説明

バイオガスのメタン濃縮方法及びメタン濃縮装置

【課題】バイオガスからメタンを高濃縮すると共に、バイオガスに含まれるメタンをより一層有効に利用すること。
【解決手段】バイオガスを供給管4と第1圧縮機5を介し1段目分離膜モジュール1へ加圧供給し、そのモジュール1を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを透過ガス管7を介して第2圧縮機9で圧縮し、冷却器10で冷却することで二酸化炭素を液化して回収し、残った透過ガスをガスエンジン26へ供給して利用する。1段目分離膜モジュール1を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスを残圧により非透過ガス管8を介して2段目分離膜モジュール2へ供給し、同モジュール2を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを再循環管11と供給管4を介して1段目分離膜モジュール1へ再循環させ、2段目分離膜モジュール2を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスをメタン濃縮ガスとして回収管12にて回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メタンと二酸化炭素を主成分とするバイオガスからメタンを濃縮して回収するためのバイオガスのメタン濃縮方法及びメタン濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオガスの組成は、メタン(CH4)約60%と、二酸化炭素(CO2)約40%と、その他、硫化水素(H2S)1000ppm、微量の酸素(02)、窒素(N2)及び水素(H2)とを含み、その発熱量は都市ガス(13A)の約半分である。このバイオガスを、例えば、天然ガス自動車(NGV)の燃料として利用するためには、発熱量を高める必要がある。そのため、バイオガスを精製処理し、メタン以外の物質を除去してメタンの濃度を高める必要がある。
【0003】
ここで、硫化水素は、脱硫剤により除去することができ、酸素は、酸化触媒により水素と燃焼させて除去することができる。一方、二酸化炭素の除去方法としては、主として、高圧水吸収法、PSA法、膜分離法が挙げられる。膜分離処理においては、一段式の膜分離処理(分離膜を1度通過させるだけの処理)を行うだけでは、メタンの回収率は低くなってしまう。バイオガス中の二酸化炭素を、一段だけの分離膜に透過させて分離させるため、分離時間を長くする必要があり、その過程で二酸化炭素と同時に一部のメタンも透過してしまい、メタンの回収率が低くなってしまうためである。
【0004】
そこで、下記の特許文献1には、二段式の膜分離処理を行う技術が記載されている。図2に示す装置は、直列に配置された前後2段の分離膜モジュール51,52を備える。分離膜を有する1段目の分離膜モジュール51の入口には、バイオガスが供給される供給ガス管53が接続され、この供給ガス管53には、コンプレッサ54が設けられる。この1段目の分離膜モジュール51の透過側出口には、排気管55が接続され、この排気管55には、真空ポンプ等の減圧ポンプ56が設けられる。1段目の分離膜モジュール51の非透過側出口には、非透過ガス管57の一端が接続される。この非透過ガス管57の他端は、分離膜を有する2段目の分離膜モジュール52の入口に接続される。この2段目の分離膜モジュール52の透過側出口には、リサイクル管58の一端が接続される。このリサイクル管58の他端は、コンプレッサ54よりも上流の供給ガス管53に接続される。2段目の分離膜モジュール52の非透過側出口には、製品ガス管59が接続される。
【0005】
上記装置において、供給ガス管53には、たとえばメタン濃度60%のバイオガス(脱硫後)が供給される。このガスは、リサイクル管58から合流するガスと共にコンプレッサ54により加圧されて1段目の分離膜モジュール51に供給される。この1段目の分離膜モジュール51では、透過側が減圧ポンプ56により減圧されるため、二酸化炭素が効率的に除去され、排気される。1段目の分離膜モジュール51の非透過側で、メタンが濃縮されたガスが、非透過ガス管57を介して2段目の分離膜モジュール52に供給され、その非透過側においてさらにメタンが濃縮される。2段目の分離膜モジュール52の透過側は、好ましくは大気圧とされるが、2段目の分離膜モジュール52への供給ガス量の20〜40%がリサイクル管58を介して供給ガス管53へリサイクルされる。すなわち、この2段目の分離膜モジュール52のリサイクルオフガス(透過ガス)に残存するメタンがそのまま排気されることなく、再濃縮のためにリサイクルされる。その結果、1段目の分離膜モジュール51の非透過側出口におけるメタン濃度は75〜85%となり、2段目の分離膜モジュール52の非透過側出口における製品ガスのメタン濃度は90%以上となる。また、メタン回収率は、85%以上となる。
【0006】
