説明

バイオセンサ測定器及びセンサシステム

【課題】 コネクタから受ける技術的な制約や接触不良に基づく識別不良を回避するとともに、発光素子の発光量低下などに基づく測定エラーを防止した自動識別可能なバイオセンサ測定器を提供する。
【解決手段】 バイオセンサ測定器1は、バイオセンサ100に形成され光学的手段によって識別される識別マーク160の最大数と同数の発光素子31と、識別マーク160を通過又は透過した光を受光する受光部33と、当該受光部33と光ファイバーなどからなる導光路34によって光学的に接続された受光素子32と、バイオセンサ100の取り付け前に、前記発光素子31からの光を受光して、その発光量から発光素子31の発光量を調整する発光量調整部60を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオセンサ測定器及びセンサシステム、具体的にはバイオセンサの識別を自動で行う測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酵素反応や抗原抗体反応を利用して血糖値などの生体内物質の測定を可能にしたバイオセンサが開発されている。かかるバイオセンサは、例えば使用する酵素のロット違いや製造ラインの違い、検出用電極の形成状態の違いあるいは酵素の塗布状態の違いなどによってセンサ感度が異なり、全ての製造ロット間においてセンサ感度が同じであるとは限らない。このセンサ感度の相違を校正するために、例えば、製造者は製造ロットごとにセンサ感度の調整を行った後、製品パッケージ毎に測定器のセンサ感度を調整するための校正用センサを同梱したり、製造ロット毎に識別番号を付与したりすることが行われている。そして、使用者は予め校正用センサを用いて測定器の校正を行ったり、識別番号の入力によって予め測定器に記憶されている校正用データを選択して測定器の校正を行ったりした後に測定を行っている。しかしながら、いずれの方法でも測定者自らが校正しなければならず、測定者に校正する手間を与えるだけでなく、校正を忘れると正確な測定値が得られないと言う問題があった。また、複数の対象項目を測定する測定器であれば、校正用センサの取り違え等によって正しく校正されないという問題もあった。
【0003】
このような問題点を解決すべく、例えば、特開2001−311711号公報(特許文献1)には、バイオセンサの出力電極に校正用の情報を識別するためのスリットを設け、このスリットの設置パターンにより校正用データを自動認識する方法が開示されている。
【0004】
特開平10−332626号公報(特許文献2)には、バイオセンサを構成する出力電極が形成された基板上に、当該出力電極とは別に校正用の電極を設け、出力電極と校正用の電極との間で形成させた閉回路の形成パターンにより選択される校正用データを自動認識する方法が開示されている。
【0005】
国際公開公報WO2003/76918号公報(特許文献3)には、バイオセンサを構成する出力電極が形成された基板の先端部に突出部を設けたり、基板の裏面に凸部を設けたりしたバイオセンサが開示されている。ここでは、これらの突出部や凸部の形成位置をセンサ装着用のコネクタに形成したコンデンサの容量変化を利用して認識した上で、この形成位置から校正用データを自動認識させたり、出力電極が形成された基板に出力電極とは別の電極を設け、この電極の形成位置を当該電極とセンサ装着用のコネクタとの間に形成したコンデンサの容量変化を利用したりして自動認識させている。
【0006】
さらに、特許文献3には、別な方法としてバイオセンサを構成する出力電極が形成された基板の先端部に貫通孔を形成し、この貫通孔の形成位置を、貫通孔を通過した板バネ状の位置検出電極の導通状態を利用して認識する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−311711号公報
【特許文献2】特開平10−332626号公報
【特許文献3】国際公開公報WO2003/76918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電極にスリットを形成する方法では、スリットの形成に高度の技術が必要である。また、スリットの形成不良や電極の短絡を生じやすく、校正用データの識別不良を生じやすいということが考えられる。また、校正用の電極や容量変化のための突出部や凸部を形成する方法では、製造後に新しく電極や突出部を形成しなければならず、バイオセンサの製造工程が煩雑になるという問題がある。
