説明

バイアスロール及びそれを用いた画像形成装置

【課題】電圧が変化に対し抵抗が安定し、高温高湿及び低温低湿の両環境における抵抗変化を小さくでき、さらに、安定的に高画質を得ることのできるバイアスロール及びそれを用いた画像形成装置を提供することである。
【解決手段】少なくとも金属のロール軸100と、該ロール軸の外周面に設けられたフォーム状の導電性弾性層120と、該導電性弾性層の外周面を被覆する導電性チューブ130とを有し、前記ロール軸と前記導電性弾性層とが前記導電性チューブの内側に圧入され、さらに該導電性チューブ長手方向の両開放端におけるロール軸と導電性チューブとの隙間を、絶縁性シール材140で密閉したバイアスロールであって、密閉された導電性チューブ内の前記導電性弾性層における空隙気体中の水分量を0.0005〜0.0075kg/kg(DA)の範囲としたことを特徴とするバイアスロールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター等の電子写真方式を用いた画像形成装置に用いられるバイアスロール及びそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置では、無機または有機材料からなる光導電性感光体からなる像担持体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電潜像を形成した後、トナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。
そして、得られたトナー像を中間転写体を介して、あるいは直接、記録紙等の転写材に静電的に転写することにより所要の再生画像が得られる。
【0003】
特に、上記像担持体に形成したトナー像を中間転写体に一次転写し、さらに中間転写体上のトナー像を記録紙に二次転写する方式を採用したものでは、導電性または半導電性のバイアスロールを用いて中間転写体に記録紙を押圧し、電圧を印加してトナー像を静電的に転写するバイアスロール方式の画像形成装置が知られている。
【0004】
上記方式を採用した画像形成装置としては、例えば転写装置における二次転写部のバイアスロールとしてアルミニウム製の金属ロールを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、芯金(ロール軸)とその外周面を被覆する弾性部材で構成されたバイアスロール(転写ロール)を使用した画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。前記弾性部材としては、導電剤を分散した体積抵抗率を107〜1010Ωcmに設定したEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)からなる弾性体、または、厚さ50μmで体積抵抗率が108〜109ΩcmのPFA(パーフルオロアルコキシ樹脂)チューブで被覆された体積抵抗率が108〜109Ωcmの範囲のエピクロルヒドリンゴムが用いられている。
【0005】
上記のような導電性弾性層に導電性チューブを被覆したバイアスロールの体積抵抗率は、主体となる導電性弾性層の体積抵抗率の影響が大きい。また、導電性を持たせるための導電剤は、所謂電子伝導系とイオン伝導系とに大別できる。カーボンブラック等の電子伝導材料は、環境による抵抗変化が小さい利点を有するが、添加量で大きく抵抗変化が発生し要求する抵抗を達成することが難しい。また、カーボンブラック等を添加するため、弾性層の硬度が高くなり、低硬度のバイアスロールが得られない。
【0006】
一方、イオン伝導材料は抵抗が湿度により大きく変化する欠点を有するが、印加電圧に対する抵抗安定性がある利点を有している。イオン伝導材料を使用した導電性ロールとしては、外層の抵抗を内層の抵抗より低くする方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法では、軸芯金両端が絶縁材料で密閉されているため、外気の湿度の影響が被覆内部まで及ぼされることを抑えることができる。
【0007】
しかしこの方法では、製造されたバイアスロールによって密閉された空隙気体中に含まれる水分量が異なり、安定した体積抵抗率を得ることができない。具体的には、密閉された空隙気体の露点が一定しないため、露点以下の外気温度になった場合に被覆チューブ内部で結露してしまう。そして、この結露部分では抵抗が極端に低下し安定した性能が得られないという問題がある。
【特許文献1】特開平6−95521号公報
【特許文献2】特開平6−124049号公報
【特許文献3】特開2000−179539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明の目的は、電圧が変化に対し抵抗が安定し、高温高湿及び低温低湿の両環境における抵抗変化を小さくでき、さらに、安定的に高画質を得ることができるバイアスロール及びそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 金属のロール軸と、該ロール軸の外周面に設けてなる多孔質導電性弾性層と、該多孔質導電性弾性層の外周面を被覆する導電性チューブとを有し、前記ロール軸と前記多孔質導電性弾性層とが前記導電性チューブの内側に圧入され、さらに該導電性チューブ長手方向の両開放端におけるロール軸と導電性チューブとの隙間を、絶縁性シール材で密閉してなるバイアスロールであって、
前記導電性チューブ内の多孔質導電性弾性層における空隙気体中の水分量が0.0005〜0.0075kg/kg(DA)の範囲であるバイアスロールである。
【0010】
<2> 前記多孔質導電性弾性層の導電性が電子伝導に基づくものであり、前記導電性チューブの導電性がイオン伝導に基づくものである<1>に記載のバイアスロールである。
【0011】
<3> 前記多孔質導電性弾性層が、連続気泡を含む<1>または<2>に記載のバイアスロールである。
【0012】
<4> 前記導電性チューブ及び/または絶縁性シール材の透湿度が、0.01〜10g/m2・日(40℃、90%RH環境)の範囲である<1>〜<3>のいずれかに記載のバイアスロールである。
【0013】
<5> 少なくとも像担持体と、前記像坦持体表面を帯電する帯電手段と、前記像担持体表面に形成された静電潜像をトナー像として可視化する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段とを備える画像形成装置であって、
前記転写手段を構成する転写ロールが、<1>に記載のバイアスロールである画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電圧が変化に対し抵抗が安定し、高温高湿及び低温低湿の両環境における抵抗変化を小さくでき、さらに、安定的に高画質を得ることができるバイアスロール及びそれを用いた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
(バイアスロール)
