説明

バイオコークス製造装置及び方法

【課題】真のカーボンニュートラルに近いバイオコークスの製造を可能にするため、設備費と製造のランニングコストを抑え、反応容器へのバイオマス原料の充填性を高めたバイオコークス製造装置及び方法を提供する。
【解決手段】バイオマス原料14を加圧する動力機構として加圧センサーを備えた電動油圧シリンダー1を利用し、バイオマス原料14を充填した反応容器2の中心軸と加圧ヘッド3の動作軸が水平方向に対し傾斜させ、加熱機構としてシースヒーター6を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたバイオコークスの製造技術に関し、特にバイオコークスを製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題、化石燃料枯渇の観点からカーボンニュートラルでかつ再生可能な資源としてのバイオマスの利用が注目されている。それらの中で、高炉やキューポラで使用されている石炭コークスの代替を目的としたバイオコークスの製造技術についても研究されている。非特許文献1(近畿大学の2010年4月27日付プレスリリース)には、自動車エンジン部品を製造するキューポラでの実証試験では石炭コークスの11.4%を代替できることが報告されている。また、特許文献1には、見かけ比重が1.2〜1.38、圧縮強度が60〜200MPa、発熱量が18〜23MJ/kgの特性のバイオコークスが開示され、それらのバイオコークスを工業的に大量生産することを目的に、特許文献2〜11に開示されているような製造装置、製造方法の開発が行われてきている。
【0003】
バイオコークスは、前述したようにカーボンニュートラルな資源として注目されているが、バイオマス原料からバイオコークスに変換するためには、多少なりともエネルギーを投入しなければならない。原料に水分が多ければ乾燥させなければならないし、大きなものであれば数mmサイズに粉砕しなければならない。またバイオコークスに変換するためには、加熱し、加圧して、反応させなければならない。そのための設備も必要である。したがって、真のカーボンニュートラルに近づけるためには、バイオコークス製造設備をできるだけ安価なものとし、且つ製造のランニングコストもできるだけ抑えなければならない。もちろん、石炭コークスに対する価格競争力もなければ事業としては成立しない。
【0004】
しかしながら、特許文献2〜11に開示されているバイオコークス製造設備には、比較的大がかりな油圧機構や冷熱媒循環機構が備えられ、高額な設備費となるであろうことが予測される。さらに、シリンダーを垂直に配置した垂直シリンダー方式による装置は、バイオマス材料の反応容器への流入性(充填性)が悪いことや、設備全体の高さもかなり高くなって、既存の建物には収容できなくなり、設備の設置場所を自由に選べなくなるという問題も生じてくる。また、一旦設置すると設置場所の変更も難しい。
【0005】
また、これまでバイオコークスの製造が試みられたバイオマス原料としては、お茶がら、コーヒーかす、籾殻、稲藁、蕎麦殻、きのこ廃菌床、木屑、鋸屑、樹皮、リンゴの皮、バナナの皮、焼酎かす、おからなど、主に植物由来廃棄物の原料があげられるが、過剰な水分を除去すれば、見かけ(嵩)比重は自然充填状態で0.1〜0.2程度である。これらを見かけ比重1.2〜1.38程度の所定のサイズのバイオコークスに変換するには、加熱し、加圧して、反応させる前の段階でいかに充填密度を高めることができるかが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4088933号公報
【特許文献2】特開2008−274107号公報
【特許文献3】特開2008−274108号公報
【特許文献4】特開2008−274110号公報
【特許文献5】特開2008−274111号公報
【特許文献6】特開2008−274112号公報
【特許文献7】特開2008−274113号公報
【特許文献8】特開2008−274114号公報
【特許文献9】特開2010−100807号公報
【特許文献10】特開2010−100810号公報
