説明

ハードマスク用塗布型窒化膜形成組成物

【課題】フォトレジスト層とのインターミキシングが起こらず、スピンコート法によって形成することができる、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいてにハードマスクとして使用できる下層膜を提供すること。
【解決手段】平均粒子径が1〜1000nmである金属窒化物粒子及び有機溶剤を含むことを特徴とする、半導体装置の製造に使用される下層膜形成組成物。当該金属窒化物粒子は、チタン、シリコン、タンタル、タングステン、セリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、及びガリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板とフォトレジストの間に金属窒化物粒子を含む下層膜を形成することを含む、半導体装置の製造に用いられるフォトレジストパターンの形成方法に関する。
また、本発明は、半導体装置の製造に用いられるフォトレジストパターンの形成において使用される金属窒化物粒子を含む下層膜を形成するための下層膜形成組成物に関する。また、該下層膜形成組成物を用いた金属窒化物粒子を含む下層膜の形成方法、及び該下層膜形成組成物より形成される金属窒化物粒子を含む下層膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体装置の製造において、フォトレジストを用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工はシリコンウエハ基板等の半導体基板上にフォトレジスト膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。
そして、このような加工法において、半導体基板とフォトレジストとの間に、反射防止膜や平坦化膜等の有機物質よりなる下層膜、有機下層膜が形成されることがある。この場合、フォトレジストパターンを保護膜として、まず、有機下層膜をエッチングにより除去し、その後、半導体基板の加工が行なわれる。有機下層膜のエッチングは一般にドライエッチングにより行なわれるが、この際、有機下層膜だけでなくフォトレジストもエッチングされ、その膜厚が減少するという問題がある。そのため、有機下層膜としてはドライエッチングによる除去の速度の大きなものが用いられる傾向にある。しかし、フォトレジストも有機下層膜と同様に有機物質で構成されているため、フォトレジストの膜厚の減少を抑えることは困難である。
近年、加工寸法の微細化の進展に伴い、薄膜のフォトレジストの使用が検討されるようになってきている。これは、膜厚を変えることなくフォトレジストパターンの寸法を小さくした場合、フォトレジストパターンのアスペクト比(高さ/幅)が大きくなり、フォトレジストパターンの倒壊などの発生が考えられるからである。また、フォトレジストはその膜厚が薄いほど解像性が向上する。このようなことから、フォトレジストを薄膜で使用することが望まれている。しかし、フォトレジストと有機下層膜とを使用した場合、上述のように、有機下層膜除去時のフォトレジスト膜厚の減少という問題がある。そのため、フォトレジストを薄膜にした場合、半導体基板加工のための保護膜(フォトレジストと有機下層膜よりなる)としての十分な膜厚を確保できなくなるという問題が生じる。
一方、半導体基板とフォトレジストとの間の下層膜として、ハードマスクとして知られる無機物質からなる膜を使用することが行なわれている。この場合、フォトレジスト(有機物質)とハードマスク(無機物質)では、その構成成分に大きな違いがあるため、それらのドライエッチングによって除去される速度は、ドライエッチングに使用されるガス種に大きく依存する。そして、ガス種を適切に選択することにより、フォトレジストの膜厚の大きな減少を伴うことなく、ハードマスク(下層膜)をドライエッチングによって除去することが可能となる。そのため、フォトレジストとハードマスクとを使用した場合は、フォトレジストが薄膜であっても、半導体基板加工のための保護膜(フォトレジストとハードマスクよりなる)としての十分な膜厚を確保できると考えられている。
従来、ハードマスクはCVD装置、真空蒸着装置、及びスパッタリング装置等を使用して、蒸着法によって形成されていた。これに対し、フォトレジストや有機下層膜は半導体基板上へのスピンコート装置等による塗布及びそれに続く焼成(以下、スピンコート法、という)によって形成されている。スピンコート法は蒸着法に比べ装置等が簡便である。そのため、蒸着法ではなく、スピンコート法によって形成することができるハードマスクが求められている。
ところで、無機物質を含むある種の下層膜が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−53068号公報
【特許文献2】特開2001−242630号公報
【特許文献3】特開2003−177206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこうした現状に鑑みなされたものである。本発明の目的は、スピンコート法によってハードマスクを形成するための下層膜形成組成物を提供することにある。また、スピンコート法により形成でき、上層に塗布、形成されるフォトレジストとのインターミキシングを起こさない下層膜を提供することにある。また、スピンコート法により形成でき、半導体基板上に形成されたフォトレジストへの露光照射光の基板からの反射を軽減させる下層反射防止膜、凹凸のある半導体基板を平坦化するための平坦化膜、及び加熱焼成時などに半導体基板から発生する物質によるフォトレジスト層の汚染を防止する膜等として使用できる下層膜を提供することにある。そして、下層膜形成組成物を用いたリソグラフィー用下層膜の形成方法、及びフォトレジストパターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、第1観点として、平均粒子径が1〜1000nmである金属窒化物粒子及び有機溶剤を含む、半導体装置の製造に使用される下層膜形成組成物、
