説明

バイオマス原料を糖化および発酵させるための方法およびシステム

バイオマス原料(例えば、植物バイオマス、動物バイオマス、および都市廃棄物)が、燃料などの、有用な産物を生産するために処理される。例えば、原料材料を糖液に転換できるシステムを説明し、その糖液は、その後、エタノールを生産するために発酵できる。バイオマス原料は、ジェットミキサーの操作によって容器内で糖化され、その容器は液体培地および糖化剤も含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
数多くの用途において、大量のセルロースおよびリグノセルロース材料が生産、加工、および使用される。多くの場合、かかる材料は、一度使用されると、その後、廃棄物として処分されるか、または、例えば、汚水、バガス、おがくず、およびまぐさなど、単に廃材と見なされる。
【0002】
様々なセルロースおよびリグノセルロース材料、それらの使用、および用途が、2006年3月23日に出願された「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」という名称のPCT/US2006/010648、および「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」という名称の米国特許公開第2007/0045456号を含め、米国特許第7,307,108号、第7,074,918号、第6,448,307号、第6,258,876号、第6,207,729号、第5,973,035号、および第5,952,105号に記載がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、全てが単一のタンク内で行われる複数のバイオプロセスによって、産物を生産するためのプロセスを開示する。
【0004】
いくつかのプロセスは、例えば、セルロースまたはリグノセルロース原料などの材料を、例えば、酵素を用いて、その材料のセルロース部分を低分子量の糖に転換することにより、糖化または液化し、その後、例えば、発酵および蒸留によって、結果として生成された糖を産物に転換することを含む。いくつかの実施態様では、プロセスは、線維状および/または粒子状の原料を液体培地内で分散するための分散システムおよび、例えば、ジェット混合システムなどの低せん断システム(low shear system)など、材料をタンク内で混合するための混合システムの利用を含む。いくつかの実施形態では、分散システムは、チャンバー、およびそのチャンバー内にある、原料および液体培地を軸方向にチャンバー内に引き込んで、培地内の原料の分散をチャンバーから半径方向に排出する回転部材を含む。
【0005】
本明細書で開示するプロセスは、例えば、約0.7、0.65、0.60、0.50、0.35、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05未満など、約0.75g/cm未満、または、例えば、0.025g/cm未満など、それ以下の嵩密度を持つように物理的に前処理されている、例えば、セルロースまたはリグノセルロース原料など、低嵩密度の材料を利用できる。かかる材料は、例えば、水または糖化、発酵、もしくは他の処理のための溶媒系を含む液体内で分散するのが特に困難であり得る。それらの材料は、低嵩密度のために、湿潤して液体内に分散するよりも、液体表面上に浮く傾向がある。場合によっては、それらの材料は、疎水性、高結晶質、またはそうでなければ、湿り難い。同時に、糖化材料における糖の高い終末濃度、または処理後の所望産物(例えば、発酵後のエタノールまたは他のアルコール)の高濃度を得るために、比較的高い固体レベル分散において原料を処理することが望ましい。場合によっては、本明細書で説明する方法が処理中に利用する固体レベルの分散は、例えば、少なくとも10、15、20、22.5、25、27.5,30、35、40、45、またはさらに少なくとも50の重量パーセントの溶解固形物であり得る。例えば、固体レベルは、例えば、10〜40%、10〜30%、または10〜20%など、約10〜50%であり得る。
【0006】
本明細書のプロセスはまた、場合によっては、プロセス内で使用した酵素および/または微生物を、バッチプロセスで再使用可能、または連続プロセスで長期間にわたって使用可能にする。
【0007】
一態様では、本発明は、糖液を形成するために、例えば、タンクなどの容器内で液体培地内のバイオマス原料を糖化し、酵素および/または微生物を利用して、同じ容器内で、その糖液を、例えば、アルコールなどの産物に転換することを含む方法を特徴とする。
【0008】
いくつかの実施態様は、次の特徴の1つまたは複数を含む。転換は、発酵を含むことができる。本方法は、例えば、減圧蒸留などの蒸留をさらに含むことができる。蒸留は、70トル未満の減圧で行われ得る。蒸留は、外気温で行われ得る。
【0009】
場合によっては、原料は、例えば、約0.5g/cm未満の嵩密度など、低嵩密度である。液体培地は水を含み得、糖化剤は酵素を含むことができる。原料は、セルロースまたはリグノセルロース材料を含み得る。
【0010】
本方法は、追加のステップを含み得る。例えば、本方法は、糖化中に、ジェットミキサーでの混合をさらに含み得る。ジェットミキサーまたは他のミキサーでの混合は、蒸留中にも行われ得る。本方法は、糖化中に、原料、液体培地および糖化剤の混合物のグルコース濃度のモニタリングも含み得る。場合によっては、本方法は、糖化中に容器への追加の原料および糖化剤の追加、および分散システムを用いた培地内の原料の分散をさらに含む。本方法は、容器内の混合物への乳化剤または界面活性剤の追加をさらに含み得る。
【0011】
別の態様では、本発明は、タンク、バイオマス原料、糖化剤、および液体培地をタンクに送達するように構成された送達システム、その送達されたバイオマス原料および糖化剤を混合するように構成されたミキサー、ならびにタンクと結合され、そのタンクの内容物から産物を蒸留するように構成された減圧蒸留システムを含むシステムを特徴とする。
【0012】
いくつかの実施態様は、次の特徴の1つまたは複数を含む。本システムは、タンクの内容物に微生物を接種するように構成された送達装置をさらに含むことができる。本システムは、タンクの内容物の酸素レベルをモニタリングするように構成された酸素モニターをさらに含むことができる。ミキサーは、ジェットミキサーであり得るか、またはそれを含むことができる。送達システムは、バイオマス原料および液体培地を分散の形でタンクに送達するよう構成できる。
【0013】
単一のタンク内で、例えば、糖化、発酵および蒸留など、複数の処理ステップを実行することにより、処理時間および費用が削減され、プロセスが単純化される。また、資本コストは、通常、複数タンクの処理施設よりも低い。
【0014】
いくつかの場合には、本明細書に記載のシステムまたはそれらの構成要素は、1つの場所から別の場所に(例えば、鉄道、トラック、または船舶で)運搬できるように、可搬式であり得る。かかる可動式処理は、米国特許出願第12/374,549号および国際出願第WO2008/011598号に記載されており、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本明細書で説明する方法を採用することにより生成できる例示的な産物には、炭化水素、タンパク質、エタノール、n−プロパノールもしくはn−ブタノールなどのアルコール(例えば、一価アルコールまたは二価アルコール)、酢酸もしくは酪酸などのカルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸およびカルボン酸塩およびカルボン酸エステルの混合物(例えば、メチル、エチル、およびn−プロピルエステル)、ケトン、アルデヒド、アクリル酸などのα、β不飽和酸、エチレンなどのオレフィン、ならびにこれらのいずれかの混合物が含まれる。具体例には、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、ブタノール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、これらいずれかのアルコールのメチルエステルまたはエチルエステル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、いずれかの酸の塩、およびいずれかの酸とそれぞれの塩の混合物が含まれる。これらおよび他の産物は、米国特許出願第12/417,900号に記載されており、その開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
嵩密度は、ASTM D1895Bを使用して決定される。簡単に述べれば、本方法は、既知の容量のメスシリンダーに試料を充填し、試料の重量を得ることを含む。嵩密度は、グラム単位で表した試料の重量を、立方センチメートルで表したシリンダーの既知の容量で割ることにより計算される。
【0017】
本明細書で言及するかまたは本明細書に添付するすべての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらが含む内容全体が参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】セルロースからグルコースへの酵素加水分解を示す概略図である。
【図2】グルコース溶液の生成および発酵による原料のエタノールへの転換を示すフロー図である。
【図3】一実施形態による、例えば、エタノールなどの産物を生成するためのシステムの概略図である。
【図3A】図3のシステムでの使用に適したタンクおよび蒸留装置の側面図である。
【図4】一実施形態による分散システムの斜視図である。
【図5−5A】図4に示す分散システムで使用できる分散装置の、それぞれ断面図および斜視図である。
【図6】別の実施形態による分散システムの斜視図である。
【図7−7A】図6に示す分散システムのための代替操作モードを示す概略図である。
【図8】図6に示す分散システムで使用できる分散要素の斜視図である。
【図9−9A】ノズルから出るジェットを示す概略図である。
【図10】一実施形態によるジェット攪拌機の斜視図である。
【図10A】図10のジェット攪拌機の羽根車およびジェットチューブの拡大斜視図である。
【図10B】代替羽根車の拡大斜視図である。
【図11−11A】上方からタンク内に延出する2つのジェットミキサーを有するタンクの、それぞれ側面図および断面図である。
【図12】バイオマス原料を送達するための送風機の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
グルカン−および/またはキシラン含有材料、例えば、本明細書で説明する方法を使用するような、セルロースおよびリグノセルロース材料、バイオマス(例えば、植物バイオマス、動物バイオマス、紙、および廃棄物バイオマス)は、例えば、有機酸、有機酸塩、無水物、有機酸エステルおよび、内燃機関のための燃料または本明細書で説明する燃料電池のための原料などの燃料などの有用な中間物および産物を生成するために転換できる。本明細書では、簡単に十分に入手可能なセルロースおよび/またはリグノセルロース材料を原料として使用できるシステムおよびプロセスを説明するが、多くの場合、新聞、クラフト紙、段ボール紙、およびこれらの混合物を含む流れなどの廃棄物の流れおよび古紙の流れなど、セルロースまたはリグノセルロース材料を処理するのは困難であり得る。一般に、材料は、必要に応じて、多くの場合はサイズ削減により、加工用および/または加工後に物理的に処理できる。材料の抵抗性を低下させることが必要な場合は、発酵などの物理的な処理が行われる。本明細書で説明するプロセスの多くは、原料の抵抗性レベルを効果的に下げて、例えば、バイオプロセス(例えば、ホモ酢酸生成菌(homoacetogen)またはヘテロ酢酸生成菌など、本明細書に記載の任意の微生物、および/または本明細書に記載の任意の酵素を使用して)、熱加工(例えば、気化または熱分解)、または化学的手法(例えば、酸加水分解または酸化)などにより、加工し易くする。バイオマス原料は、例えば、機械的処理、化学的処理、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発など、本明細書に記載のいずれかの方法の1つまたは複数を用いて、処理または加工できる。様々な処理システムおよび方法は、本明細書および他の場所に記載のこれらの技術やその他の技術のうちの2つ、3つ、または4つ以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
