説明

バイオチップを用いた診断システム

【課題】 遠隔地でも、病院などに赴かず、容易に速やかに受けることのできるバイオチップを用いた診断システムを提供する。
【解決手段】 双方向通信が可能な測定ステーションと診断ステーションとを含む診断システムであって、測定ステーションが、バイオチップの蛍光物質で標識或いは染色した1又は2以上のプローブに、励起光照射手段と、プローブの蛍光検出手段と、診断ステーションへの蛍光データ送信手段と、診断ステーションからのデータ受信手段と、診断ステーションからのデータを含む所定のデータ報知手段と、を含み、診断ステーションが、測定ステーションからの蛍光データ受信手段と、蛍光のデータに関連付けられた疾病データを記憶する疾病データ記憶手段と、蛍光のデータと疾病データとに基づいて、プローブごとに疾病の判定を行う疾病判定手段と、疾病の判定結果のデータを、測定ステーションへ送信可能な送信手段と、を含むようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット等の双方向通信が可能な通信回線を用いて、バイオチップ上に備えられたプローブのハイブリダイゼーションを利用して、疾病の感染の診断を行なう診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等の双方向通信可能な通信回線を用いて、遠隔地にいる患者の診断を行なう診断システムが提案されている。例えば、特許文献1では、クライアントがデジタルカメラで食事内容を撮影して、その画像データをインターネットを用いて医師や専門家に送信し、医師や専門家が受信した画像に基づいて、クライアントの希望する分野に関して、分析結果や助言をインターネットを用いて返信する診断システムが提案されている。
【0003】
また、特許文献2では、デジタルカメラ付き顕微鏡で撮影された血液画像を、インターネット等の通信回線を用いて、検査結果蓄積装置へ送信し、医師がインターネット等の通信回線を用いて、検査結果蓄積装置から血液画像を受信して、その血液画像に基づいて、血液の形態学的診断を行なう血液診断支援システムが提案されている。
【0004】
また、近年、バイオチップ上に固定されたプローブのハイブリダイゼーションを用いて、DNA等のバイオ分子の種類を特定して疾病等の診断に用いる、バイオチップを用いた検出方法も様々な分野で用いられるようになっている。
【0005】
ここで、バイオチップとは、ガラス、シリコン、プラスチック等の基板上に、DNA、RNA、PNA等の人工核酸、タンパク質、糖鎖等からなる既知の配列を有する基準バイオ分子をプローブとして固定したものである。検出に当たっては、このプローブに、蛍光物質を標識或いは染色した標的バイオ分子を投与して、標的バイオ分子がプローブと結合(DNA、RNA、人工核酸の場合は相補結合、タンパク質、糖鎖の場合は親和結合)したか否かを判定する。具体的には、標的バイオ分子がプローブと結合した場合には、蛍光物質がプローブと一緒に固定されるので、光源からの励起光によって蛍光物質が励起され発光する。また、標的バイオ分子と結合しないプローブには、蛍光物質は存在しないので、励起光によって発光することはない。従って、この蛍光を検出することによって、標的バイオ分子がプローブと結合(ハイブリダイズ)したか否かを判定することができる。
【0006】
バイオチップによるハイブリダイゼーションを用いたバイオ分子の検出装置としては、励起光をバイオチップ上のプローブに照射する励起光源と、プローブから発生する蛍光の波長域の光だけを透過させるフィルタと、このフィルタを透過した蛍光を検出するCCD(Charge Coupled Device)等を用いた二次元光センサと、二次元光センサに基づいて画像データや読み取りデータを作成、表示する制御装置と、を備えた専用のバイオ分子の検出装置が知られている。
【特許文献1】特開2003−150699号公報
【特許文献2】特開2004−170368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1や特許文献2には、通信回線を用いた診断システムや診断支援システムが開示されているが、その機能は、あくまで診療の補助的な役割を果たすに過ぎず、例えば、バイオチップを用いて疾病を診断するようなことはシステムの構成からも不可能である。また、上述のバイオチップによるハイブリダイゼーションを用いたバイオ分子の検出装置では、あくまで、検出装置でバイオチップから発する蛍光を読み取って、バイオ分子の検出を行なうことはできるが、更に、疾病の診断のようなことまで行なうことは不可能である。
【0008】
従って、本発明の目的は、上述の課題を解決し、バイオチップを用いた診断を、病院や医院へ赴くことなく、容易に速やかに受けることのできるバイオチップを用いた診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明のバイオチップを用いた診断システムの第1の実施態様として、双方向通信が可能なように接続された測定ステーションと診断ステーションとを含む診断システムであって、前記測定ステーションが、バイオチップの蛍光物質で標識或いは染色された1または2以上のプローブに、励起光を照射する励起光照射手段と、前記励起光に応答して前記プローブから発せられる蛍光を検出する蛍光検出手段と、検出された前記蛍光のデータを前記診断ステーションへ送信可能な送信手段と、前記診断ステーションからのデータを受信可能な受信手段と、前記診断ステーションからのデータを含む所定のデータを報知可能な報知手段と、を含み、前記診断ステーションが、前記測定ステーションからの前記蛍光のデータを受信可能な受信手段と、前記蛍光のデータに関連付けられた疾病データを記憶する疾病データ記憶手段と、前記蛍光のデータと前記疾病データとに基づいて、前記プローブごとに疾病の判定を行う疾病判定手段と、前記疾病の判定結果のデータを、前記測定ステーションへ送信可能な送信手段と、を含む診断システムが考えられる。
【0010】
ここで、「双方向通信が可能」とは、インターネットのような電気通信回線を用いた公衆ネットワークによって接続されたものも含まれるし、ある領域での専用ネットワークで接続されたものも含まれるし、複数のネットワークの相互接続によって構成された複合ネットワークで接続されたものも含まれる。
【0011】
「測定ステーション」とは、バイオチップの読み取りを行って、読み取ったデータを「診断ステーション」へ送信し、他のステーションからのデータを受信して、所定のデータをユーザ等に報知することのできる端末である。測定ステーションの設置場所は、任意の場所に設置が可能であり、例えば、ユーザの自宅、公共施設、コンビニエンスストア、薬局、病院、医院、その他様々な場所が考えられる。
【0012】
「診断ステーション」は、測定ステーションから送信されたバイオチップの読み取りデータに基づいて、疾病の診断処理を行ない、その診断処理の結果を、測定ステーションを含む他のステーションへ送信することができる端末である。この診断ステーションの設置場所は、やはり、任意の場所が考えられるが、医師を介せずにシステム独自に疾病の診断を行なうことができるので、病院や医院へ設置する必要はない。ただし、病院や医院に設置した場合には、バイオチップの各プローブの病理検査の結果を、容易に、システムにフィードバックすることができる利点がある。
【0013】
「バイオチップ」とは、基板上に、既知の配列を持つ基準バイオ分子を「プローブ」として固定したものであり、基板の材料としては、所定の強度を有すれば、ガラス、シリコン、プラスチックを始めとするあらゆる材料を用いることができる。また、プローブを標識或いは染色する「蛍光物質」としては、励起光の照射に応答して蛍光を発するものであれば、あらゆる物質を用いることが可能であり、例えば、量子ドットを用いることも可能である。
【0014】
なお、「標識」とは、プローブに蛍光物質を共有結合することである。また、「染色」は、基準バイオ分子と標的バイオ分子がハイブリダイズした状態に対し、インカレータ、グループバインダ等により、このハイブリダイズした態様のみを更に強固にして、検出効率を高めるために行われる方法である。