第2観点として、平均粒子径が1〜1000nmである金属窒化物粒子、有機材料、及び有機溶剤を含む、半導体装置の製造に使用される下層膜形成組成物、
第3観点として、前記金属窒化物粒子が、チタン、シリコン、タンタル、タングステン、セリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、及びガリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む、第1観点または第2観点に記載の下層膜形成組成物、
第4観点として、前記金属窒化物粒子が、チタンナイトライド、チタンオキシナイトライド、シリコンナイトライド、シリコンオキシナイトライド、タンタルナイトライド、タンタルオキシナイトライド、タングステンナイトライド、タングステンオキシナイトライド、セリウムナイトライド、セリウムオキシナイトライド、ゲルマニウムナイトライド、ゲルマニウムオキシナイトライド、ハフニウムナイトライド、ハフニウムオキシナイトライド、セシウムナイトライド、セシウムオキシナイトライド、ガリウムナイトライド、及びガリウムオキシナイトライドからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属窒化物の粒子である、第1観点または第2観点に記載の下層膜形成組成物、
第5観点として、前記有機材料が、ポリマー、架橋性化合物及び吸光性化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分である第2観点に記載の下層膜形成組成物、
第6観点として、第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することによる、半導体装置の製造に用いる下層膜の形成方法、
第7観点として、前記焼成が焼成温度80℃〜300℃、焼成時間0.5〜10分間の条件で行なわれることを特徴とする、第6観点に記載の下層膜の形成方法、
第8観点として、第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成温度80℃〜300℃、焼成時間0.5〜10分間の条件で焼成することによって形成される半導体装置の製造に用いる下層膜、
第9観点として、第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成して下層膜を形成する工程、その下層膜上にフォトレジスト層を形成する工程、下層膜とフォトレジスト層で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後に現像する工程、を含む半導体装置の製造に用いるフォトレジストパターンの形成方法、
第10観点として、前記露光が248nm、193nmまたは157nmの波長の光により行われる第9観点に記載のフォトレジストパターンの形成方法、である。
【発明の効果】
【0005】
本発明は金属窒化物粒子を含む下層膜を形成する為の下層膜形成組成物である。本発明により、フォトレジストとのインターミキシングを起こさず、遅いドライエッチング速度を有する下層膜を提供することができる。
本発明により得られる、金属窒化物粒子を含む下層膜により、ドライエッチングプロセス時における半導体下地基板の加工が容易になる。また、本発明により得られる、金属窒化物粒子を含む下層膜を使用することにより、下層膜をドライエッチングによって除去する際のフォトレジストの膜厚の減少量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の下層膜形成組成物は金属窒化物粒子及び有機溶剤を含む。また、本発明の下層膜形成組成物は金属窒化物粒子、有機材料、及び有機溶剤を含む。また、その他、炭素粒子、酸化シリコン粒子、及び酸化チタン等の無機物の粒子を含むことができる。
本発明の下層膜形成組成物における固形分の割合は、例えば0.1〜70質量%であり、または0.5〜50質量%であり、または1〜40質量%であり、または10〜30質量%である。ここで固形分とは、下層膜形成組成物の全成分から有機溶剤成分を除いたものである。
【0007】
本発明の下層膜形成組成物において、金属窒化物粒子と有機材料とが使用される場合、その含有量としては、固形分中、金属窒化物粒子としては例えば40〜99.9質量%であり、例えば50〜99.5質量%であり、または60〜99質量%であり、または70〜90質量%である。固形分中、有機材料としては例えば0.1〜60質量%であり、例えば0.5〜50質量%であり、または1〜40質量%であり、または10〜30質量%である。
【0008】
本発明の下層膜形成組成物が、炭素粒子、酸化シリコン粒子、及び酸化チタン等の無機物の粒子を含む場合、その含有量としては、固形分中、30質量%以下、または20質量%以下である。
【0009】
本発明の下層膜形成組成物に含まれる金属窒化物粒子としては、例えば、チタンナイトライド、チタンオキシナイトライド、シリコンナイトライド、シリコンオキシナイトライド、タンタルナイトライド、タンタルオキシナイトライド、タングステンナイトライド、タングステンオキシナイトライド、セリウムナイトライド、セリウムオキシナイトライド、ゲルマニウムナイトライド、ゲルマニウムオキシナイトライド、ハフニウムナイトライド、ハフニウムオキシナイトライド、セシウムナイトライド、セシウムオキシナイトライド、ガリウムナイトライド、及びガリウムオキシナイトライド等の金属窒化物の粒子を挙げることができる。チタンナイトライド、チタンオキシナイトライド、シリコンナイトライド、及びシリコンオキシナイトライドの粒子が好ましい。
【0010】
使用される金属窒化物粒子の粒子径としては、下層膜を半導体基板上に形成しうる限り特に限定されるものではないが、平均粒子径として、1000nm以下であり、好ましくは1nm〜1000nm、特に好ましくは1nm〜100nmである。この場合、平均粒子径が1000nmより大きくなると、下層膜をエッチングにより除去する際に長時間を要することとなる。また、下層膜の平滑性が損なわれる。さらに、粒子の溶剤への分散性が低下し、粒子沈降がおき、下層膜形成組成物の保存安定性が不十分となる。平均粒子径は、金属窒化物粒子を半導体基板上に塗布し、乾燥させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)により20個の粒子の大きさ(径)を測定し、その平均値として算出される。なお、粒子が楕円形等の場合、その長径及び短径の平均値をその粒子の大きさとする。
