説明

バイオマスの接触分解方法及びそれに用いる脱炭酸・水素化接触分解触媒

【課題】
バイオマスの接触分解によって生成された遊離脂肪酸や炭化水素の過分解を防ぎ、炭素数10〜20の炭化水素のディーゼル留分の回収率を高めた安全性が高いバイオマスの接触分解方法を提供する。
【解決手段】
接触分解触媒を350℃〜475℃に加熱した1〜10気圧の水素雰囲気の反応容器中でバイオマスと接触させ、バイオマスから炭素数10〜20の炭化水素を主として生成するバイオマスの接触分解方法であって、接触分解触媒に脱炭酸分解触媒及び水素化触媒が担持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスの接触分解方法及びそれに用いる脱炭酸・水素化接触分解触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料に依存している現代社会において、石油資源の枯渇、環境問題の面から、石油代替燃料として、資源の循環型社会の形成に寄与するためバイオ燃料の研究や使用が進められている。植物油脂及び動物油脂のディーゼル燃料への変換は再生可能エネルギー製造プロセスの1つであり、特に石油に代わる燃料として期待されている。
最も主流な技術は、トリグリセライドにメタノールを加えてエステル交換する方法で、FAME(脂肪酸メチルエステル)とグリセリンを生成する。その他の方法としては水素化処理法、接触分解、及び無触媒での分解により炭化水素と水を生成する方法等がある。FAME法では、副原料として石油由来のメタノールが必要であるとともに、副生物として生成されるグリセリンの利用法が乏しく、その分離操作も必要でコストがかかり、また、得られる燃料が固化し易い等、燃料としての品質に欠けるという課題を有していた。
また、水素化処理法については(特許文献1)に、「C4+化合物を作製する方法であって、水及びC1+1+炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を水性液相及び/又は気相中に提供する工程又は操作、H2を提供する工程又は操作、脱酸素化触媒の存在下、脱酸素化温度及び脱酸素化圧力にてこの酸素化炭化水素を液相及び/又は気相中でH2と触媒反応させることで反応流中にC1+13炭化水素を含む酸素化物を生成させる工程又は操作、並びに縮合触媒の存在下、縮合温度及び縮合圧力にてこの酸素化物を液相及び/又は気相中で触媒反応させることでC4+化合物を生成させる工程又は操作を含む、糖、糖アルコール、セルロース化合物、リグノセルロース、ヘミセルロース、及びサッカライド等のバイオマス由来酸素化炭化水素から炭化水素、ケトン、及びアルコールを作製するための方法、反応器系、及び触媒。」が開示されている。また、(特許文献2)には、「脂肪酸または低級アルコールとの脂肪酸エステルを含む原料油を、酸性触媒を用いて分岐の脂肪酸または脂肪酸エステルに変換すること、それに続いて、得られた分岐の脂肪酸または脂肪酸エステルを、脱炭酸化/脱カルボニル化不均一系触媒または水素化脱酸素化触媒のどちらかと接触させることによって、分岐の炭化水素に変換する、草木、植物、動物ならびに魚類の脂肪および油ならびに脂肪酸といった再生可能資源から、ディーゼル燃料プールとして適切な、分岐の飽和炭化水素の製造のための触媒方法」が開示されている。これら水素化処理法に用いられる触媒として(特許文献3)には、「ケイ素とマグネシウムを主成分とする実質的に非晶質の金属酸化物担体に、活性金属として周期律表第VIII族貴金属の中から選ばれた少なくとも1種を担持してなる炭化水素油の水素化精製触媒であって、担体のMg/Siの原子比は0.45〜1.5であり、周期律表第VIII族貴金属が白金および/またはパ ラジウムからなり、周期律表第VIII族貴金属は全触媒に対して0.05〜5重量%の範囲の量で担持されたもの」が開示されている。
また、発明者等は鋭意研究を進め、「高温大気圧下で350〜470℃の容器内で、バイオマスと脱炭酸分解触媒を接触させ、接触分解させることでC8〜C24の炭化水素を主とした良質のバイオディーゼル燃料を効率よく得るバイオディーゼル燃料の製造方法と油脂脱炭酸分解触媒」を発明し特許出願した(特許文献4)。さらに、発明者等は研究を続け、接触分解に用いる触媒の作用や反応経路の特定を行った(非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−535703号公報
【特許文献2】特表2009−518533号公報
【特許文献3】特開2001−3064号公報
【特許文献4】国際公開第2010/050186(WO,A1)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H. Tani et al., Catalysis Today 164, 410-414(2011)