本発明のバイアスロールは、金属のロール軸と、該ロール軸の外周面に設けられた多孔質導電性弾性層と、該多孔質導電性弾性層の外周面を被覆する導電性チューブとを有し、前記ロール軸と前記多孔質導電性弾性層とが前記導電性チューブの内側に圧入され、さらに該導電性チューブ長手方向の両開放端におけるロール軸と導電性チューブとの隙間を、絶縁性シール材で密閉したバイアスロールであって、密閉された導電性チューブ内の前記多孔質導電性弾性層における空隙気体中の水分量を0.0005〜0.0075kg/kg(DA)の範囲としたことを特徴とする。
【0016】
上記密閉された空隙気体中の水分量(以下、「内部水分量」という場合がある)を0.0005〜0.0075kg/kg(DA)の範囲とすることで、前記バイアスロールを低温環境下で使用しても導電性チューブ内部で水分が結露することがなく、高温高湿環境から低温低湿環境まで安定した画質が得られる。また、内部水分量を少なく且つ一定に保つことで、特に導電性弾性層としてイオン伝導性の材料を用いた場合、抵抗の環境変動を大幅に改善でき高画質を実現することができる。
【0017】
前記内部水分量は0.0005〜0.006kg/kg(DA)の範囲とすることが好ましく、0.0005〜0.005kg/kg(DA)の範囲とすることがより好ましい。
内部水分量が0.0075kg/kg(DA)を超えると、バイアスロールを低温環境に放置した場合、導電性チューブ内部側に結露してしまう。例えば、22℃、55%RH(内部水分量:0.009kg/kg(DA))でバイアスロールを作製した場合、密閉された空隙気体の露点は12.55℃であるため、外気温が12.55℃以下になるとチューブ内部の水分が飽和し結露することになる。この結露は部分的に発生するためロールの抵抗が不均一となり画質劣化の原因となってしまう。
【0018】
一方、内部水分量を0.0005kg/kg(DA)未満とすることは実際上困難であり、また、ロール内層中の水分量が十分でないため、例えばイオン伝導に基づく導電性を有する導電性弾性層とした場合に所望の抵抗値を得ることができない。
【0019】
本発明における内部水分量は、乾燥空気(DA)1kgに含まれる水蒸気の量をいい、通常絶対湿度Hで表される。この絶対湿度Hは、系における全圧をP、水蒸気の分圧をpとしたとき、下記式(1)で示される。
H=18p/29(P−p) ・・・ 式(1)
【0020】
水分量に関する計算には、図3に示すような湿度図を利用する。図3に示す湿度図は、縦軸に水分量(絶対湿度H)、横軸に温度をとって全圧101.3kPaの空気について示したものである。この湿度図から各環境における水分量を求めるには、例えば図3におけるP点の環境(46℃、30%)については、P点を水平に図の左に移動し湿度100%の曲線と交点Qの位置を求めることにより、露点Rと、絶対湿度を示すS点(内部水分量)とを求めることができる。
【0021】
実際の内部水分量の測定は、露点計の測定値を湿度図に当てはめて算出することができる。本発明における内部水分量は、測定ロールを20℃、55%RHの環境に24時間保管した後、同一の環境下で、バイアスロールの導電性チューブの一部を直径2cmの円径に切開き、ここに露点計(テストー社製、TESTO 615)のプローブを挿入して露点温度と相対湿度とを測定し、この測定温度と測定相対湿度とから前記湿度図に換算し内部水分量を求めた。
【0022】
まず、本発明のバイアスロールの各構成について説明する。
−導電性弾性層−
本発明のバイアスロールは、多孔質導電性弾性層と導電性チューブとの2層構成からなり、内部の導電性弾性層には、多孔質弾性体が用いられる。なお、本発明において「導電性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0023】
多孔質弾性体としては、一般に独立気泡を含むものと連続気泡を含むものとがあるが、本発明における多孔質導電性弾性層は連続気泡を含むことが好ましい。この場合、多孔質導電性弾性層は連続気泡のみを含んでもよいし、独立気泡と連続気泡とを含んでもよい。
【0024】
ここで、上記連続気泡とは発泡体中の気泡が完全に隔壁によって遮蔽されておらず、気泡間を空気や液体が通り抜けられる構造をとっているものをいう。なお、上記構造でない独立気泡のみを含む多孔質体の場合には、多孔質体製造時に気泡中に気体が閉じ込められこれが移動しにくくなるため、本発明における内部水分量の調節が不十分となる場合がある。
【0025】
前記多孔質導電性弾性体を構成する材料としては、好ましくは連続気泡を有する連泡形のゴムが用いられる。該連泡形のゴムは、圧縮された場合内部の気泡の体積を自由に減少させることができ、中間転写体などに圧接した場合、ゴム材料自体の圧縮弾性力だけしか作用せず気泡の圧縮変形による弾性反発力が小さいため、ロールとしての弾性反発力を大幅に低くすることができ、さらにロール硬度を低くすることが可能となる。
【0026】
前記連泡形のゴム材料としては、現在バイアスロールのゴム材料として広く使用されているウレタンゴム、シリコーンゴム、EPDMゴム、NBRゴム、ECOゴム等のゴム材料を用いることができる。
【0027】
前記ゴム材料には、所望の電気抵抗値を得るために、必要に応じて、電子伝導性導電剤またはイオン伝導性導電剤が添加される。
前記電子伝導性導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属または合金、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化錫−酸化インジウムまたは酸化錫−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物などが挙げられる。
【0028】
前記イオン伝導性導電剤としては、スルホン酸塩やアンモニア塩など、また、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などの各種の界面活性剤が挙げられる。さらには、導電剤として導電性ポリマーをブレンドする方法があり、前記導電性ポリマーとしては、例えば、カルボキシル基に4級アンモニウム塩基を結合する(メタ)アクリレートとの各種(例えばスチレン)共重合体、4級アンモニウム塩基と結合するマレイミドとメタアクリレートとの共重合体等の4級アンモニウム塩基を結合するポリマー、ポリスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸のアルカリ金属塩を結合するポリマー、分子鎖中に少なくともアルキルオキシドの親水性ユニットを結合するポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール系ポリアミド共重合体、ポリエチレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルを主セグメントとするブロック型のポリマー、さらには、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレンなどを挙げることができる。これらの導電性ポリマーを脱ドープ状態、またはドープ状態で用いることができる。
【0029】
