説明

バイオマス含有樹脂組成物

【課題】ポリオレフィン樹脂とバイオマス由来の粉末を含有してなる親和性に優れる樹脂組成物、および該組成物を成形してなり、機械物性に優れ、廃棄した場合でも環境への負荷が少ない成形品を提供する。
【解決手段】 数平均分子量800〜50,000のポリオレフィン、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)および炭素数6〜36のα−オレフィンを含有し、スチレンもしくはスチレン誘導体を含有しない共重合成分をラジカル開始剤の存在下で共重合させてなる分散剤(A)、およびポリオレフィン樹脂(B)、バイオマス由来の粉末(C)を含有してなる樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス含有樹脂組成物に関する。さらに詳しくは機械物性に優れ、かつ廃棄時には環境にやさしい成形品を与えるバイオマス含有樹脂組成物に関する。なお、本発明においてバイオマスとは生物資源を意味するものとする。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は代表的なプラスチックとして従来、軽量、高強度および成形の容易さ等から各種用途に幅広く大量に使用されている。
しかしながら、その結果として増大したプラスチック廃棄物のために、環境汚染等が問題となっている。耐用年数が過ぎた廃棄プラスチックの処分方法としては焼却、埋立等が挙げられるが、これらの処分方法には以下のような問題がある。すなわち、焼却方法ではプラスチックは燃焼カロリーが高く焼却炉を傷めやすいこと、焼却に伴い地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出が避けられないこと等、また、埋立方法ではプラスチックが安定で土壌中でも生分解されることなく残存し続けるため、埋立地が不足すること等、多くの問題がある。
そこで、焼却方法における実質的な二酸化炭素の排出量を低減し、埋立方法における生分解を促進する方策として、ポリオレフィン樹脂とバイオマス由来の粉末(木質繊維、木粉等)を含有する樹脂組成物が開示されている(例えば特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−269254号公報
【特許文献2】特開平9−286880号公報
【特許文献3】特開平10−130437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記のような樹脂組成物の場合、ポリオレフィン樹脂とバイオマス由来の粉末との親和性が不十分なため、該樹脂組成物を成形してなる成形品の耐衝撃性等の機械物性の点で問題があった。
本発明の目的は、ポリオレフィン樹脂とバイオマス由来の粉末を含有してなる親和性に優れる樹脂組成物、および該組成物を成形してなり、機械物性に優れ、廃棄した場合でも環境への負荷が少ない成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、数平均分子量800〜50,000のポリオレフィン(a)、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(b)および炭素数6〜36のα−オレフィン(c)を含有し、スチレンもしくはスチレン誘導体を含有しない共重合成分をラジカル開始剤(d)の存在下で共重合させてなる分散剤(A)、およびポリオレフィン樹脂(B)、バイオマス由来の粉末(C)を含有してなるバイオマス含有樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物は下記の効果を奏する。
(1)構成成分のポリオレフィン樹脂とバイオマスとの親和性が良好である。
(2)得られる成形品は、耐衝撃性等の機械物性に優れる。
(3)該成形品は、廃棄に際し環境負荷が少ない環境調和型である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[ポリオレフィン(a)]
本発明におけるポリオレフィン(a)には、オレフィンの1種または2種以上の(共)重合体、並びにオレフィンの1種または2種以上と他の単量体の1種または2種以上との共重合体が含まれる。
上記オレフィンには、炭素数(以下、Cと略記)2〜30のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、1−および2−ブテン、およびイソブテン、並びにC5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン等);他の単量体には、オレフィンとの共重合性を有するC4〜30の不飽和単量体、例えば酢酸ビニルが含まれる。
【0008】