【0009】
さらに、校正用の電極を形成する方法ではコネクタ内に出力電極と校正用電極との間で閉回路を形成する対電極(コネクタピン)を、容量変化のために突出部等を形成する方法では校正用電極に対応するコンデンサ形成用の対電極を、貫通孔に位置検出電極を通過させる方法では位置検出電極を、それぞれコネクタに設ける必要がある。
【0010】
ところで、コネクタにこのような検出手段を設けるには技術的な制約が多く、バイオセンサのコネクタ装着部に設けることのできる対電極等の数に制約がある。このため、準備される校正用データの数が限られ、種々のバイオセンサに対応できないおそれがあるといったことが考えられた。また、対電極を用いる方法や位置検出電極を用いる方法では、バイオセンサの使用回数の増加に伴い、電極間の接触不良を生じ、自動識別が正しく行えないという問題を生じやすい。
【0011】
そこで、本発明者等はこれらの問題点に鑑み、コネクタから受ける技術的な制約や接触不良に基づく識別不良を回避することを目的として、バイオセンサに1以上の貫通孔など光学的手段によって識別可能なマークからなる識別標識を設けることにし、バイオセンサ測定器内の発光素子からマークに向けて光を出射させ、受光した受光素子の位置から識別標識を判別することによって、校正用データの自動識別を行わせる手法を提案し、特許出願を行っている。
【0012】
ところが、長時間使用すると、電源電圧の低下や発光素子の故障や寿命などの理由によって発光量が低下したり全く発光しないことが予想される。そうすると、実際にはマークが存在しているにも存在していないと誤認して正しい校正用データが選択されず、その結果、誤った計測値を表示してしまうおそれがある。
【0013】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、測定開始前に、発光素子からの発光量を確認し、識別標識を正しく読み取るようにしたバイオセンサ測定器並びにバイオセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のバイオセンサ測定器は、光学的手段によりその存否を識別できるマークが付されたバイオセンサを用いて測定するバイオセンサ測定器であって、バイオセンサの識別に必要なマークの最大数の発光素子と当該発光素子からの光を受光する1乃至前記最大数の受光素子、又はバイオセンサの識別に必要なマークの最大数の受光素子と当該受光素子に対して光を出射する1乃至前記最大数の発光素子と、前記発光素子の発光量を検出して、当該発光素子の発光量を調整する発光量調整部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、電源電圧の低下や発光素子の寿命等によって生じる発光量の低下に起因する誤表示が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明のバイオセンサ測定器1を一部破断した概略断面図、図2は当該測定器1の構成を示すブロック図、図3は当該測定器1の動作を示すフロー図である。もっとも、以下に示された実施形態は例示であって、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲及びこれと均等に含まれるすべての変更が本発明に含まれることが意図される。
【0017】
測定器1は、筐体2内に、バイオセンサ100を装着しバイオセンサ100の出力を取り出すコネクタ10が実装された回路基板3を有する。この測定器1は、校正用データが格納された記憶部20と、バイオセンサ100に設けられた識別マーク160を検出する検出部30と、当該識別マーク160から構成される識別情報に基づいて必要な校正用データを照合する照合部40と、照合された校正用データを利用してバイオセンサ100の出力から検査値を演算する演算部50と、受光素子32から光を受光して、その受光量から発光素子31の発光量を調整する発光量調整部60及び発光量調整部60からのエラー表示や演算部50の結果を表示する表示部70を備える。
【0018】
検出部30はバイオセンサ100に設けられた識別マーク160を検出する検出手段を備えている。この検出手段は光学的手段からなり、発光ダイオードなどの発光素子31と、発光素子31から出射され識別マーク160を通過若しくは透過した光を受光するフォトダイオードなどの受光素子32を備える。
【0019】
