説明

ハーブ液およびその製造方法

【課題】本発明は、ハーブ本来の香味、即ち香りや味を再現可能なものであり、ハーブ飲料を簡便且つ低コストで調製可能であり、また、あらゆる飲料や食品に添加可能なハーブ液とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るハーブ液の製造方法は、水とハーブを容器に密閉し、加温加圧抽出する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーブ飲料を容易に調製可能であり、また、あらゆる飲料や食品などに添加可能なハーブ液とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハーブ飲料は、一般的には、飲用直前にハーブの葉を生のまま或いは乾燥したものをポットに入れ、熱湯を注ぐことにより得られる。
【0003】
しかし、葉は固体であるために分散性が良いとはいえず、抽出効率は悪い。一方、葉を事前に粉砕しておけば、抽出効率が向上して葉の必要量を低減できるかもしれないが、抽出残渣の分離が困難となり、飲用し難くなる。また、葉の使用量もその都度一定にし難いため、常に同一品質のハーブ飲料を得るのは困難であるという問題がある。
【0004】
上記の問題を解決できるものとして、一定重量の乾燥ハーブ葉を不織布からなる袋などに入れたものが市販されている。しかしながら、このような形態のハーブ葉は劣化し易く、得られるハーブ飲料の風味も経時的に損なわれるため、必ずしも満足できるものではなかった。
【0005】
上記の問題を解決できるものとして、風味に優れた植物エキスであって、水などで希釈することにより飲料とすることができるものの製造方法が特許文献1に記載されている。当該方法では、植物原料と水とを混合して加熱処理を行った後に冷却し、次いで酵素を作用させながら抽出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−63382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来、希釈するのみで手軽に飲料とすることができるものであり、且つ風味に優れる植物エキスを製造するための方法は知られていた。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の方法では酵素が必要であることから製造コストが上がってしまい、また、至適条件の狭い酵素反応を行うため反応条件の厳密な制御が必要であったり、さらには反応終了後に酵素を失活させるための処理工程を行わなければならないなどの問題がある。
【0009】
そこで本発明は、ハーブ本来の香味、即ち香りや味を再現可能なものであり、ハーブ飲料を簡便且つ低コストで調製可能であり、また、あらゆる飲料や食品に添加可能なハーブ液とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、抽出溶媒として水を使い、且つ加圧下で加温しながら得られるハーブ液は、ハーブ本来の香味を有している上に、あらゆる飲料や食品にも適合し得ることを見出して、本発明を完成した。
【0011】
本発明に係るハーブ液の製造方法は、水とハーブを容器に密閉し、加温加圧抽出する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明方法においては、水とハーブを密閉するための容器の内容積を、水の体積に対して1.01倍以上、4倍以下とすることが好ましい。当該割合が1.01倍以上であれば、水とハーブの封入に困難を伴わない。一方、当該割合が4倍以下であれば、得られるハーブ液から気中に揮発される香気成分を最低限に抑えることが可能になる。
【0013】
本発明方法における抽出時の圧力としては、ゲージ圧で0.01MPa以上、10MPa以下が好適である。当該圧力が0.01MPa以上であれば、ハーブが有する香味をより確実に抽出でき得る。一方、当該圧力が高過ぎるとかえって香りが失われ易くなり、また、渋味が生じるおそれもあり得る上に、経済的に好ましくないため、当該圧力としては10MPa以下が好適である。
【0014】
本発明方法における抽出温度としては、40℃以上、100℃以下が好適である。当該温度が40℃以上であれば、十分な抽出効率を得ることができる。一方、当該温度が高過ぎると渋味や酸化臭など好ましくない風味が抽出されるおそれがあり得、且つ経済的に好ましくないため、当該温度としては100℃以下が好適である。