【非特許文献2】H. Tani et al., Development of Direct Production Process of Diesel Fuel from Vegetable Oils. Journal of the Japan Institute of Energy, 90, 466-470,2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、高温高圧の環境下で反応させるので、高圧に耐えうる設備が必要であるとともに、厳密な作業安全の確保が必要であり作業性・メンテナンス性に欠けるという課題を有していた。また、炭化水素や含酸素化合物を回収し、分別・混合することでバイオ燃料を得るので、バイオ燃料を得るには複数の工程が必要であり煩雑であるとともに、含酸素化合物を得るための反応でもあるため、接触分解では脱酸素・脱炭酸が十分に進まず、分解生成物中の脂肪酸やケトンが増加し、炭素数10〜20の炭化水素を選択的に得ることができないという課題を有していた。
(2)(特許文献2)に開示の技術は、原料油を骨格異性化させた後に、脱炭酸化/脱カルボニル化または水素化脱酸素化どちらかを利用してバイオ燃料を得るものであり、脱炭酸化/脱カルボニル化を利用する場合は炭素数10〜20の炭化水素の選択性が低く、水素化脱酸素化を利用する場合は分解生成物における残渣が増える傾向にあるとともに、ディーゼル燃料として望ましくない芳香族化が起こるので、芳香族炭化水素が排ガス中の黒煙の原因となり、燃料としての寿命も短いという課題を有していた。
(3)(特許文献3)に開示の技術は、炭化水素油に含まれる芳香族炭化水素及び不飽和炭化水素を飽和炭化水素に変換するとともに、硫黄及び窒素分を除くものであり、使用する触媒は固体酸として機能するので、接触分解で用いると、脱炭酸分解反応が十分に進行せず、分解生成物中の炭化水素の選択性が低くなるという課題を有していた。
(4)(特許文献4)に開示の技術は、バイオマス由来の油脂や搾油原料等を加熱して大気圧で脱炭酸分解触媒と接触分解させるので、安全性に優れ、更にグリセリン等の副生物が無く、質の良いバイオディーゼル燃料を製造することができるが、バイオマスの分解よって生成される遊離脂肪酸や炭化水素中の二重結合部の過分解を防ぐことができず、ディーゼル留分の回収率が上がらず、炭素数10〜20の炭化水素の選択性が低いという課題を有していた。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、大気圧下で接触分解するので、作業上での安全性が高く、少量の水素で水素化処理ができ、分解油の流動性も高く、ディーゼル油留分の多いバイオ燃料を得ることができるバイオマスの接触分解方法を提供することを目的とする。また、バイオマスの接触分解において、脱炭酸分解反応により良質なバイオディーゼル燃料を効率よく得るとともに、水素化によって炭化水素の過分解を防ぐので、ナフサ等の軽質分や残渣が少なく、分解生成物における原料バイオマス由来の炭素数10〜20の炭化水素の選択性が高い脱炭酸・水素化接触分解触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明のバイオマスの接触分解方法及びそれに用いる脱炭酸・水素化接触分解触媒は、以下の構成を有している。
請求項1に記載のバイオマスの接触分解方法は、接触分解触媒を350℃〜475℃に加熱した1〜10気圧の水素雰囲気の反応容器中でバイオマスと接触させ、前記バイオマスから炭素数10〜20の炭化水素を主として生成するバイオマスの接触分解方法であって、前記接触分解触媒に脱炭酸分解触媒及び水素化触媒が担持されている構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)脱炭酸・水素化接触分解触媒を収容した反応容器に水素を導入しながら接触分解を行うので、脱炭酸分解触媒によるバイオマスの脱炭酸分解反応が進行するとともに、水素化触媒により不飽和脂肪酸や不飽和炭化水素が水素化されるので、過分解による分解生成物の低分子化が起こり難く、炭素数10〜20のディーゼル油留分の回収率を向上させることができる。
(2)脱炭酸分解触媒の脱炭酸分解反応によって、分解油の酸価やヨウ素価が低下し、水素化触媒の水素化により、直鎖の飽和炭化水素が得られるとともに、接触分解によって炭化水素が異性化し、一部iso体の炭化水素が得られるので、高セタン価で流動点の低く、高品質なバイオディーゼル燃料を得ることができる。
(3)大気圧下で不飽和脂肪酸や不飽和炭化水素の水素化を行うことができるので、高圧下での反応に比べて安全性に優れる。
(4)反応容器内を高圧にしないので制御が簡単で、消費する水素量が少なく、省資源性に優れる。
【0008】
ここで、原料となるバイオマスとしては、再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものであり、具体例としては、搾油して得られた菜種油,パーム油,パーム核油,オリーブ油,大豆油,エゴマ油,ひまし油,ヤトロファ油,コーン油等の植物油、テルペン類、魚油,豚脂,牛脂等の動物脂等、ある種の藻類から採取された油脂やこれらの混合物を用いることができる。また、天ぷら油等の廃食用油を用いることもできる。常温で固化する豚脂,牛脂等の油脂は、加熱された触媒や予熱により融けて液状化するため、油脂は液状,固形状のいずれも用いることができる。また、油脂等から分離される遊離脂肪酸からなるダーク油、廃プラスチック、汚泥も原料として用いることができる。
