説明

バイオフイルム制御法及びバイオフイルム計測法と計測装置

【課題】食品の味覚に与える影響がない範囲で食品内の浮遊細菌の制御、及びこの食品の製造、貯蔵、流通に関与するバイオフイルムの生成を阻害する技術に関する。

【解決手段】醸造酢に溶存するカルシウムイオンにビタミンB1誘導体チアミンアウリル硫酸塩、糖アルコールまたは乳化剤あるいは乳酸塩を配合した細菌制御剤は食品中の浮遊細菌の抑止に留まらず、食品の表面あるいは関与する機械、器具、容器、この環境下の固定基質へのバイオフイルムの付着、生成、増殖または発芽を制御し、このプロセスでのバイオフイルムと細菌の消長を計測する装置と方法を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフイルム制御法及びバイオフイルム計測法と計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保全に関わる細菌や真菌、酵母(以下細菌と称する)は、食品を汚染して腐敗や食中毒の原因となるだけではなく、バイオフイルム生成の原因となる。
細菌は食品の生産設備の製造機械器具や容器等に付着し、付着後多糖類やタンパク質などの粘液状物質の生物ポリマーを排出してゲル状の薄膜を生成し、その内部に細菌叢を生成する生物膜となる。これがバイオフイルムである。
バイオフイルムは固定物質の表面に強固に付着し、その内部の細菌叢は好適な栄養源と環境のもとで増殖や発芽を促進し、これを基点にステンレスなど機器や器具への腐食と製造中の食品に再び汚染を広げる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−325152
【特許文献2】特開2005−210997
【特許文献3】特開2008−100964
【非特許文献1】バイオフイルム入門、2007.10.9日科技連出版
【非特許文献2】日本防菌防黴学会誌2008.8
【非特許文献3】日本防菌防黴学会誌2008.9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食品の貯蔵から製造、加工、流通、消費の各段階での洗浄や清掃が実施されていても、作業の開始により食品中の細菌は周囲の機械器具や容器等に付着し、そこに細菌叢を包含するバイオフイルムが生成され、これが基点となって工程中の食品や製造機械等が再び汚染される循環となって食品の良好な衛生条件を損なう。
また操業中の製造機械等の殺菌と清掃は難しく、これらの条件下で汚染や増殖を防除する技術が求められている。これまで細菌汚染の一部としてネトあるいはスライムとして分類されてきた細菌の生態がバイオフイルムとして解明され、これを制御することが第一の課題であり、殺菌洗浄に使用する塩素系薬剤の多用が、機械器具のステンレス他金属類の腐食を加速するため、バイオフイルムを制御し殺菌洗浄の過度な設備への負担を軽減することも同時に課題である。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、食品等の味覚に与える影響が略ない範囲で、バイオフィルム内の細菌数を制御できるバイオフイルム制御剤を提供することにある。
また、本発明の目的は、容器内の対象物の細菌数とバイオフイルム内の細菌数を計測することができる装置と方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点の発明のバイオフイルム制御剤は、醸造酢に貝殻、卵殻、魚骨、家畜の骨格などの動物性カルシウムイオンの1種以上を1から7重量部を溶存して100重量部の醸造酢とし、これにビタミンB1誘導体のチアミンアウリル硫酸塩を0.01から12重量部を配合した食品内浮遊細菌の制御機能を有する。
ここで、動物性カルシウムイオンの1種以上を1重量部未満だと(カルシウムイオンの抗菌機能が無い)という弊害が生じる。また、7重量部を超えると(加えたカルシウムが全て沈殿しカルシウムイオンが生成せず抗菌機能が無くなる)という弊害が生じる。
さらに、チアミンアウリル硫酸塩を0.01重量部未満に配合すると、(チアミンの抗菌機能が無い)という弊害が生じる。さらに、チアミンアウリル硫酸塩を12重量部を超えて配合すると(加えたチアミンが溶解せず析出して抗菌機能が無くなる)という弊害が生じる。
【0007】
第2の観点の発明のバイオフイルム制御剤は、醸造酢に貝殻、卵殻、魚骨、家畜の骨格などの動物性カルシウムイオンの1種以上を1から7重量部を溶存して100重量部の醸造酢とし、これに糖アルコールのソルビトール、キシリトール、エリスリトールのうちの1種あるいは2種を3から100重量部を配合した食品内浮遊細菌の制御機能を有する。
ここで、動物性カルシウムイオンの1種以上を1重量部未満だと、カルシウムイオンの抗菌機能が無いという弊害が生じる。また、7重量部を超えると、加えたカルシウムが全て沈殿しカルシウムイオンが生成せず抗菌機能が無くなるという弊害が生じる。
さらに、糖アルコールのソルビトール、キシリトール、エリスリトールのうちの1種あるいは2種を3重量部未満に配合すると、糖アルコールの浸透機能が無いという弊害が生じる。さらに、これを100重量部を超えて配合すると相対するカルシウムイオンの抗菌機能が減少するという弊害が生じる。
【0008】
第3の観点の発明のバイオフイルム制御剤は、醸造酢に貝殻、卵殻、魚骨、家畜の骨格などの動物性カルシウムイオンの1種以上を1から7重量部を溶存して100重量部の醸造酢とし、これにショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルうちの1種を1から50重量部を配合した食品内浮遊細菌の制御機能を有する。
ここで、動物性カルシウムイオンの1種以上を1重量部未満だとカルシウムイオンの抗菌機能が無いという弊害が生じる。また、7重量部を超えると加えたカルシウムが沈殿しカルシウムイオンが生成せず抗菌機能が無くなるという弊害が生じる。
さらに、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルうちの1種を5重量部未満に配合すると、乳化せずカルシウムイオンの抗菌機能のみで配合の目的に適さないという弊害が生じる。さらに、これを50重量部を超えて配合すると、脂肪酸エステルの不溶解成分が半固形状となり食品に加えても分散せず使用ができないという弊害が生じる。
【0009】
第4の観点の発明のバイオフイルム制御剤は、醸造酢に貝殻、卵殻、魚骨、家畜の骨格などの動物性カルシウムイオンの1種以上を1から7重量部を溶存して100重量部の醸造酢とし、これに乳酸カリウムあるいは乳酸ナトリウムの1種または2種を10から90重量部を配合した食品内浮遊細菌の制御機能を有する。
