説明

バイオガス発電システムおよびバイオガス発電方法

【課題】有機系廃棄物から生成したバイオガスを用いて発電を行う際の残渣の発生を減少させる。
【解決手段】有機系廃棄物701から生成したバイオガスと水酸素ガス302と水とを反応炉31内に送入して発熱反応させて高温高圧蒸気401を発生させる発熱反応装置3と、高温高圧蒸気401を用いて発電を行う発電装置7と、有機系廃棄物701を収容した熱分解槽に対して常圧過熱水蒸気201bを送り込んで熱分解槽内を低酸素状態または無酸素状態に維持してバイオガスとしての熱分解ガス301を生成する熱分解ガス化処理を実行する熱分解装置2とを備え、発熱反応装置3は、熱分解ガス301を用いて高温高圧蒸気401を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系廃棄物から生成したバイオガスを用いて発電を行うバイオガス発電システムおよびバイオガス発電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の発電システムとして、特許第4535861号公報に開示された発電システムが知られている。この発電システムは、バイオガス生成装置、ゼットガス発生器、太陽熱温水槽、反応炉、蒸気タービンおよび発電機などを備えて構成されている。この発電システムでは、バイオガス生成装置が生廃棄物(生ごみ)を微生物処理してバイオガスを生成し、ゼットガス発生器が水を電気分解してゼットガス(水酸素ガス)を生成し、太陽熱温水槽が水を加温する。生成されたバイオガスおよび加温された水は、加圧されて反応炉内に吹き込まれ、ゼットガスの燃焼炎によって高温加熱される。この際に、高温高圧高速気体流が生成され、この高温高圧高速気体流によって蒸気タービンが回転する。また、蒸気タービンの回転によって発電機を回転し、これによって発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4535861号公報(第5−6頁、第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来の発電システムには、解決すべき以下の課題がある。すなわち、この発電システムでは、生廃棄物としての生ゴミを微生物処理してバイオガスを生成している。しかしながら、生ゴミを微生物処理したときには、多量の有機性の残渣が生じる。この有機性残渣は、そのまま埋め立てる方法や、焼却して減量した後に埋め立てる方法によって最終処分される。しかしながら、そのまま埋め立てる方法は、埋め立て地の確保が難しい状況下において好ましくなく、また、焼却した後に埋め立てる方法は、ランニングコストが高騰する点で好ましくない。このように、従来の発電システムには、生廃棄物を微生物処理してバイオガスを生成する際に生じる多量の残渣を処分する上での課題が存在し、この点の改善が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、有機系廃棄物から生成したバイオガスを用いて発電を行う際の残渣の発生を減少させ得るバイオガス発電システムおよびバイオガス発電方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のバイオガス発電システムは、有機系廃棄物から生成したバイオガスと水素および酸素の混合気体である水酸素ガスと水とを反応炉内に送入して発熱反応させて高温高圧蒸気を発生させる発熱反応装置と、前記高温高圧蒸気を用いて発電を行う発電装置とを備えたバイオガス発電システムであって、前記有機系廃棄物を収容した熱分解槽に対して水蒸気を送り込んで当該熱分解槽内を低酸素状態または無酸素状態に維持して前記バイオガスとしての熱分解ガスを生成する熱分解ガス化処理を実行する熱分解装置を備え、前記発熱反応装置は、前記熱分解ガスを用いて前記高温高圧蒸気を発生させる。
【0007】
また、請求項2記載のバイオガス発電システムは、請求項1記載のバイオガス発電システムにおいて、前記有機系廃棄物を収容した処理槽に対して水蒸気を送り込んで当該有機系廃棄物を乾燥させつつ分解する加水分解処理を実行する加水分解処理装置を備え、前記熱分解装置は、前記加水分解処理後の有機系廃棄物に対して前記熱分解ガス化処理を実行する。
【0008】
また、請求項3記載のバイオガス発電システムは、請求項1または2記載のバイオガス発電システムにおいて、前記水蒸気を生成する水蒸気生成装置を備え、前記水蒸気生成装置は、前記熱分解ガス化処理の際に生じる前記有機系廃棄物の残渣を前記水蒸気を生成する際の燃料として用いる。
【0009】
