説明

バイアル用ゴム栓

【課題】円板状笠部と脚部とが2段成形法により強固に接合されたバイアル用ゴム栓を提供する。
【解決手段】バイアル用ゴム栓1は、脚部1Bと円板状笠部1Aとの接合面がボス部1F、大径のリング状溝1G、小径のリング状溝1Hを有する同心円状の凹凸面とされており、しかも、その接合面を含む脚部1Bの基端部側が円板状笠部1Aと同じ材質のブチル系ゴムで構成されているため、2段成形法により脚部1Bの基端部側に円板状笠部1Aが一体にプレス成形される際、その脚部1Bの基端部側に円板状笠部1Aが強固に接合される。従って、バイアル用ゴム栓1は、液体医薬品などを凍結保存するバイアル用のゴム栓として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアルの開口部を密封するためのバイアル用ゴム栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体医薬品などを収容するバイアルの開口部を密封するための栓体には、打栓性、密封性、ガスバリア性、耐薬品性、耐針刺性、低反応性などの多くの項目の品質性能が要求されており、これらの項目の要求品質を満足する栓体として、弾性に優れたいわゆるゴム栓が従来一般に多用されている。
【0003】
このようなゴム栓において、液体医薬品を収容するバイアルを対象としたバイアル用ゴム栓は、第十六改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法に適合する品質特性を有するものでなければならず、特に、耐熱性の要求される溶出物試験、すなわち高圧蒸気滅菌器を使用した121℃、1時間の溶出物試験をクリアしなければならない。
【0004】
このような要求に対応できるバイアル用ゴム栓の素材としては、ブチルゴムやイソプレンゴムなどの合成ゴム、SEBS等のスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリイソブチレンやポリブタジエンを主成分とする熱可塑性エラストマー等が従来から使用されている(特許文献1参照)。
【0005】
ここで、バイアル用ゴム栓は、一般に、肉厚の円板状笠部の下面からこれより小径の肉厚の円筒状脚部が突出する形状とされており、円筒状脚部がバイアルの開口部の内周に打ち込まれることで、円板状笠部の周縁の下面がバイアルの開口部の端面に密着する。
【0006】
この種のバイアル用ゴム栓として、円筒状脚部を単独でプレス成形した後、この円筒状脚部と一体に円板状笠部をプレス成形する2段成形法を採用することで、円板状笠部の素材と円筒状脚部の素材とを下記のように異ならせたものも従来一般に知られている(例えば特許文献2、3参照)。
すなわち、脚部は、極低温下においても硬くならないエラストマーが配合されたシリコーンゴム等とし、笠部は、ガスバリア性やコアリング特性に優れたブチル系ゴム等とする等がある。
【0007】
また、図8に示すように、例えば円筒状脚部1Bの、円板状笠部1Aとの結合部に、断面台形状の凸部1B′を設け、該凸部1B′に適合する凹部1A′を円板状笠部1Aに設けたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2009−538258号公報
【特許文献2】WO2009−151129号公報
【特許文献3】特開2005−297432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述した特許文献3に記載のような2段成形法によるバイアル用ゴム栓は、円板状笠部の素材と円筒状脚部の素材とが異なるため、両者を完全に接合することは難しい。このため、例えば、液体医薬品などを凍結保存するバイアルが常温下に取り出された際など、円板状笠部と円筒状脚部との間に大きな引張り力が作用すると、両者が接合部から剥離する虞がある。
【0010】
