バイオエタノールの製造方法および製造装置

【課題】紙を原料とし、低コストでかつ効率的にエタノールを製造するバイオエタノールの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】本発明のバイオエタノール製造装置は、イオン液体を送液するためのポンプと、ポンプにより前記イオン液体を送液するための送液ラインと、送液ラインと連結し、前記イオン液体を噴霧するためのノズルと、前記ヒートポンプ装置の冷却部が生成されたエタノールを冷却・回収するためのエタノール回収手段を具備していることを特徴するバイオエタノール製造および製造方法により、紙から低コストでかつ効率的にエタノールを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオエタノールの製造方法および製造装置に関し、さらに詳しくは、紙を原料とし、低コストでかつ効率的にエタノールを製造するバイオエタノールの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、世界各国にて、セルロース系バイオマスを原料とするバイオエタノールの製造技術が研究開発されている。
【0003】
セルロース系バイオマスとは、紙や木や草、あるいは、農作物の残渣のことであり、具体的には、古紙やシュレッダー紙や建築廃材や間伐材、稲藁やバガス(サトウキビの搾りかす)、トウモロコシの茎や葉などが挙げられる。
【0004】
バイオマスから生成した糖を発酵させて生産されるバイオエタノールの製造方法としては、濃硫酸法、希硫酸法、酵素法などの開発が行われている。近年、これらの製造方法の中でも、特に、酵素法に注目が集まっている。
【0005】
酵素法は、酵素によりバイオマスに含まれるセルロースとヘミセルロースを分解して糖類を生成し、その糖類を酵母菌などの発酵菌により発酵させてエタノールを生成する方法である。
【0006】
通常、紙は、特にオフィスで使用される印刷紙は、アミロースや炭酸カルシウムで表面を保護される形態で存在している。
【0007】
そのため、セルロースを酵素分解するためには、初めに表面を破壊してセルロースを露出させる必要がある。
【0008】
また、セルロースはグルコースが脱水縮合した単純多糖類である。
【0009】
これらセルロースは、結合力が強く、この結合を酵素により加水分解するためには、予めセルロースの構造を少し分解しておく必要がある。
【0010】
このような紙表面の破壊処理、並びに、セルロースの構造分解処理のことを、前処理と呼んでいる。
【0011】
従来の紙の前処理技術としては、希硫酸分解、水蒸気爆砕、アンモニア爆砕、熱水・超臨界水を用いる方法、微生物分解、微粉砕、化学薬品処理などが知られている。
【0012】
前処理は、古紙を含む廃棄物の場合は酸、アルカリなどの薬品や高温、高圧によらない簡単な前処理が好ましく、例えば、裁断(シュレッディング)やミキシングをして繊維をほぐす離解処理等が好適である。
【0013】
前処理が施されたバイオマスは、酵素により分解されるが、この酵素分解反応の温度、pH、反応時間などは酵素の特性や性能に応じて調整される。
【0014】
酵素分解反応速度は、温度が高くなるほど速くなるため、反応操作温度は酵素の耐熱温度とされ、一般には40〜60℃である。
【0015】
セルロースが酵素により加水分解されるとグルコースが生成し、ヘミセルロースが酵素により加水分解されるとグルコース、キシロース、マンノースなどが生成される。
【0016】
そして、セルロースとヘミセルロースの酵素分解反応により得られた糖類を含む溶液に発酵菌を添加して、糖類を発酵させてエタノールを生成する。
【0017】
一般に、エタノールの至適発酵温度は40℃以下であり、これ以上の温度では発酵菌が死滅し、発酵が進まなくなる。
【0018】
このような方法で生成されたエタノールを含む溶液の濃度は十数パーセン以下程度にしているが、これは10%程度以上になると酵素および酵母に悪影響を与え、生産効率を低下させる原因となるためである。
【0019】
上記発酵によって発生したエタノール溶液を濃縮・脱水することによって、無水エタノールが得られる。
【0020】
一般に、エタノールを含む溶液の濃縮・脱水には、蒸留及びPSA(PressureSwing Adsorption)を組み合わせたもの、あるいは蒸留および膜分離組み合わせたプロセスが採用されている。
【0021】
PSAとは、加圧と減圧を繰り返すことにより、ゼオライト(モレキュラーシーブ)などの吸着材に水を吸着させる方式である。
【0022】
