説明

バイオセンサ用電極およびその製造方法

【課題】バイオセンサ用電極として、少ない工程数で高精度な電極を一括して形成でき、かつ測定精度の高いバイオセンサ用電極、及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】基材上に形成したハロゲン化銀写真感光材料を露光、現像処理することにより得た導電性銀パターン上に、非晶質金属を電解めっきする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料液中の特定成分を検出するバイオセンサ用電極、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体の血糖値等を測定するバイオセンサ及びその製造方法が提案されている。バイオセンサとは、定量したい基質と特異的に化学反応を起こす生体基質を電極へ固定化したものである。該基質との化学反応を電流に変換し、応答電流値を測定することにより基質濃度を定量できる。この応答電流値は基質濃度、電極面積に依存するので、精度良く測定するためには、電極の面積の精度が高くなければならない。また、測定において電極そのものが反応してしまった場合、溶解電流が生じるために測定誤差となる。このため、応答電流の測定値が安定するバイオセンサ用電極、及びその製造方法が求められており、基材上への蒸着やスパッタリングあるいは金属箔接着により全面に形成した金属膜をレーザーなどによりスリット形成する方法(例えば、特許文献1)やインクジェットによりパターン状に形成されためっき触媒へのめっき(例えば、特許文献2)、めっきや金属箔接着により全面に形成した金属膜をフォトリソグラフィ法とエッチングによりパターンを形成し、そのパターン上へめっきする方法(例えば、特許文献3、4)など、高精度に電極パターンを形成する種々の案出がなされている。しかし、インクジェット方式やエッチング方式ではパターンの高精細化のコントロールは難しく、より簡単な方法で高精細パターンが形成できることが好ましい。また、これらの方法は電極を個々に形成する手法でありパターン形成に時間がかかることや、工程が複雑になるなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3365184号公報
【特許文献2】特開2008−45875号公報
【特許文献3】特開2004−4017号公報
【特許文献4】特開2002−189012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者は上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明は、一括して形成でき、かつ測定精度が高く、安定した応答電流が得られる変動係数の低いバイオセンサ用電極、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は以下の発明により達成される。
(1)基材上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を露光、現像処理することで導電性銀パターンを作製し、その後該導電性銀パターン上に非晶質金属を電解めっきすることで得られたバイオセンサ用電極。
(2)上記写真感光材料が基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する写真感光材料である上記(1)記載のバイオセンサ用電極。
(3)ロール状の基材を連続して巻き出し、該基材上にハロゲン化銀乳剤層塗液を塗布、乾燥してハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を作製する第1の工程、連続して搬送された写真感光材料を露光する第2の工程、連続して搬送された露光済みの写真感光材料を現像処理し、基材上に導電性銀パターンを形成する第3の工程、および該基材上の導電性銀パターンに電解めっきにより非晶質金属をめっきし、その後ロール状に巻き取る第4の工程を少なくとも具備するバイオセンサ用電極の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、一括して形成でき、かつ測定精度が高く、安定した応答電流が得られる変動係数の低いバイオセンサ用電極を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明実施例の原稿パターンを示す平面図。
【図2】本発明実施例の原稿パターンを示す平面図。
【図3】本発明の第4の工程で用いるめっき装置の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、基材上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を含有するハロゲン化銀写真感光材料をパターン露光、現像処理することで導電性銀パターンを形成する方法により得られたバイオセンサ用電極、およびその製造方法であり、優れた導電性パターンの精度および作製の簡便性を兼ね備えている。
【0010】
基材上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を利用し、導電性銀パターンを作製する方法について説明する。かかる方法としては、下記(1)、(2)または(3)に示す方法がある。
(1)基材上に少なくとも物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を露光し、銀塩拡散転写法に従う現像処理を施した後、不要となったハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去する方法。
(2)基材上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を露光し、現像処理を施した後、定着処理する方法。
(3)基材上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を露光し、硬化現像法に従う現像処理を施した後、不要となった未硬化部のハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去する方法。
【0011】
上記(1)の方法は例えば特公昭42−23745号公報に記載の方法であり、(2)の方法は例えば特開2004−221564号公報に記載される方法であり、(3)の方法は例えばJ.Photo.Sci.誌11号 p 1、A.G.Tull著(1963)あるいは「The Theory of the photographic Process(4th edition,p326−327)」、T.H.James著等に記載されているように、硬化現像法に従い、基材上にレリーフ画像を形成させる方法である。硬化現像法とは、基材上に作製した実質的に硬膜剤を含まない未硬膜のハロゲン化銀乳剤層を、ポリヒドロキシベンゼン系等の現像主薬を含む現像液で処理することによって、現像主薬が露光されたハロゲン化銀を還元した際に、現像主薬自身から生成された酸化化合物により、ゼラチンを始めとする水溶性高分子化合物を架橋し画像状に硬膜させる方法である。本発明においては高温高湿下に長時間暴露した際に、より変動係数の低いバイオセンサ用電極が得られることから、特に(1)の方法を用いることが最も好ましい。
【0012】
上記(1)〜(3)の導電性銀パターンを作製する方法について更に詳細に説明する。以下(1)の導電性銀パターンを作製する方法をタイプ1、(2)の導電性銀パターンを作製する方法をタイプ2、(3)の導電性銀パターンを作製する方法をタイプ3と略して説明する。
【0013】
<基材>
本発明のタイプ1〜3に用いる写真感光材料の基材としては、フレキシブル性を有する樹脂フィルムが、取扱い性が優れている点で、好適に用いられる。基材に使用される樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。これら樹脂フィルムの厚さは、50〜300μmであることが好ましい。
【0014】
<易接着層>
基材として樹脂フィルムを用いる場合には、基材上に易接着層を設けることができる。
【0015】
