説明

バイオセンサ測定装置及びその測定方法

【課題】バイオセンサ測定装置において、トランジスタの個体差による測定結果のばらつきを解消し測定精度を高める。
【解決手段】バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成り、バイオセンサ部は、基材と、ドレイン電極およびソース電極と、半導体膜と、半導体膜上に配置された絶縁膜と、被測定物が配置される感応膜と、被測定物と接触し、可変の参照電圧が印加される参照電極と、隔壁とを備え、測定部は、一定の電流を出力する電流源と、基準電位部と、出力電圧を測定する電圧計と、参照電圧を印加する参照電圧源とを備え、制御部は、測定部における測定を制御する測定設定部と、電圧計により測定した出力電圧を参照電圧に対応づけて記憶する記憶部と、記憶された出力電圧と参照電圧とが対応付けられたデータマップを作成するマッピング部と、データマップに基づき被測定物の電位を計算する計算手段とを備えるバイオセンサ測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオセンサ測定装置に関し、特に、電界効果トランジスタを利用したバイオセンサ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や細胞等の生体試料やその中の特定成分について迅速かつ簡便に濃度等を測定する方法として、電気化学的検出手段によるバイオセンサが実用化されている。その一つとして、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、以下、FETという)を用いたバイオセンサが知られ、特にISFET(Ion−sensitive FET)と呼ばれている。ISFETを用いたDNA(Deoxyribonucleic acid)やタンパク質等の生体成分、細胞などの検出系への応用が盛んに研究されている。
【0003】
しかしながら、ISFETを用いたバイオセンサは、トランジスタごとの個体差が大きい。そのため、トランジスタの個体差により、測定結果にばらつきが生じてしまうという問題があった。そこで、個々のバイオセンサごとの個体差に合った最適な参照電圧を設定し、トランジスタの個体差による測定結果のばらつきを解消するとともに、個々のトランジスタの性能を最大限活かすことができる測定装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−242900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明においては、バイオセンサ測定装置において、トランジスタの個体差による測定結果のばらつきを解消し、測定精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置であって、前記バイオセンサ部は、基材と、前記基材上に離隔して配置されたドレイン電極およびソース電極と、前記ドレイン電極及び前記ソース電極にオーミック接触して前記基材上に配置された半導体膜と、前記半導体膜上に配置された絶縁膜と、前記絶縁膜上に配置され、被測定物が配置される感応膜と、前記被測定物と接触し、可変の参照電圧が印加される参照電極と、前記感応膜における前記被測定物が配置される周囲に配置された隔壁とを備え、前記測定部は、前記ドレイン電極と接続され、一定の電流を出力する電流源と、前記ソース電極と接続された基準電位部と、前記ドレイン電極と前記電流源との接続部を出力端子として、出力電圧を測定する電圧計と、前記参照電極へと参照電圧を印加する参照電圧源とを備え、前記制御部は、前記測定部における測定を制御する測定設定部と、前記電圧計により測定した前記出力電圧を前記参照電圧に対応づけて記憶する記憶部と、記憶された前記出力電圧と前記参照電圧とが対応付けられたデータマップを作成するマッピング部と、前記データマップに基づき前記被測定物の電位を計算する計算手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
前記バイオセンサ部は、前記ドレイン電極及び前記ソース電極と絶縁されたゲート電極を備えてもよい。
【0008】
また、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置であって、前記バイオセンサ部は、基材と、前記基材上に配置されて可変のゲート電圧が印加されるゲート電極と、前記ゲート電極と絶縁され、離隔して配置されたドレイン電極およびソース電極と、前記ドレイン電極及び前記ソース電極にオーミック接触して配置された半導体膜と、前記半導体膜上に配置された絶縁膜と、前記絶縁膜上に配置され、被測定物が配置される感応膜と、前記被測定物と接触し、可変の参照電圧が印加される参照電極と、前記感応膜における前記被測定物が配置される周囲に配置された隔壁とを備え、前記測定部は、前記ドレイン電極と接続され、一定の電流を出力する電流源と、前記ソース電極と接続された基準電位部と、前記ドレイン電極と前記電流源との接続部を出力端子として、出力電圧を測定する電圧計と、前記ゲート電極へとゲート電圧を印加するゲート電圧源とを備え、前記制御部は、前記測定部における測定を制御する測定設定部と、前記電圧計により測定した前記出力電圧を前記ゲート電圧に対応づけて記憶する記憶部と、記憶された前記出力電圧と前記ゲート電圧とが対応付けられたデータマップを作成するマッピング部と、前記データマップに基づき前記被測定物の電位を計算する計算手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
前記マッピング部は、予め測定した被測定物の出力電圧特性により前記データマップの補整を行ってもよい。
【0010】
前記バイオセンサ部は、前記ゲート電極と接続可能なゲート電極用補助電極を備え、参照電極と前記ゲート電極用補助電極とを切り替え可能なメカニカルスイッチを備えてもよい。
【0011】
前記基材、前記ドレイン電極、前記ソース電極、前記半導体膜、前記絶縁膜及び前記感応膜の少なくとも1つ以上が透明であってもよい。