ここで、動物性カルシウムイオンの1種以上を1重量部未満だと、カルシウムイオンの抗菌機能が無いという弊害が生じる。また、7重量部を超えると(カルシウムが沈殿しカルシウムイオンが生成せず抗菌機能が無くなるという弊害が生じる。
さらに、乳酸カリウムあるいは乳酸ナトリウムの1種を10重量部未満に配合すると、カルシウムイオンの抗菌効果のみで配合の目的に適さないという弊害が生じる。さらに、これを90重量部を超えて配合すると、カルシウムイオンの抗菌機能が相対して無くなり配合の目的にてきさないという弊害が生じる。
【0010】
また、本発明のバイオフイルム制御剤は、好適には、植物のクチクラ層内外の細菌への制御機能を有する。
【0011】
また、本発明の食品は、上述した第1〜第4の観点のバイオフイルム制御剤を添加したものである。
【0012】
また、本発明の装置または方法は、容器内に設置した金属、プラスチックス、ゴム、陶磁器、木、紙、ガラス、あるいは繊維への付着により容器内の対象物の細菌数とバイオフイルム内の細菌数を計測する。
【発明の効果】
【0013】
カルシウムイオン液にビタミンB1を配合して使用すると、ビタミンB1の界面作用によりカルシウムイオンに接触する食品成分中の水分の表面張力が減少し、B1成分とカルシウムイオンが基質またはバイオフイルムの表面に十分に接触できる。そして両者の抗菌成分が基質表面を被覆し細菌の付着を阻止し、あるいはバイオフイルム表面に十分に接触し内部に浸透し細菌叢に到達する。そしてビタミンB1は細胞膜の破壊作用を、カルシウムイオンは細胞内蛋白の変性をもたらしてそれぞれが特有の抗菌作用を発揮して静菌及び増殖を阻止する。
【0014】
また、糖アルコール類のソルビトールやキシリトールあるいはエリスリトールは、浸透圧を高め水和作用を有し食品の物性改善の機能があり、すでに口腔衛生の分野で歯の非う蝕性の甘味料として菓子やチュウインガムに広く使用されており、口腔内で細菌が生物膜のプラークであるバイオフイルムを生成するのを阻害する機能を有しているので、カルシウムイオン液に糖アルコール類を溶存することで食品中の浮遊細菌とそれらや外因によるバイオフイルムの生成を制御する。糖アルコールがバイオフイルムの生成の阻害因子を有していること、そしてカルシウムイオンは固定基質に付着した細菌に対して、あるいはバイオフイルム生成阻害の機序により細菌叢に浸透して抗菌機能を発揮しこれらを制御する。
【0015】
また、カルシウムイオンに乳化剤のショ糖脂肪酸エステル、またはグリセリン脂肪酸エステルを配合すると、乳化作用による濡れの機能でカルシウムイオンがバイオフイルムの表面に濃密な接触を図れるため、内部に浸透して細菌叢に抗菌作用を及ぼしこれを制御する。
また、乳酸カリウムあるいは乳酸ナトリウムは食品の水分調節機能を有していることから、カルシウムイオンとの配合によりバイオフイルム内の細菌叢の制御に有効に作用する新しい機能を見出した。
また、カルシウムイオンと上記の各機能性材料との配合により、その効果は食品中浮遊細菌と食品表面及び食品が接触する機械、器具、容器、または環境内のその他の固定基質への細菌の付着とバイオフイルムの生成を阻害し、これらのプロセスを阻止することを見出した。
また、浮遊細菌の増殖とバイオフイルムの生成について、これを把握するために、後述する装置及び方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
なお、明細書中でpHの測定はライン精機製EH1000型を使用し測定時間を6分間とし、測定値は小数点以下2位を四捨五入し1位までを記載した。細菌試験は一般生菌を対象におこない生菌数として表示する。
【0017】
醸造酢の抗菌機能に対して、動物性のカルシウムイオンを一定濃度溶融することで抗菌効果がさらに増強され、これに抗菌と界面機能を有するビタミンB1誘導体、あるいはバイオフイルムの生成を阻害する機能をもつ糖アルコール類、または抗菌機能をもつ乳化剤あるいは乳酸塩を配合して、食品中の浮遊細菌の制御と、これの汚染によるバイオフイルムの生成を阻止する制御剤を見出した。
【0018】
動物性カルシウムイオンにはホタテ貝を選び、約900℃で焼成し、150msの粉末としたものを使用した。醸造酢はアルコール24g/水76g濃度の醸造用アルコール水溶液100重量部を用意し、発酵菌アセノバクターが10の菌数の種酢に対して等量を混合し醸造液とした。
種酢のpHは2.4で混合液は4.1であった。混合液は常温下で発酵を始めて24時間後にpHが2.9を示したとき、貝の粉末1部を加えpHは4.5となり、つぎに6時間後にpH3以下になったとき貝の粉末1部を加えた。これを6ないし8時間毎に繰り返して実施し、貝の粉末量の総量が7部のときpH4.5であったが、これが8部となったときpHは6.2で沈殿が始まり、9部ではさらに沈殿が増えてpH7.1となりその後pHの変化がなく発酵は停止した。工程は4日間であったが発酵の条件により期間は変動する。
発酵の途次に、添加量1部から9部までの液を区別採取し試験液を確保した。カルシウムイオンの濃度測定は原子吸光度法による。
【0019】
カルシウムイオンの溶融量に従って抗菌の効果の差があり、これを確認するため細菌増殖による水の濁度試験でこれを計測した。
試験には泥付のホウレン草680gを使用し、これの二次洗浄水7kgを試験水とし、スチロール製コップに各300g注入し、貝殻粉投入量1部から8部までのカルシウムイオン液各3gを添加し、ラップフイルムで蓋をし、恒温庫に15℃で保存し48時間経過後の濁度により抗菌効果に有効な濃度の範囲について判定した。
濁度の測定は300mlシリンダー透視型濁度計にコップの試料を入れて蛍光灯測定で計測した。対照区の初発の濁度は1.4度で、経過後は19.2度であった。
貝粉投下量の1部を前期の洗浄水で2倍に希釈した0.5部は7.7で効果の下限以下とし、1部の6.5度以上2部4.5、3部3.1、4部2.2、5部1.6、6部1.4、7部5.1、で8部18.9であった。貝の添加量7が溶融限度であった同7部5.1から1部の6.5までを有効範囲とし0.5部以下と8部以上を範囲外とした。
原子吸光度でカルシウムイオン測定をした結果、6部は4.3g/100gであった。1部から7部までは沈殿残渣の乾燥重量及び計算値により算出し、1部0.9、
2部1.6、3部2.3、4部3.1、5部3.7、7部5.9g/100gであり、pH値も同様の変化を示しているのでカルシウムイオン濃度0.9gから5.9gまでを有効な範囲とした。また実施例には4.3g/100gを使用した。
【0020】
【表1】