ところで、上記の酵素法では、セルロースとヘミセルロースを酵素分解する際、分解生成物のグルコースが酵素分解の反応阻害物質となる。
【0023】
そのため、酵素分解反応が進行し、溶液中のグルコース濃度が高くなるにしたがって、反応速度が低下し、最終的には、あるグルコース濃度に到達した時点で、それ以上反応が進行しなくなる。
【0024】
このような問題を解決するために、一般的に、酵素分解とエタノール発酵を1つの反応槽内にて同時に進行させる同時糖化発酵法と呼ばれる方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0025】
なお、糖化とは、セルロースやヘミセルロースを酵素分解してグルコースなどの糖類を生成するプロセスのことである。
【0026】
この同時糖化発酵法は、以下に示すような方法である。
【0027】
先ず、古紙などを前処理し、反応槽内へ投入後、酵素を含む培地を添加することにより酵素分解反応を進行させる。
【0028】
酵素分解反応がある程度進行した時点で、固液分離する。
【0029】
分離後、反応槽内に発酵菌を投入する。
【0030】
すると、発酵菌が酵素分解反応により生成したグルコースをエタノールに変換するため、グルコース濃度が下がり、反応阻害要因が減少するので酵素分解反応がさらに進行するとともに、エタノールの生成も進行する。
【0031】
あるいは、反応槽内で前処理したシュレッダー紙などに最初から酵素及び発酵菌を添加してエタノール生成を実施してもよい。
【0032】
前処理工程では、希硫酸分解、水蒸気爆砕、アンモニア爆砕、熱水・超臨界水を用いる方法、微生物分解、微粉砕、化学薬品処理などの公知の方法が用いられる。
【0033】
以上のことから、通常同時糖化発酵法のプラントは、大きく分けて3つの工程、微粉砕などの前処理工程、糖化・発酵工程、蒸留・脱水工程からなる。
【0034】
微粉砕前処理工程では、原料を、湿式ディスクミルや化学薬品などを用いて微粉砕する。
【0035】
この処理で原料の繊維がほぐされ、酵素による糖化が容易になる。
【0036】
この工程で化学薬品を使用する場合には通常加熱して化学反応速度を上げて工程時間の短縮化をはかる。
【0037】
糖化・発酵工程では、主糖化・発酵タンク内で、微粉砕された原料と発酵菌培養液を混合し、糸状菌が産出するセルラーゼやヘミセルラーゼによって原料を糖化する。
【0038】
さらにその液に酵母培養液を加え、エタノール発酵を行わせる。この工程では酵素反応及び発酵反応を維持するために一定温度にしなければならず、加熱あるいは冷却が必要となる。
【0039】
蒸留工程では、反応後の発酵液をそのまま一次蒸留装置に移して蒸留する。この工程では、エチルアルコールの沸点以上に加熱し、アルコールを蒸発させた後に冷却している。
【0040】
さらに高濃度のエタノールが必要な場合には、得られた蒸留産物をさらに二次蒸留装置、膜脱水装置を経て99.5%以上のバイオエタノールとして製造される場合もある。
【0041】
このように通常、バイオエタノール作製は各工程それぞれがひとつの装置であり、各工程における装置ごとに加熱あるいは、および冷却が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開2002−186938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
しかしながら、前記従来の方法では、これまでのバイオエタノール作製には上記で示したような各工程からなるそれぞれの装置に対して加熱・冷却工程があり、その結果としてエネルギー収率を低下させていた。
【0044】
特に前処理工程では、過剰な熱、材料を必要としそれゆえエネルギー収率を低下させていた。
【0045】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、セルロース含有物を前処理する際にイオン液体を用いることにより効率向上および低コスト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明のバイオエタノールの製造装置は、筐体と、筐体内に弾性支持され、紙に含まれるセルロースを酵素分解し、その酵素分解により生成した糖類を発酵させるための酵素分解・発酵槽と、前記酵素分解・発酵槽内に回転可能に設けられた回転槽と、前記酵素分解・発酵槽に紙を投入するための投入口と、前処理剤を貯めておくためのリザーバーと、前記前処理剤を送液するためのポンプと、前記ポンプにより前記前処理剤を送液するための送液ラインと、前記送液ラインと連結し、前記イオン液体を噴霧するためのノズルと、前記酵素分解・発酵槽内に少なくとも1種類の添加剤を収納できるカートリッジと、前記ポンプを駆動し前記リザーバーから前記前処理剤を前記ノズルから噴霧する手段と、前記カートリッジに収納した添加剤を前記酵素分解・発酵槽内に投入できる手段と、前記酵素分解・発酵槽内に水を供給する供水手段と、前記酵素分解・発酵槽外に廃棄物を廃棄する廃棄手段と、ヒートポンプ装置と、送風手段によって前記ヒートポンプ装置から前記回転槽内に空気を供給する給気口ホースと、前記回転槽内の空気を前記酵素分解・発酵槽外へ排出する排気口ホースと、前記ヒートポンプ装置を固定した取り付けベースと、前記各手段を制御するための制御手段と、を具備し、
前記ヒートポンプ装置の冷却部が生成されたエタノールを冷却、回収するためのエタノール回収手段を具備していることを特徴する。
【0047】
本発明のバイオエタノールの製造装置は、ヒートポンプ装置の加温部が前記酵素分解・発酵槽の加熱手段を兼ねていることが好ましい。
【0048】
本発明のバイオエタノールの製造装置は、添加剤が前処理剤、酵素、発酵菌、発酵菌活性化剤であり、それぞれの添加剤を収納できる4つの容器からなる投入器を具備し、それぞれ独立して前記酵素分解・発酵槽内に投入可能にすることが好ましい。
【0049】
本発明のバイオエタノールの製造装置は、取り付けベースがヒートポンプ装置の圧縮機、放熱器、絞り手段、吸熱器、管路、放熱器風路、吸熱器風路および循環ダクトを装備したことが好ましい。
【0050】
本発明のバイオエタノールの製造装置は、酵素分解・発酵槽を前方高位に傾けて形成されていることが好ましい。
【0051】
本発明のバイオエタノールの製造装置は、前記添加剤の1つが、前記前処理剤でありイオン液体であることが好ましい。
【0052】
本発明のバイオエタノールの製造方法は、紙に含まれるセルロース構造分解処理する前処理工程と、前記前処理工程にて構造分解処理を施した古紙などに含まれるセルロースを酵素分解する酵素分解工程と、前記酵素分解工程にて生成した糖類を発酵する発酵工程と、前記発酵工程にて生成したエタノールを含む水蒸気をヒートポンプ装置の吸熱部にて冷却回収する工程とを有することを特徴とする。
【0053】
本発明のバイオエタノールの製造方法は、前記酵素分解工程にて生成した糖類を含む溶液から酵素を分離する酵素分離工程を有することが好ましい。
【0054】
本発明のバイオエタノールの製造方法は、前記酵素分解工程及び発酵工程時に前記酵素分解・発酵槽をヒートポンプ装置の放熱部にて加温する工程を有することが好ましい。
【0055】
本発明のバイオエタノールの製造方法は、前記前処理工程が前記セルロースおよびヘミセルロースをミキシングしながらイオン液体を噴霧することであることが好ましい。
【発明の効果】
【0056】
本発明は、低コストでかつ効率的にシュレッダー紙などの原料の前処理からエタノール発酵までを一つの反応槽で実施すると共に、熱交換器を利用して効率的にそれぞれの工程に必要な加熱と冷却を実施することできるバイオエタノールの製造方法及びそれを用いた装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1のバイオエタノール製造装置の外観斜視図
【図2】同バイオエタノール製造装置の要部断面図
【図3】同バイオエタノール製造装置の要部断面図
【図4】同バイオエタノール製造装置のシステム概念図
【図5】同バイオエタノール製造装置の要部断面図
【図6】装置の要部断面図、図6は添加試薬の投入器のシステム概念図
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明のバイオエタノールの製造装置および製造方法の最良の形態について説明する。
【0059】
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0060】
本発明において、処理の対象とされるセルロース含有物は、セルロースを含有するものであれば特に制限されないが、特に古紙、または古紙を含む廃棄物などの古紙類は、簡単な前処理だけで酵素による糖化処理を行うのに好適であるので好ましい。
【0061】
ここでの古紙を含む廃棄物とは、例えば家庭から排出される都市ゴミ、飲食産業やオフィス、印刷業者などから排出される事業系廃棄物であるシュレッダー紙などである。
【0062】
(実施形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるバイオエタノールの製造装置の外観斜視図、図2は筐体1の背面1b方向から見た断面図、図3は図1のA−A線に沿って切断した断面図、図4はヒートポンプ装置の構成を含んだシステム概念図、図5は、装置の要部断面図、図6は添加試薬の投入器のシステム概念図である。
