バイオマス加工方法
燃料などの有用な生成物の産生における使用のために、バイオマス(例えば植物バイオマス、動物バイオマスおよび都市廃棄物バイオマス)を加工する。例えば、システムは、例えば発酵によるエタノールおよび/またはブタノールの産生など、生成物の産生を促進するために、セルロース系および/またはリグノセルロース系材料などのバイオマス材料を使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年4月4日出願の米国特許仮出願第12/417,840号、2009年5月20日出願の米国特許出願第61/180,032号および2009年10月16日出願の米国特許仮出願第61/252,293号に対する優先権を主張する。これらの各特許仮出願の全開示は本明細書中で参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
セルロース系およびリグノセルロース系材料が多くの用途で大量に生産、加工および使用されている。このような材料は一度使用されると、廃棄物として捨てられるかまたは、例えば、汚水、バガス、おがくずおよびストーバーなど、単に廃棄物とみなされることが多い。
【0003】
様々なセルロース材料およびリグノセルロース材料、これらの使用ならびに用途が、米国特許第7,307,108号(特許文献1)、同第7,074,918号(特許文献2)、同第6,448,307号(特許文献3)、同第6,258,876号(特許文献4)、同第6,207,729号(特許文献5)、同第5,973,035号(特許文献6)および同第5,952,105号(特許文献7);ならびに2006年3月23日出願の「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648(特許文献8)および「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許出願公開第2007/0045456号(特許文献9)を含む様々な特許出願に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,307,108号
【特許文献2】同第7,074,918号
【特許文献3】同第6,448,307号
【特許文献4】同第6,258,876号
【特許文献5】同第6,207,729号
【特許文献6】同第5,973,035号
【特許文献7】同第5,952,105号
【特許文献8】2006年3月23日出願の「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648
【特許文献9】「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許出願公開第2007/0045456号
【発明の概要】
【0005】
概要
場合によって、プロセス中、例えば発酵中にバイオマスが存在することによって、低分子量の糖の中間体または生成物への変換が促進される。本発明者らは、低分子量の糖、培地、例えば溶媒または溶媒系、および微生物との混合物中にバイオマスを入れることによって、糖の、例えばエタノールまたはブタノールなどのアルコールへの変換により得られる中間体または生成物の収率および産生速度を向上させることができることを見出した。バイオマスを入れることによって、例えば発酵によって、不完全な、遅いまたは「足止め状態の」生成物変換を防ぐこともできる。
【0006】
バイオマスは、それ自身においては生成物(アルコールなど)に変換され得ないかまたは低分子量の糖とともに一部もしくは完全に生成物に変換され得る。
【0007】
バイオマスが一部変換される例において、バイオマスの表面積および気孔率が出発バイオマスの表面積および気孔率に相関して上昇し、これにより低分子量の糖から生成物への変換速度が有利に上昇し得る。
【0008】
一部の例では、バイオマスは、糖化されたセルロース系またはリグノセルロース系材料の残留物、例えば、リグニンおよび/またはセルロースが糖に変換された後に残留するその他の物質であり得る。
【0009】
ある局面において、本発明は、炭水化物、例えば低分子量の糖を生成物に変換するために、バイオマス材料、例えば官能化バイオマス繊維上に固定化されている微生物および/または酵素を使用することを含む方法を取り上げる。「固定化される」とは、微生物および/または酵素が、直接または間接的に(例えば化学リンカーを通じて)、例えば、微生物とバイオマス材料、例えば繊維の孔との間の、共有、水素、イオンまたは同等の結合によって、および/または機械的な相互作用によって繊維に結合されることを意味する。例えばバイオマス材料を電気的に極性化することによって結合を生成させ得る。この相互作用は、永久的、半永久的または一瞬であり得る。機械的相互作用には、バイオマス材料の孔または他の部位と入れ子状になっているかまたはそれに密着している微生物または酵素が含まれ得る。
【0010】
一部の実施には1以上の次の特性が含まれる。
【0011】
変換には、微生物が低分子量の糖の少なくとも一部をアルコール、例えばエタノールもしくはブタノールなど、または炭化水素もしくは水素に変換できるようにすることを含み得る。変換には発酵が含まれ得る。微生物には、酵母、例えば、S.セレビシエ(S.cerevisiae)および/またはP.スチピチス(P.stipitis)または細菌、例えばザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)が含まれ得る。本方法は、例えば電離放射線で、例えば粒子ビームを用いてバイオマス繊維を照射することをさらに含み得る。バイオマス繊維は、0.25m2/gを超えるBET表面積および/または少なくとも70%の気孔率を有し得る。バイオマス繊維は、内部繊維を有しておりこの内部繊維が実質的に露出される程度に剪断されているバイオマス材料由来であり得る。
【0012】
別の局面において、本発明は、極性官能基を有するバイオマス材料と、相補的な引力性の官能基を有する微生物と、液体培地とを含む混合物を取り上げる。
【0013】
さらなる局面において、本発明は、官能基を有するバイオマス繊維および相補的な引力性の官能基を有する微生物を含み、この微生物がバイオマス繊維上に固定化されている組成物を取り上げる。
【0014】
本発明はまた、バイオマスと、微生物と、溶媒または溶媒系(例えば、水または水と有機溶媒の混合液)との混合物において、低分子量の糖または低分子量の糖を含む材料を生成物に変換することを含む方法も取り上げる。溶媒または溶媒系の例としては、水、ヘキサン、ヘキサデカン、グリセロール、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、石油エーテル、液化石油ガス(LPG)、イオン液体およびそれらの混合物が挙げられる。この溶媒または溶媒系は単相または2以上の相の形態であり得る。バイオマスは例えば繊維形態であり得る。
【0015】
ある例において、生成物の産生中にバイオマス材料(例えば、本明細書中に記載の何れかの方法で処理されているかまたは未処理のもの)が存在することによって、生成物の産生速度が上昇し得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、固体、例えば表面積が大きいおよび/または気孔率が高い固体などが存在すると、溶質の有効濃度が向上し、反応が起こり得る基質が提供されることによって、反応速度が上昇し得ると考えられている。
【0016】
ある態様において、照射され、酸化され、化学的に処理され、機械的に処理され、超音波処理され、蒸気爆発に供されおよび/または熱分解されたバイオマス材料を低分子量の糖の発酵プロセスに添加して、例えば発酵速度および産出量を向上させることができる。
【0017】
例えば、照射済みまたは未照射の、紙繊維などのバイオマス材料を発酵過程に、例えばトウモロコシ-エタノール発酵またはサトウキビ抽出物発酵中などに添加して、少なくとも10、15、20、30、40、50、75、100%以上、例えば少なくとも150%またはさらに最大で1000%、産生速度を上昇させることができる。変換、例えば発酵は、少なくとも140%、場合により少なくとも170%という、本明細書中の実施例で定義されるとおりの%パフォーマンスを示し得る。
【0018】
バイオマス材料は、表面積が大きく、気孔率が高くおよび/またはかさ密度が低いものであり得る。ある態様において、バイオマスは、約0.5重量%から約50重量%の間、例えば約1重量%から約25重量%の間または約2重量%から約12.5重量%の間で混合物中に存在する。その他の態様において、バイオマスは、約0.5重量%より多い量、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9重量%よりも多い量またはさらには約10重量%よりも多い量、存在する。
【0019】
変換過程中にバイオマス材料それ自身は消費されないので、複数回の回分プロセスでこのバイオマス材料を再使用できるかまたは比較的大量の生成物の産生のために連続的に使用することができる。
【0020】
一部の実施には1以上の次の特性が含まれる。本方法は、混合前に、例えば電離放射線で、例えば少なくとも5Mradの総線量で、繊維状バイオマスに照射することを含み得る。照射は粒子ビームを用いて実施することができる。バイオマスの分子量を低下させるように選択された条件下で照射を行い得る。照射を複数回適用して照射を行うことができる。電離放射線には、電子線照射が含まれ得る。例えば、約10Mradから約150Mradの間の総線量、例えば約0.5から約10Mrad/日または1Mrad/sから約10Mrad/sの線量率などで、照射を適用することができる。ある態様において、照射には、ガンマ線および電子線などの2以上の線源を適用することが含まれる。
【0021】
ある態様において、バイオマス原料において照射が行われ、同時にバイオマス原料は、大気、窒素、酸素、ヘリウムまたはアルゴンに曝露される。ある態様において、前処理には、蒸気爆発でバイオマス原料を前処理することが含まれ得る。
【0022】
ある態様において、本方法は、例えばバイオマスの個々の小片の1以上の寸法を縮小することによって、例えば剪断するか、石臼研削(stone grinding)するか、機械的に剥離もしくは引裂するか、ピン研削するか、湿式もしくは乾式研削するか、エアーアトリッションミルで処理するか、切断するか、搾取するか、圧縮するかまたはこれらのプロセスの何れかを組み合わせることによって、バイオマスを機械的に処理することを含む。ある場合において、機械的処理後、バイオマスは、長さと直径の比の平均が5/1よりも大きい繊維を含む。ある態様において、調製したバイオマスのBET表面積は0.25m2/gよりも大きいものであり得る。機械的に処理したバイオマスのかさ密度は、約0.5g/cm3未満、例えば0.35g/cm3未満であり得る。
【0023】
本明細書中で開示される方法の何れにおいても、ボールト内にある装置から照射を適用し得る。
【0024】
別段の定めがない限り、本明細書中で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において本明細書中に記載のものと同様のまたは同等の方法および材料を使用することができるが、適切な方法および材料は下記で記載する。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、その全体において参照により組み入れられる。不一致がある場合、定義を含め、本明細書が優先する。さらに、材料、方法および実施例は単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0025】
本発明のその他の特性および長所は以下の詳細な説明から明らかとなり、特許請求の範囲を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】バイオマスの処理および発酵過程での処理済みバイオマスの使用を示すブロック図である。
【図2】微生物と相互作用する官能化バイオマスの概略図である。
【図3】ロータリーナイフカッターで剪断したクラフトボール紙の赤外線スペクトルである。
【図4】100Mradのガンマ線で照射した後の図3のクラフト紙の赤外線スペクトルである。
【図5】図5A〜5Iは、実施例13の試料P132、P132-10、P132-100、P-1e、P-5e、P-10e、P-30e、P-70eおよびP-100eの1H-NMRスペクトルである。図5Jは、図5A〜5Iからの〜16ppmでの交換性プロトンの比較である。図5Kは、試料P-100eの13C-NMRである。図5L〜5Mは、遅延時間10秒の試料P-100eの13C-NMRである。図5Nは、10%wt./wt.濃度の試料P-100eの1H-NMRである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本明細書中に記載の方法を用いて、カルボン酸基、エノール基、アルデヒド基、ケトン基、ニトリル基、ニトロ基またはニトロソ基などの官能基の所望のタイプおよび量を有する官能化バイオマス材料を調製することができる。このような官能化材料は、例えば発酵プロセス中、低分子量の糖の生成物への変換を促進し得る。
【0028】
バイオマスの種類
本明細書中に記載のプロセスでの使用に好ましいバイオマス材料は、糖の変換において使用しようとする、例えば酵母などの微生物といった作用物質上の官能基と相補的である官能基で官能化することができる繊維を含有する。
【0029】
繊維の供給源としては、紙および紙製品(例えばポリコート紙およびクラフト紙)を含むセルロース系繊維供給源および、木材および木材関連材料(例えば削片板)を含むリグノセルロース系繊維供給源が挙げられる。他の適切な繊維供給源としては、天然繊維供給源(例えば、草、もみ殻、バガス、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザルアサ、マニラアサ、藁、スイッチグラス、アルファルファ、乾草、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、ココナツヘア)、α-セルロース含量が高い繊維供給源(例えば綿花)、および合成繊維供給源(例えば押出糸(延伸糸または非延伸糸))が挙げられる。天然または合成繊維供給源は、バージンスクラップ織物材料、例えば残留物から得ることができるか、またはそれらは使用済み廃棄物(例えばぼろ切れ)であり得る。紙製品を繊維供給源として使用する場合、それらはバージン材料、例えば、スクラップバージン材料であり得、それらは使用済み廃棄物であり得る。バージン原料とは別に、使用済み廃棄物、産業廃棄物(例えばくず)および加工廃棄物(例えば紙加工からの廃水)も繊維供給源として用いることができる。繊維の供給源はまた、ヒト廃棄物(例えば下水)、動物廃棄物または植物廃棄物から得ることもでき、それに由来し得る。さらなる繊維供給源は、米国特許第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号および同第5,952,105号に記載されている。
【0030】
ある態様において、バイオマス材料は、1以上のβ-1,4結合を有し、約3,000から50,000の間の数平均分子量を有する材料であるかまたはこのような材料を含む炭水化物を含む。このような炭水化物は、β(1,4)-グリコシド結合の縮合を通じた(β-グルコース1)由来のセルロース(I)であるかまたはこれを含む。この結合はそれ自身、デンプンおよびその他の炭水化物に存在するα(1,4)-グリコシド結合に対するものと対照をなす。
【0031】
デンプン材料としては、デンプンそのもの、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、ジャガイモデンプンもしくはコメデンプンなど、デンプンの誘導体またはデンプンを含む材料、例えば食品もしくは食用作物が挙げられる。例えば、デンプン材料は、アラカチャ、ソバ、バナナ、オオムギ、キャッサバ、葛、オカ、サゴヤシ、モロコシ、一般的な家庭用ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、ヤムイモまたは1以上のマメ類、例えば、ソラマメ、レンズマメもしくはエンドウマメであり得る。何らかの2以上のデンプン材料の混合物もデンプン材料である。
【0032】
ある場合において、バイオマスは微生物材料である。微生物供給源としては、炭水化物供給源(例えばセルロース)を含有するかまたは提供することができる、何らかの天然のまたは遺伝子組み換えされた微生物または生物、例えば、原生生物、例えば動物原生生物(例えば、鞭毛虫、アメーバ、繊毛虫および胞子虫などの原生動物)および植物原生生物(例えば、アルベオラータ、クロララクニオン、クリプト藻類、ミドリムシ目、灰色植物、ハプト藻、赤色藻類、ストラメノパイルおよび緑色植物亜界などの藻類)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、海藻、プランクトン(例えば、マクロプランクトン、メソプランクトン、ミクロプランクトン、ナノプランクトン、ピコプランクトンおよびフェムトプランクトン)、植物プランクトン、細菌(例えばグラム陽性細菌、グラム陰性細菌および特殊環境生物)、酵母および/またはそれらの混合物が挙げられる。場合によっては、微生物バイオマスは、天然供給源、例えば、海洋、湖、複数の水域、例えば海水または淡水から得るかまたは陸から得ることができる。あるいはまたはさらに、微生物バイオマスは、培養系、例えば大規模な乾式および湿式培養系から得ることができる。
【0033】
本明細書中に記載の何らかの中間体または生成物を生成させるために、本明細書中に記載の何らかのバイオマス材料の混合物を使用することができる。例えば、本明細書中に記載の何らかの生成物を生成させるために、セルロース系材料およびデンプン系材料の混合物を使用することができる。
【0034】
発酵において、バイオマスを処理し、処理したバイオマスを使用するためのシステム
図1はバイオマス、特に繊維状バイオマスを処理し、次いで処理したバイオマスを用いて発酵プロセスを促進するためのシステム100を示す。システム100には、バイオマス原料が機械的に処理される、例えば原料の内部繊維を曝露させる、モジュール102が含まれる。機械的処理の例は下記で詳述する。システム100は、機械的に処理した原料が例えば照射により官能化されるモジュール104も含む。官能化後、官能化繊維は、送達モジュール108によって発酵システム106に送り込まれる。
【0035】
次に、官能化繊維は発酵中に存在し、発酵で使用される微生物(例えば酵母細胞)と相互作用できる基質を提供することによって発酵プロセスを促進する。この相互作用は、相補的な極性官能基を有する官能化極性繊維10および酵母細胞12を示す図2で概略的に示される。繊維および酵母細胞の極性ゆえに、酵母細胞は1以上の繊維に固定化されるようになり得る。酵母細胞(またはその他の微生物)の繊維への結合は、水素結合によるかまたは共有もしくはイオン結合によるものであり得る。場合によっては、繊維上の官能基は、微生物上の官能基と反応し得、共有結合を形成する。機械的処理(例えばモジュール102において)の結果、バイオマス材料の表面積および気孔率が大きくなると、繊維および微生物の相互作用のための表面積が大きくなり、従ってこの相互作用が促進される。固定化細胞はより生産性が高く、発酵プロセスの効率および収率を向上させ、このプロセスが未熟なまま「足止めされる」事態を回避させる。
【0036】
発酵中に混合が行われる場合、この混合は、微生物と繊維との間の相互作用の妨害が最小限になるように、好ましくは比較的穏やかなもの(低剪断)であることに留意されたい。ある態様において、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第61/218,832号および同第61/179,995号に記載のように、噴流混合が使用される。
【0037】
再び図1を参照して、発酵により粗製エタノール混合物が産生され、これが貯蔵タンク110に流れ込む。ストリップ塔112を用いて、水またはその他の溶媒およびその他の非エタノール成分を粗製エタノール混合物から揮散させ、次に蒸留ユニット114、例えば精留塔を用いてエタノールを蒸留する。最後に、分子ふるい116を用いてエタノールを乾燥させ、必要に応じて変性させ、所望の輸送方法に対して産出することができる。
【0038】
場合によって、本明細書中に記載のシステムまたはその部品は携帯可能であり得、従ってある場所から別の場所にこのシステムを輸送することができる(例えば鉄道、トラックまたは船舶による)。1以上の場所で本明細書中に記載の方法工程を行うことができ、場合によって、輸送中に1以上の工程を行うことができる。このような可動式処理は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/374,549号および国際公開公報第2008/011598号に記載されている。
【0039】
周囲温度で本明細書中に記載の方法工程の何れかまたは全てを行うことができる。必要に応じて、ある種の工程中に冷却および/または加熱を使用し得る。例えば、脆度を向上させるために機械的処理中に原料を冷却し得る。ある態様において、最初の機械的処理および/またはその後の機械的処理の、前、その間またはその後に、冷却を使用する。全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/502,629号に記載のように冷却を行い得る。さらに、発酵を促進するために、発酵システム106中の温度を調節し得る。
【0040】
物理的処理
バイオマス材料の形態を変化させるためにおよび/または材料を官能化するために使用され得る物理的プロセスは、機械的処理、化学的処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発などの本明細書中に記載の何らかの1以上を含み得る。2、3、4またはさらに全てのこれらの技術(順序は問わず。)の組み合わせで処理方法を使用することができる。複数の処理方法を使用する場合、同時にまたは異なる時間にこれらの方法を適用することができる。バイオマス原料を官能化するおよび/またはその形態を変化させるその他の処理も、単独でまたは本明細書中に記載の処理と組み合わせて使用することができる。
【0041】
機械的処理
場合によっては、バイオマス原料を機械的に処理することが方法に含まれ得る。機械的処理としては、例えば、切断、粉砕、圧搾、研削、剪断および細切が含まれる。粉砕には、例えば、ボールミル粉砕、ハンマーミル粉砕、ローター/ステーター乾式粉砕もしくは湿式粉砕または他のタイプの粉砕が含まれ得る。他の機械的処理としては、例えば、石臼研削、粗砕、機械的剥離もしくは引裂、ピン研削またはエアーアトリッションミル粉砕が挙げられる。
【0042】
機械的処理は、セルロース系材料またはリグノセルロース系材料を「切り開き」、「力を加え」、破壊し、破砕するのに有利になることがあり、これらによって、材料のセルロースは、鎖が切断され易くなりおよび/または結晶化度が低くなる。切り開かれた材料は、照射時に酸化されやすくなっている場合もある。
【0043】
場合によっては、機械的処理には、受領されたとおりの原料の初期調製、例えば、切断、研削、剪断、微粉砕または細切などによる材料のサイズ縮小化も含み得る。例えば、場合によっては、剪断または細断によって、疎性原料(例えば再生紙、デンプン材料またはスイッチグラス)が調製される。
【0044】
あるいはまたはさらに、原材料は、最初に他の物理的処理方法、例えば、化学処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発の1以上によって物理的に処理され、次いで機械的に処理され得る。照射または熱分解などの他の処理の1以上で処理した材料はより脆くなる傾向があり、従って、機械的処理によって材料の分子構造をさらに変化させることがより容易になり得るので、この一連の処理は有利になることがある。
【0045】
ある態様において、バイオマス材料は繊維性であり、機械的処理には、繊維材料の繊維を曝露させるための剪断が含まれる。剪断は、例えば、ロータリーナイフカッターを用いて行うことができる。バイオマスを機械的に処理する他の方法としては、例えば、粉砕または研削が挙げられる。粉砕は、例えば、ハンマーミル、ボールミル、コロイドミル、コニカルミルもしくはコーンミル、ディスクミル、エッジミル、ウイレーミルまたはグリストミルを用いて行われ得る。研削は、例えば、石材グラインダー、ピン研削盤、コーヒーグラインダーまたはバーグラインダーを用いて行われ得る。研削は、ピンミルの場合と同様に、例えば、往復ピンまたは他の部品によって行われ得る。他の機械的処理法としては、機械的剥離または引裂、繊維に加圧するその他の方法およびエアーアトリッションミル粉砕が挙げられる。適切な機械的処理は、バイオマス材料の分子構造または形態を変化させる何らかのその他の技術をさらに含む。
【0046】
必要に応じて、機械的に処理した材料を、例えば平均開口径が1.59mm以下(1/16インチ、0.0625インチ)のふるいに通すことができる。ある態様において、剪断または他の機械的処理およびふるいによる処理が同時に行われる。例えば、ロータリーナイフカッターを用いて、バイオマス材料の剪断および選別を同時に行うことができる。バイオマスを固定ブレードと回転ブレードとの間で剪断して、剪断材料を得て、これをふるいに通し、容器に回収する。
【0047】
バイオマス材料は、乾燥した状態(例えば、その表面上に自由水が殆どないかまたは全くない状態)、水和した状態(例えば10重量%以下の水を吸収した状態)または例えば約10重量%から約75重量%の水を有する湿潤状態で機械的に処理することができる。繊維材料は、水、エタノールまたはイソプロパノールなどの液体下に部分的にまたは完全に浸漬させながら機械的に処理することもできる。バイオマス材料はまた、気体(空気以外の気流または雰囲気など)、例えば酸素もしくは窒素または蒸気の下で機械的に処理することもできる。
【0048】
機械的処理システムは、具体的な形態的特徴、例えば、表面積、気孔率、かさ密度など、繊維性原料の場合、縦横比といった繊維の特徴などを有する傾向を生じるように構成することができる。
【0049】
ある態様において、機械的に処理した材料のBET表面積は、0.1m2/g超、例えば0.25m2/g超、0.5m2/g、超1.0m2/g、超1.5m2/g超、1.75m2/g超、5.0m2/g超、10m2/g超、25m2/g超、35m2/g超、50m2/g超、60m2/g超、75m2/g超、100m2/g超、150m2/g超、200m2/g超またはさらには250m2/g超である。
【0050】
機械的に処理した材料の気孔率は、例えば20%超、25%超、35%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、92%超、94%超、95%超、97.5%超、99%超またはさらには99.5%超であり得る。
【0051】
ある態様において、機械的処理後に、材料のかさ密度は、0.25g/cm3未満、例えば0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3以下のかさ密度、例えば0.025g/cm3である。かさ密度は、ASTM D1895Bを用いて測定される。簡単に述べると、この方法は、体積が既知のメスシリンダーに試料を満たし、試料の重量を得ることを含む。かさ密度は、試料の重量グラムを、メスシリンダーの既知体積、立方センチメートルで割ることによって計算される。
【0052】
バイオマスが繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維は、複数回剪断されても、比較的大きな(例えば、20:1を超える)平均長さ対直径比を有し得る。さらに、本明細書中に記載の繊維性材料の繊維は、長さおよび/または長さ対直径比の比較的狭い分布を有し得る。
【0053】
本明細書中で使用される場合、平均繊維幅(例えば直径)とは、およそ5,000本の繊維を無作為に選択することによって光学的に測定されるものである。平均繊維長は、補正済みの長さ加重長(length-weighted length)である。BET(Brunauer,Emmet and Teller)表面積は多点表面積であり、気孔率は水銀ポロシメトリーによって測定されるものである。
【0054】
バイオマスが繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維の平均長さ対直径比は、例えば、8/1超、例えば10/1超、15/1超、20/1超、25/1超または50/1超であり得る。機械的に処理した材料の平均繊維長は、例えば約0.5mmから2.5mmの間、例えば約0.75mmから1.0mmの間であり得、第二の繊維材料14の平均幅(例えば直径)は、例えば約5μmから50μmの間、例えば約10μmから30μmの間であり得る。
【0055】
ある態様において、バイオマスが繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維長の標準偏差は、機械的に処理した材料の平均繊維長の60%未満、例えば平均長の50%未満、平均長の40%未満、平均長の25%未満、平均長の10%未満、平均長の5%未満またはさらには平均長の1%未満であり得る。
【0056】
ある状況において、低かさ密度材料を調製し、(例えば、別の場所への輸送を容易にし、コストを削減するために)その材料を高密度化し、次いでその材料をより低いかさ密度状態に戻すことが所望され得る。本明細書中に記載の方法の何れかによって高密度化材料を処理することができるかまたは、例えば、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/429,045号および国際公開公報第2008/073186号で開示されるように、本明細書中に記載の方法の何れかによって処理した何らかの材料を続いて高密度化することができる。
【0057】
照射処理
バイオマスを加工するために、例えば材料を官能化するために、1以上の一連の照射処理を使用することができる。放射線は、材料または材料をバイオプロセス処理するのに必要とされる何らかの媒体を滅菌することもできる。
【0058】
ある態様において、材料に照射するために、その原子軌道から電子を放出する物質に蓄積するエネルギーを使用する。放射線は、1)重荷電粒子、例えばα粒子もしくはプロトン、2)電子、例えばβ崩壊もしくは電子線加速器において生じるものまたは3)電磁放射線、例えば、γ線、x線もしくは紫外線によって供給され得る。あるアプローチにおいて、放射性物質によって生じる放射線を用いて、原料に照射することができる。別のアプローチにおいて、(例えば電子線エミッターを用いて生じた)電磁放射線を用いて、原料に照射することができる。ある態様において、(1)から(3)の何らかの組み合わせをあらゆる順序でまたは同時に使用することができる。適用される線量は、所望の効果および特定の原料に依存する。
【0059】
ある例において、鎖の切断が所望されるおよび/またはポリマー鎖の官能基化が所望される場合、電子より重い粒子、例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンなどを使用することができる。開環型の鎖切断が望ましい場合、開環型の鎖切断を促進するために、正荷電粒子をそのルイス酸特性ゆえに使用することができる。例えば、最大酸化が望ましい場合、酸素イオンを使用することができ、最大ニトロ化が望ましい場合、窒素イオンを使用することができる。重粒子および正荷電粒子の使用は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/417,699号に記載されている。
【0060】
ある1つの方法において、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースであるかまたは、これを含む第一の材料に、例えば電離放射線(例えば、γ線放射、X線放射、100nmから280nm紫外線(UV)光、電子線または他の荷電粒子の形態)での処理によって照射し、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。第二の材料(または第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/または第一の材料またはその構成糖もしくはリグニンを用いて本明細書中に記載のものなどの中間体または生成物を産生することができる微生物と(酵素処理を行いまたは酵素処理せずに)組み合わせることができる。
【0061】
第二の材料は、第一の材料と比較して分子量が小さく、場合によっては、結晶化度も小さいセルロースを含むので、第二の材料は、例えば微生物および/または酵素を含有する溶液中での、分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。これらの特性により、第二の材料は、第一の材料と比較して、加工し易く、化学的、酵素的および/または生物学的攻撃の影響を受け易くなり、このために、所望の産物、例えば、エタノールの産生速度および/または産生レベルを大幅に改善することができる。
【0062】
ある態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0063】
場合によっては、第二の材料は、結晶化度(C2)が、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)よりも低いセルロースを含む。例えば、(C2)は、(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40%超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0064】
ある態様において、出発結晶化度指数(照射前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、照射後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な照射後には、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、照射後の材料は実質的に非晶質である。
【0065】
ある態様において、出発数平均分子量(照射前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、照射後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な照射後、数平均分子量が約10,000未満またはさらには約5,000未満となり得る。
【0066】
ある態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くなり得る。材料の酸化レベルが高いと、その分散性、膨張性および/または溶解性が高くなり得、さらに、化学的、酵素的または生物学的攻撃に対する材料の感受性が強化される。ある態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境下で、例えば大気または酸素下で照射が行われ、第一の材料より酸化度が高い第二の材料が生成される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基をより多く有し得、これにより材料の親水性が高くなり得る。
【0067】
電離放射線
各種放射線は、放射線のエネルギーにより決定されるような特定の相互作用を介して炭素含有材料をイオン化する。重荷電粒子は、主に、クーロン散乱を介して物質をイオン化し、さらに、これらの相互作用によって、物質をさらにイオン化し得る高エネルギー電子が発生する。α粒子はヘリウム原子の核と同一であり、様々な放射性核、例えばビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、一部のアクチニド、例えばアクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリホルニウム、アメリシウムおよびプルトニウムの同位体など、のα崩壊によって発生する。
【0068】
粒子が用いられる場合、それらは、中性(無電荷)であり得るか、正に荷電し得るかまたは負に荷電し得る。荷電している場合、荷電粒子は単一の正電荷もしくは負電荷または多重電荷、例えば、1、2、3またはさらには4以上の電荷を有し得る。鎖の切断が望ましい場合、正荷電粒子が望ましい場合があるが、1つにはそれが酸性であるためである。粒子が用いられる場合、粒子は、静止電子質量以上の質量、例えば、静止電子質量の500、1000、1500、2000、10,000またはさらには100,000倍の質量を有し得る。例えば、粒子は、約1原子単位から約150原子単位、例えば、約1原子単位から約50原子単位または約1から約25、例えば、1、2、3、4、5、10、12または15amuの質量を有し得る。粒子を加速するために使用される加速器は、静電気学的DC、電気力学的DC、RF線形、磁気誘導線形波または連続波であり得る。例えば、サイクロトロン型加速器は、Rhodatron(登録商標)システムなど、IBA、Belgiumから入手可能であり、一方、DC型加速器は、Dynamitron(登録商標)など、RDI、現IBA Industrialから入手可能である。イオンおよびイオン加速器は、Introductory Nuclear Physics, Kenneth S.Krane, John Wiley & Sons, Inc.(1988)、Krsto Prelec, FIZIKA B6(1997)4, 177-206, Chu, William T.「Overview of Light-Ion Beam Therapy」, Columbus-Ohio, ICRU-IAEA Meeting、18-20 March 2006, Iwata,Y.ら「Alternating-Phase-Focused IH-DTL for Heavy-Ion Medical Accelerators」Proceedings of EPAC 2006, Edinburgh, ScotlandおよびLeaner,CM.ら「Status of the Superconducting ECR Ion Source Venus」Proceedings of EPAC 2000, Vienna、Austriaで考察されている。
【0069】
ガンマ線には、様々な材料への透過深度が大きいという利点がある。ガンマ線源には、放射性核、例えば、コバルト、カルシウム、テクニチウム(technicium)、クロム、ガリウム、インジウム、ヨウ素、鉄、クリプトン、サマリウム、セレン、ナトリウム、タリウムおよびキセノンの同位体などが含まれる。
【0070】
x線源としては、金属標的、例えばタングステンもしくはモリブデンまたは合金を用いた電子線衝突または小型光源、例えばLynceanにより製造販売されているものが挙げられる。
【0071】
紫外線源としては、重水素ランプまたはカドミウムランプが挙げられる。
【0072】
赤外線源としては、サファイア、亜鉛またはセレン化物ウィンドーセラミックランプが挙げられる。
【0073】
マイクロ波源としては、クライストロン、Slevin型RF源または水素、酸素もしくは窒素ガスを用いる原子線源が挙げられる。
【0074】
ある態様において、電子線が線源として使用される。電子線には、線量率が高く(例えば、1、5またはさらには10Mrad/秒)、ハイスループットであり、閉じ込めが少なく、閉じ込め装置が小さいという長所がある。電子はまた、鎖切断を引き起こすことにおいても有効性が高い。さらに、4〜10MeVのエネルギーを有する電子は、5から30mm以上、例えば40mmの透過深度を有し得る。
【0075】
電子線は、例えば静電起電機、カスケード起電機、変圧起電機、スキャニングシステム付きの低エネルギー加速器、リニアカソード付きの低エネルギー加速器、線形加速器およびパルス加速器によって発生させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば、材料の比較的薄い切片、例えば0.5インチ未満、例えば0.4インチ、0.3インチ、0.2インチ未満または0.1インチ未満のものに対して有用になることがある。ある態様において、電子線の各電子のエネルギーは、約0.3MeVから約2.0MeV(百万電子ボルト)、例えば約0.5MeVから約1.5MeVまたは約0.7MeVから約1.25MeVである。
【0076】