すなわち、上記装置の構成によれば、1段目の分離膜モジュール51により、短時間で二酸化炭素を分離させ、2段目の分離膜モジュール52により、残りの二酸化炭素を分離させることで、メタンの透過ロスを少なくしている。さらに、2段目の分離膜モジュール52により、分離した透過ガス(メタンが数10%含まれる)をリサイクルすることで、メタンの回収率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−124514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載の装置では、1段目の分離膜モジュール51における廃棄オフガス(透過ガス)については、二酸化炭素の濃度が高く、リサイクル(プロセス内再循環)するとメタンの回収率が極端に低下してしまう。そのため、1段目の分離膜モジュール51では、2段目の分離膜モジュール52におけるリサイクルオフガス(透過ガス)のようにはリサイクルせずに廃棄している。その結果、1段目の分離膜モジュール51を透過した透過ガスの中に含まれるメタン(全体のメタンの「15%」程度)が無駄に廃棄されることとなる。このため、バイオガスに含まれるメタンを更に有効利用することが求められている。
【0009】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、バイオガスからメタンを高濃縮すると共に、バイオガスに含まれるメタンをより一層有効利用することを可能としたバイオガスのメタン濃縮方法及びメタン濃縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、分離膜を使用してバイオガスからメタンを濃縮して回収するバイオガスのメタン濃縮方法であって、バイオガスを1段目の分離膜へ加圧供給し、1段目の分離膜を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを圧縮し、冷却することにより、透過ガス中の二酸化炭素を液化して回収し、残った透過ガスをガス利用機器へ供給して利用し、1段目の分離膜を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスを残圧により2段目の分離膜へ供給し、2段目の分離膜を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを1段目の分離膜へ再循環させ、2段目の分離膜を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスをメタン濃縮ガスとして回収することを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、バイオガスが1段目の分離膜へ加圧供給されることにより、その分離膜でバイオガスの中の成分が分離される。そして、1段目の分離膜を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスが圧縮され、冷却されることにより、透過ガス中の二酸化炭素が液化して回収される。また、メタンを含む残った透過ガスは、ガス利用機器へ供給されて利用される。一方、1段目の分離膜を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスは、その残圧により2段目の分離膜へ供給されることにより、その分離膜で非透過ガスの中の成分が更に分離される。そして、2段目の分離膜を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスは、1段目の分離膜へ再循環される。また、2段目の分離膜を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスは、メタン濃縮ガスとして回収される。従って、1段目の分離膜を透過した透過ガスの中の二酸化炭素が圧縮と冷却により液化回収されるので、残った透過ガスの中の二酸化炭素濃度が低下し、メタンを多く含むガスとしてガス利用機器により利用される。これにより、メタン濃縮ガスが有効に得られると共に、従来は捨てていた1段目の分離膜を透過した透過ガスがガス利用機器により有効に利用される。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ガス利用機器は、残った透過ガスからエネルギーを発生させるエネルギー発生機器であり、エネルギー発生機器により発生したエネルギーを、バイオガスを生成するための設備のエネルギー源として利用することを趣旨とする。