【0063】
各図に示すように、筐体1の内部には、複数のサスペンション2によって弾性的に支持された円筒状の酵素分解・発酵槽3を設け、前処理・酵素分解・発酵時の振動をサスペンション2によって吸収する。
【0064】
図3、図4および図5を用いて説明する。
【0065】
酵素分解・発酵槽3の内部には、シュレッダー紙4を収容する円筒状で横軸型の回転槽5を回転可能に設け、駆動モータ6により回転駆動される。
【0066】
筐体1の前面にはシュレッダー紙4を出し入れする開口部1aと、これを開閉する扉7が設けられている。
【0067】
酵素分解・発酵槽3および回転槽5の前面側にも同様の開口部3a、5bを有し、この酵素分解・発酵槽3の開口部3aはベローズ8によって筐体1の開口部1aと密に連結されている。
【0068】
酵素分解・発酵槽3の底部には廃棄物を含んだ排水を排出する排水口9を有し、排水弁10に連結されている。
【0069】
筐体1内部には、前処理剤を貯めておくためのリザーバー71およびポンプ72が設置されている。
【0070】
ポンプ72は送液ライン73と連結しており、送液ライン73の末端に連結したノズル74と繋がっている。
【0071】
送風手段を構成する送風機12は、筐体1の上面1cと側面1dが成す隅部空間に位置するように設けられている。
【0072】
送風機12は酵素分解・発酵槽3の外面に設けた給気ダクト20と連通し、給気ダクト20の給気ダクト入口21から入った空気を矢印cの方向に送風して給気口14から回転槽5内に供給する。
【0073】
また、酵素分解・発酵槽3の外面には、酵素分解・発酵槽3の側面部の排気口16と連通する排気ダクト22を設け、回転槽5および酵素分解・発酵槽3を通過して排気口16から出てきた空気を矢印dのように排気ダクト出口23へ導出する。
【0074】
酵素分解・発酵槽3の下部には、ヒートポンプ装置を構成する熱交換器からなる吸熱器30に矢印aの方向に空気を流す吸熱器風路31と、同様に熱交換器からなる放熱器32に矢印bの方向に空気を流す放熱器風路33とが水平方向に並べて配設され、この吸熱器風路31と放熱器風路33とは循環ダクト34で連通して吸熱器30および放熱器32を通過する空気が直線的に流れるようになっている。
【0075】
この吸熱器風路31と放熱器風路33と循環ダクト34は一体に構成され、筐体1内の取り付けベース35に固定されている。
【0076】
吸熱器風路31の入口と排気ダクト出口23とは、蛇腹状の伸縮可能な可撓性材料からなる排気口ホース36を介して連通している。
【0077】
放熱器風路33の出口と送風機12も同様に、給気口ホース37を介して連通している。
【0078】
また、吸熱器風路31の上流に設けた入口部には、空気中の異物を除去するフィルター手段として、エアフィルター38を着脱可能に設けている。
【0079】
さらに、吸熱器風路31の下流側の下部には、凝集したアルコール水溶液を回収するための回収口39及び回収器40を設けている。
【0080】
送風機12で送風される加温空気は、図4の矢印dに示すように、給気ダクト20を通り給気口14から回転槽5内に入り、回転槽5内を加温するようになっている。
【0081】
一方、回転槽5内で発生したエタノールを含む水蒸気は、排気口16から出て、排気ダクト22を通って吸熱器風路31の吸熱器30を通過する際に、冷却され、回収口39を通して回収器40でエタノールを回収するようになっており、回収後の空気は、循環ダクト34を介して放熱器風路33の放熱器32を通過して送風機12へ戻り、循環するようになっている。
【0082】
図4に、エタノールを蒸留するためのヒートポンプ装置を説明する。
【0083】
圧縮機41、およびこの圧縮機41で圧縮された冷媒の熱を放熱する放熱器32、および高圧の冷媒の圧力を減圧するための絞り弁や毛細管等からなる絞り手段42、および減圧されて低圧となった冷媒が周囲から熱を奪う吸熱器30とを冷媒が循環するように管路43で連結されており、冷媒は矢印44の方向に流れて循環し、ヒートポンプサイクルを実現する。
【0084】
