説明

バイオディーゼル燃料の製造方法

【課題】仕上げろ過処理の負担軽減を可能とするバイオディーゼル燃料の製造方法の提供。
【解決手段】バイオディーゼル燃料の製造方法は、廃食油からエステル交換反応を経て得られる粗バイオディーゼル燃料に精製処理を施してバイオディーゼル燃料を得るようになっており、エステル交換反応に先立ってなされる不純物除去処理を含み、その不純物除去処理は、エステル交換反応の副生物である副生グリセリンを不純物除去剤として原料廃食油に攪拌混合して混合体とする攪拌混合処理を含むとともに、その混合体を静置して不純物除去剤の比重分離を生じさせる静置処理を含み、そして攪拌混合処理における攪拌混合は、比重分離のために少なくとも3時間の静置を必要とする条件でなすようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃食油を原料とするバイオディーゼル燃料の製造に係り、特に均相アルカリ法によるバイオディーゼル燃料の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
廃食油(使用済みの食用油)からバイオディーゼル燃料(以下では適宜にBDFとも称す)を製造する方法の代表的な一つとして、均相アルカリ法がある。均相アルカリ法では、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどが主に用いられるアルカリ触媒の存在下で、廃食油にメタノールやエタノールなどの直鎖低級アルコールとエステル交換反応を生じさせ、このエステル交換反応で生成する脂肪酸エステル(脂肪酸メチルエステルや脂肪酸エチルエステルなど)としてBDFを得る。より具体的にはエステル交換反応では、脂肪酸エステルが生成するとともに、副生物としてグリセリンが生成する。そこで、副生グリセリンを分離する副生グリセリン回収処理を行い、さらにこの時点ではエステル交換反応で得られる脂肪酸エステルがアルカリ触媒をはじめとして様々な不純物を含む粗バイオディーゼル燃料(粗BDF)の状態にあるので、この粗BDFに精製処理を施して最終的なBDFを得る(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−24841号公報
【特許文献2】特開2009−275127号公報
【特許文献3】特開2009−298982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
BDFの原料となる廃食油は、揚げ物調理などに使用した使用済みの食用油として得られるのが一般的である。そのため廃食油は、揚げカスなどに由来する固形の異物などとして様々な不純物を含んでいる。
【0005】
ところで、ディーゼルエンジンでは、その燃料供給系に設けられるフィルタは15μメッシュ程度とされるのが一般的である。これは、高度な設備で精製された軽油が燃料として用いられることを前提したものである。つまり軽油については、15μ以下の不純物の存在を考慮する必要がないということを前提しているということである。
【0006】
しかるに、廃食油における揚げカスなどに由来する不純物には15μ以下であり、数μ単位であるものも少なくない。このためそのような不純物が製品としてのBDFに残留していると、その不純物が燃料供給系のフィルタをすり抜けることになり、しかも揚げカスなどに由来する不純物は有機物であることから、様々なエンジントラブルを招くことになる。例えば燃料噴射ポンプの損壊や異常高温燃焼などで、燃料噴射ポンプの損壊は、不純物に起因する燃料噴射ポンプのプランジャの固着や電磁スピル弁の固着などとして生じ、異常高温燃焼は、不純物に起因する堆積物が燃料噴射ポンプのノズルに発生し、そのために燃料噴射量が減少して酸素過多となることで生じる。
【0007】
このようなエンジントラブルは、BDFを用いたディーゼルエンジン、特に軽油などと混合させずに廃食油原料のBDFを100%としたディーゼル燃料、つまりB100の廃食油原料BDFを用いたディーゼルエンジンで実際にもしばしば発生している。そして、エンジントラブルを発生させたディーゼルエンジンで使用されているBDFについて分析を行うと、不純物の残留レベルが高い状態にある場合がほとんどである。
【0008】
こうしたことから、廃食油原料のBDFについては、不純物の十分な除去が求められ、特に数μレベルの不純物までも十分に除去する高いレベルでの不純物除去処理が求められる。
【0009】
上述のように、廃食油原料のBDFの製造にあっては、副生グリセリン回収処理を経て得られる粗BDFに精製処理を施すようになっており、その精製工程で不純物の除去がなされる。精製工程での不純物の除去は、主としてアルカリ除去を目的とする粗BDFの洗浄処理で一次的になされ、洗浄処理後の粗BDFに仕上げろ過処理を施すことで最終的になされる。この場合、仕上げろ過処理では、数μレベルの不純物まで除去する高いレベルでの不純物除去処理とするには1μ程度あるいはそれ以下のフィルタを用いる必要がある。
【0010】
