バイオディーゼル製造のための触媒系

【課題】本発明の課題は、一価アルコールを用いてグリセリドをエステル交換するための、改善及び簡易化した方法を提供することであった。
【解決手段】この課題は、アルカリ金属−又はアルカリ土類金属アルカノラート又はアルカリ金属水酸化物の群から選択されるエステル交換触媒、及び、塩状化合物、チタナート又は少なくとも0.9g/mLの密度を有する塩状でない化合物を含む群から選択されるエステル交換触媒とは異なる少なくとも1種の活性化剤を含む触媒系の使用、少なくとも1種の一価アルコールの存在下での少なくとも1種のモノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリドのエステル交換を含む脂肪酸アルキルエステルの製造方法において上述の触媒系を使用することを特徴とする製造方法により解決された。
さらに、この方法により得られた脂肪酸アルキルエステルのバイオディーゼルの成分としての使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル交換触媒及びエステル交換触媒とは異なる少なくとも1種の活性化剤を含む触媒系の、エステル交換反応を触媒作用するための使用であって、前記エステル交換触媒が、アルカリ金属アルカノラート又はアルカリ土類金属アルカノラート又はアルカリ金属水酸化物の群から選択され、前記活性化剤が、塩状化合物、チタナート又は少なくとも0.9g/mLの密度を有する塩状でない化合物を含む群から選択される使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一価アルコールの脂肪酸アルキルエステルは、バイオディーゼル、化石燃料のための再生原料を基礎とする代替物としての使用において重要な用途が数年前から見出されている。
【0003】
バイオディーゼルの製造は通常は、塩基触媒作用したエステル交換を用いて行われる(The Biodiesel Handbook,G. Knothe,J. van Gerpen,J. Krahl, Ed. AOCS Press (2005);Biodiesel − The comprehensive handbook, M. Mittelbach, C. Remschmidt (2004);Bioresource Technology 2004, 92, 297;Applied Enegy2010, 87, 1083;Chimica Oggi/Chemistry today2008, 26)。
【0004】
最も頻繁に使用される触媒は、ナトリウム−メタノラート(NaOMe)、水酸化ナトリウム(NaOH)、カリウム−メタノラート(KOMe)及び水酸化カリウム(KOH)である。この触媒は通常は均一系触媒として、使用される一価アルコール、例えばメタノール、に溶解して使用される。
【0005】
これに代わって、アルカリ性触媒を相関移動触媒(Phasentransferkatalysator)と組み合わせて使用できることが記載されている(WO2007/111604)。相関移動触媒は、相関移動触媒なしのアルカリ性触媒の使用と比較して、この反応を促進し、より完全な変換率を達成することを取りはからう。この記載の方法の欠点は、この相間移動触媒が高価であり、かつ、しばしば腐食性であることであり、というのも、この触媒は、塩化物イオン、臭化物イオン又は他のイオンを含有するからであり、これらイオンに対して、この中で通常バイオディーゼルが製造される鋼反応器は耐性がない。さらに、少量の相関移動触媒が、バイオディーゼルの後処理によってここから取り出されないという懸念がある。
【0006】
この反応混合物を改変するための他の手段は、ドイツ国公開特許公報DE332506、DE3415529、DE102006044467及びDE102007056703に挙げられており、ここでは、エステル交換プロセスにおいて得られるグリセリン量の一部を返送し、トリグリセリド、一価アルコール及びアルカリ性触媒から構成される反応混合物に混和することが開示されている。この方法は、触媒の節約を可能にするが、この欠点は、グリセリンの添加によってエステル交換反応の平衡が出発材料の側にシフトし、場合によっては十分な変換率が達成されないことにある。
【0007】
さらに、エステル交換後にこの反応混合物に、遊離されたグリセリンの分離のために相分離を促進する添加剤を添加することによって、バイオディーゼルの製造プロセスを改善する手段が記載されている。
【0008】
Eur. J. Lipid Sci. Technol. 2008, 110, 347は、この目的のために水を添加することを記載する。この方法の欠点は、水の添加によって不所望な鹸化反応が生じ得るという事実であり、これによってバイオディーゼル収率は、このアルカリ性触媒が前もって中和されない場合に、減少する可能性がある。
【0009】
CN101423773は、同様にこの相分離を促進するという目的で、エステル交換後に反応混合物にCa塩又はMg塩を添加することを記載する。この記載の塩の幾つかでは、劣悪な溶解性のために、不所望な固形物質形成を伴う問題が生じることがある。
【0010】
水添加の場合にもCa塩又はMg塩の添加の場合にも、この添加剤を反応の直後に添加することは不利であり、このことは、更なる装置上の及び時間上の手間を意味する。
【0011】