【0011】
本発明の下層膜形成組成物において、これらの金属窒化物粒子は一種のみが使用される場合があり、または、二種以上が組み合わされて使用される場合がある。
【0012】
本発明の下層膜形成組成物において、有機材料としては、特に限定されるものではない。フォトレジストの下層に設けられる膜を形成するためにこれまでに使用されてきた有機材料を使用することができる。すなわち、反射防止膜用の有機材料や、平坦化用の有機材料及びバリア層用の有機材料等を使用することができる。
【0013】
有機材料としては、例えば、ポリマー、架橋性化合物、吸光性化合物、界面活性剤、高分子分散剤、架橋触媒、接着補助剤、及びレオロジー調整剤等を挙げることができ、これらは適宜、組み合わせて使用することができる。また、これらの含有量についても、適宜、選択して使用される。
【0014】
有機材料として使用されるポリマーとしては、特にその種類が限定されるものではない。ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリビニルエーテル、フェノールノボラック、ナフトールノボラック、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート等のポリマーを使用することができる。吸光部位として機能するベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリアジン環、キノリン環、及びキノキサリン環等の芳香環構造を有するポリマーが好ましく使用される。
【0015】
そのようなポリマーとしては、例えば、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、スチレン、ヒドロキシスチレン、ベンジルビニルエーテル、N−フェニルマレイミド等の付加重合性モノマーをその構造単位として含む付加重合系ポリマーや、フェノールノボラック、ナフトールノボラック等の縮重合系ポリマーが挙げられる。また、米国特許第6323310号明細書に記載されている、トリアジン化合物(商品名Cymel303、Cymel1123)から製造されるポリマーが挙げられる。
【0016】
更に、下記(a)〜(e)の構造単位の少なくとも一種を有するポリマーも挙げられる。このようなポリマーは、例えば、米国特許第5919598号、第5919599号及び第6156479号を参照して製造することができる。
【化1】

【0017】
また、ポリマーとしては芳香環構造を有さないポリマーを使用することができる。そのようなポリマーとしては、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、アクリロニトリル、マレイミド、N−アルキルマレイミド、マレイン酸無水物等の芳香環構造を有さない付加重合性モノマーのみをその構造単位として含む付加重合系ポリマーが挙げられる。
【0018】
ポリマーとして付加重合系ポリマーが使用される場合、そのポリマーは単独重合体でもよく共重合体であってもよい。付加重合系ポリマーの製造には付加重合性モノマーが使用される。そのような付加重合性モノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、マレイミド化合物、マレイン酸無水物及びアクリロニトリル等が挙げられる。
【0019】
アクリル酸エステル化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ノルマルヘキシルアクリレート、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリクロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びグリシジルアクリレート等が挙げられる。
【0020】
メタクリル酸エステル化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ノルマルヘキシルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート、2−ブロモエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート及びブロモフェニルメタクリレート等が挙げられる。
【0021】
アクリルアミド化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド及びN−アントリルアクリルアミド等が挙げられる。
【0022】
メタクリルアミド化合物としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド及びN−アントリルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0023】
ビニル化合物としては、ビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニル酢酸、ビニルトリメトキシシラン、2−クロロエチルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、ビニルナフタレン及びビニルアントラセン等が挙げられる。
【0024】
スチレン化合物としては、スチレン、ヒドロキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、シアノスチレン及びアセチルスチレン等が挙げられる。
【0025】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド及びN−ヒドロキシエチルマレイミド等が挙げられる。
