説明

バイオプロセス法

官能化された基体材料、例えば無機粒子および/または合成ポリマー粒子を用いて、糖化および発酵などのバイオプロセスを増強する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年5月20日に提出された米国仮特許出願第61/180,019号、および2009年10月16日に提出された米国仮特許出願第61/252,300号に対する優先権を主張する。これらの出願のそれぞれの開示内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
糖質は、微生物または酵素などの作用物質を利用するバイオプロセス手法によって他の材料に変換される。例えば、発酵においては、酵母を嫌気条件下で用いて糖をアルコールに変換するように、微生物によって糖質がアルコールまたは酸に変換される。糖質から生成物への、例えば糖からアルコールへの完全な変換の前に、発酵が停止した場合には、発酵の「スタック(stuck)」が起こったという。
【0003】
他のバイオプロセス手法には、セルロース系およびリグノセルロース系材料から低分子量糖への酵素加水分解が含まれる。
【発明の概要】
【0004】
概要
ある場合には、バイオプロセスにおける基体の存在により、例えば低分子量糖から中間体もしくは生成物への、またはセルロース系もしくはリグノセルロース系材料から低分子量糖への変換が促進される。本発明者らは、無機材料または有機材料などの基体を、低分子量糖、溶媒または溶媒系などの媒質、および微生物の混合物に含めることにより、糖の変換によって得られる中間体または生成物、例えばエタノールまたはブタノール(例えば、n-ブタノール)などのアルコールの収量および生成速度を改善しうることを見いだした。基体を含めることにより、発酵などによる、不完全な、不活発な、または「スタックした」生成物変換も防ぐことができる。同様に、基体を含めることにより、セルロース系またはリグノセルロース系材料の酵素加水分解を増強することもできる。
【0005】
一般に、本発明は、糖質を生成物に変換させるために、繊維または粒子などの基体上に固定化された微生物および/または酵素を用いる段階を含む方法を特徴とする。
【0006】
1つの局面において、本発明は、スクロース、グルコース、キシロースなどの低分子量糖、またはこれらの任意のものの混合物を中間体または生成物に変換させるために、無機またはプラスチックの粒子または繊維などの基体上に固定化された微生物を用いる段階を含む方法を特徴とする。場合によっては、基体は、その基体がその天然の状態では有しない官能基によって官能化されている。
【0007】
「固定化された」とは、微生物または酵素が、共有結合、水素結合、イオン結合もしくは同等の結合によって、および/または、微生物と繊維もしくは粒子の細孔との間などの力学的相互作用により、基体(例えば、粒子または繊維)と直接的または間接的に(例えば、化学的リンカーを通して)結合していることを意味する。結合は、例えば、基体材料を電気的に分極させることによって作り出すことができる。相互作用は、永久的でも、半永久的でも、または一時的でもよい。力学的相互作用には、微生物または酵素が、繊維または粒子の細孔または他の部位にはまり込んでいるかまたは粘着していることが含まれうる。
【0008】
いくつかの実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。
【0009】
変換は、微生物が、低分子量糖の少なくとも一部分を、エタノールもしくはブタノールなどのアルコールに、または炭化水素もしくは水素に変換することを可能にすることを含みうる。変換には発酵が含まれうる。微生物には、S. セレビシエ(S. cerevisiae)および/もしくはP. スティピティス(P. stipitis)などの酵母、またはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)などの細菌が含まれうる。本方法はさらに、無機繊維などの基体に、例えば、粒子ビームなどの電離放射線を照射することを含みうる。繊維または粒子は、0.25m2/gを上回るBET表面積、および/または少なくとも70%の多孔度を有しうる。場合によっては、BET表面積が、10、100、250、500m2/g、またはさらには1000m2/gを上回ってもよい。本方法はさらに、基体を以後の変換プロセスで再使用する段階を含みうる。
【0010】
別の局面において、本発明は、極性官能基を有する粒子状材料などの基体と、相補的な官能基を有する微生物または酵素と、液体培地を含む混合物とを特徴とする。場合によっては、基体は、無機繊維またはプラスチック繊維などの繊維を含む。
【0011】
1つのさらなる局面において、本発明は、官能基を有する繊維または粒子などの基体と、その基体上に固定化され、相補的な官能基を有する微生物または酵素とを含む組成物を特徴とする。繊維を用いる場合、その繊維は、例えば、無機繊維またはプラスチック繊維であってよい。
【0012】
本発明はまた、低分子量糖、または低分子量糖を含む材料を、基体、微生物、および、水または水と有機溶媒との混合物などの溶媒または溶媒系の混合物の中で、中間体または生成物に変換させる段階を含む方法も特徴とする。溶媒または溶媒系の例には、水、ヘキサン、ヘキサデカン、グリセロール、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、石油エーテル、液化石油ガス(LPG)、イオン性液体、およびそれらの混合物が含まれる。溶媒または溶媒系は、単一相の形態にあってもよく、または2つもしくはそれ以上の相の形態にあってもよい。基体は、繊維形態などであってよい。例えば、基体には、無機繊維または合成繊維、例えばプラスチック繊維などが含まれうる。
【0013】
ある場合には、基体(例えば、本明細書に記載された任意の方法によって処理されたか、または処理されていない繊維)を、中間体または生成物の生成時、例えばエタノールなどの生成時に存在させることにより、生成物の生成速度を高めることができる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、表面積の大きい、および/または多孔度の高い固体といった固体が存在すれば、溶質の有効濃度を上昇させること、およびその上で反応が起こりうる基体を提供することにより、反応速度を高めることができると考えられる。
【0014】
例えば、照射された、または照射されていない繊維性材料、例えば、炭素繊維もしくはガラス繊維などの無機材料、またはプラスチック繊維などの合成ポリマー材料を、トウモロコシ-エタノール発酵またはサトウキビ抽出物発酵などの発酵プロセスに追加することで、生成速度を少なくとも10、15、20、30、40、50、75もしくは100パーセント、またはそれ以上、例えば少なくとも150パーセント、またはさらには最大で1000パーセント高めることができる。繊維性材料は、大きい表面積、高い多孔度、および/または低い嵩密度を有しうる。いくつかの態様において、繊維性材料は混合物中に約0.5重量パーセント〜約50重量パーセント、例えば約1重量パーセント〜約25重量パーセント、または約2重量パーセント〜約12.5重量パーセントなどの濃度で存在しうる。他の態様において、繊維性材料は、約0.5重量パーセントを上回る、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9重量パーセントを上回る、またはさらには約10重量パーセントを上回る量などで存在する。例えば、いくつかの態様においては、酸化された、照射された、または化学的に官能化された繊維性材料を、発酵速度および生成量を高めるといった目的で、低分子量糖の発酵プロセスに追加することができる。
【0015】
基体それ自体は変換プロセスの間に消費されないため、基体を複数のバッチプロセスに再使用すること、または比較的大量の生成物の生成のために連続的に用いることができる。
【0016】
いくつかの実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。
【0017】
変換は、微生物が、低分子量糖の少なくとも一部分を、エタノールまたはブタノールなどのアルコールに変換することを可能にすることを含みうる。例えば、変換には発酵が含まれうる。微生物には、例えばS. セレビシエおよびP. スティピティスからなる群より選択される酵母、またはザイモモナス・モビリスなどの細菌が含まれうる。微生物は天然の微生物であってもよく、または操作された微生物であってもよい。例えば、微生物は、セルロース分解細菌などの細菌、酵母などの真菌、藻類、原生動物もしくは真菌様原生生物、例えば粘菌類などの植物または原生生物であってよい。生物が共存できる場合には、混合物を用いてもよい。変換は、少なくとも140%、場合によっては少なくとも170%の性能比率(%)を示しうる。エタノール発酵に関する性能比率(%)を決定するために用いられる式は、以下である。
性能比率(%)=(試料中のエタノール/対照中のエタノール)×100
【0018】
基体には繊維性材料が含まれうる。本方法はさらに、繊維性材料を、混合の前に、電離放射線などにより、例えば少なくとも5Mradの総線量で照射する段階を含みうる。照射は、粒子ビーム、例えば電子ビームを用いて行うことができる。いくつかの態様において、照射は、基体を空気、窒素、酸素、ヘリウムまたはアルゴンに曝露させている間に基体に対して行われる。照射は、電離放射線、例えばγ線、電子ビーム、または約100nm〜約280nmの波長を有する紫外線Cなどを用いて行うことができる。照射は、放射線の複数回の適用を用いて行うことができる。場合によっては、放射線を、約10Mrad〜約150Mradの総線量、および約0.5〜約10Mrad/日または1Mrad/秒〜約10Mrad/秒の線量率で適用することができる。いくつかの態様において、照射は、γ線および電子ビームなどの2つまたはそれ以上の放射線源を適用することを含む。