バイオディーゼル製造を均一系触媒の使用下で改善する更なる方法は、共溶媒の使用であり、これは例えばChemical Engineering Journal 2009, 146, 302; Energy&Fuels 2008, 22, 2702又はBiomass&Bioenergy 1996, 11, 43に記載されている。
【0012】
この共溶媒は確かにこの反応を促進するが、代わりに、グリセリンの分離のための相分離を劣悪化するか又は妨げる。さらに、共溶媒はバイオディーゼル及びグリセリンから手間をかけて取り除かなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2007/111604
【特許文献2】DE332506
【特許文献3】DE3415529
【特許文献4】DE102006044467
【特許文献5】DE102007056703
【特許文献6】CN101423773
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】The Biodiesel Handbook, G. Knothe, J. van Gerpen, J. Krahl, Ed. AOCS Press (2005)
【非特許文献2】Biodiesel − The comprehensive handbook, M. Mittelbach, C. Remschmidt (2004)
【非特許文献3】Bioresource Technology 2004, 92, 297
【非特許文献4】Applied Enegy2010, 87, 1083
【非特許文献5】Chimica Oggi/Chemistrytoday2008, 26
【非特許文献6】Eur. J. Lipid Sci. Technol. 2008, 110, 347
【非特許文献7】Chemical Engineering Journal 2009, 146, 302
【非特許文献8】Energy&Fuels 2008, 22, 2702
【非特許文献9】Biomass&Bioenergy 1996, 11, 43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の課題は、より迅速かつより完全な反応を引き起こす、一価アルコールを用いてグリセリドをエステル交換するための簡易化した方法を提供することであった。
【0016】
意外なことに、多成分−触媒、すなわち、様々な触媒から構成される混合物、又は従来の触媒が適した添加物と共に、このエステル交換反応を促進する及び/又はこの相分離を改善することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これに応じて、本発明の第一の主題は、エステル交換反応を触媒作用するための、エステル交換触媒及びエステル交換触媒とは異なる少なくとも1種の活性化剤を含む触媒系の使用であって、前記エステル交換触媒が、アルカリ金属アルカノラート又はアルカリ土類金属アルカノラート又はアルカリ金属水酸化物の群から選択され、前記活性化剤が、塩状化合物、チタナート又は少なくとも0.9g/mLの密度を有する塩状でない化合物を含む群から選択される、使用に関する。
【0018】
1成分しか含まない技術水準に応じた触媒に対して、この記載の多成分−触媒は、エステル交換反応及び/又はこの放出されるグリセリンの相分離を促進し、これによって、より迅速及びより完全なプロセス及び/又は簡易化したバイオディーゼル後処理を達成する、という利点を有する。特に、このより迅速な相分離は著しい利点を提示し、というのも、これによって、バイオディーゼル製造が更に合理化されることができるからである。この使用される触媒系は、この放出されるグリセリンのより迅速及びより完全な相分離を引き起こし、というのも、この形成されるグリセリン相はより高い密度及び/又はより高い極性を有するからである。この場合に、この触媒系は全体としてエステル交換に使用され、手間をかけて後で添加剤を添加することは必要でない。
【0019】
本発明により使用される触媒系は、少なくとも2種の成分、エステル交換触媒及び少なくとも1種の活性化剤を有する。
【0020】
エステル交換触媒は、本来のエステル交換を担い、かつ、アルカリ金属アルカノラート又はアルカリ土類金属アルカノラート又はアルカリ金属水酸化物の群から選択されている。好ましいエステル交換触媒は、ナトリウム−メタノラート、カリウム−メタノラート、ナトリウム−エタノラート、カリウム−エタノラート、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。特にとりわけ好ましくは、ナトリウム−メタノラート又はカリウム−メタノラートをエステル交換触媒として使用する。
【0021】
通常は、エステル交換触媒は溶液中に存在し、特にこれは、アルコール性溶液、好ましくはメタノール性溶液又はエタノール性溶液である。特にとりわけ好ましくは、この使用されるアルコールは使用されるアルカノラートに相応する。したがって、特にメタノール中のナトリウム−メタノラート又はメタノール中のカリウム−メタノラートがエステル交換触媒として使用される。
【0022】
更に、この触媒系は、エステル交換触媒とは異なる活性化剤少なくとも1種を含む。前述の活性化剤は、塩状(salzartig)化合物、チタナート又は少なくとも0.9g/mLの密度を有する塩状でない化合物を含む群から選択されている。