【特許文献11】特開2010−100811号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】http://www.kindai.ac.jp/news_event/2010/04/post-163.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、設備費をできるだけ抑え、且つ製造のランニングコストもできるだけ抑え、真のカーボンニュートラルに近いバイオコークスの製造を可能にするとともに、バイオマス原料の反応容器への充填性を高めることができるバイオコークス製造装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者達は、鋭意研究の結果、バイオマス原料を加圧する動力機構として電動油圧シリンダーを利用し、また、バイオマス原料を充填し、加圧・反応させる反応容器を水平方向に対し傾斜させることによって、バイオマス原料の反応容器への充填性を高めるとともに設備全体の高さを低く抑え、さらに、シースヒーターを利用した加熱機構により、比較的安価なバイオコークス製造設備、及び製造にかかるランニングコストの低い製造方法に想到した。
【0010】
すなわち本発明のバイオコークス製造装置は、バイオマス原料が充填される反応容器と、前記反応容器内のバイオマス原料を加圧する加圧ヘッドを備えたバイオコークス製造装置において、電動油圧シリンダーにより前記加圧ヘッドを動作することを特徴とする。
【0011】
バイオマス原料を加圧する圧力を直接測定するため、前記電動油圧シリンダーは、圧力センサーを備えていることが好ましい。
【0012】
さらに、バイオマス原料を反応容器内に均一で高密度に充填して充填密度を高めるとともに、設備全体の高さを抑えるため、前記反応容器の中心軸と前記加圧ヘッドの動作軸が、水平方向に対し30〜75°の範囲の角度に傾斜していることが好ましい。
【0013】
さらに、前記反応容器が二重管構造を有し、バイオマス原料が充填される内管の外周面にバイオマス原料を加熱するためのシースヒーターが配置され、内管と外管との間にバイオコークスを冷却するための冷媒が通流する冷媒通路が設けられていることが好ましい。また、前記反応容器の底面Aを構成する底蓋の背面にもバイオマス原料を加熱するためのシースヒーターが配置されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明のバイオコークス製造方法は、バイオマス原料を反応容器に充填する充填工程と、前記反応容器内で加熱しながら加圧ヘッドを介してバイオマス原料を加圧成形し、後に冷却する反応工程を備えたバイオコークス製造方法において、前記反応容器の中心軸及び前記加圧ヘッドの動作軸と水平方向との角度を30〜75°の範囲とし、バイオマス原料の投入と、前記加圧ヘッドの前記反応容器への挿入、加圧とを、繰り返すことによって、バイオマス原料を充填することを特徴とする。
【0015】
前記反応工程において、前記反応容器の加熱速度は、少なくとも80℃から所定の反応温度までは、5〜20℃/分であることが好ましい。また、バイオマス原料の加圧条件としては、5〜10MPaの圧力と15〜25MPaの圧力を交互に加えることが好ましく、より具体的には、5〜10MPaの圧力を加えておき、1〜10分毎に1〜10秒間の間、15〜25MPaの圧力を加えることが好ましい。さらに、前記バイオマス原料が、水分量10質量%程度である籾殻、蕎麦殻、鋸屑から選択された少なくとも1種以上であれば、原料の乾燥工程や粉砕工程を必要としないので、なお好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバイオコークス製造装置は、バイオマス原料を加圧する動力源として電動油圧シリンダーを利用するため、いわゆる油圧ユニットを含む油圧機器を必要としない。よって、設備費の大幅低減が可能となる。そして、電動油圧シリンダーは、必要な時だけ電動モータ及び油圧ポンプをまわし、設定圧力に到達すると電動モータの回転数を落として圧力を保持するため、省エネルギーが図れ、製造にかかるランニングコストを引き下げることができる。また、反応容器の中心軸と加圧ヘッドの動作軸が、水平方向に対し30〜75°の範囲の角度に傾斜しているため、バイオマス原料を反応容器内に均一で高密度に充填することができるとともに、設備全体の高さを低く抑えることが可能となり、設備を収容する建屋として特別大きな建屋を必要とすることなく、自由に設置場所を選ぶことができる。さらに、本願装置は、原料が多量に発生する場所や地域に搬送することが容易であり、例えば季節的に原料発生地域が変わるとき、装置を原料発生地域に簡単に移動させ、効率よくバイオコークスを生産することが可能となる。
