説明

バイオトイレット

【課題】環境汚染を回避可能なバイオトイレットを提供する。
【解決手段】固液分離装置2にて、便器1から洗浄水とともに流される屎尿を固分と液分とに分離し、分離した固分を、固分攪拌装置3にてバイオ菌を含む菌床と攪拌させて分解消滅させる一方、分離した液分を、液分濾過装置4にて濾過して再生させ、洗浄水として、洗浄水循環路5により便器1に循環させる。ここで、固分攪拌装置3の近傍には、内部の空気を、臭いを消して外部に放出するナノフィルタ7付きの換気扇6を配置する。固分攪拌装置3の菌床に含まれるバイオ菌は、単一の純菌ではなく複数種類の菌を混合させた複合菌からなり、好熱性の放線菌例えばサーモフィリック・アクチノマイシス菌と好熱性の細菌例えばバシラス系の菌とからなっている。固液分離装置2の上部には、中央部に固分を通過させる貫通孔を有し、周辺部に向かって傾斜した斜面を有する円形ゴムを、固液分離盤として備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオトイレットに関し、特に携帯性及び使用性に優れたバイオトイレットに関する。
【背景技術】
【0002】
海や山をはじめ、公園やイベント会場などの環境汚染を防止するために、各種の簡易トイレットが開発され、実用化されてきているが、最近では、例えば、特許文献1の特開2002−254098号公報「屎尿処理処置および簡易トイレ」などにも記載されているように、化学薬品の代わりにバイオ菌を利用して、屎尿の埋設や廃棄による環境破壊を防止し、かつ、周辺に悪臭を放出せずに屎尿処理を行うバイオトイレットの提案が積極的になってきている。
【特許文献1】特開2002−254098号公報(第3−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術では、まだ、屎尿のうち固分を攪拌する固分攪拌装置から便器側に上がってくる悪臭を完全には遮断することができず、用を足す人の環境として不十分であるし、また、固分を分解するためのバイオ処理も不十分であり、周辺の環境に悪い影響を及ぼしてしまうという問題が残っている。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、固分攪拌手段からの悪臭を消して外気に排出することを可能とし、かつ、屎尿中の固分を完全に分解し消滅させるとともに、屎尿中の液分を十分に濾過して洗浄水として循環させて利用するバイオトイレットを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題を解決するため、本発明によるバイオトイレットは、次のような特徴的な構成を採用している。
【0006】
(1)便器から洗浄水とともに流される屎尿を固分と液分とに分離する固液分離手段と、
該固液分離手段により分離した前記固分を、バイオ菌を含む菌材部と攪拌させて分解消滅させる固分攪拌手段と、
前記固液分離手段により分離した前記液分を、濾過材を介して濾過して再生水として再生する液分濾過手段と、
該液分濾過手段により再生した再生水を洗浄水として循環させる洗浄水循環手段と、
前記固分攪拌手段の近傍に臭いを消して前記固分攪拌手段内の空気を放出して外気と換気する換気扇と、
を備えるバイオトイレット。
(2)前記換気扇に、ナノメータ(nm)オーダの微小な開口径の開口部を有するナノフィルタを取り付けている上記(1)のバイオトイレット。
(3)前記固分攪拌手段の菌材床に含まれている前記バイオ菌が、単一の純菌ではなく、複数種類の菌を混合させた複合菌からなっている上記(1)または(2)のバイオトイレット。
(4)前記バイオ菌を形成する前記複合菌が、好熱性の放線菌と好熱性の細菌とを含んでいる上記(3)のバイオトイレット。
(5)好熱性の前記放線菌がサーモフィリック・アクチノマイシス菌であり、好熱性の前記細菌がバシラス系の菌である上記(4)のバイオトイレット。
(6)便器から洗浄水とともに流される屎尿を固分と液分とに分離する固液分離手段と、
該固液分離手段により分離した前記固分を、バイオ菌を含む菌材部と攪拌させて分解消滅させる固分攪拌手段と、
前記固液分離手段により分離した前記液分を、濾過材を介して濾過して再生水として再生する液分濾過手段と、
該液分濾過手段により再生した再生水を洗浄水として循環させる洗浄水循環手段と、
前記固分攪拌手段の近傍に臭いを消して前記固分攪拌手段内の空気を放出して外気と換気する換気扇と、