電子線照射装置は、Ion Beam Applications, Louvain-la-Neuve, BelgiumまたはTitan Corporation, San Diego, CAから製造販売されている。代表的な電子エネルギーは、1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeVまたは10MeVであり得る。代表的な電子線照射装置の出力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kWまたは500kWであり得る。原料の脱重合レベルは、使用される電子エネルギーおよび適用される線量に依存し、一方で曝露時間は出力および線量に依存する。代表的な線量は、1kGy、5kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGyまたは200kGyの値をとり得る。
【0077】
イオン粒子線
本明細書中に記載のバイオマス材料の何れかに照射するために、電子より重い粒子を使用することができる。例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンを使用することができる。ある態様において、電子より重い粒子は(電子より軽い粒子と比較して)多量の鎖切断を誘導し得る。場合によっては、正荷電粒子は、その酸性度により、負荷電粒子より多量の鎖切断を誘導し得る。
【0078】
より重い粒子線は、例えば、線形加速器またはサイクロトロンを用いて発生させることができる。ある態様において、粒子線の各粒子のエネルギーは、約1.0MeV/原子単位から約6,000MeV/原子単位、例えば、約3MeV/原子単位から約4,800MeV/原子単位または約10MeV/原子単位から約1,000MeV/原子単位である。
【0079】
ある一定の態様において、炭素含有材料、例えば、バイオマス材料に照射するために使用されるイオンビームは、複数のタイプのイオンを含み得る。例えば、イオンビームは、2種類以上(例えば3種類、4種類以上)の異なるタイプのイオンの混合物を含み得る。代表的な混合物は、炭素イオンおよびプロトン、炭素イオンおよび酸素イオン、窒素イオンおよびプロトンならびに鉄イオンおよびプロトンを含み得る。広く一般に、照射イオンビームを形成するために、上記のイオンの何れか(または他の何らかのイオン)の混合物を使用することができる。特に、単イオンビームにおいて比較的軽いイオンおよび比較的重いイオンの混合物を使用することができる。
【0080】
ある態様において、材料に照射するためのイオンビームには、正荷電イオンが含まれる。正荷電イオンは、例えば、正荷電水素イオン(例えばプロトン)、希ガスイオン(例えばヘリウム、ネオン、アルゴン)、炭素イオン、窒素イオン、酸素イオン、ケイ素原子、リンイオンおよび金属イオン、例えばナトリウムイオン、カルシウムイオンおよび/または鉄イオンなどを含み得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、このような正荷電イオンは、材料に曝露されるとルイス酸部分として化学的に挙動し、酸化環境下で陽イオン性の開環型の鎖切断反応を開始し、持続すると考えられている。
【0081】
ある一定の態様において、材料に照射するためのイオンビームには、負荷電イオンが含まれる。負荷電イオンは、例えば、負荷電水素イオン(例えば水素化物イオン)および比較的電気陰性度が高い様々な核の負荷電イオン(例えば酸素イオン、窒素イオン、炭素イオン、ケイ素イオンおよびリンイオン)を含み得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、このような負荷電イオンは、材料に曝露されるとルイス塩基部分として化学的に挙動し、還元環境下で陰イオン性の開環型の鎖切断反応を引き起こすと考えられている。
【0082】
ある態様において、材料に放射線照射するためのビームには中性原子が含まれ得る。例えば、バイオマス材料の照射に用いられるビームには、水素原子、ヘリウム原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ネオン原子、ケイ素原子、リン原子、アルゴン原子および鉄原子の何れか1以上が含まれ得る。一般に、上記のタイプの原子の何れか2以上(例えば、3以上、4以上またはそれ以上)の混合物がビームに存在し得る。
【0083】
ある一定の態様において、材料に照射するために用いられるイオンビームには、単一電荷イオン、例えばH+、H-、He+、Ne+、Ar+、C+、C-、O+、O-、N+、N-、Si+、Si-、P+、P-、Na+、Ca+およびFe+の1以上が含まれる。ある態様において、イオンビームは、多電荷イオン、例えば、C2+、C3+、C4+、N3+、N5+、N3-、O2+、O2-、O22-、Si2+、Si4+、Si2-およびSi4-の1以上などを含み得る。一般に、イオンビームはまた、複数の正電荷または負電荷を有する、より複雑な多核イオンを含み得る。ある特定の態様において、多核イオンの構造によって、正電荷または負電荷は、イオンの構造の実質的に全体にわたり有効に分布し得る。いくつかの態様において、正電荷または負電荷は、イオンの構造の一部分にわたり、幾分局在し得る。
【0084】
電磁放射線
電磁放射線で照射が行われる態様において、電磁放射線は、例えば、102eVを超える、例えば103、104、105、106またはさらには107eVを超える、エネルギー/光子(電子ボルト)を有し得る。ある態様において、電磁放射線は、104から107eVの間、例えば105から106eVの間のエネルギー/光子を有する。電磁放射線は、例えば、1016hzを超える、1017hz、1018、1019、1020hzを超えるかまたはさらに1021hzを超える周波数を有し得る。ある態様において、電磁放射線は、1018から1022hzの間、例えば1019から1021hzの間の周波数を有する。
【0085】
バイオマスのクエンチングおよび官能化制御
電離放射線での処理後、本明細書中に記載の材料または混合物の何れかがイオン化され得;即ち、処理済みの材料は、電子スピン共鳴分光器で検出可能であるレベルでラジカルを含み得る。イオン化バイオマスが大気中に残留する場合、それは、例えば大気中の酸素と反応することによってカルボン酸基が産生される程度に酸化されよう。ある材料での例において、このような酸化は炭水化物含有バイオマスの分子量のさらなる分解を促進し得、酸化基、例えばカルボン酸基は、場合によっては溶解性および微生物利用性を高め得るので、このような酸化が所望される。しかし、照射後、ラジカルは、しばらくの間、例えば、1日、5日、30日、3ヶ月、6ヶ月より長くまたはさらに1年より長く「生きて」いることができるので、材料の特性が経時的に変化し続ける可能性があり、場合によってこれは望ましくないことがある。従って、イオン化材料をクエンチングすることが所望され得る。
【0086】
イオン化後、イオン化バイオマス中のラジカルレベルを低下させるために、例えばラジカルが電子スピン共鳴分光器で検出可能とならないように、イオン化されている何らかのバイオマス材料をクエンチングすることができる。例えば、バイオマスに十分な圧力を与えることによっておよび/または、ラジカルと反応する(クエンチングする)気体または液体など、イオン化バイオマスと接触させて流体を使用することによって、ラジカルをクエンチングすることができる。ラジカルのクエンチングを少なくとも促進するために気体または液体を用いて、所望の量および種類の官能基、例えばカルボン酸基、エノール基、アルデヒド基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、クロロアルキル基またはクロロフルオロアルキル基などでイオン化バイオマスを官能化することができる。
【0087】
場合によっては、このようなクエンチングは、一部のイオン化バイオマス材料の安定性を向上させ得る。例えば、クエンチングによって、酸化に対するバイオマスの耐性が向上し得る。クエンチングによる官能化によって、本明細書中に記載のあらゆるバイオマスの溶解性も向上し得、その温度安定性が向上し得、様々な微生物による材料利用性が向上し得る。例えば、クエンチングによってバイオマス材料に与えられる官能基は、例えば、様々な微生物によるセルロース加水分解を促進するための、微生物による結合に対する受容体部位として作用し得る。
【0088】
ある態様において、クエンチングは、例えばバイオマスを機械的に変形させること(例えば1、2または3方向でバイオマスを機械的に直接圧縮するかまたはバイオマスが浸漬されている流体に加圧すること(例えば静水圧プレス成形))などによって、バイオマスに加圧することを含む。このような場合、材料それ自身の変形によってラジカルが生じ、これは、ラジカルが別の基と再結合するかまたは反応できるよう十分に近接近して結晶性ドメインにおいて捕捉されることが多い。場合によっては、リグニン、セルロースまたはヘミセルロースなどのバイオマスの成分の融点または軟化点以上までバイオマスの温度を上昇させるよう十分な熱量など、加熱しながら加圧する。熱は物質中の分子運動性を向上させ得るが、これは、ラジカルのクエンチングを促進し得る。クエンチングするために圧力が使用される場合、その圧力は、約1000psi超、例えば約1250psi、1450psi、3625psi、5075psi、7250psi、10000psi超またはさらには15000psi超であり得る。
【0089】
ある態様において、クエンチングは、バイオマスを液体または気体などの流体と接触させることを含み、例えば、気体は、アセチレンまたは、窒素、エチレン、塩化エチレンもしくはクロロフルオロエチレン中のアセチレンの混合物、プロピレンまたはこれらの気体の混合物など、ラジカルと反応可能な気体である。その他の特定の態様において、クエンチングは、液体、例えばバイオマス中で可溶性であるかまたは少なくとも浸透可能であり、ラジカル(例えば1,5-シクロオクタジエンなどのジエン)と反応可能である液体とバイオマスを接触させることを含む。ある具体的な態様において、クエンチングは、バイオマスをビタミンEなどの抗酸化剤と接触させることを含む。必要に応じて、バイオマス原料は、その中に分散した状態で抗酸化剤を含み得、バイオマス原料中に分散している抗酸化剤をラジカルと接触させることから、クエンチングが起こり得る。
【0090】
本明細書中に記載のより重いイオンの何れかなどの重荷電イオンを使用することによって、官能化を促進し得る。例えば、酸化を促進することが望ましい場合、照射に対して荷電酸素イオンを使用することができる。窒素官能基が望ましい場合、窒素イオンまたは窒素を含む陰イオンを使用することができる。同様に、イオウまたはリン基が望ましい場合、照射においてイオウまたはリンイオンを使用することができる。
【0091】
線量
場合によっては、約0.25Mrad/秒より大きい線量率、例えば約0.5、0.75、1.0、1.5、2.0より大きいかまたはさらには約2.5Mrad/秒より大きい線量率で照射が行われる。ある態様において、5.0から1500.0キロラド/時間の間、例えば10.0から750.0キロラド/時間の間または50.0から350.0キロラド/時間の間の線量率で照射が行われる。
【0092】
ある態様において、少なくとも0.1Mrad、少なくとも0.25Mrad、例えば少なくとも1.0Mrad、少なくとも2.5Mrad、少なくとも5.0Mrad、少なくとも10.0Mrad、少なくとも60Mradまたは少なくとも100Mradの線量を材料が受けるまで、(何らかの線源または線源の組み合わせを用いて)照射が行われる。ある態様において、約0.1Mradから約500Mrad、約0.5Mradから約200Mrad、約1Mradから約100Mradまたは約5Mradから約60Mradの線量を材料が受けるまで照射が行われる。ある態様において、比較的低い線量(例えば60Mrad未満)が適用される。
【0093】
超音波処理
超音波処理によって、例えば本明細書に記載の材料の何れかの1以上、例えば、1以上の炭水化物供給源、例えば、セルロース系またはリグノセルロース系材料またはデンプン材料などの材料の分子量および/または結晶化度を小さくすることができる。超音波処理は、材料を安定化させるために使用することもできる。
【0094】
ある方法において、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第一の材料を、媒体(例えば水)に分散させ、超音波処理して、および/またはそうでなくても気泡を生じさせ、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。第二の材料(またはある一定の態様において、第一および第二の材料)は、第二および/または第一の材料を利用して中間体または生成物を産生することができる微生物と(酵素処理を行ってまたは酵素処理を行わずに)組み合わせることができる。
【0095】
第二の材料は、第一の材料と比較して低分子量であり、場合によっては結晶化度も低いセルロースを含むので、第二の材料は、例えば微生物を含有する溶液中での分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。
【0096】
ある態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0097】
場合によっては、第二の材料は、結晶化度(C2)が第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より低いセルロースを含む。例えば、(C2)は(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0098】
ある態様において、出発結晶化度指数(超音波処理前)は、約40から約87.5%(例えば約50から約75%または約60から約70%)であり、超音波処理後の結晶化度指数は、約10から約50%(例えば約15から約45%または約20から約40%)である。しかし、ある一定の態様において、例えば長い超音波処理後には、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、超音波処理後の材料は実質的に非晶質である。
【0099】
ある態様において、出発数平均分子量(超音波処理前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、超音波処理後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば長い超音波処理後、約10,000未満またはさらには約5,000未満の数平均分子量を有する可能性がある。
【0100】
ある態様において、第二の材料は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高い酸化レベル(O2)を有し得る。材料の酸化レベルが高い場合、その分散性、膨張性および/または溶解性が高くなり得、さらに、化学的、酵素的または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。ある態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化媒体中で超音波処理が行われ、第一の材料より酸化度が高い第二の材料が生成する。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基の数がより多いものであってもよく、これにより材料の親水性が高くなり得る。
【0101】
ある態様において、超音波処理媒体は水性媒体である。必要に応じて、媒体は、過酸化物(例えば過酸化水素)などの酸化剤、分散剤および/または緩衝剤を含み得る。分散剤の例としては、イオン性分散剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、および非イオン性分散剤、例えばポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
【0102】
その他の態様において、超音波処理媒体は非水性である。例えば、炭化水素、例えばトルエンまたはヘプタン、エーテル、例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中でまたはアルゴン、キセノンまたは窒素などの液化ガス中でも超音波処理を行うことができる。
【0103】
熱分解
バイオマス材料を物理的に処理するために1以上の一連の熱分解処理を使用することができる。材料を安定化するために熱分解を使用することもできる。
【0104】
ある例において、第一の数平均分子量(MN1)より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得るために、例えば(酸素の存在下または非存在下で)チューブ炉中で第一の材料を加熱することによって、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第一の材料を熱分解する。
【0105】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量および、場合によっては小さな結晶化度も有するセルロースを含むので、第二の材料は、例えば微生物を含有する溶液中での、分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。
【0106】
ある態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0107】
場合によっては、第二の材料は、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より低い結晶化度(C2)を有するセルロースを含む。例えば、(C2)は、(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40%超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0108】
ある態様において、出発結晶化度(熱分解前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、熱分解後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある一定の態様(例えば、大規模な熱分解後)において、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、熱分解後の材料は実質的に非晶質である。
【0109】
ある態様において、出発数平均分子量(熱分解前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、熱分解後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様(例えば、大規模な熱分解後)において、数平均分子量が約10,000未満またはさらには約5,000未満になる可能性がある。
【0110】
ある態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くなり得る。材料の酸化レベルが高いと、その分散性、膨張性および/または溶解性が高まり、さらに、化学的、酵素的または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。ある態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において熱分解が行われ、第一の材料より酸化度が高い第二の材料が生成する。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基の数が第一の材料よりも多いものであってもよく、これにより材料の親水性が高くなる。
【0111】
ある態様において、材料の熱分解は連続する。その他の態様において、材料は、所定の時間熱分解され、次いで、第二の所定の時間冷却された後に、再度熱分解される。
【0112】
酸化
バイオマス材料を物理的に処理するために、1以上の一連の酸化処理を使用することができる。酸化条件は、例えば原料のリグニン含量に応じて異なり、一般に、リグニン含量がより多い原料には大きな酸化度が望ましい。
【0113】
ある方法において、第二の数平均分子量(MN2)を有し、第一の酸素含量(O1)より高い第二の酸素含量(O2)を有するセルロースを含む第二の材料を得るために、例えば大気または酸素に富む空気の気流中で第一の材料を加熱することによって、第一の数平均分子量(MN1)を有し、第一の酸素含量(O1)を有するセルロースを含む第一の材料を酸化する。
【0114】
第二の材料の第二の数平均分子量は一般に、第一の材料の第一の数平均分子量よりも小さい。例えば、その他の物理的処理に関する上記のものと同程度まで分子量を低下させることができる。その他の物理的処理に関する上記のものと同程度まで第二の材料の結晶化度を低下させることもできる。
【0115】
ある態様において、第二の酸素含量は、第一の酸素含量より少なくとも約5%多く、例えば、7.5%多く、10.0%多く、12.5%多く、15.0%多くまたは17.5%多い。ある好ましい態様において、第二の酸素含量は、第一の材料の第一の酸素含量より少なくとも約20.0%多い。酸素含量は、1300℃以上で運転される炉の中で試料を熱分解することにより元素分析することによって測定される。適切な元素分析器は、VTF-900高温熱分解炉付きのLECO CHNS-932分析器である。
【0116】
一般に、材料の酸化は酸化環境で起こる。例えば、大気中またはアルゴンに富む空気中などの酸化環境で熱分解することによって酸化が行われ得るかまたは酸化が促進され得る。酸化を促進するために、酸化前または酸化中に、酸化剤、酸または塩基などの様々な化学薬品を材料に添加することができる。例えば、酸化前に過酸化物(例えば過酸化ベンゾイル)を添加することができる。
【0117】
バイオマス原料の不応性を低下させる酸化方法の中には、フェントン型化学を使用するものがある。このような方法は、例えば、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/639,289号で開示されている。
【0118】
代表的な酸化剤としては、過酸化物、例えば過酸化水素および過酸化ベンゾイルなど、過硫酸塩、例えば過硫酸アンモニウムなど、活性化型酸素、例えばオゾンなど、過マンガン酸塩、例えば過マンガン酸カリウムなど、過塩素酸塩、例えば過塩素酸ナトリウムなど、および次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)などが挙げられる。
【0119】
ある状況において、pHは、接触中に約5.5以下、例えば1から5の間、2から5の間、2.5から5の間または約3から5の間に維持される。酸化条件には、2から12時間、例えば4から10時間または5から8時間の接触時間も含まれ得る。場合によっては、温度は、300℃以下、例えば250、200、150、100または50℃以下に維持される。ある状況において、温度は実質的に周囲温度のままであり、例えば約20〜25℃である。
【0120】
ある態様において、電子などの粒子線を大気を通して材料に照射することによりインサイチューでオゾンを発生させることなどによって、1以上の酸化剤が気体として適用される。
【0121】
ある態様において、混合物は、2,5-ジメトキシヒドロキノン(DMHQ)などの1以上のヒドロキノンおよび/または2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン(DMBQ)などの1以上のベンゾキノンをさらに含み、これらは電子移動反応を促進し得る。
【0122】
ある態様において、1以上の酸化剤をインサイチューで電気化学的に発生させる。例えば、接触または反応容器中で過酸化水素および/またはオゾンを電気化学的に発生させ得る。
【0123】
官能化するためのその他の処理
この段落の処理過程は何れも、本明細書中に記載の処理過程なく単独でまたは本明細書中に記載の処理過程の何れかと(任意の順番で)組み合わせて使用することができる:蒸気爆発、化学的処理(例えば酸処理(硫酸、塩酸および有機酸などの鉱酸、例えばトリフルオロ酢酸を用いた濃酸処理および希酸処理を含む。)および/または塩基処理(例えば石灰または水酸化ナトリウムを用いた処理))、UV処理、スクリュー押出処理(例えば、2008年11月17日出願の米国特許出願第61/115,398号参照)、溶媒処理(例えばイオン性液体を用いた処理)および凍結粉砕(例えば米国特許出願第12/502,629号参照)。
【0124】
発酵
微生物は、官能化バイオマス材料存在下で低分子量の糖を発酵させることによって、本明細書中に記載のものなどの多くの有用な中間体および生成物を産生することができる。例えば、発酵またはその他のバイオプロセスによって、アルコール、有機酸、炭化水素、水素、タンパク質またはこれらの材料の何れかの混合物が産生され得る。
【0125】
微生物は、天然微生物または遺伝子改変微生物であり得る。例えば、この微生物は、細菌(例えばセルロース分解性細菌)、真菌(例えば酵母)、植物または原生生物(例えば藻)、原虫または真菌様原生生物(例えば粘菌)であり得る。これらの生物が適合性である場合、生物の混合物を使用することができる。
【0126】
適切な発酵微生物は、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、オリゴ糖または多糖などの炭水化物を発酵生成物に変換する能力を有する。発酵微生物としては、サッカロミセス(Sacchromyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Sacchromyces cerevisiae)(パン酵母)、サッカロミセス・ジスタチクス(Saccharomyces distaticus)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)など;クリベロミセス(Kluyveromyces)属、例えばクリベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)種、クリベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)種など;カンジダ(Candida)属、例えば、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)およびカンジダ・ブラシカ(Candida brassicae)、ピキア・スチピチス(Pichia stipitis)(カンジダ・シェハテ(Candida shehatae)の類縁など、クラビスポラ(Clavispora)属、例えばクラビスポラ・ルシタニエ(Clavispora lusitaniae)種およびクラビスポラ・オプンティア(Clavispora opuntiae)種など、パキソレン(Pachysolen)属、例えばパキソレン・タンノフィルス(Pachysolen tannophilus)種など、ブレタノミセス(Bretannomyces)属、例えばブレタノミセス・クラウセニ(Bretannomyces clausenii)種などの株が挙げられる(Philippidis,G.P.、1996、Cellulose bioconversion technology、in Handbook on Bioethanol:Production and Utilization、Wyman,C.E.編、Taylor & Francis、Washington、DC、179-212)。市販の酵母としては、例えばRed Star(登録商標)/Lesaffre Ethanol Red(Red Star/Lesaffre、USAから入手可能)、FALI(登録商標)(Fleischmann's Yeast、division of Burns Philip Food Inc.、USAから入手可能)、SUPERSTART(登録商標)(Alltech、現Lalemandから入手可能)、GERT STRAND(登録商標)(Gert Strand AB、Swedenから入手可能)およびFERMOL(登録商標)(DSM Specialtiesから入手可能)が挙げられる。
【0127】
例えば、ザイモモナス・モビリスおよびクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(Philippidis、1996、上出)など、細菌も発酵において使用し得る。
【0128】
酵母にとって至適pHは約pH4から5であり、一方でザイモモナス菌に対する至適pHは約pH5から6である。典型的な発酵時間は、26℃から40℃の範囲の温度で約24時間から96時間であるが、好熱性微生物はより高温を好む。
【0129】
ある態様において、低分子量の糖がエタノールに完全に変換される前に、発酵過程の全てまたは一部を中断することができる。中間体発酵生成物は高濃度の糖および炭水化物を含む。これらの中間体発酵生成物は、ヒトまたは動物が消費するための食物の生産において使用することができる。さらにまたはあるいは、粉末状物質にするために、ステンレス鋼性の実験室用ミルで中間体発酵生成物を微細な粒径になるまで研削することができる。
【0130】
米国特許出願第60/832,735号、現在、国際公開公報第2008/011598号に記載のような携帯用発酵装置を使用することができる。
【0131】
後処理
蒸留
発酵後、エタノールおよびその他のアルコールを殆どの水および固形残渣から分離するために、例えば「ビアカラム(beer column)」を用いて、得られた流体を蒸留することができる。ビアカラム中に存在する蒸気は例えば35%エタノール重量であり得、精留塔に入れることができる。気相分子ふるいを用いて、精留塔からのほぼ共沸性(92.5%)のエタノールおよび水の混合液を純(99.5%)エタノールまで精製することができる。このビアカラムの下部を三重効用蒸発器の第一効用に送ることができる。精留塔還流凝縮器は、この第一効用に対して熱を提供できる。第一効用の後、遠心機を用いて固形物を分離し、回転式乾燥機中で乾燥させることができる。遠心機廃水の一部(25%)を発酵に対して再利用し、残りを第二および第三効用蒸発器に送ることができる。殆どの蒸発器凝縮物を非常に清浄な凝縮物として処理過程に戻すことができ、低沸騰化合物の蓄積を避けるために廃水処理に供する分離物は少量である。
【0132】
中間体および生成物
エネルギー、燃料、食物および材料など、1以上の中間体または生成物を産生させるために、本明細書中に記載のプロセスを使用することができる。生成物の具体例としては、水素、アルコール(例えば一価アルコールまたは二価アルコール、例えばエタノール、n-プロパノールまたはn-ブタノールなど)、水和または含水アルコール、例えば、10%、20%、30%を超えるかまたはさらには40%を超える水を含有するもの、キシリトール、糖、バイオディーゼル、有機酸(例えば酢酸および/または乳酸)、炭化水素、副産物(例えばセルロース分解性タンパク質(酵素)または単細胞タンパク質などのタンパク質)および、何らかの組み合わせまたは相対濃度の、および場合によっては、例えば燃料添加剤などの何らかの添加剤と組み合わせられた、これらの何らかの混合物が挙げられるが、これに限定されない。その他の例としては、カルボン酸、例えば酢酸または酪酸など、カルボン酸の塩、カルボン酸およびカルボン酸の塩の混合物ならびにカルボン酸のエステル(例えばメチルエステル、エチルエステルおよびn-プロピルエステル)、ケトン(例えばアセトン)、アルデヒド(例えばアセトアルデヒド)、α、β不飽和酸、例えばアクリル酸などおよびオレフィン、例えばエチレンなどが挙げられる。その他のアルコールおよびアルコール誘導体としては、プロパノール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、これらのアルコールの何れかのメチルエステルまたはエチルエステルが挙げられる。その他の生成物としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、何れかの酸の塩ならびに何れかの酸およびそれぞれの塩の混合物が挙げられる。
【0133】
その他の中間体ならびに食物および医薬品を含む生成物は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/417,900号に記載されている。
【実施例】
【0134】
次の実施例は、例示であり、本開示の教示を制限するものではない。
【0135】
実施例1:ポリコーティング紙からの繊維性材料の調製
20lb/ft3のかさ密度を有する印刷されていないポリコーティング白色クラフトボールから作製された未使用の半ガロンジュース容器パックの1500ポンドスキッドをInternational Paperから入手した。各容器パックを平坦になるように折り畳み、次いで、1時間におよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。シュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔を0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は、幅が0.1インチから0.5インチの間、長さが0.25インチから1インチの間であり、出発物質と同等の厚み(約0.075インチ)を有する紙吹雪状であった。
【0136】
この紙吹雪状の材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に供した。モデルSC30には4枚の回転ブレード、4枚の固定ブレードおよび1/8インチ孔を有する排出スクリーンが備えられている。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔をおよそ0.020インチに設定した。ロータリーナイフカッターは、ナイフの刃を横切る紙吹雪状小片を剪断し、この小片を切り裂き、1時間に約1ポンドの速度で繊維状材料を放出した。繊維状材料のBET表面積は0.9748m2/g+/-0.0167m2/g、気孔率は89.0437%であり、かさ密度は0.1260g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は1.141mmであり、繊維の平均幅は0.027mmであり、平均L/Dは42:1となった。
【0137】
実施例2:晒クラフトボールからの繊維性材料の調製
30lb/ft3のかさ密度を有する未使用の晒白色クラフトボールの1500ポンドスキッドをInternational Paperから入手した。材料を平坦になるように折り畳み、次いで、1時間あたりおよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。シュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔は0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は、0.1インチから0.5インチの間の幅、0.25インチから1インチの間の長さおよび出発材料と同等の厚み(約0.075インチ)を有する紙吹雪状であった。この紙吹雪状材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に供した。排出スクリーンの孔は1/8インチであった。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔はおよそ0.020インチに設定した。このロータリーナイフカッターは紙吹雪状小片を剪断し、1時間あたり約1ポンドの速度で繊維状材料を放出した。繊維状材料のBET表面積は1.1316m2/g+/-0.0103m2/g、気孔率は88.3285%であり、かさ密度は0.1497g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は1.063mmであり、繊維の平均幅は0.0245mmであり、平均L/Dは43:1となった。
【0138】
実施例3:晒クラフトボールからの、2回剪断繊維性材料の調製
30lb/ft3のかさ密度を有する未使用の晒白色クラフトボールの1500ポンドスキッドをInternational Paperから入手した。材料を平坦に折り畳み、次いで、1時間あたりおよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。このシュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔を0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は紙吹雪状であった(上記と同様)。この紙吹雪状材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に入れた。排出スクリーンの孔は1/16インチであった。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔はおよそ0.020インチに設定した。ロータリーナイフカッターは紙吹雪状小片を剪断し、1時間あたり約1ポンドの速度で繊維状材料を放出した。第一の剪断から得られた材料を上記で述べた同一設定に供給し戻し、再度剪断した。得られた繊維状材料のBET表面積は1.4408m2/g+/-0.0156m2/gであり、気孔率は90.8998%であり、かさ密度は0.1298g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は0.891mmであり、繊維の平均幅は0.026mmであり、平均L/Dは34:1となった。
【0139】
実施例4:晒クラフトボールからの3回剪断繊維性材料の調製
30lb/ft3のかさ密度を有する未使用の晒白色クラフトボールの1500ポンドスキッドをInternational Paperから入手した。材料を平坦に折り畳み、次いで、1時間あたりおよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。このシュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔を0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は紙吹雪状であった(上記と同様)。この紙吹雪状材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に入れた。排出スクリーンの孔は1/8インチであった。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔はおよそ0.020インチに設定した。ロータリーナイフカッターはナイフの刃を横切る紙吹雪状小片を剪断した。第一の剪断から得られた材料を同一設定に供給し戻し、スクリーンを1/16インチのスクリーンに交換した。この材料を剪断した。第二の剪断から得られた材料を同一設定に供給し戻し、スクリーンを1/32インチのスクリーンに交換した。この材料を剪断した。得られた繊維状材料のBET表面積は1.6897m2/g+/-0.0155m2/gであり、気孔率は87.7163%であり、かさ密度は0.1448g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は0.824mmであり、繊維の平均幅は0.0262mmであり、平均L/Dは32:1となった。
【0140】
実施例5:電子線による加工処理
出力80kWで5MeVの電子を送達するアーチ状のRhodotron(登録商標)TT200連続波加速器を用いて電子線で試料を処理した。表1は使用したパラメーターを記載する。表2は、試料IDに対して使用した公称線量(単位Mrad)および試料に送達される対応する線量(単位kgy)を報告する。
【0141】
(表1)Rhodotron(登録商標)TT200パラメーター
【0142】
(表2)試料へ送達される線量
1例えば、5mAのビーム電流および12.9フィート/分の回線速度で、11秒で9.9kgyが送達された。処理間の冷却時間は2分前後であった。
【0143】
実施例6:ゲル浸透クロマトグラフィーによってセルロース系およびリグノセルロース系材料の分子量を測定する方法
分析用のセルロース系およびリグノセルロース系材料を実施例4に従って処理した。以下の表に挙げる試料材料は、クラフト紙(P)、麦藁(WS)、アルファルファ(A)、セルロース(C)、スイッチグラス(SG)、草(G)およびデンプン(ST)およびスクロース(S)を含む。試料IDの番号「132」とは、1/32インチスクリーンに通した剪断後の材料の粒子サイズを指す。ダッシュ後の数字は放射線の線量(MRad)を指し、「US」は超音波処理を指す。例えば、試料ID「P132-10」とは、132メッシュの粒子サイズまで剪断され、10Mradを照射したクラフト紙を指す。
