バイオマス加工方法
バイオマス原料(例えば、植物バイオマス、動物バイオマスおよび都市廃棄物バイオマス)を加工処理して、燃料などの有用な生成物を生成させる。例えば、原材料を糖溶液に変換することができ、次いでその糖溶液を発酵させてエタノールを生成させることができるシステムを記載する。ジェット混合器の運転によって容器中でバイオマス原料を糖化するが、この容器は、液状媒体および糖化剤も含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年5月20日出願の米国特許仮出願第61/179,995号および2009年6月19日出願の米国特許仮出願第61/218,832号に対する恩典を主張する。これらの各特許出願の全開示は本明細書中で参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
セルロース系およびリグノセルロース系材料が多くの用途で大量に生産、加工および使用されている。このような材料は一度使用されると、廃棄物として捨てられるかまたは、例えば、汚水、バガス、おがくずおよびストーバーなど、単に廃棄物であるとみなされることが多い。
【0003】
様々なセルロース材料およびリグノセルロース材料、これらの使用ならびに用途が、米国特許第7,307,108号(特許文献1)、同第7,074,918号(特許文献2)、同第6,448,307号(特許文献3)、同第6,258,876号(特許文献4)、同第6,207,729号(特許文献5)、同第5,973,035号(特許文献6)および同第5,952,105号(特許文献7);ならびに2006年3月23日出願の「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648(特許文献8)および「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許出願公開第2007/0045456号(特許文献9)を含む様々な特許出願に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,307,108号
【特許文献2】同第7,074,918号
【特許文献3】同第6,448,307号
【特許文献4】同第6,258,876号
【特許文献5】同第6,207,729号
【特許文献6】同第5,973,035号
【特許文献7】同第5,952,105号
【特許文献8】2006年3月23日出願の「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648
【特許文献9】「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許出願公開第2007/0045456号
【発明の概要】
【0005】
概要
全般的に、本発明は、例えば酵素を用いて、材料のセルロース性の部分を低分子量の糖に変換することによって、材料、例えばセルロース系またはリグノセルロース系原料を糖化または液化するためのプロセスに関する。本発明はまた、例えば発酵によって、原料を生成物に変換することにも関する。
【0006】
本明細書で開示されるプロセスは、かさ密度が約0.5g/cm3未満、例えば約0.35g/cm3、0.25g/cm3、0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3未満又は例えば0.025g/cm3となるように物理的に前処理されている低かさ密度材料、例えばセルロース系またはリグノセルロース系原料を使用することができる。
【0007】
このような材料は、糖化、発酵またはその他の加工処理のために、液体と、例えば水又は媒体系と混合することが特に困難な場合がある。これらの材料は、そのかさ密度が低いがゆえに、液中に分散されず、その液面に浮遊する傾向がある。いくつかの例においては、材料は、疎水性であるか、高結晶質であるか、または湿潤困難であり得る。同時に、糖化された材料中の糖の最終濃度が高いものを得るかまたは加工処理後に高濃度の所望の生成物(例えば発酵後の、高濃度のエタノールまたはその他のアルコール)を得るために、比較的固体レベルが高い分散液中で原料を加工処理することが所望される。一部の例において、本明細書に記載の方法を使用して、加工処理中の分散液の固体レベルは、例えば少なくとも20、25、30、35、40、45またはさらには少なくとも50重量%溶解固体であり得る。
【0008】
本発明者らは、ある種の混合技術および装置を用いることによって、液体混合物中の原料の分散が促進され得、結果として混合物の固体レベルを向上させ得ることを見出した。本明細書で開示される混合技術および装置は、物質移動も促進し得、結果として、混合物中の反応速度が向上し得、微生物および酵素などの混合物の感受性の高い成分に対する有害性が回避されるかまたは最小限に抑えられ得る。特に、例えばジェットエアレーションおよび噴流攪拌を含むジェット混合技術によって、良好な湿潤、分散および機械的破壊がもたらされることが分かった。混合物の固体レベルを向上させることによって、より迅速に、より効率的におよびより高い費用効果でこのプロセスを進めることができ、結果として得られる最終生成物の濃度が向上し得る。
【0009】
本明細書で開示される一部のプロセスには、原料の糖化および、遠隔地から、例えば原料が生成されるかまたは保管される場所から、製造設備への原料の輸送が含まれる。ある場合において、輸送中に部分的または完全に糖化が行われ得る。このような場合において、輸送容器中で、混合、例えばジェット混合を行うことは有利であり得る。ある場合において、輸送中に糖化を完遂することができる。場合によって、輸送中に部分的または完全に発酵が行われ得る。
【0010】
ある実施において、本プロセスは、糖化前または糖化中に原料の不応性を低下させることをさらに含む。本プロセスは、原料のリグニン含量を測定し、測定されたリグニン含量に基づき、前処理が必要か否かおよびどの条件下で行うかを判定するさらなる工程を含み得る。
【0011】
ある局面において、本発明は、ジェット混合器を用いて、容器中で液状媒体および糖化剤と原料を混合することによってバイオマス原料を糖化することを含む方法を取り上げる。
【0012】
ある態様は、1以上の次の特性を含む。原料のかさ密度は約0.5g/cm3未満であり得る。原料は、例えばセルロース系またはリグノセルロース系材料であり得る。液体は水を含み得る。糖化剤は酵素を含み得る。ジェット混合器は例えば噴流攪拌機、ジェットエアレーション型混合器または吸込み室ジェット混合器を含み得る。ジェットエアレーション型混合器を使用する場合、ジェット混合器を通じて空気を注入せずに使用し得る。例えば、ジェットエアレーション型混合器が、第1のインレットラインおよび第2のインレットラインを有するノズルを含む場合、ある場合においては、両インレットラインに液体が供給される。ある場合において、混合は、液状媒体に原料を徐々に添加することと、添加と添加との間に混合することと、を含む。本方法は、混合中に、原料、液状媒体および糖化剤の混合物のグルコースレベルを監視することと、ある場合においては、糖化中の容器へのさらなる原料および糖化剤の添加と、をさらに含み得る。混合容器は、例えば、タンク、鉄道車両またはタンクローリーであり得る。糖化は、ある場合においては、原料、液状媒体および糖化剤の混合物の輸送中に部分的または完全に行われる。本方法は、容器中の混合物に乳化剤または界面活性剤を添加することをさらに含み得る。
【0013】
別の局面において、本発明は、容器内で概ねトロイダル状の流れを発生させる混合器を用いて、原料を液状媒体および糖化剤と容器中で混合することによって、バイオマス原料を糖化することを取り上げる。
【0014】
ある態様において、混合器は、一連の混合にわたり、液状媒体の全体的な温度の上昇を5℃未満に制限するように構成される。この局面は、ある態様において、上記で考察したいずれかの特性も含み得る。
【0015】
またさらなる局面において、本発明は、ジェット混合器を用いて、液状媒体中で低分子量の糖を微生物と混合することによって、低分子量の糖を生成物に変換することを含む方法を取り上げる。
【0016】
ある態様は、1以上の次の特性を含む。液状媒体は水を含み得る。微生物は酵母を含み得る。ジェット混合器は、噴流攪拌機、ジェットエアレーション型混合器または吸込み室ジェット混合器を含み得る。
【0017】
別の局面において、本発明は、タンクと、このタンク内に配置されるノズルを有するジェット混合器と、バイオマス原料をこのタンクに送達するように構成される供給器具と、計量された量の糖化剤をこのタンクに送達するように構成される供給器具と、を含む装置を取り上げる。
【0018】
ある態様は、1以上の次の特性を含む。前記のジェット混合器がモーターをさらに含み得、前記の装置は、混合中のモーター上のトルクを監視するように構成される機器をさらに含み得る。この装置はまた、トルク監視器具からのデータに基づいて原料供給器具および/または糖化剤供給器具の動作を調整する制御装置も含み得る。
【0019】
本発明はまた、糖化された混合物を構成するために容器中でバイオマス原料を糖化し、容器中の糖化された混合物に微生物を接種し、接種された糖化混合物が容器中で発酵できるようにすることを含む方法も取り上げる。
【0020】
ある場合において、発酵中に容器の内容物を輸送容器に移し、輸送容器中で発酵を持続させる。本方法は、糖化および発酵中、ジェット混合器により容器の内容物を攪拌することをさらに含む。ある態様において、本方法は、発酵混合物の酸素含量およびエタノールおよび/または糖含量を監視することをさらに含む。
【0021】
別の局面において、本発明は、通気孔を有する容器と;容器と連通している酸素供給源と;容器中の液体の酸素含量を監視するように構成される酸素モニターと;通気孔および酸素供給源を用いて、酸素モニターからのデータに応じて、液体の酸素含量を調整するように構成される制御装置と、を含む発酵システムを取り上げる。
【0022】
酸素添加が必要な場合、容器への酸素の流速は比較的低いものとなり得る。例えば、制御装置は、0.2vvm未満、例えば0.1、0.05、0.025未満またはさらには0.01vvm未満の割合で容器に酸素を送り込むように構成され得る。
【0023】
発酵システムは、容器中の液体の糖濃度および/またはエタノール濃度を監視するように構成される発酵モニターと;発酵モニターから受信したデータに基づき発酵を停止させるように構成される制御装置と、をさらに含み得る。ある場合において、このシステムは、制御装置から受信したシグナルに応答して発酵を停止させるように構成される発酵停止モジュールを含む。
【0024】
本明細書で言及されるかまたは本明細書に添付される、全ての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、それらが含有する全てについてそれらの全体において参照により組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、セルロースからグルコースへの酵素的加水分解を示す図である。
【図2】図2は、グルコース溶液の生成及び輸送を介した、原料からエタノールへの変換を示す流れ図である。
【図2A】図2Aは、ある態様による糖化システムの説明図である。
【図3】図3は、本明細書で開示される溶液及び懸濁液を使用するために改装されたエタノール生産設備の概略図である。
【図4】図4は、ノズルから流出する噴流を示す図表である。
【図4A】図4Aは、ノズルから流出する噴流を示す図表である。
【図5】図5は、ある態様による噴流攪拌機の斜視図である。
【図5A】図5Aは、図5の噴流攪拌機の羽根車およびジェットチューブの拡大透視図である。
【図5B】図5Bは、代替的な羽根車の拡大透視図である。
【図6】図6は、ある態様による吸込み室ジェット混合ノズルの図である。
【図6A】図6Aは、別の態様による吸込み室ジェット混合システムの透視図である。
【図7】図7は、別の代替的態様による吸込み室ジェット混合システムに対するジェット混合ノズルの斜視図である。
【図8】図8は、タンクおよびこのタンクに配置されるジェットエアレーション型混合システムの斜視図であり、タンクは、ジェット混合器および付属の配管が見えるように透明であるものとして示す。
【図8A】図8Aは、図8のジェットエアレーションシステムで使用されるジェット混合器の透視図である。
【図8B】図8Bは、空気取り入れ口が提供される同様のシステムの斜視図である。
【図9】図9は、ある態様によるジェットエアレーション型混合器の断面図である。
【図10】図10は、代替的な態様によるジェットエアレーション型混合器の断面図である。
【図11】図11は、ジェット混合器の、異なる構成を含有するタンクにおける代替的なフローパターンを示す図である。
【図12】図12は、ジェット混合器の、異なる構成を含有するタンクにおける代替的なフローパターンを示す図である。
【図13】図13は、ジェット混合器の、異なる構成を含有するタンクにおける代替的なフローパターンを示す図である。
【図14】図14は、ある態様による、バックフラッシュ中にタンクで生じるフローパターンを示す図である。
【図15】図15および15Aは、パルスエアー型の可搬式混合システムを用いる、輸送中に混合を行うために設定されたタンクローリーおよび鉄道車両をそれぞれ示す。
【図16】図16は、代替的な態様による混合器で使用される混練頭部の2つの態様の透視図である。
【図16A】図16Aは、代替的な態様による混合器で使用される混練頭部の2つの態様の透視図である。
【図17】図17は、タンクのノズルが多階層で配置されていることを示す、別の態様によるジェットエアレーション型システムの側面図である。
【図18】図18は、混合中のタンク壁沿いのホールドアップを最小限に抑える装置の上面図である。
【図18A】図18Aは、混合中のタンク壁沿いのホールドアップを最小限に抑える装置の透視図である。
【図19】図19は、タンク壁沿いのホールドアップも最小限に抑えながら混合を提供する様々な水ジェット装置の図である。
【図20】図20は、タンク壁沿いのホールドアップも最小限に抑えながら混合を提供する様々な水ジェット装置の図である。
【図21】図21は、タンク壁沿いのホールドアップも最小限に抑えながら混合を提供する様々な水ジェット装置の図である。
【図21A】図21Aは、タンク壁沿いのホールドアップも最小限に抑えながら混合を提供する様々な水ジェット装置の図である。
【図22】図22は、底部が半球状であり、上部からタンクへ延びる2個のジェット混合器を有するタンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書に記載の方法を用いて、バイオマス(例えば植物バイオマス、動物バイオマスおよび都市廃棄物バイオマス)を加工処理し、本明細書に記載のものなどの有用な中間体及び生成物を生成させることができる。システム及びプロセスは、本明細書に記載されており、容易に入手可能であるが、発酵などのプロセスにより加工処理することが困難であり得る、セルロース系および/またはリグノセルロース系材料を原材料として使用することができる。本明細書に記載のプロセスの多くによって、原料の不応性レベルを効果的に低下させることができ、バイオプロセス処理(例えば本明細書に記載のいずれかの微生物、例えばホモ酢酸産生細菌またはヘテロ酢酸産生細菌など、および/または本明細書に記載のいずれかの酵素)、熱加工処理(例えば気化または熱分解)または化学的方法(例えば、酸による加水分解または酸化)などによって、加工処理を容易にすることができる。機械的処理、化学的処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発などのいずれか1以上の本明細書に記載の方法を用いて、バイオマス原料を処理するかまたは加工処理することができる。これらの技術又は本明細書および他所に記載の他の技術などの2、3またはさらには4以上を組み合わせて、様々な処理システム及び方法を使用することができる。
【0027】
本明細書で開示されるプロセスは、かさ密度が約0.5g/cm3未満、例えば約0.35g/cm3、0.25g/cm3、0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3未満又は例えば0.025g/cm3未満となるように物理的に前処理されている、低かさ密度材料、例えばセルロース系またはリグノセルロース系原料を使用することができる。かさ密度は、ASTM D1895Bを用いて測定される。簡単に述べると、この方法は、既知体積のメスシリンダーに試料を満たし、試料の重量を得ることを含む。かさ密度は、試料の重量グラムを、メスシリンダーの既知体積、立方センチメートルで割ることによって計算される。
【0028】
原料を容易に加工処理できる形態に変換するために、糖化剤、例えば酵素または酸、糖化と呼ばれるプロセスによって、原料中のグルカンまたはキシラン含有セルロースを糖などの低分子の炭水化物に加水分解する。次に、例えば、単細胞タンパク質プラント、酵素製造プラントまたは燃料プラント、例えばエタノール製造設備などの既存の製造プラントにおいて、低分子量の炭水化物を使用することができる。
【0029】
液状媒体、例えば水溶液などの媒体中で材料および糖化剤を組み合わせることによって、セルロースを含む材料を糖化剤で処理することができる。本明細書に記載の混合特性を有する1以上の混合器、例えば1以上のジェット混合器を用いて、糖化剤、材料および液状媒体を完全に混合する。いくつかの実施において、材料および/または糖化剤は、一度に全てを添加するのではなく、徐々に添加する。例えば、液状媒体に材料の一部を添加し、材料が少なくとも部分的に糖化されるまで糖化剤と混合することができ、この時点で材料の第2の分量を混合物に添加する。このプロセスは、所望の糖濃度が得られるまで継続し得る。
【0030】
バイオマスのセルロースおよび/またはリグニン部分などのバイオマスを分解する酵素およびバイオマス分解生物は、様々なセルロース分解性酵素(セルラーゼ)、リグニナーゼまたは様々な小分子バイオマス分解代謝産物を含有するかまたは産生する。これらの酵素は、結晶性セルロースまたはバイオマスのリグニン部分を分解するために相乗的に作用する酵素の複合体であり得る。セルロース分解性酵素の例としては、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼおよびセロビアーゼ(β-グルコシダーゼ)が挙げられる。図1を参照して、セルロース系基質は最初に、ランダムな位置でエンドグルカナーゼにより加水分解され、オリゴマー中間体が生成する。次に、これらの中間体は、セロビオヒドロラーゼなどの、末端側から切断するグルカナーゼに対する基質となり、セルロースポリマーの末端からセロビオースが生成する。セロビオースは、水溶性の、グルコースの1,4-結合二量体である。最後に、セロビアーゼがセロビオースを切断し、グルコースが得られる。適切なセルラーゼは本明細書中の後のセクションで考察する。
【0031】
(a)製造プラントのタンク(例えば、少なくとも4000、40,000、400,000、4,000,000または40,000,000Lの容積を有するタンク)中でおよび/または(b)移動中、例えば鉄道車両、タンクローリー中でまたは超大型タンカーまたは船倉中で、糖化プロセスを部分的または完全に行うことができる。完全な糖化に必要な時間は、作業条件および使用する原料および酵素に依存する。制御された条件下で製造プラントにて糖化が行われる場合、セルロースは、約12-96時間で実質的に完全にグルコースに変換され得る。移動中に糖化が部分的または完全に行われる場合、糖化に要する時間は長くなり得る。
【0032】
ある場合において、約4から7、例えば約4.5から6または約5から6のpHで糖化が行われる。
【0033】
糖溶液中のグルコースの最終濃度は比較的高いこと、例えば15%超または20、30、40、50、60、70、80、90超またはさらには95重量%超であることが一般には好ましい。これにより、輸送しようとする体積が少なくなり、溶液中での微生物増殖も阻害される。糖化後、例えば蒸発または蒸留により、水の体積を減少させ得る。
【0034】
酵素とともに原料に添加する水量を制限することによって、比較的高い濃度の溶液を得ることができる。糖化がどの程度行われるかを調節することによって、この濃度を調節することもできる。例えば、より多くの原料を溶液に添加することによって、濃度を高くすることができる。例えば、溶液の温度を上昇させることによって、および/または下記で考察するように界面活性剤を添加することによって、媒体中の原料の溶解度を向上させることができる。例えば、溶液を40〜50℃、50〜60℃、60〜80℃の温度またはさらに高い温度に維持することができる。
【0035】
図2を参照して、アルコール、例えばエタノールを製造するためのプロセスは、この処理の前および/または後に、例えばその大きさを縮小するために、例えば場合によっては原料を物理的に前処理すること(工程110)と、場合によってはその不応性を低下させるために原料を処理すること(工程112)と、糖溶液を生成させるために原料を糖化すること(工程114)と、を含み得る。下記で詳細に考察するように、液状媒体中、例えば水中の原料の分散液を酵素と混合することによって、糖化を行うことができる(工程111)。糖化中または糖化後、例えばパイプライン、鉄道車両、トラックまたは荷船によって、製造プラントに混合物(輸送中に糖化を部分的または完全に行おうとする場合)または溶液を輸送することができる(工程116)。プラントにおいて、所望の生成物、例えばエタノールを生成させるために、溶液をバイオプロセス処理することができ(工程118)、次いでこのエタノールを例えば蒸留によってさらに加工処理する(工程120)。このプロセスの個々の工程を下記で詳述する。必要に応じて、示されるように、リグニン含量を測定する工程(工程122)および作業パラメーターを設定または調整する工程(工程124)を、プロセスの様々な段階で、例えば原料の構造を変化させるために使用される処理工程の直前に、行うことができる。これらの工程が含まれる場合、完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる2009年2月11日出願の米国特許仮出願第61/151,724号に記載のように、原料のリグニン含量の変動を補うために作業パラメーターが調整される。
【0036】
例えば図2Aで示されるシステムを用いて、混合工程111および糖化工程114を行うことができる。このシステムは運搬装置130を含み、これは、原料前処理モジュール132によって、原料のサイズを縮小するためにおよび場合によってはその不応性を低下させるために処理された(上記工程110および112)原料を受け取る。原料134をタンク136に送達するが、このタンク136は液状媒体138、例えば水を含有し、これが弁付き配管系(示さない。)を通じてタンクに送達される。例えば完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる2010年1月20日出願の米国特許仮出願第61/296,658号に記載のように、液状媒体への原料の初期分散を促進するために分散システムを使用し得る。
【0037】
計量装置142を含むホッパー140からタンクに糖化剤が送達される。1以上のジェット混合器によってタンクの内容物が混合される。ジェット混合器144は図2Aで図示するが、適切なジェット混合器の例は下記で詳述する。ジェット混合器は、ポンプおよび/またはローター(示さない。)を駆動するモーター146を用いて噴流を生じさせる。モーター146によりもたらされるトルクはタンク中の混合物の固体レベルと相関があり、これは同様に、混合物が糖化している程度を反映する。トルクはトルクモニター148により測定され、このトルクモニター148は、運搬装置130を駆動するモーター150に、およびホッパー140の計量装置142にもシグナルを送信する。従って、タンクの内容物の糖化に応じて、処理済み原料および酵素の供給が中断および再開され得る。トルクモニターにより測定されるデータを使用して、例えば、ローターを使用する混合器の場合はRPMがより低くなるか、またはポンプ駆動混合器の場合は噴射速度がより低くなるように、ジェット混合器を調整することもできる。このシステムは、トルクモニターの代わりにまたはこれに加えて、モーターの全負荷電流を測定するアンプモニター(示さない。)を含み得る。ある場合において、ジェット混合器は、モーター速度を調整することを可能にする可変周波数ドライブ(VFD)を含み得る。
【0038】
本システムは、液状媒体の温度を監視し、温度の上昇に応答して原料の供給速度および/または混合状態を調整する熱モニター(示さない。)も含む。液状媒体の温度が酵素を変性させる温度になるのを防ぐために、このような温度フィードバックループを使用することができる。
【0039】
本明細書に記載のシステムにおいて1以上のポンプが使用される場合、容積型(PD)ポンプ、例えば一軸ねじまたはねじ式PDポンプが使用されることが一般に好ましい。
【0040】
ある場合において、製造プラントは、例えば既存の穀物を原料とするかもしくは糖を原料とするエタノールプラントまたはバイオプロセス処理システムより上流で装置(これには、典型的なエタノールプラントにおいては、通常、穀物受け入れ装置、ハンマーミル、スラリー混合器、調理器具および液化装置が含まれる。)を取り除くかまたは廃止することによって改装されているものであり得る。従って、プラントに受け入れられる原料は、発酵装置に直接投入される。改装プラントは図3で概略的に示す。この方式での既存の穀物原料のまたは糖原料のエタノールプラントの使用は、完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる2010年2月11日出願の米国特許出願第12/704,521号に記載されている。
【0041】
ある態様において、糖化された原料(糖溶液)を個別の製造プラントに、または個別のタンクにすら輸送せずに、糖化に使用される同じタンクまたは他の容器において糖溶液に接種を行い、発酵させる。同じ容器中で発酵を完遂することができるかまたはこの方式で開始して、次いで上記で考察されるように輸送中に完遂することができる。単一タンクでの糖化および発酵は、完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる2010年1月20日出願の米国特許仮出願第61/296,673号に記載されている。
【0042】
一般に、例えば、酸素レベルを監視し、タンクに通気するかまたは必要に応じて混合物に通気することによって、発酵容器中の酸素レベルを調節すべきである。例えば加熱または重亜硫酸ナトリウムの添加によって、エタノールレベルが低下し始めた際に発酵プロセスを停止させ得るように、容器中のエタノールレベルを監視することも望ましい。その他の発酵停止方法としては、過酸化物(例えば、ペルオキシ酢酸または過酸化水素)を添加すること、コハク酸またはその塩を添加すること、容器の内容物を冷却すること、または酸素拡散速度を低下させることが挙げられる。これらの方法のいずれか2以上の組み合わせを使用し得る。輸送中に発酵を行うかまたは完遂しようとする場合、輸送容器(例えば鉄道車両のタンクまたはタンクローリー)には、酸素モニターおよびエタノールモニターを含む制御ユニットおよび重亜硫酸ナトリウム(またはその他の発酵停止添加物)をタンクに送達するための送達システムおよび/または発酵を停止させるための、タンク中のパラメーターを調整するためのシステムが装備され得る。
【0043】
必要に応じて、発酵中にジェット混合を使用することができ、発酵が糖化と同じ容器中で行われる場合、同じ装置を使用することができる。しかし、ある態様において、ジェット混合は必要ない。例えば、発酵が輸送中に行われる場合、鉄道車両またはタンクローリーの振動により適正な攪拌がもたらされ得る。
【0044】
原料、酵素および液体の混合
混合の特徴
様々なタイプの混合装置が下記に記載され、他の混合装置を使用し得る。適切な混合器は、それらが高速循環流、例えばトロイダル状または楕円パターンの流れを発生させるという共通点がある。一般に、好ましい混合器は高いバルク流速を示す。好ましい混合器は、比較的低いエネルギー消費でこの混合作用をもたらす。剪断および/または熱が糖化剤(または微生物、例えば発酵の場合)に悪影響を与え得るので、混合器により生じる剪断力が比較的低く、液状媒体の加熱を回避することも一般に好ましい。下記で詳細に考察するように、一部の好ましい混合器は、ローターまたは羽根車を含み得る混合要素に注入口を通じて混合物を引き込み、次いで混合要素からの混合物を出口ノズルを通じて放出する。この循環動作およびノズルから流出する高速の噴流によって、混合要素の向きに依存して、液面に浮遊している材料またはタンク底部に沈殿している材料の分散が促進される。混合要素は、浮遊および沈殿材料両方を分散させるために様々な向きに設置することができ、これらの混合要素の向きは場合により調整することができる。
【0045】
ある好ましい混合システムにおいて、周囲流体に接触する際の噴流速度v0は約2から300m/s、例えば約5から150m/sまたは約10から100m/sである。この混合システムの電力消費は、100,000Lタンクの場合、約20から1000KW、例えば30から570KWまたは50から500KWまたは150から250KWであり得る。費用効果のために電力使用が少ないことが一般に好ましい。
【0046】
ジェット混合
ジェット混合は、流体媒質、この場合、バイオマス原料、液状媒体および糖化剤の混合物、への高速液体の潜りジェットまたは複数の潜りジェットの放出を含む。液体の噴流は流体媒質に浸透し、そのエネルギーは乱流および幾分かの初期熱によって消費される。この乱流は速度勾配(流体剪断)と関連する。周囲流体が加速され、噴流に同伴し、この第2の同伴流は、噴流ノズルからの距離が広がるにつれて増加する。第2の流れの推進力は、噴流が拡大する際、流れが壁面、床面または障害物に衝突しない限り、概ね一定のままである。流れが何らかの障害物に衝突する前に長く持続するほど、多くの液体が第2の流れと同伴するようになり、タンクまたは容器中の大きな流れが増大する。流れが障害物に遭遇した場合、タンクの形状、例えば流れが障害物に衝突する角度に多かれ少なかれ依存して、第2の流れは推進力を喪失する。タンク壁に対する水力損失が最小限に抑えられるように、噴流の方向を定めおよび/またはタンクを設計することが一般に望ましい。例えば、図22で示されるように、タンクの底部がアーチ状(例えばドーム状のヘッドプレート)であり、ジェット混合器が側壁の比較的近くに向けられることが所望され得る。タンク底部(下部のヘッドプレート)は、何らかの所望のドーム状構造を有し得るかまたは楕円形もしくは円錐形の形状を有し得る。
【0047】
ジェット混合は、駆動力が機械式ではなく水力式である殆どのタイプの液体/液体および液体/固体混合とは異なる。機械式攪拌機が行うように流体を剪断し、混合容器の周囲でそれを推進する代わりに、ジェット混合器は、流体をタンク内の1以上のノズルを通じて推進し、他の流体を巻き込む高速噴流を生じさせる。その結果、剪断(流体対流体)および循環が生じ、これにより、タンク内容物が効率的に混合される。
【0048】
図4を参照して、潜りジェットからのコアフローと周囲流との間の速度勾配が大きいことによって、渦が生じる。図4Aは、潜りジェットの一般的な特徴を示す。潜りジェットが周りの周囲環境に拡大する場合、速度プロファイルは、ノズルからの距離(x)が拡大するにつれて平坦になる。また速度勾配dv/drは、混合領域(ノズルからの円錐状膨大部)を定義する渦を生じさせるように、ある一定の距離xでr(噴流の中心線からの距離)とともに変化する。
【0049】
空気中の潜りジェットの実験研究において(この結果は、水を含むあらゆる流体に適用可能である。)、Albertsonら(「Diffusion of Submerged Jets」Paper 2409, Amer. Soc. of Civil Engineers Transactions, Vol. 115:639-697, 1950, at p. 657)は、v(x)r=0/v0(中心線速度)、v(r)x/v(x)r=0(ある一定のxにおける速度プロファイル)、Qx/Q0(流れ同伴)およびEx/E0(xに伴うエネルギー変化)に対する無次元相関式を作成した:
(1)中心線速度、v(x)r=0/v0:
(2)何らかのxでの速度プロファイル、v(r)x/v(x)r=0:
(3)何らかのxでの流れおよびエネルギー:
式中、
v(r=0)=潜りジェットの中心線速度(m/s)、
v0=ノズルから発生する際の噴流速度(m/s)、
x=ノズルからの距離(m)、
r=噴流の中心線からの距離(m)、
D0=ノズルの直径(m)、
Qx=ノズルからの距離xの位置で所定の平面を横切る流体の流れ(me/s)、
Q0=ノズルから生じる流体の流れ(m3/s)、
E=ノズルからの距離xの位置での所定の平面を横切る流体のエネルギー束(m3/s),
E0=ノズルから生じる流体のエネルギー束(m3/s)。
(「Water Treatment Unit Processes: Physical and Chemical」, David W. Hendricks, CRC Press 2006, p. 411.)。
【0050】
ジェット混合は、大きな容積(1,000gal超)および低粘度(1,000cPs以下)で適用する場合に特に費用効果が大きい。殆どの場合、ジェット混合器のポンプまたはモーターが水面下にならないこと、例えばポンプが使用される場合、これが概ね容器の外に存在することも一般に有利である。
【0051】
ジェット混合のある1つの長所は、(幾分かの局部的な加熱があり得る場合、ノズルの出口を直接調整する以外に)、周囲流体の温度が仮に上昇したとしても僅かであることである。例えば、温度上昇は5℃未満、1℃未満であり得るかまたは測定可能な上昇ではない。
【0052】
噴流攪拌機
あるタイプの噴流攪拌機を図4-4Aで示す。このタイプの混合器は、例えばIKAから、ROTOTRON(商標)の商品名で市販されている。図4を参照して、混合器200はモーター202を含み、このモーター202は駆動軸204を回転させる。混合要素206は駆動軸204の端部に取り付けられる。図4Aで示されるように、混合要素206は側板208を含み、この側板の内側に羽根車210がある。矢印で示されるように、この羽根車がその「前」方向に回転する場合、この羽根車210は、側板の開口上端212を通じて液体を引き込み、開口下端214を通じて液体を放出する。端部214から流出する液体は、高速流または噴流の形態である。羽根車210の回転方向が逆である場合、液体は下端214を通じて引き込まれ、上端212を通じて放出され得る。例えばタンクまたは容器中の液面付近または液面上に浮遊している固体を吸い込むために、これを使用することができる(「上」および「下」は図4での混合器の向きを指し、この混合器は、上端が下端の下になるようにタンク中で方向付けられ得ることに注意されたい。)。
