説明

バイオポリウレタン樹脂を用いてなる合成擬革

【課題】植物由来の原材料を高い比率で使用した環境問題に対する対応策ともなるエコロジー素材でありながら、特に合成擬革材料として使用した場合に、製品が十分な耐久性を示すバイオポリウレタン樹脂を用いてなる合成擬革の提供。
【解決手段】芯部を構成する基布と表皮層とからなり、少なくとも表皮層が、植物由来の短鎖ジオール(a)と、石油由来のカーボネート成分(b)又は植物由来のカルボン酸成分(c)とから合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)又はバイオポリエステルポリオール(B)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)からなるバイオポリエーテルポリオール(C)のいずれかと、イソシアネート成分(d)を反応させてなるバイオポリウレタン樹脂であって、かつ、該バイオポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が28〜95質量%であるバイオポリウレタン樹脂を用いて形成されている合成擬革。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しいバイオポリウレタン樹脂を用いてなる合成擬革に関する。さらに詳しくは、地球温暖化対策や環境負荷低減を目的としたカーボンニュートラルに大きく貢献する、植物由来の原料利用率(含有量)の高いバイオポリウレタン樹脂を用いた合成擬革に関する。特に、車輛シートとして有用な合成擬革に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、枯渇性資源でない産業資源として「バイオマス」が注目されているが、かかる観点からの「バイオマス」の定義は、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」とされている。従来から、木綿、ウール、でんぷん、天然ゴムなどの天然系やその誘導体は、古典的なバイオマスポリマーとして使用されてきている。また、環境保全を目的に、1980年代から、バイオマスを原材料とする、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカン酸などの生分解性を重視するバイオマスポリマーの開発が盛んに行われてきている。その後、バイオマスである、1,3−プロパンジオール、コハク酸、キチン・キトサンをベースに、石油系モノマーを反応させてバイオマスポリマー(バイオベースポリマー)に転換させることについての開発が行われてきている。これらのバイオベースポリマーは、地球環境温暖化防止策として、多種多様な製品の素材として期待されており、応用分野も多岐にわたり、あらゆる産業分野への展開が期待されている。そして、一部では実用化もされている。しかしながら、バイオマスポリマーは、用途によっては、従来の石油系のポリマーと比較して素材としての物性面が十分であると言い難く、これを用いた製品の開発は容易ではない。
【0003】
ここで、ポリウレタン系樹脂は、耐磨耗性、屈曲性、可撓性、柔軟性、加工性、接着性、耐薬品性などの諸物性に優れ、かつ、各種加工法への適性にも優れるため、合成擬革(人工皮革と合成皮革の総称)用材料、各種コーティング剤、インキ、塗料等のバインダーとして、或いはフィルム、シート及び各種成型物用材料として広く使用されている。そして、これら種々の用途に適したポリウレタン系樹脂が提案されている。なお、本発明で言う「ポリウレタン系樹脂」とは、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン−ポリウレア樹脂の総称である。ポリウレタン系樹脂は、基本的には高分子量ポリオール成分、有機ポリイソシアネート成分、さらには必要に応じて鎖伸長剤成分を反応させて得られるものであり、これらの各成分の種類、組み合わせを変化させることによって、種々の性能を有するポリウレタン系樹脂の提供を可能としている。このような広範な用途を持つポリウレタン系樹脂において、前記したバイオマスポリマーが利用できれば非常に有用である。
【0004】
その広範な用途の中でも、特にポリウレタン樹脂を使用した合成擬革は、天然皮革に近い風合いを得ることができることから、衣料用途や家具、車輛内装材などの高級感を求められる分野に多く使用されている。近年、環境保護の観点から、新たにエコロジーを考慮した合成擬革のシステム開発が強く求められている。その理由は、下記に述べるように、従来の合成擬革を製造する原材料の殆どが石油由来の原材料で構成され、有機溶剤に溶解したポリウレタン系樹脂溶液として利用されている点にあった。
【0005】
ポリウレタン系樹脂を用いた合成擬革は、その一例を挙げると、以下の主工程を経て、湿式法などによって製造されている。まず、繊維質基材層上に、ポリウレタン系樹脂のN,N−ジメチルホルムアミドを主体とした有機溶剤の溶液を塗布し、水中で凝固させてミクロポーラス層を形成させる。次いで、このミクロポーラス層上に、各種有機溶剤に溶解したポリウレタン系樹脂溶液を、グラビアなどの塗布機でダイレクトコートし、乾燥させて表皮層(銀面層)を形成させるか、或いは、ポリウレタン系樹脂溶液を離型紙上に塗布し、乾燥して形成される表皮層皮膜面に接着剤層を形成し、これらの層を基材表面に転写する方法がある(非特許文献1参照)。これに対し、環境問題、安全衛生、消防対策の観点から、揮発性有機化合物(VOC)対策に有効な、有機溶剤を使用しないポリウレタン系樹脂水系分散体の必要性が高まっており、水系媒体に分散又は乳化可能なポリウレタン系樹脂を用いた合成擬革についての提案がある(特許文献1、2参照)。
【0006】
しかし、ポリウレタン系樹脂は、原材料調達、素材製造、使用、ゴミとして焼却するライフサイクルが大半であり、この点からもエコロジーを考慮した改善が求められている。すなわち、ゴミ処理の焼却によって発生する、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)等の温室効果ガス発生における地球温暖化や、石油資源の枯渇などは、社会問題となっている。これらの温室効果ガスは、地表から熱が宇宙空間に逃げる作用を妨げる働きがあり、温室効果ガスの増加に伴って生じる、地球全体の海面の上昇や、温度上昇による生態系や農林業への影響が指摘されている。さらに、原材料調達、素材製造、使用、廃棄までのライフサイクルにおいて、少なくとも、従来の石油由来の原材料を使用し続ける状態は、環境に配慮したものとは言えない。
【0007】
一方、植物由来の原材料は、植物が生育する際にCO2を吸収するために、例え焼却された場合でもCO2発生はゼロとカウントすることができ、植物由来の原材料は、地球温暖化対策に貢献できるという考えがある。しかし、例えば、従来から知られている植物由来のポリ乳酸は、土壌微生物分解によって廃棄物削減に貢献できるとの立場から用途の拡大が推進されてきたが、その耐久性が低いために、限定された部位にしか使用できないという実用上の課題がある。
【0008】
前記したように、ポリウレタン系樹脂は、諸物性に優れ、かつ、各種加工法への適性にも優れるため、合成擬革用材料の特に表皮層への適応がなされているが、これを植物由来の原材料を用いたポリウレタン系樹脂に代替する場合は、その素材は、植物由来の原料利用率(含有量)が高いものであることは勿論、下記の要求を満足することが必要となる。すなわち、合成擬革は、例えば、自動車関連、家具用関連などに使用する素材として用いられるため、その表皮層は、耐久性を必要とすると同時に、さらに、繊維質基材層(基材或いは基布と言う)との、接着性、柔軟性、耐水性が求められる。合成擬革用材料としてのポリウレタン系樹脂にあっては、種々の検討もなされているが(例えば、特許文献3参照)、人間の皮脂に対する耐油性、耐磨耗性、耐久性(耐候性、耐加水分解性、耐熱性など)などの要求性能を完全には満足できておらず、さらなる改良が求められている。また、前記したような事情から、一般的に、より地球環境に配慮した素材の提供が求められている。
【0009】
地球環境に配慮した素材として近年開発が進められているバイオポリマーの一つとして、石油から誘導したポリオールの少なくとも一部を植物由来のヒドロキシレートで置き換えた、再生可能な成分で製造されたポリウレタン発泡体が提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、化石燃料ポリオールと植物由来の高級脂肪酸とを縮合反応させてなる植物由来のポリオール、又は、該植物由来のポリオールとイソシアネートとを反応させて末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネートプレポリマーを原料として用いた軟質ポリウレタン発泡体についての提案がある(特許文献5参照)。これらの文献は、ウレタン樹脂の製造原料の一部として植物由来の原料を用いることができることを提案しているが、未だ十分なものとは言い難く、諸物性に優れたポリウレタン系樹脂を得、実用化が可能な技術とするためには、詳細に検討していく必要があることを示している。特に、前記した耐久性や風合いなどの種々の性能が求められる合成擬革の素材は、従来のポリウレタン系樹脂を用いた場合にあっても、未だ解決すべき課題があり、合成擬革の素材にバイオポリウレタン系樹脂を適用し、実用化するには、さらに詳細な検討が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】岩田 敬治 編、ポリウレタン樹脂ハンドブック、第571〜599頁、15.ポリウレタン皮革(昭和62年9月25日、日刊工業新聞社発行)
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3096230号公報
【特許文献2】特許第4149882号公報
【特許文献3】特開平5−5280号公報
【特許文献4】特開2006−291205号公報
【特許文献5】特開2009−167255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
合成擬革に使用されるポリウレタン系樹脂は、環境問題に対する対策対応については、先に述べたVOC対策が限度であり、CO2問題をも視野に入れた環境問題までは考慮されていないのが現状である。一方で、製品の用途にもよるが、一般的に、合成擬革に要求される諸物性としては、以下のことが要求される。すなわち、先ず、耐久物性としては、耐加水分解性、耐光性、耐熱性、耐ガス変色性、耐黴性、耐オレイン酸性(人間の汗成分)などが要求される。さらに、合成擬革としての諸物性としては、天然皮革様の外観、ソフトな風合い、高強度、耐磨耗性、耐寒屈曲、表面タッチ、耐ブロッキング、基材への接着性などが同時に要求される。
【0013】