【0013】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、残った透過ガスからエネルギー発生機器により発生したエネルギーを、バイオガスを生成するための設備のエネルギー源として利用するので、バイオガスを生成するために透過ガスに含まれるメタンが有効に利用される。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、残った透過ガスをガス利用機器に供給して利用するときに、透過ガスに都市ガスを混合することを趣旨とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加え、透過ガスに都市ガスを混合するので、透過ガスがより効率的に利用される。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明であって、1段目の分離膜を透過した透過ガスを冷却する前に除湿することを趣旨とする。
【0017】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の作用に加え、1段目の分離膜を透過した透過ガスが、冷却される前に除湿されるので、透過ガスから水分が除去され、水分を含まない透過ガスが冷却に供される。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、分離膜を使用してバイオガスからメタンを濃縮して回収するバイオガスのメタン濃縮装置であって、バイオガスが供給される供給管と、供給管に接続された1段目の分離膜モジュールと、供給管に設けられた第1の圧縮機と、1段目の分離膜モジュールを透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを外部へ導く透過ガス管と、透過ガス管から外部へ導かれる透過ガスを利用するためのガス利用機器と、1段目の分離膜モジュールを透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスが流れる非透過ガス管と、透過ガス管に上流側から順次直列に設けられた第2の圧縮機及び冷却器と、非透過ガス管に接続された2段目の分離膜モジュールと、2段目の分離膜モジュールを透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを供給管へ再循環させる再循環管と、2段目の分離膜モジュールを透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスをメタン濃縮ガスとして回収する回収管とを備えたことを趣旨とする。
【0019】
上記発明の構成によれば、バイオガスが供給管に供給され、そのバイオガスが第1の圧縮機により圧縮されることにより、1段目の分離膜モジュールへは、加圧されたバイオガスが供給される。第1の分離膜モジュールでは、供給されたバイオガスの中の成分が分離される。そして、1段目の分離膜モジュールを透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスは透過ガス管へと流れ、1段目の分離膜モジュールを透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスは非透過ガス管へと流れる。透過ガス管へ流れた透過ガスは、第2の圧縮機により圧縮され、冷却器により冷却されることにより、透過ガス中の二酸化炭素が液化して回収される。また、メタンを含む残った透過ガスは、透過ガス管を更に流れて外部へ導かれ、ガス利用機器により利用される。一方、1段目の分離膜モジュールを透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスは、その残圧により非透過ガス管を介して2段目の分離膜モジュールへ供給される。2段目の分離膜モジュールでは、非透過ガスの中の成分が更に分離される。そして、2段目の分離膜モジュールを透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスは、再循環管を介して供給管へ再循環され、再び1段目の分離膜モジュールへ供給される。一方、2段目の分離膜モジュールを透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスは、回収管へ流れ、メタン濃縮ガスとして回収される。従って、1段目の分離膜モジュールを透過した透過ガスの中の二酸化炭素が圧縮と冷却により液化回収されるので、残った透過ガスの中の二酸化炭素濃度が低下し、メタンを多く含む透過ガスとしてガス利用機器に利用される。これにより、メタン濃縮ガスが有効に得られると共に、従来は捨てていた1段目の分離膜モジュールを透過した透過ガスがガス利用機器により有効に利用される。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、ガス利用機器は、外部へ導かれた透過ガスからエネルギーを発生させるエネルギー発生機器であり、エネルギー発生機器により発生したエネルギーを、バイオガスを生成するための設備のエネルギー源として利用することを趣旨とする。
【0021】
上記発明の構成によれば、請求項5に記載の発明の作用に加え、残った透過ガスからエネルギー発生機器により発生したエネルギーを、バイオガスを生成するための設備のエネルギー源として利用するので、バイオガスを生成するために透過ガスに含まれるメタンが有効に利用される。