【0053】
側板208は、その末端に隣接する張り出し部216および218を含む。これらの張り出し部は、このタイプの混合器により観察される概ねトロイダル状である流れに関与すると考えられている。側板および羽根車の形状も、比較的少ない電力消費を用いて高速流に流れを集中させる。
【0054】
好ましくは、側板208と羽根車210との間の間隔は、材料が側板を通過する際に材料が過剰に粉砕されるのを回避するために十分なものである。例えば、この間隔は、混合物中の固体の平均粒径の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍であり得る。
【0055】
ある実施において、シャフト204は、このシャフトを通じて気体送達を可能にするように構成される。例えば、シャフト204は、気体が送達される穴(示さない。)および気体が混合物に流出する1以上の開口部を含み得る。この開口部は、混合を促進するために側板208内および/またはシャフト204の長さ方向に沿った他の位置にあり得る。
【0056】
羽根車210は、高速で側板を通じて液体を引き込む何らかの所望の形状を有し得る。この羽根車は、好ましくは図4Aで示されるようなマリン羽根車であるが、例えば図4Bで示されるようなラシュトン羽根車または、例えばある程度の軸流をもたらすために傾斜している改良型ラシュトン羽根車など、異なる設計を有し得る。
【0057】
側板を通じて高速流を生じさせるために、モーター202は好ましくは、高速、高トルクモーター、例えば500から20,000RPM、例えば3,000から10,000RPMで動作可能である。しかし、混合器が大きいほど(例えば、側板が大きいほどおよび/またはモーターが大きいほど)、回転速度が低くなり得る。従って、5hp、10hp、20hpまたは30hp以上など、大型の混合器を使用する場合、モーターは、より低い回転速度、例えば2000RPM未満、1500RPM未満またはさらには500RPM以下で動作するように設計され得る。例えば、10,000〜20,000リットルのタンクを混合するような大きさの混合器は、900から1,200RPMの速度で動作し得る。混合状態は、例えば固体の糖化ゆえに、経時的に変化するので、比較的一定の羽根車速度を維持するために、モーターのトルクは好ましくは自動調整式である。
【0058】
有利なことに、混合器は、噴流を所望の方向に向けるために、あらゆる所望の角度またはタンクの位置に向けることができる。さらに、上記で考察したように、羽根車の回転方向に依存して、混合器を使用して側板のいずれかの端部から流体を引き込むことができる。
【0059】
ある実施において、流体を上方に噴射するように1以上のジェット混合器を配置し(「上方噴出(up pump)」)、流体を下方に噴射するように1以上のジェット混合器を配置して(「下方噴出(down pump)」)、2以上のジェット混合器を容器中に設置することができる。ある場合において、上方噴出混合器は、混合器により生じる乱流を促進するために、下方噴出混合器に隣接して設置される。必要に応じて、加工処理中に、1以上の混合器を上昇流と下降流との間で切り替え得る。液状媒体中の原料の初期分散中に、全てまたは殆どの混合器を上方噴出モードに切り替えることは、上方噴出により表面で顕著な乱流が生じるので、特に原料が液面に送り出されるかまたは噴き出される場合、有利であり得る。上方噴出は、通気され得る表面に対して気体を泡立てることによって液体からのCO2の除去を促進するために、発酵中に使用することもできる。
【0060】
吸込み室ジェット混合器
別のタイプのジェット混合器は、ポンプから加圧流体を送達する一次ノズルと、周囲流体が一次ノズルとより広い注入口との間の圧力低下によって引き込まれる、一次ノズルに隣接する吸引注入口と、吸入口と二次ノズルとの間に伸びる吸込み室と、を含む。高速流体の噴流は二次ノズルから流出する。
【0061】
このタイプの混合器の例は図6で示す。示されるように、混合器600において、ポンプからの加圧液体(示さない。)は、注入口を通じて通路602に流れ込み、一次ノズル603を通じて流出する。周囲液体は、加圧液体の流れにより生じる圧力低下によって、吸入口604を通じて吸込み室606に引き込まれる。複合流は、二次ノズル608を通じて吸込み室から周囲液体に高速で流出する。流出する液体噴流のジェット作用により、吸込み室および周囲液体の両方で混合が起こる。
【0062】
同様の原理に従い動作する混合システムを図6Aで示す。この設計を具体化している混合器は、Flygt(商標)ジェット混合器の商品名でITT Water and Wastewaterから市販されている。システム618において、ポンプ620は、吸引ノズルシステム622を通じて、タンク(示さない。)に送達される一次流動を生じさせる。吸引ノズルシステム622は、上述の一次ノズル603と同様の方式で機能する一次ノズル624を含み、これによって、一次ノズルから流出する流体により誘発される圧力低下ゆえに、排出チューブ628の隣接する開口端626に周囲流体が引き込まれるようになる。次に、二次ノズルとして機能する、排出チューブ628の他方の端部630から、複合流が高速噴流として流出する。
【0063】
排出装置ノズルと呼ばれる図7で示されるノズルは同様の原理で動作する。この設計を具現化するノズルは、TeeJet(商標)の商品名で市販されている。示されるように、ノズル700において、加圧液体が注入口702を通って流れ、一次ノズル704から流出し、拡散器708の開口端706に周囲液体を引き込む。複合流は、流入速度Aと引き込まれる周囲流体の流速Bとの合計である循環流速A+Bで、拡散器の反対側の開口端710から流出する。
【0064】
ジェットエアレーション型混合器
使用することができる別のタイプのジェット混合システムは、水処理業界で「ジェットエアレーション混合」と呼ばれる。水処理業界において、これらの混合器は通常、通気を行うために、加圧空気および液体混合物の噴流を送達するために使用される。しかし、本明細書において場合によって、下記で考察されるように、ジェットエアレーション型混合器が加圧ガスなしで使用される。ジェットエアレーション混合器の動作原理は、最初に、清浄化のための加圧ガスとのそれらの使用の内容で記載されている。
【0065】
図8-8Bで示される混合器800などの渦ジェット混合器は、中央ハブ804上に放射状に取り付けられる多重ジェット802を含む。噴流の放射パターンは、タンク全体にわたり混合エネルギーを均一に分布させる。タンクの重心軸の周りにトロイダル流を与えるために、示されるように、タンクの中央に渦ジェット混合器を設置し得る。渦ジェット混合器は、この渦ジェット混合器に高速液体を供給する配管806に取り付けられ得る。図8Bで示される態様において、配管812を通じて空気も渦ジェット混合器に供給される。タンクの外側に設置され、タンクの側壁の注入口810を通じて液体を引き込むポンプ808によって高速液体が送達される。
【0066】
図9および10は、気体および液体流を混合し、高速噴流を噴出するように設計される2種類のタイプのノズル配置を示す。これらのノズルは、図8および8Aで示される渦ジェット混合器とは幾分異なるが同様に機能するように構成される。図9で示されるシステム900において、一次流体または動力流体(motive fluid)は、液体ライン902を通じて内部ノズル904に向かい、このノズルを通じて液体が高速で混合部906へと移動する。二次流体、例えば圧縮空気、窒素もしくは二酸化炭素などの気体または液体は第2のライン908を通じて混合部に入り、内部ノズルを通じて混合部906に入る動力流体に取り込まれる。いくつかの例において、二次流体は、酵素の酸化を減少させるために、窒素または二酸化炭素である。2本のラインからの複合流が外部ノズル910を通じて混合タンクに噴出される。二次流体が気体である場合、微細な泡が混合物中の液体に取り込まれる。液体は、ポンプにより液体ライン902に供給される。気体が使用される場合、これはコンプレッサーにより提供される。二次流体として液体が使用される場合、これは、液体ライン902を通じて入る液体と同じ速度を有してもよいし、異なる速度でもよい。
【0067】
図10は代替的なノズル設計1000を示し、ここでは、外部ノズル1010(このうち1つのみ示す。)が、第2のライン1008と平行して配置される液体ライン1002を含む細長部材1011の長さに沿って配置される。各ノズルは、1本の外部ノズル1010および1本の内部ノズル1004を含む。動力液体と二次流体の混合は、上述のシステム900と同じように進行する。
【0068】
図11および12は、ノズルが細長部材の長さに沿って配置されるジェットエアレーション型混合システムの例を示す。図11で示される例において、細長部材1102はタンク1104の径に沿って配置され、ノズル1106は、概ね楕円形の流れの2つの領域、即ち中央の細長部材の両側、を含む所望のフローパターンを生じさせるために、ノズルと反対方向に伸びる。図12で示される例において、タンク1204は、横断面では概ね長方形であり、細長部材1202はタンクの側壁1207に沿って伸びる。この場合、ノズル1206は全て、側壁1209の反対に、同じ方向を向く。これにより、示されるフローパターンが生じ、タンク中の流れは、タンクの長さに沿って概ね中央に伸びる主軸周囲で概ね楕円形である。図12で示される態様において、ノズルは、例えば水平から約15から30度の角度で、タンク床に向かって傾けることができる。
【0069】
図13で示される別の態様において、ノズル1302、1304および吸入口1306は、タンクの内容物が、タンクの中央垂直軸の周囲でトロイダルに、回転ドーナツ状に旋回しかつ回転するように配置される。トロイダル面の周囲の流れは、タンク中央に引き下ろされ、床に沿って、壁に引き寄せられ、中央に戻り、回転する螺旋パターンを生じさせて、中央部を一掃し、固体が沈殿するのを防ぐ。トロイダルパターンは、タンク中央部へ浮遊固体を移動させるためにも有効であり、浮遊固体が底部に引き寄せられ、タンク内容物と均一になる。この結果は、連続的な螺旋状フローパターンであり、これによりタンクのデッドスポットが最小限に抑えられる。
【0070】
バックフラッシュ
ある例において、本明細書に記載のジェットノズルは閉塞することがあり、これにより、効率及び費用効果が低下し得る。ノズルを通じて動力液体の流れを逆流させることによって、ノズルの閉塞を除去し得る。例えば、図14で示されるシステムにおいて、ポンプ1404と、ノズル1408に流れる液体ライン1406との間のバルブ1402を閉じ、二次ポンプ1410を作動させることによって、これを遂行する。二次ポンプ1410はノズルを通じて流体を引き込む。次に、バルブ1402が閉じられているため、流体は垂直管1412を通って上方に移動する。この流体は、タンクを通じた再循環のために、垂直管1412からその出口1414で流出する。
【0071】
輸送/可搬式混合器における混合
上記のように、必要に応じて、例えば原料を処理するための第1の加工処理プラントとエタノールなどの最終産物の生成のための第2の加工処理プラントとの間の、混合物の輸送中に、部分的にまたは完全に糖化を行い得る。この場合、鉄道車両またはその他の可搬型の使用のために設計されたジェット混合器を用いて、混合を行うことができる。このような混合器の例は下記で考察する。図15および15Aで図示されるように、混合器1602、1604をポート1606を通じて、例えばトラック(図15)または鉄道車両(図15A)のタンクに挿入することができる。タンク外部の制御システム1608を用いて、この混合器を運転することができるが、この制御システムは、使用する混合システムのタイプに応じて、例えばモーターおよび/または供給空気もしくは圧縮空気および、混合器の動作を制御するように構成される制御装置を含み得る。通気(示さない。)も提供され得る。
【0072】
その他の混合システム/ノズル
パルスエア/流体
代替的なタイプの混合器は、混合物にパルス状に送達される気体を使用する。このような混合器は、可搬式鉄道車両混合器の例として、図15および15Aで図示する。計量された量の高圧ガスが注入されるかまたは、タンク底部付近に配置された平坦な円形ディスク(アキュムレータプレート)下でパルス状に放出される。空気が急激に放出されることによって液体に衝撃が与えられる。プレートとタンク床との間で気体が外側に移動するので、沈殿している固体が一掃される。次に、この気体がプレート上で集まって大きな楕円形の泡となる。各泡が表面に浮かび上がるので、泡が液体をその上に押し上げ、タンク周囲に向かって押し出す。この液体はタンクの側方に向かって移動し、タンク壁を底部に向かって移動する。この泡の動きによって、固体が表面に推し進められ、タンク中で概ね環状またはトロイダルの液体の循環が生じる。気体は、例えば大気、窒素または二酸化炭素であり得る。タンクは、混合中にタンクから気体を逃すことができるように通気孔が設けられる(示さない。)。
【0073】
低速攪拌機
図16および16Aは、比較的低速での回転混合のための、シャフト(示さない。)上に取り付けられるように構成される攪拌機を示す。この攪拌機は、シャフトを受けるように配置される中央の取り付けハブ1703周囲の支持アーム1701に取り付けられる、例えば2個の混合要素1702(図16)または3個の混合要素(図16A)を含み得る。
【0074】
混合要素1702は截頭錐の形態であり、それぞれ、第1の端部1704および第2の端部1706を有する。第1の端部の横断面は、第2の端部の横断面より大きい。混合要素は、この混合要素の中心軸が混合要素の回転面に対して斜めに配置される。
【0075】
第1の端部1704を通じて液体が流入し、第2の端部1706を通じてより高速で流出するような方向で攪拌機を回転させると、それにより、各混合要素の先細状の端部で乱流が生じることによって動的な流動状態が生じる。回転面に対して混合要素が傾斜していることによって、隣接するタンクまたは容器壁の近くで上方に流れ、タンクまたは容器の中央部で混合器シャフトに対して同軸上に下方に流れ、支持アーム1701の間の中間領域をその流れが通過するという、持続的な閉環状の流れを生じる傾向がある。この環状流の強さは角度の大きさに依存する。
【0076】
このタイプの混合器は、Visco-Jet(商標)の商品名でInotecから市販されている。鉄道車両またはその他の輸送コンテナに置くことができる折り畳み式混合器が入手可能である。同様のタイプの混合器は、完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,921,194号に記載されている。
【0077】
タンク壁のホールドアップの最小化
いくつかの状況において、特に理論的または実用限界に近い固体レベルにおいて、混合中に材料がタンクの側壁および/または底壁に沿って蓄積し得る。この現象は「ホールドアップ」と呼ばれ、結果的に混合が不十分となり得るので望ましくない。ホールドアップを最小限に抑え、タンク全体の良好な混合を確実にするために、いくつかのアプローチを取り得る。
【0078】
例えば、ジェット混合装置に加えて、剥離装置、例えば、「拭き取り」方式でタンクの側面を掻き取るブレードを有する装置をタンクに装備することができる。このような装置は、例えば乳業業界で周知である。適切な攪拌機としては、Walker Engineered Products, New Lisbon, WI製造の側面および底部一掃攪拌機および掻き取りブレード攪拌機が挙げられる。図18で示されるように、側面および底部一掃攪拌機1800は、タンクの軸周囲で回転するように取り付けられる中央の細長部材1802を含み得る。側壁掻き取りブレード1804は細長部材1802の各末端に取り付けられ、細長部材に対して傾斜して配置される。示される態様において、タンク底部に蓄積する材料全てを剥離するために、一対の底壁掻き取りブレード1806が細長部材1802の中間点に取り付けられる。材料がタンク底部に蓄積しない場合、これらの掻き取り装置は省略し得る。図18Aで示されるように、掻き取りブレード1804は、側壁に沿って配置される複数の掻き取り要素の形態であり得る。他の態様において、掻き取りブレードは連続したものであるかまたは何らかの他の所望の形状を有し得る。
【0079】
他の態様において、ジェット混合器それ自体、ホールドアップを最小限に抑えるように構成される。例えば、ジェット混合器は、混合中に動く、1以上の可動ヘッドおよび/または弾性部を含み得る。例えばジェット混合器は、その長さに沿って複数のジェットノズルを有する細長い回転部材を含み得る。この細長部材は、図19で示されるように平面的であり得るかまたは非平面の形状を有し得、例えばこれは、図20で示されるようなタンク壁の形状に適合し得る。
【0080】
図19を参照して、ジェット混合器ノズルは、モーター1902およびシャフト1904によって駆動される回転細長部材1900上に配置され得る。水またはその他の流体が回転部材の通路を通じて、例えばポンプ羽根車1906によって汲み上げられ、部材1900が回転する間に、噴射口1908を通じて複数の噴流として排出される。タンク側壁のホールドアップを減少させるために、部材1900の端部に開口部1910が提供され得る。
【0081】
図20で示される態様において、タンク2000の特定の形状に適合させるために、細長部材には、水平方向に伸長するアーム2002と、下方傾斜部2004と、外側及び上方傾斜部2006と、垂直伸長部2008と、が含まれる。細長部材内の通路を通じて流体が複数の噴射口38に汲み上げられ、これを通じて、細長部材が回転している間に噴流が放出される。
【0082】
図19および20で示される両態様において、噴流により混合がもたらされると同時にタンクの側壁も洗浄される。
【0083】
他の態様において、ジェット混合器は、たわみ部材およびまたは調整部材(例えば屈曲可能なチューブまたは入れ子状に嵌まり込むチューブ)を含み得、これを通じて噴流が送達される。例えば図21および21Aで図示されるように、ジェット混合装置は、米国特許第3,883,368号で開示されるようなものなど、浮遊型プールクリーナー方式のフレキシブルチューブで構成され得る。示されるシステム2100において、たわみ供給ホース2102は、タンク2106の側壁にある注入口2104から流体を送達する。供給ホース2102は、一連の浮漂2108および猿環2110を介してタンクの液面に沿って伸びる。複数のたわみホース2112はそれらの上端で、供給ホース2102の浮遊部に間隔をおいて配置されるT継手2114に固定される。たわみホース2112の遠位の開口端から流体が噴出し、その結果、タンクの内容物が混合され、タンク側壁のホールドアップが除去される。
【0084】
ある実施において、上記の態様の組み合わせを使用し得る。例えば、平面状および非平面状の回転または振動細長部材の組み合わせを使用し得る。上述の可動性のノズル配置は、互いに組み合わせておよび/または掻き取り装置と組み合わせて使用することができる。複数の可動性のノズル配置を一緒に使用することができ、例えば図19で示される2以上の回転部材をタンクに垂直に積層することができる。複数の回転部材を使用する場合、それらは、同じ方向にまたは逆方向に、および同じ速度でまたは異なる速度で回転するように構成され得る。
【0085】
材料
バイオマス材料
バイオマスは、例えばセルロース系又はリグノセルロース系材料であり得る。このような材料としては、紙および紙製品(例えばポリコート紙およびクラフト紙)、木材、木材関連材料、例えば削片板、草、もみ殻、バガス、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザルアサ、マニラアサ、藁、スイッチグラス、アルファルファ、乾草、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、ココナツヘア;およびα-セルロース含量が高い材料、例えば綿花が挙げられる。原料は、バージンスクラップ織物材料、例えば端切れ、使用後廃棄物、例えばぼろ切れから得ることができる。紙製品を使用する場合、それらはバージン材料、例えば、スクラップバージン材料であり得るかまたは、それらは使用済み廃棄物であり得る。バージン原料とは別に、使用済み廃棄物、産業廃棄物(例えばくず)および加工廃棄物(例えば紙加工からの廃水)も繊維供給源として用いることができる。バイオマス原料はまた、ヒト(例えば下水)、動物廃棄物または植物廃棄物から得られるかまたはそれらに由来し得る。さらなるセルロース性およびリグノセルロース系材料は、米国特許第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号および同第5,952,105号に記載されている。
【0086】
ある態様において、バイオマス材料は、1以上のβ-1,4結合を有し、約3,000から50,000の間の数平均分子量を有する材料であるかまたはこれらを含む炭水化物を含む。このような炭水化物は、β(1,4)-グリコシド結合の縮合を通じた(β-グルコース1)由来のセルロース(I)であるかまたはこれを含む。この結合はそれ自身、デンプンおよびその他の炭水化物に存在するα(1,4)-グリコシド結合に対するものと対照をなす。
【0087】
デンプン材料としては、デンプンそのもの、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、ジャガイモデンプンもしくはコメデンプンなど、デンプンの誘導体またはデンプンを含む材料、例えば食品もしくは農作物が挙げられる。例えば、デンプン材料は、アラカチャ、ソバ、バナナ、オオムギ、キャッサバ、葛、オカ、サゴヤシ、モロコシ、一般的な家庭用ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、ヤムイモまたは1以上のマメ類、例えば、ソラマメ、レンズマメもしくはエンドウマメであり得る。何らかの2以上のデンプン材料の混合物もデンプン材料である。
【0088】
ある場合において、バイオマスは微生物材料である。微生物供給源としては、炭水化物供給源(例えばセルロース)を含有するかまたは提供することができる、何らかの天然のまたは遺伝子改変微生物または生物、例えば、原生生物、例えば動物原生生物(例えば、鞭毛虫、アメーバ、繊毛虫および胞子虫などの原生動物)および植物原生生物(例えば、アルベオラータ、クロララクニオン、クリプト藻類、ミドリムシ目、灰色植物、ハプト藻、赤色藻類、ストラメノパイルおよび緑色植物亜界などの藻類)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、海藻、プランクトン(例えば、マクロプランクトン、メソプランクトン、ミクロプランクトン、ナノプランクトン、ピコプランクトンおよびフェムトプランクトン)、植物プランクトン、細菌(例えばグラム陽性細菌、グラム陰性細菌および特殊環境生物)、酵母および/またはそれらの混合物が挙げられる。場合によっては、微生物バイオマスは、天然供給源、例えば、海洋、湖、複数の水域、例えば海水または淡水から得るかまたは陸上から得ることができる。あるいは、またはさらに、微生物バイオマスは、培養系、例えば大規模な乾式および湿式培養系から得ることができる。
【0089】
糖化剤
適切な酵素としては、バイオマスを分解できる、セロビアーゼ及びセルラーゼが挙げられる。
【0090】
適切なセロビアーゼとしては、NOVOZYME 188(商標)の商品名で販売されているアスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のセロビアーゼが挙げられる。
【0091】
セルラーゼはバイオマスを分解することができ、真菌または細菌由来であり得る。適切な酵素には、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、フミコラ(Humicola)属、フザリウム(Fusarium)属、チエラビア(Thielavia)属、アクレモニウム(Acremonium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属およびトリコデルマ(Trichoderma)属由来のセルラーゼが含まれ、フミコラ、コプリナス(Coprinus)、チエラビア、フザリウム、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、アクレモニウム、セファロスポリウム(Cephalosporium)、シタリジウム(Scytalidium)、ペニシリウム(Penicillium)またはアスペルギルス(Aspergillus)の種(例えば欧州特許第458162号)が含まれ、特にフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)(シタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)として再分類、例えば、米国特許第4,435,307号参照)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、メリピルス・ギガンテウス(Meripilus giganteus)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、アクレモニウム種、アクレモニウム・ペルシシナム(Acremonium persicinum)、アクレモニウム・アクレモニウム(Acremonium acremonium)、アクレモニウム・ブラシペニウム(Acremonium brachypenium)、アクレモニウム・ジクロモスポルム(Acremonium dichromosporum)、アクレモニウム・オブクラバツム(Acremonium obclavatum)、アクレモニウム・ピンケルトニエ(Acremonium pinkertoniae)、アクレモニウム・ロセオグリセウム(Acremonium roseogriseum)、アクレモニウム・インコロラツム(Acremonium incoloratum)およびアクレモニウム・フラツム(Acremonium furatum)から選択される株;好ましくは、種フミコラ・インソレンスDSM 1800、フザリウム・オキシスポルムDSM 2672、ミセリオフトラ・サーモフィラCBS 117.65、セファロスポリウム種RYM-202、アクレモニウム種CBS 478.94、アクレモニウム種CBS 265.95、アクレモニウム・ペルシシナムCBS 169.65、アクレモニウム・アクレモニウムAHU 9519、セファロスポリウム種CBS 535.71、アクレモニウム・ブラシペニウムCBS 866.73、アクレモニウム・ジクロモスポルムCBS 683.73、アクレモニウム・オブクラバツムCBS 311.74、アクレモニウム・ピンケルトニエCBS 157.70、アクレモニウム・ロセオグリセウムCBS 134.56、アクレモニウム・インコロラツムCBS 146.62およびアクレモニウム・フラツムCBS 299.70Hから選択される株によって産生されるものが含まれる。セルロース分解酵素はクリソスポリウム、好ましくは、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)の株から得ることもできる。さらに、トリコデルマ(特に、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)およびトリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii))、好アルカリ性バチルス(例えば、米国特許第3,844,890号および欧州特許第458162号参照)およびストレプトミセス(例えば欧州特許第458162号参照)を用いることができる。
【0092】
商品名ACCELLERASE(登録商標)、例えばAccellerase(登録商標)1500酵素複合体としてGenencorから入手可能なものなどの酵素複合体を用いることができる。Accellerase1500酵素複合体は、主にエクソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ(2200-2800CMC U/g)、ヘミ−セルラーゼおよびβ-グルコシダーゼ(525-775pNPG U/g)といった複数の酵素活性を含有し、4.6から5.0のpHを有する。酵素複合体のエンドグルカナーゼ活性は、カルボキシメチルセルロース活性単位(CMC U)で表され、一方、β-グルコシダーゼ活性はpNP-グルコシド活性単位(pNPG U)で報告される。ある態様において、Accellerase(登録商標)1500酵素複合体およびNOVOZYME(商標)188セロビアーゼの混合物が使用される。
【0093】
ある実施において、糖化剤は、酸、例えば鉱酸を含む。酸が使用される場合、微生物にとって毒性がある副産物が生成され得、この場合、本プロセスは、このような副産物を除去することをさらに含み得る。活性化炭素(activated carbon)、例えば活性炭(activated charcoal)又はその他の適切な技術を用いて除去を行い得る。
発酵作用物質
【0094】
発酵で使用される微生物は、天然微生物および/または遺伝子改変微生物であり得る。例えば、この微生物は、細菌、例えばセルロース分解性細菌など、真菌、例えば酵母など、植物または原生生物、例えば藻類、原虫または真菌様原生生物、例えば粘菌などであり得る。これらの生物が適合性である場合、生物の混合物を使用することができる。
【0095】
適切な発酵微生物は、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、オリゴ糖または多糖などの炭水化物を発酵生成物に変換する能力を有する。発酵微生物としては、サッカロミセス(Sacchromyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Sacchromyces cerevisiae)(パン酵母)、サッカロミセス・ジスタチクス(Saccharomyces distaticus)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)など;クリベロミセス(Kluyveromyces)属、例えばクリベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)種、クリベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)種など;カンジダ(Candida)属、例えば、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)およびカンジダ・ブラシカ(Candida brassicae)、ピキア・スチピチス(Pichia stipitis)(カンジダ・シェハテ(Candida shehatae)の類縁など、クラビスポラ(Clavispora)属、例えばクラビスポラ・ルシタニエ(Clavispora lusitaniae)種およびクラビスポラ・オプンティア(Clavispora opuntiae)種など、パキソレン(Pachysolen)属、例えばパキソレン・タンノフィルス(Pachysolen tannophilus)種など、ブレタノミセス(Bretannomyces)属、例えばブレタノミセス・クラウセニ(Bretannomyces clausenii)種などの株が挙げられる(Philippidis, G.P.,1996, Cellurose bioconversion technology,in Handbook on Bioethanol:Production and Utilization, Wyman,C.E.編, Taylor & Francis, Washington, DC, 179-212)。
【0096】
市販の酵母としては、例えばRed Star(登録商標)/Lesaffre Ethanol Red(Red Star/Lesaffre、USAから入手可能)、FALI(登録商標)(Fleischmann's Yeast、division of Burns Philip Food Inc.、USAから入手可能)、SUPERSTART(登録商標)(Alltech、現Lalemandから入手可能)、GERT STRAND(登録商標)(Gert Strand AB、Swedenから入手可能)およびFERMOL(登録商標)(DSM Specialtiesから入手可能)が挙げられる。
【0097】
例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(Philippidis、1996、上出)など、細菌も発酵において使用し得る。
【0098】
添加物
抗生物質
糖化された溶液中では糖濃度が高いことが一般に好ましいが、一方で、より低い濃度が使用され得、この場合には、抗菌性の添加物、例えば広域抗生物質を低濃度、例えば50から150ppmで添加することが所望され得る。その他の適切な抗生物質としては、アンホテリシンB、アンピシリン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ピューロマイシン、ストレプトマイシンが挙げられる。抗生物質は、輸送及び保管中に微生物の増殖を阻害し、適切な濃度、例えば15から1000ppm重量、例えば25から500ppmまたは50から150ppmで使用することができる。必要に応じて、糖濃度が比較的高い場合でも抗生物質が含まれ得る。
【0099】
界面活性剤
界面活性剤の添加は糖化率を促進し得る。界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤、例えばTween(登録商標)20またはTween(登録商標)80ポリエチレングリコール界面活性剤など、イオン性界面活性剤または両性界面活性剤が挙げられる。その他の適切な界面活性剤としては、オクチルフェノールエトキシレート、例えばDow Chemicalから市販されているTRITON(商標)Xシリーズの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。溶液中、特に高濃度溶液中で生成されている糖を維持するために、界面活性剤を添加することもできる。
【0100】
糖化用培地
ある態様において、培地は次の濃度の成分を含む。