上記導電剤または、界面活性剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることにより、前記のように電気抵抗値を安定して得ることができる。本発明においては、低いロール硬度のバイアスロールが得られ、後述するようにイオン伝導性導電剤特有の湿度影響を排除でき抵抗が安定化できるため、イオン伝導性導電剤を用いられることが好ましい。また、イオン伝導性導電剤に電子伝導性剤を混合して使用しても良い。このため本発明では、ゴム材料としてイオン伝導性導電剤を添加してなるウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴムなどが好ましく用いられる。
【0030】
前記導電性弾性層に分散させる導電剤の添加量は、連泡形のゴム材料100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部の範囲、より好ましくは10〜30質量部の範囲とする。5質量部未満の場合には、所望の電気抵抗を安定して得ることができない、50質量部を超える場合には、所望の電気抵抗、ロール硬度を安定して得ることができないなどの問題が生じる場合がある。
【0031】
また本発明においては、後述する密閉された空隙気体中の水分量を低減するため、導電性弾性層に乾燥剤(吸湿剤)を混入させることができる。乾燥剤としては、導電性弾性層の特性を低減させないものであれば特に制限されないが、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウムなどを用いることができる。また添加量は、多孔質導電性弾性層全体の0.5〜10質量%の範囲が好ましい。
【0032】
前記導電剤を分散させる方法としては、前記ゴム材料の原料に導電剤を加え、攪拌機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、2本ロール、3本ロール等により混合する方法を適用できる。その後、これらを各種発泡方法により発泡させ多孔質体とする。
【0033】
上記のようにして作製した多孔質導電性弾性層の密度は、2×105〜10×105g/m3の範囲とすることが好ましい。密度が2×105g/m3に満たないとバイアスロールとしての使用時の強度を確保できない場合がある。また、10×105g/m3を超えると硬度が高くなったり、前記連続気泡が得られなくなったりする場合がある。
【0034】
本発明における多孔質導電性弾性層の体積抵抗率は106〜109Ωcmの範囲が好ましく、106〜108Ωcmの範囲がより好ましい。
なお、前記体積抵抗率の測定は、シート状の測定サンプルに対し、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加後の電流値より、下記式(2)を用いて算出した。
体積抵抗率(Ω・cm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定サンプルシート厚(cm)) ・・・ 式(2)
【0035】
また、前記多孔質導電性弾性層の硬度は、アスカーC硬度で70°以下であることが好ましい。アスカーC硬度が70°より高くなると、例えば中間転写体とのニップ均一性が損なわれ、画質欠陥が発生するようになる場合がある。
なお、アスカーC硬度の測定は、3mm厚の測定シート表面にアスカーC型硬度計(高分子計器社製)の押針を当接し、1000g荷重の条件で行った。
【0036】
前記多孔質導電性弾性層の厚みは、1〜20mmの範囲が好ましく、3〜10mmの範囲がより好ましい。1mm未満であるとニップ部におけるニップ圧での変形が少ないために、ニップの安定した形成ができないなどの問題が発生することがある。また、20mmを超える場合には、バイアスロールの外径が40mmより大きくなるために、装置のサイズが大きくなり、コストアップになるなどの問題が生じることがある。
【0037】
−導電性チューブ−
本発明のバイアスロールは、前記多孔質導電性弾性層が導電性チューブにより被覆されてなる。前記導電性チューブは、バイアスロールの用途に応じて種々の特性のチューブを用いることができる。
【0038】
本発明に用いられる導電性チューブの厚みは、0.02〜0.08mmの範囲が好ましく、より好ましくは、0.03〜0.06mmの範囲である。厚みが0.02mm未満の場合には、厚みが薄いために生ずる強度不足により、後述するような金属ブレードによる表面のクリーニングの際に、ブレードめくれなどの問題が発生する場合がある。また、0.08mmを超える場合には、多孔質導電性弾性層の変形に追随させるための圧力が大きくなるなどの問題が生じる場合がある。
なお、導電性チューブの膜厚の測定は、渦電流式の膜厚計(フィッシャー社製、MP30)を用いて容易に行うことができる。
【0039】
前記導電性チューブのヤング率は、3000MPa以上であることが好ましく、特に3500MPa以上であることが好ましい。導電性チューブのヤング率が3000MPa以上であると、金属ブレードによる表面のクリーニングの際におけるブレードめくれなどの問題は発生しない。
【0040】
なお、前記ヤング率は、JISK6251に準じて、導電性チューブとなるシートをJISに規定されている3号ダンベル形状に打ち抜き、引張試験を行うことにより測定した。引張試験により得られた応力・歪曲線の初期ひずみ領域の曲線に接線を引き、その傾きによりヤング率を求めた。
【0041】
前記導電性チューブ表面の表面微小硬度は、18以上であることが好ましく、特に25以上であることが好ましい。前記表面微小硬度が18以上であることによって、本発明のバイアスロールを備えた画像形成装置が球状トナーを使用する場合に、前記バイアスロールをクリーニングするために金属ブレードを用いても、前記バイアスロール表面の磨耗を避けることができる。
【0042】
前記表面微小硬度は、島津ダイナミック超微小硬度計DUH 201Sにて、稜線角度115°による三角錐圧子を用い、試験荷重2.0gf(19.6mN)、負荷速度0.0145gf(0.1421mN)/secによる測定条件下での測定値で規定される。
【0043】
前記導電性チューブの材料としては、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアリレートなどの樹脂材料を用いることができる。
これらの中では、強度、耐熱性、寸法安定性の観点からポリイミドが特に好ましい。より具体的なポリイミド樹脂材料としては、例えば、ポリピロメリット酸イミド系のポリイミド樹脂材料、ポリビフェニルテトラカルボン酸イミド系樹脂材料などの熱硬化性樹脂、ポリベンゾフェノンテトラカルボン酸イミド系樹脂材料、ポリエーテルイミド樹脂などの熱可塑性ポリイミド樹脂を挙げることができる。
【0044】
また、前記ヤング率と表面微小硬度との要求を満足すれば、無機系の充填材を添加してなる樹脂組成物を導電性チューブの材料として用いることが可能である。より具体的には、耐摩耗性に向上効果のある無機系の充填材として、層状構造をもつ二硫化モリブデン、マイカ、板状形態をもつグラファイト、窒化ホウ素、チタン酸カリウム繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維などの繊維形状の充填材料などを挙げることができる。前記無機系の充填材を添加されることが可能な樹脂材料としては、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0045】