固液分離盤として前記固液分離手段の上部に設けられ、中央部にあらかじめ設定した大きさの貫通孔を有し、周辺部に向かって傾斜した斜面を有する円形ゴムと、
を備えるバイオトイレット。
(7)前記固液分離手段を形成する前記固液分離盤の前記斜面の傾斜角度と前記貫通孔の大きさと該固液分離盤の材質の機械的強度とにより、前記固分攪拌手段への前記固分と前記液分濾過手段への前記液分とに分離する分量を調整する上記(6)のバイオトイレット。
(8)前記固液分離手段の前記固液分離盤にて分離する前記固分がトイレットペーパ、大便の100%、小便の20%の分量となるように、前記固液分離盤の前記斜面の傾斜角度、前記貫通孔の大きさ、前記固液分離盤の機械的強度のいずれか1ないし複数を調整する上記(6)または(7)のバイオトイレット。
(9)前記小便の20%は、濾過されて水洗用水とする上記(8)のバイオトイレット。
(10)前記固分攪拌手段内の温度を予め定めた温度に維持させるためのヒータ手段を備える上記(1)乃至(9)のいずれかのバイオトイレット。
(11)前記ヒータ手段は、凍結防止用の箇所に設けられている上記(10)のバイオトイレット。
(12)前記ヒータ手段の動作をON/OFFする制御手段を備える上記(10)または(11)のバイオトイレット。
(13)人による入り口ドアの開閉を検知する人感知手段を設け、この感知手段の出力によって電気的、機械的制御が行なわれる上記(1)乃至(12)のいずれかのバイオトイレット。
【発明の効果】
【0007】
本発明のバイオトイレットによれば、以下のような効果を得ることができる。
【0008】
第1の効果は、屎尿の固分を、バイオ菌を含む菌材部と攪拌して消滅させる固分攪拌手段の近傍に、当該固分攪拌装置内の空気を、臭気を消して放出して外気と換気するための換気扇を備え、さらには、該換気扇に、ナノメータ(nm)オーダの微小な開口部を有するナノフィルタを取り付けているので、悪臭が便器の方に上がってくることを防止するとともに、外部に悪臭が漏れることを防ぎ、かつ、固分攪拌手段内のバイオ菌が外部に放出されることも防止することができる。
【0009】
第2の効果は、固分の分解を、複数種類のバイオ菌の共生作用・共働作用によって促進する複合菌をバイオ菌として用い、さらに、該複合菌としてサーモフィリック・アクチノマイシス菌などの好熱性の放線菌と、バシラス系の好熱性の細菌とを混合した複合菌とすることにより、固分の分解消滅をより確実に行うことができ、環境保全のための浄化能力をさらに向上させることができる。
【0010】
第3の効果は、屎尿の固分と液分とを分解する固液分解手段として、中央部に貫通孔を有し、周辺部に向かって傾斜する斜面を有する円形ゴムを固液分離盤として用いるとともに、該固液分離盤の傾斜角度と貫通孔の大きさと材質の機械的強度とを適宜調整することにより、屎尿を固分と液分とに分離する分量を調整することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるバイオトイレットの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。図1は、本発明のバイオトイレットの概念を模式的に説明するための模式図である。図1に示すバイオトイレットは、屎尿の固分と液分とを自動的に分離する固液分離手段を備えるとともに、複数種類のバイオ菌からなる複合菌を含む菌材部と固分とを混合して攪拌させることにより、固分を完全に分解消滅させる固分攪拌手段と、液分を十分に濾過して再生させる液分濾過手段と、再生した再生水を洗浄水として便器側へ循環させる洗浄水循環手段とを、少なくとも備えることによって、汲み取り不要で、かつ、水洗式の、環境にやさしく、如何なる環境・場所であっても設置可能なバイオトイレットの構成について、模式的に、その一例を示している。
【0012】
つまり、図1に示すように、本発明の一実施例であるバイオトイレットは、便器1、屎尿の固分と液分を自動的に分離する固液分離手段である固液分離装置2により分離した固分を、バイオ菌を含む菌材部3aと攪拌させて分解消滅させる固分攪拌手段である固分攪拌装置3、固液分離装置2により分離した液分を、濾過材を介して濾過して再生水を再生する液分濾過手段である液分濾過装置4、液分濾過装置4により再生した再生水を洗浄水として循環させる洗浄水循環手段である洗浄水循環路5を、少なくとも備えて構成されている。
【0013】