【0101】
【0102】
原料の物理的処理
ある実施において、原料は、糖化および/または発酵の前に物理的に処理される。物理的処理プロセスは、機械的処理、化学的処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発などの本明細書に記載のいずれかのものの1以上を含み得る。2、3、4またはさらに全てのこれらの技術(順序は問わず。)の組み合わせで処理方法を使用することができる。複数の処理方法を使用する場合、同時にまたは異なる時間にこれらの方法を適用することができる。バイオマス原料の分子構造を変化させるその他のプロセスも、単独でまたは本明細書中で開示されるプロセスと組み合わせて使用することができる。
【0103】
機械的処理
場合によっては、バイオマス原料を機械的に処理することが方法に含まれ得る。機械的処理としては、例えば、切断、粉砕、圧搾、研削、剪断および細切が含まれる。粉砕には、例えば、ボールミル粉砕、ハンマーミル粉砕、ローター/ステーター乾式粉砕もしくは湿式粉砕または他のタイプの粉砕が含まれ得る。他の機械的処理としては、例えば、石臼研削、粗砕、機械的剥離もしくは引裂、ピン研削またはエアーアトリッションミル粉砕が挙げられる。
【0104】
機械的処理は、セルロース系材料またはリグノセルロース系材料を「切り開き」、「力を加え」、破壊し、破砕するのに有利になることがあり、これらによって、材料のセルロースは、鎖が切断され易くなりおよび/または結晶化度が低くなる。切り開かれた材料は、照射時に酸化されやすくなっている場合もある。
【0105】
場合によっては、機械的処理は、受領されたとおりの原料の初期調製、例えば、切断、研削、剪断、微粉砕または細切などによる材料のサイズ縮小化も含み得る。例えば、場合によっては、剪断または細断によって、疎性原料(例えば再生紙、デンプン材料またはスイッチグラス)が調製される。
【0106】
あるいは、またはさらに、原材料は、他の物理的処理方法、例えば、化学処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発の1以上によって最初に物理的に処理され、次いで機械的に処理され得る。例えば照射または熱分解などの他の処理の1以上により処理した材料はより脆くなる傾向があり、従って、機械的処理によって材料の分子構造をさらに変化させることがより容易になり得るので、この一連の処理は有利になることがある。
【0107】
ある態様において、原材料は繊維性材料の形態であり、機械的処理には、繊維性材料の繊維を曝露させるための剪断が含まれる。剪断は、例えば、ロータリーナイフカッターを用いて行うことができる。原料を機械的に処理する他の方法としては、例えば、粉砕または研削が挙げられる。粉砕は、例えば、ハンマーミル、ボールミル、コロイドミル、コニカルミルもしくはコーンミル、ディスクミル、エッジミル、ウイレーミルまたはグリストミルを用いて行われ得る。研削は、例えば、石材グラインダー(stone grinder)、ピン研削盤、コーヒーグラインダーまたはバーグラインダーを用いて行われ得る。研削は、ピンミルの場合と同様に、例えば、往復ピンまたは他の要素によって行われ得る。他の機械的処理法としては、機械的剥離または引裂、材料に加圧するその他の方法およびエアーアトリッションミル粉砕が挙げられる。適切な機械的処理は、原料の分子構造を変化させる何らかのその他の技術をさらに含む。
【0108】
必要に応じて、機械的に処理した材料を、例えば平均開口径が1.59mm(1/16インチ、0.0625インチ)以下のふるいに通すことができる。ある態様において、剪断または他の機械的処理およびふるいによる処理が同時に行われる。例えば、ロータリーナイフカッターを用いて、原料の剪断および選別を同時に行うことができる。原料を固定ブレードと回転ブレードとの間で剪断して、剪断材料を得て、これをふるいに通し、容器に回収する。
【0109】
セルロース系又はリグノセルロース系材料は、乾燥状態(例えば、その表面上に自由水が殆どないかまたは全くない状態)、水和状態(例えば10重量%以下の水を吸収した状態)または例えば約10重量%から約75重量%の水を有する湿潤状態で機械的に処理することができる。繊維供給源は、水、エタノールまたはイソプロパノールなどの液体下に部分的にまたは完全に浸漬させながら機械的に処理することもできる。
【0110】
セルロース系又はリグノセルロース系材料はまた、気体(空気以外の気流または雰囲気など)、例えば酸素もしくは窒素または蒸気の下で機械的に処理することもできる。
【0111】
必要に応じて、リグニンを含む何らかの繊維性材料からリグニンを取り出すことができる。また、セルロースを含む材料の分解を促進するために、機械的処理又は照射の前又はその最中に、熱、化学物質(例えば鉱酸、塩基又は次亜塩素酸ナトリウムなどの強い酸化剤)および/または酵素で、この材料を処理することができる。例えば、酸の存在下で研削を行うことができる。
【0112】
機械的処理システムは、具体的な形態的特徴、例えば、表面積、気孔率、かさ密度など、繊維性原料の場合、縦横比といった繊維の特徴などを有する傾向を生じるように構成することができる。
【0113】
ある態様において、機械的に処理した材料のBET表面積は、0.1m2/g超、例えば0.25m2/g超、0.5m2/g超、1.0m2/g超、1.5m2/g超、1.75m2/g超、5.0m2/g超、10m2/g超、25m2/g超、35m2/g超、50m2/g超、60m2/g超、75m2/g超、100m2/g超、150m2/g超、200m2/g超またはさらには250m2/g超である。
【0114】
機械的に処理した材料の気孔率は、例えば20%超、25%超、35%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、92%超、94%超、95%超、97.5%超、99%超またはさらには99.5%超となり得る。
【0115】
ある態様において、機械的処理後に、材料のかさ密度は、0.25g/cm3未満、例えば0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3以下のかさ密度、例えば0.025g/cm3である。かさ密度は、ASTM D1895Bを用いて測定される。簡単に述べると、この方法は、既知体積のメスシリンダーに試料を満たし、試料の重量を得ることを含む。かさ密度は、試料の重量グラムを、メスシリンダーの既知体積、立方センチメートルで割ることによって計算される。
【0116】
原料が繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維は、複数回剪断されているとしても、比較的大きな(例えば、20:1を超える)平均長さ対直径比を有し得る。さらに、本明細書中に記載の繊維性材料の繊維は、長さおよび/または長さ対直径比の比較的狭い分布を有し得る。
【0117】
本明細書中で使用される場合、平均繊維幅(例えば直径)とは、およそ5,000本の繊維を無作為に選択することによって光学的に測定されるものである。平均繊維長は、補正済みの長さ加重長(length-weighted length)である。BET(Brunauer,EmmetおよびTeller)表面積は多点表面積であり、気孔率は水銀ポロシメトリーによって測定されるものである。
【0118】
原料が繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維の平均長さ対直径比は、例えば、8/1超、例えば10/1超、15/1超、20/1超、25/1超または50/1超であり得る。機械的に処理した材料の平均繊維長は、例えば約0.5mmから2.5mmの間、例えば約0.75mmから1.0mmの間であり得、第2の繊維性材料14の平均幅(例えば直径)は、例えば約5μmから50μmの間、例えば約10μmから30μmの間であり得る。
【0119】
ある態様において、原料が繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維長の標準偏差は、機械的に処理した材料の平均繊維長の60%未満、例えば平均長の50%未満、平均長の40%未満、平均長の25%未満、平均長の10%未満、平均長の5%未満またはさらには平均長の1%未満であり得る。
【0120】
ある状況において、低かさ密度材料を調製し、(例えば、別の場所への輸送を容易にし、輸送のためのコストを削減するために)その材料を高密度化し、次いでその材料をより低いかさ密度状態に戻すことが所望され得る。本明細書中に記載の方法のいずれかによって高密度化材料を加工処理することができるか、または、例えば、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/429,045号および国際公開公報第WO2008/073186号で開示されるように、本明細書中に記載の方法のいずれかによって加工処理した何らかの材料を続いて高密度化することができる。
【0121】
照射処理
材料を加工処理するためにおよび、さらなる処理加工工程および/または一連の工程に対する材料となる構造的に修飾された材料を提供するために、1以上の一連の照射処理過程を使用することができる。放射線は、例えば、原料の分子量および/または結晶化度を低下させることができる。照射によって、材料または材料をバイオプロセス処理するのに必要とされる何らかの媒体を滅菌することもできる。
【0122】
ある態様において、材料に照射するために、その原子軌道から電子を放出する物質に蓄積するエネルギーを使用する。放射線は、1)重荷電粒子、例えばα粒子もしくはプロトン、2)電子、例えばβ崩壊もしくは電子線加速器において生じるものまたは3)電磁放射線、例えば、γ線、x線もしくは紫外線によって供給され得る。あるアプローチにおいて、放射性物質によって生じる放射線を用いて、原料に照射することができる。別のアプローチにおいて、(例えば電子線エミッターを用いて生じた)電磁放射線を用いて、原料に照射することができる。ある態様において、(1)から(3)の何らかの組み合わせをあらゆる順序でまたは同時に使用することができる。適用される線量は、所望の効果および特定の原料に依存する。
【0123】
ある例において、鎖の切断が所望されるおよび/またはポリマー鎖の官能基化が所望される場合、電子より重い粒子、例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンなどを使用することができる。開環型の鎖切断が望ましい場合、開環型の鎖切断を促進するために、正荷電粒子をそのルイス酸特性ゆえに使用することができる。例えば、最大酸化が望ましい場合、酸素イオンを使用することができ、最大ニトロ化が望ましい場合、窒素イオンを使用することができる。
【0124】
重粒子および正荷電粒子の使用は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/417,699号に記載されている。
【0125】
ある方法において、第1の数平均分子量(MN1)を有するセルロースであるかまたは、これを含む第1の材料に、例えば電離放射線(例えば、γ線放射、X線放射、100nmから280nm紫外線(UV)光、電子線または他の荷電粒子の形態)での処理によって照射し、第1の数平均分子量より小さい第2の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第2の材料を得る。第2の材料(または第1の材料および第2の材料)は、第2の材料および/または第1の材料またはその構成糖もしくはリグニンを用いて本明細書中に記載のものなどの中間体または生成物を産生することができる微生物と(酵素処理を行いまたは酵素処理せずに)組み合わせることができる。
【0126】
第2の材料は、第1の材料と比較して分子量が小さく、場合によっては、結晶化度も小さいセルロースを含むので、第2の材料は、例えば微生物および/または酵素を含有する溶液中での、分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。これらの特性により、第2の材料は、第1の材料と比較して、加工処理し易く、化学的、酵素的および/または生物学的攻撃の影響を受け易くなり、このために、所望の産物、例えば、エタノールの生成速度および/または生成レベルを大幅に改善することができる。
【0127】
ある態様において、第2の数平均分子量(MN2)は、第1の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0128】
場合によっては、第2の材料は、結晶化度(C2)が、第1の材料のセルロースの結晶化度(C1)よりも低いセルロースを含む。例えば、(C2)は、(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40%超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0129】
ある態様において、出発結晶化度指数(照射前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、照射後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な照射後には、結晶化度指数が5%未満となり得る。ある態様において、照射後の材料は実質的に非晶質である。
【0130】
ある態様において、出発数平均分子量(照射前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、照射後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な照射後、数平均分子量が約10,000未満またはさらには約5,000未満となり得る。
【0131】
ある態様において、第2の材料の酸化レベル(O2)は、第1の材料の酸化レベル(O1)より高くなることがある。材料の酸化レベルが高いと、その分散性、膨張性および/または溶解性が高くなることがあり、さらに、化学的、酵素的または生物学的攻撃に対する材料の感受性が強化される。ある態様において、第1の材料と比較して第2の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境下で、例えば大気中または酸素下で照射が行われ、第1の材料より酸化度が高い第2の材料が生成される。例えば、第2の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基をより多く有し得、これによりその親水性が高くなることがある。
【0132】
電離放射線
各種放射線は、放射線のエネルギーにより決定されるような特定の相互作用を介して炭素含有材料をイオン化する。重荷電粒子は、主に、クーロン散乱を介して物質をイオン化し、さらに、これらの相互作用によって、物質をさらにイオン化し得る高エネルギー電子が発生する。α粒子はヘリウム原子の核と同一であり、様々な放射性核、例えばビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、一部のアクチニド、例えばアクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリホルニウム、アメリシウムおよびプルトニウムの同位体などのα崩壊によって発生する。
【0133】
粒子が用いられる場合、それらは、中性(非荷電)であり得るか、正に荷電し得るかまたは負に荷電し得る。荷電している場合、荷電粒子は単一の正電荷もしくは負電荷または多重電荷、例えば、1、2、3またはさらには4以上の電荷を有し得る。鎖切断が望ましい場合、正荷電粒子が望ましい場合があるが、理由の1つには、それらが酸性であるからである。粒子が用いられる場合、粒子は、静止電子質量以上の質量、例えば、静止電子質量の500、1000、1500、2000、10,000またはさらには100,000倍の質量を有し得る。例えば、粒子は、約1原子単位から約150原子単位、例えば、約1原子単位から約50原子単位または約1から約25、例えば、1、2、3、4、5、10、12または15amuの質量を有し得る。粒子を加速するために使用される加速器は、静電気学的DC、電気力学的DC、RF線形、磁気誘導線形波または連続波であり得る。例えば、サイクロトロン型加速器は、Rhodatron(登録商標)システムなど、IBA、Belgiumから入手可能であり、一方、DC型加速器は、Dynamitron(登録商標)など、RDI、現IBA Industrialから入手可能である。イオンおよびイオン加速器は、Introductory Nuclear Physics, Kenneth S.Krane, John Wiley & Sons, Inc.(1988), Krsto Prelec, FIZIKA B6(1997)4, 177-206, Chu, William T.「Overview of Light-Ion Beam Therapy」, Columbus-Ohio, ICRU-IAEA Meeting, 18-20 March 2006, Iwata,Y.ら「Alternating-Phase-Focused IH-DTL for Heavy-Ion Medical Accelerators」Proceedings of EPAC 2006, Edinburgh, ScotlandおよびLeaner,CM.ら「Status of the Superconducting ECR Ion Source Venus」Proceedings of EPAC 2000, Vienna、Austriaで考察されている。
【0134】
ガンマ線は様々な材料への透過深度が大きいという長所がある。ガンマ線源には、放射性核、例えば、コバルト、カルシウム、テクニチウム(technicium)、クロム、ガリウム、インジウム、ヨウ素、鉄、クリプトン、サマリウム、セレン、ナトリウム、タリウムおよびキセノンの同位体などが挙げられる。
【0135】
x線源としては、金属標的、例えばタングステンもしくはモリブデンまたは合金を用いた電子線衝突または小型光源、例えばLynceanにより製造販売されているものが挙げられる。
【0136】
紫外線源としては、重水素ランプまたはカドミウムランプが挙げられる。
【0137】
赤外線源としては、サファイア、亜鉛またはセレン化物ウィンドーセラミックランプが挙げられる。
【0138】
マイクロ波源としては、クライストロン、Slevin型RF源または水素、酸素もしくは窒素ガスを用いる原子線源が挙げられる。
【0139】
ある態様において、電子線が線源として使用される。電子線には、線量率が高く(例えば、1、5またはさらには10Mrad/秒)、ハイスループットであり、閉じ込めが少なく、閉じ込め装置が小さいという長所がある。電子はまた、鎖切断を引き起こすことにおいても有効性が高いものであり得る。さらに、4から10MeVのエネルギーを有する電子は、5から30mm以上、例えば40mmの透過深度を有し得る。
【0140】
電子線は、例えば静電起電機、カスケード起電機、変圧起電機、スキャニングシステム付きの低エネルギー加速器、リニアカソード付きの低エネルギー加速器、線形加速器およびパルス加速器によって発生させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば、比較的薄い材料切片、例えば0.5インチ未満、例えば0.4インチ、0.3インチ、0.2インチ未満または0.1インチ未満のものに対して有用であり得る。ある態様において、電子線の各電子のエネルギーは、約0.3MeVから約2.0MeV(百万電子ボルト)、例えば約0.5MeVから約1.5MeVまたは約0.7MeVから約1.25MeVである。
【0141】
電子線照射装置は、Ion Beam Applications, Louvain-la-Neuve, BelgiumまたはTitan Corporation, San Diego, CAから製造販売されている。代表的な電子エネルギーは、1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeVまたは10MeVであり得る。代表的な電子線照射装置の出力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kWまたは500kWであり得る。原料の脱重合レベルは、使用される電子エネルギーおよび適用される線量に依存し、一方で曝露時間は出力および線量に依存する。代表的な線量は、1kGy、5kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGyまたは200kGyの値をとり得る。
【0142】
イオン粒子線
材料、例えば、炭水化物もしくは炭水化物を含む材料、例えばセルロース系材料、リグノセルロース系材料、デンプン材料またはこれらのいずれかの組み合わせおよび本明細書に記載のその他のものに照射するために、電子より重い粒子を使用することができる。例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンを使用することができる。ある態様において、電子より重い粒子は(より軽い粒子と比較して)多量の鎖切断を誘導し得る。場合によっては、正荷電粒子は、その酸性度ゆえに、負荷電粒子より多量の鎖切断を誘導し得る。
【0143】
より重い粒子線は、例えば、線形加速器またはサイクロトロンを用いて発生させることができる。ある態様において、この粒子線の各粒子のエネルギーは、約1.0MeV/原子単位から約6,000MeV/原子単位、例えば、約3MeV/原子単位から約4,800MeV/原子単位または約10MeV/原子単位から約1,000MeV/原子単位である。
【0144】
ある一定の態様において、炭素含有材料、例えば、バイオマス材料に照射するために使用されるイオンビームは、複数の種類のイオンを含み得る。例えば、イオンビームは、2種類以上(例えば3種類、4種類以上)の異なる種類のイオンの混合物を含み得る。代表的な混合物は、炭素イオンおよびプロトン、炭素イオンおよび酸素イオン、窒素イオンおよびプロトンならびに鉄イオンおよびプロトンを含み得る。より広く一般に、照射イオンビームを発生させるために、上記のイオンのいずれか(または他の何らかのイオン)の混合物を使用することができる。特に、単イオンビームにおいて比較的軽いイオンおよび比較的重いイオンの混合物を使用することができる。
【0145】
ある態様において、材料に照射するためのイオンビームには、正荷電イオンが含まれる。正荷電イオンには、例えば、正荷電水素イオン(例えばプロトン)、希ガスイオン(例えばヘリウム、ネオン、アルゴン)、炭素イオン、窒素イオン、酸素イオン、ケイ素原子、リンイオンおよび金属イオン、例えばナトリウムイオン、カルシウムイオンおよび/または鉄イオンなどが含まれ得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、このような正荷電イオンは、材料に曝露されるとルイス酸部分として化学的に挙動し、酸化環境下で陽イオン性の開環型の鎖切断反応を開始し、持続すると考えられている。
【0146】
ある一定の態様において、材料に照射するためのイオンビームには、負荷電イオンが含まれる。負荷電イオンには、例えば、負荷電水素イオン(例えば水素化物イオン)および比較的電気陰性度が高い様々な核の負荷電イオン(例えば酸素イオン、窒素イオン、炭素イオン、ケイ素イオンおよびリンイオン)が含まれ得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、このような負荷電イオンは、材料に曝露されるとルイス塩基部分として化学的に挙動し、還元環境下で陰イオン性の開環型の鎖切断反応を引き起こすと考えられている。
【0147】
ある態様において、材料に照射するためのビームには中性原子が含まれ得る。例えば、バイオマス材料の照射に用いられるビームには、水素原子、ヘリウム原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ネオン原子、ケイ素原子、リン原子、アルゴン原子および鉄原子のいずれか1以上が含まれ得る。一般に、上記のタイプの原子のいずれか2以上(例えば、3以上、4以上またはそれ以上)の混合物がビームに存在し得る。
【0148】
ある一定の態様において、材料に照射するために用いられるイオンビームには、単一電荷イオン、例えばH+、H-、He+、Ne+、Ar+、C+、C-、O+、O-、N+、N-、Si+、Si-、P+、P-、Na+、Ca+およびFe+の1以上などが含まれる。ある態様において、イオンビームには、多電荷イオン、例えば、C2+、C3+、C4+、N3+、N5+、N3-、O2+、O2-、O22-、Si2+、Si4+、Si2-およびSi4-の1以上などが含まれ得る。一般に、イオンビームはまた、複数の正電荷または負電荷を有する、より複雑な多核イオンも含み得る。ある特定の態様において、多核イオンの構造によって、正電荷または負電荷は、イオンの構造の実質的に全体にわたり有効に分布し得る。いくつかの態様において、正電荷または負電荷は、イオンの構造の一部分にわたり、幾分局在し得る。
【0149】
電磁放射線
電磁放射線で照射が行われる態様において、電磁放射線は、例えば、102eVを超える、例えば103、104、105、106を超えるかまたはさらには107eVを超える、エネルギー/光子(電子ボルト)を有し得る。ある態様において、電磁放射線は、104から107eVの間、例えば105から106eVの間のエネルギー/光子を有する。電磁放射線は、例えば、1016hzを超える、1017hz、1018、1019、1020hzを超えるかまたはさらに1021hzを超える周波数を有し得る。ある態様において、電磁放射線は、1018から1022hzの間、例えば1019から1021hzの間の周波数を有する。
【0150】
バイオマスのクエンチングおよび官能化制御
電離放射線での処理後、本明細書中に記載の材料または混合物のいずれかがイオン化され得る。即ち、処理済みの材料は、電子スピン共鳴分光器で検出可能であるレベルでラジカルを含み得る。イオン化バイオマスが大気中に残留する場合、それは、例えば大気中の酸素と反応することによってカルボン酸基が生成される程度に酸化されよう。ある材料での例において、このような酸化は炭水化物含有バイオマスの分子量のさらなる分解を促進し得、酸化基、例えばカルボン酸基は、場合によっては溶解性および微生物利用性を高め得るので、このような酸化が所望される。しかし、照射後、ラジカルは、しばらくの間、例えば、1日、5日、30日、3ヶ月、6ヶ月より長くまたはさらには1年より長く「生きて」いることができるので、材料の特性が経時的に変化し続ける可能性があり、場合によってこれは望ましくないことがある。従ってイオン化材料をクエンチングすることが所望され得る。
【0151】
イオン化後、イオン化バイオマス中のラジカルレベルを低下させるために、例えばラジカルが電子スピン共鳴分光器で検出可能とならないように、イオン化されているあらゆるバイオマス材料をクエンチングすることができる。例えば、バイオマスに十分な圧力を与えることによっておよび/または、ラジカルと反応する(クエンチングする)気体または液体など、イオン化バイオマスと接触させて流体を使用することによって、ラジカルをクエンチングすることができる。ラジカルのクエンチングを少なくとも促進するために気体または液体を用いて、所望の量および種類の官能基、例えばカルボン酸基、エノール基、アルデヒド基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、クロロアルキル基またはクロロフルオロアルキル基などでイオン化バイオマスを官能化することができる。
【0152】
場合によっては、このようなクエンチングは、一部のイオン化バイオマス材料の安定性を向上させ得る。例えば、クエンチングによって、酸化に対するバイオマスの抵抗性が向上し得る。クエンチングによる官能化によって、本明細書中に記載のあらゆるバイオマスの溶解性も向上し得、その温度安定性が向上し得、様々な微生物による材料利用性が向上し得る。例えば、クエンチングによってバイオマス材料に与えられる官能基は、例えば、様々な微生物によるセルロース加水分解を促進するための、微生物による結合に対する受容体部位となり得る。
【0153】
ある態様において、クエンチングは、例えばバイオマスを機械的に変形させることによって、例えば1、2または3方向でバイオマスを機械的に直接圧縮するかまたはバイオマスが浸漬されている流体に加圧すること、例えば静水圧プレス成形などによって、バイオマスに加圧することを含む。このような場合、材料そのものの変形によってラジカルが生じ、これは、ラジカルが別の基と再結合するかまたは反応できるよう十分に近接近して結晶性ドメインにおいて捕捉されることが多い。場合によっては、リグニン、セルロースまたはヘミセルロースなどのバイオマスの成分の融点または軟化点以上までバイオマスの温度を上昇させるために十分な熱量など、加熱しながら加圧する。熱は物質中の分子運動性を向上させ得るが、これは、ラジカルのクエンチングを促進し得る。クエンチングするために圧力が使用される場合、その圧力は、約1000psi超、例えば約1250psi、1450psi、3625psi、5075psi、7250psi、10000psi超またはさらには15000psi超であり得る。
【0154】
ある態様において、クエンチングは、バイオマスを液体または気体などの流体と接触させることを含み、例えば、気体は、アセチレンまたは、窒素、エチレン、塩化エチレンもしくはクロロフルオロエチレン中のアセチレンの混合物、プロピレンまたはこれらの気体の混合物など、ラジカルと反応可能な気体である。その他の特定の態様において、クエンチングは、液体、例えばバイオマス中で可溶性であるかまたは少なくとも浸透可能であり、ラジカルと反応可能である液体、例えば1,5-シクロオクタジエンなどのジエンとバイオマスを接触させることを含む。ある具体的な態様において、クエンチングは、バイオマスをビタミンEなどの抗酸化剤と接触させることを含む。必要に応じて、バイオマス原料は、その中に分散した状態で抗酸化剤を含み得、バイオマス原料中に分散している抗酸化剤をラジカルと接触させることから、クエンチングが起こり得る。
【0155】
本明細書中に記載のより重いイオンのいずれかなどの重荷電イオンを使用することによって、官能化を促進し得る。例えば、酸化を促進することが望ましい場合、照射に対して荷電酸素イオンを使用することができる。窒素官能基が望ましい場合、窒素イオンまたは窒素を含む陰イオンを使用することができる。同様に、イオウまたはリン基が望ましい場合、照射においてイオウまたはリンイオンを使用することができる。
【0156】
線量
場合によっては、約0.25Mrad/秒より大きい線量率、例えば約0.5、0.75、1.0、1.5、2.0より大きいかまたはさらには約2.5Mrad/秒より大きい線量率で照射が行われる。ある態様において、5.0から1500.0キロラド/時間の間、例えば10.0から750.0キロラド/時間の間または50.0から350.0キロラド/時間の間の線量率で照射が行われる。
【0157】
ある態様において、少なくとも0.1Mrad、少なくとも0.25Mrad、例えば少なくとも1.0Mrad、少なくとも2.5Mrad、少なくとも5.0Mrad、少なくとも10.0Mrad、少なくとも60Mradまたは少なくとも100Mradの線量を材料が受けるまで、(何らかの線源または線源の組み合わせを用いて)照射が行われる。ある態様において、約0.1Mradから約500Mrad、約0.5Mradから約200Mrad、約1Mradから約100Mradまたは約5Mradから約60Mradの線量を材料が受けるまで照射が行われる。ある態様において、比較的低い線量例えば60Mrad未満が適用される。
【0158】
超音波処理
超音波処理によって、例えば本明細書に記載の材料のいずれか1以上、例えば、1以上の炭水化物供給源、例えば、セルロース系もしくはリグノセルロース系材料またはデンプン材料などの材料の分子量および/または結晶化度を小さくすることができる。超音波処理は、材料を殺菌させるために使用することもできる。照射について上記で考察されるように、超音波処理のために使用される加工パラメーターは、様々な因子に依存して、例えば原料のリグニン含量に依存して、変動し得る。例えば、リグニンレベルが高い原料ほど、一般に、長い滞留時間および/または高いエネルギーレベルが必要であり、その結果、原料に送達される総エネルギーが高くなる。
【0159】
ある方法において、第1の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第1の材料を、媒体、例えば水に分散させ、超音波処理して、かつ/または、別の方法で気泡を生じさせ、第1の数平均分子量より小さい第2の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第2の材料を得る。第2の材料(またはある一定の態様において、第1および第2の材料)は、第2および/または第1の材料を利用して中間体または生成物を産生することができる微生物と(酵素処理を行ってまたは酵素処理を行わずに)組み合わせることができる。
【0160】
第2の材料は、第1の材料と比較して低分子量であり、場合によっては結晶化度も低いセルロースを含むので、第2の材料は、例えば微生物を含有する溶液中での分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。
【0161】
ある態様において、第2の数平均分子量(MN2)は、第1の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0162】
場合によって、第2の材料は、結晶化度(C2)が第1の材料のセルロースの結晶化度(C1)より低いセルロースを含む。例えば、(C2)は(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40%超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0163】
ある態様において、出発結晶化度指数(超音波処理前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、超音波処理後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある一定の態様において、例えば長い超音波処理後には、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、超音波処理後の材料は実質的に非晶質である。
【0164】
