説明

バイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム

【課題】 木質系バイオマスのみならず都市ゴミのような廃棄物系バイオマスを処理対象に含めた場合にも安定して炭化・燃焼・ガス生成を行う。熱効率と発電効率を高くする。システム中の燃料電池内において固体炭素が析出するのを防止する。
【解決手段】 高温型の燃料電池14と、該燃料電池14が作動時に排出する排熱の供給を受け該排熱を利用してバイオマスを熱分解し炭化する炭化機2と、該炭化機2により生成される炭化チャーの燃焼およびガス化と炭化時に揮発したタールを含む熱分解ガスの改質とを行うガス化炉3と、該ガス化炉3で生成されたガス化ガスを水蒸気の露点温度よりも高い温度で精製するガス精製装置22とを備える。燃料電池14は、ガス精製装置22で精製されたガス化ガスをエネルギーとして作動するとともに当該作動時に排出する排熱を炭化機2に熱源として供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムに関する。さらに詳述すると、本発明は、バイオマスを燃料としたガス化発電システムであって、特に農林・畜産・水産物資源およびその残さ物、建築廃材、食品廃棄物、汚泥等の高含水率のバイオマスを炭化・ガス化し、得られた生成ガスを用いて燃料電池にて高効率に発電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
木材などの木質系バイオマス、および都市ゴミ、廃材、廃プラスチックといった廃棄物系のバイオマス(本明細書では、木質系バイオマスのみならず都市ゴミのような廃棄物系バイオマスをも含む概念として「バイオマス」という表現を用いる)を燃料とした既存の発電システムは、例えばボイラー燃焼による1MW規模のものであれば発電効率はたかだか10%程度と低いものにすぎなかった。これに対し、近年においては発電効率を向上させたバイオマス発電システムとしてガス化発電方式を採用したものが提案されている。このような発電システムには、一般に、廃棄物処理装置として発達したロータリーキルン(例えば、特許文献1参照)や流動床炉(例えば、特許文献2参照)などの技術が転用されている。
【0003】
また、炭化装置にて生成された炭化チャー(炭化物)をガス化する技術については例えば特許文献3などで開示されている。従来の炭化装置においては、灯油や重油などの補助燃料を使用して原料の乾燥や炭化を行うことが一般的である。
【0004】
【特許文献1】特開2003−253274号公報
【特許文献2】特開平10−160141号公報
【特許文献3】特開2003−275732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術にあっては600〜1000℃という温度条件下でバイオマスのガス化を行うため、多くの場合タールを生成してしまい、このタールが配管に固着してしまうというトラブルが起きる問題がある。そこで、このようなトラブルを防ぐため蒸気賦活することによってタール分を分解する方式が採られることがあるが、様々な種類のバイオマスが混合されている場合には、400〜450℃程度の蒸気では生成したタール分を完全に分解することが困難である。このため、現実的には別途の装置にて配管等を洗浄してタール分を除去するという作業の必要性が生じており、結果的に生成ガスの発熱量の低下につながっている。また、蒸気賦活以外の方式として酸素にてタール分を分解する方式が採られることもあるが、この方法も蒸気の場合と同様に生成ガスの発熱量の低下につながってしまう。加えて、中低温下で燃焼を行うためダイオキシン類が発生するおそれがあり、環境面に関しても問題がある。
【0006】
また、もう一つの問題として、灰分が粉末状で排出されるため、廃棄物を扱う場合には灰中有害成分の溶出に対策が必要になるという問題がある。これは、木質系バイオマスのみを扱う場合には大きな問題とならないが、廃材や都市ゴミ等の廃棄物系のバイオマスを扱う場合には灰分に重金属類が含まれていることがあり、この灰分の処分方法として埋立てなどを行う際にその溶出が懸念される。このような廃棄物系バイオマスを上記した従来技術によりガス化すると、スラグ状のものに比べてさらに溶出しやすい粉末状の状態で灰分が排出されることになるため、廃棄物を扱う場合には灰中成分の溶出に対する対策を施さなければならない。そこで、灰分を溶融するためのガス化炉等の装置を別途設置し、灰分をスラグ化している例もある。
【0007】
その一方で、タールが生成しない温度(1100℃以上)で作動し、灰分の溶融スラグ化を可能とする噴流床ガス化炉が石炭を対象にパイロットプラントまでの開発段階にあり、このようなガス化炉を利用すればタール分の固着という問題が解消されるものと期待されるが、この噴流床式のガス化炉では燃料を例えば100μm以下程度の微粉状態にする必要があり、そのままでは被粉砕性に劣る木質系や廃棄物系のバイオマスを扱うことはできない。このため、バイオマスについては、通常、別途の装置を設けて対処することになり、その分だけ大型化しコストを要する。
【0008】
さらに、木質系バイオマスのみを燃料とする場合、季節や天候の変動の影響を受けるため収集量の確保が困難であり、このような背景から収集コストが高く経済性に劣るという問題がある。加えて、収集量確保が難しいことから発電規模を拡大することも難しく、高効率の発電を実現することが困難となっている。
【0009】
また、バイオマス燃料をガス化して得られたガス化ガスを従来のガス精製プロセスで精製した場合には以下のような問題もある。すなわち、低温、湿式のガス精製プロセスを経て、その後、精製ガスを500℃以上の温度で動作する高温型燃料電池に導入する場合、ガス化ガス中の水蒸気不足により、導入された燃料ガス(ガス化ガス)が燃料電池の入口手前で固体炭素に転換して析出してしまい、その分だけ炭素分が無駄に消費されてしまっている。しかも、転換した固体炭素はガス配管等を閉塞させて燃料電池の運転障害を起こす可能性があることから、ひいてはこのような障害が起こることが懸念されている。これらの問題を防ぐ一つの手段としては、ボイラー等を使って別途新たな水蒸気を燃料電池に供給するというものがあるが、新たに蒸気生成することはシステム全体の効率低下につながることから、このような観点からすれば十分な解決方法たりえない。
【0010】
なお、ここで炭素析出の概要について説明を加えておくと以下のとおりとなる(図10参照)。まず、炭素(カーボン)析出反応が与えられた運転条件で析出するか、しないかの判断基準の1つとして、化学式1と化学式2の反応が熱平衡にある場合を考える。
[化1]
ブドワール反応:2CO = C + CO2
[化2]
シフト反応:CO + H2O = H2 + CO2
図10は、燃料ガスの組成を炭素C分、水素H分、酸素O分の比率で分配した三相図であり、図中における実線は、化学式1と化学式2の2つの反応が平衡に達している組成をプロットしたものである。実線より上側は、化学式1の反応が右側に進み、炭素析出が進む領域となる。逆に下側の領域は、化学式1の反応が左側に進み、炭素非析出領域となる。図10より、温度が低下するほど炭素析出範囲が広くなり析出が起こり易くなることが分かる。
【0011】
また、図10の三相図には、水蒸気成分を除いた天然ガス組成(CH4)、ガス化ガス組成も図示されている。いずれの組成も、水蒸気を除いたドライ組成では、炭素析出領域となるが、天然ガスを電池に導入する場合は、CH4をH2、COに改質するための水蒸気が天然ガスに添加されるために、水蒸気を含んだウェット組成で考えれば炭素非析出領域となる。これに対し、ガス化ガスを電池に導入する場合、常温近傍の低温下でガス精製を行うとすれば、ガス中の水蒸気は水として凝縮してしまうため、ほとんど水蒸気を含まないドライな組成となる。このドライな組成では、上述したように組成的には炭素析出領域となる。
【0012】
以上が炭素析出の概要であるが、ここで従来技術における課題に戻ると、さらには、従来の低温ガス精製方式によると余分な熱損失が大きいという問題もある。すなわち、ガス化ガスの不純物成分を除去する従来の低温ガス精製方式では、高温なガス化ガスの顕熱が精製中に失われるのみならず、ガス化ガス中の水蒸気成分が失われることによって潜熱の損失をも生じていた。このため、精製プロセス中での熱および物質損失が大きく、システム効率の低下を免れなかった。また、凝縮した水蒸気の排水設備も必要なため、設備構成が複雑となることがあるという点でも問題があった。
【0013】
加えて、従来の乾式ガス精製方式の場合には、400℃以上の高温、特に溶融炭酸塩形燃料電池の運転温度に合わせて550℃以上で運転される事が多いことから、以下のような問題があった。すなわち、例えば石炭ガス化炉等の燃料ガスを対象とする場合、ガス化炉が加圧条件下で運転されることから、乾式ガス精製方式にも加圧条件下でガスを通ずることとなるが、高温・高圧の条件では、不純物の吸収剤の反応活性が向上するため除去反応の速度が向上し吸収剤の量が少なくて済む反面、硫黄化合物やハロゲン化物を溶融炭酸塩形燃料電池の要求する低濃度まで除去することが不可能であり、さらに低濃度水銀などの揮発性の高い不純物が除去できないという問題があった。さらには、高温では各種の吸着剤が機能しなくなるため、ダイオキシン類の除去が極めて困難であった。
【0014】
さらに、従来方式の乾式ガス精製方式の場合には、ダスト、硫黄化合物、ハロゲン化物、水銀、ダイオキシン類という多種の不純物を一括して除去しようと言う場合に、それぞれの不純物毎に除去プロセスを用意する必要があった。しかも、各プロセスの運転温度や圧力と言った運転条件を合わせるためには、熱交換器や昇圧装置などといった装置が多数必要となり、設備の肥大化や運転に係る動力やユーティリティーの増大を招き、発電プラントに用いるには効率の悪いシステムしか構築できなかった。
【0015】
そこで、本発明は、木質系バイオマスのみならず都市ゴミのような廃棄物系バイオマスを処理対象に含めた場合にも安定して炭化・燃焼・ガス生成を行うことができ、尚かつ熱効率と発電効率が高いというバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムを提供することを目的とする、さらに、本発明は、システム中の発電装置たる高温型の燃料電池中において固体炭素が析出することを防止できるようにしたバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる目的を達成するため、本発明者は種々の検討を行った。まず、バイオマスを熱分解して粉状の高品位炭化チャー(つまり水分のほとんどない発熱量の高い炭化物燃料)と熱分解ガスとに分離するための炭化装置と、タール分解、ガス改質および灰分の溶融排出を可能とする高温ガス化炉とを組み合わせて高熱量のガスを生成するという仕組みに着目し、さらに、燃料電池において効率的に発電を行うと同時に排出される排ガスをさらに効率的に活用する仕組みにも着目した。そしてかかる着目点に基づき発電システムとしての最適化を図り検討を重ねた結果、木質系バイオマスだけでなく、都市ゴミあるいは廃プラスチックといった廃棄物系のバイオマスまでも燃料として利用することが可能であり、系全体としての熱効率を向上させることのできるシステムを知見するに至った。
