持部73は、図10に示すように縦断正面がL字状をなしている。そして、固定子7とティルティングパッドジャーナル軸受19とは、支持部73によって仕切られている。又、固定子7の径方向の外側には、固定子7に隙間を介して永久磁石10が設けられている。永久磁石10は、ヨーク11及び保持部材74を介して回転軸8に取付けられている。保持部材74は、円筒状で記録ディスク13側が閉塞され、回転軸8に固定されている。そして、永久磁石10が保持部材74の内周面に固定されており、固定子7が保持部材74に内包されている。
【0085】
第4の実施形態のハードディスク装置71においても、固定子7のコイル6に電流を流すことにより、回転軸8及び回転子9は回転する。これにより、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。又、本実施形態は、回転軸8の外径が大きくなるので、大きなトルクが得られる。
更に、固定子7のコイル6が発熱しても、この熱は支持部73を介してハウジング4に伝達されて拡散される。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受19が固定子7のコイル6の熱の影響を受けてしまうことを極力防止することができる。
【0086】
次に、本発明の第5の実施形態を図11を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第5の実施形態のハードディスク装置81が、第1の実施形態のハードディスク装置1と異なるところは、駆動モータ82が外転型の構成である。即ち、固定子7は、蓋部5から回転軸8側に延びる円柱状の支持部83に固定されている。回転軸8は、この固定子7を内包するように、回転軸8の端部のうちの固定子7が位置する側の端部が円筒状に形成されている。この回転軸8の空間内に内周面には、永久磁石10が固定されている。固定子7と永久磁石10との間には、隙間が設けられている。又、固定子7が位置する側(図11で左側)のスラスト軸受84には、支持部83が貫通する孔が形成されている。そして、ハウジング4のスラスト軸受84側には予圧手段29は設けられていない。尚、回転軸8の端部のうちの固定子7が位置しない側(図11で右側)の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0087】
第5の実施形態のハードディスク装置81においても、固定子7のコイル6に電流を流すことにより、回転軸8及び回転子9は回転する。これにより、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。尚、駆動モータ82は外転型であるので、外転型の効果を奏する。
更に、固定子7のコイル6が発熱しても、この熱は支持部83を介して蓋部5に伝達されて拡散される。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受19が固定子7の熱の影響を受けてしまうことを極力防止することができる。
【0088】
次に、本発明の第6の実施形態を図12を参照して説明する。尚、上記第3の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第6の実施形態のハードディスク装置91が、第3の実施形態のハードディスク装置61と異なるところは、駆動モータ92が外転型の構成である。即ち、固定子7が回転軸8に近接して配置されるように、ハウジング4の一部、この場合、支持部93が回転軸8側まで延びている。支持部93は、縦断正面がL字状をなし、先端側に固定子7が固定されている。この固定子7は、記録ディスク13間、即ち、回転軸8の軸方向の中央に相当する位置に配置されている。又、固定子7の径方向の外側には、固定子7に隙間を介して永久磁石10が設けられている。永久磁石10は、ヨーク11及び保持部材94を介して回転軸8に取付けられている。保持部材94は、円筒状で記録ディスク13側が閉塞され、回転軸8に固定されている。そして、永久磁石10が保持部材94の内周面に固定されており、固定子7が回転軸8に内包されている。
【0089】
第6の実施形態のハードディスク装置91においても、固定子7のコイル6に電流を流すことにより、回転軸8及び回転子9は回転する。これにより、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。更に、駆動モータ92は外転型であるので、外転型の効果を奏する。
又、固定子7のコイル6が発熱しても、この熱は支持部93を介してハウジング4に伝達されて拡散される。これにより、ティルティングパッドジャーナル軸受19が固定子7の熱の影響を受けてしまうことを極力防止することができる。
【0090】
次に、本発明の第7の実施形態を図13を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第7の実施形態のスラスト軸受96が、第1の実施形態のスラスト軸受23と異なる。即ち、スラスト軸受96は、スラスト軸受23と同様に気体動圧式の軸受であるが、第1の実施形態の溝部24、傾斜部25及び平坦部26の代わりに、渦巻き状の溝部97及び平坦部98が形成されている。溝部97及び平坦部98は、周方向に交互に配置され、外周側に向かって広くなっている。尚、第7の実施形態では、傾斜部は設けられていない。
【0091】
このスラスト軸受96をスラスト軸受23の代わりに使用した場合において、回転軸8のジャーナル部材18がスラスト軸受96の溝部97及び平坦部98の渦巻き方向に回転すると、ジャーナル部材18とスラスト軸受96との間に存在する気体はスラスト軸受96の内周側に移動し、ジャーナル部材18とスラスト軸受96との間の気体動圧が高くなる。その結果、スラスト軸受23がジャーナル部材18、即ち、回転軸8を気体動圧で支持するようになる。これにより、スラスト軸受96は、第1の実施形態のスラスト軸受23と同様の作用効果を奏する。
【0092】
次に、本発明の第8の実施形態を図14を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第8の実施形態のハードディスク装置111は、冷却装置101と連結されない構成のものである。即ち、第8の実施形態のハウジング4には、排気孔34及び給気孔35は形成されていない。尚、第1の実施形態のハウジングの排気孔34及び給気孔35を閉塞する構成でも良い。
上記構成においては、ハウジング4内の冷却、減圧、除塵が行われない以外は、第1の実施形態のハードディスク装置1と同様の作用効果を奏する。
【0093】
尚、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
軸受の潤滑流体である気体は、空気が一般的であるが、窒素ガス、ヘリウム等の気体を使用しても良い。
第1,第2,第4,第5,第8の実施形態ではカラー17が用いられているが、回転軸8にジャーナル部材18を直接取付ける構成としても良い。