【0022】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、透過ガスをガス利用機器により利用するときに、透過ガスに都市ガスを混合することを趣旨とする。
【0023】
上記発明の構成によれば、請求項5又は6に記載の発明の作用に加え、透過ガスに都市ガスを混合するので、透過ガスがより効率的に利用される。
【0024】
上記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、請求項5乃至7の何れかに記載の発明であって、1段目の分離膜モジュールと第2の圧縮機との間にて透過ガス管に除湿処理器を設けたことを趣旨とする。
【0025】
上記発明の構成によれば、請求項5乃至7の何れかに記載の発明の作用に加え、1段目の分離膜モジュールを透過した透過ガスが、透過ガス管にて、冷却器により冷却される前に除湿処理器により除湿されるので、透過ガスから水分が除去され、水分を含まない透過ガスが冷却器での冷却に供される。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に記載の発明によれば、バイオガスからメタンを高濃縮することができると共に、バイオガスに含まれるメタンをより一層有効に利用することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、バイオガスに含まれるメタンをバイオガスを生成するために有効に利用することができる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、透過ガスにつきより効率的にエネルギーを利用することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の効果に加え、冷却器による冷却時に透過ガスの中の水分が氷結することを防止することができ、メタン濃縮のための阻害要因を排除することができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、バイオガスからメタンを高濃縮することができると共に、バイオガスに含まれるメタンをより一層有効に利用することができる。
【0031】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明の効果に加え、バイオガスに含まれるメタンをバイオガスを生成するために有効に利用することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5又は6に記載の発明の効果に加え、透過ガスにつきより効率的にエネルギーを利用することができる。
【0033】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5乃至7の何れかに記載の発明の効果に加え、冷却器による冷却時に透過ガスの中の水分が氷結することを防止することができ、メタン濃縮のための阻害要因を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一実施形態に係り、メタン濃縮装置を示す概略構成図。
【図2】従来技術に係り、メタン濃縮装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明におけるバイオガスのメタン濃縮方法及びメタン濃縮装置を具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
図1に、この実施形態のメタン濃縮装置を概略構成図により示す。図1に示すように、このメタン濃縮装置は、分離膜を使用してバイオガスからメタン(CH4)を濃縮して回収するものであり、直列に配置された前後2段の分離膜モジュール1,2を備える。1段目の分離膜モジュール1と2段目の分離膜モジュール2は、それぞれケースの内部に分離膜3を収容して構成される。分離膜3として、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ゼオライト等、メタンを透過し難く、二酸化炭素を透過し易い分離膜であれば、種類を限定することなく、いずれであっても使用することができる。分離膜3は、それにバイオガスを透過させることにより、二酸化炭素(CO2)を多く含む透過ガスと、分離膜を透過しなかったメタン(CH4)を多く含む非透過ガスとに分離することができる。
【0037】
1段目の分離膜モジュール1の入口側には、バイオガスが供給される供給管4が接続される。この供給管4の上流部には、メタン発酵槽21、脱硫塔22及びガスホルダー23が順次直列に設けられる。メタン発酵槽21は、各種のバイオマス(例えば、食品系廃棄物)を投入することにより、メタンを発酵させると共に二酸化炭素等を発生させるようになっている。そして、メタンと二酸化炭素塔を含むバイオガスがメタン発酵槽21から供給管4へ流れる。供給管4に流れたバイオガスは、脱硫塔22を通る過程で硫化成分が除去される。硫化成分が除去されたバイオガスは、ガスホルダー23に一旦溜められ、ガスホルダー23から供給管4の下流部へ流れるようになっている。上記したメタン発酵槽21は、本発明のバイオガスを発生するための設備に相当し、所定の撹拌機、送液ポンプ及び熱交換器等の各種機器(図示略)を備える。これら撹拌機及び送液ポンプ等は電気の供給を受けて作動し、熱交換器は熱の供給を受けて機能する。