導電性チューブに添加される導電剤としては、特に制限されず、前記導電性弾性層に用いた電子導電性導電剤やイオン伝導性導電剤を用いることができる。
本発明においては、30℃、85%RHの高温高湿の環境と、10℃、15%RHの低温低湿の環境で、電気抵抗値の変動が少ないことを考慮し、電子伝導により導電性を発現する電子伝導性導電剤を用いるのが好ましい。
【0046】
前記電子伝導性導電剤としては、前述のカーボンブラック等を用いることができるが、そのpHは5.0以下が好ましく、より好ましくはpH4.0以下である。電子伝導性導電剤のpHが5.0以下であると、表面に付着する酸素含有官能基の効果により、導電性チューブの材料中への分散性が向上し、導電性弾性層の抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電流による電界集中が起こりにくくなる。また、環境による抵抗変化を少なくすることができる。
【0047】
特に好ましい電子伝導性導電剤としては、pH5.0以下のカーボンブラック(以下、「酸性カーボンブラック」ということがある。)が挙げられる。前記酸性カーボンブラックには、必要に応じ、酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与してもよい。前記酸化処理の方法としては、高温雰囲気下で、空気と接触して反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、高温下での空気酸化後、低温でオゾン酸化する方法、等を挙げることができる。具体的には、酸性カーボンブラックは、コンタクト法により製造することができる。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。
【0048】
また、酸性カーボンブラックは、ガスまたはオイルを原料とするファーネスブラック法により製造することもできる。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。ファーネス法では通常、高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに前記液相酸処理を施してpHを調整することができる。このためファーネス法製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHを調節することができる。このため、ファーネス法により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが5以下となるように調節された酸性カーボンブラックも本発明に好適に用いることができる。
【0049】
なお、前記カーボンブラックのpHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極を用いたpHメータで測定し求めることができる。酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、適宜調整することができる。
【0050】
酸性カーボンブラックは、その揮発分が1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは、3.5〜15質量%の範囲であることが好適である。前記揮発分が1質量%未満である場合には、表面に付着する酸素含有官能基の効果がなくなり、導電性チューブの材料となる樹脂への分散性が低下することがある。一方、25質量%より高い場合には、導電性チューブの材料となる樹脂に分散させる際に分解してしまったり、或いは、表面の酸素含有官能基に吸着された水などが多くなるなどによって、得られる成形品の外観が悪くなるといった問題が生じることがある。従って、前記揮発分を前記範囲とすることで、樹脂中への分散をより良好とすることができる。
【0051】
前記揮発分は、カーボンブラックを950℃で7分間加熱したときに発生する有機揮発成分(カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)の割合により求めることができる。
【0052】
酸性カーボンブラックとして具体的には、キャボット社の「REGAL 400R」(pH4.0、揮発分3.5質量%)、「MONARCH 1300」(pH2.5、揮発分9.5質量%)、デグサジャパン社の「Color Black FW200」(pH2.5、揮発分20質量%)、「SPECIAL BLACK 4」(pH3.0、揮発分14質量%)、「PRINTEX150T」(pH4.0、揮発分10質量%)、「PRINTEX140T」(pH5.0、揮発分5質量%)、「PRINTEX U」(pH5.0、揮発分5質量%)、等が挙げられる。なお、酸性カーボンブラックは、主たる導電性を発現させる電子伝導性導電剤として用いていれば、他のカーボンブラックと併用してもよい。
【0053】
前記導電剤の添加量は、導電性チューブの材料となる樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜40質量部の範囲、より好ましくは10〜30質量部の範囲とする。5質量部未満または40質量部を超えると、所望の電気抵抗を安定して得ることができない場合がある。
前記導電剤を分散させる方法としては、ボールミル、アトライター、サンドミル、加圧ニーダー、バンバリミキサー、2本ロール、3本ロール、エクストルーダー等の方法を適用できる。
【0054】
上記のようにして得られた導電性チューブの体積抵抗率は105〜108Ωcmの範囲であることが好ましく、106〜107Ωcmの範囲であることがより好ましい。
なお、上記体積抵抗率は前記と同様にして測定し求めることができる。
【0055】
本発明においては、導電性チューブは後述する絶縁性のシール材とともに前記導電性弾性層を密閉する。ここで「密閉」とは、少なくとも水蒸気が内部に侵入できないように外部と遮蔽することをいう。したがって、本発明における導電性チューブは、透湿度が一定値以下であることが好ましい。
【0056】
本発明における導電性チューブの透湿度は0.01〜10g/m2・日の範囲であることが好ましく、0.01〜5g/m2・日の範囲であることがより好ましい。
なお、上記透湿度は、JIS Z 0208の透湿試験方法に準じて行った。具体的には、上記導電性チューブを接着剤で取り付けたアルミ製円筒上蓋を用意し、アルミ容器に粒状塩化カルシウム約50gを入れた後アルミテープで接着し、デシケーター内で1日静置した。静置後、全重量測定後、40℃、90%RHの恒温恒湿槽内にサンプルを1日保管後測定し、透湿度を求めた。
【0057】
また、前記導電性弾性層表面と前記導電性チューブの内側表面との間の静止摩擦係数は、3以下であることが好ましく、特に2以下であることが好ましい。静止摩擦係数が3を超える場合は、導電性弾性層の表面を導電性チューブで覆い、固定する作業が困難になる場合がある。
