説明

バイオマスの加工方法

燃料などの有用な産物を産生するために、バイオマス供給材料(例えば、植物バイオマス、動物バイオマス、および都市廃棄物バイオマス)が加工される。例えば、供給材料を糖液に変換し、次いで、糖液を発酵させてエタノールを産生することができるシステムが説明される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年2月11日に出願された米国特許仮出願第61/151,724号に係る優先権を主張する。本仮出願の全開示は参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
様々な炭水化物、例えば、セルロース材料およびリグノセルロース材料、例えば、繊維の形をしたセルロース材料およびリグノセルロース材料が多くの分野で多量に生産、加工、および使用される。多くの場合、このような材料は一度用いられると、廃棄物として捨てられるか、または廃棄材料、例えば、下水、バガス、おがくず、およびストーバーにすぎないと考えられている。
【0003】
様々なセルロース材料およびリグノセルロース材料、これらの使用ならびに用途が、米国特許第7,307,108号、同第7,074,918号、同第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号、および同第5,952,105号;ならびに2006年3月23日に出願された「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648および「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許公開公報第2007/0045456号を含む様々な特許出願に記載されている。
【発明の概要】
【0004】
概要
一般的に、本発明は、複数の種類の炭素含有供給材料および/または組成が一定しない供給材料から、中間体または産物、例えば、エネルギー、エタノールなどの燃料、食物、または材料を製造するためのプロセスに関する。炭素含有供給材料は、例えば、炭水化物含有材料(例えば、デンプン材料および/またはセルロース材料もしくはリグノセルロース材料)を含んでもよく、場合によっては、組成が予測できないまたは一定しない廃棄材料でもよい。
【0005】
本明細書において開示されるプロセスは単独で、または組み合わせて、供給材料の分子構造および/または抵抗性レベルを変え、その結果、経済的に実現可能なやり方で供給材料から望ましい産物を得ることができる。本発明者らは、産物を産生するのに必要な、供給材料の構造および/または抵抗性レベルに対する変化の量は、供給材料のリグニン含有率の関数として変化することを発見した。例えば、必要とされる抵抗性の変化はリグニン含有率に正比例し得る。従って、本明細書において開示される方法は、使用されている供給材料のリグニン含有率の変化を補うように、産物の製造に用いられるプロセスタイプまたは一つもしくは複数のプロセスパラメータを調整する工程、例えば、使用される前処理プロセス間に、さらに高いまたは低い線量率を適用する工程を含む。
【0006】
本明細書に記載の方法の多くは、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料、例えば、天然の材料と比較して、抵抗性レベルが低く、分子量が低く、官能基化および/または結晶化度のレベルが異なるセルロース材料および/またはリグノセルロース材料を提供することができる。前記方法の多くは、エネルギー、燃料、食物、および材料などの有用な産物を産生するために、(酵素的加水分解の補助あり、または補助なしで)様々な微生物、例えば、一種類または複数の種類のホモ酢酸生成菌またはヘテロ酢酸生成菌が容易に利用することができる材料を提供する。産物の具体例には、水素、アルコール(例えば、一価アルコールまたは二価アルコール、例えば、エタノール、n-プロパノール、またはn-ブタノール)、糖、バイオディーゼル、有機酸(例えば、酢酸および/または乳酸)、炭化水素、副産物(例えば、タンパク質、例えば、セルロース分解性タンパク質(酵素)または単一細胞タンパク質)、ならびにこれらのいずれかの混合物が含まれるが、これに限定されない。他の例には、カルボン酸、例えば、酢酸または酪酸、カルボン酸の塩、カルボン酸およびカルボン酸の塩の混合物、ならびにカルボン酸のエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、およびn-プロピルエステル)、ケトン、アルデヒド、α、β不飽和酸、例えば、アクリル酸およびオレフィン、例えば、エチレンが含まれる。他のアルコールおよびアルコール誘導体には、プロパノール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、これらのアルコールのいずれかのメチルエステルまたはエチルエステルが含まれる。他の産物には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、いずれかの酸の塩、ならびにいずれかの酸および各塩の混合物が含まれる。
【0007】
他の中間体、ならびに食品および薬製品を含む製品は、米国特許仮出願第61/139,453号に記載されている。米国特許仮出願第61/139,453号の全開示は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0008】
エタノールまたはn-ブタノールなどの本明細書において開示される方法により得られる産物の多くは、電源車(powering car)用、貨物自動車用、トラクター用、船用、もしくは列車用の燃料として、またはガソリンなどの他の成分とのブレンドとして、例えば、内燃機関燃焼燃料として、あるいは燃料電池供給材料として直接利用することができる。本明細書に開示される他の産物(例えば、有機酸、例えば、酢酸および/または乳酸)を、燃料として変換および利用可能な他の部分(例えば、エステルまたは無水物)に変換することができる。得られる産物の多くはまた、航空機、例えば、飛行機、例えば、ジェットエンジンのある飛行機またはヘリコプターに動力を供給するのにも利用することができる。さらに、本明細書に記載の産物は、発電用に、例えば、従来の蒸気発生プラントまたは燃料電池プラントにおける発電用に利用することができる。
【0009】
一つの局面において、本発明は、バイオマス供給材料のリグニン含有率を求める工程;バイオマス供給材料を物理的処理によって処理する工程;リグニン含有率に基づいてプロセスのプロセスパラメータを設定する工程;処理されたバイオマス供給材料の少なくとも一部を、微生物を用いて変換して、産物または中間体、例えば、エネルギー、燃料、食物、または材料を産生する工程を含む、産物を作製する方法を特徴とする。
【0010】
物理的処理は、例えば、機械的処理、放射線照射、超音波処理、熱分解、酸化、水蒸気爆砕、化学処理、およびその組み合わせからなる群より選択されてもよい。化学処理は、一種類の化学物質または二種類以上の化学物質の使用を含んでもよい。機械的処理には、例えば、切断、粉砕、押し付け、摩砕、剪断、および切り刻みが含まれる。粉砕には、例えば、ボールミリング、ハンマーミリング、または他のタイプの粉砕が含まれ得る。
【0011】
実施には次の特徴を一つ以上含む場合がある。物理的処理は、上記処理のいずれか一つまたは複数を含んでもよく、単独で、または任意の望ましい組み合わせで適用されてもよく、1回または複数回適用されもよい。場合によっては、物理的処理は、電離放射線照射のみ、または電離放射線照射と、放射線照射前および/または放射線照射後の機械的処理を含んでもよい。放射線照射は、例えば、電子線を用いて行われてもよい。
【0012】
設定する工程は、供給材料に送達される電離放射線の線量を設定する工程を含んでもよい。例えば、バイオマス供給材料中のリグニン1重量%につき、0.1Mrad〜5.0Mrad、例えば、0.25Mrad〜4.0Mradまたは0.3Mrad〜3.5Mradの放射線線量を送達してもよい。
【0013】
中間体または産物は、例えば、本明細書において列挙された産物のいずれか一つまたは複数でもよい。場合によっては、産物は、エネルギーまたは燃料、例えば、バイオディーゼルまたはアルコール、例えば、エタノールもしくはメタノールでもよい。中間体または産物はまた、例えば、カルボン酸、カルボン酸のエステル、カルボン酸の塩、またはその混合物でもよい。
【0014】
前記方法は、第二の供給材料を用いて、求める工程、処理する工程、および設定する工程を繰り返す工程をさらに含んでもよい。
【0015】
別の局面において、本発明は、複数のペンダントカルボン酸基を有するセルロース材料またはリグノセルロース材料を準備する工程;水を含む液体中で材料を混合して、第一のpHを有する分散液を得る工程;および塩基を分散液に添加して、分散液のpHを、第一のpHより高い第二のpHまで上げる工程を含む、産物または中間体を作製する方法を特徴とする。第一のpHは、例えば、2.5〜4.5、例えば、3〜4.25でもよい。第二のpHは、例えば、約5〜7、例えば、約5.5〜6.5でもよい。
【0016】
実施の中には、以下の特徴の一つまたは複数を含むものもある。前記方法は、セルラーゼを分散液に添加して、セルロース材料またはリグノセルロース材料を糖化する工程をさらに含んでもよい。前記方法は、糖化された材料と微生物を接触させる工程をさらに含んでもよい。
【0017】
ある実施では、加工機器、例えば、機械的処理機器、化学物質(例えば、酸もしくは塩基)処理機器、放射線照射機器、超音波処理機器、熱分解機器、酸化機器、水蒸気爆砕機器、糖化機器、および/または発酵機器、あるいは本明細書に記載の他の任意の機器の一つまたは複数の成分は、例えば、米国特許出願第12/374,549号および国際公開公報第2008/011598号に記載の携帯型の加工機器のように携帯可能でもよい。米国特許出願第12/374,549号および国際公開公報第2008/011598号の全開示は参照として本明細書に組み入れられる。
【0018】
本明細書で使用する、材料の分子構造の変化とは、構造の化学結合配置またはコンホメーションの変化を意味する。例えば、分子構造の変化は、材料の超分子構造の変化、材料の酸化の変化、平均分子量の変化、平均結晶化度の変化、表面積の変化、重合度の変化、多孔度の変化、分枝度の変化、他の材料へのグラフト、結晶ドメインサイズの変化、またはドメインの全サイズの変化を含んでもよい。本明細書に記載の物理的処理のいずれか一つまたは複数を単独で、または任意に組み合わせて用いて分子構造を変えることができる。物理的処理は一回適用されてもよく、繰り返し適用されてもよい。
【0019】
本明細書において言及された、または本明細書に添付された全ての刊行物、特許出願、特許、または他の参考文献はその全体が、これらが記載する全てのものについて参照として組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】リグニン含有率が一定しない炭素含有供給材料から産物を作製するためのプロセスを示した流れ図である。
【図1A】一実施に従う、図1に示したプロセスの工程を示した流れ図である。
【図2】エタノールを作製するためのプロセスを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