(a)の具体例には、エチレン単位含有(プロピレン単位非含有)(共)重合体、例えば高、中、および低密度ポリエチレン、およびエチレンとC4〜30の不飽和単量体[ブテン(1−ブテン等)、C5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、1−ドデセン等)、酢酸ビニル等]との共重合体[重量比は樹脂組成物の成形性および(a)の分子中の二重結合数の観点から好ましくは30/70〜99/1、さらに好ましくは50/50〜95/5)等;プロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体、例えばポリプロピレン、プロピレンとC4〜30の不飽和単量体(前記に同じ)との共重合体[重量比は(a)の分子中の二重結合数および樹脂組成物の成形性の観点から、好ましくは30/70〜99/1、さらに好ましくは50/50〜95/5];エチレン/プロピレン共重合体[重量比は樹脂組成物の成形性および(a)の分子中の二重結合数の観点から、好ましくは0.5/99.5〜30/70、さらに好ましくは2/98〜20/80];C4以上のオレフィンの(共)重合体、例えばポリブテンが含まれる。
これらのうち、後述する不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(b)およびC6〜36のα−オレフィン(c)との共重合性の観点から好ましいのはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/C4〜30の不飽和単量体共重合体、さらに好ましいのはエチレン/プロピレン共重合体である。
【0009】
(a)の数平均分子量[以下、Mnと略記。測定は後述のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による]は、800〜50,000、好ましくは1,000〜45,000である。Mnが800未満では、後述する成形品(以下単に成形品ということがある)の機械物性が悪化し、50,000を超えると(A)の生産性が低下し、また(A)の高粘度化で(A)が有する、後述のバイオマス由来の粉末(C)のポリオレフィン樹脂(B)への分散性向上機能(以下分散性能と略記することがある)が悪くなる。
【0010】
本発明におけるGPCによるMnの測定条件は以下のとおりである。
装置 :高温ゲルパーミエイションクロマトグラフィー
[「Alliance GPC V2000」、Waters(株)製]
溶媒 :オルトジクロロベンゼン
基準物質 :ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm MIXED−B[ポリマーラボラトリーズ(株)
製]を2本直列に接続
カラム温度 :135℃
【0011】
(a)は、後述の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(b)およびC6〜36のα−オレフィン(c)との共重合性の観点から分子鎖中および/または分子末端に二重結合を有することが好ましい。
(a)の炭素1,000個当たりの二重結合数は、(a)と、(b)、(c)との共重合性および(A)の生産性の観点から好ましくは0.1〜20個、さらに好ましくは0.3〜18個、とくに好ましくは0.5〜15個である。
ここにおいて該二重結合数は、(a)の1H−NMR(核磁気共鳴)分光法のスペクトルから求めることができる。すなわち、該スペクトル中のピークを帰属し、(a)の4.5〜6ppmにおける二重結合由来の積分値および(a)由来の積分値から、(a)の二重結合数と(a)の炭素数の相対値を求め、(a)の炭素1,000個当たりの該分子末端および/または分子鎖中の二重結合数を算出する。後述の実施例における二重結合数は該方法に従った。
【0012】
ポリオレフィン(a)の製造方法には、重合法(例えば特開昭59−206409号公報に記載のもの)および減成法[熱的、化学的および機械的減成法等、これらのうち熱的減成法(以下において熱減成法ということがある)としては、例えば特公昭43−9368号公報、特公昭44−29742号公報、特公平6−70094号公報に記載のもの]が含まれる。
【0013】
重合法には前記オレフィンの1種または2種以上を(共)重合させる方法、およびオレフィンの1種または2種以上と他の単量体の1種または2種以上を共重合させる方法が含まれる。
【0014】
減成法には、前記重合法で得られる高分子量[好ましくはMnが30,000〜400,000、さらに好ましくは50,000〜200,000]のポリオレフィン(a0)を熱的、化学的または機械的に減成する方法が含まれる。
【0015】
熱減成法には、前記高分子量のポリオレフィン(a0)を窒素通気下で、(1)有機過酸化物不存在下、通常300〜450℃で0.5〜10時間、熱減成する方法、および(2)有機過酸化物存在下、通常180〜300℃で0.5〜10時間、熱減成する方法等が含まれる。
これらのうち得られるポリオレフィン(a)の、(b)、(c)との共重合性の観点から好ましいのは、分子鎖中および/または分子末端の二重結合数のより多いものが得られやすい(1)の方法である。
【0016】
これらの(a)の製造方法のうち、分子鎖中および/または分子末端の二重結合数のより多いものが得られやすく、(a)と、(b)、(c)との共重合が容易であるとの観点から好ましいのは減成法、さらに好ましいのは熱減成法である。
【0017】
[不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(b)]
本発明における不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(b)は、重合性不飽和基を1個有するC3〜30の(ポリ)カルボン酸(無水物)である。なお、本発明において不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)は、不飽和モノカルボン酸、不飽和ポリカルボン酸および/または不飽和ポリカルボン酸無水物を意味する。