ある態様において、出発数平均分子量(超音波処理前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、超音波処理後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば長い超音波処理後、約10,000未満またはさらには約5,000未満の数平均分子量を有する可能性がある。
【0165】
ある態様において、第2の材料は、第1の材料の酸化レベル(O1)より高い酸化レベル(O2)を有し得る。材料の酸化レベルが高い場合、その分散性、膨張性および/または溶解性が高くなることがあり、さらに、化学的、酵素的または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。ある態様において、第1の材料と比較して第2の材料の酸化レベルを高めるために、酸化媒体中で超音波処理が行われ、第1の材料より酸化度が高い第2の材料が生成する。例えば、第2の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基の数がより多いものであり得、これにより材料の親水性が高くなることがある。
【0166】
ある態様において、超音波処理媒体は水性媒体である。必要に応じて、媒体は、過酸化物(例えば過酸化水素)などの酸化剤、分散剤および/または緩衝剤を含み得る。分散剤の例としては、イオン性分散剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、および非イオン性分散剤、例えばポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
【0167】
その他の態様において、超音波処理媒体は非水性である。例えば、炭化水素、例えばトルエンまたはヘプタン、エーテル、例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中で、またはアルゴン、キセノンもしくは窒素などの液化ガス中でも超音波処理を行うことができる。
【0168】
熱分解
多岐にわたる様々な供給源由来の炭素含有材料を加工処理して、その材料由来の有用な物質を抽出し、さらなる加工処理工程および/または一連の処理過程に対する材料となる、部分的に分解された材料を与えるために、1以上の一連の熱分解処理を使用することができる。材料を殺菌するために熱分解を使用することもできる。熱分解条件は、原料および/またはその他の因子の特徴に依存して異なることがある。例えば、リグニンレベルが高い原料ほど、高温、長い滞留時間および/または熱分解中のより高い酸素レベルの導入を必要とする。
【0169】
ある例において、第1の数平均分子量(MN1)より小さい第2の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第2の材料を得るために、例えば(酸素の存在下または非存在下で)チューブ炉中で第1の材料を加熱することによって、第1の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第1の材料を熱分解する。
【0170】
第2の材料は、第1の材料と比較して分子量が小さく、場合によっては結晶化度も小さいセルロースを含むので、第2の材料は、例えば微生物を含有する溶液中での、分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。
【0171】
ある態様において、第2の数平均分子量(MN2)は、第1の数平均分子量(MN1)より約10%超えて、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超えてまたはさらには約75%超えて小さい。
【0172】
場合によって、第2の材料は、結晶化度(C2)が第1の材料のセルロースの結晶化度(C1)より低いセルロースを含む。例えば、(C2)は、(C1)より約10%超えて、例えば約15、20、25、30、35、40%超えてまたはさらには約50%超えて低いものであり得る。
【0173】
ある態様において、出発結晶化度(熱分解前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、熱分解後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある一定の態様において、例えば、大規模な熱分解後、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、熱分解後の材料は実質的に非晶質である。
【0174】
ある態様において、出発数平均分子量(熱分解前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、熱分解後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な熱分解後、数平均分子量が約10,000未満またはさらには約5,000未満になり得る。
【0175】
ある態様において、第2の材料の酸化レベル(O2)は、第1の材料の酸化レベル(O1)より高くなることがある。材料の酸化レベルが高いほど、その分散性、膨張性および/または溶解性が高まり、さらに、化学的、酵素的または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。ある態様において、第1の材料と比較して第2の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において熱分解が行われ、第1の材料より酸化度が高い第2の材料が生成される。例えば、第2の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基の数が第1の材料よりも多いものであり得、これにより材料の親水性が高くなる。
【0176】
ある態様において、材料の熱分解は連続する。その他の態様において、材料は、所定の時間熱分解され、次いで第2の所定の時間冷却された後に、再度熱分解される。
【0177】
酸化
多岐にわたる様々な供給源由来の炭素含有材料を加工処理して、その材料由来の有用な物質を抽出し、さらなる加工処理工程および/または一連の処理過程への材料となる、部分的に分解および/または改変された材料を与えるために、1以上の一連の酸化処理を使用することができる。酸化条件は、例えば原料のリグニン含量に応じて異なり、一般に、リグニン含量が高い原料ほど酸化度が高いことが望ましい。
【0178】
ある方法において、第2の数平均分子量(MN2)を有し、第1の酸素含量(O1)より高い第2の酸素含量(O2)を有するセルロースを含む第2の材料を得るために、例えば大気または酸素に富む空気の気流中で第1の材料を加熱することによって、第1の数平均分子量(MN1)を有し、第1の酸素含量(O1)を有するセルロースを含む第1の材料を酸化する。
【0179】
第2の材料の第2の数平均分子量は一般に、第1の材料の第1の数平均分子量よりも小さい。例えば、他の物理的処理に関して上記で記載したものと同程度まで分子量を低下させ得る。他の物理的処理に関して上記で記載したものと同程度まで第2の材料の結晶化度を低下させることもできる。
【0180】
ある態様において、第2の酸素含量は、第1の酸素含量より少なくとも約5%多く、例えば、7.5%多いか、10.0%多いか、12.5%多いか、15.0%多いか、または17.5%多い。ある好ましい態様において、第2の酸素含量は、第1の材料の第1の酸素含量より少なくとも約20.0%多い。酸素含量は、1300℃以上で運転される炉の中で試料を熱分解することにより元素分析することによって測定される。適切な元素分析器は、VTF-900高温熱分解炉付きのLECO CHNS-932分析器である。
【0181】
一般に、材料の酸化は酸化環境で起こる。例えば、大気中またはアルゴンに富む空気中などの酸化環境で熱分解することによって酸化が行われ得るかまたは酸化が促進され得る。酸化を促進するために、酸化前または酸化中に、酸化剤、酸または塩基などの様々な化学薬品を材料に添加することができる。例えば、酸化前に過酸化物(例えば過酸化ベンゾイル)を添加することができる。
【0182】
バイオマス原料の不応性を低下させる酸化方法の中には、フェントン型化学を使用するものがある。このような方法は、例えば、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/639,289号で開示されている。
【0183】
代表的な酸化剤としては、過酸化物、例えば過酸化水素および過酸化ベンゾイルなど、過硫酸塩、例えば過硫酸アンモニウムなど、活性化型酸素、例えばオゾンなど、過マンガン酸塩、例えば過マンガン酸カリウムなど、過塩素酸塩、例えば過塩素酸ナトリウムなど、および次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)などが挙げられる。
【0184】
ある状況において、pHは、接触中に約5.5以下、例えば1から5の間、2から5の間、2.5から5の間または約3から5の間に維持される。酸化条件には、2から12時間、例えば4から10時間または5から8時間の接触時間も含まれ得る。場合によって、温度は、300℃以下、例えば250、200、150、100または50℃以下に維持される。場合によって、温度は実質的に周囲温度のままであり、例えば約20から25℃である。
【0185】
ある態様において、電子などの粒子線を大気を通して材料に照射することによりインサイチューでオゾンを発生させることなどによって、1以上の酸化剤が気体として適用される。
【0186】
ある態様において、混合物は、2,5-ジメトキシヒドロキノン(DMHQ)などの1以上のヒドロキノンおよび/または2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン(DMBQ)などの1以上のベンゾキノンをさらに含み、これらは電子移動反応を促進し得る。
【0187】
ある態様において、1以上の酸化剤をインサイチューで電気化学的に発生させる。例えば、接触槽または反応容器中で過酸化水素および/またはオゾンを電気化学的に発生させ得る。
【0188】
可溶化する、不応性低下させるための、または官能化するためのその他のプロセス
この段落のプロセスは何れも、本明細書中に記載のプロセスなく単独でまたは本明細書中に記載のプロセスのいずれか:蒸気爆発、化学的処理(例えば酸処理(硫酸、塩酸および有機酸などの鉱酸、例えばトリフルオロ酢酸を用いた濃酸処理および希酸処理を含む。)および/または塩基処理(例えば石灰または水酸化ナトリウムを用いた処理))、UV処理、スクリュー押出処理(例えば、2008年11月17日出願の米国特許出願第61/115,398号参照)、溶媒処理(例えばイオン性液体を用いた処理)および凍結粉砕(例えば米国特許出願第12/502,629号参照)と(任意の順番で)組み合わせて使用することができる。
【0189】
燃料、酸、エステルおよび/またはその他の生成物の産生
上記で考察した1以上の加工処理の工程をバイオマスに対して行った後、上記で考察したように、糖化プロセスを用いて、セルロースおよびヘミセルロース分画に含有される複合糖質を発酵可能な糖へと加工処理することができる。
【0190】
得られた糖溶液を製造設備に輸送した後、様々な生成物、例えばアルコール、例えばエタノールなど、または有機酸に、糖を変換することができる。得られる生成物は、使用される微生物およびバイオプロセスが起こる条件に依存する。例えばトウモロコシ原料エタノール製造設備の既存の設備を使用して、これらの工程を行うことができる。
【0191】
本明細書で考察する混合プロセスおよび装置は、必要に応じて、バイオプロセス中に使用することもできる。有利なことに、本明細書に記載の混合システムは、液体に対して高剪断をもたらさず、液体の全体的温度を顕著に上昇させない。結果として、バイオプロセスにおいて使用される微生物は、プロセスを通じて活性ある状態に維持される。混合することによって、反応速度が向上し、プロセスの効率が向上し得る。
【0192】
一般に、発酵は様々な微生物を使用する。リグノセルロース系材料の糖化により生成する糖溶液は通常、キシロースならびにグルコースを含有する。一般に使用される一部の微生物(例えば酵母)はキシロースにおいて作用しないので、例えばクロマトグラフィーによって、キシロースを除去することが望ましいことがある。キシロースを回収し、他の生成物、例えば動物飼料および甘味料キシリトールの製造で使用することができる。発酵が行われる製造設備への糖溶液の送達の前または後に、キシロースを除去し得る。
【0193】
微生物は、天然微生物または遺伝子改変微生物、例えば本明細書中の材料のセクションで考察した微生物のいずれかであり得る。
【0194】
酵母にとって至適pHは約pH4から5であり、一方でザイモモナス菌に対する至適pHは約pH5から6である。典型的な発酵時間は、26℃から40℃の範囲の温度で約24時間から96時間であるが、好熱性微生物はより高温を好む。
【0195】
カルボン酸基は一般に発酵溶液のpHを低下させ、ピキア・スチピチスなどの一部の微生物による発酵を阻害する傾向がある。従って、場合によっては、溶液のpHを上げるために、発酵前または発酵中に塩基および/または緩衝液を添加することが望ましい。例えば、使用する微生物に対する至適な範囲に培地のpHを上昇させるために、発酵培地中に水酸化ナトリウムまたは石灰を添加することができる。
【0196】
発酵は、通常、水性の増殖培地中で行われ、この培地には、ビタミンおよび微量元素および金属とともに、窒素供給源またはその他の栄養供給源、例えば尿素が含有され得る。増殖培地が滅菌状態であるかまたは少なくとも微生物負荷が低い、例えば細菌数が少ないことが一般に好ましい。増殖培地の滅菌は、何らかの所望の方式で行うことができる。しかし、好ましい実施において、滅菌は、増殖培地または混合前の増殖培地の個々の成分を照射することによって行われる。放射線量は、通常、エネルギー消費および結果としての費用を最小限に抑えるために、適正な結果が得られる限りできるだけ低くする。例えば、多くの例において、増殖培地そのものまたは増殖培地の成分を5Mrad未満、例えば4、3、2または1Mrad未満の放射線量で処理することができる。具体例において、約1から3Mradの線量で増殖培地を処理する。
【0197】
ある態様において、低分子量の糖がエタノールに完全に変換される前に、発酵プロセスの全てまたは一部を中断することができる。中間体発酵生成物は高濃度の糖および炭水化物を含む。これらの中間体発酵生成物は、ヒトまたは動物が消費するための食料の調製において使用することができる。さらに、またはあるいは、粉末状物質を生成させるために、ステンレス鋼性の実験室用ミルで中間体発酵生成物を微細な粒径になるまで研削することができる。
【0198】
米国特許仮出願第60/832,735号、現在、国際公開公報第WO2008/011598号に記載のような移動式の発酵装置を使用することができる。同様に、糖化装置が移動式であり得る。さらに、輸送中に一部又は全て、糖化および/または発酵を行い得る。
【0199】
後処理
発酵後、エタノールおよびその他のアルコールを殆どの水および固形残渣から分離するために、例えば「ビアカラム(beer column)」を用いて、得られた流体を蒸留することができる。ビアカラムから流出する蒸気は例えば35%エタノール重量であり得、精留塔に入れることができる。気相分子ふるいを用いて、精留塔からのほぼ共沸性(92.5%)のエタノールおよび水の混合液を純(99.5%)エタノールまで精製することができる。このビアカラムの下部を三重効用蒸発器の第1効用に送ることができる。精留塔還流凝縮器は、この第1効用に対して熱を提供できる。第1効用の後、遠心機を用いて固形物を分離し、回転式乾燥機中で乾燥させることができる。遠心機廃水の一部(25%)を発酵に対して再利用し、残りを第2および第3効用蒸発器に送ることができる。殆どの蒸発器凝縮物を非常に清浄な凝縮物として処理プロセスに戻すことができ、低沸騰化合物の蓄積を避けるために廃水処理に供する分離物は少量である。
【0200】
中間体および生成物
本明細書中に記載のプロセスを使用して、処理したバイオマスをエネルギー、燃料、食物および材料などの1以上の生成物に変換することができる。生成物の具体例としては、水素、アルコール(例えば一価アルコールまたは二価アルコール、例えばエタノール、n-プロパノールまたはn-ブタノールなど)、水和または含水アルコール、例えば、10%、20%、30%を超えるかまたはさらには40%を超える水を含有するもの、キシリトール、糖、バイオディーゼル、有機酸(例えば酢酸および/または乳酸)、炭化水素、副産物(例えばセルロース分解性タンパク質(酵素)または単細胞タンパク質などのタンパク質)および、何らかの組み合わせまたは相対濃度の、および場合によっては、例えば燃料添加剤などの何らかの添加剤と組み合わせられた、これらの何らかの混合物が挙げられるが、これに限定されない。その他の例としては、カルボン酸、例えば酢酸または酪酸など、カルボン酸の塩、カルボン酸およびカルボン酸の塩の混合物ならびにカルボン酸のエステル(例えばメチルエステル、エチルエステルおよびn-プロピルエステル)、ケトン(例えばアセトン)、アルデヒド(例えばアセトアルデヒド)、α、β不飽和酸、例えばアクリル酸などおよびオレフィン、例えばエチレンなどが挙げられる。その他のアルコールおよびアルコール誘導体としては、プロパノール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、これらのアルコールのいずれかのメチルエステルまたはエチルエステルが挙げられる。その他の生成物としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、上記の酸のいずれかの塩ならびに上記の酸のいずれかとそれぞれの塩の混合物が挙げられる。
【0201】
その他の中間体ならびに食物および医薬品を含む生成物は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/417,900号に記載されている。
【実施例】
【0202】
剪断紙原料を次のように調製した。
かさ密度が20lb/ft3である未印刷のポリコート白色クラフトボール製の1500ポンドスキッドの未使用ハーフガロンジュース容器パックをInternational Paperから得た。各容器パックを平坦になるように折り畳み、次いで、1時間におよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。シュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔を0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は、幅が0.1インチから0.5インチの間、長さが0.25インチから1インチの間であり、出発物質と同等の厚み(約0.075インチ)を有する紙吹雪状であった。
【0203】
この紙吹雪状の材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に供した。モデルSC30には4枚の回転ブレード、4枚の固定ブレードおよび1/8インチ孔を有する排出スクリーンが備えられている。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔をおよそ0.020インチに設定した。ロータリーナイフカッターは、ナイフの刃を横切る紙吹雪状小片を剪断し、この小片を切り裂き、1時間に約1ポンドの速度で繊維状材料を放出した。繊維状材料のBET表面積は0.9748m2/g+/-0.0167m2/g、気孔率は89.0437%であり、かさ密度は0.1260g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は1.141mmであり、繊維の平均幅は0.027mmであり、平均L/Dは42:1となった。
【0204】
紙原料を糖化するために、最初に7Lの水を容器に添加した。糖化プロセス中、水温は50℃に維持し、pHを5に維持した。下記の表で示すように、この原料を水に徐々に添加した。各添加後、原料が分散されるまで混合を行い、その後、再び下記の表で示すように2種類の酵素の混合物を添加した。(酵素1はAccellerase(登録商標)1500酵素複合体。酵素2はNovozyme(商標)188セロビアーゼ酵素)。各添加後、最初に10,000RPMで混合を行い、原料が分散したらすぐにミキサーを4,000RPMに減速した。50K-G-45ジェット混合器具とともにIKA Werks T-50噴流攪拌ミキサーを使用した。
【0205】
さらに原料を添加し得るようになる前に少なくとも一部は原料を糖化する必要があったので、原料を徐々に添加したが、そうしない場合、混合物は混合困難になった。ある一定のグルコースレベルを得るために必要な酵素は、以前の振盪フラスコ実験で必要とされたグルコースレベルよりも少ないことが観察された。最初の300時間にわたり、カビなどの望ましくない微生物の混入は観察されなかった。およそ300時間の時点で、糖濃度が最低であったタンク壁でカビ様生物が観察されたが、タンクそのものには見られなかった。
【0206】
*数時間にわたり1600グラムの添加を行った。
【0207】
その他の態様
本発明の多くの態様を記載してきた。しかし、当然のことながら、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変をなし得る。
【0208】
例えば、本明細書に記載のジェット混合器は、何らかの所望の組み合わせで、および/または他の型の混合器と組み合わせて使用することができる。
【0209】
ジェット混合器はタンク内の何らかの所望の位置に取り付けることができる。軸上ジェット混合器に関して、このシャフトは、タンクの重心軸と同一線上にあり得るかまたはそこからはずれていてもよい。例えば必要に応じて、タンクは、中央に取り付けられた異なるタイプの混合器、例えばマリン羽根車(marine impeller)またはラシュトン羽根車(Rushton impeller)を備えていてもよく、ジェット混合器は、重心軸からはずれた、または重心軸上のタンクの別の領域に取り付けられ得る。後者の場合、1つの混合器がタンクの上部から伸び得、他のものはタンクの床部から上方に伸び得る。
【0210】
本明細書に記載のジェット混合システムのいずれかにおいて、ジェット混合器を通じた流体(液体および/または気体)の流れは連続的であり得るかまたはパルス状であり得るかまたは、パルス状の時間を間に挟んだ連続流の時間の組み合わせであり得る。流れがパルス状である場合、このパルスは規則的または不規則であり得る。後者の場合、例えば、混合が「足止め状態」になることを防ぐために周期的にパルス状の流れを提供するため、流体流動を推進するモーターをプログラムすることができる。パルス状の流れの周波数は、例えば約0.5Hzから約10Hz、例えば約0.5Hz、0.75Hz、1.0Hz、2.0Hz、5Hzまたは10Hzであり得る。モーターをオンおよびオフにすることによっておよび/または液体の流れを遮断する分流器を提供することによって、パルス状の流れをもたらすことができる。
【0211】
本明細書でタンクを説明してきたが、潟湖、プール、池などを含む何らかのタイプの容器または入れ物においてジェット混合を使用し得る。混合を行う入れ物が潟湖などの陸上の構造物である場合、これに裏打ちし得る。例えば屋外の場合、この入れ物を被覆してもよいし、被覆しなくてもよい。
【0212】
本明細書でバイオマス原料を記載してきたが、他の原料および、他の原料とのバイオマス原料の混合物を使用し得る。例えば、ある実施において、完全な開示が本明細書に参照により組み入れられる2009年7月20日出願の米国特許仮出願第61/226,877号で開示されるものなど、炭化水素含有原料とのバイオマス原料の混合物を使用し得る。
【0213】
ゆえに、その他の態様は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年5月20日出願の米国特許仮出願第61/179,995号および2009年6月19日出願の米国特許仮出願第61/218,832号に対する恩典を主張する。これらの各特許出願の全開示は本明細書中で参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
セルロース系およびリグノセルロース系材料が多くの用途で大量に生産、加工および使用されている。このような材料は一度使用されると、廃棄物として捨てられるかまたは、例えば、汚水、バガス、おがくずおよびストーバーなど、単に廃棄物であるとみなされることが多い。
【0003】
様々なセルロース材料およびリグノセルロース材料、これらの使用ならびに用途が、米国特許第7,307,108号(特許文献1)、同第7,074,918号(特許文献2)、同第6,448,307号(特許文献3)、同第6,258,876号(特許文献4)、同第6,207,729号(特許文献5)、同第5,973,035号(特許文献6)および同第5,952,105号(特許文献7);ならびに2006年3月23日出願の「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648(特許文献8)および「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許出願公開第2007/0045456号(特許文献9)を含む様々な特許出願に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,307,108号
【特許文献2】同第7,074,918号
【特許文献3】同第6,448,307号
【特許文献4】同第6,258,876号
【特許文献5】同第6,207,729号
【特許文献6】同第5,973,035号
【特許文献7】同第5,952,105号
【特許文献8】2006年3月23日出願の「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648
【特許文献9】「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許出願公開第2007/0045456号
【発明の概要】
【0005】
概要
全般的に、本発明は、例えば酵素を用いて、材料のセルロース性の部分を低分子量の糖に変換することによって、材料、例えばセルロース系またはリグノセルロース系原料を糖化または液化するためのプロセスに関する。本発明はまた、例えば発酵によって、原料を生成物に変換することにも関する。
【0006】
本明細書で開示されるプロセスは、かさ密度が約0.5g/cm3未満、例えば約0.35g/cm3、0.25g/cm3、0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3未満又は例えば0.025g/cm3となるように物理的に前処理されている低かさ密度材料、例えばセルロース系またはリグノセルロース系原料を使用することができる。
【0007】
このような材料は、糖化、発酵またはその他の加工処理のために、液体と、例えば水又は媒体系と混合することが特に困難な場合がある。これらの材料は、そのかさ密度が低いがゆえに、液中に分散されず、その液面に浮遊する傾向がある。いくつかの例においては、材料は、疎水性であるか、高結晶質であるか、または湿潤困難であり得る。同時に、糖化された材料中の糖の最終濃度が高いものを得るかまたは加工処理後に高濃度の所望の生成物(例えば発酵後の、高濃度のエタノールまたはその他のアルコール)を得るために、比較的固体レベルが高い分散液中で原料を加工処理することが所望される。一部の例において、本明細書に記載の方法を使用して、加工処理中の分散液の固体レベルは、例えば少なくとも20、25、30、35、40、45またはさらには少なくとも50重量%溶解固体であり得る。
【0008】
本発明者らは、ある種の混合技術および装置を用いることによって、液体混合物中の原料の分散が促進され得、結果として混合物の固体レベルを向上させ得ることを見出した。本明細書で開示される混合技術および装置は、物質移動も促進し得、結果として、混合物中の反応速度が向上し得、微生物および酵素などの混合物の感受性の高い成分に対する有害性が回避されるかまたは最小限に抑えられ得る。特に、例えばジェットエアレーションおよび噴流攪拌を含むジェット混合技術によって、良好な湿潤、分散および機械的破壊がもたらされることが分かった。混合物の固体レベルを向上させることによって、より迅速に、より効率的におよびより高い費用効果でこのプロセスを進めることができ、結果として得られる最終生成物の濃度が向上し得る。
【0009】
本明細書で開示される一部のプロセスには、原料の糖化および、遠隔地から、例えば原料が生成されるかまたは保管される場所から、製造設備への原料の輸送が含まれる。ある場合において、輸送中に部分的または完全に糖化が行われ得る。このような場合において、輸送容器中で、混合、例えばジェット混合を行うことは有利であり得る。ある場合において、輸送中に糖化を完遂することができる。場合によって、輸送中に部分的または完全に発酵が行われ得る。
【0010】
ある実施において、本プロセスは、糖化前または糖化中に原料の不応性を低下させることをさらに含む。本プロセスは、原料のリグニン含量を測定し、測定されたリグニン含量に基づき、前処理が必要か否かおよびどの条件下で行うかを判定するさらなる工程を含み得る。
【0011】
ある局面において、本発明は、ジェット混合器を用いて、容器中で液状媒体および糖化剤と原料を混合することによってバイオマス原料を糖化することを含む方法を取り上げる。
【0012】
ある態様は、1以上の次の特性を含む。原料のかさ密度は約0.5g/cm3未満であり得る。原料は、例えばセルロース系またはリグノセルロース系材料であり得る。液体は水を含み得る。糖化剤は酵素を含み得る。ジェット混合器は例えば噴流攪拌機、ジェットエアレーション型混合器または吸込み室ジェット混合器を含み得る。ジェットエアレーション型混合器を使用する場合、ジェット混合器を通じて空気を注入せずに使用し得る。例えば、ジェットエアレーション型混合器が、第1のインレットラインおよび第2のインレットラインを有するノズルを含む場合、ある場合においては、両インレットラインに液体が供給される。ある場合において、混合は、液状媒体に原料を徐々に添加することと、添加と添加との間に混合することと、を含む。本方法は、混合中に、原料、液状媒体および糖化剤の混合物のグルコースレベルを監視することと、ある場合においては、糖化中の容器へのさらなる原料および糖化剤の添加と、をさらに含み得る。混合容器は、例えば、タンク、鉄道車両またはタンクローリーであり得る。糖化は、ある場合においては、原料、液状媒体および糖化剤の混合物の輸送中に部分的または完全に行われる。本方法は、容器中の混合物に乳化剤または界面活性剤を添加することをさらに含み得る。
【0013】
別の局面において、本発明は、容器内で概ねトロイダル状の流れを発生させる混合器を用いて、原料を液状媒体および糖化剤と容器中で混合することによって、バイオマス原料を糖化することを取り上げる。
【0014】
ある態様において、混合器は、一連の混合にわたり、液状媒体の全体的な温度の上昇を5℃未満に制限するように構成される。この局面は、ある態様において、上記で考察したいずれかの特性も含み得る。
【0015】
またさらなる局面において、本発明は、ジェット混合器を用いて、液状媒体中で低分子量の糖を微生物と混合することによって、低分子量の糖を生成物に変換することを含む方法を取り上げる。
【0016】
ある態様は、1以上の次の特性を含む。液状媒体は水を含み得る。微生物は酵母を含み得る。ジェット混合器は、噴流攪拌機、ジェットエアレーション型混合器または吸込み室ジェット混合器を含み得る。
【0017】
別の局面において、本発明は、タンクと、このタンク内に配置されるノズルを有するジェット混合器と、バイオマス原料をこのタンクに送達するように構成される供給器具と、計量された量の糖化剤をこのタンクに送達するように構成される供給器具と、を含む装置を取り上げる。
【0018】
ある態様は、1以上の次の特性を含む。前記のジェット混合器がモーターをさらに含み得、前記の装置は、混合中のモーター上のトルクを監視するように構成される機器をさらに含み得る。この装置はまた、トルク監視器具からのデータに基づいて原料供給器具および/または糖化剤供給器具の動作を調整する制御装置も含み得る。
【0019】
本発明はまた、糖化された混合物を構成するために容器中でバイオマス原料を糖化し、容器中の糖化された混合物に微生物を接種し、接種された糖化混合物が容器中で発酵できるようにすることを含む方法も取り上げる。
【0020】
ある場合において、発酵中に容器の内容物を輸送容器に移し、輸送容器中で発酵を持続させる。本方法は、糖化および発酵中、ジェット混合器により容器の内容物を攪拌することをさらに含む。ある態様において、本方法は、発酵混合物の酸素含量およびエタノールおよび/または糖含量を監視することをさらに含む。
【0021】
別の局面において、本発明は、通気孔を有する容器と;容器と連通している酸素供給源と;容器中の液体の酸素含量を監視するように構成される酸素モニターと;通気孔および酸素供給源を用いて、酸素モニターからのデータに応じて、液体の酸素含量を調整するように構成される制御装置と、を含む発酵システムを取り上げる。
【0022】
酸素添加が必要な場合、容器への酸素の流速は比較的低いものとなり得る。例えば、制御装置は、0.2vvm未満、例えば0.1、0.05、0.025未満またはさらには0.01vvm未満の割合で容器に酸素を送り込むように構成され得る。
【0023】
発酵システムは、容器中の液体の糖濃度および/またはエタノール濃度を監視するように構成される発酵モニターと;発酵モニターから受信したデータに基づき発酵を停止させるように構成される制御装置と、をさらに含み得る。ある場合において、このシステムは、制御装置から受信したシグナルに応答して発酵を停止させるように構成される発酵停止モジュールを含む。
【0024】
本明細書で言及されるかまたは本明細書に添付される、全ての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、それらが含有する全てについてそれらの全体において参照により組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、セルロースからグルコースへの酵素的加水分解を示す図である。