樹脂フィルム上に設ける易接着層としては、後述する物理現像核層に用いられるような各種高分子ラテックスを含有することが好ましく、これら高分子ラテックスは水分散液を用い、易接着層は水系塗工により形成されることが好ましい。中でも耐候性の観点からポリエステルラテックス、アクリルラテックス、およびウレタンラテックスの水分散物を含有することが好ましく、更に各種材料との接着性の観点からウレタンラテックス、特に耐候性の高い無黄変型ウレタンポリカーボネートラテックスが好ましい。これら高分子ラテックスの平均粒子径は0.01〜0.3μmであることが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.1μmである。また、これら高分子ラテックスは複数種類のラテックスを混合して用いることも可能であるが、ポリエステルラテックスやアクリルラテックスやウレタンラテックスは易接着層中の樹脂成分の30質量%以上含有し、好ましくは50質量%以上である。
【0016】
また樹脂フィルム上の易接着層は前記高分子ラテックスとともに水溶性高分子化合物を含有し、更に架橋剤で架橋された易接着層であることが好ましい。かかる水溶性高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸とスチレンの共重合体等が挙げられ、またゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリリジン等のタンパク質、カラギーナン、ヒアルロン酸などムコ多糖類、「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)2.6.4章記載のアミノ化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、アリルアミンとジアリルアミンの共重合体、ジアリルアミンと無水マレイン酸との共重合体、ジアリルアミンと二酸化硫黄との共重合体などが挙げられる。これら水溶性高分子化合物の中でもタンパク質を用いることが好ましい。水溶性高分子化合物は易接着層中の樹脂成分の40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。また易接着層に用いる樹脂成分量は100mg/m以上であることが好ましく、上限は2500mg/mであることが好ましい。より好ましくは100〜2000mg/m、更に好ましくは150〜1000mg/mである。
【0017】
架橋剤としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキサール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基を二個以上有する化合物、エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテルやポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等、あるいはこれら以外に「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)の2・6・7章、5・2章、9・3章など記載の架橋剤等の公知の高分子架橋剤を含有させることもできる。中でもエポキシ基を分子中に二個以上有する水溶性架橋剤、あるいはビニルスルホン系架橋剤が好ましい。ビニルスルホン系架橋剤とは分子中に少なくとも2個のビニルスルホニル基を有する化合物のことを言い、下記一般式Iもしくは下記一般式IIで示される化合物のことを言う。
【0018】
【化1】

【0019】
式中L、Lはそれぞれ存在してもしなくても良い2価の連結基を示す。存在する場合、好ましくは、炭素数1〜5の置換されていても良いアルキレン基、アリーレン基、カルバモイル基、スルファモイル基、酸素、硫黄、イミノ基等を示し、これらは組み合わさっていても良い。Rは水素原子、炭素数1〜5の置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いベンゼン、ナフタレン等のアリール基を示し、中でも水素原子が好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
式中、Lは少なくとも一個の水酸基を有するm価の基であり、mは2〜4である。一般式IIにおいて、Lとしては、2〜4価の炭素数1〜10の非環状炭化水素基、窒素原子、酸素原子及び/または硫黄原子を含有する5または6員の複素環基、5または6員の環状炭化水素基、または炭素数7〜10のシクロアルキレン基が挙げられる。非環状炭化水素基としては、好ましくは1〜8の炭素数を有するアルキレン基である。Lで表されるそれぞれの基は、置換基を有していても良く、または、ヘテロ原子(例えば窒素原子、酸素原子及び/または硫黄原子)、カルボニル基またはカルバミド基を介し相互に結合しても良い。Lは、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4を有する1種以上のアルキコキシ基、また塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アセトキシ基等で置換されていても良い。
【0022】
上記一般式Iの化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0023】
【化3】

【0024】
上記一般式IIの化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0025】
【化4】

【0026】
易接着層における架橋剤の添加量は易接着層中の全樹脂成分量に対して1〜7質量%が好ましく、更に好ましくは2〜5質量%である。
【0027】
更に易接着層にはシリカなどのマット剤、滑剤、顔料、染料、界面活性剤、紫外線吸収剤等を含有させることができる。
【0028】
<物理現像核層>
タイプ1に用いる写真感光材料が有する物理現像核層は、少なくとも物理現像核を含有する。物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等の金属コロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属流化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、コーティング法または浸漬処理法によって、基材上あるいは前記易接着層上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で0.1〜10mg/m程度が適当である。
【0029】
また物理現像核層は水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。水溶性高分子化合物の添加量は、物理現像核に対して10〜500質量%程度が好ましい。水溶性高分子化合物としては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。
【0030】
さらに物理現像核層は、高分子ラテックスを含有することもできる。高分子ラテックスは水分散液を用い、水系塗工することが好ましい。高分子ラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどの重合体があり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトオキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ポリエステル、各種ウレタン等がある。
【0031】
さらに物理現像核層には、前記した水溶性高分子化合物の架橋剤(硬膜剤)を含有することが好ましい。水溶性高分子化合物の架橋剤としては、前述の易接着層が含有する架橋剤と同様の架橋剤が例示されるが、好ましくはグリオキサール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤はグリオキサールである。架橋剤は、物理現像核層に含まれる水溶性高分子化合物に対して0.1〜30質量%を物理現像核層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。
【0032】
物理現像核層の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング等の塗布方式で塗布することができる。
【0033】
<ハロゲン化銀乳剤層>
本発明のタイプ1〜3に用いる写真感光材料のハロゲン化銀乳剤層は、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においてもそのまま用いることもできる。
【0034】