【0015】
本発明方法では、2種以上のハーブを用いる態様も好適である。もちろん、本発明方法によれば、1種のみのハーブを用いる場合でもそのハーブの好ましい香味を良好に抽出できる一方で酸化臭などを抑制できるが、2種以上のハーブを用いることによって、各ハーブの好ましい香味を抽出し、独特の香味を示すハーブ液を製造できる可能性がある。
【0016】
本発明に係るハーブ液は、上記本発明方法により製造されるものであり、ハーブ本来の香味を有し且つ酸化臭など好ましくない風味を有さない濃厚なものであって、水やその他の飲料などに添加することによりハーブ飲料やハーブ風味の飲料を調製することができ、また、食品に添加することによりハーブの香味を食品に与えることができるものである。
【0017】
本発明に係るハーブ液は、密閉充填されたものであれば携帯にも便利であり、また、たとえ屋外であっても水、その他の飲料、食品などに添加でき、飲料や食品などにハーブの香味を付与することが可能である。
【0018】
本発明に係る食品と飲料は、本発明に係るハーブ液を含むことを特徴とし、酸化臭などの好ましくない風味を示さない一方でハーブ本来の香味を有するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るハーブ液は、ハーブ本来の香味を有する一方で酸化臭などの好ましくない風味を有さない濃厚なものであるので、冷水や温水などで希釈することにより手軽にハーブ飲料とすることができる。また、その他の飲料や食品に添加することにより、良好なハーブの香味を付与することが可能になる。よって本発明は、飲料の添加成分や、アイスクリーム、ドレッシング、パン、ソースといった食品や調味料の香味成分などとして、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るハーブ液の製造方法は、水とハーブを容器に密閉し、加温加圧抽出する工程を含むことを特徴とする。
【0021】
本件発明では、原料としてハーブを用いる。本発明においてハーブとは、花、茎、葉、種子、根などの特定部位、これらの複数部位、または全体が特有の香りを有するものであり、香辛料、食品原料、飲料原料、薬品などに用いられる有用植物をいうものとする。
【0022】
本発明で用いるハーブとしては、例えば、アイブライト、アーティチョーク、アニスヒソップ、アルカネット、アロエ、アンゼリカ、イタリアンパセリ、イヌハッカ、エキナセア、エリキャンペーン、エルダー、オリーブ、オルガノ、カモミール、カレープラント、ギシギシ、キャットニップ、キャットミント、キャラウェイ、クレソン、クローバーレッド、月桂樹、ケッパー、コモンマロー、コリアンダー、コンフリー、サラダバーネット、サフラワー、サフラン、サンザシ、サンショウ、サントリナ、サンフラワー、ジキタリス、シソ、ジャスミン、ステビア、セージ、セイバリー、セイヨウタンポポ、センテッドゼラニウム、セントジョーンズワート、ソープワート、ソレル、タイム、タラゴン、タンジー、ダンデライオン、チコリ、チャイブ、チャービル、ディル、トケイソウ、トリビュラス・テレストリス、ナスタチウム、ナツシロギク、ニガヨモギ、ニゲラ、ニラ、バジル、ハーツイーズ、ハイビスカス、パセリ、バレリアン、ヒース、ヒソップ、ヒレハリソウ、フラックス、ベルガモット、ホアハウンド、ホップ、ボリジ、マシュマロウ、マジョラム、マリーゴールド、ミント、ヤロウ、ユーカリ、ラズベリー、ラベンダー、ラムズイヤー、リンデン、ルー、ルバーブ、レディースマントル、レモングラス、レモンバーベナ、レモンバーム、レモンマートル、ローズ、ローズマリー、ローズヒップ、ローレル、ロケット、ロベージ、ワイルドストロベリーなどが挙げられる。また、本発明におけるハーブには、いわゆる「茶」として利用されるものも含まれる。例えば、緑茶、麦、はと麦、カラスムギ、玄米、そば、大豆、シソ、ウメ、こぶ、黒豆などの茶類である。
【0023】
原料であるハーブは、乾燥前の生の状態でも利用可能であるが、抽出効率がより高いことから、通常の方法により乾燥された状態のものが好ましい。また、抽出効率の問題から、細断または磨砕(粉末化)してもよい。細断あるいは磨砕する方法は特に制限されず、はさみ、フードプロセッサー、カッターミキサー、ミル、乳鉢などを用いる公知の方法を適用することができる。