【0017】
また、本発明のバイオコークス製造装置では、二重管構造の反応容器の内管がその外周面に配置されたシースヒーターにより直接加熱されるため、特許文献2〜11に開示されているような熱媒循環機構を必要としない。よって、設備費の大幅削減が可能となる。シースヒーターの発熱時は、シースヒーターの配置された二重管構造の内管と外管の間に、いわゆる空気断熱層が形成されるため、加熱の熱効率が向上し、加熱にかかるランニングコストを大幅に引き下げることができる。また、加熱終了後は、内管と外管の間に例えば水を循環させた水ジャケットとすることが簡便で効果的な冷却手段となり、特許文献2〜11に開示されているような冷媒循環機構を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のバイオコークス製造装置の概略図である。
【図2】本発明のバイオコークス製造装置における反応容器内管の外周面を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のバイオコークス製造装置は、図1に示すように、バイオマス原料14が充填される反応容器2と、前記反応容器内のバイオマス原料14を加圧する加圧ヘッド3を備えたバイオコークス製造装置において、電動油圧シリンダー1により前記加圧ヘッド3を動作することを特徴とする。電動油圧シリンダー1は、電動モータ、油圧ポンプ、貯油ポット、シリンダーを一体化した油圧式リニアアクチュエータであって、電動モータの回転力で油圧ポンプを駆動し、回転力に比例した圧油を吐出して油圧シリンダーを直線運動させることができ、制御弁を使用した油圧機器と比べると比較にならないほど高効率である。本発明はこの電動油圧シリンダーを使用しているため、油圧シリンダー、油圧ユニットを含む大がかりな油圧機器と比べると、設備費を大幅に低減することが可能となると同時に、消費電力の大幅な低減を図ることも可能となる。また、反応容器内のバイオマス原料14を加圧する圧力を直接測定するため、電動油圧シリンダー1は、圧力センサーを備えていることが好ましい。さらに、電動油圧シリンダー1のストロークは反応容器2の長さより長いことが必要であり、反応容器2の底面Aから反応容器2に対向する軸受9までの距離L’より長いことがより好ましい。
【0020】
前記反応容器2の中心軸と前記加圧ヘッド3の動作軸は、水平方向に対し30〜75°の範囲の角度に傾斜していることが好ましい。反応容器2と加圧ヘッド3と電動油圧シリンダー1は、直線上に直列に配置されるため、例えば、反応容器2の長さが1m程度であるとすると、反応容器2の下端から電動油圧シリンダー1の上端までの長さは4mを超える長さになり、これを垂直に組み合わせると、装置全体としては高さが5〜6m程になってしまう。本発明では、反応容器2の中心軸と加圧ヘッド3の動作軸を水平方向に対し30〜75°の範囲の角度に傾斜させることによって、装置全体の高さを低く抑えることができる。これにより、装置を設置する建屋の大きさによる制約がなくなり、設置場所を自由に選ぶことができる。また、架台に人が乗って操作するようなことも避けることができ、安全面でも好ましい。傾斜角度αは、各種各様のバイオマス原料を反応容器内に均一で高密度に充填できるようにバイオマス原料の安息角を考慮し、調節可能であることが好ましい。傾斜角度αを30°未満とすると、自然落下によるバイオマス原料14の反応容器2への投入では、原料の流出安息角との関係で、反応容器2内に充填できない部分(原料投入口側)が生じる場合があり、均一で高密度に充填する観点からは好ましくない。特に、好ましい傾斜角度αは45〜60°の範囲である。30〜75°の範囲の傾斜角度においても、原材料の状態によっては、自然落下のみによる反応容器への投入では充填が不十分となる場合もあり、その場合、スクリューコンベア等の強制充填装置と組合せてもよい。
【0021】