バイオマス供給材料(例えば、植物バイオマス、動物バイオマス、および都市廃棄物バイオマス)を、(必要であれば)抵抗性レベルが低くなるまで加工して、有用な産物、例えば、一例として本明細書において列挙された産物に変換することができる。大量にあるが、加工しにくいことが多い材料(例えば、普通なら捨てられてしまうはずのセルロース材料またはリグノセルロース材料、例えば、作物残渣および廃棄紙)を使用するシステムおよびプロセスが、本願明細書に記載されている。
【0022】
一般に、本明細書に記載のプロセスを利用した製造プラントは、製造プラントが稼働している間に様々な供給材料を得る。供給材料の中には、コーンコブの積荷など組成が比較的均一なものもあってもよく、都市廃棄物(例えば、様々な廃棄紙ストリーム)など組成が一定しないものもあってもよい。
【0023】
供給材料は、例えば、紙、紙製品、木材、木材関連材料、パーティクルボード、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、アサ、アマ、タケ、サイザル、アバカ、ワラ、コーンコブ、ヤシ毛、藻類、海藻、変化したセルロース、例えば、酢酸セルロース、再生セルロースなど、またはこれらのいずれかの混合物を含んでもよい。
【0024】
場合によっては、バイオマスは微生物材料である。微生物供給源には、炭水化物供給源(例えば、セルロース)を含有する、または炭水化物供給源を供給することができる、任意の天然のまたは遺伝子組換えされた微生物または生物、例えば、原生生物、例えば、動物原生生物(例えば、鞭毛虫、アモエボイド(amoeboid)、繊毛虫、および胞子虫などの原生動物)、ならびに植物原生生物(例えば、アルベオラテ(alveolate)、クロララクニオン植物、クリプト藻類、ユーグレナ類(euglenid)、灰色植物、ハプトファイト(haptophyte)、赤色藻類、黄色植物、および緑色植物(viridaeplantae)などの藻類)が含まれるが、これに限定されない。他の実施例には、海藻、プランクトン(例えば、マクロプランクトン、メソプランクトン、ミクロプランクトン、微小プランクトン、ピコプランクトン、およびフェムトプランクトン)、植物プランクトン、細菌(例えば、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、および好極限性細菌)、酵母、ならびに/またはこれらの混合物が含まれる。場合によっては、微生物バイオマスは、天然供給源、例えば、海、湖、複数の水域、例えば、海水または淡水から得られてもよく、陸から得られてもよい。代わりに、またはさらに、微生物バイオマスは、培養システム、例えば、大規模な乾式培養システムおよび湿式培養システムから得られてもよい。
【0025】
製造プラントが、これらの異なるタイプの供給材料を利用して一種類または複数の種類の望ましい産物を生産できるようにするために、製造プロセスは、ばらつきを補うように調整可能であり、および/または供給材料の中で調整可能であり、例えば、異なる供給材料のリグニン含有率のばらつきを補うように調整可能である。
【0026】
本明細書に記載のプロセスの多くは供給材料の抵抗性レベルを効果的に減らすことで、供給材料の加工、例えば、バイオプロセス(例えば、本明細書に記載の任意の微生物、例えば、ホモ酢酸生成菌もしくはヘテロ酢酸生成菌、および/または本明細書に記載の任意の酵素を用いたバイオプロセス)、熱処理(例えば、ガス化もしくは熱分解)、あるいは化学的方法(例えば、酸加水分解または酸化)による加工を容易にすることができる。バイオマス供給材料は、本明細書に記載の任意の方法、例えば、機械的処理、化学処理、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、または水蒸気爆砕の一つまたは複数を用いて処理または加工することができる。様々な処理システムおよび方法は、本明細書および他の場所に記載のこれらの技術またはその他の技術の2つ、3つ、さらには4つ以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
図1に示したように、ある実施では、入ってくる供給材料のリグニン含有率が求められ(工程100)、次いで、リグニン含有率に基づいて、物理的処理のタイプ(例えば、機械的処理、放射線照射、超音波処理など)および/または望ましい産物を得るのに必要とされる一つもしくは複数の加工条件が決定される(工程102)。供給材料のばらつきの程度が比較的大きければ、例えば、都市廃棄物であれば、多くの試料が採取され、平均リグニン含有率が計算されてもよい。場合によっては、リグニン含有率の測定の前に供給材料をホモジナイズするように、供給材料は、例えば、摩砕または微粉砕、例えば、(例えば、全開示が参照として本明細書に組み入れられる、2008年7月17日に出願された米国特許仮出願第61/081,709号に開示されるように)凍結粉砕によって前処理されてもよい。場合によっては、例えば、図1Aに示したように、入ってくる二種類以上の供給材料を一緒に混合して、組み合わされた供給材料を形成してもよく、組み合わされた供給材料のリグニン含有率を測定してもよい。
【0028】
試料を調製し、リグニン含有率を求める方法は、Department of Energy(DOE) 試験手順NREL/TP-510-42618(改訂4/2008), NREL/TP-510-42619(改訂1/2008)、および NREL/TP-510-42620(改訂1/2008)に開示されている。
【0029】
リグニン含有率が求められたら、例えば、経験的に求められた、リグニン含有率と抵抗性との関係に基づいて、リグニン含有率を用いて加工条件を決定することができる。次いで、加工条件が加工機器に入力される(工程104)。例えば、図1Aに示したように、パラメータは、以下でさらに詳細に説明されるように、供給材料の構造を変える、および/または供給材料の抵抗性を減らす一つまたは複数の抵抗性を減らすプロセス工程において用いられてもよい。
【0030】
所望であれば、プロセスのアウトプットをモニタリングしてもよく(工程106、図1)、これらの測定値に基づいて、プロセスパラメータを調整してもよい(工程108、図1)。例えば、アウトプットの体積、純度、または他の特徴を測定してもよい。アウトプットは最終産物でもよく、抵抗性が小さくなったリグノセルロース材料またはセルロース材料などの中間産物でもよい。
【0031】
次に図2を見ると、一例では、前記の方法を、産物、例えば、エネルギー、燃料、食物、または材料、例えば、エタノールなどのアルコールを製造するためのプロセスに組み込むことができる。このようなプロセスは、例えば、供給材料を機械的に処理する工程(工程110)、この処理の前および/または後に、供給材料の抵抗性をさらに減らすように供給材料を別の物理的処理、例えば、放射線照射によって処理する工程(工程112)、次いで、処理された供給材料を加工して、アウトプットである望ましい産物を産生する工程(工程114)、例えば、蒸留によって望ましい産物を産生する工程(工程116)を含んでもよい。このプロセスの個々の工程は以下でさらに詳細に説明される。リグニン含有率を測定する工程(工程118)およびプロセスパラメータを設定または調整する工程(工程120)は、プロセスの様々な段階で、例えば、示された供給材料の構造を変えるのに用いられるプロセス工程の直前に行うことができる。
【0032】
バイオマス材料
バイオマスは、例えば、セルロース材料またはリグノセルロース材料でもよい。このような材料は、紙、紙製品(例えば、ポリコーティングされた紙およびクラフト紙)、木材、木材関連材料、例えば、パーティクルボード、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、アサ、アマ、タケ、サイザル、アバカ、ワラ、コーンコブ、ヤシ毛;ならびにα-セルロース含有量が高い材料、例えば、綿を含む。供給材料は、バージンスクラップテキスタイル材料、例えば、残留物、使用済み廃棄物、例えば、ぼろ切から得られてもよい。紙製品が用いられる場合、バージン材料、例えば、スクラップバージン材料でもよく、使用済み廃棄物でもよい。バージン原材料とは別に、使用済み廃棄物、産業廃棄物(例えば、くず)、および加工廃棄物(例えば、紙加工からの廃水)も繊維源として用いることができる。バイオマス供給材料はまた、ヒト廃棄物(例えば、下水)、動物廃棄物、または植物廃棄物から得られてもよく、それに由来してもよい。さらなるセルロース材料およびリグノセルロース材料は、米国特許第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号、および同第5,952,105号に記載されている。
【0033】
いくつかの態様において、バイオマス材料は、一つまたは複数のβ-1,4結合を有し、約3,000〜50,000の数平均分子量を有する材料であるか、これを含む炭水化物を含む。このような炭水化物は、β(1, 4)-グリコシド結合の縮合によって(β-グルコース1)から得られたセルロース(I)であるか、これを含む。この結合は、デンプンおよび他の炭水化物に存在するα(1, 4)-グリコシド結合のものと対照をなす。

【0034】
デンプン材料には、デンプンそのもの、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、もしくはコメデンプン、デンプンの誘導体、またはデンプンを含む材料、例えば、食品もしくは作物が含まれる。例えば、デンプン材料は、アラカチャ(arracacha)、ソバ、バナナ、オオムギ、キャッサバ、クズ、アンデスカタバミ、サゴヤシ、モロコシ、普通の家庭用ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、ヤムイモ、または一種類もしくは複数の種類のマメ、例えば、ソラマメ、レンズマメ、もしくはエンドウでもよい。二種類以上のデンプン材料のブレンドもデンプン材料である。特別の態様において、デンプン材料は、トウモロコシに由来する。さまざまなトウモロコシデンプンおよび誘導体が、"Corn Starch" Corns Refiners Association (11th Edition, 2006)に記載されている。
【0035】
場合によっては、バイオマスは微生物材料である。微生物供給源には、炭水化物供給源(例えば、セルロース)を含有する、または炭水化物供給源を供給することができる、任意の天然のまたは遺伝子組換えされた微生物または生物、例えば、原生生物、例えば、動物原生生物(例えば、鞭毛虫、アモエボイド、繊毛虫、および胞子虫などの原生動物)、ならびに植物原生生物(例えば、アルベオラテ、クロララクニオン植物、クリプト藻類、ユーグレナ類、灰色植物、ハプトファイト、赤色藻類、黄色植物、および緑色植物などの藻類)が含まれるが、これに限定されない。他の例には、海藻、プランクトン(例えば、マクロプランクトン、メソプランクトン、ミクロプランクトン、微小プランクトン、ピコプランクトン、およびフェムトプランクトン)、植物プランクトン、細菌(例えば、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、および好極限性細菌)、酵母、ならびに/またはこれらの混合物が含まれる。場合によっては、微生物バイオマスは、天然供給源、例えば、海、湖、複数の水域、例えば、海水または淡水から得られてもよく、陸から得られてもよい。代わりに、またはさらに、微生物バイオマスは、培養システム、例えば、大規模な乾式培養システムおよび湿式培養システムから得られてもよい。
【0036】
他のブレンドの例