本発明は、以上のような従来型技術における種々の問題に鑑みてなされたものである。その目的は、植物由来の原材料が高い比率で使用されてなるバイオポリウレタン樹脂を用いた、環境問題に対する有効な対応策になり得るエコロジー素材によって形成された合成擬革であって、しかも、耐久性などの各種性能を十分に満足した、衣料用途や家具、車輛内装材などの高級感を求められる分野の製品として十分に使用可能な合成擬革を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、芯部を構成する基布と表皮層とからなる合成擬革において、少なくとも表皮層が、植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、石油由来のカーボネート成分(b)又は植物由来のカルボン酸成分(c)とから合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)又はバイオポリエステルポリオール(B)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)からなるバイオポリエーテルポリオール(C)のいずれかのポリオールと、イソシアネート成分(d)を反応させてなるバイオポリウレタン樹脂であって、かつ、該バイオポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が28〜95質量%であるバイオポリウレタン樹脂を用いて形成されていることを特徴とする合成擬革である。
【0015】
本発明の好ましい形態は、下記のものが挙げられる。
前記基布が、樹脂を含浸させた織布、樹脂を含浸させた不織布、又は、繊維質基材に樹脂のミクロポーラス層を形成させたもののいずれかであって、かつ、これらの樹脂が前記バイオポリウレタン樹脂である合成擬革。
前記バイオポリウレタン樹脂が、さらに、必要に応じて植物由来の短鎖ジオール成分(a)や石油由来のジオール成分および/またはジアミン成分(e)を反応成分として含む上記合成擬革。
前記バイオポリウレタン樹脂が、前記(a)、(A)、(B)、(C)および(e)の各成分の合計の全活性水素含有基と、前記(d)成分のイソシアネート基とを、0.9〜1.5の当量比で反応させて得られたものである上記合成擬革。
前記短鎖ジオール成分(a)が、植物由来の、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種である上記の合成擬革。
前記カルボン酸成分(c)が、植物由来のひまし油誘導体からなるセバシン酸および/または植物由来のコハク酸である上記の合成擬革。
前記カーボネート成分(b)が、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびジフェニルカーボネートから選ばれる上記の合成擬革。
前記イソシアネート成分(d)が、植物由来成分の誘導体からなるジイソシアネート成分、植物由来のダイマー酸ジイソシアネート成分、アミノ酸由来のポリイソシアネート成分、および、石油由来のジイソシアネート成分からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記の合成擬革。
前記バイオポリウレタン樹脂の合成の際、或いは該バイオポリウレタン樹脂を用いて合成擬革を形成する際に有機溶剤が用いられており、該有機溶剤が、それぞれ植物由来の、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチルおよび乳酸ブチルから選ばれる少なくとも1種である上記の合成擬革。
車輛シート用である上記いずれかに記載の合成擬革。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、植物由来の原材料が高い比率で使用されてなるバイオポリウレタン樹脂(以下、バイオウレタン樹脂とも呼ぶ)を用いた、環境問題に対して有効な対応策になり得るエコロジー素材によって形成された合成擬革であって、しかも、耐久性や風合いなどの各種性能を十分に満足した、衣料用途や家具、車輛内装材などの高級感を求められる分野の製品として十分に使用可能な合成擬革が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の合成擬革は、芯部を構成する基布と表皮層とからなる合成擬革において、少なくとも表皮層が、さらに、必要に応じて基布が、本発明を特徴づける特定のバイオウレタン樹脂によって形成されてなる。本発明を特徴づける特定のバイオウレタン樹脂については後述する。本発明の合成擬革材料は、特定のバイオウレタン樹脂を用いること以外は、一般的な合成擬革形成用塗料を用い、従来公知の方法で製造することができ、製造方法自体は特に限定されない。また、本発明の合成擬革に用いる芯部を構成する基布は、従来公知の合成擬革製造に使用されている基布がいずれも使用でき、合成擬革の使用目的に最適な基布を選定すればよく、特に限定されない。例えば、ポリウレタン樹脂を含浸させた織布や不織布、前記方法で繊維質基材にポリウレタン樹脂のミクロポーラス層を形成させたものなどが挙げられる。この場合に使用されるポリウレタン樹脂に、後述する特定のバイオウレタン樹脂を使用することも本発明の好ましい形態である。
【0018】
本発明を特徴づける特定のバイオウレタン樹脂を用いて合成擬革の表皮層を形成するに際しては、バイオウレタン樹脂を含む表皮層形成用塗料を、従来公知の方法によって上記基布に塗布することができ、特に限定されない。例えば、グラビアコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーターなどで基布上に表皮層形成用塗料をダイレクト塗布する造面法、離型紙を使用して表皮層形成用塗料から造膜し、ホットメルト、あるいは2液バイオウレタン樹脂を使用し、基布上に熱転写する方法などが挙げられる。また、でき上がった本発明の合成擬革に、表面の意匠性を高めるために、表面処理剤の塗布やエンボス加工も可能である。
【0019】
本発明の合成擬革を製造する具体的な方法としては、下記のような方法が挙げられる。
(1)基材層上に、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載)を主体とした有機溶剤中で、後述するようにして合成した高分子量タイプの特定のバイオウレタン系樹脂の溶液(塗料)を塗布し、塗布層を水中で凝固させて厚み200〜2,000μmのミクロポーラス層を形成させる。これを乾燥させた後、次いで、形成した上記ミクロポーラス層上に、上記のバイオウレタン樹脂塗料を、グラビアなどの塗布機でダイレクトコートし、乾燥させて、厚み100〜1,500μmの表皮層(銀面層)を形成させる方法(最終的にDMFは回収されるシステム)。
(2)上記バイオウレタン樹脂塗料を離型紙上に塗布し、乾燥して形成される厚み20〜100μmの表皮層上に、適宜な接着剤を塗布して厚み20〜100μmの接着剤層を形成し、これをウエットラミネートまたはドライラミネートの条件に合わせて、所望の基材に転写する方法。
【0020】
本発明の合成擬革の基材としては、従来公知の合成擬革の基材がいずれも使用できる。例えば、綾織り、平織りなどからなる綿生地を機械的に起毛して得られる起毛布、レーヨン布、ナイロン布、ポリエステル布、ケブラー布、不織布(天然由来のポリマー、バイオポリマー、ポリエステル、ナイロン、各種ラテックス)、各種フィルム・シートなどが挙げられる。
【0021】
また、前記した(2)の方法で本発明の合成擬革を製造する場合に、接着剤層に、本発明を特徴づける特定のバイオウレタン系樹脂を用い、さらに架橋する構成とすることができる。ウレタン基を利用する架橋方法としては、例えば、ポリイソシアネート架橋剤による架橋が挙げられるが、ポリイソシアネート架橋剤としては、従来から使用されている公知のものが使用でき、特に限定されない。例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート架橋剤は、適量であれば接着強度の向上に特に有効であるが、使用量が多過ぎると、製造した合成擬革の風合いが硬過ぎたり、未反応イソシアネートが残留するので、好ましくない。ポリイソシアネート架橋剤の使用量は、特定のバイオポリウレタン系樹脂100質量部に対して100質量部以下、好ましくは、2〜50質量部の範囲内とすることが好ましい。
【0022】
本発明の合成擬革は、植物由来の成分を高い比率で使用されてなるバイオポリウレタン樹脂を用いたことを特徴とするが、以下、この特有のバイオポリウレタン樹脂について説明する。すなわち、本発明で使用するバイオポリウレタン樹脂は、植物由来の成分として、少なくとも植物由来からなる短鎖ジオール成分を用いることで得られる、植物由来のポリカーボネートポリオール、植物由来の短鎖ジオール成分と植物由来のカルボン酸成分を用いることで得られる、植物由来のポリエステルポリオール、或いは、植物由来の短鎖ジオール成分を用いることで得られる、植物由来のポリエーテルポリオールのいずれかのポリオール成分と、植物由来のイソシアネートを用いることもできるポリイソシアネート成分とを主成分としてなることを特徴とする。ここで「ポリウレタン」とはポリウレタンおよびポリウレタン−ポリウレアの総称である。したがって、必要に応じてジアミン成分が用いられる。また、本発明における「活性水素含有基」とは、イソシアネート基と反応性の、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基などの活性水素を有する官能基を意味する。
【0023】
本発明で用いるバイオウレタン樹脂は、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート又は植物由来のイソシアネートと、活性水素含有基として、植物由来の短鎖ジオールと、植物由来のポリオール成分が、ポリウレタンブロックおよび/またはポリウレアブロックの少なくとも一種との反復体からなり、そして上記ポリウレタンブロックおよび/またはポリウレアブロックを共重合することによって得られる。
【0024】
そして、上記バイオウレタン樹脂を用いて、脂肪族、芳香族、又は、脂環式ジイソシアネートと、植物由来成分を含んでなる活性水素含有基とを反応してなる、上記多ブロック縮合体に基づく合成擬革組成物とすればよい。例えば、多ブロック縮合体の分子鎖は、植物由来からなる短鎖ジオール成分0〜30質量%と、植物由来からなるポリオール成分10〜100質量%と、必要に応じて石油由来のジオール成分および/またはジアミン成分(e)と、ポリウレタンブロックおよび/またはポリウレアブロックの少なくとも一種との反復体からなり、そして、上記バイオポリウレタンブロックおよび/またはバイオポリウレアブロックから構成され、植物由来成分を28〜95質量%の範囲で含有する。その重量平均分子量は、2,000〜500,000程度のものが好ましい。このような構成の合成擬革組成物によって得られる合成擬革は、耐加水分解性、耐光性、耐熱性、風合い、接着強度、耐寒屈曲、耐磨耗性に優れたものになる。
【0025】
本発明に用いるバイオウレタン樹脂の形態は、有機溶剤系、水系、100%ソリッド、ペレット、ビーズなどのいずれのものでもよいが、樹脂の形成に植物由来の成分を用いているため、下記に述べるように、いずれの場合も環境に配慮した素材となる。例えば、有機溶剤系のバイオウレタン樹脂は、植物由来からなる短鎖ジオール成分(例えば、1,3−プロパンジオール成分や1,4−ブタンジオールやエチレングリコール)および/または植物由来からなるポリオール成分を含有してなるため、CO2排出量の削減に寄与し得る樹脂となる。また、下記に述べるように、バイオウレタン樹脂の合成或いは該樹脂を使用して合成擬革を製造する場合に使用する有機溶剤として、その一部に植物由来のもの(エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなど)を用いれば、樹脂の形成成分だけでなく、溶剤成分についてもCO2排出量の削減に配慮した素材或いは合成擬革製品となる。他方、バイオウレタン樹脂の形態が、水系、100%ソリッド、ペレットおよびビーズである場合は、VOC(揮発性有機化合物)対策の観点からは、さらに地球環境に配慮した素材或いは合成擬革製品となる。