また、前記加圧ヘッド3は、外径D、長さLの円柱又は円筒状とし、前記長さLが前記反応容器2の底面Aから前記反応容器2に対向する軸受9までの距離L’よりも長くすることができる。これにより、加圧中、加圧ヘッド3の上をバイオマス原料14が覆ったとしても、ホッパ13内の部分だけに限られ、反応容器2と加圧ヘッド3の隙間に原料14が入ることがなく、加圧ヘッド3の反応容器2からの引き抜きが容易となる。もちろん、軸受9からバイオマス原料が流出することもない。また、反応の終了したバイオコークスを反応容器2の底部から確実に取り出すことが可能となる。更に、加圧ヘッドが長いことにより、電動油圧シリンダー1のロッド部がバイオマス原料に接触しないため、バイオマス原料のロッド部への付着又は固着により電動油圧シリンダー1のダストシール等を損傷し、オイル洩れを誘発することもなく、装置の長期安定稼働には好ましい。加圧ヘッド2が軸受9及び反応容器2内を円滑に動作するため加圧ヘッド3には潤滑剤を塗布することが好ましい。加圧ヘッド3には、鉄鋼材料などを用いることができるが、潤滑材としても機能する炭素材料から形成することもできる。
【0022】
本発明のバイオコークス製造装置においては、反応容器2は二重管構造を有し、バイオマス原料14が充填される内管の外周面にバイオマス原料14を加熱するためのシースヒーター6が配置され、内管と外管の間のバイオコークスを冷却するための冷媒が通流する冷媒通路が設けられていることが好ましい。内管外周面に配置するシースヒーター6の位置を固定するためには、例えば図2に示すように、内管20の外周面に溝21を形成し、その溝部21にシースヒーター6を配置することがさらに好ましい。また、反応容器2の加熱にシースヒーター6が使用されているため、内管と外管の間は冷媒専用通路として使用でき、熱媒と冷媒の両方を使用する場合のような両媒体が混合してしまうようなことがなく、よって水が冷媒として便利に使用できる。さらに、前記反応容器の底面Aを構成する底蓋の背面に、バイオマス原料を加熱するためのシースヒーターが渦巻き状に配置され、その底蓋背面は断熱材によって被覆されることが好ましい。これにより反応容器底部近傍の温度も所定の温度に加熱され、均質なバイオコークスとすることができる。
【0023】
本発明のバイオコークス製造方法は、バイオマス原料14を反応容器2に充填する充填工程と、前記反応容器2内で加熱しながら加圧ヘッド3を介して加圧成形した後に冷却する反応工程を備えており、前記反応容器2の中心軸及び前記加圧ヘッド3の動作軸と水平方向との角度を30〜75°の範囲とし、バイオマス原料14の投入と、前記加圧ヘッド3の前記反応容器2への挿入、加圧とを繰り返すことによって、バイオマス原料14を充填することを特徴とする。これにより、反応容器2へのバイオマス原料14の充填量を増やすことができ、また、ほぼ所定の量のバイオマス原料14を、特に計量することなくホッパから直接反応容器2に充填することが可能となる。バイオマス原料14を少量ずつ投入、加圧を繰り返すことにより、充填密度も増加することが可能となり、また反応容器2の長さを比較的短く抑えることも可能となる。バイオマス原料の投入時に、ホッパや反応容器を振動させてもよく、また加圧ヘッドを反応容器へ挿入して加圧時に、加圧ヘッドを任意周波数でシリンダーの軸方向に脈動させる加圧を行ってもよい。
【0024】
バイオコークスの製造に適した原料としては、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンが含まれていることが要求される。また、原料の含水率も重要となる。一般に原料の含水率は10%前後必要といわれている。特許文献1では、バイオコークスが製造されるメカニズムとして、115〜230℃の温度条件において加熱を行うことにより、バイオマス原料の主成分であるリグニン、セルロース及びヘミセルロースのうち、ヘミセルロースが熱分解し、成形容器内部に発生する過熱水蒸気によりセルロース及びリグニンがその骨格を保持したまま低温で反応すると説明されている。これは、一般には、いわゆる加水分解反応であって、水のイオン積がヘミセルロースやセルロース等の分解に寄与していると考えられている。例えば、水のイオン積は、高温・高圧下で温度上昇に伴い上昇し、250℃付近では常温・常圧状態の水に比べて約1000倍に増加するといわれている。