また、請求項4記載のバイオガス発電方法は、有機系廃棄物から生成したバイオガスと水素および酸素の混合気体である水酸素ガスと水とを反応炉内に送入して発熱反応させて高温高圧蒸気を発生させ、前記高温高圧蒸気を用いて発電装置によって発電を行うバイオガス発電方法であって、前記有機系廃棄物を収容した熱分解槽に対して水蒸気を送り込んで当該熱分解槽内を低酸素状態または無酸素状態に維持して前記バイオガスとしての熱分解ガスを生成する熱分解ガス化処理を実行し、前記熱分解ガスを用いて前記高温高圧蒸気を発生させる。
【0010】
また、請求項5記載のバイオガス発電方法は、請求項4記載のバイオガス発電方法において、前記有機系廃棄物を収容した処理槽に対して水蒸気を送り込んで当該有機系廃棄物を乾燥させつつ分解する加水分解処理を実行し、前記加水分解処理後の有機系廃棄物に対して前記熱分解ガス化処理を実行する。
【0011】
また、請求項6記載のバイオガス発電方法は、請求項4または5記載のバイオガス発電方法において、前記熱分解ガス化処理の際に生じる前記有機系廃棄物の残渣を前記水蒸気を生成する際の燃料として用いる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のバイオガス発電システム、および請求項4記載のバイオガス発電方法によれば、有機系廃棄物を収容した熱分解槽に対して水蒸気を送り込んで熱分解槽内を低酸素状態または無酸素状態に維持してバイオガスとしての熱分解ガスを生成する熱分解ガス化処理を実行し、生成した熱分解ガスを用いて高温高圧蒸気を発生させることにより、有機系廃棄物の大部分を発電用の熱分解ガスにガス化することができる。このため、有機系廃棄物の大部分がガス化される分、熱分解ガス化処理において生じる残渣を確実に減少させることができる。したがって、このバイオガス発電システムおよびバイオガス発電方法によれば、従来の発電システムが有していた残渣の処分に関する課題を確実に改善することができる。
【0013】
また、請求項2記載のバイオガス発電システム、および請求項5記載のバイオガス発電方法によれば、有機系廃棄物を収容した処理槽に対して水蒸気を送り込んで有機系廃棄物を乾燥させつつ分解する加水分解処理を熱分解ガス化処理以前に実行することにより、有機系廃棄物の含水率を低減させつつ、熱分解ガス化処理が効率的に行われる状態に有機系廃棄物を分解することができる。このため、このバイオガス発電システムおよびバイオガス発電方法によれば、有機系廃棄物に対して加水分解処理を行うことなく、熱分解ガス化処理を直接行う構成および方法と比較して、熱分解ガス化処理の効率を十分に高めることができる。
【0014】
また、請求項3記載のバイオガス発電システム、および請求項6記載のバイオガス発電方法によれば、熱分解ガス化処理の際に生じる有機系廃棄物の残渣を水蒸気を生成する際の燃料として用いることにより、残渣を廃棄物として排出することなく、バイオガス発電方法によって発電を行うバイオガス発電システム内において消費することができるため、資源の有効利用をさらに推進することができる。また、残渣を廃棄物として埋め立てなどの方法によって処分する必要がないため、環境保護に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】バイオガス発電システム100の構成を示す構成図である。
【図2】バイオガス発電システム100によって実行される各処理の流れを説明する工程図である。
【図3】発熱反応装置3の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、バイオガス発電システムおよびバイオガス発電方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0017】
最初に、図1,2に示すバイオガス発電システム100(以下「発電システム100」ともいう)の構成について説明する。発電システム100は、有機系廃棄物(特に家庭ごみを主体とした有機系廃棄物)701から生成したバイオガス(有機系ガス)を用いて発電を行うシステムであって、両図に示すように、加水分解処理装置1、熱分解装置2、発熱反応装置3、水酸素ガス生成装置4、太陽熱温水装置5、水蒸気生成装置6、発電装置7、熱交換器8、分離装置9および水素回収装置10を備えて構成されている。また、発電システム100は、図1に示すように、搬入された有機系廃棄物701を受け入れる搬入ピット101、搬入ピット101と加水分解処理装置1との間に配設されたコンベヤ102、各装置や設備を稼働させるのに必要な電力を供給する図外の電力供給設備、並びに各装置や設備の間に配設された配管103a〜103jおよび搬送機構104などの付帯設備を備えている。