このような最終的な不純物除去処理としての仕上げろ過処理には大きな負担がかかり易い。すなわち、洗浄処理ではミクロン単位の不純物の除去は困難であることから、原料廃食油にミクロン単位の不純物量が多い場合、そのミクロン単位の不純物の除去についての負担がもろに仕上げろ過処理にかかることになり、仕上げろ過処理の負担が大きくなり易くなるということである。そして、仕上げろ過処理の負担が大きくなると、フィルタの目詰まりで処理速度が低下するし、また目詰まりしたフィルタの頻繁な逆洗や交換が必要となることから、処理効率の低下を招き、さらにフィルタの逆洗や交換に伴うコスト負担の問題も招くことになってしまう。こうしたことから、仕上げろ過処理の負担をできるだけ軽減できるようにすることが望まれることになる。
【0011】
以上は不純物除去のための仕上げろ過処理に関する問題の一つであり、この他にも仕上げろ過処理に関して一つの問題がある。それは、廃食油に含まれる動物油脂不純物に伴う問題である。
【0012】
廃食油は、揚げ物材料の肉や魚に由来する動物油脂を不純物として含む場合が少なくない。また廃食油に含まれる動物油脂不純物には、温度が高い状態では液化しており、温度が一定以下になることで固化するもの、つまり温度依存性不純物(低温時固化性不純物)が多い。このため、仕上げろ過処理工程における粗BDFが温度依存性動物油脂不純物の固化温度以上の温度にあると、温度依存性動物油脂不純物は仕上げろ過処理で捕捉されずに製品BDFに残留することになってしまう。そして温度依存性動物油脂不純物が製品BDFに残留すると、その温度依存性動物油脂不純物が冬季のような低気温下で固化し、エンジントラブル原因となることが起こり得る。こうしたことから、仕上げろ過処理については、温度依存性動物油脂不純物をより確実に除去できるようにすることが望まれる。
【0013】
本発明は、以上のようなBDFの製造における仕上げろ過処理に関した問題点に鑑みてなされたものであり、仕上げろ過処理の負担軽減を可能とするBDFの製造方法の提供を第1の課題とし、また温度依存性動物油脂不純物のより確実な除去を可能とするBDFの製造方法の提供を第2の課題とている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
仕上げろ過処理の負担を軽減するには、ミクロン単位の不純物も除去可能とする非ろ過的な手法の不純物除去処理を仕上げろ過処理より前の工程で予備的に行うのが有効であり、その予備的な不純物除去処理には、その後の工程での処理について負担を増大させることのないものであることが望まれる。
【0015】
ところで、廃食油に含まれるミクロン単位の不純物の多くは揚げカスなどに由来する有機性の不純物である。そしてそのような不純物は、その由来から、かなりの程度の水分を含有しているのが通常である。つまり廃食油におけるミクロン単位の不純物の多くは、高い含水状態で廃食油中に分散浮遊していることになる。こうした廃食油における不純物の特性との関係でグリセリンの特性に着目する。
【0016】
グリセリンは大きな親水性を有している。したがってグリセリンには、これを原料廃食油に混合させてやれば、その大きな親水性で含水状態の不純物に対する捕集能を期待できる。特に、適切な分散状態が得られるように混合させてやれば、予備的な不純物除去処理として十分に有効な捕集能、つまりミクロン単位の不純物まで効果的に捕集する捕集能を期待できる。すなわちグリセリンには、非ろ過的な手法による不純物の予備的な除去処理における不純物除去剤としての高い適性を期待できる。
【0017】
そして、実際にもグリセリンを原料廃食油に適切な条件で攪拌混合するようにすれば、仕上げろ過処理の負担を効果的に軽減できるような予備的な不純物除去処理が可能であることが確かめられている。またその攪拌混合について、グリセリンによる不純物除去剤を原料廃食油に攪拌混合して得られる混合体から不純物除去剤を比重分離で分離するのに必要な静置時間が3時間以上となるような条件で攪拌混合を行えばよいことも確かめられている。
【0018】
ここで、不純物除去剤を比重分離で分離するのに必要な静置時間は、不純物除去剤の攪拌混合条件(攪拌速度と攪拌混合時間)に依存する。すなわち混合体は、原料廃食油を分散媒とし不純物除去剤を分散質とするエマルション状態にある。そしてそのエマルション状態にあっては、攪拌混合条件を強めて不純物除去剤の分散粒子を細かくするほど不純物除去剤の不純物捕集能が高くなり、その一方で、不純物除去剤の分散粒子を細かくするほど不純物除去剤を比重分離で分離するのに必要な静置時間は長くなるという関係にある。こうした関係から、不純物除去剤の攪拌混合に関する条件は、不純物除去剤の比重分離に必要な静置時間で規定するのが実際的である。
【0019】
以上はグリセリンの予備的な不純物除去処理における不純物除去剤としての機能的な適性であるが、こうした不純物除去剤適性に加えて、グリセリンは、これを予備的な不純物除去処理の不純物除去剤として用いても後の処理の負担を増大させないという利点も有している。すなわちグリセリンは、エステル交換反応で副生するものであり、これを廃食油の処理過程で用いても、それ以後の処理での負担を実質的に増大させることはない。
【0020】