【0024】
また、原料であるハーブは、湿式粉砕後に醗酵の原因となる酵素を失活させるための熱処理など、事前処理を施したものであってもよい。例えば茶類でいえば、生茶葉の他、蒸気で加熱した後に乾燥した荒茶、原料茶葉を選別した煎茶、番茶、玉露茶、粉状にした粉茶、強加熱処理したほうじ茶、醗酵または半醗酵させたウーロン茶や紅茶などを用いてもよい。
【0025】
本発明で用いるハーブは1種のみであってもよいが、2種以上のハーブを用いる態様も好適である。2種以上のハーブを用いることによって、各ハーブの好ましい香味を抽出し、独特の香味を示すハーブ液を製造できる可能性がある。なお、1種のハーブを用いて製造されたハーブ液を複数用い、所望の比率で混合することも可能である。
【0026】
本発明で用いる水は、飲用や食用に適するものであれば特に制限されない。例えば、硬水、軟水、ミネラルウォーター、水道水、井戸水、蒸留水、精製水、純水、超純水などを用いることができる。好適には、市販のミネラルウォーターなどを用いることができる。
【0027】
水の使用量は、ハーブの種類などに応じて適宜調整すればよいが、一般的には、ハーブに対して5質量倍以上、30質量倍以下程度にすることができる。当該割合が5質量倍以上であれば、ハーブが有する香味をより確実に抽出することが可能になる。一方、当該割合が大き過ぎると得られるハーブ液の濃度が低くなり過ぎることがあり得るので、当該割合としては30質量倍以下が好ましい。
【0028】
本発明方法では、水とハーブを容器に密閉した上で加温加圧抽出する。密閉状態で加温加圧抽出することにより、通常の開放系での熱湯による抽出では飛散する揮発性香気成分を効率よく抽出することが可能となり、風味の優れた良好なハーブ液を得ることができる。
【0029】
抽出のための容器としては、最終的な製品に用いる容器(以下、「製品容器」という)を用いてもよい。また、密閉可能な釜や鍋などを用い、加温加圧抽出後、製品容器に移してもよい。
【0030】
製品容器としては、例えば、ガラス製;ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどからなるプラスチック製などの容器を挙げることができる。容器には、金属やセラミックがラミレートまたは蒸着されていてもよい。
【0031】
容器の形状も特に制限されず、例えば、平袋やスタンディング袋などの袋状;円筒状などの筒状;箱状とすることができる。より具体的には、原料であるハーブと水を密封充填可能なものであれば特に限定されないが、携帯、持ち運びに適したもの、衛生上の問題などより、少量充填、無菌充填、充填後殺菌処理の可能な容器が好ましく、特に好ましくはポーション型容器や小袋等の袋型容器を用いることができる。
【0032】
容器としては、充填する内容物の種類や充填後の加熱処理の有無、或いは流通形態など使用条件に応じて、適するものを自由に選択して使用することができる。これらの容器は、不透明にすることによって光による褐変を抑制することができる。
【0033】
使用する容器の内容積としては、抽出に用いる水の体積に対して1.01倍以上、4倍以下とすることが、抽出効率などの観点から好ましい。具体的には、当該割合が1.01倍以上であれば、水とハーブの封入に困難を伴わない。一方、当該割合が4倍以下であれば、得られるハーブ液から気中に揮発される香気成分を最低限に抑えることが可能になる。当該割合としては、1.05倍以上がより好ましく、1.1倍以上がさらに好ましく、また、2倍以下がより好ましく、1.5倍以下がさらに好ましい。なお、ハーブの体積は水の体積に比べて十分に小さいため、容器の内容積の規定においては、ハーブの体積は無視するものとする。また、容器によっては抽出時の加圧により変形して内容積が小さくなることがあるので、上記の割合は、加圧前のものとする。
【0034】
本発明方法において、抽出操作は、水と原料ハーブを内包する容器を密閉した状態で、加圧下、加温して行う。
【0035】
容器の密閉方法は、使用する容器により適宜選択すればよい。例えばプラスチック製容器を用いた場合には、水とハーブを挿入した後、熱シールなどにより密閉すればよい。この際、ヘッドスペースの酸素を除くために、窒素ガスなどの不活性ガスを充填してもよい。
【0036】