発光量調整部60は、基準発光量を記憶する基準発光量記憶部61と、測定開始前に各受光素子32が受光した受光量と基準発光量記憶部61に記憶された基準発光量を比較する発光量比較部62と、受光素子32が受光した受光量が基準発光量となるように発光素子32の発光量を調整する発光量制御部63とを有する。
【0020】
図示した測定器1は、バイオセンサ100に設けられる識別マーク160の最大数、すなわち、バイオセンサ100が有する識別情報を識別するのに必要な識別マーク160の最大数と同数の発光素子31と1つの受光素子32を備える。この必要な発光素子31の数は、予め測定器1に準備される校正用データの数やその他バイオセンサ100の測定対象など必要な情報量などによって異なる。例えば、4つの識別マーク160からバイオセンサ100の識別情報が構成される場合には、4つの発光素子31が備えられる。
【0021】
各発光素子31は、測定器1の筐体2内に配置された回路基板3に、各識別マーク160の位置に対応して実装され、バイオセンサ100の下方から識別マーク160に向けて光を照射する。言い換えると、最大数の識別マーク160がバイオセンサ100に形成された場合に、発光素子31と識別マーク160が1対1の関係になるように発光素子31が実装される。検出部30は、各発光素子31を順次、一定の発光間隔Δtで発光させる。
【0022】
回路基板3には発光素子31の上方に受光面を下方に向けた受光部33が配置されている。また、回路基板3には1つの受光素子32が受光面を上に向けて発光素子31が実装された基板面と同一面上に実装されている。バイオセンサ100は受光素子32と受光部33の間に装着される。受光部33と受光素子32は光ファイバーなどからなる導光路34によって光学的に接続されている。導光路34の受光素子32側には、回路基板3に圧入固定された漏光防止用のカバー35が備えられ、受光部33で受光した光が確実に受光素子32で受光される。発光素子31から出射され識別マーク160を通過した光は、導光路34を介して受光素子32に受光され、電気信号に変換される。
【0023】
図4はこの測定器1において使用されるバイオセンサ100の一例を示す概略斜視図、図5は当該バイオセンサ100の分解斜視図である。なお、図5では接着剤層140は略されている。
【0024】
バイオセンサ100は、両図に示すように、絶縁性を有する板部材であるカバー120と基板110の間で試料空間130を形成するようにカバー120と基板110が接着剤層140で貼り合わせられた構造をしている。バイオセンサ100は、その先端に試料空間130に繋がる試料導入口101を有する。また、試料空間130の後端には、試料空間130とバイオセンサ100の外部とが繋がった通気孔141がその両側に延設されている。基板110には、試料空間130に臨ませて一対の電極111が形成されている。そして、試料導入口101と反対側の基板端部にあるコネクタ装着部150には、前記電極111と導体路113で電気的に接続された電圧取り出し用の端子(出力電極)112が露出形成されている。カバー120には、試料空間130に臨ませて試料(具体的には血液等の体液)と反応する試薬層121が設けられている。この試薬層121と一対の電極111とによってバイオセンサが構成されている。このようなバイオセンサ100としては、例えば国際公開公報WO2005/10591号公報に記載されたような板部材が折り曲げられて基板とカバーとが作製されたチップが例示される。もっとも、本発明の測定器1に用いられるバイオセンサ100は、図示されたものや国際公開公報WO2005/10591号公報に示された構造のバイオセンサ100に限定されるものではない。
【0025】
コネクタ装着部150以外の領域、例えば図示したものでは、導体路113を貫通する位置に貫通孔からなる識別マーク160が3つ設けられている。このバイオセンサ100の識別マーク160の最大数は4であり、破線で示された丸印は残る一つの識別マーク160の形成予定位置を示している。識別マーク160の形成位置は、測定結果に影響を与える位置、例えば試薬層121や試料空間130を貫く位置でなければ、図示したように一つの導体路113を貫通する位置でなくてもよく、2つの導体路113を跨ぐ位置であっても差し支えない。また、バイオセンサ100の強度上の観点からはカバー120と粘着剤層140、基板110の3層を貫く位置が好ましいが、コネクタ10に挿入した際に露出した基板110に識別マーク160を設けてもよい。そして、測定値への影響を少なくするためには、2つの導体路113の間などの非導体路形成領域に設けるのが望ましい。
