説明

バイオチップ位置決め機構

【課題】読取本体装置側で定期的なメンテナンスが不要なバイオチップの位置決め機構を提供する。
【解決手段】サンプルホルダー12に装着された板状のバイオチップ11をサンプルホルダー12の基準面121、122、123に押し付けて位置決めを行うバイオチップ位置決め機構において、バイオチップ11は、弾性材料上に作成され、一体に形成された複数の可撓部110、111、112により基準面121、122、123に押し付けられることを特徴とするバイオチップ位置決め機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAチップ等のバイオチップの位置決め機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は従来の一般的なバイオチップ読取装置のサンプルホルダー周りに設けられたバイオチップ位置決め機構を示した説明図で、(A)は側面断面図、(B)は構造部材3を載せる前の上面図である。
【0003】
図7において、サンプルである板状のバイオチップ1はサンプルホルダー2の上に置かれ、サンプルホルダー2の底面に設けられた開口部を介して光学系5により読み取られる。この際に、バイオチップ1がサンプルホルダー2から浮き上がるとピントずれを生じるため、構造部材3に取り付けられたバネ機構4により、チップ1をサンプルホルダー2に押し付けるような構造となっている。
【0004】
また、図7(B)のZ視面において、バネ機構6によりチップ1をサンプルホルダー2のy軸方向の基準面に押し付け、バネ機構7によりチップ1をx軸方向の基準面に押し付ける構造となっている。
【0005】
バイオチップ位置決め機構の先行技術としては下記のような特許文献が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−511788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7の従来のバイオチップの位置決め機構においては、バイオチップ読取装置のサンプルホルダー2側に有寿命部品であるバネ機構4,6,7を有するため、これらについて読取本体装置側で定期的なメンテナンスを必要とするという課題があった。
【0008】
本発明は上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、読取本体装置側で定期的なメンテナンスが不要なバイオチップの位置決め機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
サンプルホルダーに装着された板状のバイオチップを前記サンプルホルダーの基準面に押し付けて位置決めを行うバイオチップ位置決め機構において、
前記バイオチップは、弾性材料上に作成され、一体に形成された複数の可撓部により前記基準面に押し付けられることを特徴とする。
【0010】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項2記載の発明は、
請求項1に記載のバイオチップ位置決め機構において、
前記複数の可撓部は前記バイオチップの側面に一体に形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、
請求項2に記載のバイオチップ位置決め機構において、
前記複数の可撓部は切り込みにより形成され、突起部を介して前記サンプルホルダーに接することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、
請求項2乃至3のいずれかに記載のバイオチップ位置決め機構において、
前記バイオチップは、側面に形成された前記可撓部と反対側の側面に突起部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、
請求項1記載のバイオチップ位置決め機構において、
前記バイオチップは、上面に一体に形成された複数の可撓部を介して構造部材が載置され、前記サンプルホルダーの基準底面に押し付けられることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、
請求項5に記載のバイオチップ位置決め機構において、
前記複数の可撓部は下面に凹部が形成され、突起部を介して前記構造部材に接することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、
請求項1乃至6のいずれかに記載のバイオチップ位置決め機構において、
前記バイオチップは、脆性材料からなるバイオチップ基板が弾性材料上に固定されたことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、
請求項7記載のバイオチップ位置決め機構において、
前記バイオチップ基板がガラス基板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば以下のような効果がある。
【0018】