【0021】
表1.泥付ホウレン草の洗浄水へのカルシウムイオンの溶融量による濁度変化の試験、貝の使用量、pH,透視度
【0022】
実施例の細菌培養試験の培地は、ペトリフイルムACプレート(スリーエム社製)と拭き取りセット(栄研機材社製)を使用し、培養条件と試験検査は食品衛生法または公定法に準拠し実施した。細菌試験は一般生菌の菌数を検出し生菌または生菌数として記載する。
実施例では相加効果を避けるため、配合する試験液と試験剤の使用量を加減している。
本発明は以下の実施例にのみ限定されない。
【0023】
〔実施例1〕
ビタミンB1誘導体のチアミンアウリル硫酸塩(田辺製薬社製)は、ビタミンB1の活性体であり栄養素として利用されているが、特異的に抗菌機能を有している。
抗菌機能としてはグラム陽性菌の耐熱芽胞菌、カビ、酵母のほか酸性の腐敗の原因の乳酸菌に有効であるが、結晶体で非水溶性のため食品への使用に支障があり、これを解決する技術開発がおこなわれた。また、前述のカルシウムイオン液にも非溶解である。
ビタミンB1はアルコール水溶液には易溶であるので、アルコール75g/水100gの水溶液7部にビタミンビタミンB1結晶体3部を入れ溶解させたものをカルシウムイオン液90部と混合しこれを湯煎にて48℃に加熱しそのまま投入型ミキサーで毎分40回転で6分間攪拌し溶解させた。
この配合液はカルシウムイオン3.8g/100g,ビタミンB1が3g/100gの配合比である。この混合液を冷蔵庫に保管し3日経過後の目視観察で析出はなく、水溶性を試験するためコーヒー抽出液100gに当該液2gを滴下し観察すると液は速やかに分散し沈殿析出はなく、冷蔵庫に保管し1日経過後においても沈殿析出は発生しなく、これを以下の特許公開公報に開示された実施例にある試験液とした。
特開2005−211057、特開2000−139409
【0024】
食品の製造用の機械機器具は構成材料の大半にステンレスを使用しており、食品との接触の程度にかかわらず、これら機械器具の表面にバイオフイルムは容易に生成することが判明しており、常に汚染と腐食の危害に曝されている。
食品と接触するステンレス板の表面のバイオフイルムの生成と増殖は、食品中の細菌の消長との関係があり、これを同時に計測することで相互の細菌を制御する方法を検討した。
PVDC製で外形が14cmx23cm深さ12cmの容器4個を用意した。細菌の付着あるいはバイオフイルムの生成を計測するため厚さ0.8mm表面はDB仕様のステンレス板を直径80mmの円形に加工し、計測の日数分に相当する枚数を用意し、これを間隔10から14mmで起立して相互に接触せず、電気的に絶縁して設置する架台を用意した。これにはビニールバインド線0.9mmを外径5cmの鉄パイプに巻きつけて巻き数25のコイルを作り、これを架台としケースの底面に設置しコイルの間にステンレス板を起立して差し込む架台とした。
【0025】
ステンレス板の面積は50.24cmで両面では100.48cmとなり、これは食品衛生法の細菌の拭き取り検査の指針、10cmX10cmで面積100cmに準じておりこの装置により容器の内容物の浮遊細菌と板面の付着細菌やバイオフイルムを計測できる。
形状は円形以外に方形やその他の形状でも良く、容器は試料数の同数を用意する。
ステンレス板と容器は高圧滅菌器にて120℃で20分間の滅菌済みのものを使用し、容器の形状は直方体や円筒形でもよく材質は耐熱樹脂を使用し、上部は開放あるいは嫌気性細菌用に密閉での使用も可能であり、容器の対角に流入孔と吐出孔を設けることで流動体に関わるバイオフイルムの生成についても計測でき、また前述の寸法材質に限定されないで医療あるいは衛生の需要にも対応し得るものであり、これを計測容器とする。
【0026】
〔実施例2〕
ビタミンB1の利用に際して、食品に添加する有効な濃度範囲を得るための試験をした。野菜浅漬け由来の細菌の増殖と阻害の傾向により有効な範囲を計測した。
未洗浄のきゅうり5本830gを細片にし、3.3kgの水に浸漬しこの漬け水を濾紙で濾過し試料としてスチロールコップ8個に各300gを分注した。
ビタミンB1の結晶1gをアルコール75g/水25gのアルコール溶液に溶解したものを試験液とし、これを3gから30gまでを各コップに添加し保存温度15℃で24時間経過後、300mlシリンダー透視計で濁度を計測した。0区対照、1区3g、2区6g、3区9g、5区15g、7区21g、9区27g、10区30gとした。
【0027】
【表2】