回転軸の両端部の構成は、互いが異なった形状でも良く、例えば第1から第6の実施形態の構成の端部を適宜組合せても良い。
冷却装置、減圧手段、除塵手段は、必要に応じて単独で或いはこれらを適宜組合せて構成しても良い。
【0094】
予圧手段29及び予圧手段62とを適宜組合せても良く、必要がない場合には予圧手段を省略しても良い。
複数台のハードディスク装置の内部の気体を冷却装置101に送る構成であるが、このハードディスク装置の種類は、第1から第7の実施形態のハードディスク装置1,51,61,71,81,91の異なる種類を組合せても良い。
上記した構成部品の数及び材料等について、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるハードディスク装置を示す縦断正面図
【図2】ハードディスク装置ユニットの縦断正面図と冷却システムの概略図
【図3】ティルティングパッドジャーナル軸受の縦断側面図
【図4】スラスト軸受の正面図
【図5】ジャーナル部材とスラスト軸受との関係を示す図
【図6】予圧手段を拡大して示す縦断正面図
【図7】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図8】本発明の第3の実施形態を示す図1相当図
【図9】図6相当図
【図10】本発明の第4の実施形態を示す図1相当図
【図11】本発明の第5の実施形態を示す図1相当図
【図12】本発明の第6の実施形態を示す図1相当図
【図13】本発明の第7の実施形態を示す図4相当図
【図14】本発明の第8の実施形態を示す図1相当図
【符号の説明】
【0096】
図面中、図中、1,51,61,71,81,91,111はハードディスク装置、4はハウジング、6はコイル、7は固定子、8は回転軸、9は回転子、10は永久磁石、12,72,82,92は駆動モータ、13は記録ディスク、14は装着部、15はヘッド、18はジャーナル部材、19はティルティングパッドジャーナル軸受、21はピボット、22はティルティングパッド、23,96はスラスト軸受、29,62は予圧手段、32はシール部材、36は還流ファン(送風手段)、37は冷却器(冷却手段)、38は乾燥器(乾燥手段)、40は収集路、41は配給路、42は循環路、44は減圧手段、48は除塵器(ろ過手段)、101は冷却装置、102は冷却システムを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に支持された回転軸と、
複数のコイルを備えた固定子が前記ハウジングの内部に装着され、永久磁石を備えた回転子が前記回転軸に装着された永久磁石型の駆動モータと、
前記回転軸に装着された記録ディスクとを具備し、
前記回転軸を両端支持構造とし、
当該回転軸の両端部を支持する軸受を、傾動自在な複数のティルティングパッドを周方向に配列し当該ティルティングパッドと前記回転軸の端部との間に気体を介在させて前記回転軸を支持する気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受としたことを特徴とするハードディスク装置。
【請求項2】
前記固定子、前記記録ディスク及び前記ティルティングパッドジャーナル軸受は、前記回転軸の軸方向の異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のハードディスク装置。
【請求項3】
前記回転軸の軸方向の両端部に、当該回転軸と一体に回転する樹脂からなる円筒状のジャーナル部材が設けられ、
前記ジャーナル部材は、前記ティルティングパッドジャーナル軸受に支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載のハードディスク装置。
【請求項4】
前記ハウジング内の気体の圧力を大気圧以下の圧力に減圧する減圧手段が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項5】
前記ハウジングに、前記回転軸の外周面に向かって延び、前記記録ディスク側の空間と前記ティルティングパッドジャーナル軸受側の空間とを仕切るシール部材が設けられ、
前記シール部材は、回転する部材と非接触のラビリンスシール部材からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項6】
前記ハウジングに、前記回転軸の軸方向の両端面を支持する2個のスラスト軸受が傾動可能に設けられ、
前記両スラスト軸受は、気体動圧式の軸受であり、
前記両スラスト軸受のうちの少なくともいずれか一方は、予圧手段により前記回転軸側に付勢されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項7】
前記駆動モータは、前記回転子が前記固定子の内周側に径方向に隙間を介して配置された内転型であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項8】
前記ジャーナル部材の外径は、前記回転軸の前記記録ディスクの装着部の外径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項3から7のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項9】
前記ジャーナル部材は、前記ティルティングパッドジャーナル軸受との線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内の材料からなることを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項10】
前記ティルティングパッドジャーナル軸受側の空間と前記記録ディスク側の空間とを連通する循環路が形成され、
前記ハウジングの内部の気体を前記ティルティングパッドジャーナル軸受側の空間から前記循環路に送り、当該循環路から前記記録ディスク側の空間に前記気体を送る循環用の送風手段が設けられ、
前記循環路中にろ過手段が設けられていることを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載のハードディスク装置を冷却する装置であって、
前記ハードディスク装置の前記ハウジングの内部の気体を吸込んだ後に当該ハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、
前記送風手段から吐出されて前記ハウジングの内部に戻される気体を冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段を備えてなるハードディスク装置の冷却装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載のハードディスク装置と、