【0144】
e線で照射した試料の場合、ダッシュの後の数字は試料に送達されたエネルギー量を指す。例えば、試料ID「P-10Oe」は、約100MRadまたは約1000kgyのエネルギーの線量が送達されたクラフト紙を指す(表2)。
【0145】
(表3)照射クラフト紙のピーク平均分子量
**低線量の放射線は一部の材料の分子量を増加させるように見える。
1線量率=1MRad/時間
2水に分散させた材料を用い、再循環条件下で1000Wホーンを使用する20kHzの超音波による30分間の処理
【0146】
(表4)E線で照射したクラフト紙のピーク平均分子量
【0147】
(表5)ガンマ線照射済み材料のピーク平均分子量
*処理後にピークは合体する。
**低線量の放射線は一部の材料の分子量を増加させると思われる。
1線量率=1MRad/時間
2水に分散させた材料を用い、再循環条件下で1000Wホーンを使用した20kHz超音波による30分間の処理
【0148】
(表6)E線での照射済み材料のピーク平均分子量
【0149】
ポリマーの分子量分布を調べるために、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用する。GPC分析中に、多孔性ゲル捕捉小分子を充填したカラムにポリマー試料の溶液を通す。分子サイズに基づいて試料を分離するが、大きな分子量のものほど小さい分子よりも早く溶出される。各成分の滞留時間は、殆どの場合、屈折率(RI)、蒸発光散乱(ELS)または紫外線(UV)により検出し、較正曲線と比較する。次いで、得られたデータを用いて、試料に対する分子量分布を計算する。
【0150】
合成ポリマーの特徴を調べるために固有の分子量ではなく分子量の分布を使用する。この分布の特徴を調べるために、統計的平均を使用する。これらの平均値の中で最も一般的であるのは「数平均分子量」(Mn)および「重量平均分子量」(Mw)である。
【0151】
これらの値を計算する方法は、当技術分野で、例えば国際公開公報第2008/073186号の実施例9に記載されている。
【0152】
多分散度指数またはPIはMw/Mnの比率として定義される。PIが大きいほど分布は広くなるかまたは分散する。PIがとり得る最小値は1である。これは単分散試料を表す。即ち、分布中の全分子が同一分子量であるポリマーである。
【0153】
ピーク分子量値(Mp)は分子量分布の様式として定義される別の記述法である。これは、分布中で最も多く見られる分子量を意味する。この値からも分子量分布が分かる。
【0154】
殆どのGPC測定は異なるポリマー標準物質に対してなされる。結果の精度は、分析されるポリマーの特徴が、使用される標準物質の特徴に対してどの程度密接に一致するかに依存する。個々に較正された異なる一連の測定間の再現性で予測される誤差は約5〜10%であり、GPC測定の限定精度に特徴的である。従って、GPCの結果は、異なる試料の分子量分布間の比較が同一の一連の測定の間になされる場合に最も有用である。
【0155】
リグノセルロース系試料はGPC分析前に試料調製が必要であった。最初に、塩化リチウム(LiCl)の飽和溶液(8.4重量%)をジメチルアセトアミド(DMAc)中で調製した。およそ100mgの試料を新たに調製したおよそ10gの飽和LiCl/DMAc溶液に添加し、攪拌しながら混合物をおよそ150℃〜170℃に1時間加熱した。得られた溶液の色は、全般的に明黄色から暗黄色であった。溶液の温度をおよそ100℃に低下させ、さらに2時間加熱した。次いで、溶液の温度をおよそ50℃に低下させ、試料溶液をおよそ48から60時間加熱した。注目すべきことには、100MRadで照射した試料は、それらの未処理対照物と比較して容易に溶解した。加えて、(数字132によって示される)剪断試料は未切断試料と比較して平均分子量が僅かに小さかった。
【0156】
溶媒としてDMAcを用いて、得られた試料溶液を1:1希釈し、0.45μmのPTFEフィルターに通して濾過した。次いで、表7に記載のパラメーターを用いて、濾過した試料溶液をGPCによって分析した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合の試料のピーク平均分子量(Mp)を表3〜6にまとめる。各試料を二つ組で調製し、その試料の各標品は、1試料あたり合計4回の注入について二つ組(2回注入)で分析した。EasiCal(登録商標)ポリスチレン標準PS1AおよびPS1Bを使用して、約580から7,500,00ダルトンの分子量スケールに対して較正曲線を作成した。
【0157】
(表7)GPC分析条件
【0158】
実施例7:飛行時間二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)表面分析
飛行時間二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)は、試料のまさに最外部表面から分子を脱離させるためにパルスイオンビーム(Csまたは微小焦点Ga)を使用する表面敏感分光法である。表面の単原子層から粒子を脱離させる(二次イオン)。次に、これらの粒子を加速して「飛行管」に導き、それらが検出器に到達する正確な時間(即ち飛行時間)を測定することによってそれらの質量を決定する。ToF-SIMSは、表面、薄層、試料の界面に関する詳細な元素および分子情報を提供し、完全な三次元分析を可能にする。これは、半導体、ポリマー、塗料、コーティング、ガラス、紙、金属、セラミック、生体材料、医薬品および有機組織を含め、広く使用されている。ToF-SIMSは探査技術なので、Hを含め周期表の元素は全て検出される。ToF-SIMSデータを表8〜11で与える。使用したパラメーターを表12で報告する。
【0159】
(表8)関心対象の様々な陽イオンの正規化平均強度(総イオン数x10000に対して正規化)
【0160】
(表9)関心対象の様々な陰イオンの正規化平均強度(総イオン数x10000に対して正規化)
【0161】
(表10)関心対象の様々な陽イオンの正規化平均強度(総イオン数x10000に対して正規化)
【0162】
(表11)関心対象の様々な陰イオンの正規化平均強度(総イオン数x10000に対して正規化)
【0163】
(表12)ToF−SIMSパラメーター
【0164】
ToF-SIMSは、材料表面上の化学種を脱離させるために集束パルス粒子線(通常はCsまたはGa)を使用する。衝撃部位近くで生じる粒子は、解離イオンである傾向がある(陽または陰)。衝撃部位から離れて生じた二次粒子は、分子化合物、通常はより非常に大きい有機巨大分子の断片である傾向がある。次に、粒子を加速して、検出器に向かう飛行経路に導く。検出器に対する衝撃の時間から粒子の「飛行時間」をナノ秒スケールで測定することが可能なので、0.00X原子質量単位(即ちプロトン質量の1000分の1)という細かい質量分解能を得ることができる。典型的な操作条件下で、ToF-SIMS分析の結果には、0〜10,000amuの範囲にわたる全原子質量を測量する質量スペクトルが含まれ、ラスタービームにより、関心対象のあらゆる質量のサブミクロンスケールのマップが得られ、イオンビーム下でのスパッタリングによる表層の離脱によってデプスプロファイルが得られる。陰イオン分析から、ポリマーのCNO、CNおよびNO2基の量が増加したことが分かった。
【0165】
実施例8:照射済み材料の気孔率測定分析
水銀細孔サイズおよび細孔容積分析(表21)は、密に制御された圧力下で水銀(非湿潤性液体)を強制的に多孔性構造に浸入させることにより行う。水銀は殆どの物質を湿らせず、毛細管作用によって自然に細孔に浸入することがないので、外部圧力をかけることによって試料の孔隙に強制的に浸入させなければならない。孔隙を満たすのに必要な圧力は細孔サイズに逆比例する。大きな孔隙を満たすためには小さな力または圧力しか必要とせず、一方、非常に小さな細孔の孔隙を満たすにはかなり大きな圧力が必要となる。
【0166】
(表21)水銀ポロシメトリーによる細孔サイズおよび体積分布
【0167】
AutoPore 9520は414MPaまたは60,000psiaの最大圧力を達成することができる。試料の調製および0.2psiaから50psiaのマクロ孔データ収集のために4つの低圧ステーションがある。25psiaから60,000psiaのデータを収集する2つの高圧チャンバーがある。金属コーティングされたガラス毛細管ステムに連結したペネトロメーターと呼ばれるボール様装置に試料を入れる。水銀は試料中および試料の周りの孔隙に浸入するので、水銀は毛細管ステムを下へ移動する。毛細管ステムから水銀が失われる結果、電気容量の変化が生じる。使用中のペネトロメーターのステム容量を知ることによって、実験中の容量変化を水銀の体積に変換する。殆どの試料のサイズおよび立体配置を収容するために、様々なボール(試料)サイズおよび毛細管を有する様々なペネトロメーターが利用可能である。以下の表22は、各試料について計算した重要なパラメーターの一部を定義する。
【0168】
(表22)パラメーターの定義
【0169】
実施例9:照射済み材料の粒径分析
静的光散乱による粒度測定技術は(フラウンホーファー理論も含む)ミー散乱に基づく。ミー散乱は、他の系の変数が分かっており、一定に保持されることを条件に、球状散乱粒子に対する大きさの関数として、強度対角度関係を予測する。これらの変数は入射光の波長および試料材料の相対的屈折率である。ミー散乱を適用することによって、詳細な粒径の情報が得られる。表23は、メディアン径、平均径およびモード径をパラメーターとして用いて粒径についてまとめる。
【0170】
(表23)レーザー光散乱による粒子(乾燥試料分散)
【0171】
粒径は、以下の条件を用い、Malvern Mastersizer2000を使用してレーザー光散乱(乾燥試料分散)によって決定した。
供給率:35%
ディスパーサー圧力:4バール
光学モデル:(2.610、1.000i)、1.000
【0172】
適切な量の試料を振動トレイ上に導入した。粒子が適切に分散されることを確実にするために、供給速度および空気圧力を調整した。凝集を破壊するが試料の完全性を損なわない空気圧を選択することは重要な要素である。必要とされる試料の量は、粒径により変動する。一般に、微細粒子を含む試料の場合、材料の必要量は、粗い粒子を含む試料よりも少量となる。
【0173】
実施例10:照射済み材料の表面積分析
Micromeritics ASAP 2420 Accelerated Surface AreaおよびPorosimetry Systemを用いて各試料の表面積を分析した。最初に40℃にて16時間脱気することによって、試料を調製した。次に、ヘリウムを含む自由空間(温および冷空間の両方)を計算し、次いで、ヘリウムを除去するために試料チューブを再度脱気する。データ収集はこの第二の脱気後に開始し、どの程度の気体が試料上に与えられるかを調節する標的圧力を規定することから構成される。各標的圧力において、吸着された気体の量および実際の圧力を調べ、記録する。試料チューブ内側の圧力は圧力トランスデューサで測定する。標的圧力が達成され、平衡となるまで、さらなる量の気体を継続して入れる。吸着された気体の量は試料上への複数回の適用量を合計することによって調べる。圧力および量により気体吸着等温線が規定され、これを使用してBET表面積(表24)を含む多数のパラメーターを計算する。
【0174】
(表24)気体吸着による表面積のまとめ
【0175】
等温線に対するBETモデルは、一般に用いられている、比表面積を計算するための理論である。この分析は、密に詰まったクリプトンの単層で全表面を覆うために必要な量を計算することによって、試料表面の単分子層容量を決定することを含む。単分子層容量にプローブガスの分子の断面積をかけて、全表面積を決定する。比表面積は、試料の一定分量の表面積を試料の質量で割ったものである。
【0176】
実施例11:照射済み材料の繊維長の測定
Techpap MorFi LB01システムを用いて、提示された試料において三つ組で繊維長分布試験を行った。平均長および幅は表25で報告する。
【0177】
(表25)リグノセルロース系繊維の長さおよび幅データのまとめ
【0178】
実施例12:照射済みおよび非照射クラフト紙のフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトル
Nicolet/Impact 400でFT-IR分析を行った。結果から、試料P132、P132-10、P132-100、P-1e、P-5e、P-10e、P-30e、P-70eおよびP-100eがセルロースベースの材料に相応することが示される。
【0179】
図3は、実施例4に従って剪断したクラフトボール紙の赤外スペクトルであり、一方、図4は、100Mradのガンマ線照射後の、図3のクラフト紙の赤外スペクトルである。照射済み試料は、未照射材料では見出されない領域Aにおけるさらなるピークを示す(中心は約1730cm-1)。注目すべきことに、P132からP132-10からP132-100に進む際に〜1650cm-1でのカルボニル吸収量の増大が検出された。試料P-1e、P-5e、P-10e、P-30e、P-70eおよびP-100eに対して同様の結果が観察された。
【0180】
実施例13:照射済みおよび非照射クラフト紙のプロトンおよび炭素-13核磁気共鳴(1H-NMRおよび13C-NMR)スペクトル
試料調製
2%フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物を含むDMSO-d6で溶解することによって、分析用に試料P132、P132-10、P132-100、P-1e、P-5e、P-10e、P-30e、P-70eおよびP-100eを調製した。低レベル照射を受けた試料は高レベル照射を受けた試料よりも溶解度が顕著に低かった。非照射試料は、この溶媒混合液中でゲルを形成したが、60℃に加熱することによって、NMRスペクトルにおけるピークが分解された。より高レベルの照射を受けた試料は10%wt/wtの濃度で可溶性であった。
【0181】
分析
15mg/mLの試料の1H-NMRスペクトルは、明らかな16ppmを中心とする非常に幅広い共鳴ピークを示した(図5A-5J)。このピークはエノールに対する交換性-OHプロトンの特徴であり、「d2Oシェイク」により確認された。モデル化合物(アセチルアセトン、グルクロン酸およびケト-グロン酸)を分析し、このピークが実際に交換性エノールプロトンであったことが説得力のあるものとなった。提案されるこのエノールピークは、濃度の影響に非常に敏感であり、本発明者らは、この共鳴がエノールまたはおそらくカルボン酸によるものであったか否かを結論付けることができなかった。
【0182】
モデル化合物のカルボン酸プロトン共鳴は、処理済セルロース試料に対して観察されたものと同様であった。これらのモデル化合物は、高磁場から〜5-6ppmにシフトした。より高い濃度のP-100eの調製(〜10%wt/wt)によって、モデル化合物のカルボン酸共鳴が見出された低磁場への劇的なシフトが起こった(〜6ppm)(図5N)。これらの結果から、この共鳴が、この官能基を特徴付けるために信頼性がないという結論が導かれるが、しかし、このデータから、試料の照射が増加すると、交換性水素の数が増加することが示唆される。またビニルプロトンも検出されなかった。
【0183】
試料の13CNMRスペクトルから、カルボン酸またはカルボン酸誘導体のカルボニルの存在が確認される。この新しいピーク(168ppm)は未処理試料には存在しない(図5K)。長時間の遅延がある13CNMRスペクトルによって、P-100eに対するシグナルの定量が可能となった(図5L〜5M)。およそ100ppm(Clシグナル)での共鳴に対するカルボニル共鳴の積分の比較から、Clに対するカルボニル炭素の比が1:13.8であるかまたは14グルコース単位ごとに凡そ1カルボニルであることが示唆される。100ppmでの化学シフトはグルクロン酸とよく相関する。
【0184】
滴定
試料P-100eおよびP132-100(1g)を脱イオン化水(25mL)中で縣濁した。指示薬アリザリンイエローを攪拌しながら各試料に添加した。P-100eは湿らせることがより困難であった。0.2M NaOH溶液で両試料を滴定した。終点は非常に微妙であり、pH紙を用いることによって確認した。試料の開始pHは両試料とも〜4であった。P132-100は0.4ミリ当量の水酸化物を必要とし、これは2500amuのカルボン酸に対する分子量を与える。モノマーに対して180amuが使用される場合、これは、13.9モノマー単位に対して1個のカルボン酸基があることを示す。同様に、P-100eは3.2ミリ当量の水酸化物を必要とし、これは、計算すると、17.4モノマー単位ごとに1カルボン酸基となる。
【0185】
結論
セルロースのC-6炭素は、この酸化においてカルボン酸(グルクロン酸誘導体)に酸化されると思われ、これは驚くべきことに特異的である。この酸化は、〜1740cm-1での照射によりIR域が大きくなることと一致し、これは脂肪族カルボン酸に対応する。滴定結果は定量的13C NMRと一致する。高レベルの照射を行うほど、試料の溶解度が向上することは、カルボン酸プロトン数が増加することとよく相関する。「C-6酸化セルロース」の分解に対するメカニズムの仮説を下記スキーム1で提供する。
【0186】
【0187】
実施例14:前処理済みバイオマスの微生物試験
エタノール産生における発酵工程のためにバイオ燃料業界で用いられる酵母および細菌の一般的な株に対する毒性について、本明細書に記載のように前処理した特定のリグノセルロース系材料を分析する。さらに、プロセスの実行可能性を調べるために、糖含量およびセルラーゼ酵素との適合性を調べる。前処理した材料の試験は以下のように2つの相で行う。
【0188】
第1相:毒性および糖含量
酵母サッカロミセス-セレビジエ(ワイン酵母)およびピキア・スチピチス(ATCC 66278)ならびに細菌ザイモモナス・モビリス(ATCC 31821)およびクロストリジウム・サーモセラム(ATCC 31924)において、前処理した草および紙原料の毒性を測定する。インキュベーションおよび試料採取の最適時間を調べるために、各微生物を用いて増殖試験を行う。
【0189】
次いで、各微生物に対する標準微生物培地中でS.セレビジエ、P.スチピチス、Z.モビリスおよびC.サーモセラムとともに各原料を二つ組でインキュベートする。2種類の酵母株、S.セレビジエおよびP.スチピチスに対してはYMブロスを使用する。Z.モビリスに対してはRM培地を使用し、C.サーモセラムに対してはCM4培地を使用する。比較のために、純粋な糖を添加するが原料を添加しない陽性対照を用いる。インキュベーション中、12時間にわたり、0、3、6、9および12時間の時点で合計5種類の試料を採取し、生存率(Z.モビリスの場合はプレートカウントおよびS.セレビジエの場合は直接カウント)およびエタノール濃度について分析する。
【0190】
原料の糖含量は、Shodex(商標)sugar SP0810またはBiorad Aminex(登録商標)HPX-87Pカラムの何れかを備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定する。各原料(およそ5g)を逆浸透圧(RO)水と1時間混合する。混合物の液体部を採取し、グルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、アラビノースおよびセロビオース含量について分析する。分析はNational Bioenergy Centerのプロトコール「Determination of Structural Carbohydrates and Lignin in Biomass」に従って行う。
【0191】
第2相:セルラーゼ適合性
リグノセルロース系バイオマスを発酵可能な糖に還元する酵素複合体を含有する市販のAccellerase(登録商標)1000を用い、エレンマイヤーフラスコ中で推奨温度および濃度で、原料を二つ組で試験する。200rpm前後で穏やかに振盪しながらフラスコを12時間インキュベートする。その間、フラスコの液体部中の還元糖の濃度を測定するために、0、3、6、9および12時間の時点で3時間ごとに試料を採取する(Hope and Dean, Biotech J. 1974, 144:403)。
【0192】
実施例15:HPLCを用いた糖濃度分析
糖濃度(HPLC)および3種類の微生物(ピキア・スチピチス、サッカロミセス・セレビシエおよびザイモモナス・モビリス)に対する毒性について、13種類の試料を分析した。表26はこれらの実験のために使用した装置を挙げる。表27および28は、HPLC標準物質を調製するために使用した糖のリスト(製造供給元およびロット番号を含む。)およびHPLC標準物質を調製するために使用したプロトコールをそれぞれ提供する。
【0193】
(表26)実験で使用した装置
【0194】
(表27)HPLC分析で使用した糖
【0195】
(表28)HPLC標準物質の調製
【0196】
分析
各試料(1グラム)を逆浸透水と200rpmおよび50℃で一晩混合した。試料のpHを5から6の間に調整し、0.2μmシリンジフィルターに通してろ過した。試料の完全性を維持するために、分析前に試料を-20℃で保存した。試料調製中に行った観察を表29で与える。
【0197】
(表29)HPLC試料調製中の観察
*これらの試料のpHは1N NaOHを用いてpHに調整した。
【0198】
6種類の混合糖、グルコース、キシロース、セロビオース、アラビノース、マンノースおよびガラクトースの4mg/mL保存溶液から新しく標準物質を調製した。各糖0.400グラムを75mLのナノピュア水中で溶解することによって保存溶液を調製した(0.3ミクロンろ過)。溶解したら、容量フラスコを用いてこの保存溶液を100mLに希釈し、-20℃で保存した。ナノピュア水で保存溶液を連続希釈することによって、0.1、0.5、1、2および4mg/mLの希釈標準溶液を調製した。さらにこの保存溶液から1.5mg/mLの検査標準溶液も調製した。
【0199】
「Determination of Structural Carbohydrates in Biomass」(NREL Biomass Program, 2006)プロトコールに従って糖濃度を分析し、このプロトコールをその全体において参照により本明細書に組み入れる。蒸発光散乱検出器付きのSHODEX SUGAR SP0810カラムを使用した。実験中にカラムおよび検出器の完全性が維持されていることを確認するために、8回の注入ごとに検査用標準物質(1.5mg/mL標準物質)を分析した。標準曲線の変動係数(R2値)は少なくとも0.989であり、検査用標準物質の濃度は実測濃度の10%以内であった。HPLC条件は次のとおりであった。
【0200】
(表30)HPLCパラメーター
*最初の試験から、移動相中で15/85アセトニトリル:水よりもナノピュア水を使用した際に良好な分離が観察されたことが示された(製造者は、このカラムで20%を超えるアセトニトリルを使用することを推奨していない。)。
【0201】
結果
表31、32および33でHPLC分析の結果を与える。
【0202】
(表31)mg/mLおよびmg/gとして表される抽出物の糖濃度
【0203】
(表32)紙に対する%で表される糖濃度
【0204】
(表33)総試料%で表される糖濃度
【0205】
実施例16:毒性試験
3種類のエタノール産生培養物パネルに対する毒性について12種類の試料を分析した。この実験において、培養物の飢餓と試料の毒性とを区別するために、試料にグルコースを添加した。ピキア・スチピチスに対する毒性について13種類の試料を試験した。使用したプロトコールの要約を表32で挙げる。毒性試験で使用した化学物質および装置の説明を表34〜36で報告する。
【0206】
(表34)毒性試験に対する条件
【0207】
(表35)毒性試験に対して使用した試薬
【0208】
(表36)振盪フラスコ試験で使用したYSI成分
【0209】
下記で記載のように3種類の微生物を用いて試験を行った。
【0210】
サッカロミセス・セレビシエATCC24858(American Type Culture Collection)
ATCCから得た再水和した凍結乾燥培養物から、S.セレビシエの斜面培地を調製した。YMブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に斜面培地材料の一部を画線し、30℃で2日間インキュベートした。50mLの培地(20g/Lグルコース、3g/L酵母抽出物および5.0g/Lペプトン、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコにYMプレートからの1個のコロニーを接種し、25℃および200rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後、試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、OD14.8であり、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を選択し、試験フラスコ全てに接種した。
【0211】
試験容器は、100mLの上述の滅菌培地を含有する500mLエレンマイヤーフラスコであった。試験材料添加前に、全フラスコを121℃および15psiで加圧滅菌処理した。加圧滅菌処理によって試料含量が変化するので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを36時間にわたり上述のようにインキュベートした。
【0212】
ピキア・スチピチスNRRL Y-7124(ARS Culture Collection)
ARS Culture Collectionから得た再水和凍結乾燥培養物から、P.スチピチスの斜面培地を調製した。YMブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に斜面培地材料の一部を画線し、30℃で2日間インキュベートした。100mLの培地(40g/Lグルコース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素、6.56g/Lペプトン、40g/Lキシロース、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコに少量のプレート材料を接種し、25℃および125rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、光学密度が5.23で、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を選択し、試験フラスコ全てに接種した。
【0213】
試験容器は、100mLの上述の滅菌培地を含有する250mLエレンマイヤーフラスコであった。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、試験材料の添加前にフラスコにろ過滅菌(0.22μmフィルター)した培地を添加した。加圧滅菌処理は試料含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを48時間にわたり上述のようにインキュベートした。
【0214】
ザイモモナス・モビリスATCC31821(American Type Culture)
ATCCから得た再水和凍結乾燥培養物から、Z.モビリスの斜面培地を調製した。DYEプレート(グルコース20g/L、酵母抽出物10g/L、寒天20g/L、pH5.4)上に斜面培地材料の一部を画線し、30℃および5%CO2で2日間インキュベートした。15mLの培地(25g/Lグルコース、10g/L酵母抽出物、1g/L MgSO4・7H2O、1g/L (NH4)2SO4、2g/L KH2PO4、pH5.4)を含有する20mLスクリューキャップ試験管に1個のコロニーを接種し、振盪せずに30℃で24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、1本の試験管(OD1.96)を選択して、第二の種フラスコに接種した。第二の種フラスコは上述の培地70mLを含有する125mLフラスコであり、700μL(1%v/v)を接種し、振盪せずに30℃で24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、ODが3.72である1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を選択し、試験フラスコ全てに接種した。
【0215】
試験容器は、酵母抽出物が5g/Lであることを除き上述のとおりの100mLの滅菌培地を含有する250mLエレンマイヤーフラスコであった。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、試験材料の添加前に、ろ過滅菌(0.22μmフィルター)した培地をフラスコに添加した。加圧滅菌処理は試料含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、接種時に試験試料を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを36時間上述のようにインキュベートした。
【0216】
分析
2種類の試料を細胞濃度について分析した(Z.モビリスの場合は塗布接種を使用し、直接計数し(S.セレビシエおよびP.スチピチスの場合は血球計算盤および顕微鏡で計数)。適切に希釈したZ.モビリスの試料をデキストロース酵母抽出物(グルコース20g/L、酵母抽出物10g/L、寒天20g/L、pH5.4)プレート上に広げ、30℃および5%CO2で2日間インキュベートし、コロニー数を計数した。適切に希釈したS.セレビシエおよびP.スチピチスの試料を0.05%トリパンブルーと混合し、ノイバウエル血球計算盤に載せた。40Xの倍率で細胞を計数した。
【0217】
アルコール脱水素酵素アッセイに基づき、YSI生化学分析装置(YSI Biochem Analyzer)を用いて(YSI、Interscience)、エタノール濃度について3種類の試料を分析した。14,000rpmで20分間、試料を遠心し、完全性を維持するために上清を-20℃で保存した。分析前に0〜3.2g/Lエタノールの間となるようにこの試料を希釈した。分析中に膜の完全性が維持されていることを確認するために、およそ30試料ごとに3.2g/Lエタノールの標準物質を分析した。試料の濁度が上昇することにより固体試験試料が吸収測定を妨害し、不正確となるので、試料の光学密度(600nm)は報告しない。
【0218】
エタノール分析結果
各微生物に対して、対照と各試料を比較するために、パフォーマンスを使用した(表37-39)。しかし、株間の比較を行うためには%パフォーマンスを使用することができない。株を比較する場合、エタノールの総濃度を使用すべきである。データを分析する際、80%未満の%パフォーマンスは、細胞数も低い場合は毒性を示し得る。%パフォーマンスを決定するために使用した式は、以下である:
% パフォーマンス = (試料中のエタノール/対照中のエタノール)x100
【0219】
(表37)サッカロミセス・セレビシエを用いたエタノール濃度および%パフォーマンス
【0220】
(表38)ピキア・スチピチスを用いたエタノール濃度および%パフォーマンス
【0221】
太字の試料は、20g/Lを超え、木材加水分解物の場合の濃度と同等である、最大エタノール産生試料であった(H.K.Sreenath and T.W.Jeffries Bioresource Technology 72(2000)253-260)。
*後に振盪フラスコ実験で分析
【0222】
(表39)ザイモモナス・モビリスを用いたエタノール濃度および%パフォーマンス
【0223】
細胞濃度分析からの結果
各生物に対して、対照と各試料を比較するために、%細胞を使用する(表40-42)。しかし、株間の比較を行うためには%細胞を使用することができない。株を比較する場合、細胞の総濃度を使用すべきである。データを分析する際、70%未満の%パフォーマンスは、エタノール濃度も低い場合、毒性を示し得る。%パフォーマンスを決定するために使用した式は、以下である:
% 細胞 = (試料中の細胞数/対照中の細胞数)x100
【0224】
(表40)サッカロミセス・セレビシエに対する細胞濃度分析からの結果
【0225】
(表41)ピキア・スチピチスに対する細胞濃度分析からの結果
【0226】
(表42)ザイモモナス・モビリスに対する細胞濃度分析からの結果
【0227】
実施例17:P.スチピチスを用いたセルロース試料の振盪フラスコ発酵
要約
糖添加せずにP.スチピチス培養物におけるエタノール産生について13種類の試料を試験した。セルラーゼ(Accellerase 1000(登録商標)酵素複合体、Genencor)の存在下および非存在下でこれらを試験した。この実験に対して使用した装置および試薬を下記表43〜45で挙げる。
【0228】
(表43)装置およびメンテナンス頻度
【0229】
(表44)振盪フラスコ試験で使用したYSI成分
【0230】
(表45)振盪フラスコ発酵に対して使用した化学物質
【0231】
ARS Culture Collectionから得た再水和凍結乾燥培養物から、P.スチピチスNRRL Y-7124の斜面培地を調製した。Yeast Mold(YM)ブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に斜面培地材料の一部を画線し、30℃で2日間インキュベートした。100mLの培地(40g/Lグルコース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素、6.56g/Lペプトン、40g/Lキシロース、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコに1個のコロニーを接種し、25℃および100rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、光学密度が6.79であり、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を選択し、試験フラスコ全てに接種した。
【0232】
試験容器は、100mLの培地(1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素および6.56g/Lペプトン)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコであった。増殖フラスコ培地に糖(グルコースまたはキシロース)は添加しなかった。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、試験材料の添加前にフラスコにろ過滅菌(0.22μmフィルター)した培地を添加した。加圧滅菌処理は試料含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料(表46で列挙)を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。試料P132-100を含有するフラスコは、pHを5.0にするために0.4mLの1M NaOHの添加が必要であった。このフラスコを96時間以上、30℃および150rpmでインキュベートした。
【0233】
同時糖化および発酵(SSF)を試みるために、原料1種あたり2本組みのフラスコの一方のセットに、Accellerase(登録商標)酵素複合体(フラスコ1本あたり1.25mL、最も推奨される用量はバイオマス1グラムあたり0.25mL、Genencor)を添加した。2本組みフラスコの他方のセットには、Accellerase(登録商標)酵素複合体を添加しなかった。全部で52本のフラスコを分析した。
【0234】
6本の対照フラスコも分析した。陽性対照フラスコには、Accellerase(登録商標)酵素複合体を添加しておよび添加せずに、100mLフラスコ1本あたり2.5グラムの濃度(25グラム/L)で、SolkaFloc 200NF粉末セルロース(ロット#UA158072、International Fiber Corporation)を添加した。さらに、糖(グルコースおよびキシロース)のみを含有する対照を使用した。
【0235】
(表46)各フラスコに添加した各原料の量
【0236】
分析
アルコール脱水素酵素アッセイに基づき、YSI生化学分析装置を用いて(YSI、Interscience)、エタノール濃度について試料を分析した(表47、48および49)。14,000rpmで20分間試料を遠心し、-20℃で上清を保存した。分析前にエタノールが0〜3.2g/Lの間となるようにこの試料を希釈した。分析中に膜の完全性が維持されていることを確認するために、およそ30試料ごとに2.0g/Lエタノールの標準物質を分析した。
【0237】
結果
【0238】
(表47)対照フラスコの結果
【0239】
(表48)Accellerase(登録商標)1000酵素複合体非存在下での振盪フラスコの結果
【0240】
(表49)Accellerase(登録商標)1000酵素複合体存在下での振盪フラスコの結果
【0241】
実施例18:セルラーゼアッセイ
要約
温度およびpHの至適条件下で工業用セルラーゼ(Accellerase(登録商標)1000、Genencor)を用いて、セルラーゼ感受性について13種類の試料を試験した。
【0242】
プロトコール
本プロトコールはNREL「Laboratory Analytical Procedure LAP-009 Enzymatic Saccharification of Lignocellulosic Biomass」の改変法である。2本組みで、50mL試験管中の10mLの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.8)および40mg/mLテトラサイクリン(細菌増殖防止のため)に材料の試料を添加した。各試験管に添加した試料の量は表50で挙げる。一部の試料は混合困難であったので(P132、P132-10、P132-100)、より低い濃度で添加した。0.2グラムのSolkaFloc 200NF粉末セルロース(ロット#UA158072、International Fiber Corporation)の陽性対照および陰性対照(試料なし)も加えた。体積を総量で20mLにするのに十分な逆浸透(RO)水を試験管に添加した。クエン酸緩衝液および水の両方を使用前に50℃に加熱した。
【0243】
バイオマス1グラムあたり0.25mLの用量(Genencorにより推奨される最大用量)で各試験管にAccellerase(登録商標)1000酵素を添加した。この試験管を45°の角度で150rpmおよび50℃(Genencorにより推奨)で72時間、インキュベートした。0、3、6、9、12、18、24、48および72時間(表52および53)で試料を採取し、14,000rpmで20分間遠心し、上清を-20℃で凍結した。表51に記載の条件を用いてYSI生化学分析装置(Interscience)を使用して試料中のグルコース濃度を分析した。2.500グラムのグルコース(Sigma Cat# G7528-5KG、Lot#:107H0245)を蒸留水中で溶解することによって、2.5g/Lのグルコース標準溶液を調製した。溶解したら、容量フラスコ中で蒸留水で総体積を1Lにした。毎週新鮮な標準物質を調製し、4℃で保存した。
【0244】
(表50)各試料の添加量
【0245】
(表51)振盪フラスコ試験で使用したYSI成分
【0246】
結果
(表52)セルラーゼアッセイ結果
【0247】
(チャート1)グルコース濃度(上位4種類の産生試料)
【0248】
次のように試験管中で消化されたセルロース量を計算した:
g/mLグルコースx20mL(試料体積)x0.9(セルロース加水分解時に添加した水分子に対する補正のため)。
【0249】
次のように、グルコースとして放出された総試料の割合(下記表53)を計算した:
消化されたセルロースg/添加した試料g(詳細については表5参照)*100
【0250】
(表53)セルラーゼアッセイ結果
【0251】
実施例19:ピキア・スチピチスを用いた振盪フラスコ発酵
要約
表36からの最大の%パフォーマンスを有する4種類のセルロース系材料を用いて、ピキア・スチピチスを用いた振盪フラスコ発酵を行った。
【0252】
プロトコール
表54〜56で概説するパラメーターの元で実験を行った。
【0253】
(表54)装置およびメンテナンス頻度
【0254】