該(b)のうち、不飽和モノカルボン酸としては、脂肪族(C3〜24、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸)、脂環含有(C6〜24、例えばシクロヘキセンカルボン酸);不飽和ポリ(2〜3またはそれ以上)カルボン酸(無水物)としては、不飽和ジカルボン酸(無水物)[脂肪族ジカルボン酸(無水物)(C4〜24、例えばマレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、およびこれらの無水物)、脂環含有ジカルボン酸(無水物)(C8〜24、例えばシクロへキセンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸、ビシクロヘプテンジカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸、およびこれらの無水物)等]等が挙げられる。(b)は1種単独でも、2種以上を併用してもいずれでもよい。
これらのうち後述するC6〜36のα−オレフィン(c)との共重合性の観点から好ましいのは不飽和ジカルボン酸(無水物)、さらに好ましいのは不飽和ジカルボン酸無水物、とくに好ましいのは無水マレイン酸である。
【0018】
[C6〜36のα−オレフィン(c)]
本発明におけるα−オレフィン(c)には、C6〜36、好ましくはC8〜30の、直鎖α−オレフィンおよび分岐鎖を有するα−オレフィンが含まれる。(c)のCが6未満では後述する成形品の機械物性が低下し、36を超えると、(A)が有する、後述のバイオマス由来の粉末(C)のポリオレフィン樹脂(B)への分散性向上機能[(A)の分散性能]が悪くなる。
(c)のうち直鎖α−オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
また、分岐鎖を有するα−オレフィンとしては、プロピレン三量体、プロピレン四量体およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらのうち前記(a)、(b)との共重合性の観点から好ましいのは直鎖α−オレフィン、さらに好ましいのは1−デセンである。
【0019】
(a)、(b)、(c)の合計重量に基づく各成分の含有量は、(a)は(A)の生産性および(A)の分散性能の観点から好ましくは30〜98%、さらに好ましくは40〜90%;(b)は(A)の分散性能および(A)の生産性の観点から好ましくは0.03〜40%、さらに好ましくは0.5〜35%;(c)は(A)の生産性および(A)の分散性能の観点から好ましくは0.6〜65%、さらに好ましくは1〜50%である。
【0020】
[ラジカル開始剤(d)]
本発明における(a)、(b)および(c)は、ラジカル開始剤(d)の存在下で共重合させる。
(d)としては、例えばアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等)、過酸化物〔単官能(分子内にパーオキシド基を1個有するもの)(ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等)および多官能(分子内にパーオキシド基を2個以上有するもの)[2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジアリルパーオキシジカーボネート等]〕等が挙げられる。
【0021】
これらのうち(a)、(b)および(c)の共重合性、および副反応である(a)の水素引き抜き反応による(a)の架橋の抑制の観点から好ましいのはアゾ化合物、さらに好ましいのは1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、とくに好ましいのは1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)である。
(d)としてアゾ化合物を用いた場合は、(a)の水素引き抜き反応が起こりにくく、(a)の架橋が抑制され、架橋体の(A)が生成しにくい。その結果、後述のポリオレフィン樹脂(B)との親和性が増し、(A)の分散性能がより有効に発揮されて成形品の機械物性がさらに向上する。
【0022】
(d)の使用量は、反応性および副反応抑制の観点から、(a)、(b)および(c)の合計重量に基づいて好ましくは0.05〜10%、さらに好ましくは0.2〜5%、とくに好ましくは0.5〜3%である。
【0023】
[分散剤(A)]
本発明の分散剤(A)は、ラジカル開始剤(d)の存在下で、Mn800〜50,000のポリオレフィン(a)、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(b)およびC6〜36のα−オレフィン(c)を含有し、スチレンもしくはスチレン誘導体を含有しない共重合成分を共重合させてなる。
【0024】
分散剤(A)を構成する共重合成分にはスチレンもしくはスチレン誘導体は含まれない。共重合成分にスチレンもしくはスチレン誘導体を含む場合、(A)の分散性能が劣るものとなる。