【0018】
加水分解処理装置1は、図1に示すように、処理槽11を備えて構成され、熱分解装置2によって実行される後述する熱分解ガス化処理の前処理として、効率的な熱分解ガス化処理が可能な状態に有機系廃棄物701を分解する加水分解処理(水熱処理)を実行する。
【0019】
処理槽11は、図1に示すように、一例として略円筒状に形成されて、有機系廃棄物701を収容可能に構成されている。また、処理槽11の上部には、搬入ピット101に搬入されてコンベヤ102によって搬送される有機系廃棄物701を処理槽11内に収容させるための開口部11aが設けられている。また、処理槽11の一方の側部には、水蒸気生成装置6によって生成される水蒸気(飽和水蒸気)201a(図2参照)を処理槽11内に送り込むための開口部11bが設けられている。さらに、処理槽11の他方の側部には、加水分解処理後の有機系廃棄物701を送り出すための開口部11cが設けられている。
【0020】
熱分解装置2は、図1に示すように、熱分解槽21を備えて構成され、加水分解処理後の有機系廃棄物701に対して熱分解ガス化処理を実行してバイオガス(有機系ガス)としての熱分解ガス301(図2参照)を生成する。
【0021】
熱分解槽21は、図1に示すように、一例として略円筒状に形成されて、加水分解処理後の有機系廃棄物701を収容可能に構成されている。また、熱分解槽21の一方の側部には、処理槽11の開口部11cから搬送機構104によって搬送される加水分解処理後の有機系廃棄物701を熱分解槽21内に収容させるための開口部21aが設けられている。また、熱分解槽21の上部には、熱分解ガス化処理によって生成した熱分解ガス301(図2参照)を送り出すための開口部21bが設けられている。さらに、熱分解槽21の他方の側部には、水蒸気生成装置6の加熱機62によって生成される常圧過熱水蒸気201b(同図参照)を熱分解槽21内に送り込むための開口部21cが設けられている。
【0022】
発熱反応装置3は、図1,2に示すように、反応炉31および圧縮機32,33を備えて構成され、熱分解装置2によって生成される熱分解ガス301と、水酸素ガス生成装置4によって生成される後述する水酸素ガス302と、太陽熱温水装置5によって生成される温水303とを用いて高温高圧蒸気401を生成する。
【0023】
反応炉31は、図1,3に示すように、一例として略円筒状に形成されている。また、反応炉31の上部には、図3に示すように、熱分解装置2における熱分解槽21の開口部21bから配管103cを通って送り出され、圧縮機32によって加圧された熱分解ガス301を反応炉31内に噴射(送入)するための開口部31aが設けられている。また、同図に示すように、反応炉31の一方(同図における左側)の側部には、水酸素ガス生成装置4によって生成されて配管103eを通って送り出される水酸素ガス302を反応炉31内に送り込むための開口部31bが設けられている。
【0024】
さらに、反応炉31の下部には、図3に示すように、温水タンク5aから配管103dを通って供給され、圧縮機33(図1,2参照)によって加圧された温水303を反応炉31内に噴射(送入)するための開口部31cが設けられている。また、図3に示すように、反応炉31の他方(同図における右側)の側部には、反応炉31内において生じる発熱反応(燃焼)によって生成される高温高圧蒸気401をダクト31eを通して発電装置7に送り出すための開口部31dが形成されている。
【0025】
水酸素ガス生成装置4は、水酸素ガス302(別名として、ブラウンガス、原子水素ガス、HHOガス、ZETガス、CPガス、E&Eガス、アクアガス等)を生成する。水酸素ガス生成装置4によって生成された水酸素ガス302は、発熱反応装置3の反応炉31と水酸素ガス生成装置4との間に配設された配管103e(図1,3参照)を通って開口部31bから反応炉31内の反応領域31fに送り込まれる。なお、この水酸素ガス302は、原子状態(非分子状態)の水素と原子状の酸素とを2:1の比率で混合した気体であって、水酸素ガス生成装置4は、一例として、配管103iを通って供給されて純水製造装置4a(図1参照)によって精製された水503を電気分解することによってこの水酸素ガス302を生成する。
【0026】
太陽熱温水装置5は、図1,2に示すように、水503を太陽熱を用いて加温し、80℃程度の程度の温水303を生成する。また、太陽熱温水装置5は、配管103fを通って熱交換器8から供給される温水502を、水503に代えて(または水503と共に)加温することが可能となっている。太陽熱温水装置5によって生成された温水303は、配管103gを通って送り出されて温水タンク5aに貯留された後に、発熱反応装置3の圧縮機33に供給される。