【図2】図2は、グルコース溶液の生成及び輸送を介した、原料からエタノールへの変換を示す流れ図である。
【図2A】図2Aは、ある態様による糖化システムの説明図である。
【図3】図3は、本明細書で開示される溶液及び懸濁液を使用するために改装されたエタノール生産設備の概略図である。
【図4】図4は、ノズルから流出する噴流を示す図表である。
【図4A】図4Aは、ノズルから流出する噴流を示す図表である。
【図5】図5は、ある態様による噴流攪拌機の斜視図である。
【図5A】図5Aは、図5の噴流攪拌機の羽根車およびジェットチューブの拡大透視図である。
【図5B】図5Bは、代替的な羽根車の拡大透視図である。
【図6】図6は、ある態様による吸込み室ジェット混合ノズルの図である。
【図6A】図6Aは、別の態様による吸込み室ジェット混合システムの透視図である。
【図7】図7は、別の代替的態様による吸込み室ジェット混合システムに対するジェット混合ノズルの斜視図である。
【図8】図8は、タンクおよびこのタンクに配置されるジェットエアレーション型混合システムの斜視図であり、タンクは、ジェット混合器および付属の配管が見えるように透明であるものとして示す。
【図8A】図8Aは、図8のジェットエアレーションシステムで使用されるジェット混合器の透視図である。
【図8B】図8Bは、空気取り入れ口が提供される同様のシステムの斜視図である。
【図9】図9は、ある態様によるジェットエアレーション型混合器の断面図である。
【図10】図10は、代替的な態様によるジェットエアレーション型混合器の断面図である。
【図11】図11は、ジェット混合器の、異なる構成を含有するタンクにおける代替的なフローパターンを示す図である。
【図12】図12は、ジェット混合器の、異なる構成を含有するタンクにおける代替的なフローパターンを示す図である。
【図13】図13は、ジェット混合器の、異なる構成を含有するタンクにおける代替的なフローパターンを示す図である。
【図14】図14は、ある態様による、バックフラッシュ中にタンクで生じるフローパターンを示す図である。
【図15】図15および15Aは、パルスエアー型の可搬式混合システムを用いる、輸送中に混合を行うために設定されたタンクローリーおよび鉄道車両をそれぞれ示す。
【図16】図16は、代替的な態様による混合器で使用される混練頭部の2つの態様の透視図である。
【図16A】図16Aは、代替的な態様による混合器で使用される混練頭部の2つの態様の透視図である。
【図17】図17は、タンクのノズルが多階層で配置されていることを示す、別の態様によるジェットエアレーション型システムの側面図である。
【図18】図18は、混合中のタンク壁沿いのホールドアップを最小限に抑える装置の上面図である。
【図18A】図18Aは、混合中のタンク壁沿いのホールドアップを最小限に抑える装置の透視図である。
【図19】図19は、タンク壁沿いのホールドアップも最小限に抑えながら混合を提供する様々な水ジェット装置の図である。
【図20】図20は、タンク壁沿いのホールドアップも最小限に抑えながら混合を提供する様々な水ジェット装置の図である。
【図21】図21は、タンク壁沿いのホールドアップも最小限に抑えながら混合を提供する様々な水ジェット装置の図である。
【図21A】図21Aは、タンク壁沿いのホールドアップも最小限に抑えながら混合を提供する様々な水ジェット装置の図である。
【図22】図22は、底部が半球状であり、上部からタンクへ延びる2個のジェット混合器を有するタンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書に記載の方法を用いて、バイオマス(例えば植物バイオマス、動物バイオマスおよび都市廃棄物バイオマス)を加工処理し、本明細書に記載のものなどの有用な中間体及び生成物を生成させることができる。システム及びプロセスは、本明細書に記載されており、容易に入手可能であるが、発酵などのプロセスにより加工処理することが困難であり得る、セルロース系および/またはリグノセルロース系材料を原材料として使用することができる。本明細書に記載のプロセスの多くによって、原料の不応性レベルを効果的に低下させることができ、バイオプロセス処理(例えば本明細書に記載のいずれかの微生物、例えばホモ酢酸産生細菌またはヘテロ酢酸産生細菌など、および/または本明細書に記載のいずれかの酵素)、熱加工処理(例えば気化または熱分解)または化学的方法(例えば、酸による加水分解または酸化)などによって、加工処理を容易にすることができる。機械的処理、化学的処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発などのいずれか1以上の本明細書に記載の方法を用いて、バイオマス原料を処理するかまたは加工処理することができる。これらの技術又は本明細書および他所に記載の他の技術などの2、3またはさらには4以上を組み合わせて、様々な処理システム及び方法を使用することができる。
【0027】
本明細書で開示されるプロセスは、かさ密度が約0.5g/cm3未満、例えば約0.35g/cm3、0.25g/cm3、0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3未満又は例えば0.025g/cm3未満となるように物理的に前処理されている、低かさ密度材料、例えばセルロース系またはリグノセルロース系原料を使用することができる。かさ密度は、ASTM D1895Bを用いて測定される。簡単に述べると、この方法は、既知体積のメスシリンダーに試料を満たし、試料の重量を得ることを含む。かさ密度は、試料の重量グラムを、メスシリンダーの既知体積、立方センチメートルで割ることによって計算される。
【0028】
原料を容易に加工処理できる形態に変換するために、糖化剤、例えば酵素または酸、糖化と呼ばれるプロセスによって、原料中のグルカンまたはキシラン含有セルロースを糖などの低分子の炭水化物に加水分解する。次に、例えば、単細胞タンパク質プラント、酵素製造プラントまたは燃料プラント、例えばエタノール製造設備などの既存の製造プラントにおいて、低分子量の炭水化物を使用することができる。
【0029】
液状媒体、例えば水溶液などの媒体中で材料および糖化剤を組み合わせることによって、セルロースを含む材料を糖化剤で処理することができる。本明細書に記載の混合特性を有する1以上の混合器、例えば1以上のジェット混合器を用いて、糖化剤、材料および液状媒体を完全に混合する。いくつかの実施において、材料および/または糖化剤は、一度に全てを添加するのではなく、徐々に添加する。例えば、液状媒体に材料の一部を添加し、材料が少なくとも部分的に糖化されるまで糖化剤と混合することができ、この時点で材料の第2の分量を混合物に添加する。このプロセスは、所望の糖濃度が得られるまで継続し得る。
【0030】
バイオマスのセルロースおよび/またはリグニン部分などのバイオマスを分解する酵素およびバイオマス分解生物は、様々なセルロース分解性酵素(セルラーゼ)、リグニナーゼまたは様々な小分子バイオマス分解代謝産物を含有するかまたは産生する。これらの酵素は、結晶性セルロースまたはバイオマスのリグニン部分を分解するために相乗的に作用する酵素の複合体であり得る。セルロース分解性酵素の例としては、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼおよびセロビアーゼ(β-グルコシダーゼ)が挙げられる。図1を参照して、セルロース系基質は最初に、ランダムな位置でエンドグルカナーゼにより加水分解され、オリゴマー中間体が生成する。次に、これらの中間体は、セロビオヒドロラーゼなどの、末端側から切断するグルカナーゼに対する基質となり、セルロースポリマーの末端からセロビオースが生成する。セロビオースは、水溶性の、グルコースの1,4-結合二量体である。最後に、セロビアーゼがセロビオースを切断し、グルコースが得られる。適切なセルラーゼは本明細書中の後のセクションで考察する。
【0031】
(a)製造プラントのタンク(例えば、少なくとも4000、40,000、400,000、4,000,000または40,000,000Lの容積を有するタンク)中でおよび/または(b)移動中、例えば鉄道車両、タンクローリー中でまたは超大型タンカーまたは船倉中で、糖化プロセスを部分的または完全に行うことができる。完全な糖化に必要な時間は、作業条件および使用する原料および酵素に依存する。制御された条件下で製造プラントにて糖化が行われる場合、セルロースは、約12-96時間で実質的に完全にグルコースに変換され得る。移動中に糖化が部分的または完全に行われる場合、糖化に要する時間は長くなり得る。
【0032】
ある場合において、約4から7、例えば約4.5から6または約5から6のpHで糖化が行われる。
【0033】
糖溶液中のグルコースの最終濃度は比較的高いこと、例えば15%超または20、30、40、50、60、70、80、90超またはさらには95重量%超であることが一般には好ましい。これにより、輸送しようとする体積が少なくなり、溶液中での微生物増殖も阻害される。糖化後、例えば蒸発または蒸留により、水の体積を減少させ得る。
【0034】
酵素とともに原料に添加する水量を制限することによって、比較的高い濃度の溶液を得ることができる。糖化がどの程度行われるかを調節することによって、この濃度を調節することもできる。例えば、より多くの原料を溶液に添加することによって、濃度を高くすることができる。例えば、溶液の温度を上昇させることによって、および/または下記で考察するように界面活性剤を添加することによって、媒体中の原料の溶解度を向上させることができる。例えば、溶液を40〜50℃、50〜60℃、60〜80℃の温度またはさらに高い温度に維持することができる。
【0035】
図2を参照して、アルコール、例えばエタノールを製造するためのプロセスは、この処理の前および/または後に、例えばその大きさを縮小するために、例えば場合によっては原料を物理的に前処理すること(工程110)と、場合によってはその不応性を低下させるために原料を処理すること(工程112)と、糖溶液を生成させるために原料を糖化すること(工程114)と、を含み得る。下記で詳細に考察するように、液状媒体中、例えば水中の原料の分散液を酵素と混合することによって、糖化を行うことができる(工程111)。糖化中または糖化後、例えばパイプライン、鉄道車両、トラックまたは荷船によって、製造プラントに混合物(輸送中に糖化を部分的または完全に行おうとする場合)または溶液を輸送することができる(工程116)。プラントにおいて、所望の生成物、例えばエタノールを生成させるために、溶液をバイオプロセス処理することができ(工程118)、次いでこのエタノールを例えば蒸留によってさらに加工処理する(工程120)。このプロセスの個々の工程を下記で詳述する。必要に応じて、示されるように、リグニン含量を測定する工程(工程122)および作業パラメーターを設定または調整する工程(工程124)を、プロセスの様々な段階で、例えば原料の構造を変化させるために使用される処理工程の直前に、行うことができる。これらの工程が含まれる場合、完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる2009年2月11日出願の米国特許仮出願第61/151,724号に記載のように、原料のリグニン含量の変動を補うために作業パラメーターが調整される。
【0036】
例えば図2Aで示されるシステムを用いて、混合工程111および糖化工程114を行うことができる。このシステムは運搬装置130を含み、これは、原料前処理モジュール132によって、原料のサイズを縮小するためにおよび場合によってはその不応性を低下させるために処理された(上記工程110および112)原料を受け取る。原料134をタンク136に送達するが、このタンク136は液状媒体138、例えば水を含有し、これが弁付き配管系(示さない。)を通じてタンクに送達される。例えば完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる2010年1月20日出願の米国特許仮出願第61/296,658号に記載のように、液状媒体への原料の初期分散を促進するために分散システムを使用し得る。
【0037】
計量装置142を含むホッパー140からタンクに糖化剤が送達される。1以上のジェット混合器によってタンクの内容物が混合される。ジェット混合器144は図2Aで図示するが、適切なジェット混合器の例は下記で詳述する。ジェット混合器は、ポンプおよび/またはローター(示さない。)を駆動するモーター146を用いて噴流を生じさせる。モーター146によりもたらされるトルクはタンク中の混合物の固体レベルと相関があり、これは同様に、混合物が糖化している程度を反映する。トルクはトルクモニター148により測定され、このトルクモニター148は、運搬装置130を駆動するモーター150に、およびホッパー140の計量装置142にもシグナルを送信する。従って、タンクの内容物の糖化に応じて、処理済み原料および酵素の供給が中断および再開され得る。トルクモニターにより測定されるデータを使用して、例えば、ローターを使用する混合器の場合はRPMがより低くなるか、またはポンプ駆動混合器の場合は噴射速度がより低くなるように、ジェット混合器を調整することもできる。このシステムは、トルクモニターの代わりにまたはこれに加えて、モーターの全負荷電流を測定するアンプモニター(示さない。)を含み得る。ある場合において、ジェット混合器は、モーター速度を調整することを可能にする可変周波数ドライブ(VFD)を含み得る。
【0038】
本システムは、液状媒体の温度を監視し、温度の上昇に応答して原料の供給速度および/または混合状態を調整する熱モニター(示さない。)も含む。液状媒体の温度が酵素を変性させる温度になるのを防ぐために、このような温度フィードバックループを使用することができる。
【0039】
本明細書に記載のシステムにおいて1以上のポンプが使用される場合、容積型(PD)ポンプ、例えば一軸ねじまたはねじ式PDポンプが使用されることが一般に好ましい。
【0040】
ある場合において、製造プラントは、例えば既存の穀物を原料とするかもしくは糖を原料とするエタノールプラントまたはバイオプロセス処理システムより上流で装置(これには、典型的なエタノールプラントにおいては、通常、穀物受け入れ装置、ハンマーミル、スラリー混合器、調理器具および液化装置が含まれる。)を取り除くかまたは廃止することによって改装されているものであり得る。従って、プラントに受け入れられる原料は、発酵装置に直接投入される。改装プラントは図3で概略的に示す。この方式での既存の穀物原料のまたは糖原料のエタノールプラントの使用は、完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる2010年2月11日出願の米国特許出願第12/704,521号に記載されている。
【0041】
ある態様において、糖化された原料(糖溶液)を個別の製造プラントに、または個別のタンクにすら輸送せずに、糖化に使用される同じタンクまたは他の容器において糖溶液に接種を行い、発酵させる。同じ容器中で発酵を完遂することができるかまたはこの方式で開始して、次いで上記で考察されるように輸送中に完遂することができる。単一タンクでの糖化および発酵は、完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる2010年1月20日出願の米国特許仮出願第61/296,673号に記載されている。
【0042】
一般に、例えば、酸素レベルを監視し、タンクに通気するかまたは必要に応じて混合物に通気することによって、発酵容器中の酸素レベルを調節すべきである。例えば加熱または重亜硫酸ナトリウムの添加によって、エタノールレベルが低下し始めた際に発酵プロセスを停止させ得るように、容器中のエタノールレベルを監視することも望ましい。その他の発酵停止方法としては、過酸化物(例えば、ペルオキシ酢酸または過酸化水素)を添加すること、コハク酸またはその塩を添加すること、容器の内容物を冷却すること、または酸素拡散速度を低下させることが挙げられる。これらの方法のいずれか2以上の組み合わせを使用し得る。輸送中に発酵を行うかまたは完遂しようとする場合、輸送容器(例えば鉄道車両のタンクまたはタンクローリー)には、酸素モニターおよびエタノールモニターを含む制御ユニットおよび重亜硫酸ナトリウム(またはその他の発酵停止添加物)をタンクに送達するための送達システムおよび/または発酵を停止させるための、タンク中のパラメーターを調整するためのシステムが装備され得る。
【0043】
必要に応じて、発酵中にジェット混合を使用することができ、発酵が糖化と同じ容器中で行われる場合、同じ装置を使用することができる。しかし、ある態様において、ジェット混合は必要ない。例えば、発酵が輸送中に行われる場合、鉄道車両またはタンクローリーの振動により適正な攪拌がもたらされ得る。
【0044】
原料、酵素および液体の混合
混合の特徴
様々なタイプの混合装置が下記に記載され、他の混合装置を使用し得る。適切な混合器は、それらが高速循環流、例えばトロイダル状または楕円パターンの流れを発生させるという共通点がある。一般に、好ましい混合器は高いバルク流速を示す。好ましい混合器は、比較的低いエネルギー消費でこの混合作用をもたらす。剪断および/または熱が糖化剤(または微生物、例えば発酵の場合)に悪影響を与え得るので、混合器により生じる剪断力が比較的低く、液状媒体の加熱を回避することも一般に好ましい。下記で詳細に考察するように、一部の好ましい混合器は、ローターまたは羽根車を含み得る混合要素に注入口を通じて混合物を引き込み、次いで混合要素からの混合物を出口ノズルを通じて放出する。この循環動作およびノズルから流出する高速の噴流によって、混合要素の向きに依存して、液面に浮遊している材料またはタンク底部に沈殿している材料の分散が促進される。混合要素は、浮遊および沈殿材料両方を分散させるために様々な向きに設置することができ、これらの混合要素の向きは場合により調整することができる。
【0045】
ある好ましい混合システムにおいて、周囲流体に接触する際の噴流速度v0は約2から300m/s、例えば約5から150m/sまたは約10から100m/sである。この混合システムの電力消費は、100,000Lタンクの場合、約20から1000KW、例えば30から570KWまたは50から500KWまたは150から250KWであり得る。費用効果のために電力使用が少ないことが一般に好ましい。
【0046】
ジェット混合
ジェット混合は、流体媒質、この場合、バイオマス原料、液状媒体および糖化剤の混合物、への高速液体の潜りジェットまたは複数の潜りジェットの放出を含む。液体の噴流は流体媒質に浸透し、そのエネルギーは乱流および幾分かの初期熱によって消費される。この乱流は速度勾配(流体剪断)と関連する。周囲流体が加速され、噴流に同伴し、この第2の同伴流は、噴流ノズルからの距離が広がるにつれて増加する。第2の流れの推進力は、噴流が拡大する際、流れが壁面、床面または障害物に衝突しない限り、概ね一定のままである。流れが何らかの障害物に衝突する前に長く持続するほど、多くの液体が第2の流れと同伴するようになり、タンクまたは容器中の大きな流れが増大する。流れが障害物に遭遇した場合、タンクの形状、例えば流れが障害物に衝突する角度に多かれ少なかれ依存して、第2の流れは推進力を喪失する。タンク壁に対する水力損失が最小限に抑えられるように、噴流の方向を定めおよび/またはタンクを設計することが一般に望ましい。例えば、図22で示されるように、タンクの底部がアーチ状(例えばドーム状のヘッドプレート)であり、ジェット混合器が側壁の比較的近くに向けられることが所望され得る。タンク底部(下部のヘッドプレート)は、何らかの所望のドーム状構造を有し得るかまたは楕円形もしくは円錐形の形状を有し得る。
【0047】
ジェット混合は、駆動力が機械式ではなく水力式である殆どのタイプの液体/液体および液体/固体混合とは異なる。機械式攪拌機が行うように流体を剪断し、混合容器の周囲でそれを推進する代わりに、ジェット混合器は、流体をタンク内の1以上のノズルを通じて推進し、他の流体を巻き込む高速噴流を生じさせる。その結果、剪断(流体対流体)および循環が生じ、これにより、タンク内容物が効率的に混合される。
【0048】
図4を参照して、潜りジェットからのコアフローと周囲流との間の速度勾配が大きいことによって、渦が生じる。図4Aは、潜りジェットの一般的な特徴を示す。潜りジェットが周りの周囲環境に拡大する場合、速度プロファイルは、ノズルからの距離(x)が拡大するにつれて平坦になる。また速度勾配dv/drは、混合領域(ノズルからの円錐状膨大部)を定義する渦を生じさせるように、ある一定の距離xでr(噴流の中心線からの距離)とともに変化する。
【0049】
空気中の潜りジェットの実験研究において(この結果は、水を含むあらゆる流体に適用可能である。)、Albertsonら(「Diffusion of Submerged Jets」Paper 2409, Amer. Soc. of Civil Engineers Transactions, Vol. 115:639-697, 1950, at p. 657)は、v(x)r=0/v0(中心線速度)、v(r)x/v(x)r=0(ある一定のxにおける速度プロファイル)、Qx/Q0(流れ同伴)およびEx/E0(xに伴うエネルギー変化)に対する無次元相関式を作成した:
(1)中心線速度、v(x)r=0/v0:
(2)何らかのxでの速度プロファイル、v(r)x/v(x)r=0:
(3)何らかのxでの流れおよびエネルギー:
式中、
v(r=0)=潜りジェットの中心線速度(m/s)、
v0=ノズルから発生する際の噴流速度(m/s)、
x=ノズルからの距離(m)、
r=噴流の中心線からの距離(m)、
D0=ノズルの直径(m)、
Qx=ノズルからの距離xの位置で所定の平面を横切る流体の流れ(me/s)、
Q0=ノズルから生じる流体の流れ(m3/s)、
E=ノズルからの距離xの位置での所定の平面を横切る流体のエネルギー束(m3/s),
E0=ノズルから生じる流体のエネルギー束(m3/s)。
(「Water Treatment Unit Processes: Physical and Chemical」, David W. Hendricks, CRC Press 2006, p. 411.)。
【0050】
ジェット混合は、大きな容積(1,000gal超)および低粘度(1,000cPs以下)で適用する場合に特に費用効果が大きい。殆どの場合、ジェット混合器のポンプまたはモーターが水面下にならないこと、例えばポンプが使用される場合、これが概ね容器の外に存在することも一般に有利である。
【0051】
ジェット混合のある1つの長所は、(幾分かの局部的な加熱があり得る場合、ノズルの出口を直接調整する以外に)、周囲流体の温度が仮に上昇したとしても僅かであることである。例えば、温度上昇は5℃未満、1℃未満であり得るかまたは測定可能な上昇ではない。
【0052】
噴流攪拌機
あるタイプの噴流攪拌機を図4-4Aで示す。このタイプの混合器は、例えばIKAから、ROTOTRON(商標)の商品名で市販されている。図4を参照して、混合器200はモーター202を含み、このモーター202は駆動軸204を回転させる。混合要素206は駆動軸204の端部に取り付けられる。図4Aで示されるように、混合要素206は側板208を含み、この側板の内側に羽根車210がある。矢印で示されるように、この羽根車がその「前」方向に回転する場合、この羽根車210は、側板の開口上端212を通じて液体を引き込み、開口下端214を通じて液体を放出する。端部214から流出する液体は、高速流または噴流の形態である。羽根車210の回転方向が逆である場合、液体は下端214を通じて引き込まれ、上端212を通じて放出され得る。例えばタンクまたは容器中の液面付近または液面上に浮遊している固体を吸い込むために、これを使用することができる(「上」および「下」は図4での混合器の向きを指し、この混合器は、上端が下端の下になるようにタンク中で方向付けられ得ることに注意されたい。)。
【0053】
側板208は、その末端に隣接する張り出し部216および218を含む。これらの張り出し部は、このタイプの混合器により観察される概ねトロイダル状である流れに関与すると考えられている。側板および羽根車の形状も、比較的少ない電力消費を用いて高速流に流れを集中させる。
【0054】
好ましくは、側板208と羽根車210との間の間隔は、材料が側板を通過する際に材料が過剰に粉砕されるのを回避するために十分なものである。例えば、この間隔は、混合物中の固体の平均粒径の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍であり得る。
【0055】
ある実施において、シャフト204は、このシャフトを通じて気体送達を可能にするように構成される。例えば、シャフト204は、気体が送達される穴(示さない。)および気体が混合物に流出する1以上の開口部を含み得る。この開口部は、混合を促進するために側板208内および/またはシャフト204の長さ方向に沿った他の位置にあり得る。
【0056】
羽根車210は、高速で側板を通じて液体を引き込む何らかの所望の形状を有し得る。この羽根車は、好ましくは図4Aで示されるようなマリン羽根車であるが、例えば図4Bで示されるようなラシュトン羽根車または、例えばある程度の軸流をもたらすために傾斜している改良型ラシュトン羽根車など、異なる設計を有し得る。
【0057】
側板を通じて高速流を生じさせるために、モーター202は好ましくは、高速、高トルクモーター、例えば500から20,000RPM、例えば3,000から10,000RPMで動作可能である。しかし、混合器が大きいほど(例えば、側板が大きいほどおよび/またはモーターが大きいほど)、回転速度が低くなり得る。従って、5hp、10hp、20hpまたは30hp以上など、大型の混合器を使用する場合、モーターは、より低い回転速度、例えば2000RPM未満、1500RPM未満またはさらには500RPM以下で動作するように設計され得る。例えば、10,000〜20,000リットルのタンクを混合するような大きさの混合器は、900から1,200RPMの速度で動作し得る。混合状態は、例えば固体の糖化ゆえに、経時的に変化するので、比較的一定の羽根車速度を維持するために、モーターのトルクは好ましくは自動調整式である。
【0058】
有利なことに、混合器は、噴流を所望の方向に向けるために、あらゆる所望の角度またはタンクの位置に向けることができる。さらに、上記で考察したように、羽根車の回転方向に依存して、混合器を使用して側板のいずれかの端部から流体を引き込むことができる。
【0059】
ある実施において、流体を上方に噴射するように1以上のジェット混合器を配置し(「上方噴出(up pump)」)、流体を下方に噴射するように1以上のジェット混合器を配置して(「下方噴出(down pump)」)、2以上のジェット混合器を容器中に設置することができる。ある場合において、上方噴出混合器は、混合器により生じる乱流を促進するために、下方噴出混合器に隣接して設置される。必要に応じて、加工処理中に、1以上の混合器を上昇流と下降流との間で切り替え得る。液状媒体中の原料の初期分散中に、全てまたは殆どの混合器を上方噴出モードに切り替えることは、上方噴出により表面で顕著な乱流が生じるので、特に原料が液面に送り出されるかまたは噴き出される場合、有利であり得る。上方噴出は、通気され得る表面に対して気体を泡立てることによって液体からのCO2の除去を促進するために、発酵中に使用することもできる。
【0060】
吸込み室ジェット混合器
別のタイプのジェット混合器は、ポンプから加圧流体を送達する一次ノズルと、周囲流体が一次ノズルとより広い注入口との間の圧力低下によって引き込まれる、一次ノズルに隣接する吸引注入口と、吸入口と二次ノズルとの間に伸びる吸込み室と、を含む。高速流体の噴流は二次ノズルから流出する。
【0061】
このタイプの混合器の例は図6で示す。示されるように、混合器600において、ポンプからの加圧液体(示さない。)は、注入口を通じて通路602に流れ込み、一次ノズル603を通じて流出する。周囲液体は、加圧液体の流れにより生じる圧力低下によって、吸入口604を通じて吸込み室606に引き込まれる。複合流は、二次ノズル608を通じて吸込み室から周囲液体に高速で流出する。流出する液体噴流のジェット作用により、吸込み室および周囲液体の両方で混合が起こる。
【0062】
同様の原理に従い動作する混合システムを図6Aで示す。この設計を具体化している混合器は、Flygt(商標)ジェット混合器の商品名でITT Water and Wastewaterから市販されている。システム618において、ポンプ620は、吸引ノズルシステム622を通じて、タンク(示さない。)に送達される一次流動を生じさせる。吸引ノズルシステム622は、上述の一次ノズル603と同様の方式で機能する一次ノズル624を含み、これによって、一次ノズルから流出する流体により誘発される圧力低下ゆえに、排出チューブ628の隣接する開口端626に周囲流体が引き込まれるようになる。次に、二次ノズルとして機能する、排出チューブ628の他方の端部630から、複合流が高速噴流として流出する。
【0063】
排出装置ノズルと呼ばれる図7で示されるノズルは同様の原理で動作する。この設計を具現化するノズルは、TeeJet(商標)の商品名で市販されている。示されるように、ノズル700において、加圧液体が注入口702を通って流れ、一次ノズル704から流出し、拡散器708の開口端706に周囲液体を引き込む。複合流は、流入速度Aと引き込まれる周囲流体の流速Bとの合計である循環流速A+Bで、拡散器の反対側の開口端710から流出する。
【0064】
ジェットエアレーション型混合器
使用することができる別のタイプのジェット混合システムは、水処理業界で「ジェットエアレーション混合」と呼ばれる。水処理業界において、これらの混合器は通常、通気を行うために、加圧空気および液体混合物の噴流を送達するために使用される。しかし、本明細書において場合によって、下記で考察されるように、ジェットエアレーション型混合器が加圧ガスなしで使用される。ジェットエアレーション混合器の動作原理は、最初に、清浄化のための加圧ガスとのそれらの使用の内容で記載されている。
【0065】
図8-8Bで示される混合器800などの渦ジェット混合器は、中央ハブ804上に放射状に取り付けられる多重ジェット802を含む。噴流の放射パターンは、タンク全体にわたり混合エネルギーを均一に分布させる。タンクの重心軸の周りにトロイダル流を与えるために、示されるように、タンクの中央に渦ジェット混合器を設置し得る。渦ジェット混合器は、この渦ジェット混合器に高速液体を供給する配管806に取り付けられ得る。図8Bで示される態様において、配管812を通じて空気も渦ジェット混合器に供給される。タンクの外側に設置され、タンクの側壁の注入口810を通じて液体を引き込むポンプ808によって高速液体が送達される。
【0066】
図9および10は、気体および液体流を混合し、高速噴流を噴出するように設計される2種類のタイプのノズル配置を示す。これらのノズルは、図8および8Aで示される渦ジェット混合器とは幾分異なるが同様に機能するように構成される。図9で示されるシステム900において、一次流体または動力流体(motive fluid)は、液体ライン902を通じて内部ノズル904に向かい、このノズルを通じて液体が高速で混合部906へと移動する。二次流体、例えば圧縮空気、窒素もしくは二酸化炭素などの気体または液体は第2のライン908を通じて混合部に入り、内部ノズルを通じて混合部906に入る動力流体に取り込まれる。いくつかの例において、二次流体は、酵素の酸化を減少させるために、窒素または二酸化炭素である。2本のラインからの複合流が外部ノズル910を通じて混合タンクに噴出される。二次流体が気体である場合、微細な泡が混合物中の液体に取り込まれる。液体は、ポンプにより液体ライン902に供給される。気体が使用される場合、これはコンプレッサーにより提供される。二次流体として液体が使用される場合、これは、液体ライン902を通じて入る液体と同じ速度を有してもよいし、異なる速度でもよい。
【0067】
図10は代替的なノズル設計1000を示し、ここでは、外部ノズル1010(このうち1つのみ示す。)が、第2のライン1008と平行して配置される液体ライン1002を含む細長部材1011の長さに沿って配置される。各ノズルは、1本の外部ノズル1010および1本の内部ノズル1004を含む。動力液体と二次流体の混合は、上述のシステム900と同じように進行する。
【0068】
図11および12は、ノズルが細長部材の長さに沿って配置されるジェットエアレーション型混合システムの例を示す。図11で示される例において、細長部材1102はタンク1104の径に沿って配置され、ノズル1106は、概ね楕円形の流れの2つの領域、即ち中央の細長部材の両側、を含む所望のフローパターンを生じさせるために、ノズルと反対方向に伸びる。図12で示される例において、タンク1204は、横断面では概ね長方形であり、細長部材1202はタンクの側壁1207に沿って伸びる。この場合、ノズル1206は全て、側壁1209の反対に、同じ方向を向く。これにより、示されるフローパターンが生じ、タンク中の流れは、タンクの長さに沿って概ね中央に伸びる主軸周囲で概ね楕円形である。図12で示される態様において、ノズルは、例えば水平から約15から30度の角度で、タンク床に向かって傾けることができる。
【0069】
図13で示される別の態様において、ノズル1302、1304および吸入口1306は、タンクの内容物が、タンクの中央垂直軸の周囲でトロイダルに、回転ドーナツ状に旋回しかつ回転するように配置される。トロイダル面の周囲の流れは、タンク中央に引き下ろされ、床に沿って、壁に引き寄せられ、中央に戻り、回転する螺旋パターンを生じさせて、中央部を一掃し、固体が沈殿するのを防ぐ。トロイダルパターンは、タンク中央部へ浮遊固体を移動させるためにも有効であり、浮遊固体が底部に引き寄せられ、タンク内容物と均一になる。この結果は、連続的な螺旋状フローパターンであり、これによりタンクのデッドスポットが最小限に抑えられる。
【0070】
バックフラッシュ
ある例において、本明細書に記載のジェットノズルは閉塞することがあり、これにより、効率及び費用効果が低下し得る。ノズルを通じて動力液体の流れを逆流させることによって、ノズルの閉塞を除去し得る。例えば、図14で示されるシステムにおいて、ポンプ1404と、ノズル1408に流れる液体ライン1406との間のバルブ1402を閉じ、二次ポンプ1410を作動させることによって、これを遂行する。二次ポンプ1410はノズルを通じて流体を引き込む。次に、バルブ1402が閉じられているため、流体は垂直管1412を通って上方に移動する。この流体は、タンクを通じた再循環のために、垂直管1412からその出口1414で流出する。