【0026】
本発明の合成擬革を構成するバイオウレタン樹脂も、焼却した場合にCO2を発生する。しかし、本発明で用いるバイオウレタンの原料の一部は、トウモロコシやヒマ(トウゴマの種子)などの植物から得られる植物由来の短鎖ジオールやポリオールである。これらの原料植物は、その育成過程において、水を与え、光合成を行うことで大気中のCO2を吸収する。本発明では、これらの植物由来の成分と、有機イソシアネートと反応させることで、バイオポリウレタン樹脂としているが、その際、高い比率で植物由来の成分を使用しているので、焼却によって排出される二酸化炭素と、植物の育成過程で吸収される二酸化炭素が同じ量とはならないまでも、いわゆるカーボンニュートラルの考えに沿ったものとなっている。
【0027】
上記のカーボンニュートラルの考え方から、バイオウレタン樹脂の合成或いは該樹脂を用いて合成擬革使用する場合における有機溶剤の一部にも、先に挙げたような植物由来の溶剤を使用することが好ましい。すなわち、バイオウレタン樹脂含有塗料を塗布乾燥して合成擬革を製造する際に、蒸発した有機溶剤を回収して焼却処理するとCO2を発生するが、上記の考え方にたてば、その一部にでも植物由来の有機溶剤を使用する形態とすることで、石油由来の有機溶剤を用いた場合に比べるとCO2排出量の削減に寄与し得るものになる。
【0028】
次に、本発明に用いるバイオウレタン樹脂を構成する各成分について、さらに詳しく説明する。本発明で用いるバイオウレタン樹脂は、植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、石油由来のカーボネート成分(b)又は植物由来のカルボン酸成分(c)とから合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)又はバイオポリエステルポリオール(B)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)からなるバイオポリエーテルポリオール(C)の、いずれかのポリオールと、ポリイソシアネート成分(d)とを反応して得られる。さらに、必要に応じて石油由来のジオール成分および/またはジアミン成分(e)を反応成分として含んでもよい。
【0029】
本発明に用いるバイオウレタン樹脂は、その製造にあたり、ポリオール(A)、(B)および(C)のいずれかを用いるが、上記した通り、これらのポリオールは、いずれも植物由来の短鎖ジオール(a)を原料としており、植物由来の成分を含んでなる。植物由来の短鎖ジオール成分(a)としては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールなどがあるが、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
【0030】
1,3−プロパンジオール(HOCH2CH2CH2OH)は、植物資源(例えば、トウモロコシ)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3−ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3−プロパンジオール化合物は、EO製造法の1,3−プロパンジオール化合物と比較し、安全性面から乳酸など有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であり、この点でも有用である。
【0031】
1,4−ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得、これを水添することによってバイオマス1,4−ブタンジオールが製造できる。さらに、上記エチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造される。
【0032】
バイオポリカーボネートポリオールであるポリオール(A)は、上記した植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、石油由来のカーボネート(b)成分とを合成することにより生成される。上記カーボネート(b)としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
バイオポリエステルポリオールであるポリオール(B)は、上記した短鎖ジオール(a)と共に、植物由来のカルボン酸成分(c)を原料として得られる。前記カルボン酸成分(c)としては、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸などが挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油(トウゴマの種子より抽出)から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。
【0034】
上記ポリオールBは、これらの植物由来のカルボン酸成分(c)と、上述した植物由来の短鎖ジオール成分(a)と縮合反応することによって、100%植物由来のバイオポリエステルポリオールとして生成される。このため、本発明のバイオウレタン樹脂の原料として好適である。例えば、植物由来のセバシン酸と植物由来の1,3−プロパンジオールとを直接脱水縮合して得られるポリトリメチレンセバセートポリオール、植物由来のコハク酸と植物由来の1,4−ブタンジオールとを直接脱水縮合して得られるポリブチレンサクシネートポリオール、また植物由来のポリ乳酸ポリオールなどのバイオポリエステルポリオールが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。本発明者らの検討によれば、前記したセバシン酸と、前記した植物由来の短鎖ジオールとによって得られる全ての植物由来のバイオポリエステルポリオールは、特にウレタン樹脂原料として有用である。
【0035】
本発明で使用するバイオウレタン樹脂には、上記ポリオールAおよびBと共に、植物由来のポリエーテルポリオールCを、ポリオールとして併用することができる。ポリエーテルポリオールを併用することにより、バイオポリウレタン樹脂中の植物由来成分の割合を増やすことができる。ポリエーテルポリオールとしては、植物由来のエチレングリコールを重合してなるポリエチレングリコール、植物由来の1,4−ブタンジオールを重合してなるポリテトラメチレングリコール(=ポリテトラメチレングリコールエーテルポリオール)、または、それぞれ植物由来であるエチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールの(ブロックまたはランダム)共重合体などが挙げられる。例えば、植物由来の1,3−プロパンジオールは、酸触媒によって重縮合することができる。また、植物由来の1,4−ブタンジオールからテトラヒドロフランを合成し、さらにこれをカチオン重合することによって重縮合することもできる。これらのポリエーテルポリオールは、単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
上述したポリオールA、ポリオールBおよびポリオールCの重量平均分子量は特に限定されないが、通常数平均分子量は500〜3,000程度である。3,000を超えるとウレタン結合の凝集力が発現せず機械物性が低下したり、結晶性ポリオールにおいては皮膜化にした際に白化現象を引き起こす場合があるので、好ましくない。また、これらのポリオールは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
また、本発明で使用するバイオウレタン樹脂の合成には、さらに反応成分として、上記したポリオールA、ポリオールBおよびポリオールCのいずれかと共に、必要に応じて、先に説明した植物由来の短鎖ジオール成分(a)或いは石油由来のジオール成分および/またはジアミン成分(e)を用いることができる。上記の石油由来のジオール成分としては、下記に挙げるような石油由来の短鎖ポリオール成分等を用いることができる。例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);ビスフェノールA、チオビスフェノール、スルホンビスフェノールなどのビスフェノール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);C1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン類などの化合物が使用できる。また、石油由来の短鎖ポリオール成分としては、上記に限らず、下記に挙げるような多価アルコール系化合物を用いることもできる。例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、本発明の効果の範囲内であれば、その他、石油由来のポリエステルポリオールを、ポリオールA、ポリオールBおよびポリオールCと共に用いて得られるバイオウレタン樹脂を用いることが可能である。石油由来のポリエステルポリオールとは、例えば、石油由来の脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)と石油由来の低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものが挙げられる。より具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリラクトンポリオール、ポリカプロラクトンジオールまたはトリオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
また、低分子量グリコール類として石油由来の原材料を使用することもでき、また、石油由来のポリカーボネートポリオール(例えば、ポリテトラメチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート)なども併用できる。
【0040】
さらに、本発明の効果の範囲内であれば、本発明に用いるバイオウレタン樹脂の合成に、石油由来のジアミン成分(e)等のポリアミンを使用することも可能である。石油由来のポリアミンとしては、短鎖ジアミン、脂肪族系、芳香族系ジアミン類、ヒドラジン類などが挙げられる。上記短鎖ジアミンとしては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物;フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物;シクロペンタジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などが挙げられる。また、ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類が挙げられる。その他、アミノ変性シロキサンなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。上記に挙げたポリオールおよびポリアミンの中でも、ジオール化合物、ジアミン化合物が好ましい。
【0041】