【0017】
本発明はかかる知見に基づくものであり、請求項1に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムは、高温型の燃料電池と、該燃料電池が作動時に排出する排熱の供給を受け該排熱を利用してバイオマスを熱分解し炭化する炭化装置と、該炭化装置により生成される炭化チャーの燃焼およびガス化と炭化時に揮発したタールを含む熱分解ガスの改質とを行うガス化炉と、該ガス化炉で生成されたガス化ガスを水蒸気の露点温度よりも高い温度で精製するガス精製装置とを備え、さらに燃料電池は、ガス化炉で生成されガス精製装置で精製されたガス化ガスをエネルギーとして作動するとともに当該作動時に排出する排熱を炭化装置に熱源として供給するものであることを特徴としているものである。
【0018】
このバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムでは、まず炭化装置においてバイオマスの水分除去と熱分解が行われ、タールを含む揮発分と炭化チャーとに分離される。さらに、得られた炭化チャーが熱源とされ、ガス化炉にてガス化が行われることによって炉内温度が例えば1100℃以上にまで達し、揮発ガス中のタール分が分解され、高熱量の熱分解ガスが得られるようになる。この点、上述した特許文献3に記載の技術は、炭化時に発生するタール含有のガスを炭化チャーを熱源として改質するというようなものではなく、この点で本発明とは本質的に異なるものである。本発明にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムは、システム排熱を利用した炭化プロセスとガス化プロセスとを融合し、補助燃料は使用せずに高効率発電を達成する点が特徴的である。
【0019】
しかも、このバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムでは、水蒸気の露点温度よりも高い温度にてガス化ガスを精製することから、精製された後のガス化ガス(燃料ガス)中に水蒸気が残る。つまり、当該露点温度以下の温度にてガス精製を行うとガス中の水蒸気成分が減少・不足してしまい、これによって固体炭素析出やガス配管の閉塞などが生じるのは上述のとおりであるが、本発明の場合には、ガス化炉で生成されたガス化ガス中の水蒸気をガス精製の過程で損なうことなく燃料電池に導入することが可能となっている。
【0020】
また、一般に、ガス化炉にて生成されたガス化ガスは流量および熱量の変動を伴うことが予想され、例えば後段にガスエンジン、ガスタービンといった発電装置が設置されている場合であればこれら発電装置の運転範囲外まで変動することが生じうる。このため、これらの発電装置を用いた場合には発電システムの成立性が困難になりうるが、これに対し本発明においては、ガス化ガスの流量ないしは熱量の変動を幅広く許容できる燃料電池を発電装置として組み込むこととしているため、上記のようなシステム成立が困難といった問題がない。すなわち、本発明においてシステムに組み込まれてるMCFC(溶融炭酸塩型燃料電池)やSOFC(固体酸化物型燃料電池)といった高温型燃料電池は、ガス化ガスの流量等が大きく変動した場合であっても、電池自身の温度を運転範囲内に留める程度のガス流量ないしは熱量変動であれば安定かつ高効率に運転を継続することができるため、安定した発電出力が実現可能である。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガス精製装置が乾式の精製装置であるというものである。ガス精製装置としては乾式と湿式の両方があるが、例えば従来のように湿式のガス精製方式を採用すると、ガス化ガス中の不純物成分を除去した後の薬液を廃液として処理する必要があり、廃液処理に要する設備構成の複雑化、およびガス精製システムの運用性の低下が避けられない。これに対し、SOFCやMCFCといったような高温で作動するいわゆる高温型の燃料電池を発電装置に採用している本発明の場合には、固体酸化物型燃料電池で900℃〜1000℃、溶融炭酸塩型燃料電池で600〜700℃の作動温度となるために、生成ガスを600℃以下に冷却した後、乾式のガス精製装置を用いるのが顕熱の損失を防ぐ意味で有効となる。加えて、従来の低温ガス精製方式だとガス化ガス中の水蒸気成分が失われることによって潜熱の損失をも生じていたが、このような潜熱の損失を防ぐことも可能となる。ちなみに、MCFCに用いられる溶融炭酸塩(Li2CO2/K2CO3、Li2CO2/Na2CO3の共晶塩)の融点は490℃程度である。このため、原理的には500℃以上であればMCFCは動作可能となるが、発電装置の性能という観点からは580℃以上で動作することが望ましいといえる。
【0022】
また、乾式のガス精製を行うにあたっては、精製対象ガスの露点温度以上であってガス化炉発生ガス(ガス化ガス)の温度以下という温度範囲で実施することが望ましい。さらには、乾式ガス精製装置における運転温度を150〜350℃という比較的低温度に抑えることがより望ましい。これは、ガス化ガス中から多数の不純物を除去するにあたり、不純物毎に異なる幾つかのプロセスおよびそのための構成を考慮し、尚かつその性能、運転操作性、システム実現性を考慮した場合に望ましいといえる運転温度範囲である。また、上記のように比較的低温度の範囲にてガス化ガス中の不純物を除去するにあたっては、ガス精製装置においては例えば化学反応(化学現象)や物理吸着(物理現象)といった現象を利用することができる。一般論として、ガス精製時の運転温度を下げることは、 (1)精製に使っている化学反応の平衡組成が低温ほど不純物を低濃度まで除去できる、 (2)物理吸着は低温度のほうが促進される、というメリットがある。
【0023】
従来の乾式精製装置の場合、400℃以上、場合によっては550℃以上という高温下で運転されていたために、硫黄化合物やハロゲン化物を溶融炭酸塩形燃料電池の要求する低濃度まで除去することが不可能であり、さらには低濃度水銀などの揮発性の高い不純物が除去できないという問題があったのに対し、このような低温範囲内で乾式精製を行えば、ダスト、硫黄化合物、ハロゲン化物などはもちろん、水銀、ダイオキシン類をも含めた多種の不純物を一括して除去することが可能となる。つまり、乾式精製装置内での運転温度を下げることによって、硫黄化合物やハロゲン化物を低濃度まで除去できるようになり、溶融炭酸塩形燃料電池の許容する不純物レベルを達成することが可能となる。要は、乾式ガス精製システムに関して、燃料電池の運転温度との組み合わせを考慮することにより、多種の不純物に対応することが可能となり、尚かつ高温型燃料電池の許容濃度を満たすことも可能となるという点が特徴的である。また、多数の不純物に対応するプロセスを持ちながらも適切プロセスを選定し、運転温度レベルを望ましい温度範囲(好ましくは150〜350℃)とすることによって、熱交換器の数を最小限に抑えることも可能になるという利点もある。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、炭化装置に化石燃料を投入するための化石燃料投入手段が設けられているというものである。一般に、水分量50%以上の高含水バイオマス燃料は単位体積あたりの熱量が低く、炭化装置を用いてガス化してもなお熱量が低い場合がありうるが、本発明によればこのような場合に化石燃料投入手段を利用して化石燃料を追加投入し、バイオマスに加える熱量をさらに追加して炭化を行うことができる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、炭化装置へと投入される前の段階のバイオマスを燃料電池の排熱を利用して加熱し一部乾燥する前処理システムを備えているというものである。上述したように、一般に水分量50%以上の高含水バイオマス燃料は単位体積あたりの熱量が低いが、本発明によれば、炭化装置2へ投入される前の段階でバイオマス燃料に含まれる水分の一部を蒸発させることができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、燃料電池に悪影響を及ぼす不純物を特定し、ガス化ガス中における不純物の濃度が少なくとも燃料電池の許容レベルとなるまで当該不純物を除去するというものである。バイオマスのガス化ガスは、不純物成分としてハロゲン化合物、硫黄化合物、水銀、ダイオキシン類等を含むことから、このようなガス化ガスを後段の燃料電池に直接投入すると当該燃料電池の性能低下を招くおそれがあるが、本発明によれば、ガス化ガス中における種々の不純物は高温型燃料電池の許容濃度レベルに達する程度にまで予め除去されることになる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおけるガス精製装置が、ガス化中に含まれるHCl等の不純物を吸収する不純物吸収剤と、水蒸気の露点温度よりも高い温度条件下で使用される高温フィルターとを用いるものであることを特徴としている。このように固体の不純物吸収剤および高温フィルターを採用した炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによれば、廃液等を発生しない乾式のガス精製システムを構成することが可能となる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、ガス精製装置によって精製されたガス化ガスの圧力制御を行うガスホルダーを備えていることを特徴とするものである。ガスホルダーは、精製後のガス化ガスの圧力制御を行うことにより、当該ガス化ガスの流量や熱量に変動が生じた場合にも適宜対応する。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、ガス化炉にて生成されるガス化ガスの不足分を補うための天然ガス供給手段を備えていることを特徴とするものである。この天然ガス供給手段によれば、ガス化ガスが不足した場合に天然ガスで不足分の熱量を補うことができる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、燃料電池のアノード排ガスを燃焼させた後にカソードに供給する燃焼器と、燃料電池のアノードに供給されるガスの改質が必要な場合に燃焼器の燃焼熱を利用して当該ガスの改質を行う改質器とを備え、燃料電池の燃料ガスとして、精製後のガス化ガスのみならず天然ガスをも補充的に利用可能としていることを特徴としている。一般に、現状の燃料電池システムは、天然ガスなら天然ガス、バイオマスガス化ガスならバイオマスガス化ガス、というように特定の燃料だけを想定した構成となっているのに対し、本発明のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによれば1つのシステムでありながら多様な燃料に対応可能である。