固液分離装置2は、便器1の台座部内に取り付けられており、詳細は後述するが、中央部に貫通孔を穿設し、周辺部に向かって傾斜した傾斜面を有する円盤形状の固液分離盤を用いて、屎尿中に含まれている固分と液分とを、自動的に分離する装置である。便器1から落下する屎尿のうち、垂直に落下する固分は、その直下の固液分離盤の中央部に穿設された貫通孔を通過して、そのまま、落下し、一方、屎尿中の液分の大半は、固液分離盤の中央部ではなく、その周辺に放出されて、傾斜面上を流れて、固液分離盤の周辺部から流れ落ちることによって、固分、液分の両者は、自動的に分離される。ここで、後述するように、固液分離盤は、あらかじめ設定された機械的強度からなる円形ゴムによって形成されており、該円形ゴムの中央部の貫通孔の大きさ、傾斜面の傾斜角度、および、機械的強度を適宜調整することにより、固分と液分とに分離される屎尿中の大便と小便との分量を調整することができる。
【0014】
固分攪拌装置3は、固液分離装置2の直下に位置し、便器1、固液分離装置2と垂直な固分通路を介して直結されるような配置関係にある。固分攪拌装置3は、詳細は後述するが、屎尿中から分離された固分処理用として、本発明に独自のバイオ菌を用いて、固分を分解させて、十分に消滅させるとともに、悪臭を完全に消し去ることによって、屎尿の汲み取りを不要とし、清潔なトイレット環境を実現している。
【0015】
また、液分濾過装置4は、固分攪拌装置3の近傍に隣接して配置されており、斜め上方にある固液分離装置2からの排液を流すために斜めに傾斜した配管(排液通路)を介して固液分離装置2と連接されている。液分濾過装置4では、屎尿から分離された液分を活性炭などのような濾過材を通過させることによって、無害・無臭の再生水として再生させる。液分濾過装置4によって再生された再生水は、洗浄水循環路5を形成する送水モータによって汲み上げられて、便器1側に洗浄水として循環させて、貴重な水の有効利用を図る一方、再生水としてオーバフローした分は、オーバフローポンプによって無害・無臭の浄化水として外部に霧状に放出させるという簡易水洗方式を採用している。
【0016】
さらに、図1に示すように、固分攪拌装置3の近傍には、固分攪拌装置3内の空気を、臭気を消して放出して外気と換気するために換気扇(消臭用ベンチレータファン)6が配置されており、固分の臭気が便器1側に上がってくることを抑えるようにしている。一般に、簡易トイレの屋根部分に、消臭用ベンチレータファンが取り付けられることが多いが、本実施形態のように、固分攪拌装置3の近傍に換気扇6を配置することによって、場合によっては、簡易トイレの屋根部分には消臭用ベンチレータファンを取り付けないようにしてもかまわない。
【0017】
さらに、固分攪拌装置3の近傍に配置した換気扇6には、臭気が外部に漏れないように、かつ、固分攪拌装置3の菌材部3aに含まれたバイオ菌が外気に放出されないように、ナノメータ(nm)オーダ例えば2nm径程度の微細な貫通孔を多数備えることにより、空気を通過させ、アンモニアなどの悪臭成分を含む有機物やバイオ菌を通過させないという性質を有するナノフィルタ7が取り付けられている。つまり、該ナノフィルタ7は、ナノメータ(nm)オーダの微細な開口径の開口部を多数有するフィルタであり、主要材料が例えばセラミックやアルミナなどからなり、電気的にプラスに帯電させることによって、有機物やバイオ菌をフィルタ表面ではなく、内部に効率的に吸着させて除去することができ、詰まりにくく、かつ、丈夫で破損しにくい構造とすることができる。
【0018】
洗浄水循環路5は、液分濾過装置4にて無害・無臭の状態に再生された再生水を、漉し布を通して、送水モータによって、吸い上げて、洗浄水として、便器1側へ循環させる。なお、手洗い用の水は、便器1の洗浄用の水とは完全に分離した循環処理サイクルによって循環させるように、別系統の循環路を形成している。
【0019】
図1に示すように、便器1から排泄された屎尿は、便座に座ったことを検知するセンサによって自動的に流れる洗浄水とともに、固液分離装置2に流入し、洗浄水とともに流入した屎尿は、固液分離装置2において、大便側の固分と小便側の液分とに分離され、便器1、固液分離装置2から垂直に落下する固分は固分攪拌装置3に、固液分離装置2の周辺部に放出される液分は液分濾過装置4に送られる。固分攪拌装置3では、固分とバイオ菌が含まれる菌材部とが、攪拌用のモータの軸に取り付けられた攪拌羽根によって攪拌混合され、バイオ菌により、屎尿中に含まれている蛋白質などの窒化化合物や硫化化合物などを含む有機性物質が分解されて、固分の悪臭の基になるアンモニア、硫化水素、硫化炭素の他、炭酸ガスなどの成分を分解し、該固分を消滅させる。