【0009】
更にバイオマスとして、アブラヤシの果肉や種子,ココヤシの胚乳,菜種,オリーブの果実,エゴマやトウゴマ等の種子,ナンヨウアブラギリ(ヤトロフア)やコウヒジュの種子等の搾油前の植物の果実や種子等の搾油原料を用いることができる。またある種の藻類は油脂を細胞内に蓄えることが知られており、この藻類を脱水して濃縮したものを用いることもできる。搾油原料は乾燥させた後に用いるのが好ましい。水分を除去して加熱効率を高めるためである。また、脱炭酸分解触媒による分解効率を高めるため、搾油原料は、粉砕若しくは破砕して表面積を広くしたものを用いるのが好ましい。圧搾等によって搾油された後の廃搾油原料も用いることができる。これらは搾油後であっても、まだ多くの油脂が残存しているためである。また、同様の理由で油脂や搾油原料と鉱物油との混合物として、ヘキサンなどの鉱物油によって熱的に搾油した後の搾油原料なども使用できる。
なお、搾油原料の殻等のセルロースは、炭化して反応容器内に残留するため、残留した炭化物は必要に応じて反応容器内から抜き出せば良い。
搾油原料や廃搾油原料を350℃〜475℃で脱炭酸分解触媒に接触すると、搾油原料の内の殻等のセルロースが炭化されるとともに、搾油原料の油脂成分が溶出して脱炭酸分解触媒に接触して油脂成分中の脂肪酸のエステル結合部分が開裂され、触媒による脱炭酸分解反応が起こり、バイオ燃料を得ることができる。
【0010】
脱炭酸分解触媒としては、シリカ、活性化された炭素、固体塩基、粘度鉱物、アルカリ被毒した固体酸の1以上が用いられる。活性化された炭素としては、例えば1000℃前後の高温で処理された粒粉状や繊維状等の炭化物が挙げられる。
具体的には、活性炭(特に、500℃以上の高温で賦活されたもの)、コークス、活性コークス、MgO,CaO,SrO,BaO等のアルカリ土類金属酸化物、La23,Th23等のランタノイド,アクチノイドの酸化物、ZrO2やTiO2等の金属酸化物、アルカリ土類金属等の金属炭酸塩、SiO2−MgO,SiO2−CaO等の複合酸化物、RbやCs等のアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンで交換したゼオライト、アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を添加し部分的あるいは全面的に被毒したFCC触媒やFCC廃触媒、Na,K等のアルカリ金属が蒸着されたNa/MgO,K/MgO等の金属蒸着金属酸化物、KF/Al23,LiCO3/SiO2等のアルカリ金属塩等を用いることができる。これらの混合物を用いることもできる。また、加熱されるとMgOとCaOの混合物となるドロマイト等の鉱物も好適に用いることができる。
【0011】
水素化触媒としては、周期表第8B族、Cu、Re等を用いることができる。また、C
o,Ni,Cr,Zn,W等は酸化物又は硫化物、Rh,Ru,Ir,Pt,Co,Cr,Ti等の錯体も用いることができる。
【0012】
バイオマスは、脱炭酸・水素化接触分解触媒に接触させる前に、350℃以下の温度で予熱することもできる。脱炭酸・水素化接触分解触媒と接触した後、速やかに加熱されるようにして、分解効率を高めるためである。
【0013】
反応容器中の脱炭酸分解触媒の加熱温度が350℃より低くなると、脱炭酸分解反応の進行が遅くなり未分解成分が多くなるとともに、MgOが再生しなくなる傾向がみられる。また、475℃より高くなると、ガスやコークの生成量が増加し、炭素数10〜20の炭化水素を主成分とする生成物の生成量が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0014】
反応容器としては、例えば、脱炭酸・水素化接触分解触媒が収容された反応容器と、反応容器内の脱炭酸・水素化接触分解触媒を加熱する加熱装置とを備えたものが用いられる。反応容器は、固定床方式、流動床方式、ロータリキルン方式、撹拌方式等を用いることができる。なかでも、撹拌方式が好ましい。操業中に反応条件等が悪化すると、脱炭酸・水素化接触分解触媒の表面に油脂等の分解物(芳香族化合物等)が重合して付着し、その重合物によって複数の脱炭酸・水素化接触分解触媒が結合して反応容器内で塊状化して操業できなくなることがあるが、撹拌によって機械的に解砕し局地的コーキングを防止できるからである。
【0015】
脱炭酸・水素化接触分解触媒を加熱し反応温度に達したら、搾油原料や廃搾油原料・油脂等のバイオマスを噴霧,噴射,滴下,散布等によって反応容器内に導入し、脱炭酸・水素化接触分解触媒と接触させる。連続式に処理を行なっても良いし、バッチ式に処理を行っても良い。
また、水素を連続的に導入することにより、接触分解により生成された分解生成物を系外に排出させるキャリアガスとして作用させることができるとともに、水素化触媒に吸着した水素分子は水素原子に解離し、不飽和炭化水素の二重結合を水素化するので、不飽和炭化水素の過分解による分解生成物の低分子化を防ぐことができる。排出された分解生成物は冷却されバイオディーゼル燃料として回収される。