本発明の製造装置の反応容器内では、完全な密閉状態ではないため加圧熱水の状態を維持することは難しいが、少なくとも水のイオン積が反応に寄与していることは疑いのないことである。したがって、本発明の方法では、反応最高温度は、ヘミセルロースの分解の始まる140℃から高くても250℃の範囲に設定することが好ましい。なお、この加水分解反応は、反応容器の中で均一に進行することが好ましい。反応容器の内径が例えば100mmを超えるような大サイズの場合、反応容器を急速に加熱すると、反応容器内壁面に近い領域と中心部とで比較的大きな温度差が生じ、すなわち水のイオン積に大きな差が生じて反応が不均質となる場合がある。したがって、反応容器の反応工程における加熱速度は、少なくとも80℃から所定の反応温度までは、比較的ゆっくりと加熱すること、具体的には5〜20℃/分の加熱速度が好ましい。
【0025】
また、反応工程における加圧条件として、特許文献1では、8〜25MPaが開示されているが、5〜10MPaの範囲の圧力と15〜25MPaの範囲の圧力を交互に加えても、例えば、5〜10MPaの範囲の圧力を加えておき、さらに1〜10分毎に1〜10秒間の間、15〜25MPaの圧力を加えるというような(以下「インターバル加圧」という。)方式の加圧条件でも、所定の加水分解反応を起こすことができる。この場合、電動油圧シリンダーによる大幅な省エネルギーに加え、更なる省エネルギーにより製造にかかるランニングコストを低減することが可能となる。
【0026】
上記のセルロース、ヘミセルロース及びリグニンが含まれているバイオマス原料は、背景技術にかかる段落で説明したように多数存在するが、その多くは過剰の水分(30〜80質量%)を含んでいる。これらの過剰水分は、本発明のバイオコークス製造装置に供給する前に所定の水分量(10%前後)に乾燥させなければならないし、また形や大きさがバイオコークスの製造に適していなければ、適当なサイズ(数mm)まで粉砕しなければならない。しかし、バイオマス原料の中でも、籾殻、蕎麦殻、鋸屑等は、元々10%前後の水分量で乾燥させる必要もなく、サイズも数mmと粒状であり、直接本発明のバイオコークス製造装置に供給できる。よって、乾燥及び粉砕の費用を考えれば、バイオマス原料が籾殻、蕎麦殻、鋸屑から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0027】
以下、実施例により本発明の製造装置及び方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0028】
製造装置
(反応容器)
まず、125mm(内径)×150mm(外径)×770mm(長さ)の鋼製の内管、及び180mm(内径)×191mm(外径)×797mm(長さ)の鋼製の外管を準備し、内管外周面に深さ5.0mm幅4.9mmの螺旋状の溝を彫り、シースヒーター((株)八光電機製作所のサイカンヒーターSWD2200)及び温度制御用CA熱電対をロウ付けし、外管と組み合わせて反応容器を製作した。内管と外管の間に冷却水を通流させるための入口と出口のパイプ10、11、上下端部には装置として組みたてるための鋼製の上下部フランジ7、8を取り付けた。
【0029】
(電動油圧シリンダー)
電動油圧シリンダーは、バイオマス原料の加圧用と、反応容器の底面開閉用の二種類、すなわち、加圧用電動油圧シリンダーはシリンダー径125mm、ストローク1000mm、26トン仕様のもの(第一電気(株)製)、反応容器底面開閉用はシリンダー径50mm、ストローク200mm、1.6トン仕様のもの(第一電気(株)製)を調達した。
【0030】
(加圧ヘッド)
124mm(外径)×103mm(内径)×913mm(長さ)の鋼製加圧ヘッドを用意し、電動油圧シリンダーに取り付けられるように、また外径を反応容器内に挿入できるようなサイズに調整した。また、先端部に124mm(外径)×75mm(長さ)の炭素材料(新日本テクノカーボン製IGS844)を取り付けた加圧ヘッドも作製した。
【0031】
(組立)