【0031】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、ガス化ガス中の水素、一酸化炭素成分からメタン成分を発生するメタン生成器を備えていることを特徴としているものである。例えば、内部改質型の高温型燃料電池が用いられている場合にはガス化ガス中のメタン濃度を高くする必要があるが、現在用いられているバイオマス発電システムにおけるガス化ガスでは要求を満たす程のメタン濃度を確保することはできない。この点、本発明によれば、ガス化ガス中の水素、一酸化炭素成分からメタン成分を発生することが可能となることから、内部改質型の燃料電池にも対応することができるようになる。
【0032】
請求項11に記載の発明は、請求項1から10のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、ガス化炉に燃焼用空気を供給する空気吹きの構成となっているというものである。
【0033】
請求項12に記載の発明は、請求項1から11のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおけるガス化炉において、バイオマスを炭化することにより得られた炭化チャーを燃料として燃焼とガス化を行い、タールを1100℃以上の温度で分解し、熱分解ガスの改質を行うというものである。
【0034】
請求項13に記載の発明は、請求項1から12のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおけるガス化炉において、バイオマスを炭化することにより得られた炭化チャーを燃料として燃焼とガス化を行い、該炭化チャー中の灰分を溶融させスラグ化するというものである。
【0035】
請求項14に記載の発明は、請求項1から13のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、燃料電池から排出された排ガスとガス化炉で生成されたガス化ガスとの間で熱交換を行うことにより、炭化装置にてバイオマスの炭化に使用する熱を、燃料電池から排出された排ガスから回収するのみならず、ガス化炉で生成されたガス化ガスからも回収する熱交換器を備えているというものである。
【0036】
請求項15に記載の発明は、請求項1から14のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいて、炭化装置を複数個配置し、各炭化装置の運転サイクルに時間差を設けてローテーションで作動させるというものである。
【発明の効果】
【0037】
請求項1記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムにおいては、燃料電池から排出される排熱を例えば600〜700℃程度の高温に保ちつつ炭化装置内へと直接的にあるいは間接的に供給し、当該排熱が有する熱量を効率よく活用して他の補助燃料を使用することなくバイオマスを熱分解し炭化するというように、システム排熱が系内において有効活用される。このためシステム全体における熱効率が高く、また従来装置のように補助燃料を使用する必要がないため、従来よりもきわめて効率のよい高効率発電が実現され、環境に与える影響という点でも好ましいシステムとなる。
【0038】
また、このように本システムではシステム排熱(つまり燃料電池の排熱)が炭化装置において有効活用されており、バイオマス燃料は、この炭化装置を経る際に熱分解作用と撹拌作用を受けることによって細かい粉状となる。しかも、例えば600〜700℃程度の排熱が供給される炭化装置は、装置内温度を500〜600℃程度に維持することにより、バイオマス燃料の水分を十分に蒸発させ、水分のほとんどない発熱量の高い炭化物燃料、つまり高品位の炭化物燃料(炭化チャー)へと変換させることができる。ただし、上述のようにバイオマス燃料を細かい紛状にするとしても実際には均一な微粉化まで行うことは難しくある程度の粒径分布をもった粉状となるが、ガス化する上では問題のない程度にまで十分に微粉化することが可能である。要するに、高いシステム排熱を十分に利用することとした炭化装置は乾燥工程と粉砕工程とを受け持っているに等しく、別の粉砕装置を必要としない。
【0039】
また、ガス化炉では炭化装置にて得られた高品位の炭化チャーを燃料として燃焼・ガス化を行うため、当該炉内温度をタール分解温度あるいはそれ以上の高温にまで到達させることが可能である。この場合、このガス化炉内においてガス中のタール分を分解することができるから、タール分が配管に固着してしまうというトラブルから免れることが可能となる。このため、別途の装置にて配管等を洗浄してタール分を除去するというような余計な手間がかからず、従来、ガス化炉に付帯させざるを得なかったタール分解装置を省略して小型化・低コスト化を図ることが可能となる。しかも、このように高温の炉内温度を実現した場合には燃焼の際にダイオキシン類が発生するのを抑えることが可能となるから、環境に優しいエコロジーな一般廃棄物および産業廃棄物の処理装置としての役割を果たすことができるようになる。また、炉内で燃焼を行う際に蒸気賦活したり酸素にてタール分を分解したりする必要もないため、生成ガスの発熱量の低下を招くようなことも皆無である。
【0040】
しかも、このように炉内を高温に到達させることができるガス化炉が実現できるため、この炉内にて灰を溶融し、溶出のおそれが少ないスラグ状にして排出することが可能となる。こうした場合には、廃棄物系バイオマスの灰分が埋立て後に溶出するといった懸念が不要で、従来の木質系バイオマスに加えて廃棄物系バイオマスをも燃料として扱うことが可能となり、例えば別装置にてスラグ化するような必要もない。したがって、本発明によれば木質系バイオマスと廃棄物系バイオマスを混合して燃料として扱うことが可能となる結果、従来のように木質系のバイオマスのみを扱っていた場合よりもバイオマス収集量の確保が容易となり、季節や天候の影響を受けることもなくなる。このように、廃棄物系バイオマスで木質系バイオマスの収集量を補完することによって収集量の確保が容易となれば収集にかかる手間が省け、その分だけ収集コストを抑えることが可能となる。しかも、都市ゴミあるいは廃プラスチックといった廃棄物系バイオマスが逆有償(つまり回収してもらうのに料金が必要となる)場合には、一般的に収集コストの高い木質系バイオマスのみを扱う場合よりも経済性が一層と改善することになる。また、このように収集量が確保される結果、発電出力を安定させることが可能となることに加え、システム全体としても発電規模を拡大しやすくなり、相乗効果によってさらに高効率の発電を実現しやすい環境となる。また、いうまでもないが、灰分を溶融しスラグ化している場合には環境に優しいエコロジーな廃棄物処理施設を提供することが可能となる。
【0041】
このように、炉内で炭化チャーをガス化すると同時に、タール分を分解し、かつ、灰を溶融してスラグ状にするという2つの作用を同一の炉内で同時に実現可能としたガス化炉は従来存在していなかったものであり、本発明にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによればこれら2つの作用を同時に実現することにより高効率化と省スペース化を同時に達成することができる。さらに、このような相乗的効果に加え、上述したように炭化装置にてバイオマス燃料を微粉化することができるため、本発明にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムでは別の粉砕装置で燃料を積極的に細かく砕く必要がなく、被粉砕性の良否にかかわらず木質系バイオマスおよび廃棄物系バイオマスを燃料として扱うことができる。これにより、システム全体のさらなる小型化を図ることも可能となり、一層のコスト削減に結びつく。
【0042】
さらに加えて、水蒸気の露点温度よりも高い温度でガス精製を行う本発明のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによれば、ガス化炉から発生したガス化ガス中の水蒸気を損なわずに燃料電池に導入することができる。こうした場合、水蒸気成分の多いガス化ガスが燃料電池に導入されることとなるため、燃料電池内における固体炭素の析出を防止することが可能となる。また、したがって、転換した固体炭素がガス配管等を閉塞させて燃料電池の運転障害を起こすことも防止することが可能となる。しかも、本システムによれば別途新たな水蒸気を燃料電池に供給する必要がないためボイラー等の設備を設けなくて済むし、新たに蒸気生成するわけではないためシステム全体の効率が低下することもないという利点がある。加えて、水蒸気の露点温度よりも高い温度で精製することから、ガス中の水蒸気が凝縮することもないために精製過程において水分が生じない。このため、別途排水設備を設ける必要がない。
【0043】
また、本発明にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによれば従来の低温ガス精製方式に比べて熱損失が小さいという利点もある。すなわち、露点温度より高い温度でガス化ガスの不純物成分を除去し、尚かつ発電装置に高温型の燃料電池を採用している本システムによれば、高温なガス化ガスの顕熱が精製中に失われるのを防ぐことができるし、また、ガス化ガス中の水蒸気成分が失われることもないために潜熱の損失を防ぐこともできる。このため、精製プロセス中での熱および物質損失が従来方式よりも小さく、システム効率の低下を防ぐことができる。
【0044】
また、乾式の精製装置を用いている請求項2のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによればさらに潜熱の損失を防ぐことができる。すなわち、従来の低温ガス精製方式だとガス化ガス中の水蒸気成分が失われることによって潜熱の損失をも生じていたのに対し、本発明においては100℃以上、好ましくは120℃以上の高温条件下でガス精製プロセスを経ることとしているために水蒸気の潜熱損失がなく、ガス精製中における熱および物質の損失が少ない。しかも、排水処理が不要となるために排水設備が不要となるという利点もある。
【0045】
請求項3に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、例えば水分量50%以上の高含水バイオマス燃料が炭化対象となった場合に、化石燃料を炭化装置に追加投入することによって当該バイオマスに加える熱量を増大させることができる。こうした場合、燃料電池の排熱に化石燃料による熱量が加わることになるから、バイオマスに多く含まれている水分をさらに蒸発させることができる。こうした場合、後段のガス化炉で生成されるガス化ガスの単位体積あたりの熱量が向上する結果、システム全体としての熱効率や発電効率の向上を図ることが可能となる。
【0046】
請求項4に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、燃料電池の排熱を利用した前処理システムを用いることによって、炭化装置へと投入される前の段階でバイオマスを加熱し一部乾燥することができる。これによれば、高含水のバイオマスであっても前処理を施して水分を少なくしておくことによって、その後に生成されるガス化ガスの単位体積あたりの熱量をさらに向上させることが可能となる。