さらにグリセリンを不純物除去剤に用いることには、その不純物除去剤としてエステル交換反応の副生グリセリンを用いることができ、これにより不純物除去剤に関するコスト負担を大幅に軽減できるという効用もある。
【0021】
以上のようなグリセリン、具体的にはエステル交換反応の副生グリセリンを不純物除去剤とする予備的な不純物除去処理は、上述のように、仕上げろ過処理より前の工程に組み込むのがより効果的であるが、その組込み位置としては、エステル交換反応工程の前が特に有効である。すなわち、副生グリセリンを不純物除去剤とする予備的な不純物除去処理は、エステル交換反応前の不純物除去処理として行うようにするのが最適になる。
【0022】
第1の発明では、以上のような知見に基づいて上記第1の課題を解決する。したがって第1の発明は、廃食油からエステル交換反応を経て得られる粗バイオディーゼル燃料に精製処理を施してバイオディーゼル燃料を得るバイオディーゼル燃料の製造方法において、エステル交換反応に先立ってなされる不純物除去処理を含み、その不純物除去処理は、エステル交換反応の副生物である副生グリセリンを不純物除去剤として原料廃食油に攪拌混合して当該原料廃食油を混合体とする攪拌混合処理を含むとともに、前記混合体を静置して不純物除去剤の比重分離を生じさせる静置処理を含み、そして前記攪拌混合処理における攪拌混合は、前記比重分離のために少なくとも3時間の静置を必要とする条件でなすようにされていることを特徴としている。
【0023】
第2の発明では、上記第1の発明において、前記精製処理は、仕上げろ過処理を含むとともに、前記仕上げろ過処理に先立ってなされる調温処理を含み、前記調温処理では、仕上げろ過処理対象の粗バイオディーゼル燃料を、当該粗バイオディーゼル燃料が含有する温度依存性不純物の固化をもたらす温度以下に調温するようにしたことを特徴としている。
【0024】
第2の発明では、温度依存性不純物の固化をもたらす温度以下に調温して仕上げろ過処理を行うようにしている。したがって第2の発明によれば、温度依存性動物油脂不純物のより確実な除去が可能となり、バイオディーゼル燃料の安定性をさらに高めることができる。
【0025】
第3の発明では、上記第1又は第2の発明において、所定の単位処理量の原料廃食油にその単位処理量ごとに一連の処理を施してバイオディーゼル燃料を得るようにされており、前記単位処理量ごとの一連の処理は、原料投入処理、不純物除去処理、エステル交換反応処理、副生グリセリン回収処理、及び精製処理を含んでなり、前記原料投入処理では、前記単位処理量に対応する容量の反応槽に前記単位処理量の原料廃食油を投入し、前記不純物除去処理は、前記反応槽中の原料廃食油を加熱しつつ攪拌する加熱・事前攪拌処理、攪拌を受けつつある原料廃食油に前記不純物除去剤を供給する不純物除去剤供給処理、供給された不純物除去剤を原料廃食油に攪拌混合して前記混合体とする攪拌混合処理、前記混合体を静置して当該混合体に不純物除去剤の比重分離を生じさせる静置処理、及び前記静置処理で比重分離した使用済みの不純物除去剤を前記反応槽から排出する不純物除去剤排出処理を含み、前記エステル交換反応処理は、前記不純物除去剤排出処理を経て得られる不純物予備除去廃食油を加熱しつつ攪拌する加熱・事前攪拌処理、攪拌を受けつつある不純物予備除去廃食油にエステル交換反応用の薬剤を供給する薬剤供給処理、及び供給された薬剤を不純物予備除去廃食油に攪拌混合する薬剤混合処理を含み、前記副生グリセリン回収処理は、前記エステル交換反応で生成する脂肪酸エステルと副生グリセリンからなる反応生成物を静置して当該反応生成物に副生グリセリンの比重分離を生じさせる静置処理、及び前記静置処理で比重分離した副生グリセリンを前記反応槽から排出する副生グリセリン排出処理を含み、前記精製処理は、前記副生グリセリン回収処理を経て得られる粗バイオディーゼル燃料に洗浄を施す洗浄処理、前記洗浄処理を経て得られる洗浄済み粗バイオディーゼル燃料に施す仕上げろ過処理を含むことを特徴としている。
【0026】
第1の発明又は第2の発明の製造方法によるバイオディーゼル燃料の製造はバッチ処理で行われることになる。第3の発明によれば、そのバッチ処理によるバイオディーゼル燃料の製造として特に好適な製造方法が提供される。
【0027】
第4の発明では、上記第2の課題を解決するために、廃食油からエステル交換反応を経て得られる粗バイオディーゼル燃料に精製処理を施してバイオディーゼル燃料を得るバイオディーゼル燃料の製造方法において、前記精製処理は、仕上げろ過処理を含むとともに、前記仕上げろ過処理に先立ってなされる調温処理を含み、前記調温処理では、仕上げろ過処理対象の粗バイオディーゼル燃料を、当該粗バイオディーゼル燃料が含有する低温時固化性不純物の固化をもたらす温度以下に調温するようにしたことを特徴としている。
【0028】