原料を、例えば、単細胞蛋白工場、酵素製造工場、または、穀物エタノール製造施設などの燃料プラントなど、既存の製造工場で容易に加工できるような形態に転換するため、本明細書に記載のプロセスは、約0.75g/cm未満、例えば、約0.7、0.65、0.60、0.50、0.35、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05、または、例えば、0.025g/cm未満などの嵩密度になるように物理的に前処理を施されているセルロースまたはリグノセルロース原料などの、低嵩密度の材料を利用できる。嵩密度は、ASTM D1895Bを使用して決定される。簡単に述べれば、本方法は、既知の容量のメスシリンダーに試料を充填し、試料の重量を得ることを含む。嵩密度は、グラム単位で表した試料の重量を、立方センチメートルで表したシリンダーの既知の容量で割ることにより計算される。
【0021】
原料を容易に加工できる形態に転換するため、原料内のグルカン−またはキシラン含有のセルロースは、例えば、酵素または酸などの糖化剤、糖化と呼ばれるプロセスによって、糖などの低分子炭水化物に加水分解される。低分子量炭水化物は、その後、例えば、単細胞蛋白工場、酵素製造工場、または、エタノール製造施設などの燃料プラントなどの、既存の製造工場で使用できる。
【0022】
セルロースを含有する材料は、例えば、水溶液などの溶剤など、液体培地内で、その材料と糖化剤を混合することにより、糖化剤を用いて処理することができる。液体培地内で材料を急速かつ効率的に分散するための方法は、以下で詳述する。材料が一旦液体培地内で分散すると、糖化剤、材料および液体培地は、場合によっては糖化中に、完全に混合される。いくつかの実施態様では、材料および/または糖化剤は、一度に全部ではなく、徐々に加えられる。例えば、材料の一部を液体培地に加え、そこで分散させて、材料が少なくとも部分的に糖化するまで、糖化剤と混合することができ、その時点で、材料の第2の部分が培地で分散されて、混合物に加えられる。このプロセスは、所望の糖濃度が得られるまで継続する。
【0023】
バイオマスのセルロースおよび/またはリグニン部分など、バイオマスを分解する酵素およびバイオマス破壊生物は、様々なセルロース分解酵素(セルラーゼ)、リグニナーゼまたは種々の小分子バイオマス破壊代謝物を含有または生産する。これらの酵素は、結晶セルロースまたはバイオマスのリグニン部分を分解するために相乗的に作用する酵素の複合体であり得る。セルロース分解酵素の例には、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびセロビアーゼ(β−グルコシダーゼ)が含まれる。図1を参照すると、セルロース基質は、まず、エンドグルカナーゼによってランダムな場所で加水分解されて、オリゴマー中間体を生成する。これらの中間体は、その後、セルロース高分子の末端からセロビオースを生成するために、セロビオヒドロラーゼなどの外分裂(exo−splitting)グルカナーゼの基質となる。セロビオースは、水溶性の1,4−結合グルコース二重体である。最後に、セロビアーゼが、グルコースを得るためにセロビオースを開裂する。適したセルラーゼについては、本明細書で後述する。
【0024】
糖化の完了に必要な時間は、プロセス条件および原料および使用する酵素によって決まる。糖化が、製造工場内の管理された状態で行われる場合、セルロースは、約12〜96時間で実質的に完全にグルコースに転換し得る。糖化が部分的に行われるか、または全面的に推移中の場合、糖化にはもっと時間がかかり得る。
【0025】
場合によっては、糖化は、例えば、約4.5〜6、または約5〜6など、約4〜7のpHで行われる。
【0026】
糖液内のグルコースの最終濃度が、例えば、重量で10%を超えるか、または15、20、30、40、50、60、70、80、90もしくはさらに95%を超えるなど、比較的高いことが一般的に好ましい。これは、輸送量を削減し、また、溶液内での微生物の増殖を抑制する。糖化の後、水の量は、例えば、蒸発または蒸留によって減らすことができる。
【0027】
比較的高濃度溶液は、例えば、水など、酵素と共に原料に加えられる培地の量を制限することによって得ることができる。濃度は、例えば、糖化がどのくらい起こるかを制御することにより、調整できる。例えば、濃度は、溶液にもっと多くの原料を加えることにより、高めることができる。培地内の原料の溶解度は、例えば、溶液の温度を上げるか、かつ/または後述するように界面活性剤を加えることにより、高めることができる。例えば、溶液は、40〜50℃、50〜60℃、60〜80℃、またはさらに高い温度に維持することができる。
【0028】
図2を参照すると、例えば、エタノールなどのアルコールを製造するためのプロセスは、例えば、この処理の前および/または後に、随意に、量を削減するため、物理的に前処理を施すこと(ステップ110)、随意に、抵抗性を低下させるため、原料を処理すること(ステップ112)、および糖液を形成するため、原料を糖化すること(ステップ114)を含むことができる。糖化は、以下で詳述するように、水などの液体培地内の原料の分散を、酵素と混合すること(ステップ111)によって行うことができる。溶液は、糖化を行っているタンクから取り除くことなく、次に、バイオ処理されて、例えば、エタノールなどの所望の産物を生成し(ステップ118)、その産物は、その後、例えば、蒸留などにより、さらに処理される(ステップ120)。好ましくは、蒸留は、例えば、減圧蒸留などを使用して、糖化および発酵と同じタンク内で行われる。このプロセスの個々のステップについては、以下で詳述する。所望であれば、リグニン含有量の測定(ステップ122)および処理パラメータの設定または調整(ステップ)の各ステップは、例えば、図のように、原料の構成を変更するために使用する処理ステップの直前など、プロセスの様々な段階で実行することができる。これらのステップが含まれる場合、処理パラメータは、原料のリグニン含有量における変動を補うように調整され、これについては、2009年2月11日に出願された、米国特許仮出願第61/151,724号に記載されており、その完全な開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
混合ステップ111および糖化ステップ114は、例えば、図3に示すシステムを使用して実行できる。このシステムは、タンク136を含み、これは、最初は、液体培地を含み、後に、液体培地、原料および糖化剤の混合物138を含む。液体培地が、バルブ付き配管システム(図示せず)からタンクに送達される。そのシステムは、分散装置134と結合されている、ホッパー130も含む。ホッパーは、例えば、供給30から、酵母および栄養分などの乾燥成分を受け取る。随意に、振動装置36は、ホッパーから材料を容易に送達するために、ホッパーと結合され得る。システムは、分散装置134も含む。液体培地は、タンクから分散装置134に引き込まれ、分散装置によって出口管137からタンクに戻される。出口管137の開口部は、図のように液面より上にし得るか、または場合によっては、タンク内の液体に沈め得る。いくつかの状況では、使用する分散装置の種類に応じて(後述のように)、システムは、例えば、容積移送式ポンプなど、液体培地が分散システム内を循環するように構成された、ポンプ139、および/または、分散の粘度をモニタリングし、測定した粘度が所定の値に達した場合にポンプを作動させるための粘度計141を含み得る。
【0030】
図3に示す実施形態では、原料は、例えば、送出管34(例えば、ホースまたはパイプ)を有する送達装置32から、タンク内の液体培地の表面に送達される。送達装置32は、材料の流れを容易にするため、振動装置36とも結合され得る。送達装置32は、例えば、絶縁送風機(米国コロラド州フレデリック所在のIntecから入手可能なFORCE 3など)など、例えば、線維状および/または粒子状の材料を、供給源から、ホースを介して供給源から離れた場所に吹き飛ばすように構成された送風機であり得る。送風機500の一例を図12に概略的に示す。送風機500のホッパー502は、例えば、材料を、真空室506を経て吸気口505から吸い込むことにより、材料供給源504から材料を受け取る。一旦、ホッパー内に入ると、材料は、回転装置508を使用して塊が分離され(deagglomerate)、その回転装置は、柔軟なパドル(flexible paddle)512で終端する回転アーム510を含む。回転装置508は、また、材料を、開口部514からエアロック516まで払い落とす。エアロック516は、チャンバー522を画定する複数の回転羽根520を含む。エアロック516の下位部は、空気が圧縮空気供給(図示せず)から排出管(例えば、図3の)内に吹き込まれる通路524を含む。羽根は、材料を個々の部分の通路の方に払って、それらが通路に隣接した適切な場所にくるとすぐに排出管内に吹き込まれる。回転羽根520は、材料の一部および一定量の空気の両方が排出管に送達されるよう、各チャンバーが通路に隣接した位置になるように、十分にゆっくりと回転する。従って、空気および材料の一部が次々と排出管に送達される。材料が排出管(非常に長い可能性がある)を通るとき、材料および空気の混合物は、その材料を空気にさらし、排出管を通ってタンクまで円滑に移動し続ける。攪拌機およびエアロックの回転部材の回転速度は連動され、原料、排出管の長さ、および他の変数に基づき、ユーザーによって変更できる。
【0031】
代替として、材料は、重力送りまたはスクリューコンベヤなどの他の技術を使用して、液体表面まで送達できる。
【0032】
いくつかの実施態様では、タンクは、柔軟で空気透過性のあるカバー、または、原料がタンクから吹き飛ぶのを防ぎかつ/または汚染材料がタンクに入るのを防ぎながら、原料の送達中に空気がタンクから排出できるように構成された他の仕掛けが提供される。
【0033】
原料の材料が、送出管34を通ってタンク内の液体表面に送達されると、液体が分散装置134の出口管137を通って材料上に放出される。放出された液体は、原料の材料を湿らせて、それを液体内に沈ませ、その液体内で、好ましくは、後述のように、ジェットミキサー144の混合動作と組み合わせて、分散装置134によって分散される。
【0034】
一般に、分散装置134およびジェットミキサー144は、原料が送出管を通って送達される際に、作動していることが好ましい。
【0035】
代替実施形態では、ホッパー130は、サイズを減少するため、および随意で抵抗性を低下させるために、原料前処理モジュール132によって処理されている原料を受け取り、原料は、ホッパー130によってタンクに送達される。原料および液体培地は、タンクから分散装置134に引き込まれ、原料は、分散装置の作用により、例えば、水などの液体培地内に分散される。
【0036】
両方の実施形態では、糖化剤が、計量装置142を備える、ホッパー140からタンクに送達される。タンクの内容物は、例えば、1つまたは複数のジェットミキサーによって、混合される。ジェットミキサー144は、図3に図式的に表されており、適したジェットのミキサーの例については以下で詳述するが、2009年6月19日に出願された、米国特許仮出願第61/218,832号にも記載され、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。ジェットミキサーは、ポンプおよび/またはローター(図示せず)を駆動するモーター146を使用して、ジェットを引き起こす。モーター146によるトルクは、タンク内の混合物の固体レベルに相関し、それは、次に、糖化している混合物の程度を反映する。トルクは、トルクモニター148によって測定され、そのモニターは、コンベヤー130を駆動するモーター150、およびホッパー140の計量装置142にも信号を送信する。従って、処理された原料および酵素の供給は、タンクの内容物の糖化に応じて、中断および再開できる。トルクモニターで測定されたデータは、例えば、ローターを利用するミキサーのためのRPMを低下するため、またはポンプ駆動ミキサーのための噴射速度を低下するためなど、ジェットミキサーを調整するためにも使用できる。トルクモニターの代わりに、またはそれに加えて、システムは、モーターの全負荷アンペア数を測定するAmpモニター(図示せず)を含み得る。いくつかの状況では、ジェットミキサーは、モーター速度を調整できるようにするため、可変周波数駆動(VFD)を含み得る。