【0047】
請求項5に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、燃料電池に悪影響のある不純物を予め除去することから、これら不純物の影響を受けて燃料電池の性能が低下するのを抑えることが可能となる。
【0048】
請求項6に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、固体の不純物吸収剤および高温フィルターを採用したことにより、廃液等を発生しない乾式のガス精製システムを構成することが可能である。
【0049】
また、ガスホルダーを備え、尚かつ高温型の燃料電池との組み合わせを実現している請求項7のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、燃料電池自体がガスエンジンやガスタービンなどの発電装置に比べて流量や熱量の変動への対応幅が広いことに加え、ガス流量ないしはガス熱量の変動が生じた場合にも例えば圧力制御することによって電池出力の変動を極力抑えることができることから、出力を一層安定化させることができる。
【0050】
請求項8に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、ガス化ガスの不足分を天然ガスで補償することにより、電池の負荷応答を満足させることができる。こうすることにより、例えばガス化炉で生成されたガス化ガスのみでは要求される電気出力が不足するような場合にも、ガスの不足分を補って電気出力を補償することができる。
【0051】
請求項9に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、燃料電池の燃料ガスとして、精製後のガス化ガスのみならず天然ガスをも補充的に利用可能としているため、1つのシステムでありながら多様な燃料に対応することができるようになっている。すなわち、現状の燃料電池システムは、例えば天然ガスなら天然ガスだけ、バイオマスガス化ガスならバイオマスガス化ガスだけ、というように特定の燃料だけを想定した構成となっており、1つのシステムで多様な燃料に対応可能な構成とはなっていないことが一般的であるが、本システムによれば多様な燃料に対応できるという利点がある。
【0052】
請求項10に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、メタン生成器を備えていることからガス化ガス中のメタン濃度を高くすることが可能である。このため、発生する熱を燃料電池の入口に導入する燃料、酸化剤ガスの昇温、電池排ガスの高温化の熱源として有効利用することができる。
【0053】
請求項11に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、ガス化炉に燃焼用空気を供給する空気吹きの構成としたことから、酸素の製造動力が不要となり、所内動力が大幅に低減されることになる。また、酸素の設備が不要となるため、設備費が低廉になるという利点もある。
【0054】
さらに、請求項12に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、バイオマスを炭化することにより得られた炭化チャーを燃料として燃焼とガス化を行い、炭化時に揮発したタールを、タール分解温度である1100℃あるいはそれ以上の温度で確実に分解し、熱分解ガスの改質を行うことによって、タール分が配管に固着してしまうといったトラブルから免れることができる。
【0055】
請求項13に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、バイオマスを炭化することにより得られた炭化チャーを燃料として燃焼とガス化を行い、該炭化チャー中の灰分を積極的に溶融させスラグ化することから、灰中有害成分の溶出を懸念する必要がなくなり、これに対する対策も不要となる。例えば、5%以上の灰分を含む廃棄物は環境面を考慮するとスラグ化することが必要であり、本発明にかかる炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによればこれを溶融させスラグ化することができる。その一方で、例えば灰分が1%程度の杉チップなどはわざわざ高温を作り出して溶かす必要はなく、フライアッシュの形態で生成ガスと一緒にガス化炉出口から出し、後流のガス精製装置で捕集すれば足りる。要は、このバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによれば燃料中の灰分量に応じ、同じ炉を用いながらも灰を溶融しながらの運転かあるいは非溶融の運転かをどちらでも選択できることが可能であり、この点で特徴的である。
【0056】
請求項14に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、バイオマスの炭化に使用する熱を燃料電池の排熱のみならずガス化炉から生成される生成ガスからも回収することを可能としていることから、より高い熱効率を実現することができる。
【0057】
さらに請求項15に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムによると、複数の炭化装置をローテーションで作動させることにより、ガス化炉への炭化チャーおよび熱分解ガスの供給を連続的に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0059】
図1〜図4に本発明の一実施形態を示す。本発明にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1は、木質系バイオマスのみならず都市ゴミ等の廃棄物系バイオマスをも燃料に含めた状態で熱分解し炭化することを可能とした炭化装置2と、該炭化装置2により生成される炭化チャーの燃焼・ガス化などを行うガス化炉3と、該ガス化炉3が生成したガスをエネルギーとして作動し発電するとともに当該作動時に排出する排熱を炭化装置2に送る燃料電池14とを備えたシステムとして構成されている(図1参照)。さらに、これに加えて、本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1は、ガス化炉3で生成されたガス化ガスを水蒸気の露点温度よりも高い温度で精製するガス精製装置をも備えているものである(図1参照)。なお、図2中においては、各装置等に符号を付している他、各経路の途中にも小さな番号を付して経路順を表現している。この番号は図中の経路が複雑となるのを避けるために同一番号の経路は同一経路であることを示すものでもあり、例えば、図2中右上の熱交換器9の前後の経路(符号10および11)は、炭化機2の真下に示す熱交換器の前後の経路(符号10および11)と同一の経路である。
【0060】
本発明にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1は、木質系等のバイオマスのみならず、都市ゴミ等のような汚い部類に入る廃棄物系バイオマスまでも幅広くその対象に含めること、および「ガス化」「ガス精製」「高温型燃料電池」に関する各種技術を統合して新規なシステムを開発すること、もって地方自治体等のニーズに応えること、等を実現するべく開発されたものである。以下に示す炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1は、図1等に示すとおり、発電装置として高温型の燃料電池14を備えているシステムであり、尚かつ、バイオマス(上述したとおり、本明細書では木質系バイオマスのみならず都市ゴミのような廃棄物系バイオマスをも含む概念としてこの表現を用いている)を対象とする炭化ガス化発電システムであり、大きく分けて、「常圧、高温ガス化炉ユニット」(符号Aで示す)、「燃料ガス適正化ユニット」(符号Bで示す)、「高温型燃料電池ユニット」(符号Cで示す)の3つのユニットに分けて考えることができる。以下ではまず各ユニットA,B,Cの概要について説明し、その後、各部分について詳細に説明することとする。
【0061】
常圧、高温ガス化炉ユニットAは、炭化装置(以下、「炭化機」ともいう)2、ガス化炉3、熱交換器9,17等を備えたユニットである。炭化機2は、燃料電池14が作動時に排出する排ガスの排熱を利用してバイオマスの熱分解と炭化を行う装置であり、このように排ガスの顕熱を有効利用したシステムとすることによって例えば高含水のバイオマス(一例として、水分量50%以上のもの)をも対象に含めることを可能としている。
【0062】
燃料ガス適正化ユニットBは、ガス化ガスを精製して燃料ガスとして高温型燃料電池14に送るものであり、また、併せて、塩化水素、硫黄化合物、水銀、ダイオキシン類さらにはダスト(塵埃)といったガス化ガスに含まれる不純物を、少なくとも高温型燃料電池14の許容濃度レベル程度にまで除去することも行うユニットである(図1等参照)。ここで、ガス精製装置5におけるガス精製プロセスは、高温かつ乾式とすることが好ましい。すなわち、ガスを精製装置には乾式と湿式の両方があるが、SOFC(固体酸化物型燃料電池)やMCFC(溶融炭酸塩型燃料電池)といった高温で作動するいわゆる高温型の燃料電池が採用されている場合には、SOFCで900℃〜1000℃、MCFCで600℃〜700℃の作動温度となるために、生成ガスを600℃以下に冷却した後、乾式のガス精製装置を用いるのが顕熱の損失を防ぐという意味で有効となる。また、低温かつ湿式のガス精製プロセスを経ると、ガス化ガス中の水蒸気不足が生じて燃料ガスが燃料電池14の入口手前で固体炭素に転換するなどの問題が起こりうるが、このように高温かつ乾式とした場合には、ガス化炉3で生成したガス化ガス中の水蒸気を損なわずに燃料電池14へと導入することが可能となる。しかも、このように乾式の精製プロセスを経ることは、ガス中水蒸気の顕熱の損失を防ぐという観点からも好ましい。加えて、従来の低温ガス精製方式だとガス化ガス中の水蒸気成分が失われることによって潜熱の損失をも生じていたが、このような潜熱の損失も防ぐことも可能となるというように、熱の有効利用という観点から望ましい態様だといえる。
【0063】
高温型燃料電池ユニットCは、高温型燃料電池14の他、改質器12、燃焼器13等によって構成されているユニットである(図1参照)。本実施形態における燃料電池14は、常圧、高温ガス化炉ユニットAとの連係が強化された発電装置として設けられている。すなわち、この燃料電池14は、符号26で示す排ガス供給路によって炭化機2と接続されており、当該燃料電池14にて生じる高温の排ガスが図1に示すように直接的に、あるいは途中に設けられた熱交換器を通過してから炭化機2へと供給され、バイオマスの熱分解と炭化を行うために当該排ガスの顕熱が有効活用されるようになっている。高温型燃料電池14には、SOFC(固体酸化物型燃料電池)やMCFC(溶融炭酸塩型燃料電池)といったような高温で作動するものが適用される。