【0038】
一方、供給管4の下流部には、第1の圧縮機5が設けられる。1段目の分離膜モジュール1の出口側には、透過ガス管7が接続される。また、1段目の分離膜モジュール1の出口側には、その分離膜モジュール1を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスが流れる非透過ガス管8が接続される。透過ガス管7は、1段目の分離膜モジュール1を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガス(オフガス)を外部へ導くようになっている。この透過ガス管7の一端は、外部に設けられたガスエンジン26に接続される。ガスエンジン26は、透過ガス管7から外部へ導かれる透過ガスを利用する本発明のガス利用機器に相当すると共に、透過ガスからエネルギーを発生させるエネルギー発生機器に相当する。ガスエンジン26は、供給される透過ガスをガスエンジン26で燃料として利用するときに、その透過ガスに都市ガスを補助的に混合するように構成される。ガスエンジン26は、混合された透過ガスと都市ガスを燃料として燃焼させることにより作動し、エネルギーである電気と熱を発生させるようになっている。これら電気と熱は、メタン発酵槽21に設けられた各種機器へエネルギー源として供給されるようになっている。
【0039】
ここで、ガスエンジン26については、より効率的なエネルギー利用の観点から、透過ガスに都市ガスを混合して利用しているが、透過ガスを単独で利用することもできる。この実施形態では、上記したように透過ガスをガスエンジン26で電気と熱のエネルギーに変換してバイオガス発酵に利用することにより、メタン発酵プロセスからバイオガス分離プロセスに至る全体において高いエネルギー利用効率を達成することができる。
【0040】
透過ガス管7には、二酸化炭素を回収するために、上流側から順次直列に第2の圧縮機9及び冷却器10が設けられる。1段目の分離膜モジュール1と第2の圧縮機9との間にて、透過ガス管7には、除湿処理器13が設けられる。また、冷却器10より下流の透過ガス管7には、透過ガスを減圧するための減圧弁16が設けられる。また、非透過ガス管8の一端は、2段目の分離膜モジュール2の入口側に接続される。2段目の分離膜モジュール2の出口側には、再循環管11が接続される。この再循環管11は、2段目の分離膜モジュール2を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを供給管4へ再循環させるようになっている。この再循環管11の一端は、第1の圧縮機5の上流側にて供給管4に接続される。2段目の分離膜モジュール2の出口側には、その分離膜モジュール2を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスをメタン濃縮ガス(精製メタン)として回収する回収管12が接続される。
【0041】
この実施形態で、第1の圧縮機5によるガスの供給圧力は、好ましくは「0.5〜0.98(MPa)」に設定される。第2の圧縮機9によるガスの供給圧力は、好ましくは「0.9〜3(MPa)」に設定される。冷却器10の冷却温度は、好ましくは「−
20〜−50(℃)」に設定される。
【0042】
次に、上記したメタン濃縮装置を使用して行われるメタン濃縮方法の一例について説明する。この実施形態では、供給管4に脱硫と脱水がなされたバイオガスが「30(Nm3/h)」ほど供給されるようになっている。
【0043】
この実施形態では、分離膜3を有する1段目及び2段目の分離膜モジュール1,2を使用してバイオガスからメタンを濃縮して回収するバイオガスのメタン濃縮方法を実施している。具体的には、バイオガスを1段目の分離膜モジュール1へ加圧供給し、1段目の分離膜モジュール1を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを圧縮し、冷却することにより、透過ガス中の二酸化炭素を液化して回収し、残った透過ガスをガスエンジン26へ燃料として供給し利用する。1段目の分離膜モジュール1を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスを残圧により2段目の分離膜モジュール2へ供給し、2段目の分離膜モジュール2を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを1段目の分離膜モジュール1へ再循環させ、2段目の分離膜モジュール2を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスをメタン濃縮ガスとして回収するようにしている。