【0037】
システムは、液体培地の温度をモニタリングし、温度の上昇に応じて、原料の供給量および/または混合条件を調整する、熱監視装置(図示せず)も含み得る。かかる温度のフィードバックループは、液体培地が、酵素を変性させる温度に達するのを防ぐために使用できる。
【0038】
1つまたは複数のポンプが本明細書に記載のシステムで使用される場合、一般に、例えば、プログレッシブ空洞(progressive cavity)ポンプまたはねじ型PDポンプなど、容積移送式(PD)ポンプが使用されることが好ましい。
【0039】
糖液が、糖化に使用されたのと同じタンク内で接種および発酵される。一般に、発酵中の酸素レベルは、例えば、酸素レベルをモニタリングし、必要に応じてタンク通気孔をつけたり、混合物を通気したりすることにより、制御すべきである。エタノールレベルが低下し始めると、例えば、加熱または亜硫酸水素ナトリウムを加えることにより、発酵プロセスを止められるように、容器内のエタノールレベルをモニタリングすることも望ましい。一般に、ジェット混合は、上述と同一の設備を使用して、発酵中継続する。
【0040】
発酵が完了するか、または所望の程度まで完了すると、例えば、エタノールなどのアルコールなど、発酵産物が蒸留によって収集される。好ましくは、蒸留は、図3に図式的に示されている減圧蒸留装置151を使用して、行われる。減圧蒸留は、実質的に外気温で実行でき、それ故、タンク内に存在する栄養分、酵素および/または微生物が蒸留によって損なわれず、再使用できるために、好ましい。好ましくは、減圧蒸留は、150トル未満(例えば、125、100、80、70、60、50,40、または30トル、またはさらに25トル未満)の圧力で実施される。一般に、圧力は、水およびアルコールの共沸混合物が形成されるのを防ぐように、十分に低くすべきであり、このようにして、後で、例えば、3A分子ふるいなどで、アルコールから水を取り除く必要をなくす。
【0041】
適したタンク160および蒸留装置162を図3Aに示す。タンク160は、容器内部の所望の温度を維持するために、例えば、水などで冷却された流体であり得るジャケット付き容器164、ならびに真空ポート168および材料が送達できる他のポートを含む蓋166を含む。蓋166は、蒸留装置162の導管172と流体連結している、出口170も含む。発酵産物(例えば、エタノールなど)が、真空により導管を通って冷却管174まで引き込まれ、蓋付き受入れ容器(covered receiving vessel)176内に収集される。本システムは、容器内部の温度を55、50、45未満、またはさらに40°F未満(13、10、7、または4.5℃未満)の温度に維持するように構成できる。
【0042】
〔分散および混合〕
[分散]
分散装置134は、原料を液体培地で湿らす任意の種類の分散機器を含み得る。多くの分散装置は、チャンバーおよびそのチャンバー内のローターを含み、そのローターは、原料および液体培地がローターに向かって軸方向に引き込まれ、そして、遠心力ポンプのように、ローターの周辺に向かって半径方向に外部に、したがって、装置の出口を通るように、チャンバー内に位置する。分散装置の構造に応じて、流体を高粘度で分散装置を通って引き込むために、バックアップポンプ(前述のポンプ139)を必要とし得る。いくつかの分散装置は、装置内部に極めて高い静止流体圧力を生成するように構築されているが、かかる装置が使用される際に、通常、バックアップポンプは必要とされない。
【0043】
適した分散システム300の一例を図4〜図5Aに示す。このシステムは、比較的低い吸引を生じ、したがって、バックアップポンプが通常使用される。分散システム300は、大きなホッパーもしくはバッグ(図示せず)または他の供給源から原料を受け取って、それを分散装置301に送達できる受入れ容器(receiving bin)302を含む。分散装置301は、ハウジング304を含み、それは、分散チャンバー306(図5A)、液体注入口308、容器302と結合されている固体投入口310(図5A)、および出口312を画定する。分散システム300は、分散装置301を駆動するモーター314、ユーザー制御インタフェース316、および分散装置301内部の密封の完全性を維持するのに役立つ加圧装置(pressurized unit)318も含む。固体の分散装置301までの送達を測定するため、受入れ容器302と固体投入口310との間にバルブ(図示せず)が配置される。
【0044】
分散装置301の内部構造を図5〜図5Aに示す。固体は、固体投入口310を通過した後、液体注入口308から入ってきた液体に接触しながら、螺旋状部320によって下方に移動される。液体および固体は、その後、一連の混合羽根(mixing paddle)322によって混合され、最後に、チャンバー306の側壁に対してローター/ステータ配置に配置されているローター324(図5Aに詳細に示す)によって混合される。この一連の混合要素は、せん断の増加するレベルで、固体を液体で湿らせ、結果として、実質的に均一な分散が出口312を通って出てくる。ベンチュリの原理による羽根車が、チャンバー306と容器302との間に大きな圧力差を生じ、それが真空を引き、したがって、原料を容器からチャンバーに引き込むのに役立つ。
【0045】
別の適した分散システム400を図6〜図8に示す。このシステムは、CMS 2000という商標名で、米国ノースカロライナ州ウィルミントン所在のIKA(登録商標) Worksから市販されている。分散システム400は、供給されているように、液体タンク402を含む。しかし、所望であれば、比較的小規模のタンク402を省いて、システムの残りの部分を、例えば、産業用容量のタンク(図示せず)など、もっと大規模なタンクに配管することができる。システム400は、固体受入れ漏斗403、前述したハウジング304と同様の構造を有するハウジング404を含む分散装置401、モーター414、ユーザー制御インタフェース416、および加圧装置418も含む。
【0046】
分散システム400と分散システム300との間の主な相違は、分散装置401および301の内部構造にある。図8に詳細に示す、分散装置401は、羽根車として機能し、極めて高い静止流体圧力を装置内部で生じるローター420を含む。結果として、分散装置は、遠心力ポンプのように機能し、比較的高い粘度でさえ、バックアップポンプは一般に必要ない。
【0047】
ローター420は、高い吸引で、液体をタンクから注入口408を通ってチャンバー406に引き込む。液体および固体(投入口410から入る)は、高圧下でローター420に軸方向に引き込まれ、原料を液体内に分散する高速乱流と共に、ローター420を半径方向に抜け出る。実質的に均一な分散がチャンバーから出口412を通って出て、糖化のためにタンクに送達される。
【0048】
分散システム400は、様々なモードで稼働し得、その例を図7および図7Aに示す。図7では、分散装置401は、原料を、ハウジング404の固体投入口に取り付けられたホッパー422に投入することにより、供給される。バルブ424は、原料の分散装置401への送達を制御する。原料は、例えば、手作業、コンベヤー、空気装填機、または同様のものなど、任意の所望の送達技術を使用して、投入できる。図7Aでは、原料は、吸引ワンド(suction wand)426を用いて、バッグまたは容器424から吸引される。この場合、原料の送達は、吸引速度を制御することにより調整できる。他の構成も使用され得る。
【0049】
原料は、分散装置に連続してまたは断続的に送達され得、分散システムは、再循環または「貫流」モードで行われ得る。所望であれば、分散装置は、初期分散が完了した後、糖化中に混合のために使用できる。
【0050】
[ジェット混合]
一旦、原料が液体内に実質的に分散すると、分散システムを止めて、さらに混合するため、より少ないエネルギーしか必要としないミキサーを使用することが望ましい。この目的のために特に好都合なミキサーは、「ジェットミキサー」として知られている。一般に、適したミキサーは、共通して、高速循環流(例えば、ドーナツ型または楕円形のパターンの流れなど)を生じる。一般に、好ましいミキサーは、高いバルク流量を示す。好ましいミキサーは、この混合作用を比較的低エネルギー消費で提供する。また、せん断および/または加熱は糖化剤(または、例えば、発酵の場合は微生物)に悪影響を及ぼす可能性があるので、ミキサーは、一般に、比較的低いせん断を生じ、液体培地の加熱を避けることも好ましい。以下で詳述するように、いくつかの好ましいミキサーは、混合物を注入口から、ローターまたは羽根車を含み得る混合要素に引き込み、その後、混合物を混合要素から出口ノズルを通って放出する。この循環作用、およびノズルから出るジェットの高速度は、混合要素の方向に応じて、液体表面に浮いている材料またはタンクの底面に沈殿している材料が分散するのを支援する。混合要素は、浮遊材料および沈殿材料の両方を分散するために異なる方向に配置することができ、混合要素の方向は、いくつかの状況では調整可能である。
【0051】
例えば、いくつかの好ましい混合システムでは、周囲流体に合致するジェット速度vは、約2〜300m/s(例えば、約5〜150m/sまたは約10〜100m/s)である。混合システムの電力消費は、100,000リットルのタンクに対して、約20〜1000KW(例えば、30〜570KWまたは50〜500KW)であり得る。
【0052】
ジェット混合は、高速液体の1つの水中ジェットまたはいくつかの水中ジェットの、液体培地、この場合は、バイオマス原料、液体培地おおび糖化剤の混合物への放出を伴う。液体ジェットは、そのエネルギーを乱流および初期熱によって消失しながら、液体培地に浸透する。この乱流は、速度勾配(液体せん断)に関連する。周囲流体は、この二次的な同伴流がジェットノズルからの距離が増加するにつれて増大しながら、加速され、ジェットに取り込まれる。二次的な流れの推進力は、その流れが壁、床、または他の障害物にぶつからない限り、ジェットが拡大しながら、概ね一定のままである。いずれかの障害物にぶつかるまでに流れが持続する時間が長ければ長いほど、より多くの液体が二次的な流れに取り込まれて、タンクまたは容器内の総体流が増加する。障害物に出くわすと、二次的な流れは、多かれ少なかれタンクの形状(例えば、流れが障害物に衝突する角度)に応じて、推進力を失う。一般に、タンク壁に対する水力損失が最小限になるように、ジェットの向きを合わせ、かつ/またはタンクを設計することが望ましい。例えば、図11Aに示すように、タンクが弓状の底面(例えば、ドーム型のヘッドプレート(domed headplate))をもち、ジェットミキサーが比較的側壁に近接して置かれているのが望ましい。タンクの底面(下方のヘッドプレート)は、所望の任意のドーム型構成をもち得るか、または楕円形状もしくは円錐形状を持ち得る。
【0053】
ジェット混合は、駆動力が機械的よりはむしろ水力であるという点において、ほとんどの種類の液体/液体および液体/固体の混合物とは異なる。機械的な攪拌機が行うように、せん断流体およびそれを混合容器の周辺で推進する代わりに、ジェットミキサーは、流体をタンク内の1つまたは複数のノズルに通して、他の流体を取り込む高速ジェットを作り出す。その結果がせん断(流体に対する流体)および循環であり、これがタンクの内容物を効果的に混合する。
【0054】
図9を参照すると、水中ジェットからの中心流と周囲流体との間の高い速度勾配が渦を生じる。図9Aは、水中ジェットの一般的特徴を示す。水中ジェットが周辺環境に拡大すると、ノズルからの距離(x)が増加するにつれて、速度分布が平らになる。また、速度勾配dv/drは、所与の距離xにおいてr(ジェットの中心線からの距離)と共に変化して、混合領域(ノズルからの円錐形の拡大)を画定する渦が作り出される。
【0055】