水素に加え、窒素ガス,ヘリウムガス等の不活性ガスや水蒸気等を同時に導入しても良い。水素の導入量は、原料中の不飽和結合を水素化するのに十分な量が導入されれば良い。
【0016】
脱炭酸・水素化接触分解触媒と接触したバイオマスの反応の一例を示すと、活性コークスに担持される脱炭酸分解触媒としてMgOを用いた場合、MgOは脂肪酸と反応することで炭酸マグネシウムとなる。生成された炭酸マグネシウムは350℃以上で分解して脱炭酸が起こりMgOとなるため、反応容器の加熱温度内で脱炭酸後のMgOは繰り返しバイオマスの分解に寄与することができる。
【0017】
反応容器内の圧力は、1〜10気圧が選択されるが、大気圧乃至は2〜3気圧程度に維持するのが好ましい。バイオマス等の脱炭酸分解により軽油や灯油等の可燃性ガスが生成されるため、負圧であると反応容器内に空気が導入され、反応容器に導入した水素や生成された可燃性ガスに着火し爆発する可能性があるからである。
【0018】
脱炭酸分解工程において、バイオマスの脱炭酸・水素化接触分解触媒(体積)に対する1時間当たりの投入量(体積)を示す液空間速度は0.05〜2.0h-1、好ましくは0.15〜1.0h-1が好適に用いられる。液空間速度が0.05h-1未満であると、処理効率が低い上に2次的な分解により生成油分が軽質ガス成分が増加して、灯・軽油分の収率が低下する傾向にあり好ましくない。また2.0h-1を超えると、触媒と油脂等のバイオマスとの接触時間が短くなりバイオマスの分解率が低下するとともに、ケトン等が多いので酸価が高くなる傾向にあり好ましくない。
【0019】
反応容器に収容される脱炭酸・水素化接触分解触媒の量は、5vol%〜60vol%、好ましくは20vol%〜50vol%が選択される。脱炭酸・水素化接触分解触媒の量が、20vol%よりより少なくなるにつれ、該触媒に接触できるバイオマスの比率が下がり、加熱により熱分解するバイオマスの比率が上がるので、分解生成物中の軽質ガスの量が増え、バイオ燃料の回収率が下がり、5vol%より少なくなるにつれ、この傾向が顕著となり好ましくない。また、50vol%より多くなるにつれ、撹拌効率が悪かったり、搾油原料等の嵩の大きい原料を投入した場合に触媒と接触が悪く加熱によって熱分解される原料が増え、残渣が増える傾向にあり、60vol%より大きくなるにつれ、この傾向が顕著となり好ましくない。
また、失活した脱炭酸・水素化接触分解触媒は、必要に応じて反応容器内で若しくは反応容器から抜き出した後、再生することができる。
【0020】
上記のバイオマスの接触分解方法で用いられる接触分解装置は、350℃〜475℃に加熱した水素化接触分解触媒とバイオマスを接触させ1〜10気圧の水素雰囲気下で前記バイオマスの接触分解が行われる反応容器と、前記反応容器に配設され前記バイオマスを供給する供給部と、前記反応容器を加熱する加熱部と、前記反応容器に配設され水素を導入する水素導入部と、前記反応容器に配設され分解生成物が水素によって排出される導出部と、前記導出部に連設し前記分解生成物中の分解油を回収する分解油貯留部と、を備えていることを特徴とする。
反応容器としては、前記〔0014〕欄に記載の反応容器、触媒としては、前記〔0010〕に記載の脱炭酸分解触媒や〔0011〕欄及に記載の水素化触媒が用いられる。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)搾油原料や油脂等のバイオマスが加熱された脱炭酸分解触媒によって加熱されると同時に脱炭酸分解反応が進行するとともに水素化反応も同時に進行するので、コークス等の発生が少なく、回収率が高いとともに、脱炭酸分解触媒の効果を維持しつつ、水素化触媒によって炭化水素の不飽和結合が熱分解等を起こす前に水素化するため、搾油原料や油脂等のバイオマス由来の炭素数10〜20の炭化水素を選択的に回収することができる。
【0021】
本発明の請求項2に記載の脱炭酸・水素化接触分解触媒は、請求項1に記載のバイオマスの接触分解方法に用いる脱炭酸・水素化接触分解触媒であって前記脱炭酸・水素化接触分解触媒が、炭素を担体とし、脱炭酸分解触媒及び水素化触媒が担持されている構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)脱炭酸分解触媒と水素化触媒の両方を備えているので、脱炭酸分解触媒の脱炭酸分解反応により、油脂由来の炭素数を主成分とする炭化水素が生成するとともに、水素化触媒が不飽和炭化水素や不飽和脂肪酸中の二重結合を水素化し、飽和炭化水素にするので、過分解を抑え、分解生成物における原料油脂由来の炭素数10〜20の炭化水素の選択性を向上することができる。
(2)脱炭酸分解触媒と水素化触媒を炭素に担持させているので、炭素が持つ脱炭酸作用も加わり、接触分解の分解効率を高めることができる。
【0022】