前記静止摩擦係数は、導電性チューブを構成する樹脂シート上に、導電性弾性層を外周面に設けたロール軸を置き、徐々に樹脂シートを傾け、前記ロール軸が滑りだす角度のtan(正接)より求めることが可能である。
【0058】
−ロール軸−
ロール軸は、バイアスロールの電極および支持部材として機能する円柱状の金属性部材であり、その材質としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅合金、SUS等の金属合金又はその表面をクロム、ニッケル等でメッキ処理した金属等の導電性を有する公知のものが挙げられる。前記ロール軸の外径は、通常6〜20mmの範囲にあるのが好ましい。前記ロール軸の外周面に、少なくとも前記導電性弾性層及び導電性チューブが配される。
【0059】
−絶縁性シール材−
絶縁性シール材としては、透湿性がなく、絶縁性であり、ロール軸端部から移動しなければ如何なるものであっても良い。なお、本発明における「絶縁性」とは、体積固有抵抗が1013Ωcm以上であることをいう。抵抗値がこの範囲の絶縁性材料を用いることで、ロール軸芯金から導電性チューブへの電流の漏れを防止することができる。
【0060】
絶縁性シール材としては、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリシリコーン、ポリウレタン、ポリイソブチレンなどの樹脂材料を用いることができる。また、高粘度耐水性グリースや植物油であっても良い。例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル類である。また、一般市販のシール剤、コーキング剤をしても良い。
なお前述のように、上記絶縁性シール材は、前記導電性チューブにおいて規定した透湿度と同様の透湿度を有することが好ましい。
【0061】
次に、本発明のバイアスロールの製造方法について説明する。
本発明のバイアスロールは、少なくとも、金属のロール軸の外周に導電性弾性層を形成してなる成形物を得た後、前記成形物を導電性チューブ内に圧入し、前記導電性弾性層の外周面を前記導電性チューブで被覆し、更に導電性チューブ長手方向の両開放端におけるロール軸と導電性チューブとの隙間を、絶縁性シール材で密閉することにより製造される。
【0062】
低ロール硬度及び低弾性反発力を達成するため、本発明では、導電性弾性層の材料としてイオン伝導性導電剤を添加してなるウレタンゴム多孔質体またはエピクロルヒドリンゴム多孔質体などが好ましく用いられる。これらイオン伝導性導電剤を添加してなるウレタンゴム多孔質体またはエピクロルヒドリンゴム多孔質体は、補強材が含まれていないため、優れた柔軟性を有している。従って、前記導電性チューブ内に前記成形物を挿入する際に、導電性弾性層自体が容易に変形し、この結果、真空装置等を用いることなく、容易に導電性チューブ内に前記成形物を圧入することができる。よって、チューブの被覆作業が極めて容易になる。
【0063】
前記導電性弾性層の外周面に導電性チューブを被覆・固定する方法は特に限定されない。しかし、本発明のバイアスロールにおいては、内側の導電性弾性層と外側の導電性チューブとの間の電気的接続を確保することが望ましい。すなわち、導電性チューブと導電性弾性層との間の電気的接続が不十分であると、ロール抵抗の不安定化・不均一化の原因となる接触抵抗が発生するおそれがある。
【0064】
このため、上記電気的接続に加え、特にバイアスロールにおける導電性弾性層と導電性チューブとの間で生ずるスリップを防止する必要のある場合などには、必要に応じて接着層を介在させて両者を接着させることがある。しかし、一般的に接着層が介在すると当該部分が硬くなる傾向にあり、接着層の厚みムラ、接着強度のバラツキによって、接着層が介在する部位が周囲より硬くなり、ロールの硬度が局部的に変化する可能性がある。そして、このようなバイアスロールを備えた画像形成装置では、安定に高画質を得ることが困難な場合がある。
【0065】
本発明においては前記接着層を用いないことが好ましく、接着層がなくても導電性弾性層と導電性チューブとがスリップを起こさないように、本発明のバイアスロールでは、前記ロール軸と前記導電性弾性層とが前記導電性チューブの内側に圧入され、前記導電性弾性層の弾性反発力が前記導電性チューブの内側表面に常時作用するように構成されることが好ましい。
【0066】
すなわち本発明においては、圧入前の導電性弾性層の外径寸法を導電性チューブの内径寸法よりも大きく設定し、導電性弾性層を導電性チューブの内側に圧入することが好ましい。これにより、導電性弾性層の弾性反発力が導電性チューブの内側表面に常時作用するため、導電性弾性層と導電性チューブとの間の接触面積及び接触抵抗が安定し、この結果、電気的に安定した性能のバイアスロールを実現することができる。
【0067】
上記方法の例としては、導電性チューブの内側半径をr2とした場合に、導電性弾性層の外側半径r1が下記式(3)を満足する成形物を用い、導電性チューブの内側に空気などの流体を圧入して導電性チューブを膨らませ、この状態で導電性チューブの内側に前記成形物を挿入し、その後、前記流体の圧入を停止させて導電性チューブを収縮することで、挿入・固定する方法が挙げられる。
0.99r1 > r2 >0.95r1 ・・・ 式(3)
【0068】
導電性チューブ内に前記成型物を挿入する他の方法としては、前記成形物を冷却することにより導電性弾性層の外側半径を導電性チューブの内側半径よりも一時的に小さくした状態とし、この状態で前記成形物を導電性チューブの内側に圧入する方法を適用することもできる。
【0069】
導電性チューブの内側半径r2が0.99r1以上となると、導電性チューブの内側表面に導電性弾性層の弾性反発力が作用しなくなり、導電性弾性層と導電性チューブとの間のスリップを防止することができなくなる場合がある。また、r2が0.95r1以下となると、前述した方法による前記成形物の挿入が難しい場合がある。
【0070】
前記導電性チューブ長手方向の両開放端(導電性弾性層の軸芯金両端)を絶縁性シール材で密閉する方法は、特に限定されないが、密閉時に内部の導電性弾性層における空隙気体中の水分量を0.0005〜0.0075kg/kg(DA)の範囲にする必要がある。
【0071】
上記のように内部の水分量を制御する方法も特に制限されないが、例えば,あらかじめ多孔質導電性弾性層を低湿環境下(例えば露点10℃以下の環境下)に保管した後に、同環境下でチューブ被覆・密閉操作を行う方法や、チューブ被覆操作後に低湿環境下に保管した後に密閉操作を行う方法がある。チューブ被覆操作をした後に低湿環境下に置く場合、内部の水分が端部からしか抜けることができず、長時間湿度管理必要がある上、内部水分量を管理するのが難しいので、被覆前に必要環境に置くことが好ましい。
【0072】
多孔質導電性弾性層の保管環境は、内部水分量を0.0075kg/kg(DA)以下にする必要があるため、絶対湿度が0.0075kg/kg(DA)以下である必要がある。目安としては、前記図3に示した湿度図から保管環境温度の水分量(=絶対湿度)を知ることができる。例えば、20℃であれば50%RH以下となる。
【0073】