【0012】
前記制御部は、前記電圧計により測定した前記出力電圧に基づくデータを表示する表示部を備えてもよい。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法は、バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置による測定方法であって、前記バイオセンサ部のドレイン電極への入力電流を所定の電流値に設定し、前記バイオセンサ部の参照電極へと可変の参照電圧を印加して出力電圧を測定し、前記測定された前記出力電圧及びそれに対応する前記参照電圧を対応付けて記憶し、前記記憶された前記出力電圧及びそれに対応する前記参照電圧から、データマップを作成し、前記バイオセンサ部の感応部へと被検査物を搭載し、前記参照電極へと所定の参照電圧を印加して被検査物搭載時出力電圧を測定し、前記データマップに基づき前記被検査物搭載時出力電圧に対応する前記参照電圧を被検査物搭載時電圧として算出し、算出された前記検査物搭載時電圧と、前記参照電極へと印加された前記所定の参照電圧との差を求めて電位の変化を計算することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法は、バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置による測定方法であって、前記バイオセンサ部のドレイン電極への入力電流を所定の電流値に設定し、前記バイオセンサ部のゲート電極へと可変のゲート電圧を印加して出力電圧を測定し、前記測定された前記出力電圧及びそれに対応する前記ゲート電圧を対応付けて記憶し、前記記憶された前記出力電圧及びそれに対応する前記ゲート電圧から、データマップを作成し、予め測定した被測定物の出力電圧特性により前記データマップを補整し、前記バイオセンサ部の感応部へと被検査物を搭載し、参照電極へと所定の参照電圧を印加して被検査物搭載時出力電圧を測定し、前記データマップに基づき前記被検査物搭載時出力電圧に対応する前記ゲート電圧を被検査物搭載時電圧として算出し、算出された前記検査物搭載時電圧と、前記参照電極へと印加された前記所定の参照電圧との差を求めて電位の変化を計算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、個々のバイオセンサごとの個体差に合った最適な参照電圧を設定し、トランジスタの個体差による測定結果のばらつきを解消することができるバイオセンサ測定装置及びその測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はトップゲート型のバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はボトムゲート型のバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はボトムゲート型のバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置におけるバイオセンサ部のVG−VD特性の一例を示すグラフである。
【図6】被測定物の出力電圧特性による、出力電圧の変化を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法の概要を示すフローチャートである。
【図8】本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法の概要を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施例に係るバイオセンサ測定装置を用いて電位の変化を測定した結果を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係るバイオセンサ測定装置及びその測定方法について説明する。但し、本発明のバイオセンサは多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
(バイオセンサ測定装置)
図1は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。ただし、(b)では、感応膜150、及び絶縁膜155は省略している。
【0019】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、バイオセンサ部100と、測定部200と、制御部300とを有する。バイオセンサ部100は、基材110と、ドレイン電極120と、ソース電極130と、半導体膜140と、感応膜150と、絶縁膜155、参照電極160と、隔壁170と、被測定部180とを有する。測定部200は、電流源210と、基準電位部220と、電圧計230と、参照電圧源240とを有する。制御部300は、測定を制御し設定する測定設定部310と、電圧計230により測定された電圧を記憶する記憶部320と、記憶部に記憶された電圧に基きデータマップを作成するマッピング部330と、データマップと被検査物搭載時の出力電圧から被測定物180の電位を算出する計算部340部とを有する。
【0020】
まず、バイオセンサ部100の構成の詳細について説明する。
【0021】
基材110は絶縁性の材料である。例えば、ガラスなどの無機材料や、PEN(Polyethylene naphthalate)またはPET(Polyethylene terephthalate)などのプラスチック(ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)に代表される有機材料であってもよい。基材110は、透明であることが好ましい。この透明とは、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から第2の絶縁膜151上に配置された被測定物191を観察することができる程度に透明であればよく、半透明のものは含まれない。
【0022】