【0019】
別の局面において、基体は、基体の存在により、セルロースを含む供給原料からの低分子量糖の反応速度および収量を増大しうるような糖化プロセスに含められる。この局面において、本発明は、セルロース系またはリグノセルロース系材料を糖化するために、粒子上に固定化された糖化剤を利用する段階を含む方法を特徴とする。糖化剤は、例えば、酵素であってよい。
【0020】
別に定める場合を除き、本明細書において用いられる技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができるものの、適した方法および材料については以下に述べる。本明細書において言及された刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献はすべて、その全体が参照により組み入れられる。矛盾のある場合には、定義を含め、本明細書が支配的であるものとする。加えて、材料、方法および例は例示に過ぎず、限定を意図したものではない。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】繊維の処理、および処理された繊維の発酵プロセスにおける使用を図式的に説明しているブロック図である。
【図1A】微生物と相互作用している官能化された繊維の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本明細書に記載された基体材料、例えば官能化された粒子状材料などは、発酵プロセスの間などにおける、低分子量糖から中間体または生成物への変換を促進することができる。カルボン酸基、エノール基、アルデヒド基、ケトン基、ニトリル基、ニトロ基またはニトロソ基といった所望のタイプおよび量の官能性を有する官能化された基体材料を、本明細書に記載された方法、または他の公知の方法を用いて調製することができる。
【0024】
基体材料
以下に考察する材料を、低分子量糖の変換に用いようとする作用物質上の官能基、例えば、酵母などの微生物上に存在する官能基などに対して相補的な官能基によって官能化することができる。
【0025】
適した基体材料には、有機および無機の粒子状材料が含まれる。基体材料には、例えば、炭酸カルシウム(例えば、沈降炭酸カルシウムまたは天然炭酸カルシウム)、アラゴナイトクレイ、斜方晶クレイ、方解石クレイ、菱面体クレイ、カオリンクレイ、ベントナイトクレイ、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、オルトリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、合成アパタイト、アルミナ、アルミナ水和物、シリカキセロゲル、アルミノケイ酸金属複合体(metal aluminosilicate complex)、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化ケイ素グラファイト、ケイ灰石、雲母、ガラス、繊維ガラス、シリカ、タルク、炭素繊維、導電性カーボンブラック、セラミック粉末およびセラミック繊維、ならびにアルミナ三水和物などの無機充填剤が含まれる。粉砕建設廃棄物、粉砕タイヤゴム、リグニン、マレイン化ポリプロピレン、ナイロン繊維または他の熱可塑性繊維、ならびにフッ素化ポリエチレンなどのフッ素化ポリマーといった他の粒子状材料を用いることもできる。上記の材料の組み合わせを用いることもできる。
【0026】
いくつかの材料は、官能化された状態で販売されている。例えば、カルボキシル官能化されたカーボンナノチューブは、NanoLab, Newton, MA, USAなどから販売されており、官能化されたシリカゲルはIsco, Incから販売されている。
【0027】
粒子状材料は、例えば1ミクロンを上回る、例えば2ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、25ミクロンを上回る、またはさらには35ミクロンを上回る粒径を有しうる。好ましい基体のその他の物理的特性については以下に述べる。
【0028】
ナノメートルスケールの充填剤を単独で、または任意のサイズおよび/もしくは形態の繊維性材料と組み合わせて用いることもできる。充填剤は、粒子、プレートまたは繊維などの形状であってよい。例えば、ナノメートルサイズのクレイ、シリコン製およびカーボン製のナノチューブまたはバッキーボール、ならびにシリコン製およびカーボン製のナノワイヤーを用いることができる。充填剤は、1000nm未満の、例えば900nm、800nm、750nm、600nm、500nm、350nm、300nm、250nm、200nm未満の、100nm未満の、またはさらには50nm未満の横断寸法を有してよい。
【0029】
いくつかの態様において、ナノ-クレイはモンモリロナイトである。そのようなクレイは、Nanocor, Inc.およびSouthern Clay productsから入手可能であり、米国特許第6,849,680号および第6,737,464号に記載されている。クレイを、樹脂または繊維性材料などに混入する前に、表面処理することができる。例えば、その表面がイオン性、例えば陽イオン性または陰イオン性となるように、クレイを表面処理することができる。
【0030】
凝集もしくは凝塊化したナノメートルスケールの充填剤、または集合して自己集合超分子構造などの超分子構造となったナノメートルスケールの充填剤を用いることもできる。凝集した充填剤または超分子充填剤は構造の点で開放性であっても閉鎖性であってもよく、かつ、ケージ状、管状または球状などの種々の形状を有しうる。
【0031】
本明細書に記載された任意の基体材料の配合物を用いて、本明細書に記載された生成物の任意のものを作製することができる。
【0032】
基体材料を官能化するため、および基体材料を発酵に用いるためのシステム
図1は、繊維性材料または粒子状材料などの基体材料を処理し、続いてその処理された材料を発酵プロセスを増強するために用いるためのシステム100を示している。システム100は、照射、酸化、化学的官能化または他の手段などによって基体材料がその中で官能化される、自由選択モジュール102を含む。基体材料をその天然の状態で用いる場合、またはそれが事前に官能化されている場合には、この段階を省く。
【0033】
処理された基体材料、例えば官能化された粒子または繊維は、基体送出モジュール108によって、発酵システム106に送出される。基体材料は、任意の所望の濃度、例えば約0.05%〜約20%、約0.1%〜約10%、約0.2%〜約6%、または約0.3%〜約4%などで送出することができる。濃度は、一部には、用いる基体材料の特性、およびどの程度の量の基体材料を実際に添加しうるかによって決まると考えられる。
【0034】
官能化された基体材料はその後発酵の間存在し、発酵に用いられる微生物、例えば酵母細胞などと相互作用しうる基体を提供することによって発酵プロセスを増強する。この相互作用は、官能化された極性繊維10および相補的な極性官能基を有する酵母細胞12を描写している図1Aに模式的に示されている。繊維および酵母細胞の極性が原因となり、細胞を繊維の1つまたは複数の上に固定させることができる。酵母細胞(または他の微生物)と繊維との結合は水素結合によるものでもよく、または共有結合もしくはイオン結合によるものでもよい。場合によっては、繊維上の官能基が微生物上の官能基と反応して共有結合を形成してもよい。繊維の表面積の大きさおよび多孔度の高さは、繊維と微生物との相互作用に対して大きな表面積をもたらし、それ故にこの相互作用を増強する。固定化された細胞は、より生産性が高く、発酵プロセスの効率および収量を高めるとともに、プロセスが早期に「スタック」となることを防ぐ。
【0035】
発酵の間に混合を行う場合、混合は、微生物と繊維との間の相互作用の乱れが最小限になるように、比較的穏やか(低剪断性)であることが好ましいことに留意すべきである。いくつかの態様においては、2009年5月20日に提出された米国仮特許出願第61/179,995号および2009年6月19日に提出された第61/218,832号、ならびに代理人整理番号(Attorney Docket Number)00119-1USとして本出願と同時に提出された米国特許出願第_________号に記載されているように、噴流混合を用いる。これらの出願のそれぞれの開示内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
図1に示されている実施形態においては、発酵によって粗エタノール混合物が生じ、それが貯蔵タンク110の中に流れ込む。水または他の溶媒、および他の非エタノール成分を、除去用カラム112を用いて粗エタノール混合物から取り除き、続いてエタノールを、精留塔などの蒸留ユニット114を用いて蒸留する。最後に、エタノールを分子篩116を用いて乾燥させ、必要に応じて変性させて、所望の出荷方法に向けて取り出すことができる。
【0037】