前記ハードディスク装置の前記ハウジングの内部の気体を吸込んだ後に当該ハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、前記送風手段から吐出されて前記ハウジングの内部に戻される気体を冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段を備えてなるハードディスク装置の冷却装置とを有してなるハードディスク装置の冷却システム。
【請求項13】
複数台の請求項1から10のいずれかに記載のハードディスク装置からなるハードディスク装置群と、
各前記ハードディスク装置の前記ハウジングの内部の気体を、並列の経路を介して吸込んだ後に再び当該ハウジングに並列の経路を介してそれぞれの前記ハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、前記送風手段から吐出された気体を前記配給路に至るまでの間に冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段を備えてなるハードディスク装置の冷却装置とを有してなるハードディスク装置の冷却システム。
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に支持された回転軸と、
複数のコイルを備えた固定子が前記ハウジングの内部に装着され、永久磁石を備えた回転子が前記回転軸に装着された永久磁石型の駆動モータと、
前記回転軸に装着された記録ディスクとを具備し、
前記回転軸を両端支持構造とし、
当該回転軸の両端部を支持する軸受を、傾動自在な複数のティルティングパッドを周方向に配列し当該ティルティングパッドと前記回転軸の端部との間に気体を介在させて前記回転軸を支持する気体動圧式のティルティングパッドジャーナル軸受としたことを特徴とするハードディスク装置。
【請求項2】
前記固定子、前記記録ディスク及び前記ティルティングパッドジャーナル軸受は、前記回転軸の軸方向の異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のハードディスク装置。
【請求項3】
前記回転軸の軸方向の両端部に、当該回転軸と一体に回転する樹脂からなる円筒状のジャーナル部材が設けられ、
前記ジャーナル部材は、前記ティルティングパッドジャーナル軸受に支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載のハードディスク装置。
【請求項4】
前記ハウジング内の気体の圧力を大気圧以下の圧力に減圧する減圧手段が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項5】
前記ハウジングに、前記回転軸の外周面に向かって延び、前記記録ディスク側の空間と前記ティルティングパッドジャーナル軸受側の空間とを仕切るシール部材が設けられ、
前記シール部材は、回転する部材と非接触のラビリンスシール部材からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項6】
前記ハウジングに、前記回転軸の軸方向の両端面を支持する2個のスラスト軸受が傾動可能に設けられ、
前記両スラスト軸受は、気体動圧式の軸受であり、
前記両スラスト軸受のうちの少なくともいずれか一方は、予圧手段により前記回転軸側に付勢されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項7】
前記駆動モータは、前記回転子が前記固定子の内周側に径方向に隙間を介して配置された内転型であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項8】
前記ジャーナル部材の外径は、前記回転軸の前記記録ディスクの装着部の外径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項3から7のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項9】
前記ジャーナル部材は、前記ティルティングパッドジャーナル軸受との線膨張係数の差が4×10−5℃−1以内の材料からなることを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項10】
前記ティルティングパッドジャーナル軸受側の空間と前記記録ディスク側の空間とを連通する循環路が形成され、
前記ハウジングの内部の気体を前記ティルティングパッドジャーナル軸受側の空間から前記循環路に送り、当該循環路から前記記録ディスク側の空間に前記気体を送る循環用の送風手段が設けられ、
前記循環路中にろ過手段が設けられていることを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載のハードディスク装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載のハードディスク装置を冷却する装置であって、
前記ハードディスク装置の前記ハウジングの内部の気体を吸込んだ後に当該ハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、
前記送風手段から吐出されて前記ハウジングの内部に戻される気体を冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段を備えてなるハードディスク装置の冷却装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載のハードディスク装置と、
前記ハードディスク装置の前記ハウジングの内部の気体を吸込んだ後に当該ハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、前記送風手段から吐出されて前記ハウジングの内部に戻される気体を冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段を備えてなるハードディスク装置の冷却装置とを有してなるハードディスク装置の冷却システム。
【請求項13】
複数台の請求項1から10のいずれかに記載のハードディスク装置からなるハードディスク装置群と、
各前記ハードディスク装置の前記ハウジングの内部の気体を、並列の経路を介して吸込んだ後に再び当該ハウジングに並列の経路を介してそれぞれの前記ハウジングの内部に戻す循環用の送風手段と、前記送風手段から吐出された気体を前記配給路に至るまでの間に冷却し乾燥する冷却手段及び乾燥手段を備えてなるハードディスク装置の冷却装置とを有してなるハードディスク装置の冷却システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−152954(P2010−152954A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327552(P2008−327552)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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