水中ジェットの空気中での実証研究(この結果は水を含め、任意の流体に適用可能)では、Albertsonら(「Diffusion of Submerged Jets」、Paper 2409、Amer.Soc.of Civil Engineers Transactions、Vol.115:639−697、1950のp.657)が、v(x)r=0/v(中心線速度)、v(r)/v(x)r=0(所与のxにおける速度分布)、Q/Q(流れエントレインメント)、およびE/E(xに伴うエネルギー変化)に対して、次の無次元関係を展開させた:
(1)中心線速度、v(x)r=0/v
【数1】

(2)任意のxにおける速度分布、v(r)/v(x)r=0
【数2】

(3)任意のxにおける流れおよびエネルギー:
【数3】

【数4】

式中、
v(r=0) =水中ジェットの中心線速度(m/s)、
=ノズルから出てくる際のジェット速度(m/s)、
x =ノズルからの距離(m)、
r =ジェットの中心線からの距離(m)、
=ノズルの直径(m)、
=ノズルからの距離xにおける任意の所与の平面にわたる流体の流れ(me/s)、
=ノズルから出てくる流体の流れ(m3/s)、
E =ノズルからの距離xにおける任意の所与の平面にわたる流体のエネルギー流束(m/s)、
=ノズルから出てくる流体のエネルギー流束(m3/s)。
(「Water Treatment Unit Processes: Physical and Chemical」、David W. Hendricks、CRC Press 2006、p.411。)
【0056】
ジェット混合は、大量(1,000ガル以上)および低粘度(1,000cPs未満)の用途において特に費用効果がある。また、例えば、ポンプが使用される場合など、ジェットミキサーのポンプまたはモーターが沈まないほとんどの場合、通常、それを容器の外部に配置することは、一般に、好都合である。
【0057】
ジェット混合の1つの利点は、周囲流体の温度(局部加熱があり得る、ノズルの出口に直接隣接した場所以外)が、仮にあったとしても、わずかにしか上昇しないことである。例えば、温度は、5℃未満、1℃未満、または測定不可能な程度、上昇し得る。
【0058】
ジェット攪拌機
1つの種類のジェット攪拌機を図10〜図10Aに示す。このタイプのミキサーは、例えば、ROTOTRONTMという商標名でIKAから、市販されている。図10を参照すると、ミキサー200は、駆動軸204を回転させる、モーター202を含む。混合要素206は、駆動軸204の端部に取り付けられる。図10A示すように、混合要素206は、側板208、および側板内に羽根車210を含む。矢印で示すように、羽根車が「順」方向に回転すると、羽根車は、側板の開いた上端部212から液体を引き込み、その液体を開いた下端部214から強制的に外に出す。液体出口端部214は、高速流またはジェットの形態である。羽根車210の回転方向が反転すると、液体は、下端部214から引き込まれて、上端部212から排出されることが可能になる。これは、例えば、タンクまたは容器内の液体表面近くまたはその上に浮いている固体を吸引するために使用できる。(「上(upper)」および「下(lower)」は、図10のミキサーの位置付けを指すものではない;ミキサーは上端部が下端部の下になるようタンク内で配置され得る。)
【0059】
側板208は、その端部に隣接した拡がり領域(flared area)216および218を含む。これらの拡がり領域は、このタイプのミキサーで見られる概ねドーナツ形をした流れに寄与すると考えられている。側板および羽根車の形状も、比較的低い電力消費量で、流れを高速流に集結させる。
【0060】
好ましくは、側板208と羽根車210との間の隙間は、材料が側板を通過する際に、過度に挽かれるのを回避するよう、十分である。例えば、隙間は、混合物の固体の平均粒径の少なくとも10倍、好ましくは、少なくとも100倍であり得る。
【0061】
いくつかの実施態様では、軸204は、その軸を通って気体を送達できるように構成される。例えば、軸204は、気体がその中を通って送達される空洞(図示せず)、および気体が混合物へと出て行く1つまたは複数の開口部を含み得る。開口部は、混合を増強するために、側板208内部に、および/または軸204の長さに沿った他の位置にあり得る。
【0062】
羽根車210は、液体を側板から高速で引き込むような、所望の任意の形状をもち得る。羽根車は、好ましくは、図10Aに示すように、海洋羽根車であるが、例えば、図10Bに示すようなRushton羽根車、または、例えば、軸流を提供するように傾けられた、修正Rushton羽根車など、異なる設計をもち得る。
【0063】
側板を通過する高速流を作り出すため、モーター202は、好ましくは、例えば、500〜20,000RPM(例えば、3,000〜10,000RPM)で稼働できる、高速、高トルクモーターである。しかし、ミキサーが大きければ(例えば、側板が大きければ、かつ/またはモーターが大きければ)、回転速度は低下し得る。それ故、大規模なミキサー(例えば、5hp、10hp、20hp、または30hp以上など)が使用される場合、モーターは低い回転速度(例えば、2000RPM未満、1500RPM未満、またはさらに500RPM未満)で稼働するように設計され得る。例えば、10,000〜20,000リットルのタンクを混ぜるように形成されたミキサーは、900〜1,200RPMの速度で稼働し得る。モーターのトルクは、例えば、固体の糖化に起因して、混合条件が時間とともに変わるので、比較的一定の羽根車速度を維持するため、好ましくは、自動調整式である。
【0064】
好都合に、ミキサーは、ジェットを所望の方向に向けるため、タンク内で所望の任意の角度または位置に配置できる。図11および図11Aは、2つのジェットミキサーが、ポート254を通ってタンク252内に下方に延在する、一実施形態を示す。
【0065】
さらに、前述のように、羽根車の回転方向に応じて、液体を側板のどちらかの端部から引き込むために、ミキサーが使用できる。
【0066】
いくつかの実施態様では、2つまたは3つのジェットミキサーが容器内に置かれて、1つまたは複数が液体を上方に噴出する(「上方ポンプ(up pump)」)ように構成され、1つまたは複数が液体を下方に噴出する(「下方ポンプ(down pump)」)ように構成されている。いくつかの状況では、ミキサーによって作り出される乱流を増強するため、上方ポンプミキサーは、下方ポンプミキサーに隣接して配置されるであろう。所望であれば、1つまたは複数のミキサーが、処理中に、上昇流と下降流との間で切り替えられ得る。原料を液体培地で最初に分散中は、特に、原料が液体表面上に投下されているか、または、排出されている場合には、上方ポンピングが液面で著しい乱流を作り出すため、全てまたはほとんどのミキサーを上方ポンピングモードに切り替えるのが好都合であり得る。上方ポンピングは、発酵中に、ガスが、通気できる表面に湧き出るのを可能にすることにより、液体からCOを取り除くのを支援するためにも使用できる。
【0067】
他の適したジェットミキサーについては、2009年6月19日に出願された米国特許仮出願第61/218,832号、および2010年5月24日に出願された、米国特許出願第12/782,694号に記載されており、それらの開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
〔原料〕
[バイオマス原料]
バイオマスは、例えば、セルロースまたはリグノセルロース材料などであり得る。かかる材料には、紙および紙製品(例えば、ポリエチレン塗装紙およびクラフト紙)、木材、木材関連材料(例えば、削片板)、草、もみ殻、バガス、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザル麻、マニラ麻、麦わら、スイッチグラス、アルファルファ、干し草、トウモロコシの穂軸、トウモロコシ茎葉、ココナッツの毛)、および高αセルロース含有量の材料(例えば、綿花)を含む。原料は、例えば、レムナント、消費財廃棄物(例えば、ぼろきれ)などの、バージンスクラップ織物原料から得ることができる。紙製品が使用されると、それらはバージン原料(例えば、くずのバージン原料)であり得るか、または消費財廃棄物であり得る。未使用の原料物質を除いて、消費財廃棄物、産業廃棄物(例えば、廃物)、および加工廃棄物(例えば、紙加工からの流出物)も繊維源として使用できる。バイオマス原料は、し尿(例えば、下水)、動物の排せつ物または植物廃棄物からも得たり、抽出したりすることができる。追加のセルロースおよびリグノセルロース材料については、米国特許第6,448,307号、第6,258,876号、第6,207,729号、第5,973,035号および第5,952,105号に記載されている。
【0069】
いくつかの実施形態では、バイオマス原料は、1つまたは複数のβ−1,4結合を有し、3,000〜50,000の間の数平均分子量を有する材料であるか、またはそれを含む炭水化物を含む。かかる炭水化物は、β(1,4)−グリコシド結合の縮合を経て(β−グルコース1)から引き出される、セルロース(I)であるか、またはそれを含む。この結合を、澱粉および他の炭水化物内に存在するα(1,4)−グリコシド結合のための結合と対比する。
【化1】


【化2】

【0070】
でんぷん質には、デンプン自体(コーンスターチ、小麦でんぷん、ジャガイモでんぷん、米でんぷんなど)、デンプン派生物、または食用の食品もしくは作物など、デンプンを含む材料を含む。例えば、でんぷん質は、アラカチャ、ソバ、バナナ、オオムギ、キャッサバ、葛、アンデスカタバミ、サゴ、ソルガム、普通のありふれたジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、ヤムイモ、または1つもしくは複数のマメ(ソラ豆、レンズ豆、エンドウなど)であり得る。任意の2つ以上のでんぷん質の混合物もでんぷん質である。
【0071】
いくつかの状況では、バイオマスは微生物材料である。微生物起源には、例えば、原生動物(鞭毛虫、アメーバ、繊毛虫類、および胞子虫類などの原虫類)および原生植物(アルベオラータ、クロララクニオ藻、クリプト植物、ユーグレナ藻、灰色藻、ハプト藻、紅藻類、ストラメノパイルおよび緑色植物亜界などの藻類)などの原生生物など、炭水化物源(例えば、セルロース鵜)を含むか、またはそれを提供できる、任意の自然に存在するか、または遺伝子操作されている微生物または生物体を含むが、それらに限定されない。他の例には、海草、プランクトン(例えば、大形プランクトン、中形プランクトン、小形プランクトン、微小プランクトン、ピコプランクトン、およびフェムトプランクトン)、植物プランクトン、細菌(例えば、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、および好極限性細菌)、酵母および/またはこれらの混合物が含まれる。いくつかの状況では、微生物バイオマスは、例えば、海洋、湖、水域(塩水または淡水など)、または陸上などの天然資源から得ることができる。代替または追加で、微生物バイオマスは、例えば、大規模な無加湿(dry)および加湿(wet)培養系などの培養系から得ることができる。
【0072】
[糖化剤]
適した酵素は、バイオマスを分解できるセロビアーゼおよびセルラーゼを含む。
【0073】
適したセロビアーゼは、NOVOZYME 188TMという商標名で販売されているAspergilluss nigerからのセロビアーゼを含む。
【0074】