場合によっては、本明細書に記載されたシステム、またはその構成要素が携帯可能であってもよく、その結果、システムを1つの場所から別の場所に搬送することができてもよい(例えば、鉄道、トラックまたは船舶によって)。本明細書に記載された方法の諸段階を1つまたは複数の場所で行うことができ、場合によっては、これらの諸段階の1つまたは複数を輸送中に行うこともできる。そのような移動中のプロセシングは、米国特許出願第12/374,549号および国際公開公報第2008/011598号に記載されており、これらの開示内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0038】
基体の物理的特性
官能化された基体材料およびその天然の状態にある基体材料はいずれも、本明細書において考察する物理的特性を有しうる。
【0039】
本明細書で用いる場合、平均繊維幅(すなわち、直径)は、およそ5,000本の繊維をランダムに選択することによって光学的に決定される。平均繊維長は、修正長による加重長(corrected length-weighted length)である。BET(ブルナウアー(Brunauer)、エメット(Emmet)およびテラー(Teller))表面積は多点表面積であり、多孔度は水銀多孔度測定法によって決定されるものである。
【0040】
基体材料が繊維性である場合には、場合によっては、基体材料の繊維の平均長-直径比は、例えば8/1を上回ってよく、例えば10/1を上回る、15/1を上回る、20/1を上回る、25/1を上回る、または50/1を上回る、などであってよい。繊維の平均長は、例えば約0.5mm〜2.5mm、例えば約0.75mm〜1.0mmなどであってよく、かつ繊維の平均幅(すなわち、直径)は、例えば約5μm〜50μm、例えば約10μm〜30μmなどであってよい。
【0041】
いくつかの態様において、繊維の長さの標準偏差は、繊維の平均長の60パーセント未満、例えば平均長の50パーセント未満、平均長の40パーセント未満、平均長の25パーセント未満、平均長の10パーセント未満、平均長の5パーセント未満、またはさらには平均長の1パーセント未満である。
【0042】
いくつかの態様において、基体材料のBET表面積は0.1m2/gを上回り、例えば0.25m2/g、0.5m2/g、1.0m2/g、1.5m2/g、1.75m2/g、5.0m2/g、10m2/g、25m2/g、35m2/g、50m2/g、75m2/g、100m2/g、200m2/g、250m2/g、500m2/gを上回る、またはさらには1000m2/gを上回る。
【0043】
基体材料の多孔度は、例えば20パーセントを上回る、25パーセントを上回る、35パーセントを上回る、50パーセントを上回る、60パーセントを上回る、70パーセントを上回る、などであってよく、例えば80パーセントを上回る、85パーセントを上回る、90パーセントを上回る、92パーセントを上回る、94パーセントを上回る、95パーセントを上回る、97.5パーセントを上回る、99パーセントを上回る、またはさらには99.5パーセントを上回る、などであってよい。
【0044】
基体のクエンチングおよび官能化
場合によっては、基体材料を照射によって官能化する。当技術分野において周知であるような他の手法、例えば酸化または化学的官能化を用いることもできる。例えば材料がその天然の状態で用いられる場合、または供給元によって事前に官能化されている場合のように、場合によっては、基体材料を官能化することは本プロセスの一部ではない。
【0045】
電離放射線による処理の後に、基体材料はイオン化される;すなわち、材料は、電子スピン共鳴分光器によって検出可能なレベルでラジカルを含むようになる。ラジカルの現在の実際的な検出限界は、室温で約1014スピンである。イオン化の後に、例えばラジカルがもはや電子スピン共鳴分光器などによって検出不能となるようにイオン化材料におけるラジカルのレベルを低下させるために、材料のクエンチングを行うことができる。例えば、十分な圧力を材料に加えることにより、および/またはラジカルと反応する(ラジカルをクエンチする)、イオン化材料と接触している流体、例えば気体または液体などを利用することにより、ラジカルをクエンチすることができる。ラジカルのクエンチングの少なくとも一助となる気体または液体の使用により、操作者が、カルボン酸基、エノール基、アルデヒド基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、またはクロロフルオロアルキル基といった所望の量およびタイプの官能基によるイオン化材料の官能化を制御することも可能になる。以上に考察したように、クエンチングによって材料に付与された官能基は、微生物または酵素の付着のための受容体部位として作用することができる。
【0046】
照射された試料中のラジカルを電子スピン共鳴分光法によって検出すること、およびそのような試料中のラジカルの寿命は、Bartolotta et al., Physics in Medicine and Biology, 46 (2001), 461-471およびBartolotta et al., Radiation Protection Dosimetry, Vol. 84, Nos. 1-4, pp. 293-296 (1999)に考察されている。
【0047】
いくつかの態様において、クエンチングは、材料を機械的に変形させること、例えば一次元、二次元もしくは三次元的に直接的に機械的に圧縮することなどによって、または例えば静水圧加圧のように、材料が浸漬している流体に圧力を加えることなどによって、イオン化材料に圧力を加えることを含む。そのような場合、材料の変形はそれ単独でラジカルを生じさせ、ラジカルは多くの場合は結晶ドメイン内に、ラジカルが別の基と組換えまたは反応を行える程度に十分に近い位置に閉じ込められる。ある場合には、圧力を、例えば材料の温度を材料または材料の1つの成分の融点または軟化点よりも高く上昇させるのに十分な量の熱などの加熱とともに加える。熱は材料中での分子の運動性を向上させることができ、それはラジカルのクエンチングを助長しうる。クエンチングのために圧力を利用する場合には、圧力は約1000psiを上回ってよく、例えば約1250psi、1450psi、3625psi、5075psi、7250psi、10000psiを上回り、またはさらには15000psiを上回ってよい。
【0048】
いくつかの態様において、クエンチングは、材料を、液体または気体などの流体、例えば、ラジカルと反応しうる気体、例えばアセチレンもしくは窒素中にあるアセチレンの混合物、エチレン、塩素化エチレンもしくはクロロフルオロエチレン、プロピレン、またはこれらの気体の混合物などと接触させることを含む。他の特定の態様において、クエンチングは、材料を、液体、例えば、材料を溶解させるか、または少なくともその中に浸透して、ラジカル、例えば1,5-シクロオクタジエンなどのジエンと反応することのできる液体と接触させることを含む。いくつかの特定的な態様において、クエンチングは、材料を、ビタミンEなどの抗酸化剤と接触させることを含む。
【0049】
クエンチングのためのその他の方法も可能である。例えば、Muratoglu et al.、米国特許出願公開第2008/0067724号およびMuratoglu et al.、米国特許第7,166,650号に記載された、ポリマー材料中のラジカルのクエンチングのための任意の方法を、本明細書に記載された任意のイオン化材料のクエンチングのために利用することができる。さらに、Muratogluのいずれかの参考文献に記載された任意のクエンチング剤(上記のMuratogluの開示では「増感剤」として記載))および/または任意の抗酸化剤を、任意のイオン化材料のクエンチングのために利用することができる。
【0050】
重荷電イオン、例えば本明細書に記載された比較的重いイオンの任意のものを利用することによって、官能化を増強することができる。例えば、酸化を増強することが望まれる場合には、荷電酸素イオンを照射のために利用することができる。窒素含有官能基が望まれる場合には、窒素イオン、または窒素を含むイオンを利用することができる。同様に、イオウ含有基またはリン含有基が望まれる場合には、イオウまたはリンのイオンを照射のために利用することができる。
【0051】
クエンチングの後に、クエンチングを受けた、本明細書に記載された材料の任意のものを、さらなる分子的および/または超分子的な構造変化のために、電離放射線または非電離放射線などの放射線、音波処理、熱分解および酸化のうちの1つまたは複数によって、さらに処理することができる。
【0052】
流体中での粒子ビーム曝露
場合によっては、基体材料を、1つまたは複数の追加の流体(例えば、気体および/または液体)の存在下で粒子ビームに曝露させることができる。1つまたは複数の追加の流体の存在下において材料を粒子ビームに曝露することにより、処理の効率を高めることができる。
【0053】
いくつかの態様においては、材料を、空気などの流体の存在下で粒子ビームに曝露させる。加速された粒子は、加速器の外に出て、出力ポート(例えば、金属箔などの薄膜)を介して合わさり、流体によって占有されている空間体積を通過した上で、材料に当たる。材料を直接処理することに加えて、粒子の一部は、流体粒子と相互作用することによって別の化学種(例えば、空気のさまざまな成分から生じたイオンおよび/またはラジカル、例えばオゾンおよび窒素酸化物など)を生成する。生成されたこれらの化学種は材料と相互作用することもできる;例えば、生成された任意のオキシダントは材料を酸化することができる。
【0054】