【0023】
本発明の意味合いにおける塩状化合物として、カチオン及びアニオンを有する化合物が理解される。この場合、特に塩状化合物は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛又は鉄の、塩化物、臭化物、フッ化物、酢酸塩、ギ酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、シアン化物、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、アルカノラート又はヘキサシアノ鉄酸塩である。アルカノラートとの概念は、この相応するメタノラート、エタノラート、n−プロパノラート、イソプロパノラート、tert−ブタノラート又はtert−ペンタノラートを含む。好ましくは、メタノラート及びエタノラートが使用され、特にとりわけ好ましくはメタノラートが使用される。
【0024】
同様に使用されることができるのは、チタナート、特にテトラメチルチタナートTi(OMe)4、テトラエチルチタナートTi(OEt)4又はテトライソプロピルチタナートTi(O−iso−Pr)4である。
【0025】
更に、少なくとも0.9g/mLの密度を有する塩状でない化合物が適する。この密度はこの場合に、当業者に一般的に知られている手法、例えば浮き秤法(例えばDIN EN ISO 3675)又はピクノメーター法、によって測定される。
【0026】
前述の化合物は、有機化合物であり、これは好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、プロパンアミド、Nーメチルプロパンアミド、N−エチルプロパンアミド、N−メチルピロリドン及び/又はジメチルスルホキシドであり、特にとりわけ好ましくはこれはジメチルホルムアミドである。
【0027】
前述の活性化剤のうち、特にとりわけ好ましくはカリウム−メタノラート、カリウム−ホルミアート、カリウム−ホスファート又はジメチルホルムアミドが使用される。前述の活性化剤は、安価であり、良好に提供可能であり、かつ、使用される濃度において発生するグリセリン相中に良好に溶解性である利点を有する。
【0028】
使用される触媒系にとって本質的であるのは、このエステル交換触媒及び活性化剤が相互に異なることである。これは特に、エステル交換触媒も活性化剤もアルカリ金属アルカノラート又はアルカリ土類金属アルカノラートである本発明による実施態様に当てはまる。エステル交換触媒としてナトリウム−メタノラートが使用される場合には、活性化剤としてカリウム−メタノラートが使用できる。反対に、エステル交換触媒としてカリウム−メタノラートが使用される場合に、活性化剤としてのナトリウム−メタノラートの使用も考慮できる。
【0029】
特にとりわけ好ましい触媒系は、カリウム−メタノラートと一緒のナトリウム−メタノラート、カリウム−ホルミアートと一緒のナトリウム−メタノラート、ジメチルホルムアミドと一緒のナトリウムメタノラート、カリウムホルミアートと一緒のカリウム−メタノラート、並びに、ジメチルホルムアミドと一緒のカリウム−メタノラートを含む。
【0030】
前述の触媒系は、エステル交換反応の場合の使用に適し、その際、エステル交換反応の種類に関する限定は根本的に存在しない。本発明の意味合いにおけるエステル交換反応として、出発材料エステル及びアルコールがこの触媒系の存在下で相互に反応させられ、この結果、このアルコールがこの出発材料エステルの酸成分と、相応して新規の生成物エステルへと反応し、その際、出発材料エステルのアルコール成分が放出される反応、が理解される。好ましくは、この触媒系は、モノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリドのエステル交換による脂肪酸アルキルエステルの製造に使用される。この場合に、モノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリドは、この相応する脂肪酸アルキルエステルへと変換され、同時に、遊離グリセリンが得られる。
【0031】
これに応じて、本発明の更なる主題は、少なくとも1種の一価アルコールの存在下での少なくとも1種のモノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリドのエステル交換を含む脂肪酸アルキルエステルの製造方法において、触媒作用のために、エステル交換触媒及びエステル交換触媒とは異なる少なくとも1種の活性化剤を含む触媒系を使用し、前記エステル交換触媒が、アルカリ金属アルカノラート又はアルカリ土類金属アルカノラート又はアルカリ金属水酸化物の群から選択され、前記活性化剤が、塩状化合物、チタナート又は少なくとも0.9g/mLの密度を有する塩状でない化合物を含む群から選択されることを特徴とする製造方法である。
【0032】
使用可能な触媒系は既に前述してある。
【0033】
本発明による方法のための出発物質は、一般式(I)
【化1】

[式中、X=COR1又はH、Y=COR2又はHであり、R1、R2及びR3は、同じか又は異なることができ、3〜23個のC原子を有する脂肪族炭化水素基を意味し、その際、この基は場合によってOH基で置換されていることができる]
のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド、又はこのようなグリセリドからの任意の混合物である。
【0034】
したがって、式(I)に応じたグリセリドにおいては1又は2の脂肪酸エステルが水素によって置換されていることができる。脂肪酸エステルR1CO−、R2CO−及びR3CO−は、アルキル鎖中3〜23個の炭素原子を有する脂肪酸から導かれる。R1及びR2又はR1、R2及びR3は、ジグリセリド又はトリグリセリドである場合には、上述した式中同じか又は異なることができる。残基R1、R2及びR3は以下の群に属する:
a)分枝していてよいが、好ましくは直鎖状である、3〜23個、好ましくは7〜23個のC原子を有するアルキルラジカル;
b)分枝していてよいが、好ましくは直鎖状である、3〜23個、好ましくは11〜21個、特に15〜21個のC原子を有し、かつ、1〜6個、好ましくは1〜3個の二重結合を有し、これが共役しているか又は孤立(isolieren)していることができる、オレフィン性不飽和脂肪族炭化水素残基;
c)タイプa)及びb)のモノヒドロキシ置換した残基、好ましくは、1〜3個の二重結合を有するオレフィン性不飽和オレフィン残基、特にリシノール酸の残基。
【0035】
このようなグリセリドのアシルラジカルR1CO−、R2CO−及びR3CO−は、本発明の方法のための出発材料として適しており、脂肪族カルボン酸(脂肪酸)の以下の群から導かれる:
a)アルカン酸又はそのアルキル分枝した、特にメチル分枝した誘導体、これは4〜24個の炭素原子を有し、例えば酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、2−メチルブタン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、ピバリン酸、イソカプロン酸、2−エチルカプロン酸、位置異性体メチルカプリン酸、メチルラウリン酸及びメチルステアリン酸、12−ヘキシルステアリン酸、イソステアリン酸又は3,3−ジメチルステアリン酸。
b)アルケン酸、アルカジエン酸、アルカトリエン酸、アルカテトラエン酸、アルカペンタエン酸及びアルカヘキサエン酸並びにそのアルキル分枝した、特にメチル分枝した誘導体であって4〜24個のC原子を有するもの、例えばクロトン酸、イソクロトン酸、カプロレイン酸、3−ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、2,4−デカジエン酸、リノール酸、11,14−エイコサジエン酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、偽エレオステアリン酸(Pseudoeleostearinsaeure)、アラキドン酸、4,8,12,15,18,21−テトラコサヘキサエン酸又はtrans−2−メチル−2−ブテン酸。
1)4〜24個のC原子、好ましくは12〜24個のC原子を有するモノヒドロキシアルカン酸、好ましくはこれは非分枝であり、例えばヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシドデカン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、15−ヒドロキシペンタデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシオクタデカン酸。
2)4〜24個、好ましくは12〜22個、特に16〜22個のC原子を有し(好ましくは非分枝であり)、かつ、1〜6個、好ましくは1〜3個、特に1個のエチレン性二重結合を有する更なるモノヒドロキシアルケン酸、例えばリシノール酸又はリシネライジン酸。
【0036】
本発明による方法のための好ましい出発物質は特に、天然脂、主にトリグリセリドから及び少ない割合がジグリセリド及び/又はモノグリセリドから構成される混合物であり、その際、このグリセリドも大抵はやはり混合物であり、かつ、上述の範囲における様々な種類の脂肪酸残基、特に8個以上のC原子を有するものを含む。例えば、植物脂、例えばオリーブ油、ヤシ脂、パーム核脂、ババス油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、ナタネ油(アブラナ油)、ヒマシ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ヘンプ油、ケシ油、アボカド油、綿実油(Baumwollsaatoel)、麦芽油(Weizenkeimoel)、コーン油(Weizenkeimoel)、カボチャシード油、タバコ油、グレープシード油、ジャトロファ油、藻類油(Algenoel)、カランジャ油(クロヨナ(Pongamia pinnata)の油)、カメリナ油(アマナズナ油)、カカオバター又は植物硬脂(Pflanzentalge)、更に動物脂、例えば牛脂、豚脂、鶏脂、骨脂、羊獣脂(Hammeltalg)、日本脂(Japantalg)、鯨脂及び他の魚油並びに肝油が挙げられる。しかし同様に、一様なトリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドも、これが天然脂から単離されたか又は合成経路で獲得されたものであろうと使用できる。ここでは例示的に次のものが挙げられる:トリブチリン、トリカプロニン、トリカプリリン、トリカプリニン、トリラウリン、トリミリスチン、トリパルミチン、トリステアリン、トリオレイン、トリエライジン、トリリノリイン(Trilinoliin)、トリリノレニン(Trilinolenin)、モノパルミチン、モノステアリン、モノオレイン、モノカプリニン、モノラウリン、モノミリスチン又は混合したグリセリド、例えばパルミトジステアリン、ジステアロオレイン、ジパルミトオレイン又はミリストパルミトステアリン。