【0026】
識別マーク160の存否が校正に必要な校正用データを自動認識させるための識別情報(ビットパターン)を構成する。つまり、識別マーク160の存否が2値で示される識別標識(ビットパターン)を構成し、この識別標識が校正に用いられる校正用データを決定する。言い換えると、貫通孔からなる識別マーク160では、貫通孔の形成された位置がビットパターンを示し、このビットパターンから必要とする校正用データが決定される。識別マーク160の位置や個数はバイオセンサ100の製造ロット毎によって異なり、識別マーク160は製造後の試用テストの後に型打ち抜きやドリル穿孔によって形成される。また、識別マーク160の最大数は、予め測定器1に準備される校正用データの数によって異なり、例えば、測定器1に準備される校正用データが3(=2−1)種類であれば最大2つの識別マーク160が形成され、15(=2−1)の校正用データが準備される場合であれば最大4つの識別マーク160が形成される。識別マーク160としての貫通孔の直径は用いる受光素子32の性能によっても異なるが、光が通過できる程度の大きさであればよく、その一例を挙げると1〜3mm程度である。
【0027】
バイオセンサ100が測定器1のコネクタ10に挿入され、測定の準備が完了すると、各発光素子31から発光間隔Δtで順次光が出射される。受光素子32が受光すると電気信号を生じるので、貫通孔(識別マーク160)が形成されているとONの信号として検出できる。従って、各発光素子31が発光するタイミングと受光素子32が受光するタイミングを対応させることによって識別マーク160の形成位置を検出できる。このとき、発光素子31が寿命等によりその発光量が低下すれば、受光素子32がONの信号として検出できず、識別マーク160の形成位置が検出できないことが考えられる。そこで、発光量調整部60は、バイオセンサ100が挿入される前に、各発光素子31の発光量を検出し、識別マーク160の有無を正しく判定できるように各発光素子31の発光量を調整する。
【0028】
つまり、測定器1の電源がONされると、バイオセンサ100が挿入されていない状態において、発光量制御部63は各発光素子31を発光させる。基準発光量記憶部61には、基準発光量として、識別マーク160の有無を正しく判定可能となる起電圧値(若しくは起電流値)が記憶されており、発光量比較部62はこの起電圧値(基準発光量)と、各発光素子31の発光により受光素子32が生じた起電圧(発光量)とを比較し、基準発光量よりも発光量が少なければ、発光量制御部63に対して発光素子31の発光量を増やすために発光素子31への印加電圧(若しくは印加電流)を増加させる。こうして、発光素子31の発光量が基準発光量以上となるように、発光量制御部63は発光素子31の発光量を調整する。そして、全ての発光素子31の発光量が基準発光量以上となるように調整されると、検出部30はバイオセンサ100の挿入を使用者に促し、測定を開始する。また、発光量比較部62は、発光量を検出できなかったり、一定値以上の不足があったりした場合には、発光素子31の故障又は電源電圧の不足があり、調整できないものとしてそのまま測定を中止する旨を表示部70に表示するようにしてもよい。
【0029】
図6はこの検出手段における識別情報の検出方法の一例を示す説明図である。そして、図6は直列に配置される最大4つの識別マーク160から識別情報が構成される場合を示し、図に示すバイオセンサ100では4つの識別マーク160のうち、例えば、位置A,位置B,位置Dにある3つの識別マーク160(実線の丸で示される)から識別情報が構成されている。なお、Cの位置には識別マーク160が形成されていないが、この位置には残る一つの識別マーク160(破線で示される)が必要に応じて形成される。そして、これらの各識別マーク160に対応して4つの発光素子A,B,C,Dが図6(b)に示すように回路基板3上に実装されている。
【0030】