ある態様においては、追加の流体を、粒子ビームの、ビームが材料に当たる前の経路(path)内に選択的に投入することができる。以上に考察したように、ビームの粒子と投入される流体の粒子との間の反応は、材料と反応する別の化学種を生成させることができ、材料の官能化を補助すること、および/または材料のある種の特性を別の様式で選択的に変化させることができる。1つまたは複数の追加の流体は、例えば供給管から、ビームの経路内に注ぎ入れることができる。投入される流体の方向および流速は、所望の照射線量率、ならびに/または、粒子を利用した処理の結果として生じる影響および投入された流体から動的に生成される種と材料との相互作用に起因する影響の両方を含む、処理全体の効率を制御するための方向に従って選択することができる。空気のほかに、イオンビーム中に投入することのできる例示的な流体には、酸素、窒素、1つまたは複数の貴ガス、1つまたは複数のハロゲン、および水素が含まれる。
【0055】
放射線処理
放射線は、乾燥している、または湿っている、またはさらには水などの液体中に分散している材料に適用することができ、かつ、材料が空気、酸素を多く含む空気、もしくはさらには酸素それ自体に曝露されている間に、または窒素、アルゴンもしくはヘリウムなどの不活性ガスによって覆われている間に適用することができる。最大限の酸化が望まれる場合には、空気または酸素などの酸化環境を利用する。
【0056】
放射線は、約2.5気圧を上回る、例えば5、10、15、20気圧を上回る、またはさらには約50気圧を上回る圧力下で適用することができる。
【0057】
いくつかの態様においては、電子をその原子軌道から放出させる、材料に付与されたエネルギーを用いて、材料を照射する。放射線は、1)α粒子もしくはプロトンなどの重荷電粒子、2)電子、例えば、β崩壊もしくは電子ビーム加速器によって生じたもの、または3)電磁放射線、例えばγ線、X線、もしくは紫外線などによって得ることができる。1つのアプローチでは、放射性物質によって生じた放射線を用いて、供給原料を照射することができる。いくつかの態様において、(1)から(3)までの任意の組み合わせを任意の順序でまたは同時に利用してもよい。別のアプローチでは、(例えば、電子ビームエミッターを用いて生じた)電磁放射線を用いて、供給原料を照射することができる。鎖分断が望まれる、および/またはポリマー鎖の官能化が望まれる、ある場合には、電子よりも重い粒子、例えばプロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンなどを利用することができる。開環性の鎖分断が望まれる場合には、開環性の鎖分断を増強するために、正に荷電した粒子を、それらのルイス酸特性を目的として利用することができる。例えば、酸素含有官能基が望まれる場合には、酸素の存在下における照射、またはさらには酸素イオンによる照射を行うことができる。例えば、窒素含有官能基が望まれる場合には、窒素の存在下における照射、またはさらには窒素イオンによる照射を行うことができる。
【0058】
電離放射線
放射線の各形態は、その放射線のエネルギーによって決定されるような特定の相互作用を介して基体材料をイオン化する。重荷電粒子は主として、クーロン散乱を介して物質をイオン化する;さらに、これらの相互作用は、物質をさらにイオン化することのできるエネルギー電子を生じさせる。α粒子はヘリウム原子の核と同一であり、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、いくつかのアクチニド、例えばアクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリフォルニウム、アメリシウムおよびプルトニウムといったさまざまな放射性核のα減衰によって生じる。
【0059】
粒子を利用する場合には、それらは中性(非荷電)でも、正に荷電していても、または負に荷電していてもよい。荷電している場合、荷電粒子は単一の正もしくは負の電荷を有してもよく、または複数の電荷、例えば、1つ、2つ、3つもしくは4つ、もしくはそれ以上の電荷を有してもよい。鎖分断が望まれる場合には、正に荷電した粒子が望ましいと考えられるが、これは一部には、それらが酸の性質を持つことが理由である。粒子を利用する場合、粒子は、静止電子の質量、またはそれを上回る質量、例えば静止電子の500倍、1000倍、1500倍もしくは2000倍もしくはそれ以上といった質量を有してよい。例えば、粒子は、約1原子単位〜約150原子単位の質量、例えば約1原子単位〜約50原子単位、または約1〜約25、例えば、1、2、3、4、5、10、12もしくは15amuの質量を有してよい。粒子を加速させるために用いられる加速器は、静電直流(DC)型、電気力学的DC型、高周波(RF)線形型、磁気誘導線形型、または連続波型であってよい。例えば、サイクロトロン型加速器は、IBA, BelgiumによるRhodotron(登録商標)システムなどが入手可能であり、DC型加速器は、RDI、現在のIBA IndustrialによるDynamitron(登録商標)などが入手可能である。
【0060】
イオンおよびイオン加速器については、Introductory Nuclear Physics, Kenneth S. Krane, John Wiley & Sons, Inc. (1988), Krsto Prelec, FTZIKA B 6 (1997) 4, 177-206, Chu, William T., "Overview of Light-Ion Beam Therapy" Columbus-Ohio, ICRU-IAEA Meeting, 18-20 March 2006, Iwata, Y. et al., "Alternating-Phase-Focused IH-DTL for Heavy-Ion Medical Accelerators" Proceedings of EPAC 2006, Edinburgh, Scotland and Leaner, C.M. et al., "Status of the Superconducting ECR Ion Source Venus" Proceedings of EPAC 2000, Vienna, Austriaに考察されている。
【0061】
γ放射線には、種々の材料中への侵入深度がかなり大きいという利点がある。γ線の源には、コバルト、カルシウム、テクネチウム、クロム、ガリウム、インジウム、ヨウ素、鉄、クリプトン、サマリウム、セレン、ナトリウム、タリウムおよびキセノンの同位体といった放射性核が含まれる。
【0062】
X線源には、タングステンもしくはモリブデンもしくは合金などの金属標的との電子ビームの衝突、またはLynceanによって商業的に製造されているもののような小型光源が含まれる。
【0063】
紫外線源には、重水素ランプまたはカドミウムランプが含まれる。
【0064】
赤外線源には、サファイア、亜鉛またはセレナイドウィンドウのセラミックランプが含まれる。
【0065】
マイクロ波源には、クライストロン、Slevin型のRF源、または水素、酸素もしくは窒素ガスを使用する原子ビーム源が含まれる。
【0066】
電子ビーム
いくつかの態様においては、電子ビームを放射線源として用いる。電子ビームには、線量率の高さ(例えば、1秒当たり1、5、またはさらには10Mrad)、ハイスループット、装置の封じ込めおよび閉じ込めがより軽度であるという利点がある。電子はまた、鎖分断を引き起こす効率がより高い可能性もある。加えて、4〜10MeVのエネルギーを有する電子は、5〜30mmまたはそれ以上の、例えば40mmなどの侵入深度を有しうる。
【0067】
電子ビームは、例えば、静電起電機、カスケード起電機、変圧発電機、走査システムを有する低エネルギー加速器、線状カソードを有する低エネルギー加速器、線形加速器、およびパルス加速器によって生成させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば0.5インチ未満の、例えば0.4インチ、0.3インチ、0.2インチ未満、または0.1未満といった比較的薄い材料パイルに対して有用な可能性がある。いくつかの態様において、電子ビームの各電子のエネルギーは、約0.3MeV〜約2.0MeV(100万電子ボルト)、例えば約0.5MeV〜約1.5MeV、または約0.7MeV〜約1.25MeVである。
【0068】
電子ビーム照射デバイスは、Ion Beam Applications, Louvain-la-Neuve, BelgiumまたはTitan Corporation, San Diego, CAから商業的に調達することができる。典型的な電子エネルギーは、1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeVまたは10MeVでありうる。典型的な電子ビーム照射デバイスの電力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kWまたは500kWでありうる。典型的な線量は、1kGy、5kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGyまたは200kGyの値をとりうる。
【0069】
イオン粒子ビーム
電子よりも重い粒子を、本明細書に記載された基体材料の任意のものを照射するために用いることができる。例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン 炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンを利用することができる。いくつかの態様において、電子よりも重い粒子は、(より軽い粒子に比して)より多くの量の鎖分断を誘発することができる。ある場合には、正に荷電した粒子は、それらの酸度が原因で、負に荷電した粒子よりも多くの量の鎖分断を誘発することができる。