「励起光照射手段」により出射される「励起光」は、可視光には限られず、紫外線の領域や赤外線の領域を含むあらゆる波長の光が含まれる。また、励起光には、単一の波長を有する光も含まれるし、複数の波長の光が混合された光も含まれる。
【0015】
「蛍光検出手段」には、「疾病データ」との対照が可能な態様で蛍光を検出することが可能であれば、あらゆる検出手段が含まれる。例えば、CCD等の2次元光センサを用いることも可能であるし、蛍光検出のための専用の装置だけではなく、モノクロ/カラースキャナやCCDカメラに代表される汎用画像読取装置を利用したものも含まれる。更に、蛍光を電気信号に変換して制御処理を行なうものだけでなく、化学フィルムのようなものを用いて蛍光を検出するものも含まれる。
【0016】
励起光の照射に応答して発する「蛍光」については、1種類の蛍光を用いることも可能であるし、複数の蛍光を用いることも可能である。また、単一の波長を有する蛍光を用いることもできるし、複数の波長の光が混合された蛍光を用いることもできる。
また、蛍光を発したプローブと疾病とを関連付ける方法としては、予め蛍光物質と疾病とを関連付けておいて、励起光の照射によって発する蛍光の色や波長を識別することによって、疾病を認識することも可能であるし、固定するプローブの位置と疾病とを関連付けておいて、蛍光を発したプローブの位置を識別することによって、疾病を認識することも可能である。後者の場合には、1種類の蛍光物質で複数の疾病の識別が可能である。
【0017】
「報知手段」は、判定結果を含む様々な情報を、画像表示によって報知するものであってもよいし、音声によって報知するものであってもよいし、プリンタ等で印刷をするものでもよいし、それらの組み合わせであってもよい。判定結果を含む情報をユーザに報知可能なものであれば、その他のあらゆる手段が考えられる。
【0018】
「疾病データ」は、蛍光検出手段により検出した蛍光に基づいて、所定の疾病を特定できるデータであれば、あらゆるデータが含まれる。また、この疾病データには、疾病の詳細な説明データや疾病の対処方法のデータを始めとする付随データを含むことも考えられる。
【0019】
「疾病判定手段」は、蛍光検出手段により検出された蛍光と疾病データとを対照して、疾病の判定を行なえるものであれば、あらゆるものが含まれる。この疾病判定手段では、専用の制御手段を用いることも可能であるし、パーソナルコンピュータに代表される汎用の制御装置の機能を用いることも考えられる。
【0020】
バイオチップを用いた診断システムに係る本実施態様によれば、任意の場所に設置された測定ステーションにおいて、ユーザがバイオチップの読取操作を行なえば、通信回線で接続された診断ステーションにおいて、このバイオチップのプローブに含まれるバイオ分子に関する疾病の判定を行なって、測定ステーションにいるユーザに迅速に診断結果を報知することが可能である。従って、従来では病院や医院に行って検査をする必要があった疾病の診断に関しても、ユーザが、家庭や公共施設等の任意の場所で、容易に、迅速に、低コストで診断を受けることができる。
【0021】
本発明のバイオチップを用いた診断システムのその他の実施態様として、前記プローブを標識或いは染色する蛍光物質として、異なる色の蛍光を発する2以上の蛍光物質を所定の割合で混合した蛍光物質を用い、前記疾病判定手段が、検出した前記蛍光に含まれる前記異なる色の蛍光の割合に基づいて疾病の判定を行なう診断システムが考えられる。
【0022】
本実施態様における「異なる色の蛍光」とは、蛍光検出手段により識別が可能な光であれば、単一の波長を有する光だけでなく、複数の波長や波長帯を有する混合光も含まれる。例えば、蛍光検出手段がフィルタ1を有する光センサ1と、フィルタ2を有する光センサ2を備えている場合に、フィルタ1を透過するがフィルタ2を透過しない光1と、フィルタ2を透過するがフィルタ1を透過しない光2とは、異なる色の光であり、光1や光2は単一の波長を有する光である必要はない。
【0023】
本実施態様では、例えば、2種類のフィルタを用いる場合であっても、各々のフィルタのみを通過する2色の蛍光物質を混合し、その混合比率を様々な割合に変化させることによって、識別可能な多数の蛍光物質を得ることができる。従って、従来では、蛍光物質の色に応じて、多数のフィルタを取り替える必要があったため、蛍光読み取りのための専用装置が必要であり、また、何度もフィルタを交換しながら、読み取り作業を繰り返す必要があったが、本実施形態では、汎用のカラースキャナ等も利用可能であり、低い製造コストの装置を用いて、フィルタの交換等を行なわずに、一度に蛍光の読み取り作業を行なうことができる。従って、読取装置の製造コストの低減、診断作業の簡素化、容易化、及び診断コスト低減を可能にする。
【0024】
本発明のバイオチップを用いた診断システムのその他の実施態様として、同一のバイオ分子の異なる構造部分と結合する2以上の前記プローブを用いて、検出した各々の前記プローブからの前記蛍光に基づいて、該標的バイオ分子に対する特異性を判別する診断システムが考えられる。本実施態様により、一般的に判定が困難なバイオ分子の特定に関する特異性について、定量的に判定を行なうことができる。
【0025】
本発明のバイオチップを用いた診断システムのその他の実施態様として、前記蛍光検出手段が、一度に複数のバイオチップについての蛍光を検出可能な診断システムが考えられる。本実施態様により、一度に、多数のユーザの診断処理を行なうことが可能であり、診断時間を短縮化、診断コストの低減を図れる。
【0026】
本発明のバイオチップを用いた診断システムのその他の実施態様として、前記測定ステーション及び/または前記診断ステーションと双方向通信可能なように接続され、前記測定ステーション及び/または前記診断ステーションからデータの受信が可能な受信手段と、前記測定ステーション及び/または前記診断ステーションへデータの送信が可能な送信手段と、
前記測定ステーション及び/または前記診断ステーションからのデータを含む所定のデータを報知可能な報知手段と、を有する1または2以上の医療用ステーションを更に含む診断システムが考えられる。
【0027】
「医療用ステーション」とは、診断ステーションで行なった診断処理の結果を受信して、受信したデータを画像表示等により報知したり、病理検査の結果をはじめとする所定のデータを他のステーションへ送信したりすることのできる端末である。医療用ステーションの設置場所は、任意の場所に設置することが可能であり、例えば、病院や医院に設置する場合も考えられるし、薬局に設置する場合も考えられるし、患者宅に設置することも考えられる。また、その他の公共機関を含め、あらゆる場所に設置を考えることができる。なお、設置する医療用ステーションの数は、任意の数を定めることができる。
本実施態様によれば、バイオチップを用いた診断結果データを、測定ステーションにいるユーザだけでなく、関連する医療関係者をはじめとする様々な人、機関が利用することができる。
【0028】
本発明のバイオチップを用いた診断システムのその他の実施態様として、前記診断ステーションが、前記疾病に関連付けられた薬剤データを記憶した薬剤データ記憶手段と、前記疾病の判定結果と前記薬剤データとに基づいて、処方箋データを作成する処方箋決定手段と、を含み、前記処方箋データを、前記診断ステーションから前記測定ステーション及び/または前記医療用ステーションへ送信可能な診断システムが考えられる。
【0029】
本実施態様によれば、バイオチップを用いた疾病の判定結果に基づいて、処方箋データを、例えば、薬局に設置された医療用ステーションへ送信することによって、すみやかに薬を処方することが可能であり、ユーザが待ち時間無く必要な処方薬を入手することができる。
また、更に、例えば、医療用ステーションが薬の配送業者等のオフィスに設置されていれば、所定の場所へ処方薬を配送することも、ユーザの手間暇をかけずに迅速に行なうこともできる。
【0030】