バイオマス供給材料と、他の材料、例えば、炭素含有材料、例えば、前石炭(pre-coal)または石炭、例えば、泥炭、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭および無煙炭、オイルサンド、オイルシェールとのブレンドも利用することができる。さらに、本明細書に記載の任意の産物、例えば、エタノール、酢酸、または酢酸エチルを作製するために、本明細書に記載の任意のバイオマス材料と他の炭素含有材料とのブレンドを利用することができる。
【0037】
物理的処理
物理的処理プロセスは、本明細書に記載の任意の物理的処理、例えば、機械的処理、化学処理、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、または水蒸気爆砕の一つまたは複数を含んでもよい。処理方法は、これらの技術の2つ、3つ、4つを組み合わせて、またはこれらの技術の全てを組み合わせて(任意の順番で)使用することができる。複数の処理方法が用いられる場合、これらの方法は同時に適用されてもよく、異なる時間で適用されてもよい。バイオマス供給材料の分子構造を変える他のプロセスも単独で、または本明細書において開示されるプロセスと組み合わせて使用することができる。
【0038】
前記の抵抗性を減らすオペレーティングユニットには、下記の処理プロセスの一つまたは複数を含めることができる。代わりに、またはさらに、抵抗性を減らすための他のプロセスを含めることができる。
【0039】
機械的処理
場合によっては、方法は、バイオマス供給材料を機械的に処理する工程を含んでもよい。機械的処理には、例えば、切断、粉砕、押し付け、摩砕、剪断、および切り刻みが含まれる。粉砕は、例えば、ボールミリング、ハンマーミリング、ローター/ステーター乾式粉砕もしくは湿式粉砕、または他のタイプの粉砕を含んでもよい。他の機械的処理には、たとえば、岩の摩砕、クラッキング、機械的な切り離しもしくは引き裂き、ピン研削、または空気粉砕ミリングが含まれる。
【0040】
機械的処理は、セルロース材料またはリグノセルロース材料を「開放(open up)」し、「力を加え」、破壊し、粉々に砕くことによって、材料のセルロースの鎖が切断しやすくなり、および/または結晶化度が小さくなるために有利な場合がある。開放された材料はまた、放射線照射時に酸化しやすくなっている場合がある。
【0041】
場合によっては、機械的処理は、受け取った供給材料の初期調製、例えば、切断、摩砕、剪断、微粉砕、または切り刻みによる材料のサイズ縮小を含んでもよい。例えば、場合によっては、剪断または細断によって、緩い供給材料(例えば、再生紙、デンプン材料、またはスイッチグラス)が調製される。
【0042】
代わりに、またはさらに、供給材料は、他の物理的処理方法、例えば、化学処理、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、または水蒸気爆砕の一つまたは複数によって物理的に処理され、次いで、機械的に処理されてもよい。このシーケンスは、他の処理、例えば、放射線照射または熱分解の一つまたは複数によって処理された材料が脆くなる傾向があるので有利な場合がある。従って、機械的処理によって材料の分子構造をさらに変える方が簡単な場合がある。
【0043】
いくつかの態様において、供給材料は繊維材料の形でもよく、機械的処理は、繊維材料の繊維を曝露する剪断を含む。剪断は、例えば、ロータリーナイフカッターを用いて行うことができる。供給材料の機械的処理の他の方法には、例えば、粉砕または摩砕が含まれる。粉砕は、例えば、ハンマーミル、ボールミル、コロイドミル、コニカルミルまたはコーンミル、ディスクミル、エッジミル、ウイレーミルまたはグリストミルを用いて行われてもよい。摩砕は、例えば、ストーングラインダー、ピングラインダー、コーヒーグラインダー、またはバールグラインダーを用いて行われてもよい。摩砕は、ピンミルと同様に、例えば、往復ピン(reciprocating pin)または他の部品によって行われてもよい。他の機械的処理方法には、機械的な切り離しまたは引き裂き、繊維に圧力を加える他の方法、および空気粉砕ミリングが含まれる。適切な機械的処理は、供給材料の分子構造を変える他の任意の技法をさらに含む。
【0044】
所望であれば、機械的に処理された材料を、スクリーン、例えば、平均目開きが1.59mm(1/16インチ、0.0625インチ)以下のスクリーンに通すことができる。いくつかの態様において、剪断または他の機械的処理およびスクリーニングが同時に行われる。例えば、ロータリーナイフカッターを用いて、供給材料の剪断および選別を同時に行うことができる。供給材料を固定ブレードと回転ブレードとの間で剪断して、剪断された材料を得る。剪断された材料はスクリーンを通り、ビンに取り込まれる。ビンは、公称大気圧より低い圧力、例えば、公称大気圧より少なくとも10パーセント低い圧力、例えば、公称大気圧より少なくとも25パーセント低い圧力、公称大気圧より少なくとも50パーセント低い圧力、または公称大気圧より少なくとも75パーセント低い圧力を有してもよい。いくつかの態様において、真空源を利用して、ビンを公称大気圧より低い圧力に維持する。
【0045】
セルロース材料またはリグノセルロース材料は、乾燥した状態(例えば、材料の表面上に自由水がほとんど無い、もしくは全く無い)、水和した状態(例えば、10重量パーセントまでの吸収した水を有する)、または例えば、約10重量パーセント〜約75重量パーセントの水を有する湿潤状態で機械的に処理することができる。繊維源は、水、エタノール、またはイソプロパノールなどの液体下に部分的にまたは完全に浸した状態で機械的に処理することもできる。
【0046】
セルロース材料またはリグノセルロース材料はまた、(空気以外の気体の流れもしくは雰囲気などの)気体、例えば、酸素もしくは窒素、または蒸気の下で機械的に処理することもできる。
【0047】
所望であれば、リグニンを含むどのような線維材料からでもリグニンを除去することができる。また、セルロースを含む材料の破壊を助けるために、機械的処理または放射線照射の前または間に、材料を、熱、化学物質(例えば、鉱酸、塩基、もしくは強力な酸化剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム)、および/または酵素で処理することもできる。例えば、酸の存在下で摩砕を行うことができる。
【0048】
機械的処理システムは、特定の特徴、例えば、特定の最大サイズ、特定の長さ対幅、または特定の表面積比を有するストリームを生じるような構成でもよい。機械的処理は、材料を開放し、プロセスおよび/または試薬、例えば、溶液中の試薬に接触しやすくすることによって反応速度を速めることができる、または必要とされる加工時間を短くすることができる。機械的処理を用いると、供給材料の嵩密度も制御することができる。例えば、いくつかの態様では、機械的処理後に、材料の嵩密度は、0.25g/cm3未満、例えば、0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3、またはそれ未満の嵩密度、例えば、0.025g/cm3である。嵩密度は、ASTM D1895Bを用いて決定される。簡単に述べると、前記方法は、既知体積のメスシリンダーに試料を満たし、試料の重量を得る工程を含む。嵩密度は、試料の重量、グラムを、メスシリンダーの既知体積、立方センチメートルで割ることによって計算される。
【0049】
供給材料が繊維材料である場合、機械的に処理された材料の繊維は二回以上剪断されても、比較的大きな(例えば、20:1を超える)平均長さ対直径比にすることができる。さらに、本明細書に記載の繊維材料の繊維は、比較的狭い、長さおよび/または長さ対直径比の分布を有してもよい。
【0050】
本明細書で使用する平均繊維幅(例えば、直径)とは、約5,000本の繊維を無作為に選択することによって光学的に決定されたものである。平均繊維長さは、修正された長さ加重長さ(length-weighted length)である。BET (Brunauer, Emmet and Teller)表面積は多点表面積であり、多孔度は、水銀ポロシメトリーによって決定されたものである。
【0051】
供給材料が繊維材料である場合、機械的に処理された材料の繊維の平均長さ対直径比は、例えば、8/1を超えてもよく、例えば、10/1を超えてもよく、15/1を超えてもよく、20/1を超えてもよく、25/1を超えてもよく、または50/1を超えてもよい。機械的に処理された材料の平均繊維長さは、例えば、約0.5mm〜2.5mm、例えば、約0.75mm〜1.0mmでもよく、第二の繊維材料14の平均幅(例えば、直径)は、例えば、約5μm〜50μm、例えば、約10μm〜30μmでもよい。
【0052】
いくつかの態様において、供給材料が繊維材料である場合、機械的に処理された材料の繊維長さの標準偏差は、機械的に処理された材料の平均繊維長さの60パーセント未満であり、例えば、平均長さの50パーセント未満、平均長さの40パーセント未満、平均長さの25パーセント未満、平均長さの10パーセント未満、平均長さの5パーセント未満、さらには平均長さの1パーセント未満である。
【0053】
いくつかの態様において、機械的に処理された材料のBET表面積は、0.1m2/gを超える、例えば、0.25m2/gを超える、0.5m2/gを超える、1.0m2/gを超える、1.5m2/gを超える、1.75m2/gを超える、5.0m2/gを超える、10m2/gを超える、25m2/gを超える、35m2/gを超える、50m2/gを超える、60m2/gを超える、75m2/gを超える、100m2/gを超える、150m2/gを超える、200m2/gを超える、さらには250m2/gを超える。
【0054】
機械的に処理された材料の多孔度は、例えば、20パーセントを超えてもよく、25パーセントを超えてもよく、35パーセントを超えてもよく、50パーセントを超えてもよく、60パーセントを超えてもよく、70パーセントを超えてもよく、80パーセントを超えてもよく、85パーセントを超えてもよく、90パーセントを超えてもよく、92パーセントを超えてもよく、94パーセントを超えてもよく、95パーセントを超えてもよく、97.5パーセントを超えてもよく、99パーセントを超えてもよく、さらには99.5パーセントを超えてもよい。
【0055】
状況によっては、低嵩密度材料を調製し、(例えば、別の場所への輸送を簡単かつ低コストにするために)材料を高密度化し、次いで、材料を低嵩密度の状態に戻すことが望ましい場合がある。高密度化された材料は、本明細書に記載の任意の方法によって加工することができる。または、本明細書に記載の任意の方法によって加工された材料は全て、例えば、WO2008/073186に開示されるように後で高密度化することができる。
【0056】
放射線処理