抽出温度は30℃以上、180℃以下が好ましい。30℃以上であれば、より確実に香味成分を抽出することができる一方で、温度が高過ぎると抽出効率は良いが、渋味や酸化臭など好ましくない風味が抽出されるおそれがあり得るので、抽出温度としては180℃以下が好ましい。抽出温度としては、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、また、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましく、70℃以下が特に好ましい。特に50℃以上、70℃以下の場合には、優れた風味のハーブ抽出液が効率的に得られる。
【0037】
本発明方法における抽出時の圧力としては、ゲージ圧で0.01MPa以上、10MPa以下が好適である。当該圧力が0.01MPa以上であれば、ハーブが有する香味をより確実に抽出でき得る。一方、当該圧力が高過ぎるとかえって香りが失われ易くなり、また、渋味が生じるおそれもあり得る上に、経済的に好ましくないため、当該圧力としては10MPa以下が好適である。当該圧力としては、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下がより好ましく、2MPa以下がさらに好ましく、1MPa以下が特に好ましい。
【0038】
なお、加圧手段は、使用する容器や装置などに応じて適宜選択すればよい。例えば、フィルム製のものなど変形可能な容器を用いた場合には、外圧により加圧すればよい。一方、ガラス製など変形しない容器を用いた場合には、窒素ガスの封入などにより加圧すればよい。
【0039】
抽出時間は、ハーブの種類や形態、温度などにもよるが、通常は1分間以上、60分間以下程度とすることができる。1分間以上であれば、香味成分などハーブの有効成分をより確実に抽出することができる。一方、抽出時間が長過ぎると渋みや酸化臭などの好ましくない風味が抽出されるおそれがあり得るため、60分間以下が好ましい。抽出時間としては、3分間以上がより好ましく、5分間以上がさらに好ましく、また、30分間以下がより好ましく、15分間以下がさらに好ましい。
【0040】
具体的な加温加圧抽出は、食品関連で一般的に使用される高温高圧調理殺菌装置やオートクレーブなどにより行うことができる。
【0041】
上記加温加圧抽出により得られるハーブ液はそのまま用いてもよいが、利便性の点などから、好適には固液分離を行う。固液分離の手段としては、例えば、遠心分離、フィルタープレス、スクリュープレスなどの公知の手段を用いることができる。
【0042】
加温加圧抽出工程から固液分離工程への移行は、揮発性香気成分の飛散を抑制するために、連続した密閉系で行うか、非密閉状態が極力短時間になるよう行うことが好ましい。
【0043】
本発明方法により得られるハーブ液は、ハーブが有する好ましい香味が抽出された濃厚なものである。当該ハーブ液は、揮発性の香味成分が放散されないように、密閉状態で保存することが好ましい。
【0044】
本発明に係るハーブ液は、溶媒として水を用いて抽出されているものであることから、飲料や食品などに適用するに当たり適用範囲が広いという利点がある。
【0045】
本発明に係るハーブ液を例えば飲料として利用する場合には、冷水や温水、或いはアルコール飲料や炭酸飲料などの他の飲料で希釈することが好ましい。希釈する場合の割合は、ハーブ液の濃度や用いたハーブの種類、希釈する水や飲料の種類などに応じて適宜調整すればよいが、例えば、2倍以上、100倍以下とすることができる。当該割合としては、3倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましく、また、40倍以下がより好ましく、20倍以下がさらに好ましい。
【0046】
本発明に係るハーブ液を食品に適用する場合には、ハーブの香味を有する調味料やソースなどとして用いたり、また、食用油と混合してドレッシングとして用いることもできる。さらに、ハーブの香味を有する香味剤とすることも可能である。その場合、食材に直接混合すればよい。例えば、アイスクリームやシャーベットなどの冷菓;パンや御飯などの主食;焼酎やカクテルなどの酒類;紅茶や炭酸飲料などのソフトドリンク類などに混合することができる。
【0047】