また、基材110の形状は特に限定されることはなく、平板、平膜、フィルム、多孔質膜などの平坦な形状、シリンダ、スタンプ、マルチウェルプレート、マイクロ流路などの立体的な形状であってもよい。フィルムを使用する場合には、その厚さは特に限定されることはないが、例えば、1μm以上1mm以下であってもよい。
【0023】
基材110がフレキシブルな材料である場合には、基材110を曲げることが可能となり、測定時のFETセンサの設置などの自由度が増加する。また、ロール to ロールでのバイオセンサの形成が可能となり、低コストでのバイオセンサの製造が可能となる。
【0024】
なお、基材110上に他の絶縁膜が配置され形成されていてもよい。この場合には、FETセンサはその基材110上の他の絶縁膜上に形成される。また、この場合には、他の絶縁膜の材料は透明であることが好ましい。
【0025】
ドレイン電極120及びソース電極130は、基材110上に配置される。
【0026】
ドレイン電極120及びソース電極130には、導電性材料を用いる。例えば、チタン、アルミ、銅、金等を用いることができるが、特に透明な導電性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)等を用いることができる。ドレイン電極120及びソース電極130の厚さは、20nm〜200nmが好ましい。
【0027】
半導体膜140は、基材110上に配置されている。また、半導体膜140は、ドレイン電極120とソース電極130との間に、配置されている。そして、半導体膜140は、ドレイン電極120とソース電極130とにオーミック接触している。
【0028】
半導体膜140の材料としては、絶縁膜155を積層可能な材料であればよく、例えばアモルファス酸化物を用いることができる。そのようなアモルファス酸化物の主成分は、InMZnOと表すことができ、ここで、Mは、Ga(ガリウム)、Al(アルミニウム)、Fe(鉄)のうち少なくとも1種である。この中でも、アモルファス酸化物としては、MがGaであるInGaZnO系のものを用いるのが好ましい。InGaZnO系のアモルファス酸化物は、室温から150°C程度の低温で成膜が可能であることから、基材110が耐熱性に乏しいプラスチックやガラスにより構成されている場合でも使用することができる。また、InGaZnO系のアモルファス酸化物には、必要に応じて、Al、Fe、Snなどが加えられていてもよい。
【0029】
また、半導体膜140の別の材料としては、酸化物亜鉛(ZnO)を主成分とする酸化物半導体から用いられていてもよい。ZnOを主成分とする場合には、真性の酸化物亜鉛の他に、必要に応じて、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、窒素(N)及び炭素(C)等のp型ドーパント及びホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等のn型ドーパントがドーピングされた酸化亜鉛及びマグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)などがドーピングされた酸化亜鉛を加えたものであってもよい。さらに、半導体膜140は、錫を添加した酸化インジウム(インジウム錫オキサイド:ITO)、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)または酸化マグネシウム(MgO)などの酸化物半導体から形成されていてもよい。
【0030】
半導体膜140は、透明であることが好ましい。この透明とは、基材110と同様に、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から感応膜150に配置された被測定物180が観察することができる程度に透明であればよく、半透明のものは含まれない。
【0031】
絶縁膜155は、ドレイン電極120、ソース電極130および半導体膜140の上に積層して配置される。
【0032】
絶縁膜155は、絶縁性材料が用いられるが、特に、透明な絶縁性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素等を用いることができる。また、プラスチック基板のような透明な有機樹脂からなる基板、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミドのような透明なフィルム等を用いてもよい。絶縁膜155の厚さは、50nm〜1μmの範囲で適宜選択することができる。なお、この透明とは、基材110と同様に、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から感応膜150に配置された被測定物180が観察することができる程度に透明であればよく、半透明のものは含まれない。
【0033】
感応膜150は、絶縁膜155と接触し、半導体膜140の上方に配置される。また、感応膜150は、絶縁膜155を介して、間接的に半導体膜140と接触して配置される。例えば、感応膜150は、絶縁膜155を覆って配置されてもよい。感応膜150は、被測定物180に添加された試料に含まれる被検査物、例えば、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質等を配置可能なものである。感応膜150は、透明な絶縁材料を用い、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化タンタル、酸化アルミニウム等を用いることができる。
【0034】
また、図2に示すように、バイオセンサ部100は、トップゲート型でもよく、半導体膜140の上方にゲート電極145を有してもよい。なお、図2の(b)では、ゲート電極145、感応膜150、及び絶縁膜155は省略しており、(c)ではゲート電極145に係る回路は省略している。
【0035】