その他、必要に応じて石油由来のポリオレフィンポリオールを使用することもできる。例えば、ポリブタジエングリコール、シロキサン変性ポリオール、ポリイソプレングリコールまたは、その水素化物など、が挙げられる。また、石油由来のポリメタクリレートジオールとしては、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオール、α,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
【0042】
本発明に用いるバイオウレタン樹脂に使用するイソシアネート(d)としては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているポリイソシアネートをいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、好ましいものとして、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0043】
また、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、あるいは、これらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られる、ポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。また、植物由来成分の誘導体からなるジイソシアネート成分や、植物由来のダイマー酸ジイソシアネート成分、アミノ酸由来のポリイソシアネート成分(リジンジイソシアネートなど)を使用することもできる。これらの植物由来の成分を使用すれば、さらに本発明で使用するバイオウレタン樹脂を形成している植物由来成分の比率を高めることができる。
【0044】
上記の原料を用いて得られるバイオウレタン樹脂は、その製造方法については特に限定されず、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いることができる。例えば、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下、または不存在下に、短鎖ジオール成分(a)として植物由来の1,3−プロパンジオール化合物と、植物由来のカルボン酸成分(c)からなるバイオポリエステルポリオール(B)と、ポリイソシアネート(d)と、必要に応じて低分子ジアミンを鎖伸長剤とし、イソシアネート基と活性水素含有官能基との当量比が、通常、1.0となる配合で、ワンショット法、または多段法により、通常、20〜150℃、好ましくは60〜110℃で、理論イソシアネート%となるまで反応し、イソシアネート基がほとんどなくなるまで反応させて、バイオウレタン樹脂を得ることができる。
【0045】
本発明で用いるバイオウレタン系樹脂の合成においては、必要に応じて触媒を使用できる。触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn−ブチルチタネートなどの金属と有機および無機酸の塩、および有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。
【0046】
また、本発明で用いるバイオウレタン樹脂の合成は、無溶剤で合成しても、必要であれば有機溶剤を用いて合成してもよい。この場合に使用する好ましい有機溶剤としては、イソシアネート基に不活性であるか、または反応成分よりも低活性なものが挙げられる。例えば、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、芳香族系炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、スワゾール(コスモ石油株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)、ソルベッソ(エクソン化学株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)など)、脂肪族系炭化水素溶剤(n−ヘキサンなど)、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル系溶剤(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル系溶剤(エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなど)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ラクタム系溶剤(n−メチル−2−ピロリドンなど)が挙げられる。特に、合成の際に用いる有機溶剤の一部に、植物由来のもの(エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなど)を用いることが好ましい。先に述べたように、このようにすれば、合成したバイオウレタン樹脂を含有する塗料を塗布乾燥して合成擬革を製造する工程で、蒸発した有機溶剤を回収して焼却処理する場合においてもCO2排出量の削減に寄与し得ることになる。
【0047】
なお、上記バイオウレタン樹脂の合成工程においては、ポリマー末端にイソシアネート基が残った場合、イソシアネート末端の停止反応を加えてもよい。例えば、モノアルコールやモノアミンのように単官能性の化合物ばかりでなく、イソシアネートに対して異なる反応性をもつ2種の官能基を有するような化合物であっても使用することができる。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどのモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどが挙げられ、このなかでもアルカノールアミン類が反応制御しやすいという点で好ましい。
【0048】
上記バイオウレタン系樹脂の製造に当たり、必要に応じて添加剤を加えてもよい。例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、加水分解防止剤(カルボジイミドなど)金属不活性剤(ヒドラジン系など)やこれら2種類以上の併用が挙げられる。さらに、意匠性付与剤(有機微粒子、無機微粒子)、有機顔料、無機顔料、防黴剤、難燃剤やその他の添加剤を適宜使用することができる。上記の有機微粒子および無機微粒子としては、例えば、シリカ、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、シリコーン変性ウレタン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、反応性シロキサンなどを含み得る。
【0049】
本発明で使用するバイオウレタン樹脂を製造する場合、合成に用いる各成分の配合を下記のようにすることが好ましい。植物由来からなるポリオール成分である、バイオポリカーボネートポリオール(A)、バイオポリエステルポリオール(B)およびバイオポリエーテルポリオール(C)のいずれかを10〜100質量%とし、必要に応じて使用する、植物由来からなる短鎖ジオール成分(a)および必要に応じて使用する、石油由来のジオール成分および/またはジアミン成分(e)を0〜30質量%とし(但し、これらの反応成分の合計量は100質量%である。)、これらの割合で使用する。そして、これらの反応成分と、ポリイソシアネート化合物(d)とを、これらの反応成分中の全活性水素とイソシアネート基とがほぼ等モル(0.9〜1.5)となるように反応させるとよい。
【0050】
本発明では、植物由来成分の含有量が、28質量%以上95質量%以下、好ましくは39質量%以上95質量%以下となるように構成されたバイオウレタン樹脂を用いる必要がある。植物由来成分の含有量が多いほど、本発明の特徴であるカーボンニュートラルを実現することができるからである。本発明の合成擬革に用いるバイオウレタン系樹脂の分子量は、重量平均分子量(GPCで測定。標準ポリスチレン換算。)が2,000〜500,000の範囲が好ましい。
【実施例】
【0051】
以下に、中間体の合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の文中の「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0052】
<ポリオールの合成>
[ポリエステルポリオール合成例PES1]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、セバシン酸(ひまし油由来)1,500部と、1,3−プロパンジオール(植物由来)645部とを仕込み、窒素雰囲気下において、130℃まで加熱して溶解させた。その後、テトラブトキシチタン0.21部を添加し、230℃まで昇温して、発生する水を溜出させながら反応させ、水の溜出がほとんどなくなるまで反応させた。減圧して水をさらに溜去させながら酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで加熱減圧を続けた。このようにして、水酸基価が56.5mgKOH/g、酸価が0.3mgKOH/gの、100%植物由来ポリエステルポリオールPES1[植物由来成分含有量(以下、BPと表記)=100%]を得た。表1に、合成原料および得られたポリオールの性状を示した。
【0053】
[ポリエステルポリオール合成例PES2]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、セバシン酸(ひまし油由来)1,333部と、1,3−プロパンジオール(植物由来)547部とを仕込み、窒素雰囲気下において、130℃まで加熱して溶解させた。その後、テトラブトキシチタン0.19部を添加し、230℃まで昇温して発生する水を溜出させながら反応させ、水の溜出がほとんどなくなるまで反応させた。減圧して水をさらに溜去させながら酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで加熱減圧を続けた。このようにして、水酸基価が36.2mgKOH/g、酸価が0.3mgKOH/gの100%植物由来ポリエステルポリオールPES2(BP=100%)を得た。表1に、合成原料および得られたポリオールの性状を示した。
【0054】
[ポリエステルポリオール合成例PES3]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、セバシン酸(ひまし油由来)750部と、コハク酸(植物由来)750部と、1,3−プロパンジオール(植物由来)855部とを仕込み、窒素雰囲気下において、130℃まで加熱して溶解させた。その後、テトラブトキシチタン0.23部を添加し、230℃まで昇温して発生する水を溜出させながら反応させ、水の溜出がほとんどなくなるまで反応させた。減圧して水をさらに溜去させながら酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで加熱減圧を続けた。このようにして、水酸基価が56.9mgKOH/g、酸価が0.3mgKOH/gの100%植物由来ポリエステルポリオールPES3(BP=100%)を得た。表1に、合成原料および得られたポリオールの性状を示した。
【0055】