【0028】
表2.漬け水100g当たりのビタミンB1液添加量(g)による濁度変化の試験:
1区の数値は対照より大幅に良好であり、10区はビタミンB1の析出があることから、1区から9区までを有効範囲とした。

【0029】
〔実施例3〕
畑作物のそば粉には土壌由来の細菌の付着がある。これを試料として細菌の挙動とこれが起因となるバイオフイルムの生成について試験をした。容量20lのポリバケツに水道水15kgを注水し、国産のそば粉800グラムを加え、投入型ミキサーで毎分45回転12分間攪拌し、濾布で濾過し試料液とした。これを3.2kgごとボールに入れ以下の試料を添加し撹拌して各容器に注入した。
各容器1個につきステンレス板各5枚を架台に起立して配置した。
試験区の容器番号11は対照区とし、12はカルシウムイオン液4.3g/100g液を32g、同13はビタミンB1を実用濃度の300ppmとしてアルコール75g/水25gのアルコール水溶液100gにビタミンB1を1gを溶解した溶解液を96g、14はカルシウムイオン液16gとビタミンB1溶液を48gの配合液をそれぞれ添加した。
以下の実施例の試験にもこのビタミンB1溶液を使用する。
【0030】
ステンレス板は各5枚宛てを架台に起立して配置し試験液を注入した。
各試験区に試験液3.2kg宛を収納し開放で保温庫にて15℃に保存し試験液の細菌の消長と、ステンレス板に付着する細菌あるいはバイオフイルムの生成を計測する試験を開始した。
所定の日数毎に各容器から試料液10gを採取し、またステンレス板1枚を抜き取り、試験液は希釈法によりACプレートで、ステンレス板は両面を綿棒で拭き取り無菌水9g入りの試験管に取り入れ希釈法により同じく培地プレートに接種し36℃で48時間培養し各生菌数を計数した。試料液の初発の生菌数は4X10であった。
試験区11は対照、12.カルシウムイオン液 13.ビタミンB1、14は配合剤
【0031】
【表3】

【0032】
表3.そば粉の細菌の挙動とバイオフイルムの生成試験:
上段Aは試料液の細菌数、下段Bはステンレス板の細菌数:
11Aの9日以降は腐敗のため計測不能になった。
試験区12及び13では試料液とステンレス板についてそれぞれ効果がみられるが、試験区14のカルシウムイオンとビタミンB1の配合液は、試料液の細菌の増殖を抑制し、またステンレス板の表面への細菌の付着を阻止しているため細菌数が低く、細菌の付着とバイオフイルムの生成を制御している。
【0033】
〔実施例4〕
予め洗浄した人参、キャベツ、きゅうりの三種をほぼ同量づつ合計1.6kgを用意しそれぞれ幅2cm長さ6cm以内に細断し400g毎に区分して前記試験容器に収納し、これに漬け水3.2kgを注水し保存温度15℃で4日間保存して野菜に付着した細菌の消長とステンレス板のバイオフイルムの生成を試験した。
野菜は10gを採取しストマッカー処理と希釈法により、ステンレス板は拭き取り法と培養法により生菌数を計測した。対照の野菜の初発菌数は7X10であった。
試験区21.対照、 22.カルシウムイオン液32g(1%)23.ビタミンB1 196g(0.03%)、 24.カルシウムイオン液16g(0.5%)ビタミンB1 98g(0.0 15%)を配合した。
【0034】
【表4】