ハロゲン化銀乳剤に含有されるハロゲン化物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物及びフッ化物のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。ハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、当業界では周知の方法が用いられる。中でも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径の揃ったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。なおタイプ1に用いる写真感光材料のハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80mol%以上含有するのが好ましく、特に90mol%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0035】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角平板状、三角形平板状、四角形平板状など)、八面体状、十四面体状など様々な形状であることができる。
【0036】
ハロゲン化銀乳剤の製造において、必要に応じて、ハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩もしくはその錯塩を共存させてもよい。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。
【0037】
ハロゲン化銀乳剤は、必要に応じて、分光増感することもできる。また、ハロゲン化銀乳剤は必ずしもネガ感光性でなくてもよく、必要に応じて、ポジ感光性を持つ直接反転乳剤としてもよい。これにより、ネガ型をポジ型に、ポジ型をネガ型に変換することができる。直接反転乳剤に関しては、特開平8−17120号公報、特開平8−202041号公報に記載されている方法によって作製することができる。
【0038】
ハロゲン化銀乳剤層の塗布銀量としては、導電性銀パターンを形成させるために、少なくとも0.01g(硝酸銀換算)/mは必要である。好ましい塗布銀量は、2.0〜4.0g(硝酸銀換算)/mであり、塗布銀量があまり多すぎると、長い現像時間を必要としたり、基材に近い側のハロゲン化銀乳剤粒子の感光性が低下したりするなどの問題があるため、5.0g(硝酸銀換算)/m程度を上限とすべきである。
【0039】
ハロゲン化銀乳剤層はバインダーを含有する。バインダーとしては天然ポリマー、水溶性の合成ポリマー、非水溶性の合成ポリマーが挙げられる。
【0040】
天然ポリマーとしてはゼラチン、カゼイン、アルブミンなどの蛋白質、澱粉、デキストリン等の多糖類、セルロース及びその誘導体(例えばカルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、メチルセルロースなど)、アルギン酸、カラギーナン、フコイダン、キトサン、ヒアルロン酸などを用いることができ、その中でも最も好ましい天然ポリマーはゼラチンである。またコハク化ゼラチンなど公知の方法で修飾した天然ポリマーを用いることもできる。
【0041】
水溶性の合成ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、ポリリジン、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらのグラフト重合ポリマーなども用いることができる。
【0042】
非水溶性の合成ポリマーとしての高分子ラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン、スチレン・ブタジエン、スチレン・p−メトオキシスチレン、スチレン・酢酸ビニル、酢酸ビニル・塩化ビニル、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル、メチルメタクリレート・アクリロニトリル、メチルメタクリレート・ブタジエン、メチルメタクリレート・スチレン、メチルメタクリレート・酢酸ビニル、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン、メチルアクリレート・アクリロニトリル、メチルアクリレート・ブタジエン、メチルアクリレート・スチレン、メチルアクリレート・酢酸ビニル、アクリル酸・ブチルアクリレート、メチルアクリレート・塩化ビニル、ブチルアクリレート・スチレン等がある。本発明で用いる高分子ラテックスの平均粒径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.8μmである。
【0043】
ハロゲン化銀乳剤層は架橋剤を含有することができる。かかる架橋剤としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキサール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲン化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることができる。架橋剤量としては、タイプ2の写真感光材料ではハロゲン化銀乳剤層に含まれる天然ポリマーや水溶性の合成ポリマー等の水溶性高分子化合物に対して0.1〜30質量%をハロゲン化銀乳剤層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。一方、タイプ1およびタイプ3に用いる写真感光材料は、現像処理において、現像後に不要となったハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去するため、架橋剤を用いる場合は、上記水洗除去を妨げない範囲で用いることが必要となる。
【0044】
またハロゲン化銀乳剤層は、後述する現像液が含有する現像主薬を含有してもよい。現像主薬としては、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−p−クロロフェニル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられ、これらを2種類以上併用して用いることができる。なおタイプ3の写真感光材料が有するハロゲン化銀乳剤層は、上記した現像主薬の中でも特にベンゼン核の少なくとも1,2位または1,4位にヒドロキシル基が置換したベンゼン類を含有することが好ましい。これら現像薬は塗液に溶解させても各層に含有させても良いし、オイル分散液に溶解させて各層中に含有させることも可能である。
【0045】
ハロゲン化銀乳剤層にはさらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。また界面活性剤及び増粘剤等の各種塗布助剤を含有することができる。
【0046】
タイプ3の写真感光材料が有するハロゲン化銀乳剤層は、膨潤抑制剤を含有することが望ましい。本発明における膨潤抑制剤とは、写真感光材料を現像処理する際に水溶性高分子化合物が膨潤するのを抑制し良好な画像品質を得ることができる。膨潤抑制剤として作用するかどうかはpH3.5の5質量%ゼラチン水溶液に膨潤抑制剤を0.35mol/Lになるよう加えてゼラチンの沈澱が発生するかどうかで調べられ、この試験でゼラチンの沈澱が発生するような薬品は全て膨潤抑制剤として作用する。膨潤抑制剤の具体例としては、例えば硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化マンガン、リン酸マグネシウム等の無機塩類、あるいは例えばベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−トルエンスルホン酸、フェノールジスルホン酸、α−ナフタレンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、ジナフチルメタンスルホン酸などのスルホン酸類、例えばポリビニルベンゼンスルホン酸、無水マレイン酸とビニルスルホン酸の共重合物、ポリビニルアクリルアミドなどの高分子沈澱剤として用いられる化合物などが挙げられる。これら膨潤抑制剤は単独あるいはこれらを組み合わせて用いても良いが、無機塩類、特に硫酸塩類を使用することが好ましい。膨潤抑制剤の好ましい含有量は0.01〜10g/m、更に好ましくは0.03〜2g/mである。
【0047】
またタイプ3の写真感光材料が有するハロゲン化銀乳剤層には、更に無電解めっき触媒や導電性物質などを含有させることも可能である。
【0048】
<その他の構成層>