セルラーゼは、バイオマスを分解することができ、真菌または細菌由来であり得る。適した酵素は、Bacillus、Pseudomonas、Humicola、Fusarium、Thielavia、Acremonium、ChrysosporiumおよびTrichoderma属のセルラーゼを含み、Humicola、Coprinus、Thielavia、Fusarium、Myceliophtora、Acremonium、Cephalosporium、Scytalidium、PenicilliumまたはAspergilus(例えば、EP 458162を参照)の種、特に、Humicola insolens(Scytalidium thermophilumとして再分類された、例えば、米国特許第4,435,307を参照)、Coprinus cinereus、Fusarium oxysporum、Myceliophthora thermophila、Meripilus giganteus、Thielavia terrestris、Acremonium sp.、Acremonium persicinum、Acremonium acremonium、Acremonium brachypenium、Acremonium dichromosporum、Acremonium abclavatum、Acremonium pinkertoniae、Acremonium roseogriseum、Acremonium incoloratum、およびAcremonium furatumの種、好ましくは、Humicola insolens DSM 1800、Fusarium oxysporum DSM 2672、Myceliophthora thermophila CBS 117.65、Cephalosporium sp.RYM−202、Acremonium sp.CBS 478.94、Acremonium sp.CBS 265.95、Acremonium persicinum CBS 169.65、Acremonium acremonium AHU 9519、Cephalosporium sp.CBS 535.71、Acremonium brachypenium CBS 866.73、Acremonium dichromosporum CBS 683.73、Acremonium obclavatum CBS 311.74、Acremonium pinkertoniae CBS 157.70、Acremonium roseogriseum CBS 134.56、Acremonium incoloratum CBS 146.62、およびAcremonium furatum CBS 299.70Hの種から選択された株によって産生されたものを含む。セルロース分解性酵素は、Chrysosporium、好ましくは、Chrysosporium lucknowenseの株から取得され得る。さらに、Trichoderma(特に、Trichoderma viride、Trichoderma reesei、およびTrichoderma koningii)、好アルカリ性Bacillus(例えば、米国特許第3,844,890号およびEP 458162を参照)、およびStreptomyces(例えば、EP 458162を参照)が使用され得る。
【0075】
例えば、Accellerase(登録商標) 1500酵素複合体など、ACCELLERASE(登録商標)という商標名でGenencoreから市販されているものなどの酵素複合体が利用され得る。Accellerase(登録商標) 1500酵素複合体は、複数の酵素活性、主には、エキソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ(2200−2800 CMC U/g)、ヘミセルラーゼ、およびβグルコシダーゼ(525−775 pNPG U/g)を包含し、4.6〜5.0のpHを有する。酵素複合体のエンドグルカナーゼ活性は、カルボキシメチルセルロース活性単位(CMC U)で表され、他方、βグルコシダーゼ活性は、pNP−グルコシド活性単位(pNPG U)で報告される。一実施形態では、Accellerase(登録商標) 1500酵素複合体とNOVOZYMETM 188セロビアーゼの混合物が使用される。
【0076】
いくつかの実施態様では、糖化剤は、酸(例えば、鉱酸)を含む。酸が使用されるとき、微生物に有害な副産物が生成され得、その場合、プロセスは、かかる副産物の除去をさらに含むことができる。除去は、活性炭素(例えば、活性炭)または他の適した技術を使用して行われ得る。
【0077】
[発酵剤]
発酵で使用される微生物は、自然の微生物および/または操作された微生物であり得る。例えば、微生物は、細菌(例えば、セルロース分解細菌)、真菌(例えば、酵母)、植物または原生生物(例えば、藻類)、原虫類または真菌様の原生生物(例えば、粘菌)であり得る。生物体が共存できる場合は、生物体の混合物が利用できる。
【0078】
適した発酵微生物は、炭水化物(グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、オリゴ糖または多糖類など)を発酵産物に転換する能力を有する。発酵微生物には、Sacchromyces spp.属(例えば、Sacchromyces cerevisiae(パン職人の酵母)、Saccharomyces distaticus、Saccharomyces uvarum)、Kluyveromyces属(例えば、Kluyveromyces marxianus、Kluyveromyces fragilis種)、Candida属(例えば、Candida pseudotropicalis、およびCandida brassicae、Pichia stipitis(Candida shehataeの類縁体))、Clavispora属(例えば、Clavispora lusitaniaeおよびClavispora opuntiaeの種)、Pachysolen属(例えば、Pachysolen tannophilus種)、Bretannomyces属(例えば、Bretannomyces clausenii種)の株を含む(Philippidis,G.P.、1996、Cellulose bioconversion technology,in Handbook on Bioethanol:Production and utilization,Wyman,C.E.,ed.,Taylor & Francis, Washington,DC、179−212)。
【0079】
市販の酵母には、例えば、RedStar(登録商標)/Lesaffre Ethanol Red(米国のRed Star/Lesaffreから入手可能)、FALI(登録商標)(米国のBurns Philip Food Inc.,の部門、Fleischmann’s Yeastから入手可能)、SUPERSTART(登録商標)(Alltech(現在はLalemand)から入手可能)、GERT STRAND(登録商標)(スウェーデンのGert Strand ABから入手可能)、およびFERMOL(登録商標)(DSM Specialitiesから入手可能)がある。
【0080】
細菌(例えば、Zymomonas mobilisおよびClostridium thermocellum)も発酵で使用され得る(Philippidis、1996、supra)。
【0081】
〔添加剤〕
[抗生材料]
一般に、糖液は高糖濃度であることが好ましいが、低糖濃度も使用され得、その場合は、抗菌性添加物(例えば、広域抗生材料)を低濃度(例えば、50〜150ppm)で加えることが望ましい。他の適した抗生材料には、アムホテリシンB、アンピシリン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ピューロマイシン、ストレプトマイシンが含まれる。抗生材料は、輸送および保管中に微生物の増殖を抑制し、例えば、重量で15〜1000ppmの間(例えば、25〜500ppmまたは50〜150ppmの間)など、適切な濃度で使用できる。所望であれば、抗生材料は、糖濃度が比較的高い場合でさえ、含めることができる。
【0082】
[界面活性剤]
界面活性剤の追加は、糖化率を高めることができる。界面活性剤の例には、非イオン性界面活性剤(Tween(登録商標) 20またはTween(登録商標) 80ポリエチレングリコール界面活性剤など)、イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤を含む。他の適した界面活性剤は、Dow Chemicalから市販されているTRITONTM Xシリーズの非イオン性界面活性剤などの、オクチルフェノールエトキシレートを含む。界面活性剤は、溶液内、特に高濃度溶液内で生成されている糖を維持するためにも加えることができる。
【0083】
〔糖化媒体〕
一実施形態では、媒体は次のような要素の濃度を有する:
【表1】

【0084】
〔原料の物理的処理〕
[物理的準備]
場合によっては、方法は、材料のサイズ減少(例えば、切断、粉砕、せん断、微粉砕またはたたき切り)など、物理的な準備を含むことができる。例えば、場合によっては、締りのない原料(例えば、再生紙、でんぷん質、石炭、またはスイッチグラス)は、せん断または細断することにより準備される。例えば、別の場合には、原料はまず、本明細書に記載の1つまたは複数の方法(例えば、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発)を用いて前処理または処理され、次に、サイズが減少されるか、またはさらにサイズが減少される。最初に処理してからサイズ減少することは、処理された材料はより脆くなる傾向があり、したがって、サイズ減少が容易になるため、好都合であり得る。大き過ぎるか、または望ましくない物体(例えば、岩または釘など)を、供給流から取り除くため、篩および/または磁石が使用できる。
【0085】
供給準備システムは、例えば、特定の最大サイズ、特定の幅に対する長さ、または特定の表面積比など、特定の特性をもつ流れを作り出すように構成できる。物理的準備は、材料を広げて、それらがプロセスおよび/または試薬(溶液中の試薬など)にもっとアクセスし易くすることによって、反応速度を高めるか、または必要な処理時間を削減することができる。原料の嵩密度を制御する(例えば、高める)ことができる。場合によっては、低嵩密度の材料を準備し、その材料の密度を高め(例えば、別の場所への輸送を容易および安価にするために)、その後、その材料を低嵩密度状態に戻すことが望ましい。
【0086】
サイズ減少
いくつかの実施形態では、処理する材料は、繊維源をせん断することにより提供される繊維を含む繊維状材料の形態である。例えば、せん断は、回転ナイフカッターで行うことができる。
【0087】
例えば、繊維源(例えば、扱い難いか、または扱い難さのレベルが低下されているもの)は、第1の繊維状材料を提供するために、例えば、回転ナイフカッターなどで、せん断することができる。第1の繊維状材料は、例えば、平均開口径が1.59mm(1/16インチ、0.0625インチ)未満の第1の篩にかけられて、第2の繊維状材料を提供する。所望であれば、繊維源は、せん断前に、例えば、シュレッダーなどで、切断できる。例えば、紙が繊維源として使用される場合、その紙はまず、例えば、異方向スクリューシュレッダー(counter−rotating screw shredder)(例えば、米国ニューヨーク州ユーティカ所在のMunsonによって製造されているもの)などのシュレッダーを使用して、例えば、1/4〜1/2インチ幅の細長片に切断できる。せん断に代わるものとして、紙は、ギロチン断裁機を使用して所望のサイズに切断することにより、サイズを減少できる。例えば、ギロチン断裁機は、紙を、例えば、10インチ幅で12インチの長さのシートに切断するために使用できる。
【0088】
いくつかの実施形態では、繊維源のせん断、および結果として生じた第1の繊維状材料を第1の篩にかけることは、同時に行われる。せん断および篩がけは、バッチ型プロセスで行うこともできる。
【0089】
例えば、回転ナイフカッターは、繊維源のせん断および第1の繊維状材料の篩がけを同時に行うために使用できる。回転ナイフカッターは、繊維源を細かく切ることによって準備されている細断された繊維源を投入できるホッパーを含む。いくつかの実施形態では、原料は、糖化および/または発酵の前に物理的に処理される。物理的処理プロセスは、機械的処理、化学的処理、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発など、本明細書に記載のいずれか方法の1つまたは複数を含むことができる。処理方法は、これらの技術のうちの2つ、3つ、4つ、または全てさえも(任意の順序で)組み合わせて使用できる。2つ以上の処理方法が使用される場合、それらの方法は、同時にまたは異なる時に適用できる。バイオマス原料の分子構造を変更する他のプロセスも、単独で、または本明細書で開示のプロセスと組み合わせて、使用され得る。
【0090】
機械的処理