【0035】
表4.野菜の細菌の消長とステンレス板のバイオフイルム生成試験:
上段は野菜の細菌数、下段はステンレス板の細菌数:
対照は3日で腐敗の菌数を示している。22、23はそれぞれ効果を示しているが、試験区24は野菜とステンレス板の双方について効果を示しており、カルシウムイオンがビタミンB1の界面作用により、野菜の表面を被覆するクチクラ層に浸透して野菜の組織内の細菌の増殖を抑制しており、これは配合剤が植物表皮のクチクラ層に浸透していること、またステンレス板のバイオフイルム生成の制御との双方についての有効を確認した。
【0036】
〔実施例5〕
魚肉のすり身1.8kgに澱粉180gと食塩20gを材料とし、フードミキサーで7分間練り、4分割して試料とし対照区を除き各試験区毎に試験液を添加し再度4分間練り、これを4個のかまぼこ状に成型した。成型には5X10cm深さ2cmの木枠を使用して板状に成形の上ラップフイルムで包装した。1個の重量を120gとしこれを25分間蒸して放熱後、15℃に設定した保温庫に保存し、試料中の細菌数と表面のバイオフイルムと細菌叢の生成について計測した。
【0037】
試験区31は対照、32.以下各試験区で材料100gにつきカルシウムイオン液1g、33.ビタミンB1溶液3g、34.カルシウムイオン液0.5gとビタミンB1溶液1.5gの配合液を添加した。試料はポリ袋に入れ密封し15℃で4日間保存し計測した。初発菌数は加熱品であり300以下とした。板状の試料の5X10cmの2面の合計100cmを拭き取りバイオフイルム生成計測の試料とし、つぎに表面の6面を薄く切り離し中身だけを採取して中身の細菌検査を実施し表5に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
表5.かまぼこ試験:
上段は中身の細菌数、下段は表面の細菌数 保存温度15℃:
試料のラップフイルム面には粘液状の浸出が見られ、バイオフイルムが生成されている。また中身の浮遊細菌数と比較すると、バイオフイルム生成の増殖速度が速く細菌叢の菌数が多い。これは水分の関与が細菌の増殖に影響を与えていると想定され、カルシウムイオン液とビタミンB1の配合液は、浮遊細菌と表面のバイオフイルムの双方の制御に有効であることが確認できた。
【0040】
〔実施例6〕
ベーコンはスライス面の細菌の増殖が多い傾向にあり、スライス面と中身の双方の細菌の増殖を計測してスライス面のバイオフイルムの生成について試験をした。
通常の工程で製造し保存温度5℃で2日経過したベーコンのブロック2kgを用意し、これを200gに8区分して試料とし、以下の試験液を加えた浸漬水各600gを作り試料のベーコンを浸漬した。
浸漬時間25分で取り出して約6mmの厚さにスライスし、各5枚を1単位としポリ袋に収納した。ベーコンの中身と表面の初発の細菌数は共に3X10であった。これを保存温度15℃で保存し時間経過での中身と表面の細菌を計測した。試料からの細菌の採取は、表面のスライス面には拭き取り枠2X5cm=10cmを作り、両面を拭き取り希釈法により、中身は拭き取り後の試料をガーゼで両面を拭き細片にカットし、ストマッカー処理と希釈法によりそれぞれ培養試験をした。
【0041】
浸漬水100gに対して試験剤濃度は41区は対照、42.カルシウムイオン液2g、43.ビタミンB1 3g、44.カルシウムイオン1gビタミンB1 1.5gの配合とした。
【0042】
【表6】

【0043】
表6.ベーコン保存試験
上段は中身の細菌数、下段は表面の細菌数 保存温度15℃:
表6の結果により試験区44は優れた効果があることが確認できた。
ベーコンの表面と中身の細菌数の差を見ると表面のバイオフイルムの増殖が速く、表面の細菌叢から細菌がベーコン内部に浸入して汚染する傾向が明らかであり、また表面にはヌメリがあり、ベーコンをはじめハム、ソーセージなどの食肉加工品に生成するバイオフイルム対策に関して技術を提供できる。
【0044】
〔実施例7〕
糖アルコールによる食品への品質保全の機能について、有効使用量の範囲について計測するため豆乳の品質保全について試験をした。製造直後の豆乳2.5kgを用意しコップ8個に各300gを分注した。対照区は無添加とし、ソルビトールを3gから3gごとに18gまで添加したもの6個との合計7個を用意した。
これらを保存温度15℃で24時間経過後の細菌増殖の影響によるpH値の変化を計測した。初発のpH値は6.2であった。
【0045】
【表7】

【0046】
表7.豆乳保存試験:
対照区は乳酸菌の増殖によるpHの低下が見られ、添加区では添加量3gから効果が認められ、12g以上は同じ値であった。
この結果、3g以上の添加で有効であり18g以上であっても甘味料、改良剤として上限は特になく、キシリトールあるいはエリスリトールも糖アルコールとして同様に使用できる。
【0047】
〔実施例8〕
カルシウムイオン液と糖アルコール類の3種について、浮遊細菌とバイオフイルムの制御の効果について以下の試験をした。葡萄とオレンジ果汁同量を100g/水1kg濃度で26kgを用意し、これを3.2kgずつボール容器に入れて下記の内容のカルシウムイオン液と糖アルコール3種をそれぞれに添加し2分間攪拌し、合計8個を用意し計測容器に分注し試験を開始した。
【0048】
材料100gに対し試験剤の使用量は51区対照、52カルシウムイオン液2g、糖アルコールは実用使用量に準じソルビトール4g、キシリトール4g、エリスリトール4g(各日研化成社製)、また配合剤は各1/2量とした。糖アルコール類は水溶性でありカルシウムイオン液との配合には支障はなかった。果汁の初発菌数は2X10であった。
試験区の51は対照、52カルシウムイオン液、53ソルビトール、54キシリトール、
55エリスリトール、56カルシウムイオン液・ソルビトール配合、57カルシウムイオン液キシリトール配合、58カルシウムイオン液・エリスリトール配合とした。
【0049】
【表8】