反応容器2の底蓋12を支える下部フレーム4と電動油圧シリンダー1を取り付けるための上部フレーム5の間で所定の圧力が掛けられるように強度設計され、両フレーム4、5のほぼ中央部に加圧ヘッド3の軸受9とホッパ13とが設置された架台(図示しない)を用意した。ホッパ出口の幅、言い換えれば、フランジ7と軸受9の間の距離lは140mmとした。なお、反応容器2と加圧ヘッド3と電動油圧シリンダー1の軸は、水平方向に対して45°に傾斜させてある。また、図示しない冷却水通流用の水タンクとポンプを準備し、電動油圧シリンダー1による加圧ヘッド3の反応容器2への挿入、加圧を繰り返すバイオマス原料充填工程と、所定の圧力で加圧しながらバイオマス原料に合わせた加熱温度勾配で加熱し、反応させ、その後、冷却水を通流させて製造されたバイオコークスを冷却させる一連の反応工程のスケジュールを制御する制御システム(図示しない)も組み付けた。装置全体の高さは、架台部分を加えても3.0mであった。さらに、架台にはキャスターを付け、簡単に移動できる構造とした。
【0032】
実施例1
まず、上記製造装置のホッパに、バイオマス原料として使用するきのこ廃菌床を投入した。なお、このきのこ廃菌床の含水率は約60%であったため、10%程度まで乾燥した。また、3.5メッシュの篩を通して粉体状にした。次に、自然落下により反応容器内に入った原料を電動油圧シリンダーにより加圧ヘッドを駆動させ20MPaの圧力で10秒間加圧充填し、その後、加圧ヘッド先端を軸受近傍まで引き上げた。さらに原料が反応容器に追加的に自然充填された後、加圧ヘッドを駆動させ再度20MPaの圧力で10秒間加圧充填した。この、原料の自然落下による自然充填と、加圧ヘッドによる加圧充填と、加圧ヘッドの引き上げの動作を合計5回繰り返し、6回目の原料の加圧充填時にシースヒーターに通電し、反応容器を加熱した。加熱速度は室温から180℃まで10℃/分とした。180℃、20MPaで20分保持した後、シースヒーターへの通電を止め、冷却水の通水を開始した。合成されたバイオコークスが十分冷却された後、加圧を解除し、反応容器の底蓋を開き、バイオコークスを加圧ヘッドにより押圧して取り出した。
【0033】
取り出したバイオコークスは、外径125mm、長さが約520mmであった。比重は、重量を外径と長さから計算した体積で除することによって得たが、1.39であった。また、外径125mm×長さ200mmの円柱の端面を底面として圧縮試験を行った。圧縮強度は65MPaであった。さらに、得られたバイオコークスの発熱量について、島津製作所製燃研式自動ボンベ熱量計(CA-4AJ)を用いて測定した結果、18.8MJ/kgであった。
【0034】
実施例2
バイオマス原料として、実施例1のきのこ廃菌床を使用するかわりに、籾殻を使用した。籾殻の含水率は13.2%であったため、特に乾燥することなくそのまま使用した。また、加熱保持温度を230℃とする以外は、実施例1と同様にしてバイオコークスを製造した。得られたバイオコークスは、比重1.35、圧縮強度80MPa、発熱量17.9MJ/kgであった。
【0035】
実施例3
鋼製加圧ヘッドのかわりに、先端部に炭素材料を取り付けた加圧ヘッドを使用した以外は、実施例2と同様にしてバイオコークスを製造した。得られたバイオコークスは、比重1.35、圧縮強度77MPa、発熱量19.9MJ/kgであった。
【0036】
実施例4
バイオマス原料として、実施例1のきのこ廃菌床を使用するかわりに、実施例2で使用したのと同じ籾殻を使用し、反応容器の加熱速度を室温から200℃まで5℃/分とし、200℃で20分保持する以外は、実施例1と同様にしてバイオコークスを製造した。得られたバイオコークスは、比重1.42、圧縮強度85MPa、発熱量20.5MJ/kgであった。
【0037】
実施例5
反応工程において、実施例1の20MPaの圧力で30分間加圧するかわりに、7MPaの圧力を加えておき、加熱保持温度(200℃)においては2分毎に20MPaの圧力を3秒間加えるインターバル加圧を行い、冷却中は5分毎に20MPaの圧力を3秒加えるインターバル加圧を行った以外は、実施例4と同様にしてバイオコークスを製造した。得られたバイオコークスは、比重1.38、圧縮強度81MPa、発熱量18.3MJ/kgであった。
【0038】
実施例6