【0064】
続いて、バイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1の各部分について説明する(図2等参照)。
【0065】
炭化機2は、後段の燃料電池14が作動時に排出する排ガスの供給を受け、該排ガスが有する排熱を利用してバイオマスの熱分解と炭化を行う装置である。本実施形態の炭化機2は、燃料電池14が排出する排ガスの直接的な供給を受けるために排ガス供給路26によってこの燃料電池14と接続されており、当該燃料電池14の排ガスが有する顕熱を有効利用することによってシステムの高い熱効率を達成している。ここで、例えば本実施形態の炭化機2は、バイオマスを熱分解し炭化する内筒部とこの内筒部を囲繞する外筒部とからなる二層構造となっており(図2等参照)、熱源として供給された排ガスは、外筒部に送り込まれてこの炭化機2の内筒部内にあるバイオマス燃料を外側から間接的に加熱して熱分解することになる。炭化機2の外筒部は縦型で環状の筒形状であり、その空間部に例えば600℃程度の高温排ガスが導入されて外部加熱による炭化を行う。一方で、特に図示していないが内筒部は回転羽を有しており、この回転羽を回転させることによって燃料を内壁に押しつけ、熱伝達を向上させて炭化効率の上昇を図っている。本システムに好適な炭化機2としては例えば超高速炭化機を挙げることができるが、これは好適な炭化機2の一例にすぎず、これ以外にも例えば外熱式筒型ロータリーキルンなどといった装置を適用することも可能である。
【0066】
以上のような構造の本実施形態の炭化機2によれば、システム排熱(つまり上述の排ガス供給路26を通じて燃料電池14から熱源として供給される排ガスの顕熱)を利用し、燃料(バイオマス)を間接的に熱分解することにより、高品位の炭化チャーつまり水分がほとんどなく発熱量の高い炭化物燃料を生成することができる。この場合、熱分解の時間は原料となるバイオマスの種類およびバイオマス中における含水率によるが、一例を示せば、およそ600℃の排ガスを利用した場合であれば30分から1時間程度で炭化することが可能である。そこで実際には、炭化に要する時間に応じて炭化機(炭化装置)2を複数個(あるいは複数系統)配置し、各炭化機2の運転サイクルに時間差を設けてローテーションで作動させ、ガス化炉3への炭化チャーおよび熱分解ガスの供給を連続的に行えるようにすることが好ましい(図4参照)。一般に炭化機2内での炭化プロセスには気化量等の面である程度の変動が伴うが、このように複数の装置でローテーションを組むことによってこの変動を緩和することが可能となる。
【0067】
また炭化機2には、原料となるバイオマスをこの炭化機2内へ投入するための原料バンカ(図示省略)が接続されている。木質系バイオマス原料、あるいはこの木質系バイオマスと廃棄物系バイオマスとが混合された原料といったバイオマス燃料ははまずこの原料バンカに投入され、その後この炭化機2内へ順次供給される。
【0068】
ガス化炉3は上述の炭化機2により生成される炭化チャー(炭化物)の燃焼・ガス化と、この炭化機2において炭化時に揮発したタールを含む熱分解ガスの改質と、燃料中灰分の溶融・スラグ化とを行う炉で、例えば本実施形態ではこのバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1内における唯一の炉として設置されている。ただし、炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1が例えば5万kwを超えるような大型の設備になる場合には、このガス化炉3を複数台設置し、ガスタービンで接続するなど、システムの形態や規模に応じて台数や構造を変えていくことは可能である。
【0069】
このようなガス化炉3における炉出口温度は、炭化チャーの発熱量と投入量、そして投入空気量により決まる。例えば本実施形態では、バイオマスを炭化する際に得られる高品位(つまり水分がほとんどなく発熱量が高い)炭化チャーを燃料としていることに加え、当該炭化チャーの発熱量と投入量に対応して空気ブロワー20により比較的多めの空気を投入すること、炭化チャーと熱分解ガスとを少なくとも約400℃で投入すること、バイオマス燃料中の水分が既に400℃以上の水蒸気となった状態で投入されるようにすること等により、炉内下段の温度を1100℃あるいはそれ以上、場合によっては1500℃の温度にまで到達させることを可能としている。このようにガス化炉3の炉内温度がタール分解温度である1100℃あるいはそれ以上の高温にまで到達する本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1においては、炭化機2での炭化時に揮発したタールを含む揮発分(熱分解ガス)が、このガス化炉3内の炉内上部もしくは下部(ガス改質部)において改質されることになる。つまり、熱分解ガスに含まれるタール分が炉内下部(ガス化溶融部)の高熱を利用した高温状況下で分解されることになるから、これらタール分が配管等に固着してしまうというトラブルを回避することができる。このように、本実施形態のガス化炉3は、炉内下部(ガス化溶融部)において高温燃焼を行い燃料の灰分を溶融すると同時に、その熱を利用して炉内上部(ガス改質部)において熱分解ガスの改質を行うというように、いわば一台で二役の機能をこなすものである。ちなみに、1100℃というのはタールを分解することによってタール生成をより確実に抑制するという観点から望ましい温度であり、これより低い温度であってもタール生成を抑制することは可能である。ただ、例えば流動床ガス化炉や固定床ガス化炉といった従来のシステムでは原理的にこの温度域での運転が不可能であったのに対し、本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1においては、上述のような特有の構成により炉内温度を1100℃以上とすることも可能としている点が特徴的である。
【0070】
なお、ガス化炉3内における具体的な化学反応は、タール成分の特定が困難なために特定することは困難であるが、化学式によって例を示すと以下のとおりである。
[化3]
C10H20 → C10H8+6H2
[化4]
C10H20 → 5/8C10H8+15/4CH4
[化5]
C10H20 → 5/2C4H8
[化6]
C10H8 → 4/3C6H6+2C
[化7]
C6H6 → 6C+3H2
[化8]
C4H8 → 2C2H4
[化9]
3C2H4 → C6H6+3H2
[化10]
CH4+1/2O2 → CO+2H2
[化11]
CH4+H2O → CO+3H2
【0071】
加えて、本実施形態のガス化炉3においてはこのような高い炉内温度を達成していることから、このように熱分解ガス中のタール分を分解するだけではなく、燃料として使用される当該炭化チャー自体の灰分をも高温により溶解させてスラグ化することが可能である。すなわち、例えば木質系バイオマスに廃棄物系バイオマスを混合して燃焼させると上述したように灰分に重金属類が含まれてしまうおそれがあるが、本実施形態のように灰分をも溶解させてスラグ化させることができれば当該灰分を溶出のおそれがない又はそのおそれが少ない状態で排出することが可能となるから、灰中成分の溶出に対する特別な対策を施す必要がないという点でも有利である。
【0072】
また、このガス化炉3と上述の炭化機2との間にはタール・熱分解ガス供給路27と炭化チャー供給路28の各供給路が設置されている(図1、図2参照)。前者のタール・熱分解ガス供給路27は炭化機2内で生じたタールおよび熱分解ガスをガス化炉3に供給するための流路であり、後者の炭化チャー供給路28は炭化機2内で生じた炭化チャーをガス化炉3に供給するための流路である。特に図示していないが、例えば本実施形態ではスクリューを利用した炭化チャー供給路28を炭化機2の下部に接続し、供給した炭化チャーを燃料として燃焼・ガス化を行うことにより特に炉内下部(ガス化溶融部)における温度を高温とし、1100℃以上場合によっては空気を過剰に供給する等により1500℃以上の高温ガスを発生させるようにしている。一方で、炉内上部(ガス改質部)においてはこの高温のガスを熱源として前段の炭化機2で熱分解されたタール分を分解してガス改質を行う。以上のようにしてガス化炉3にて生成されたガスは、その後段の冷却器4へと送り込まれる。
【0073】
冷却器4は、ガス化炉3にて生成されたガス化ガスを冷却するための装置である(図2参照)。例えば本実施形態の場合には、上述したように高温の状態(例えば1100℃程度)でガス化炉3から送り出されるガス化ガスを、流水との間で熱交換することによって例えば350℃程度にまで冷却することとしている。冷却されたガス化ガスは、後段の燃料ガス適正化ユニットBに送り出されて精製される(図1、図2参照)。
【0074】
ガス精製装置22は、ガス化炉3で生成されたガス化ガスを精製するための装置であり、例えば本実施形態の場合であれば、ハロゲン化物除去器5、ダストフィルター6、不純物フィルター7、精密精製装置10等によって構成されている(図2参照)。ここで、本実施形態においては、ガス精製装置22によってガス化ガスを精製する際、水蒸気の露点温度よりも高い温度で精製することとしている。すなわち、露点以下の温度でガス精製を行うと一部凝縮(液化)することによってガス中の水蒸気成分が不足することがあるが、本実施形態のごとく露点より高い温度で精製すれば、ガス精製の過程においてガス化ガス中の水蒸気を損なうことなく燃料電池14に投入して有効利用することが可能となる。こうした場合には、従来のように燃料電池14内で炭素が析出するのを効果的に抑制することができるようになるし、炭素析出が抑制されればガス配管の閉塞なども防ぐことにもつながる。加えて、凝縮した水蒸気の排水設備も不要となるために設備構成とそのための投資が少なくて済むというさらなる効果も得られる。以上のことからすれば、別の表現をするとここでいう精製時の温度とは水蒸気成分を損なわないようにして炭素析出を抑制するに足る温度ということになり、具体的な数値を挙げれば少なくとも100℃以上、好ましくは120℃以上の温度ということができる。
【0075】
さらに加えると、ガス精製時の手法としては乾式と湿式とを選択しうるが、本実施形態のごとき構成のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1においては乾式のガス精製を行うことが望ましい。すなわち、上述したように本実施形態では発電装置として高温型の燃料電池14を採用していることから、当該燃料電池14に供給するガス温度を大きく下げる必要がない。したがって、乾式のガス精製を行い、燃料ガスを高温に維持したまま燃料電池14に供給することとすれば、顕熱の損失を防ぐことができるという意味で有効である。要するに、従来の低温ガス精製方式だと高温なガス化ガスの顕熱が精製中に失われるのみならず、ガス化ガス中の水蒸気成分が失われることによって潜熱の損失をも生じていたのに対し、本実施形態においては上記のごとくガス化ガスを高温に維持したまま供給することが可能であるために、精製プロセス中での熱および物質損失を極力抑え、システム効率の低下を免れることができるという従来にはなかった効果を奏することができる。