場合によっては、方法は、バイオマス原料の機械的な処理を含むことができる。機械的処理は、例えば、切断、ミル粉砕、加圧、粉砕、せん断、およびたたき切りなどを含む。ミル粉砕は、例えば、ボールミル粉砕、ハンマーミル粉砕、ローター/ステーター乾式もしくは湿式ミル粉砕、または他の種類のミル粉砕を含み得る。他の機械的処理には、例えば、石臼式粉砕(stone grinding)、粗砕、機械的引き裂きまたは引きちぎり、ピン粉砕または空気摩擦ミル粉砕などがある。
【0091】
機械的処理は、セルロースまたはリグノセルロース材料を「広げ(opening up)」、「加圧(stress)」、破壊および粉砕して、材料のセルロースが分子鎖切断および/または結晶化度の低減の影響をより受けやすくするために、好都合であり得る。開いた材料(opne material)は、照射された場合に、より酸化の影響も受けやすくなり得る。
【0092】
ある場合には、機械的処理は、材料のサイズ減少(例えば、切断、粉砕、せん断、微粉砕またはたたき切り)など、受け取った原料の初期準備を含み得る。例えば、場合によっては、締りのない原料(例えば、再生紙、でんぷん質、またはスイッチグラス)は、せん断または細断することにより準備される。
【0093】
代替または追加として、原料の材料はまず、1つまたは複数の他の物理的処理方法(例えば、化学的処理、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発)を用いて物理的に処理し、その後、機械的に処理することができる。この順序は、1つまたは複数の他の処理(例えば、放射線照射または熱分解)で処理された材料は、より脆くなる傾向があり、したがって、機械的処理による材料の分子構造のさらなる変更がより容易になり得るため、好都合であり得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、原料の材料は、繊維状材料の形態であり、機械的処理は、繊維状材料の繊維をむき出しにするためのせん断を含む。せん断は、例えば、回転ナイフカッターを使用して、行うことができる。原料を機械的に処理する他の方法には、例えば、ミル粉砕または粉砕などがある。ミル粉砕は、例えば、ハンマーミル、ボールミル、コロイドミル、コニカルまたはコーンミル、ディスクミル、フレット(edge mill)などを用いて行われ得る。粉砕は、例えば、石材グラインダー、ピングラインダー、コーヒーグラインダー、またはバーグラインダーなどを用いて行われ得る。粉砕は、例えば、ピンミルの場合のように、往復ピンまたは他の要素によって提供され得る。他の機械的処理方法には、機械的引き裂きまたは引きちぎり、材料に加圧する他の方法、および空気摩擦ミル粉砕がある。適した機械的方法は、原料の分子構造を変更する任意の他の技術をさらに含む。
【0095】
所望であれば、機械的に処理された材料は、例えば、平均開口径が1.59mm(1/16インチ、0.0625インチ)未満の篩にかけられる。いくつかの実施形態では、せん断、または他の機械的処理、および篩がけが同時に行われる。例えば、回転ナイフカッターは、原料のせん断および篩がけを同時に行うために使用できる。原料は、固定羽根と回転羽根との間でせん断されて、篩にかけるせん断された材料を提供し、容器内で捕捉される。
【0096】
セルロースまたはリグノセルロース材料は、乾燥状態(例えば、その表面上にほとんどまたは全く自由水がない)、水和状態(例えば、重量で最大10パーセントの吸収された水を有する)、または湿潤状態(例えば、重量で約10〜約75パーセントの水を有する)で、機械的に処理できる。繊維源は、例えば、水、エタノールまたはイソプロパノールなどの液体の下に、部分的にまたは完全に沈んだ状態でも、機械的に処理できる。
【0097】
繊維源、セルロースまたはリグノセルロース材料は、気体(例えば、酸素もしくは窒素などの空気以外の気体の流れまたは雰囲気)、または蒸気下でも機械的に処理できる。
【0098】
所望であれば、リグニンを含有する任意の繊維状材料からリグニンを除去できる。また、セルロースを含有する材料の分解を支援するため、材料は、機械的処理または熱、化学薬品(例えば、鉱酸、塩基または次亜塩素酸ナトリウムなどの強酸化剤)および/もしくは酵素での照射の前またはその間に、処理することができる。例えば、粉砕は、酸の存在下で行うことができる。
【0099】
機械的処理システムは、例えば、表面積、多孔度、嵩密度などの特定の形態的特性、また、繊維状原料の場合は、幅に対する長さの比などの繊維特性をもつ流れを作り出すように構成できる。
【0100】
いくつかの実施形態では、機械的に処理された材料のBET表面積は、0.1m/gを超えるか、0.25m/gを超えるか、0.5m/gを超えるか、1.0m/gを超えるか、1.5m/gを超えるか、1.75m/gを超えるか、5.0m/gを超えるか、10m/gを超えるか、25m/gを超えるか、35m/gを超えるか、50m/gを超えるか、60m/gを超えるか、75m/gを超えるか、100m/gを超えるか、150m/gを超えるか、200m/gを超えるか、またはさらに250m/gを超える。
【0101】
機械的に処理された材料の多孔度は、例えば、20パーセントを超えるか、25パーセントを超えるか、35パーセントを超えるか、50パーセントを超えるか、60パーセントを超えるか、70パーセントを超えるか、80パーセントを超えるか、85パーセントを超えるか、90パーセントを超えるか、92パーセントを超えるか、94パーセントを超えるか、95パーセントを超えるか、97.5パーセントを超えるか、99パーセントを超えるか、またはさらに99.5パーセントを超える。
【0102】
いくつかの実施形態では、機械的処理の後、材料は、0.25g/cm未満(例えば、0.20g/cm、0.15g/cm、0.10g/cm、0.05g/cm)またはそれ以下(例えば、0.025g/cm)の嵩密度をもつ。嵩密度は、ASTM D1895Bを使用して決定される。簡単に述べれば、本方法は、既知の容量のメスシリンダーに試料を充填し、その試料の重量を得ることを含む。嵩密度は、グラム単位で表した試料の重量を、立方センチメートルで表したシリンダーの既知の容量で割ることにより計算される。
【0103】
原料が繊維状材料である場合、機械的に処理された繊維状材料の繊維は、たとえ、それらが二度以上細かく切られていても、比較的大きい平均の長さと直径の比(例えば、20体を超える)を持つことがあり得る。さらに、本明細書で説明する繊維状材料の繊維は、比較的狭い長さおよび/または長さと直径の比の配分をもち得る。
【0104】
本明細書では、平均繊維幅(例えば、直径)は、無作為に選択した約5,000の繊維により光学的に決定されたものである。平均繊維長は、補正した長さ加重長さ(length−weighted length)である。BET(Brunauer、EmmetおよびTeller)表面積は、多点表面積であり、多孔度は、水銀ポロシメーターで決定されるものである。
【0105】
第2の原料が繊維状材料14である場合、機械的に処理された材料の平均の長さと直径の比は、例えば8/1を超え得る(例えば、10/1を超えるか、15/1を超えるか、20/1を超えるか、25/1を超えるか、または50/1を超える)。機械的に処理された材料の平均繊維長は、例えば、約0.5mm〜2.5mmの間(例えば、約0.75mm〜1.0mmの間)であり得、第2の繊維状材料14の平均幅(例えば、直径)は、例えば、約5μm〜50μmの間(例えば、約10μm〜30μmの間)であり得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、原料が繊維状材料である場合、機械的に処理された材料の繊維長の標準偏差は、機械的に処理された材料の平均繊維長の60パーセント未満(例えば、平均長の50パーセント未満、平均長の40パーセント未満、平均長の25パーセント未満、平均長の10パーセント未満、平均長の5パーセント未満、平均長の1パーセント未満でさえ)であり得る。
【0107】
場合によっては、低嵩密度の材料を準備し、その材料の密度を高め(例えば、別の場所への輸送を容易および安価にするために)、その後、その材料を低嵩密度状態に戻すことが望ましい。密度を高められた材料は、本明細書に記載する任意の他の方法で処理することができるか、または、本明細書に記載する任意の他の方法で処理された任意の材料は、その後で密度を高めることができるが、それについては、米国特許第12/429,045号および第WO2008/073186号で開示されており、それらの開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
〔可溶化、抵抗性低下、または機能化の処理〕
物理的に処理されているか、または処理されていない材料は、本明細書に記載する任意の製造プロセスで使用するために処理できる。以下で説明する1つまたは複数の製造プロセスは、前述した抵抗性低下操作装置に含み得る。代替または追加として、抵抗性を低下させるための他のプロセスを含み得る。
【0109】
抵抗性低下操作装置で利用される処理プロセスは、照射、超音波処理、酸化、熱分解または蒸気爆発の1つまたは複数を含むことができる。処理方法は、これらの技術のうちの2つ、3つ、4つ、または全てさえも(任意の順序で)組み合わせて使用できる。
【0110】
放射線処理
1つまたは複数の放射線処理シーケンスが、原料からの材料を処理し、原料から有用材料を抽出するために様々なソースを提供し、また、さらに別の処理ステップおよび/またはシーケンスに対する入力として機能する、一部分解され、有機構造的に変更された材料を提供するために使用できる。照射は、例えば、原料の分子量および/または結晶化度を減少させることができる。照射は、材料、またはその材料をバイオ処理するために必要な任意の培地を殺菌することもできる。
【0111】
いくつかの実施形態では、原子軌道から電子を放出する材料内に蓄積されているエネルギーが、材料を照射するために使用される。照射は、1)重荷電粒子(例えば、α粒子または陽子)、2)例えば、β崩壊または電子ビーム加速器などで生成された、電子、または3)例えば、ガンマ線、X線、または紫外線などの電磁放射線によって、提供され得る。一アプローチでは、放射性材料によって生じた放射線照射は、原料を照射するために使用できる。いくつかの実施形態では、(1)〜(3)の任意の組合わせを任意の順序または同時に利用し得る。別のアプローチでは、原料を照射するために、電磁放射線(例えば、電子ビームエミッターを使用して生じた)が使用できる。適用する線量は、所望の効果および特定の原料によって決まる。
【0112】
分子鎖切断が望ましいか、かつ/またはポリマー鎖の機能付与が望ましい場合には、電子より重たい粒子(例えば、陽子、ヘリウムの核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオンまたは窒素イオンなど)が使用できる。開環の分子鎖切断が望ましい場合は、開環の分子鎖切断を増進するため、それらのルイス酸特性に対して正に帯電した粒子が使用できる。例えば、最大限の酸化が望まれる場合は、酸素イオンが利用でき、最大限のニトロ化が望ましい場合は、窒素イオンが利用できる。重粒子および正に帯電した粒子の使用については、米国特許第12/417,699号に記載されており、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
一方法では、第1の数平均分子量(MN1)を有するセルロースであるか、またはそれを含む第1の材料が、例えば、電離放射線(例えば、ガンマ線照射、X線照射、100nm〜280nmの紫外(UV)線、電子ビームまたは他の荷電粒子)を用いた処理などによって照射され、第1の数平均分子量より低い第2の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第2の材料を提供する。第2の材料(または、第1および第2の材料)は、本明細書に記載するような、中間物または産物を生成するために、第2および/もしくは第1の材料またはその構成糖またはリグニンを利用できる微生物(酵素処理の有無にかかわらず)と結合できる。
【0114】
第2の材料は、第1の材料に比べて減少した分子量、および場合によっては、同様に減少した結晶化度を有するセルロースを含むため、第2の材料は、通常、例えば、微生物および/または酵素を含む溶液中で、より分散性、膨潤性および/または可溶性である。これらの特性は、第1の材料に比較して、第2の材料を処理し易くし、化学薬品、酵素および/または生物攻撃の影響をより受け易くし、これは、所望の産物(例えば、エタノール)の生産速度および/または生産レベルを著しく改善できる。放射線照射も材料または、その材料をバイオ処理するために必要な任意の培地を殺菌することもできる。