【0020】
ここで、固分攪拌装置3の菌材部に含まれるバイオ菌は、単一の純菌ではなく、複数の種類からなるバイオ菌を混合した複合菌としており、各バイオ菌の共生作用・共働作用によって、有機性物質に対するより強力な分解力を発揮して、悪臭の十分な除去を図ることとしている。
【0021】
該複合菌を形成するバイオ菌としては、例えば、好熱性の放線菌(糸状菌糸が放射状に伸長し、高温領域でも活発に活動する細菌)と好熱性の細菌とを混合させることによって、相互の共生作用により高い浄化作用を得ることができる。ここに、好熱性の放線菌としては、例えば、サーモフィリック・アクチノマイシス菌を用い、好熱性の細菌としては、バシラス・ステアロサーモフィラス菌と、バシラス・ブレビスと近縁の種である好熱性の細菌とを複合したバシラス系の菌を用いる。また、固分攪拌装置3内の温度を、温度調節手段すなわちヒータによって、常時、30℃程度に維持することによって、各バイオ菌がより活発に活動するような状態に保つようにしている。なお、前述のような複合菌は、近年、土壌の活性化の栄養剤としても活用されているものであり、液体状菌として菌材部に定着させることができ、該菌材部を屎尿の固分と攪拌した際に、固分に対してより強力に反応して、固分の分解消滅の促進を図ることができる。
【0022】
次に、本発明によるバイオトイレットの構造の一例について、図2、図3を用いて説明する。図2の斜視図に示すように、屋外設置形の簡易トイレとして利用されるバイオトイレットは、例えば、外形寸法が、高さ2,640mm、幅1,380mm、奥行1,080mmのFRP製のボックスであり、100Vまたは200VのAC電源電圧の給電さえ可能であれば、如何なる場所であっても、使用することが可能なものであり、AC電源電圧の給電によって、モータやセンサなどの各種電装機器が駆動され、バイオ菌の活動による固分の完全分解消滅、悪臭の除去、および、液分濾過により再生された洗浄水の完全循環が可能であり、照明器具の点灯・消灯も制御可能となる。便器1は、バイオトイレットの設置面よりも、あらかじめ定めた所定の高さ(例えば650mm)だけ高くした床11の上に配置されており、該床11までは、2段または3段(図2の例では3段)の階段12が設けられている。床11の下側には、固分攪拌装置3や液分濾過装置4や、モータなどの各種電装機器8が収納されている。
【0023】
つまり、本発明のバイオトイレットの構造の一例を示す図3の構造図(ここに、図3(A)は正面図、図3(B)は側面図、図3(C)は立体図である)のように、便器1は、ドア13が設置された正面から見て左奥の床11上に配置されており、便器1の台座部に取り付けられた固液分離装置2を経由して、床11下に設置される固分攪拌装置3や液分濾過装置4と連接されている。また、固分攪拌装置3の近傍に配置されるナノフィルタ7付きの換気扇6は、階段12の裏側の正面下部壁面に取り付けられており、固分攪拌装置3からの排気を、臭気を消して外気に放出するようにしている。なお、図3に示す例においては、屋根部分には、消臭用ベンチレータファンが取り付けられていない場合を例示している。
【0024】
また、図1のバイオトイレットの配線配管の様子の一例を図4に示している。例えば、便器1の台座部分に設置された固液分離装置2は、トイレットペーパや分離した屎尿の固分を、そのまま、垂直に落下させるために、直下に配置された固分攪拌装置3の攪拌槽に垂直な固分通路を介して直結されるが、一方、分離した屎尿の液分を液分濾過装置4に流し込むために、固液分離装置2の底辺近傍と斜め下に配置された液分濾過装置4との間に、配管(排液通路)を斜めに傾斜させて連接させている。また、液分濾過装置4にて十分に濾過された再生水を洗浄水として便器1側に戻すために、洗浄水循環路5として、送水モータによって液分濾過装置4から汲み上げた再生水を便器1側へ流す配管(洗浄水通路)も液分濾過装置4と便器1との間になされている。ここで、配管は例えばすべてゴムホースによって行うこととしている。
【0025】