また、図8に示すような構造のゴム栓であっても、過酷な使用環境下では、割れ、あるいは笠部と脚部との剥離が生じる虞がある。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、円板状、あるいは三角板状や矩形板状等の概略板状笠部と円筒状、円柱状、あるいは平板状脚部とが2段成形法により強固に接合されたバイアル用ゴム栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するため、本発明に係るバイアル用ゴム栓は、独立してプレス成形される脚部と、この脚部と一体にプレス成形されることで脚部の基端部側に接合される板状笠部とを有するバイアル用ゴム栓であって、脚部と板状笠部との接合面は、同心円状の凹凸面とされており、脚部は、板状笠部との接合面を含む基端部側が板状笠部と同じ材質で構成され、基端部側を除く部分が板状笠部と異なる材質で構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るバイアル用ゴム栓は、脚部と板状笠部との接合面が同心円状の凹凸面とされており、しかも、その接合面を含む脚部の基端部側が板状笠部と同じ材質で構成されているため、2段成形法により脚部の基端部側に板状笠部が一体にプレス成形される際、凹凸による機械的接合に同材質による高親和力接合が相乗されて、その脚部の基端部側に板状笠部が強固に接合される。従って、本発明のバイアル用ゴム栓は、例えば、液体医薬品などを凍結保存するバイアル用のゴム栓として好適である。
【0014】
本発明のバイアル用ゴム栓は、脚部のうち、板状笠部と接触する基端部側を除く部分を例えば、ブチル系ゴム等とすることができる。
ブチル系ゴムとしては、医薬・医療用容器のシール材として一般的に使用されるブチル系ゴムやブチル系ゴムベースの配合物であれば特に限定されないが、硬度が20〜40度(JISタイプA)、ガラス転移温度が−30〜−60℃程度のものが使用される。例えば、レギュラーブチルゴム、ハロゲン化(臭素化・塩素化)ブチルゴム、臭素化イソブチレン−パラメチルスチレン、架橋イソブチレン−イソプレン−ジビニルベンゼン三元共重合体などが挙げられ、ガスバリア性、溶出特性及びコアリング特性の点からレギュラーブチルゴムやハロゲン化ブチルゴム、これらをベースにした配合ゴムが好適である。
【0015】
また、脚部の基端部側および該基端部側と接触する板状笠部を、例えば、エラストマーが配合されたシリコーンゴムやブタジエンゴム等とすることができる。
このエラストマー配合ゴムは、硬度が40〜60度(JISタイプA)、ガラス転移温度が−100〜−150℃のものが好ましく、例えば、ベースゴムとなるシリコーンゴムやブタジエンゴム100重量部に対して、エラストマーが80〜210重量部程度、好ましくは100〜150重量部程度配合されたものが好適に使用できる。この程度の配合割合であると、極低温下におけるゴム弾性が良好に維持でき、かつゴムからの溶出特性を良好にすることができる。
【0016】
上記のシリコーンゴムとしては、医薬・医療用容器のシール材として一般的に使用されているシリコーンゴムであれば特に限定されないが、オルガノシロキサンゴム、より具体的には、メチルシリコーンゴム、ビニルメチルシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルメチルシリコーンゴムなどが挙げられ、シリコーンポリマーの側鎖にフェニル基を有したフェニルメチルシリコーンゴムが最も好ましい。
【0017】
上記のブタジエンゴムとしても、同じく、医薬・医療用容器のシール材として一般的に使用されているブタジエンゴムであれば特に限定されないが、より具体的には、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴムなどが挙げられ、ブタジエンゴムが、ガスバリア性、溶出特性、密封(閉)性の点から最も好ましい。
【0018】
上記のベースゴムに配合されるエラストマーは、一般には、エラストマー配合ゴムの硬さを最適なもの(具体的には、上記の硬さ)とする作用(役割)を有するもので、本発明では熱可塑性エラストマー、合成ゴム、これら熱可塑性エラストマーと合成ゴムとの併用などを指す。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリイソブチレン系熱可塑性エラストマー(SIBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)系共重合体、スチレン−エチレンブチレン−スチレン(SEBS)系共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)系共重合体等のスチレン系エラストマーや、エチレン−プロピレン−非共役ジエンモノマー(EPDM)系共重合体、エチレン−プロピレン(EPM)系共重合体などが挙げられ、ガスバリヤ性の面からはポリイソブチレン系熱可塑性エラストマー(SIBS)が好適である。