図6に、試薬の投入器60の構成を説明する。給水源に接続する給水電磁弁61と、この給水電磁弁の吐出口68に接続する流入口66と、複数個の流出口67と、前記流出口67を有するシリンダ62と、前記シリンダ62に嵌入したロータ63と、前記ロー63を駆動するモータ64と、前記ロータ63の回転位置を検出して、予め設定したロータ63の回転角度で前記シリンダ62の流入口66と個々の流出口67とが連通するように、前記モータ64を制御する位置決め装置とで構成したロータリーバルブ65と、少なくとも、酵素分解工程時に投入する酵素を収容する酵素容器と、発酵工程時に投入する発酵菌を収容する発酵菌容器と、必要時には発酵菌を活性化するための活性化剤を収容する活性化剤容器と、から成る容器69と、前記容器69を通過した水を前記酵素分解・発酵槽3へ投入するための投入口70を有し、それらの容器に各1の給水口を配設して構成した投入器60とを備え、前記ロータリーバルブ65の個々の流出口67と前記容器69の個々の給水口とをそれぞれ接続して、前処理工程では、前記前処理剤容器に給水して前処理剤を、酵素分解工程では前記酵素分解容器に給水して酵素を、発酵工程時では前記発酵菌容器に給水して発酵菌を、必要時には発酵菌を活性化するために活性化剤容器に給水して活性化剤を、水とともに酵素分解・発酵槽に流し入れるように構成したものである。
【0085】
上記のような動作はすべて制御手段51により一括制御されている。
【0086】
以上のように構成されたバイオエタノール製造装置について、以下その動作、作用について説明する。
【0087】
まず、筐体1の前面にある開口部1aからシュレッダー紙4を酵素分解・発酵槽3内に投入し、次の前処理工程に進む。
【0088】
図3はこの発明の実施の形態における前処理剤噴霧器を含む筐体1のA−Aに沿った断面図である。
【0089】
駆動モータ6によりシュレッダー紙4の入った回転槽5を回転させながら前処理を行う。
【0090】
前記筐体1内部に設置された前記リザーバー71に貯められた前処理剤を前記ポンプ72により吸い上げ、前記ポンプ72と連結した前記送液ライン73を通して、前記送液ライン73の末端に連結した前記ノズル74から前処理剤を噴霧する。
【0091】
前記ポンプ72は、制御手段51により制御されている。
【0092】
前記制御手段51は、前記ポンプ72により間欠噴霧するための時間間隔を制御する。
【0093】
これにより、時間当たりの噴霧量が制御されるものである。
【0094】
前処理剤を噴霧する方法として、一定量の前処理剤を連続的に噴霧する方法と、間欠的に噴霧する方法とが考えられるが、回転槽5を回転させながら前処理剤を均一にシュレッダー紙へ塗布するには間欠的に噴霧する方法が好ましい。
【0095】
このとき、排気ダクト22内には一部の水が入るが、排気ダクト22は途中経路を上方に持ち上げた形状にして吸熱器30に水が浸入しないようになっている。
【0096】
前処理は、古紙を含む廃棄物の場合は酸、アルカリなどの薬品や高温、高圧によらない簡単な前処理が好ましく、例えば、裁断(シュレッディング)後にイオン液体または、などを加えてミキシングして繊維をほぐす離解処理等が好適であるため、前処理剤としてイオン液体または、を投入することが好ましい。
【0097】
ここで、前記前処理剤はイオン液体希釈水10は、水で希釈したものであるが、イオン液体のみでもかまわない。
【0098】
利用するイオン液体または、として、以下に例示する。
1,3−ジメチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフレート
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビスペンタフルオロエタンスルフォニルイミド
1,3−ジエチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
1,3−ジエチルイミダゾリウム トリフレート
1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムトリフレート
1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフレート
1−イロプロピル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
プロピルメチルピロリジニウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
プロピルトリメチルアンモニウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
メチルプロピルピペリジニウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド
ブチルピリジニウム ビストリフルオロメタンスルフォニルイミド。
【0099】