本発明のバイオチップを用いた診断システムのその他の実施態様として、前記測定ステーションまたは前記医療用ステーションから前記診断ステーションへ送信されるデータに、前記蛍光のデータが前記診断ステーションへ送信された前記プローブの病理検査のデータが含まれ、前記疾病データ記憶手段が、前記蛍光のデータと前記病理検査のデータとを関連付けて記憶し、記憶されたデータが、以降の前記疾病判定手段による疾病の判定に用いられる診断システムが考えられる。
【0031】
本実施態様によれば、実際にプローブの病理検査の結果を診断システムにフィードバックすることが可能であり、疾病データ記憶手段にフィードバックされたデータが蓄積され、いわゆる学習制御により、診断システムでの疾病の判定の制度を更に高めていくことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の診断システムによれば、任意の場所にある測定ステーションで、ユーザがバイオチップの読取操作を行なえば、通信回線で接続された診断ステーションにおいて、このバイオチップのプローブに含まれるバイオ分子に関して疾病の判定を行ない、測定ステーションのユーザに迅速に報知することが可能である。従って、従来では病院や医院に行って検査をする必要があった疾病の診断に関しても、ユーザが、家庭や公共施設等の任意の場所で、容易に、迅速に、低コストで診断を受けることができる。
【0033】
また、蛍光物質として、異なる色の蛍光を発する2以上の蛍光物質を所定の割合で混合した蛍光物質を用いることによって、読取装置、診断装置の製造コストの低減、診断作業の簡素化、容易化、及び診断コスト低減が可能である。
【0034】
また、関連医療機関、薬局、薬の配送者等の様々な場所に、医療ステーションを設置することによって、バイオチップを用いた疾病の判定結果に基づいて、ユーザの手間をかけることなく、迅速に処方薬をユーザに届けることができる。
【0035】
また、実際にプローブの病理検査の結果を診断システムにフィードバックしてデータを蓄積することにより、診断システムでの疾病の判定の制度を更に高めていくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明のバイオチップを用いた診断システムの実施形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
(診断システム全体の説明)
まず、図1に示す診断システムの概要図を用いて、本発明の診断システムの1つの実施形態の概要を説明する。図1に示すように、本実施形態の診断システムでは、測定ステーション100と診断ステーション200と医療用ステーション300とが、互いに双方向通信が可能なように通信回線で接続されている。また、本発明の診断システムでは、任意の数(0を含む)の医療用ステーション300を設置することができる。従って、本発明の診断システムには、医療用ステーション300が設置されず、測定ステーション100と診断ステーション200とで構成されたシステムも含まれるし、非常に多数の診断ステーション300が接続されたシステムも含まれる。更に2以上の測定ステーション100や2以上の診断ステーションが接続された診断システムも考えられる。
【0037】
<測定ステーション100の説明>
まず、図1を用いて、測定ステーション100について説明する。測定ステーション100は、バイオチップ2の読み取りを行なう読取装置1と、他のステーションとの間のデータの送受信を行なう送受信装置15と、診断結果データを含む所定のデータの画像を表示可能な画像表示装置7と、診断結果データを含む所定のデータを印刷可能なプリンタ9を備える。
読取装置1の説明を行なうと、診断装置1の上面に読取ベッド12が備えられ、この読取ベッド12の上に、バイオチップ2を載せて蛍光の読み取りを行なう。本実施形態では、複数のバイオチップ2を、読取ベッド12に載せて、同時に蛍光を読み取ることが可能である。
【0038】
ここで、バイオチップの実施例を図3に示す。図3に示すバイオチップ2では、プラスチックの基板上に、基準バイオ分子としてPNAをプローブとして固定している。診断に当たっては、ユーザの体液等から採取した標的バイオ分子を所定の蛍光物質で標識或いは染色し、この蛍光物質で標識或いは染色された標的バイオ分子と、プローブが固定されたプラスチック基板とを、ハイブリダイゼーション溶液に入れてハイブリダイズ処理を行なう。
【0039】
図3に示すように、このバイオチップ2では、プラスチック製の基板上に、PNAからなるプローブ番号J=1〜20のプローブが固定されている。その配置は、図3に示すように、プローブ#1〜#4の列から#17から#20の列まで、4個x5列で配置されている。その外側のバイオチップ2のコーナー部の3箇所に、位置決めマーカA〜Cが設けられ、位置決めマーカAと位置決めマーカBの間に、各バイオチップ2を識別するためのバーコードが、位置決めマーカと同じ蛍光物質で記載されている。
【0040】
本実施形態のように、バイオチップとしてPNAチップを採用することによって、プラスチック製の基板を用いることが容易となり、取り扱い中のバイオチップの破損による標的バイオ分子の感染のリスクを、低減することができる。また、PNAを用いることによって、常温で取り扱うことが可能なので、ユーザが容易に診断を行なうことができる。
【0041】
また、本実施形態では、量子ドットを用いた蛍光物質を用いている。量子ドットを用いた蛍光物質は、きわめて明るい蛍光を長時間発生し、また、励起光の波長と、励起光に反応して発する蛍光の波長の差(波長シフト)が大きいという特徴を有する。なお、バイオチップの種類や、バイオチップ上に固定するプローブの数、配置、種類や、基板の材質等は、この実施例に限られず任意に定めることができる。
【0042】
ここで、図1の説明に戻ると、診断装置1の内部には、励起光照射ランプ4と光センサ5を備えた移動キャッリジ8が、移動可能な状態で設置されている。移動キャリッジ8は、駆動モータ(図示されていない)によって駆動される。
図1の矢印に示すように、励起光照射ランプ4からバイオチップ2へ励起光が照射される。本実施形態では、波長シフトの大きく取れる量子ドットを適用した蛍光物質を用いるため、励起光として紫外線を用い、この励起光に応答して発する蛍光として可視光を用いることができるため、検出する蛍光が励起光の影響を受ける恐れがないので、全ての蛍光を1つの光源を用いて同時に検出することができる。従って、従来のように、励起光源側と蛍光検出側の両方でフィルタを交換して、繰り返し測定を行なう必要がない。
【0043】
励起光照射ランプ4は、読取ベッド12の幅方向をカバーする長さ有し、キャリッジ8が読取ベッド12の全長分だけ、矢印の方向に移動することによって、読取ベッド12上に載せられた全てのバイオチップ2に、励起光を照射することができる。従って、バイオチップ2のプローブ3のうち、基準バイオ分子と標的バイオ分子が結合(ハイブリダイズ)したプローブについては、標識或いは染色された蛍光物質に対応した蛍光を発することになる。
【0044】
バイオチップ2上のプローブ3から発せられた蛍光は、図1の矢印に示すように、光センサ5により検出される。この光センサ5は、CCD等の光検出素子が、読取ベッド12の幅方向をカバーするようにN個ライン状に並べられている。このN個の光検出素子は、入射した蛍光の光エネルギを電気信号に変換することができ、この光センサ5に電気的に接続された制御装置6内の信号処理回路によって、N個の順次電圧信号として出力され、その後の制御処理に用いられる。また、キャリッジ8が読取ベッド12の全長分だけ矢印の方向に移動することによって、読取ベッド12上に載せられた全てのバイオチップ2から発せられる蛍光を、このN個の光検出素子で検出することができる。
【0045】
本実施形態の光センサ5では、汎用のカラースキャナと同様に、青(B)緑(G)赤(R)のカラーフィルタを備えた3ラインの光検出素子ラインが備えられている。各ラインには、光検出素子の受光面側に青色の光だけを透過させる青色フィルタが備えられた光検出素子と、光検出素子の受光面側に緑色の光だけを透過させる緑色フィルタが備えられた光検出素子と、光検出素子の受光面側に赤色の光だけを透過させる赤色フィルタが備えられた光検出素子とが備えられている。これらのカラーフィルタは、汎用のカラースキャナに用いられるカラーフィルタと同様の分光透過率を有している。