すなわち、基準面に押し付ける可撓部をバイオチップ側に設けることにより、読取装置本体側のメンテナンスフリー化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るバイオチップ位置決め機構の一実施例に用いられるバイオチップを示す構成説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るバイオチップ位置決め機構の一実施例を示す構成説明図である。
【図3】図1の実施例の変形例を示す構成説明図である。
【図4】図3の変形例の背景を示す説明図である。
【図5】図3のバイオチップのサンプルホルダーへの装着例を示す構成説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るバイオチップ位置決め機構の第2の実施例に用いられるバイオチップを示す構成説明図である。
【図7】従来のバイオチップ位置決め機構の一例を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係るバイオチップ位置決め機構の一実施例に用いられるバイオチップを示す構成説明図である。図1(A)は上面図、図1(B)は正面側面図、図1(C)は右側面図である。
【0022】
図1において、サンプルである板状のバイオチップ11は弾性材料からなる基板上に作成され、その側面には、バイオチップ11の四隅に切り込み110aにより可撓部110が形成され、直角をなす2辺に切り込み111a、112aにより可撓部111、112が、弾性基板と一体に形成されている。四隅の可撓部110の下面は撓り易くするために凹部が形成されて厚みが薄くなっている。各可撓部110の上面側には半球状の突起部(接点)113が設けられ、可撓部111、112の側面側にはそれぞれ半球状の突起部(接点)114、115が基板と一体に形成されている。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係るバイオチップ位置決め機構の一実施例で、図1のバイオチップのサンプルホルダーへの装着例を示す構成説明図で、図2(A)は側面断面図、図2(B)は構造部材3を載せる前の上面図である。
【0024】
図2(A)において、バイオチップ11はサンプルホルダー12の基準底面(Z基準面:Z軸方向の基準面)123と、適当な間隔を保った構造部材13との間で上下に挟まれるように保持されている。ここで、バイオチップ11上の可撓部110は構造部材13と半球状の突起部(接点)113で圧接し、可撓部110の可撓性(弾力性、撓り易さ)により、バイオチップ11自身がサンプルホルダー12から浮き上がるのを防止している。その結果、バイオチップ11は構造部材13により上方からサンプルホルダー12の基準底面(Z基準面)123に押し付けられ、Z軸方向すなわち焦点(ピント)方向の位置決めが可能となる。
【0025】
また、図2(B)のZ視面において、バイオチップ11の可撓部111が半球状の突起部(接点)114でサンプルホルダー12のX軸方向の内側面に圧接することでバイオチップ11をy軸方向の基準面(以下Y基準面と記す)121に押し付け、可撓部112が半球状の突起部(接点)115でサンプルホルダー12のY軸方向の内側面に圧接することでバイオチップ11をx軸方向の基準面(以下X基準面と記す)122に押し付ける構造となっている。その結果、水平方向すなわち、X、Y軸方向の位置決めが可能となる。
【0026】
上記のような構成のバイオチップ位置決め機構によれば、可撓部をサンプルホルダー側でなく、バイオチップ側に設けているので、読取装置本体側のメンテナンスフリー化を実現することができる。
【0027】
また、可撓部は弾性材料の弾性を利用しており、射出成型等によりバイオチップの弾性材料と一体に形成されているので、従来のバイオチップ位置決め機構と比べて構成が単純となり、工程や部品数が増加しないので製造コストが低減し、信頼性や寿命が向上する。
【0028】
図3は上記実施例の一変形例で、図1のバイオチップ形状において可撓部111、112と反対側の側面に半球状の突起部116、117を付加したものを示す構成説明図で、図3(A)は上面図、図3(B)は正面側面図、図3(C)は右側面図である。その他の構成は図1の場合と同様である。
【0029】
図1のような形状のバイオチップは、一般的には射出成型により製作されるが、射出成型品の場合、バリなどのため、バイオチップの外周は微視的には平坦でなく、図4における波線118のようになる。そのため、サンプルホルダー12のY基準面121、X基準面122へのバイオチップの接触が一意に定まらず、図4(A)のようにY基準面121とは接触点14の1点、X基準面122とは接触点15の2点で接触するか、図4(B)のようにY基準面121とは接触点14の2点、X基準面122とは接触点15の1点で接触する可能性がある。したがって、安定となる接触パターンが複数存在するため、位置決めの再現性が低下するおそれがある。
【0030】