本発明に係るハーブ液は、上記のとおり飲料や食品に適用可能であるが、化粧品や医薬部外品の香料として利用することも可能である。化粧品としては、特に限定はないが、化粧水、ローション、クリーム、石けんなどへの利用が可能である。製造時に添加する以外、使用直前に添加して使用することも可能である。医薬部外品として使用する場合の医薬部外品とは、薬事法に定められた医薬部外品を指し、特に滋養強壮・肉体疲労・病後の体力低下・食欲不振・栄養障害・発熱性消耗性疾患・産前産後などの栄養補給・虚弱体質などと説明または記載されている経口剤(エキス剤、エリキシル剤、シロップ剤、チンキ剤、リモナーデ剤等の液剤)などが挙げられる。
【0048】
本発明に係るハーブ液は、必要に応じて他の成分と併用することができる。その他の成分としては、例えば、香料、甘味料、着色料、増粘剤、乳化剤、保存料、酸化防止剤、安定剤、凝集防止剤のような公知の添加物から選ばれる種々の食品添加物を挙げることができる。香料としては、食品香料、香粧品香料、芳香用香料が挙げられ、好ましくは食品香料が挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0050】
実施例1
カモミール、レモングラス、レモンバーム、レモンバーベナおよびリンデンからなる市販のハーブ茶葉(香寺ハーブ・ガーデン社製,製品名「おだやか茶」)5gと、市販のミネラルウォーター(ハウス食品社製,製品名「六甲のおいしい水」)100gを、内容積120mLのレトルトパウチに入れた。当該レトルトパウチの端部を、その内容積が損なわれない程度にヒートシールし、高温高圧調理殺菌装置(日阪製作所社製,RCS−40RTGN型)を用いて、80℃、大気圧+0.2MPaの圧力下で15分間加圧抽出した。加圧抽出後、遠心分離器(日立工機社製,himac CR21GII型)を用い、固形部を取り除き、水層部を得た。得られた水層部を濾紙(アドバンテック東洋社製,No.2)で濾過することにより、濃厚ハーブ液を得た。
【0051】
得られた濃厚ハーブ液18mLずつを、容積20mLの不透明なポーションに無菌充填することにより、容器入り濃厚ハーブ液を得た。
【0052】
さらに、得られた容器入り濃厚ハーブ液を開封し、10倍量の水で希釈することにより、容易にハーブ飲料が得られた。
【0053】
比較例1
上記実施例1で用いた市販のハーブ茶葉5gと市販のミネラルウォーター100gをヤカンに入れ、開放系の常圧下、80℃で15分間抽出した。次いで、濾過することによりハーブ飲料を得た。
【0054】
試験例1 官能試験
上記実施例1と比較例1で得たハーブ飲料の風味について官能評価を行った。
28歳から52歳の男女10人のパネラーに、上記実施例1と比較例1で得たハーブ飲料をそれぞれ約15mLずつ飲用させ、その風味を評価してもらった。各飲料を飲用する間には水で嗽をしてもらい、口中を洗浄させた。評価は、比較例1のハーブ飲料の風味を基準として、実施例1のハーブ飲料の風味がそれよりも優れているか否かで行った。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
なお、上記結果において、より詳しくは、本発明に係る実施例1のハーブ飲料については、比較例1に比べ、全員が入れたての茶の風味を呈すると評価した。また、比較例1のハーブ飲料については、10人中9人が「酸化臭が有る」と評価した一方で、実施例1のハーブ飲料については6人が「わずかに酸化臭が感じられる」と評価したものの、4人は「酸化臭は無い」と評価した。
【0057】
実施例2
実施例1で得られた容器入り濃厚ハーブ液を、照度1000Lx、25℃で2ヶ月間保存した。また、保存後の容器入り濃厚ハーブ液を、実施例1と同様に10倍量の水で希釈することによりハーブ飲料を得た。
【0058】
上記保存後の濃厚ハーブ液を観察したが、その味や風味に変化は見られなかった。また、上記で得られたハーブ飲料を、上記試験例1と同様に10人のパネラーに評価してもらったが、同様に風味に変化は見られなかった。
【0059】
実施例3
レモングラス、リンデン、レモンバーベナおよびミントからなる市販のハーブ茶葉(香寺ハーブ・ガーデン社製,製品名「ホットひといき」)15gと、市販のミネラルウォーター(ハウス食品社製,製品名「六甲のおいしい水」)300gを、内容積500mLの耐圧容器(耐圧硝子工業社製,TPR−1型)に入れた。当該耐圧容器に窒素ガスを封入し、内部の圧力を大気圧+0.2MPaに調節した。内容物を攪拌しながら、100℃で10分間加圧抽出した。加圧抽出後、遠心分離器(日立工機社製,himac CR21GII型)を用い、固形部を取り除き、水層部を得た。得られた水層部を濾紙(アドバンテック東洋社製,No.2)により濾過することにより、濃厚ハーブ液を得た。