第4の発明によれば、第2の発明の場合と同様に、温度依存性動物油脂不純物のより確実な除去が可能となり、バイオディーゼル燃料の安定性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のような本発明によれば、BDFの製造における仕上げろ過処理の負担を効果的に軽減することが可能となり、より低コストなBDFをより効率的に製造できるようになり、また温度依存性動物油脂不純物のより確実な除去が可能となり、BDFの安定性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施例によるBDFの製造方法で用いるBDF製造装置の構成を示す図である。
【図2】BDF製造における単位処理量ごとの一連の処理工程を示す図である。
【図3】不純物除去工程に含まれる各処理工程を示す図である。
【図4】エステル交換反応工程に含まれる各処理工程を示す図である。
【図5】副生グリセリン回収工程に含まれる各処理工程を示す図である。
【図6】精製工程に含まれる各処理工程を示す図である。
【図7】1回目洗浄工程に含まれる各処理工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0031】
図1に、一実施例によるBDFの製造方法で用いるバッチ処理型のBDF製造装置1の構成をブロック図で示し、図2に、BDF製造装置1でなされるバッチ処理によるBDF製造における単位処理量ごとの一連の処理工程を示す。図1に示すように、BDF製造装置1は、バッチ処理用の反応槽2を備えるとともに、原料廃食油供給系3、不純物除去剤供給系4、廃グリセリン回収系5、廃水処理系6、洗浄水供給系7、薬剤供給系8、及びBDF回収系9を備え、図2に示す順序で単位処理量ごとの一連の処理工程、具体的には、原料投入工程、不純物除去工程、エステル交換反応工程、副生グリセリン回収工程、及び精製工程の各工程を実行できるようにされている。
【0032】
反応槽2は、バッチ処理における単位処理量に対応する容量とされている。具体的には、本実施例の場合、原料廃食油の単位処理量を100L(リットル)としており、100Lの原料廃食油にエステル交換反応処理などを安定的に施すことができるように、例えば直径600mmで高さ1000mm程度の底部円錐形の槽構造とし、270L程度の容量となるようにされている。また反応槽2は、図2の各工程における各処理で必要となる攪拌混合や加熱を行うための攪拌機11とヒータ12が組み込まれるとともに、原料廃食油などの投入量を検出するための液面センサ13が取り付けられている。
【0033】
原料廃食油供給系3は、外部から持ち込まれる廃食油を受け入れて貯留し、その貯留してある廃食油を単位処理量で反応槽2に供給する。そのために原料廃食油供給系3は、受入れ槽14、原料廃食油貯留槽15、受入れ槽・貯留槽間移送ポンプ16、貯留槽・反応槽間移送ポンプ17、及び原料ろ過器18を備えている。
【0034】
受入れ槽14は、外部から持ち込まれる廃食油を受け入れ、またその受入れた廃食油に前処理を施す。受入れ槽14での前処理は、廃食油に含まれる粗大不純物のフィルタ19による粗いろ過処理と自然沈降処理による除去としてなされ、この前処理を経ることで廃食油が原料廃食油となる。
【0035】
受入れ槽14での前処理で得られる原料廃食油は、受入れ槽・貯留槽間移送ポンプ16で移送されて原料廃食油貯留槽15に貯留される。原料廃食油貯留槽15は、数単位処理量で原料廃食油を貯留できる容量とされている。本実施例では、容量を1000Lとし、10単位処理量の貯留を行えるようにしている。原料廃食油貯留槽15に貯留してある原料廃食油は、一つの単位処理が終えるごとに、貯留槽・反応槽間移送ポンプ17で移送されて反応槽2に投入される。その投入量は、液面センサ13で得られる反応槽2の液面情報に基づいて制御される。
【0036】
原料ろ過器18は、貯留槽・反応槽間移送ポンプ17と反応槽2の間に設けられ、そのフィルタとして例えばバグフィルタが用いられており、反応槽2に投入する前の原料廃食油に粗いろ過処理を施して原料廃食油中の大き目な不純物の除去を行う。
【0037】
不純物除去剤供給系4は、図2の不純物除去工程での処理に際し、図2のエステル交換反応工程における副生物である副生グリセリンが用いられる不純物除去剤を反応槽2に供給する。そのために不純物除去剤供給系4は、副生グリセリン貯留槽21と貯留槽・反応槽間移送ポンプ22を備えている。副生グリセリン貯留槽21には、反応槽2から排出される副生グリセリンが副生グリセリン回収配管23を介して回収・貯留される。副生グリセリン貯留槽21に貯留してある副生グリセリンは、一つの単位処理が終えるごとに、貯留槽・反応槽間移送ポンプ22で移送されて反応槽2に不純物除去剤として投入される。
【0038】
廃グリセリン回収系5は、廃グリセリン回収槽24を備え、図2の不純物除去工程での処理に伴って反応槽2から排出される廃グリセリンを廃グリセリン回収配管25で回収して貯留する。廃グリセリン回収槽24に貯留された廃グリセリンは適宜に処分されることになるが、その処分方法として好ましい一つは、ボイラ燃料として利用することである。すなわち、BDF製造装置1では、後述のように粗BDFの精製処理として温水で粗BDFを洗浄する洗浄処理を行うが、この洗浄処理用の温水を得るためのボイラの燃料として廃グリセリンを使用するということである。
【0039】