ゲート電極145には、導電性材料を用いる。例えば、チタン、アルミ、銅、金等を用いることができるが、特に透明な導電性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)等を用いることができる。ゲート電極145、ドレイン電極120及びソース電極130の厚さは、20nm〜200nmが好ましい。
【0036】
また、ゲート電極145は、バイオセンサによる被測定物の特性測定時には、フローティング電極として用いることができる。
【0037】
ゲート電極145、ドレイン電極120及びソース電極130の電極材料が透明であると、より確実にサンプルを顕微鏡で観察することが可能となるため、被測定物180の配置箇所に応じて、これらの電極の電極材料の1つ以上が透明であることが好ましい。この透明とは、基材110と同様に、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から感応膜150に配置された被測定物180が観察することができる程度に透明であればよく、半透明のものは含まれない。
【0038】
隔壁170は、被測定物180を配置するためのもので、例えば、ガラス、プラスチック等を用いることができる。なお、図1(b)においては、隔壁170を上方から見た場合に、四角くなっているが、これに限られず、例えば円形などでもよい。
【0039】
本発明の一実施形態に係るバイオセンサ部100は、ドレイン電極120及びソース電極130と絶縁された参照電極160を被測定物180に接触させることで被測定物180から出力される電気信号の測定を行う。参照電極160は、被測定物180に挿入してもよいし、パターンとして形成してもよい。被測定物180は、被検査物を投入可能であり、参照電極160により電位を測定可能なものであればよく、例えば液体であって、培養液などの薬液である。
【0040】
なお、これと異なり、被測定物180へと参照電極160を接触させる代わりに、ゲート電極用補助電極端子(図示せず)を用意し、ゲート電極用補助電極端子とゲート電極145とを電気的に接触させて、ゲート電圧VGを印加してもよい。これにより、被測定物180が生体物質等の被検査物を添加されている場合においても、被検査物の影響を受けない状態で出力電圧VDを測定することができる。従って、被検査物がセットされた状態であっても、参照電圧VG及び出力電圧VDを測定し、後述のデータマップを作成することができる。なお、この場合、被測定物180に用いる培養液のVG−VD特性について、予め測定しておき、ゲート電極用補助電極端子を用いて測定したVG−VD特性と、培養液を被測定物180として隔壁170に囲まれた領域へと入れ、参照電極160を用いて測定したVG−VD特性との電圧特性差、すなわちシフト量を測定しデータマップ化しておき、ゲート電極用補助電極端子を用いて測定したVG−VD特性のデータマップから、用いる培養液に応じて電圧VGの電圧値を全体的にシフト量分だけ増減する補整を行い、培養液ごとの特性により生じる測定結果のバラつきを防止することが好ましい。
【0041】
次に、測定部200の構成の詳細について説明する。
【0042】
電流源210は、ドレイン電極120と電気的に接続される、ドレイン電流IDが一定な定電流源である。
【0043】
基準電位部220は、ソース電極130と電気的に接続される、回路のグランド(GND)である。
【0044】
電圧計230は、電流源210とドレイン電極120との接続部125と電気的に接続され、接続部125を出力端子として、出力電圧VDを測定する。
【0045】
従来、バイオセンサ部のトランジスタ特性を評価する場合には、VG−ID特性、すなわち参照電圧VGに対するドレイン電流IDを測定し、その関係により、トランジスタ特性を測定していた。
【0046】
一方、本発明においては、VG−VD特性、すなわちドレイン電流IDを固定の値とし、参照電圧VGと出力電圧VDを測定し、その関係により、トランジスタ特性を評価する。出力電圧VDを測定することにより、ドレイン電流IDを測定する場合と比べ、バイオセンサ部の電位変化を、増幅度を大きくし感度良く測定することができ、よりバイオセンサ部のトランジスタ特性の把握に優れる。
【0047】
参照電圧源240は、参照電極160と電気的に接続され、参照電極160へと参照電圧VGを印加する電圧源である。
【0048】
以上のように、測定部200は、電流源210より固定のドレイン電流IDをドレイン電極120へと出力し、参照電圧源240より参照電極160へと印加する参照電圧VGを変化させた場合における、接続部125における出力電圧VDの変化を、電圧計230により測定する。
【0049】
次に、制御部300の構成の詳細について説明する。
【0050】
制御部300は、例えば測定部200を制御するソフトウェアを備えたパーソナルコンピュータであり、測定部200を制御するとともに、測定部200における測定結果を記憶する。
【0051】
制御部300の測定設定部310は、測定部200における基本の測定シーケンスを設定し、制御する。すなわち、電流源210を制御して、ドレイン電流IDの値を設定したり、参照電圧源240を制御して、出力電圧VDの値を設定したりすることができる。
【0052】
また、測定設定部310は、電圧計230における電圧測定のタイミングを設定し、制御してもよい。これにより、電圧計230により、例えば1秒間隔で電圧を測定するなど、経時的に出力電圧VDを測定することができ、その結果、被検査物である細胞やタンパク質等の経時的な応答性を電気的に検知することが可能となる。
【0053】
測定部200がVG−VD特性を継続的に、参照電圧VGの電圧値の一定間隔ごとに測定するよう、制御部300の測定設定部310において設定してもよい。例えば、出力電圧VDを測定する間隔は0.1Vごとなどでよい。精緻なデータマップの作成のためには、ある程度小さな電圧間隔により電圧値を記憶し、データマップを作成することが好ましく、参照電圧VGの電圧値の変化は、0.1V以下であることが好ましい。
【0054】
また、記憶部320は、電圧計230により測定された出力電圧VDを参照電圧VGと対応付けて測定結果として記憶する。記憶部320は記憶媒体であり、例えばハードディスク、SSD、フラッシュメモリなどである。記憶部320は、複数の測定結果を記憶可能である。