本発明のタイプ1〜3に用いる写真感光材料には、必要に応じて、裏塗り層およびオーバー層等の非感光性層を設けることができる。本発明の写真感光材料において、オーバー層はハロゲン化銀乳剤層の傷つきなどから保護する効果に加え、例えばタイプ1の写真感光材料においては、現像処理で写真感光材料中の銀が系外に拡散するのを抑制し、物理現像核上への銀の析出効率を高める効果がある。従って、オーバー層はハロゲン化銀乳剤層の上に設けることが好ましい。これらの非感光性層は、水溶性高分子化合物を主たるバインダーとする層であり、前述のハロゲン化銀乳剤層が含有する天然ポリマーや水溶性の合成ポリマーを用いることができる。非感光性層の水溶性高分子化合物量としては、各々の用途によって異なるが、0.001〜10g/mの範囲が好ましい。また、これら非感光性層には水溶性高分子化合物の架橋剤を用いることができるが、本発明のタイプ1およびタイプ3の現像処理において、現像後に不要なハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去するため、タイプ1およびタイプ3の写真感光材料において非感光性層に水溶性高分子化合物の架橋剤を用いる場合は、現像後のハロゲン化銀乳剤層の水洗除去を妨げない範囲で用いることが望ましい。
【0049】
本発明のタイプ1およびタイプ3に用いる写真感光材料の場合、さらに非感光性層として、水洗除去促進層を設けることが好ましい。この場合、水洗除去促進層は、不要なハロゲン化銀乳剤層を除去しやすくする目的で設けられるので、タイプ1においては物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間、タイプ3においては基材や易接着層とハロゲン化銀乳剤層との間に設けることが好ましい。水洗除去促進層は、水溶性高分子化合物をバインダーとして用い、好ましいバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。また、水洗除去促進層は、水溶性高分子化合物の架橋剤を用いることは好ましくない。水溶性高分子化合物の塗布量としては、1.0g/m以下が好ましい。水溶性高分子化合物の塗布量があまり多すぎると、例えばタイプ1の写真感光材料においては、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との距離が長くなるので、画像形成の際に、銀の析出量が減少したり画質が低下したりする等の問題があるため、0.1〜0.6g/m程度が好ましい。
【0050】
上記した各構成層中には、ハロゲン化銀乳剤の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることが好ましい。ハレーション防止剤としては、上記裏塗り層あるいは、例えば接着層、物理現像核層、水洗除去促進層等のハロゲン化銀乳剤層と基材の間に設けられる層に用いることが好ましく、これら2つ以上の層に分けて用いてもよい。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に用いることが好ましい。これら非増感性染料又は顔料の添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、約0.01〜約1g/mの範囲が好ましい。また必要に応じて公知の写真用添加剤、界面活性剤、マット剤、滑剤や、前述したハロゲン化銀乳剤層と同様な現像主薬等を含有することができる。
【0051】
<露光>
タイプ1〜3の導電性銀パターンを形成する方法においては、上記した写真感光材料を露光した後、現像処理が行われる。露光方法としては、透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いて走査露光する方法等がある。
【0052】
<現像処理>
タイプ1の現像処理には、画像を形成する部分のハロゲン化銀を溶解し、拡散させて、物理現像核上で還元し、析出させる現像処理工程と、不要となったハロゲン化銀層を水洗除去するための水洗除去工程がある。この場合、写真感光材料にネガ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合、露光により光を照射していない部分が、画像を形成する部分となり、ポジ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合は、露光により、光を照射した部分が画像を形成する部分となる。
【0053】
タイプ2の現像処理には、写真感光材料に前記ネガ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合、露光により、光を照射した部分のハロゲン化銀を還元する現像処理工程と、光を照射していない部分のハロゲン化銀を溶解除去するための定着処理工程がある。一方、写真感光材料にポジ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合、露光により、光を照射していない部分のハロゲン化銀を還元する現像処理工程と、光を照射した部分のハロゲン化銀を溶解除去するための定着処理工程がある。
【0054】
タイプ3の現像処理には、画像を形成する部分のハロゲン化銀を還元すると同時に水溶性高分子化合物を硬化させる現像処理工程と、不要な部分である非硬化部を洗い流す水洗除去工程がある。この場合、写真感光材料にネガ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合、露光により光を照射した部分が、画像を形成する部分となり、ポジ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合は、露光により、光を照射していない部分が画像を形成する部分となる。
【0055】
また上記したタイプ1〜3のいずれの方法においても、現像処理工程と水洗除去工程との間、あるいは現像処理と定着処理の間に、例えば、酢酸、クエン酸等を含有する酸性水溶液を用いて現像停止処理を行ってもよい。
【0056】
<現像液>
写真感光材料が有する各構成層が現像主薬を含有する場合、上記したタイプ1〜3の現像処理に用いる現像液は必ずしも現像主薬を含有する必要はなく、現像液は現像可能となる潜像核を有するハロゲン化銀の還元を可能とするためのアルカリ剤を含有する。アルカリ性剤として、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3リン酸ナトリウム、あるいは各種アミン化合物が挙げられる。タイプ1およびタイプ3に用いる現像液のpHは10以上が好ましく更に11〜14の範囲が好ましい。タイプ2に用いる現像液のpHは9以上が好ましく更に10以上が好ましい。
【0057】
写真感光材料が有する各構成層が、現像可能となる潜像核を有するハロゲン化銀の還元を可能とする量の現像主薬を含有しない場合、上記したタイプ1〜3の現像処理に用いる現像液は現像主薬を含有する。タイプ1およびタイプ2の現像液が含有する現像主薬としては、例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−p−クロロフェニル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン、アスコルビン酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよい。またタイプ3に用いる現像液は硬化現像主薬を含有する。硬化現像主薬としては、例えばハイドロキノン、カテコール、クロロハイドロキノン、ピロガロール、ブロモハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、トルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,3−ジクロロハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,3−ジブロモハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシ−2−アセトフェノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、4−フェニルカテコール、4−t−ブチルカテコール、4−s−ブチルピロガロール、4,5−ジブロモカテコール、2,5−ジエチルハイドロキノン、2,5−ジベンゾイルアミノハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、例えばN−メチル−p−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、p−ベンジルアミノフェノール、2−メチル−p−アミノフェノール、2−ヒドロキシメチル−p−アミノフェノール等のアミノフェノール化合物類、またその他にも例えば特開2001−215711号公報、特開2001−215732号公報、特開2001−312031号公報、特開2002−62664号公報記載の公知の硬化現像主薬を例示することができるが、特にベンゼン核の少なくとも1,2位または1,4位にヒドロキシル基が置換したベンゼンが好ましい。現像主薬および硬化現像主薬の使用量は1〜100g/Lであることが好ましい。