バイオマス原料として、実施例2の籾殻のかわりに、蕎麦殻を使用した。蕎麦殻の含水率は9.6%であったため、特に乾燥することなくそのまま使用した。また、その他の条件は実施例5と同様にしてバイオコークスを製造した。得られたバイオコークスは、比重1.33、圧縮強度74MPa、発熱量16.9MJ/kgであった。
【0039】
上記製造装置を用いた実施例1〜6は、少なくとも特許文献1に開示されたバイオコークスの特性値を満足していた。すなわち、大がかりな油圧機器や熱冷媒循環設備を必要とせず、初期設備投資額、製造にかかるランニングコストを大きく低減し、また、装置全体の高さも3.0m以内で設置場所を選ばず、操作性に優れた設備であることが確認できた。
【符号の説明】
【0040】
1 電動油圧シリンダー
2 反応容器
3 加圧ヘッド
4 下部フレーム
5 上部フレーム
6 シースヒーター
7 上部フランジ
8 下部フランジ
9 軸受
10 冷媒入口
11 冷媒出口
12 底蓋
13 ホッパ
14 バイオマス原料
20 反応容器内管
21 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス原料が充填される反応容器と、前記反応容器内のバイオマス原料を加圧する加圧ヘッドを備えたバイオコークス製造装置において、電動油圧シリンダーにより前記加圧ヘッドを動作することを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記電動油圧シリンダーが圧力センサーを備えていることを特徴とする請求項1に記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
前記反応容器の中心軸と前記加圧ヘッドの動作軸が、水平方向に対し30〜75°の範囲の角度に傾斜していること特徴とする請求項1又は2に記載のバイオコークス製造装置。
【請求項4】
前記反応容器が二重管構造を有し、バイオマス原料が充填される内管の外周面にバイオマス原料を加熱するためのシースヒーターが配置され、内管と外管の間にバイオコークスを冷却するための冷媒が通流する冷媒通路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のバイオコークス製造装置。
【請求項5】
前記反応容器の底面Aを構成する底蓋の背面に、バイオマス原料を加熱するためのシースヒーターが配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のバイオコークス製造装置。
【請求項6】
バイオマス原料を反応容器に充填する充填工程と、前記反応容器内で加熱しながら加圧ヘッドを介して加圧成形し、後に冷却する反応工程を備えたバイオコークス製造方法において、前記反応容器の中心軸及び前記加圧ヘッドの動作軸と水平方向の角度を30〜75°の範囲とし、バイオマス原料の投入と、前記加圧ヘッドの前記反応容器への挿入、加圧とを繰り返すことによって、バイオマス原料を充填することを特徴とするバイオコークス製造方法。
【請求項7】
前記反応工程において、前記反応容器の加熱速度が少なくとも80℃から所定の反応温度までは5〜20℃/分であることを特徴とする請求項6に記載のバイオコークス製造方法。
【請求項8】
前記反応工程において、5〜10MPaの圧力と15〜25MPaの圧力を交互に加えることを特徴とする請求項6又は7に記載のバイオコークス製造方法。
【請求項9】
前記反応工程において、5〜10MPaの圧力を加えておき、1〜10分毎に1〜10秒間の間、15〜25MPaの圧力を加えることを特徴とする請求項8に記載のバイオコークス製造方法。
【請求項10】
前記バイオマス原料が籾殻、蕎麦殻、鋸屑から選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載のバイオコークス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−246414(P2012−246414A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120308(P2011−120308)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000139023)株式会社リケン (101)
【Fターム(参考)】