【0044】
すなわち、図1の(a)に示す位置では、供給管4に「30(Nm3/h)」のバイオガスを供給する。このバイオガスを、第1の圧縮機5により「0.5〜0.98(MPa)」程度まで圧縮して1段目の分離膜モジュール1へ供給する。そして、1段目の分離膜モジュール1にバイオガスを透過させることにより、バイオガスの中の成分を分離させる。
【0045】
ここで、図1の(c)に示す位置では、透過ガス管7に、1段目の分離膜モジュール1を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスが流れる。この透過ガスは、二酸化炭素が「80(%)」以上を占め、残りは大部分がメタンであり、その他に微量の水素(H2)、酸素(02)及び窒素(N2)を含む。一方、図1の(d)に示す位置では、非透過ガス管8に、1段目の分離膜モジュール1を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスが流れる。この非透過ガスの性状は、メタンが「70(%)」以上を占め、残りは大部分が二酸化炭素で、その他に微量の水素、酸素及び窒素を含む。
【0046】
図1の(c)に示す位置では、透過ガスが二酸化炭素を「80(%)」以上含むため、燃料として利用し難く、また、そのまま1段目の分離膜モジュール1へ戻してリサイクルしようとすると、1段目の分離膜モジュール1の分離効率が極端に低下してしまう。そのため、従来技術では、透過ガスを廃棄していた。
【0047】
そこで、この実施形態では、1段目の分離膜モジュール1を透過した透過ガスを第2の圧縮機9により再び圧縮し、冷却器10により冷却することで、図1の(h)に示す位置で、二酸化炭素を液化して回収するようにしている。これにより、図1の(i)に示す位置では、透過ガス管7に、液化後の残りのガスが流れる。このガスの性状は、二酸化炭素が「40〜60(%)」を占め、メタンが「40〜60(%)」となる。このように、透過ガス中の二酸化炭素の濃度を「80(%)」以上から「40〜60(%)」へ低下させることにより、1段目の分離膜モジュール1の分離効率を低下させることなく、1段目の分離膜モジュール1を透過した透過ガスをガスエンジン26へ供給して燃料として利用することができる。更に、利用される透過ガスの圧力は、第2の圧縮機9により、第1の圧縮機5の圧力と同等以上に加圧される。そのため、この実施形態では、透過ガス管7に設けられた減圧弁16により透過ガスを減圧した上でガスエンジン26へ供給することができる。
【0048】
ここで、二酸化炭素を液化して回収するとき、図1の(c)に示す位置にて、透過ガスに水分が含まれる。この水分が、透過ガスの冷却温度の露点以上の割合で含まれると、冷却器10による冷却時に透過ガスの中の水分が氷結して阻害要因となるおそれがある。そこで、この実施形態では、透過ガス管7を流れる透過ガスを冷却器10により冷却する前に、除湿処理器13により水分を除去するようにしている。
【0049】
1段目の分離膜モジュール1を透過しなかった非透過ガスは、図1の(d)に示す位置にて、非透過ガス管8に流れ、2段目の分離膜モジュール2へ供給される。そして、2段目の分離膜モジュール2では、1段目の分離膜モジュール1と同様、透過ガスと非透過ガスとに分けられる。このときの非透過ガスは、図1の(g)に示す位置で、回収管12に流れ、高濃縮された高純度のメタン濃縮ガス(製品ガス(精製メタン))として回収される。一方、2段目の分離膜モジュール2を透過した透過ガスは、図1の(f)に示す位置で、再循環管11に流れ、供給管4へ再循環する。この透過ガスの性状は、メタンが「約60(%)」、二酸化炭素が「約40(%)」となる。このため、1段目の分離膜モジュール1の分離効率を低下させることなく、透過ガスをリサイクルすることができる。この透過ガスは、大気圧状態となっているので、第1の圧縮機5の前段の供給管4へ戻すようにしている。
【0050】
上記したように、この実施形態では、従来技術では廃棄していた1段目の分離膜モジュール1を透過した透過ガスを、ガスエンジン26の燃料として利用することができる。また、回収管12で回収されるメタン濃縮ガス(精製メタン)につき、メタンを「98(%)」以上とすることができ、最終的なメタン回収率を向上させることができる。加えて、二酸化炭素を液化して回収できるので、バイオガス精製プロセスからの二酸化炭素の発生量を大幅に削減することができる。
【0051】
以上説明したこの実施形態におけるバイオガスのメタン濃縮方法及びメタン濃縮装置によれば、バイオガスが供給管4に供給され、そのバイオガスが第1の圧縮機5により圧縮されることにより、1段目の分離膜モジュール1へは、加圧されたバイオガスが供給される。第1の分離膜モジュール1では、供給されたバイオガスの中の成分が分離される。そして、1段目の分離膜モジュール1を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスは、透過ガス管7へ流れ、1段目の分離膜モジュール1を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスは非透過ガス管8へと流れる。