この前処理工程ではヒートポンプを作動させて加熱することにより前処理速度を上げることも可能である。
【0100】
以上説明した実施の形態によれば、上述のように、イオン液体または、イオン液体希釈水10を超音波式噴霧器で霧化して反応槽中のシュレッダー紙に噴霧するように構成したので、紙中の結晶化セルロースに効果的に作用し、次のステップであるセルラーゼ分解反応を効果的に反応できる。
【0101】
前処理工程一定時間後、次の酵素分解工程に進む。
【0102】
酵素分解工程では、排水弁10を閉じた状態で酵素分解・発酵槽3内に所定の水位に達するまで給水を行い、その後、投入器中の酵素剤容器に給水口がくるようにロータリーバルブを設定し、酵素剤容器に給水して酵素剤を水とともに酵素分解・発酵槽に流し入れる。
【0103】
その後、駆動モータ6によりシュレッダー紙4と水の入った回転槽5を回転させて酵素分解処理を行う。
【0104】
このとき、排気ダクト22内には一部の水が入るが、排気ダクト22は途中経路を上方に持ち上げた形状にして吸熱器30に水が浸入しないようになっている。
【0105】
この酵素分解工程ではヒートポンプを作動させて加熱することにより酵素分解速度を上げることも可能である。
【0106】
酵素分解工程一定時間後、次の発酵工程に進む。
【0107】
発酵工程では、まず排水弁10を閉じた状態で酵素分解・発酵槽3内に所定の水位に達するまでさらに給水を行い、投入器中の発酵菌容器に給水口がくるようにロータリーバルブを設定し、酵素容器に給水して酵素を水とともに酵素分解・発酵槽に流し入れる。
【0108】
その後、駆動モータ6によりシュレッダー紙4と洗浄水の入った回転槽5を回転させて酵素分解反応を行う。
【0109】
用いられるセルラーゼは、少なくともエンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼ、およびβ−グルコシダーゼを含むものであればよく、特に限定されない。
【0110】
酵素分解工程において、セルラーゼの使用量は、基質であるセルロース含有物1gに対して、後述するFPUの活性測定法により測定したときの値が3FPU〜100FPU程度となるように設定することが好ましく、10FPU〜30FPUがより好ましい。
【0111】
セルラーゼの使用量が少なすぎるとセルロースの加水分解反応が効率的に進まず、多すぎるとセルラーゼのコストが大きくなり経済性が損なわれる。
【0112】
水量は、セルロース含有物および酵素を含むスラリーが撹拌可能な粘度となるように適宜設定し得る。
【0113】
酵素分解工程の反応条件は、通常のセルラーゼによる糖化条件を適用することができる。
【0114】
例えば、酵素としては市販のセルラーゼ(商品名:セルロシンT2、阪急バイオインダストリー社製、300FPU/gタンパク質)をシュレッダー紙1gに対して30FPU、すなわちシュレッダー紙1gに対してタンパク質として0.1g添加することできる。
【0115】
また、pH4〜6、温度40〜60℃程度が好ましく、また緩衝剤として例えば酒石酸カリウムと酒石酸との混合溶液を0.05mol/L程度加えてもよい。
【0116】
酵素分解工程においては、セルロース含有物に含まれるセルロースがセルラーゼの作用によって糖化され、セロビオース、セロトリオースなどのオリゴ糖やグルコース等の溶解性の糖が生成される。
【0117】
これにより、スラリーの粘度が低下し撹拌効率が向上する。
【0118】
酵素分解工程における反応時間(滞留時間)は、短すぎるとセルロースの糖化が十分に行われず、その結果、最終的に得ようとしている発酵生産物の収率が低くなる。
【0119】
一方、長すぎると反応槽の容積が大きくなり、設備コスト及び撹拌エネルギーが増大して経済性が悪くなる。
【0120】
したがって、酵素分解工程における反応時間は、セルロースの大部分が溶解性の糖に加水分解される程度に設定するのが好ましい。
【0121】
例えば10時間程度が好ましい。
【0122】
酵素分解工程終了後に得られる糖含有液の組成は、原料として用いたセルロース含有物の種類や糖化での反応条件によっても異なるが、セロビオース、セロトリオースなどのオリゴ糖、グルコース、その他の溶解性の糖の他に、セルロース含有物に由来する無機イオン(Ca2+、Mg2+、Na+など)や、リグニンやヘミセルロースなどの不溶性物質、およびセルラーゼ等が含まれ得る。
【0123】
酵素分解一定時間後、例えば10時間程度後、次の発酵工程にすすむ。
【0124】
発酵工程では、投入器中の発酵菌容器に給水口がくるようにロータリーバルブを設定し、発酵菌容器に給水して発酵菌を水とともに酵素分解・発酵槽に流し入れる。