また、多孔質導電性弾性層内部の発泡部分(気泡部分)の気体水分量が外気空気水分量と一致するまで保管する必要がある。目安として、チューブ被覆前であれば24時間以上が好ましく、個々のばらつきを低減するには48時間以上がより好ましい。チューブ被覆後では内部の水分が抜けにくくなるため、更に長時間の保管が必要となる。目安として、48時間以上が好ましく、より好ましくは96時間以上である。
【0074】
さらに、前記多孔質導電性弾性層において説明したような、適切な乾燥剤が使用可能な場合には、多孔質導電性弾性層に乾燥剤を用いることによって前記放置時間を短縮することができる。
【0075】
図1は、本発明のバイアスロールの一例を示す長手方向の断面図である。図1に示すように、本発明のバイアスロールは、円柱形状の金属のロール軸100の外周に、円筒形の導電性弾性層(多孔質導電性弾性層)120、導電性チューブ130、及び絶縁性シール材140が順次設けられた構成を有する。なお、ロール軸100と導電性弾性層120との間には、必要に応じて接着層を設けてもよい。
【0076】
本発明のバイアスロールは、例えば画像形成装置を構成する転写装置(転写手段)における転写ロールとして好ましく用いることができる。転写ロールが画像形成装置を構成する像担持体に対して圧接されると、所定のニップ幅が形成される。また、トナーの転写効率は前記ニップ幅に対応している。従って、転写ロールと像担持体との間に不均一なニップ幅が形成されると、転写ムラが生じてしまう。弾性反発力が弱く低硬度である本発明のバイアスロールは、安定したニップ幅を得ることができるため、転写ロールとして好適に用いることができる。また、安定したニップ幅を得ることを要求される帯電ロールとして本発明のバイアスロールを用いることも好ましい。
【0077】
本発明のバイアスロールを転写ロール等として用いる場合、バイアスロールのロール硬度は、アスカーC硬度で20°〜70°の範囲であることが好ましく、30°〜60°の範囲であることがより好ましい。ロール硬度が20°未満の場合には、外圧に対するバイアスロールの変形が大きくなり、例えばクリーニングブレードが設けられたバイアスロールではクリーニングブレードによる変形が転写部のニップ形状に影響を及ぼし、安定してニップ幅を得ることができなくなる場合がある。また、記録紙がバイアスロールと対抗するロール側に沿って剥離するなどの問題が生じる場合がある。
【0078】
ロール硬度が70°を超えると、転写部で2mmから4mmのニップ幅を得るためのニップ圧が大きくなり、転写部でのバイアスロールによる押圧力の荷重が集中することになり、ライン画像が中抜けするなどの画質欠陥が発生する場合がある。なお、転写部で2mmから4mmのニップ幅を得るためのニップ圧は、0.3kg/cm2〜0.6kg/cm2(29.4〜58.8kPa)の範囲であると転写画質は良好である。
前記アスカーC硬度の測定は、バイアスロールの表面にアスカーC型硬度計(高分子計器社製)の押針を当接し、1000g荷重の条件で行った。
【0079】
本発明のバイアスロールを転写ロール等として用いる場合、バイアスロールの抵抗値は106〜109Ωの範囲であることが好ましく、106.5〜108.5Ωの範囲であることがより好ましい。バイアスロールの抵抗値が、106Ωより低い場合には、単色のみを転写する場合に、転写電界が低くなり、転写不良が発生する場合がある。109Ωより高い場合には、一定の転写電界を得るために高電圧を印加する必要があり、高圧電源が必要となるだけでなく、低温低湿環境においてポストニップ部での剥離放電が発生しやすくなることにより、白点抜けなどの画質欠陥が発生する場合がある。
【0080】
前記バイアスロールの抵抗値R(Ω)は、バイアスロールを金属板などの導電体上に置いて、バイアスロールの両端部に各500gの荷重をかけ、ロール軸に1.0kVの電圧Vを印加し、10秒後のロール軸と金属板との間に流れる電流値I(A)を読み取り、下記式(4)から求めた。
R=V/I ・・・ 式(4)
【0081】
本発明のバイアスロールを画像形成装置内の転写ロールや帯電ロールとして用いる場合、転写ロールや帯電ロールの表面に金属ブレード(クリーニングブレード)が当接配置された態様で用いられてもよい。特に、前記バイアスロールを被覆する導電性チューブが、ポリイミド樹脂等の表面微小硬度が18以上の樹脂チューブからなる場合には、耐磨耗性に優れているので、金属ブレードを用いてクリーニングすることができる。さらに、クリーニング装置として、金属ブレードを適用することにより、トナーとして球状トナーを用いた場合においても、バイアスロール表面に付着した球状トナーを効果的にクリーニングすることができる。
【0082】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、少なくとも像担持体と、前記像坦持体表面を均一に帯電する帯電手段と、前記像担持体表面に形成された静電潜像をトナー像として可視化する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段とを備える画像形成装置であって、前記転写手段を構成する転写ロールが、本発明のバイアスロールであることを特徴とする。
【0083】
前記転写ロールとしては、前記被転写体が記録紙である1次転写ロールであってもよいが、被転写体が中間転写体であり、前記像担持体上に形成されたトナー像を一旦中間転写体に転写し、さらに該中間転写体上のトナー像を記録紙に転写する2次転写ロールであることが好ましい。
【0084】
本発明の画像形成装置としては、転写ロールとして用いられる本発明のバイアスロールの表面に金属ブレードが当接配置されていることが好ましい。前記金属ブレードは、クリーニングブレードとして用いられる。
【0085】
前記金属ブレードの転写ロール表面への食込み量は、0.1〜2.0mmの範囲であることが好ましく、特に0.2〜1.0mmの範囲であることが好ましい。食込み量が0.1mm以上であることにより、例えば転写ロール表面に付着した前述の球状トナーを効果的にクリーニングすることができる。食込み量が2.0mmを超える場合には、長期間の使用をした場合には、転写ロール表面の樹脂チューブの表面を傷つけてしまいクリーニング不良を発生させるなどの問題を起こす場合がある。
【0086】
前記金属ブレードの転写ロール表面への接触角は、15〜45°の範囲であることが好ましく、特に20〜40°の範囲であることが好ましい。接触角が15〜45°の範囲であることにより、例えば転写ロール表面に付着した前述の球状トナーを効果的にクリーニングすることができる。
【0087】
前記金属ブレードの材質は特に限定されないが、例えば、SUS又はりん青銅等が挙げられる。この中でも特に、SUSが好ましい。
【0088】
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、下記式(5)で示される形状係数SF1が130以下の球状トナーであることが好ましい。トナーとして球状トナーを用いることにより、現像性及び転写性を向上させることができる。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(5)
上記式(5)中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0089】