【0055】
マッピング部330は、記憶部320により記憶された複数の測定結果に基づいて、データマップを作成する。すなわち、出力電圧VDと参照電圧VGとの対応関係を示す複数のデータをデータマップ化することにより、被検査物が搭載されていない状態におけるバイオセンサ部のトランジスタの特性を把握することができる。
【0056】
データマップは、バイオセンサ部ごとの出力電圧VDの電圧値と参照電圧VGの電圧値との関係が把握できる形式であればよく、例えば表計算ソフトウェアのワークシートの形式でもよい。
【0057】
本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置においては、マッピング部330によりデータマップを作成後、バイオセンサ部100の被測定物180内へと被検査物を搭載して被測定物180へと参照電極160の動作点電圧として参照電圧VG1を印加して、電圧計230により、被検査物搭載時出力電圧として、出力電圧VD2を測定する。計算部340は、マッピング部330において作成されたデータマップを参照し、被検査物が搭載された状態において測定された出力電圧VD2から、それに対応するデータマップ上の参照電圧VG2を算出する。参照電圧VG2は、被検査物搭載時出力電圧である出力電圧VD2に対応するものとして、被検査物搭載時電圧といえる。計算部340は、参照電圧VG2と参照電圧VG1との差により、被検査物を搭載したことによる電位の変化を計算する。
【0058】
バイオセンサ部で用いるトランジスタは、それぞれ、参照電圧VGの電圧値に対する出力電圧VDの電圧値、すなわち出力特性が異なる。そのため、同じ被検査物の測定においても、バイオセンサ部の特性により、測定結果が異なることとなってしまう。しかし、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置においては、計算部340により、電位の変化のみを算出することができるため、トランジスタごとの出力特性のバラつきに左右されることなく、被検査物の特性を測定することができる。
【0059】
なお、マッピング部330と計算部340とは、1つのソフトウェアにより実現されてもよく、例えば表計算ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0060】
制御部300は、さらに表示部350(図示せず)を有してもよい。表示部350は、測定部200による測定結果を表示するディスプレイ装置である。表示する測定結果としては、例えば、電圧計により測定した出力電圧VDだけでなく、印加している参照電圧VG、参照電圧VGと出力電圧VDとのデータマップ、参照電圧VGと出力電圧VDとの対応関係を示すグラフ、被検査物搭載時の電位の変化などである。
【0061】
以上のように、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置においては、バイオセンサの個体差に関わりなく、被検査物の電位を算出することができ、バイオセンサの個体差により測定結果に差が生じることを防止することができる。
【0062】
次に、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する。
【0063】
図3は、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はボトムゲート型のバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。ただし、(b)では、感応膜150、及び絶縁膜155は省略しており、(c)ではゲート電極145に係る一部の回路は省略している。
【0064】
図2を参照して前述した本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、トップゲート型の構成であったが、図3に係る実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、ボトムゲート型の構成であり、ゲート電極145が、基材110上に配置され、ゲート電極145は、ゲート絶縁膜190により、ドレイン電極120及びソース電極130と電気的に絶縁される。ゲート絶縁膜190は、基材110及びゲート電極145上に配置され基材110及びゲート電極145を覆う。ゲート絶縁膜190の材料は、前述した絶縁膜155と同様の材料であってもよい。
【0065】
半導体膜140は、ゲート電極145の上方に配置される。ゲート電極145は、ドレイン電極120とソース電極130との間から引き出され、ゲート電極145が延伸された箇所の上方に隔壁170を設けて、被測定物180を配置してもよい。これにより、自由に被測定物の配置箇所を設定することができる。
【0066】
ゲート電極145には、測定部200のゲート電圧源250から、ゲート電圧VGが印加される。
【0067】
なお、図4に示すように、ゲート電極用補助電極端子145aを用意し、ゲート電極用補助電極端子145aとゲート電極145とを電気的に接触させて、ゲート電圧VGを印加してもよい。この場合、ゲート電圧源250とゲート電極用補助電極端子145aとの間にメカニカルスイッチ255を設けて、動作点を決定する際には、スイッチをオンして測定を行う。被検査物の特性を測定する際には、スイッチをオフして、被検査物の特性の測定に影響が出ないようにすることができる。
【0068】
また、測定部において、参照電圧源240とゲート電圧源250とを切り替え可能な切替スイッチ(図示せず)を有してもよい。
【0069】