【0071】
輸送/可搬式混合器における混合
上記のように、必要に応じて、例えば原料を処理するための第1の加工処理プラントとエタノールなどの最終産物の生成のための第2の加工処理プラントとの間の、混合物の輸送中に、部分的にまたは完全に糖化を行い得る。この場合、鉄道車両またはその他の可搬型の使用のために設計されたジェット混合器を用いて、混合を行うことができる。このような混合器の例は下記で考察する。図15および15Aで図示されるように、混合器1602、1604をポート1606を通じて、例えばトラック(図15)または鉄道車両(図15A)のタンクに挿入することができる。タンク外部の制御システム1608を用いて、この混合器を運転することができるが、この制御システムは、使用する混合システムのタイプに応じて、例えばモーターおよび/または供給空気もしくは圧縮空気および、混合器の動作を制御するように構成される制御装置を含み得る。通気(示さない。)も提供され得る。
【0072】
その他の混合システム/ノズル
パルスエア/流体
代替的なタイプの混合器は、混合物にパルス状に送達される気体を使用する。このような混合器は、可搬式鉄道車両混合器の例として、図15および15Aで図示する。計量された量の高圧ガスが注入されるかまたは、タンク底部付近に配置された平坦な円形ディスク(アキュムレータプレート)下でパルス状に放出される。空気が急激に放出されることによって液体に衝撃が与えられる。プレートとタンク床との間で気体が外側に移動するので、沈殿している固体が一掃される。次に、この気体がプレート上で集まって大きな楕円形の泡となる。各泡が表面に浮かび上がるので、泡が液体をその上に押し上げ、タンク周囲に向かって押し出す。この液体はタンクの側方に向かって移動し、タンク壁を底部に向かって移動する。この泡の動きによって、固体が表面に推し進められ、タンク中で概ね環状またはトロイダルの液体の循環が生じる。気体は、例えば大気、窒素または二酸化炭素であり得る。タンクは、混合中にタンクから気体を逃すことができるように通気孔が設けられる(示さない。)。
【0073】
低速攪拌機
図16および16Aは、比較的低速での回転混合のための、シャフト(示さない。)上に取り付けられるように構成される攪拌機を示す。この攪拌機は、シャフトを受けるように配置される中央の取り付けハブ1703周囲の支持アーム1701に取り付けられる、例えば2個の混合要素1702(図16)または3個の混合要素(図16A)を含み得る。
【0074】
混合要素1702は截頭錐の形態であり、それぞれ、第1の端部1704および第2の端部1706を有する。第1の端部の横断面は、第2の端部の横断面より大きい。混合要素は、この混合要素の中心軸が混合要素の回転面に対して斜めに配置される。
【0075】
第1の端部1704を通じて液体が流入し、第2の端部1706を通じてより高速で流出するような方向で攪拌機を回転させると、それにより、各混合要素の先細状の端部で乱流が生じることによって動的な流動状態が生じる。回転面に対して混合要素が傾斜していることによって、隣接するタンクまたは容器壁の近くで上方に流れ、タンクまたは容器の中央部で混合器シャフトに対して同軸上に下方に流れ、支持アーム1701の間の中間領域をその流れが通過するという、持続的な閉環状の流れを生じる傾向がある。この環状流の強さは角度の大きさに依存する。
【0076】
このタイプの混合器は、Visco-Jet(商標)の商品名でInotecから市販されている。鉄道車両またはその他の輸送コンテナに置くことができる折り畳み式混合器が入手可能である。同様のタイプの混合器は、完全な開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,921,194号に記載されている。
【0077】
タンク壁のホールドアップの最小化
いくつかの状況において、特に理論的または実用限界に近い固体レベルにおいて、混合中に材料がタンクの側壁および/または底壁に沿って蓄積し得る。この現象は「ホールドアップ」と呼ばれ、結果的に混合が不十分となり得るので望ましくない。ホールドアップを最小限に抑え、タンク全体の良好な混合を確実にするために、いくつかのアプローチを取り得る。
【0078】
例えば、ジェット混合装置に加えて、剥離装置、例えば、「拭き取り」方式でタンクの側面を掻き取るブレードを有する装置をタンクに装備することができる。このような装置は、例えば乳業業界で周知である。適切な攪拌機としては、Walker Engineered Products, New Lisbon, WI製造の側面および底部一掃攪拌機および掻き取りブレード攪拌機が挙げられる。図18で示されるように、側面および底部一掃攪拌機1800は、タンクの軸周囲で回転するように取り付けられる中央の細長部材1802を含み得る。側壁掻き取りブレード1804は細長部材1802の各末端に取り付けられ、細長部材に対して傾斜して配置される。示される態様において、タンク底部に蓄積する材料全てを剥離するために、一対の底壁掻き取りブレード1806が細長部材1802の中間点に取り付けられる。材料がタンク底部に蓄積しない場合、これらの掻き取り装置は省略し得る。図18Aで示されるように、掻き取りブレード1804は、側壁に沿って配置される複数の掻き取り要素の形態であり得る。他の態様において、掻き取りブレードは連続したものであるかまたは何らかの他の所望の形状を有し得る。
【0079】
他の態様において、ジェット混合器それ自体、ホールドアップを最小限に抑えるように構成される。例えば、ジェット混合器は、混合中に動く、1以上の可動ヘッドおよび/または弾性部を含み得る。例えばジェット混合器は、その長さに沿って複数のジェットノズルを有する細長い回転部材を含み得る。この細長部材は、図19で示されるように平面的であり得るかまたは非平面の形状を有し得、例えばこれは、図20で示されるようなタンク壁の形状に適合し得る。
【0080】
図19を参照して、ジェット混合器ノズルは、モーター1902およびシャフト1904によって駆動される回転細長部材1900上に配置され得る。水またはその他の流体が回転部材の通路を通じて、例えばポンプ羽根車1906によって汲み上げられ、部材1900が回転する間に、噴射口1908を通じて複数の噴流として排出される。タンク側壁のホールドアップを減少させるために、部材1900の端部に開口部1910が提供され得る。
【0081】
図20で示される態様において、タンク2000の特定の形状に適合させるために、細長部材には、水平方向に伸長するアーム2002と、下方傾斜部2004と、外側及び上方傾斜部2006と、垂直伸長部2008と、が含まれる。細長部材内の通路を通じて流体が複数の噴射口38に汲み上げられ、これを通じて、細長部材が回転している間に噴流が放出される。
【0082】
図19および20で示される両態様において、噴流により混合がもたらされると同時にタンクの側壁も洗浄される。
【0083】
他の態様において、ジェット混合器は、たわみ部材およびまたは調整部材(例えば屈曲可能なチューブまたは入れ子状に嵌まり込むチューブ)を含み得、これを通じて噴流が送達される。例えば図21および21Aで図示されるように、ジェット混合装置は、米国特許第3,883,368号で開示されるようなものなど、浮遊型プールクリーナー方式のフレキシブルチューブで構成され得る。示されるシステム2100において、たわみ供給ホース2102は、タンク2106の側壁にある注入口2104から流体を送達する。供給ホース2102は、一連の浮漂2108および猿環2110を介してタンクの液面に沿って伸びる。複数のたわみホース2112はそれらの上端で、供給ホース2102の浮遊部に間隔をおいて配置されるT継手2114に固定される。たわみホース2112の遠位の開口端から流体が噴出し、その結果、タンクの内容物が混合され、タンク側壁のホールドアップが除去される。
【0084】
ある実施において、上記の態様の組み合わせを使用し得る。例えば、平面状および非平面状の回転または振動細長部材の組み合わせを使用し得る。上述の可動性のノズル配置は、互いに組み合わせておよび/または掻き取り装置と組み合わせて使用することができる。複数の可動性のノズル配置を一緒に使用することができ、例えば図19で示される2以上の回転部材をタンクに垂直に積層することができる。複数の回転部材を使用する場合、それらは、同じ方向にまたは逆方向に、および同じ速度でまたは異なる速度で回転するように構成され得る。
【0085】
材料
バイオマス材料
バイオマスは、例えばセルロース系又はリグノセルロース系材料であり得る。このような材料としては、紙および紙製品(例えばポリコート紙およびクラフト紙)、木材、木材関連材料、例えば削片板、草、もみ殻、バガス、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザルアサ、マニラアサ、藁、スイッチグラス、アルファルファ、乾草、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、ココナツヘア;およびα-セルロース含量が高い材料、例えば綿花が挙げられる。原料は、バージンスクラップ織物材料、例えば端切れ、使用後廃棄物、例えばぼろ切れから得ることができる。紙製品を使用する場合、それらはバージン材料、例えば、スクラップバージン材料であり得るかまたは、それらは使用済み廃棄物であり得る。バージン原料とは別に、使用済み廃棄物、産業廃棄物(例えばくず)および加工廃棄物(例えば紙加工からの廃水)も繊維供給源として用いることができる。バイオマス原料はまた、ヒト(例えば下水)、動物廃棄物または植物廃棄物から得られるかまたはそれらに由来し得る。さらなるセルロース性およびリグノセルロース系材料は、米国特許第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号および同第5,952,105号に記載されている。
【0086】
ある態様において、バイオマス材料は、1以上のβ-1,4結合を有し、約3,000から50,000の間の数平均分子量を有する材料であるかまたはこれらを含む炭水化物を含む。このような炭水化物は、β(1,4)-グリコシド結合の縮合を通じた(β-グルコース1)由来のセルロース(I)であるかまたはこれを含む。この結合はそれ自身、デンプンおよびその他の炭水化物に存在するα(1,4)-グリコシド結合に対するものと対照をなす。
【0087】
デンプン材料としては、デンプンそのもの、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、ジャガイモデンプンもしくはコメデンプンなど、デンプンの誘導体またはデンプンを含む材料、例えば食品もしくは農作物が挙げられる。例えば、デンプン材料は、アラカチャ、ソバ、バナナ、オオムギ、キャッサバ、葛、オカ、サゴヤシ、モロコシ、一般的な家庭用ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、ヤムイモまたは1以上のマメ類、例えば、ソラマメ、レンズマメもしくはエンドウマメであり得る。何らかの2以上のデンプン材料の混合物もデンプン材料である。
【0088】
ある場合において、バイオマスは微生物材料である。微生物供給源としては、炭水化物供給源(例えばセルロース)を含有するかまたは提供することができる、何らかの天然のまたは遺伝子改変微生物または生物、例えば、原生生物、例えば動物原生生物(例えば、鞭毛虫、アメーバ、繊毛虫および胞子虫などの原生動物)および植物原生生物(例えば、アルベオラータ、クロララクニオン、クリプト藻類、ミドリムシ目、灰色植物、ハプト藻、赤色藻類、ストラメノパイルおよび緑色植物亜界などの藻類)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、海藻、プランクトン(例えば、マクロプランクトン、メソプランクトン、ミクロプランクトン、ナノプランクトン、ピコプランクトンおよびフェムトプランクトン)、植物プランクトン、細菌(例えばグラム陽性細菌、グラム陰性細菌および特殊環境生物)、酵母および/またはそれらの混合物が挙げられる。場合によっては、微生物バイオマスは、天然供給源、例えば、海洋、湖、複数の水域、例えば海水または淡水から得るかまたは陸上から得ることができる。あるいは、またはさらに、微生物バイオマスは、培養系、例えば大規模な乾式および湿式培養系から得ることができる。
【0089】
糖化剤
適切な酵素としては、バイオマスを分解できる、セロビアーゼ及びセルラーゼが挙げられる。
【0090】
適切なセロビアーゼとしては、NOVOZYME 188(商標)の商品名で販売されているアスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のセロビアーゼが挙げられる。
【0091】
セルラーゼはバイオマスを分解することができ、真菌または細菌由来であり得る。適切な酵素には、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、フミコラ(Humicola)属、フザリウム(Fusarium)属、チエラビア(Thielavia)属、アクレモニウム(Acremonium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属およびトリコデルマ(Trichoderma)属由来のセルラーゼが含まれ、フミコラ、コプリナス(Coprinus)、チエラビア、フザリウム、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、アクレモニウム、セファロスポリウム(Cephalosporium)、シタリジウム(Scytalidium)、ペニシリウム(Penicillium)またはアスペルギルス(Aspergillus)の種(例えば欧州特許第458162号)が含まれ、特にフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)(シタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)として再分類、例えば、米国特許第4,435,307号参照)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、メリピルス・ギガンテウス(Meripilus giganteus)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、アクレモニウム種、アクレモニウム・ペルシシナム(Acremonium persicinum)、アクレモニウム・アクレモニウム(Acremonium acremonium)、アクレモニウム・ブラシペニウム(Acremonium brachypenium)、アクレモニウム・ジクロモスポルム(Acremonium dichromosporum)、アクレモニウム・オブクラバツム(Acremonium obclavatum)、アクレモニウム・ピンケルトニエ(Acremonium pinkertoniae)、アクレモニウム・ロセオグリセウム(Acremonium roseogriseum)、アクレモニウム・インコロラツム(Acremonium incoloratum)およびアクレモニウム・フラツム(Acremonium furatum)から選択される株;好ましくは、種フミコラ・インソレンスDSM 1800、フザリウム・オキシスポルムDSM 2672、ミセリオフトラ・サーモフィラCBS 117.65、セファロスポリウム種RYM-202、アクレモニウム種CBS 478.94、アクレモニウム種CBS 265.95、アクレモニウム・ペルシシナムCBS 169.65、アクレモニウム・アクレモニウムAHU 9519、セファロスポリウム種CBS 535.71、アクレモニウム・ブラシペニウムCBS 866.73、アクレモニウム・ジクロモスポルムCBS 683.73、アクレモニウム・オブクラバツムCBS 311.74、アクレモニウム・ピンケルトニエCBS 157.70、アクレモニウム・ロセオグリセウムCBS 134.56、アクレモニウム・インコロラツムCBS 146.62およびアクレモニウム・フラツムCBS 299.70Hから選択される株によって産生されるものが含まれる。セルロース分解酵素はクリソスポリウム、好ましくは、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)の株から得ることもできる。さらに、トリコデルマ(特に、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)およびトリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii))、好アルカリ性バチルス(例えば、米国特許第3,844,890号および欧州特許第458162号参照)およびストレプトミセス(例えば欧州特許第458162号参照)を用いることができる。
【0092】
商品名ACCELLERASE(登録商標)、例えばAccellerase(登録商標)1500酵素複合体としてGenencorから入手可能なものなどの酵素複合体を用いることができる。Accellerase1500酵素複合体は、主にエクソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ(2200-2800CMC U/g)、ヘミ−セルラーゼおよびβ-グルコシダーゼ(525-775pNPG U/g)といった複数の酵素活性を含有し、4.6から5.0のpHを有する。酵素複合体のエンドグルカナーゼ活性は、カルボキシメチルセルロース活性単位(CMC U)で表され、一方、β-グルコシダーゼ活性はpNP-グルコシド活性単位(pNPG U)で報告される。ある態様において、Accellerase(登録商標)1500酵素複合体およびNOVOZYME(商標)188セロビアーゼの混合物が使用される。
【0093】
ある実施において、糖化剤は、酸、例えば鉱酸を含む。酸が使用される場合、微生物にとって毒性がある副産物が生成され得、この場合、本プロセスは、このような副産物を除去することをさらに含み得る。活性化炭素(activated carbon)、例えば活性炭(activated charcoal)又はその他の適切な技術を用いて除去を行い得る。
発酵作用物質
【0094】
発酵で使用される微生物は、天然微生物および/または遺伝子改変微生物であり得る。例えば、この微生物は、細菌、例えばセルロース分解性細菌など、真菌、例えば酵母など、植物または原生生物、例えば藻類、原虫または真菌様原生生物、例えば粘菌などであり得る。これらの生物が適合性である場合、生物の混合物を使用することができる。
【0095】
適切な発酵微生物は、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、オリゴ糖または多糖などの炭水化物を発酵生成物に変換する能力を有する。発酵微生物としては、サッカロミセス(Sacchromyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Sacchromyces cerevisiae)(パン酵母)、サッカロミセス・ジスタチクス(Saccharomyces distaticus)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)など;クリベロミセス(Kluyveromyces)属、例えばクリベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)種、クリベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)種など;カンジダ(Candida)属、例えば、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)およびカンジダ・ブラシカ(Candida brassicae)、ピキア・スチピチス(Pichia stipitis)(カンジダ・シェハテ(Candida shehatae)の類縁など、クラビスポラ(Clavispora)属、例えばクラビスポラ・ルシタニエ(Clavispora lusitaniae)種およびクラビスポラ・オプンティア(Clavispora opuntiae)種など、パキソレン(Pachysolen)属、例えばパキソレン・タンノフィルス(Pachysolen tannophilus)種など、ブレタノミセス(Bretannomyces)属、例えばブレタノミセス・クラウセニ(Bretannomyces clausenii)種などの株が挙げられる(Philippidis, G.P.,1996, Cellurose bioconversion technology,in Handbook on Bioethanol:Production and Utilization, Wyman,C.E.編, Taylor & Francis, Washington, DC, 179-212)。
【0096】
市販の酵母としては、例えばRed Star(登録商標)/Lesaffre Ethanol Red(Red Star/Lesaffre、USAから入手可能)、FALI(登録商標)(Fleischmann's Yeast、division of Burns Philip Food Inc.、USAから入手可能)、SUPERSTART(登録商標)(Alltech、現Lalemandから入手可能)、GERT STRAND(登録商標)(Gert Strand AB、Swedenから入手可能)およびFERMOL(登録商標)(DSM Specialtiesから入手可能)が挙げられる。
【0097】
例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(Philippidis、1996、上出)など、細菌も発酵において使用し得る。
【0098】
添加物
抗生物質
糖化された溶液中では糖濃度が高いことが一般に好ましいが、一方で、より低い濃度が使用され得、この場合には、抗菌性の添加物、例えば広域抗生物質を低濃度、例えば50から150ppmで添加することが所望され得る。その他の適切な抗生物質としては、アンホテリシンB、アンピシリン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ピューロマイシン、ストレプトマイシンが挙げられる。抗生物質は、輸送及び保管中に微生物の増殖を阻害し、適切な濃度、例えば15から1000ppm重量、例えば25から500ppmまたは50から150ppmで使用することができる。必要に応じて、糖濃度が比較的高い場合でも抗生物質が含まれ得る。
【0099】
界面活性剤
界面活性剤の添加は糖化率を促進し得る。界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤、例えばTween(登録商標)20またはTween(登録商標)80ポリエチレングリコール界面活性剤など、イオン性界面活性剤または両性界面活性剤が挙げられる。その他の適切な界面活性剤としては、オクチルフェノールエトキシレート、例えばDow Chemicalから市販されているTRITON(商標)Xシリーズの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。溶液中、特に高濃度溶液中で生成されている糖を維持するために、界面活性剤を添加することもできる。
【0100】
糖化用培地
ある態様において、培地は次の濃度の成分を含む。
【0101】
【0102】
原料の物理的処理
ある実施において、原料は、糖化および/または発酵の前に物理的に処理される。物理的処理プロセスは、機械的処理、化学的処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発などの本明細書に記載のいずれかのものの1以上を含み得る。2、3、4またはさらに全てのこれらの技術(順序は問わず。)の組み合わせで処理方法を使用することができる。複数の処理方法を使用する場合、同時にまたは異なる時間にこれらの方法を適用することができる。バイオマス原料の分子構造を変化させるその他のプロセスも、単独でまたは本明細書中で開示されるプロセスと組み合わせて使用することができる。
【0103】
機械的処理
場合によっては、バイオマス原料を機械的に処理することが方法に含まれ得る。機械的処理としては、例えば、切断、粉砕、圧搾、研削、剪断および細切が含まれる。粉砕には、例えば、ボールミル粉砕、ハンマーミル粉砕、ローター/ステーター乾式粉砕もしくは湿式粉砕または他のタイプの粉砕が含まれ得る。他の機械的処理としては、例えば、石臼研削、粗砕、機械的剥離もしくは引裂、ピン研削またはエアーアトリッションミル粉砕が挙げられる。
【0104】
機械的処理は、セルロース系材料またはリグノセルロース系材料を「切り開き」、「力を加え」、破壊し、破砕するのに有利になることがあり、これらによって、材料のセルロースは、鎖が切断され易くなりおよび/または結晶化度が低くなる。切り開かれた材料は、照射時に酸化されやすくなっている場合もある。
【0105】
場合によっては、機械的処理は、受領されたとおりの原料の初期調製、例えば、切断、研削、剪断、微粉砕または細切などによる材料のサイズ縮小化も含み得る。例えば、場合によっては、剪断または細断によって、疎性原料(例えば再生紙、デンプン材料またはスイッチグラス)が調製される。
【0106】
あるいは、またはさらに、原材料は、他の物理的処理方法、例えば、化学処理、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発の1以上によって最初に物理的に処理され、次いで機械的に処理され得る。例えば照射または熱分解などの他の処理の1以上により処理した材料はより脆くなる傾向があり、従って、機械的処理によって材料の分子構造をさらに変化させることがより容易になり得るので、この一連の処理は有利になることがある。
【0107】
ある態様において、原材料は繊維性材料の形態であり、機械的処理には、繊維性材料の繊維を曝露させるための剪断が含まれる。剪断は、例えば、ロータリーナイフカッターを用いて行うことができる。原料を機械的に処理する他の方法としては、例えば、粉砕または研削が挙げられる。粉砕は、例えば、ハンマーミル、ボールミル、コロイドミル、コニカルミルもしくはコーンミル、ディスクミル、エッジミル、ウイレーミルまたはグリストミルを用いて行われ得る。研削は、例えば、石材グラインダー(stone grinder)、ピン研削盤、コーヒーグラインダーまたはバーグラインダーを用いて行われ得る。研削は、ピンミルの場合と同様に、例えば、往復ピンまたは他の要素によって行われ得る。他の機械的処理法としては、機械的剥離または引裂、材料に加圧するその他の方法およびエアーアトリッションミル粉砕が挙げられる。適切な機械的処理は、原料の分子構造を変化させる何らかのその他の技術をさらに含む。
【0108】
必要に応じて、機械的に処理した材料を、例えば平均開口径が1.59mm(1/16インチ、0.0625インチ)以下のふるいに通すことができる。ある態様において、剪断または他の機械的処理およびふるいによる処理が同時に行われる。例えば、ロータリーナイフカッターを用いて、原料の剪断および選別を同時に行うことができる。原料を固定ブレードと回転ブレードとの間で剪断して、剪断材料を得て、これをふるいに通し、容器に回収する。
【0109】
セルロース系又はリグノセルロース系材料は、乾燥状態(例えば、その表面上に自由水が殆どないかまたは全くない状態)、水和状態(例えば10重量%以下の水を吸収した状態)または例えば約10重量%から約75重量%の水を有する湿潤状態で機械的に処理することができる。繊維供給源は、水、エタノールまたはイソプロパノールなどの液体下に部分的にまたは完全に浸漬させながら機械的に処理することもできる。
【0110】
セルロース系又はリグノセルロース系材料はまた、気体(空気以外の気流または雰囲気など)、例えば酸素もしくは窒素または蒸気の下で機械的に処理することもできる。
【0111】
必要に応じて、リグニンを含む何らかの繊維性材料からリグニンを取り出すことができる。また、セルロースを含む材料の分解を促進するために、機械的処理又は照射の前又はその最中に、熱、化学物質(例えば鉱酸、塩基又は次亜塩素酸ナトリウムなどの強い酸化剤)および/または酵素で、この材料を処理することができる。例えば、酸の存在下で研削を行うことができる。
【0112】
機械的処理システムは、具体的な形態的特徴、例えば、表面積、気孔率、かさ密度など、繊維性原料の場合、縦横比といった繊維の特徴などを有する傾向を生じるように構成することができる。
【0113】
ある態様において、機械的に処理した材料のBET表面積は、0.1m2/g超、例えば0.25m2/g超、0.5m2/g超、1.0m2/g超、1.5m2/g超、1.75m2/g超、5.0m2/g超、10m2/g超、25m2/g超、35m2/g超、50m2/g超、60m2/g超、75m2/g超、100m2/g超、150m2/g超、200m2/g超またはさらには250m2/g超である。
【0114】
機械的に処理した材料の気孔率は、例えば20%超、25%超、35%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、92%超、94%超、95%超、97.5%超、99%超またはさらには99.5%超となり得る。
【0115】
ある態様において、機械的処理後に、材料のかさ密度は、0.25g/cm3未満、例えば0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3以下のかさ密度、例えば0.025g/cm3である。かさ密度は、ASTM D1895Bを用いて測定される。簡単に述べると、この方法は、既知体積のメスシリンダーに試料を満たし、試料の重量を得ることを含む。かさ密度は、試料の重量グラムを、メスシリンダーの既知体積、立方センチメートルで割ることによって計算される。
【0116】
原料が繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維は、複数回剪断されているとしても、比較的大きな(例えば、20:1を超える)平均長さ対直径比を有し得る。さらに、本明細書中に記載の繊維性材料の繊維は、長さおよび/または長さ対直径比の比較的狭い分布を有し得る。
【0117】
本明細書中で使用される場合、平均繊維幅(例えば直径)とは、およそ5,000本の繊維を無作為に選択することによって光学的に測定されるものである。平均繊維長は、補正済みの長さ加重長(length-weighted length)である。BET(Brunauer,EmmetおよびTeller)表面積は多点表面積であり、気孔率は水銀ポロシメトリーによって測定されるものである。
【0118】
原料が繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維の平均長さ対直径比は、例えば、8/1超、例えば10/1超、15/1超、20/1超、25/1超または50/1超であり得る。機械的に処理した材料の平均繊維長は、例えば約0.5mmから2.5mmの間、例えば約0.75mmから1.0mmの間であり得、第2の繊維性材料14の平均幅(例えば直径)は、例えば約5μmから50μmの間、例えば約10μmから30μmの間であり得る。
【0119】
ある態様において、原料が繊維性材料である場合、機械的に処理した材料の繊維長の標準偏差は、機械的に処理した材料の平均繊維長の60%未満、例えば平均長の50%未満、平均長の40%未満、平均長の25%未満、平均長の10%未満、平均長の5%未満またはさらには平均長の1%未満であり得る。
【0120】
ある状況において、低かさ密度材料を調製し、(例えば、別の場所への輸送を容易にし、輸送のためのコストを削減するために)その材料を高密度化し、次いでその材料をより低いかさ密度状態に戻すことが所望され得る。本明細書中に記載の方法のいずれかによって高密度化材料を加工処理することができるか、または、例えば、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/429,045号および国際公開公報第WO2008/073186号で開示されるように、本明細書中に記載の方法のいずれかによって加工処理した何らかの材料を続いて高密度化することができる。
【0121】
照射処理
材料を加工処理するためにおよび、さらなる処理加工工程および/または一連の工程に対する材料となる構造的に修飾された材料を提供するために、1以上の一連の照射処理過程を使用することができる。放射線は、例えば、原料の分子量および/または結晶化度を低下させることができる。照射によって、材料または材料をバイオプロセス処理するのに必要とされる何らかの媒体を滅菌することもできる。
【0122】
ある態様において、材料に照射するために、その原子軌道から電子を放出する物質に蓄積するエネルギーを使用する。放射線は、1)重荷電粒子、例えばα粒子もしくはプロトン、2)電子、例えばβ崩壊もしくは電子線加速器において生じるものまたは3)電磁放射線、例えば、γ線、x線もしくは紫外線によって供給され得る。あるアプローチにおいて、放射性物質によって生じる放射線を用いて、原料に照射することができる。別のアプローチにおいて、(例えば電子線エミッターを用いて生じた)電磁放射線を用いて、原料に照射することができる。ある態様において、(1)から(3)の何らかの組み合わせをあらゆる順序でまたは同時に使用することができる。適用される線量は、所望の効果および特定の原料に依存する。
【0123】
ある例において、鎖の切断が所望されるおよび/またはポリマー鎖の官能基化が所望される場合、電子より重い粒子、例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンなどを使用することができる。開環型の鎖切断が望ましい場合、開環型の鎖切断を促進するために、正荷電粒子をそのルイス酸特性ゆえに使用することができる。例えば、最大酸化が望ましい場合、酸素イオンを使用することができ、最大ニトロ化が望ましい場合、窒素イオンを使用することができる。
【0124】
重粒子および正荷電粒子の使用は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/417,699号に記載されている。
【0125】