脱炭酸・水素化接触分解触媒の担体である炭素としては、コークス、活性コークス、活性炭が用いられるが、炭素の粒子サイズは、用いる反応容器が固定床の場合は1〜3mm,反応容器が撹拌型の場合は0.1〜3mmが好適に用いられる。
固定床の場合、粒子サイズが1mmより小さくなるにつれ、コーキングによる反応系の閉塞が置き易くなる傾向にあり好ましくない。また粒子サイズが3mmより大きくなるにつれて、触媒間に空間ができるので、油脂が通ることができるが、粒子が大きい分、単位体積当りの表面積が小さいので、接触効率が悪くなる傾向にあり好ましくない。撹拌型の場合、粒子サイズが0.5mmより小さくなるにつれ、飛散する触媒の量が増す傾向にあり好ましくない。また、3mmより大きくなるにつれ、単位体積当りの表面積が小さいので、接触効率が悪くなる傾向にあり好ましくない。
また、細孔容積が0.1cm3/g以上,比表面積が200m2/g以上の物が好適に用いられる。
細孔容積が0.1cm3/gより小さくなるにつれ、担持できる脱炭酸分解触媒や水素化触媒の量が少なくなり、分散度が下がるので、脱炭酸分解及び水素化の効率が下がる傾向にあり好ましくない。
比表面積が200m2/gより小さくなるにつれ、脱炭酸分解触媒や水素化触媒の分散度が下がるとともに、原料との接触面積が小さくなるので、分解効率が低下する傾向にあり好ましくない。
尚、細孔容積と比表面積の上限は、担体の形状による。
【0023】
炭素に脱炭酸分解触媒及び水素化触媒を担持させる方法としては、含浸法、沈殿法、ゾルゲル法、共沈法、イオン交換法、混練法、蒸発乾固法等の通常の方法によれば良く、特に限定されるものではないが、含浸法が好ましい。
また、炭素に脱炭酸分解触媒及び水素化触媒を担持させる時は、触媒の種類によってはどちらを先に担持させても良いが、水素化触媒が表面に担持されるよう脱炭酸分解触媒を担持させた後に水素化触媒を担持させる方が好ましい。触媒の混合溶液を用いて一度に担持させても良い。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の脱炭酸・水素化接触分解触媒であって、前記炭素に対して、5〜50wt%の前記脱炭酸分解触媒が担持されている構成を有している。
この構成により、請求項2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)脱炭酸分解触媒が所定の割合で炭素に担持されるので、水素化触媒の担持量にかかわらず、水素化触媒によって脱炭酸分解反応が阻害されることなく、分解生成物中の分解油を高い回収率で得ることができる。
【0025】
炭素に担持される脱炭酸分解触媒の割合は5〜50wt%、好ましくは5〜15wt%が好適に選ばれる。脱炭酸分解触媒の割合が5wt%より低くなるにつれ、脱炭酸分解反応が不十分となり、生成物中に含酸素化合物が増える傾向にあり好ましくない。また、50wt%より高くなるにつれ、シンタリングが起こり易く、表面積が小さくなるので、脱炭酸分解反応効率が低下する傾向になり好ましくない。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の脱炭酸・水素化接触分解触媒であって、前記炭素に対して、0.3〜20wt%の前記水素化触媒が担持されている構成を有している。
この構成により、請求項2又は3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)水素化触媒が所定の割合で炭素に担持されることにより、脱炭酸分解反応に加え、不飽和結合の水素化も過不足無く行われるので、分解生成物における原料油脂由来の炭素数10〜20の炭化水素の選択性を向上させることができる。
【0027】
活性コークスに担持される水素化触媒の割合は、0.3〜20wt%が担持される。水素化触媒の割合が0.3wt%より低くなるにつれ、二重結合の水素化が十分に行われず、過分解される不飽和炭化水素の割合が増え、炭素数10〜20の飽和炭化水素の選択性が減少する傾向にあり好ましくない。また、20wt%より高くなるにつれ、シンタリングが起こり易く、表面積が小さくなるので、水素化反応効率が低下する傾向にあり好ましくない。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか1に記載の脱炭酸・水素化接触分解触媒であって、前記脱炭酸分解触媒が、MgOである構成を有している。
この構成により、請求項2乃至4のいずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)MgOが担持されていることにより、バイオマスが熱エネルギーで分解されて生成される脂肪酸に対する脱炭酸分解反応が促進され、効率よく油脂が分解されるので、分解油の収率を増すことができるとともに、残渣の量を減少させることができる。
(2)MgOは、脱炭酸分解反応後に炭酸マグネシウムとなるが、350℃以上で分解し、脱炭酸されることでMgOに戻る。そのため、使用する際の加熱温度によっては、繰り返し脱炭酸分解反応に寄与することができる。
【0029】