【0037】
本発明の意味合いにおいて一価アルコールとは、1個のみのOH基を有するアルコールが理解される。一価アルコールの例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール及びn−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール又はtert−ブタノール、並びに分枝したか又はより長鎖状の、場合により同様に分枝したアルコール、例えばアミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール及び/又は2−エチルヘキサノールである。メタノール及びエタノールが好ましくは使用される。前述のアルコールは、本発明による方法において単独で又は混合して使用されることができる。
【0038】
エステル交換触媒の濃度は、モノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリドの使用される量に対して、0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。
【0039】
活性化剤の使用される量は、エステル交換触媒の使用される量に対して、0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、特にとりわけ好ましくは1〜15質量%である。
【0040】
本発明による方法は、当業者に知られている全てのやり方に応じて実施されることができる。本発明の方法の実施の際には、この反応混合物は好ましくは撹拌される。しかし、この反応混合物の好ましい強力な混合は、当業者に周知の他の方法によっても達成されることができる。
【0041】
この反応時間は好ましくは1〜120分間の範囲内で選択される。この場合に、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%のエステル交換度が達成される。この反応のエステル交換度は、使用される油又は脂中のこの成分の初期含有量に対する、この反応の終了又は中断後にまだなお存在するグリセリド割合(=トリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドの合計)に関する。このエステル交換度はガスクロマトグラフィによって容易に測定され、かつ、アルキルエステル+グリセリド含有量の合計によって除したアルキルエステル含有量から算出される。本発明の方法に応じて得られる脂肪酸アルキルエステルは、バイオディーゼルとして使用できる。DIN EN 14214中の規格によれば、バイオディーゼルは試験方法EN 14105に応じた最大0.2%のトリグリセリドを含有しなくてはならない。等モル量のNaOHが使用されるが、更なる活性化剤は使用されない従来のエステル交換方法では、>99.8%のオーダーのエステル交換度はより長期間後に初めて達成される。この従来のエステル交換法では反応速度の上昇のためのNaOH濃度の増加は所望されず、というのも、NaOHはモノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリド、又はこの相応するアルキルエステルを鹸化し、かつ、この相応する石鹸(Seife)を形成する傾向があるからであり、これは一方では生成物損失を引き起こし、かつ、乳化的に作用もする。アルキルエステル相及びグリセリン相の分離のための終了した反応後の相分離は、これによって困難になるか又は妨げられる。この生成物の後処理は次いで、困難を伴ってのみ可能である。
【0042】
本発明の方法は、バッチ式に又は連続的に(例えば管型反応器、撹拌槽、撹拌槽カスケード、又は他の当業者に知られている方法において)実施されることができる。
【0043】
好ましくは、本発明の方法では3:1〜20:1の範囲にあるモル比(一価アルコール:モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)が調節される。この場合に、4:1〜8:1の比が特にとりわけ好ましい。
【0044】
触媒系は好ましくは、使用される一価アルコール中の溶液として使用され、その際、この本来のエステル交換触媒は完全に溶解しており、その一方で活性化剤は完全に又は部分的にのみ溶解した形でも存在できる。
【0045】
エステル交換は0〜200℃、好ましくは10〜100℃、特に好ましくは20〜80℃の温度範囲で実施される。
【0046】
この場合に、エステル交換は0.1〜100bar、好ましくは0.5〜50bar、特にとりわけ好ましくは1〜5barの圧力範囲で実施される。
【0047】