ある方法において、第1の数平均分子量(MN1)を有するセルロースであるかまたは、これを含む第1の材料に、例えば電離放射線(例えば、γ線放射、X線放射、100nmから280nm紫外線(UV)光、電子線または他の荷電粒子の形態)での処理によって照射し、第1の数平均分子量より小さい第2の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第2の材料を得る。第2の材料(または第1の材料および第2の材料)は、第2の材料および/または第1の材料またはその構成糖もしくはリグニンを用いて本明細書中に記載のものなどの中間体または生成物を産生することができる微生物と(酵素処理を行いまたは酵素処理せずに)組み合わせることができる。
【0126】
第2の材料は、第1の材料と比較して分子量が小さく、場合によっては、結晶化度も小さいセルロースを含むので、第2の材料は、例えば微生物および/または酵素を含有する溶液中での、分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。これらの特性により、第2の材料は、第1の材料と比較して、加工処理し易く、化学的、酵素的および/または生物学的攻撃の影響を受け易くなり、このために、所望の産物、例えば、エタノールの生成速度および/または生成レベルを大幅に改善することができる。
【0127】
ある態様において、第2の数平均分子量(MN2)は、第1の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0128】
場合によっては、第2の材料は、結晶化度(C2)が、第1の材料のセルロースの結晶化度(C1)よりも低いセルロースを含む。例えば、(C2)は、(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40%超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0129】
ある態様において、出発結晶化度指数(照射前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、照射後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な照射後には、結晶化度指数が5%未満となり得る。ある態様において、照射後の材料は実質的に非晶質である。
【0130】
ある態様において、出発数平均分子量(照射前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、照射後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な照射後、数平均分子量が約10,000未満またはさらには約5,000未満となり得る。
【0131】
ある態様において、第2の材料の酸化レベル(O2)は、第1の材料の酸化レベル(O1)より高くなることがある。材料の酸化レベルが高いと、その分散性、膨張性および/または溶解性が高くなることがあり、さらに、化学的、酵素的または生物学的攻撃に対する材料の感受性が強化される。ある態様において、第1の材料と比較して第2の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境下で、例えば大気中または酸素下で照射が行われ、第1の材料より酸化度が高い第2の材料が生成される。例えば、第2の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基をより多く有し得、これによりその親水性が高くなることがある。
【0132】
電離放射線
各種放射線は、放射線のエネルギーにより決定されるような特定の相互作用を介して炭素含有材料をイオン化する。重荷電粒子は、主に、クーロン散乱を介して物質をイオン化し、さらに、これらの相互作用によって、物質をさらにイオン化し得る高エネルギー電子が発生する。α粒子はヘリウム原子の核と同一であり、様々な放射性核、例えばビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、一部のアクチニド、例えばアクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリホルニウム、アメリシウムおよびプルトニウムの同位体などのα崩壊によって発生する。
【0133】
粒子が用いられる場合、それらは、中性(非荷電)であり得るか、正に荷電し得るかまたは負に荷電し得る。荷電している場合、荷電粒子は単一の正電荷もしくは負電荷または多重電荷、例えば、1、2、3またはさらには4以上の電荷を有し得る。鎖切断が望ましい場合、正荷電粒子が望ましい場合があるが、理由の1つには、それらが酸性であるからである。粒子が用いられる場合、粒子は、静止電子質量以上の質量、例えば、静止電子質量の500、1000、1500、2000、10,000またはさらには100,000倍の質量を有し得る。例えば、粒子は、約1原子単位から約150原子単位、例えば、約1原子単位から約50原子単位または約1から約25、例えば、1、2、3、4、5、10、12または15amuの質量を有し得る。粒子を加速するために使用される加速器は、静電気学的DC、電気力学的DC、RF線形、磁気誘導線形波または連続波であり得る。例えば、サイクロトロン型加速器は、Rhodatron(登録商標)システムなど、IBA、Belgiumから入手可能であり、一方、DC型加速器は、Dynamitron(登録商標)など、RDI、現IBA Industrialから入手可能である。イオンおよびイオン加速器は、Introductory Nuclear Physics, Kenneth S.Krane, John Wiley & Sons, Inc.(1988), Krsto Prelec, FIZIKA B6(1997)4, 177-206, Chu, William T.「Overview of Light-Ion Beam Therapy」, Columbus-Ohio, ICRU-IAEA Meeting, 18-20 March 2006, Iwata,Y.ら「Alternating-Phase-Focused IH-DTL for Heavy-Ion Medical Accelerators」Proceedings of EPAC 2006, Edinburgh, ScotlandおよびLeaner,CM.ら「Status of the Superconducting ECR Ion Source Venus」Proceedings of EPAC 2000, Vienna、Austriaで考察されている。
【0134】
ガンマ線は様々な材料への透過深度が大きいという長所がある。ガンマ線源には、放射性核、例えば、コバルト、カルシウム、テクニチウム(technicium)、クロム、ガリウム、インジウム、ヨウ素、鉄、クリプトン、サマリウム、セレン、ナトリウム、タリウムおよびキセノンの同位体などが挙げられる。
【0135】
x線源としては、金属標的、例えばタングステンもしくはモリブデンまたは合金を用いた電子線衝突または小型光源、例えばLynceanにより製造販売されているものが挙げられる。
【0136】
紫外線源としては、重水素ランプまたはカドミウムランプが挙げられる。
【0137】
赤外線源としては、サファイア、亜鉛またはセレン化物ウィンドーセラミックランプが挙げられる。
【0138】
マイクロ波源としては、クライストロン、Slevin型RF源または水素、酸素もしくは窒素ガスを用いる原子線源が挙げられる。
【0139】
ある態様において、電子線が線源として使用される。電子線には、線量率が高く(例えば、1、5またはさらには10Mrad/秒)、ハイスループットであり、閉じ込めが少なく、閉じ込め装置が小さいという長所がある。電子はまた、鎖切断を引き起こすことにおいても有効性が高いものであり得る。さらに、4から10MeVのエネルギーを有する電子は、5から30mm以上、例えば40mmの透過深度を有し得る。
【0140】
電子線は、例えば静電起電機、カスケード起電機、変圧起電機、スキャニングシステム付きの低エネルギー加速器、リニアカソード付きの低エネルギー加速器、線形加速器およびパルス加速器によって発生させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば、比較的薄い材料切片、例えば0.5インチ未満、例えば0.4インチ、0.3インチ、0.2インチ未満または0.1インチ未満のものに対して有用であり得る。ある態様において、電子線の各電子のエネルギーは、約0.3MeVから約2.0MeV(百万電子ボルト)、例えば約0.5MeVから約1.5MeVまたは約0.7MeVから約1.25MeVである。
【0141】
電子線照射装置は、Ion Beam Applications, Louvain-la-Neuve, BelgiumまたはTitan Corporation, San Diego, CAから製造販売されている。代表的な電子エネルギーは、1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeVまたは10MeVであり得る。代表的な電子線照射装置の出力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kWまたは500kWであり得る。原料の脱重合レベルは、使用される電子エネルギーおよび適用される線量に依存し、一方で曝露時間は出力および線量に依存する。代表的な線量は、1kGy、5kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGyまたは200kGyの値をとり得る。
【0142】
イオン粒子線
材料、例えば、炭水化物もしくは炭水化物を含む材料、例えばセルロース系材料、リグノセルロース系材料、デンプン材料またはこれらのいずれかの組み合わせおよび本明細書に記載のその他のものに照射するために、電子より重い粒子を使用することができる。例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンを使用することができる。ある態様において、電子より重い粒子は(より軽い粒子と比較して)多量の鎖切断を誘導し得る。場合によっては、正荷電粒子は、その酸性度ゆえに、負荷電粒子より多量の鎖切断を誘導し得る。
【0143】
より重い粒子線は、例えば、線形加速器またはサイクロトロンを用いて発生させることができる。ある態様において、この粒子線の各粒子のエネルギーは、約1.0MeV/原子単位から約6,000MeV/原子単位、例えば、約3MeV/原子単位から約4,800MeV/原子単位または約10MeV/原子単位から約1,000MeV/原子単位である。
【0144】
ある一定の態様において、炭素含有材料、例えば、バイオマス材料に照射するために使用されるイオンビームは、複数の種類のイオンを含み得る。例えば、イオンビームは、2種類以上(例えば3種類、4種類以上)の異なる種類のイオンの混合物を含み得る。代表的な混合物は、炭素イオンおよびプロトン、炭素イオンおよび酸素イオン、窒素イオンおよびプロトンならびに鉄イオンおよびプロトンを含み得る。より広く一般に、照射イオンビームを発生させるために、上記のイオンのいずれか(または他の何らかのイオン)の混合物を使用することができる。特に、単イオンビームにおいて比較的軽いイオンおよび比較的重いイオンの混合物を使用することができる。
【0145】
ある態様において、材料に照射するためのイオンビームには、正荷電イオンが含まれる。正荷電イオンには、例えば、正荷電水素イオン(例えばプロトン)、希ガスイオン(例えばヘリウム、ネオン、アルゴン)、炭素イオン、窒素イオン、酸素イオン、ケイ素原子、リンイオンおよび金属イオン、例えばナトリウムイオン、カルシウムイオンおよび/または鉄イオンなどが含まれ得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、このような正荷電イオンは、材料に曝露されるとルイス酸部分として化学的に挙動し、酸化環境下で陽イオン性の開環型の鎖切断反応を開始し、持続すると考えられている。
【0146】
ある一定の態様において、材料に照射するためのイオンビームには、負荷電イオンが含まれる。負荷電イオンには、例えば、負荷電水素イオン(例えば水素化物イオン)および比較的電気陰性度が高い様々な核の負荷電イオン(例えば酸素イオン、窒素イオン、炭素イオン、ケイ素イオンおよびリンイオン)が含まれ得る。何れの理論にも拘束されることを望むものではないが、このような負荷電イオンは、材料に曝露されるとルイス塩基部分として化学的に挙動し、還元環境下で陰イオン性の開環型の鎖切断反応を引き起こすと考えられている。
【0147】
ある態様において、材料に照射するためのビームには中性原子が含まれ得る。例えば、バイオマス材料の照射に用いられるビームには、水素原子、ヘリウム原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ネオン原子、ケイ素原子、リン原子、アルゴン原子および鉄原子のいずれか1以上が含まれ得る。一般に、上記のタイプの原子のいずれか2以上(例えば、3以上、4以上またはそれ以上)の混合物がビームに存在し得る。
【0148】
ある一定の態様において、材料に照射するために用いられるイオンビームには、単一電荷イオン、例えばH+、H-、He+、Ne+、Ar+、C+、C-、O+、O-、N+、N-、Si+、Si-、P+、P-、Na+、Ca+およびFe+の1以上などが含まれる。ある態様において、イオンビームには、多電荷イオン、例えば、C2+、C3+、C4+、N3+、N5+、N3-、O2+、O2-、O22-、Si2+、Si4+、Si2-およびSi4-の1以上などが含まれ得る。一般に、イオンビームはまた、複数の正電荷または負電荷を有する、より複雑な多核イオンも含み得る。ある特定の態様において、多核イオンの構造によって、正電荷または負電荷は、イオンの構造の実質的に全体にわたり有効に分布し得る。いくつかの態様において、正電荷または負電荷は、イオンの構造の一部分にわたり、幾分局在し得る。
【0149】
電磁放射線
電磁放射線で照射が行われる態様において、電磁放射線は、例えば、102eVを超える、例えば103、104、105、106を超えるかまたはさらには107eVを超える、エネルギー/光子(電子ボルト)を有し得る。ある態様において、電磁放射線は、104から107eVの間、例えば105から106eVの間のエネルギー/光子を有する。電磁放射線は、例えば、1016hzを超える、1017hz、1018、1019、1020hzを超えるかまたはさらに1021hzを超える周波数を有し得る。ある態様において、電磁放射線は、1018から1022hzの間、例えば1019から1021hzの間の周波数を有する。
【0150】
バイオマスのクエンチングおよび官能化制御
電離放射線での処理後、本明細書中に記載の材料または混合物のいずれかがイオン化され得る。即ち、処理済みの材料は、電子スピン共鳴分光器で検出可能であるレベルでラジカルを含み得る。イオン化バイオマスが大気中に残留する場合、それは、例えば大気中の酸素と反応することによってカルボン酸基が生成される程度に酸化されよう。ある材料での例において、このような酸化は炭水化物含有バイオマスの分子量のさらなる分解を促進し得、酸化基、例えばカルボン酸基は、場合によっては溶解性および微生物利用性を高め得るので、このような酸化が所望される。しかし、照射後、ラジカルは、しばらくの間、例えば、1日、5日、30日、3ヶ月、6ヶ月より長くまたはさらには1年より長く「生きて」いることができるので、材料の特性が経時的に変化し続ける可能性があり、場合によってこれは望ましくないことがある。従ってイオン化材料をクエンチングすることが所望され得る。
【0151】
イオン化後、イオン化バイオマス中のラジカルレベルを低下させるために、例えばラジカルが電子スピン共鳴分光器で検出可能とならないように、イオン化されているあらゆるバイオマス材料をクエンチングすることができる。例えば、バイオマスに十分な圧力を与えることによっておよび/または、ラジカルと反応する(クエンチングする)気体または液体など、イオン化バイオマスと接触させて流体を使用することによって、ラジカルをクエンチングすることができる。ラジカルのクエンチングを少なくとも促進するために気体または液体を用いて、所望の量および種類の官能基、例えばカルボン酸基、エノール基、アルデヒド基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、クロロアルキル基またはクロロフルオロアルキル基などでイオン化バイオマスを官能化することができる。
【0152】
場合によっては、このようなクエンチングは、一部のイオン化バイオマス材料の安定性を向上させ得る。例えば、クエンチングによって、酸化に対するバイオマスの抵抗性が向上し得る。クエンチングによる官能化によって、本明細書中に記載のあらゆるバイオマスの溶解性も向上し得、その温度安定性が向上し得、様々な微生物による材料利用性が向上し得る。例えば、クエンチングによってバイオマス材料に与えられる官能基は、例えば、様々な微生物によるセルロース加水分解を促進するための、微生物による結合に対する受容体部位となり得る。
【0153】
ある態様において、クエンチングは、例えばバイオマスを機械的に変形させることによって、例えば1、2または3方向でバイオマスを機械的に直接圧縮するかまたはバイオマスが浸漬されている流体に加圧すること、例えば静水圧プレス成形などによって、バイオマスに加圧することを含む。このような場合、材料そのものの変形によってラジカルが生じ、これは、ラジカルが別の基と再結合するかまたは反応できるよう十分に近接近して結晶性ドメインにおいて捕捉されることが多い。場合によっては、リグニン、セルロースまたはヘミセルロースなどのバイオマスの成分の融点または軟化点以上までバイオマスの温度を上昇させるために十分な熱量など、加熱しながら加圧する。熱は物質中の分子運動性を向上させ得るが、これは、ラジカルのクエンチングを促進し得る。クエンチングするために圧力が使用される場合、その圧力は、約1000psi超、例えば約1250psi、1450psi、3625psi、5075psi、7250psi、10000psi超またはさらには15000psi超であり得る。
【0154】
ある態様において、クエンチングは、バイオマスを液体または気体などの流体と接触させることを含み、例えば、気体は、アセチレンまたは、窒素、エチレン、塩化エチレンもしくはクロロフルオロエチレン中のアセチレンの混合物、プロピレンまたはこれらの気体の混合物など、ラジカルと反応可能な気体である。その他の特定の態様において、クエンチングは、液体、例えばバイオマス中で可溶性であるかまたは少なくとも浸透可能であり、ラジカルと反応可能である液体、例えば1,5-シクロオクタジエンなどのジエンとバイオマスを接触させることを含む。ある具体的な態様において、クエンチングは、バイオマスをビタミンEなどの抗酸化剤と接触させることを含む。必要に応じて、バイオマス原料は、その中に分散した状態で抗酸化剤を含み得、バイオマス原料中に分散している抗酸化剤をラジカルと接触させることから、クエンチングが起こり得る。
【0155】
本明細書中に記載のより重いイオンのいずれかなどの重荷電イオンを使用することによって、官能化を促進し得る。例えば、酸化を促進することが望ましい場合、照射に対して荷電酸素イオンを使用することができる。窒素官能基が望ましい場合、窒素イオンまたは窒素を含む陰イオンを使用することができる。同様に、イオウまたはリン基が望ましい場合、照射においてイオウまたはリンイオンを使用することができる。
【0156】
線量
場合によっては、約0.25Mrad/秒より大きい線量率、例えば約0.5、0.75、1.0、1.5、2.0より大きいかまたはさらには約2.5Mrad/秒より大きい線量率で照射が行われる。ある態様において、5.0から1500.0キロラド/時間の間、例えば10.0から750.0キロラド/時間の間または50.0から350.0キロラド/時間の間の線量率で照射が行われる。
【0157】
ある態様において、少なくとも0.1Mrad、少なくとも0.25Mrad、例えば少なくとも1.0Mrad、少なくとも2.5Mrad、少なくとも5.0Mrad、少なくとも10.0Mrad、少なくとも60Mradまたは少なくとも100Mradの線量を材料が受けるまで、(何らかの線源または線源の組み合わせを用いて)照射が行われる。ある態様において、約0.1Mradから約500Mrad、約0.5Mradから約200Mrad、約1Mradから約100Mradまたは約5Mradから約60Mradの線量を材料が受けるまで照射が行われる。ある態様において、比較的低い線量例えば60Mrad未満が適用される。
【0158】
超音波処理
超音波処理によって、例えば本明細書に記載の材料のいずれか1以上、例えば、1以上の炭水化物供給源、例えば、セルロース系もしくはリグノセルロース系材料またはデンプン材料などの材料の分子量および/または結晶化度を小さくすることができる。超音波処理は、材料を殺菌させるために使用することもできる。照射について上記で考察されるように、超音波処理のために使用される加工パラメーターは、様々な因子に依存して、例えば原料のリグニン含量に依存して、変動し得る。例えば、リグニンレベルが高い原料ほど、一般に、長い滞留時間および/または高いエネルギーレベルが必要であり、その結果、原料に送達される総エネルギーが高くなる。
【0159】
ある方法において、第1の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第1の材料を、媒体、例えば水に分散させ、超音波処理して、かつ/または、別の方法で気泡を生じさせ、第1の数平均分子量より小さい第2の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第2の材料を得る。第2の材料(またはある一定の態様において、第1および第2の材料)は、第2および/または第1の材料を利用して中間体または生成物を産生することができる微生物と(酵素処理を行ってまたは酵素処理を行わずに)組み合わせることができる。
【0160】
第2の材料は、第1の材料と比較して低分子量であり、場合によっては結晶化度も低いセルロースを含むので、第2の材料は、例えば微生物を含有する溶液中での分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。
【0161】
ある態様において、第2の数平均分子量(MN2)は、第1の数平均分子量(MN1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超またはさらには約75%超小さい。
【0162】
場合によって、第2の材料は、結晶化度(C2)が第1の材料のセルロースの結晶化度(C1)より低いセルロースを含む。例えば、(C2)は(C1)より約10%超、例えば約15、20、25、30、35、40%超またはさらには約50%超低いものであり得る。
【0163】
ある態様において、出発結晶化度指数(超音波処理前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、超音波処理後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある一定の態様において、例えば長い超音波処理後には、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、超音波処理後の材料は実質的に非晶質である。
【0164】
ある態様において、出発数平均分子量(超音波処理前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、超音波処理後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば長い超音波処理後、約10,000未満またはさらには約5,000未満の数平均分子量を有する可能性がある。
【0165】
ある態様において、第2の材料は、第1の材料の酸化レベル(O1)より高い酸化レベル(O2)を有し得る。材料の酸化レベルが高い場合、その分散性、膨張性および/または溶解性が高くなることがあり、さらに、化学的、酵素的または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。ある態様において、第1の材料と比較して第2の材料の酸化レベルを高めるために、酸化媒体中で超音波処理が行われ、第1の材料より酸化度が高い第2の材料が生成する。例えば、第2の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基の数がより多いものであり得、これにより材料の親水性が高くなることがある。
【0166】
ある態様において、超音波処理媒体は水性媒体である。必要に応じて、媒体は、過酸化物(例えば過酸化水素)などの酸化剤、分散剤および/または緩衝剤を含み得る。分散剤の例としては、イオン性分散剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、および非イオン性分散剤、例えばポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
【0167】
その他の態様において、超音波処理媒体は非水性である。例えば、炭化水素、例えばトルエンまたはヘプタン、エーテル、例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中で、またはアルゴン、キセノンもしくは窒素などの液化ガス中でも超音波処理を行うことができる。
【0168】
熱分解
多岐にわたる様々な供給源由来の炭素含有材料を加工処理して、その材料由来の有用な物質を抽出し、さらなる加工処理工程および/または一連の処理過程に対する材料となる、部分的に分解された材料を与えるために、1以上の一連の熱分解処理を使用することができる。材料を殺菌するために熱分解を使用することもできる。熱分解条件は、原料および/またはその他の因子の特徴に依存して異なることがある。例えば、リグニンレベルが高い原料ほど、高温、長い滞留時間および/または熱分解中のより高い酸素レベルの導入を必要とする。
【0169】
ある例において、第1の数平均分子量(MN1)より小さい第2の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第2の材料を得るために、例えば(酸素の存在下または非存在下で)チューブ炉中で第1の材料を加熱することによって、第1の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第1の材料を熱分解する。
【0170】
第2の材料は、第1の材料と比較して分子量が小さく、場合によっては結晶化度も小さいセルロースを含むので、第2の材料は、例えば微生物を含有する溶液中での、分散性、膨張性および/または溶解性が概して高い。
【0171】
ある態様において、第2の数平均分子量(MN2)は、第1の数平均分子量(MN1)より約10%超えて、例えば約15、20、25、30、35、40、50%、60%超えてまたはさらには約75%超えて小さい。
【0172】
場合によって、第2の材料は、結晶化度(C2)が第1の材料のセルロースの結晶化度(C1)より低いセルロースを含む。例えば、(C2)は、(C1)より約10%超えて、例えば約15、20、25、30、35、40%超えてまたはさらには約50%超えて低いものであり得る。
【0173】
ある態様において、出発結晶化度(熱分解前)は、約40から約87.5%、例えば約50から約75%または約60から約70%であり、熱分解後の結晶化度指数は、約10から約50%、例えば約15から約45%または約20から約40%である。しかし、ある一定の態様において、例えば、大規模な熱分解後、結晶化度指数が5%未満になり得る。ある態様において、熱分解後の材料は実質的に非晶質である。
【0174】
ある態様において、出発数平均分子量(熱分解前)は、約200,000から約3,200,000、例えば約250,000から約1,000,000または約250,000から約700,000であり、熱分解後の数平均分子量は、約50,000から約200,000、例えば約60,000から約150,000または約70,000から約125,000である。しかし、ある態様において、例えば、大規模な熱分解後、数平均分子量が約10,000未満またはさらには約5,000未満になり得る。
【0175】
ある態様において、第2の材料の酸化レベル(O2)は、第1の材料の酸化レベル(O1)より高くなることがある。材料の酸化レベルが高いほど、その分散性、膨張性および/または溶解性が高まり、さらに、化学的、酵素的または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。ある態様において、第1の材料と比較して第2の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において熱分解が行われ、第1の材料より酸化度が高い第2の材料が生成される。例えば、第2の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基の数が第1の材料よりも多いものであり得、これにより材料の親水性が高くなる。
【0176】
ある態様において、材料の熱分解は連続する。その他の態様において、材料は、所定の時間熱分解され、次いで第2の所定の時間冷却された後に、再度熱分解される。
【0177】
酸化
多岐にわたる様々な供給源由来の炭素含有材料を加工処理して、その材料由来の有用な物質を抽出し、さらなる加工処理工程および/または一連の処理過程への材料となる、部分的に分解および/または改変された材料を与えるために、1以上の一連の酸化処理を使用することができる。酸化条件は、例えば原料のリグニン含量に応じて異なり、一般に、リグニン含量が高い原料ほど酸化度が高いことが望ましい。
【0178】
ある方法において、第2の数平均分子量(MN2)を有し、第1の酸素含量(O1)より高い第2の酸素含量(O2)を有するセルロースを含む第2の材料を得るために、例えば大気または酸素に富む空気の気流中で第1の材料を加熱することによって、第1の数平均分子量(MN1)を有し、第1の酸素含量(O1)を有するセルロースを含む第1の材料を酸化する。
【0179】
第2の材料の第2の数平均分子量は一般に、第1の材料の第1の数平均分子量よりも小さい。例えば、他の物理的処理に関して上記で記載したものと同程度まで分子量を低下させ得る。他の物理的処理に関して上記で記載したものと同程度まで第2の材料の結晶化度を低下させることもできる。
【0180】
ある態様において、第2の酸素含量は、第1の酸素含量より少なくとも約5%多く、例えば、7.5%多いか、10.0%多いか、12.5%多いか、15.0%多いか、または17.5%多い。ある好ましい態様において、第2の酸素含量は、第1の材料の第1の酸素含量より少なくとも約20.0%多い。酸素含量は、1300℃以上で運転される炉の中で試料を熱分解することにより元素分析することによって測定される。適切な元素分析器は、VTF-900高温熱分解炉付きのLECO CHNS-932分析器である。
【0181】
一般に、材料の酸化は酸化環境で起こる。例えば、大気中またはアルゴンに富む空気中などの酸化環境で熱分解することによって酸化が行われ得るかまたは酸化が促進され得る。酸化を促進するために、酸化前または酸化中に、酸化剤、酸または塩基などの様々な化学薬品を材料に添加することができる。例えば、酸化前に過酸化物(例えば過酸化ベンゾイル)を添加することができる。
【0182】
バイオマス原料の不応性を低下させる酸化方法の中には、フェントン型化学を使用するものがある。このような方法は、例えば、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/639,289号で開示されている。
【0183】
代表的な酸化剤としては、過酸化物、例えば過酸化水素および過酸化ベンゾイルなど、過硫酸塩、例えば過硫酸アンモニウムなど、活性化型酸素、例えばオゾンなど、過マンガン酸塩、例えば過マンガン酸カリウムなど、過塩素酸塩、例えば過塩素酸ナトリウムなど、および次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)などが挙げられる。
【0184】
ある状況において、pHは、接触中に約5.5以下、例えば1から5の間、2から5の間、2.5から5の間または約3から5の間に維持される。酸化条件には、2から12時間、例えば4から10時間または5から8時間の接触時間も含まれ得る。場合によって、温度は、300℃以下、例えば250、200、150、100または50℃以下に維持される。場合によって、温度は実質的に周囲温度のままであり、例えば約20から25℃である。
【0185】
ある態様において、電子などの粒子線を大気を通して材料に照射することによりインサイチューでオゾンを発生させることなどによって、1以上の酸化剤が気体として適用される。
【0186】
ある態様において、混合物は、2,5-ジメトキシヒドロキノン(DMHQ)などの1以上のヒドロキノンおよび/または2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン(DMBQ)などの1以上のベンゾキノンをさらに含み、これらは電子移動反応を促進し得る。
【0187】
ある態様において、1以上の酸化剤をインサイチューで電気化学的に発生させる。例えば、接触槽または反応容器中で過酸化水素および/またはオゾンを電気化学的に発生させ得る。
【0188】
可溶化する、不応性低下させるための、または官能化するためのその他のプロセス
この段落のプロセスは何れも、本明細書中に記載のプロセスなく単独でまたは本明細書中に記載のプロセスのいずれか:蒸気爆発、化学的処理(例えば酸処理(硫酸、塩酸および有機酸などの鉱酸、例えばトリフルオロ酢酸を用いた濃酸処理および希酸処理を含む。)および/または塩基処理(例えば石灰または水酸化ナトリウムを用いた処理))、UV処理、スクリュー押出処理(例えば、2008年11月17日出願の米国特許出願第61/115,398号参照)、溶媒処理(例えばイオン性液体を用いた処理)および凍結粉砕(例えば米国特許出願第12/502,629号参照)と(任意の順番で)組み合わせて使用することができる。
【0189】
燃料、酸、エステルおよび/またはその他の生成物の産生
上記で考察した1以上の加工処理の工程をバイオマスに対して行った後、上記で考察したように、糖化プロセスを用いて、セルロースおよびヘミセルロース分画に含有される複合糖質を発酵可能な糖へと加工処理することができる。
【0190】