該スチレン誘導体にはC9〜15のもの、例えばα−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、m−ブチルスチレン等が含まれる。
【0025】
(A)の具体的な製造方法には、以下の[1]、[2]の方法が含まれる。
[1](a)、(b)および(c)を適当な有機溶媒[C3〜18、例えば炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(ジ−、トリ−およびテトラクロロエタン、ジクロロブタン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジ−t−ブチルケトン等)、エーテル(エチル−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、ジオキサン等)]に懸濁あるいは溶解させ、これに(d)[もしくは(d)を適当な有機溶媒(上記に同じ)に溶解させた溶液]、および必要により後述の連鎖移動剤(t)を加えて加熱撹拌する方法(溶液法);
[2](a)、(b)、(c)および(d)、および必要により(t)を予め混合し、押出機、バンバリーミキサー、ニーダ等を用いて溶融混練する方法(溶融法)。
【0026】
溶液法での反応温度は、(a)が有機溶媒に溶解する温度であればよく、(A)の生産性および(a)、(b)、(c)の反応制御の観点から好ましくは50〜220℃、さらに好ましくは110〜210℃、とくに好ましくは120〜180℃である。
【0027】
また、溶融法での反応温度は、(a)が溶融する温度であればよく、(a)、(b)および(c)の共重合性および反応生成物の分解温度の観点から好ましくは120〜260℃、さらに好ましくは130〜240℃である。
【0028】
前記連鎖移動剤(t)としては、芳香族炭化水素(C6〜24、例えば(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等);ハロゲン炭化水素(C1〜24、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン);アルコール(C1〜24、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−ブタノール、アリルアルコール);チオール(C1〜24、例えばエチルチオール、プロピルチオール、1−および2−ブチルチオール、1−オクチルチオール);ケトン(C3〜24、例えばアセトン、メチルエチルケトン);アルデヒド(C2〜18、例えば2−メチル−2−プロピルアルデヒド、1−および2−ブチルアルデヒド、1−ペンチルアルデヒド);フェノール(C6〜36、例えばフェノール、o−、m−およびp−クレゾール);アミン(C3〜24、例えばジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ジフェニルアミン);ジスルフィド(C2〜24、例えばジエチルジスルフィド、ジ−1−プロピルジスルフィド)等が挙げられる。
(t)の使用量は、(a)、(b)および(c)の合計重量に基づいて通常30%以下、(a)、(b)、(c)の生産性および後述する成形品の機械物性の観点から好ましくは0.1〜20%である。
【0029】
分散剤(A)のMnは、後述する成形品の機械物性および樹脂組成物の成形性の観点から好ましくは1,500〜70,000、さらに好ましくは2,000〜60,000、とくに好ましくは2,500〜50,000である。
【0030】
(A)の酸価は、(A)の分散性能および(A)の生産性の観点から好ましくは0.5〜200mgKOH/g(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは1〜180である。ここにおける酸価はJIS K0070に準じて、以下の(i)〜(iii)の手順で測定して得られる値である。
(i)100℃に温度調整したキシレン100gに(A)1gを溶解させる。
(ii)フェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液[商品名「0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液」、和光純薬(株)製]で滴定を行う。
(iii)滴定に要した水酸化カリウム量をmgに換算して酸価(単位:mgKOH/g)を算出する。
【0031】
[ポリオレフィン樹脂(B)]
本発明におけるポリオレフィン樹脂(B)には、前記(a)の製造方法として例示した重合法で得られるもの、または高分子量(好ましくはMn80,000〜400,000)ポリオレフィンの減成(熱的、化学的および機械的減成)法で得られるものが含まれ、該(B)には、前記例示のエチレン単位含有(プロピレン単位非含有)(共)重合体、プロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体、エチレン/プロピレン共重合体およびC4以上のオレフィンの(共)重合体等が含まれる。
【0032】
本発明における(A)と(B)の組合せとしては、(B)の構成単位と(A)を構成するポリオレフィン(a)の構成単位が同じか類似している場合が(A)と(B)との相溶性の観点から好ましい。例えば、(B)がプロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体である場合は、(A)を構成する(a)もプロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体である場合が好ましい。