【0050】
表8.果汁試験:
保存温度15℃ Aは果汁、Bはステンレス板
この結果カルシウムイオン液とキシリトール及びエリスリトール配合の試験区で浮遊細菌とバイオフイルムの制御に有効であった。
【0051】
〔実施例9〕
カルシウムイオン液と糖アルコール類の3種について、浮遊細菌とバイオフイルムの制御の効果についてケーキやデザートに使用するカスタードソースの浮遊細菌とバイオフイルム生成について計測容器により試験をした。
卵、牛乳、砂糖を材料としてカスタードソース25kgを作り、3kgに区分し、ステンレス製ボールにいれ湯煎で約50℃に加温し、以下の試験液を加え3分間攪拌して試料とした。材料100gに対して試験剤の使用量は、カルシウムイオン液2g、糖アルコールは実用使用量に準じソルビトール4g、キシリトール4g、エリスリトール4g、また配合液はそれぞれ1/2量にて配合した。
試験区61は対照、62カルシウムイオン液、63ソルビトール、64キシリトール、
65エリスリトール、66カルシウムイオン液ソルビトール配合、67カルシウムイオン液キシリトール配合、65カルシウムイオン液エリスリトール配合
本品は細菌の増殖が速いため保存時間は短く15℃の保存温度で36時間後の計測とした。
【0052】
【表9】

【0053】
表9.カスタードソース試験:
Aは中身、Bはステンレス板
カルシウムイオン液とエリスリトール配合が有効であるが、用途によってはエリスリトールの外キシリトールやソルビトールを使用することもできる。
【0054】
〔実施例10〕
カルシウムイオン液と糖アルコールの3種について水羊羹に使用して内部浮遊細菌と表面のバイオフイルム生成の試験をした。生あん、寒天を材料とし2.7kgを用意し加熱攪拌後、各330gに8区分し、下記の試験液を添加し再度攪拌してこれを5X10cm深さ2cmの木枠にラップフイルムを敷き込んだ容器に注入し放熱後包装した。1個の平均が約80gの水羊羹状のものを各4個を作った。
各区分の100g当たり試験剤の使用量は、72カルシウムイオン液2g、73ソルビトール4g、74キシリトール4g、75エリスリトール4g、76カルシウムイオン液1g・ソルビトール2g配合、77カルシウムイオン液1gキシリトール2g、78カルシウムイオン液1g・エリスリトール2gの各1/2の配合とした。
この水羊羹を保存温度15℃で保温庫に保存し経過日数での浮遊細菌とラップフイルム面のバイオフイルムの計測を実施した。
【0055】
【表10】

【0056】
表10.水羊羹試験:
A中身、B表面:
「―――」は腐敗のため中止:
配合剤ではカルシウムイオン液とエリストール、キシリトール、ソルビトールの順の配合が有効であり、表面の水分の浸出に伴い細菌数の増加がみられ、粘液が派生しバイオフイルムが生成されていた。
【0057】
〔実施例11〕
ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステル(昭和化学社製)の食品の安定性機能について使用量の範囲を計測する試験をした。試験に供するためショ糖脂肪酸エステル80gを温水720gに溶解して試験液を用意しキャベツ1個1.6kgを細片して水4kgに浸漬し、コップにキャベツ40g、浸漬用水300gを分注したものを9個用意した。これに上記試験液を3gから3g宛増量し15gと、18g、21g、24gを添加したもの及び対照区とした。
試料を保存温度15℃で24時間経過後、300mlシリンダー透視計にて濁度を計測した。
【0058】
【表11】

【0059】
表11.キャベツ試験:
乳化剤(g):
24g以上では食品の味が悪くなり、不快臭などがあるため使用せず6gから21g以下を使用範囲とし、グリセリン脂肪酸エステルも同様とした。
【0060】
〔実施例12〕
カルシウムイオン液にショ糖脂肪酸エステルを配合し、コーヒー飲料の浮遊細菌とバイオフイルム生成の制御について試験をした。インスタントコーヒー粉300gと脱脂粉乳380gを20kgの温水に溶解してカフェオーレを作り各3.2kgを6個のボールに入れ下記の試験液を添加し泡立て器で5分間攪拌し計測容器に注入し、保存温度15℃で保温庫に保存した。これにより液中の浮遊細菌とステンレス板の細菌を計測し結果を表12に記載する。ショ糖脂肪酸エステル80gを温水720gに入れ試験液を用意した。グリセリン脂肪酸エステルも同様に溶解液800gを得て試験に使用した。
試験剤の使用量は100gにつき試験区82.カルシウムイオン液2g、83.ショ糖脂肪酸エステル溶解液6g、84グリセリン脂肪酸エステル溶解液6g、85カルシウムイオン液1g・ショ糖脂肪酸エステル溶解液3g配合、86カルシウムイオン液1g・グリセリン脂肪酸エステル溶解液3g配合のものを使用した。初発菌数は4X10であった。
【0061】
【表12】