(表55)振盪フラスコ試験で使用したYSI成分
【0255】
(表56)振盪フラスコ発酵に対して使用した化学物質
【0256】
種材料の開発
次の振盪フラスコ実験全てに対して、次の手順を用いて種フラスコを調製した。
【0257】
ARS Culture Collectionから得た再水和凍結乾燥培養物から、P.スチピチスNRRL Y-7124の作業用細胞バンクを調製した。15%v/vグリセロール中のP.スチピチス培養物を含有する凍結バイアルを-75℃で保存した。凍結融解した作業用細胞バンク材料の一部をYeast Mold(YM)ブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に画線し、30℃で2日間インキュベートした。使用前にこのプレートを4℃で2日間保持した。100mLの培地(40g/Lグルコース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素、6.56g/Lペプトン、40g/Lキシロース、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコに1個のコロニーを接種し、25℃および100rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、光学密度が4から8の間で、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を使用して、試験フラスコ全てに接種した。
【0258】
試料A132-10、A132-100、G132-10およびG132-100を使用して3回の実験を行った。実験#1では、様々な濃度のキシロースおよび一定濃度のグルコースで、エタノール濃度についてこれらの4種類の試料を試験した。実験#2では、表36の実験で使用した原料の2倍の濃度で、エタノール濃度についてこれらの4種類の試料を試験した。最後に、実験#3では、キシロースおよびグルコース濃度の両方を同時に変化させながら、エタノール濃度についてこれらの4種類の試料を試験した。
【0259】
実験#1-キシロース濃度の変動
下記表57で挙げるとおりの様々なキシロース濃度で4種類のセルロース系試料(A132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を試験した。
【0260】
(表57)実験#1フラスコの培地成分
【0261】
試験容器には100mLの培地を添加した(全部で40本、250mLエレンマイヤーフラスコ)。表57で概説したキシロースおよびグルコース量で、5種類の様々なタイプの培地を調製した。さらに、この培地は、1.7g/L酵母窒素原基礎培地(Becton Dickinson #291940)2.27g/L、尿素(ScholAR Chemistry #9472706)および6.56g/Lペプトン(Becton Dickinson #211677)を含有した。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、試験材料の添加前に、ろ過滅菌(0.22 μmフィルター)した培地をフラスコに添加した。フラスコを室温で4日間保持し、使用前に雑菌混入(混濁)について調べた。加圧滅菌処理は試料含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験材料(5g/100mLでA132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを30℃および150rpmで72時間インキュベートした。
【0262】
残念ながら、試験中にフラスコを1本(100%キシロースの試料A132-100)破損した。従って、インキュベーション後24時間の全結果を1本のフラスコとして報告する。インキュベーション72時間後、セルロース系材料(5.0g)の元の量の100%を100%キシロースフラスコに添加し(全部で7本のフラスコ、試料A132-100を含有する1本のフラスコを破損した。)、さらに48時間、上記のようにインキュベートした。
【0263】
(表58)インキュベーション時間72時間での100%キシロースフラスコへの原料の添加
【0264】
分析
インキュベーション時間0、6、12、24、36、48および72時間に、40本の試験フラスコから試料を採取した。さらに、100%キシロースフラスコ中での原料の第二の量の添加後24および48時間で試料を採取した(表58参照)。
【0265】
アルコール脱水素酵素アッセイに基づきYSI生化学分析装置を用いて(YSI、Interscience)、全部で292種類の試料をエタノール濃度について分析した。14,000rpmで20分間、試料を遠心し、上清を-20℃で保存した。注目すべきことに、時間0の試料は、0.45μmシリンジフィルターによるろ過を必要とした。分析前に、0-3.2g/Lエタノールになるようにこの試料を希釈する。膜の完全性が維持されていることを確認するために、2.0g/Lエタノールの標準物質をおよそ30試料ごとに分析した。
【0266】
全部で47種類の試料を細胞数について分析した。インキュベーション72時間およびさらなるセルロース系材料の添加後48時間に、試料を採取する。適切に希釈した試料を0.05%トリパンブルーと混合し、ノイバウエル血球計算盤に載せた。40Xの倍率で細胞を計数した。
【0267】
実験#2-2X原料濃度の分析
試験容器(全部で8本、250mLエレンマイヤーフラスコ)には100mLの培地を入れた。この培地には、40g/Lグルコース、40g/Lキシロース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地(Becton Dickinson #291940)、2.27g/L尿素(ScholAR Chemistry #9472706)および6.56g/Lペプトン(Becton Dickinson #211677)が含有されていた。実験#1のようにフラスコを準備した。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料(10g/100mLのA132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを30℃および150rpmで72時間以上インキュベートした。
【0268】
分析
0、6、12、24、36、48および72時間のインキュベーション時間で、8本の試験フラスコから試料を得た。実験#1のように、56種類の試料のエタノール分析を行い、表59で報告する。実験#1と同様に72時間の試料に対して細胞計数を行い、表60で示す。
【0269】
(表59)2倍の原料を用いた場合のフラスコ中のエタノール濃度
【0270】
(表60)2倍の原料を用いたフラスコ中の72時間のインキュベーション時間での細胞濃度
【0271】
実験#3-様々なキシロースおよびグルコース濃度
下記の表(表60)で挙げるとおりの様々なキシロースおよびグルコース濃度で、4種類のセルロース系試料(A132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を試験した。
【0272】
(表61)実験#3のフラスコの培地成分
【0273】
試験容器(全部で32本、250mLエレンマイヤーフラスコ)には100mLの培地を入れた。表61で概説した量のキシロースおよびグルコースを用いて4種類の異なるタイプの培地を調製した。さらに、この培地には、1.7g/L酵母窒素原基礎培地(Becton Dickinson # 291940)2.27g/L尿素(ScholAR Chemistry #9472706)および6.56g/Lペプトン(Becton Dickinson #211677)が含有されていた。このフラスコを実験#1のように調製した。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料(A132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを30℃および150rpmで72時間インキュベートした。
【0274】
分析
0、6、12、24、36、48および72時間のインキュベーション時間に、32本の試験フラスコから試料を採取した(表62-65参照)。アルコール脱水素酵素アッセイに基づきYSI生化学分析装置を用いて(YSI、Interscience)、エタノール濃度について全部で224種類の試料を分析した。14,000rpmで20分間試料を遠心し、上清を-20℃で保存した。注目すべきことに、一部の試料は、遠心および、次に、0.45μmシリンジフィルターによるろ過を必要とした。分析前にエタノールが0〜3.2g/Lの間となるようにこの試料を希釈した。YSI膜の完全性が維持されていることを確認するために、2.0g/Lエタノールの標準物質をおよそ30試料ごとに分析した。
【0275】
(表62)エタノール結果試料A132−10
*実験#3からの分析
【0276】
(表63)エタノール結果試料A132−100
*実験#3からの分析
**1本のフラスコの分析に基づく全結果
【0277】
(表64)エタノール結果試料G132−10
*実験#3からの分析
【0278】
(表65)エタノール結果試料G132−100
*実験#3からの分析
【0279】
細胞計数のために72時間のインキュベーションで試料を採取した(表66〜67参照)。適切に希釈した試料を0.05%トリパンブルーと混合し、ノイバウエル血球計算盤に載せた。40Xの倍率で細胞を計数した。
【0280】
結果
1本の種フラスコを使用して、全ての実験#1および#2試験フラスコに接種した。種フラスコの光学密度(600nm)を測定したところ、5.14となり、その細胞濃度は4.65x108個細胞/mLとなった(表65-66)。従って、試験フラスコ中の最初の細胞濃度はおよそ4.65x106個細胞/mLであった。
【0281】
第二の種フラスコを使用して、実験#3フラスコに接種した。種フラスコの光学密度(600nm)は5.78であり、細胞濃度は3.75x108個細胞/mLとなった。従って、試験フラスコ中の最初の細胞濃度はおよそ3.75x106個細胞/mLであった。
【0282】
(表66)72時間のインキュベーション時間での細胞計数
*増殖72時間後、試料への雑菌混入が激しかった。これは、糖添加なしではピキアがあまり増殖せず、混入雑菌(非滅菌試料由来)がピキアより多く増殖することできたからと予想される。
【0283】
(表67)添加後(100%キシロースおよびグルコース)48時間のインキュベーション時間での細胞計数
【0284】
実施例20:P.スチピチスおよびS.セレビシエに対するリグノセルロース系試料の毒性試験
要約
2種類のエタノール産生培養物、サッカロミセス・セレビシエおよびピキア・スチピチスに対する毒性について、37種類の試料を分析した。この実験において、培養物の飢餓と試料の毒性を区別するために、試料にグルコースを添加した。
【0285】
(表68)毒性試験に対する条件
【0286】
プロトコール
使用したプロトコールの要約を表68で挙げる。毒性試験で使用した化学物質の説明は表69で挙げる。試験の各週に、各微生物に対して2本の対照フラスコ(試料添加なし)を行った。全部で82本のフラスコを分析した。
【0287】
実験中、インキュベーションの最初の24時間において、試料C、C-1e、C-5eおよびC-1Oeを含有するP.スチピチスのフラスコ中でエタノールまたは細胞は見られなかった。結果を確認するために、この試験を繰り返した。2回目の試験によって、試料C、C1E、C5EおよびC10Eをフラスコに添加した際にP.スチピチス増殖が幾分阻害されることが確認された。
【0288】
(表69)毒性試験に対して使用した化学物質および材料
【0289】
(表70)毒性試験で使用したYSI成分
【0290】
試験試料
少量の試料に適切なコーヒーグラインダーを用いて7種類の試験試料(全てCの記号表示を有する。)を研削した。肉眼で見て適応する粒径(試料間)になるようにこの試料を研削した。試料番号C-100eは容易に小さな粒径に研削された。
【0291】
6種類のP試料(25グラム/リットル)を除き、50グラム/リットルの濃度になるように全試料をフラスコに添加した。これらの試料の色は白色から灰色がかった白色で、外見は綿毛状であり、これらのフラスコは50グラム/リットル濃度で適切に混合されない(十分な自由液体ではない。)。試料Sは容易に溶解し、後により高濃度でフラスコに添加し得る。将来的には100グラム/リットルで試料AおよびGを添加し得る。
【0292】
下記のように2種類の微生物を用いて試験を行った。
【0293】
サッカロミセス・セレビシエATCC 24858(American Type Culture Collection)
American Type Culture Collectionから入手した再水和凍結乾燥培養物から、S.セレビシエATCC24858の作業用細胞バンクを調製した。15%v/vグリセロール中のS.セレビシエ培養物を含有する凍結バイアルを-75℃で凍結した。凍結融解した作業用細胞バンク材料の一部をYeast Mold(YM)ブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に画線し、30℃で2日間インキュベートした。培地(20g/Lグルコース、3g/L酵母抽出物および5.0g/Lペプトン、pH5.0)50mLを含有する250mLエレンマイヤーフラスコにYMプレートから1個のコロニーを接種し、25℃および200rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、ODが9-15であり、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を増殖フラスコに接種するために使用するものとした。増殖23時間後、種フラスコのODは低く(5.14)、細胞数が少なかった(1.35x108個細胞/mL)。注目すべきことに、種プレートから採取したコロニーは通常より小さかった。従って、0.5mLの種材料(計画した0.1mLではない。)を各試験容器に添加した。
【0294】
試験容器は、100mLの上述の滅菌培地を含有する500mLエレンマイヤーフラスコであった。試験材料の添加前に、全フラスコを121℃および15psiで加圧滅菌処理した。加圧滅菌処理は試料の含量を変化させるので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料を添加した。試験試料に加え、0.5〜1.0mL(0.5〜1.0%v/v)の種フラスコ材料を各フラスコに添加した。上述のようにこのフラスコを72時間インキュベートした。
【0295】
ピキア・スチピチス(ARS Culture Collection)
ARS Culture Collectionから入手した再水和凍結乾燥培養物から、P.スチピチスNRRL Y-7124の作業用細胞バンクを調製した。15%v/vグリセロール中のP.スチピチス培養物を含有する凍結バイアルを-75℃で凍結する。凍結融解した作業用細胞バンク材料の一部をYeast Mold(YM)ブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に画線し、30℃で2日間インキュベートした。使用前にこのプレートを4℃で最長5日間維持した。100mLの培地(40g/Lグルコース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素、6.56g/Lペプトン、40g/Lキシロース、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコに1個のコロニーを接種し、25℃および125rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、光学密度が5-9であり、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を使用して、試験フラスコ全てに接種した。
【0296】
試験容器は、100mLの上述の滅菌培地を含有する250mLエレンマイヤーフラスコであった。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、ろ過滅菌(0.22 μmフィルター)した培地を試験材料の添加前にそのフラスコに添加した。加圧滅菌処理は試料の含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを上述のように72時間インキュベートした。
【0297】
分析
接種直前に種フラスコから試料を採取し、24および72時間にそれぞれフラスコを試験し、直接計数することにより細胞濃度について分析した。適切に希釈したS.セレビシエおよびP.スチピチスの試料を0.05%トリパンブルーと混合し、ノイバウエル血球計算盤に載せた。40Xの倍率で細胞を計数した。
【0298】
0、6、12、24、36、48および72時間の時点で各フラスコから試料を採取し、アルコール脱水素酵素アッセイに基づきYSI生化学分析装置を用いて(YSI、Interscience)、エタノール濃度について分析した。14,000rpmで20分間、試料を遠心し、上清を-20℃で保存した。分析前に、0-3.2g/Lエタノールになるようにこの試料を希釈した。分析中に膜の完全性が維持されていることを確認するために、2.0g/Lエタノールの標準物質をおよそ30試料ごとに分析した。
【0299】
計算
対照フラスコと細胞数およびエタノール濃度を比較するために、次の計算を使用した。
%パフォーマンス=(試験フラスコ中のエタノール濃度/対照中のエタノール)*100%
細胞=(試験フラスコ中の細胞数/対照フラスコ中の細胞数)*100
【0300】
結果
S.セレビシエの種フラスコの光学密度(600nm)は5.14であり、細胞濃度は1.35x108個細胞/mLであった。0.5mLの種フラスコ材料を各試験フラスコに添加した。従って、各フラスコ中の出発細胞濃度は6.75x105/mLであった。試験第2週の間、S.セレビシエの種フラスコの光学密度(600nm)は4.87であり、細胞濃度は3.15x107個細胞/mLであった。1mLの種フラスコ材料を各試験フラスコに添加した。従って、各フラスコの出発細胞濃度は6.30x105/mLであった。0時間の試料採取時間のS.セレビシエのフラスコのpHは表71で示す。フラスコ内容物のpHは、S.セレビシエ増殖に対する至適pHの範囲内(pH4-6)であった。pH調整は必要なかった。
【0301】
(表71)試料採取時間0時間のS.セレビシエのフラスコのpH
*「S」はスクロースを指す。
*「C」はトウモロコシを指す。
*「ST」はデンプンを指す。
【0302】
S.セレビシエのフラスコ中のエタノール濃度およびパフォーマンスを表72および73で示す。最大エタノール濃度はSシリーズから得られた。
【0303】
(表72)S.セレビシエのフラスコ中のエタノール濃度
*第2週に分析
試料番号の記号については表72参照。
【0304】
(表73)S.セレビシエのフラスコにおけるパフォーマンス
*第2週に分析
【0305】
S.セレビシエのフラスコ中の細胞濃度および%細胞を表74で示す。全フラスコで高細胞数が認められたが、全ての細胞がエタノールを産生している訳ではないと思われる。
【0306】
(表74)S.セレビシエの細胞数および%細胞
【0307】
P.スチピチスの種フラスコの光学密度(600nm)は5.01であり、細胞濃度は3.30x108個細胞/mLであった。1mLの種フラスコ材料を各試験フラスコに添加した。従って、各フラスコの出発細胞濃度は3.30x106/mLであった。試験第2週の間、P.スチピチスの種フラスコの光学密度(600nm)は5.45であり、細胞濃度は3.83x108個細胞/mLであった。1mLの種フラスコ材料を各試験フラスコに添加した。従って、各フラスコの出発細胞濃度は3.83x106/mLであった。0時間の試料採取時間のP.スチピチスのフラスコのpHは表75で示す。フラスコ内容物のpHは、P.スチピチス増殖に対する至適pHの範囲内(pH4-7)であった。pH調整は必要なかった。
【0308】
(表75)試料採取時間0時間のP.スチピチスのフラスコのpH
【0309】
P.スチピチスのフラスコのエタノール濃度およびパフォーマンスは表76および77で示す。最大エタノール濃度はGおよびAシリーズであった。フラスコC-30e、C-50eおよびC-100eも高濃度エタノールを含有した。P.スチピチスのフラスコ中の細胞濃度および%細胞は表78で示す。記号Sが付いたフラスコでは細胞濃度が低いことが観察された。24時間の試料採取時間において、試料C、C1E、C5EおよびC10Eを含有するフラスコでも細胞数が少ないことが観察された。
【0310】
(表76)P.スチピチスのフラスコ中のエタノール濃度
*第2週に分析
【0311】
(表77)P.スチピチスのフラスコのパフォーマンス
*第2週に分析
【0312】
(表78)P.スチピチスの細胞数および%細胞
*第2週に分析
【0313】
細胞毒性の結果の要約
ザイモモナス・モビリス
チャート1Aで示されるように、24時間の時点で、P-132-10、G-132-10およびWS-132-10を含有する試料において、細胞数増加(例えば対照よりも多い。)が認められた。その他の全ての試料存在下の細胞数は対照と同等であった。この観察から、播種後最長24時間まで、基質がZ.モビリスに対して毒性がなかったことが示される。
【0314】
36時間の時点で、対照を含め、全試料に対して、細胞数の減少(例えば細胞喪失または細胞死によるもの)が観察された。P-132-10、G-132-10を含有する試料の場合に最大の細胞数減少が認められた。この影響の推定原因は対照を含む全試料で共通である。従って、試験基質は各試料で異なり、対照には存在しないので、この影響の原因は試験基質ではない。この観察に対して考えられる理由としては、不適切な培養条件(例えば、温度、培地組成)または試料中のエタノール濃度が挙げられる。
【0315】
(チャート1A)Z.モビリスに対する細胞濃度
【0316】
チャート1Bで示されるように、基質にかかわらず、全ての細胞が各時点で同等量のエタノール(例えば5-10g/L)を産生した。チャート1Aで示される細胞数データと一致して、各試料中のエタノール濃度は、24時間の時点でピークに達した。細胞数データとは対照的に、エタノール濃度は、その後の時点で低下しなかった。これはエタノールが系から除去されなかったからであると予想された。さらに、このデータから、これらの試料中のエタノール産生は、培地中でのグルコースの発酵による結果であり得たことが示唆される。試験した基質の中でエタノール産生を向上させたものはないようであった。
【0317】
(チャート1B)Z.モビリスに対するエタノール濃度
【0318】
総合すると、チャート1Aおよび1Bから、Z.モビリスに対して約6g/L以上のエタノール濃度が毒性であり得ることが示唆される。チャート1Cで示されるように、対照に対して正規化された割合としても、データを示す。
【0319】
(チャート1C)Z.モビリスに対する%増殖およびエタノール産生
【0320】
ピキア・スチピチス
チャート2Aで示されるように、細胞数は対照と同等であった。さらに、G-132およびWS-132を含有する試料中で細胞数が僅かに減少していたが、G-132-10、G-132-100、A-132-10またはA-132-100の場合は細胞数の減少は観察されなかった。従って、基質GまたはAは毒性がないと思われる。むしろ、G-132およびWS-132の場合に観察された細胞数減少は、実験上の例外によるかまたは、何らかの形で細胞増殖を妨げる未処理の基質の存在によるものであったと思われる。全体的に、このデータから、対照および実験試料に存在するグルコースは、至適なP.スチピチス増殖を促進するために十分であると思われ、試料中にさらなる基質が存在してもこの増殖速度は向上しないことが示唆される。これらの結果から、P.スチピチスにおいて毒性がある試料がないことも示唆される。
【0321】
(チャート2A)P.スチピチスに対する細胞濃度
【0322】
チャート2Bで示されるように、チャート2Bで同じような細胞数が報告されたにもかかわらず、実験基質を含有する全試料においてエタノール産生の大幅な増加が観察された。試験した3回の各時点で、エタノール濃度が時間とともに上昇した。エタノールの最大濃度は、A-132-10に対して48時間の時点で観察された(例えばおよそ26.0g/L)。エタノール産生レベルが最大である基質濃度をチャート2Bで示される細胞数データと比較することによって、P.スチピチスは、エタノール濃度上昇に感受性がないと思われることが分かる。さらに、エタノール産生は細胞数には関連がなく、むしろ試料中に存在する基質のタイプに関連があると思われる。
【0323】
(チャート2B)P.スチピチスに対するエタノール濃度
【0324】
総合すると、チャート2Aおよび2Bで示される結果から、実験用基質はP.スチピチスの増殖向上を促進しないが、それらはこの細胞タイプにより産生されるエタノール量を大幅に増加させることが示唆される。チャート2Cで示されるように、対照に対して正規化された割合としてもデータを示す。
【0325】
(チャート2C)P.スチピチスに対する%増殖およびエタノール産生
【0326】
サッカロミセス・セレビシエ
チャート3Aで示されるように、G-132-100、A-132、A-132-10、A-132-100およびWS-132は、対照と比較して細胞数増加を僅かに促進した。何れの試料に対しても細胞数の顕著な減少は観察されなかった。これらの結果から、S.セレビシエにおいて毒性がある試料はないことが示唆される。
【0327】
(チャート3A)S.セレビシエに対する細胞濃度
【0328】
チャート3Bで示されるように、対照と比較して、各細胞タイプで処理した細胞においてエタノール産生の向上が観察された。最大量のエタノールを含有する試料をチャート3Aで示される細胞数データと比較することによって、5g/Lを上回るエタノール濃度が細胞数に対して悪影響を有し得たことが示唆される。しかし、この所見は全ての試料に当てはまる訳ではない。
【0329】
(チャート3B)S.セレビシエに対するエタノール濃度
【0330】
チャート3Cで示されるように、対照に対して正規化された割合としてもデータを示す。
【0331】
(チャート3C)S.セレビシエに対する%増殖およびエタノール産生
【0332】
結論として、試験した試料の中でZ.モビリス、P.スチピチスまたはS.セレビシエにおいて毒性であると思われるものはなかった。さらに、P.スチピチスは、試験した実験用基質からエタノールを産生することについて3種類の細胞タイプの中で最も有効であると思われた。
【0333】
その他の態様
本発明の多くの態様を記載してきた。しかし、当然のことながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変をなし得る。
【0334】
例えば、本繊維は、何らかの所望の形態であり得、様々な異なる形態を有し得る。一般に、セルロース系材料は表面積が大きいことが望ましい。場合によって、この繊維は単層または多層シートに組み込まれ得、例えばこの繊維はHEPAフィルターなどの一部であり得る。このシート材料の表面積は、例えば約1から500m2/gであり得る。繊維性材料は、スクリーンまたはメッシュの形態で、重ねられ得る、例えばメルトブローされ得る、折り畳まれ得るかまたはその他の形状で与えられ得る。繊維は押出されるかまたは共押出され得る。
【0335】
本繊維は、ナノスケール、例えば約1000nm未満、例えば、500nm、250nm、100nm、50nm、25nm未満またはさらに1nm未満から、より大きい粒径、例えば、100ミクロン、200ミクロン、500ミクロンまたはさらには1000ミクロン超または粒子の凝集体まで、何らかの所望の粒径を有し得る。
【0336】
バイオマス基質について本明細書中で考察してきたが、このような基質は、その他の基質、例えば、全開示が参照により本明細書中に組み入れられる2009年10月16日出願の米国特許出願第61/252,300号で開示されている無機および合成基質と組み合わせて使用することができる。
【0337】
本繊維または本繊維を含有する繊維性材料は、微生物および/または酵素で前処理することができ、および/または本繊維または繊維性材料は、糖化または発酵などのバイオプロセス中に微生物および/または酵素と接触させることができる。
【0338】
上記で考察されるように、微生物の代わりにまたは微生物に加えて、酵素を繊維上に固定化することができる。
【0339】
セルロースおよび/またはバイオマスのリグニン部分など、バイオマスを分解する酵素およびバイオマス分解生物は、様々なセルロース分解性酵素(セルラーゼ)、リグニナーゼまたは様々な低分子バイオマス分解代謝産物を含有するかまたは産生する。これらの酵素は、結晶性セルロースまたはバイオマスのリグニン部分を分解するために相乗的に作用する酵素の複合体であり得る。セルロース分解性酵素の例としては、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼおよびセロビアーゼ(β-グルコシダーゼ)が挙げられる。糖化中、セルロース系基質は最初に、ランダムな位置でエンドグルカナーゼにより加水分解され、オリゴマー中間体が生成する。次に、これらの中間体は、セロビオヒドロラーゼなどの、末端側から切断するグルカナーゼに対する基質となり、セルロースポリマーの末端からセロビオースが生成する。セロビオースは、水溶性の、グルコースの1,4-結合二量体である。最後に、セロビアーゼがセロビオースを切断し、グルコースが得られる。
【0340】
セルラーゼはバイオマスを分解することができ、真菌または細菌由来であり得る。適切な酵素には、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、フミコラ(Humicola)属、フザリウム(Fusarium)属、チエラビア(Thielavia)属、アクレモニウム(Acremonium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属およびトリコデルマ(Trichoderma)属由来のセルラーゼが含まれ、フミコラ、コプリナス(Coprinus)、チエラビア、フザリウム、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、アクレモニウム、セファロスポリウム(Cephalosporium)、シタリジウム(Scytalidium)、ペニシリン(Penicillium)またはアスペルギルス(Aspergillus)の種(例えば欧州特許第458162号)が含まれ、特にフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)(シタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)として再分類、例えば、米国特許第4,435,307号参照)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、メリピルス・ギガンテウス(Meripilus giganteus)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、アクレモニウム種、アクレモニウム・ペルシシナム(Acremonium persicinum)、アクレモニウム・アクレモニウム(Acremonium acremonium)、アクレモニウム・ブラシペニウム(Acremonium brachypenium)、アクレモニウム・ジクロモスポルム(Acremonium dichromosporum)、アクレモニウム・オブクラバツム(Acremonium obclavatum)、アクレモニウム・ピンケルトニエ(Acremonium pinkertoniae)、アクレモニウム・ロセオグリセウム(Acremonium roseogriseum)、アクレモニウム・インコロラツム(Acremonium incoloratum)およびアクレモニウム・フラツム(Acremonium furatum)から選択される株;好ましくは、種フミコラ・インソレンスDSM 1800、フザリウム・オキシスポルムDSM 2672、ミセリオフトラ・サーモフィラCBS 117.65、セファロスポリウム種RYM-202、アクレモニウム種CBS 478.94、アクレモニウム種CBS 265.95、アクレモニウム・ペルシシナムCBS 169.65、アクレモニウム・アクレモニウムAHU 9519、セファロスポリウム種CBS 535.71、アクレモニウム・ブラシペニウムCBS 866.73、アクレモニウム・ジクロモスポルムCBS 683.73、アクレモニウム・オブクラバツムCBS 311.74、アクレモニウム・ピンケルトニエCBS 157.70、アクレモニウム・ロセオグリセウムCBS 134.56、アクレモニウム・インコロラツムCBS 146.62およびアクレモニウム・フラツムCBS 299.70Hから選択される株によって産生されるものが含まれる。セルロース分解酵素はクリソスポリウム、好ましくは、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)の株から得ることもできる。さらに、トリコデルマ(特に、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)およびトリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii))、好アルカリ性バチルス(例えば、米国特許第3,844,890号および欧州特許第458162号参照)およびストレプトミセス(例えば欧州特許第458162号参照)を用いることができる。
【0341】
適切なセロビアーゼとしては、NOVOZYME 188(商標)の商品名で販売されているアスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のセロビアーゼが挙げられる。
【0342】
商品名ACCELLERASE(登録商標)、例えばAccellerase(登録商標)1500酵素複合体としてGenencorから入手可能なものなどの酵素複合体を用いることができる。Accellerase(登録商標)1500酵素複合体は、主にエクソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ(2200-2800CMC U/g)、ヘミ−セルラーゼおよびβ-グルコシダーゼ(525-775pNPG U/g)といった複数の酵素活性を含有し、4.6から5.0のpHを有する。酵素複合体のエンドグルカナーゼ活性は、カルボキシメチルセルロース活性単位(CMC U)で表され、一方、β-グルコシダーゼ活性はpNP-グルコシド活性単位(pNPG U)で表される。ある態様において、Accellerase(登録商標)1500酵素複合体およびNOVOZYME(商標)188セロビアーゼの混合物が使用される。
【0343】
ゆえに、その他の態様が次の特許請求の範囲の範囲内となる。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年4月4日出願の米国特許仮出願第12/417,840号、2009年5月20日出願の米国特許出願第61/180,032号および2009年10月16日出願の米国特許仮出願第61/252,293号に対する優先権を主張する。これらの各特許仮出願の全開示は本明細書中で参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
セルロース系およびリグノセルロース系材料が多くの用途で大量に生産、加工および使用されている。このような材料は一度使用されると、廃棄物として捨てられるかまたは、例えば、汚水、バガス、おがくずおよびストーバーなど、単に廃棄物とみなされることが多い。
【0003】
様々なセルロース材料およびリグノセルロース材料、これらの使用ならびに用途が、米国特許第7,307,108号(特許文献1)、同第7,074,918号(特許文献2)、同第6,448,307号(特許文献3)、同第6,258,876号(特許文献4)、同第6,207,729号(特許文献5)、同第5,973,035号(特許文献6)および同第5,952,105号(特許文献7);ならびに2006年3月23日出願の「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648(特許文献8)および「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許出願公開第2007/0045456号(特許文献9)を含む様々な特許出願に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,307,108号
【特許文献2】同第7,074,918号
【特許文献3】同第6,448,307号
【特許文献4】同第6,258,876号
【特許文献5】同第6,207,729号
【特許文献6】同第5,973,035号
【特許文献7】同第5,952,105号
【特許文献8】2006年3月23日出願の「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648
【特許文献9】「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許出願公開第2007/0045456号
【発明の概要】
【0005】
概要
場合によって、プロセス中、例えば発酵中にバイオマスが存在することによって、低分子量の糖の中間体または生成物への変換が促進される。本発明者らは、低分子量の糖、培地、例えば溶媒または溶媒系、および微生物との混合物中にバイオマスを入れることによって、糖の、例えばエタノールまたはブタノールなどのアルコールへの変換により得られる中間体または生成物の収率および産生速度を向上させることができることを見出した。バイオマスを入れることによって、例えば発酵によって、不完全な、遅いまたは「足止め状態の」生成物変換を防ぐこともできる。
【0006】
バイオマスは、それ自身においては生成物(アルコールなど)に変換され得ないかまたは低分子量の糖とともに一部もしくは完全に生成物に変換され得る。
【0007】
バイオマスが一部変換される例において、バイオマスの表面積および気孔率が出発バイオマスの表面積および気孔率に相関して上昇し、これにより低分子量の糖から生成物への変換速度が有利に上昇し得る。
【0008】
一部の例では、バイオマスは、糖化されたセルロース系またはリグノセルロース系材料の残留物、例えば、リグニンおよび/またはセルロースが糖に変換された後に残留するその他の物質であり得る。
【0009】
ある局面において、本発明は、炭水化物、例えば低分子量の糖を生成物に変換するために、バイオマス材料、例えば官能化バイオマス繊維上に固定化されている微生物および/または酵素を使用することを含む方法を取り上げる。「固定化される」とは、微生物および/または酵素が、直接または間接的に(例えば化学リンカーを通じて)、例えば、微生物とバイオマス材料、例えば繊維の孔との間の、共有、水素、イオンまたは同等の結合によって、および/または機械的な相互作用によって繊維に結合されることを意味する。例えばバイオマス材料を電気的に極性化することによって結合を生成させ得る。この相互作用は、永久的、半永久的または一瞬であり得る。機械的相互作用には、バイオマス材料の孔または他の部位と入れ子状になっているかまたはそれに密着している微生物または酵素が含まれ得る。
【0010】
一部の実施には1以上の次の特性が含まれる。
【0011】
変換には、微生物が低分子量の糖の少なくとも一部をアルコール、例えばエタノールもしくはブタノールなど、または炭化水素もしくは水素に変換できるようにすることを含み得る。変換には発酵が含まれ得る。微生物には、酵母、例えば、S.セレビシエ(S.cerevisiae)および/またはP.スチピチス(P.stipitis)または細菌、例えばザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)が含まれ得る。本方法は、例えば電離放射線で、例えば粒子ビームを用いてバイオマス繊維を照射することをさらに含み得る。バイオマス繊維は、0.25m2/gを超えるBET表面積および/または少なくとも70%の気孔率を有し得る。バイオマス繊維は、内部繊維を有しておりこの内部繊維が実質的に露出される程度に剪断されているバイオマス材料由来であり得る。
【0012】
別の局面において、本発明は、極性官能基を有するバイオマス材料と、相補的な引力性の官能基を有する微生物と、液体培地とを含む混合物を取り上げる。