合成ゴムとしては、アクリルゴム(ACM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられ、シリコーンゴムとの配合特性、成形性、耐コアリング性、弾性率の向上、永久歪みや延びといった物理的特性からはブタジエンゴム(BR)が好適である。
これらの熱可塑性エラストマーや合成ゴムは、両者ともいすれか1種以上が配合されていればよい。
【0019】
上記の脚部の基端部側を構成するエラストマー配合シリコーンゴムやブタジエンゴム等と、該基端部を除く部分を構成するブチル系ゴムとは、言うまでもなく、プレス成形により、強固に接合される性質を有するものが好ましく使用され、本発明における2段成形法によるプレス成形(1段目で、脚部の基端部側を構成するシート状ゴム材質と、該基端部を除く部分を構成するシート状ゴム材質とを用いて脚部を成形し、2段目で、該脚部上に板状笠部を構成するシート状ゴム材質を載置して、板状笠部の成形と、該笠部と脚部との接合とを行う)で、実質的に一体に接合されるものである。
もちろん、上記の脚部の基端部側を構成する材質と該基端部を除く部分を構成する材質とを入れ替え、脚部の基端部側をブチル系ゴムやブチル系ゴムベースの配合体で、該基端部を除く部分をエラストマー配合シリコーンゴムやブタジエンゴム等で構成することもできる。
また、上記両ゴム材質間に、両ゴム材質を接合するために接着用フィルム、例えば、分子量100万〜700万、好ましくは150万〜600万のポリエチレンフィルム(以下、「超高分子量ポリエチレンフィルム」)を介在させることもできる。
超高分子量ポリエチレンフィルムは、薄すぎると均一な接着強度や十分なガスバリア性が確保できず、厚すぎると硬度の上昇やコアリングの発生を誘発する虞があるので、ゴム栓の用途やサイズにより、20〜200μm程度の範囲から適宜選択される。
【0020】
上記フィルムを介在させる場合は、該フィルムを介在させた両ゴム材質製シートの積層体を予め用意しておき、該積層体をプレス成形して脚部としてもよいし、脚部のプレス成形装置に両ゴム材質製シートを載置する際に両ゴム材質間に上記フィルムを介在させ、これらをプレス成形して脚部としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るバイアル用ゴム栓は、脚部と板状笠部との接合面が同心円状の凹凸面とされており、しかも、脚部の基端部が板状笠部と同じ材質で構成されているため、2段成形法等により脚部の基端部側に板状笠部が一体にプレス成形される際、上記接合面の凹凸により機械的)に接合されることに、接合面の同ゴム材質による高親和力で接合されることが相乗されて、脚部の基端部と板状笠部とが強固に接合される。
【0022】
笠部を構成する材料と脚部を構成する材料とが、接着性のあまり良好でない材料同士の組み合わせであっても、本発明によれば、上記のように、凹凸による機械的な接合と、脚部基端部と笠部の同材質による高親和力での接合とが相乗されるため、極めて強固な接合が実現できる。
このため、板状笠部および脚部の基端部側をブチル系ゴムやブチル系ゴムベースの配合物とし、脚部の基端部側を除く部分をエラストマーを配合したシリコーン系ゴムやブタジエンゴム等とした本発明のバイアル用ゴム栓では、強固な接合を確保できるうえ、バイアルに収容されて例えば凍結保存される極低温の液体が脚部に接触しても、その接触部分の脚部が耐寒性の高いゴム材質製であるため、ゴム栓としての機能を充分に維持することができる。
【0023】
上記のように、本発明のバイアル用ゴム栓は、バイアルに装着されて例えば凍結保存される極低温雰囲気下に置かれても、また極低温雰囲気から常温雰囲気に取り出されても、あるいはこの低温雰囲気への取り出しと常温雰囲気下での保管とが繰り返されても、耐寒性の高いゴム材質(極低温であってもゴム弾性が阻害されないことはもとより、ゴム材質自体の劣化等も生じない)で構成しており、かつ笠部と脚部の接合も極めて強固であるため、ゴム栓としての機能を充分に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るバイアル用ゴム栓をバイアルと共に示す正面図である。