【0070】
より重い粒子ビームは、例えば線形加速器またはサイクロトロンを用いて生成させることができる。いくつかの態様において、ビームの各粒子のエネルギーは、約1.0MeV/原子単位〜約6,000MeV/原子単位、例えば約3MeV/原子単位〜約4,800MeV/原子単位、または約10MeV/原子単位〜約1,000MeV/原子単位である。
【0071】
ある態様において、イオンビームは複数のタイプのイオンを含むことができる。例えば、イオンビームは、2つまたはそれ以上(例えば、3つ、4つまたはそれ以上)の異なるタイプのイオンの混合物を含むことができる。例示的な混合物には、炭素イオンとプロトン、炭素イオンと酸素イオン、窒素イオンとプロトン、および鉄イオンとプロトンのものが含まれうる。より一般的には、以上に考察したイオンの任意のもの(または任意の他のイオン)の混合物を用いて、照射用イオンビームを発生させることができる。特に、比較的軽いイオンと比較的重いイオンの混合物を、単一のイオンビームに用いることができる。
【0072】
いくつかの態様において、材料を照射するためのイオンビームは、正に荷電したイオンを含む。正に荷電したイオンには、例えば、正に荷電した水素イオン(例えば、プロトン)、貴ガスイオン(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン)、炭素イオン、窒素イオン、酸素イオン、ケイ素原子、リンイオン、ならびに、ナトリウムイオン、カルシウムイオンおよび/または鉄イオンなどの金属イオンが含まれうる。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、そのような正に荷電したイオンは、酸化環境において、材料に曝露されると化学的にルイス酸部分として振る舞い、陽イオン性の開環性鎖分断反応を惹起させ、かつ持続させると考えられている。
【0073】
ある態様において、材料を照射するためのイオンビームは、負に荷電したイオンを含む。負に荷電したイオンには、例えば、負に荷電した水素イオン(例えば、ヒドリドイオン)、および比較的電気陰性度の大きいさまざまな核の負に荷電したイオン(例えば、酸素イオン、窒素イオン、炭素イオン、ケイ素イオンおよびリンイオン)が含まれうる。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、そのような負に荷電したイオンは、還元環境において、材料に曝露されると化学的にルイス塩基部分として振る舞い、陰イオン性の開環性鎖分断反応を引き起こすと考えられている。
【0074】
いくつかの態様において、材料を照射するためのビームは、中性原子を含むことができる。例えば、水素原子、ヘリウム原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ネオン原子、ケイ素原子、リン原子、アルゴン原子および鉄原子のうちの任意の1つまたは複数を、バイオマス材料の照射のために用いるビームに含めることができる。一般に、上記のタイプの原子の任意の2つまたはそれ以上(例えば、3つもしくはそれ以上、4つもしくはそれ以上、またはさらにはそれ以上)の混合物が、ビーム中に存在しうる。
【0075】
ある態様において、材料を照射するために用いられるイオンビームは、単一荷電イオン、例えばH+、H-、He+、Ne+、Ar+、C+、C-、O+、O-、N+、N-、Si+、Si-、P+、P-、Na+、Ca+およびFe+のうちの1つまたは複数などを含む。いくつかの態様において、イオンビームは、多重荷電イオン、例えば、C2+、C3+、C4+、N3+、N5+、N3-、O2+、O2-、O22-、Si2+、Si4+、Si2-およびSi4-のうちの1つまたは複数などを含みうる。一般に、イオンビームはまた、複数の正または負の電荷を有する、より複雑な多核イオンも含みうる。ある態様においては、多核イオンの構造のおかげで、正または負の電荷は、イオンの構造の実質的に全体にわたって有効に分布しうる。いくつかの態様において、正または負の電荷は、イオンの構造のいくつかの部分にある程度局在してもよい。
【0076】
電磁放射線
照射を電磁放射線によって行う態様において、電磁放射線は、例えば、102eVを上回る、例えば103、104、105、106を上回る、またはさらには107eVを上回る光子当たりエネルギー(電子ボルト単位)を有することができる。いくつかの態様において、電磁放射線は、104〜107eV、例えば105〜106eVの光子当たりエネルギーを有する。電磁放射線は、例えば、1016Hzを上回る、例えば1017Hz、1018、1019、1020Hzを上回る、またはさらには1021Hzを上回る周波数を有しうる。いくつかの態様において、電磁放射線は、1018〜1022Hz、例えば、1019〜1021Hzの周波数を有する。
【0077】
線量
ある場合には、1秒当たり約0.25Mradを上回る、例えば、1秒当たり約0.5、0.75、1.0、1.5、2.0Mradを上回る、またはさらには約2.5Mradを上回る線量率で照射を行う。いくつかの態様においては、5.0〜1500.0krad/時、例えば10.0〜750.0krad/時、または50.0〜350.0krad/時の線量率で照射を行う。
【0078】
いくつかの態様においては、照射(任意の放射線源、または複数の線源の組み合わせによる)を、材料が少なくとも0.1Mrad、少なくとも0.25Mrad、例えば少なくとも1.0Mrad、少なくとも2.5Mrad、少なくとも5.0Mrad、少なくとも10.0Mrad、少なくとも60Mrad、または少なくとも100Mradの線量を受けるまで行う。いくつかの態様において、照射は、材料が約0.1Mrad〜約500Mrad、約0.5Mrad〜約200Mrad、約1Mrad〜約100Mrad、または約5Mrad〜約60Mradの線量を受けるまで行う。いくつかの態様においては、比較的低線量の、例えば60Mrad未満の放射線を適用する。
【0079】
熱分解、酸化、および化学的官能化
また、官能化を、他の手段、例えば熱分解および/または酸化によって達成することもできる。バイオマスの熱分解および酸化は、米国特許出願第12/417,840号に詳細に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。場合によっては、類似の方法を、本明細書に記載された基体材料とともに用いてもよい。
【0080】
無機材料の官能化のための方法は、当技術分野において周知である。そのような方法の例には、"Soluble Carbon Nanotubes," Tasis et al., Chem. Eur. J. 2003, 9, 4000-4008、および"Entrapping Enzyme in a Functionalized Nanoporous Support," J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 11242-11243に開示された手法が含まれ、これらの開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0081】
音波処理
場合によっては、例えば多孔度を高めるために、例えば米国特許出願第12/417,840号に記載された音波処理システムを用いて、材料を音波処理してもよく、それは参照により上記に組み入れられる。
【0082】
他のプロセス
官能化を、他の手法、例えば化学的官能化を用いて実現することもできる。場合によっては、例えば米国仮特許出願第61/147,377号に記載されたようなフェントン(Fenton)化学を利用してもよく、その開示内容はすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0083】
基体材料を利用するバイオプロセス
糖化
本明細書に記載された基体材料を用いて、糖化反応を増強することができる。糖化においては、供給原料、例えばバイオマス材料の中のセルロースが、糖化剤、例えば酵素によって、糖などの低分子糖質へと加水分解される。セルロースを含む材料を、例えば、材料および酵素を液体培地、例えば水性溶液の中で組み合わせることによって、酵素で処理する。
【0084】
この反応は、酵素または他の糖化剤を、本明細書に記載された基体材料上に固定化することによって、増強することができる。
【0085】
バイオマス、例えばバイオマスのセルロースおよび/またはリグニン部分を分解する、酵素およびバイオマス破壊生物は、さまざまなセルロース分解酵素(セルラーゼ)、リグニナーゼ、またはバイオマスを破壊するさまざまな低分子代謝物を含むか、または生成する。これらの酵素は、バイオマスの結晶性セルロースまたはリグニン部分を分解するように相乗的に作用する酵素の複合体であってもよい。セルロース分解酵素の例には、以下が含まれる:エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼおよびセロビアーゼ(β-グルコシダーゼ)。糖化の間に、セルロース系基質はまずエンドグルカナーゼによってランダムな位置で加水分解されて、オリゴマー中間体が生成される。これらの中間体は続いて、セロビオヒドロラーゼなどのエキソ開裂(exo-splitting)性グルカナーゼの基質となり、セルロースポリマーの末端からセロビオースが生成される。セロビオースは、グルコースの水溶性1,4-結合ダイマーである。最後に、セロビアーゼがセロビオースを切断してグルコースが生じる。
【0086】