供給材料を加工するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する構造的に改変された材料を得るために、一回または複数回の放射線照射加工シーケンスを使用することができる。放射線照射によって、例えば、供給材料の分子量および/または結晶化度を小さくすることができる。いくつかの態様では、材料に放射線照射するために、原子軌道から電子を放出する材料に蓄積するエネルギーが用いられる。放射線は、1)重い荷電粒子、例えば、α粒子もしくはプロトン、2)電子、例えば、β崩壊もしくは電子線加速器において生じる電子、または3)電磁放射線、例えば、γ線、X線、もしくは紫外線によって供給されてもよい。一つのアプローチでは、放射性物質によって生じる放射線を用いて、供給材料に放射線照射することができる。いくつかの態様では、(1)〜(3)の任意の組み合わせを任意の順番で、または同時に利用することができる。別のアプローチでは、(例えば、電子線エミッターを用いて生じた)電磁放射線を用いて、供給材料に放射線照射することができる。適用される線量は、望ましい効果および特定の供給材料によって決まる。例えば、高線量の放射線は、供給材料成分内の化学結合を破壊することができる。場合によっては、鎖の切断が望ましい場合、および/またはポリマー鎖の官能基化が望ましい場合、電子より重い粒子、例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオン、または窒素イオンを利用することができる。鎖の開環切断が望ましい場合、鎖の開環切断を高めるために、正に荷電した粒子を、そのルイス酸特性のために利用することができる。例えば、最大酸化が望ましい場合、酸素イオンを利用することができ、最大ニトロ化が望ましい場合、窒素イオンを利用することができる。
【0057】
一つの方法では、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースである、または、これを含む第一の材料に、例えば、電離放射線(例えば、γ線、X線、100nm〜280nm紫外線(UV)、電子線または他の荷電粒子の線)による処理によって放射線照射して、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。第二の材料(または第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/もしくは第一の材料またはその構成糖もしくはリグニンを利用して、水素、アルコール(例えば、エタノールもしくはブタノール、例えば、n-、sec-、もしくはt-ブタノール)、有機酸、炭化水素、またはこれらのいずれかの混合物である、あるいはこれを含む燃料または他の有用な産物を産生することができる微生物と(酵素処理と共に、または酵素処理なく)組み合わせることができる。
【0058】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量、場合によっては、小さな結晶化度も有するセルロースを有するので、第二の材料は、微生物および/または酵素を含有する溶液中での分散性、膨張性、および/または可溶性が概して高い。これらの特性により、第二の材料は、第一の材料と比較して、化学的攻撃、酵素的攻撃、および/または生物学的攻撃に対する感受性が高い。このために、望ましい産物、例えば、エタノールの生産速度および/または生産レベルを大幅に改善することができる。放射線照射によって、材料または材料のバイオプロセスに必要な任意の培地を滅菌することもできる。
【0059】
いくつかの態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10パーセント超小さく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、さらには約75パーセント超小さい。
【0060】
場合によっては、第二の材料のセルロースの結晶化度(C2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より少ない。例えば、(C2)は、(C1)より、約10パーセント超少なく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、さらには約50パーセント超少なくてもよい。
【0061】
いくつかの態様において、開始結晶化度指数(放射線照射前)は、約40〜約87.5パーセント、例えば、約50〜約75パーセント、または約60〜約70パーセントであり、放射線照射後の結晶化度指数は、約10〜約50パーセント、例えば、約15〜約45パーセント、または約20〜約40パーセントである。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な放射線照射後には、5パーセントより低い結晶化度指数となる可能性がある。いくつかの態様において、放射線照射後の材料は実質的に無定形である。
【0062】
いくつかの態様において、開始数平均分子量(放射線照射前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、放射線照射後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な放射線照射後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0063】
いくつかの態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くてもよい。材料の酸化レベルが高ければ、分散、膨張、および/または溶解の助けとなり、さらには、化学的攻撃、酵素的攻撃、または生物学的攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。いくつかの態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において、例えば、空気または酸素の下で放射線照射が行われ、第一の材料より酸化された第二の材料が産生される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基の数が増えていてもよく、これらは材料の親水性を高めることができる。
【0064】
電離放射線
各種類の放射線は、放射線のエネルギーにより決まる特定の相互作用を介して炭素含有材料をイオン化する。重い荷電粒子は、主に、クーロン散乱を介して物質をイオン化する。さらに、これらの相互作用によって、物質をさらにイオン化し得る高エネルギー電子が発生する。α粒子はヘリウム原子の核と同一であり、様々な放射性核種(radioactive nuclei)、例えば、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、いくつかのアクチニド、例えば、アクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリホルニウム、アメリシウム、およびプルトニウムの同位体のα崩壊によって発生する。
【0065】
粒子が用いられる場合、中性(無電荷)でもよく、正に荷電してもよく、または負に荷電してもよい。荷電している場合、荷電粒子は単一の正電荷もしくは負電荷を有してもよく、多重電荷、例えば、1、2、3、さらには4、またはそれより多い電荷を有してもよい。鎖の切断が望ましい場合、正に荷電した粒子は、その酸性が一因で望ましい場合がある。粒子が用いられる場合、粒子は、静止している電子の質量、またはそれより多い質量、例えば、静止している電子の質量の500倍、1000倍、1500倍、2000倍、10,000倍、さらには100,000倍の質量を有してもよい。例えば、粒子は、約1原子単位〜約150原子単位、例えば、約1原子単位〜約50原子単位、または約1〜約25、例えば、1amu、2amu、3amu、4amu、5amu、10amu、12amu、または15amuの質量を有してもよい。粒子を加速するのに用いられる加速器は、静電気学的DC、電気力学的DC、RF線形、磁気誘導線形(magnetic induction linear)、または連続波でもよい。例えば、サイクロトロン型加速器は、IBA, Belgium、例えば、Rhodatron(登録商標)システムから入手可能であるのに対して、DC型加速器はRDI、現在、IBA Industrial、例えば、Dynamitron(登録商標)から入手可能である。イオンおよびイオン加速器は、Introductory Nuclear Physics, Kenneth S. Krane, John Wiley & Sons, Inc. (1988), Krsto Prelec, FIZIKA B 6 (1997) 4, 177-206, Chu, William T., 「Overview of Light-Ion Beam Therapy」, Columbus-Ohio, ICRU-IAEA Meeting, 18-20 March 2006, Iwata, Y. et al., 「Alternating-Phase-Focused IH-DTL for Heavy-Ion Medical Accelerators」, Proceedings of EPAC 2006, Edinburgh, Scotland, and Leaner, CM. et al., 「Status of the Superconducting ECR Ion Source Venus」, Proceedings of EPAC 2000, Vienna, Austriaにおいて議論されている。
【0066】
γ線には、様々な材料への透過の深さが大きいという利点がある。γ線源には、放射性核種、例えば、コバルト、カルシウム、テクニシウム(technicium)、クロム、ガリウム、インジウム、ヨウ素、鉄、クリプトン、サマリウム、セレン、ナトリウム、タリウム、およびキセノンの同位体が含まれる。
【0067】
X線源には、金属標的、例えば、タングステンもしくはモリブデンまたは合金を用いた電子線衝突、または小型光源、例えば、Lynceanによって商業生産されている小型光源が含まれる。
【0068】
紫外線源には、重水素ランプまたはカドミウムランプが含まれる。
【0069】
赤外線源には、サファイア、亜鉛、またはセレン化物ウィンドウセラミックランプが含まれる。
【0070】
マイクロ波源には、クライストロン、Slevin型RF源、または水素ガス、酸素ガス、もしくは窒素ガスを用いた原子線源が含まれる。
【0071】
いくつかの態様では、電子線が放射線源として用いられる。電子線には、線量率が高い(例えば、1Mrad/秒、5Mrad/秒、さらには10Mrad/秒)、高処理、封じ込めが少ない、閉じ込め装置が小さいという利点がある。電子はまた、鎖の切断において効率が高いこともある。さらに、4〜10MeVのエネルギーを有する電子は、5〜30mm以上、例えば、40mmの透過の深さを有し得る。
【0072】
電子線は、例えば、静電発電機、カスケードジェネレータ、変圧発電機(transformer generator)、低エネルギー加速器とスキャニングシステム、低エネルギー加速器とリニアカソード、直線加速器、およびパルス加速器によって発生させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば、積み重なりが比較的薄い、例えば、0.5インチ未満、例えば、0.4インチ未満、0.3インチ未満、0.2インチ未満、または0.1インチ未満の材料に有用な場合がある。いくつかの態様において、電子線の各電子のエネルギーは、約0.3MeV〜約2.0MeV(百万電子ボルト)、例えば、約0.5MeV〜約1.5MeV、または約0.7MeV〜約1.25MeVである。
【0073】
電子線照射装置は、Ion Beam Applications, Louvain-la-Neuve, BelgiumまたはTitan Corporation, San Diego, CAから商業的に入手することができる。代表的な電子エネルギーは、1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeV、または10MeVでもよい。代表的な電子線照射装置の出力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kW、または500kWでもよい。供給材料の解重合のレベルは、使用される電子エネルギーおよび適用される線量によって決まるのに対して、曝露時間は出力および線量によって決まる。代表的な線量は、1kGy、5kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGy、または200kGyの値をとってもよい。