本実施形態においては、マッピング部330において、上述した実施形態における参照電圧VGと、出力電圧VDとのデータマップの作成の代わりに、ゲート電圧VGと、出力電圧VDとのデータマップを作成する。このとき、被検査物を含まない被測定物180の出力電圧特性を予め測定しておき、この出力電圧特性に基いてデータマップについて出力電圧VDの測定値をシフトさせる補整を行うことが好ましい。すなわち、培養液等の被測定物180自体のpH値等の影響により、VG−VD特性は影響を受けるため、図6に示すように、同じ電圧VGを印加したとしても、異なる出力電圧VDとなる。そのため、ゲート電極145を用いた被測定物180の影響を受けない状態でのVG−VD特性の測定データによるデータマップを用いて被検査物の電位を計算する際に、被測定物180の出力電圧特性を考慮する必要がある。そのため、被測定物180の出力電圧特性をあらかじめ測定しておく。被測定物180ごとの出力電圧特性に基いて、データマップについて出力電圧VDの測定値をシフトさせる補整を行うことにより、被検査物の電位を被検査物を含まない被測定物180自体の影響を考慮することなく算出することができる。これにより、被測定物を搭載しない状態においても、データマップを作成することができる。
【0070】
(バイオセンサ測定装置による測定方法)
次に、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法の流れを説明する。なお、測定方法に用いるバイオセンサ測定装置の各構成の詳細は、上述したとおりである。
【0071】
まず、隔壁170で囲まれた空間へと、生体物質等の被検査物を添加しない状態の被測定物180を注入する。被測定物180は、例えば培養液などの薬液である。
【0072】
被測定物180へ、参照電極160を接触させた状態で、一定の電流IDを電流源210において出力し、参照電極160において、参照電圧VGを一定範囲で変化させた場合の、出力電圧VDを、電圧計230において測定する。
【0073】
制御部300の記憶部320は、参照電圧VGと出力電圧VDとを関連付けて記憶する。このとき、記憶部320は、時間経過も合わせて記憶してもよい。
【0074】
以下の手順については、バイオセンサ部のVG−VD特性のデータマップの一例をグラフ化した図5を参照して説明する。
【0075】
図5は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置におけるバイオセンサ部のVG−VD特性の一例を示すグラフである。
【0076】
図5を参照すると、被検査物を搭載しない状態において参照電極160へと参照電圧VG1を印加した場合、電圧計230では、出力電圧VD1が測定される。例えば、参照電圧VG1の電圧値が1.6Vのときに、出力電圧VD1の電圧値が1.1Vとなる。この測定結果は、記憶部320により記憶され、マッピング部330によりデータマップに格納される。
【0077】
データマップ作成後、被検査物の特性を測定する。被検査物の特性を測定する場合には、被検査物を被測定物180内へと搭載して、参照電極160へと参照電圧VG1を印加して、電圧計230において被検査物搭載時の出力電圧を測定する。被検査物を搭載してない状態においては、参照電圧VG1に対応する出力電圧として、出力電圧VD1が測定されたが、被検査物を搭載した状態においては、被検査物により電位が変化し、出力電圧VD1と電圧値が異なる出力電圧VD2が測定される。例えば、参照電圧VG1として、1.6Vの電圧を印加した場合、出力電圧VD2として電圧値0.9Vが測定される。
【0078】
計算部340において、データマップを参照し、出力電圧VD2に対応する参照電圧VG2を算出する。例えば、図5に係るバイオセンサ部100のトランジスタにおいては、出力電圧VD2が0.9Vの場合に、対応する参照電圧VGは、1.75Vとなる。ここで、データマップ上は、参照電圧VG2と表現されるものは、被検査物搭載時における電位Vsufであり、印加した参照電圧VG1に、被検査物の電圧特性が加わったものである。したがって、参照電圧VG2と参照電圧VG1との差Pを求めることにより、被検査物の影響による電位の変化が算出される。例えば、図5に係るバイオセンサ部100のトランジスタにおいては、参照電圧VG2が1.75V、参照電圧VG1が1.5Vであるから、1.75V−1.5V=0.25Vであり、被検査物の影響により、被測定物180の電位が0.25V変化したことが分かる。
【0079】
図7は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法の概要を示すフローチャートであり、以下、図7を参照しつつ測定方法の流れを説明する。なお、図7における測定方法は、例えば図1や図2に係るバイオセンサ測定装置を用いた場合の測定方法である。
【0080】
まず、電流源210において入力するドレイン電流IDを設定する(S100)。ドレイン電流IDは固定値であり、例えば100nA以上500nA以下の電流値に設定される。
【0081】
次に、参照電圧源240により参照電極160へと印加する参照電圧VGを設定し、電圧計230において、出力電圧VDの測定を開始する(S110)。
【0082】
測定した出力電圧VDを、参照電圧VGと関連付けた測定結果として記憶部320で記憶する(S120)。
【0083】
参照電圧VGを所定の電圧値の範囲内で変化させ、出力電圧VDの測定を複数回繰り返し、複数の測定結果を記憶部320において記憶する(S130)。所定の電圧値の範囲は、通常被測定物の測定のために参照電圧VGとして印加する範囲の電圧値である。
【0084】
記憶部320に記憶された複数の測定結果から、参照電圧VGと出力電圧VDとの対応関係を示したデータマップを作成する(S140)。
【0085】
バイオセンサ部100の感応部140に被検査物を搭載し、参照電圧VG1を印加して、出力電圧VD2を測定する(S150)。
【0086】
出力電圧VD2に対応する参照電圧VG2を、データマップを参照して算出する(S160)。
【0087】
算出された参照電圧VG2と、参照電圧VG1との差を求めて、被検査物の搭載による電位の変化を算出する(S170)。
【0088】
以上の本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法により、バイオセンサの個体差に関わりなく、被検査物の電位を算出することができ、バイオセンサの個体差により測定結果に差が生じることを防止することができるバイオセンサ測定方法が提供される。