触媒系はモノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリド及び場合によって付加的な一価アルコールと混合され、その際、この一価アルコールが消費され、グリセリンが放出される。本質的であるのは、この全体の触媒系、すなわち、エステル交換触媒及び活性化剤が、このエステル交換反応の開始時に混合物として存在することである。この使用されるエステル交換触媒及び活性化剤は、発生するより重いグリセリン相中に大部分は分布する。
【0048】
この反応混合物は様々な方式で後処理されることができる。エステル交換を所望のエステル交換度、好ましくは98%まで又はそれ以上に実施した後に、通常は、それぞれ1つの脂肪酸アルキルエステル−及びグリセリン−相が形成され、これは当業者によって、知られている方法工程、例えばデカンテーションを介して、容易に分離されることができる。本発明の触媒系によってこの相の分離が促進され、このことは、この後処理を遙かに容易にし、かつ、空時収率を高める。
【0049】
本発明の更なる一主題は、この方法に応じて得られる脂肪酸アルキルエステルの、(例えば規格DIN EN 14214に応じた)バイオディーゼルの成分としての使用である。
【0050】
更なる説明なくしても、当業者は上述の記載を最も広い範囲で利用できることが前提とされる。それゆえ好ましい実施態様及び実施例は、単に説明するものとしてあり、何らかの形で限定する開示内容として把握されるべきでない。以下に、本発明は実施例を手がかりにして詳説される。本発明の選択的な実施形態は、類似の様式で得られる。
【0051】
実施例:
実施例1又は1b(本発明によらない):
藻類油500g(約0.57mol)、メタノール58g(1.81mol)及びナトリウム−メタノラートの30%メタノール性溶液7g(エステル交換触媒0.04mol)を60℃に加熱し、混合し、1時間撹拌する。引き続きこの混合物を分離漏斗中に添加し、明澄な下方グリセリン相が発生するまでの時間を測定する。記載の実験において、これは8.15分又は8.54分かかった。
【0052】
実施例2〜20(本発明による):
藻類油500g(約0.57mol)、メタノール58g(1.81mol)及びナトリウム−メタノラートの30%メタノール性溶液7g(エステル交換触媒0.04mol)(これは様々な活性化剤を含有する)を60℃に加熱し、混合し、1時間撹拌する。
【0053】
引き続きこの混合物を分離漏斗中に添加し、明澄な下方グリセリン相が発生するまでの時間を測定する。
【0054】
この結果は第1表から把握できる。
【表1】

第1表。
【0055】
実施例21(本発明によらない):
ナタネ油500g(約0.57mol)、メタノール58g(1.81mol)及びカリウム−メタノラートの32%メタノール性溶液8.5g(エステル交換触媒0.04mol)を60℃に加熱し、混合し、1時間撹拌する。
【0056】
引き続きこの混合物を分離漏斗中に添加し、明澄な下方グリセリン相が発生するまでの時間を測定する。記載の実験においてこれは8分間かかった。
【0057】
実施例22〜24(本発明による):
ナタネ油500g(約0.57mol)、メタノール58g(1.81mol)及びカリウム−メタノラートの32%メタノール性溶液8.5g(エステル交換触媒0.04mol)(これは様々な活性化剤を含有する)を60℃に加熱し、混合し、1時間撹拌する。
【0058】
引き続きこの混合物を分離漏斗中に添加し、明澄な下方グリセリン相が発生するまでの時間を測定する。
【0059】
この結果は第2表から把握できる。
【表2】

第2表。
【0060】
実施例25(本発明によらない):
ナタネ油300g(約0.34mol)、メタノール35g(1.09mol)(これはNaOH0.94g(0.02mol)を含有する)を60℃に加熱し、混合し、1時間撹拌する。引き続きこの混合物を分離漏斗中に添加し、明澄な下方グリセリン相が発生するまでの時間を測定する。記載の実験においてこれは18分間かかった。
【0061】
実施例26(本発明による)
ナタネ油300g(約0.34mol)、メタノール35g(1.09mol)(これはNaOH0.94g(0.02mol)及び32%のメタノール性のカリウム−メタノール溶液0.6gを含有する)を60℃に加熱し、混合し、1時間撹拌する。引き続きこの混合物を分離漏斗中に添加し、明澄な下方グリセリン相が発生するまでの時間を測定する。記載の実験においてこれは16分間かかった。
【0062】
実施例27(本発明によらない):
ナタネ油300g(約0.34mol)、メタノール35g(1.09mol)(これはKOH1.50g(0.02mol)を含有する)を60℃に加熱し、混合し、1時間撹拌する。引き続きこの混合物を分離漏斗中に添加し、明澄な下方グリセリン相が発生するまでの時間を測定する。記載の実験においてこれは21分間かかった。
【0063】
実施例28(本発明による):
ナタネ油300g(約0.34mol)、メタノール35g(1.09mol)(これはKOH1.50g(0.02mol)及び塩化ルビジウム0.6gを活性化剤として含有する)を60℃に加熱し、混合し、1時間撹拌する。
【0064】
引き続きこの混合物を分離漏斗中に添加し、明澄な下方グリセリン相が発生するまでの時間を測定する。記載の実験においてこれは19分間かかった。
【0065】