【0033】
(B)のMnは、後述する成形品の機械物性および(A)との混和性の観点から好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは20,000〜400,000である。
【0034】
[バイオマス由来の粉末(C)]
バイオマスには、植物バイオマス(木材、竹、米、稲わら、麦わら、籾殻、バガス、椰子殻繊維、笹、葦、ケナフ、コットンリンター、木材パルプ、バナナ繊維、サトウキビ繊維等)、および動物バイオマス(甲殻類の外骨格、キトサン、キチン等)が含まれる。
これらのうち、(C)の生産性の観点から、好ましいのは植物バイオマス、さらに好ましいのは木材である。
(C)はバイオマスを粉砕し粉末化して得られる。
(C)の体積平均粒子径は、(C)の生産性および成形品の機械物性の観点から好ましくは1μm〜3mm、さらに好ましくは20μm〜1mm、とくに好ましくは50μm〜500μmである。体積平均粒子径はレーザー回折散乱法により求められ、測定装置としては、粒度分布測定器[商品名「マイクロトラックMT3000II 粒度分析計」、日機装(株)製]等が挙げられる。
【0035】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は分散剤(A)、およびポリオレフィン樹脂(B)、バイオマス由来の粉末(C)を含有してなる。
該樹脂組成物において、(A)、(B)、(C)の合計重量に基づく各成分の割合は、(A)は、(C)の(B)への分散性および成形品の機械物性の観点から好ましくは0.5〜15%、さらに好ましくは0.7〜12%、とくに好ましくは1〜10%;(B)は、成形品の機械物性および生分解性の観点から好ましくは5〜90%、さらに好ましくは10〜85%、とくに好ましくは15〜80%;(C)は、成形品の生分解性および機械物性の観点から好ましくは5〜85%、さらに好ましくは10〜80%、とくに好ましくは15〜75%である。
樹脂組成物における(B)と(C)の重量比[(B)/(C)]は、成形品の機械物性および生分解性の観点から好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは20/80〜80/20、とくに好ましくは30/70〜70/30である。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに種々の添加剤(D)を含有させることができる。
(D)としては、着色剤(D1)、難燃剤(D2)、充填剤(D3)、滑剤(D4)、帯電防止剤(D5)、酸化防止剤(D6)および紫外線吸収剤(D7)からなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0037】
着色剤(D1)としては顔料および染料が挙げられる。
顔料としては、無機顔料(アルミナホワイト、グラファイト等)、有機顔料(アゾレーキ系等);染料としては、アゾ系、アントラキノン系等が挙げられる。
【0038】
難燃剤(D2)としては、有機難燃剤〔含窒素化合物[尿素化合物、グアニジン化合物等の塩等]、含硫黄化合物[硫酸エステル、スルファミン酸、およびそれらの塩、エステル、アミド等]、含珪素化合物[ポリオルガノシロキサン等]、含リン系[リン酸エステル等]等〕;無機難燃剤〔三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニム等〕等が挙げられる。
【0039】
充填剤(D3)としては、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、硫酸塩(硫酸アルミニウム等)、亜硫酸塩(亜硫酸カルシウム等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、珪酸塩(珪酸アルミニウム等)、珪藻土、珪石粉、タルク、シリカ、ゼオライト、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
滑剤(D4)としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)等が挙げられる。
【0041】
帯電防止剤(D5)としては、低分子型帯電防止剤(米国特許第3,929,678および4,331,447号明細書に記載の、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性の界面活性剤等)、および高分子型永久帯電防止剤(ポリオレフィンとポリオキシアルキレングリコールのブロック共重合体、ポリアミドとポリオキシアルキレングリコールのブロック共重合体等)が挙げられる。
【0042】
酸化防止剤(D6)としては、ヒンダードフェノール化合物[p−t−アミルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHA)、6−t−ブチル−2,4,−メチルフェノール(24M6B)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(26B)等];含イオウ化合物[N,N’−ジフェニルチオウレア、ジミリスチルチオジプロピオネート等];含リン化合物[2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスホネート等]等が挙げられる。