[ポリカーボネートポリオール合成例PC1]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、1,3−プロパンジオール(植物由来)450部と、ジメチルカーボネート533部(1,3−プロパンジオールに対して等モル)と、テトラブトキシチタン0.1部とを仕込み、窒素雰囲気下において、180℃まで昇温してメタノールを溜出させながら反応させ、メタノールの溜出がほぼなくなるまで反応させた。発生したメタノールおよび過剰のジメチルカーボネートを減圧して除去した。このようにして、水酸基価が59.5mgKOH/gのポリカーボネートポリオールPC1(BP=73%)を得た。表1に、合成原料および得られたポリオールの性状を示した。
【0056】
[ポリカーボネートポリオール合成例PC2]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、1,3−プロパンジオール(植物由来)390部と、ジエチルカーボネート605部(1,3−プロパンジオールに対して等モル)と、テトラブトキシチタン0.1部とを仕込み、窒素雰囲気下において、200℃まで昇温してエタノールを溜出させながら反応させ、エタノールの溜出がほぼなくなるまで反応させた。発生したエタノールおよび過剰のジエチルカーボネートを減圧して除去した。このようにして、水酸基価が56.1mgKOH/gのポリカーボネートポリオールPC2(BP=73%)を得た。表1に、合成原料および得られたポリオールの性状を示した。
【0057】
[ポリカーボネートポリオール合成例PC3]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、1,3−プロパンジオール(植物由来)465部と、エチレンカーボネート538部(1,3−プロパンジオールに対して等モル)とを仕込み、窒素雰囲気下において、70℃まで昇温して溶解した。その後、テトラブトキシチタン0.1部を仕込み、ジオールを溜出させながら220℃まで昇温し、ジオールの溜出がほぼなくなるまで反応させた。発生したジオールおよび過剰のエチレンカーボネートを減圧して除去した。このようにして、水酸基価が60.2mgKOH/gのポリカーボネートポリオールPC3(BP=73%)を得た。表1に、合成原料および得られたポリオールの性状を示した。
【0058】
[ポリカーボネートポリオール合成例PC4]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、1,3−プロパンジオール(植物由来)260部と、ジフェニルカーボネート733部(1,3−プロパンジオールに対して等モル)とを仕込み、窒素雰囲気下において、150℃まで昇温して溶解した。その後、テトラブトキシチタン0.1部を仕込み、220℃まで昇温しながら減圧し、フェノールを溜出させながら反応させた。さらに250℃まで昇温しながら減圧度を上げて反応させた。発生したフェノールおよび過剰のジフェニルカーボネートを270℃で減圧して除去した。このようにして、水酸基価が55.8mgKOH/gのポリカーボネートポリオールPC4(BP=73%)を得た。表1に、合成原料および得られたポリオールの性状を示した。
【0059】
[ポリカーボネートポリオール合成例PC5]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、1,3−プロパンジオール(植物由来)425部、1,4−ブタンジオール25部、1,5−ペンタンジオール25部、1,6−ヘキサンジオール25部と、ジメチルカーボネート569部(全ジオールに対して等モル)と、テトラブトキシチタン0.1部とを仕込み、窒素雰囲気下において、180℃まで昇温してメタノールを溜出させながら反応させ、メタノールの溜出がほぼなくなるまで反応させた。発生したメタノールおよび過剰のジメチルカーボネートを減圧して除去した。このようにして、水酸基価が58.7mgKOH/gのポリカーボネートポリオールPC5(BP=53%)を得た。
【0060】
[ポリカーボネートポリオール合成例PC6]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、1,4−ブタンジオール(植物由来)500部と、ジメチルカーボネート500部(1,4−ブタンジオールに対して等モル)と、テトラブトキシチタン0.1部とを仕込み、窒素雰囲気下において、180℃まで昇温してメタノールを溜出させながら反応させ、メタノールの溜出がほぼなくなるまで反応させた。発生したメタノールおよび過剰のジメチルカーボネートを減圧して除去した。このようにして、水酸基価が59.7mgKOH/gのポリカーボネートポリオールPC6(BP=76%)を得た。
【0061】

【0062】
<ポリウレタンの合成>
上記で合成した植物由来成分を含有してなる各ポリオール等を用いて、ポリエステルポリウレタンを合成した。
[ウレタン実施例1:ポリエステルポリウレタンの合成例PES−PU1]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリエステルポリオールPES1を100部、エチレングリコールを15部、DMF(ジメチルホルムアミド)を282部仕込み、70℃に加温した。ここに、MDI(メチレンビス(4−フェニルイソシアネート))を73部(水酸基とイソシアネート基が当量)投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌した。その後、DMFを157部添加して、固形分30%のポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU1(BP=53%)を得た。
【0063】
[ウレタン実施例2:ポリエステルポリウレタンの合成例PES−PU2]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、先に合成したポリエステルポリオールPES1を100部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を15部、DMFを197.5部およびIPDI(イソホロンジイソシアネート)82.5部(イソシアネート基と水酸基の比率が1.5)を仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで20℃まで冷却し、IPDA(イソホロンジアミン)21部とDMFを312部添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%のポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU2(BP=53%)を得た。
【0064】
[ウレタン実施例3:ポリエステルポリウレタンの合成例PES−PU3]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリエステルポリオールPES2を200部、DMFを90.5部仕込み、70℃に加温した。ここに、TDI(トリレンジイソシアネート)を11.2部(水酸基とイソシアネート基が当量)投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌して、固形分70%のポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU3(BP=95%)を得た。
【0065】
[ウレタン比較例1:ポリエステルポリウレタンの合成例PES−PU4]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、石油由来のポリエステルポリオール(1,4−ブタンジオール/アジピン酸縮合物、分子量3,000)を200部、DMFを90.5部仕込み、70℃に加温した。ここにTDIを11.2部(水酸基とイソシアネート基が当量)投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌して、固形分70%のポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU4(BP=0%)を得た。
【0066】
[ウレタン実施例4:ポリエステルポリウレタンの合成例PES−PU5]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリエステルポリオールPES3を100部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を4部、DMFを138.4部およびIPDIを34.4部(イソシアネート基と水酸基の比率が1.5)仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで20℃まで冷却し、IPDA8.8部とDMF312部を添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%のポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU5(BP=52%)を得た。
【0067】
[ウレタン実施例5:ポリエステルポリウレタンの合成例PES−PU6]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリ乳酸ポリオールを100部(分子量2,000、植物由来)、エチレングリコールを15部、DMF(ジメチルホルムアミド)を282部仕込み、70℃に加温した。ここに、MDI(メチレンビス(4−フェニルイソシアネート))を73部(水酸基とイソシアネート基が当量)投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌した。その後、DMFを157部添加して、固形分30%のポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU6(BP=53%)を得た。
【0068】
表2−1に、合成に用いた各成分および得られたポリエステルポリウレタンの性状をまとめて示した。

【0069】
上記で合成した植物由来成分を含有してなる各ポリオール等を用いて、ポリカーボネートポリウレタンを合成した。
[ウレタン実施例6:ポリカーボネートポリウレタンの合成例PC−PU1]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリカーボネートポリオールPC1を100部、エチレングリコールを15部、DMFを284部仕込み、70℃に加温した。ここに、MDIを74部(水酸基とイソシアネート基が当量)投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌した。その後、DMFを157部添加して、固形分30%のポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU1(BP=39%)を得た。
【0070】
[ウレタン実施例7〜11:ポリカーボネートポリウレタンの合成例PC−PU2〜6]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、合成例PC−PU1で使用したポリカーボネートポリオールPC1を、それぞれ、PC2、PC3、PC4、PC5、PC6のポリカーボネートポリオール100部に変えて、エチレングリコールを15部、固形分40%となるDMFを仕込み、70℃に加温した。ここに、MDIを水酸基とイソシアネート基が当量となるように投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌した。その後、DMFを添加して、固形分30%のポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU2〜4(BP=39%)、PC−PU5(BP=28%)およびPC−PU6(BP=40%)を得た。