接触分解において、脱炭酸分解触媒は、油脂が分解して生成される脂肪酸を直接脱炭酸することにより、脂肪酸由来の炭素数−1の炭化水素を生成するとともに、脂肪酸をケトン化し、更にケトンが分解することにより、アセトンと原料由来の脂肪酸の炭素数−2の炭化水素を生成する。MgOは、これらの脱炭酸分解反応を促進する効果があることを確認したので、触媒の脱炭酸効果を高めることができる。
また、接触分解により直鎖状の炭化水素の一部が分枝状の炭化水素に異性化するので、分解生成物中の分解油の流動点の低下が期待される。
【0030】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5のいずれか1に記載の脱炭酸・水素化接触分解触媒であって、前記水素化触媒が、Pd,Ni,Fe,Ru,Ptのいずれか1以上である構成を有している。
この構成により、請求項2乃至5のいずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)Pd,Ni,Fe,Ru,Ptは、炭素の重結合を単結合に水素化する反応に優れるので、水素圧等を高圧にしなくてもよく、不飽和炭化水素の重結合部分が分解される前に素早く水素化し過分解を防ぐことができるため、炭素数10〜20の飽和炭化水素の選択性を向上することができる。
【0031】
水素化触媒には、目的とする水素化反応に応じて触媒が選択され、水素圧や反応温度も選択性に大きな影響を与える。
Pd,Ni,Fe,Ru,Ptは、炭化水素中の炭素の二重結合や三重結合を単結合に水素化する反応性に優れるが、中でもNi,Feは、金属として比較的安価であるので、触媒を安価に提供できるので好適である。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明のバイオマスの接触分解方法及びそれに用いる脱炭酸・水素化接触分解触媒によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)炭素数10〜20のディーゼル留分の回収率が高く、高圧下での反応に比べ安全性に優れるバイオマスの接触分解方法を提供することができる。
【0033】
請求項2に記載の発明によれば、
(1)油脂由来の炭素数を主成分とする炭化水素が生成するとともに、分解生成物中の不飽和炭化水素や不飽和脂肪酸中の二重結合を水素化し、過分解を抑え、分解生成物中の炭素数10〜20の炭化水素の選択性が高い脱炭酸・水素化接触分解触媒を提供することができる。
【0034】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、
(1)水素化触媒に脱炭酸分解触媒の脱炭酸分解反応を阻害することなく、分解生成物中の分解油の収率が高い脱炭酸・水素化接触分解触媒を提供することができる。
【0035】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3の効果に加え、
(1)脱炭酸分解触媒の脱炭酸分解反応を阻害することなく、分解生成物中の炭素数10〜20の炭化水素の選択性が高い脱炭酸・水素化接触分解触媒を提供することができる。
【0036】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2乃至4いずれか1の効果に加え、
(1)効率よく油脂が分解されるので、分解油の収率型各、残渣量も少ない脱炭酸・水素化接触分解触媒を提供することができる。
【0037】
請求項6に記載の発明によれば、請求項2乃至5のいずれか1の効果に加え、
(1)水素圧を高圧にすることなく、炭素の重結合部分を素早く水素化し過分解を防ぐことができる脱炭酸・水素化接触分解触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態1のバイオマスの接触分解方法に用いる反応装置の構成図
【図2】分解生成物のマテリアルバランスを示した図
【図3】実施例1及び比較例1の炭素数分布を示した図
【図4】実施例2及び比較例1の炭素数分布を示した図
【図5】実施例3及び比較例1の炭素数分布を示した図
【図6】実施例1の分解生成物の炭素数分布におけるn−パラフィンとiso−パラフィン量を示した図
【図7】実施例1の分解生成物の炭素数分布におけるオレフィンとパラフィンの量を示した図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、実施例で使用した接触分解の反応装置について説明する。
図1は実施の形態1の反応装置の構成図である。