【0076】
続いて、ガス精製装置22を構成している各装置について順次説明する。例えば本実施形態では、塩化水素、ダスト(塵埃)、硫黄化合物、水銀、ダイオキシン類といったようなガス化ガス中の不純物を除去するために、上述したハロゲン化物除去器5、ダストフィルター6、不純物フィルター7、精密精製装置10等によってガス精製装置22を構成している。ちなみに、湿式のガス精製方式を用いた場合であればガス化ガス中の不純物成分を除去した後の薬液を廃液として処理する必要が生じるなどの不便があるが、本実施形態ではいずれの装置も乾式でガス精製を行うものとし、これにより、廃液処理に要する設備構成が複雑化したり、ガス精製システムの効率が低下したりするのを回避することとしている。加えて、不純物分離のためにガス精製装置22中で用いられるフィルターについては、いずれも、高温雰囲気下で使用可能なものを用いることとし、高温下での乾式精製過程において精製が十分な程度に実施されるようにしている。
【0077】
ガス精製装置22を構成する各装置のうち、ハロゲン化物除去器5はガス化ガス中のハロゲン化物を除去するための装置として設置されているものである(図2参照)。このハロゲン化物除去器5には、ハロゲン化物(例えばHCl)を吸収するための不純物吸収剤として、ハロゲン化物吸収剤が供給される(図2参照)。
【0078】
ダストフィルター6は、ガス化ガス中のダスト(塵埃)を除去するためのフィルターである。上述したように、本実施形態では精製プロセス中の温度を露点温度より高くすることとしているため、このダストフィルター6におけるガス温度も少なくとも100℃、好ましくは120℃である。ただし、温度の上限に際限がないわけではなく、材質などに応じてガス温度は適宜を一定値以下に制限されることはいうまでもない。一例として、ダストフィルター6がテフロン(デュポン社登録商標、ポリテトラフルオロエチレン)製である場合のガス温度は180℃以下ということになる。
【0079】
不純物フィルター7は、内蔵している活性炭を利用してガス化ガス中の不要成分を除去するための装置である。この不純物フィルター7が除去の対象とする成分は、例えばダイオキシン類、Hg(水銀)、HS(硫黄化合物)といったものである(図2参照)。不純物フィルター7を通過したガス化ガスは、精製ガスブロワー8によって例えば1.5気圧程度の加圧状態とされてさらに前段の熱交換器9へと送り出される(図2参照)。この熱交換器9は、図示しているように、燃料電池14から排出されて炭化機2を通過した後の排ガスと、不純物フィルター7を通過した後のガス化ガスとの間で熱交換を行うためのものである。不純物フィルター7を通過したガス化ガスはこの熱交換器9にて例えば300℃程度にまで加熱され、その後に精密精製装置10へと送り込まれる。
【0080】
精密精製装置10はガス化ガス中の不要成分(不純物)をさらに除去するための装置である。この精密精製装置10(あるいはこれを含むガス精製装置22)を構成するにあたっては、燃料電池14に悪影響を及ぼす不純物を特定し、ガス化ガス中における不純物の濃度が少なくとも燃料電池14の許容レベルとなるまで当該不純物を除去できるような構成とすべきことはいうまでもない。一例を示すと、ガス化ガス中の不純物として例えばHCl、HF、COS、HSなどが含まれている場合、精密精製装置10は、例えばハロゲン化物精密除去器10a、COS変換器10b、脱硫器10cなどといった複数の装置から構成することができる(図3参照)。このような精密精製装置10で精製されたガス化ガスは、その後段の熱交換器11にて加熱される。この熱交換器11は、燃料電池14から排出される高温(例えば660℃程度)の排ガスと上記ガス化ガスとの間で熱交換を行うもので、ガス化ガスは加熱されて例えば600℃程度にまで加熱され、改質器12へと投入される(図2参照)。
【0081】
改質器12は、燃料電池14に供給されるガス(燃料ガス)に対し必要な改質処理を行うための装置である(図2参照)。ただし、本実施形態のようにガス化ガスを精製して燃料ガスとしている結果、必要なHやCOが既にガス化ガス中に含まれている場合であればこの段階で改質を実施する必要はなく、したがって本実施形態の改質器12は改質器として機能しない場合がある。しかし、バイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1としては、精製後のガス化ガスだけが燃料ガスとして供給されるばかりでなく、これに加えて天然ガスを補充的に供給するという構成が採られることもある。そこで本実施形態では、いずれにせよ燃料電池14の前段にこのような改質器12を設置しておき、バイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1がどのような構成となった場合にも柔軟に対応できるようにしている(図2参照)。現状の一般的な燃料電池システムは特定の燃料(天然ガス、バイオマスガス化ガス等)だけを想定した構成となっており、1つのシステムで多様な燃料に対応可能な構成とはなっていないが、本実施形態においては上述したようにバイオマスガス化ガスと天然ガスの両方に対応可能でありいずれの場合にも作動できるようになっている。
【0082】
さらに、本実施形態ではこの改質器12に対し必要な蒸気を供給できる手段を併設している(図2参照)。すなわち、上述したように少なくとも水蒸気の露点温度より高い温度でガス精製を行うようにした本実施形態では、ガス中の水蒸気をできるだけ損なわずに燃料電池14へと送り込むことが可能となっているが、仮にこのガス中の水蒸気が不足した場合であっても蒸気を別途供給可能として対処できるようにしている。この場合の蒸気供給手段はその構成が特に限定されるわけではないが、例えば本実施形態のように廃熱回収ボイラー16からガス化炉3への蒸気供給路を途中で分岐させて改質器12にも必要な蒸気を供給可能な構成とすれば効率的かつ小型なものとすることが可能となる(図2参照)。
【0083】
燃焼器13は、燃料電池14のアノード排ガスを燃焼した後、当該燃焼後のガスをカソードに供給する装置である(図2参照)。この燃焼器13の内部では例えば触媒を利用した触媒燃焼が行われており、これによって燃料電池14内での反応に必要な酸素等を生成して燃料電池14のカソードに供給する。また、本実施形態においてはこの燃焼器13と改質器12とでいわば一つの熱交換器が構成される構造としている。すなわち、燃焼器13における燃焼熱が改質器12へと伝わる構造とし、当該燃焼熱が改質に利用されるようにして熱効率の向上を図っている(図2参照)。また、バイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1においてはこの燃焼器13に燃焼用空気を供給するための装置が別途設けられる。例えば本実施形態では空気を1.5気圧程度に昇圧してから供給する空気ブロワー20を利用して燃焼器13に燃焼用空気を供給することとしている(図2参照)。本実施形態の空気ブロワー20は、燃焼器13のみならず併せてガス化炉3にも空気を供給する装置として用いられている。
【0084】
燃料電池14は、上述した過程で生成され、尚かつ精製されたガス化ガスをエネルギーとして作動し発電する発電装置であり、具体的にはSOFC(固体酸化物型燃料電池)やMCFC(溶融炭酸塩型燃料電池)のような高温で作動するものが適用される。また、上述したようにこの燃料電池14は、当該燃料電池14が排出する高温排ガスが排ガス供給路26を通じて炭化機2へ熱源として直接的に供給されるように構成されている(図2等参照)。この場合の排ガス供給路26は炭化機2へと直接接続されていても構わないが、上述したように本実施形態ではその途中に熱交換器11を設け、ガス精製装置22で精製された後のガスを燃料電池14の高温排ガスを利用して600℃程度にまで加熱することとしている(図2参照)。なお、本実施形態では排熱利用の形態として燃料電池14の排ガスを回収するようにした形態を示したがこれに限られるということはなく、これ以外にも、例えば排ガスと熱交換した蒸気を媒体として排熱を利用するなどの形態を採ることが可能である。
【0085】
また、本実施形態においては燃料電池14にカソードブロワー15を併設している。このカソードブロワー15は、燃料電池14から排出される高温排ガスの一部を昇圧し、燃料電池14のカソードへと再び送り込む(図2参照)。燃料電池14の高温排ガスのうちカソードブロワー15に送り込まれない分は上述した熱交換器11を通過した後に炭化機2の外筒部へと送り込まれる。当該排ガスはバイオマス燃料を外側から間接的に加熱した後、熱交換器9へと送り込まれ、さらにその後段に設置されている別の熱交換器17へと送り込まれる(図2参照)。
【0086】
熱交換器17では、炭化機2と熱交換した後の排ガスと、ガス化炉3に供給される前の空気との間で熱交換が行われる(図2参照)。この空気は、上述した空気ブロワー20からガス化炉3へと供給される空気のことで、例えば本実施形態の場合であれば熱交換器17にて250℃程度に加熱(予熱)された後にガス化炉3の炉内下部(ガス化溶融部)へと供給され、場合によってはさらに炉内上部(ガス改質部)にも供給される(図2参照)。なお、本実施形態ではこのようにガス化炉3に空気を供給するいわゆる空気吹きの構成としているが、燃焼用空気の代わりに酸素または酸素富化空気を供給するいわゆる酸素吹きの構成とすることも可能である。上述のように熱交換器17にて空気を加熱した後の排ガスは、さらに廃熱回収ボイラー16へと送り込まれる。
【0087】
廃熱回収ボイラー16は、排ガスから廃熱を回収し、回収した熱を利用して蒸気を生成する装置である(図2参照)。例えば本実施形態の廃熱回収ボイラー16は、水を加熱して150℃程度の蒸気を生成し、この蒸気をガス化炉3の炉内下部(ガス化溶融部)へと供給し、さらには必要に応じて上述した改質器12へと供給する。また、この廃熱回収ボイラー16へ水を供給する給水ポンプ18が設置されている(図2参照)。
【0088】
上述の廃熱回収ボイラー16で廃熱を回収された排ガスは例えば120℃程度の温度となっており、その後、スタックブロワー19によって1.5気圧程度にまで昇圧された後、スタック21へと送り込まれ、システム外へと排出される(図2参照)。
【0089】