【0074】
イオン粒子線
炭水化物、または炭水化物、例えば、セルロース材料、リグノセルロース材料、デンプン材料、もしくはこれらのいずれかと本明細書に記載の他の材料の混合物を含む材料に放射線照射するために、電子より重い粒子を使用することができる。例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオン、または窒素イオンを利用することができる。いくつかの態様において、電子より重い粒子は(電子より軽い粒子と比較して)多量の鎖の切断を誘導することができる。場合によっては、正に荷電した粒子が、その酸性度により、負に荷電した粒子より多量の鎖の切断を誘導することができる。
【0075】
より重い粒子の線は、例えば、直線加速器またはサイクロトロンを用いて発生させることができる。いくつかの態様において、粒子線の各粒子のエネルギーは、約1.0MeV/原子単位〜約6,000MeV/原子単位、例えば、約3MeV/原子単位〜約4,800MeV/原子単位、または約10MeV/原子単位〜約1,000MeV/原子単位である。
【0076】
ある特定の態様において、炭素含有材料、例えば、バイオマス材料に放射線照射するために用いられるイオンビームは、複数のタイプのイオンを含んでもよい。例えば、イオンビームは、二種類以上(例えば、三種類、四種類、またはそれより多い)の異なるタイプのイオンの混合物を含んでもよい。例示的な混合物は、炭素イオンおよびプロトン、炭素イオンおよび酸素イオン、窒素イオンおよびプロトン、ならびに鉄イオンおよびプロトンを含んでもよい。さらに一般的には、放射線照射イオンビームを形成するために、上記の任意のイオン(または他の任意のイオン)の混合物を使用することができる。特に、一つのイオンビームに、比較的軽いイオンおよび比較的重いイオンの混合物を使用することができる。
【0077】
いくつかの態様において、材料に放射線照射するためのイオンビームには、正に荷電したイオンが含まれる。正に荷電したイオンは、例えば、正に荷電した水素イオン(例えば、プロトン)、希ガスイオン(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン)、炭素イオン、窒素イオン、酸素イオン、ケイ素原子、リンイオン、ならびに金属イオン、例えば、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、および/または鉄イオンを含んでもよい。どの理論にも拘束されるものではないが、このような正に荷電したイオンは、材料に曝露されるとルイス酸部分として化学挙動して、酸化環境においてカチオン性環開口性の鎖切断反応を開始および持続すると考えられている。
【0078】
ある特定の態様において、材料に放射線照射するためのイオンビームには、負に荷電したイオンが含まれる。負に荷電したイオンは、例えば、負に荷電した水素イオン(例えば、水素化物イオン)、ならびに比較的電子陰性のある様々な核の負に荷電したイオン(例えば、酸素イオン、窒素イオン、炭素イオン、ケイ素イオン、およびリンイオン)を含んでもよい。どの理論にも拘束されるものではないが、このような負に荷電したイオンは、材料に曝露されるとルイス塩基部分として化学挙動して、還元環境においてアニオン性環開口性の鎖切断反応を引き起こすと考えられている。
【0079】
いくつかの態様において、材料に放射線照射するためのビームは中性原子を含んでもよい。例えば、バイオマス材料の放射線照射に用いられるビームには、水素原子、ヘリウム原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ネオン原子、ケイ素原子、リン原子、アルゴン原子、および鉄原子のいずれか一つまたは複数を含めることができる。一般的に、前記のタイプの原子のいずれか2つまたはそれより多くからなる(例えば、3つ以上、4つ以上、またはそれより多くからなる)混合物がビームに存在してもよい。
【0080】
ある特定の態様において、材料に放射線照射するのに用いられるイオンビームには、単一電荷イオン、例えば、H+、H-、He+、Ne+、Ar+、C+、C-、O+、O-、N+、N-、Si+、Si-、P+、P-、Na+、Ca+、およびFe+の一つまたは複数が含まれる。いくつかの態様において、イオンビームは、多電荷イオン、例えば、C2+、C3+、C4+、N3+、N5+、N3-、O2+、O2-、O22-、Si2+、Si4+、Si2-、およびSi4-の一つまたは複数を含んでもよい。一般的に、イオンビームはまた、複数の正電荷または負電荷を有するさらに複雑な多核イオンを含んでもよい。ある特定の態様において、多核イオンの構造によって、正電荷または負電荷は、イオンの構造の実質的に全体にわたって有効に分布することができる。いくつかの態様において、正電荷または負電荷は、イオンの構造の複数の部分にわたって、ある程度局在してもよい。
【0081】
電磁放射線
電磁放射線の照射が行われる態様では、電磁放射線は、例えば、102eVを超えるエネルギー/光子(電子ボルト)、例えば、103eV、104eV、105eV、106eV、さらには107eVを超えるエネルギー/光子(電子ボルト)を有してもよい。いくつかの態様において、電磁放射線は、104〜107eV、例えば、105〜106eVのエネルギー/光子を有する。電磁放射線は、例えば、1016hz、1017hz、1018hz、1019hz、1020hz、さらには1021hzを超える周波数を有してもよい。いくつかの態様において、電磁放射線は、1018〜1022hz、例えば、1019〜1021hzの周波数を有する。
【0082】
線量
放射線の線量は供給材料のリグニン含有率に左右される。例えば、場合によっては、バイオマス供給材料中のリグニン1重量%につき、0.1Mrad〜5.0Mrad、例えば、1%につき0.25Mrad〜4.0Mradまたは0.3Mrad〜3.5Mradが送達される。
【0083】
いくつかの態様において、材料に、少なくとも0.25Mrad、例えば、少なくとも1.0Mrad、少なくとも2.5Mrad、少なくとも5.0Mrad、または少なくとも10.0Mradの線量が与えられるまで、放射線照射(任意の放射線源または放射線源の組み合わせによる)が行われる。いくつかの態様において、材料に、1.0Mrad〜6.0Mrad、例えば、1.5Mrad〜4.0Mradの線量が与えられるまで、放射線照射が行われる。
【0084】
いくつかの態様において、5.0〜1500.0キロラド/時間、例えば、10.0〜750.0キロラド/時間、または50.0〜350.0キロラド/時間の線量率で、放射線照射が行われる。
【0085】
いくつかの態様では、二種類以上の放射線源、例えば、二種類以上の電離放射線が用いられる。例えば、試料は、電子線の次に、γ線および約100nm〜約280nmの波長を有するUV光によって任意の順番で処理することができる。いくつかの態様では、試料は、三種類の電離放射線源、例えば、電子線、γ線、およびエネルギーの高いUV光によって処理される。
【0086】
超音波処理
多種多様な供給源に由来する材料を加工して、供給材料から有用な物質を抽出するために、ならびに(有機材料が用いられた時に)さらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解された有機材料を得るために、一回または複数回の超音波処理加工シーケンスを使用することができる。超音波処理によって、材料、例えば、本明細書に記載の任意の材料の一つもしくは複数、例えば、一つもしくは複数の炭水化物供給源、例えば、セルロース材料もしくはリグノセルロース材料またはデンプン材料の分子量および/または結晶化度を小さくすることができる。放射線照射に関して前記で議論したように、超音波処理に用いられるプロセスパラメータは、供給材料のリグニン含有率に応じて異なる。例えば、リグニンレベルの高い供給材料は、一般的に、長い滞留時間および/または高いエネルギーレベルを必要とし、結果として、供給材料に送達される総エネルギーが多くなる。
【0087】
一つの方法では、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第一の材料を、媒体、例えば、水に分散させ、超音波処理して、および/または他の方法で気泡を作って、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。第二の材料(またはある特定の態様では、第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/または第一の材料を利用して、水素、アルコール、有機酸、炭化水素、またはこれらのいずれかの混合物である、あるいはこれを含む燃料を産生することができる微生物と(酵素処理と共に、または酵素処理を伴わずに)組み合わせることができる。
【0088】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量、場合によっては、小さな結晶化度も有するセルロースを有するので、第二の材料は、微生物を含有する溶液中での、例えば、106微生物/mLを超える濃度での分散性、膨張性、および/または可溶性が概して高い。これらの特性により、第二の材料は、第一の材料と比較して、化学的攻撃、酵素的攻撃、および/または微生物攻撃に対する感受性が高い。このために、望ましい産物、例えば、エタノールの生産速度および/または生産レベルを大幅に改善することができる。超音波処理によって材料を滅菌することもできるが、微生物を生かすことになっている間は使用すべきでない。
【0089】
いくつかの態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10パーセント超小さく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、さらには約75パーセント超小さい。
【0090】
場合によっては、第二の材料のセルロースの結晶化度(C2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より少ない。例えば、(C2)は、(C1)より、約10パーセント超少なく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、さらには約50パーセント超少なくてもよい。
【0091】
いくつかの態様において、開始結晶化度指数(超音波処理前)は、約40〜約87.5パーセント、例えば、約50〜約75パーセント、または約60〜約70パーセントであり、超音波処理後の結晶化度指数は、約10〜約50パーセント、例えば、約15〜約45パーセント、または約20〜約40パーセントである。しかしながら、ある特定の態様において、例えば、大規模な超音波処理後には、5パーセントより低い結晶化度指数となる可能性がある。いくつかの態様において、超音波処理後の材料は実質的に無定形である。
【0092】