セルラーゼはバイオマスを分解することができ、これは真菌由来または細菌由来であってよい。適した酵素には、バチルス属(Bacillus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、フミコラ属(Humicola)、フザリウム属(Fusarium)、チエラビア属(Thielavia)、アクレモニウム属(Acremonium)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)およびトリコデルマ属(Trichoderma)に由来するセルラーゼ、ならびにフミコラ属、コプリナス属(Coprinus)、チエラビア属、フザリウム属、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、アクレモニウム属、セファロスポリウム属(Cephalosporium)、シタリジウム属(Scytalidium)、ペニシリウム属(Penicillium)またはアスペルギルス属(Aspergillus)の種(例えば、EP 458162を参照)、特にフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)(シタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)として再分類されており、例えば、米国特許第4,435,307号を参照)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、メリピウス・ギガンテウス(Meripilus giganteus)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、アクレモニウム属種、アクレモニウム・ペルシシヌム(Acremonium persicinum)、アクレモニウム・アクレモニウム(Acremonium acremonium)、アクレモニウム・ブラキペニウム(Acremonium brachypenium)、アクレモニウム・ジクロモスポルム(Acremonium dichromosporum)、アクレモニウム・オブクラバツム(Acremonium obclavatum)、アクレモニウム・ピンケルトニエ(Acremonium pinkertoniae)、アクレモニウム・ロセオグリセウム(Acremonium roseogriseum)、アクレモニウム・インコロラツム(Acremonium incoloratum)およびアクレモニウム・フラツム(Acremonium furatum)の種から選択される菌株;好ましくは、フミコラ・インソレンスDSM 1800、フザリウム・オキシスポラムDSM 2672、ミセリオフトラ・サーモフィラCBS 117.65、セファロスポリウム属種RYM-202、アクレモニウム属種CBS 478.94、アクレモニウム属種CBS 265.95、アクレモニウム・ペルシシヌムCBS 169.65、アクレモニウム・アクレモニウムAHU 9519、セファロスポリウム属種CBS 535.71、アクレモニウム・ブラキペニウムCBS 866.73、アクレモニウム・ジクロモスポルムCBS 683.73、アクレモニウム・オブクラバツムCBS 311.74、アクレモニウム・ピンケルトニエCBS 157.70、アクレモニウム・ロセオグリセウムCBS 134.56、アクレモニウム・インコロラツムCBS 146.62、およびアクレモニウム・フラツムCBS 299.70Hの種に由来するセルラーゼが含まれる。また、セルロース分解酵素を、クリソスポリウム属、好ましくはクリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)の菌株から得ることもできる。さらに、トリコデルマ属(Trichoderma)(特にトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)およびトリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、好アルカリ性バチルス属(例えば、米国特許第3,844,890号およびEP 458162を参照)、およびストレプトミセス属(Streptomyces)(例えば、EP 458162を参照)を用いてもよい。
【0087】
適したセロビアーゼには、NOVOZYME 188(商標)という商標名で販売されている、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のセロビアーゼが含まれる。
【0088】
GenencorからACCELLERASE(登録商標)という商標名で入手しうるもの、例えば、Accellerase(登録商標)1500酵素複合体などの酵素複合体を利用することもできる。Accellerase 1500酵素複合体は、エキソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ(2200〜2800 CMC U/g)、ヘミ-セルラーゼおよびβ-グルコシダーゼ(525〜775 pNPG U/g)を主とする複数の酵素活性を含み、4.6〜5.0のpHを有する。この酵素複合体のエンドグルカナーゼ活性はカルボキシメチルセルロース活性単位(CMC U)で表わされ、一方、β-グルコシダーゼ活性はpNP-グルコシド活性単位(pNPG U)で報告される。1つの態様においては、Accellerase(登録商標)1500酵素複合体およびNOVOZYME(商標)188セロビアーゼの配合物を用いる。
【0089】
糖化プロセスは、製造プラント中のタンク(例えば、少なくとも4000、40,000または400,000Lの容積を有するタンク)内で部分的もしくは完全に行うこと、および/または輸送中に、例えば鉄道車両、タンクローリー、または超大型タンカーの中もしくは船の船倉内で、部分的もしくは完全に行うことができる。完全な糖化のために必要な時間は、プロセスの条件、ならびに用いる供給原料および酵素によって決まると考えられる。糖化を製造プラント中で制御された条件下で行う場合には、セルロースは約12〜96時間で実質的にすべてグルコースに変換されると考えられる。糖化を輸送中に部分的または完全に行わせる場合には、糖化にはより長い時間がかかる可能性がある。界面活性剤の添加により、糖化の速度を高めることができる。界面活性剤の例には、Tween(登録商標)20またはTween(登録商標)80ポリエチレングリコール界面活性剤などの非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤が含まれる。
【0090】
結果として得られるグルコース溶液の濃度は、比較的高いこと、例えば、40重量%を上回る、または50、60、70、80、90重量%を上回る、もしくはさらには95重量%を上回ることが一般に好ましい。このことは、搬送することになる容積を減らすとともに、溶液中での微生物増殖も阻害する。しかし、より低い濃度を用いてもよく、その場合には、抗菌性添加剤、例えば広域抗生物質を、低濃度で、例えば50〜150ppmで添加することが望ましいと考えられる。その他の適した抗生物質には、アムホテリシンB、アンピシリン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ピューロマイシン、ストレプトマイシンが含まれる。抗生物質は搬送中および保管中の微生物の増殖を阻害すると考えられ、適切な濃度、例えば、15〜1000重量ppm、例えば25〜500ppm、または50〜150ppmで用いることができる。所望であれば、糖濃度が比較的高い場合であっても抗生物質を含めることができる。
【0091】
比較的高濃度の溶液は、酵素を含む供給原料に添加する水の量を制限することによって得ることができる。濃度は、例えば、どの程度の糖化が起こるかを制御することによって、制御することができる。例えば、より多くの供給原料を溶液に添加することによって、濃度を上昇させることができる。溶液中で生成される糖を一定に保つためには、界面活性剤、例えば以上に考察したものの1つなどを添加するとよい。溶液の温度を上昇させることによって、溶解性を高めることもできる。例えば、溶液を40〜50℃、60〜80℃、またはさらにはより高い温度に維持することができる。
【0092】
発酵
微生物は、官能化された基体材料の存在下で低分子量糖を発酵させることにより、数多くの有用な中間体および生成物を生成することができる。例えば、発酵または他のバイオプロセスは、アルコール、有機酸、炭化水素、水素、タンパク質またはこれらの材料の任意のものの混合物を生成することができる。
【0093】
微生物は、天然の微生物であってもよく、または操作された微生物であってもよい。例えば、微生物は、セルロース分解細菌などの細菌、酵母などの真菌、藻類、原生動物もしくは真菌様原生生物、例えば粘菌類などの植物または原生生物であってよい。生物が共存できる場合には、これらの生物の混合物を利用することができる。
【0094】