【0027】
水蒸気生成装置6は、図1に示すように、ボイラー61および加熱機62を備えて構成されている。ボイラー61は、100℃〜200℃の水蒸気201aを生成する。この場合、ボイラー61によって生成された水蒸気201aの一部は、処理槽11とボイラー61との間に配設された配管103aを通って開口部11bから処理槽11内に送り込まれて、加水分解処理に用いられる。また、ボイラー61は、図2に示すように、熱交換器8によって生成される温水502を熱源として用いている。また、ボイラー61は、重油を主燃料として用いると共に、熱分解装置2によって実行される熱分解ガス化処理によって僅かに生じる有機系廃棄物701の残渣(熱分解ガス化処理によって分解しきれなかった有機物)702を補助燃料として用いることが可能に構成されている。
【0028】
加熱機62は、ボイラー61によって生成された水蒸気201aの一部を加熱することにより、400℃〜600℃の常圧過熱水蒸気201b(過熱水蒸気の一例)を生成する。この場合、図2に示すように、加熱機62によって生成された常圧過熱水蒸気201bは、熱分解槽21と加熱機62との間に配設された配管103b(図1参照)を通って開口部21cから熱分解槽21内に送り込まれて熱分解ガス化処理に用いられる。
【0029】
発電装置7は、発熱反応装置3から送り出される高温高圧蒸気401によって回転するタービンとタービンの回転力によって発電を行う発電機(いずれも図示せず)を備えて構成されている。この場合、発電装置7によって発電された電力601は、発電システム100の各装置および設備にも供給される。
【0030】
熱交換器8は、図1,2に示すように、発電装置7から排出されて配管103hを通って送り込まれる排蒸気501の一部を用いて熱交換を行い、水503を加温して温水502を生成する。なお、発電装置7から排出される排蒸気501の他の一部は、発電システム100の外部に送り出されて、二次発電に用いられる。分離装置9は、熱交換器8によって熱交換が行われた後の排蒸気501から水素および二酸化炭素を分離する。水素回収装置10は、分離装置9によって分離された水素を回収する。
【0031】
次に、発電システム100によるバイオガス発電方法について、発電システム100の各構成要素によって実行される処理の内容を中心に図面を参照して説明する。
【0032】
図1に示すように、家庭ごみを主体とする有機系廃棄物701は、トラック等の輸送手段によって発電システム100が設置されている施設に搬入されて、搬入ピット101に投入されて、搬入ピット101内に一時的に貯留される。この場合、家庭ごみを主体とする有機系廃棄物701は、未処理の状態(処理槽11内に収容された状態)において60重量%程度の水分を含んでいる。
【0033】
搬入ピット101に貯留された有機系廃棄物701は、図1,2に示すように、コンベヤ102によって加水分解処理装置1の処理槽11の上部に設けられている開口部11aに搬送され、開口部11aから処理槽11内に収容される。発電システム100の運転中において、コンベヤ102は、処理槽11に対する単位時間当たりの搬送量が予め決められた一定の重量となるように、有機系廃棄物701を連続的または断続的に搬送する。これにより、処理槽11には、単位時間当たりに一定重量の有機系廃棄物701が収容される。
【0034】
一方、運転中の発電システム100では、図2に示すように、水蒸気生成装置6のボイラー61が、100℃〜200℃の水蒸気101を生成し、水蒸気生成装置6の加熱機62が、ボイラー61によって生成された水蒸気101を加熱することにより、400℃〜600℃の常圧過熱水蒸気201bを生成する。また、水酸素ガス生成装置4が、水酸素ガス302を生成し、太陽熱温水装置5が温水303を生成する。
【0035】
ボイラー61によって生成された水蒸気201aは、配管103aを通って開口部11bから加水分解処理装置1の処理槽11内に送り込まれ、処理槽11内の温度を上昇させる。この場合、処理槽11内の温度が150℃以上200℃以下の範囲内(好ましくは190℃程度)に維持されるように水蒸気201aの温度および送り込み量を調整する。
【0036】