廃水処理系6は、アルカリ中和槽26を備えており、図2の精製工程における精製処理としてなされる洗浄水による粗BDFの洗浄処理に伴って反応槽2から排出される廃水を廃水回収配管27で回収してアルカリ中和槽26に送りこみ、そこでアルカリ中和した後、図外のグリーストラップに排出する。
【0040】
洗浄水供給系7は、洗浄水貯留槽28を備えており、図外の給湯設備から供給される温水を洗浄水として洗浄水貯留槽28に貯留し、後述のようになされる粗BDFの洗浄に際して必要となる洗浄水を洗浄水貯留槽28から反応槽2に注水する。
【0041】
薬剤供給系8は、攪拌機31が組み込まれた薬剤貯留槽32と貯留槽・反応槽間移送ポンプ33を備えており、図2のエステル交換反応工程での処理で用いる薬剤を薬剤貯留槽32で調製して貯留し、その薬剤を必要時に貯留槽・反応槽間移送ポンプ33で移送して反応槽2に投入する。薬剤貯留槽32で調製して貯留する薬剤は、エステル交換反応で必要なアルカリ触媒と直鎖低級アルコールの混合物である。本実施例の場合、アルカリ触媒として水酸化カリウムを用い、直鎖低級アルコールとしてメタノールを用いており、薬剤はメタノールに水酸化カリウムを溶解させた水酸化カリウムのメタノール溶液となる。したがって薬剤貯留槽32では、攪拌機31で攪拌しつつ、一定量のメタノールに一定量の水酸化カリウムを溶解させて水酸化カリウムのメタノール溶液を調製して貯留し、その調製におけるメタノールと水酸化カリウムの比率は、例えばメタノール20Lに対し水酸化カリウム1kg程度とするのが通常である。
【0042】
BDF回収系9は、反応槽・貯留槽間移送ポンプ34、調温器35、仕上げろ過器36、及びBDF貯留槽37を備えており、洗浄処理後の脱水処理を経て反応槽2から排出される洗浄済み粗BDFを反応槽・貯留槽間移送ポンプ34でBDF貯留槽37に移送して貯留するとともに、その移送の途中で調温器35による調温を加えた後に仕上げろ過器36により精製処理の一環として仕上げろ過処理を洗浄済み粗BDFに施す。BDF貯留槽37には、給油系38が接続されている。給油系38は、2つ系統を備えている。すなわち、給油ポンプ39を用いて図外の給油口から車両などに給油する系統とポリタンク40などの容器への給油を行う系統である。
【0043】
以下では、BDF製造装置1でなされる単位処理量ごとの一連の処理工程、つまり図2に示す一連の処理工程について説明する。上述のように単位処理量ごとの一連の処理工程は、原料投入工程、不純物除去工程、エステル交換反応工程、副生グリセリン回収工程、及び精製工程を含んでなる。
【0044】
原料投入工程では、反応槽2への原料投入処理がなされる。具体的には、原料廃食油貯留槽15から単位処理量、具体的には100Lの原料廃食油を移送して反応槽2に投入する。この投入過程で原料ろ過器18による粗いろ過処理が施こされ原料廃食油中の大き目な不純物の除去がなされることは上述のとおりである。
【0045】
不純物除去工程は、反応槽2に供給された原料廃食油に対し非ろ過的な手法による予備的な不純物除去処理を行う工程で、図3に示すように、加熱・事前攪拌工程、不純物除去剤供給工程、攪拌混合工程、静置工程、及び不純物除去剤排出工程を含み、これらの各工程は図3に示す順序で実行される。
【0046】
加熱・事前攪拌工程では、反応槽2中の原料廃食油を加熱しつつ攪拌する加熱・事前攪拌処理がなされる。加熱・事前攪拌処理における加熱は、外気温と同じ温度状態にある原料廃食油を30分程度で60℃にまで上げる条件で行い、一方、攪拌は、攪拌機11の攪拌翼が24cmφである条件で回転数1450rpmとして行うのが好ましい例である。こうした加熱・事前攪拌処理を行うことにより、反応槽2中の原料廃食油の温度分布を均一化することができ、また反応槽2中の原料廃食油に予め流動状態を与えることで、後述の不純物除去剤供給工程でなされる不純物除去剤の供給に際して、原料廃食油への不純物除去剤の混入をより均一的になさせることができる。
【0047】
不純物除去剤供給工程では、加熱・事前攪拌工程での攪拌を受けつつある原料廃食油に不純物除去剤供給系4から不純物除去剤を供給する不純物除去剤供給処理がなされる。この場合の不純物除去剤がエステル交換反応工程における副生物である副生グリセリンであることは上述のとおりである。不純物除去剤の供給量は、反応槽2中の100Lの原料廃食油に対し、15L〜25Lとするのが好ましい例である。
【0048】
攪拌混合工程では、不純物除去剤供給工程で供給された不純物除去剤を原料廃食油に攪拌混合することで、原料廃食油を分散媒とし不純物除去剤を分散質とするエマルション状態で原料廃食油に不純物除去剤が混在する混合体とする攪拌混合処理がなされる。攪拌混合工程における攪拌混合は、後述する不純物除去剤の比重分離のために少なくとも3時間の静置を必要とし、好ましく3時間〜6時間の静置を必要とする条件(攪拌速度と攪拌時間)でなす。
【0049】