【0058】
タイプ1〜3の現像処理に用いる現像液はその他に、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウムに代表される保恒剤、上記した現像液のpHを好ましい範囲に保つための、炭酸塩やリン酸塩に代表される緩衝剤を含有することが好ましい。さらに臭化物イオン、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール等、現像核を持たないハロゲン化銀粒子が還元されないように加えられるカブリ防止剤を含有させることができる。ただしタイプ3の現像液において保恒剤は、硬化現像による硬化反応を停める作用があるので、少なくとも20g/L以下の使用量、好ましくは10g/L以下の使用量に留めることが好ましい。
【0059】
タイプ1の現像液は拡散転写現像を行うために可溶性銀錯塩形成剤を必須成分として含有する。タイプ2およびタイプ3の現像液において可溶性銀錯塩形成剤は必須成分ではないが、可溶性銀錯塩形成剤を含有することで得られる銀画像の導電性がより向上するため好ましく用いることができる。可溶性銀錯塩形成剤としては、具体的にはチオ硫酸アンモニウムやチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、1,10−ジチア−18−クラウン−6、2,2′−チオジエタノールなどのチオエーテル類、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。これらの可溶性銀錯塩形成剤の中で特にアルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。また可溶性銀錯塩形成剤量としては0.1〜40g/L、好ましくは1〜20g/Lである。
【0060】
タイプ3の現像液は膨潤抑制剤を含有することができる。膨潤抑制剤としては、写真感光材料に含有させるのと同様の膨潤抑制剤が例示される。好ましい膨潤抑制剤の含有量は50〜300g/L、好ましくは100〜250g/Lである。
【0061】
<現像処理条件>
タイプ1の現像液での処理温度は15℃〜30℃が好ましく、ハロゲン化銀乳剤層が現像液中に溶出するのを防止するために18℃〜23℃の範囲が好ましい。現像時間は生産効率を考慮して120秒以下が好ましい。タイプ2の現像液での処理温度は通常15℃から45℃の間で選ばれるが、より好ましくは25℃〜40℃である。現像時間としては生産効率を考慮して120秒以下が好ましい。またタイプ3の現像液での処理温度は2℃〜30℃であることが好ましく10℃〜25℃がより好ましい。現像時間は5秒〜30秒であり、好ましくは5秒〜20秒である。
【0062】
露光後の写真感光材料への現像液の供給方式は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯流された現像液中に、前記露光済みの写真感光材料を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上に現像液を1mあたり40〜120ml程度塗布するものである。特にタイプ3の現像液(硬化現像液)を用いる場合には塗布方式にし、硬化現像を繰り返し用いないようにする方が好ましい。
【0063】
<水洗除去工程>
タイプ1およびタイプ3の現像処理における水洗除去は、現像処理後に不要となったハロゲン化銀乳剤層等の各構成層を除去し、銀画像を基材上に露出させる工程である。従って水洗除去の処理液としては水を主成分とする。またこの処理液には緩衝成分を含有してもよく、除去したゼラチンの腐敗を防止する目的で、防腐剤を含有させてもよい。
【0064】
水洗除去方法としては、スクラビングローラ等を用いて処理液をシャワー方式、スリット方式等を単独、あるいは組み合わせて使用できる。また、シャワーやスリットを複数個設けて、除去の効率を高めることもできる。また、水洗除去の代わりに、剥離紙等に転写剥離する方法を用いてもよい。剥離紙等で転写剥離する方法としては、ハロゲン化銀乳剤層上の余分な現像液を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0065】
<定着処理>
タイプ2における定着処理は非画像部の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる。定着処理には公知の銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができ、「写真の化学」(笹井著、写真工業出版社(株))p321記載の定着液などが挙げられる。中でもチオ硫酸塩以外の脱銀剤が含まれる定着液が好ましい。その場合の脱銀剤としてはチオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、1,10−ジチア−18−クラウン−6、2,2′−チオジエタノールなどのチオエーテル類、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0066】
これらの脱銀剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンとしては、前記現像液で述べた可溶性銀錯塩形成剤として用いるものと同じ化合物を用いることができる。また、チオシアン酸塩については脱銀能力が高いが、人体に対する安全性の観点から使用することは好ましくない。これらの脱銀剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。また、脱銀剤量としては脱銀剤の合計で、1〜500g/Lが好ましく、より好ましくは10〜300g/Lの範囲である。
【0067】
定着液は脱銀剤の他にも、保恒剤として亜硫酸塩、重亜硫酸塩、pH緩衝剤として酢酸、ホウ酸アミン、リン酸塩などを含むことができる。また、硬膜剤として水溶性アルミニウム(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、カリ明ばん等)、アルミニウムの沈澱防止剤として二塩基酸(例えば、酒石酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム等)または三塩基酸(クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸カリウム等)も含有させることができる。定着液の好ましいpHは脱銀剤の種類により異なり、特にアミンを使用する場合は8以上、好ましくは9以上である。定着処理温度は通常10℃から45℃の間で選ばれるが、より好ましくは18℃〜30℃である。
【0068】
本発明のタイプ3においては、現像液で一旦現像した後、さらにハロゲン化銀溶剤を含む第2の現像液を用いて写真感光材料を現像処理する方法を用いることができる。この方法により、第1の現像処理で硬化されたレリーフ像中にある銀を、第2の現像処理で増大(補力)させることもできる。上記第2の現像工程はハロゲン化銀乳剤層の水洗除去工程の前であっても、後であっても良いが、非画像部のハロゲン化銀も銀の供給源として使用できることから水洗除去前に行うことが好ましい。また、第2の現像液に銀塩を加えるなど、さらなる銀イオンの供給を行い、第2の現像工程でより銀を大きくすることもできる。
【0069】