【0026】
ポリマーとして縮重合系ポリマーが使用される場合、そのようなポリマーとしては、例えば、グリコール化合物とジカルボン酸化合物との縮重合ポリマーが挙げられる。グリコール化合物としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。ジカルボン酸化合物としては、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸及び無水マレイン酸等が挙げられる。また、例えば、ポリピロメリットイミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミドが挙げられる。
【0027】
本発明の下層膜形成組成物の有機材料として使用されるポリマーの分子量としては、重量平均分子量として、例えば、1000〜1000000であり、または3000〜300000であり、また、例えば5000〜200000であり、または10000〜100000である。
【0028】
本発明の下層膜形成組成物の有機材料として使用される架橋性化合物としては、特にその種類が限定されるものではない。架橋性化合物としては、メラミン化合物、置換尿素化合物、エポキシ基を含有するポリマー系架橋性化合物等が挙げられる。好ましくは、架橋性化合物としては、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された窒素原子を二つ以上有する含窒素化合物が挙げられる。ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ブトキシメチル基、及びヘキシルオキシメチル基等の基で置換された窒素原子を二つ以上有する含窒素化合物である。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリノン、及び1,3−ビス(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリノン等の含窒素化合物が挙げられる。架橋性化合物としては、また、三井サイテック(株)製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名サイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名マイコート506、マイコート508)、グリコールウリル化合物(商品名サイメル1170、パウダーリンク1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名UFR65)、ブチル化尿素樹脂(商品名UFR300、U−VAN10S60、U−VAN10R、U−VAN11HV)、大日本インキ化学工業(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名ベッカミンJ−300S、ベッカミンP−955、ベッカミンN)等の市販されている化合物を挙げることができる。
【0029】
架橋性化合物としては、また、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーを用いることができる。そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ(N−ブトキシメチルアクリルアミド)、N−ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンの共重合体、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートの共重合体、N−エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートの共重合体、及びN−ブトキシメチルアクリルアミドとベンジルメタクリレートと2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの共重合体等を挙げることができる。
【0030】
本発明の下層膜形成組成物の有機材料として使用される吸光性化合物としては、特にその種類が限定されるものではない。
吸光性化合物の種類、添加量を選択することによって、本発明の下層膜形成組成物より形成される下層膜の屈折率、減衰係数等の特性を調節することが可能である。このような吸光性化合物としては、下層膜の上に設けられるフォトレジスト層中の感光成分の感光特性波長領域における光に対して高い吸収能を有する化合物が好ましく用いられる。吸光性化合物は一種のみを用いることもできるが、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
吸光性化合物としては、例えば、フェニル化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アゾ化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物、トリアジン化合物、トリアジントリオン化合物及びキノリン化合物等を使用することができる。フェニル化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、トリアジン化合物及びトリアジントリオン化合物等を用いることができる。
【0032】
吸光性化合物としては、少なくとも1つの水酸基、アミノ基またはカルボキシル基を有するフェニル化合物、1つの水酸基、アミノ基またはカルボキシル基を有するナフタレン化合物、少なくとも1つの水酸基、アミノ基またはカルボキシル基を有するアントラセン化合物が好ましく使用される。
【0033】
少なくとも1つの水酸基、アミノ基またはカルボキシル基を有するフェニル化合物としては、フェノール、ブロモフェノール、4,4'−スルフォニルジフェノール、tert−ブチルフェノール、ビフェノール、安息香酸、サリチル酸、ヒドロキシイソフタル酸、フェニル酢酸、アニリン、ベンジルアミン、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルアラニン及びフェノキシプロパノール等を挙げることができる。