上記トナー形状係数SF1は、スライドグラス上に散布したトナー粒子、またはトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置(ニレコ社製)に取り込み、50個以上のトナーの最大長と投影面積を求め、前記式(5)によって計算し、その平均値を求めることにより得られるものである。
【0090】
以下、本発明の画像形成装置を図面を用いて説明する。ただし、本発明の画像形成装置は以下に説明する構成のみに限定されるものではない。
図2は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図2に示す画像形成装置は、像担持体としての感光体ドラム1、中間転写体としての中間転写ベルト2、転写電極である2次転写ロール3(転写手段)、記録媒体である記録紙を供給する用紙トレー4、Bk(ブラック)トナーによる現像装置5、Y(イエロー)トナーによる現像装置6、M(マゼンタ)トナーによる現像装置7、C(シアン)トナーによる現像装置8、中間転写体クリーナー9、剥離爪13、ベルトロール21、23及び24、バックアップロール22、1次転写ロール25(転写手段)、電極ロール26、2次転写ロール3表面に当接配置された金属ブレードからなるクリーニングブレード31、記録紙41、ピックアップロール42及びフィードロール43を有し、2次転写ロール3に本発明のバイアスロールが用いられている。
【0091】
図2において、感光体ドラム1は矢印A方向に回転し、図示しない帯電装置でその表面が一様に帯電される。帯電された感光体ドラム1にレーザー書込み装置等の静電潜像形成装置により第一色(例えば、Bk)の静電潜像が形成される。この静電潜像はブラック現像装置5によってトナー現像されて可視化されたトナー像Tが形成される。トナー像Tは、感光体ドラム1の回転で1次転写ロール25が配置された1次転写部に到り、1次転写ロール25からトナー像Tに逆極性の電界を作用させることにより、上記トナー像Tは、静電的に中間転写ベルト2に吸着されつつ中間転写ベルト2の矢印B方向の回転で1次転写される。
【0092】
以下、同様にして第2色のトナー像、第3色のトナー像、第4色のトナー像が順次形成され、中間転写ベルト2において重ね合わされ、多重トナー像が形成される。中間転写ベルト2に転写された多重トナー像は、中間転写ベルト2の回転で2次転写ロール3が設置された2次転写部に到る。
2次転写部は、中間転写ベルト2のトナー像が担持された表面側に設置された2次転写ロール3と、中間転写ベルト2の裏側から2次転写ロール3に対向するように配置されたバックアップロール22及びバックアップロール22に圧接して回転する電極ロール26とから構成される。
【0093】
記録紙41は、用紙トレー4に収容された記録紙束からピックアップロール42で一枚ずつ取り出され、フィードロール43で2次転写部の中間転写ベルト2と2次転写ロール3との間に所定のタイミングで給送される。
給送された記録紙41には、2次転写ロール3及びバックアップロール22による圧接搬送と中間転写ベルト2の回転により、中間転写ベルト2に担持されたトナー像が転写される。
【0094】
トナー像が転写された記録紙41は、最終トナー像の1次転写終了まで退避位置にある剥離爪13を作動せることにより中間転写ベルト2から剥離され、図示しない定着装置に搬送され、加圧/加熱処理でトナー像を固定して永久画像とされる。尚、多重トナー像の記録紙41への転写の終了した中間転写ベルト2は、2次転写部の下流に設けた中間転写体クリーナ9で残留トナーの除去が行われて次の転写に備える。また、2次転写ロール3には、クリーニングブレード31が常時当接するように取り付けられており、転写で付着したトナー粒子や紙紛等の異物が除去される。
【0095】
単色画像の転写の場合、1次転写されたトナー像Tを直ちに2次転写して定着装置に搬送するが、複数色の重ね合わせによる多色画像の転写の場合、各色のトナー像が1次転写部で正確に一致するように中間転写ベルト2と感光体ドラム1との回転を同期させて各色のトナー像がずれないようにする。
上記2次転写部では、2次転写ロール3と中間転写ベルト2を介して対向配置したバックアップロール22に圧接した電極ロール26に、トナー像の極性と同極性の出圧(転写電圧)を印加することで、該トナー像を記録紙41に静電反発で転写する。
【0096】
上記画像形成装置において、2次転写ロール3として本発明のバイアスロールを用いることにより、環境変化に対し安定的で、長期にわたって高画質の転写画像を得ることが可能となる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
(バイアスロールの作製)
−導電性弾性層の形成−
エチレンオキサイド基を含有し高いイオン伝導性を有するエピクロルヒドリンゴム(ECO:エピクロマーCG−102:ダイソ−社製)70質量部とアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR:ニポールDN−219、日本ゼオン社製)30質量部とを混合し、これに発泡加硫剤として、硫黄(鶴見化学工業社製、200メッシュ)1質量部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラ−M)1.5質量部と、発泡剤としてベンゼンスルホニルヒドラジド6質量部とを添加してオープンロールで混練りした。
【0098】
この混合物を、直径が10mmのSUS製のロール軸に巻き付け、160℃で20分間プレス加硫発泡させることにより5mm厚の多孔質導電性弾性層を形成した成型物とした。上記多孔質導電性弾性層(発泡体)の密度は5.1×105g/m3であった。また、ロール抵抗値は1×108.1Ωcm、ロール硬度はアスカーC硬度で35°であった。またロール外径は20.45mmであった。
【0099】
−導電性チューブの作製−
宇部興産(株)製の耐熱皮膜用ポリイミドUワニスA中に、酸性カーボンブラック(デグサヒユルス(株)製、Special Black 4、pH:3.5)を、抵抗値が106〜107Ωになるように分散させ濃度調整をした塗液を、円筒形金型の外周面に塗布して、前記円筒形金型を回転させつつ加熱しながら乾燥させ、フィルム状に成膜した。次いで、乾燥、高温でポリイミド化反応(ポリアミド酸の閉環反応)を進行させて本硬化を行うことにより導電性チューブを作製した。得られた導電性チューブの膜厚は40μm、内周面の表面粗さは十点平均粗さRzで0.6μm、外周面の表面微小硬度は33、内径は20.25mm、体積抵抗値は1×106.1Ωcm、透気度は1.7g/m2・日であった。
【0100】
−導電性チューブへの圧入、密閉−
前記成型体を、予め15℃、30%RH(露点:−2.4℃)の環境で24時間保管した。その後、同一環境で前記導電性チューブの内部に空気等の流体を注入した状態とし、導電性チューブ内部に前記成形物の先端を挿入したところ、ロール軸の表面に形成された導電性弾性層が流体と共に導電性チューブ内に圧入され、導電性チューブの両端が開放された状態のロールが作製された。
【0101】