いくつかの態様において、開始数平均分子量(超音波処理前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、超音波処理後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な超音波処理後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0093】
いくつかの態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くてもよい。材料の酸化レベルが高ければ、分散、膨張、および/または溶解の助けとなり、さらには、化学的攻撃、酵素的攻撃、または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。いくつかの態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化媒体中で超音波処理が行われ、第一の材料より酸化された第二の材料が産生される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基の数が増えていてもよく、これらは材料の親水性を高めることができる。
【0094】
いくつかの態様において、超音波処理媒体は水性媒体である。所望であれば、媒体は、酸化剤、例えば、過酸化物(例えば、過酸化水素)、分散剤、および/または緩衝液を含んでもよい。分散剤の例には、イオン性分散剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、および非イオン性分散剤、例えば、ポリ(エチレングリコール)が含まれる。
【0095】
他の態様において、超音波処理媒体は非水性である。例えば、超音波処理は、炭化水素、例えば、トルエンまたはヘプタン、エーテル、例えば、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランの中で、さらには液化ガス、例えば、アルゴン、キセノン、または窒素の中でも行うことができる。
【0096】
熱分解
多種多様な供給源に由来する炭素含有材料を加工して、材料から有用な物質を抽出するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解された材料を得るために、一回または複数回の熱分解加工シーケンスを使用することができる。リグニンレベルの高い供給材料は、一般的に、熱分解間に高い温度、長い滞留時間、および/または高濃度の酸素の導入を必要とする。
【0097】
一例では、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得るために、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第一の材料を、例えば、(酸素の存在下または非存在下で)チューブ炉の中で加熱することによって熱分解する。第二の材料(またはある特定の態様では、第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/または第一の材料を利用して、水素、アルコール(例えば、エタノールもしくはブタノール、例えば、n-、sec、もしくはt-ブタノール)、有機酸、炭化水素、またはこれらのいずれかの混合物である、あるいはこれを含む燃料を産生する微生物と(酸加水分解もしくは酵素的加水分解と共に、または酸加水分解もしくは酵素的加水分解を伴わずに)組み合わされる。
【0098】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量、場合によっては、小さな結晶化度も有するセルロースを有するので、第二の材料は、微生物を含有する溶液中での、例えば、106微生物/mLを超える濃度での分散性、膨張性、および/または可溶性が概して高い。これらの特性により、第二の材料は、第一の材料と比較して、化学的攻撃、酵素的攻撃、および/または微生物攻撃に対する感受性が高い。このために、望ましい産物、例えば、エタノールの生産速度および/または生産レベルを大幅に改善することができる。熱分解によって第一の材料および第二の材料を滅菌することもできる。
【0099】
いくつかの態様では、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より、約10パーセント超小さく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、さらには約75パーセント超小さい。
【0100】
場合によっては、第二の材料のセルロースの結晶化度(C2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より少ない。例えば、(C2)は、(C1)より、約10パーセント超少なく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、さらには約50パーセント超少なくてもよい。
【0101】
いくつかの態様において、開始結晶化度(熱分解前)は、約40〜約87.5パーセント、例えば、約50〜約75パーセント、または約60〜約70パーセントであり、熱分解後の結晶化度指数は、約10〜約50パーセント、例えば、約15〜約45パーセント、または約20〜約40パーセントである。しかしながら、ある特定の態様において、例えば、大規模な熱分解後には、5パーセントより低い結晶化度指数となる可能性がある。いくつかの態様において、熱分解後の材料は実質的に無定形である。
【0102】
いくつかの態様において、開始数平均分子量(熱分解前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、熱分解後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な熱分解後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0103】
いくつかの態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くてもよい。材料の酸化レベルが高ければ、分散、膨張、および/または溶解の助けとなり、さらには、化学的攻撃、酵素的攻撃、または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。いくつかの態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において熱分解が行われ、第一の材料より酸化された第二の材料が産生される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基の数が増えていてもよく、これらは材料の親水性を高めることができる。
【0104】
いくつかの態様において、材料の熱分解は連続する。他の態様において、材料は、所定の時間、熱分解され、次いで、第二の所定の時間、冷却された後に、再度、熱分解される。
【0105】
酸化
多種多様な供給源に由来する炭素含有材料を加工して、材料から有用な物質を抽出するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解されたおよび/または変化した材料を得るために、一回または複数回の酸化加工シーケンスを使用することができる。酸化条件は供給材料のリグニン含有率に応じて異なり、一般的に、リグニン含有率が高い供給材料には大きな酸化度が望ましい。
【0106】
一つの方法では、例えば、空気または酸素に富む空気のストリームの中で、第一の数平均分子量(MN1)を有し、第一の酸素含有量(O1)を有するセルロースを含む第一の材料を加熱することによって、第一の材料を酸化して、第二の数平均分子量(MN2)を有し、第一の酸素含有量(O1)より高い第二の酸素含有量(O2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。
【0107】
このような材料は固体および/または液体とも組み合わせることができる。液体および/または固体は、微生物、例えば、細菌、および/または酵素を含んでもよい。例えば、細菌および/または酵素は、セルロース材料またはリグノセルロース材料に作用して、燃料、例えば、エタノールまたは副産物、例えば、タンパク質を産生することができる。燃料および副産物は、2006年6月15日に出願された「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」USSN 11/453,951に記載されている。前述の各出願の全内容は参照として本明細書に組み入れられる。
【0108】
いくつかの態様において、第二の数平均分子量は、第一の数平均分子量の97パーセント以下、例えば、第一の数平均分子量の95パーセント以下、90パーセント以下、85パーセント以下、80パーセント以下、75パーセント以下、70パーセント以下、65パーセント以下、60パーセント以下、55パーセント以下、50パーセント以下、45パーセント以下、40パーセント以下、30パーセント以下、20パーセント以下、12.5パーセント以下、10.0パーセント以下、7.5パーセント以下、5.0パーセント以下、4.0パーセント以下、3.0パーセント以下、2.5パーセント以下、2.0パーセント以下、または1.0パーセント以下である。分子量が減少する量は用途によって決まる。例えば、複合体を提供するいくつかの好ましい態様では、第二の数平均分子量は第一の数平均分子量と実質的に同じである。他の用途では、例えば、エタノールまたは別の燃料もしくは副産物を作製する用途では、分子量が減少する量はさらに多いことが一般的に好ましい。
【0109】
材料を用いて燃料または副産物を作製する、いくつかの態様では、開始数平均分子量(酸化前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、酸化後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様では、例えば、大規模な酸化後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0110】
いくつかの態様において、第二の酸素含有量は、第一の酸素含有量より少なくとも約5パーセント多く、例えば、7.5パーセント多く、10.0パーセント多く、12.5パーセント多く、15.0パーセント多く、または17.5パーセント多い。いくつかの好ましい態様において、第二の酸素含有量は、第一の材料の第一の酸素含有量より少なくとも約20.0パーセント高い。酸素含有量は、試料を、1300℃以上で操作されている炉の中で熱分解することで元素分析することによって測定される。適切な元素分析器は、VTF-900高温熱分解炉が付いているLECO CHNS-932分析器である。
【0111】
一般的に、材料の酸化は酸化環境で行われる。例えば、酸化は、酸化環境、例えば、空気または空気に富むアルゴンの中で熱分解することによって行われてもよく、助けられてもよい。酸化を助けるために、酸化の前または間に、様々な化学薬品、例えば、酸化剤、酸、または塩基を材料に添加することができる。例えば、酸化前に過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)を添加することができる。
【0112】
バイオマス供給材料の抵抗性を減らす酸化方法の中には、フェントン化学またはフェントン型化学を用いるものもある。このような方法は、例えば、2008年12月19日に出願された米国特許仮出願第61/139,473号に開示されている。米国特許仮出願第61/139,473号の全開示は参照として本明細書に組み入れられる。
【0113】