【0043】
紫外線吸収剤(D7)としては、サリチレート化合物[フェニルサリチレート等];ベンゾフェノン化合物[2,4−ジヒドロキシゼンゾフェノン等];ベンゾトリアゾール化合物[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等]等が挙げられる。
【0044】
樹脂組成物中の(D)全体の含有量は、該組成物の全重量に基づいて、通常20%以下、各(D)の機能発現および工業上の観点から好ましくは0.05〜10%、さらに好ましくは0.1〜5%である。
該組成物の全重量に基づく各添加剤の使用量は、(D1)は通常5%以下、好ましくは0.1〜3%;(D2)は通常8%以下、好ましくは1〜3%;(D3)は通常5%以下、好ましくは0.1〜1%;(D4)は通常8%以下、好ましくは1〜5%;(D5)は通常25%以下、好ましくは1〜20%;(D6)は通常2%以下、好ましくは0.05〜0.5%;(D7)は通常2%以下、好ましくは0.05〜0.5%である。
【0045】
上記(D1)〜(D7)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量の他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0046】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、(1)前記(A)、(B)、(C)および必要により添加剤(D)を一括混合して樹脂組成物とする方法(一括法);
(2)(B)の一部、(A)の全量、および必要により(D)の一部もしくは全量を混合して高濃度の(A)を含有するマスターバッチポリオレフィン樹脂組成物を一旦作成し、その後残りの(B)、(C)および必要により(D)の残りを加えて混合して樹脂組成物とする方法(マスターバッチ法)が含まれる。
(A)の混合効率の観点から好ましいのは(2)の方法である。
【0047】
前記の樹脂組成物の製造方法における具体的な混合方法としては、
(i)混合する各成分を、例えば粉体混合機〔「ヘンシェルミキサー」[商品名「ヘンシェルミキサーFM150L/B」、三井鉱山(株)製]、「ナウターミキサー」[商品名「ナウターミキサーDBX3000RX」、ホソカワミクロン(株)製]、「バンバリーミキサー」[商品名「MIXTRON BB−16MIXER」、(株)神戸製鋼所製]等〕で混合した後、溶融混練装置[バッチ混練機、連続混練機(単軸混練機、二軸混練機等)等]を使用して通常120〜220℃で0.5〜30分間混練する方法;
(ii)混合する各成分をあらかじめ粉体混合することなく、上記と同様の溶融混練装置を使用して同様の条件で直接混練する方法が挙げられる。
これらの方法のうち混合効率の観点から(i)の方法が好ましい。
【0048】
[成形品]
本発明の成形品は、前記樹脂組成物を成形してなる。
成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形あるいは発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。成形品の形態としては、ブロック状、板状、シート状、フィルム等が挙げられる。
【0049】
本発明の成形品は、優れた機械物性を有すると共に、良好な塗装性および印刷性を有し、成形品に塗装および/または印刷を施すことにより成形物品が得られる。
該成形品を塗装する方法としては、例えばエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、浸漬塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗料としては、例えば、ポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチックの塗装に一般に用いられる塗料が挙げられる。
塗装膜厚(乾燥膜厚)は、目的に応じて適宜選択することができるが通常10〜50μmである。
【0050】
また、該成形品または成形品に塗装を施した上にさらに印刷する方法としては、一般的にプラスチックの印刷に用いられている印刷法であればいずれも用いることができ、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、ドライオフセット印刷およびオフセット印刷等が挙げられる。
印刷インキとしてはプラスチックの印刷に通常用いられるもの、例えばグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、パッドインキ、ドライオフセットインキおよびオフセットインキが使用できる。
【実施例】
【0051】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、モル%以外の%は重量%を表す。
【0052】
製造例1