適した発酵微生物は、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、オリゴ糖、または多糖などの糖質を発酵生成物に変換する能力を有する。発酵微生物には、サッカロミセス属種、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Sacchromyces cerevisiae)(パン酵母)、サッカロミセス・ディスタティクス(Saccharomyces distaticus)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum);クリベロミセス属(Kluyveromyces)、例えば、クリベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)種、クリベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)種;カンジダ属(Candida)、例えば、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)およびカンジダ・ブラシカ(Candida brassicae)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)(カンジダ・シャハタエ(Candida Shehatae)の類縁);クラビスポラ属(Clavispora)、例えば、クラビスポラ・ルシタニエ(Clavispora lusitaniae)種およびクラビスポラ・オプンティアエ(Clavispora opuntiae)種 パキソレン属(Pachysolen)、例えば、パキソレン・タンノフィルス(Pachysolen tannophilus)種、ブレタノミセス属(Bretannomyces)、例えば、ブレタノミセス・クラウセニイ(Bretannomyces clausenii)種の菌株が含まれる(Philippidis, G. P., 1996, Cellulose bioconversion technology, in Handbook on Bioethanol: Production and Utilization, Wyman, C.E., ed., Taylor & Francis, Washington, DC, 179-212)。
【0095】
市販されている酵母には、例えば、RedStar(登録商標)/Lesaffre Ethanol Red(Red Star/Lesaffre, USAから入手可能) FALI(登録商標)(Burns Philip Food Inc., USAの一部門であるFleischmann's Yeastから入手可能)、SUPERSTART(登録商標)(Alitech、現在のLalemandから入手可能)、GERT STRAND(登録商標)(Gert Strand AB, Swedenから入手可能)およびFERMOL(登録商標)(DSM Specialtiesから入手可能)が含まれる。
【0096】
ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)などの細菌を発酵に用いてもよい(Philippidis, 1996、前記)。
【0097】
酵母にとっての至適pHはpH 約4〜5であり、一方、ザイモモナス属にとっての至適pHはpH 約5〜6である。典型的な発酵時間は、26℃〜 40℃の範囲の温度で約24〜96時間であるが、好熱性微生物はより高温を好む。
【0098】
いくつかの態様において、低分子量糖が完全にエタノールに変換される前に、発酵プロセスのすべてまたは一部分を中断することができる。この中間体発酵生成物は、高濃度の糖および糖質を含む。これらの中間体発酵生成物を、ヒトまたは動物の消費用の食品の調製に用いることができる。追加的または代替的に、中間体発酵生成物をステンレス綱製の実験用ミルで細粒サイズに粉砕して、穀粉様(flour-like)物質を生成することもできる。
【0099】
現在は国際公開公報第2008/011598号となっている米国仮特許出願第60/832,735号に記載されているような、移動式発酵槽を利用することができる。
【0100】
後処理
蒸留
発酵の後に、結果として得られた流体を、例えば「ビールカラム(beer column)」を用いて蒸留して、エタノールおよび他のアルコールを、水および残留固体の大部分から分離することができる。ビールカラムから出る蒸気は、例えば、35重量%のエタノールである可能性があり、それを精留カラムに供給することができる。精留カラムからのほぼ共沸(92.5%)のエタノールおよび水の混合物を、気相分子篩を用いて純(99.5%)エタノールに精製することができる。ビールカラムの残留物を、三重効用蒸発缶の第1効用缶に送ることができる。精留カラムの還流冷却器は、この第1効用缶に熱を与えることができる。第1効用缶の後に、遠心機を用いて固体を分離して、回転乾燥機の中で乾燥させることができる。遠心排液の一部分(25%)を発酵に再利用し、残りは第2および第3効用蒸発缶に送ることができる。蒸発缶凝縮液のほとんどを、ほぼ透明な凝縮液としてプロセスに戻すことができ、ごく一部を、低沸点化合物の蓄積を防ぐために廃水処理用に分割する。
【0101】
中間体および生成物
本明細書に記載されたプロセスを用いて、1つまたは複数の中間体または生成物、例えばエネルギー、燃料、食品および材料などを生成することができる。生成物の具体的な例には、水素、アルコール(例えば、一価アルコールまたは二価アルコール、例えばエタノール、n-プロパノールまたはn-ブタノールなど)、例えば10%、20%、30%を上回る、またはさらには40%を上回る水分を含む水和または含水アルコール、キシリトール、糖、バイオディーゼル、有機酸(例えば、酢酸および/または乳酸)、炭化水素、副生成物(例えば、セルロース分解タンパク質(酵素)または単一の細胞タンパク質などのタンパク質)、およびこれらの任意のものの任意の組み合わせでのまたは相対濃度での、ならびに任意で燃料添加剤などの任意の添加剤との組み合わせでの混合物が非限定的に含まれる。他の例には、酢酸または酪酸などのカルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸とカルボン酸の塩との混合物、およびカルボン酸のエステル(例えば、メチル、エチルおよびn-プロピルエステル)、ケトン(例えば、アセトン)、アルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)、アクリル酸などのα、β不飽和酸、ならびにエチレンなどのオレフィンが含まれる。他のアルコールおよびアルコール誘導体には、プロパノール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、これらのアルコールの任意のもののメチルまたはエチルエステルが含まれる。他の生成物には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、これらの酸の任意のものの塩、ならびにこれらの酸および各々の塩の任意のものの混合物が含まれる。
【0102】
食品および医薬品を含む、その他の中間体および生成物は、米国特許出願第12/417,900号に記載されており、その開示内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0103】
その他の態様
本発明の数多くの態様を説明してきた。しかしながら、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、さまざまな変更を加えうることは了解されるであろう。
【0104】
例えば、繊維は任意の所望の形態であってよく、多種多様な形態構造を有しうる。一般に、繊維性材料は大きな表面積を有することが望ましい。場合によっては、繊維が単層シートまたは多層シートの中に組み込まれていてもよく、例えば、繊維がHEPAフィルターなどの一部であってもよい。シート材料は、例えば、約1〜500m2/gの表面積を有しうる。繊維性材料は、溶融吹込み成形される(meltblow)、折り畳まれるというように重ね合わされてもよく、スクリーンもしくはメッシュの形態であってもよく、または他の形状配置で提供されてもよい。繊維を押出し成形または共押出し成形してもよい。
【0105】
繊維は、ナノスケール、例えば約1000nm未満、例えば500nm、250nm、100nm、50nm、25nm未満、またはさらには1nm未満から、例えば100ミクロン、200ミクロン、500ミクロンもしくはさらには1000ミクロンを上回るような大きな粒径、または粒子の凝塊物までに至る、任意の所望の粒径であってよい。
【0106】
繊維もしくは繊維を含む繊維性材料を微生物および/もしくは酵素で前処理してもよく、ならびに/または繊維または繊維性材料を、糖化もしくは発酵などのバイオプロセスの間に、微生物および/もしくは酵素と接触させてもよい。
【0107】
無機および合成の基体材料を本明細書において考察してきたが、これらの材料を、他の基体材料、例えば2009年10月16日に提出された米国仮特許出願第61/252,293号に開示されたバイオマス基体などと組み合わせることもでき、その開示内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0108】
以上に考察したように、微生物の代わりに、またはそれに加えて繊維上に、酵素を固定化することができる。
【0109】
したがって、その他の態様は以下の特許請求の範囲内のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量糖を生成物に変換させるために、基体上に固定化された微生物を利用する段階
を含む方法。
【請求項2】
基体が無機繊維を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基体が合成材料を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
基体が官能化されている、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