ここで、エマルション状態にある混合体では、上述のように、不純物除去剤の分散粒子を細かくするほど不純物除去剤の不純物捕集能が高くなる一方で、不純物除去剤の分散粒子を細かくするほど不純物除去剤を比重分離で分離するのに必要な静置時間は長くなるという関係にある。このことから、不純物除去効率という点では攪拌混合条件をより強める(攪拌速度をより速くしたり、攪拌混合時間をより長くしたりする)のが有効であるが、その一方で、不純物除去剤の比重分離のための静置時間が長くなって処理効率が低下することになる。こうした不純物除去効率と処理効率の関係を、不純物除去工程における予備的な不純物除去処理の目的が後述のような仕上げろ過処理の負担を効果的に軽減できるようにすることにあることを基礎に、調整することで得られるのが攪拌混合の条件である。そして、仕上げろ過処理の効果的な負担軽減という点から、3時間が静置時間の下限となり、6時間を超える静置時間を必要とする攪拌混合条件としても、仕上げろ過処理の負担軽減性が向上しないことから、6時間が静置時間の上限となる。
【0050】
本実施例では、直径600mm、高さ1000mmで270L程度の容量の反応槽2と攪拌翼が24cmφの攪拌機11という条件で攪拌機11の回転数1450rpmとして液温60℃の下で1時間の攪拌混合を行うようにしている。この攪拌混合条件であると、不純物除去剤の比重分離に必要な静置時間は3〜3.5時間程度になる。
【0051】
静置工程では、攪拌混合工程で得られた混合体を反応槽2で静置してその混合体に使用済みの不純物除去剤の比重分離を生じさせる静置処理がなされる。この静置処理における静置時間は3〜3.5時間程度になることは上述のとおりで、こうした静置処理を経ることで、反応槽2では比重の小さい廃食油(不純物予備除去廃食油)が上層部となり、比重の大きい使用済みの不純物除去剤が下層部となるように廃食油と不純物除去剤が比重分離されて2層構造が形成される。
【0052】
不純物除去剤排出工程では、静置処理で形成された2層構造の下層部として比重分離した使用済みの不純物除去剤を反応槽2から排出する不純物除去剤排出処理がなされる。この不純物除去剤排出処理は、使用済みの不純物除去剤が廃グリセリンとなることから、廃グリセリン回収系5でなされる。具体的には、反応槽2から自然落下で排出される廃グリセリンを廃グリセリン回収配管25で回収して廃グリセリン回収槽24に貯留する。
【0053】
図2に戻って、エステル交換反応工程は、不純物除去剤排出処理を経て得られる不純物予備除去廃食油に、アルカリ触媒(本実施例では水酸化カリウム)の存在下で、直鎖低級アルコール(本実施例ではメタノール)とエステル交換反応を生じさせて脂肪酸エステル(本実施例では脂肪酸メチルエステル)を生成させるエステル交換反応処理を行う工程で、図4に示すように、加熱・事前攪拌工程、薬剤供給工程、及び薬剤混合工程を含み、これらの各工程は図4に示す順序で実行される。
【0054】
加熱・事前攪拌工程では、反応槽2中の不純物予備除去廃食油を加熱しつつ攪拌する加熱・事前攪拌処理がなされる。加熱・事前攪拌処理における加熱は、外気温と同じ温度状態にある原料廃食油を30分程度で60℃にまで上げる条件で行い、一方、攪拌は、攪拌機11の攪拌翼が24cmφである条件で回転数300rpmとして行うのが好ましい例である。こうした加熱・事前攪拌処理は、上述の不純物除去工程における加熱・事前攪拌処理におけるのと同様の効用をもたらす。
【0055】
薬剤供給工程では、加熱・事前攪拌工程での攪拌を受けつつある不純物予備除去廃食油に薬剤供給系8から薬剤を供給する薬剤供給処理がなされる。薬剤の供給量は、反応槽2中の100Lの不純物予備除去廃食油に対し、20L程度とするのが好ましい例である。
【0056】
薬剤混合工程では、供給された薬剤を不純物予備除去廃食油に攪拌混合する薬剤混合処理がなされる。この薬剤混合処理では、上述のような反応槽2と攪拌機11の条件で攪拌機11の回転数300rpmとして液温60℃の下で1時間程度の攪拌混合を行うのが好ましい例である。こうした薬剤混合処理により反応槽2中ではエステル交換反応が進行し、それに連れて脂肪酸エステル(脂肪酸メチルエステル)と副生グリセリンからなる反応生成物の生成が進み、最終的に反応槽2には反応生成物だけが残る状態となる。
【0057】
以上のようなエステル交換反応工程では、余剰のメタノールが発生するのが通常である。その余剰のメタノールは回収して薬剤用として再度利用するのが好ましく、そのようにする場合には、BDF製造装置1にメタノール回収系を付加することになる。
【0058】
図2に戻って、副生グリセリン回収工程は、エステル交換反応の副生物である副生グリセリンを不純物除去剤用として回収する副生グリセリン回収処理を行う工程で、図5に示すように、静置工程と副生グリセリン排出工程を含む。
【0059】
静置工程では、エステル交換反応で生成する脂肪酸エステル(脂肪酸メチルエステル)と副生グリセリンからなる反応生成物を反応槽2で静置してその反応生成物に副生グリセリンの比重分離を生じさせる静置処理がなされる。この静置処理における静置時間は12時間以上となるのが通常である。こうした静置処理を経ることで、反応槽2では比重の小さい脂肪酸メチルエステルが上層部となり、比重の大きい副生グリセリンが下層部となるように脂肪酸メチルエステルと副生グリセリンが比重分離されて2層構造が形成される。