【0052】
透過ガス管7へ流れた透過ガスは、第2の圧縮機9により圧縮され、冷却器10により冷却されることにより、透過ガス中の二酸化炭素が液化して回収される。また、メタンを含む残った透過ガスは、透過ガス管7及び減圧弁16を介して減圧された状態でガスエンジン26へ燃料として供給されて利用される。一方、1段目の分離膜モジュール1を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスは、その残圧により非透過ガス管8を介して2段目の分離膜モジュール2へ供給される。
【0053】
2段目の分離膜モジュール2では、非透過ガスの中の成分が更に分離される。そして、2段目の分離膜モジュール2を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスは、再循環管11を介して供給管4へ再循環され、再び1段目の分離膜モジュール1へ供給される。一方、2段目の分離膜モジュール2を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスは、回収管12へ流れ、高濃縮された高純度のメタン濃縮ガス(製品ガス(精製メタン))として回収される。
【0054】
従って、1段目の分離膜モジュール1を透過した透過ガスの中の二酸化炭素が、圧縮と冷却により液化回収されるので、残った透過ガスの中の二酸化炭素濃度が低下し、メタンを多く含むガスとしてガスエンジン26へ供給されて燃料として利用される。これにより、メタン濃縮ガスが有効に得られると共に、従来は捨てていた1段目の分離膜モジュール1を透過した透過ガスがガスエンジン26により有効に利用される。このため、バイオガスからメタンを高濃縮することができると共に、バイオガスに含まれるメタンをより一層有効に利用することができる。
【0055】
この実施形態では、透過ガスに都市ガスを混合してガスエンジン26で燃料として利用するようにしている。従って、透過ガスがより効率的に利用される。このため、透過ガスにつきより効率的にエネルギーを利用することができる。ここで、都市ガスの流量は一般にバルブ等により簡単に調整することができることから、透過ガスの発生量が不安定になった場合でも、都市ガスの流量を調整することで、ガスエンジン26を安定的に動作させることができる。
【0056】
この実施形態では、1段目の分離膜モジュール1による透過ガスの発生量は、例えば「約3.8(m3/h)」となり、都市ガスを、例えば「約5.6(m3/h)」だけ混合して利用することにより、「25(kW)」のガスエンジン26(発電効率:30%、熱回収効率:50%)を作動させることができる。そして、ガスエンジン26で得られるエネルギー(電気、熱)で、メタン発酵槽21等の設備で必要な電力量の「約50%」以上と、熱量の全てを補うことができる計算となり、エネルギーバランスとしても釣り合いの取れたシステムとなる。
【0057】
この実施形態では、1段目の分離膜モジュール1で残った透過ガスからガスエンジン26により発生した電気や熱のエネルギーを、バイオガスを生成するためのメタン発酵槽21等の設備のエネルギー源として利用する。従って、バイオガスを生成するために透過ガスに含まれるメタンが有効に利用される。このため、バイオガスに含まれるメタンをバイオガスを生成するために有効に利用することができる。換言すると、メタン発酵プロセスからバイオガス分離プロセスに至る全システムにおいて、高いエネルギー利用効率を達成することができる。
【0058】
また、この実施形態では、1段目の分離膜モジュール1を透過した透過ガスが、透過ガス管7にて、冷却器10により冷却される前に除湿処理器13により除湿されるので、透過ガスから水分が除去され、水分を含まない透過ガスが冷却器10での冷却に供される。このため、冷却器10による冷却時に透過ガスの中の水分が氷結することを防止することができ、メタン濃縮のための阻害要因を排除することができる。
【0059】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
【0060】
例えば、前記実施形態では、除湿処理器13を設けたが、場合によってはこれを省略することもできる。
【0061】
前記実施形態では、本発明のガス利用機器としてガスエンジン26を設けたが、ガスエンジン26の代わりに、燃料電池やガスボイラー等の機器を設けることもできる。
【0062】
前記実施形態では、透過ガスに都市ガスを混合してガスエンジン26に供給して利用したが、透過ガスはそれ自体で比較的熱量があるため、そのままでも燃料として利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、バイオガスからメタンを濃縮して回収することによりメタンを有効利用するバイオガスシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 1段目の分離膜モジュール