図中、1は実施の形態1のバイオマスの接触分解方法に用いる反応装置、2は反応容器、3は反応容器2に収容された活性コークスに脱炭酸分解触媒としてMgOが担持され水素化触媒としてPd,Ni,Fe等が担持された脱炭酸・水素化接触分解触媒、4は反応容器2に収容された脱炭酸・水素化接触分解触媒3を350〜475℃に加熱するヒータ、5は反応容器2に油脂や搾油原料を噴霧,滴下,散布等によって投入する原料投入部、6は反応容器2にキャリアガスとして水素ガスを導入する水素導入部、7は脱炭酸・水素化接触分解触媒3を撹拌する撹拌装置、8は反応容器2内で生じた生成物をキャリアガスに同伴させて反応容器2の外へ導出する導出管、9は導出管8が接続され生成物を0℃に冷却し沸点が0℃以上の分解油を貯留する分解油貯留部、10は分解油貯留部9の下部側に配設された分解油取出部、11は一端が分解油貯留部9に接続された排出管、12は排出管11の他端が接続され−80℃に冷却された沸点が0℃未満の液化した軽質油を貯留する軽質油貯留部、13は軽質油貯留部12の下部側に配設された軽質油取出部、14は一端が軽質油貯留部12に接続されたガス排出管、15はガス排出管14に連設し残留水素や分解生成ガスを水素導入部6に返送する返送管、16はガス排出管14に配設され排出される残留水素や分解生成ガスを適宜燃焼させる燃焼装置である。
尚、キャリアガスは水素ガスに加え、窒素ガス等の不活性ガスや水蒸気等を混合しても良い。また、軽質油を得る必要が無い場合は、軽質油貯留部12は設けなくても良い。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
脱炭酸・水素化接触分解触媒の担体として、粒径が1.18〜2.36mm,細孔容積が0.14cm3/g,比表面積が256m2/gの活性コークス(日本コークス工業株式会社製)を21.5g準備し、活性コークスの細孔容積と同じ水分量で、99+(Ti)%Mg(NO32・6H2O(和光純薬工業株式会社製)を7.5gの水に溶解し、活性コークスに一様に行きわたるように滴下した。その後、エバポレータにてある程度の水分を除去し、120℃で一晩乾燥させた。更に、N2雰囲気で3h昇温、500℃で3h焼成することで、活性コークスにMgOを10wt%担持させた。
次に、Pdが0.5wt%になるように、4.5wt%の有機パラジウム溶液2.76gをアセトン8mL希釈し、MgOを担持させた活性コークスを含浸して、同様に乾燥と焼成を行い、Pdを0.5wt%担持させ、触媒として0.5wt%Pd/10wt%MgO/Carbonを得た。
この触媒を、容積150mLの円筒形の反応容器に50mL収容し、撹拌直径40mmの撹拌羽根を有した撹拌装置で100rpmの速度で撹拌しながら、430℃まで加熱した。触媒の加熱温度は、反応容器に入れた熱電対(図示しない)によって測定した。
触媒が所定の温度に上昇したのを確認し、水素導入部から水素を50mL/minで流しながら、原料投入部から油脂としてパーム油をポンプを用いて0.25mL/minで連続的に投入し反応を行った。
反応時間は300minとし、油脂を合計69.1g投入して水素化接触分解反応を行った。分解油貯留部にて分解油を貯留し、軽質油貯留部にて軽質の分解油を回収し、残りのガス成分は、ガス排出管と連設したGCで定量した。低級炭化水素はGC−FID(株式会社島津製作所製)を使用し、COとCO2はGC−TCD(株式会社島津製作所製)を使用して分析した。また、得られた分解油は、GC−FID(株式会社島津製作所製)及びGC−MS(株式会社島津製作所製)を使用し、定性及び定量を行った。
【0041】
(実施例2)
Niが5wt%となるように、98+(Ti)%Ni(NO32・6H2O(和光純薬工業株式会社製)6.25gを水に溶解し、MgOが10wt%担持された活性コークスに溶液が一様に行き渡るように滴下して、実施例1と同様に乾燥,焼成を行い、脱炭酸・水素化接触分解触媒として5wt%Ni/10wt%MgO/Carbonを得た以外は実施例1と同様にした。投入した油脂は合計66.9gであった。
【0042】
(実施例3)
Feが10wt%となるように、99〜102+(Ti)%FeSO4・7H2O(和光純薬工業株式会社製)12.5gを水に溶かし、MgOが10wt%担持された活性コークスに溶液が一様に行き渡るように滴下して、実施例1と同様に乾燥,焼成を行い、脱炭酸・水素化接触分解触媒として10wt%Fe/10wt%MgO/Carbonを得た以外は実施例1と同様にした。投入した油脂は合計69.3gであった。
【0043】
(比較例1)
触媒として、活性カーボンにMgOだけを10wt%担持させ10wt%MgO/Carbonを得た以外は実施例1と同様にした。
【0044】
表1及び図2に実施例1乃至3,比較例1の分解生成物のマテリアルバランスを示す。
表1及び図2において、分解油の収率は実施例1乃至3で60〜62wt%、比較例1で約64wt%と比較例1の収率が若干高かったが、略同程度の収率だと考えられる。また、水蒸気や排ガスにおいては、実施例1乃至3のCO2の生成量が9wt%程度と比較例1の7.89wt%に比べ若干高いが、それ以外では略同程度の生成量であった。
実施例1乃至3の分解生成物のマテリアルバランスにおいて、比較例1と大きな違いが見られないことから、水素化触媒を一緒に担持した場合でも、MgOによる脱炭酸作用は、殆ど損なわれないことが分かった。
【0045】
【表1】

【0046】
図3は実施例1及び比較例1の炭素数分布を示した図であり、図4は実施例2及び比較例1の炭素数分布を示した図であり、図5は実施例3及び比較例1の炭素数分布を示した図である。