【0034】
少なくとも1つの水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を有するナフタレン化合物としては、1−ナフタレンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸、1−ナフトール、2−ナフトール、1−アミノナフタレン、ナフチル酢酸、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−ブロモ−2−ヒドロキシナフタレン及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0035】
少なくとも1つの水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を有するアントラセン化合物としては、9−アントラセンカルボン酸、9−ヒドロキシメチルアントラセン及び1−アミノアントラセン等を挙げることができる。
【0036】
また、吸光性化合物としてはトリアジントリオン化合物も好ましく用いられる。トリアジントリオン化合物としては、式(1):
【化2】

の化合物を挙げることができる。ここで、式中、Xは(f)〜(l)の基を表す。
【0037】
本発明の下層膜形成組成物の有機材料として使用される架橋触媒としては、酸化合物または酸発生剤を挙げることができる。
【0038】
酸化合物としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、カンファースルホン酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、及びヒドロキシ安息香酸等の酸化合物が挙げられる。また、酸化合物としては、芳香族スルホン酸化合物が使用できる。芳香族スルホン酸化合物の具体例としては、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、及びピリジニウム−1−ナフタレンスルホン酸等を挙げることができる。酸発生剤としては、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、2−ニトロベンジルトシラート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ベンゾイントシレート及びN−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。酸化合物及び酸発生剤は単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
【0039】
本発明の下層膜形成組成物の有機材料として使用される高分子分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールジエステル類、ソルビトールのエチレンオキシド付加体類、ソルビトールのプロピレンオキシド付加体類、ソルビトールのエチレンオキシド・プロピレンオキシド混合付加体類、ポリエチレンポリアミンのエチレンオキシド付加体類、ポリエチレンポリアミンのプロピレンオキシド付加体類、ポリエチレンポリアミンのエチレンオキシド・プロピレンオキシド混合付加体類、ノニルフェニルエーテルホルマリン縮合物のエチレンオキシド付加体類、ポリ(メタ)アクリル酸塩類、カルボキシル基含有不飽和モノマーと他のビニル化合物との共重合体塩類、ポリ(メタ)アクリル酸の部分アルキルエステルまたはその塩類、ポリスチレンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物類、ポリアルキレンポリアミン類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、ポリアミド、3級アミン変性ポリウレタン類、及び3級アミン変性ポリエステル類等を用いることができる。これらは単独で、または二種以上の組合せで使用される。
【0040】
本発明の下層膜形成組成物の有機材料として使用される界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップEF301,EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、商品名メガファックF171、F173、R−08、R−30(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマ−KP341(信越化学工業(株)製)等を上げることができる。これらの界面活性剤の添加量は、下層膜形成組成物の固形分中で、通常0.5質量%以下、好ましくは0.2質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0041】
本発明の下層膜形成組成物の有機材料として使用される接着補助剤としては、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア等の尿素化合物、を挙げることができる。
【0042】
本発明の下層膜形成組成物の有機材料として使用されるレオロジー調整剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、及びノルマルブチルステアレート、及びグリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。
【0043】
本発明の下層膜形成組成物の有機材料としては、ポリマーと架橋性化合物を組み合わせて用いることが好ましい。この場合、有機材料中でのポリマーの割合としては20〜90質量%、または30〜60質量%であり、架橋性化合物の割合としては10〜80質量%、または40〜70質量%である。
【0044】
また、本発明の下層膜形成組成物の有機材料としては、ポリマー、架橋性化合物及び架橋触媒を組み合わせて用いることが好ましい。この場合、有機材料中でのポリマーの割合としては20〜90質量%、または30〜60質量%であり、架橋性化合物の割合としては5〜75質量%、または30〜65質量%であり、架橋性触媒の割合としては0.1〜5質量%、または0.5〜3質量%である。