【0060】
副生グリセリン排出工程では、静置処理で形成された2層構造の下層部として比重分離した副生グリセリンを反応槽2から排出する副生グリセリン排出処理がなされる。この副生グリセリン排出処理は、副生グリセリンが不純物除去剤として用いられることから、不純物除去剤供給系4でなされる。具体的には、反応槽2から自然落下で排出される副生グリセリンを副生グリセリン回収配管23で回収して副生グリセリン貯留槽21に貯留する。こうした副生グリセリン回収工程を経ることで、反応槽2には脂肪酸メチルエステルが残ることになる。ただ、この時点での脂肪酸メチルエステルは、アルカリ触媒(水酸化カリウム)をはじめとして様々な不純物を含んでおり、粗製状態にある。つまり副生グリセリン回収工程を経た時点では粗製状態の脂肪酸メチルエステルとして粗BDFが得られるということである。
【0061】
図2に戻って、精製工程は、副生グリセリン回収工程を経て得られる粗BDFに精製処理を施す工程で、図6に示すように、1回目〜4回目の各洗浄工程、脱水工程、調温工程、及び仕上げろ過工程を含み、これらの各工程は図6に示す順序で実行される。
【0062】
1回目〜4回目の各洗浄工程は、同じ処理の繰返しであり、それぞれおいて主にアルカリ除去を目的とする粗BDFに対する洗浄処理が温水を洗浄水となされる。そこで、1回目洗浄工程に代表させ、2回目〜4回目の各洗浄工程についての説明は省略する。1回目洗浄工程は、図7に示すように、注水・攪拌工程、静置工程、及び洗浄廃水排出工程を含み、これらの各工程は図7に示す順序で実行される。
【0063】
注水・攪拌工程では、反応槽2中の粗BDFに洗浄水供給系7から洗浄水を注水するとともに、洗浄水の注水を受けた粗BDFに攪拌を加える注水・攪拌処理がなされる。この注水・攪拌処理における洗浄水の温度は70℃、洗浄水の注水量は20L、攪拌時間は1時間、攪拌速度は300rpmとするのが好ましい例である。
【0064】
静置工程では、注水・攪拌工程を経た粗BDFを反応槽2で静置してその粗BDFに混入している使用済み洗浄水、つまり洗浄廃水の比重分離を生じさせる静置処理がなされる。この静置処理における静置時間は1時間以上となるのが通常である。こうした静置処理を経ることで、反応槽2では比重の小さい粗BDFが上層部となり、比重の大きい洗浄廃水が下層部となるように粗BDFと洗浄廃水が比重分離されて2層構造が形成される。
【0065】
洗浄廃水排出工程では、静置処理で形成された2層構造の下層部として比重分離した洗浄廃水を反応槽2から排出する洗浄廃水排出処理がなされる。この洗浄廃水排出処理は廃水処理系6でなされる。具体的には、反応槽2から自然落下で排出される洗浄廃水を廃水回収配管27で回収してアルカリ中和槽26に送る。アルカリ中和槽26では洗浄廃水にアルカリ中和処理が施され、アルカリ中和処理を経た中和済み洗浄廃水は図外のグリーストラップに排出される。ここで、アルカリ中和槽26におけるアルカリ中和処理には、オルトリン酸などのオルト酸を用いるのが好ましく、そのようにすることで、様々な植物栄養素を含む洗浄廃水を水溶性肥料として再利用する場合に、水溶性肥料化が容易となる。
【0066】
以上のような洗浄工程を1回目〜4回目として4回繰り返すのは、反応槽2の容量と関係している。すなわち反応槽2の容量は、バッチ処理における単位処理量に応じて決まることになる。そして反応槽2への洗浄水の注水量は、反応槽2の容量に応じて決まり、本実施例の場合、20L程度となる。このような注水量であると、1回の洗浄処理だけでは十分なアルカリ除去をなすことができず、このため1回目〜4回目として4回繰り返す必要があることになる。本実施例の場合、1回目〜4回目の各洗浄処理における洗浄廃水のpHは、1回目でpH=11.48、2回目でpH=8.83、3回目でpH=8.59、4回目でpH=7.72であった。
【0067】
図6に戻って、脱水工程では、洗浄工程を経た洗浄済み粗BDFに残留する水分の脱水処理がなされる。脱水処理は、洗浄済み粗BDFを例えば150rpmの回転速度で攪拌機11により攪拌しつつ、所定温度、例えば102℃を維持するように加熱することで洗浄済み粗BDFを1.5時間程度乾燥させる処理としてなされる。脱水処理を経た洗浄済み粗BDFは、反応槽2から自然落下で排出されてBDF回収系9に渡され、BDF回収系9において調温器35による調温工程を経た後に仕上げろ過器36による仕上げろ過工程を経ることで最終的な製品としてのBDFとなる。そして製品としてのBDFは、BDF貯留槽37に送り込まれて、そこに貯蔵される。
【0068】
調温工程では、仕上げろ過処理対象の粗BDF、つまり脱水処理を経た洗浄済み粗BDFを、当該粗BDFが含有する温度依存性不純物の固化をもたらす温度以下に調温する調温処理が調温器35によりなされる。温度依存性不純物としては廃食油に含まれる動物油脂不純物が主なもので、動物油脂不純物は、一般に、5℃以下になると固化し、それより高い温度では液化している。したがって調温処理では、仕上げろ過工程で動物油脂不純物をより確実に除去できるようにするために、洗浄済み粗BDFを5℃以下にする調温を行うことになる