2 2段目の分離膜モジュール
3 分離膜
4 供給管
5 第1の圧縮機
7 透過ガス管
8 非透過ガス管
9 第2の圧縮機
10 冷却器
11 再循環管
12 回収管
13 除湿処理器
21 メタン発酵槽(バイオガスを生成するための設備)
26 ガスエンジン(ガス利用機器、エネルギー発生機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜を使用してバイオガスからメタンを濃縮して回収するバイオガスのメタン濃縮方法であって、
前記バイオガスを1段目の分離膜へ加圧供給し、
前記1段目の分離膜を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを圧縮し、冷却することにより、前記透過ガス中の二酸化炭素を液化して回収し、残った透過ガスをガス利用機器へ供給して利用し、
前記1段目の分離膜を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスを残圧により2段目の分離膜へ供給し、
前記2段目の分離膜を透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを前記1段目の分離膜へ再循環させ、
前記2段目の分離膜を透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスをメタン濃縮ガスとして回収することを特徴とするバイオガスのメタン濃縮方法。
【請求項2】
前記ガス利用機器は、前記残った透過ガスからエネルギーを発生させるエネルギー発生機器であり、前記エネルギー発生機器により発生したエネルギーを、前記バイオガスを生成するための設備のエネルギー源として利用することを特徴とする請求項1に記載のバイオガスのメタン濃縮方法。
【請求項3】
前記残った透過ガスを前記ガス利用機器に供給して利用するときに、前記透過ガスに都市ガスを混合することを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオガスのメタン濃縮方法。
【請求項4】
前記1段目の分離膜を透過した透過ガスを冷却する前に除湿することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のバイオガスのメタン濃縮方法。
【請求項5】
分離膜を使用してバイオガスからメタンを濃縮して回収するバイオガスのメタン濃縮装置であって、
バイオガスが供給される供給管と、
前記供給管に接続された1段目の分離膜モジュールと、
前記供給管に設けられた第1の圧縮機と、
前記1段目の分離膜モジュールを透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを外部へ導く透過ガス管と、
前記透過ガス管から外部へ導かれる透過ガスを利用するためのガス利用機器と、
前記1段目の分離膜モジュールを透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスが流れる非透過ガス管と、
前記透過ガス管に上流側から順次直列に設けられた第2の圧縮機及び冷却器と、
前記非透過ガス管に接続された2段目の分離膜モジュールと、
前記2段目の分離膜モジュールを透過した二酸化炭素を多く含む透過ガスを前記供給管へ再循環させる再循環管と、
前記2段目の分離膜モジュールを透過しなかったメタンを多く含む非透過ガスをメタン濃縮ガスとして回収する回収管と
を備えたことを特徴とするバイオガスのメタン濃縮装置。
【請求項6】
前記ガス利用機器は、前記外部へ導かれた透過ガスからエネルギーを発生させるエネルギー発生機器であり、前記エネルギー発生機器により発生したエネルギーを、前記バイオガスを生成するための設備のエネルギー源として利用することを特徴とする請求項4に記載のバイオガスのメタン濃縮装置。
【請求項7】
前記透過ガスを前記ガス利用機器により利用するときに、前記透過ガスに都市ガスを混合することを特徴とする請求項5又は6に記載のバイオガスのメタン濃縮装置。
【請求項8】
前記1段目の分離膜モジュールと前記第2の圧縮機との間にて前記透過ガス管に除湿処理器を設けたことを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載のバイオガスのメタン濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−95727(P2013−95727A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241758(P2011−241758)
【出願日】平成23年11月3日(2011.11.3)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】