【0060】
また、得られた濃厚ハーブ液から、上記実施例1と同様にしてハーブ飲料を得た。得られたハーブ飲料は良好な風味を有していた。また、好みによりレモン果汁や蜂蜜で味を整えることにより、さらに良好な風味を有するハーブ飲料を容易に得ることができた。
【0061】
実施例4
上記実施例3で得られた濃厚ハーブ液を7倍量の冷水および3倍量の市販リキュール飲料(麒麟麦酒社製,製品名「氷結21°」)で希釈することにより、アルコール含有ハーブ飲料を得た。得られたアルコール含有ハーブ飲料は、非常に良好な風味を有するアルコール飲料であった。
【0062】
実施例5
市販のハーブ茶葉(香寺ハーブ・ガーデン社製,製品名「ホットひといき」)22gと、市販のミネラルウォーター(ハウス食品社製,製品名「六甲のおいしい水」)440gを、内容積500mLのキャップ付き遠心チューブ(日立工機社製,500−PA型)に入れた。キャップを閉めて密閉した後、高温高圧調理殺菌装置(日阪製作所社製,RCS−40RTGN型)を用いて、100℃、大気圧+0.2MPaの圧力下で10分間加圧抽出した。加圧抽出後、密閉状態を保ったまま遠心分離器(日立工機社製,himac CR21GII型)を用い、固液分離を行った。固液分離後、固形部を取り除き、濃厚ハーブ液を得た。得られた濃厚ハーブ液を10倍量の冷水で希釈することによりハーブ飲料を得た。得られた濃厚ハーブ液とハーブ飲料は、両方とも非常に良好な風味を有するものであった。
【0063】
実施例6 ハーブアイスクリーム
卵黄3個とグラニュー糖45gを混ぜ合わせ、さらに牛乳100mLを加えて混ぜ合わせた。その後、弱火にかけ沸騰させないようにかき混ぜた。少しトロミがでたら、卵が固まる前に火から下ろし、氷水にて冷却した。ここへ、上記実施例3で得られた濃厚ハーブ液5mLを加えた。別途、生クリーム100mLをボウルに入れて、氷水に当てながら八分立てに泡立て、これをかき混ぜながら、上記混合物を少しずつ混ぜ合わせた。得られた材料をラップで包み、冷蔵庫(ホシザキ電機社製,HRF−180X型)を用いて−4℃で2時間冷却した。得られた冷却材料をアイスクリーマー(松下電器産業社製,BH−941型)に入れ、そのまま冷凍庫(ホシザキ電機株式会社製、HRF−180X型)に入れて−22℃で3時間冷却することによりアイスクリームを得た。得られたアイスクリームは、良好なハーブ風味を有するアイスクリームであった。
【0064】
実施例7 ハーブ食パン
強力粉250g、砂糖17g、脱脂粉乳15g、食塩5g、バター10g、水180mL、ドライイースト2g、実施例3で得られた濃厚ハーブ液5mLを混合し、ホームベーカリー(パナソニック社製,SD−BH103)を用いて製パンした。得られた食パンは、良好なハーブ風味を有するパンであった。
【0065】
実施例8 ハーブドレッシング
オリーブオイル15g、蜂蜜入りりんご酢15g、塩0.5g、実施例3で得られた濃厚ハーブ液1mLをよく混合し、ドレッシングを作製した。得られたドレッシングは、良好なハーブ風味を有するドレッシングであった。
【0066】
実施例9
市販のハーブ茶葉(香寺ハーブ・ガーデン社製,製品名「レモンマートルリーフ」,3mmカット品)10gと、市販のミネラルウォーター(ハウス食品社製,製品名「六甲のおいしい水」)100gを、内容積120mLのレトルトパウチに入れた。当該レトルトパウチの端部を、その内容積が損なわれない程度にヒートシールし、高温高圧調理殺菌装置(日阪製作所社製,RCS−40RTGN型)を用いて、60℃、大気圧+0.2MPaの圧力下で30分間加圧抽出した。加圧抽出後、遠心分離器(日立工機社製,himac CR21GII型)を用い、固形部を取り除き、水層部を得た。得られた水層部を濾紙(アドバンテック東洋社製,No.2)で濾過することにより、濃厚ハーブ液を得た。
【0067】
得られた濃厚ハーブ液18mLずつを容積20mLの不透明なポーションに無菌充填することにより、容器入り濃厚ハーブ液を得た。
【0068】
さらに、得られた容器入り濃厚ハーブ液を開封し、10倍量の温水で希釈することにより、容易にハーブ飲料が得られた。
【0069】
比較例2