【0062】
表12.カフェオーレの試験
A液中の細菌数、Bステンレス板の細菌数 保存温度15℃
カルシウムイオン液とショ糖脂肪酸エステルなどグリセリン脂肪酸エステルを配合した試験区の浮遊細菌とバイオフイルムの生成の制御に有効であり、これ以外の乳化剤についても使用ができる。
【0063】
〔実施例13〕
食鶏はサルモネラ菌やリステリア菌等による汚染があり、保全のため通常は塩素系殺菌剤で処理した後に市場に出荷している。しかし塩素剤の影響のため風味が損なわれ、あるいは処理の機械器具の腐食や作業者の健康被害があり対策が求められている。
殺菌剤処理前の鶏肉の半身を各試験区の液に浸漬し、肉質の浮遊細菌と表皮のバイオフイルムの生成について試験した。カルシウムイオン液、乳化剤のショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびそれぞれを配合した試験液で浸漬処理をして経時における細菌を計測し比較した。Aは肉質、Bは表皮を記載した。鶏肉の重量は1.1kg以上1.6kgまでであった。
【0064】
浸漬水2.4kgに対して以下の試験剤を使用した。ショ糖脂肪酸エステルとグリセリン脂肪酸エステルは各温水720gに対し80gの溶解液を使用した。
浸漬水100gに対し91区は対照、92区カルシウムイオン液3g、93区ショ糖脂肪酸エステル0.6g、94区グリセリン脂肪酸エステル0.6g、95区カルシウムイオン液1.5gショ糖脂肪酸エステル0.3g、96区カルシウムイオン液1.5gとグリセリン脂肪酸エステル0.3gである。
鶏肉を約20分間浸漬し、浸漬水から出しポリ袋に入れ保存温度15℃で保存した。
試料の採取と試験法は、肉質は10gを採取しストマッカー処理後の希釈法と、表皮は10cmX10cmの枠による拭き取り希釈法でそれぞれ培養試験により計測した。
これらの結果を表10に示す。カルシウムイオン液にショ糖脂肪酸あるいはグリセリン脂肪酸を配合にすることにより肉質、表皮ともに細菌を制御しており有効であると確認できた。脂肪酸エステルの乳化作用により食鶏表皮の脂質とカルシウムイオンの接触浸透が作用し効果を促進している。
【0065】
【表13】

【0066】
表13.食鶏の試験:
A肉質 B表皮:
初発菌数は固体差があり平均値で8X10であるが、試験剤に浸漬すると
1日目に細菌数は低下する傾向があり耐性の弱い菌が滅菌されている。
【0067】
〔実施例14〕
ハンバーグステーキの材料とするため牛肉と豚肉同量の挽肉1.2kgにパン粉200gを加え混合したパテを各200gに区分し、試験剤を加えて混合し、これを各4個をラップフイルムで包装し、保存温度15℃で保存し、経過日数後の中身の細菌数及び接触するラップフイルム上のバイオフイルムの生成について試験をした。ショ糖脂肪酸エステルとグリセリン脂肪酸エステルは各80gを温水720gに溶解した溶解液を使用した。
【0068】
材料100gに対し試験剤の使用量は試験区101は対照、102はカルシウムイオン液2g、103はショ糖脂肪酸エステル溶解液3g、104はグリセリン脂肪酸エステル溶解液3g、105区はカルシウムイオン液1gとショ糖脂肪酸エステル溶解液1.5gの配合、106区はカルシウムイオン1gとグリセリン脂肪酸エステル溶解液1.5gの配合、また各区のAは中身を希釈法の試験結果を記載し、Bは表面に接触したラップフイルム面を拭き取り法により採取し希釈培養により生菌数を計数し、この結果を表11に記載した。これによりカルシウムイオン液とショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを配合した区が中身の浮遊細菌並びにラップフイルム面のバイオフイルムを制御している効果を確認することができた。対照区の初発菌数は5X10であった。

【表14】

【0069】
表14.ひき肉パテの試験:
Aは中身、Bは表面 保存温度15℃
【0070】
〔実施例15〕
カルシウムイオン液に乳酸カリウムあるいは乳酸ナトリウムを配合して粥の浮遊細菌
及びバイオフイルムの生成に対する制御効果について以下の試験をした。
乳酸カリウム60g/水40g液(関東化学社製を調製)乳酸ナトリウム50g/水50g液(昭和化学社製)を使用し、配合に際し試験剤の安定のためレシチン20g/水80g混合比の乳化液を試験剤80gに20gを加えた。
試験剤の配合比はカルシウムイオン40、乳酸カリウム40、または乳酸ナトリウム40、レシチン乳化液20各とした。
【0071】
玄米2kgに加水22kgで浸漬6時間後、炊飯時間50分にて粥を作り、これを各3.2lに8区分し、ボールに取り分け下記の試験剤を加えハンドミキサーで約4分間攪拌後前記試験容器に注入し、保存温度を15℃とし恒温庫に収納した。
材料100gに対して試験剤の使用量は121区対照、122.カルシウムイオン液1g、123.乳酸カリウム液1g、124.乳酸ナトリウム1g、125.カルシウムイオン液乳酸カリウム配合13g、126カルシウムイオン液乳酸ナトリウム配合13g
【0072】
【表15】