【0013】
さらなる局面において、本発明は、官能基を有するバイオマス繊維および相補的な引力性の官能基を有する微生物を含み、この微生物がバイオマス繊維上に固定化されている組成物を取り上げる。
【0014】
本発明はまた、バイオマスと、微生物と、溶媒または溶媒系(例えば、水または水と有機溶媒の混合液)との混合物において、低分子量の糖または低分子量の糖を含む材料を生成物に変換することを含む方法も取り上げる。溶媒または溶媒系の例としては、水、ヘキサン、ヘキサデカン、グリセロール、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、石油エーテル、液化石油ガス(LPG)、イオン液体およびそれらの混合物が挙げられる。この溶媒または溶媒系は単相または2以上の相の形態であり得る。バイオマスは例えば繊維形態であり得る。
【0015】
ある例において、生成物の産生中にバイオマス材料(例えば、本明細書中に記載の何れかの方法で処理されているかまたは未処理のもの)が存在することによって、生成物の産生速度が上昇し得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、固体、例えば表面積が大きいおよび/または気孔率が高い固体などが存在すると、溶質の有効濃度が向上し、反応が起こり得る基質が提供されることによって、反応速度が上昇し得ると考えられている。
【0016】
ある態様において、照射され、酸化され、化学的に処理され、機械的に処理され、超音波処理され、蒸気爆発に供されおよび/または熱分解されたバイオマス材料を低分子量の糖の発酵プロセスに添加して、例えば発酵速度および産出量を向上させることができる。
【0017】
例えば、照射済みまたは未照射の、紙繊維などのバイオマス材料を発酵過程に、例えばトウモロコシ-エタノール発酵またはサトウキビ抽出物発酵中などに添加して、少なくとも10、15、20、30、40、50、75、100%以上、例えば少なくとも150%またはさらに最大で1000%、産生速度を上昇させることができる。変換、例えば発酵は、少なくとも140%、場合により少なくとも170%という、本明細書中の実施例で定義されるとおりの%パフォーマンスを示し得る。
【0018】
バイオマス材料は、表面積が大きく、気孔率が高くおよび/またはかさ密度が低いものであり得る。ある態様において、バイオマスは、約0.5重量%から約50重量%の間、例えば約1重量%から約25重量%の間または約2重量%から約12.5重量%の間で混合物中に存在する。その他の態様において、バイオマスは、約0.5重量%より多い量、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9重量%よりも多い量またはさらには約10重量%よりも多い量、存在する。
【0019】
変換過程中にバイオマス材料それ自身は消費されないので、複数回の回分プロセスでこのバイオマス材料を再使用できるかまたは比較的大量の生成物の産生のために連続的に使用することができる。
【0020】
一部の実施には1以上の次の特性が含まれる。本方法は、混合前に、例えば電離放射線で、例えば少なくとも5Mradの総線量で、繊維状バイオマスに照射することを含み得る。照射は粒子ビームを用いて実施することができる。バイオマスの分子量を低下させるように選択された条件下で照射を行い得る。照射を複数回適用して照射を行うことができる。電離放射線には、電子線照射が含まれ得る。例えば、約10Mradから約150Mradの間の総線量、例えば約0.5から約10Mrad/日または1Mrad/sから約10Mrad/sの線量率などで、照射を適用することができる。ある態様において、照射には、ガンマ線および電子線などの2以上の線源を適用することが含まれる。
【0021】
ある態様において、バイオマス原料において照射が行われ、同時にバイオマス原料は、大気、窒素、酸素、ヘリウムまたはアルゴンに曝露される。ある態様において、前処理には、蒸気爆発でバイオマス原料を前処理することが含まれ得る。
【0022】
ある態様において、本方法は、例えばバイオマスの個々の小片の1以上の寸法を縮小することによって、例えば剪断するか、石臼研削(stone grinding)するか、機械的に剥離もしくは引裂するか、ピン研削するか、湿式もしくは乾式研削するか、エアーアトリッションミルで処理するか、切断するか、搾取するか、圧縮するかまたはこれらのプロセスの何れかを組み合わせることによって、バイオマスを機械的に処理することを含む。ある場合において、機械的処理後、バイオマスは、長さと直径の比の平均が5/1よりも大きい繊維を含む。ある態様において、調製したバイオマスのBET表面積は0.25m2/gよりも大きいものであり得る。機械的に処理したバイオマスのかさ密度は、約0.5g/cm3未満、例えば0.35g/cm3未満であり得る。
【0023】
本明細書中で開示される方法の何れにおいても、ボールト内にある装置から照射を適用し得る。
【0024】
別段の定めがない限り、本明細書中で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において本明細書中に記載のものと同様のまたは同等の方法および材料を使用することができるが、適切な方法および材料は下記で記載する。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、その全体において参照により組み入れられる。不一致がある場合、定義を含め、本明細書が優先する。さらに、材料、方法および実施例は単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0025】
本発明のその他の特性および長所は以下の詳細な説明から明らかとなり、特許請求の範囲を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】バイオマスの処理および発酵過程での処理済みバイオマスの使用を示すブロック図である。
【図2】微生物と相互作用する官能化バイオマスの概略図である。
【図3】ロータリーナイフカッターで剪断したクラフトボール紙の赤外線スペクトルである。
【図4】100Mradのガンマ線で照射した後の図3のクラフト紙の赤外線スペクトルである。
【図5】図5A〜5Iは、実施例13の試料P132、P132-10、P132-100、P-1e、P-5e、P-10e、P-30e、P-70eおよびP-100eの1H-NMRスペクトルである。図5Jは、図5A〜5Iからの〜16ppmでの交換性プロトンの比較である。図5Kは、試料P-100eの13C-NMRである。図5L〜5Mは、遅延時間10秒の試料P-100eの13C-NMRである。図5Nは、10%wt./wt.濃度の試料P-100eの1H-NMRである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本明細書中に記載の方法を用いて、カルボン酸基、エノール基、アルデヒド基、ケトン基、ニトリル基、ニトロ基またはニトロソ基などの官能基の所望のタイプおよび量を有する官能化バイオマス材料を調製することができる。このような官能化材料は、例えば発酵プロセス中、低分子量の糖の生成物への変換を促進し得る。
【0028】
バイオマスの種類
本明細書中に記載のプロセスでの使用に好ましいバイオマス材料は、糖の変換において使用しようとする、例えば酵母などの微生物といった作用物質上の官能基と相補的である官能基で官能化することができる繊維を含有する。
【0029】
繊維の供給源としては、紙および紙製品(例えばポリコート紙およびクラフト紙)を含むセルロース系繊維供給源および、木材および木材関連材料(例えば削片板)を含むリグノセルロース系繊維供給源が挙げられる。他の適切な繊維供給源としては、天然繊維供給源(例えば、草、もみ殻、バガス、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザルアサ、マニラアサ、藁、スイッチグラス、アルファルファ、乾草、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、ココナツヘア)、α-セルロース含量が高い繊維供給源(例えば綿花)、および合成繊維供給源(例えば押出糸(延伸糸または非延伸糸))が挙げられる。天然または合成繊維供給源は、バージンスクラップ織物材料、例えば残留物から得ることができるか、またはそれらは使用済み廃棄物(例えばぼろ切れ)であり得る。紙製品を繊維供給源として使用する場合、それらはバージン材料、例えば、スクラップバージン材料であり得、それらは使用済み廃棄物であり得る。バージン原料とは別に、使用済み廃棄物、産業廃棄物(例えばくず)および加工廃棄物(例えば紙加工からの廃水)も繊維供給源として用いることができる。繊維の供給源はまた、ヒト廃棄物(例えば下水)、動物廃棄物または植物廃棄物から得ることもでき、それに由来し得る。さらなる繊維供給源は、米国特許第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号および同第5,952,105号に記載されている。
【0030】
ある態様において、バイオマス材料は、1以上のβ-1,4結合を有し、約3,000から50,000の間の数平均分子量を有する材料であるかまたはこのような材料を含む炭水化物を含む。このような炭水化物は、β(1,4)-グリコシド結合の縮合を通じた(β-グルコース1)由来のセルロース(I)であるかまたはこれを含む。この結合はそれ自身、デンプンおよびその他の炭水化物に存在するα(1,4)-グリコシド結合に対するものと対照をなす。
【0031】
デンプン材料としては、デンプンそのもの、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、ジャガイモデンプンもしくはコメデンプンなど、デンプンの誘導体またはデンプンを含む材料、例えば食品もしくは食用作物が挙げられる。例えば、デンプン材料は、アラカチャ、ソバ、バナナ、オオムギ、キャッサバ、葛、オカ、サゴヤシ、モロコシ、一般的な家庭用ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、ヤムイモまたは1以上のマメ類、例えば、ソラマメ、レンズマメもしくはエンドウマメであり得る。何らかの2以上のデンプン材料の混合物もデンプン材料である。
【0032】
ある場合において、バイオマスは微生物材料である。微生物供給源としては、炭水化物供給源(例えばセルロース)を含有するかまたは提供することができる、何らかの天然のまたは遺伝子組み換えされた微生物または生物、例えば、原生生物、例えば動物原生生物(例えば、鞭毛虫、アメーバ、繊毛虫および胞子虫などの原生動物)および植物原生生物(例えば、アルベオラータ、クロララクニオン、クリプト藻類、ミドリムシ目、灰色植物、ハプト藻、赤色藻類、ストラメノパイルおよび緑色植物亜界などの藻類)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、海藻、プランクトン(例えば、マクロプランクトン、メソプランクトン、ミクロプランクトン、ナノプランクトン、ピコプランクトンおよびフェムトプランクトン)、植物プランクトン、細菌(例えばグラム陽性細菌、グラム陰性細菌および特殊環境生物)、酵母および/またはそれらの混合物が挙げられる。場合によっては、微生物バイオマスは、天然供給源、例えば、海洋、湖、複数の水域、例えば海水または淡水から得るかまたは陸から得ることができる。あるいはまたはさらに、微生物バイオマスは、培養系、例えば大規模な乾式および湿式培養系から得ることができる。
【0033】
本明細書中に記載の何らかの中間体または生成物を生成させるために、本明細書中に記載の何らかのバイオマス材料の混合物を使用することができる。例えば、本明細書中に記載の何らかの生成物を生成させるために、セルロース系材料およびデンプン系材料の混合物を使用することができる。
【0034】
発酵において、バイオマスを処理し、処理したバイオマスを使用するためのシステム
図1はバイオマス、特に繊維状バイオマスを処理し、次いで処理したバイオマスを用いて発酵プロセスを促進するためのシステム100を示す。システム100には、バイオマス原料が機械的に処理される、例えば原料の内部繊維を曝露させる、モジュール102が含まれる。機械的処理の例は下記で詳述する。システム100は、機械的に処理した原料が例えば照射により官能化されるモジュール104も含む。官能化後、官能化繊維は、送達モジュール108によって発酵システム106に送り込まれる。
【0035】
次に、官能化繊維は発酵中に存在し、発酵で使用される微生物(例えば酵母細胞)と相互作用できる基質を提供することによって発酵プロセスを促進する。この相互作用は、相補的な極性官能基を有する官能化極性繊維10および酵母細胞12を示す図2で概略的に示される。繊維および酵母細胞の極性ゆえに、酵母細胞は1以上の繊維に固定化されるようになり得る。酵母細胞(またはその他の微生物)の繊維への結合は、水素結合によるかまたは共有もしくはイオン結合によるものであり得る。場合によっては、繊維上の官能基は、微生物上の官能基と反応し得、共有結合を形成する。機械的処理(例えばモジュール102において)の結果、バイオマス材料の表面積および気孔率が大きくなると、繊維および微生物の相互作用のための表面積が大きくなり、従ってこの相互作用が促進される。固定化細胞はより生産性が高く、発酵プロセスの効率および収率を向上させ、このプロセスが未熟なまま「足止めされる」事態を回避させる。
【0036】
発酵中に混合が行われる場合、この混合は、微生物と繊維との間の相互作用の妨害が最小限になるように、好ましくは比較的穏やかなもの(低剪断)であることに留意されたい。ある態様において、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第61/218,832号および同第61/179,995号に記載のように、噴流混合が使用される。
【0037】
再び図1を参照して、発酵により粗製エタノール混合物が産生され、これが貯蔵タンク110に流れ込む。ストリップ塔112を用いて、水またはその他の溶媒およびその他の非エタノール成分を粗製エタノール混合物から揮散させ、次に蒸留ユニット114、例えば精留塔を用いてエタノールを蒸留する。最後に、分子ふるい116を用いてエタノールを乾燥させ、必要に応じて変性させ、所望の輸送方法に対して産出することができる。
【0038】
場合によって、本明細書中に記載のシステムまたはその部品は携帯可能であり得、従ってある場所から別の場所にこのシステムを輸送することができる(例えば鉄道、トラックまたは船舶による)。1以上の場所で本明細書中に記載の方法工程を行うことができ、場合によって、輸送中に1以上の工程を行うことができる。このような可動式処理は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/374,549号および国際公開公報第2008/011598号に記載されている。
【0039】
周囲温度で本明細書中に記載の方法工程の何れかまたは全てを行うことができる。必要に応じて、ある種の工程中に冷却および/または加熱を使用し得る。例えば、脆度を向上させるために機械的処理中に原料を冷却し得る。ある態様において、最初の機械的処理および/またはその後の機械的処理の、前、その間またはその後に、冷却を使用する。全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/502,629号に記載のように冷却を行い得る。さらに、発酵を促進するために、発酵システム106中の温度を調節し得る。
【0040】
物理的処理
バイオマス材料の形態を変化させるためにおよび/または材料を官能化するために使用され得る物理的プロセスは、機械的処理、化学的処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発などの本明細書中に記載の何らかの1以上を含み得る。2、3、4またはさらに全てのこれらの技術(順序は問わず。)の組み合わせで処理方法を使用することができる。複数の処理方法を使用する場合、同時にまたは異なる時間にこれらの方法を適用することができる。バイオマス原料を官能化するおよび/またはその形態を変化させるその他の処理も、単独でまたは本明細書中に記載の処理と組み合わせて使用することができる。
【0041】
機械的処理
場合によっては、バイオマス原料を機械的に処理することが方法に含まれ得る。機械的処理としては、例えば、切断、粉砕、圧搾、研削、剪断および細切が含まれる。粉砕には、例えば、ボールミル粉砕、ハンマーミル粉砕、ローター/ステーター乾式粉砕もしくは湿式粉砕または他のタイプの粉砕が含まれ得る。他の機械的処理としては、例えば、石臼研削、粗砕、機械的剥離もしくは引裂、ピン研削またはエアーアトリッションミル粉砕が挙げられる。
【0042】
機械的処理は、セルロース系材料またはリグノセルロース系材料を「切り開き」、「力を加え」、破壊し、破砕するのに有利になることがあり、これらによって、材料のセルロースは、鎖が切断され易くなりおよび/または結晶化度が低くなる。切り開かれた材料は、照射時に酸化されやすくなっている場合もある。
【0043】
場合によっては、機械的処理には、受領されたとおりの原料の初期調製、例えば、切断、研削、剪断、微粉砕または細切などによる材料のサイズ縮小化も含み得る。例えば、場合によっては、剪断または細断によって、疎性原料(例えば再生紙、デンプン材料またはスイッチグラス)が調製される。
【0044】
あるいはまたはさらに、原材料は、最初に他の物理的処理方法、例えば、化学処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発の1以上によって物理的に処理され、次いで機械的に処理され得る。照射または熱分解などの他の処理の1以上で処理した材料はより脆くなる傾向があり、従って、機械的処理によって材料の分子構造をさらに変化させることがより容易になり得るので、この一連の処理は有利になることがある。
【0045】
ある態様において、バイオマス材料は繊維性であり、機械的処理には、繊維材料の繊維を曝露させるための剪断が含まれる。剪断は、例えば、ロータリーナイフカッターを用いて行うことができる。バイオマスを機械的に処理する他の方法としては、例えば、粉砕または研削が挙げられる。粉砕は、例えば、ハンマーミル、ボールミル、コロイドミル、コニカルミルもしくはコーンミル、ディスクミル、エッジミル、ウイレーミルまたはグリストミルを用いて行われ得る。研削は、例えば、石材グラインダー、ピン研削盤、コーヒーグラインダーまたはバーグラインダーを用いて行われ得る。研削は、ピンミルの場合と同様に、例えば、往復ピンまたは他の部品によって行われ得る。他の機械的処理法としては、機械的剥離または引裂、繊維に加圧するその他の方法およびエアーアトリッションミル粉砕が挙げられる。適切な機械的処理は、バイオマス材料の分子構造または形態を変化させる何らかのその他の技術をさらに含む。
【0046】
必要に応じて、機械的に処理した材料を、例えば平均開口径が1.59mm以下(1/16インチ、0.0625インチ)のふるいに通すことができる。ある態様において、剪断または他の機械的処理およびふるいによる処理が同時に行われる。例えば、ロータリーナイフカッターを用いて、バイオマス材料の剪断および選別を同時に行うことができる。バイオマスを固定ブレードと回転ブレードとの間で剪断して、剪断材料を得て、これをふるいに通し、容器に回収する。
【0047】
バイオマス材料は、乾燥した状態(例えば、その表面上に自由水が殆どないかまたは全くない状態)、水和した状態(例えば10重量%以下の水を吸収した状態)または例えば約10重量%から約75重量%の水を有する湿潤状態で機械的に処理することができる。繊維材料は、水、エタノールまたはイソプロパノールなどの液体下に部分的にまたは完全に浸漬させながら機械的に処理することもできる。バイオマス材料はまた、気体(空気以外の気流または雰囲気など)、例えば酸素もしくは窒素または蒸気の下で機械的に処理することもできる。
【0048】
機械的処理システムは、具体的な形態的特徴、例えば、表面積、気孔率、かさ密度など、繊維性原料の場合、縦横比といった繊維の特徴などを有する傾向を生じるように構成することができる。
【0049】
ある態様において、機械的に処理した材料のBET表面積は、0.1m2/g超、例えば0.25m2/g超、0.5m2/g、超1.0m2/g、超1.5m2/g超、1.75m2/g超、5.0m2/g超、10m2/g超、25m2/g超、35m2/g超、50m2/g超、60m2/g超、75m2/g超、100m2/g超、150m2/g超、200m2/g超またはさらには250m2/g超である。
【0050】
機械的に処理した材料の気孔率は、例えば20%超、25%超、35%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、92%超、94%超、95%超、97.5%超、99%超またはさらには99.5%超であり得る。
【0051】
ある態様において、機械的処理後に、材料のかさ密度は、0.25g/cm3未満、例えば0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3以下のかさ密度、例えば0.025g/cm3である。かさ密度は、ASTM D1895Bを用いて測定される。簡単に述べると、この方法は、体積が既知のメスシリンダーに試料を満たし、試料の重量を得ることを含む。かさ密度は、試料の重量グラムを、メスシリンダーの既知体積、立方センチメートルで割ることによって計算される。
【0052】
バイオマスが繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維は、複数回剪断されても、比較的大きな(例えば、20:1を超える)平均長さ対直径比を有し得る。さらに、本明細書中に記載の繊維性材料の繊維は、長さおよび/または長さ対直径比の比較的狭い分布を有し得る。
【0053】
本明細書中で使用される場合、平均繊維幅(例えば直径)とは、およそ5,000本の繊維を無作為に選択することによって光学的に測定されるものである。平均繊維長は、補正済みの長さ加重長(length-weighted length)である。BET(Brunauer,Emmet and Teller)表面積は多点表面積であり、気孔率は水銀ポロシメトリーによって測定されるものである。
【0054】
バイオマスが繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維の平均長さ対直径比は、例えば、8/1超、例えば10/1超、15/1超、20/1超、25/1超または50/1超であり得る。機械的に処理した材料の平均繊維長は、例えば約0.5mmから2.5mmの間、例えば約0.75mmから1.0mmの間であり得、第二の繊維材料14の平均幅(例えば直径)は、例えば約5μmから50μmの間、例えば約10μmから30μmの間であり得る。
【0055】
ある態様において、バイオマスが繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維長の標準偏差は、機械的に処理した材料の平均繊維長の60%未満、例えば平均長の50%未満、平均長の40%未満、平均長の25%未満、平均長の10%未満、平均長の5%未満またはさらには平均長の1%未満であり得る。
【0056】
ある状況において、低かさ密度材料を調製し、(例えば、別の場所への輸送を容易にし、コストを削減するために)その材料を高密度化し、次いでその材料をより低いかさ密度状態に戻すことが所望され得る。本明細書中に記載の方法の何れかによって高密度化材料を処理することができるかまたは、例えば、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/429,045号および国際公開公報第2008/073186号で開示されるように、本明細書中に記載の方法の何れかによって処理した何らかの材料を続いて高密度化することができる。
【0057】
照射処理
バイオマスを加工するために、例えば材料を官能化するために、1以上の一連の照射処理を使用することができる。放射線は、材料または材料をバイオプロセス処理するのに必要とされる何らかの媒体を滅菌することもできる。
【0058】
ある態様において、材料に照射するために、その原子軌道から電子を放出する物質に蓄積するエネルギーを使用する。放射線は、1)重荷電粒子、例えばα粒子もしくはプロトン、2)電子、例えばβ崩壊もしくは電子線加速器において生じるものまたは3)電磁放射線、例えば、γ線、x線もしくは紫外線によって供給され得る。あるアプローチにおいて、放射性物質によって生じる放射線を用いて、原料に照射することができる。別のアプローチにおいて、(例えば電子線エミッターを用いて生じた)電磁放射線を用いて、原料に照射することができる。ある態様において、(1)から(3)の何らかの組み合わせをあらゆる順序でまたは同時に使用することができる。適用される線量は、所望の効果および特定の原料に依存する。
【0059】
ある例において、鎖の切断が所望されるおよび/またはポリマー鎖の官能基化が所望される場合、電子より重い粒子、例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンなどを使用することができる。開環型の鎖切断が望ましい場合、開環型の鎖切断を促進するために、正荷電粒子をそのルイス酸特性ゆえに使用することができる。例えば、最大酸化が望ましい場合、酸素イオンを使用することができ、最大ニトロ化が望ましい場合、窒素イオンを使用することができる。重粒子および正荷電粒子の使用は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/417,699号に記載されている。
【0060】
ある1つの方法において、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースであるかまたは、これを含む第一の材料に、例えば電離放射線(例えば、γ線放射、X線放射、100nmから280nm紫外線(UV)光、電子線または他の荷電粒子の形態)での処理によって照射し、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。第二の材料(または第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/または第一の材料またはその構成糖もしくはリグニンを用いて本明細書中に記載のものなどの中間体または生成物を産生することができる微生物と(酵素処理を行いまたは酵素処理せずに)組み合わせることができる。
【0061】
第二の材料は、第一の材料と比較して分子量が小さく、場合によっては、結晶化度も小さいセルロースを含むので、第二の材料は、例えば微生物および/または酵素を含有する溶液中での、分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。これらの特性により、第二の材料は、第一の材料と比較して、加工し易く、化学的、酵素的および/または生物学的攻撃の影響を受け易くなり、このために、所望の産物、例えば、エタノールの産生速度および/または産生レベルを大幅に改善することができる。
【0062】
ある態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0063】
場合によっては、第二の材料は、結晶化度(C2)が、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)よりも低いセルロースを含む。例えば、(C2)は、(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40%超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0064】
ある態様において、出発結晶化度指数(照射前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、照射後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な照射後には、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、照射後の材料は実質的に非晶質である。
【0065】
ある態様において、出発数平均分子量(照射前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、照射後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な照射後、数平均分子量が約10,000未満またはさらには約5,000未満となり得る。
【0066】
ある態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くなり得る。材料の酸化レベルが高いと、その分散性、膨張性および/または溶解性が高くなり得、さらに、化学的、酵素的または生物学的攻撃に対する材料の感受性が強化される。ある態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境下で、例えば大気または酸素下で照射が行われ、第一の材料より酸化度が高い第二の材料が生成される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基をより多く有し得、これにより材料の親水性が高くなり得る。
【0067】
電離放射線
各種放射線は、放射線のエネルギーにより決定されるような特定の相互作用を介して炭素含有材料をイオン化する。重荷電粒子は、主に、クーロン散乱を介して物質をイオン化し、さらに、これらの相互作用によって、物質をさらにイオン化し得る高エネルギー電子が発生する。α粒子はヘリウム原子の核と同一であり、様々な放射性核、例えばビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、一部のアクチニド、例えばアクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリホルニウム、アメリシウムおよびプルトニウムの同位体など、のα崩壊によって発生する。
【0068】
粒子が用いられる場合、それらは、中性(無電荷)であり得るか、正に荷電し得るかまたは負に荷電し得る。荷電している場合、荷電粒子は単一の正電荷もしくは負電荷または多重電荷、例えば、1、2、3またはさらには4以上の電荷を有し得る。鎖の切断が望ましい場合、正荷電粒子が望ましい場合があるが、1つにはそれが酸性であるためである。粒子が用いられる場合、粒子は、静止電子質量以上の質量、例えば、静止電子質量の500、1000、1500、2000、10,000またはさらには100,000倍の質量を有し得る。例えば、粒子は、約1原子単位から約150原子単位、例えば、約1原子単位から約50原子単位または約1から約25、例えば、1、2、3、4、5、10、12または15amuの質量を有し得る。粒子を加速するために使用される加速器は、静電気学的DC、電気力学的DC、RF線形、磁気誘導線形波または連続波であり得る。例えば、サイクロトロン型加速器は、Rhodatron(登録商標)システムなど、IBA、Belgiumから入手可能であり、一方、DC型加速器は、Dynamitron(登録商標)など、RDI、現IBA Industrialから入手可能である。イオンおよびイオン加速器は、Introductory Nuclear Physics, Kenneth S.Krane, John Wiley & Sons, Inc.(1988)、Krsto Prelec, FIZIKA B6(1997)4, 177-206, Chu, William T.「Overview of Light-Ion Beam Therapy」, Columbus-Ohio, ICRU-IAEA Meeting、18-20 March 2006, Iwata,Y.ら「Alternating-Phase-Focused IH-DTL for Heavy-Ion Medical Accelerators」Proceedings of EPAC 2006, Edinburgh, ScotlandおよびLeaner,CM.ら「Status of the Superconducting ECR Ion Source Venus」Proceedings of EPAC 2000, Vienna、Austriaで考察されている。
【0069】
ガンマ線には、様々な材料への透過深度が大きいという利点がある。ガンマ線源には、放射性核、例えば、コバルト、カルシウム、テクニチウム(technicium)、クロム、ガリウム、インジウム、ヨウ素、鉄、クリプトン、サマリウム、セレン、ナトリウム、タリウムおよびキセノンの同位体などが含まれる。
【0070】
x線源としては、金属標的、例えばタングステンもしくはモリブデンまたは合金を用いた電子線衝突または小型光源、例えばLynceanにより製造販売されているものが挙げられる。
【0071】
紫外線源としては、重水素ランプまたはカドミウムランプが挙げられる。
【0072】
赤外線源としては、サファイア、亜鉛またはセレン化物ウィンドーセラミックランプが挙げられる。
【0073】
マイクロ波源としては、クライストロン、Slevin型RF源または水素、酸素もしくは窒素ガスを用いる原子線源が挙げられる。
【0074】
ある態様において、電子線が線源として使用される。電子線には、線量率が高く(例えば、1、5またはさらには10Mrad/秒)、ハイスループットであり、閉じ込めが少なく、閉じ込め装置が小さいという長所がある。電子はまた、鎖切断を引き起こすことにおいても有効性が高い。さらに、4〜10MeVのエネルギーを有する電子は、5から30mm以上、例えば40mmの透過深度を有し得る。
【0075】
電子線は、例えば静電起電機、カスケード起電機、変圧起電機、スキャニングシステム付きの低エネルギー加速器、リニアカソード付きの低エネルギー加速器、線形加速器およびパルス加速器によって発生させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば、材料の比較的薄い切片、例えば0.5インチ未満、例えば0.4インチ、0.3インチ、0.2インチ未満または0.1インチ未満のものに対して有用になることがある。ある態様において、電子線の各電子のエネルギーは、約0.3MeVから約2.0MeV(百万電子ボルト)、例えば約0.5MeVから約1.5MeVまたは約0.7MeVから約1.25MeVである。
【0076】
電子線照射装置は、Ion Beam Applications, Louvain-la-Neuve, BelgiumまたはTitan Corporation, San Diego, CAから製造販売されている。代表的な電子エネルギーは、1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeVまたは10MeVであり得る。代表的な電子線照射装置の出力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kWまたは500kWであり得る。原料の脱重合レベルは、使用される電子エネルギーおよび適用される線量に依存し、一方で曝露時間は出力および線量に依存する。代表的な線量は、1kGy、5kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGyまたは200kGyの値をとり得る。
【0077】
イオン粒子線
本明細書中に記載のバイオマス材料の何れかに照射するために、電子より重い粒子を使用することができる。例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンを使用することができる。ある態様において、電子より重い粒子は(電子より軽い粒子と比較して)多量の鎖切断を誘導し得る。場合によっては、正荷電粒子は、その酸性度により、負荷電粒子より多量の鎖切断を誘導し得る。
【0078】
より重い粒子線は、例えば、線形加速器またはサイクロトロンを用いて発生させることができる。ある態様において、粒子線の各粒子のエネルギーは、約1.0MeV/原子単位から約6,000MeV/原子単位、例えば、約3MeV/原子単位から約4,800MeV/原子単位または約10MeV/原子単位から約1,000MeV/原子単位である。
【0079】
ある一定の態様において、炭素含有材料、例えば、バイオマス材料に照射するために使用されるイオンビームは、複数のタイプのイオンを含み得る。例えば、イオンビームは、2種類以上(例えば3種類、4種類以上)の異なるタイプのイオンの混合物を含み得る。代表的な混合物は、炭素イオンおよびプロトン、炭素イオンおよび酸素イオン、窒素イオンおよびプロトンならびに鉄イオンおよびプロトンを含み得る。広く一般に、照射イオンビームを形成するために、上記のイオンの何れか(または他の何らかのイオン)の混合物を使用することができる。特に、単イオンビームにおいて比較的軽いイオンおよび比較的重いイオンの混合物を使用することができる。
【0080】
ある態様において、材料に照射するためのイオンビームには、正荷電イオンが含まれる。正荷電イオンは、例えば、正荷電水素イオン(例えばプロトン)、希ガスイオン(例えばヘリウム、ネオン、アルゴン)、炭素イオン、窒素イオン、酸素イオン、ケイ素原子、リンイオンおよび金属イオン、例えばナトリウムイオン、カルシウムイオンおよび/または鉄イオンなどを含み得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、このような正荷電イオンは、材料に曝露されるとルイス酸部分として化学的に挙動し、酸化環境下で陽イオン性の開環型の鎖切断反応を開始し、持続すると考えられている。
【0081】
ある一定の態様において、材料に照射するためのイオンビームには、負荷電イオンが含まれる。負荷電イオンは、例えば、負荷電水素イオン(例えば水素化物イオン)および比較的電気陰性度が高い様々な核の負荷電イオン(例えば酸素イオン、窒素イオン、炭素イオン、ケイ素イオンおよびリンイオン)を含み得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、このような負荷電イオンは、材料に曝露されるとルイス塩基部分として化学的に挙動し、還元環境下で陰イオン性の開環型の鎖切断反応を引き起こすと考えられている。
【0082】
ある態様において、材料に放射線照射するためのビームには中性原子が含まれ得る。例えば、バイオマス材料の照射に用いられるビームには、水素原子、ヘリウム原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ネオン原子、ケイ素原子、リン原子、アルゴン原子および鉄原子の何れか1以上が含まれ得る。一般に、上記のタイプの原子の何れか2以上(例えば、3以上、4以上またはそれ以上)の混合物がビームに存在し得る。
【0083】
ある一定の態様において、材料に照射するために用いられるイオンビームには、単一電荷イオン、例えばH+、H-、He+、Ne+、Ar+、C+、C-、O+、O-、N+、N-、Si+、Si-、P+、P-、Na+、Ca+およびFe+の1以上が含まれる。ある態様において、イオンビームは、多電荷イオン、例えば、C2+、C3+、C4+、N3+、N5+、N3-、O2+、O2-、O22-、Si2+、Si4+、Si2-およびSi4-の1以上などを含み得る。一般に、イオンビームはまた、複数の正電荷または負電荷を有する、より複雑な多核イオンを含み得る。ある特定の態様において、多核イオンの構造によって、正電荷または負電荷は、イオンの構造の実質的に全体にわたり有効に分布し得る。いくつかの態様において、正電荷または負電荷は、イオンの構造の一部分にわたり、幾分局在し得る。
【0084】
電磁放射線
電磁放射線で照射が行われる態様において、電磁放射線は、例えば、102eVを超える、例えば103、104、105、106またはさらには107eVを超える、エネルギー/光子(電子ボルト)を有し得る。ある態様において、電磁放射線は、104から107eVの間、例えば105から106eVの間のエネルギー/光子を有する。電磁放射線は、例えば、1016hzを超える、1017hz、1018、1019、1020hzを超えるかまたはさらに1021hzを超える周波数を有し得る。ある態様において、電磁放射線は、1018から1022hzの間、例えば1019から1021hzの間の周波数を有する。
【0085】
バイオマスのクエンチングおよび官能化制御