以上説明したように、このバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1は、システム排熱を利用した炭化プロセスとガス化プロセスとを融合することにより補助燃料を使用しない場合にも高効率発電を実現している点が特徴的である。ちなみに、本発明者は、本発明にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1の場合、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(次段落参照)の目標値である30%(100トン/日規模)を超える数値(例えば34%程度)を達成できる見込みであるとの試算結果を得ている。つまり、炭化機2と燃料電池14とをシステム化することによって発電時に伴う排ガスの排熱の有効利用を実現した本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1においては従来よりも高い熱効率が達成され、木質系バイオマスのみならず都市ゴミのような廃棄物系バイオマスをも燃料に含めたとしても、補助燃料を使用せずとも熱分解し炭化することが可能となっている。すなわち、一般に木質系バイオマスは廃棄物系バイオマスよりも含水率が高いため両者を混合した状態で安定した性状の燃料に変換することは困難であったのに対し、排熱を有効利用する炭化機2を前段に備えた本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1によれば、両者を混合したいわば異種燃料を炭化プロセスにて乾燥させ、微粉状にすることも可能な含水率一定(例えば含水率1%程度)の安定した性状の燃料に変換することができる。また、既存の発電システムであれば例えばボイラー燃焼による1MW規模のシステムの場合の発電効率はたかだか10%程度にすぎなかったが、本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1によれば30%以上の発電効率を達成することが可能となる。
【0090】
なお、「バイオマス・ニッポン総合戦略」とは、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、文部省が連携して取り纏めたバイオマスの利活用を促進させるための戦略で、平成14年12月に閣議決定されているものである。例えばこの平成14年12月付の戦略の12頁には、「直接燃焼及びガス化プラント等含水率の低いバイオマスをエネルギーへ変換する技術において、バイオマスの日処理量20トン程度のプラント(数市町村規模を想定)におけるエネルギー変換効率が電力として20%、あるいは熱として80%程度、バイオマスの広域収集に関する環境が整った場合のバイオマス日処理量100トン程度のプラント(都道府県域を想定)におけるエネルギー変換効率が電力として30%程度を実現できる技術を開発する。」と記載されている(ここでいうエネルギー変換効率とは、バイオマス燃料のもつ化学エネルギー(発熱量)が電力に変換された割合を意味している)。本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1は、この総合戦略が推し進めようとしているバイオマスの利活用促進にまさに合致するものである。
【0091】
さらに、本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1によれば従来の燃料電池にはなかった以下のような特有の効果を発揮することが可能となる。すなわち、(1)木質系バイオマスだけでなく、都市ゴミや廃棄プラスチック類といった廃棄物系バイオマスまでもが利用可能になるので、集約量に季節変動のある木質系バイオマス燃料をこのような廃棄物系バイオマスで補完できるようになり、安定した発電出力を得ることが可能となる。(2)廃棄物系バイオマスには逆有償であるものがあり、このような逆有償の廃棄物を対象に含めた場合には、例えば20,000円以上/トンというように一般に収集コストの高い木質系バイオマスの経済性を改善することが可能となる。(3)燃料集約量が増えることで発電規模の大型化が可能となり、その相乗効果で高効率発電が可能となる。(4)ダイオキシン類の発生がなく、灰分を溶融スラグ化して無害化するため、環境性に優れた一般廃棄物および産業廃棄物の処理装置としての役割も果たす。(5)ガス化プロセスに炭化プロセスを融合させた結果、炭化プロセスの段階でバイオマス原料を1/5〜1/7程度にまで減容させてからガス化プロセスへと移行させることが可能となることから、ガス化炉のコンパクト化が図れる。(6)特別な資格がない者でも扱うことができる。
【0092】
加えて、本実施形態にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1では、水蒸気の露点温度よりも高い温度にてガス化ガスを精製することとしたため、精製後のガス化ガス(燃料ガス)をその中に水蒸気が残った状態で燃料電池14に供給することが可能となっている。つまり、それ以下の温度にてガス精製を行うとガス中の水蒸気成分が減少・不足してしまい、これによって固体炭素析出やガス配管の閉塞などが生じるのは上述したとおりであるが、本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1の場合には、ガス化炉3から発生したガス化ガス中の水蒸気をガス精製の過程で損なうことなく燃料電池14に導入することが可能である。このため、固体炭素析出や配管閉塞といった弊害がない。また、もちろんのことであるが、生成したガス化ガス中に水蒸気を吹き込む必要はないし、水蒸気を別途発生させるための装置を設ける必要もない。
【0093】
しかも、発電装置として高温型の燃料電池14を採用し、尚かつこのような高温型燃料電池14による発電に適した乾式ガス精製プロセスを実現していることが、上述の水蒸気損失を抑制するための構成と相まって相乗的効果を奏する結果となっている。すなわち、燃料ガス(ガス化ガス)を高温に保ったまま燃料電池14に供給することが可能であるため、燃料ガスの温度を大きく下げる必要がなく、したがって水蒸気損失の抑制のため高温に保持したことと相まって熱損失を効果的に抑制することが可能となっている。加えて、ガス精製装置22は乾式にて精製を実施する装置で構成されているために排水処理が不要であり、したがって排水設備が不要であるという点もさらに有利である。
【0094】
さらに、本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1においては発電装置として高温型の燃料電池14を採用したことから、発電装置がガスエンジンやガスタービン等である場合とは異なり、ガス化ガスの熱量や流量が変動したとしてもこの変動量が電池自身の温度を運転範囲内に留める程度のものであれば安定かつ高効率に運転することができることが可能となっている。
【0095】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態においては廃棄物系バイオマスの具体例として都市ゴミや廃棄プラスチック類を挙げたがこれらは例示にすぎず、本実施形態にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1によれば木質系か廃棄物系かを問わず多くのバイオマス、例えば農林・畜産・水産物資源およびその残さ物、建築廃材、食品廃棄物、汚泥等の高含水率のバイオマスを利用対象に含めることができる。
【0096】
また、本実施形態では、炭化機2に対してバイオマス燃料のみを投入する形態を説明したが、必要に応じて化石燃料を追加投入するための化石燃料投入手段(例えば化石燃料投入用ライン)29を併設することもできる(図5参照)。例えば、水分量50%以上というような高含水のバイオマス燃料は単位体積あたりの熱量が低く、炭化装置2を用いてもガス化ガスの単位体積あたりの熱量も低い場合があるが、このような場合に上述の化石燃料投入手段29を利用して化石燃料を追加投入することとすれば、追加分の熱量を合わせて炭化を行うことが可能となる。こうした場合、ガス化ガスの単位体積あたりの熱量が向上する結果、システム全体としての熱効率や発電効率の向上を図ることが可能となる。化石燃料としては石炭などを用いることができる。
【0097】
また、ガス化ガスの単位体積あたりの熱量向上を図るという観点からすれば、燃料電池14の排熱を利用し、炭化装置2へと投入される前の段階でバイオマスを加熱し一部乾燥する前処理システム30を構成することも好ましい(図6参照)。バイオマスとして水分量50%以上という高含水のものを対象とすると上述したように単位体積あたりの熱量が低いが、このような前処理システム30を利用すれば、炭化装置2へ投入される前の段階で水分の一部を蒸発させることができるため、熱量向上が図れるという点で有利となる。このような前処理システム30の一例を示すと、スタックブロワー19からスタック21までの排ガス経路途中に乾燥器31を設け、投入前のバイオマス燃料をこの乾燥器31にて一部乾燥するというものがある(図6参照)。例えば本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1の場合、廃熱回収ボイラー16を通過した後の時点で排ガスは120℃程度の温度であり、尚かつその後は廃ガスとして排出されるだけであるため、この排ガスが有する廃熱を利用して熱風による前処理を行えばシステム全体としての熱効率がさらに向上することにつながる。しかも、このように一部乾燥するための前処理を行う場合、例えば脱水処理を採択すると排水を処理するための設備が別途必要になることがあるが、上述のように廃熱を利用して一部乾燥する場合には水分を水蒸気としてバイオマスごと炭化機2に送り込むことができる(つまり、システム内に水蒸気を取り込むことができる)ためにこのような排水設備を設けなくて済むという利点もある。
【0098】
さらに、本実施形態のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム1においては高温型の燃料電池14を採用したことから、ガス化ガスの熱量や流量が変動したとしても安定かつ高効率に運転することが可能となっていることは上述したとおりであるが、さらにガスホルダー32を併設することも好ましい(図7参照)。ガスホルダー32を設けた場合には、ガス化ガスの圧力制御を行うことによって熱量流量の変動による電池出力の変動をさらに抑えることが可能となる。ガスホルダー32の設置例としては、例えば図2に示した熱交換器11から改質器12へと続くガス化ガス供給路と並列に設置したアキュムレーターなどを挙げることができる(図7参照)。また、このようにガスホルダー32を高温型燃料電池ユニットC内にパッケージング化することは、ガスホルダー32を高温雰囲気下に置くことになるから、当該ガスホルダー32からの放熱の防止を図ることが可能となる。さらには、例えばガスホルダー32の出口に圧力調整弁(調整圧は常圧〜精製ガスブロワー8の出口圧力の間)を設け、ある程度の変動を吸収させる等により、このガスホルダー32およびその周囲に、ガス化ガスの熱量や流量の変動を安定化させる機能を備えさせることもできる。あるいは、ガスホルダー32自体で吸収しきれない大きな変動が生じた場合に、ガスホルダー32から天然ガスを導入することにより、ガス化ガスの組成および流量変動を安定化させることも可能である。なお、天然ガスのみをガスホルダー32に導入した場合、当該ガスホルダー32内の温度によっては炭素析出が懸念されるために、必要に応じて水蒸気も同時に加えるか、あるいはそのことを考慮することが好ましい(図7参照)。
【0099】