図3乃至5において、比較例1の分解油に比べて、実施例1の分解油では炭素数5〜11,実施例2の分解油では炭素数8〜10,実施例3の分解油では炭素数10〜11の割合が少なく、実施例1の分解油では炭素数15〜21,実施例2の分解油では炭素数15〜19,実施例3の分解油では炭素数12〜20の割合が高いことが分かった。
これは、担持された水素化触媒Pd,Ni,Feによって、パーム油に含まれるオレイン酸やリノール酸あるいは、脱炭酸された不飽和結合を持つ炭化水素が水素化され、安定な飽和炭化水素になることで過分解が抑制されたためだと考えられる。
よって、実施例1乃至3では、原料油脂由来の炭素数の炭化水素の選択性が比較例1に比べ高いことが示された。
【0047】
図6は実施例1の分解生成物の炭素数分布におけるn−パラフィンとiso−パラフィン量を示した図である。
図6において、得られた分解生成物には、n−パラフィンを多く含むことが分かった。直鎖状の炭化水素であるn−パラフィンやn−オレフィンは、ディーゼル燃料のセタン価に有利に働くことから、得られた分解油はディーゼル燃料に適したものである考えられる。また、n−パラフィンを多く含むことは、パーム油(原料油脂)に含まれる脂肪酸が直鎖であることに、起因していると考えられるが、接触分解することで、30%程は異性化するので、異性化より流動点の低下も期待することができる。
【0048】
図7は実施例1の分解生成物の炭素数分布におけるオレフィンとパラフィンの量を示した図である。
図7において、炭素数20〜22ではオレフィンの割合がパラフィンの割合よりも高かいが、それ以外の炭素数ではパラフィンの割合が高かった。パーム油の飽和脂肪酸の量が大体50wt%程度であることから、水素化触媒による不飽和結合の水素化が十分に行われていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、大気圧から数気圧程度で接触分解するので、作業安全性が高く、少量の水素で水素化処理ができ、分解油の流動性も高く、ディーゼル留分の多いバイオ燃料を得ることができるバイオマス接触分解方法を提供することができる。また、バイオマスの接触分解において、脱炭酸分解反応により良質なバイオディーゼル燃料を効率よく得るとともに、水素化によって炭化水素の過分解を防ぐので、分解生成物における原料バイオマス由来の炭素数10〜20の炭化水素の選択性が高く、残渣も少ない、脱炭酸・水素化接触分解触媒を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 反応装置
2 反応容器
3 脱炭酸・水素化接触分解触媒
4 ヒータ
5 原料投入部
6 水素導入部
7 撹拌装置
8 導出管
9 分解油貯留部
10 分解油取出部
11 排出管
12 軽質油貯留部
13 軽質油取出部
14 ガス排出管
15 返送管
16 燃焼装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触分解触媒を350℃〜475℃に加熱した1〜10気圧の水素雰囲気の反応容器中でバイオマスと接触させ、前記バイオマスから炭素数10〜20の炭化水素を主として生成するバイオマスの接触分解方法であって、前記接触分解触媒に脱炭酸分解触媒及び水素化触媒が担持されていることを特徴とするバイオマスの接触分解方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマスの接触分解方法に用いる脱炭酸・水素化接触分解触媒であって前記脱炭酸・水素化接触分解触媒が、炭素を担体とし、脱炭酸分解触媒及び水素化触媒が担持されていることを特徴とする脱炭酸・水素化接触分解触媒。
【請求項3】
前記炭素に対して、5〜50wt%の前記脱炭酸分解触媒が担持されていることを特徴とする請求項2に記載の脱炭酸・水素化接触分解触媒。
【請求項4】
前記炭素に対して、0.3〜20wt%の前記水素化触媒が担持されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の脱炭酸・水素化接触分解触媒。
【請求項5】
前記脱炭酸分解触媒が、MgOであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1に記載の脱炭酸・水素化接触分解触媒。
【請求項6】
前記水素化触媒が、Pd,Ni,Fe,Ru,Ptのいずれか1以上であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1に記載の脱炭酸・水素化接触分解触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−35945(P2013−35945A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173363(P2011−173363)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(802000031)公益財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【Fターム(参考)】