得られたロールの導電性チューブの両開放端におけるチューブとロール軸との隙間を、前記と同一環境のまま、絶縁性シール材(セメダイン社製、スーパーシール、透気度:1.0g/m2・日)で密閉した。密閉後、24時間放置し最終的なバイアスロール1を得た。
このバイアスロール1の抵抗値は1×108.0Ωcm、アスカーC硬度は58°、ロール外径は20.33mmであった。
【0102】
(バイアスロールの評価)
−内部水分量−
バイアスロール1における導電性弾性層中の空隙気体中の水分量測定は、バイアスロール1を20℃、55%RH環境に24時間保管した後、そのままの環境で被覆された導電性チューブを直径2cmで切開き、露点計(テストー社製、TESTO 615)のプローブを挿入して露点温度、相対湿度を測定し、これらから前記湿度図を用いて内部水分量を求めた。
【0103】
−抵抗の環境変動−
バイアスロールの抵抗値Rは、ロールをアルミニウム板上に置いて、バイアスロール軸両端部に各500gの荷重をかけて、ロール軸に1000Vの電圧Vを印加して、10秒後のロール軸とアルミニウム板との間の電流値I(A)をアドバンテストR8340Aで読み取り、R=V/Iからロール抵抗値Rを算出した。
【0104】
測定環境は、低温低湿環境を10℃、15%RH、高温高湿環境を28℃、85%RHとし、各環境に24時間放置した後のバイアスロールについて上記測定を行い、両者の抵抗差を環境変動値として評価した。
【0105】
−転写画質(画質デフェクト)−
転写画質は、図2に示す構成の試作画像形成装置(プロセス速度:150mm/s、転写ロール電流値:20μA)を使用し、バイアスロール1を2次転写ロール3として装着して実際に画像出しを行い評価した。
【0106】
評価環境は10℃、15%RH、及び28℃、85%RHとし、バイアスロールを装着した画像形成装置を各環境に24時間放置した後画像出しを行った。評価パターンはマゼンタ濃度30%、ブラック濃度30%とし、画像ディフェクト(結露に基づく斑点状のむら)発生の有無によって判定した。
評価指標は以下の通りである。
○:画質ディフェクトなし
×:画質ディフェクトあり
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0107】
<実施例2>
実施例1のバイアスロールの作製における導電性チューブへの圧入、密閉を、20℃、50%RH(露点:9.3℃)の環境で行った以外は同様にしてバイアスロール2を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
【0108】
<実施例3>
実施例1のバイアスロールの作製における導電性チューブへの圧入を、23℃、55%RH(露点:13.5℃)の環境で行い、その後15℃、30%RHの環境で48時間保管した後その環境で密閉を行った以外は同様にしてバイアスロール3を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
【0109】
<実施例4>
(バイアスロールの作製)
実施例1における導電性チューブの作製において、塗液のカーボンブラック量を変更し、抵抗値が108Ωとなるように調製した以外は同様にして導電性チューブを作製した。得られた導電性チューブの膜厚は40μm、内周面の表面粗さは十点平均粗さRzで0.6μm、外周面の表面微小硬度は34、内径は20.25mm、体積抵抗値は1×108.3Ωcm、透気度は1.7mg/m2・日であった。
【0110】
次いで、導電性チューブとして上記チューブを用いた以外は実施例1と同様にして導電性チューブへの圧入、密閉を行い、バイアスロール4を作製した。
このバイアスロール4の抵抗値は1×108.2Ωcm、アスカーC硬度は59°、ロール外径は20.33mmであった。
【0111】
(バイアスロールの評価)
2次転写ロールとしてバイアスロール4を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
【0112】
<比較例1>
実施例1のバイアスロールの作製における導電性チューブへの圧入、密閉を、23℃、55%RH(露点:13.5℃)の環境で行った以外は同様にしてバイアスロール5を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
【0113】
<比較例2>
実施例1のバイアスロールの作製における導電性チューブへの圧入を、23℃、55%RH(露点:13.5℃)の環境で行い、その後15℃、30%RHの環境で8時間保管した後その環境で密閉を行った以外は同様にしてバイアスロール6を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
表1の結果に示すように、実施例で用いた内部水分量が本発明の範囲であるバイアスロールでは、ロール抵抗の環境変動が小さく、また各環境における画像にも全く問題がなかった。一方、比較例で用いた内部水分量が大きいバイアスロールでは、ロール抵抗の環境変動が約1桁以上と大きく、また低温低湿環境での画像に斑点状のむらが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明のバイアスロールの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明において用いた湿度図である。
【符号の説明】
【0117】
1 感光体ドラム(像担持体)
2 中間転写ベルト(被転写体)
3 2次転写ロール(転写ロール)
31 クリーニングブレード
41 記録紙(被転写体)
100 ロール軸
120 導電性弾性層(多孔質導電性弾性層)
130 導電性チューブ
140 密閉材(絶縁性シール材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属のロール軸と、該ロール軸の外周面に設けてなる多孔質導電性弾性層と、該多孔質導電性弾性層の外周面を被覆する導電性チューブとを有し、前記ロール軸と前記多孔質導電性弾性層とが前記導電性チューブの内側に圧入され、さらに該導電性チューブ長手方向の両開放端におけるロール軸と導電性チューブとの隙間を、絶縁性シール材で密閉してなるバイアスロールであって、
前記導電性チューブ内の多孔質導電性弾性層における空隙気体中の水分量が0.0005〜0.0075kg/kg(DA)の範囲であることを特徴とするバイアスロール。
【請求項2】
少なくとも像担持体と、前記像坦持体表面を帯電する帯電手段と、前記像担持体表面に形成された静電潜像をトナー像として可視化する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段とを備える画像形成装置であって、
前記転写手段を構成する転写ロールが、請求項1に記載のバイアスロールであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−178339(P2006−178339A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373870(P2004−373870)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】