【0089】
次に、図8を参照して、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法を説明する。なお、図8における測定方法は、例えば図3や図4に係るバイオセンサ測定装置を用いた場合の測定方法である。
【0090】
まず、電流源210において入力するドレイン電流IDを設定する(S200)。ドレイン電流IDは固定値であり、例えば100nA以上500nA以下の電流値に設定される。
【0091】
次に、ゲート電圧源250によりゲート電極145へと印加するゲート電圧VGを設定し、電圧計230において、出力電圧VDの測定を開始する(S210)。
【0092】
測定した出力電圧VDを、ゲート電圧VGと関連付けた測定結果として記憶部320で記憶する(S220)。
【0093】
ゲート電圧VGを所定の電圧値の範囲内で変化させ、出力電圧VDの測定を複数回繰り返し、複数の測定結果を記憶部320において記憶する(S230)。所定の電圧値の範囲は、通常被測定物の測定のために参照電圧VGとして印加する範囲の電圧値である。
【0094】
記憶部320に記憶された測定結果から、ゲート電圧VGと出力電圧VDとの対応関係を示したデータマップを作成する(S240)。予め測定した被測定物の出力電圧特性に応じて、データマップを補整する(S245)。
【0095】
バイオセンサ部100の感応部140に被検査物を搭載し、参照電圧VG1を印加して、出力電圧VD2を測定する(S250)。
【0096】
出力電圧VD2に対応する参照電圧VG2を、データマップを参照して算出する(S260)。
【0097】
算出された参照電圧VG2と、参照電圧VG1との差を求めて、被検査物の搭載による電位の変化を算出する(S270)。
【0098】
以上の本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法により、バイオセンサの個体差に関わりなく、被検査物の電位を算出することができ、バイオセンサの個体差により測定結果に差が生じることを防止することができるバイオセンサ測定方法が提供される。また、被測定物を搭載しない状態においても、データマップを作成することができる。
【実施例】
【0099】
図9を参照して、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置を用いて電位の変化を測定する方法の一例を説明する。
【0100】
電流源210からドレイン電極120へ入力するドレイン電流IDを固定値100nAに設定する。
【0101】
トランジスタTR1〜TR4については、被検査物を搭載しない状態において、被測定物180に参照電極160を接触させる。参照電圧VGを異なる電圧値で複数回印加し、それぞれの参照電圧VGに対応する出力電圧VDを電圧計230で測定する。記憶部320において測定結果を記憶し、記憶した測定結果に基づき、マッピング部330においてデータマップを作成する。
【0102】
感応部150上の被測定物180内に被検査物を搭載する。トランジスタTR1〜TR4においては、同じ被検査物を、同量搭載した。
【0103】
参照電極160の動作点電圧として、参照電圧VG1を印加する。トランジスタ特性に応じて、異なる参照電圧VGを印加してよい。ここでは、トランジスタTR1〜TR4について、それぞれ、1050mV、1050mV、820mV、950mVを参照電圧VG1の電圧値として印加した。
【0104】
データマップにおいては、各トランジスタTR1〜TR4において、上記各参照電圧VG1を印加した場合の出力電圧VD1の電圧値は、それぞれ、9.372V、7.574V、7.784V、2.227Vである。
【0105】
一方、被検査物を搭載した状態では、各トランジスタTR1〜TR4において、上記各参照電圧VG1を印加した場合、出力電圧VD2の電圧値は、それぞれ、5.197V、1.386V、1.644V、0.902Vであった。
【0106】
ここで、データマップにおいて、今度は、各トランジスタTR1〜TR4の出力電圧VD2の電圧値に対応する参照電圧VG2を算出すると、参照電圧VG2の電圧値は、それぞれ、1070mV、1070mV、840mV、970mVであった。
【0107】
参照電圧VG2と、参照電圧VG1との差を求めると、各トランジスタにおいて、いずれも20mVとなる。すなわち、被検査物を搭載したことにより、被測定物180の電位(電圧)が、それぞれ20mV変化したことが分かる。また、電位の変化が、トランジスタの特性に関わらずに算出できることが分かる。
【0108】
以上のように、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置及びその測定方法により、バイオセンサの個体差に関わりなく、被検査物の電位を算出することができ、バイオセンサの個体差により測定結果に差が生じることを防止することができる。
【符号の説明】
【0109】
110 基材
120 ドレイン電極
130 ソース電極
140 半導体膜
145 ゲート電極
150 感応膜
155 絶縁膜
160 参照電極
170 隔壁
180 被測定物
190 ゲート絶縁膜
210 電流源
220 基準電位部
230 電圧計
240 参照電圧源
250 ゲート電圧源
310 測定設定部
320 記憶部
330 マッピング部
340 計算部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置であって、
前記バイオセンサ部は、
基材と、
前記基材上に離隔して配置されたドレイン電極およびソース電極と、
前記ドレイン電極及び前記ソース電極にオーミック接触して前記基材上に配置された半導体膜と、
前記半導体膜上に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に配置され、被測定物が配置される感応膜と、
前記被測定物と接触し、可変の参照電圧が印加される参照電極と、