電離放射線での処理後、本明細書中に記載の材料または混合物の何れかがイオン化され得;即ち、処理済みの材料は、電子スピン共鳴分光器で検出可能であるレベルでラジカルを含み得る。イオン化バイオマスが大気中に残留する場合、それは、例えば大気中の酸素と反応することによってカルボン酸基が産生される程度に酸化されよう。ある材料での例において、このような酸化は炭水化物含有バイオマスの分子量のさらなる分解を促進し得、酸化基、例えばカルボン酸基は、場合によっては溶解性および微生物利用性を高め得るので、このような酸化が所望される。しかし、照射後、ラジカルは、しばらくの間、例えば、1日、5日、30日、3ヶ月、6ヶ月より長くまたはさらに1年より長く「生きて」いることができるので、材料の特性が経時的に変化し続ける可能性があり、場合によってこれは望ましくないことがある。従って、イオン化材料をクエンチングすることが所望され得る。
【0086】
イオン化後、イオン化バイオマス中のラジカルレベルを低下させるために、例えばラジカルが電子スピン共鳴分光器で検出可能とならないように、イオン化されている何らかのバイオマス材料をクエンチングすることができる。例えば、バイオマスに十分な圧力を与えることによっておよび/または、ラジカルと反応する(クエンチングする)気体または液体など、イオン化バイオマスと接触させて流体を使用することによって、ラジカルをクエンチングすることができる。ラジカルのクエンチングを少なくとも促進するために気体または液体を用いて、所望の量および種類の官能基、例えばカルボン酸基、エノール基、アルデヒド基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、クロロアルキル基またはクロロフルオロアルキル基などでイオン化バイオマスを官能化することができる。
【0087】
場合によっては、このようなクエンチングは、一部のイオン化バイオマス材料の安定性を向上させ得る。例えば、クエンチングによって、酸化に対するバイオマスの耐性が向上し得る。クエンチングによる官能化によって、本明細書中に記載のあらゆるバイオマスの溶解性も向上し得、その温度安定性が向上し得、様々な微生物による材料利用性が向上し得る。例えば、クエンチングによってバイオマス材料に与えられる官能基は、例えば、様々な微生物によるセルロース加水分解を促進するための、微生物による結合に対する受容体部位として作用し得る。
【0088】
ある態様において、クエンチングは、例えばバイオマスを機械的に変形させること(例えば1、2または3方向でバイオマスを機械的に直接圧縮するかまたはバイオマスが浸漬されている流体に加圧すること(例えば静水圧プレス成形))などによって、バイオマスに加圧することを含む。このような場合、材料それ自身の変形によってラジカルが生じ、これは、ラジカルが別の基と再結合するかまたは反応できるよう十分に近接近して結晶性ドメインにおいて捕捉されることが多い。場合によっては、リグニン、セルロースまたはヘミセルロースなどのバイオマスの成分の融点または軟化点以上までバイオマスの温度を上昇させるよう十分な熱量など、加熱しながら加圧する。熱は物質中の分子運動性を向上させ得るが、これは、ラジカルのクエンチングを促進し得る。クエンチングするために圧力が使用される場合、その圧力は、約1000psi超、例えば約1250psi、1450psi、3625psi、5075psi、7250psi、10000psi超またはさらには15000psi超であり得る。
【0089】
ある態様において、クエンチングは、バイオマスを液体または気体などの流体と接触させることを含み、例えば、気体は、アセチレンまたは、窒素、エチレン、塩化エチレンもしくはクロロフルオロエチレン中のアセチレンの混合物、プロピレンまたはこれらの気体の混合物など、ラジカルと反応可能な気体である。その他の特定の態様において、クエンチングは、液体、例えばバイオマス中で可溶性であるかまたは少なくとも浸透可能であり、ラジカル(例えば1,5-シクロオクタジエンなどのジエン)と反応可能である液体とバイオマスを接触させることを含む。ある具体的な態様において、クエンチングは、バイオマスをビタミンEなどの抗酸化剤と接触させることを含む。必要に応じて、バイオマス原料は、その中に分散した状態で抗酸化剤を含み得、バイオマス原料中に分散している抗酸化剤をラジカルと接触させることから、クエンチングが起こり得る。
【0090】
本明細書中に記載のより重いイオンの何れかなどの重荷電イオンを使用することによって、官能化を促進し得る。例えば、酸化を促進することが望ましい場合、照射に対して荷電酸素イオンを使用することができる。窒素官能基が望ましい場合、窒素イオンまたは窒素を含む陰イオンを使用することができる。同様に、イオウまたはリン基が望ましい場合、照射においてイオウまたはリンイオンを使用することができる。
【0091】
線量
場合によっては、約0.25Mrad/秒より大きい線量率、例えば約0.5、0.75、1.0、1.5、2.0より大きいかまたはさらには約2.5Mrad/秒より大きい線量率で照射が行われる。ある態様において、5.0から1500.0キロラド/時間の間、例えば10.0から750.0キロラド/時間の間または50.0から350.0キロラド/時間の間の線量率で照射が行われる。
【0092】
ある態様において、少なくとも0.1Mrad、少なくとも0.25Mrad、例えば少なくとも1.0Mrad、少なくとも2.5Mrad、少なくとも5.0Mrad、少なくとも10.0Mrad、少なくとも60Mradまたは少なくとも100Mradの線量を材料が受けるまで、(何らかの線源または線源の組み合わせを用いて)照射が行われる。ある態様において、約0.1Mradから約500Mrad、約0.5Mradから約200Mrad、約1Mradから約100Mradまたは約5Mradから約60Mradの線量を材料が受けるまで照射が行われる。ある態様において、比較的低い線量(例えば60Mrad未満)が適用される。
【0093】
超音波処理
超音波処理によって、例えば本明細書に記載の材料の何れかの1以上、例えば、1以上の炭水化物供給源、例えば、セルロース系またはリグノセルロース系材料またはデンプン材料などの材料の分子量および/または結晶化度を小さくすることができる。超音波処理は、材料を安定化させるために使用することもできる。
【0094】
ある方法において、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第一の材料を、媒体(例えば水)に分散させ、超音波処理して、および/またはそうでなくても気泡を生じさせ、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。第二の材料(またはある一定の態様において、第一および第二の材料)は、第二および/または第一の材料を利用して中間体または生成物を産生することができる微生物と(酵素処理を行ってまたは酵素処理を行わずに)組み合わせることができる。
【0095】
第二の材料は、第一の材料と比較して低分子量であり、場合によっては結晶化度も低いセルロースを含むので、第二の材料は、例えば微生物を含有する溶液中での分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。
【0096】
ある態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0097】
場合によっては、第二の材料は、結晶化度(C2)が第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より低いセルロースを含む。例えば、(C2)は(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0098】
ある態様において、出発結晶化度指数(超音波処理前)は、約40から約87.5%(例えば約50から約75%または約60から約70%)であり、超音波処理後の結晶化度指数は、約10から約50%(例えば約15から約45%または約20から約40%)である。しかし、ある一定の態様において、例えば長い超音波処理後には、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、超音波処理後の材料は実質的に非晶質である。
【0099】
ある態様において、出発数平均分子量(超音波処理前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、超音波処理後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば長い超音波処理後、約10,000未満またはさらには約5,000未満の数平均分子量を有する可能性がある。
【0100】
ある態様において、第二の材料は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高い酸化レベル(O2)を有し得る。材料の酸化レベルが高い場合、その分散性、膨張性および/または溶解性が高くなり得、さらに、化学的、酵素的または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。ある態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化媒体中で超音波処理が行われ、第一の材料より酸化度が高い第二の材料が生成する。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基の数がより多いものであってもよく、これにより材料の親水性が高くなり得る。
【0101】
ある態様において、超音波処理媒体は水性媒体である。必要に応じて、媒体は、過酸化物(例えば過酸化水素)などの酸化剤、分散剤および/または緩衝剤を含み得る。分散剤の例としては、イオン性分散剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、および非イオン性分散剤、例えばポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
【0102】
その他の態様において、超音波処理媒体は非水性である。例えば、炭化水素、例えばトルエンまたはヘプタン、エーテル、例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中でまたはアルゴン、キセノンまたは窒素などの液化ガス中でも超音波処理を行うことができる。
【0103】
熱分解
バイオマス材料を物理的に処理するために1以上の一連の熱分解処理を使用することができる。材料を安定化するために熱分解を使用することもできる。
【0104】
ある例において、第一の数平均分子量(MN1)より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得るために、例えば(酸素の存在下または非存在下で)チューブ炉中で第一の材料を加熱することによって、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第一の材料を熱分解する。
【0105】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量および、場合によっては小さな結晶化度も有するセルロースを含むので、第二の材料は、例えば微生物を含有する溶液中での、分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。
【0106】
ある態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0107】
場合によっては、第二の材料は、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より低い結晶化度(C2)を有するセルロースを含む。例えば、(C2)は、(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40%超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0108】
ある態様において、出発結晶化度(熱分解前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、熱分解後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある一定の態様(例えば、大規模な熱分解後)において、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、熱分解後の材料は実質的に非晶質である。
【0109】
ある態様において、出発数平均分子量(熱分解前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、熱分解後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様(例えば、大規模な熱分解後)において、数平均分子量が約10,000未満またはさらには約5,000未満になる可能性がある。
【0110】
ある態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くなり得る。材料の酸化レベルが高いと、その分散性、膨張性および/または溶解性が高まり、さらに、化学的、酵素的または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。ある態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において熱分解が行われ、第一の材料より酸化度が高い第二の材料が生成する。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基の数が第一の材料よりも多いものであってもよく、これにより材料の親水性が高くなる。
【0111】
ある態様において、材料の熱分解は連続する。その他の態様において、材料は、所定の時間熱分解され、次いで、第二の所定の時間冷却された後に、再度熱分解される。
【0112】
酸化
バイオマス材料を物理的に処理するために、1以上の一連の酸化処理を使用することができる。酸化条件は、例えば原料のリグニン含量に応じて異なり、一般に、リグニン含量がより多い原料には大きな酸化度が望ましい。
【0113】
ある方法において、第二の数平均分子量(MN2)を有し、第一の酸素含量(O1)より高い第二の酸素含量(O2)を有するセルロースを含む第二の材料を得るために、例えば大気または酸素に富む空気の気流中で第一の材料を加熱することによって、第一の数平均分子量(MN1)を有し、第一の酸素含量(O1)を有するセルロースを含む第一の材料を酸化する。
【0114】
第二の材料の第二の数平均分子量は一般に、第一の材料の第一の数平均分子量よりも小さい。例えば、その他の物理的処理に関する上記のものと同程度まで分子量を低下させることができる。その他の物理的処理に関する上記のものと同程度まで第二の材料の結晶化度を低下させることもできる。
【0115】
ある態様において、第二の酸素含量は、第一の酸素含量より少なくとも約5%多く、例えば、7.5%多く、10.0%多く、12.5%多く、15.0%多くまたは17.5%多い。ある好ましい態様において、第二の酸素含量は、第一の材料の第一の酸素含量より少なくとも約20.0%多い。酸素含量は、1300℃以上で運転される炉の中で試料を熱分解することにより元素分析することによって測定される。適切な元素分析器は、VTF-900高温熱分解炉付きのLECO CHNS-932分析器である。
【0116】
一般に、材料の酸化は酸化環境で起こる。例えば、大気中またはアルゴンに富む空気中などの酸化環境で熱分解することによって酸化が行われ得るかまたは酸化が促進され得る。酸化を促進するために、酸化前または酸化中に、酸化剤、酸または塩基などの様々な化学薬品を材料に添加することができる。例えば、酸化前に過酸化物(例えば過酸化ベンゾイル)を添加することができる。
【0117】
バイオマス原料の不応性を低下させる酸化方法の中には、フェントン型化学を使用するものがある。このような方法は、例えば、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/639,289号で開示されている。
【0118】
代表的な酸化剤としては、過酸化物、例えば過酸化水素および過酸化ベンゾイルなど、過硫酸塩、例えば過硫酸アンモニウムなど、活性化型酸素、例えばオゾンなど、過マンガン酸塩、例えば過マンガン酸カリウムなど、過塩素酸塩、例えば過塩素酸ナトリウムなど、および次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)などが挙げられる。
【0119】
ある状況において、pHは、接触中に約5.5以下、例えば1から5の間、2から5の間、2.5から5の間または約3から5の間に維持される。酸化条件には、2から12時間、例えば4から10時間または5から8時間の接触時間も含まれ得る。場合によっては、温度は、300℃以下、例えば250、200、150、100または50℃以下に維持される。ある状況において、温度は実質的に周囲温度のままであり、例えば約20〜25℃である。
【0120】
ある態様において、電子などの粒子線を大気を通して材料に照射することによりインサイチューでオゾンを発生させることなどによって、1以上の酸化剤が気体として適用される。
【0121】
ある態様において、混合物は、2,5-ジメトキシヒドロキノン(DMHQ)などの1以上のヒドロキノンおよび/または2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン(DMBQ)などの1以上のベンゾキノンをさらに含み、これらは電子移動反応を促進し得る。
【0122】
ある態様において、1以上の酸化剤をインサイチューで電気化学的に発生させる。例えば、接触または反応容器中で過酸化水素および/またはオゾンを電気化学的に発生させ得る。
【0123】
官能化するためのその他の処理
この段落の処理過程は何れも、本明細書中に記載の処理過程なく単独でまたは本明細書中に記載の処理過程の何れかと(任意の順番で)組み合わせて使用することができる:蒸気爆発、化学的処理(例えば酸処理(硫酸、塩酸および有機酸などの鉱酸、例えばトリフルオロ酢酸を用いた濃酸処理および希酸処理を含む。)および/または塩基処理(例えば石灰または水酸化ナトリウムを用いた処理))、UV処理、スクリュー押出処理(例えば、2008年11月17日出願の米国特許出願第61/115,398号参照)、溶媒処理(例えばイオン性液体を用いた処理)および凍結粉砕(例えば米国特許出願第12/502,629号参照)。
【0124】
発酵
微生物は、官能化バイオマス材料存在下で低分子量の糖を発酵させることによって、本明細書中に記載のものなどの多くの有用な中間体および生成物を産生することができる。例えば、発酵またはその他のバイオプロセスによって、アルコール、有機酸、炭化水素、水素、タンパク質またはこれらの材料の何れかの混合物が産生され得る。
【0125】
微生物は、天然微生物または遺伝子改変微生物であり得る。例えば、この微生物は、細菌(例えばセルロース分解性細菌)、真菌(例えば酵母)、植物または原生生物(例えば藻)、原虫または真菌様原生生物(例えば粘菌)であり得る。これらの生物が適合性である場合、生物の混合物を使用することができる。
【0126】
適切な発酵微生物は、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、オリゴ糖または多糖などの炭水化物を発酵生成物に変換する能力を有する。発酵微生物としては、サッカロミセス(Sacchromyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Sacchromyces cerevisiae)(パン酵母)、サッカロミセス・ジスタチクス(Saccharomyces distaticus)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)など;クリベロミセス(Kluyveromyces)属、例えばクリベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)種、クリベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)種など;カンジダ(Candida)属、例えば、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)およびカンジダ・ブラシカ(Candida brassicae)、ピキア・スチピチス(Pichia stipitis)(カンジダ・シェハテ(Candida shehatae)の類縁など、クラビスポラ(Clavispora)属、例えばクラビスポラ・ルシタニエ(Clavispora lusitaniae)種およびクラビスポラ・オプンティア(Clavispora opuntiae)種など、パキソレン(Pachysolen)属、例えばパキソレン・タンノフィルス(Pachysolen tannophilus)種など、ブレタノミセス(Bretannomyces)属、例えばブレタノミセス・クラウセニ(Bretannomyces clausenii)種などの株が挙げられる(Philippidis,G.P.、1996、Cellulose bioconversion technology、in Handbook on Bioethanol:Production and Utilization、Wyman,C.E.編、Taylor & Francis、Washington、DC、179-212)。市販の酵母としては、例えばRed Star(登録商標)/Lesaffre Ethanol Red(Red Star/Lesaffre、USAから入手可能)、FALI(登録商標)(Fleischmann's Yeast、division of Burns Philip Food Inc.、USAから入手可能)、SUPERSTART(登録商標)(Alltech、現Lalemandから入手可能)、GERT STRAND(登録商標)(Gert Strand AB、Swedenから入手可能)およびFERMOL(登録商標)(DSM Specialtiesから入手可能)が挙げられる。
【0127】
例えば、ザイモモナス・モビリスおよびクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(Philippidis、1996、上出)など、細菌も発酵において使用し得る。
【0128】
酵母にとって至適pHは約pH4から5であり、一方でザイモモナス菌に対する至適pHは約pH5から6である。典型的な発酵時間は、26℃から40℃の範囲の温度で約24時間から96時間であるが、好熱性微生物はより高温を好む。
【0129】
ある態様において、低分子量の糖がエタノールに完全に変換される前に、発酵過程の全てまたは一部を中断することができる。中間体発酵生成物は高濃度の糖および炭水化物を含む。これらの中間体発酵生成物は、ヒトまたは動物が消費するための食物の生産において使用することができる。さらにまたはあるいは、粉末状物質にするために、ステンレス鋼性の実験室用ミルで中間体発酵生成物を微細な粒径になるまで研削することができる。
【0130】
米国特許出願第60/832,735号、現在、国際公開公報第2008/011598号に記載のような携帯用発酵装置を使用することができる。
【0131】
後処理
蒸留
発酵後、エタノールおよびその他のアルコールを殆どの水および固形残渣から分離するために、例えば「ビアカラム(beer column)」を用いて、得られた流体を蒸留することができる。ビアカラム中に存在する蒸気は例えば35%エタノール重量であり得、精留塔に入れることができる。気相分子ふるいを用いて、精留塔からのほぼ共沸性(92.5%)のエタノールおよび水の混合液を純(99.5%)エタノールまで精製することができる。このビアカラムの下部を三重効用蒸発器の第一効用に送ることができる。精留塔還流凝縮器は、この第一効用に対して熱を提供できる。第一効用の後、遠心機を用いて固形物を分離し、回転式乾燥機中で乾燥させることができる。遠心機廃水の一部(25%)を発酵に対して再利用し、残りを第二および第三効用蒸発器に送ることができる。殆どの蒸発器凝縮物を非常に清浄な凝縮物として処理過程に戻すことができ、低沸騰化合物の蓄積を避けるために廃水処理に供する分離物は少量である。
【0132】
中間体および生成物
エネルギー、燃料、食物および材料など、1以上の中間体または生成物を産生させるために、本明細書中に記載のプロセスを使用することができる。生成物の具体例としては、水素、アルコール(例えば一価アルコールまたは二価アルコール、例えばエタノール、n-プロパノールまたはn-ブタノールなど)、水和または含水アルコール、例えば、10%、20%、30%を超えるかまたはさらには40%を超える水を含有するもの、キシリトール、糖、バイオディーゼル、有機酸(例えば酢酸および/または乳酸)、炭化水素、副産物(例えばセルロース分解性タンパク質(酵素)または単細胞タンパク質などのタンパク質)および、何らかの組み合わせまたは相対濃度の、および場合によっては、例えば燃料添加剤などの何らかの添加剤と組み合わせられた、これらの何らかの混合物が挙げられるが、これに限定されない。その他の例としては、カルボン酸、例えば酢酸または酪酸など、カルボン酸の塩、カルボン酸およびカルボン酸の塩の混合物ならびにカルボン酸のエステル(例えばメチルエステル、エチルエステルおよびn-プロピルエステル)、ケトン(例えばアセトン)、アルデヒド(例えばアセトアルデヒド)、α、β不飽和酸、例えばアクリル酸などおよびオレフィン、例えばエチレンなどが挙げられる。その他のアルコールおよびアルコール誘導体としては、プロパノール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、これらのアルコールの何れかのメチルエステルまたはエチルエステルが挙げられる。その他の生成物としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、何れかの酸の塩ならびに何れかの酸およびそれぞれの塩の混合物が挙げられる。
【0133】
その他の中間体ならびに食物および医薬品を含む生成物は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/417,900号に記載されている。
【実施例】
【0134】
次の実施例は、例示であり、本開示の教示を制限するものではない。
【0135】
実施例1:ポリコーティング紙からの繊維性材料の調製
20lb/ft3のかさ密度を有する印刷されていないポリコーティング白色クラフトボールから作製された未使用の半ガロンジュース容器パックの1500ポンドスキッドをInternational Paperから入手した。各容器パックを平坦になるように折り畳み、次いで、1時間におよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。シュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔を0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は、幅が0.1インチから0.5インチの間、長さが0.25インチから1インチの間であり、出発物質と同等の厚み(約0.075インチ)を有する紙吹雪状であった。
【0136】
この紙吹雪状の材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に供した。モデルSC30には4枚の回転ブレード、4枚の固定ブレードおよび1/8インチ孔を有する排出スクリーンが備えられている。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔をおよそ0.020インチに設定した。ロータリーナイフカッターは、ナイフの刃を横切る紙吹雪状小片を剪断し、この小片を切り裂き、1時間に約1ポンドの速度で繊維状材料を放出した。繊維状材料のBET表面積は0.9748m2/g+/-0.0167m2/g、気孔率は89.0437%であり、かさ密度は0.1260g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は1.141mmであり、繊維の平均幅は0.027mmであり、平均L/Dは42:1となった。
【0137】
実施例2:晒クラフトボールからの繊維性材料の調製
30lb/ft3のかさ密度を有する未使用の晒白色クラフトボールの1500ポンドスキッドをInternational Paperから入手した。材料を平坦になるように折り畳み、次いで、1時間あたりおよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。シュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔は0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は、0.1インチから0.5インチの間の幅、0.25インチから1インチの間の長さおよび出発材料と同等の厚み(約0.075インチ)を有する紙吹雪状であった。この紙吹雪状材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に供した。排出スクリーンの孔は1/8インチであった。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔はおよそ0.020インチに設定した。このロータリーナイフカッターは紙吹雪状小片を剪断し、1時間あたり約1ポンドの速度で繊維状材料を放出した。繊維状材料のBET表面積は1.1316m2/g+/-0.0103m2/g、気孔率は88.3285%であり、かさ密度は0.1497g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は1.063mmであり、繊維の平均幅は0.0245mmであり、平均L/Dは43:1となった。
【0138】
実施例3:晒クラフトボールからの、2回剪断繊維性材料の調製
30lb/ft3のかさ密度を有する未使用の晒白色クラフトボールの1500ポンドスキッドをInternational Paperから入手した。材料を平坦に折り畳み、次いで、1時間あたりおよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。このシュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔を0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は紙吹雪状であった(上記と同様)。この紙吹雪状材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に入れた。排出スクリーンの孔は1/16インチであった。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔はおよそ0.020インチに設定した。ロータリーナイフカッターは紙吹雪状小片を剪断し、1時間あたり約1ポンドの速度で繊維状材料を放出した。第一の剪断から得られた材料を上記で述べた同一設定に供給し戻し、再度剪断した。得られた繊維状材料のBET表面積は1.4408m2/g+/-0.0156m2/gであり、気孔率は90.8998%であり、かさ密度は0.1298g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は0.891mmであり、繊維の平均幅は0.026mmであり、平均L/Dは34:1となった。
【0139】
実施例4:晒クラフトボールからの3回剪断繊維性材料の調製
30lb/ft3のかさ密度を有する未使用の晒白色クラフトボールの1500ポンドスキッドをInternational Paperから入手した。材料を平坦に折り畳み、次いで、1時間あたりおよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。このシュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔を0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は紙吹雪状であった(上記と同様)。この紙吹雪状材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に入れた。排出スクリーンの孔は1/8インチであった。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔はおよそ0.020インチに設定した。ロータリーナイフカッターはナイフの刃を横切る紙吹雪状小片を剪断した。第一の剪断から得られた材料を同一設定に供給し戻し、スクリーンを1/16インチのスクリーンに交換した。この材料を剪断した。第二の剪断から得られた材料を同一設定に供給し戻し、スクリーンを1/32インチのスクリーンに交換した。この材料を剪断した。得られた繊維状材料のBET表面積は1.6897m2/g+/-0.0155m2/gであり、気孔率は87.7163%であり、かさ密度は0.1448g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は0.824mmであり、繊維の平均幅は0.0262mmであり、平均L/Dは32:1となった。
【0140】
実施例5:電子線による加工処理
出力80kWで5MeVの電子を送達するアーチ状のRhodotron(登録商標)TT200連続波加速器を用いて電子線で試料を処理した。表1は使用したパラメーターを記載する。表2は、試料IDに対して使用した公称線量(単位Mrad)および試料に送達される対応する線量(単位kgy)を報告する。
【0141】
(表1)Rhodotron(登録商標)TT200パラメーター
【0142】
(表2)試料へ送達される線量
1例えば、5mAのビーム電流および12.9フィート/分の回線速度で、11秒で9.9kgyが送達された。処理間の冷却時間は2分前後であった。
【0143】
実施例6:ゲル浸透クロマトグラフィーによってセルロース系およびリグノセルロース系材料の分子量を測定する方法
分析用のセルロース系およびリグノセルロース系材料を実施例4に従って処理した。以下の表に挙げる試料材料は、クラフト紙(P)、麦藁(WS)、アルファルファ(A)、セルロース(C)、スイッチグラス(SG)、草(G)およびデンプン(ST)およびスクロース(S)を含む。試料IDの番号「132」とは、1/32インチスクリーンに通した剪断後の材料の粒子サイズを指す。ダッシュ後の数字は放射線の線量(MRad)を指し、「US」は超音波処理を指す。例えば、試料ID「P132-10」とは、132メッシュの粒子サイズまで剪断され、10Mradを照射したクラフト紙を指す。
【0144】
e線で照射した試料の場合、ダッシュの後の数字は試料に送達されたエネルギー量を指す。例えば、試料ID「P-10Oe」は、約100MRadまたは約1000kgyのエネルギーの線量が送達されたクラフト紙を指す(表2)。
【0145】
(表3)照射クラフト紙のピーク平均分子量
**低線量の放射線は一部の材料の分子量を増加させるように見える。
1線量率=1MRad/時間
2水に分散させた材料を用い、再循環条件下で1000Wホーンを使用する20kHzの超音波による30分間の処理
【0146】
(表4)E線で照射したクラフト紙のピーク平均分子量
【0147】
(表5)ガンマ線照射済み材料のピーク平均分子量
*処理後にピークは合体する。
**低線量の放射線は一部の材料の分子量を増加させると思われる。
1線量率=1MRad/時間
2水に分散させた材料を用い、再循環条件下で1000Wホーンを使用した20kHz超音波による30分間の処理
【0148】
(表6)E線での照射済み材料のピーク平均分子量
【0149】
ポリマーの分子量分布を調べるために、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用する。GPC分析中に、多孔性ゲル捕捉小分子を充填したカラムにポリマー試料の溶液を通す。分子サイズに基づいて試料を分離するが、大きな分子量のものほど小さい分子よりも早く溶出される。各成分の滞留時間は、殆どの場合、屈折率(RI)、蒸発光散乱(ELS)または紫外線(UV)により検出し、較正曲線と比較する。次いで、得られたデータを用いて、試料に対する分子量分布を計算する。
【0150】
合成ポリマーの特徴を調べるために固有の分子量ではなく分子量の分布を使用する。この分布の特徴を調べるために、統計的平均を使用する。これらの平均値の中で最も一般的であるのは「数平均分子量」(Mn)および「重量平均分子量」(Mw)である。
【0151】
これらの値を計算する方法は、当技術分野で、例えば国際公開公報第2008/073186号の実施例9に記載されている。
【0152】
多分散度指数またはPIはMw/Mnの比率として定義される。PIが大きいほど分布は広くなるかまたは分散する。PIがとり得る最小値は1である。これは単分散試料を表す。即ち、分布中の全分子が同一分子量であるポリマーである。
【0153】
ピーク分子量値(Mp)は分子量分布の様式として定義される別の記述法である。これは、分布中で最も多く見られる分子量を意味する。この値からも分子量分布が分かる。
【0154】
殆どのGPC測定は異なるポリマー標準物質に対してなされる。結果の精度は、分析されるポリマーの特徴が、使用される標準物質の特徴に対してどの程度密接に一致するかに依存する。個々に較正された異なる一連の測定間の再現性で予測される誤差は約5〜10%であり、GPC測定の限定精度に特徴的である。従って、GPCの結果は、異なる試料の分子量分布間の比較が同一の一連の測定の間になされる場合に最も有用である。
【0155】
リグノセルロース系試料はGPC分析前に試料調製が必要であった。最初に、塩化リチウム(LiCl)の飽和溶液(8.4重量%)をジメチルアセトアミド(DMAc)中で調製した。およそ100mgの試料を新たに調製したおよそ10gの飽和LiCl/DMAc溶液に添加し、攪拌しながら混合物をおよそ150℃〜170℃に1時間加熱した。得られた溶液の色は、全般的に明黄色から暗黄色であった。溶液の温度をおよそ100℃に低下させ、さらに2時間加熱した。次いで、溶液の温度をおよそ50℃に低下させ、試料溶液をおよそ48から60時間加熱した。注目すべきことには、100MRadで照射した試料は、それらの未処理対照物と比較して容易に溶解した。加えて、(数字132によって示される)剪断試料は未切断試料と比較して平均分子量が僅かに小さかった。
【0156】
溶媒としてDMAcを用いて、得られた試料溶液を1:1希釈し、0.45μmのPTFEフィルターに通して濾過した。次いで、表7に記載のパラメーターを用いて、濾過した試料溶液をGPCによって分析した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合の試料のピーク平均分子量(Mp)を表3〜6にまとめる。各試料を二つ組で調製し、その試料の各標品は、1試料あたり合計4回の注入について二つ組(2回注入)で分析した。EasiCal(登録商標)ポリスチレン標準PS1AおよびPS1Bを使用して、約580から7,500,00ダルトンの分子量スケールに対して較正曲線を作成した。
【0157】
(表7)GPC分析条件
【0158】
実施例7:飛行時間二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)表面分析
飛行時間二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)は、試料のまさに最外部表面から分子を脱離させるためにパルスイオンビーム(Csまたは微小焦点Ga)を使用する表面敏感分光法である。表面の単原子層から粒子を脱離させる(二次イオン)。次に、これらの粒子を加速して「飛行管」に導き、それらが検出器に到達する正確な時間(即ち飛行時間)を測定することによってそれらの質量を決定する。ToF-SIMSは、表面、薄層、試料の界面に関する詳細な元素および分子情報を提供し、完全な三次元分析を可能にする。これは、半導体、ポリマー、塗料、コーティング、ガラス、紙、金属、セラミック、生体材料、医薬品および有機組織を含め、広く使用されている。ToF-SIMSは探査技術なので、Hを含め周期表の元素は全て検出される。ToF-SIMSデータを表8〜11で与える。使用したパラメーターを表12で報告する。
【0159】
(表8)関心対象の様々な陽イオンの正規化平均強度(総イオン数x10000に対して正規化)