今、位置Aの発光素子Aが発光すると、受光素子32が受光するので検出部30はONの電気信号を検出する。そうすると検出部30は位置Aに識別マーク160が形成されていることを認識する。次に、位置Bの発光素子Bが発光すると、受光素子32が受光するので検出部30は電気信号ONを検出する。そうすると検出部30は位置Bに識別マーク160が形成されていることを認識する。その次に、位置Cの発光素子Cが発光すると、位置Cには識別マーク160が形成されていないので、検出部30は電気信号ONを検出できない。そうすると検出部30は位置Cには識別マーク160が形成されていないと認識する。そして最後に位置Dの発光素子Dが発光すると、受光素子32が受光するので検出部30は電気信号ONを検出する。そうすると検出部30は位置Dに識別マーク160が形成されていることを認識する。この結果、検出部30は、Δtの時間間隔でON、ON、OFF、ONというビットパターンに対応した2値信号を検出し、この2値信号を照合部40に出力する。照合部40は記憶部20からこのビットパターンに対応した校正用データを取り出し、演算部50に出力する。そして、演算部50は取り出された校正用データとバイオセンサ100からの出力とによって、測定値を演算する。
【0031】
同様にして、図示はしないが、識別マーク160として貫通孔が位置Bと位置Dに形成されたバイオセンサ100では、上記と同様の考え方で、検出部30はOFF、ON、OFF、ONという2値信号を得て、この2値信号に対応した校正用データが用いられることになる。
【0032】
識別マーク160の位置も直列である必要はなく、例えば2×2などのマトリックス状に設けることもできる。このとき発光素子31は2×2のマトリックス状に配置される。なお、貫通孔160が全く存在しない場合は、検出部30はON信号を検出しないので、OFF、OFF、OFF、OFFのビットパターンに対応する校正データを用いるようにしてもよいし、校正を行うことなくそのまま測定値を算出してもよい。
【0033】
次に、測定器1の動作について図3のフロー図に従って説明すると、まず、測定器1のスイッチがオンされると(S1)、検出部30はバイオセンサ100が挿入されていないことを確認して(S2)、各発光素子31、例えば発光素子Aを発光させる(S3)。発光量比較部62は、発光素子31の発光量を検出して基準発光量と比較する(S4、S5)。そして、発光量が基準発光量よりも小さければ、発光量制御部63は発光素子Aの印加電圧を大きくして発光量を増やす(S6)。発光素子Aの発光量が基準発光量以上であれば、発光素子Aは発光が正常であると判断し、再びステップS3に戻って発光量が未確認である発光素子Bの発光量を調整する(S3〜S7)。こうして、発光量調整部60は発光素子A→発光素子B→発光素子C→発光素子Dと全ての発光素子31の発光量を調整し、全ての発光素子31の発光量が正常であることが確認されると、使用者にバイオセンサ100の装着を促す。その後、バイオセンサ100の取り付けが確認されると(S8)、上記したように検知部30は校正用データを識別する(S9)。そして、バイオセンサ100からの出力が測定されると、演算部50は識別された校正用データを用いて測定値を補正し(S10)、表示部70に表示する(S11)。また、ステップS4において、発光量比較部62が発光素子31の発光を検出しなかったり、発光量を調整した後にも一定値以下の発光量しか検出しなかった場合には、発光素子31が不良である旨や電源電圧が不足している旨を表示部70に表示して、測定値を表示することなく終了する。
【0034】
このように、測定器1は発光素子31と受光素子32とによってバイオセンサ100に付された識別マーク160を読み取ることができる。従って、バイオセンサ100と非接触の状態でバイオセンサ100の識別が可能となり、使用回数の増大による識別不良が防止される。
【0035】
また、コネクタ10以外の領域に発光素子31と受光素子32が設けられる。このために、コネクタ10による技術的な制約が少なくなる。しかも、識別マーク160を通過した光を受光する受光部33と受光素子32が導光路34で光学的に接続されているので、発光素子31と受光素子32が同一の基板面上に実装でき、製造工程の煩雑化が防止される。
【0036】
そして、測定器1は、バイオセンサ100の取り付け前に、発光素子31の発光量を検出して、当該発光素子の発光量を基準発光量以上に調整する発光量調整部を有しているので、発光量低下による校正用データの誤選択が防止され、誤った計測値の表示が防止される。
【0037】