【0115】
いくつかの実施形態では、第2の材料は、第1の材料の酸化レベル(O)よりも高い酸化レベル(O)を持つことができる。材料のより高いレベルの酸化は、その分散性、膨潤性および/または可溶性を支援し、材料の化学薬品、酵素および/または生物攻撃に対する脆弱性をさらに強める。いくつかの実施形態では、第2の材料の酸化レベルを第1の材料に比較して高めるために、照射が酸化環境化(例えば、空気または酸素のブランケット下)で行われて、第1の材料よりも酸化されている第2の材料を生成する。例えば、第2の材料は、より多くのヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基またはカルボン酸基を有することができ、これは、その親水性を高めることができる。
【0116】
電離放射線
放射線照射の各形態は、放射線照射のエネルギーによって決定されるとおり、特定の相互作用によって、炭素含有材料を電離する。重荷電粒子は、主に、クーロン散乱によって材料を電離し、さらに、これらの相互作用は、材料をさらに電離し得るエネルギー電子を生じる。α粒子は、ヘリウム原子の核と同一であり、様々な放射性核(例えば、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、いくつかのアクチニド(例えば、アクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリホルニウム、アメリシウムおよびプルトニウム)の各同位体)のα崩壊によって生じる。
【0117】
粒子が利用される場合、それらは、中性(無電荷)、正電荷または負電荷であり得る。荷電される場合、荷電粒子は、単一の正または負の電荷、または多重電荷(例えば、1、2、3または4以上の電荷)を帯びる。分子鎖切断が望ましい場合は、一つには、それらの酸性の性質のために、正に帯電した粒子が望ましい。粒子が利用される場合、粒子は、静止電子の質量またはそれ以上(例えば、電子の質量の500、1000、1500、2000、10,000または100,000倍)を持つことができる。例えば、粒子は、約1原子単位〜約150原子単位(例えば、約1原子単位〜約50原子単位、または約1〜約25、例えば、1、2、3、4、5、10、12または15amu)の質量を持つことができる。粒子を加速するために使用される加速器は、静電DC、電気力学DC、RFリニア、磁気誘導型リニアまたは連続波であり得る。例えば、サイクロトロン型加速器は、例えば、Rhodotron(登録商標)など、ベルギーのIBAから入手可能であり、一方、DC型加速器は、Dynamitron(登録商標)など、RDI(現在のIBA Industrial)から入手可能である。イオン加速器は、Introductory Nuclear Physics,Kenneth S.Krane,John Wiley & Sons,Inc.(1988)、Krsto Prelec,FIZIKA B6(1997)4,177−206,Chu, William T.、「Overview of Light−Ion Beam Therapy」Columbus−Ohio,ICRU−IAEA Meeting,18−20 March 2006, Iwata, Y,et al.、「Alternating−Phasc−Focused IH−DTL for Heavy−Ion Medical Accelerators」Proceedings of EPAC 2006,Edinburgh,Scotland and Leaner,C.M.et al.、「Status of the Superconducting ECR Ion Source Venus」Proceedings of EPAC 2000,Vienna,Austriaの中で論じられている。
【0118】
いくつかの実施形態では、電子ビームが線源として使用される。電子ビームは、高線量率(例えば、毎秒1.5または10Mradさえも)、高スループット、より少ない封じ込め、およびより少ない封じ込み機器の優位性を有する。電子は、分子鎖切断をより効率的に引き起こすこともできる。さらに、4〜10MeVのエネルギーを有する電子は、5〜30mm以上(例えば、40mm)の侵入度を持つことができる。場合によっては、電子ビーム放射線の複数線量を材料に対して照射するために、複数の電子ビーム装置(例えば、「ホーン(horn)」とよく呼ばれる、複数ヘッド)が使用される。この高い総ビーム出力は、通常、複数の加速ヘッドを利用して達成される。例えば、電子ビーム装置は、2、4、またはそれ以上の加速ヘッドを含み得る。一例として、電子ビーム装置は、4つの加速ヘッドを含み得、1200kWの総ビーム出力に対して、その各々が300kWのビーム出力を有する。各々が比較的低ビーム出力を有する複数ヘッドの使用は、材料内での過度の温度上昇を防ぎ、それにより、材料が燃えるのを防ぎ、また、材料層の厚さを貫く線量の均一性も高める。複数ヘッドを用いた照射は、2010年10月20日に出願された米国仮特許出願第61/394.851号で開示されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
電子ビームは、例えば、静電発電機、カスケード起電機、変換発生器(transformer generator)、走査システムを持つ低エネルギー加速器、線形陰極を持つ低エネルギー加速器、およびパルス加速器などによって生成させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば、0.5インチ未満、例えば、0.4インチ未満、例えば、0.3インチ、0.2インチ、または0.1インチ未満の原料の比較的薄いパイルに対して有用であり得る。いくつかの実施形態では、電子ビームの各電子のエネルギーは、約0.3MeV〜約2.0MeV(100万電子ボルト)、例えば、約0.5MeV〜約1.5MeV、または約0.7MeV〜約1.25MeVである。
【0120】
電子ビーム照射装置は、ベルギー国ルーヴァン=ラ=ヌーヴ所在のIon Beam Applications、または米国カリフォルニア州サンディエゴ所在のTitan Corporationから市販されている。標準的な電子エネルギーは、1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeV、または10MeVであり得る。標準的な電子ビーム照射装置の出力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kW、または500kWであり得る。原料の脱重合レベルは、使用する電子エネルギーおよび適用する線量に応じて決まり、他方、暴露時間は出力および線量に応じて決まる。標準的な線量は、1kGy、5kGy、kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGy、または200kGyの値をとることができる。
【0121】
電磁放射線
電磁放射線で照射が行われる実施形態では、電磁放射線は、例えば、10eVを超える(例えば、10、10、10、10、または10eVさえも超える)1光子あたりのエネルギー(電子ボルト)をもつことができる。いくつかの実施形態では、電磁放射線は、10〜10の間、例えば、10〜10eVの間の1光子あたりのエネルギーをもつ。電磁放射線は、例えば、1016Hzを超える、1017Hz、1018、1019、1020、またはさらには1021Hzを超える、周波数を有することができる。いくつかの実施形態では、電磁放射線は、1018〜1022Hzの間、例えば、1019〜1021Hzの間の周波数を有する。
【0122】
線量
いくつかの実施形態では、(任意の線源または線源の組合わせでの)照射は、原料が少なくとも0.25Mrad、例えば、少なくとも1.0、2.5、5.0、8.0、10、15、20、25、30、35、40,50またはさらに少なくとも100Mradの線量を受けるまで行われる。いくつかの実施形態では、照射は、原料が1.0Mrad〜6.0Mradの間、例えば、1.5Mrad〜4.0Mradの間、2Mrad〜10Mrad、5Mrad〜20Mrad、10Mrad〜30Mrad、10Mrad〜40Mrad、または20Mrad〜50Mradの線量を受けるまで行われる。
【0123】
いくつかの実施形態では、照射は、5.0〜1500.0キロラド/時の間、例えば10.0〜750.0キロラド/時の間、または50.0〜350.0キロラド/時の間の線量率で行われる。
【0124】
いくつかの実施形態では、2つ以上の電離放射線など、2つ以上の放射線源が使用される。例えば、試料を、任意の順序で、電子ビーム、続いて、ガンマ放射線、および約100nm〜約280nmの波長を有するUV光で処理することができる。いくつかの実施形態では、試料は、例えば、電子ビーム、ガンマ放射線、およびエネルギーUV光など、3つの電離放射線源で処理される。
【0125】
超音波処理、熱分解および酸化
放射線処理に加えて、原料は、超音波処理、熱分解および酸化のうちの任意の1つ以上で処理され得る。これらの処理プロセスは、USSN12/417,840に記載があり、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
可溶化、抵抗性低下、または機能化のための他のプロセス
この段落の任意のプロセスは、本明細書に記載する任意のプロセスなしで単独で、または本明細書に記載する任意のプロセス:蒸気爆発、化学処理(例えば、酸処理(例えば、硫酸、塩酸、およびトリフルオロ酢酸などの有機または酸などの鉱酸での濃酸ならびに希酸処理を含む)および/または塩基処理(例えば、石灰または水酸化ナトリウムでの処理))、UV処理、スクリュー押出し(例えば、2008年11月1817日に出願された、米国特許出願第61/073,530115,398号を参照)、溶媒処理(例えば、イオン性液体)および凍結粉砕(例えば、米国特許出願第61/081,709を参照)、と組み合わせて(任意の順序で)使用できる。
【0127】
〔燃料、酸、エステル、および/または他の産物の生産〕
前述した処理ステップの1つまたは複数がバイオマスに対して行われた後、セルロースおよびヘミセルロースに含有されている複合炭水化物が、前述のように、糖化プロセスを使用して発酵性糖に加工できる。
【0128】
結果として生成された糖液が製造施設に輸送された後、糖は、例えば、エタノールなどのアルコール、または有機酸などの様々な産物に転換できる。得られる産物は、利用する微生物およびバイオ処理が生じる条件によって決まる。これらのステップは、例えば、トウモロコシを原料とするエタノール製造施設の既存の設備を利用して行うことができる。
【0129】
本明細書で説明する混合プロセスおよび機器は、所望であれば、バイオ処理中にも使用され得る。好都合にも、本明細書に記載する混合システムは、液体に対して高せん断を与えず、液体の全体的な温度を著しく上昇させない。結果として、バイオ処理で使用する微生物が、プロセス全体を通して、生きた状態で維持される。混合は、反応速度を高め、処理効率を改善し得る。
【0130】
一般に、発酵は様々な微生物を利用する。リグノセルロース材料の糖化によって生産された糖液は、一般に、グルコースのほかにキシロースも含有する。いくつかの良く使用される微生物(例えば、酵母)は、キシロースに作用しないため、例えば、クロマトグラフィーにより、キシロースを除去するのが望ましい。キシロースは、収集されて、例えば、動物の飼料および甘味料のキシリトールなど、他の産物の製造で利用され得る。キシロースは、糖液の発酵が行われる製造施設への輸送の前または後に除去され得る。
【0131】
微生物は、例えば、本明細書の「原料」の節で説明した任意の微生物など、自然の微生物または操作されている微生物であり得る。
【0132】
酵母に対する最適なpHは、約pH4〜5であり、他方、Zymomonasに対する最適なpHは、約pH5〜6である。標準的な発酵時間は、26℃〜40℃の範囲の温度で、約24〜96時間であるが、好熱性微生物はもっと高温を好む。
【0133】