得られた糖溶液を製造設備に輸送した後、様々な生成物、例えばアルコール、例えばエタノールなど、または有機酸に、糖を変換することができる。得られる生成物は、使用される微生物およびバイオプロセスが起こる条件に依存する。例えばトウモロコシ原料エタノール製造設備の既存の設備を使用して、これらの工程を行うことができる。
【0191】
本明細書で考察する混合プロセスおよび装置は、必要に応じて、バイオプロセス中に使用することもできる。有利なことに、本明細書に記載の混合システムは、液体に対して高剪断をもたらさず、液体の全体的温度を顕著に上昇させない。結果として、バイオプロセスにおいて使用される微生物は、プロセスを通じて活性ある状態に維持される。混合することによって、反応速度が向上し、プロセスの効率が向上し得る。
【0192】
一般に、発酵は様々な微生物を使用する。リグノセルロース系材料の糖化により生成する糖溶液は通常、キシロースならびにグルコースを含有する。一般に使用される一部の微生物(例えば酵母)はキシロースにおいて作用しないので、例えばクロマトグラフィーによって、キシロースを除去することが望ましいことがある。キシロースを回収し、他の生成物、例えば動物飼料および甘味料キシリトールの製造で使用することができる。発酵が行われる製造設備への糖溶液の送達の前または後に、キシロースを除去し得る。
【0193】
微生物は、天然微生物または遺伝子改変微生物、例えば本明細書中の材料のセクションで考察した微生物のいずれかであり得る。
【0194】
酵母にとって至適pHは約pH4から5であり、一方でザイモモナス菌に対する至適pHは約pH5から6である。典型的な発酵時間は、26℃から40℃の範囲の温度で約24時間から96時間であるが、好熱性微生物はより高温を好む。
【0195】
カルボン酸基は一般に発酵溶液のpHを低下させ、ピキア・スチピチスなどの一部の微生物による発酵を阻害する傾向がある。従って、場合によっては、溶液のpHを上げるために、発酵前または発酵中に塩基および/または緩衝液を添加することが望ましい。例えば、使用する微生物に対する至適な範囲に培地のpHを上昇させるために、発酵培地中に水酸化ナトリウムまたは石灰を添加することができる。
【0196】
発酵は、通常、水性の増殖培地中で行われ、この培地には、ビタミンおよび微量元素および金属とともに、窒素供給源またはその他の栄養供給源、例えば尿素が含有され得る。増殖培地が滅菌状態であるかまたは少なくとも微生物負荷が低い、例えば細菌数が少ないことが一般に好ましい。増殖培地の滅菌は、何らかの所望の方式で行うことができる。しかし、好ましい実施において、滅菌は、増殖培地または混合前の増殖培地の個々の成分を照射することによって行われる。放射線量は、通常、エネルギー消費および結果としての費用を最小限に抑えるために、適正な結果が得られる限りできるだけ低くする。例えば、多くの例において、増殖培地そのものまたは増殖培地の成分を5Mrad未満、例えば4、3、2または1Mrad未満の放射線量で処理することができる。具体例において、約1から3Mradの線量で増殖培地を処理する。
【0197】
ある態様において、低分子量の糖がエタノールに完全に変換される前に、発酵プロセスの全てまたは一部を中断することができる。中間体発酵生成物は高濃度の糖および炭水化物を含む。これらの中間体発酵生成物は、ヒトまたは動物が消費するための食料の調製において使用することができる。さらに、またはあるいは、粉末状物質を生成させるために、ステンレス鋼性の実験室用ミルで中間体発酵生成物を微細な粒径になるまで研削することができる。
【0198】
米国特許仮出願第60/832,735号、現在、国際公開公報第WO2008/011598号に記載のような移動式の発酵装置を使用することができる。同様に、糖化装置が移動式であり得る。さらに、輸送中に一部又は全て、糖化および/または発酵を行い得る。
【0199】
後処理
発酵後、エタノールおよびその他のアルコールを殆どの水および固形残渣から分離するために、例えば「ビアカラム(beer column)」を用いて、得られた流体を蒸留することができる。ビアカラムから流出する蒸気は例えば35%エタノール重量であり得、精留塔に入れることができる。気相分子ふるいを用いて、精留塔からのほぼ共沸性(92.5%)のエタノールおよび水の混合液を純(99.5%)エタノールまで精製することができる。このビアカラムの下部を三重効用蒸発器の第1効用に送ることができる。精留塔還流凝縮器は、この第1効用に対して熱を提供できる。第1効用の後、遠心機を用いて固形物を分離し、回転式乾燥機中で乾燥させることができる。遠心機廃水の一部(25%)を発酵に対して再利用し、残りを第2および第3効用蒸発器に送ることができる。殆どの蒸発器凝縮物を非常に清浄な凝縮物として処理プロセスに戻すことができ、低沸騰化合物の蓄積を避けるために廃水処理に供する分離物は少量である。
【0200】
中間体および生成物
本明細書中に記載のプロセスを使用して、処理したバイオマスをエネルギー、燃料、食物および材料などの1以上の生成物に変換することができる。生成物の具体例としては、水素、アルコール(例えば一価アルコールまたは二価アルコール、例えばエタノール、n-プロパノールまたはn-ブタノールなど)、水和または含水アルコール、例えば、10%、20%、30%を超えるかまたはさらには40%を超える水を含有するもの、キシリトール、糖、バイオディーゼル、有機酸(例えば酢酸および/または乳酸)、炭化水素、副産物(例えばセルロース分解性タンパク質(酵素)または単細胞タンパク質などのタンパク質)および、何らかの組み合わせまたは相対濃度の、および場合によっては、例えば燃料添加剤などの何らかの添加剤と組み合わせられた、これらの何らかの混合物が挙げられるが、これに限定されない。その他の例としては、カルボン酸、例えば酢酸または酪酸など、カルボン酸の塩、カルボン酸およびカルボン酸の塩の混合物ならびにカルボン酸のエステル(例えばメチルエステル、エチルエステルおよびn-プロピルエステル)、ケトン(例えばアセトン)、アルデヒド(例えばアセトアルデヒド)、α、β不飽和酸、例えばアクリル酸などおよびオレフィン、例えばエチレンなどが挙げられる。その他のアルコールおよびアルコール誘導体としては、プロパノール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、これらのアルコールのいずれかのメチルエステルまたはエチルエステルが挙げられる。その他の生成物としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、上記の酸のいずれかの塩ならびに上記の酸のいずれかとそれぞれの塩の混合物が挙げられる。
【0201】
その他の中間体ならびに食物および医薬品を含む生成物は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/417,900号に記載されている。
【実施例】
【0202】
剪断紙原料を次のように調製した。
かさ密度が20lb/ft3である未印刷のポリコート白色クラフトボール製の1500ポンドスキッドの未使用ハーフガロンジュース容器パックをInternational Paperから得た。各容器パックを平坦になるように折り畳み、次いで、1時間におよそ15から20ポンドの速度で3 hp Flinch Baughシュレッダーに入れた。シュレッダーには2枚の12インチ回転ブレード、2枚の固定ブレードおよび0.30インチの排出スクリーンが備えられていた。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔を0.10インチに調整した。シュレッダーからの産出物は、幅が0.1インチから0.5インチの間、長さが0.25インチから1インチの間であり、出発物質と同等の厚み(約0.075インチ)を有する紙吹雪状であった。
【0203】
この紙吹雪状の材料をMunsonロータリーナイフカッター、モデルSC30に供した。モデルSC30には4枚の回転ブレード、4枚の固定ブレードおよび1/8インチ孔を有する排出スクリーンが備えられている。回転ブレードと固定ブレードとの間の間隔をおよそ0.020インチに設定した。ロータリーナイフカッターは、ナイフの刃を横切る紙吹雪状小片を剪断し、この小片を切り裂き、1時間に約1ポンドの速度で繊維状材料を放出した。繊維状材料のBET表面積は0.9748m2/g+/-0.0167m2/g、気孔率は89.0437%であり、かさ密度は0.1260g/mL(@0.53psia)であった。繊維の平均長は1.141mmであり、繊維の平均幅は0.027mmであり、平均L/Dは42:1となった。
【0204】
紙原料を糖化するために、最初に7Lの水を容器に添加した。糖化プロセス中、水温は50℃に維持し、pHを5に維持した。下記の表で示すように、この原料を水に徐々に添加した。各添加後、原料が分散されるまで混合を行い、その後、再び下記の表で示すように2種類の酵素の混合物を添加した。(酵素1はAccellerase(登録商標)1500酵素複合体。酵素2はNovozyme(商標)188セロビアーゼ酵素)。各添加後、最初に10,000RPMで混合を行い、原料が分散したらすぐにミキサーを4,000RPMに減速した。50K-G-45ジェット混合器具とともにIKA Werks T-50噴流攪拌ミキサーを使用した。
【0205】
さらに原料を添加し得るようになる前に少なくとも一部は原料を糖化する必要があったので、原料を徐々に添加したが、そうしない場合、混合物は混合困難になった。ある一定のグルコースレベルを得るために必要な酵素は、以前の振盪フラスコ実験で必要とされたグルコースレベルよりも少ないことが観察された。最初の300時間にわたり、カビなどの望ましくない微生物の混入は観察されなかった。およそ300時間の時点で、糖濃度が最低であったタンク壁でカビ様生物が観察されたが、タンクそのものには見られなかった。
【0206】
*数時間にわたり1600グラムの添加を行った。
【0207】
その他の態様
本発明の多くの態様を記載してきた。しかし、当然のことながら、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変をなし得る。
【0208】
例えば、本明細書に記載のジェット混合器は、何らかの所望の組み合わせで、および/または他の型の混合器と組み合わせて使用することができる。
【0209】
ジェット混合器はタンク内の何らかの所望の位置に取り付けることができる。軸上ジェット混合器に関して、このシャフトは、タンクの重心軸と同一線上にあり得るかまたはそこからはずれていてもよい。例えば必要に応じて、タンクは、中央に取り付けられた異なるタイプの混合器、例えばマリン羽根車(marine impeller)またはラシュトン羽根車(Rushton impeller)を備えていてもよく、ジェット混合器は、重心軸からはずれた、または重心軸上のタンクの別の領域に取り付けられ得る。後者の場合、1つの混合器がタンクの上部から伸び得、他のものはタンクの床部から上方に伸び得る。
【0210】
本明細書に記載のジェット混合システムのいずれかにおいて、ジェット混合器を通じた流体(液体および/または気体)の流れは連続的であり得るかまたはパルス状であり得るかまたは、パルス状の時間を間に挟んだ連続流の時間の組み合わせであり得る。流れがパルス状である場合、このパルスは規則的または不規則であり得る。後者の場合、例えば、混合が「足止め状態」になることを防ぐために周期的にパルス状の流れを提供するため、流体流動を推進するモーターをプログラムすることができる。パルス状の流れの周波数は、例えば約0.5Hzから約10Hz、例えば約0.5Hz、0.75Hz、1.0Hz、2.0Hz、5Hzまたは10Hzであり得る。モーターをオンおよびオフにすることによっておよび/または液体の流れを遮断する分流器を提供することによって、パルス状の流れをもたらすことができる。
【0211】
本明細書でタンクを説明してきたが、潟湖、プール、池などを含む何らかのタイプの容器または入れ物においてジェット混合を使用し得る。混合を行う入れ物が潟湖などの陸上の構造物である場合、これに裏打ちし得る。例えば屋外の場合、この入れ物を被覆してもよいし、被覆しなくてもよい。
【0212】
本明細書でバイオマス原料を記載してきたが、他の原料および、他の原料とのバイオマス原料の混合物を使用し得る。例えば、ある実施において、完全な開示が本明細書に参照により組み入れられる2009年7月20日出願の米国特許仮出願第61/226,877号で開示されるものなど、炭化水素含有原料とのバイオマス原料の混合物を使用し得る。
【0213】
ゆえに、その他の態様は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェット混合器を用いて、液状媒体および糖化剤とバイオマス原料とを混合することによって、容器中で該バイオマス原料を糖化することを含む、方法。
【請求項2】
前記原料が約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記液状媒体が水を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記糖化剤が酵素を含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記ジェット混合器が噴流攪拌機を含み、かつ前記原料を糖化することが、該噴流攪拌機で該原料を攪拌することを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記噴流攪拌機が、シャフトの遠位端に取り付けられた羽根車と、該羽根車を取り囲む側板とを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ジェット混合器が複数の噴流攪拌機を含み、各噴流攪拌機が、どちらの向きにも動作するように構成されており、第1のモードにおいて液体を前記容器の上部に向かって送り込み、第2のモードで該容器の底部に向かって送り込む、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
混合の少なくとも一部の間、前記噴流攪拌機の全てが第1のモードで運転される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
混合の少なくとも一部の間、前記噴流攪拌機のうち、第1のモードで運転される噴流攪拌機もあれば、同時に、第2のモードで運転される噴流攪拌機もある、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
微生物を前記容器に添加し、糖化された原料を発酵させることをさらに含み、発酵の少なくとも一部の間、前記噴流攪拌機の全てが第1のモードで運転される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記容器がアーチ状の底面を有する、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記ジェット混合器が、送達ノズルを有するジェットエアレーション型混合器を含み、原料を糖化することが、該送達ノズルを通じて噴流を送達することを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記ジェット混合器が、前記送達ノズルを通じて空気を注入することなく運転される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
糖化することが、前記ジェットエアレーション型混合器の2本のインレットラインに液体を供給することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記ジェット混合器が吸込み室ジェット混合器を含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記ジェット混合器が、排出パイプの第1の端部と流体連通するノズルを含み、該排出パイプの第1の端部が該ノズルから離れて配置され、該排出パイプが、流体ジェットを発射するように構成される第2の末端を有する、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
糖化することが、
分割して段階的に(in discrete increments)前記液状媒体に前記原料を添加すること、および
前記ジェット混合器を用いて原料の各分割量を該液状媒体に混合してから原料のさらなる分割量を添加すること
とを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記ジェット混合器の運転中に、前記原料、前記液状媒体および前記糖化剤の混合物のグルコースレベルを監視することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
糖化中に前記容器にさらなる原料および糖化剤を添加することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記容器がタンクを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記容器が、鉄道車両のタンクまたはタンクローリーを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
糖化が部分的にまたは完全に、原料、液状媒体および糖化剤の混合物の輸送中に行われる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記原料がセルロース系またはリグノセルロース系材料を含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記原料が紙を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記容器中の前記混合物に乳化剤または界面活性剤を添加することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記容器に微生物を添加し、糖化された原料を発酵させることをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
液状媒体および糖化剤とともにバイオマス原料が収容される容器内で、概ねトロイダル状の流れを発生させる混合器の運転によって該バイオマス原料を糖化することを含む、方法。
【請求項28】
前記混合器が、一連の混合プロセスにわたり、前記液状媒体の全体的な温度の上昇を5℃未満に制限するように構成される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ジェット混合器を用いて、液状媒体中で低分子量の糖を微生物と混合することによって、該低分子量の糖を生成物に変換することを含む、方法。
【請求項30】
前記液状媒体が水を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記微生物が酵母を含む、請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
前記ジェット混合器が噴流攪拌機を含み、変換することが、該噴流攪拌機によって原料を攪拌することを含む、請求項29〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
前記ジェット混合器が送達ノズルを有するジェットエアレーション型混合器を含み、原料を糖化することが、該送達ノズルを通じて噴流を送達することを含む、請求項29〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記ジェット混合器が吸込み室ジェット混合器を含む、請求項29〜33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
タンクと、
バイオマス原料を該タンクに送達するように構成されるバイオマス原料供給器具と、
計量された量の糖化剤を該タンクに送達するように構成される糖化剤供給器具と、
該タンク内に配置されるノズルを有し、送達されたバイオマス原料および糖化剤を混合するように構成されるジェット混合器と
を含む、原料糖化装置。
【請求項36】
前記ジェット混合器がモーターをさらに含み、混合中の該モニターのトルクを監視するトルクモニターおよび/または該モーターの全負荷電流を監視するアンプモニターをさらに含む、請求項35記載の装置。
【請求項37】
前記トルクモニターからのデータに基づき、前記原料供給器具および/または前記糖化剤供給器具の運転を調整する制御装置をさらに含む、請求項35または36記載の装置。
【請求項38】
前記ジェット混合器がモーターを含み、該モーターの速度を調整するように構成される可変周波数ドライブをさらに含む、請求項35〜37記載の装置。
【請求項39】
前記タンクがアーチ状の底面を有する、請求項35〜38のいずれか一項記載の装置。
【請求項40】
糖化された混合物を生成させるために容器中でバイオマス原料を糖化すること、
該容器中の糖化された混合物に微生物を接種すること、および
該容器中で接種済みの糖化された混合物が発酵できるようにすること
を含む方法。
【請求項41】
発酵中に前記容器の内容物を輸送用容器に移し、該輸送用容器中で発酵し続けられるようにすることをさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
糖化および発酵中にジェット混合器によって前記容器の内容物を攪拌することをさらに含む、請求項40または41記載の方法。
【請求項43】
発酵混合物の酸素含量およびエタノールおよび/または糖含量を監視することをさらに含む、請求項40〜42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
通気孔を有する容器と、
該容器と連通している酸素供給源と、
該容器中の液体の酸素含量を監視するように構成される酸素モニターと、
該酸素モニターからのデータに応じて、該通気孔および該酸素供給源を用いて該液体の酸素含量を調整するように構成される制御装置と
を含む、発酵システム。
【請求項45】
前記制御装置が、0.2vvm未満の速度で前記容器に酸素添加するように構成される、請求項44記載の発酵システム。
【請求項46】
前記容器中の液体の糖濃度および/またはエタノール濃度を監視するように構成される発酵モニターと、
該発酵モニターから受信したデータに基づいて発酵を停止させるように構成される制御装置と
をさらに含む、請求項44または45記載の発酵システム。
【請求項47】
前記制御装置から受信したシグナルに応答して発酵を停止させるように構成される発酵停止モジュールをさらに含む、請求項46記載の発酵システム。
【請求項1】
ジェット混合器を用いて、液状媒体および糖化剤とバイオマス原料とを混合することによって、容器中で該バイオマス原料を糖化することを含む、方法。
【請求項2】
前記原料が約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記液状媒体が水を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記糖化剤が酵素を含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記ジェット混合器が噴流攪拌機を含み、かつ前記原料を糖化することが、該噴流攪拌機で該原料を攪拌することを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記噴流攪拌機が、シャフトの遠位端に取り付けられた羽根車と、該羽根車を取り囲む側板とを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ジェット混合器が複数の噴流攪拌機を含み、各噴流攪拌機が、どちらの向きにも動作するように構成されており、第1のモードにおいて液体を前記容器の上部に向かって送り込み、第2のモードで該容器の底部に向かって送り込む、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
混合の少なくとも一部の間、前記噴流攪拌機の全てが第1のモードで運転される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
混合の少なくとも一部の間、前記噴流攪拌機のうち、第1のモードで運転される噴流攪拌機もあれば、同時に、第2のモードで運転される噴流攪拌機もある、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
微生物を前記容器に添加し、糖化された原料を発酵させることをさらに含み、発酵の少なくとも一部の間、前記噴流攪拌機の全てが第1のモードで運転される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記容器がアーチ状の底面を有する、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記ジェット混合器が、送達ノズルを有するジェットエアレーション型混合器を含み、原料を糖化することが、該送達ノズルを通じて噴流を送達することを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記ジェット混合器が、前記送達ノズルを通じて空気を注入することなく運転される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
糖化することが、前記ジェットエアレーション型混合器の2本のインレットラインに液体を供給することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記ジェット混合器が吸込み室ジェット混合器を含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記ジェット混合器が、排出パイプの第1の端部と流体連通するノズルを含み、該排出パイプの第1の端部が該ノズルから離れて配置され、該排出パイプが、流体ジェットを発射するように構成される第2の末端を有する、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
糖化することが、
分割して段階的に(in discrete increments)前記液状媒体に前記原料を添加すること、および
前記ジェット混合器を用いて原料の各分割量を該液状媒体に混合してから原料のさらなる分割量を添加すること
とを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記ジェット混合器の運転中に、前記原料、前記液状媒体および前記糖化剤の混合物のグルコースレベルを監視することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
糖化中に前記容器にさらなる原料および糖化剤を添加することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記容器がタンクを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記容器が、鉄道車両のタンクまたはタンクローリーを含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
糖化が部分的にまたは完全に、原料、液状媒体および糖化剤の混合物の輸送中に行われる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記原料がセルロース系またはリグノセルロース系材料を含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記原料が紙を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記容器中の前記混合物に乳化剤または界面活性剤を添加することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記容器に微生物を添加し、糖化された原料を発酵させることをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
液状媒体および糖化剤とともにバイオマス原料が収容される容器内で、概ねトロイダル状の流れを発生させる混合器の運転によって該バイオマス原料を糖化することを含む、方法。
【請求項28】
前記混合器が、一連の混合プロセスにわたり、前記液状媒体の全体的な温度の上昇を5℃未満に制限するように構成される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ジェット混合器を用いて、液状媒体中で低分子量の糖を微生物と混合することによって、該低分子量の糖を生成物に変換することを含む、方法。
【請求項30】
前記液状媒体が水を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記微生物が酵母を含む、請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
前記ジェット混合器が噴流攪拌機を含み、変換することが、該噴流攪拌機によって原料を攪拌することを含む、請求項29〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
前記ジェット混合器が送達ノズルを有するジェットエアレーション型混合器を含み、原料を糖化することが、該送達ノズルを通じて噴流を送達することを含む、請求項29〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記ジェット混合器が吸込み室ジェット混合器を含む、請求項29〜33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
タンクと、
バイオマス原料を該タンクに送達するように構成されるバイオマス原料供給器具と、
計量された量の糖化剤を該タンクに送達するように構成される糖化剤供給器具と、
該タンク内に配置されるノズルを有し、送達されたバイオマス原料および糖化剤を混合するように構成されるジェット混合器と
を含む、原料糖化装置。
【請求項36】
前記ジェット混合器がモーターをさらに含み、混合中の該モニターのトルクを監視するトルクモニターおよび/または該モーターの全負荷電流を監視するアンプモニターをさらに含む、請求項35記載の装置。
【請求項37】
前記トルクモニターからのデータに基づき、前記原料供給器具および/または前記糖化剤供給器具の運転を調整する制御装置をさらに含む、請求項35または36記載の装置。
【請求項38】
前記ジェット混合器がモーターを含み、該モーターの速度を調整するように構成される可変周波数ドライブをさらに含む、請求項35〜37記載の装置。
【請求項39】
前記タンクがアーチ状の底面を有する、請求項35〜38のいずれか一項記載の装置。
【請求項40】
糖化された混合物を生成させるために容器中でバイオマス原料を糖化すること、
該容器中の糖化された混合物に微生物を接種すること、および
該容器中で接種済みの糖化された混合物が発酵できるようにすること
を含む方法。
【請求項41】
発酵中に前記容器の内容物を輸送用容器に移し、該輸送用容器中で発酵し続けられるようにすることをさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
糖化および発酵中にジェット混合器によって前記容器の内容物を攪拌することをさらに含む、請求項40または41記載の方法。
【請求項43】
発酵混合物の酸素含量およびエタノールおよび/または糖含量を監視することをさらに含む、請求項40〜42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
通気孔を有する容器と、
該容器と連通している酸素供給源と、
該容器中の液体の酸素含量を監視するように構成される酸素モニターと、
該酸素モニターからのデータに応じて、該通気孔および該酸素供給源を用いて該液体の酸素含量を調整するように構成される制御装置と
を含む、発酵システム。
【請求項45】
前記制御装置が、0.2vvm未満の速度で前記容器に酸素添加するように構成される、請求項44記載の発酵システム。
【請求項46】
前記容器中の液体の糖濃度および/またはエタノール濃度を監視するように構成される発酵モニターと、
該発酵モニターから受信したデータに基づいて発酵を停止させるように構成される制御装置と
をさらに含む、請求項44または45記載の発酵システム。
【請求項47】
前記制御装置から受信したシグナルに応答して発酵を停止させるように構成される発酵停止モジュールをさらに含む、請求項46記載の発酵システム。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図6A】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図15A】
【図16】
【図16A】
【図17】
【図18】
【図18A】
【図19】
【図20】
【図21】
【図21A】
【図22】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図6A】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図15A】
【図16】
【図16A】
【図17】
【図18】
【図18A】
【図19】
【図20】
【図21】
【図21A】
【図22】
【公表番号】特表2012−527243(P2012−527243A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511974(P2012−511974)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035315
【国際公開番号】WO2010/135365
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(509284598)キシレコ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035315
【国際公開番号】WO2010/135365
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(509284598)キシレコ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
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