反応容器に、プロピレン98モル%およびエチレン2モル%を構成単位とするポリオレフィン(a0−1)[商品名「サンアロマーPZA20A」、サンアロマー(株)製、Mn100,000、以下同じ。]100部を窒素雰囲気下に仕込み、気相部分に窒素を通気しながらマントルヒーターにて加熱溶融させ、撹拌しながら360℃で70分間熱減成を行い、ポリオレフィン(a−1)を得た。(a−1)は、炭素1,000個当たりの二重結合数は7.2個、Mnは3,000であった。
【0053】
製造例2
製造例1において、熱減成時間を70分間から100分間に変えたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン(a−2)を得た。(a−2)は、炭素1,000個当たりの二重結合数は18個、Mnは1,200であった。
【0054】
製造例3
製造例1において、熱減成時間を70分間から20分間に変えたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン(a−3)を得た。(a−3)は、炭素1,000個当たりの二重結合数は0.3個、Mnは45,000であった。
【0055】
製造例4
製造例1において、ポリオレフィン(a0−1)100部に代えて、プロピレン80モル%、1−ブテン20モル%を構成単位とするポリオレフィン(a0−2)[商品名「タフマーXM−7080」、三井化学(株)製、Mn90,000、以下同じ。]100部を用いたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン(a−4)を得た。(a−4)は、炭素1,000個当たりの二重結合数は7.2個、Mnは3,000であった。
【0056】
比較製造例1
製造例1において、熱減成時間を70分間から120分間に変えたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン(比a−1)を得た。(比a−1)は、炭素1,000個当たりの二重結合数は36個、Mnは600であった。
【0057】
比較製造例2
製造例1において、熱減成時間を70分間から10分間に変えたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン(比a−2)を得た。(比a−2)は、炭素1,000個当たりの二重結合数は0.04個、Mnは65,000であった。
【0058】
製造例5
反応容器に(a−1)100部、無水マレイン酸(b−1)24部、1−デセン(c−1)18.5部、およびキシレン100部を仕込み、窒素置換後、窒素通気下に120℃まで加熱昇温して均一に溶解させた。ここに1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル[商品名「V−40」、和光純薬工業(株)製]0.5部をキシレン10部に溶解させた溶液を10分間で滴下した後、キシレン還流下3時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレンおよび未反応の無水マレイン酸を留去して分散剤(A−1)を得た。(A−1)は、酸価は95、Mnは4,500であった。
【0059】
製造例6
製造例5において、(a−1)100部、(b−1)24部、(c−1)18.5部に代えて、(a−2)100部、(b−1)100部、(c−1)85.7部を用いたこと以外は製造例5と同様に行い、分散剤(A−2)を得た。(A−2)は、酸価は200、Mnは3,500であった。
【0060】
製造例7
製造例5において、(a−1)100部、(b−1)24部、(c−1)18.5部に代えて、(a−3)100部、(b−1)1部、(c−1)2部を用いたこと以外は製造例5と同様に行い、分散剤(A−3)を得た。(A−3)は、酸価は6、Mnは45,000であった。
【0061】
製造例8
製造例5において、(a−1)100部に代えて、(a−4)100部を用いたこと以外は製造例5と同様に行い、分散剤(A−4)を得た。(A−4)は、酸価は95、Mnは4,500であった。
【0062】
製造例9
製造例5において、(b−1)24部に代えて、イタコン酸(b−2)[商品名「イタコン酸」、扶桑化学工業(株)製]31.8部を用いたこと以外は製造例5と同様に行い、分散剤(A−5)を得た。(A−5)は、酸価は180、Mnは4,500であった。
【0063】
製造例10
製造例5において、(c−1)18.5部に代えて、1−ヘキセン(c−2)3.8部を用いたこと以外は製造例5と同様に行い、分散剤(A−6)を得た。(A−6)は、酸価は108、Mnは4,300であった。
【0064】
製造例11
製造例5において、(b−1)24部、(c−1)18.5部に代えて、(b−1)33部、1−ヘキサトリアコンテン(C36のα−オレフィン)(c−3)200部を用いたこと以外は製造例5と同様に行い、分散剤(A−7)を得た。(A−7)は、酸価は57、Mnは6,500であった。
【0065】
製造例12
製造例5において、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル0.5部に代えて、ジクミルパーオキサイド[商品名「パークミルD」、日油(株)製]0.5部を用いたこと以外は製造例5と同様に行い、分散剤(A−8)を得た。(A−8)は、酸価は95、Mnは5,000であった。
【0066】
製造例13
製造例5において、(a−1)100部、(b−1)24部、(c−1)18.5部に代えて、(a−2)100部、アクリル酸(b−3)15部、(c−2)8.7部を用いたこと以外は製造例5と同様に行い、分散剤(A−9)を得た。(A−9)は、酸価95、Mn4,500であった。