【0125】
このように発酵菌を加え、糖化液中に含まれているグルコースを炭素源として前記微生物による発酵を行って発酵生産物であるバイオエタノールを得る。また必要に応じて、発酵に用いられる培地などの活性化剤を添加することもできる。
【0126】
微生物はグルコースを炭素源としてアルコール発酵を行うものであればいずれの菌でもよい。
【0127】
反応時間(滞留時間)は、短すぎると単糖化と発酵が十分に進行せず、生産物の収率が低くなり、長すぎると発酵槽の容積が大きくなり、設備コスト及び通気撹拌エネルギーが増大して経済性が悪くなる。
【0128】
投入する発酵菌としては、酵母やザイモモナスなどがある。
【0129】
一方、発酵時間は発酵菌の投入量、種類、発酵条件によっても異なるため、随時回収したアルコール量をモニタリングすることが好ましい。
【0130】
酵素分解・発酵工程では、ヒートポンプ装置の圧縮機41を作動させると、冷媒が圧縮され、この圧力により放熱器31、絞り手段42、吸熱器30を循環する。
【0131】
放熱器32では冷媒の圧縮で熱が放出され、吸熱器30では絞り手段42で減圧されて低圧となった冷媒により熱が吸収される。
【0132】
このとき送風機12が作動し、放熱器32の放熱により加熱された温風が給気ダクト20を通って給気口14から回転槽5内に送風される。
【0133】
回転槽5は駆動モータ6により回転駆動され、シュレッダー紙4は回転槽5の回転により持ち上げられて落下することで、上下に撹拌される。
【0134】
回転槽5内に送風された温風は、酵素分解・発酵槽3を通るときにエタノールを含む水蒸気を奪い、エタノールを含んだ状態で酵素分解・発酵槽3の排気口16を経て排気ダクト22、排気口ホース36を通り、エアフィルター38を通過してリント等の異物が除去され、吸熱器風路31に至る。
【0135】
このエタノールを含んだ水蒸気は、吸熱器30を通過する際に顕熱と潜熱が奪われて凝集され、エタノール水溶液を回収することができる。
【0136】
吸熱器30で凝集したエタノール水溶液は、底部の回収口39から機外へ排出され、回収器40にて容易に回収することができる。
【0137】
一方、この部分を通過した空気は、循環ダクト34を通って放熱器風路33に入り、放熱器32で再び加熱され温風となって給気口ホース37、給気ダクト20を通り、送風機12へと循環することにより、酵素分解・発酵槽3を加温することができる。
【0138】
一方、このようにしてエタノール水溶液を回収しているため、酵素分解・発酵槽3の粘度は向上するため、随時給水する必要がある。
【0139】
このようにヒートポンプ装置を用いることにより、吸熱器30で吸熱した熱を冷媒で回収して再び放熱器32で放熱して、圧縮機41に入力したエネルギー以上の熱量を酵素分解・発酵槽3に与えることができるので、乾燥時間の短縮と省エネを実現することが可能になる。
【0140】
以上のように、ヒートポンプ装置を酵素分解・発酵槽3の下方に配置し、酵素分解・発酵槽3の下面側に配設した可撓性を有した筒状部材からなる給気口ホース37および排気口ホース36と連結することにより、シュレッダー紙4の投入がし易いように本体前面の開口部1aの位置を高くでき、給気口ホースおよび排気口ホースの長さも短くできるので、本体全体をコンパクトに構成できる。
【0141】
なお、本実施の形態では、給気口ホース37および排気口ホース36を酵素分解・発酵槽3の下面側の左右に並べて配設しているが、ヒートポンプ装置のレイアウトによっては前後に並べて配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、効率的に紙を同時に糖化、発酵処理することでき、製造時の組立てが容易になるとともに、装置の修理メンテンスを容易にすることができるので、耐久性、信頼性にすぐれたバイオエタノールの製造方法及びそれを用いた装置を提供する。
【符号の説明】
【0143】
1筐体
2サスペンション
3酵素分解・発酵槽
4シュレッダー紙
5回転槽
6駆動モータ
7扉
8ベローズ
9排水口
10排水弁
12 送風機
14給気口
16排気口
20給気ダクト
21給気ダクト入り口
22排気ダクト
23排気ダクト入り口
30吸熱器
31吸熱器風路
32放熱器
33放熱器風路
34循環ダクト
35取り付けベース
36排気口ホース
37給気口ホース
38エアフィルター
39排出口
41圧縮機
42絞り手段
43管路
50回収器
51制御手段
60投入器
61給水電磁弁
62シリンダ
63ロータ
64モータ
65ロータリーバルブ
66流入口