水蒸気201aが送り込まれた処理槽11内では、水蒸気201aと有機系廃棄物701との水熱反応によって有機系廃棄物701を乾燥させつつ分解する加水分解処理(水熱処理)が開始される。この加水分解処理が継続されることにより、有機系廃棄物701の分解に伴って含水率が徐々に低下する。この場合、有機系廃棄物701を処理槽11内に30分程度滞留させて、加水分解処理を30分程度継続させることで、60重量%程度の含水率を有していた有機系廃棄物701が、20重量%程度にまで含水率が低下した状態に分解される。
【0037】
この発電システム100では、上記したように、熱分解ガス化処理の前処理として加水分解処理を実行することで、含水率が60重量%程度の有機系廃棄物701を含水率が20重量%程度の状態に分解することが可能となっている。このため、自然乾燥だけを前処理として行う構成および方法と比較して、その後の熱分解ガス化処理を効率的に行うことが可能となっている。
【0038】
加水分解処理装置1による加水分解処理で分解された有機系廃棄物701は、図1,2に示すように、搬送機構104によって熱分解装置2の熱分解槽21に搬送され、開口部21aから熱分解装置2の熱分解槽21内に収容される。また、加熱機62によって生成された常圧過熱水蒸気201bが、配管103bを通って開口部21cから熱分解槽21内に送り込まれ、熱分解槽21内の温度を上昇させる。この場合、熱分解槽21内の圧力が1気圧以上3気圧以下の範囲内で、かつ熱分解槽21内の温度が400℃以上600℃以下の範囲内に維持されるように常圧過熱水蒸気201bの温度および送り込み量を調整する。
【0039】
また、常圧過熱水蒸気201bの送り込みに伴って空気が排出されて、熱分解槽21内が低酸素状態(または無酸素状態)に維持される。この雰囲気下において、熱分解槽21内では、有機系廃棄物701が熱分解されて熱分解ガス301が生成される熱分解ガス化処理が行われる。この発電システム100では、熱分解槽21内の圧力を1気圧以上3気圧以下の比較的低い範囲内に維持し、かつ熱分解槽21内の温度を400℃以上600℃以下の比較的低い温度範囲内に維持した状態で熱分解ガス化処理が行われるため、高い耐熱性や高い耐圧性を有する熱分解槽を用いることなく、比較的簡易な構成の熱分解槽21を用いて有機系廃棄物701を熱分解することが可能となっている。また、この発電システム100では、低酸素状態(または無酸素状態)の熱分解槽21内において熱分解ガス化処理が行われるため、ダイオキシン等の環境影響物質の発生が抑制される。
【0040】
この熱分解ガス化処理により、加水分解処理後の有機系廃棄物701のうちの70重量%程度がガス化され、30重量%程度が残渣702として残留する。ここで、搬入時(加水分解処理前)の有機系廃棄物701は、60重量%程度の水分を含んでいる。つまり、100重量部の搬入時の有機系廃棄物701は、60重量部の水分と40重量部の固形分で構成されている。一方、加水分解処理後の有機系廃棄物701は、20重量%程度の水分を含んでいる。つまり、100重量部の搬入時の有機系廃棄物701のうちの50重量部程度の水分が加水分解処理によって除去され、これにより、20重量%程度の水分を含んだ50重量部程度の加水分解処理後の有機系廃棄物701が生成される。そして、この50重量部程度の加水分解処理後の有機系廃棄物701のうちの30重量%程度に相当する15重量部程度が残渣702として残留する。したがって、100重量部の搬入時の有機系廃棄物701のうちの15重量部程度、すなわち、搬入時の有機系廃棄物701のうちの15重量%程度が残渣702として残留し、85重量%程度がガス化されることとなる。このように、この発電システム100では、有機系廃棄物701の大部分を熱分解ガス301にガス化して発電用のエネルギーとして用いることができる。そして、有機系廃棄物701の大部分をガス化することができる分、残渣702の発生を十分に少なく抑えることが可能となっている。
【0041】
一方、残渣702は主として有機物で構成されているため、エネルギー源として利用することができる。この発電システム100では、この残渣702をエネルギー源として利用するため、熱分解槽21から定期的に取り出してボイラー61に搬送し、ボイラー61は、残渣702を補助燃料として用いて水蒸気201aを生成する。このように、この発電システム100では、残渣702を廃棄物として排出することなく、発電システム100内において消費することで、資源の有効利用が図られている。また、残渣702を廃棄物として埋め立てなどの方法によって処分する必要がないため、環境保護に資することが可能となっている。
【0042】