全ての実施例において、本発明に応じて使用すべき触媒系を使用する場合に、相分離までの時間の著しい短縮化を観察できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル交換触媒及びエステル交換触媒とは異なる少なくとも1種の活性化剤を含む触媒系の、エステル交換反応を触媒作用するための使用であって、前記エステル交換触媒が、アルカリ金属アルカノラート又はアルカリ土類金属アルカノラート又はアルカリ金属水酸化物の群から選択され、前記活性化剤が、塩状化合物、チタナート又は少なくとも0.9g/mLの密度を有する塩状でない化合物を含む群から選択される使用。
【請求項2】
エステル交換触媒が、ナトリウム−メタノラート、カリウム−メタノラート、ナトリウム−エタノラート、カリウム−エタノラート、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項3】
塩状化合物として、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛又は鉄の、塩化物、臭化物、フッ化物、酢酸塩、ギ酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、シアン化物、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、アルカノラート又はヘキサシアノ鉄酸塩を使用することを特徴とする請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
チタナートとして、チタン酸テトラメチル、チタン酸テトラエチル又はチタン酸テトライソプロピルを使用することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
少なくとも0.9g/mLの密度を有する塩状でない化合物として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、プロパンアミド、N−メチルプロパンアミド、N−エチルプロパンアミド、N−メチルピロリドン及び/又はジメチルスルホキシドを使用することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
触媒系を、モノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリドのエステル交換によって脂肪酸アルキルエステルを製造するために使用することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1種の一価アルコールの存在下で少なくとも1種のモノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリドのエステル交換をすることを含む脂肪酸アルキルエステルの製造方法において、触媒作用のために、エステル交換触媒及びエステル交換触媒とは異なる少なくとも1種の活性化剤を含む触媒系を使用し、前記エステル交換触媒が、アルカリ金属アルカノラート又はアルカリ土類金属アルカノラート又はアルカリ金属水酸化物の群から選択され、前記活性化剤が、塩状化合物、チタナート又は少なくとも0.9g/mLの密度を有する塩状でない化合物を含む群から選択されることを特徴とする製造方法。
【請求項8】
エステル交換触媒が、ナトリウム−メタノラート、カリウム−メタノラート、ナトリウム−エタノラート、カリウム−エタノラート、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
エステル交換触媒の濃度が、使用されるモノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリドの量に対して0.001〜20質量%であることを特徴とする請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
活性化剤の濃度が、エステル交換触媒の量に対して0.01〜25質量%であることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
エステル交換を、温度範囲0〜200℃で実施することを特徴とする請求項7から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
エステル交換を、圧力範囲0.1〜100barで実施することを特徴とする請求項7から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
一価アルコールとしてメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール又はtert−ブタノール、アミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール及び/又は2−エチルヘキサノールを使用することを特徴とする請求項7から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項7から13のいずれか1項記載の方法に応じて製造された脂肪酸アルキルエステルの、バイオディーゼルの成分としての使用。

【公開番号】特開2012−62314(P2012−62314A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204205(P2011−204205)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】