上記実施例9で用いた市販のハーブ茶葉10gと市販のミネラルウォーター100gをヤカンに入れ、開放系の常圧下、60℃で10分間抽出した。次いで、濾過することによりハーブ飲料を得た。
【0070】
試験例2 官能試験
上記実施例9と比較例2で得たハーブ飲料の風味について、27歳から50歳の男女10人のパネラーに約30mL飲用したもらった以外は上記試験例1と同様に官能評価を行った。なお、本試験では、比較例2のハーブ飲料の風味を基準として、実施例9のハーブ飲料の風味がそれよりも優れているか否かで行った。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
上記結果のとおり、比較例2のハーブ飲料よりも、実施例9のハーブ飲料は明らかに風味の優れるものであった。
【0073】
実施例10
市販のハーブ茶葉(香寺ハーブ・ガーデン社製,製品名「レモンマートルリーフ」,3mmカット品)10gと、市販のミネラルウォーター(ハウス食品社製,製品名「六甲のおいしい水」)100gを、内容積120mLのレトルトパウチに入れた。当該レトルトパウチの端部を、その内容積が損なわれない程度にヒートシールし、高温高圧調理殺菌装置(日阪製作所社製,RCS−40RTGN型)を用いて、40℃、大気圧+0.1MPaの圧力下で30分間、あるいは100℃、大気圧+0.2MPaの圧力下で10分間の加圧抽出を行った。加圧抽出後、遠心分離器(日立工機株式会社製;himac CR21GII型)を用い、固形部を取り除き、水層部を得た。得られた水層部を濾紙(アドバンテック東洋株式会社製,No.2)で濾過することにより、濃厚ハーブ液を得た。
【0074】
得られた濃厚ハーブ液を、容積20mLの不透明なポーションに無菌充填することにより容器入り濃厚ハーブ液を得た。得られた容器入り濃厚ハーブ液を開封し、10倍量の温水で希釈することにより、容易にハーブ茶飲料が得られた。
【0075】
試験例3 官能試験
上記実施例9、実施例10および比較例2で得た計4種のハーブ飲料の風味について、上記試験例2と同様に官能評価を行い、何れのハーブ飲料の風味が最も優れているか評価した。結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
上記結果のとおり、比較例2のハーブ飲料よりも、本発明実施例のハーブ飲料は風味の優れるものであった。また、本発明実施例の中でも、60℃、大気圧+0.2MPaの圧力下で30分間加圧抽出して得られたハーブ飲料(実施例9)が最も風味に優れるものであった。これは、40℃、大気圧+0.1MPaの圧力下で30分間加圧抽出した場合(実施例10)ではハーブの香味が実施例9のハーブ飲料ほどは十分に抽出されておらず、また、100℃、大気圧+0.2MPaの圧力下で10分間加圧抽出した場合(実施例10)では、好ましくない風味まで抽出されてしまったことによると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とハーブを容器に密閉し、加温加圧抽出する工程を含むことを特徴とするハーブ液の製造方法。
【請求項2】
容器の内容積が、水の体積に対して1.01倍以上、4倍以下である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
圧力をゲージ圧で0.01MPa以上、10MPa以下にする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
温度を40℃以上、100℃以下にする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
2種以上のハーブを用いる請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法で製造されたものであることを特徴とするハーブ液。
【請求項7】
密閉充填されたものである請求項6に記載のハーブ液。
【請求項8】
請求項6または7に記載のハーブ液を含むことを特徴とする食品。
【請求項9】
請求項6または7に記載のハーブ液を含むことを特徴とする飲料。

【公開番号】特開2012−196154(P2012−196154A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61338(P2011−61338)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】