【図2】図1に示したバイアル用ゴム栓がバイアルの開口部に打栓された状態を示す縦断面図である。
【図3】図1に示したバイアル用ゴム栓の拡大縦断面図である。
【図4】図1に示したバイアル用ゴム栓の拡大平面図である。
【図5】図1に示したバイアル用ゴム栓を脚部と円板状笠部とに分解して示す拡大縦断面図である。
【図6】図3に示したバイアル用ゴム栓の接合面の第1変更例を示す拡大縦断面図である。
【図7】図3に示したバイアル用ゴム栓の接合面の第2変更例を示す拡大縦断面図である。
【図8】従来のバイアル用ゴム栓を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して本発明に係るバイアル用ゴム栓の実施の形態を説明する。図1および図2に示すように、一実施形態に係るバイアル用ゴム栓1は、例えば液体医薬品が充填されたバイアル2の開口部を密封するものであり、バイアル2の開口部に形成された環状リップ部2Aに図示しない打栓機を用いて打栓される。
【0026】
このバイアル用ゴム栓1は、肉厚の円板状笠部1Aの下面からこれより小径の肉厚の脚部1Bが同心状に突出した形状を有するものであり、脚部1Bの基端部の外周面にはシールリング部1Cが一体に形成されている。この脚部1Bは、シールリング部1Cより先端側の外周面がテーパ面をなしている。
【0027】
このような形状を有するバイアル用ゴム栓1は、バイアル2の環状リップ部2Aの内周面2Bに脚部1Bが打ち込まれて嵌合することにより、そのシールリング部1Cが環状リップ部2Aの内周面2Bに密着し、かつ、円板状笠部1Aの周縁部の下面が環状リップ部2Aの上面に密着することでバイアル2の開口部を密封する(図2参照)。
【0028】
バイアル用ゴム栓1の大きさは、バイアル2の開口部の口径に応じて定まるものであり、脚部1Bの最大直径(外径)は例えば15mm程度、円板状笠部1Aの最大直径は例えば20mm程度である。また、円板状笠部1Aの最大厚みは例えば3mm程度であって、脚部1Bの突出長を含めたバイアル用ゴム栓1の高さは例えば8mm程度である。
【0029】
図3に拡大して示すように、バイアル用ゴム栓1は、円板状笠部1Aの表面がゴム素地のままとされており、脚部1Bの表面が合成樹脂フィルム1Dでラミネートされている。また、図4に拡大して示すように、バイアル用ゴム栓1の天面をなす円板状笠部1Aの上面中央部には、半円状の断面形状で突出するリング状のターゲットマーク1Eが針刺し用の目標等として形成されている。
【0030】
このようなバイアル用ゴム栓1は、いわゆる2段成形法により、脚部1Bが独立してプレス成形された後、この脚部1Bと一体に円板状笠部1Aがプレス成形される。すなわち、図5に分解して示すように、バイアル用ゴム栓1は、脚部1Bが合成樹脂フィルム1Dと一体にプレス成形されて打ち抜かれた後、この脚部1Bが装填された金型により、円板状笠部1Aが脚部1Bと一体的にプレス成形される。
【0031】
ここで、バイアル用ゴム栓1の脚部1Bと円板状笠部1Aとの接合面は、同心円状の凹凸面とされている。すなわち、脚部1Bの基端部側の接合面には、円板状笠部1A側に突出するボス部1Fが形成されており、このボス部1Fの周囲には大径のリング状溝1Gが形成され、ボス部1Fの端面には小径のリング状溝1Hが形成されており、円板状笠部1Aの接合面には、上記のボス部1Fに適合するリング状溝1F′が形成されており、上記の大径のリング状溝1Gに適合する大径のボス部1G′が形成され、リング状溝1F′の内側には上記の小径のリング状溝1Hに適合する小径のボス部1H′が形成されている。そして、この同心円状の凹凸面をなす脚部1Bの接合面側に円板状笠部1Aが一体的にプレス成形される。
【0032】
このような円板状笠部1Aは、例えばエラストマー配合シリコーン系ゴムまたはブタジエンゴムで構成されている。そして、脚部1Bは、円板状笠部1Aが一体的にプレス成形される基端部側、すなわち、ボス部1F、大径のリング状溝1G、小径のリング状溝1Hなどの接合面を含む基端部側が円板状笠部1Aと同じ材質で構成され、基端部側を除く部分が円板状笠部1Aと異なる材質、例えばブチル系ゴムやブチル系ゴムベースの配合ゴムで構成されている。