前記感応膜における前記被測定物が配置される周囲に配置された隔壁と
を備え、
前記測定部は、
前記ドレイン電極と接続され、一定の電流を出力する電流源と、
前記ソース電極と接続された基準電位部と、
前記ドレイン電極と前記電流源との接続部を出力端子として、出力電圧を測定する電圧計と、
前記参照電極へと参照電圧を印加する参照電圧源と
を備え、
前記制御部は、
前記測定部における測定を制御する測定設定部と、
前記電圧計により測定した前記出力電圧を前記参照電圧に対応づけて記憶する記憶部と、
記憶された前記出力電圧と前記参照電圧とが対応付けられたデータマップを作成するマッピング部と、
前記データマップに基づき前記被測定物の電位を計算する計算手段と
を備えることを特徴とするバイオセンサ測定装置。
【請求項2】
前記バイオセンサ部は、前記ドレイン電極及び前記ソース電極と絶縁されたゲート電極を備えることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項3】
バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置であって、
前記バイオセンサ部は、
基材と、
前記基材上に配置されて可変のゲート電圧が印加されるゲート電極と、
前記ゲート電極と絶縁され、離隔して配置されたドレイン電極およびソース電極と、
前記ドレイン電極及び前記ソース電極にオーミック接触して配置された半導体膜と、
前記半導体膜上に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に配置され、被測定物が配置される感応膜と、
前記被測定物と接触し、可変の参照電圧が印加される参照電極と、
前記感応膜における前記被測定物が配置される周囲に配置された隔壁と
を備え、
前記測定部は、
前記ドレイン電極と接続され、一定の電流を出力する電流源と、
前記ソース電極と接続された基準電位部と、
前記ドレイン電極と前記電流源との接続部を出力端子として、出力電圧を測定する電圧計と、
前記ゲート電極へとゲート電圧を印加するゲート電圧源と
を備え、
前記制御部は、
前記測定部における測定を制御する測定設定部と、
前記電圧計により測定した前記出力電圧を前記ゲート電圧に対応づけて記憶する記憶部と、
記憶された前記出力電圧と前記ゲート電圧とが対応付けられたデータマップを作成するマッピング部と、
前記データマップに基づき前記被測定物の電位を計算する計算手段と
を備えることを特徴とするバイオセンサ測定装置。
【請求項4】
前記マッピング部は、予め測定した被測定物の出力電圧特性により前記データマップの補整を行うことを特徴とする請求項3に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項5】
前記バイオセンサ部は、前記ゲート電極と接続可能なゲート電極用補助電極を備え、参照電極と前記ゲート電極用補助電極とを切り替え可能なメカニカルスイッチを備えることを特徴とする請求項3または4に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項6】
前記基材、前記ドレイン電極、前記ソース電極、前記半導体膜、前記絶縁膜及び前記感応膜の少なくとも1つ以上が透明であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記電圧計により測定した前記出力電圧に基づくデータを表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項8】
バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置による測定方法であって、
前記バイオセンサ部のドレイン電極への入力電流を所定の電流値に設定し、
前記バイオセンサ部の参照電極へと可変の参照電圧を印加して出力電圧を測定し、
前記測定された前記出力電圧及びそれに対応する前記参照電圧を対応付けて記憶し、
前記記憶された前記出力電圧及びそれに対応する前記参照電圧から、データマップを作成し、
前記バイオセンサ部の感応部へと被検査物を搭載し、
前記参照電極へと所定の参照電圧を印加して被検査物搭載時出力電圧を測定し、
前記データマップに基づき前記被検査物搭載時出力電圧に対応する前記参照電圧を被検査物搭載時電圧として算出し、
算出された前記検査物搭載時電圧と、前記参照電極へと印加された前記所定の参照電圧との差を求めて電位の変化を計算する
ことを特徴とするバイオセンサ測定装置による測定方法。
【請求項9】
バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置による測定方法であって、
前記バイオセンサ部のドレイン電極への入力電流を所定の電流値に設定し、
前記バイオセンサ部のゲート電極へと可変のゲート電圧を印加して出力電圧を測定し、
前記測定された前記出力電圧及びそれに対応する前記ゲート電圧を対応付けて記憶し、
前記記憶された前記出力電圧及びそれに対応する前記ゲート電圧から、データマップを作成し、
予め測定した被測定物の出力電圧特性により前記データマップを補整し、
前記バイオセンサ部の感応部へと被検査物を搭載し、
参照電極へと所定の参照電圧を印加して被検査物搭載時出力電圧を測定し、
前記データマップに基づき前記被検査物搭載時出力電圧に対応する前記ゲート電圧を被検査物搭載時電圧として算出し、
算出された前記検査物搭載時電圧と、前記参照電極へと印加された前記所定の参照電圧との差を求めて電位の変化を計算する
ことを特徴とするバイオセンサ測定装置による測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92480(P2013−92480A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235509(P2011−235509)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)