【0046】
光センサ5により、プローブ2から発せられる蛍光に含まれる、青色、緑色、赤色の各々の光の強度を検出し、上述のように、制御装置6内の信号処理回路から出力する電圧信号として制御処理に用いることができる。この検出した蛍光のデータから画像データを作成し、送受信装置15を用いて、この画像データを診断ステーション200へ送信することができる。
【0047】
本実施形態の読取装置1においては、従来のバイオチップの蛍光読取装置のように、波長バンド幅の小さい特殊なフィルタを多数備える必要がないので、読取装置の製造コストを低減できる。また、従来の読取装置では、標識或いは染色した蛍光物質ごとにフィルタを交換して、検出作業を繰り返す必要があるが、本実施形態の読取装置1では、1回の読み取りで全ての検出を行なうことが可能であり、また、複数のバイオチップの検出をも1度に行なうことができる。従って、蛍光の読み取りのための処理時間が大幅に短縮され、ユーザが容易に診断を行なえ、診断コストも低減できる。更に、この読取装置1として、汎用のカラースキャナの光源を励起光照射ランプに変更することによって実現することも可能であり、装置の製造コストの更なる低減も期待できる。
上述の説明では、青色、緑色、赤色の3色の蛍光を用いているが、必ずしも3色を用いる必要はなく、1色の蛍光を用いて診断処理を行なうこともできるし、2色の蛍光を用いて診断処理を行なうこともできる。
【0048】
また、送信した画像データに基づいて、診断ステーション200によって行なわれる診断処理の結果(診断結果データ)を、送受信装置15を用いて、診断ステーション200から受信することができる。更に、受信した診断結果データを、画像表示装置7に表示したり、プリンタ9で印刷したりして、ユーザに診断結果を報知することができる。
なお、上述のような、励起光の照射、キャリッジの駆動、蛍光の検出、データの送受信、画像表示、印刷等にか関する制御処理は、制御装置20によって行なわれる。
【0049】
<診断ステーション200の説明>
次に、診断ステーション200について説明する。診断ステーション200は、測定ステーション100を含む他のステーションとの間のデータの送受信を行なう送受信装置15と、測定ステーション100から受信した測定データに基づいて、画像処理や診断処理を行なう制御装置20と、所定のデータの画像を表示可能な画像表示装置7と、所定のデータを印刷可能なプリンタ9とを備える。また、制御装置20には、CPU22と、ROM(リードオンリメモリ)24と、RAM(ランダムアクセスメモリ)26を有する演算部が備えられ、測定ステーション100から受信した測定データに基づいて、所定の画像処理を行ない、各プローブに含まれるバイオ分子(病原性ウイルス、病原性細菌等を含む)を判定して診断処理を行なう。また、診断処理の結果に基づいて、処方箋データの作成もできる。この制御装置20としては、汎用のパーソナルコンピュータを用いることが可能である。診断処理の詳細については、図2、図4〜10を用いて後述する。
【0050】
<医療用ステーション300の説明>
次に、医療用ステーション300について説明する。医療用ステーション300は、診断ステーション200を含む他のステーションとの間のデータの送受信を行なう送受信装置15と、受信したデータに基づいて、所定のデータの画像を表示可能な画像表示装置7と、所定のデータを印刷可能なプリンタ9と、これらの一連の制御処理を行なう制御装置28を備える。図1においては、1つの医療用ステーション300しか示されていないが、必要に応じて、任意の数の医療用ステーション300を設置することができる。医療用ステーション300の具体的な形態については、図2を用いて後述する。
【0051】
(機能ブロック図の説明)
次に、図2を用いて、本発明に係る診断システムの制御処理に関する機能ブロック図の説明を行なう。この機能ブロック図においては、測定ステーション100と、診断ステーション200と、医療機関に設置された医療用ステーションA301と、薬局に設置された医療用ステーションB302と、処方薬配送業者に設置された医療用ステーションC303とが、互いに双方向通信可能なように通信回線で接続されている。
【0052】
<測定ステーション100の説明>
まず、測定ステーション100の説明をすると、測定ステーション100は、励起光照射ランプ4や制御装置6に備えられたランプ駆動部を含む励起光照射手段110と、光センサ5や制御装置6に備えられた信号処理部を含む蛍光検出手段120と、制御装置6に備えられた画像読取手段130と、送受信装置15の送信部や制御装置6に備えられた送信処理部を含む送信手段140と、送受信装置15の受信部や制御装置6に備えられた受信処理部を含む受信手段150と、画像表示装置7やプリンタ9や制御装置6に備えられた画像、印刷処理部を含む報知手段160とを含む。
【0053】
次に、測定ステーション100における制御処理を、診断システムの制御フローに沿って説明する。まず、ユーザにボタン操作等による信号、または、予め定められたプログラムによって送信された照射開始信号を受信すると、励起光照射手段110が、励起光照射ランプ4をオンにして励起光を照射する。次に、蛍光検出手段120が、光センサ5を用いて、照射された励起光に応答してバイオチップ2から発せられる蛍光を検出する。そして、画像読取手段130が、この蛍光検出手段120が検出した信号に基づいて、読取ベッド12全体の画像データを作成し、送信手段140が、画像読取手段130が作成した画像データを、診断ステーション200へ送信する。
また、後述するように、送信した画像データに基づいて、診断ステーション200によって行なわれた診断処理の結果(診断結果データ)や処方箋データを、受信手段150が受信し、報知手段160が、受信した診断結果データを、画像表示装置7に表示したり、プリンタ9に印刷することができる。
【0054】
<診断ステーション200の説明>
次に、診断ステーション200の説明をすると、診断ステーション200は、制御装置20に備えられた画像解析手段210と、制御装置20に備えられた疾病データ記憶手段220と、制御装置20に備えられた疾病判定手段230と、制御装置20に備えられた薬剤データ記憶手段240と、制御装置20に備えられた処方箋決定手段250と、送受信装置15の送信部や制御装置20に備えられた送信処理部を含む送信手段260と、送受信装置15の受信部や制御装置20に備えられた受信処理部を含む受信手段270と、画像表示装置7やプリンタ9や制御装置20に備えられた画像、印刷処理部を含む報知手段280とを含む。
【0055】
診断ステーション200における制御処理を、診断システムの制御フローに沿って説明する。まず、受信手段270が、測定ステーション100から画像データを受信する。そして、画像解析手段210が、受信した画像データに基づいて、位置決めマーカA〜Cから発せられる蛍光を用いて、各バイオチップの位置と、バイオチップ上の各プローブの位置を認識し、各バイオチップの各プローブごとに、検出した蛍光データ表(実施例、図8参照)を作成する。
【0056】
次に、疾病判定手段230が、疾病データ記憶手段220(具体的には、RAM26の領域)に記憶された蛍光と疾病との対照表(実施例、図7参照)を読み出し、この蛍光と疾病との対照表と、画像解析手段210によって作成された各バイオチップの各プローブごとの検出蛍光データとを照らし合わせて、各プローブに含まれる疾病の判定処理を行なう。
疾病判定手段230は、この疾病の判定処理の結果として、診断結果データ(実施例、図9参照)を作成する。
【0057】
また、処方箋決定手段250は、薬剤データ記憶手段240(具体的には、RAM26の領域)に記憶された薬剤データを読み出し、上述の診断結果データに基づいて処方箋データ(実施例、図10参照)を作成する。
【0058】
送信手段260は、この診断結果データを、例えば、測定ステーション100や医療機関に設置された医療用ステーションA301へ送信し、処方箋データを、例えば、測定ステーション100や医療用ステーションA301や薬局に設置された医療用ステーションB302に送信することができる。また、所定の通信データを、処方薬配送業者に設置された医療用ステーションC303に送信することも考えられる。