一方、バイオトイレット内の代表的な配線については、次の通りである。つまり、固分攪拌装置3の攪拌羽根を例えば60rpm程度の回転速度で回転させて固分と菌材部とを攪拌するための攪拌モータ8aや、便器1などへの送水を行うための送水モータ8b、液分濾過装置4の液分を濾過材を介して対流させるための濾過モータ8c、あるいは、バイオ菌生成用の空気(air)を供給するためのブロアポンプ8dなどの電装機器8が、それぞれの機能を実施するために電源に配線されている。
【0026】
なお、図4には示していないが、寒冷地などのような如何なる環境下に設置した場合であっても、前述したように、固分攪拌装置3内のバイオ菌による分解活動を活性化するために、固分攪拌装置3内にはヒータつまり温度調節器が取り付けられており、該ヒータに常時給電することによって固分攪拌装置3内の温度をバイオ菌の活動に最適な温度例えば30℃程度に維持するようにしている。さらに、手動操作を行うためのスイッチの他に、ドア13の開閉を検知するドアセンサや、人が便器1に腰掛けたり離れたりすることを検知する人感知センサなども備えられている。
【0027】
例えば、人がバイオトイレットに入ってきたことを検知した際には、天井灯を点灯し、かつ、換気扇6を駆動し、去ったときには、天井灯を消灯し、かつ、換気扇6を停止したりすることが可能である。あるいは、人が便器1に腰掛けた際には、あらかじめ定めた時間が経過するまで、便器1内に洗浄水を自動的に流し、便器1から離れたときにも、あらかじめ定めた時間が経過するまで、便器1内に洗浄水を自動的に流すようにすることも可能である。
【0028】
図5は、図1に示すバイオトイレットに適用する固液分離装置2の構造の一例を示す構造図であり、図5(A)が、固液分離装置2を正面から見た際の断面を示す断面図であり、図5(B)が、固液分離装置2を上から見た際の立体図である。図5(A)に示すように、便器1の台座部分に取り付けられた固液分離装置2の上面の開口部には、中央部があらかじめ設定した大きさに円形に穿孔した貫通孔を有するとともに、周辺に向かってあらかじめ設定した角度(水平面に対する角度α)だけ傾斜した傾斜面を有する固液分離盤2Aが備えられており、該固液分離盤2Aの周辺部は、固液分離装置2内の壁面部に設けられている排液管2Bに連接されている。
【0029】
ここで、固液分離盤2Aは、あらかじめ設定された機械的強度の円形ゴムからなっており、その周辺部には、図5(B)に示すように、屎尿の液分を下方向に流しやすいように、適当な間隔で、複数のスリット2Aが設けられている。固液分離装置2の固液分離盤2Aの中央部の貫通孔は、該貫通孔の上方向から落下してくる屎尿の固分やトイレットペーパを通過させるための孔であり、固液分離盤2Aの周辺部に連接する排液管2Bは、固液分離盤2Aの傾斜面上を流れてくる屎尿の液分を分離して流すためのドーナツ型配管である。
【0030】
一方、固液分離装置2の下面の開口部は、直下に配置された固分攪拌装置3と直結しており、固液分離装置2の側面(図5では左側面)に設けられた開口部は、固分攪拌装置3に隣接して配置された液分濾過装置4へ排液管2Bおよび斜め下側方向に傾斜した配管を介して接続されている。
【0031】
ここで、固液分離盤2Aの中央部の貫通孔の大きさ、傾斜角度(図5(A)の角度α)、および、固液分離盤2Aを形成する円形ゴムの厚みや材質としての機械的強度を、適当に調整して設定することによって、固液分離装置2において屎尿の固分と液分とを分離する分量を調整することができる。
【0032】
例えば、耐薬品性、耐熱性、耐油性などに優れ、ダイアフラムやホースやパッキングなどに通常利用されているニトリルゴムやフッ素系のゴム材を用いる場合には、図6に示すように、固液分離盤2Aの寸法として、厚み1.2〜1.5mm、110mm径の円形ゴムを用いて、中央部の開口穴を25mm径、傾斜角度を7°〜10°とした場合、トイレットペーパ、大便100%、および、小便20%が、固分として分離されて、固分攪拌装置3へ排出され、小便の残り80%が、液分として分離されて、排液管2Bから斜め傾斜の配管を経由して液分濾過装置4に排出される。かかる場合においては、洗浄水とともに固分攪拌装置3側に落下した約20%程度の小便については、固分を除去するためのネットを介してポンプによって汲み上げられ、洗浄水とともに、隣接の液分濾過装置4側に流入されるように構成される。なお、図6は、固液分離盤2Aの具体的な寸法例を示す図であり、図6(A)が上から眺めた場合の立体図であり、図6(B)が横から眺めた場合の側面図である。
【0033】