また、図示はしないが、基端部側と基端部側を除く部分との間に、これら両材質を接着させるための上記材質製のフィルムを介在させることもできる。
【0033】
脚部1Bの表面にラミネートされる合成樹脂フィルム1Dは、厚さが0.01mm〜0.3mm程度、好ましくは0.02〜0.2mm、特に好ましくは0.04〜0.15mmであり、この程度の厚さであれば、フィルムの空隙率が低く製品不良率が少なく好適である。例えば、薄すぎると製造が困難であり、加工時に破損し、製品保証が不充分になる惧れがあり、厚すぎると、フィルムの剛性が高くなりすぎて、ゴム栓となった際の密封性や針刺性が不適となる。
【0034】
合成樹脂フィルム1Dとしては、不活性であって耐熱性、耐薬品性にも優れ、ゴム素地に比べて摩擦抵抗の小さいフィルム、例えばフッ素樹脂フィルムが挙げられる。
このフッ素樹脂フィルムとしては、例えば、テトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロエチレンコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレンコポリマー(ETFE)、トリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)などが挙げられる。
【0035】
以上のように構成された一実施形態のバイアル用ゴム栓1は、円板状笠部1Aと接合される脚部1Bの基端部側の接合面にボス部1F、大径のリング状溝1Gおよび小径のリング状溝1Hが形成され、笠部1Aの接合面にリング状溝1F′、大径のボス部1G′、小径のボス部1H′が形成されていて、脚部1Bと円板状笠部1Aとの接合面が同心円状の凹凸面とされており、しかも、その接合面を含む脚部1Bの基端部側が円板状笠部1Aと同じ材質で構成されている。このため、一実施形態のバイアル用ゴム栓1では、2段成形法により脚部1Bの基端部側に円板状笠部1Aが一体にプレス成形される際、その脚部1Bの基端部側に円板状笠部1Aが強固に接合される。従って、一実施形態のバイアル用ゴム栓1は、接着性に問題のある複数の材質を積層する必要のあるゴム栓、例えば、液体医薬品などを凍結保存するバイアル用のゴム栓として好適である。特に、一実施形態のバイアル用ゴム栓1は、同心円状であって、二以上のリング状凹凸面を有し、更に、同凹凸面に高低差があるため笠部と脚部との接合をより強固にする効果を奏する。
【0036】
また、一実施形態のバイアル用ゴム栓1は、円板状笠部1Aおよび脚部1Bの基端部側が耐寒性の高いエラストマー配合シリコーン系ゴムまたはブタジエンゴムで構成され、脚部1Bの基端部側を除く部分がガスバリア性の高いブチル系ゴムまたはブチル系ゴムベースの配合体で構成され、脚部1Bのエラストマー配合シリコーンゴムやブタジエンゴム等で構成された部分(基端部側を除く部分)の表面が合成樹脂フィルム1Dでラミネートされている。
よって、一実施形態のバイアル用ゴム栓は、凍結保存される極低温の液体医薬品などを凍結保存するバイアル用ゴム栓として好適であり、この凍結保存中はもとより常温下においてもバイアル2に収容された液体医薬品中にゴム栓を構成する素材中の成分が溶出することもない。
加えて、一実施形態のバイアル用ゴム栓1は、脚部1Bの表面の合成樹脂フィルム1Dでのラミネートにより、多数が一緒に袋詰めされて保管されるような場合にも、相互に粘着することがない。
【0037】
本発明に係るバイアル用ゴム栓は、前述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、図3に示したバイアル用ゴム栓1を構成する脚部1Bにおいて、ボス部1Fの端面に形成されるリング状溝1Hは、図6に示すような円形凹部1Jに変更してもよいし、また、図7に示すように省略してもよい。
【0038】
円板状笠部1Aと脚部1Bの基端部側をポリソブチレン系熱可塑性エラストマー(SIBS)(カネカ社製商品名“SIBSTAR−TPV”)を配合したシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング社製商品名“SE955U”)またはブタジエンゴム(JSR社製商品名“BR18”)で構成し(SIBSの配合量は、シリコーンゴムまたはブタジエンゴム100重量部に対して20重量部とした)、脚部の基端部側を除く部分をブチル系ゴム(ポリサ社製商品名“ポリサ301”)で構成して、図3,図6,図7の態様のゴム栓と、比較のために図8に示す従来の態様のゴム栓とを製造した。