また、報知手段280は、必要に応じて、診断結果データや処方箋データを、画像表示装置7に表示したり、プリンタ9に印刷することができる。
【0059】
<医療用ステーションA301〜C303の説明>
次に、各医療用ステーションA301〜C303の説明をすると、各診療用ステーションは、送受信装置15の送信部や制御装置28に備えられた送信処理部を含む送信手段311〜313と、送受信装置15の受信部や制御装置28に備えられた受信処理部を含む受信手段321〜323と、画像表示装置7やプリンタ9や制御装置28に備えられた画像、印刷処理部を含む報知手段331〜333とを含む。
【0060】
医療機関に設置された医療用ステーションA301においては、受信装置311が、例えば、診断結果データや処方箋データを受信すると、報知手段331は、受信した診断結果データや処方箋データを、画像表示装置7に表示したり、プリンタ9に印刷することができる。この診断データを用いて、医療機関は迅速に患者(ユーザ)の診療を進めることができる。
【0061】
また、測定ステーション100で読み取りを行なったバイオチップ2の各プローブについて、医療機関で実際に病理検査を行ない、その病理検査の結果を、送信手段311を用いて診断ステーション200へ送信することもできる。診断ステーション200では、受信した病理検査の結果を、疾病データ記憶手段220に記憶させ、以降の診断処理に用いることができる。つまり、本発明の診断システムでは、いわゆる学習制御を行なって、診断システムにおける診断の制度を更に向上させていくことが可能である。
【0062】
また、薬局に設置された医療用ステーションB302においては、受信装置312が、例えば、処方箋データを受信すると、報知手段332は、受信した処方箋データを、画像表示装置7に表示したり、プリンタ9に印刷することができる。薬局では、従来のように、処方箋をユーザから受け取る前に、処方薬の準備を開始することが可能であり、ユーザが薬局で長時間待たされる等の問題を解決することが可能であり、処方薬の準備に係る余分な手間を省くこともできる。
【0063】
また、薬局では、送信手段322を用いて、処方箋データを入手した確認を診断ステーション200へ送信したり、処方薬の準備が整ったことを、測定ステーション100へ送信して、ユーザに知らせたり、処方薬配送業者に設置された医療用ステーションC303に、処方薬の準備が整ったことを知らせて、処方薬の引き取りを依頼したりすることができる。
【0064】
また、処方薬配送業者に設置された医療用ステーションC303においては、受信装置313が、例えば、診断ステーション200や薬局に設置された医療用ステーションB302から、所定の通信を受信すると、報知手段333は、受信したデータを画像表示装置7に表示したり、プリンタ9に印刷することができる。
受信したデータに基づいて、処方薬配送業者は、例えば、処方薬の配送業務を開始することができる。また、処方薬配送業者は、送信手段323を用いて、配送結果や配送状況を、他のステーションへ送信することもできる。
【0065】
以上のようにして、本発明の診断システムを用いれば、ユーザは、迅速に手軽に疾病の診断を得ることが可能であり、更に、待ち時間なしに処方薬の受け取りが行なえ、また、特別な依頼作業を行なわずに、処方薬の配送サービスを受けることもできる。
【0066】
(診断処理の説明)
次に、本発明に係るバイオチップ2を用いた診断処理の1つの実施形態について、更に詳細な説明を行なう。
上述と同様に、本実施形態に用いるバイオチップ2は、図3に示すように、プラスチック製の基板上に、PNAからなるプローブ番号J=1〜20のプローブ(以下、プローブ#J(J=1〜20)と称する)が固定されている。その配置は、図3に示すように、プローブ#1〜#4の列から#17から#20の列まで、4個x5列で配置されている。その外側のバイオチップ2のコーナー部の3箇所に、位置決めマーカA〜Cが設けられ、位置決めマーカAと位置決めマーカBの間に、各バイオチップ2を識別するためのバーコードが、位置決めマーカと同じ蛍光物質で記載されている。
【0067】
また、本実施形態における蛍光物質とその蛍光物質に対応する基準バイオ分子(疾病)との関係を、図7の蛍光−疾病対照表に示す。この表では、縦の欄に蛍光物質番号K=1〜21の蛍光物質(以下、蛍光物質#K(K=1〜21)と称する)が示され、各々の蛍光物質#1〜20には、疾病A〜疾病Tが対応し、蛍光物質#21には、位置決めマーカやバーコードが対応している。蛍光物質としては、量子ドットが用いられている。
【0068】
具体的には、例えば、疾病Aと同じ配列を有する基準バイオ分子が固定されたプローブには、ユーザの体液等から採取した標的バイオ分子に、蛍光物質#1を標識或いは染色したものを投与して、ハイブリダイゼーション処理を行なう。同様にして、疾病B〜疾病Tと同じ配列を有する基準バイオ分子が固定されたプローブには、ユーザの体液等から採取した標的バイオ分子に、それぞれ蛍光物質#2〜20を標識或いは染色したものを投与して、ハイブリダイゼーション処理を行なう。また、蛍光物質#21は、本実施形態では、位置決めマーカやバーコードをバイオチップの所定位置に設けるために用いられている。なお、下記に詳述するように、本実施形態では、疾病と対応する蛍光物質の種類が20であり、バイオチップに固定されたプローブの数も20なので、プローブ番号J(J=1〜20)と蛍光物質番号K(K=1〜20)を対応させているが、必ずしも両者を一致させる必要はない。
【0069】
標識或いは染色される蛍光物質#1〜20について説明すると、青色、緑色、赤色の3つの蛍光物質の単体、または、それらの蛍光物質を混合した蛍光物質である。これらの3つの蛍光物質とは、紫外線の照射により450nmの波長を有する青色の蛍光を発する青色蛍光物質、紫外線の照射により530nmの波長を有する緑色の蛍光を発する緑色蛍光物質、及び紫外線の照射により650nmの波長を有する赤色の蛍光を発する赤色蛍光物質の3色の蛍光物質である。青色、緑色、赤色の蛍光の波長は、本実施形態では、診断装置の光センサ5に設けられた青色、緑色、赤色のカラーフィルタのピーク波長と一致している。ただし、各色の光の波長とカラーフィルタのピーク波長とを、必ずしも一致させる必要はなく、ピーク波長と一致していなくとも、検出した各色の光強度の補正を行なうことによって、適切な分析処理を行なうことができる。従って、青色、緑色、赤色の光が、それぞれ青色、緑色、赤色のカラーフィルタのみを透過するような波長であれば、任意の波長の光を用いることができる。
【0070】
図7の蛍光−疾病対照表に示すように、例えば、蛍光物質#1では、疾病Aと同一の構造を有する基準バイオ分子が固定され、青色蛍光物質のみ(青100%、緑0%、赤0%)からなる蛍光物質#1が標識或いは染色されている。また、例えば、蛍光物質#5では、疾病Eと同一の構造を有する基準バイオ分子が固定され、青色蛍光物質60%、緑色蛍光物質20%、赤色蛍光物質20%で混合された蛍光物質#5が標識或いは染色されている。他のプローブでも同様に、本実施形態では、青、緑、赤の各色の蛍光物質の混合比を20%づつ変化させて計21種類の混合蛍光物質を形成している。ただし、本実施形態では、赤色蛍光物質のみ(青0%、緑0%、赤100%)の蛍光物質#21は、位置決めマーカA〜Cとバーコードのために用いられている。これにより、蛍光の色の識別によって、位置決めマーカやバーコードを容易に識別することができるようになっている。ただし、他のプローブと同じ色の蛍光を用いても、位置決めマーカやバーコードの配置(例えば、マーカ間の距離)等によって、識別することも可能である。
【0071】