カルボン酸基は、通常、発酵溶液のpHを低下させ、ピチアスチピチス(Pichia stipitis)など、いくつかの微生物による発酵を抑制する傾向がある。従って、場合によっては、溶液のpHを上げるために、発酵前または発酵中に、塩基および/または緩衝剤を加えることが望ましい。発酵培地のpHを利用する微生物に最適な範囲に引き上げるために、例えば、水酸化ナトリウムまたは石灰を発酵培地に加えることができる。
【0134】
発酵は、通常、水性成長培地で行われ、それは、ビタミンおよび微量元素および金属に加えて、窒素源または、例えば、尿素など、他の供給源を含むことができる。一般に、成長培地は、無菌であるか、または、例えば、細菌数など、少なくとも低微生物負荷であることが好ましい。成長培地の殺菌は、任意の所望の方法で達成し得る。しかし、好ましい実施形態では、殺菌は、成長培地または、混合前に成長培地の個々の構成成分を照射することによって達成される。放射線量は、通常、エネルギー消費および結果として費用を最小限にするため、十分な結果を得ながら、できる限り低くする。例えば、多く場合、成長培地自体または成長培地の構成成分は、5Mrad未満、例えば、4、3、2または1Mrad未満の放射線量で処理できる。特定の場合には、成長培地は、約1〜3Mradの間の線量で処理される。
【0135】
いくつかの実施形態では、発酵プロセスの全てまたは一部は、低分子量の糖がエタノールに完全に転換される前に、中断することができる。中間発酵産物は、高濃度の糖および炭水化物を含有する。これらの中間発酵産物は、食用または飼料用に使用できる。追加または代替として、中間発酵産物は、小麦粉のような材料を生産するために、ステンレス鋼の実験室ミルで微粒子サイズに挽くことができる。
【0136】
場合によっては、タンクは可動式にでき、それについては、米国仮特許出願第60/832,735号、現在は公開国際出願第WO2008/011598号に記載があり、その開示全体が本明細書に組み込まれる。
【0137】
〔後処理〕
発酵後、結果として生じる流体は、例えば、エタノールおよび他のアルコールを大部分の水および残留物から分離するための「ビール円柱(beer column)」を使用して、蒸留できる。ビール円柱から出る蒸気は、例えば、重量で35%のエタノールであり得、精留円柱に供給できる。ほぼ共沸(92.5%)のエタノールおよび精留円柱からの水の混合物は、気相分子篩を用いて純粋な(99.5%)エタノールに精製できる。ビール円柱の底面は、3作用の蒸発装置の第1の作用に放出することができる。第1の作用の後、固体が遠心分離機を使用して分離され、回転式乾燥機で乾燥することができる。遠心分離機廃水の一部(25%)は、発酵用に再利用でき、残りが第2および第3の蒸発装置の作用に送られる。蒸発かん凝縮液のほとんどは、低沸点成分の沸騰を防ぐために、ごく一部が廃水処理に分離された、かなりきれいな凝縮物として、プロセスに戻すことができる。
【0138】
〔中間物および産物〕
本明細書に記載のプロセスを使用して、処理されたバイオマスは、エネルギー、燃料、食品、および原料など、1つまたは複数の産物に転換できる。産物の具体例には、水素、アルコール(例えば、一価アルコールまたは、エタノールなどの二価アルコール、n−プロパノールまたはn−ブタノール)、例えば、10%、20%、30%を超えるか、またはさらに40%を超える水を含む、水和または含水アルコール、キシリトール、糖、バイオディーゼル、有機酸(例えば、酢酸および/または乳酸)、炭化水素、副産物(例えば、セルロース分解性タンパク質(酵素)または単細胞タンパク質などのタンパク質)、およびこれらの任意の組合わせまたは相対濃度の混合物、ならびに随意に、例えば、燃料添加剤など、任意の添加剤との組合わせを含むが、これらに限定されない。他の例には、酢酸または酪酸などのカルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸およびカルボン酸塩およびカルボン酸エステルの混合物(例えば、メチル、エチルおよびn−プロピルエステル)、ケトン(例えば、アセトン)、アルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)、アクリル酸などの、α、β不飽和酸およびエチレンなどのオレフィンを含む。他のアルコールおよびアルコール誘導体には、プロパノール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、これらいずれかのアルコールのメチルまたはエチルエステルを含む。他の産物には、アクリル酸メチル、メチルメタクリル酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、これらいずれかの酸の塩およびこれらいずれかの酸とその塩の混合物を含む。
【0139】
食品および調剤製品を含め、他の中間物および産物については、米国特許第12/417,900号に記載されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
〔他の実施形態〕
いくつかの実施形態について説明してきた。しかしながら、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正をなし得ることが理解されるであろう。
【0141】
いくつかの実施態様では、本明細書で説明するシステム、またはこれらシステムの構成要素は、例えば、可動式処理装置のように、可搬式であり得、その可動式処理装置については、米国特許第12/374,549号および国際出願第WO 2008/011598号に記載されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0142】
本明細書に記載のいずれかの分散システムで、その分散システムを通る流体(液体および/または気体)の流れは、連続的もしくパルス状、またはパルス状区間を持つ連続的流れの周期であり得る。流れがパルス状の場合、パルスは規則的または不規則であり得る。
【0143】
本明細書ではタンクが言及されているが、プロセスは、潟、プール、池または同様のものを含め、任意の種類の容器または入れ物内で行い得る。混合が行われる容器が、潟などの地面内の構造で行われる場合、それは内側が覆われ得る。容器は、例えば、戸外の場合、覆われるか、または覆われない。
【0144】
本明細書でバイオマス原料について説明してきたが、他の原料およびバイオマス原料と他の原料の混合物が使用され得る。例えば、いくつかの実施態様は、バイオマス原料と炭化水素を含有する原料との混合物を利用し得、それらについては、2009年7月20日に出願された米国仮特許出願第61/226,877号に記載されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
それ故、他の実施形態は、次の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも15%の濃度を有する糖液を形成するために、バイオマス原料を容器内の液体培地で糖化することと、同一の容器内で、酵素および/または微生物を利用して、前記糖液を産物に転換することを含む方法。
【請求項2】
転換が発酵を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
転換が蒸留をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
蒸留が減圧蒸留を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
蒸留が70トル未満の減圧で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
蒸留が外気温で行われる、請求項3〜請求項5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記産物がアルコールを含む、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記原料が約0.5g/cm未満の嵩密度を有する、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記液体培地が水を含む、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記糖化剤が酵素を含む、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
糖化中にジェットミキサーでの混合をさらに含む、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
糖化中に、前記原料、前記液体培地および前記糖化剤の混合物のグルコースレベルをモニタリングすることをさらに含む、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
糖化中に追加の原料および糖化剤を前記容器に追加すること、ならびに前記分散システムを使用して前記培地内の前記原料を分散することをさらに含む、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記容器がタンクを含む、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記原料がセルロースまたはリグノセルロース材料を含む、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記原料が紙を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
乳化剤または界面活性剤を前記容器内の前記混合物に加えることをさらに含む、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
蒸留中に、混合をさらに含む、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項19】
蒸留中の混合が、ジェットミキサーを使用して行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
タンクと、
バイオマス原料、糖化剤、および液体培地を前記タンクに送達するように構成された送達システムと、
前記送達されたバイオマス原料および糖化剤を混合するように構成されたミキサーと、
前記タンクの前記内容物から産物を蒸留するように構成された、前記タンクと結合されている減圧蒸留システムとを備えるシステム。
【請求項21】
前記タンクの前記内容物に微生物を接種するように構成された送達装置をさらに含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記タンクの前記内容物の前記酸素レベルをモニタリングするように構成された酸素モニターをさらに含む、請求項20または請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記ミキサーがジェットミキサーを含む、請求項20〜請求項22のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項24】
前記送達システムが、前記バイオマス原料および液体培地を前記タンクに分散の形で送達するように構成されている、請求項20〜請求項22のいずれか1つに記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図11A】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−516998(P2013−516998A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549990(P2012−549990)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/057272
【国際公開番号】WO2011/090544
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512175199)ザイレコ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】