【0071】
[ウレタン実施例12:ポリカーボネートポリウレタンの合成例PC−PU7]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリカーボネートポリオールPC1を100部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を15部、DMFを198部およびIPDIを83部(イソシアネート基と水酸基の比率が1.5)仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで20℃まで冷却し、IPDA21部とDMF313部を添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%のポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU7(BP=40%)を得た。
【0072】
[ウレタン実施例13〜17:ポリカーボネートポリウレタンの合成例PC−PU8〜12]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、合成例PC−PU5で使用したポリカーボネートポリオールPC1を、それぞれ、PC2、PC3、PC4、PC5、PC6のポリカーボネートポリオール100部に変えて、1,3−プロパンジオール(植物由来)を15部、固形分50%となるDMFおよびイソシアネート基と水酸基の比率が1.5となるIPDIを仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで20℃まで冷却し、イソシアネートと当量になるIPDAとDMFを添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%のポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU8〜10(BP=40%)およびPC−PU11(BP=31%)およびPC−PU12(BP=41%)を得た。
【0073】
[ウレタン実施例18:ポリカーボネートポリウレタンの合成例PC−PU13]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリカーボネートポリオールPC1を100部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を15部、DMFを340部およびイソシアネート基と水酸基の比率が1.5であるDDI(ダイマー酸ジイソシアネート)を225部仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで20℃まで冷却し、IPDA21部とDMF502部を添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%のポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU13(BP=77%)を得た。
【0074】
[ウレタン実施例19:ポリカーボネートポリウレタンの合成例PC−PU14]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリカーボネートポリオールPC1を100部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を15部、DMFを198部およびIPDIを83部(イソシアネート基と水酸基の比率が1.5)仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで20℃まで冷却し、IPDA21部と乳酸エチル313部を添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%のポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU14(BP=40%)を得た。なお、植物由来の有機溶剤(バイオ溶剤)の含有率は61%であった。
【0075】
[ウレタン比較例2:ポリカーボネートポリウレタンの合成例PC−PU15]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、石油由来のCD−220(ダイセル化学工業株式会社製、1,6−ヘキサン系カーボネートジオール、平均分子量2,000)を100部、エチレングリコールを15部、DMFを284部仕込み、70℃に加温した。ここに、MDIを74部(水酸基とイソシアネート基が当量)投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌した。その後、DMFを157部添加し、固形分30%のポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU15(BP=0%)を得た。
【0076】
表2−2及び2−3に、合成に用いた各成分および得られたポリカーボネートポリウレタンの性状をまとめて示した。
【0077】

【0078】

【0079】
[ウレタン実施例20:水分散ポリウレタンの合成例WB−PU1]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリカーボネートポリオールPC1を100部、ジメチロールプロパン酸を7.1部およびIPDIを35.3部(イソシアネート基と水酸基の比率が1.5)仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで40℃まで冷却し、トリエチルアミン5.3部を添加し、均一になったところで、脱イオン水348部を激しく撹拌しながら徐々に投入してプレポリマーの水分散液を調製した。続いてIPDAを9部添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%の水分散ポリカーボネートポリウレタン樹脂WB−PU1(BP=48%)を得た。表2−4に、合成に用いた各成分および得られたポリウレタンの性状を示した。
【0080】
[ウレタン実施例21:熱可塑性ポリカーボネートポリウレタンの合成例PC−TPU1]
ポリカーボネートポリオールPC1を100部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を15部、MDIを63部(水酸基とイソシアネート基が当量)、を均一に撹拌し、トレー中に注入して100℃で反応させた。得られた反応生成物を粉砕後、押出機を用いて200〜230℃でペレット化し、熱可塑性ポリカーボネートポリウレタンPC−TPU1(BP=41%)のペレットを得た。表2−4に、合成に用いた各成分および得られたポリウレタンの性状を示した。
【0081】
[ウレタン実施例22:熱可塑性ポリエステルポリウレタンの合成例PES−TPU1]
ポリエステルポリオールPES1を100部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を15部、MDIを62部(水酸基とイソシアネート基が当量)、を均一に撹拌し、トレー中に注入して100℃で反応させた。得られた反応生成物を粉砕後、押出機を用いて200〜230℃でペレット化し、熱可塑性ポリエステルポリウレタンPES−TPU1(BP=65%)のペレットを得た。表2−4に、合成に用いた各成分および得られたポリウレタンの性状を示した。
【0082】
[ウレタン実施例23:熱可塑性ポリエーテルポリウレタンの合成例PE−TPU1]
ポリテトラメチレングリコールエーテルポリオール(分子量2,000、植物由来)100部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を15部、MDIを62部(水酸基とイソシアネート基が当量)、を均一に撹拌し、トレー中に注入して100℃で反応させた。得られた反応生成物を粉砕後、押出機を用いて200〜230℃でペレット化し、熱可塑性ポリエーテルポリウレタンPE−TPU1(BP=65%)のペレットを得た。表2−4に、合成に用いた各成分および得られたポリウレタンの性状を示した。
【0083】
ここで用いたポリテトラメチレングリコールエーテルポリオールの化学式はHO−(CH2CH2CH2CH2O)n−Hであり、nは分子量2,000となる整数である。
【0084】
[ウレタン実施例24:ポリエーテルポリウレタンの合成例PE−PU1]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリ(トリメチレン/テトラメチレン)グリコールエーテルポリオール(植物由来、分子量2,000)100部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を15部、DMFを265部仕込み、70℃に加温した。上記で用いたポリ(トリメチレン/テトラメチレン)グリコールエーテルポリオールは、植物由来の分子量1,000のテトラメチレングリコールに、植物由来の1,3−プロパンジオールを共重合したものである。ここに、MDIを62部(水酸基とイソシアネート基が当量)投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌した。その後、DMFを148部添加して、固形分30%のポリエーテルポリウレタン樹脂溶液PE−PU1(BP=65%)を得た。表2−4に、合成に用いた各成分および得られたポリウレタンの性状を示した。
【0085】
[ウレタン実施例25:ポリエステルポリウレタンビーズの合成例PES−BZ1]
水酸基価、119.5mgKOH/gの2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油株式会社製、URIC Y−202)を100部と、n−オクタンを100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み、上記ポリオールを溶解した。撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=2になるように予め用意したIPDIを47.3部、1時間かけて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、3時間の反応を行い合成した。次に、n−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を3.0%含有するプレポリマー溶液(PP−1)を得た。このものの分子量は1,383である。
【0086】
上記のプレポリマー溶液(PP−1)を40部と、n−オクタン60部とを撹拌機付き合成釜に仕込み溶解した。撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの10%溶液24.3部を5時間かけて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン(ウレア結合部)/プレポリマー鎖)×100=12.15%の、ポリウレアコロイド溶液(C−1:固形分18.0%)を得た。この溶液は、青い乳光色の安定な溶液であった。
【0087】