次に、プローブに紫外線の励起光を照射したときに発する蛍光について、蛍光物質#5を例に取って説明する。もし、蛍光物質#5が標識或いは染色されたプローブの基準バイオ分子と標的バイオ分子が結合(ハイブリダイズ)する、つまり、ユーザの体液に疾病Eが含まれていれば、蛍光物質#5は励起光に励起されて蛍光を発する。この蛍光は、基本的には、各色(青、緑、赤)の蛍光物質の混合比率に対応した比率の蛍光を発することになる。具体的には、混合比率60%の青色蛍光物質から発する青色蛍光(青カラーフィルタを透過した光)の光強さの比率は、基準光強度LB(5)の値60%プラスマイナス変動幅DB(5)の値DB5であり、混合比率20%の緑色蛍光物質から発する緑色蛍光(緑カラーフィルタを透過した光)の光強さの比率は、基準光強度LG(5)の値20%プラスマイナス変動幅DG(5)の値DG5であり、混合比率20%の赤色蛍光物質から発する赤色蛍光(赤カラーフィルタを透過した光)の光強さの比率は、基準光強度LR(5)の値20%プラスマイナス変動幅DR(5)の値DR5である。
【0072】
これらの変動幅の値DB5、DG5、DR5は、予め繰り返し試験を行なうことによって、適切な値を設定することが可能である。プローブによっては、全体の蛍光の強さが異なる場合も考えられるが、蛍光の強さに変化を与えて、予め繰り返し試験を行なうことによって、あらゆる蛍光の強さにおける適切な変動幅の値DB5、DG5、DR5を設定することができる。また、本実施形態では、各色(青、緑,赤)の蛍光物質の混合比を20%づつ変動させているが、これらの蛍光の変動幅の値が20%に比べて十分に小さい場合には、混合比の変化を更に小さく(例えば、10%づつ変化させる)ことも可能であり、この場合には、更に多くの混合色を用いることができる。
以上のように、蛍光物質から発する蛍光について、蛍光物質#5を例に取って説明したが、他のプローブにおいても、同様のやり方で、各色の蛍光物質の混合比に対応した蛍光の強さの比率を認識し、蛍光物質を識別することが可能である。
【0073】
ただし、本発明の診断装置、診断方法においては、基本となる各色の蛍光は青、緑、赤に限られず、光センサ5に設けられたフィルタの透過波長に応じて任意の色を定めることが可能である。また、フィルタの数に応じて、任意の種類の蛍光物質を用いることができる。また、蛍光物質の混合を行なわず、単色の蛍光物質を用いることも可能であり、例えば、そのプローブの位置によって、疾病を識別することも可能である。この場合には、光センサ5に特別なフィルタを設けないことも考えられる。
更に、本発明に係るバイオチップでは、蛍光物質として量子ドットを用いることによって、強い蛍光が得られるので、肉眼でこの蛍光を捕らえ、人の目による色の判断で、診断を行なうことも考えられる。また、蛍光を化学フィルムで撮って、その写真に基づいて色の判断を行なって診断を行なうことも考えられる。
【0074】
(診断処理のフローチャートの説明)
次に、診断ステーション200によって行なわれる診断処理の制御フローについて、図4〜図6に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
図4〜図6のフローチャートに示す制御処理は、まず、測定ステーション100において、バイオチップ2の読み取り処理が行なわれ、その画像データが、測定ステーション100から診断ステーション200へ送信された後の処理を示す。
【0075】
まず、測定ステーション100で行なわれる処理の内容を説明すると、まず、人の体液等から採取した標的バイオ分子と各プローブとの間でハイブリダイゼーション処理が行なわれたバイオチップ2を、読取装置1の読取ベッド12に載せ、読取装置1による読み取り処理が可能な状態にする。ここで、バイオチップ2は、読取ベッド12の所定の読み取り可能領域内であれば、任意の数のバイオチップ2を載せて、同時に蛍光の読み取りが可能である。また、バイオチップ2を載せる位置、向きも、任意の位置や向きに載せればよい。
【0076】
励起光を照射すると、各バイオチップ2に付けられた位置決めマーカA〜Cから、所定の色の蛍光(本実施形態では赤色)を発するので、その位置決めマーカの蛍光を検出することによって、各バイオチップ2の位置を認識することができる。上述のように、標的バイオ分子と基準バイオ分子が結合(ハイブリダイズ)したプローブ3、つまり、何らかの疾病に係るバイオ分子の存在するプローブ3が、励起光の照射に応答して所定の色の蛍光を発する。
【0077】
以上のように、バイオチップ2が読取装置1の読取ベッド12に載せられた状態で、まず、励起光照射手段110に照射開始信号を送信して、励起光照射ランプ4をオンにして、励起光(本実施形態では紫外線)の照射を開始し、蛍光検出手段120に検出開始信号を送信して、光センサ5をオンにして、バイオチップのプローブからの蛍光の検出を可能な状態にする。次に、駆動開始信号を送信して、駆動モータの回転を開始させ、励起光照射ランプ4や光センサ5が搭載されたキャリッジ8の移動を開始する。そして、キャリッジ8の移動に伴って、読取ベッド12上の全てのバイオチップ2に励起光を照射し、基準バイオチップと標的バイオ分子とが結合(ハイブリダイズ)したプローブから発せられる蛍光と、位置決めマーカやバーコードから発せられる蛍光とを、光センサ5で検出する。
【0078】
この光センサによる蛍光の検出は、上述のように、青色、緑色、赤色ごとに光の強さを検出する。そして、キャリッジ8が、読取ベッド12の全長を移動してエンド位置に達すると、キャリッジ8を停止させ、励起光照射を停止させ、光センサ5による検出を停止させる。そして、キャリッジ8をもとのスタート位置へ戻す。
この各色(青、緑、赤)の光センサ5で検出した蛍光に基づいて、画像読取手段130は、画像ベッド12全体の画像データを作成する。そして、送信手段140が、この画像データを診断ステーション200へ送信する。
【0079】
<メインルーチンの説明>
以上の状態において、診断ステーション200において行なわれる診断処理の説明を行なう。まず、図4を用いて、メインルーチンの説明を行なう。
受信手段270が、測定ステーション100から送信された画像ベッド12全体の画像データを受信する(ステップS10)。そして、この画像データに基づき、画像解析手段210が、ステップS20からステップS26の制御処理を行なう。
まず、赤色単色を発する蛍光を識別して、位置決めマーカとバーコードを認識する。そして、このバーコードから読み出される情報から、バイオチップ番号Iを識別し、位置決めマーカとバーコードの位置関係から、各々のバイオチップ番号Iのバイオチップ(以下、バイオチップ#Iと称する)と、そのバイオチップ#Iの位置決めマーカA〜Cの位置を認識する(ステップS20)。
【0080】
この位置決めマーカA〜Cの位置に基づいて、各バイオチップ#Iの各プローブ#1〜20の予想位置を演算することが可能である。演算した各プローブの予想位置データを利用して、各プローブ#Jの位置を認識することができる(ステップS22)。例えば、読取ベッド12全体の画像データに基づいて、各画素単位(光センサの各光検出素子の単位)に、検出した蛍光の光の強度を識別する処理において、位置決めマーカA〜Cの位置から、明らかにプローブの存在しないと考えられる領域については、この識別処理を省略することも考えられるし、また、ある領域では、この処理を行なう画素を間引くことも考えられる。その場合には、識別の処理時間を大幅に短縮することができる。
【0081】
本実施形態のようにプローブの位置と固定する基準バイオ分子が一定に定められている場合には、仮に、全てのプローブが同じ色の蛍光物質で標識或いは染色されていたとしても、そのプローブの位置から、各々の基準バイオ分子を識別することが可能である。しかし、本実施形態では、間違って異なるプローブの位置に基準バイオ分子を固定してしまった場合においても、正しい診断が行われるようにするため、及び、任意のプローブに任意の基準バイオ分子を標識或いは染色する自由な処理にも対応できるようにするために、検出した蛍光の色を判別し、判別した色の違いよって基準バイオ分子を識別する処理を行なっている。この処理の詳細については、後述する。
【0082】
また、検出した位置決めマーカA〜Cとバーコードの情報から、読み取りを行ったバイオップ2の総数BCTOTALを認識し、RAM26に記憶する(ステップS24)。そして、各バイオチップ#Iの各プローブ#Jごとに、検出した蛍光の光強度を、青色の蛍光の検出光強度MLB(J)、緑色の蛍光の検出光強度MLG(J)、赤色の蛍光の検出光強度MLR(J)別にまとめて、検出蛍光データ表を作成する(ステップS26)。