次に本発明の非晶質金属の電解めっきについて説明する。非晶質金属を電解めっき法により形成するには一般に合金めっきを使用する。合金めっきとは、1つのめっき浴から2つ以上の金属あるいは金属と非金属を同時に析出させる方法である。めっき浴中の金属塩からの金属析出のしやすさは電気化学的には標準電極電位に左右される。金属の電解めっきは一定電位にて行われるため、合金めっき浴では複数の金属が共に析出し、合金めっきとなるためには標準電極電位が接近している必要がある。標準電極電位が離れたものであっても、浴組成を変えることや、電流密度等のめっき条件を変更することにより近づけることが出来るものもある。しかし、上記のような電気化学の理論に従わずに金属が析出する場合があり、析出する電位が卑の金属が優先的に析出する場合と、単独では電析が不可能な金属イオンが、他の金属が析出するのに誘起されて析出する場合がある。水溶液から単独では電析しないタングステン、モリブデン、リン、イオウ、ホウ素などは、ニッケル、コバルト、鉄、クロム等の鉄属遷移金属の電析に誘起されて皮膜中に共析し、非晶質合金となる例が多い。このような皮膜作製法は誘起共析型合金めっきと呼ばれ、誘起共析される成分含有量が増加すると非晶質構造となる。また、めっき浴組成、温度、電流密度等のめっき条件によって、めっき金属成分組成を変化させることができる。めっき元素の組み合わせは2種(2元)あるいは3種(3元)が主であるが、めっき浴管理は元素が増えるにつれ複雑となるため、2元合金の方が液の管理の点では好ましい。2元合金めっきにおいての組み合わせとしては、Ni−W、Co−W、Fe−W、Cr−W、Ni−Mo、Co−Mo、Fe−Mo、Cr−Mo、Ni−Sn、Zn−Ni、Ni−P、Fe−P、Co−P、Pd−P、Ni−B、Cr−C、Ni−S、Co−S等が挙げられる。
【0070】
めっき金属の結晶性の判断については、X線回折装置によるX線回折測定を行うことでできる。結晶性金属では、金属種に固有の回折角にピークを有するため、この固有の金属結晶ピークが検出されなければ非晶質であると言える。
【0071】
また、2元合金めっきの中でも、得られる応答電流直線性および変動係数の観点からニッケル合金が好ましい。また、ニッケル合金の中でもめっき浴の管理の容易さとめっき条件に対してめっき被膜形成の容易さからニッケルリンめっきがとりわけ好ましい。以下、電解ニッケルリンめっきについて説明する。
【0072】
電解ニッケルリンめっきは、電解ニッケルめっき浴に還元剤として亜リン酸を導入することが基本構成となる。めっき液のニッケル源としては水溶性ニッケル塩である硫酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、亜リン酸ニッケルなど公知のものを使用できる。また、これら2種以上を混合して使用しても良い。使用量はニッケルイオンとして0.1〜2mol/lの範囲が好ましい。イオン濃度が低すぎるとめっき時の電流密度を上げられず、時間が長くなるため、作業効率が低下する。一方、イオン濃度が高すぎると、亜リン酸ニッケルの沈澱発生、液粘度増により、めっきへの悪影響が生じる。
【0073】
本発明で好ましく使用する電解ニッケルリンめっき液のリン源としては亜リン酸および亜リン酸塩の少なくとも1種を使用する。亜リン酸塩としては、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸アンモニウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸水素ナトリウムなどが挙げられる。使用量は亜リン酸イオンとして0.1〜3mol/lの範囲が好ましい。イオン濃度が低すぎるとめっき被膜中の含リン量の電流密度依存性が大きくなり、均一組成のめっき被膜を得ることが困難になる。一方、イオン濃度が高すぎる場合には、めっき析出速度が低下し、作業効率が低下する。
【0074】
本発明で好ましく使用する電解ニッケルリンめっき液にはクエン酸あるいはクエン酸塩が用いられる。クエン酸イオンは、ニッケルイオンを錯体化し、めっき皮膜中の含リン量を高めるとともに、広い電流密度で一定のめっき組成を維持し、めっきの付きまわりを改善する効果がある。クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウムなどが挙げられる。クエン酸イオンの使用量は、通常ニッケルイオンのモル比で0.1〜3倍の範囲にある。
【0075】
本発明で使用するニッケルリンめっき液には、公知のニッケルめっき液同様に、ホウ酸や光沢剤(サッカリン、ブチンジオールなど)、ピット防止剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)などを含有していても良い。
【0076】
本発明で使用するニッケルリンめっき液のpH範囲は2〜5が好ましい。pHが2未満では、水素発生による電流効率低下で、電析速度が著しく遅くなってしまう。一方、pHが5を上回る場合、陽極で酸化されたリン酸イオンとニッケルイオンによって沈澱が形成され、安定しためっき被膜の形成が困難となる。めっき液のpHは、液の組成に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ、あるいは硫酸、塩酸などの酸により適宜調整可能である。
【0077】
本発明で使用するニッケルリンめっきの電流密度は、0.1〜30A/dmが好ましい。電流密度が高すぎると通常の撹拌ではめっき液濃度を一定にすることが困難となる。
【0078】
本発明で使用するニッケルリンめっき液の温度は40〜80℃が好ましい。めっき浴温度が低すぎるとめっき被膜中の含リン量の電流密度依存性が大きくなり、均一組成のめっき被膜を得ることが困難になる。
【0079】
本発明のバイオセンサ用電極はロールツーロール方式により数多くの電極を一括して大量に生産することができる。本発明におけるロールツーロール方式とは、ロール状に巻いた長尺の基材、例えばフィルムを巻き出して、間欠的、あるいは連続的に搬送しながら該基材上に加工を施し、再びロールに巻き取る方式である。本発明のバイオセンサ用電極の製造方法は、ロール状の基材を連続して巻き出し、該基材上にハロゲン化銀乳剤層塗液を塗布、乾燥してハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を作製する第1の工程、連続して搬送された写真感光材料を露光する第2の工程、連続して搬送された露光済みの写真感光材料を現像処理し、基材上に導電性銀パターンを形成する第3の工程、および該基材上の導電性銀パターンに電解めっきにより非晶質金属をめっきし、その後ロール状に巻き取る第4の工程を少なくとも具備する。これら第1〜第4の工程はその工程中、あるいは各工程後に必要に応じてさらに巻き取る工程を設けてもよいが、第1の工程から第4の工程まで連続して行うことも可能である。
【0080】
第1の工程は、ロール状の基材を巻き出し、連続搬送させコーティングヘッド部でハロゲン化銀乳剤塗液を塗布する。塗液が設けられた基材は冷却ゾーン、乾燥ゾーンを通過し、写真感光材料とり、必要に応じて巻き取られる。
【0081】
第2の工程は例えば、特開2007−225884号公報記載の連続露光装置を用いて行うことができる。該装置は第1の工程で作製した写真感光材料を搬送しながら露光する連続露光部と、露光が完了した該写真感光材料をロール状に巻き取るための巻き取り部を有する。連続露光部は透明円筒体と円筒内光源からなり、透明円筒外周と該写真感光材料の間にパターンマスクを設け、該写真感光材料を巻き付けて搬送させながら、中央に設けた光源より露光を行うことで、連続パターン露光を行うことができる。パターンマスクは個々の電極が多数集積されたものであり、後の電解めっき工程でめっき加工するために、給電部分で接続している。
【0082】
第3の工程は例えば、特開2006−190535号公報記載の処理装置を用いて行うことができる。該装置は第2の工程得たロール状の露光済み写真感光材料を保持する巻き出し軸と、現像部と、リンスまたは定着部と、乾燥部と、処理、乾燥することによりできた導電性銀パターンをロール状に巻き取るための巻き取り軸を有し、連続で搬送することにより導電性銀パターンを得ることができる。
【0083】
第4の工程は例えば、図3に示す様な装置にて行うことができる。第3の工程で作製したロール状の導電性銀パターンを有する基材を巻き出し部1より巻き出し、導電性銀パターンを給電ロール6(陰極)に接触させ、めっき液4が投入されためっき液槽3へ搬入する。めっき液4中には陽極板5が導電性銀パターンに相対して設けられており、めっき液4中を連続搬送されている間に非晶質金属が該導電性銀パターン上へ析出する。めっき液槽3から搬出された後に、図示しない水洗工程、乾燥工程を経て、巻き取り部2で巻き取られ、ロール状センサ用電極集積体となる。
【0084】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
本発明の実施例を以下に示す。まず、写真感光材料方式にて導電性銀パターンを作製した。
<写真感光材料方式>
基材として、厚み100μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。この基材1000mを巻き取ったロール状の基材に、下記のようにして作製した硫化パラジウムを含有する物理現像核層塗液を塗布、乾燥し、一旦巻き取った。