上述のように、おが屑や木チップスを使用する従来のバイオトイレでは、初期導入時からバイオ菌が活動糞尿を消滅させるまで約1ヶ月かかるが、本発明では、短期で菌が活動しやすい住環境を作り出す。その構成は、ミネラル豊富な亜炭、100%の加工粉末と特殊菌が入っており、それを少量、初期導入時にバイオ菌をトイレに入れる前に便器から入れるといち早く活動可能な環境が得られる。
【0034】
また、従来のバイオトイレは、菌材部となるおが屑や木チップスを常時40〜80℃にヒータで加熱しなければ菌が活動しないため、電気消費量が高く、地球環境面で好ましいものではない。又、菌材部は或る期間で交換し燃焼させたりして後始末に手間がかかり環境にもよくない。本発明で使用する液体の菌は、通常5〜40℃で活動するので、寒冷地仕様でも5℃以下の場合に限って自己温度調整ヒータを取り付ければ良い。また、使用されるバイオ菌は消滅型なので菌床不要で交換ナシ、菌を補給するだけで済む。
【0035】
(本実施形態の効果の説明)
以上のように、実施形態としての一例に示したごとく、本発明のバイオトイレットにおいては、以下のような効果を得ることができる。
【0036】
第1に、強力な浄化作用を発揮する複数のバイオ菌の共生作用・共働作用により、屎尿の固分を完全に分解して消滅させるとともに、その臭気を完全に除去することができる。したがって、バイオトイレットを屋外に設置した場合であっても、屎尿の汲み取りが不要であるのみならず、汚水や悪臭が外部に漏れ出て、外部環境を汚染することを防ぐことができる。
【0037】
また、使用するバイオ菌は、土壌など自然界に極めて近い状態で培養することが可能であり、かつ、取り扱いも安全・容易であり、適当な期間経過ごとに、バイオ菌(例えば、約500cc/月)を補充すれば、バイオトイレットとして長期間の使用も可能である。
【0038】
第2に、固分攪拌装置3の近傍に、ナノフィルタ7を取り付けた換気扇6を配置することにより、固分攪拌装置3から臭気やバイオ菌を外部に排出させることなく、便器1側に臭気が上がることも防止することができる。
【0039】
第3に、固液分離装置2により、あらかじめ設定した分量に応じて、屎尿の固分と液分とを分離することができ、かつ、分離した液分を液分濾過装置4により完全に濾過して洗浄水として循環させて再利用することが可能であり、貴重な水を節約するとともに、水を補給したり排水したりする給排水工事を行う必要もなくなる。
【0040】
第4に、小型軽量化が可能であり、バイオトイレット用の電装機器8に対して給電するための100Vまたは200VのAC電源が供給可能な環境であれば、如何なる設置場所でも簡単に設置することができる。したがって、海水浴場、ハイキング場所、遊歩道、公園、キャンプ場、観光地、被災地、建設現場などの屋外であっても、あるいは、イベント会場や工場や学校などの屋内や家屋周辺部であっても、必要に応じて、随時設置することができる。
【0041】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のバイオトイレットの概念を模式的に説明するための模式図である。
【図2】本発明のバイオトイレットの外観の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明のバイオトイレットの構造の一例を示す構造図である。
【図4】本発明のバイオトイレットの配線・配管系統の一例を模式的に示す模式図である。
【図5】本発明のバイオトイレットに適用する固液分離装置の構造の一例を示す構造図である。
【図6】本発明のバイオトイレットの固液分離装置に用いられる固液分離盤の具体的な寸法例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 便器
2 固液分離装置
2A 固液分離盤
2A スリット
2B 排液筒
3 固分攪拌装置
3a 菌材部
4 液分濾過装置
5 洗浄水循環路
6 換気扇
7 ナノフィルタ
8 電装機器
8a 攪拌モータ
8b 送水モータ
8c 濾過モータ
8d ブロアポンプ
11 床
12 階段
13 ドア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器から洗浄水とともに流される屎尿を固分と液分とに分離する固液分離手段と、
該固液分離手段により分離した前記固分を、バイオ菌を含む菌材部と攪拌させて分解消滅させる固分攪拌手段と、