上記の方法では、複数の発光素子31と1つの受光素子32を用いた場合について例示したが、各発光素子31に個々の受光素子32を1対1の関係となるように配置したり、アレイ状に受光素子が配置され受光した位置情報を検出できる受光アレイを配置したりすることもできる。この場合には、発光素子31を一定の時間間隔Δtで順次発光させる必要はなく、すべての発光素子31を同時に発光させることができる。しかしながら、この場合には、発光素子31同士が近接すると、識別マーク160の形成されていない位置に対応した受光素子32が光を受光して、識別情報を誤認するおそれがあるので、受光素子32がONとして検出されるオフセットを設定するなど、誤認識を避けるための防止手段を講ずるのがよい。また、発光素子31の発光波長とそれと対応する受光素子32の受光波長を互いに異ならせて誤認を防止することもできる。
【0038】
図7は本発明の別な実施形態であるバイオセンサ測定器1を一部破断した概略断面図である。この測定器1は1つの発光素子31と複数の受光素子32を有し、発光素子31の発光量を調整する図示しない発光量調整部60を備えている。受光素子32は、最大数の識別マーク160がセンサチップ100に形成された場合に、受光素子32と識別マーク160が1対1の関係になるように実装される。また、最大数の識別マーク160に向けて光を出射する一つの発光部36が設けられている。この発光部36は発光素子31と導光路34で光学的に接続されている。導光路34の発光素子31側には、回路基板3に圧入固定された漏光防止用のカバー35が備えられ、発光素子31から出射された光が確実に発光部36から出射される。こうして、発光素子31(発光部36)から出射された光は、識別マーク160を通過して受光素子32に受光され、電気信号に変換される。このような構成をした測定器1によって、バイオセンサ100に必要な校正用データを自動識別することもできる。また、この測定器1は発光量調整部60を備えているので、正しい校正用データが自動認識され、発光量不足に基づく測定値の誤表示が防止される。
【0039】
図8は本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサ測定器1を一部破断した概略断面図である。この測定器1の発光素子31と受光部33はコネクタ10内に備えられ、受光部33と回路基板3上の受光素子32が導光路34によって光学的に接続されている。
【0040】
図9はこの測定器1に用いられるバイオセンサ100の一例を示す斜視図である。このバイオセンサ100は、コネクタ装着部150に設けられた2つの端子112間にある標識形成領域151に識別マーク160を備える。識別マーク160は、光学特性の異なる2種類の識別マーク160によって、識別マーク160の存否が光学的手段によって検出される。例えば、図示されたバイオセンサ100は光透過性の識別マーク160aと光低透過性の識別マーク160bによる2種類の識別マーク160を備える。この場合に、(1)透過率が低い場合を「マーク有り」、透過率が高い場合を「マーク無し」と判断したり、(2)透過率が高い場合を「マーク有り」、透過率が低い場合を「マーク無し」と判断したりすることができ、透過性の違いによって両者が区別される。透過性の違いは、受光素子32が生じた起電圧によって区別できる。
【0041】
バイオセンサ100では光透過性の高い基板110が用いられることが多い。このために、例えば、インクやシール、金や銅、炭素などを含む導電性膜などの光透過性が低い物質、好ましくは光不透過性の物質の塗布等によって光透過性の低い識別マーク160bが形成される。すなわち、光低透過性の識別マーク160bはこのような光透過性の低いインクなどの塗布等により形成され、光透過性のマーク160aはこれらの塗布を行わないことにより形成される。従って、光が基板110を透過して光低透過性の識別マーク160bが存在しないと認識できれば、光透過性のマーク160aが形成されていると判断できる。このようにして形成された2種類の識別マーク160によって識別情報が構成され、光透過性のマーク161aと光低透過性のマーク161bの組み合わせから、検出部30はONとOFFで出力されるビットパターンを得る。
【0042】
図示したバイオセンサ100では、標識形成領域151に形成された光低透過性の膜152の必要な領域を剥離、孔開け、切削等の方法で除去することにより、光透過性の識別マーク160aが形成されている。そして、除去せずに光低透過性の膜152が残った領域が光低透過性の識別マーク160bとして認識される(図に破線の角枠で示される。)。特に、バイオセンサ100のコネクタ装着部150には導電性ペーストの塗布等により端子112が形成されるので、この端子112の形成と同時に光低透過性の膜152を形成できる。また、光透過性の識別マーク160はこの膜152の所定領域を除去して設けられるので、工程が煩雑にならずに済み、非常に好都合である。また、光の透過性を利用するので、膜152の形成精度や膜152の除去精度が多少悪くても差し支えない。