【0160】
(表9)関心対象の様々な陰イオンの正規化平均強度(総イオン数x10000に対して正規化)
【0161】
(表10)関心対象の様々な陽イオンの正規化平均強度(総イオン数x10000に対して正規化)
【0162】
(表11)関心対象の様々な陰イオンの正規化平均強度(総イオン数x10000に対して正規化)
【0163】
(表12)ToF−SIMSパラメーター
【0164】
ToF-SIMSは、材料表面上の化学種を脱離させるために集束パルス粒子線(通常はCsまたはGa)を使用する。衝撃部位近くで生じる粒子は、解離イオンである傾向がある(陽または陰)。衝撃部位から離れて生じた二次粒子は、分子化合物、通常はより非常に大きい有機巨大分子の断片である傾向がある。次に、粒子を加速して、検出器に向かう飛行経路に導く。検出器に対する衝撃の時間から粒子の「飛行時間」をナノ秒スケールで測定することが可能なので、0.00X原子質量単位(即ちプロトン質量の1000分の1)という細かい質量分解能を得ることができる。典型的な操作条件下で、ToF-SIMS分析の結果には、0〜10,000amuの範囲にわたる全原子質量を測量する質量スペクトルが含まれ、ラスタービームにより、関心対象のあらゆる質量のサブミクロンスケールのマップが得られ、イオンビーム下でのスパッタリングによる表層の離脱によってデプスプロファイルが得られる。陰イオン分析から、ポリマーのCNO、CNおよびNO2基の量が増加したことが分かった。
【0165】
実施例8:照射済み材料の気孔率測定分析
水銀細孔サイズおよび細孔容積分析(表21)は、密に制御された圧力下で水銀(非湿潤性液体)を強制的に多孔性構造に浸入させることにより行う。水銀は殆どの物質を湿らせず、毛細管作用によって自然に細孔に浸入することがないので、外部圧力をかけることによって試料の孔隙に強制的に浸入させなければならない。孔隙を満たすのに必要な圧力は細孔サイズに逆比例する。大きな孔隙を満たすためには小さな力または圧力しか必要とせず、一方、非常に小さな細孔の孔隙を満たすにはかなり大きな圧力が必要となる。
【0166】
(表21)水銀ポロシメトリーによる細孔サイズおよび体積分布
【0167】
AutoPore 9520は414MPaまたは60,000psiaの最大圧力を達成することができる。試料の調製および0.2psiaから50psiaのマクロ孔データ収集のために4つの低圧ステーションがある。25psiaから60,000psiaのデータを収集する2つの高圧チャンバーがある。金属コーティングされたガラス毛細管ステムに連結したペネトロメーターと呼ばれるボール様装置に試料を入れる。水銀は試料中および試料の周りの孔隙に浸入するので、水銀は毛細管ステムを下へ移動する。毛細管ステムから水銀が失われる結果、電気容量の変化が生じる。使用中のペネトロメーターのステム容量を知ることによって、実験中の容量変化を水銀の体積に変換する。殆どの試料のサイズおよび立体配置を収容するために、様々なボール(試料)サイズおよび毛細管を有する様々なペネトロメーターが利用可能である。以下の表22は、各試料について計算した重要なパラメーターの一部を定義する。
【0168】
(表22)パラメーターの定義
【0169】
実施例9:照射済み材料の粒径分析
静的光散乱による粒度測定技術は(フラウンホーファー理論も含む)ミー散乱に基づく。ミー散乱は、他の系の変数が分かっており、一定に保持されることを条件に、球状散乱粒子に対する大きさの関数として、強度対角度関係を予測する。これらの変数は入射光の波長および試料材料の相対的屈折率である。ミー散乱を適用することによって、詳細な粒径の情報が得られる。表23は、メディアン径、平均径およびモード径をパラメーターとして用いて粒径についてまとめる。
【0170】
(表23)レーザー光散乱による粒子(乾燥試料分散)
【0171】
粒径は、以下の条件を用い、Malvern Mastersizer2000を使用してレーザー光散乱(乾燥試料分散)によって決定した。
供給率:35%
ディスパーサー圧力:4バール
光学モデル:(2.610、1.000i)、1.000
【0172】
適切な量の試料を振動トレイ上に導入した。粒子が適切に分散されることを確実にするために、供給速度および空気圧力を調整した。凝集を破壊するが試料の完全性を損なわない空気圧を選択することは重要な要素である。必要とされる試料の量は、粒径により変動する。一般に、微細粒子を含む試料の場合、材料の必要量は、粗い粒子を含む試料よりも少量となる。
【0173】
実施例10:照射済み材料の表面積分析
Micromeritics ASAP 2420 Accelerated Surface AreaおよびPorosimetry Systemを用いて各試料の表面積を分析した。最初に40℃にて16時間脱気することによって、試料を調製した。次に、ヘリウムを含む自由空間(温および冷空間の両方)を計算し、次いで、ヘリウムを除去するために試料チューブを再度脱気する。データ収集はこの第二の脱気後に開始し、どの程度の気体が試料上に与えられるかを調節する標的圧力を規定することから構成される。各標的圧力において、吸着された気体の量および実際の圧力を調べ、記録する。試料チューブ内側の圧力は圧力トランスデューサで測定する。標的圧力が達成され、平衡となるまで、さらなる量の気体を継続して入れる。吸着された気体の量は試料上への複数回の適用量を合計することによって調べる。圧力および量により気体吸着等温線が規定され、これを使用してBET表面積(表24)を含む多数のパラメーターを計算する。
【0174】
(表24)気体吸着による表面積のまとめ
【0175】
等温線に対するBETモデルは、一般に用いられている、比表面積を計算するための理論である。この分析は、密に詰まったクリプトンの単層で全表面を覆うために必要な量を計算することによって、試料表面の単分子層容量を決定することを含む。単分子層容量にプローブガスの分子の断面積をかけて、全表面積を決定する。比表面積は、試料の一定分量の表面積を試料の質量で割ったものである。
【0176】
実施例11:照射済み材料の繊維長の測定
Techpap MorFi LB01システムを用いて、提示された試料において三つ組で繊維長分布試験を行った。平均長および幅は表25で報告する。
【0177】
(表25)リグノセルロース系繊維の長さおよび幅データのまとめ
【0178】
実施例12:照射済みおよび非照射クラフト紙のフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトル
Nicolet/Impact 400でFT-IR分析を行った。結果から、試料P132、P132-10、P132-100、P-1e、P-5e、P-10e、P-30e、P-70eおよびP-100eがセルロースベースの材料に相応することが示される。
【0179】
図3は、実施例4に従って剪断したクラフトボール紙の赤外スペクトルであり、一方、図4は、100Mradのガンマ線照射後の、図3のクラフト紙の赤外スペクトルである。照射済み試料は、未照射材料では見出されない領域Aにおけるさらなるピークを示す(中心は約1730cm-1)。注目すべきことに、P132からP132-10からP132-100に進む際に〜1650cm-1でのカルボニル吸収量の増大が検出された。試料P-1e、P-5e、P-10e、P-30e、P-70eおよびP-100eに対して同様の結果が観察された。
【0180】
実施例13:照射済みおよび非照射クラフト紙のプロトンおよび炭素-13核磁気共鳴(1H-NMRおよび13C-NMR)スペクトル
試料調製
2%フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物を含むDMSO-d6で溶解することによって、分析用に試料P132、P132-10、P132-100、P-1e、P-5e、P-10e、P-30e、P-70eおよびP-100eを調製した。低レベル照射を受けた試料は高レベル照射を受けた試料よりも溶解度が顕著に低かった。非照射試料は、この溶媒混合液中でゲルを形成したが、60℃に加熱することによって、NMRスペクトルにおけるピークが分解された。より高レベルの照射を受けた試料は10%wt/wtの濃度で可溶性であった。
【0181】
分析
15mg/mLの試料の1H-NMRスペクトルは、明らかな16ppmを中心とする非常に幅広い共鳴ピークを示した(図5A-5J)。このピークはエノールに対する交換性-OHプロトンの特徴であり、「d2Oシェイク」により確認された。モデル化合物(アセチルアセトン、グルクロン酸およびケト-グロン酸)を分析し、このピークが実際に交換性エノールプロトンであったことが説得力のあるものとなった。提案されるこのエノールピークは、濃度の影響に非常に敏感であり、本発明者らは、この共鳴がエノールまたはおそらくカルボン酸によるものであったか否かを結論付けることができなかった。
【0182】
モデル化合物のカルボン酸プロトン共鳴は、処理済セルロース試料に対して観察されたものと同様であった。これらのモデル化合物は、高磁場から〜5-6ppmにシフトした。より高い濃度のP-100eの調製(〜10%wt/wt)によって、モデル化合物のカルボン酸共鳴が見出された低磁場への劇的なシフトが起こった(〜6ppm)(図5N)。これらの結果から、この共鳴が、この官能基を特徴付けるために信頼性がないという結論が導かれるが、しかし、このデータから、試料の照射が増加すると、交換性水素の数が増加することが示唆される。またビニルプロトンも検出されなかった。
【0183】
試料の13CNMRスペクトルから、カルボン酸またはカルボン酸誘導体のカルボニルの存在が確認される。この新しいピーク(168ppm)は未処理試料には存在しない(図5K)。長時間の遅延がある13CNMRスペクトルによって、P-100eに対するシグナルの定量が可能となった(図5L〜5M)。およそ100ppm(Clシグナル)での共鳴に対するカルボニル共鳴の積分の比較から、Clに対するカルボニル炭素の比が1:13.8であるかまたは14グルコース単位ごとに凡そ1カルボニルであることが示唆される。100ppmでの化学シフトはグルクロン酸とよく相関する。
【0184】
滴定
試料P-100eおよびP132-100(1g)を脱イオン化水(25mL)中で縣濁した。指示薬アリザリンイエローを攪拌しながら各試料に添加した。P-100eは湿らせることがより困難であった。0.2M NaOH溶液で両試料を滴定した。終点は非常に微妙であり、pH紙を用いることによって確認した。試料の開始pHは両試料とも〜4であった。P132-100は0.4ミリ当量の水酸化物を必要とし、これは2500amuのカルボン酸に対する分子量を与える。モノマーに対して180amuが使用される場合、これは、13.9モノマー単位に対して1個のカルボン酸基があることを示す。同様に、P-100eは3.2ミリ当量の水酸化物を必要とし、これは、計算すると、17.4モノマー単位ごとに1カルボン酸基となる。
【0185】
結論
セルロースのC-6炭素は、この酸化においてカルボン酸(グルクロン酸誘導体)に酸化されると思われ、これは驚くべきことに特異的である。この酸化は、〜1740cm-1での照射によりIR域が大きくなることと一致し、これは脂肪族カルボン酸に対応する。滴定結果は定量的13C NMRと一致する。高レベルの照射を行うほど、試料の溶解度が向上することは、カルボン酸プロトン数が増加することとよく相関する。「C-6酸化セルロース」の分解に対するメカニズムの仮説を下記スキーム1で提供する。
【0186】
【0187】
実施例14:前処理済みバイオマスの微生物試験
エタノール産生における発酵工程のためにバイオ燃料業界で用いられる酵母および細菌の一般的な株に対する毒性について、本明細書に記載のように前処理した特定のリグノセルロース系材料を分析する。さらに、プロセスの実行可能性を調べるために、糖含量およびセルラーゼ酵素との適合性を調べる。前処理した材料の試験は以下のように2つの相で行う。
【0188】
第1相:毒性および糖含量
酵母サッカロミセス-セレビジエ(ワイン酵母)およびピキア・スチピチス(ATCC 66278)ならびに細菌ザイモモナス・モビリス(ATCC 31821)およびクロストリジウム・サーモセラム(ATCC 31924)において、前処理した草および紙原料の毒性を測定する。インキュベーションおよび試料採取の最適時間を調べるために、各微生物を用いて増殖試験を行う。
【0189】
次いで、各微生物に対する標準微生物培地中でS.セレビジエ、P.スチピチス、Z.モビリスおよびC.サーモセラムとともに各原料を二つ組でインキュベートする。2種類の酵母株、S.セレビジエおよびP.スチピチスに対してはYMブロスを使用する。Z.モビリスに対してはRM培地を使用し、C.サーモセラムに対してはCM4培地を使用する。比較のために、純粋な糖を添加するが原料を添加しない陽性対照を用いる。インキュベーション中、12時間にわたり、0、3、6、9および12時間の時点で合計5種類の試料を採取し、生存率(Z.モビリスの場合はプレートカウントおよびS.セレビジエの場合は直接カウント)およびエタノール濃度について分析する。
【0190】
原料の糖含量は、Shodex(商標)sugar SP0810またはBiorad Aminex(登録商標)HPX-87Pカラムの何れかを備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定する。各原料(およそ5g)を逆浸透圧(RO)水と1時間混合する。混合物の液体部を採取し、グルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、アラビノースおよびセロビオース含量について分析する。分析はNational Bioenergy Centerのプロトコール「Determination of Structural Carbohydrates and Lignin in Biomass」に従って行う。
【0191】
第2相:セルラーゼ適合性
リグノセルロース系バイオマスを発酵可能な糖に還元する酵素複合体を含有する市販のAccellerase(登録商標)1000を用い、エレンマイヤーフラスコ中で推奨温度および濃度で、原料を二つ組で試験する。200rpm前後で穏やかに振盪しながらフラスコを12時間インキュベートする。その間、フラスコの液体部中の還元糖の濃度を測定するために、0、3、6、9および12時間の時点で3時間ごとに試料を採取する(Hope and Dean, Biotech J. 1974, 144:403)。
【0192】
実施例15:HPLCを用いた糖濃度分析
糖濃度(HPLC)および3種類の微生物(ピキア・スチピチス、サッカロミセス・セレビシエおよびザイモモナス・モビリス)に対する毒性について、13種類の試料を分析した。表26はこれらの実験のために使用した装置を挙げる。表27および28は、HPLC標準物質を調製するために使用した糖のリスト(製造供給元およびロット番号を含む。)およびHPLC標準物質を調製するために使用したプロトコールをそれぞれ提供する。
【0193】
(表26)実験で使用した装置
【0194】
(表27)HPLC分析で使用した糖
【0195】
(表28)HPLC標準物質の調製
【0196】
分析
各試料(1グラム)を逆浸透水と200rpmおよび50℃で一晩混合した。試料のpHを5から6の間に調整し、0.2μmシリンジフィルターに通してろ過した。試料の完全性を維持するために、分析前に試料を-20℃で保存した。試料調製中に行った観察を表29で与える。
【0197】
(表29)HPLC試料調製中の観察
*これらの試料のpHは1N NaOHを用いてpHに調整した。
【0198】
6種類の混合糖、グルコース、キシロース、セロビオース、アラビノース、マンノースおよびガラクトースの4mg/mL保存溶液から新しく標準物質を調製した。各糖0.400グラムを75mLのナノピュア水中で溶解することによって保存溶液を調製した(0.3ミクロンろ過)。溶解したら、容量フラスコを用いてこの保存溶液を100mLに希釈し、-20℃で保存した。ナノピュア水で保存溶液を連続希釈することによって、0.1、0.5、1、2および4mg/mLの希釈標準溶液を調製した。さらにこの保存溶液から1.5mg/mLの検査標準溶液も調製した。
【0199】
「Determination of Structural Carbohydrates in Biomass」(NREL Biomass Program, 2006)プロトコールに従って糖濃度を分析し、このプロトコールをその全体において参照により本明細書に組み入れる。蒸発光散乱検出器付きのSHODEX SUGAR SP0810カラムを使用した。実験中にカラムおよび検出器の完全性が維持されていることを確認するために、8回の注入ごとに検査用標準物質(1.5mg/mL標準物質)を分析した。標準曲線の変動係数(R2値)は少なくとも0.989であり、検査用標準物質の濃度は実測濃度の10%以内であった。HPLC条件は次のとおりであった。
【0200】
(表30)HPLCパラメーター
*最初の試験から、移動相中で15/85アセトニトリル:水よりもナノピュア水を使用した際に良好な分離が観察されたことが示された(製造者は、このカラムで20%を超えるアセトニトリルを使用することを推奨していない。)。
【0201】
結果
表31、32および33でHPLC分析の結果を与える。
【0202】
(表31)mg/mLおよびmg/gとして表される抽出物の糖濃度
【0203】
(表32)紙に対する%で表される糖濃度
【0204】
(表33)総試料%で表される糖濃度
【0205】
実施例16:毒性試験
3種類のエタノール産生培養物パネルに対する毒性について12種類の試料を分析した。この実験において、培養物の飢餓と試料の毒性とを区別するために、試料にグルコースを添加した。ピキア・スチピチスに対する毒性について13種類の試料を試験した。使用したプロトコールの要約を表32で挙げる。毒性試験で使用した化学物質および装置の説明を表34〜36で報告する。
【0206】
(表34)毒性試験に対する条件
【0207】
(表35)毒性試験に対して使用した試薬
【0208】
(表36)振盪フラスコ試験で使用したYSI成分
【0209】
下記で記載のように3種類の微生物を用いて試験を行った。
【0210】
サッカロミセス・セレビシエATCC24858(American Type Culture Collection)
ATCCから得た再水和した凍結乾燥培養物から、S.セレビシエの斜面培地を調製した。YMブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に斜面培地材料の一部を画線し、30℃で2日間インキュベートした。50mLの培地(20g/Lグルコース、3g/L酵母抽出物および5.0g/Lペプトン、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコにYMプレートからの1個のコロニーを接種し、25℃および200rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後、試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、OD14.8であり、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を選択し、試験フラスコ全てに接種した。
【0211】
試験容器は、100mLの上述の滅菌培地を含有する500mLエレンマイヤーフラスコであった。試験材料添加前に、全フラスコを121℃および15psiで加圧滅菌処理した。加圧滅菌処理によって試料含量が変化するので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを36時間にわたり上述のようにインキュベートした。
【0212】
ピキア・スチピチスNRRL Y-7124(ARS Culture Collection)
ARS Culture Collectionから得た再水和凍結乾燥培養物から、P.スチピチスの斜面培地を調製した。YMブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に斜面培地材料の一部を画線し、30℃で2日間インキュベートした。100mLの培地(40g/Lグルコース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素、6.56g/Lペプトン、40g/Lキシロース、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコに少量のプレート材料を接種し、25℃および125rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、光学密度が5.23で、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を選択し、試験フラスコ全てに接種した。
【0213】
試験容器は、100mLの上述の滅菌培地を含有する250mLエレンマイヤーフラスコであった。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、試験材料の添加前にフラスコにろ過滅菌(0.22μmフィルター)した培地を添加した。加圧滅菌処理は試料含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを48時間にわたり上述のようにインキュベートした。
【0214】
ザイモモナス・モビリスATCC31821(American Type Culture)
ATCCから得た再水和凍結乾燥培養物から、Z.モビリスの斜面培地を調製した。DYEプレート(グルコース20g/L、酵母抽出物10g/L、寒天20g/L、pH5.4)上に斜面培地材料の一部を画線し、30℃および5%CO2で2日間インキュベートした。15mLの培地(25g/Lグルコース、10g/L酵母抽出物、1g/L MgSO4・7H2O、1g/L (NH4)2SO4、2g/L KH2PO4、pH5.4)を含有する20mLスクリューキャップ試験管に1個のコロニーを接種し、振盪せずに30℃で24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、1本の試験管(OD1.96)を選択して、第二の種フラスコに接種した。第二の種フラスコは上述の培地70mLを含有する125mLフラスコであり、700μL(1%v/v)を接種し、振盪せずに30℃で24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、ODが3.72である1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を選択し、試験フラスコ全てに接種した。
【0215】
試験容器は、酵母抽出物が5g/Lであることを除き上述のとおりの100mLの滅菌培地を含有する250mLエレンマイヤーフラスコであった。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、試験材料の添加前に、ろ過滅菌(0.22μmフィルター)した培地をフラスコに添加した。加圧滅菌処理は試料含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、接種時に試験試料を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを36時間上述のようにインキュベートした。
【0216】
分析
2種類の試料を細胞濃度について分析した(Z.モビリスの場合は塗布接種を使用し、直接計数し(S.セレビシエおよびP.スチピチスの場合は血球計算盤および顕微鏡で計数)。適切に希釈したZ.モビリスの試料をデキストロース酵母抽出物(グルコース20g/L、酵母抽出物10g/L、寒天20g/L、pH5.4)プレート上に広げ、30℃および5%CO2で2日間インキュベートし、コロニー数を計数した。適切に希釈したS.セレビシエおよびP.スチピチスの試料を0.05%トリパンブルーと混合し、ノイバウエル血球計算盤に載せた。40Xの倍率で細胞を計数した。
【0217】
アルコール脱水素酵素アッセイに基づき、YSI生化学分析装置(YSI Biochem Analyzer)を用いて(YSI、Interscience)、エタノール濃度について3種類の試料を分析した。14,000rpmで20分間、試料を遠心し、完全性を維持するために上清を-20℃で保存した。分析前に0〜3.2g/Lエタノールの間となるようにこの試料を希釈した。分析中に膜の完全性が維持されていることを確認するために、およそ30試料ごとに3.2g/Lエタノールの標準物質を分析した。試料の濁度が上昇することにより固体試験試料が吸収測定を妨害し、不正確となるので、試料の光学密度(600nm)は報告しない。
【0218】
エタノール分析結果
各微生物に対して、対照と各試料を比較するために、パフォーマンスを使用した(表37-39)。しかし、株間の比較を行うためには%パフォーマンスを使用することができない。株を比較する場合、エタノールの総濃度を使用すべきである。データを分析する際、80%未満の%パフォーマンスは、細胞数も低い場合は毒性を示し得る。%パフォーマンスを決定するために使用した式は、以下である:
% パフォーマンス = (試料中のエタノール/対照中のエタノール)x100
【0219】
(表37)サッカロミセス・セレビシエを用いたエタノール濃度および%パフォーマンス
【0220】
(表38)ピキア・スチピチスを用いたエタノール濃度および%パフォーマンス
【0221】
太字の試料は、20g/Lを超え、木材加水分解物の場合の濃度と同等である、最大エタノール産生試料であった(H.K.Sreenath and T.W.Jeffries Bioresource Technology 72(2000)253-260)。
*後に振盪フラスコ実験で分析
【0222】
(表39)ザイモモナス・モビリスを用いたエタノール濃度および%パフォーマンス
【0223】
細胞濃度分析からの結果
各生物に対して、対照と各試料を比較するために、%細胞を使用する(表40-42)。しかし、株間の比較を行うためには%細胞を使用することができない。株を比較する場合、細胞の総濃度を使用すべきである。データを分析する際、70%未満の%パフォーマンスは、エタノール濃度も低い場合、毒性を示し得る。%パフォーマンスを決定するために使用した式は、以下である:
% 細胞 = (試料中の細胞数/対照中の細胞数)x100
【0224】
(表40)サッカロミセス・セレビシエに対する細胞濃度分析からの結果
【0225】
(表41)ピキア・スチピチスに対する細胞濃度分析からの結果
【0226】
(表42)ザイモモナス・モビリスに対する細胞濃度分析からの結果
【0227】
実施例17:P.スチピチスを用いたセルロース試料の振盪フラスコ発酵
要約
糖添加せずにP.スチピチス培養物におけるエタノール産生について13種類の試料を試験した。セルラーゼ(Accellerase 1000(登録商標)酵素複合体、Genencor)の存在下および非存在下でこれらを試験した。この実験に対して使用した装置および試薬を下記表43〜45で挙げる。
【0228】
(表43)装置およびメンテナンス頻度
【0229】
(表44)振盪フラスコ試験で使用したYSI成分
【0230】
(表45)振盪フラスコ発酵に対して使用した化学物質
【0231】
ARS Culture Collectionから得た再水和凍結乾燥培養物から、P.スチピチスNRRL Y-7124の斜面培地を調製した。Yeast Mold(YM)ブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に斜面培地材料の一部を画線し、30℃で2日間インキュベートした。100mLの培地(40g/Lグルコース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素、6.56g/Lペプトン、40g/Lキシロース、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコに1個のコロニーを接種し、25℃および100rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、光学密度が6.79であり、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を選択し、試験フラスコ全てに接種した。
【0232】
試験容器は、100mLの培地(1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素および6.56g/Lペプトン)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコであった。増殖フラスコ培地に糖(グルコースまたはキシロース)は添加しなかった。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、試験材料の添加前にフラスコにろ過滅菌(0.22μmフィルター)した培地を添加した。加圧滅菌処理は試料含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料(表46で列挙)を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。試料P132-100を含有するフラスコは、pHを5.0にするために0.4mLの1M NaOHの添加が必要であった。このフラスコを96時間以上、30℃および150rpmでインキュベートした。
【0233】
同時糖化および発酵(SSF)を試みるために、原料1種あたり2本組みのフラスコの一方のセットに、Accellerase(登録商標)酵素複合体(フラスコ1本あたり1.25mL、最も推奨される用量はバイオマス1グラムあたり0.25mL、Genencor)を添加した。2本組みフラスコの他方のセットには、Accellerase(登録商標)酵素複合体を添加しなかった。全部で52本のフラスコを分析した。
【0234】
6本の対照フラスコも分析した。陽性対照フラスコには、Accellerase(登録商標)酵素複合体を添加しておよび添加せずに、100mLフラスコ1本あたり2.5グラムの濃度(25グラム/L)で、SolkaFloc 200NF粉末セルロース(ロット#UA158072、International Fiber Corporation)を添加した。さらに、糖(グルコースおよびキシロース)のみを含有する対照を使用した。
【0235】
(表46)各フラスコに添加した各原料の量
【0236】
分析
アルコール脱水素酵素アッセイに基づき、YSI生化学分析装置を用いて(YSI、Interscience)、エタノール濃度について試料を分析した(表47、48および49)。14,000rpmで20分間試料を遠心し、-20℃で上清を保存した。分析前にエタノールが0〜3.2g/Lの間となるようにこの試料を希釈した。分析中に膜の完全性が維持されていることを確認するために、およそ30試料ごとに2.0g/Lエタノールの標準物質を分析した。
【0237】
結果
【0238】
(表47)対照フラスコの結果
【0239】
(表48)Accellerase(登録商標)1000酵素複合体非存在下での振盪フラスコの結果
【0240】
(表49)Accellerase(登録商標)1000酵素複合体存在下での振盪フラスコの結果
【0241】
実施例18:セルラーゼアッセイ
要約
温度およびpHの至適条件下で工業用セルラーゼ(Accellerase(登録商標)1000、Genencor)を用いて、セルラーゼ感受性について13種類の試料を試験した。
【0242】
プロトコール
本プロトコールはNREL「Laboratory Analytical Procedure LAP-009 Enzymatic Saccharification of Lignocellulosic Biomass」の改変法である。2本組みで、50mL試験管中の10mLの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.8)および40mg/mLテトラサイクリン(細菌増殖防止のため)に材料の試料を添加した。各試験管に添加した試料の量は表50で挙げる。一部の試料は混合困難であったので(P132、P132-10、P132-100)、より低い濃度で添加した。0.2グラムのSolkaFloc 200NF粉末セルロース(ロット#UA158072、International Fiber Corporation)の陽性対照および陰性対照(試料なし)も加えた。体積を総量で20mLにするのに十分な逆浸透(RO)水を試験管に添加した。クエン酸緩衝液および水の両方を使用前に50℃に加熱した。
【0243】
バイオマス1グラムあたり0.25mLの用量(Genencorにより推奨される最大用量)で各試験管にAccellerase(登録商標)1000酵素を添加した。この試験管を45°の角度で150rpmおよび50℃(Genencorにより推奨)で72時間、インキュベートした。0、3、6、9、12、18、24、48および72時間(表52および53)で試料を採取し、14,000rpmで20分間遠心し、上清を-20℃で凍結した。表51に記載の条件を用いてYSI生化学分析装置(Interscience)を使用して試料中のグルコース濃度を分析した。2.500グラムのグルコース(Sigma Cat# G7528-5KG、Lot#:107H0245)を蒸留水中で溶解することによって、2.5g/Lのグルコース標準溶液を調製した。溶解したら、容量フラスコ中で蒸留水で総体積を1Lにした。毎週新鮮な標準物質を調製し、4℃で保存した。
【0244】
(表50)各試料の添加量
【0245】
(表51)振盪フラスコ試験で使用したYSI成分
【0246】
結果
(表52)セルラーゼアッセイ結果
【0247】
(チャート1)グルコース濃度(上位4種類の産生試料)
【0248】
次のように試験管中で消化されたセルロース量を計算した:
g/mLグルコースx20mL(試料体積)x0.9(セルロース加水分解時に添加した水分子に対する補正のため)。
【0249】
次のように、グルコースとして放出された総試料の割合(下記表53)を計算した:
消化されたセルロースg/添加した試料g(詳細については表5参照)*100
【0250】
(表53)セルラーゼアッセイ結果
【0251】
実施例19:ピキア・スチピチスを用いた振盪フラスコ発酵
要約
表36からの最大の%パフォーマンスを有する4種類のセルロース系材料を用いて、ピキア・スチピチスを用いた振盪フラスコ発酵を行った。
【0252】
プロトコール
表54〜56で概説するパラメーターの元で実験を行った。
【0253】
(表54)装置およびメンテナンス頻度
【0254】
(表55)振盪フラスコ試験で使用したYSI成分
【0255】
(表56)振盪フラスコ発酵に対して使用した化学物質
【0256】
種材料の開発
次の振盪フラスコ実験全てに対して、次の手順を用いて種フラスコを調製した。
【0257】
ARS Culture Collectionから得た再水和凍結乾燥培養物から、P.スチピチスNRRL Y-7124の作業用細胞バンクを調製した。15%v/vグリセロール中のP.スチピチス培養物を含有する凍結バイアルを-75℃で保存した。凍結融解した作業用細胞バンク材料の一部をYeast Mold(YM)ブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に画線し、30℃で2日間インキュベートした。使用前にこのプレートを4℃で2日間保持した。100mLの培地(40g/Lグルコース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素、6.56g/Lペプトン、40g/Lキシロース、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコに1個のコロニーを接種し、25℃および100rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、光学密度が4から8の間で、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を使用して、試験フラスコ全てに接種した。
【0258】
試料A132-10、A132-100、G132-10およびG132-100を使用して3回の実験を行った。実験#1では、様々な濃度のキシロースおよび一定濃度のグルコースで、エタノール濃度についてこれらの4種類の試料を試験した。実験#2では、表36の実験で使用した原料の2倍の濃度で、エタノール濃度についてこれらの4種類の試料を試験した。最後に、実験#3では、キシロースおよびグルコース濃度の両方を同時に変化させながら、エタノール濃度についてこれらの4種類の試料を試験した。
【0259】
実験#1-キシロース濃度の変動
下記表57で挙げるとおりの様々なキシロース濃度で4種類のセルロース系試料(A132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を試験した。
【0260】
(表57)実験#1フラスコの培地成分
【0261】
試験容器には100mLの培地を添加した(全部で40本、250mLエレンマイヤーフラスコ)。表57で概説したキシロースおよびグルコース量で、5種類の様々なタイプの培地を調製した。さらに、この培地は、1.7g/L酵母窒素原基礎培地(Becton Dickinson #291940)2.27g/L、尿素(ScholAR Chemistry #9472706)および6.56g/Lペプトン(Becton Dickinson #211677)を含有した。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、試験材料の添加前に、ろ過滅菌(0.22 μmフィルター)した培地をフラスコに添加した。フラスコを室温で4日間保持し、使用前に雑菌混入(混濁)について調べた。加圧滅菌処理は試料含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験材料(5g/100mLでA132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを30℃および150rpmで72時間インキュベートした。
【0262】
残念ながら、試験中にフラスコを1本(100%キシロースの試料A132-100)破損した。従って、インキュベーション後24時間の全結果を1本のフラスコとして報告する。インキュベーション72時間後、セルロース系材料(5.0g)の元の量の100%を100%キシロースフラスコに添加し(全部で7本のフラスコ、試料A132-100を含有する1本のフラスコを破損した。)、さらに48時間、上記のようにインキュベートした。
【0263】
(表58)インキュベーション時間72時間での100%キシロースフラスコへの原料の添加
【0264】
分析
インキュベーション時間0、6、12、24、36、48および72時間に、40本の試験フラスコから試料を採取した。さらに、100%キシロースフラスコ中での原料の第二の量の添加後24および48時間で試料を採取した(表58参照)。
【0265】
アルコール脱水素酵素アッセイに基づきYSI生化学分析装置を用いて(YSI、Interscience)、全部で292種類の試料をエタノール濃度について分析した。14,000rpmで20分間、試料を遠心し、上清を-20℃で保存した。注目すべきことに、時間0の試料は、0.45μmシリンジフィルターによるろ過を必要とした。分析前に、0-3.2g/Lエタノールになるようにこの試料を希釈する。膜の完全性が維持されていることを確認するために、2.0g/Lエタノールの標準物質をおよそ30試料ごとに分析した。
【0266】
全部で47種類の試料を細胞数について分析した。インキュベーション72時間およびさらなるセルロース系材料の添加後48時間に、試料を採取する。適切に希釈した試料を0.05%トリパンブルーと混合し、ノイバウエル血球計算盤に載せた。40Xの倍率で細胞を計数した。
【0267】
実験#2-2X原料濃度の分析
試験容器(全部で8本、250mLエレンマイヤーフラスコ)には100mLの培地を入れた。この培地には、40g/Lグルコース、40g/Lキシロース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地(Becton Dickinson #291940)、2.27g/L尿素(ScholAR Chemistry #9472706)および6.56g/Lペプトン(Becton Dickinson #211677)が含有されていた。実験#1のようにフラスコを準備した。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料(10g/100mLのA132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを30℃および150rpmで72時間以上インキュベートした。