先に得たポリエステルポリオールPES1の40部を60℃で溶解し、さらに、下記の構造式で示される、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートポリイソシアネート(旭化成工業株式会社製、デュラネートTPA−100、NCO%=23.1)を7.3部添加し、均一に混合した。このものを、予め1リットルのステンレス容器内に準備した、先に得たポリウレアコロイド溶液(C−1)5.0部と、n−オクタン25部との混合液の中に徐々に加え、ホモジナイザーで15分間乳化した。この乳化液は、分散質の平均分散粒子径が5μmで、分離もなく、安定な乳化液であった。
【0088】

【0089】
次に、これを錨型撹拌機付き反応釜に仕込み、400rpmの速度で回転をさせながら温度を80℃まで上げ、6時間の反応を終了し、バイオポリウレタンビーズの溶液を得た。この溶液を、100Torrで真空乾燥を行ってn−オクタンを分離し、バイオポリウレタンビーズPES−BZ1(BP=85%)を得た。このものは、平均粒子径が5μmで、円形度が0.92の真球状の白色粉末状であった。圧縮強度は、0.35MPaで回復率は89%であった。表2−4に、合成に用いた各成分および得られたポリウレタンの性状を示した。
【0090】

【0091】
<合成擬革の作成>
[湿式加工方法]
(実施例1)
(基材作成)
下記の配合処方で含浸液組成液(含浸液組成物1)を作成し、該液を不織布に十分に含浸させた後に、130℃で乾燥および熱硬化させ、柔軟性を付与し、基材とする不織布を作成した。
【0092】
〔含浸液組成物1の配合〕
・レザミンCUT−270W(大日精化工業社製) 100部
・レザミンCUT−275C(大日精化工業社製) 75部
・イオン交換水 600部
【0093】
先に、ウレタン実施例6で合成したポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU1を含む下記の配合処方で、湿式組成液(湿式配合液組成物2)を作成した。そして、上記で得た不織布に含浸させ、湿式凝固させた後、洗浄、乾燥工程を経て、さらに、面平滑性を付与させるために、その表皮表面部分をバフィング処理した。その結果、非常にソフトな風合いの含浸不織布を得た。なお、ウレタン樹脂溶液、凝固槽中のDMFは回収されるシステムで製造を行った。
【0094】
〔湿式配合液組成物2〕
・PC−PU1(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・レザミンCUT−30(湿式添加剤、大日精化工業社製) 2部
・レザミンCUT−107(湿式添加剤、大日精化工業社製) 3部
・レザミンCUT−250改(湿式添加剤、大日精化工業社製) 1部
・DMF 250部
【0095】
上記で得た含浸不織布の表面に、ウレタン実施例20で得た水分散ポリカーボネートポリウレタン樹脂WB−PU1を含む下記の配合処方で調製した組成物3を、グラビア印刷によってダイレクト塗布した。その際、乾燥後の厚みが20μmになるように塗布した。塗布後、乾燥機中で溶剤(イオン交換水)を乾燥し、表皮層を形成した。その後、さらに、表面を処理するための組成物4を下記の配合処方で調製し、これをグラビアコーターで塗工乾燥して、乾燥厚み5μmの表面処理層を形成し、合成擬革1を得た。組成物4は、その配合中に、WB−PU1と、ウレタン実施例25で得たバイオポリウレタンビーズPES−BZ1とを含む。
【0096】
〔表皮形成層配合液組成物3〕
・WB−PU1(カーボネート系PUD、大日精化工業社製)100部
・セイカセブンDW−794ブラック 25部
・イオン交換水(固形分が20%となる量) 所定量
【0097】
〔表面処理層配合液組成物4〕
・WB−PU1(カーボネート系PUD、大日精化工業社製)100部
・PES−BZ1(エステル系PUビーズ、大日精化工業社製)30部
・WB40−100
(旭化成ケミカルズ社製、水分散型イソシアネート) 15部
・イオン交換水(固形分が15%となる量) 所定量
【0098】
(実施例2)
平織りからなる綿生地を機械的に起毛して得られる起毛布上に、ウレタン実施例6で合成したポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU1を含む下記の配合処方で、湿式配合液組成物2−2を塗布し、塗布層を水中で凝固させて厚み1,000μmのミクロポーラス層を形成させ、水洗、乾燥させた。その後、得られたミクロポーラス層上に、ウレタン実施例12で得たポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU7を含む下記の配合処方で、表皮層配合液組成物5をナイフコーターで塗布乾燥させ、乾燥厚み20μmの表皮層を形成させた。次に、同様にPC−PU7を含む下記の配合処方で、表面処理層配合液組成物6を、グラビアコーターで塗布乾燥させ、乾燥厚み5μmの表面処理層を形成させた。さらに、100℃の温水にて湯もみ加工して、合成擬革2を作製した。
【0099】
〔湿式配合液組成物2−2〕
・PC−PU1(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・レザミンCUT−30(湿式添加剤、大日精化工業社製) 2部
・レザミンCUT−107(湿式添加剤、大日精化工業社製) 3部
・レザミンCUT−250改(湿式添加剤、大日精化工業社製) 1部
・セイカセブンBS−780(s)ブラック 5部
・DMF 150部
【0100】
〔表皮形成層配合液組成物5〕
・PC−PU7(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・セイカセブンBS−780(s)ブラック 20部
・MEK/DMF=1/1(固形分が20%となる量) 所定量
【0101】
〔表面処理層配合液組成物6〕
・PC−PU7(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・PES−BZ1(エステル系PUビーズ、大日精化工業社製)30部
・MEK/DMF=1/1(固形分が10%となる量) 所定量
【0102】
(実施例3)
平織りからなる綿生地を機械的に起毛して得られる起毛布上に、ウレタン実施例7〜9で得たポリカーボネートポリオールPC−PU2、PC−PU3、PC−PU4を含む下記の組成の湿式配合液組成物7を塗布した。そして、塗布層を水中で凝固させて厚み1,000μmのミクロポーラス層を形成させ、水洗、乾燥させ湿度層形成基布を作製した。次いで、離型紙(DE139大日本印刷株式会社製)上に、ウレタン実施例13〜15で得たポリカーボネートポリオールPC−PU8、PC−PU9、PC−PU10を含む表皮層配合組成物8を塗布し、乾燥して厚み20μmの表皮層を形成させ、上記ミクロポーラス層上に、150℃にて熱ラミネートさせ離型紙を剥離して合成擬革を得た。さらに、ウレタン実施例12で得たポリカーボネートポリオールPC−PU7を含む表面処理層配合液組成物6をグラビアコーターで塗布乾燥させ、乾燥厚み5μmの表面処理層を形成させて、合成擬革3を作製した。
【0103】
〔湿式配合液組成物7〕
・PC−PU2(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 50部
・PC−PU3(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 25部
・PC−PU4(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 25部
・レザミンCUT−30(湿式添加剤、大日精化工業社製) 2部
・レザミンCUT−107(湿式添加剤、大日精化工業社製) 3部
・レザミンCUT−250改(湿式添加剤、大日精化工業社製) 1部
・セイカセブンBS−780(s)ブラック 5部
・DMF 150部
【0104】
〔表皮層配合液組成物8〕
・PC−PU8(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 50部
・PC−PU9(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 25部
・PC−PU10(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 25部
・セイカセブンBS−780(s)ブラック 20部
・MEK/DMF=1/1(固形分が20%となる量) 所定量
【0105】
〔表面処理層配合液組成物6〕
・PC−PU7(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・PES−BZ1(エステル系PUビーズ、大日精化工業社製)30部
・MEK/DMF=1/1(固形分が10%となる量) 所定量
【0106】
[乾式加工方法]
(実施例4)
離型紙(DE139大日本印刷株式会社製)上に、ウレタン実施例12で得たポリカーボネートポリオールPC−PU7を含む表皮層配合液組成物5を塗布し、乾燥して、厚み20μmの表皮層を形成した。形成した表皮層上に、ウレタン実施例3で得たポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU3を含む接着層配合液組成物9を塗布して、厚み200μmの接着剤層を形成し、これをドライラミネート(150℃、クリアランス=0)の条件に合わせて起毛布上に転写した。これに、ウレタン実施例12で得たポリカーボネートポリオールPC−PU7を含む表面処理層配合液組成物6をグラビアコーターで塗布乾燥させ、乾燥厚み5μmの表面処理層を形成させて合成擬革4を作製した。
【0107】
〔表皮層配合液組成物5〕
・PC−PU7(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・セイカセブンBS−780(s)ブラック 20部
・MEK/DMF=1/1(固形分が20%となる量) 所定量
【0108】
〔接着層配合液組成物9〕
・PES−PU3(エステル系PU、大日精化工業社製) 100部
・レザミンUD−架橋剤
(ポリイソシアネート系架橋剤、大日精化工業社製) 10部
・MEK/DMF=1/1(固形分が40%となる量) 所定量
【0109】
〔表面処理層配合組成物6〕
・PC−PU7(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・PES−BZ1(エステル系PUビーズ、大日精化工業社製)30部
・MEK/DMF=1/1(固形分が10%となる量) 所定量
【0110】
[TPUレザー方法]
(実施例5)
ウレタン実施例22で得た熱可塑性ポリエステルポリウレタンPES−TPU1を含むTPUシート配合組成物10をカレンダー加工(150℃)により膜厚300μmのシートを作製した。そのシート状に、ポリカーボネートポリオールPC−PU7を含む表面処理層配合液組成物6をグラビア印刷にて、厚さ10μmドライに塗布、乾燥した後、皮革調のシボ形状を得るためにシボ加工(180℃)を施した。これに、ポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU3を含む接着層配合液組成物9をグラビアコーターにより厚さ30μmとなるように塗布し、基材を貼り合せて、合成擬革5を作製した。
【0111】
〔TPUシート配合組成物10〕
・PES−TPU1 100部
・ダイミックSZ−7740ブラック 10部
【0112】
〔表面処理層配合液組成物6〕