【0045】
本発明の下層膜形成組成物における有機溶剤としてはとくに限定はなく、種々の有機溶剤を使用することができる。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N−ジメチルホルムアミド、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、及びN−メチルピロリドン等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で、または二種以上の組合せで使用される。
【0046】
以下、本発明の下層膜形成組成物の使用について説明する。
半導体装置の製造に用いる基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、シリコンウエハ基板、ITO基板、ポリイミド基板、低誘電率材料(low−k材料)被覆基板等)の上に、スピンコート装置及びコーター装置等の適当な塗布方法により本発明の下層膜形成組成物が塗布され、その後、焼成することにより下層膜が形成される。焼成する条件としては、焼成温度80℃〜300℃、または150℃〜250℃、焼成時間0.5〜10分間または1〜5分間の中から適宜、選択される。下層膜の膜厚としては、例えば、1〜1000nmであり、または10〜500nmであり、または50〜100nmである。
【0047】
次いで、その下層膜の上に、フォトレジストの層が形成される。フォトレジスト層の膜厚としては50〜10000nmである。本発明において、下層膜の上層に塗布、形成されるフォトレジストとしては特に制限はなく、汎用されているネガ型フォトレジスト、ポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。例えば、ノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがあり、例えば、シプレー社製商品名APEX−E、住友化学工業(株)製商品名PAR710及び信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられる。
【0048】
次に、金属窒化物粒子を含む下層膜とフォトレジストの層で被覆された該基板が、あらかじめ設定されたマスクを通して、i線、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、及びF2エキシマレーザ等の光で露光される。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行った後、アルカリ性水溶液等の現像液を使用した現像により、設定されたパターンに従いフォトレジストが部分的に除去される。
【0049】
フォトレジストの現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。現像液としては、汎用されている2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を使用できる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5〜50℃、時間0.1〜5分間から適宜選択される。
【0050】
次いで、フォトレジストが除去された部分の下層膜をドライエッチングによって取り除き、半導体基板を露出させる。ドライエッチングには塩素系ガスを使用することが好ましい。塩素系ガスによるドライエッチングでは、フォトレジスト(有機物質)は除去されにくいが、本発明の下層膜(無機物質)は速やかに除去される。そのため、フォトレジストを薄膜で使用することが可能となる。
【0051】
ドライエッチングには、塩素系ガスと共に、テトラフルオロメタン、パーフルオロシクロブタン(C48)、パーフルオロプロパン(C38)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、水素、窒素、アンモニア、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素、及び三フッ化塩素等のガスを用いて行われる場合がある。
【0052】
その後、パターン化されたフォトレジスト及び下層膜からなる膜を保護膜として、半導体基板の加工が行なわれる。半導体基板の加工はテトラフルオロメタン等のフッ素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。本発明の下層膜はハードマスクであって、フッ素系ガスによるドライエッチングでは除去されにくいからである。
【0053】
また、本発明の下層膜の上層には、フォトレジストの塗布、形成前に反射防止膜層が塗布、形成されることがある。そこで使用される反射防止膜組成物としては特に制限はなく、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができる。また、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる塗布及び焼成によって反射防止膜の形成を行なうことができる。反射防止膜組成物としては、例えば、吸光性化合物、樹脂及び溶剤を主成分とするもの、化学結合により連結した吸光性基を有する樹脂、架橋剤及び溶剤を主成分とするもの、吸光性化合物、架橋剤及び溶剤を主成分とするもの、吸光性を有する高分子架橋剤及び溶剤を主成分とするもの、等が挙げられる。これらの反射防止膜組成物はまた、必要に応じて、酸成分、酸発生剤成分、レオロジー調整剤等を含むことができる。吸光性化合物としては、反射防止膜の上に設けられるフォトレジスト中の感光成分の感光特性波長領域における光に対して高い吸収能を有するものであれば用いることができ、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アゾ化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。樹脂としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ノボラック樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。化学結合により連結した吸光性基を有する樹脂としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環といった吸光性芳香環構造を有する樹脂を挙げることができる。