例示的なオキシダントには、過酸化物、例えば、過酸化水素および過酸化ベンゾイル、過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウム、活性化型酸素、例えば、オゾン、過マンガン酸塩、例えば、過マンガン酸カリウム、過塩素酸塩、例えば、過塩素酸ナトリウム、および次亜塩素酸塩、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)が含まれる。
【0114】
状況によっては、pHは、接触中に約5.5または約5.5未満、例えば、1〜5、2〜5、2.5〜5、または約3〜5に維持される。条件はまた、2〜12時間、例えば、4〜10時間、または5〜8時間の接触期間を含んでもよい。場合によっては、条件は、300℃を超えない、例えば、250℃、200℃、150℃、100℃、または50℃を超えないことを含む。特別な望ましい場合では、温度は実質的に周囲温度のままであり、例えば、約20〜25℃または約20〜25℃である。
【0115】
いくつかの望ましい態様では、例えば、空気を通して、第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料および一種類または複数の種類の化合物に、粒子線、例えば、電子線を照射することによりインサイチューでオゾンを発生させることによって、一種類または複数の種類のオキシダントが気体として、第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料および一種類または複数の種類の化合物に適用される。
【0116】
特に望ましい態様では、第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料は、最初に、一種類または複数の種類の化合物が分散および/または溶解している水または水性媒体の中に分散され、浸漬時間の後に水は除去され(例えば、遊離した水(loose and free water)および自由水が濾過によって除去され)、次いで、例えば、空気を通して、第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料および一種類または複数の種類の化合物に、粒子線、例えば、電子線を照射することにより(例えば、それぞれ3MeV〜10MeVの電位差によって加速される)インサイチューでオゾンを発生させることによって、一種類または複数の種類のオキシダントが気体として組み合わせに適用される。浸漬によって、酸化に対して内部を開放することができる。
【0117】
いくつかの態様において、混合物は、一種類または複数の種類の化合物および一種類または複数の種類のオキシダントを含み、一種類または複数の種類の化合物と一種類または複数の種類のオキシダントのモル比は、約1:1000〜約1:25、例えば、約1:500〜約1:25または約1:100〜約1:25である。
【0118】
いくつかの望ましい態様において、混合物は、一種類もしくは複数の種類のヒドロキノン、例えば、2,5-ジメトキシヒドロキノン(DMHQ)、および/または一つもしくは複数のベンゾキノン、例えば、2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン(DMBQ)をさらに含む。これらは電子移動反応を助けることができる。
【0119】
いくつかの望ましい態様において、一種類または複数の種類のオキシダントはインサイチューで電気化学的に発生する。例えば、接触容器または反応容器の中で、過酸化水素および/またはオゾンを電気化学的に発生させることができる。
【0120】
可溶化するための、抵抗性を減らすための、または官能基化するための他のプロセス
この段落のプロセスはいずれも、本明細書に記載のプロセス無く単独で、または本明細書に記載の任意のプロセス:水蒸気爆砕、酸処理(鉱酸、例えば、硫酸、塩酸、および有機酸、例えば、トリフルオロ酢酸を用いた濃酸処理および希酸処理を含む)、塩基処理(例えば、石灰または水酸化ナトリウムを用いた処理)、UV処理、スクリュー押出し処理(例えば、2008年11月18日に出願された米国特許出願第61/073,530号を参照されたい)、溶媒処理(例えば、イオン性液体を用いた処理)、ならびに凍結粉砕(例えば、米国特許出願第61/081,709号を参照されたい)と(任意の順番で)組み合わせて使用することができる。
【0121】
熱化学的変換
熱化学的変換プロセスは、高温で炭素含有材料の分子構造を変える工程を含む。具体例には、ガス化、熱分解、改質、部分的な酸化、およびこれらの混合(任意の順番)が含まれる。
【0122】
ガス化は、炭素含有材料を合成ガス(シンガス)に変換する。合成ガス(シンガス)には、メタノール、一酸化炭素、二酸化炭素、および水素が含まれ得る。酢酸生成菌またはホモ酢酸生成菌などの多くの微生物は、バイオマスの熱化学的変換に由来するシンガスを利用して、アルコール、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物を含む産物を産生することができる。様々な技法によって、バイオマス(例えば、セルロース材料またはリグノセルロース材料)のガス化を実現ことができる。例えば、ガス化は、流動層反応器を用いた段階的な蒸気改質を利用して実現することができる。流動層反応器の中では、最初に、炭素材料は酸素の非存在下で熱分解され、次いで、添加水素および酸素を供給する蒸気を用いて、熱分解蒸気は合成ガスに改質される。このような技法ではプロセス熱は木炭の燃焼から生じる。別の技法ではスクリューオーガー反応器を利用する。スクリューオーガー反応器の中では、水分(および酸素)が熱分解ステージに導入され、後の方のステージにおいて生じた気体の一部を燃焼することによってプロセス熱が発生する。別の技法では、同伴流改質(entrained flow reformation)を利用する。同伴流改質においては、外部の蒸気および空気が単段ガス化反応器の中に導入される。部分酸化ガス化においては、蒸気を用いることなく純酸素が利用される。
【0123】
燃料、酸、エステル、および/または他の産物の産生
代表的なバイオマス供給源は、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンと、さらに少ない量のタンパク質、抽出物、および無機質を含有する。前記の加工工程の一つまたは複数がバイオマスに対して行われた後に、任意で、酸加水分解または酵素的加水分解と共に、セルロース画分およびヘミセルロース画分に含まれる複合糖質を発酵性糖に加工することができる。遊離した糖を、様々な産物、例えば、アルコールまたは有機酸に変換することができる。得られる産物は、利用される微生物およびバイオプロセスが起こる条件によって決まる。
【0124】
従って、バイオマス材料は、本明細書に記載の処理方法のいずれか一つまたは複数を用いて、例えば、放射線照射、超音波処理、熱分解、酸化、および水蒸気爆砕の一つまたは複数を用いて、その抵抗性を減らすように処理することができ、このように処理されたバイオマスの少なくとも一部は、アルコール、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物の一つまたは複数を含む産物を産生する微生物を用いて変換することができる。次いで、この産物を、酸性化、エステル化、および/または水素化して、最終産物、例えば、エタノールを形成することができる。場合によっては、熱化学的変換プロセスからのシンガスを利用することができる酢酸生成菌またはホモ酢酸生成菌を利用して、変換効率を高めることができる。
【0125】
これらの産物の中にあるカルボン酸基は一般的には発酵溶液のpHを下げて、一部の微生物、例えば、ピチア・スティピティス(Pichia stipitis)による発酵を阻害する傾向がある。従って、場合によっては、溶液のpHを上げるために、発酵前または発酵中に塩基および/または緩衝液を添加することが望ましい。例えば、発酵培地のpHを、利用される微生物に最適な範囲まで上げるために、水酸化ナトリウムまたは石灰を発酵培地に添加することができる。
【0126】
適切なバイオプロセス方法は、例えば、2009年1月26日に出願された米国特許仮出願第61/147,377号に開示されている。米国特許仮出願第61/147,377号の全開示が参照として本明細書に組み入れられる。
【0127】
一般的に、様々な微生物が、処理された炭素含有材料に作用することによって、例えば、処理された炭素含有材料を発酵させることによって、燃料などの多くの有用な産物を産生することができる。
【0128】
微生物は天然微生物でもよく、操作された微生物でもよい。例えば、微生物は、細菌、例えば、セルロース分解細菌、菌類、例えば、酵母、植物、または原生生物、例えば、藻類、原生動物、もしくは菌類様原生生物、例えば、粘菌でもよい。生物が適合する場合、生物の混合物を利用することができる。微生物は好気性生物でもよく、嫌気性生物でもよい。微生物は、ホモ発酵性微生物(単一の最終産物または実質的に単一の最終産物を産生する微生物)でもよい。微生物は、ホモ酢酸微生物、ホモ乳酸微生物、プロピオン酸細菌、酪酸細菌、コハク酸細菌、または3-ヒドロキシプロピオン酸細菌でもよい。微生物は、クロストリジウム属(Clostridium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ムーレラ属(Moorella)、サーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)、プロプリオニバクテリウム属(Proprionibacterium)、プロピオニスペラ属(Propionispera)、アナエロビオスピリルム属(Anaerobiospirillum)、およびバクテリオデス属(Bacteriodes)より選択される属の微生物でもよい。具体例では、微生物は、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、酪酸菌(Clostridium butyricum)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、サーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、ラクトバチルス・デルブルキ(Lactobacillus delbrukii)、プロピオニバクテリウム・アシディプロピオニシ(Propionibacterium acidipropionici)、プロピオニスペラ・アルボリス(Propionispera arboris)、アナエロビオスピリルム・スクシニクプロデュセンス(Anaerobiospirillum succinicproducens)、バクテリオデス・アミロフィラス(Bacteriodes amylophilus)、またはバクテリオデス・ルミニコラ(Bacteriodes ruminicola)でもよい。例えば、微生物は、望ましい産物を産生するように操作された組換え微生物、例えば、望ましい産物の直接産生が用いられる、望ましいタンパク質をコードすることができる一つまたは複数の遺伝子で形質転換された組換え大腸菌(Escherichia coli)でもよい(例えば、2005年2月8日に発行された米国特許第6,852,517号を参照されたい)。
【0129】