【0073】
表15.玄米粥の試験:
A液中の細菌数、Bステンレス板の細菌数 保存温度15℃:
試験区の105、106では細菌抑制の効果が確認できた。玄米粥は特に水分の多い食品であり従来はレトルト加工のみであるが、これの品質を安定するのにカルシウムイオン液に乳酸カリウムあるいは乳酸ナトリウムを併用することで食味が良好でしかも省エネルギー化となる有効な技術を提供することができる。
【0074】
〔実施例16〕
鮮魚の鯖をフィレに加工し、保存経時後の肉質の浮遊細菌と表皮のバイオフイルム生成の制御について、カルシウムイオンと前記乳酸カリウムまたは乳酸ナトリウム及びこれを配合した前期試験剤の効果を試験した。フィレ4片平均で230gを6試験区とし浸漬水1.7kgに15分間浸漬し保存温度15℃に設定した恒温庫に保存し経過日数の細菌を計測した。表皮の拭き取り枠は5X4cmを使用し数値を5倍に換算し、肉質は1片から10gを採取しストマッカー処理を経てそれぞれ希釈培養し生菌数を計測した。
初発菌数は浸漬前で、肉質は9X10、表皮は1X10であった。
浸漬水100gに対する試験剤の濃度は、132.カルシウムイオン液2g、133.乳酸カリウム2g、134.乳酸ナトリウム2g、135カルシウムイオン乳酸カリウム配合試験剤2.4g、136カルシウムイオン乳酸ナトリウム配合試験剤2.4g、131対照。
【0075】
【表16】

【0076】
表16.鯖フィレ試験:
A肉質の浮遊細菌数 B表皮の細菌数
表皮の細菌叢の増殖速度が肉質との比較において大きく、表皮のバイオフイルムを制御の効果と肉質の増殖が並行して抑制が図られている。
【0077】
〔実施例17〕
食肉エキスのスープの浮遊細菌と接触する器械容器へのバイオフイルム生成と制御についてカルシウムイオン液と前記乳酸カリウムまたは乳酸ナトリウム及びこれを配合した前期試験剤の効果を試験した。
牛肉のすじ肉400gと鶏の肉付きガラ1.4kg少量の胡椒を加えこれらを水25kgと鍋に入れ約2時間30分加熱しスープを作り布で濾過し試料とした。各試験区に3.2kgを6区分し、ボールに入れ試験剤を加えて3分間攪拌し前期試験容器に入れ、保存温度15℃に設定した恒温庫に収納し経時の計測をした。
各区Aはスープを希釈法で、Bはステンレス板を拭き取り法により生菌数を計測し結果を表17に示す。
【0078】
材料に対し試験剤の使用量は141区は対照、142はカルシウムイオン液2g、143乳酸カリウム液2g、144乳酸ナトリウム液2g、145カルシウムイオンと乳酸カリウムの配合試験剤2.4g、146カルシウムイオン液と乳酸ナトリウム配合試験剤72.4g
【0079】
【表17】

【0080】
表17.肉スープ試験:
Aスープの細菌数 Bステンレス板の細菌数 保存温度15℃
【0081】
試験の結果により配合試験剤はスープ中の浮遊細菌とステンレス板のバイオフイルムの生成の抑制について有効に機能していることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
醸造酢に貝殻、卵殻、魚骨、家畜の骨格などの動物性カルシウムイオンの1種以上を1から7重量部を溶存して100重量部の醸造酢とし、これにビタミンB1誘導体のチアミンアウリル硫酸塩を0.01から12重量部を配合した食品内浮遊細菌の制御機能を有する
バイオフイルム制御剤。
【請求項2】
醸造酢に貝殻、卵殻、魚骨、家畜の骨格などの動物性カルシウムイオンの1種以上を1から7重量部を溶存して100重量部の醸造酢とし、これに糖アルコールのソルビトール、キシリトール、エリスリトールのうちの1種あるいは2種を3から100重量部を配合した食品内浮遊細菌の制御機能を有する
バイオフイルム制御剤。
【請求項3】
醸造酢に貝殻、卵殻、魚骨、家畜の骨格などの動物性カルシウムイオンの1種以上を1から7重量部を溶存して100重量部の醸造酢とし、これにショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルうちの1種を1から50重量部を配合した食品内浮遊細菌の制御機能を有する
バイオフイルム制御剤。
【請求項4】
醸造酢に貝殻、卵殻、魚骨、家畜の骨格などの動物性カルシウムイオンの1種以上を1から7重量部を溶存して100重量部の醸造酢とし、これに乳酸カリウムあるいは乳酸ナトリウムの1種または2種を10から90重量部を配合した食品内浮遊細菌の制御機能を有する
バイオフイルム制御剤。
【請求項5】
植物のクチクラ層内外の細菌への制御機能を有する
請求項1〜4のいずれかに記載のバイオフイルム制御剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかのバイオフイルム制御剤を添加した
食品。
【請求項7】
容器内に設置した金属、プラスチックス、ゴム、陶磁器、木、紙、ガラス、あるいは繊維への付着により容器内の対象物の細菌数とバイオフイルム内の細菌数を計測する
装置と方法。


【公開番号】特開2010−202868(P2010−202868A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26320(P2010−26320)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000129150)株式会社カランテ (5)
【Fターム(参考)】