・PC−PU7(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・PES−BZ1(エステル系PUビーズ、大日精化工業社製)30部
・MEK/DMF=1/1(固形分が10%となる量) 所定量
【0113】
〔接着層配合液組成物9〕
・PES−PU3(エステル系PU、大日精化工業社製) 100部
・レザミンUD−架橋剤
(ポリイソシアネート系架橋剤、大日精化工業社製) 10部
・MEK/DMF=1/1(固形分が40%となる量) 所定量
【0114】
[TPUレザー方法]
(実施例6)
ウレタン実施例23で得た熱可塑性ポリエーテルポリウレタンPE−TPU1を含むTPUシート配合組成物11をカレンダー加工(150℃)により膜厚300μmのシートを作製した。そのシート状に、ポリカーボネートポリオールPC−PU7を含む表面処理層配合液組成物6をグラビア印刷にて、厚さ10μmドライに塗布、乾燥した後、皮革調のシボ形状を得るためにシボ加工(180℃)を施した。これに、ポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU3を含む接着層配合液組成物9をグラビアコーターにより厚さ30μmとなるように塗布し、基材を貼り合せて、合成擬革6を作製した。
【0115】
〔TPUシート配合組成物11〕
・PE−TPU1(エーテル系PU、大日精化工業社製) 100部
・ダイミックSZ−7740ブラック 10部
【0116】
〔表面処理層配合液組成物6〕
・PC−PU7(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・PES−BZ1(エステル系PUビーズ、大日精化工業社製)30部
・MEK/DMF=1/1(固形分が10%となる量) 所定量
【0117】
〔接着層配合液組成物9〕
・PES−PU3(エステル系PU、大日精化工業社製) 100部
・レザミンUD−架橋剤
(ポリイソシアネート系架橋剤、大日精化工業社製) 10部
・MEK/DMF=1/1(固形分が40%となる量) 所定量
【0118】
(比較例1)
離型紙(DE139大日本印刷株式会社製)上に、先に得たポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液PC−PU15を含む表皮層配合液組成物12を塗布し、乾燥して形成される厚み20μmの表皮層上に、ポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU4を含む接着層配合液組成物13を塗布して厚み200μmの接着剤層を形成し、これをドライラミネート(150℃、クリアランス=0)の条件に合わせて起毛布上に転写した。これに、PC−PU15を含む表面処理層配合液組成物14をグラビアコーターで塗布乾燥させ、乾燥厚み5μmの表面処理層を形成させ、合成擬革7を作製した。
【0119】
〔表皮層配合液組成物12〕
・PC−PU15(カーボネート系PU、大日精化工業社製)100部
・セイカセブンBS−780(s)ブラック 20部
・MEK/DMF=1/1(固形分が20%となる量) 所定量
【0120】
〔接着層配合液組成物13〕
・PES−PU4(エステル系PU、大日精化工業社製) 100部
・レザミンUD−架橋剤
(ポリイソシアネート系架橋剤、大日精化工業社製) 10部
・MEK/DMF=1/1(固形分が40%となる量) 所定量
【0121】
〔表面処理層配合組成14〕
・PC−PU15(カーボネート系PU、大日精化工業社製) 100部
・ダイミックビーズUCN−5070C(大日精化工業社製) 30部
・MEK/DMF=1/1(固形分が10%となる量) 所定量
【0122】
以上のようにして得られた合成擬革様シートのサンプルをそれぞれ用い、バイオ比率、耐加水分解性、耐光性、耐熱性、風合い、接着強度、耐寒屈曲、耐磨耗性などの試験を行った。この評価結果を下記表3に示した。
【0123】
<評価>
以下に、各試験項目の内容と、その際の評価基準を示した。結果を表3に示した。
[バイオ比率]
合成擬革を形成する組成物中に占める植物由来成分の割合(バイオ比率)を算出し、評価した。
(評価基準)
○:バイオ比率が30%以上
△:バイオ比率が5%以上30%未満
×:バイオ比率が5%未満
【0124】
[外観・風合い]
作製した合成擬革を目視にて、下記の基準で評価した。
(評価基準)
1)外観
○:見ための感性がよく、天然皮革調に近いもの
×:天然皮革調に近くないもの
2)風合い
○:ボリューム感があり、ソフトなもの
△:多少ボリューム感はあるが、ミドルなもの
×:ボリューム感がなく、ハードなもの
【0125】
[耐寒屈曲]
フレキソ試験機にて、0℃下、屈曲回数1万回で、性能変化を評価した。
(評価基準)
○:変化のないもの
△:若干の亀裂があるもの
×:亀裂がひどいもの
【0126】
[耐磨耗性試験]
作製した合成擬革を、テーバー磨耗機を用いて、磨耗輪H22、荷重500g、100回で試験した後、目視にて外観を評価した。
(評価基準)
○:変化なし
△:若干の磨耗がある
×:磨耗がある
【0127】
[接着強度]
作製した各合成擬革において、表面同士を、接着剤を介して貼り付けて、接着強度の測定を行った。
(評価基準)
○:2kg/cm以上
△:1kg/cm以上2kg/cm未満
×:1kg/cm未満
【0128】
[耐加水分解性]
作製した各合成擬革について、高温多湿環境下でのジャングル試験(70℃、相対湿度95%、3週間)を行った。試験前後における表面層の基材との接着強度を測定し、初期強度と比較した強度の保持率で評価した。
(評価基準)
○:保持率が60%以上
△:保持率が30%以上60%未満
×:保持率が30%未満
【0129】
[耐光性]
作製した各合成擬革について、高温乾燥環境下でのサンシャインウェザオメーター試験(63℃、水無、120時間)を行った。試験前後における表面層の基材との接着強度を測定し、初期強度と比較した強度の保持率で評価した。
(評価基準)
○:保持率が60%以上
△:保持率が30%以上60%未満
×:保持率が30%未満
【0130】
[耐熱性]
作製した各合成擬革についてギァオーブンにて試験(120℃、150時間)を実施した。試験前後における表面層の基材との接着強度を測定し、初期強度と比較した強度の保持率で評価した。
(評価基準)
○:保持率が60%以上
△:保持率が30%以上60%未満
×:保持率が30%未満
【0131】
[VOC対策]
各合成擬革の作製工程において大気中に放出される溶剤の量を算出し、その表皮用資材に対する割合を下記の基準で評価した。
(評価基準)
○:大気中に放出される有機溶剤が0
△:大気中に放出される有機溶剤が5%未満
×:大気中に放出される有機溶剤が5%以上
【0132】

【0133】
ただし、湿式工程(クローズシステム)は水中でDMFを抽出し大気中に放出しない。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の合成擬革の活用例としては、植物由来の原材料を高い比率で使用した環境問題に対する対応策ともなるエコロジー素材でありながら、人工皮革、合成皮革、より具体的には、靴、鞄、衣料、家具、車輛シート、雑貨など、あらゆる製品への適用性が期待できる。本発明の合成擬革を使用した場合に、製品が、耐加水分解性、耐光性、耐熱性、風合い、接着強度、耐寒屈曲、耐磨耗性に優れ、十分に実用化できるものであり、しかも、その素材はバイオマスでエコロジー素材であるため、環境問題に資するものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部を構成する基布と表皮層とからなる合成擬革において、少なくとも表皮層が、植物由来の短鎖ジオール(a)と、石油由来のカーボネート成分(b)又は植物由来のカルボン酸成分(c)とから合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)又はバイオポリエステルポリオール(B)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)からなるバイオポリエーテルポリオール(C)のいずれかのポリオールと、イソシアネート成分(d)とを反応させてなるバイオポリウレタン樹脂であって、かつ、該バイオポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が28〜95質量%であるバイオポリウレタン樹脂を用いて形成されていることを特徴とする合成擬革。
【請求項2】
前記基布が、樹脂を含浸させた織布、樹脂を含浸させた不織布、又は、繊維質基材に樹脂のミクロポーラス層を形成させたもののいずれかであって、かつ、これらの樹脂が前記バイオポリウレタン樹脂である請求項1に記載の合成擬革。
【請求項3】
前記バイオポリウレタン樹脂が、さらに反応成分として、必要に応じて、植物由来の短鎖ジオール成分(a)或いは石油由来のジオール成分および/またはジアミン成分(e)を含む請求項1又は2に記載の合成擬革。
【請求項4】
前記バイオポリウレタン樹脂が、前記(a)、(A)、(B)、(C)、および(e)の各成分の合計の全活性水素含有基と、前記(d)成分のイソシアネート基とを、0.9〜1.5の当量比で反応させて得られたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成擬革。
【請求項5】
前記短鎖ジオール成分(a)が、植物由来の、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成擬革。
【請求項6】
前記カルボン酸成分(c)が、植物由来のひまし油誘導体からなるセバシン酸および/または植物由来のコハク酸である請求項1〜5のいずれか1項に記載の合成擬革。
【請求項7】
前記カーボネート成分(b)が、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびジフェニルカーボネートから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の合成擬革。
【請求項8】
前記イソシアネート成分(d)が、植物由来成分の誘導体からなるジイソシアネート成分、植物由来のダイマー酸ジイソシアネート成分、アミノ酸由来のポリイソシアネート成分、および、石油由来のジイソシアネート成分からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載の合成擬革。
【請求項9】
前記バイオポリウレタン樹脂の合成の際、或いは該バイオポリウレタン樹脂を用いて合成擬革を形成する際に有機溶剤が用いられており、該有機溶剤が、それぞれ植物由来の、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチルおよび乳酸ブチルから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれか1項に記載の合成擬革。
【請求項10】
車輛シート用である請求項1〜9のいずれか1項に記載の合成擬革。

【公開番号】特開2011−226047(P2011−226047A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76685(P2011−76685)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】