また、ガス化炉3で生成されるガス化ガスのみでは要求される電気出力を補償できないおそれがあるような場合には、ガス化ガスの不足分を補う一手段として天然ガス供給手段33を設けることとしてもよい(図7参照)。こうした場合、ガス化ガスの不足分を天然ガスで補うことによって燃料電池14の迅速な負荷応答あるいは一定出力運転を確保することが可能となる。天然ガスを供給する具体的な形態の一例としては、上述したガスホルダー32に供給する構成としたものなどがあるが(図7参照)、これは一例であって他の形態とすることも可能である。
【0100】
さらには、ガス化ガス中の水素、一酸化炭素成分からメタン成分を発生するメタン生成器34を設けることもできる(図8参照)。高温型燃料電池14が例えば内部改質型である場合にはガス化ガス中のメタン濃度を高くする必要があるが、現状のガス化ガスでは場合によっては要求を満たす程のメタン濃度を確保することができない場合がある。これに対し、ガス化ガス中の水素、一酸化炭素成分からメタン成分を発生するメタン生成器34をシステム内に設けることとすれば内部改質型の燃料電池14にも対応することが可能となる。また、こうした場合には、メタン生成器34にて発生する熱を、燃料電池14に導入する導入する燃料ガスや酸化剤ガスを昇温させるため、あるいは燃料電池14の排ガスの高温化するための熱源として有効利用することも可能となる。このようなメタン生成器34の具体的な形態の一例を示すと、例えば熱交換器11から改質器12へと続くガス化ガス供給路と並列に設置したものを挙げることができる(図8参照)。また図8に示す実施形態では、廃熱回収ボイラー16から供給される蒸気の供給管を途中で分岐し、このメタン生成器34にも蒸気を供給し、炭素析出を防止することとしている(図8参照)。
【0101】
また、本実施形態ではガス化炉3で生成したガス化ガスを冷却器4において水冷することとしたが(図2参照)、水冷する(つまり水との間で熱交換する)代わりに、あるいは水冷するよりも前に、熱交換機11との間で熱交換を行うようにすることも好ましい。こうした場合には、燃料電池14の排ガスを直接、炭化機2の熱源として供給できるため、さらに高い熱効率を実現することが可能となる。この場合、熱交換器11は冷却器4の手前(つまり、ガス化炉3から冷却器4までの経路の途中)で交差ないしは近接させて設置し、精密精製装置10を経たガス化ガスとガス化炉3の出口のガス化ガスとの間で熱交換が行われるようにする(図1参照)。なお、図2においてはそれぞれ別に示した熱交換器9,11であるが、図1中ではこれら熱交換器をまとめて図示している。
【0102】
さらには、精製後のガスの一部を取り出して燃焼し、燃焼後のガスを排ガス供給路26へと送り込むようにしてもよい(図9参照)。こうした場合には、燃焼後のガスが有する熱量を炭化機2に与えることが可能となるから、上述したのと同様、炭化機2に熱源として供給される排ガスをより高温とすることができ、さらに高い熱効率を実現することが可能となる。このような実施形態の具体例としては、精密精製装置10から熱交換器11までのガス供給路を途中で分岐し、分岐路の途中に燃焼器35を設けたものを挙げることができる(図9参照)。燃焼後のガスは排ガス供給路26へ送り込まれて排ガスと混合される。このような構成は、特に水分量50%以上という高含水のバイオマスが対象となる場合に、発熱量の高い高品位炭化チャーが得られるという点で好適である。燃焼器35には必要量の燃焼用空気が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明にかかるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムの構成の概略を3つのユニットに分けて示した図である。
【図2】本実施形態におけるバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムの構成を示した図である。
【図3】図2に示したバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムのうち、ガス精製装置に該当する部分を詳細に示した図である。
【図4】単一のガス化炉の周囲に炭化装置を複数個配置し、各炭化装置の運転サイクルに時間差を設けてローテーションで作動させるようにしたバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システムを示した図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示したもので、炭化機に化石燃料を追加投入するための化石燃料投入手段を併設した形態を部分的に表す概略図である。
【図6】炭化装置へと投入される前の段階のバイオマスを燃料電池の排熱を利用して加熱し、一部乾燥する前処理システムの構成の一例を示した図である。
【図7】ガス化ガスの熱量流量の変動による電池出力の変動を抑えるガスホルダー、およびガス化ガスの不足分を補う一手段としての天然ガス供給手段を設けた形態の一例を示した図である。
【図8】ガス化ガス中の水素、一酸化炭素成分からメタン成分を発生するメタン生成器を設けた形態の一例を示した図である。
【図9】精製後のガスの一部を取り出して燃焼し、燃焼後のガスを排ガス供給路へと送り込むようにした形態の一例を示した図である。
【図10】炭素析出の概要を説明するための図で、燃料ガスの組成を炭素C分、水素H分、酸素O分の比率で分配した三相図である。
【符号の説明】
【0104】
1 バイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム
2 炭化機(炭化装置)
3 ガス化炉
14 高温型の燃料電池
22 ガス精製装置
29 化石燃料投入手段
30 前処理システム
32 ガスホルダー
33 天然ガス供給手段
34 メタン生成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温型の燃料電池と、該燃料電池が作動時に排出する排熱の供給を受け該排熱を利用してバイオマスを熱分解し炭化する炭化装置と、該炭化装置により生成される炭化チャーの燃焼およびガス化と炭化時に揮発したタールを含む熱分解ガスの改質とを行うガス化炉と、該ガス化炉で生成されたガス化ガスを水蒸気の露点温度よりも高い温度で精製するガス精製装置とを備え、さらに前記燃料電池は、前記ガス化炉で生成され前記ガス精製装置で精製されたガス化ガスをエネルギーとして作動するとともに当該作動時に排出する排熱を前記炭化装置に熱源として供給するものであることを特徴とするバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記ガス精製装置は、乾式の精製装置であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記炭化装置に化石燃料を追加投入するための化石燃料投入手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記炭化装置へと投入される前の段階の前記バイオマスを前記燃料電池の排熱を利用して加熱し一部乾燥する前処理システムを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記燃料電池に悪影響を及ぼす不純物を特定し、前記ガス化ガス中における前記不純物の濃度が少なくとも前記燃料電池の許容レベルとなるまで当該不純物を除去することを特徴とする請求項1から4のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項6】
前記ガス精製装置は、ガス化中に含まれるHCl等の不純物を吸収する不純物吸収剤と、水蒸気の露点温度よりも高い温度条件下で使用される高温フィルターとを用いるものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項7】
前記ガス精製装置によって精製されたガス化ガスの圧力制御を行うガスホルダーを備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項8】
前記ガス化炉にて生成されるガス化ガスの不足分を補うための天然ガス供給手段を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項9】
前記燃料電池のアノード排ガスを燃焼させた後にカソードに供給する燃焼器と、前記燃料電池のアノードに供給されるガスの改質が必要な場合に前記燃焼器の燃焼熱を利用して当該ガスの改質を行う改質器とを備え、前記燃料電池の燃料ガスとして、前記精製後のガス化ガスのみならず天然ガスをも補充的に利用可能としていることを特徴とする請求項1から8のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項10】
ガス化ガス中の水素、一酸化炭素成分からメタン成分を発生するメタン生成器を備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項11】
前記ガス化炉に燃焼用空気を供給する空気吹きの構成となっていることを特徴とする請求項1から10のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項12】
前記ガス化炉において、前記バイオマスを炭化することにより得られた炭化チャーを燃料として燃焼とガス化を行い、前記タールを1100℃以上の温度で分解し、前記熱分解ガスの改質を行うことを特徴とする請求項1から11のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項13】
前記ガス化炉において、前記バイオマスを炭化することにより得られた炭化チャーを燃料として燃焼とガス化を行い、該炭化チャー中の灰分を溶融させスラグ化することを特徴とする請求項1から12のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項14】
前記燃料電池から排出された排ガスと前記ガス化炉で生成されたガス化ガスとの間で熱交換を行うことにより、前記炭化装置にて前記バイオマスの炭化に使用する熱を、前記燃料電池から排出された排ガスから回収するのみならず、前記ガス化炉で生成されたガス化ガスからも回収する熱交換器を備えていることを特徴とする請求項1から13のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。
【請求項15】
前記炭化装置を複数個配置し、各炭化装置の運転サイクルに時間差を設けてローテーションで作動させることを特徴とする請求項1から14のいずれかひとつに記載のバイオマスの炭化ガス化高温型燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−128006(P2006−128006A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316971(P2004−316971)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】