図5は、図3のバイオチップ21のサンプルホルダー12への装着例を示す構成説明図である。バイオチップ21はY基準面121とは2つの突起部116を介し接触点16の2点で必ず接触(圧接)し、X基準面122とは突起部117を介して接触点17の1点で必ず接触(圧接)する。したがって、バイオチップの外周のバリの影響を受けずに接触点を限定することができる。ここで、突起部116、117は射出成型によりバイオチップ21の基板と一体に形成されている。
【0031】
上記のような構成のバイオチップ位置決め機構によれば、バイオチップに半球状の突起部を設けることにより、サンプルホルダーの基準面との接触点を限定して位置決めをさらに再現性よく安定にすることができる。その他の特徴は図1の場合と同様である。
【0032】
図6は、本発明の実施の形態に係るバイオチップ位置決め機構の第2の実施例で、図1と同様の形状に形成した弾性材料上に、バイオチップを形成する代わりに、ガラス基板を接着したものを示す構成説明図で、図6(A)は上面図、図6(B)は正面側面図、図6(C)は右側面図である。
【0033】
図6において、図1のバイオチップ11と同様の形状に弾性材料で形成したベース31に、ガラス基板41が接着等の方法により固定されている。このガラス基板41上にバイオチップが作成される。サンプルホルダー12や構造部材13による位置決めは図2や図5の場合と同様である。
【0034】
バイオチップの材料として従来よく用いられているガラス基板は脆性材料のため、ガラス基板に直接図1の構成を持たせることはできないが、脆性材料でできたガラス基板41を、弾性材料で作成されたベース31に接着することにより、可撓部をサンプルホルダー側でなく、バイオチップ側に設けることができるので、バイオチップ側での位置決めを実現することができる。
【0035】
上記のような構成のバイオチップ位置決め機構によれば、ガラス基板上に作成されるバイオチップの場合でも読取装置本体側のメンテナンスフリー化を実現することができる。
【0036】
なお、上記実施例はガラス基板に限らず、各種の脆性材料に適用できる。
【0037】
また、図6の実施例で弾性材料を図3のような形状に形成してもよい。
【0038】
また、上記の各実施例において水平方向に押し付ける可撓部は各辺に1つずつ設けられているが、形状に応じて1辺に複数の可撓部を設けてもよい。
【0039】
また、上記の各実施例において垂直(焦点)方向に圧接する可撓部は四隅に4つ設けられているが、四隅に限られず、例えば3つの可撓部を設けてもよい。
【0040】
なお、突起部113、114、115は半球形状としたが、これに限らず、これに近い形状であればよい。
【0041】
また、本発明は、上記実施例や変形例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0042】
12 サンプルホルダー
11、21 バイオチップ
13 構造部材
41 ガラス基板
110、111、112 可撓部
110a、111a、112a 切り込み
113、114、115、116,117 突起部
121、122、123 基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルホルダーに装着された板状のバイオチップを前記サンプルホルダーの基準面に押し付けて位置決めを行うバイオチップ位置決め機構において、
前記バイオチップは、弾性材料上に作成され、一体に形成された複数の可撓部により前記基準面に押し付けられることを特徴とするバイオチップ位置決め機構。
【請求項2】
前記複数の可撓部は前記バイオチップの側面に一体に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ位置決め機構。
【請求項3】
前記複数の可撓部は切り込みにより形成され、突起部を介して前記サンプルホルダーに接することを特徴とする請求項2に記載のバイオチップ位置決め機構。
【請求項4】
前記バイオチップは、側面に形成された前記可撓部と反対側の側面に突起部を有することを特徴とする請求項2乃至3のいずれかに記載のバイオチップ位置決め機構。
【請求項5】
前記バイオチップは、上面に一体に形成された複数の可撓部を介して構造部材が載置され、前記サンプルホルダーの基準底面に押し付けられることを特徴とする請求項1記載のバイオチップ位置決め機構。
【請求項6】
前記複数の可撓部は下面に凹部が形成され、突起部を介して前記構造部材に接することを特徴とする請求項5に記載のバイオチップ位置決め機構。
【請求項7】
前記バイオチップは、脆性材料からなるバイオチップ基板が弾性材料上に固定されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のバイオチップ位置決め機構。
【請求項8】
前記バイオチップ基板がガラス基板であることを特徴とする請求項7記載のバイオチップ位置決め機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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