67流出口
68突出口
69容器
70投入口
71リザーバー
72ポンプ
73送液ライン
74ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
筐体内に弾性支持され、紙に含まれるセルロースを酵素分解し、その酵素分解により生成した糖類を発酵させるための酵素分解・発酵槽と、
前記酵素分解・発酵槽内に回転可能に設けられた回転槽と、
前記酵素分解・発酵槽に紙を投入するための投入口と、
前処理剤を貯めておくためのリザーバーと、
前記前処理剤を送液するためのポンプと、
前記ポンプにより前記前処理剤を送液するための送液ラインと、
前記送液ラインと連結し、前記イオン液体を噴霧するためのノズルと、
前記酵素分解・発酵槽内に少なくとも1種類の添加剤を収納できるカートリッジと、
前記ポンプを駆動し前記リザーバーから前記前処理剤を前記ノズルから噴霧する手段と、
前記カートリッジに収納した添加剤を前記酵素分解・発酵槽内に投入できる手段と
前記酵素分解・発酵槽内に水を供給する供水手段と、
前記酵素分解・発酵槽外に廃棄物を廃棄する廃棄手段と、
ヒートポンプ装置と、
送風手段によって前記ヒートポンプ装置から前記回転槽内に空気を供給する給気口ホースと、
前記回転槽内の空気を前記酵素分解・発酵槽外へ排出する排気口ホースと、
前記ヒートポンプ装置を固定した取り付けベースと、
前記各手段を制御するための制御手段とを具備し、
前記ヒートポンプ装置の吸熱部が生成されたエタノールを冷却、回収するためのエタノール回収手段を具備していることを特徴するバイオエタノール製造装置。
【請求項2】
前記ヒートポンプ装置の加温部が前記酵素分解・発酵槽の加熱手段であることを特徴する請求項1記載のバイオエタノール製造装置。
【請求項3】
添加剤が、前処理剤、酵素、発酵菌、発酵菌活性化剤であり、
それぞれの添加剤を収納できる4つの容器からなる投入器を具備し、
それぞれ独立して前記酵素分解・発酵槽内に投入可能にした請求項1記載のバイオエタノール製造装置。
【請求項4】
取り付けベースは、
ヒートポンプ装置の圧縮機、
放熱器、
絞り手段、
吸熱器、
管路、
放熱器風路、
吸熱器風路
および循環ダクトと、
を装備した請求項1記載のバイオエタノール製造装置。
【請求項5】
酵素分解・発酵槽を前方高位に傾けて形成した請求項1記載のバイオエタノール製造装置。
【請求項6】
前記添加剤の1つが、前記前処理剤でありイオン液体であることを特徴とする請求項1〜5記載のバイオエタノール製造装置。
【請求項7】
紙に含まれるセルロースを酵素分解し、次いで、前記セルロースおよびヘミセルロースの酵素分解により生成した糖類を発酵させることによりエタノールを生成するバイオエタノールの製造方法であって、
紙に含まれるセルロース構造分解処理する前処理工程と、
前記前処理工程にて構造分解処理を施したセルロース構造分解処理する前処理工程と、
前記紙に含まれるセルロースを酵素分解する酵素分解工程と、
前記前処理工程にて構造分解処理を施した前記酵素分解工程にて生成した糖類を発酵する発酵工程と、
前記発酵工程にて生成したエタノールを含む水蒸気をヒートポンプ装置の冷却部にて冷却回収する工程と、
を有することを特徴とするバイオエタノール製造方法。
【請求項8】
紙に含まれるセルロースを酵素分解し、次いで、前記セルロースおよびヘミセルロースの酵素分解により生成した糖類を発酵させることによりエタノールを生成するバイオエタノールの製造方法であって、
紙に含まれるセルロース構造分解処理する前処理工程と、
前記前処理工程にて構造分解処理を施したセルロースを酵素分解する酵素分解工程と、
前記酵素分解工程にて生成した糖類を発酵する発酵工程と、
前記発酵工程にて生成したエタノールを含む水蒸気をヒートポンプ装置の吸熱部にて冷却回収する工程と、
前記酵素分解工程及び発酵工程時に前記酵素分解・発酵槽をヒートポンプ装置の放熱部にて加温する工程と、
を有することを特徴とするバイオエタノール製造方法。
【請求項9】
前記前処理工程が、前記セルロースおよびヘミセルロースをミキシングしながらイオン液体を噴霧することを特徴とする請求項7および8記載のバイオエタノール製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90605(P2013−90605A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235773(P2011−235773)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】