【0043】
もっとも、受光素子32もコネクタ10内に備えてよい。このように、本発明の測定器1は、コネクタ10内に識別マーク160の存否を検出する発光素子31及び受光素子32を備えることもできる。この測定器1は、バイオセンサ100と非接触の状態で識別情報を認識できるので、接触不良に伴う識別不良を回避できる。
【0044】
図10は本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサ測定器1を一部破断した概略断面図である。発光素子31と受光素子32は回路基板3の同一基板面上に配置されている。発光素子31はバイオセンサ100の裏面に形成された識別マーク160に向けて光を出射し、受光素子32は当該識別マーク160によって反射された光を受光する。
【0045】
図11はこの測定器1に用いられるバイオセンサ100の背面図である。このバイオセンサ100は、基板110背面に設けられた標識形成領域151に識別マーク160が形成されている。この識別マーク160は、3つの光反射性が高くなった光反射性の識別マーク160cとそれに比べて光反射性が低くなった1つの低光反射性の識別マーク160dからなる。この光反射性の識別マーク160cは、例えば、光反射性を有する物質の塗布やシールの貼付により形成できる。係る物質の塗布やシールの貼付なき領域は、光低反射性のマーク161dとして認識される(図の破線の角枠で示される。)。
【0046】
発光素子31から出射された光は光反射性の識別マーク160cにより反射して、受光素子32で受光され、電気信号に変換される。こうして、検出部30は受光素子32から出力された電気信号をビットパターンとして認識し、必要な校正用データを決定する。
【0047】
この測定器1においても、識別マーク160の最大数と同数の発光素子31と受光素子32を配置する、識別マーク160の最大数と同数の発光素子31と一つの受光素子32を配置し一定の時間間隔で順次発光素子31を発光させるようするなどの構成が採用される。そして、バイオセンサ100が取り出された後に、再び発光素子31を発光して、発光素子31の異常を検出させるようにしてもよい。
【0048】
また、図示はしないが、図9に示したバイオセンサ100のように、バイオセンサ100の背面に光反射性の膜からなる標識形成領域151を作製しておき、当該領域151の所定領域を削除することによって、低光反射性の識別マーク150bを形成してもよい。
【0049】
このように本発明の測定器1は、光反射性を利用して識別マーク160の存否を検出し、校正に必要なデータを識別することもできる。特に、バイオセンサ100のカバー120領域は、導体路113が存在するので透過性をほとんど望めないが、コネクタ装着部150に比べると広い領域である。従って、この領域に数多くの貫通孔からなる識別マーク160や光反射性の識別マーク160aを形成でき、より多くの校正用データなどに対応できる。
【0050】
また、発光素子31からの出射光を利用して識別マーク160の存否を検出するバイオセンサ測定器1であれば、上記したようにいかなる態様の測定器1においても発光量調整部60を備えることができ、発光素子31の発光不良や電源電圧の低下等に起因する誤表示が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のバイオセンサ測定器を一部破断した概略断面図である。
【図2】図1の測定器の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の測定器における動作を示すフロー図である。
【図4】図1の測定器に使用されるバイオセンサの一例を示す概略斜視図である。
【図5】図4のバイオセンサの分解斜視図である。
【図6】バイオセンサの識別マークの検出方法を示す説明図であって、(a)は識別マークの位置を示す図、(b)は発光素子の発光タイミングと受光素子の受光タイミングを示す図である。
【図7】本発明の別な実施形態であるバイオセンサ測定器を一部破断した概略断面図である。
【図8】本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサ測定器を一部破断した概略断面図である。
【図9】図8の測定器に使用されるバイオセンサの一例を示す概略斜視図である。