一方、図3に示すように、熱分解ガス化処理によって生成された熱分解ガス301は、熱分解槽21の開口部21bから送り出され、配管103cを通って発熱反応装置3の圧縮機32に送り込まれる。また、圧縮機32に送り込まれた熱分解ガス301は、圧縮機32によって加圧されて、開口部31aから反応炉31内に噴射される。この場合、反応炉31内に送り込まれた熱分解ガス301は、開口部31a付近において、400℃の温度となっている。
【0043】
また、太陽熱温水装置5によって生成された温水303は、圧縮機33に送り込まれ、図3に示すように、圧縮機33によって加圧されて開口部31cから反応炉31内に霧状に噴射される。この状態において、水酸素ガス生成装置4によって生成されて配管103eを通って開口部31bから反応炉31内に送り込まれる水酸素ガス302に着火する。この際に、反応炉31内に噴射された熱分解ガス301が水酸素ガス302と共に燃焼(発熱反応の一例)し、燃焼に伴う熱によって霧状に噴射された温水303が熱せられて高温高圧蒸気401が生成される。
【0044】
また、反応炉31内で生成された高温高圧蒸気401は、図3に示すように、開口部31dから送り出され、ダクト31eを通って発電装置7に送り込まれる。この際に、発電装置7では、送り込まれた高温高圧蒸気401によってタービンが回転し、このタービンの回転力によって発電機が発電を行う。発電機によって発電された電力601は、発電システム100の外部に送電されると共に、その一部は、発電システム100の各装置および設備に供給される。
【0045】
一方、タービンを回転させることによってエンタルピが低下した高温高圧蒸気401は、図1,2に示すように、発電装置7から排蒸気501として排出されて配管103hを通って熱交換器8に送り込まれる。熱交換器8は、送り込まれた排蒸気501を用いて熱交換を行い、配管103iを通って供給される水503を加温して温水502を生成する。熱交換器8によって生成された温水502は、配管103fを通って太陽熱温水装置5に供給される。
【0046】
また、熱交換器8による熱交換によってエンタルピがさらに低下した排蒸気501は、図1,2に示すように、配管103jを通って分離装置9に送り込まれる。分離装置9は、送り込まれた排蒸気501から水素および二酸化炭素を分離する。この場合、分離された水素は、水素回収装置10によって回収される。
【0047】
以上により、有機系廃棄物701の搬入から有機系廃棄物701のガス化に至る1サイクル分の各処理および各工程が終了する。以後、各装置が各処理および各工程をそれぞれ連続して実行することにより、有機系廃棄物701のガス化が連続して行われる。
【0048】
このように、この発電システム100およびバイオガス発電方法によれば、有機系廃棄物701を収容した熱分解槽21に対して常圧過熱水蒸気201bを送り込んで熱分解槽21内を低酸素状態または無酸素状態に維持して熱分解ガス301を生成する熱分解ガス化処理を実行し、生成した熱分解ガス301を用いて発電用の高温高圧蒸気401を生成することにより、有機系廃棄物701の大部分を発電用の熱分解ガス301にガス化することができる。このため、有機系廃棄物701の大部分がガス化される分、熱分解ガス化処理において生じる残渣を確実に減少させることができる。したがって、この発電システム100およびバイオガス発電方法によれば、従来の発電システムが有していた残渣の処分に関する課題を確実に改善することができる。
【0049】
また、この発電システム100およびバイオガス発電方法によれば、有機系廃棄物701を収容した処理槽11に対して水蒸気201aを送り込んで有機系廃棄物701を乾燥させつつ分解する加水分解処理を熱分解ガス化処理の以前に実行することにより、有機系廃棄物701の含水率を60重量%程度から20重量%程度まで低減させつつ、熱分解ガス化処理が効率的に行われる状態に有機系廃棄物701を分解することができる。このため、この発電システム100およびバイオガス発電方法によれば、有機系廃棄物701に対して加水分解処理を行うことなく、熱分解ガス化処理を直接行う構成および方法と比較して、熱分解ガス化処理の効率を十分に高めることができる。
【0050】
また、この発電システム100およびバイオガス発電方法によれば、熱分解ガス化処理の際に生じる残渣702を水蒸気201aを生成する際の燃料として用いることにより、残渣702を廃棄物として排出することなく、発電システム100内において消費することができるため、資源の有効利用をさらに推進することができる。また、残渣702を廃棄物として埋め立てなどの方法によって処分する必要がないため、環境保護に資することができる。
【0051】