【0069】
仕上げろ過工程では、調温工程を経た洗浄済み粗BDFに仕上げろ過器36による仕上げろ過処理がなされる。仕上げろ過処理では、洗浄済み粗BDFに含まれる数μレベルの不純物までも十分に除去する高いレベルでの不純物除去処理を行う。そのために仕上げろ過器36には、1μないしそれ以下のフィルタを用いるのが好ましい。
【0070】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、これは代表的な例に過ぎず、本発明はその趣旨を逸脱することのない範囲で様々な形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 BDF製造装置
2 反応槽
3 原料廃食油供給系
4 不純物除去剤供給系
5 廃グリセリン回収系
6 廃水処理系
7 洗浄水供給系
8 薬剤供給系
9 BDF回収系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃食油からエステル交換反応を経て得られる粗バイオディーゼル燃料に精製処理を施してバイオディーゼル燃料を得るバイオディーゼル燃料の製造方法において、
エステル交換反応に先立ってなされる不純物除去処理を含み、その不純物除去処理は、エステル交換反応の副生物である副生グリセリンを不純物除去剤として原料廃食油に攪拌混合して当該原料廃食油を混合体とする攪拌混合処理を含むとともに、前記混合体を静置して不純物除去剤の比重分離を生じさせる静置処理を含み、そして前記攪拌混合処理における攪拌混合は、前記比重分離のために少なくとも3時間の静置を必要とする条件でなすようにされていることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項2】
前記精製処理は、仕上げろ過処理を含むとともに、前記仕上げろ過処理に先立ってなされる調温処理を含み、前記調温処理では、仕上げろ過処理対象の粗バイオディーゼル燃料を、当該粗バイオディーゼル燃料が含有する温度依存性不純物の固化をもたらす温度以下に調温するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項3】
所定の単位処理量の原料廃食油にその単位処理量ごとに一連の処理を施してバイオディーゼル燃料を得るようにされており、前記単位処理量ごとの一連の処理は、原料投入処理、不純物除去処理、エステル交換反応処理、副生グリセリン回収処理、及び精製処理を含んでなり、
前記原料投入処理では、前記単位処理量に対応する容量の反応槽に前記単位処理量の原料廃食油を投入し、
前記不純物除去処理は、前記反応槽中の原料廃食油を加熱しつつ攪拌する加熱・事前攪拌処理、攪拌を受けつつある原料廃食油に前記不純物除去剤を供給する不純物除去剤供給処理、供給された不純物除去剤を原料廃食油に攪拌混合して前記混合体とする攪拌混合処理、前記混合体を静置して当該混合体に不純物除去剤の比重分離を生じさせる静置処理、及び前記静置処理で比重分離した使用済みの不純物除去剤を前記反応槽から排出する不純物除去剤排出処理を含み、
前記エステル交換反応処理は、前記不純物除去剤排出処理を経て得られる不純物予備除去廃食油を加熱しつつ攪拌する加熱・事前攪拌処理、攪拌を受けつつある不純物予備除去廃食油にエステル交換反応用の薬剤を供給する薬剤供給処理、及び供給された薬剤を不純物予備除去廃食油に攪拌混合する薬剤混合処理を含み、
前記副生グリセリン回収処理は、前記エステル交換反応で生成する脂肪酸エステルと副生グリセリンからなる反応生成物を静置して当該反応生成物に副生グリセリンの比重分離を生じさせる静置処理、及び前記静置処理で比重分離した副生グリセリンを前記反応槽から排出する副生グリセリン排出処理を含み、
前記精製処理は、前記副生グリセリン回収処理を経て得られる粗バイオディーゼル燃料に洗浄を施す洗浄処理、前記洗浄処理を経て得られる洗浄済み粗バイオディーゼル燃料に施す仕上げろ過処理を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項4】
廃食油からエステル交換反応を経て得られる粗バイオディーゼル燃料に精製処理を施してバイオディーゼル燃料を得るバイオディーゼル燃料の製造方法において、
前記精製処理は、仕上げろ過処理を含むとともに、前記仕上げろ過処理に先立ってなされる調温処理を含み、前記調温処理では、仕上げろ過処理対象の粗バイオディーゼル燃料を、当該粗バイオディーゼル燃料が含有する温度依存性不純物の固化をもたらす温度以下に調温するようにしたことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−62430(P2012−62430A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209190(P2010−209190)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(510251040)株式会社 エムエムシーセンター (1)
【Fターム(参考)】