【0054】
本発明の下層膜形成組成物より形成される金属窒化物粒子を含む下層膜は、また、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光に対する吸収を有することがあり、そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する層として機能することができる。さらに、本発明の下層膜は、基板とフォトレジストとの相互作用の防止するための層、フォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐための層、加熱焼成時に基板から生成する物質の上層フォトレジストへの拡散を防ぐための層、として使用することもできる。
【0055】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
合成例1
プロピレングリコールモノメチルエーテル27.91gに、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート20.93gとベンジルメタクリレート6.98gを溶解させ、反応液中に窒素を30分流した後、70℃に昇温した。反応溶液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.3gを添加し、窒素雰囲気下、70℃で24時間撹拌することにより、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとベンジルメタクリレートの共重合ポリマーの溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、重量平均分子量は15000(標準ポリスチレン換算)であった。
【0057】
合成例2
乳酸エチル30gに、2−ヒドロキシエチルアクリレート30gを溶解させ、反応液中に窒素を30分流した後、70℃に昇温した。反応溶液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.3gを添加し、窒素雰囲気下、70℃で24時間撹拌することにより、ポリ(2−ヒドロキシエチル)アクリレートの溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、重量平均分子量は9800(標準ポリスチレン換算)であった。
【0058】
実施例1
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート7gに、チタンオキシナイトライド粒子2.7g(平均粒子径100nm、(株)アルバック・コーポレートセンター製)を分散させ、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート0.3gを加えた。そして、孔径5μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0059】
実施例2
30質量%で分散したチタンオキシナイトライド粒子(平均粒子径100nm、(株)アルバック・コーポレートセンター製)を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの溶液7.5gに、合成例1で得たポリマー0.75gを含む溶液5g、ヘキサメトキシメチルメラミン1.15g、ピリジニウム−p−トルエンスルホン酸0.012g、プロピレングリコールモノメチルエーテル0.77g、及びジメチルスルホキシド8.66gを加え30質量%溶液とした。そして、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0060】
比較例1
合成例1で得たポリマー5gを含む溶液10gに、ヘキサメトキシメチルメラミン1.15g、ピリジニウム−p−トルエンスルホン酸0.012g、プロピレングリコールモノメチルエーテル0.77g、及びジメチルスルホキシド8.66gを加え30質量%溶液とした。そして、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、金属窒化物粒子を含まない下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0061】
比較例2
合成例2で得たポリマー5gを含む溶液10gに、ヘキサメトキシメチルメラミン1.15g、ピリジニウム−p−トルエンスルホン酸0.012g、プロピレングリコールモノメチルエーテル0.77g、及びジメチルスルホキシド8.66gを加え30質量%溶液とした。そして、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、金属窒化物粒子を含まない下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0062】
フォトレジスト溶剤への溶出試験
実施例1及び2で得た下層膜形成組成物の溶液をスピナーにより、それぞれ、シリコンウエハ基板上に塗布した。ホットプレート上、205℃で1分間焼成し下層膜(膜厚460nm)を形成した。これらの下層膜をフォトレジストに使用する溶剤である乳酸エチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルに浸漬し、それらの溶剤に不溶であることを確認した。
【0063】
フォトレジストとのインターミキシングの試験