【0086】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40mL
蒸留水 1000mL
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000mL
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0087】
<物理現像核層塗液の調製/1mあたり>
前記硫化パラジウムゾル(固形分として) 0.4mg
グリオキサール水溶液(40%水溶液) 0.08ml
ポリエチレンイミン 50mg
(エポミンSP−200(有効成分約100%):日本触媒社製)
界面活性剤(S−1) 10mg
【0088】
【化5】

【0089】
続いて、基材に近い方から順に下記組成の水洗除去促進層1、ハロゲン化銀乳剤層1、及び最外層1を上記物理現像核層の上にロールツーロール方式で塗布した。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い、金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0090】
<水洗除去促進層1組成/1mあたり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
【0091】
<ハロゲン化銀乳剤層1組成/1mあたり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0092】
<最外層1組成/1mあたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0093】
このようにして得た写真感光材料を、特開2007−225884号公報に記載される図1の装置を用いて、ロールツーロール方式で連続搬送し、水銀灯を光源として400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、図1のパターンを集積させた原稿を通じて露光することにより、一度に多数の図1のパターンを露光した。
【0094】
続いて下記の拡散転写現像液を作製した。その後、先に露光した写真感光材料を特開2006−190535号公報に記載の図1の装置を用いて、ロールツーロール方式で連続搬送し、下記現像液中に20℃で90秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層および非感光性層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。このようにして図1のパターンを多数有する導電性銀パターン基材ロールを得た。
【0095】
<拡散転写現像液>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000mLとする
pH=12.2に調整する。
【0096】
上記のようにして得られた導電性銀パターンに以下の<A−1>から<A−5>のそれぞれの電解めっき処理を図3に示す装置を用いて、ロールツーロール方式にて連続搬送で行い、センサ用電極を作製した。得られた各サンプルの詳細は表1の通り。
【0097】
<A−1>
下記ニッケルリンめっき液を使って温度60℃、電流密度2A/dmにて陽極にニッケル板を使用し、ニッケルリンめっきを行った。
【0098】
<ニッケルリンめっき液処方>
硫酸ニッケル六水和物 250g/L
塩化ニッケル六水和物 77g/L
ホウ酸 77g/L
クエン酸三ナトリウム二水和物 322g/L
亜リン酸 205g/L
pH=2.5
【0099】
<A−2>
下記ニッケルめっき液を使って温度45℃、電流密度4A/dmにて陽極にニッケル板を使用し、ニッケルめっきを行った。
【0100】
<ニッケルめっき液処方>
硫酸ニッケル六水和物 240g/L
塩化ニッケル六水和物 45g/L
ホウ酸 30g/L
pH=4.5
【0101】
<A−3>
下記ニッケルスズめっき液を使って温度50℃、電流密度0.5A/dmにて陽極にニッケル板を使用し、ニッケルスズめっきを行った。
【0102】
<ニッケルスズめっき液処方>
塩化ニッケル六水和物 30g/L
塩化第一スズ 30g/L
ピロリン酸カリウム 200g/L
グリシン 20g/L
アンモニア水(28%) 5ml/L
pH=8.0
【0103】
<A−4>
下記ニッケルタングステンめっき液を使って温度60℃、電流密度2.5A/dmにて陽極にニッケル板を使用し、ニッケルタングステンめっきを行った。
【0104】
<ニッケルタングステンめっき液処方>
硫酸ニッケル六水和物 27g/L
タングステン酸ナトリウム二水和物 53g/L
クエン酸三ナトリウム二水和物 300g/L
pH=6.0
【0105】
<A−5>
下記スズ亜鉛めっき液を使って温度50℃、電流密度5.0A/dmにて陽極にスズ75%、亜鉛25%合金板を使用し、スズ亜鉛めっきを行った。
【0106】
<スズ亜鉛めっき液処方>
硫酸第一錫 36g/L
硫酸亜鉛 17g/L
クエン酸 100g/L
硫酸アンモニウム 80g/L
pH=5.5
【0107】
上記写真感光材料方式とは別に以下の2つの方式にて導電性銀パターンを作製した。
【0108】
<エッチング方式>
厚み100μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルム上に蒸着により全面銀膜を形成した。この銀膜上にクレゾールノボラック樹脂、およびナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含有するポジ型感光性レジストを、塗布、乾燥した。次に、レジスト層面を図1のパターンを集積させた原稿を真空密着させ、レジスト感光域の波長を有する光(超高圧水銀灯)を集光させ、コリメーターレンズを通して平行光露光することにより一度に多数の図1のパターンを露光した。露光したシートは30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液中で揺動させながら40秒間現像し銀薄膜層上にレジストパターンを得た。
【0109】
このレジストパターンを有する銀薄膜フィルムの、レジストで遮蔽されていない部分の銀を、三菱製紙社製カラー印画紙用漂白定着液PSA−2に40℃30秒間揺動させながら浸漬することにより除去した。その後40℃の3%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーで吹き付けることにより、レジストを剥離、除去し水洗、乾燥させて、導電性銀パターンを作製した。
【0110】
上記のようにして得られた導電性銀パターンを有する基材に前述した<A−1>の電解めっき処理を行い、センサ用電極を作製した。
【0111】
<インクジェット方式>
パラジウム触媒を含むインデューサー(OPC−50;奥野製薬工業製)50mlと、水50mlと、グリセリン100mlとを混合し、粘度15mPas(温度25℃)のインクを調製した。このインクを用い、インクジェット装置によって厚み100μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルム上に図1のパターンを描画し、40℃で6分間乾燥後、水洗した。これにより基材上に印刷パターンを得た。
【0112】
なお、インクジェット装置としては、有限会社マイクロジェット社製インクジェット式塗布装置(MJP−1500V)を用いた。
【0113】
上記印刷パターンを形成した基材1を、第1の前処理液(温度25℃)に5分間浸漬し、その後、第2の前処理液(温度25℃)に1分間浸漬することにより、印刷パターン3中のパラジウム核を還元して無電解めっきの析出を容易にする処理を施した。なお、第1の前処理液及び第2の前処理液は以下の通りである。
【0114】
<第1の前処理液>
OPC−150クリスターMU(奥野製薬工業製) 150ml
水 1000ml
<第2の前処理液>
OPC−150クリスターMU(奥野製薬工業製) 30ml
水 1000ml
その後、自己触媒型無電解銀めっき液(奥野製薬工業(株)製ムデンシルバーKSS浴)に35℃で15分間浸漬して、膜厚0.1μmの導電性銀パターンを得た。
【0115】
上記のようにして得られた導電性銀パターンに前述の<A−1>の電解めっき処理を行い、センサ用電極を作製した。
【0116】
上記の写真感光材料方式、エッチング方式およびインクジェット方式を用いて作製したセンサ用電極を個々に切り離し、その上に以下の試薬層を形成した。
【0117】
<試薬層形成>
酵素(グルコースオキシダーゼ)、メディエータ(フェリシアン化カリウム)、親水性高分子(カルボキシメチルセルロース)含む水溶液を上記センサ用電極上に滴下し、乾燥させることによりセンサ電極を作製した。