カルボン酸基は一般的には発酵溶液のpHを下げて、一部の微生物、例えば、ピチア・スティピティス(Pichia stipitis)による発酵を阻害する傾向がある。従って、場合によっては、溶液のpHを上げるために、発酵前または発酵中に塩基および/または緩衝液を添加することが望ましい。例えば、発酵培地のpHを、利用される微生物に最適な範囲まで上げるために、水酸化ナトリウムまたは石灰を発酵培地に添加することができる。
【0130】
バイオマスを発酵させてエタノールおよび他の産物にすることができる細菌には、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(Philippidis, 1996, 前記)が含まれる。Leschineら(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 2002, 52, 1155-1160)は、森林土壌から嫌気性中温性セルロース分解細菌であるクロストリジウム・フィトフェルメンタンス(Clostridium phytofermentans)sp. nov.を単離した。クロストリジウム・フィトフェルメンタンス(Clostridium phytofermentans)sp. nov.はセルロースをエタノールに変換する。
【0131】
バイオマスからエタノールおよび他の産物への発酵は、ある特定のタイプの好熱性微生物または遺伝子操作された微生物、例えば、T.マスラニ(T. mathranii)を含むサーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)の種、およびピチア属(Pichia)の種などの酵母種を用いて行われてもよい。T.マスラニの株の一例は、Sonne-Hansen et al. (Applied Microbiology and Biotechnology 1993, 38, 537-541)またはAhring et al. (Arch. Microbiol. 1997, 168, 114-119)に記載のA3M4である。
【0132】
(本明細書に記載の任意の方法によって処理された、または処理されていない)セルロースを含む材料の破壊を助けるために、一種類または複数の種類の酵素、例えば、セルロース分解酵素を利用することができる。ある態様では、最初に、セルロースを含む材料は、酵素を用いて、例えば、水溶液中で材料および酵素を組み合わせることによって処理される。次いで、この材料は、本明細書に記載の任意の微生物と組み合わせることができる。他の態様では、セルロースを含む材料、一種類または複数の種類の酵素、および微生物は同時に、例えば、水溶液中での組み合わせによって組み合わされる。
【0133】
発酵は、一般的に、増殖培地水溶液の中で行われる。増殖培地水溶液は、ビタミン(vitimin)ならびに金属微量元素および微量金属と共に窒素源または他の栄養源、例えば、尿素を含有してもよい。一般的に、増殖培地は無菌であるか、または、少なくとも、微生物数、例えば、細菌数が少ないことが好ましい。増殖培地は任意の望ましいやり方で滅菌することができる。しかしながら、好ましい実施では、滅菌は、増殖培地または混合前の増殖培地の個々の成分に放射線照射することによって達成される。エネルギー消費および結果として生じるコストを最小限にするために、一般的に、放射線の線量は、十分な結果を得ながらもできる限り低くなる線量である。例えば、多くの場合、増殖培地それ自体または増殖培地の成分は、5Mrad未満、例えば、4Mrad未満、3Mrad未満、2Mrad未満、または1Mrad未満の放射線線量で処理することができる。具体例では、増殖培地は約1〜3Mradの線量で処理される。
【0134】
他の態様
多くの態様が説明された。それにもかかわらず、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられ得ることが理解されるだろう。従って、他の態様は以下の特許請求の範囲の中にある。
【0135】
一つの物理的位置で本明細書に記載のプロセスの全てを実施することが可能であるが、ある態様では、プロセスは複数の場所で完了する、および/または輸送中に行われてもよい。
【0136】
本明細書に記載のどのプロセスにおいても、遊離したリグニンを捕獲および利用することができる。例えば、リグニンは、プラスチックとして捕獲されたように用いられてもよく、合成によって他のプラスチックに改良されてもよい。場合によっては、リグニンはエネルギー源として利用することができ、例えば、熱を供給するように燃焼することができる。場合によっては、リグニンはリグノスルホナートに変換することもできる。リグノスルホナートは結合剤、分散剤、乳化剤、または捕捉剤として利用することができる。出発供給材料のリグニン含有率の測定値は、このようなリグニン捕獲プロセスにおけるプロセス管理において使用することができる。
【0137】
リグニンまたはリグノスルホナートが結合剤として用いられる場合、例えば、豆炭の中に、セラミックの中に、カーボンブラックの結合のために、肥料および除草剤の結合のために、塵埃抑制剤として、合板およびパーティクルボードの作製において、動物用飼料の結合のために、ガラス繊維用の結合剤として、リノリウムペーストの中の結合剤として、ならびに土壌安定剤として利用することができる。
【0138】
リグニンまたはリグノスルホナートは分散剤として、例えば、コンクリートミックス、クレー、およびセラミック、染料および色素、革なめし、ならびにセッコウ板の中に使用することができる。
【0139】
リグニンまたはリグノスルホナートは乳化剤として、例えば、アスファルト、色素および染料、殺虫剤、ならびにワックスエマルジョンの中に使用することができる。
【0140】
リグニンまたはリグノスルホナートは捕捉剤として、例えば、微量栄養(mico-nutrient)システム、洗浄用化合物、ならびに水処理システム、例えば、ボイラーおよび冷却システム用の水処理システムにおいて使用することができる。
【0141】
熱源として、一般的に、リグニンは、ホモセルロースより多くの炭素を含有するので、ホロセルロース(セルロースおよびヘミセルロース)より高いエネルギー含有率を有する。例えば、ホロセルロースのエネルギー含有率が1ポンド当たり7,000〜8,000BTUであるのに対して、乾燥リグニンのエネルギー含有率は1ポンド当たり約11,000〜12,500BTUであり得る。従って、燃焼のために、リグニンを豆炭およびペレットに高密度化および変換することができる。例えば、リグニンは、本明細書に記載の任意の方法によってペレットに変換することができる。ゆっくりと燃焼するペレットまたは豆炭の場合、例えば、約0.5Mrad〜5Mradの放射線線量を適用することによって、リグニンを架橋することができる。架橋によって、ゆっくりと燃焼するフォームファクターを作ることができる。ペレットまたは豆炭などのフォームファクターは、空気の非存在下で、例えば、400〜950℃での熱分解によって「合成炭」または木炭に変換することができる。熱分解の前に、構造完全性を維持するために、リグニンを架橋することが望ましい場合がある。
【0142】
従って、他の態様は以下の特許請求の範囲の中にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、産物を作製する方法:
バイオマス供給材料のリグニン含有率を求める工程;
バイオマス供給材料を、機械的処理、化学処理、放射線照射、超音波処理、熱分解、酸化、水蒸気爆砕、およびその組み合わせからなる群より選択されるプロセスによって処理する工程;ならびに
リグニン含有率に基づいて、プロセスのプロセスパラメータを設定する工程。
【請求項2】
処理する工程が、電離放射線を照射する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
設定する工程が、供給材料に送達しようとする電離放射線の線量を設定する工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
バイオマス供給材料中のリグニン1重量%につき0.1Mrad〜5.0Mradが送達される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
バイオマス供給材料中のリグニン1重量%につき0.25Mrad〜4.0Mradが送達される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
バイオマス供給材料中のリグニン1重量%につき0.3Mrad〜3.5Mradが送達される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
電離放射線により処理する工程が、電子線により処理する工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
処理されたバイオマス供給材料の少なくとも一部を、微生物を用いて変換して、産物を産生する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
産物がアルコールを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
産物が、カルボン酸、カルボン酸のエステル、カルボン酸の塩、またはその混合物を含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
第二の供給材料を用いて、求める工程、処理する工程、および設定する工程を繰り返す工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
以下の工程を含む、産物を作製する方法:
複数のペンダントカルボン酸基を有するセルロース材料またはリグノセルロース材料を準備する工程;
水を含む液体中で材料を混合して、第一のpHを有する分散液を得る工程;および
塩基を分散液に添加して、分散液のpHを、第一のpHより高い第二のpHまで上げる工程。
【請求項13】
第一のpHが2.5〜4.5である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
第二のpHが約5〜7である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
糖化剤を分散液に添加して、セルロース材料またはリグノセルロース材料を糖化する工程をさらに含む、請求項12〜14いずれか一項記載の方法。
【請求項16】
糖化された材料と微生物を接触させる工程をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
産物が燃料を含む、請求項12〜16のいずれか一項記載の記載の方法。
【請求項18】
産物がアルコールを含む、請求項12〜16のいずれか一項記載の記載の方法。
【請求項19】
糖化剤がセルラーゼを含む、請求項15または16記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−517346(P2012−517346A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550239(P2011−550239)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/023957
【国際公開番号】WO2010/093829
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(509284598)キシレコ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】