実施例1及び2で得た下層膜形成組成物の溶液をスピナーにより、それぞれ、シリコンウエハ基板上に塗布した。ホットプレート上、205℃で5分間焼成し、下層膜(膜厚450nm)を形成した。これらの下層膜の上層に、市販のフォトレジスト溶液(シプレー社製、商品名APEX−E等)をスピナーにより塗布した。ホットプレート上、90℃で1分間加熱してフォトレジストの層を形成した。フォトレジストを露光後、露光後加熱を90℃で1.5分間行なった。フォトレジストを現像した後、下層膜の膜厚を測定し、下層膜とフォトレジストとのインターミキシングが起こっていないことを確認した。
【0064】
ドライエッチング速度の試験
実施例1、2及び比較例1、2で得た下層膜形成組成物の溶液を、それぞれ、スピナーによりシリコンウエハ基板上に塗布した。ホットプレート上、205℃で5分間焼成し、下層膜(各々膜厚450nm)を形成した。そしてこれらを、日本サイエンティフィック製RIEシステムES401を用い、ドライエッチングガスとしてCF4を使用した条件下でドライエッチング速度を測定した。ドライエッチング速度は単位時間当たりの下層膜の膜厚の減少量として算出した。
【0065】
結果を表1に示す。選択性は、フォトレジストのドライエッチング速度を1.00とした時の、下層膜のドライエッチング速度を示したものである。また、表中、A1は2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとベンジルメタクリレートの共重合ポリマー、A2はポリ(2−ヒドロキシエチル)アクリレート、B1はチタンオキシナイトライドを示す。
【表1】

実施例1、2の下層膜形成組成物から得られた金属窒化物粒子を含む下層膜のエッチング速度は、比較例1の金属窒化物粒子を含まない下層膜に比較して小さくなることが確認された。
ポリマーの有無に依存することなく、金属窒化物粒子の導入により、小さいエッチングの速度を有する金属窒化物粒子を含む下層膜が得られることが明らかになった。
金属窒化物粒子を含む下層膜のドライエッチング速度がフォトレジストのドライエッチング速度よりも小さいことの必要性は、下層膜上に形成されたフォトレジストを現像し、その後でドライエッチングにより半導体下地基板を加工する工程で、金属窒化物粒子を含む下層膜のドライエッチング速度の方が半導体下地加工基板のドライエッチング速度よりも小さくなることにより、フォトレジストを薄膜化でき、かつパターンを正確に基板に転写することができるためである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1〜1000nmである金属窒化物粒子及び有機溶剤を含む、半導体装置の製造に使用される下層膜形成組成物。
【請求項2】
平均粒子径が1〜1000nmである金属窒化物粒子、有機材料、及び有機溶剤を含む、半導体装置の製造に使用される下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記金属窒化物粒子が、チタン、シリコン、タンタル、タングステン、セリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、及びガリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む、請求項1または請求項2に記載の下層膜形成組成物。
【請求項4】
前記金属窒化物粒子が、チタンナイトライド、チタンオキシナイトライド、シリコンナイトライド、シリコンオキシナイトライド、タンタルナイトライド、タンタルオキシナイトライド、タングステンナイトライド、タングステンオキシナイトライド、セリウムナイトライド、セリウムオキシナイトライド、ゲルマニウムナイトライド、ゲルマニウムオキシナイトライド、ハフニウムナイトライド、ハフニウムオキシナイトライド、セシウムナイトライド、セシウムオキシナイトライド、ガリウムナイトライド、及びガリウムオキシナイトライドからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属窒化物の粒子である、請求項1または請求項2に記載の下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記有機材料が、ポリマー、架橋性化合物及び吸光性化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分である、請求項2に記載の下層膜形成組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することによる、半導体装置の製造に用いる下層膜の形成方法。
【請求項7】
前記焼成が焼成温度80℃〜300℃、焼成時間0.5〜10分間の条件で行なわれることを特徴とする、請求項6に記載の下層膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成温度80℃〜300℃、焼成時間0.5〜10分間の条件で焼成することによって形成される半導体装置の製造に用いる下層膜。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成して下層膜を形成する工程、前記下層膜上にフォトレジスト層を形成する工程、前記下層膜と前記フォトレジスト層で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後に現像する工程、を含む半導体装置の製造に用いるフォトレジストパターンの形成方法。
【請求項10】
前記露光が248nm、193nmまたは157nmの波長の光により行われる請求項9に記載のフォトレジストパターンの形成方法。


【国際公開番号】WO2005/064403
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516606(P2005−516606)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019225
【国際出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】