【図10】本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサ測定器を一部破断した概略断面図である。
【図11】同上の測定器に使用されるバイオセンサの一例を示す背面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 測定器
2 筐体
3 回路基板
10 コネクタ
30 検出部
31 発光素子
32 受光素子
40 照合部
50 演算部
60 発光量調整部
62 発光量比較部
63 発光量制御部
100 バイオセンサ
110 基板
112 端子
113 導体路
120 カバー
150 コネクタ装着部
160 識別マーク
160a 光透過性の識別マーク
160b 光低透過性の識別マーク
160c 光反射性の識別マーク
160d 光低反射性の識別マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的手段によりその存否を識別できるマークが付されたバイオセンサを用いて測定するバイオセンサ測定器であって、
バイオセンサの識別に必要なマークの最大数の発光素子と当該発光素子からの光を受光する1乃至前記最大数の受光素子、又はバイオセンサの識別に必要なマークの最大数の受光素子と当該受光素子に対して光を出射する1乃至前記最大数の発光素子と、
前記発光素子の発光量を検出して、当該発光素子の発光量を調整する発光量調整部を備えたことを特徴とするバイオセンサ測定器。
【請求項2】
前記発光素子と前記受光素子が一対複数又は複数対一の関係で配置されたことを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ測定器。
【請求項3】
同一面上に前記発光素子及び前記受光素子が実装された実装基板と、
前記マークを通過若しくは透過した光を受光可能に配置された受光部と、
前記受光部で受光した光を前記受光素子に導光する導光路を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオセンサ測定器。
【請求項4】
複数の前記発光素子からの光を受光する一つの前記受光部と、
一つの前記受光素子と、
一つの前記導光路を備えたことを特徴とする請求項3に記載のバイオセンサ測定器。
【請求項5】
複数の前記発光素子の発光波長が互いに異なることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のバイオセンサ測定器。
【請求項6】
前記発光素子を一定の時間間隔で発光させる制御部を備えたことを特徴とする請求項4に記載のバイオセンサ測定器。
【請求項7】
同一面上に前記発光素子及び前記受光素子が実装された実装基板と、
前記発光素子が出射した光を前記マークに向けて照射する発光部と、
前記発光素子が出射した光を発光部に導光する導光路を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオセンサ測定器。
【請求項8】
一つの前記発光素子と、
一つの前記発光部と、
一つの前記導光路を備えたことを特徴とする請求項7に記載のバイオセンサ測定器。
【請求項9】
前記発光素子及び当該発光素子から出射した光を受光する受光素子若しくは受光部、又は前記受光素子及び当該受光素子に向けて光を出射する発光素子若しくは発光部が、バイオセンサを装着するコネクタ形成領域以外に備えられたことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のバイオセンサ測定器。
【請求項10】
光学的手段によりその存否を識別できるマークが付されたバイオセンサと、バイオセンサの識別に必要なマークの最大数の発光素子と当該発光素子からの光を受光する1乃至前記最大数の受光素子を備えたバイオセンサ測定器を用いて、測定を行うバイオセンサシステムにおいて、
測定開始前に、前記発光素子から発光量を検出して、その発光量から発光素子の発光量を調整する発光量制御手段を備えたことを特徴とするバイオセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−270899(P2009−270899A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120776(P2008−120776)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】