なお、バイオガス発電システムの構成、およびバイオガス発電方法は上記した構成および方法に限定されず、適宜変更することができる。例えば、家庭ごみを主体とする有機系廃棄物701から生成したバイオガスとしての熱分解ガス301を用いて発電を行う構成および方法について説明したが、有機系である限り、家庭ごみ以外の事業所系のごみなどの廃棄物から生成したバイオガスを用いる構成および方法を採用することができる。
【0052】
また、加水分解処理装置1による加水分解処理、および熱分解装置2による熱分解ガス化処理を連続して行う構成および方法について説明したが、これらの処理を非連続で行う(これらの処理をバッチ方式で行う)構成および方法を採用することもできる。この場合、熱分解装置2によって生成される熱分解ガス301を貯留タンクに貯留し、その貯留タンクから熱分解ガス301を発熱反応装置3に定量ずつ供給することで、発熱反応装置3による熱反応を安定的に行わせることができる。
【0053】
また、上記の構成および方法では、ボイラー61が、熱分解ガス化処理の際に生じる残渣702を補助燃料として用いて水蒸気201aを生成しているが、残渣702を主燃料として用いて水蒸気201aを生成する構成および方法や、残渣702だけで水蒸気201aを生成する構成および方法を採用することもできる。また、残渣702を燃料として用いない構成も採用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 加水分解処理装置
2 熱分解装置
3 発熱反応装置
6 水蒸気生成装置
7 発電装置
11 処理槽
21 熱分解槽
31 反応炉
61 ボイラー
62 加熱機
100 バイオガス発電システム
201a 水蒸気
201b 常圧過熱水蒸気
301 熱分解ガス
302 水酸素ガス
401 高温高圧蒸気
701 有機系廃棄物
702 残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系廃棄物から生成したバイオガスと水素および酸素の混合気体である水酸素ガスと水とを反応炉内に送入して発熱反応させて高温高圧蒸気を発生させる発熱反応装置と、前記高温高圧蒸気を用いて発電を行う発電装置とを備えたバイオガス発電システムであって、
前記有機系廃棄物を収容した熱分解槽に対して水蒸気を送り込んで当該熱分解槽内を低酸素状態または無酸素状態に維持して前記バイオガスとしての熱分解ガスを生成する熱分解ガス化処理を実行する熱分解装置を備え、
前記発熱反応装置は、前記熱分解ガスを用いて前記高温高圧蒸気を発生させるバイオガス発電システム。
【請求項2】
前記有機系廃棄物を収容した処理槽に対して水蒸気を送り込んで当該有機系廃棄物を乾燥させつつ分解する加水分解処理を実行する加水分解処理装置を備え、
前記熱分解装置は、前記加水分解処理後の有機系廃棄物に対して前記熱分解ガス化処理を実行する請求項1記載のバイオガス発電システム。
【請求項3】
前記水蒸気を生成する水蒸気生成装置を備え、
前記水蒸気生成装置は、前記熱分解ガス化処理の際に生じる前記有機系廃棄物の残渣を前記水蒸気を生成する際の燃料として用いる請求項1または2記載のバイオガス発電システム。
【請求項4】
有機系廃棄物から生成したバイオガスと水素および酸素の混合気体である水酸素ガスと水とを反応炉内に送入して発熱反応させて高温高圧蒸気を発生させ、前記高温高圧蒸気を用いて発電装置によって発電を行うバイオガス発電方法であって、
前記有機系廃棄物を収容した熱分解槽に対して水蒸気を送り込んで当該熱分解槽内を低酸素状態または無酸素状態に維持して前記バイオガスとしての熱分解ガスを生成する熱分解ガス化処理を実行し、
前記熱分解ガスを用いて前記高温高圧蒸気を発生させるバイオガス発電方法。
【請求項5】
前記有機系廃棄物を収容した処理槽に対して水蒸気を送り込んで当該有機系廃棄物を乾燥させつつ分解する加水分解処理を実行し、
前記加水分解処理後の有機系廃棄物に対して前記熱分解ガス化処理を実行する請求項4記載のバイオガス発電方法。
【請求項6】
前記熱分解ガス化処理の際に生じる前記有機系廃棄物の残渣を前記水蒸気を生成する際の燃料として用いる請求項4または5記載のバイオガス発電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122655(P2012−122655A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273120(P2010−273120)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(507333443)株式会社アイ・ネットコーポレーション (3)
【Fターム(参考)】