前記固液分離手段により分離した前記液分を、濾過材を介して濾過して再生水として再生する液分濾過手段と、
該液分濾過手段により再生した再生水を洗浄水として循環させる洗浄水循環手段と、
前記固分攪拌手段の近傍に臭いを消して前記固分攪拌手段内の空気を放出して外気と換気する換気扇と、
を備えることを特徴とするバイオトイレット。
【請求項2】
前記換気扇に、ナノメータ(nm)オーダの微小な開口径の開口部を有するナノフィルタを取り付けていることを特徴とする請求項1に記載のバイオトイレット。
【請求項3】
前記固分攪拌手段の菌材床に含まれている前記バイオ菌が、単一の純菌ではなく、複数種類の菌を混合させた複合菌からなっていることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオトイレット。
【請求項4】
前記バイオ菌を形成する前記複合菌が、好熱性の放線菌と好熱性の細菌とを含んでいることを特徴とする請求項3に記載のバイオトイレット。
【請求項5】
好熱性の前記放線菌がサーモフィリック・アクチノマイシス菌であり、好熱性の前記細菌がバシラス系の菌であることを特徴とする請求項4に記載のバイオトイレット。
【請求項6】
便器から洗浄水とともに流される屎尿を固分と液分とに分離する固液分離手段と、
該固液分離手段により分離した前記固分を、バイオ菌を含む菌材部と攪拌させて分解消滅させる固分攪拌手段と、
前記固液分離手段により分離した前記液分を、濾過材を介して濾過して再生水として再生する液分濾過手段と、
該液分濾過手段により再生した再生水を洗浄水として循環させる洗浄水循環手段と、
前記固分攪拌手段の近傍に臭いを消して前記固分攪拌手段内の空気を放出して外気と換気する換気扇と、
固液分離盤として前記固液分離手段の上部に設けられ、中央部にあらかじめ設定した大きさの貫通孔を有し、周辺部に向かって傾斜した斜面を有する円形ゴムと、
を備えることを特徴とするバイオトイレット。
【請求項7】
前記固液分離手段を形成する前記固液分離盤の前記斜面の傾斜角度と前記貫通孔の大きさと該固液分離盤の材質の機械的強度とにより、前記固分攪拌手段への前記固分と前記液分濾過手段への前記液分とに分離する分量を調整することを特徴とする請求項6に記載のバイオトイレット。
【請求項8】
前記固液分離手段の前記固液分離盤にて分離する前記固分がトイレットペーパ、大便の100%、小便の20%の分量となるように、前記固液分離盤の前記斜面の傾斜角度、前記貫通孔の大きさ、前記固液分離盤の機械的強度のいずれか1ないし複数を調整することを特徴とする請求項6または7に記載のバイオトイレット。
【請求項9】
前記小便の20%は、濾過されて水洗用水とすることを特徴とする請求項8に記載のバイオトイレット。
【請求項10】
前記固分攪拌手段内の温度を予め定めた温度に維持させるためのヒータ手段を備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のバイオトイレット。
【請求項11】
前記ヒータ手段は、凍結防止用の箇所に設けられていることを特徴とする請求項10に記載のバイオトイレット。
【請求項12】
前記ヒータ手段の動作をON/OFFする制御手段を備えることを特徴とする請求項10または11に記載のバイオトイレット。
【請求項13】
人による入り口ドアの開閉を検知する人感知手段を設け、この感知手段の出力によって電気的、機械的制御が行なわれることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のバイオトイレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−68284(P2009−68284A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239377(P2007−239377)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(507012962)株式会社カルテックインターナショナル (4)
【出願人】(507310994)テクノレジンサービスカンパニーリミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Techno Resin Service Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】