固定化が、基体上の官能基と微生物上の官能基との間の相互作用の結果として起こる、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
基体が、アルデヒド基、ニトロソ基、ニトリル基、ニトロ基、ケトン基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、クロロフルオロアルキル基、およびエノール基からなる群より選択される官能基によって官能化されている、請求項4記載の方法。
【請求項7】
低分子量糖がアルコールに変換される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
微生物が酵母を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
酵母が、S. セレビシエ(S. cerevisiae)およびP. スティピティス(P. stipitis)からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
微生物が細菌を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
細菌がザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
低分子量糖が、スクロース、グルコース、キシロース、およびそれらの混合物からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
官能化された基体を生成させるために出発材料を照射する段階をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項14】
照射が電離放射線の照射を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
照射が粒子ビームを用いて行われる、請求項13記載の方法。
【請求項16】
基体が、100m2/gを上回るBET表面積を有する繊維または粒子を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
変換が発酵を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
基体が、炭酸カルシウム、アラゴナイトクレイ、斜方晶クレイ、方解石クレイ、菱面体クレイ、カオリン、ベントナイトクレイ、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、オルトリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、合成アパタイト、アルミナ、アルミナ水和物、シリカキセロゲル、アルミノケイ酸金属複合体(metal aluminosilicate complex)、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化ケイ素グラファイト、ケイ灰石、雲母、ガラス、繊維ガラス、シリカ、タルク、炭素繊維、導電性カーボンブラック、セラミック粉末およびセラミック繊維、アルミナ三水和物、粉砕建設廃棄物、粉砕タイヤゴム、リグニン、マレイン化ポリプロピレン、熱可塑性繊維、フッ素化ポリマー、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される材料を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
基体が、70%を上回る多孔度を有する繊維または粒子を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
繊維または粒子が90%を上回る多孔度を有する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
変換後に基体を回収する段階、および該基体を以後の第2の変換プロセスに再使用する段階をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
無機繊維が単層シートまたは多層シートの形態で提供される、請求項2記載の方法。
【請求項19】
無機繊維が、重ね合わされた、折り畳まれた繊維性材料の形態で、またはスクリーンもしくはメッシュの形態で提供される、請求項2記載の方法。
【請求項20】
無機繊維が押出し成形または共押出し成形されている、請求項2記載の方法。
【請求項21】
基体が、ナノスケールの平均粒径を有する粒子を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
極性官能基を有する粒子状材料、
相補的な誘引性官能基を有する微生物または酵素、および
液体培地
を含む混合物。
【請求項23】
官能基を有する繊維、および
該繊維上に固定化され、相補的な誘引性官能基を有する微生物または酵素
を含む組成物。
【請求項24】
セルロース系材料またはリグノセルロース系材料を糖化するために、繊維上または粒子上に固定化された糖化剤を利用する段階
を含む方法。
【請求項25】
糖化剤が酵素を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
粒子または繊維が無機材料を含む、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
粒子が合成材料を含む、請求項24〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
粒子または繊維が100m2/gを上回るBET表面積を有する、請求項24〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
粒子または繊維が、炭酸カルシウム、アラゴナイトクレイ、斜方晶クレイ、方解石クレイ、菱面体クレイ、カオリン、ベントナイトクレイ、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、オルトリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、合成アパタイト、アルミナ、アルミナ水和物、シリカキセロゲル、アルミノケイ酸金属複合体、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化ケイ素グラファイト、ケイ灰石、雲母、ガラス、繊維ガラス、シリカ、タルク、炭素繊維、導電性カーボンブラック、セラミック粉末およびセラミック繊維、アルミナ三水和物、粉砕建設廃棄物、粉砕タイヤゴム、リグニン、マレイン化ポリプロピレン、熱可塑性繊維、フッ素化ポリマー、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される材料を含む、請求項24〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
粒子または繊維が70%を上回る多孔度を有する、請求項24〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
粒子または繊維が90%を上回る多孔度を有する、請求項24〜30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
粒子または繊維が官能化されている、請求項24〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
固定化が、粒子上または繊維上の官能基と微生物上の官能基との間の相互作用に起因する、請求項24〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
粒子または繊維が、アルデヒド基、ニトロソ基、ニトリル基、ニトロ基、ケトン基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、クロロフルオロアルキル基およびエノール基からなる群より選択される官能基によって官能化されている、請求項33記載の方法。
【請求項35】
糖化後に粒子または繊維を回収する段階、および該粒子を以後の第2の糖化プロセスに再使用する段階をさらに含む、請求項24〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
無機繊維または無機粒子が単層シートまたは多層シートの形態で提供される、請求項26記載の方法。
【請求項37】
無機繊維または無機粒子が、重ね合わされた、折り畳まれた繊維性材料の形態で、またはスクリーンもしくはメッシュの形態で提供される、請求項26記載の方法。
【請求項38】
無機繊維または無機粒子が押出し成形または共押出し成形されている、請求項26記載の方法。
【請求項39】
粒子または繊維がナノスケールの平均粒径を有する、請求項24〜38のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【公表番号】特表2012−527242(P2012−527242A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511969(P2012−511969)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035302
【国際公開番号】WO2010/135356
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(509284598)キシレコ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】