【0083】
ここで、図8に、この検出蛍光データ表の実施例を示す。この実施例では、バイオチップ#1〜3に関して、同時に蛍光の読み取りを行なっている。各バイオチップについて、図8に示す表の縦の欄に、プローブ#1〜#20ごとの検出光強度が示され、同一のプローブ#Jに関して、左から順に、青色の検出光強度MLB(J)、緑色の検出光強度MLG(J)、赤色の検出光強度MLR(J)の値が示されている。また、表の欄中、NONEと示された欄は、蛍光が検出されなかったことを示している。
【0084】
バイオチップ#1では、プローブ#5、#12、#14、及び#18で蛍光を検出したことが示され、バイオチップ#2では、プローブ#2、#3、#17、及び#18で蛍光を検出したことが示され、バイオチップ#3では、プローブ#4、#8、及び#13で蛍光を検出したことが示されている。
【0085】
次に、ステップS28に進み、疾病データ記憶手段230(具体的にはRAM26の領域)に記憶されている蛍光−疾病参照表を読み出す。上記で詳細な説明を行なったように、蛍光−疾病参照表の実施例を図7に示す。この表に基づいて、検出した蛍光の青色、緑色、赤色の光強度の割合から、疾病A〜疾病Tを定める診断判定処理を行なうことができる。
【0086】
引き続いて、図5に示すフローチャートへ進み、疾病判定手段230が、バイオチップIごとに、検出した各プローブJの蛍光の光強さと蛍光−疾病対照表を照らし合わせて、疾病判定処理を行なう。まず、バイオチップ番号Iの値として、1をインプットし(ステップS30)、プローブ番号Jの値として、1をインプットする(ステップS32)。そして、このバイオチップ#Iのプローブ#Jについて、蛍光が検出されているか否かを判断する(ステップS34)。この判断で、もし、蛍光を検出している(YES)と判別したときには、疾病判定サブルーチン(ステップS36)を行なって、ステップS38へ進む。この疾病判定サブルーチンの詳細は後述する。
【0087】
ステップS34の判断で、もし、蛍光を検出していない(NO、図7の表で青、緑、赤共にNONEと記載された場合)と判別したときには、疾病判定サブルーチンを行なわずに、ステップS38へ進む。ステップS38では、プローブ番号Jの値が、バイオチップのプローブ数(本実施形態では20)以上であるか否かを判断する。この判断で、もし、Jの値がバイオチップのプローブ数より小さい(NO)と判別したときには、Jの値に1を加えて(ステップS40)、ステップS34からステップS38の処理を繰り返す。
【0088】
ステップS38の判断で、もし、Jの値がバイオチップのプローブ数以上である(YES)と判別したときには、1つのバイオチップの全プローブの疾病判定処理が終了したので、ステップS42に進み、バイオチップ番号Iの値が、バイオチップ総数BCTOTAL(本実施形態では3)以上であるか否かを判断する。この判断で、もし、バイオチップ番号Iの値が、BCTOTALより小さい(NO)と判別したときには、バイオチップ番号Iの値に1を加えて(ステップS44)、次のバイオチップIについて、ステップS32からステップS42までの処理を繰り返す。ステップS42の判断で、もし、バイオチップ番号Iの値が、BCTOTAL以上である(YES)と判別してときには、ステップS46へ進む。
【0089】
<疾病判定サブルーチンの説明>
ここで、ステップS36に示す疾病判定サブルーチンについて、図6のフローチャートを用いて詳細な説明を行なう。
このサブルーチンでは、まず、蛍光物質番号Kの値として1をインプットする(ステップS100)。そして、検出した蛍光の各色(青、緑、赤)ごとの光強さMLB(J)、MLG(J)、MLR(J)と、蛍光物質#Kから発せられる蛍光の光強さとの比較を行なう。具体的には、まず、検出した蛍光の青色成分の光強さMLB(J)が、蛍光物質#Kの青色成分の基準光強度LB(K)− 変動幅DB(K)より大きく、基準光強度LB(K)+ 変動幅DB(K)より小さい、つまり、検出光強度MLB(J)が、基準光強度LB(K)プラスマイナス変動幅DB(K)の範囲内にあるか否かを判断する(ステップS102)。この判断で、もし、この範囲内にない(NO)と判別したときには、そのままステップS110へ進む。
【0090】
ステップS102の判断で、もし、MLB(J)がLB(K)プラスマイナスDB(K)の範囲内にある(YES)と判別したときには、次に、検出した蛍光の緑色成分の光強さMLG(J)が、蛍光物質#Kの緑色成分の基準光強度LG(K)−変動幅DG(K)より大きく、基準光強度LG(K)+変動幅DG(K)より小さい、つまり、検出光強度MLG(J)が基準光強度LG(K)プラスマイナス変動幅DG(K)の範囲内にあるか否かを判断する(ステップS104)。この判断で、もし、この範囲内にない(NO)と判別したときには、そのままステップS110へ進む。
【0091】
ステップS104の判断で、もし、MLG(J)がLG(K)プラスマイナスDG(K)の範囲内にある(YES)と判別したときには、次に、検出した蛍光の赤色成分の光強さMLR(J)が、蛍光物質#Kの赤色成分の基準光強度LR(K)−変動幅DR(K)より大きく、基準光強度LR(K)+変動幅DR(K)より小さい、つまり、検出光強度MLR(J)が基準光強度LR(K)プラスマイナス変動幅DR(K)の範囲内にあるか否かを判断する(ステップS106)。この判断で、もし、この範囲内にない(NO)と判別したときには、そのままステップS110へ進む。
【0092】
ステップS106の判断で、もし、MLR(J)がLR(K)プラスマイナスDR(K)の範囲内にある(YES)と判別したときには、青色、緑色、赤色の全光成分において、検出した蛍光の光強さが、基準光強度プラスマイナス変動幅の範囲内に入ることとなり、蛍光物質#Kが蛍光を発していると判定できる。従って、プローブ#Jには、蛍光物質#Kに対応した疾病のバイオ分子が存在すると判定し、このJの値、Kの値、及び対応する疾病名(例えば、蛍光物質#5であれば疾病E)をRAM103に記憶する(ステップS108)。
【0093】
そして、Kの値が蛍光物質の最大数である20以上であるか否かを判断する(ステップS110)。もし、この判断で、Kの値が20より小さい(NO)と判別したときには、Kの値に1を加え(ステップS112)、再び、ステップS102からステップS110の処理を繰り返す。ステップS110の判断で、もし、Kの値が20以上である(YES)と判別したときには、本サブルーチンを終了する。
【0094】
<メインルーチンの説明(再)>
再びメインルーチンの説明に戻り、疾病判定手段230によるステップS30からステップS44の疾病判定処理によって、全てのバイオチップ#Iの全てのプローブ#Jについて、検出した蛍光に基づく疾病判定を行なった後、バイオチップ#Iのプローブ#Jごとに、診断結果データを作成してRAM26に記憶する(ステップS46)。
ここで、図9に、診断結果データの実施例を示す。この実施例は、バイオチップ#1に関するものである。バイオ分子が検出された疾病名が、プローブ番号Jとともに記載されている。また、必要に応じて、各疾病の説明や、治療方法等の説明を加えることも可能である。
【0095】
次に、処方箋決定手段250が、薬剤データ記憶手段240に記憶した薬剤データを読み出し、上述の診断結果データに基づいて。処方箋データを作成して、RAM26に記憶する(ステップS47)。ここで、図10に処方箋データの実施例を示す。この実施例では、バイオチップIごとに、所定の薬剤名称と処方量が記載されている。
【0096】
そして、送信手段260は、上述の診断処理によって作成された診断結果データを、測定ステーション100や医療機関に設置された医療用ステーションA301に送信する(ステップS50)。この送信によって、測定ステーション100にいるユーザは、すぐに診断結果を得ることができ、医療用ステーションA301の設置された医療機関では、この診断結果を診療に利用することができる。
【0097】