【0268】
分析
0、6、12、24、36、48および72時間のインキュベーション時間で、8本の試験フラスコから試料を得た。実験#1のように、56種類の試料のエタノール分析を行い、表59で報告する。実験#1と同様に72時間の試料に対して細胞計数を行い、表60で示す。
【0269】
(表59)2倍の原料を用いた場合のフラスコ中のエタノール濃度
【0270】
(表60)2倍の原料を用いたフラスコ中の72時間のインキュベーション時間での細胞濃度
【0271】
実験#3-様々なキシロースおよびグルコース濃度
下記の表(表60)で挙げるとおりの様々なキシロースおよびグルコース濃度で、4種類のセルロース系試料(A132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を試験した。
【0272】
(表61)実験#3のフラスコの培地成分
【0273】
試験容器(全部で32本、250mLエレンマイヤーフラスコ)には100mLの培地を入れた。表61で概説した量のキシロースおよびグルコースを用いて4種類の異なるタイプの培地を調製した。さらに、この培地には、1.7g/L酵母窒素原基礎培地(Becton Dickinson # 291940)2.27g/L尿素(ScholAR Chemistry #9472706)および6.56g/Lペプトン(Becton Dickinson #211677)が含有されていた。このフラスコを実験#1のように調製した。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料(A132-10、A132-100、G132-10およびG132-100)を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを30℃および150rpmで72時間インキュベートした。
【0274】
分析
0、6、12、24、36、48および72時間のインキュベーション時間に、32本の試験フラスコから試料を採取した(表62-65参照)。アルコール脱水素酵素アッセイに基づきYSI生化学分析装置を用いて(YSI、Interscience)、エタノール濃度について全部で224種類の試料を分析した。14,000rpmで20分間試料を遠心し、上清を-20℃で保存した。注目すべきことに、一部の試料は、遠心および、次に、0.45μmシリンジフィルターによるろ過を必要とした。分析前にエタノールが0〜3.2g/Lの間となるようにこの試料を希釈した。YSI膜の完全性が維持されていることを確認するために、2.0g/Lエタノールの標準物質をおよそ30試料ごとに分析した。
【0275】
(表62)エタノール結果試料A132−10
*実験#3からの分析
【0276】
(表63)エタノール結果試料A132−100
*実験#3からの分析
**1本のフラスコの分析に基づく全結果
【0277】
(表64)エタノール結果試料G132−10
*実験#3からの分析
【0278】
(表65)エタノール結果試料G132−100
*実験#3からの分析
【0279】
細胞計数のために72時間のインキュベーションで試料を採取した(表66〜67参照)。適切に希釈した試料を0.05%トリパンブルーと混合し、ノイバウエル血球計算盤に載せた。40Xの倍率で細胞を計数した。
【0280】
結果
1本の種フラスコを使用して、全ての実験#1および#2試験フラスコに接種した。種フラスコの光学密度(600nm)を測定したところ、5.14となり、その細胞濃度は4.65x108個細胞/mLとなった(表65-66)。従って、試験フラスコ中の最初の細胞濃度はおよそ4.65x106個細胞/mLであった。
【0281】
第二の種フラスコを使用して、実験#3フラスコに接種した。種フラスコの光学密度(600nm)は5.78であり、細胞濃度は3.75x108個細胞/mLとなった。従って、試験フラスコ中の最初の細胞濃度はおよそ3.75x106個細胞/mLであった。
【0282】
(表66)72時間のインキュベーション時間での細胞計数
*増殖72時間後、試料への雑菌混入が激しかった。これは、糖添加なしではピキアがあまり増殖せず、混入雑菌(非滅菌試料由来)がピキアより多く増殖することできたからと予想される。
【0283】
(表67)添加後(100%キシロースおよびグルコース)48時間のインキュベーション時間での細胞計数
【0284】
実施例20:P.スチピチスおよびS.セレビシエに対するリグノセルロース系試料の毒性試験
要約
2種類のエタノール産生培養物、サッカロミセス・セレビシエおよびピキア・スチピチスに対する毒性について、37種類の試料を分析した。この実験において、培養物の飢餓と試料の毒性を区別するために、試料にグルコースを添加した。
【0285】
(表68)毒性試験に対する条件
【0286】
プロトコール
使用したプロトコールの要約を表68で挙げる。毒性試験で使用した化学物質の説明は表69で挙げる。試験の各週に、各微生物に対して2本の対照フラスコ(試料添加なし)を行った。全部で82本のフラスコを分析した。
【0287】
実験中、インキュベーションの最初の24時間において、試料C、C-1e、C-5eおよびC-1Oeを含有するP.スチピチスのフラスコ中でエタノールまたは細胞は見られなかった。結果を確認するために、この試験を繰り返した。2回目の試験によって、試料C、C1E、C5EおよびC10Eをフラスコに添加した際にP.スチピチス増殖が幾分阻害されることが確認された。
【0288】
(表69)毒性試験に対して使用した化学物質および材料
【0289】
(表70)毒性試験で使用したYSI成分
【0290】
試験試料
少量の試料に適切なコーヒーグラインダーを用いて7種類の試験試料(全てCの記号表示を有する。)を研削した。肉眼で見て適応する粒径(試料間)になるようにこの試料を研削した。試料番号C-100eは容易に小さな粒径に研削された。
【0291】
6種類のP試料(25グラム/リットル)を除き、50グラム/リットルの濃度になるように全試料をフラスコに添加した。これらの試料の色は白色から灰色がかった白色で、外見は綿毛状であり、これらのフラスコは50グラム/リットル濃度で適切に混合されない(十分な自由液体ではない。)。試料Sは容易に溶解し、後により高濃度でフラスコに添加し得る。将来的には100グラム/リットルで試料AおよびGを添加し得る。
【0292】
下記のように2種類の微生物を用いて試験を行った。
【0293】
サッカロミセス・セレビシエATCC 24858(American Type Culture Collection)
American Type Culture Collectionから入手した再水和凍結乾燥培養物から、S.セレビシエATCC24858の作業用細胞バンクを調製した。15%v/vグリセロール中のS.セレビシエ培養物を含有する凍結バイアルを-75℃で凍結した。凍結融解した作業用細胞バンク材料の一部をYeast Mold(YM)ブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に画線し、30℃で2日間インキュベートした。培地(20g/Lグルコース、3g/L酵母抽出物および5.0g/Lペプトン、pH5.0)50mLを含有する250mLエレンマイヤーフラスコにYMプレートから1個のコロニーを接種し、25℃および200rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、ODが9-15であり、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を増殖フラスコに接種するために使用するものとした。増殖23時間後、種フラスコのODは低く(5.14)、細胞数が少なかった(1.35x108個細胞/mL)。注目すべきことに、種プレートから採取したコロニーは通常より小さかった。従って、0.5mLの種材料(計画した0.1mLではない。)を各試験容器に添加した。
【0294】
試験容器は、100mLの上述の滅菌培地を含有する500mLエレンマイヤーフラスコであった。試験材料の添加前に、全フラスコを121℃および15psiで加圧滅菌処理した。加圧滅菌処理は試料の含量を変化させるので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料を添加した。試験試料に加え、0.5〜1.0mL(0.5〜1.0%v/v)の種フラスコ材料を各フラスコに添加した。上述のようにこのフラスコを72時間インキュベートした。
【0295】
ピキア・スチピチス(ARS Culture Collection)
ARS Culture Collectionから入手した再水和凍結乾燥培養物から、P.スチピチスNRRL Y-7124の作業用細胞バンクを調製した。15%v/vグリセロール中のP.スチピチス培養物を含有する凍結バイアルを-75℃で凍結する。凍結融解した作業用細胞バンク材料の一部をYeast Mold(YM)ブロス+20g/L寒天(pH5.0)上に画線し、30℃で2日間インキュベートした。使用前にこのプレートを4℃で最長5日間維持した。100mLの培地(40g/Lグルコース、1.7g/L酵母窒素原基礎培地、2.27g/L尿素、6.56g/Lペプトン、40g/Lキシロース、pH5.0)を含有する250mLエレンマイヤーフラスコに1個のコロニーを接種し、25℃および125rpmで24時間インキュベートした。増殖23時間後に試料を採取し、光学密度(UV分光光度計で600nm)および純度(グラム染色)について分析した。これらの結果に基づき、光学密度が5-9であり、混入なくグラム染色された1本のフラスコ(種フラスコと呼ぶ。)を使用して、試験フラスコ全てに接種した。
【0296】
試験容器は、100mLの上述の滅菌培地を含有する250mLエレンマイヤーフラスコであった。全フラスコを空のまま121℃および15psiで加圧滅菌処理し、ろ過滅菌(0.22 μmフィルター)した培地を試験材料の添加前にそのフラスコに添加した。加圧滅菌処理は試料の含量を変化させ、ろ過滅菌は固体の滅菌に不適当なので、試験材料は滅菌しなかった。雑菌混入の可能性を抑えるために、(接種前ではなく)接種時に試験試料を添加した。試験試料に加えて、種フラスコ材料1mL(1%v/v)を各フラスコに添加した。このフラスコを上述のように72時間インキュベートした。
【0297】
分析
接種直前に種フラスコから試料を採取し、24および72時間にそれぞれフラスコを試験し、直接計数することにより細胞濃度について分析した。適切に希釈したS.セレビシエおよびP.スチピチスの試料を0.05%トリパンブルーと混合し、ノイバウエル血球計算盤に載せた。40Xの倍率で細胞を計数した。
【0298】
0、6、12、24、36、48および72時間の時点で各フラスコから試料を採取し、アルコール脱水素酵素アッセイに基づきYSI生化学分析装置を用いて(YSI、Interscience)、エタノール濃度について分析した。14,000rpmで20分間、試料を遠心し、上清を-20℃で保存した。分析前に、0-3.2g/Lエタノールになるようにこの試料を希釈した。分析中に膜の完全性が維持されていることを確認するために、2.0g/Lエタノールの標準物質をおよそ30試料ごとに分析した。
【0299】
計算
対照フラスコと細胞数およびエタノール濃度を比較するために、次の計算を使用した。
%パフォーマンス=(試験フラスコ中のエタノール濃度/対照中のエタノール)*100%
細胞=(試験フラスコ中の細胞数/対照フラスコ中の細胞数)*100
【0300】
結果
S.セレビシエの種フラスコの光学密度(600nm)は5.14であり、細胞濃度は1.35x108個細胞/mLであった。0.5mLの種フラスコ材料を各試験フラスコに添加した。従って、各フラスコ中の出発細胞濃度は6.75x105/mLであった。試験第2週の間、S.セレビシエの種フラスコの光学密度(600nm)は4.87であり、細胞濃度は3.15x107個細胞/mLであった。1mLの種フラスコ材料を各試験フラスコに添加した。従って、各フラスコの出発細胞濃度は6.30x105/mLであった。0時間の試料採取時間のS.セレビシエのフラスコのpHは表71で示す。フラスコ内容物のpHは、S.セレビシエ増殖に対する至適pHの範囲内(pH4-6)であった。pH調整は必要なかった。
【0301】
(表71)試料採取時間0時間のS.セレビシエのフラスコのpH
*「S」はスクロースを指す。
*「C」はトウモロコシを指す。
*「ST」はデンプンを指す。
【0302】
S.セレビシエのフラスコ中のエタノール濃度およびパフォーマンスを表72および73で示す。最大エタノール濃度はSシリーズから得られた。
【0303】
(表72)S.セレビシエのフラスコ中のエタノール濃度
*第2週に分析
試料番号の記号については表72参照。
【0304】
(表73)S.セレビシエのフラスコにおけるパフォーマンス
*第2週に分析
【0305】
S.セレビシエのフラスコ中の細胞濃度および%細胞を表74で示す。全フラスコで高細胞数が認められたが、全ての細胞がエタノールを産生している訳ではないと思われる。
【0306】
(表74)S.セレビシエの細胞数および%細胞
【0307】
P.スチピチスの種フラスコの光学密度(600nm)は5.01であり、細胞濃度は3.30x108個細胞/mLであった。1mLの種フラスコ材料を各試験フラスコに添加した。従って、各フラスコの出発細胞濃度は3.30x106/mLであった。試験第2週の間、P.スチピチスの種フラスコの光学密度(600nm)は5.45であり、細胞濃度は3.83x108個細胞/mLであった。1mLの種フラスコ材料を各試験フラスコに添加した。従って、各フラスコの出発細胞濃度は3.83x106/mLであった。0時間の試料採取時間のP.スチピチスのフラスコのpHは表75で示す。フラスコ内容物のpHは、P.スチピチス増殖に対する至適pHの範囲内(pH4-7)であった。pH調整は必要なかった。
【0308】
(表75)試料採取時間0時間のP.スチピチスのフラスコのpH
【0309】
P.スチピチスのフラスコのエタノール濃度およびパフォーマンスは表76および77で示す。最大エタノール濃度はGおよびAシリーズであった。フラスコC-30e、C-50eおよびC-100eも高濃度エタノールを含有した。P.スチピチスのフラスコ中の細胞濃度および%細胞は表78で示す。記号Sが付いたフラスコでは細胞濃度が低いことが観察された。24時間の試料採取時間において、試料C、C1E、C5EおよびC10Eを含有するフラスコでも細胞数が少ないことが観察された。
【0310】
(表76)P.スチピチスのフラスコ中のエタノール濃度
*第2週に分析
【0311】
(表77)P.スチピチスのフラスコのパフォーマンス
*第2週に分析
【0312】
(表78)P.スチピチスの細胞数および%細胞
*第2週に分析
【0313】
細胞毒性の結果の要約
ザイモモナス・モビリス
チャート1Aで示されるように、24時間の時点で、P-132-10、G-132-10およびWS-132-10を含有する試料において、細胞数増加(例えば対照よりも多い。)が認められた。その他の全ての試料存在下の細胞数は対照と同等であった。この観察から、播種後最長24時間まで、基質がZ.モビリスに対して毒性がなかったことが示される。
【0314】
36時間の時点で、対照を含め、全試料に対して、細胞数の減少(例えば細胞喪失または細胞死によるもの)が観察された。P-132-10、G-132-10を含有する試料の場合に最大の細胞数減少が認められた。この影響の推定原因は対照を含む全試料で共通である。従って、試験基質は各試料で異なり、対照には存在しないので、この影響の原因は試験基質ではない。この観察に対して考えられる理由としては、不適切な培養条件(例えば、温度、培地組成)または試料中のエタノール濃度が挙げられる。
【0315】
(チャート1A)Z.モビリスに対する細胞濃度
【0316】
チャート1Bで示されるように、基質にかかわらず、全ての細胞が各時点で同等量のエタノール(例えば5-10g/L)を産生した。チャート1Aで示される細胞数データと一致して、各試料中のエタノール濃度は、24時間の時点でピークに達した。細胞数データとは対照的に、エタノール濃度は、その後の時点で低下しなかった。これはエタノールが系から除去されなかったからであると予想された。さらに、このデータから、これらの試料中のエタノール産生は、培地中でのグルコースの発酵による結果であり得たことが示唆される。試験した基質の中でエタノール産生を向上させたものはないようであった。
【0317】
(チャート1B)Z.モビリスに対するエタノール濃度
【0318】
総合すると、チャート1Aおよび1Bから、Z.モビリスに対して約6g/L以上のエタノール濃度が毒性であり得ることが示唆される。チャート1Cで示されるように、対照に対して正規化された割合としても、データを示す。
【0319】
(チャート1C)Z.モビリスに対する%増殖およびエタノール産生
【0320】
ピキア・スチピチス
チャート2Aで示されるように、細胞数は対照と同等であった。さらに、G-132およびWS-132を含有する試料中で細胞数が僅かに減少していたが、G-132-10、G-132-100、A-132-10またはA-132-100の場合は細胞数の減少は観察されなかった。従って、基質GまたはAは毒性がないと思われる。むしろ、G-132およびWS-132の場合に観察された細胞数減少は、実験上の例外によるかまたは、何らかの形で細胞増殖を妨げる未処理の基質の存在によるものであったと思われる。全体的に、このデータから、対照および実験試料に存在するグルコースは、至適なP.スチピチス増殖を促進するために十分であると思われ、試料中にさらなる基質が存在してもこの増殖速度は向上しないことが示唆される。これらの結果から、P.スチピチスにおいて毒性がある試料がないことも示唆される。
【0321】
(チャート2A)P.スチピチスに対する細胞濃度
【0322】
チャート2Bで示されるように、チャート2Bで同じような細胞数が報告されたにもかかわらず、実験基質を含有する全試料においてエタノール産生の大幅な増加が観察された。試験した3回の各時点で、エタノール濃度が時間とともに上昇した。エタノールの最大濃度は、A-132-10に対して48時間の時点で観察された(例えばおよそ26.0g/L)。エタノール産生レベルが最大である基質濃度をチャート2Bで示される細胞数データと比較することによって、P.スチピチスは、エタノール濃度上昇に感受性がないと思われることが分かる。さらに、エタノール産生は細胞数には関連がなく、むしろ試料中に存在する基質のタイプに関連があると思われる。
【0323】
(チャート2B)P.スチピチスに対するエタノール濃度
【0324】
総合すると、チャート2Aおよび2Bで示される結果から、実験用基質はP.スチピチスの増殖向上を促進しないが、それらはこの細胞タイプにより産生されるエタノール量を大幅に増加させることが示唆される。チャート2Cで示されるように、対照に対して正規化された割合としてもデータを示す。
【0325】
(チャート2C)P.スチピチスに対する%増殖およびエタノール産生
【0326】
サッカロミセス・セレビシエ
チャート3Aで示されるように、G-132-100、A-132、A-132-10、A-132-100およびWS-132は、対照と比較して細胞数増加を僅かに促進した。何れの試料に対しても細胞数の顕著な減少は観察されなかった。これらの結果から、S.セレビシエにおいて毒性がある試料はないことが示唆される。
【0327】
(チャート3A)S.セレビシエに対する細胞濃度
【0328】
チャート3Bで示されるように、対照と比較して、各細胞タイプで処理した細胞においてエタノール産生の向上が観察された。最大量のエタノールを含有する試料をチャート3Aで示される細胞数データと比較することによって、5g/Lを上回るエタノール濃度が細胞数に対して悪影響を有し得たことが示唆される。しかし、この所見は全ての試料に当てはまる訳ではない。
【0329】
(チャート3B)S.セレビシエに対するエタノール濃度
【0330】
チャート3Cで示されるように、対照に対して正規化された割合としてもデータを示す。
【0331】
(チャート3C)S.セレビシエに対する%増殖およびエタノール産生
【0332】
結論として、試験した試料の中でZ.モビリス、P.スチピチスまたはS.セレビシエにおいて毒性であると思われるものはなかった。さらに、P.スチピチスは、試験した実験用基質からエタノールを産生することについて3種類の細胞タイプの中で最も有効であると思われた。
【0333】
その他の態様
本発明の多くの態様を記載してきた。しかし、当然のことながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変をなし得る。
【0334】
例えば、本繊維は、何らかの所望の形態であり得、様々な異なる形態を有し得る。一般に、セルロース系材料は表面積が大きいことが望ましい。場合によって、この繊維は単層または多層シートに組み込まれ得、例えばこの繊維はHEPAフィルターなどの一部であり得る。このシート材料の表面積は、例えば約1から500m2/gであり得る。繊維性材料は、スクリーンまたはメッシュの形態で、重ねられ得る、例えばメルトブローされ得る、折り畳まれ得るかまたはその他の形状で与えられ得る。繊維は押出されるかまたは共押出され得る。
【0335】
本繊維は、ナノスケール、例えば約1000nm未満、例えば、500nm、250nm、100nm、50nm、25nm未満またはさらに1nm未満から、より大きい粒径、例えば、100ミクロン、200ミクロン、500ミクロンまたはさらには1000ミクロン超または粒子の凝集体まで、何らかの所望の粒径を有し得る。
【0336】
バイオマス基質について本明細書中で考察してきたが、このような基質は、その他の基質、例えば、全開示が参照により本明細書中に組み入れられる2009年10月16日出願の米国特許出願第61/252,300号で開示されている無機および合成基質と組み合わせて使用することができる。
【0337】
本繊維または本繊維を含有する繊維性材料は、微生物および/または酵素で前処理することができ、および/または本繊維または繊維性材料は、糖化または発酵などのバイオプロセス中に微生物および/または酵素と接触させることができる。
【0338】
上記で考察されるように、微生物の代わりにまたは微生物に加えて、酵素を繊維上に固定化することができる。
【0339】
セルロースおよび/またはバイオマスのリグニン部分など、バイオマスを分解する酵素およびバイオマス分解生物は、様々なセルロース分解性酵素(セルラーゼ)、リグニナーゼまたは様々な低分子バイオマス分解代謝産物を含有するかまたは産生する。これらの酵素は、結晶性セルロースまたはバイオマスのリグニン部分を分解するために相乗的に作用する酵素の複合体であり得る。セルロース分解性酵素の例としては、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼおよびセロビアーゼ(β-グルコシダーゼ)が挙げられる。糖化中、セルロース系基質は最初に、ランダムな位置でエンドグルカナーゼにより加水分解され、オリゴマー中間体が生成する。次に、これらの中間体は、セロビオヒドロラーゼなどの、末端側から切断するグルカナーゼに対する基質となり、セルロースポリマーの末端からセロビオースが生成する。セロビオースは、水溶性の、グルコースの1,4-結合二量体である。最後に、セロビアーゼがセロビオースを切断し、グルコースが得られる。
【0340】
セルラーゼはバイオマスを分解することができ、真菌または細菌由来であり得る。適切な酵素には、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、フミコラ(Humicola)属、フザリウム(Fusarium)属、チエラビア(Thielavia)属、アクレモニウム(Acremonium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属およびトリコデルマ(Trichoderma)属由来のセルラーゼが含まれ、フミコラ、コプリナス(Coprinus)、チエラビア、フザリウム、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、アクレモニウム、セファロスポリウム(Cephalosporium)、シタリジウム(Scytalidium)、ペニシリン(Penicillium)またはアスペルギルス(Aspergillus)の種(例えば欧州特許第458162号)が含まれ、特にフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)(シタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)として再分類、例えば、米国特許第4,435,307号参照)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、メリピルス・ギガンテウス(Meripilus giganteus)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、アクレモニウム種、アクレモニウム・ペルシシナム(Acremonium persicinum)、アクレモニウム・アクレモニウム(Acremonium acremonium)、アクレモニウム・ブラシペニウム(Acremonium brachypenium)、アクレモニウム・ジクロモスポルム(Acremonium dichromosporum)、アクレモニウム・オブクラバツム(Acremonium obclavatum)、アクレモニウム・ピンケルトニエ(Acremonium pinkertoniae)、アクレモニウム・ロセオグリセウム(Acremonium roseogriseum)、アクレモニウム・インコロラツム(Acremonium incoloratum)およびアクレモニウム・フラツム(Acremonium furatum)から選択される株;好ましくは、種フミコラ・インソレンスDSM 1800、フザリウム・オキシスポルムDSM 2672、ミセリオフトラ・サーモフィラCBS 117.65、セファロスポリウム種RYM-202、アクレモニウム種CBS 478.94、アクレモニウム種CBS 265.95、アクレモニウム・ペルシシナムCBS 169.65、アクレモニウム・アクレモニウムAHU 9519、セファロスポリウム種CBS 535.71、アクレモニウム・ブラシペニウムCBS 866.73、アクレモニウム・ジクロモスポルムCBS 683.73、アクレモニウム・オブクラバツムCBS 311.74、アクレモニウム・ピンケルトニエCBS 157.70、アクレモニウム・ロセオグリセウムCBS 134.56、アクレモニウム・インコロラツムCBS 146.62およびアクレモニウム・フラツムCBS 299.70Hから選択される株によって産生されるものが含まれる。セルロース分解酵素はクリソスポリウム、好ましくは、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)の株から得ることもできる。さらに、トリコデルマ(特に、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)およびトリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii))、好アルカリ性バチルス(例えば、米国特許第3,844,890号および欧州特許第458162号参照)およびストレプトミセス(例えば欧州特許第458162号参照)を用いることができる。
【0341】
適切なセロビアーゼとしては、NOVOZYME 188(商標)の商品名で販売されているアスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のセロビアーゼが挙げられる。
【0342】
商品名ACCELLERASE(登録商標)、例えばAccellerase(登録商標)1500酵素複合体としてGenencorから入手可能なものなどの酵素複合体を用いることができる。Accellerase(登録商標)1500酵素複合体は、主にエクソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ(2200-2800CMC U/g)、ヘミ−セルラーゼおよびβ-グルコシダーゼ(525-775pNPG U/g)といった複数の酵素活性を含有し、4.6から5.0のpHを有する。酵素複合体のエンドグルカナーゼ活性は、カルボキシメチルセルロース活性単位(CMC U)で表され、一方、β-グルコシダーゼ活性はpNP-グルコシド活性単位(pNPG U)で表される。ある態様において、Accellerase(登録商標)1500酵素複合体およびNOVOZYME(商標)188セロビアーゼの混合物が使用される。
【0343】
ゆえに、その他の態様が次の特許請求の範囲の範囲内となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス材料上に固定化されている微生物および/または酵素を使用する、低分子量の糖を生成物に変換することを含む方法。
【請求項2】
前記バイオマス材料が官能化バイオマス繊維を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
変換が、前記微生物が前記低分子量の糖の少なくとも一部を炭化水素、アルコールまたは水素に変換することを可能にすることを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールがエタノールを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記微生物が酵母を含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項6】
前記酵母がS.セレビシエ(S.cerevisiae)およびP.スチピチス(P.stipitis)からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記微生物が細菌を含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項8】
前記細菌がザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記官能化バイオマス繊維を生成させるためにバイオマス繊維に照射することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項10】
照射が、電離放射線で照射することを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
照射が粒子ビームを用いて行われる、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記バイオマス材料がセルロース系またはリグノセルロース系材料を含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項13】
前記バイオマス繊維が0.25m2/gより大きいBET表面積を有する、請求項2記載の方法。
【請求項14】
変換が発酵を含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項15】
前記バイオマス繊維が、紙、紙製品、紙くず、木材、削片板、おがくず、農業廃棄物、汚水、サイレージ、草、もみ殻、バガス、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザルアサ、マニラアサ、藁、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、スイッチグラス、アルファルファ、乾草、ココナツヘア、綿花、海草、藻およびそれらの混合物からなる群から選択されるバイオマスに由来する、請求項2記載の方法。
【請求項16】
前記バイオマス繊維が、内部繊維を有するバイオマス原料由来であり、その内部繊維が実質的に露出される程度に剪断されている、請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記バイオマス繊維が70%を超える気孔率を有する、請求項2記載の方法。
【請求項18】
前記変換の工程が少なくとも140%の%パフォーマンスを示す、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項19】
変換後に前記バイオマス繊維を回収し、第2の後続の変換プロセスにおいて該繊維を再使用することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項20】
前記バイオマス繊維が単層または多層シートの形態で提供される、請求項2記載の方法。
【請求項21】
前記バイオマス繊維が、重なり、折り畳まれている繊維性材料の形態でまたはスクリーンもしくはメッシュの形態で提供される、請求項2記載の方法。
【請求項22】
前記バイオマス繊維が、押出されるかまたは共押出されている、請求項2記載の方法。
【請求項23】
前記繊維がナノスケールの平均粒径を有する、請求項2記載の方法。
【請求項24】
変換が、前記低分子量の糖およびバイオマスを液体培地に導入することを含み、前記繊維または前記繊維を含有する繊維性材料を微生物および/または酵素で前処理してから、該繊維または材料を該培地に導入することをさらに含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項25】
極性官能基を有するバイオマス材料と、
相補的な官能基を有する微生物および/または酵素と、
液体培地と
を含む混合物。
【請求項26】
バイオマス繊維と、バイオマス繊維上に固定化されている微生物および/または酵素とを含む、組成物。
【請求項27】
前記繊維が官能基を有し、前記微生物および/または酵素が相補的官能基を有する、請求項26記載の組成物。
【請求項1】
バイオマス材料上に固定化されている微生物および/または酵素を使用する、低分子量の糖を生成物に変換することを含む方法。
【請求項2】
前記バイオマス材料が官能化バイオマス繊維を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
変換が、前記微生物が前記低分子量の糖の少なくとも一部を炭化水素、アルコールまたは水素に変換することを可能にすることを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールがエタノールを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記微生物が酵母を含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項6】
前記酵母がS.セレビシエ(S.cerevisiae)およびP.スチピチス(P.stipitis)からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記微生物が細菌を含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項8】
前記細菌がザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記官能化バイオマス繊維を生成させるためにバイオマス繊維に照射することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項10】
照射が、電離放射線で照射することを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
照射が粒子ビームを用いて行われる、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記バイオマス材料がセルロース系またはリグノセルロース系材料を含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項13】
前記バイオマス繊維が0.25m2/gより大きいBET表面積を有する、請求項2記載の方法。
【請求項14】
変換が発酵を含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項15】
前記バイオマス繊維が、紙、紙製品、紙くず、木材、削片板、おがくず、農業廃棄物、汚水、サイレージ、草、もみ殻、バガス、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザルアサ、マニラアサ、藁、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、スイッチグラス、アルファルファ、乾草、ココナツヘア、綿花、海草、藻およびそれらの混合物からなる群から選択されるバイオマスに由来する、請求項2記載の方法。
【請求項16】
前記バイオマス繊維が、内部繊維を有するバイオマス原料由来であり、その内部繊維が実質的に露出される程度に剪断されている、請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記バイオマス繊維が70%を超える気孔率を有する、請求項2記載の方法。
【請求項18】
前記変換の工程が少なくとも140%の%パフォーマンスを示す、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項19】
変換後に前記バイオマス繊維を回収し、第2の後続の変換プロセスにおいて該繊維を再使用することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項20】
前記バイオマス繊維が単層または多層シートの形態で提供される、請求項2記載の方法。
【請求項21】
前記バイオマス繊維が、重なり、折り畳まれている繊維性材料の形態でまたはスクリーンもしくはメッシュの形態で提供される、請求項2記載の方法。
【請求項22】
前記バイオマス繊維が、押出されるかまたは共押出されている、請求項2記載の方法。
【請求項23】
前記繊維がナノスケールの平均粒径を有する、請求項2記載の方法。
【請求項24】
変換が、前記低分子量の糖およびバイオマスを液体培地に導入することを含み、前記繊維または前記繊維を含有する繊維性材料を微生物および/または酵素で前処理してから、該繊維または材料を該培地に導入することをさらに含む、先行する請求項の何れか一項記載の方法。
【請求項25】
極性官能基を有するバイオマス材料と、
相補的な官能基を有する微生物および/または酵素と、
液体培地と
を含む混合物。
【請求項26】
バイオマス繊維と、バイオマス繊維上に固定化されている微生物および/または酵素とを含む、組成物。
【請求項27】
前記繊維が官能基を有し、前記微生物および/または酵素が相補的官能基を有する、請求項26記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図5M】
【図5N】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
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【図5K】
【図5L】
【図5M】
【図5N】
【公表番号】特表2012−527241(P2012−527241A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511966(P2012−511966)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035290
【国際公開番号】WO2010/135347
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(509284598)キシレコ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035290
【国際公開番号】WO2010/135347
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(509284598)キシレコ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
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