【0118】
<めっき金属結晶性>
上記の各サンプル作製において図1のパターンを使用せず、全面にめっき金属膜を形成したそれぞれのサンプルをリガク(株)製X線回折装置MiniFlexを用いて形成しためっき金属膜に対応する金属結晶ピークが検出されるかを確認した。MiniFlexはCuKα線を光源とし、その出力は30kV,15mAである。測定法はステップスキャニング法を用い、データサンプリング間隔は0.01°、1データ点の測定時間は1秒である。金属結晶ピークが検出されなければ、非晶質と判断した。結果を表1に示す。
【0119】
<応答電流直線性の評価>
上記のようにして得られたセンサ電極にて、全血を用い、グルコース濃度と応答電流との関係を求めた。測定全血を電極部へ導入し、5秒間反応を進行させた後0.2Vの電位を印加し、印加後10秒後の電流値を測定した。測定した電流値をグルコース濃度に対して線形回帰し、回帰定数を求めた。回帰定数が0.95以上を応答電流直線性良好として「○」、0.95未満を「×」として表1に結果を示す。
【0120】
【表1】

【0121】
この結果、サンプル2および3の電極では応答電流の直線性は得られなかった。サンプル1および4〜8の電極においては応答電流の直線性が得られた。また、サンプル2および3以外のサンプルでの各濃度における応答電流の変動係数(n=5)の上限値も表1に示す。得られたデータの変動係数については、写真感光材料方式によりパターンを作製したサンプル(サンプル1、4〜6)ではいずれの濃度においても4%ないし5%以下の値となった。一方、エッチング方式およびインクジェット方式でパターンを作製したサンプルにおいては8%以下となり、測定精度は写真感光材料方式に劣る結果となった。
【0122】
(実施例2)
写真感光材料方式において<タイプ1>、<タイプ2>および<タイプ3>それぞれの方法を使用し、実施例1と同様に厚み100μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、導電性銀パターン基材を作製した。
【0123】
<タイプ1>
サンプルNo.1と同様に作製した。
【0124】
<タイプ2>
下記、ハロゲン化銀乳剤層2を厚み100μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムを1000m巻き取ったロール状の基材上に塗布した。ハロゲン化銀乳剤は写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀40モル%と臭化銀60モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸とを用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀3gあたり1gのゼラチンを含む。
【0125】
<ハロゲン化銀乳剤層2組成/1mあたり>
ゼラチン 1g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
グリオキサール(40%水溶液) 50mg
【0126】
このようにして得た写真感光材料を、パターン原稿を図2に変えた以外は実施例1同様に露光した。
【0127】
続いて、実施例1と同様の装置を用いて、下記処方の直接現像液ロに30℃で30秒間浸漬した後、続いて2%酢酸溶液に20℃で30秒浸漬させ停止処理した。
【0128】
<直接現像液ロ>
亜硫酸ナトリウム 70g/L
ハイドロキノン 18g/L
1−フェニル−3−ピラゾリドン 0.7g/L
炭酸カリウム 30g/L
臭化カリウム 3g/L
N−(2−アミノエチル)エタノールアミン 3g/L
水酸化ナトリウム pH=10.5となる量
【0129】
現像、停止処理の終った写真感光材料を下記定着液に20℃180秒浸漬させた。
【0130】
<定着液処方>
N−(2−アミノエチル)エタノールアミン 250g
pHが10.5となるよう、5規定水酸化ナトリウム水溶液で調整し、更に水を加えて全量を1Lとする。
【0131】
<タイプ3>
ハロゲン化銀乳剤層3を厚み100μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムを1000m巻き取ったロール状の基材上に塗布した。ハロゲン化銀乳剤は写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀40モル%と臭化銀60モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。また、ハロゲン化銀乳剤の保護バインダーの一部に分子量1万以下の低分子ゼラチンを用いることで混合後の脱塩処理工程で低分子ゼラチンが水洗除去時に除去されるようした。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀3gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0132】
<ハロゲン化銀乳剤層3組成/1mあたり>
ゼラチン 1.0g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
4−フェニルカテコール 20mg
硫酸ナトリウム 0.05g
【0133】
このようにして得た写真感光材料を、パターン原稿を図2に変えた以外は実施例1同様に露光した。
【0134】
続いて、実施例1と同様の装置を用いて、下記処方の現像液で23℃10秒浸漬処理して硬化現像し、その後下記第2現像液で25℃40秒処理し、その後35℃の温水で水洗除去処理を行った。
【0135】
<現像液>
水酸化ナトリウム 20g
臭化カリウム 1g
亜硫酸ナトリウム 1g
【0136】
<第2現像液>
リン酸3カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 50g
N−メチルエタノールアミン 10g
臭化カリウム 0.5g
全量を水で1000mLとする
リン酸を加えpH=10.5に調整する。
【0137】
上記のようにして得られた3種の導電性銀パターン(サンプル1、9、10)を有するロール状の基材を実施例1の<A−1>にて、図3の装置を用いてめっき処理を行い、センサ用電極を作製した。めっき条件はサンプル1と同様である。作製した電極を60℃90%RHの湿熱条件下に1000時間暴露した。暴露後の電極上に実施例1と同様に試薬層を形成し、応答電流直線性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0138】
【表2】

【0139】
この結果、タイプ1〜3のいずれの作製方法においても良好な応答電流直線性が得られた。また、変動係数は<タイプ1>の方法で作成した導電性銀パターンを用いた場合が最も良好であった。
【符号の説明】
【0140】
B 基材部
E1 作用電極部
E2 対電極部
1 巻き出し部
2 巻き取り部
3 めっき液槽
4 めっき液
5 陽極板
6 給電ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を露光、現像処理することで導電性銀パターンを作製し、その後該導電性銀パターン上に非晶質金属を電解めっきすることで得られるバイオセンサ用電極。
【請求項2】
前記写真感光材料が、基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する写真感光材料である請求項1記載のバイオセンサ用電極。
【請求項3】
ロール状の基材を連続して巻き出し、該基材上にハロゲン化銀乳剤層塗液を塗布、乾燥してハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を作製する第1の工程、連続して搬送された写真感光材料を露光する第2の工程、連続して搬送された露光済みの写真感光材料を現像処理し、基材上に導電性銀パターンを形成する第3の工程、および該基材上の導電性銀パターンに電解めっきにより非晶質金属をめっきし、その後ロール状に巻き取る第4の工程を少なくとも具備するバイオセンサ用電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−8065(P2012−8065A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145873(P2010−145873)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】