各ゴム栓の寸法は、笠部1Aの最大直径20mm、肉厚(最大肉厚)3mm、脚部1Bの最大外径15mm、脚先内径10mm、脚部1Bの突出長を含めたバイアル用ゴム栓1の高さ8mmであった。
これらゴム栓につき、剥離試験および割れ試験を下記の要領で行った。
【0039】
〔剥離試験〕
図示しない島津製作所製オートグラフ(AG−1、ロードセル1kN)を使用し、ロードセルにセットした挟み治具に上記各ゴム栓の円板状笠部1Aを固定し、脚部1Bを試験用ペンチで挟持し、該ペンチを固定した。
この状態で、ロードセルにセットした挟み治具を速度100mm/minで、笠部1Aもしくは脚部1Bが破断するまで、または脚部1Bが笠部1Aから剥離するまで、垂直に引き上げ、引き上げ中の最大荷重を読み取り、その際のゴム栓の状況を観察した。試験数は各10個とした。結果は、表1に示す通りであった。
【0040】
〔割れ試験〕
低温保持用と常温保持用の各ゴム栓を10個づつ、図1,図2に示す態様で、減圧雰囲気下(40Pa以下)、バイアルに打栓し、金属(アルミニウム)キャップで巻き締めた。
低温保持用の各ゴム栓で打栓した各バイアル10本は、倒立させた状態で超低温槽(−80℃)に24時間保管し、常温保持用の各ゴム栓で打栓した各バイアル10本も、倒立させた状態で常温で24時間保管した。
保管後、これらのキャップを外し、各ゴム栓に割れが発生しているか否かを観察した。結果は、表1の通りであった。
【0041】
なお、表1中、「BRの例」は、円板状笠部と脚部の基端部側をSIBS配合ブタジエンゴムで構成した例の結果であり、「シリコーンゴムの例」は、同部をSIBS配合シリコーンゴムで構成した例の結果である。
【0042】
【表1】

【0043】
表1から明らかなように、図3に示す態様のゴム栓が、剥離試験、割れ試験とも、最良品質であり、図6,図7がこの順で幾分品質が低下していることが判る。また、図8に示す従来例では、全て剥離している。
【符号の説明】
【0044】
1 :バイアル用ゴム栓
1A:円板状笠部
1B:脚部
1C:シールリング部
1D:合成樹脂フィルム
1E:ターゲットマーク
1F:ボス部
1G:リング状溝
1H:リング状溝
1J:円形凹部
2 :バイアル
2A:環状リップ部
2B:内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立してプレス成形される脚部と、この脚部と一体にプレス成形されることで脚部の基端部側に接合される板状笠部とを有するバイアル用ゴム栓であって、
前記脚部と板状笠部との接合面は、同心円状の凹凸面とされており、
前記脚部は、前記板状笠部との接合面を含む基端部側が板状笠部と同じ材質で構成され、前記基端部を除く部分が前記板状笠部と異なる材質で構成されていることを特徴とするバイアル用ゴム栓。
【請求項2】
前記同心円状の凹凸面として、前記脚部には、前記板状笠部側に突出するボス部が形成され、このボス部の周囲にはリング状溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバイアル用ゴム栓。
【請求項3】
前記ボス部の端面には、円形凹部またはリング状溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のバイアル用ゴム栓。
【請求項4】
前記板状笠部および脚部の基端部側が、エラストマーが配合されたシリコーンゴムまたはブタジエンゴムであり、前記脚部の基端部側を除く部分が、ブチル系ゴムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のバイアル用ゴム栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103755(P2013−103755A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250611(P2011−250611)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000149000)株式会社大協精工 (31)
【Fターム(参考)】