また、送信手段260は、上述の診断処理によって作成された処方箋データを、測定ステーション100や薬局に設置された医療用ステーションB302に送信し、(ステップS52)メインルーチンを終了する。この送信によって、測定ステーション100にいるユーザは、すぐに処方箋を得ることができ、医療用ステーションB302が設置された薬局は、すぐに処方薬の準備にかかることができる。また、本診療システムを用いて、処方薬の配送に手配を行なうこともできる。
【0098】
また、診断ステーション200において、必要に応じて、報知手段280が、この診断結果データや処方箋データに対応した画像を、画像表示装置7に表示したり、プリンタ9で印刷したりすることもできる。
以上のように、本発明の診断システムによれば、ユーザは、病院や医院へ行って検査を受ける手間をかけずに、手軽に疾病の診断を受けることが可能となり、更に、ユーザは、待ち時間なく処方薬を入手すること可能であるし、所望の場所へ処方薬を配送してもらうことも可能である。
【0099】
(その他の実施形態)
<特異性を判定する実施形態>
上述の実施形態においては、1のバイオ分子に対して1のプローブを対応させているが、同一の標的バイオ分子に対して、異なる構造部分と結合する基準バイオ分子を有する複数のプローブを用いて、蛍光の検出を行なうことも考えられる。この実施形態では、検出した各々のプローブの蛍光に基づいて、標的バイオ分子に対する特異性を定量的に判定することができる。
【0100】
<疾病にかかっている確率を判定する実施形態>
また、同一の基準バイオ分子を有する複数のプローブの蛍光を検出することによって、その蛍光するプローブの割合に応じて、バイオ分子が存在する、つまり疾病にかかっている確率を判断する実施形態も考えられる。また、1つのプローブに対して、蛍光物質が固定されている面積と蛍光を検出した画像(画素)の面積との比率によって、バイオ分子が存在する(疾病にかかっている)確率を判断する実施形態も考えられる。
【0101】
更に、本発明の診断システムは、上述の実施形態には限られず、その他様々な実施形態が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の診断システムの1つの実施形態を示す概要図である。
【図2】本発明の診断システムの制御処理に関する機能ブロック図である。
【図3】本発明の診断システムに用いるバイオチップの実施例を示す概要図である。
【図4】本発明の診断システムの診断ステーションにおける診断処理に関するメインルーチンを示すフローチャートである。
【図5】本発明の診断システムの診断ステーションにおける診断処理に関するメインルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートに示す疾病判定サブルーチンの詳細を示すフローチャートである。
【図7】本発明の診断システムの診断ステーションにおける診断処理に用いる蛍光−疾病対照表の実施例を示す表である。
【図8】本発明の診断システムの診断ステーションにおける診断処理に用いる検出蛍光データ表の実施例を示す表である。
【図9】本発明の診断システムの診断ステーションにおける診断処理に用いる診断結果データの実施例を示す表である。
【図10】本発明の診断システムの診断ステーションにおける診断処理に用いる処方箋データの実施例を示す表である。
【符号の説明】
【0103】
1 読取装置
2 バイオチップ
3 プローブ
4 励起光照射ランプ
5 光センサ
6 制御装置
7 画像表示装置
8 キャリッジ
9 プリンタ
12 読取ベッド
15 送受信装置
20 制御装置
22 CPU
24 ROM
26 RAM
28 制御装置
100 測定ステーション
110 励起光照射手段
120 蛍光検出手段
130 画像読取手段
140 送信手段
150 受信手段
160 報知手段
200 診断ステーション
210 画像解析手段
220 疾病データ記憶手段
230 疾病判定手段
240 薬剤データ記憶手段
250 処方箋決定手段
260 送信手段
270 受信手段
280 報知手段
300 医療用ステーション
301 医療用ステーションA
302 医療用ステーションB
303 医療用ステーションC
311、312、313 送信手段
321、322、323 受信手段
331、332、333 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向通信が可能なように接続された測定ステーションと診断ステーションとを含む診断システムであって、
前記測定ステーションが、
バイオチップの蛍光物質で標識或いは染色された1または2以上のプローブに、励起光を照射する励起光照射手段と、
前記励起光に応答して前記プローブから発せられる蛍光を検出する蛍光検出手段と、
検出された前記蛍光のデータを前記診断ステーションへ送信可能な送信手段と、
前記診断ステーションからのデータを受信可能な受信手段と、
前記診断ステーションからのデータを含む所定のデータを報知可能な報知手段と、を含み、
前記診断ステーションが、
前記測定ステーションからの前記蛍光のデータを受信可能な受信手段と、
前記蛍光のデータに関連付けられた疾病データを記憶する疾病データ記憶手段と、
前記蛍光のデータと前記疾病データとに基づいて、前記プローブごとに疾病の判定を行う疾病判定手段と、
前記疾病の判定結果のデータを、前記測定ステーションへ送信可能な送信手段と、
を含むことを特徴とする診断システム。
【請求項2】
前記プローブを標識或いは染色する蛍光物質として、異なる色の蛍光を発する2以上の蛍光物質を所定の割合で混合した蛍光物質を用い、前記疾病判定手段が、検出した前記蛍光に含まれる前記異なる色の蛍光の割合に基づいて疾病の判定を行なうことを特徴とする請求項1に記載の診断システム。
【請求項3】
同一のバイオ分子の異なる構造部分と結合する2以上の前記プローブを用いて、検出した各々の前記プローブからの前記蛍光に基づいて、該標的バイオ分子に対する特異性を判別することを特徴とする請求項1または2に記載の診断システム。
【請求項4】
前記蛍光検出手段が、一度に複数のバイオチップについての蛍光を検出可能なことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の診断システム。
【請求項5】
前記測定ステーション及び/または前記診断ステーションと双方向通信可能なように接続され、
前記測定ステーション及び/または前記診断ステーションからデータの受信が可能な受信手段と、
前記測定ステーション及び/または前記診断ステーションへデータの送信が可能な送信手段と、
前記測定ステーション及び/または前記診断ステーションからのデータを含む所定のデータを報知可能な報知手段と、
を有する1または2以上の医療用ステーションを更に含むことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の診断システム。
【請求項6】
前記診断ステーションが、
前記疾病に関連付けられた薬剤データを記憶した薬剤データ記憶手段と、
前記疾病の判定結果と前記薬剤データとに基づいて、処方箋データを作成する処方箋決定手段と、を含み、
前記処方箋データを、前記診断ステーションから前記測定ステーション及び/または前記医療用ステーションへ送信可能なことを特徴とする請求項5に記載の診断システム。
【請求項7】
前記測定ステーションまたは前記医療用ステーションから前記診断ステーションへ送信されるデータに、前記蛍光のデータが前記診断ステレーションへ送信された前記プローブの病理検査のデータが含まれ、
前記疾病データ記憶手段が、前記蛍光のデータと前記病理検査のデータとを関連付けて記憶し、記憶されたデータが、以降の前記疾病判定手段による疾病の判定に用いられることを特徴とする請求項5または6に記載の診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−145499(P2006−145499A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339485(P2004−339485)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(503280961)株式会社クレディアジャパン (10)
【Fターム(参考)】