【0067】
比較製造例3
製造例5において、(b−1)24部、(c−1)18.5部に代えて、(b−1)11部を使用し、(c−1)を使用しなかったこと以外は、製造例5と同様に行い分散剤(比A−1)を得た。(比A−1)は、酸価は50、Mnは3,500であった。
【0068】
比較製造例4
製造例5において、(a−1)100部、(b−1)24部、(c−1)18.5部に代えて、(比a−1)100部、(b−1)40部、(c−1)60部を用いたこと以外は、製造例5と同様に行い、分散剤(比A−2)を得た。(比A−2)は、酸価は114、Mnは1,000であった。
【0069】
比較製造例5
製造例5において、(a−1)100部、(b−1)24部、(c−1)18.5部に代えて、(比a−2)100部、(b−1)5.5部、(c−1)5.5部を用いたこと以外は、製造例5と同様に行い、分散剤(比A−3)を得た。(比A−3)は、酸価は28、Mnは67,000であった。
【0070】
比較製造例6
製造例5において、(b−1)24部、(c−1)18.5部に代えて、(b−1)27部、1−ブテン(c−4)7部を用いたこと以外は、製造例5と同様に行い、分散剤(比A−4)を得た。(比A−4)は、酸価は115、Mnは3,500であった。
【0071】
比較製造例7
製造例5において、(c−1)18.5部に代えて、1−ペンタコンテン(C50のα−オレフィン)(c−5)120部を用いたこと以外は、製造例5と同様に行い、分散剤(比A−5)を得た。(比A−5)は、酸価は57、Mnは3,000であった。
【0072】
実施例1〜14、比較例1〜10
前記得られた分散剤、および下記の使用原料[ポリオレフィン樹脂(B)、バイオマス由来の粉末(C)]を、表1の配合組成(部)に従って、それぞれヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練してバイオマス含有樹脂組成物を得た。各樹脂組成物について射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度190℃、金型温度60℃で成形し、所定の試験片を作成後、後述の評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0073】
<使用原料>
ポリオレフィン樹脂(B)
(B−1):市販のポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製、Mn300,000]
(B−2):市販のポリエチレン[商品名「ノバテックHJ490」、日本ポリエチレン(株)製、Mn300,000]
(B−3):市販のエチレン/プロピレン共重合体[商品名「サンアロマーPB222A」、サンアロマー(株)製、Mn350,000]
【0074】
バイオマス由来の粉末(C)
(C−1):木粉[商品名「セルユント」、島田商会(株)製、体積平均粒子径80μm]
(C−2):木粉[商品名「スーパーフィーダー♯100」、三共精粉(株)製、体積平均粒子径150μm]
(C−3):キトサン粉末[商品名「SK−10」、甲陽ケミカル(株)製、フレーク状、以下同じ。]を防音ケース付き高速衝撃式粉砕機[商品名「MIKRO−PULVERIZER」、型番「AP−BL」、ホソカワミクロン(株)製、以下高速ハンマーミルと略記する]を用いて粉砕し、体積平均粒子径500μmに調整したもの。
(C−4):キトサン粉末を高速ハンマーミルを用いて粉砕し、体積平均粒子径60μmに調整したもの。
【0075】
<評価方法>
(1)耐衝撃性(単位:kJ/m2
シャルピー衝撃値をASTM D6110に準拠して測定した。
(2)ポリオレフィン樹脂(B)とバイオマス由来の粉末(C)の親和性
上記(1)の試験後の試験片の破断面を観察し、(B)と(C)の親和性を以下の基準で評価した。
◎ (B)/(C)間に界面剥離なし
○ (B)/(C)間に界面剥離があるがごく一部
△ (B)/(C)間に界面剥離がやや多い
× (B)/(C)間に界面剥離が多い
(3)曲げ弾性率(単位:MPa)
ASTM D790に準拠して測定した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1の結果から、本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、比較のものに比べ、ポリオレフィン(B)とバイオマス由来の粉末(C)との親和性が良好であり、該組成物を成形してなる成形品は、比較のものに比べ機械物性(耐衝撃性、曲げ弾性)に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、構成成分の親和性が良好で成形性に優れ、得られる成形品は機械物性に優れ、廃棄時の環境負荷が少ない環境調和型であることから、電気・電子機器用、搬送材用、生活資材用および建材用等の分野に幅広く好適に適用することができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量800〜50,000のポリオレフィン(a)、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(b)および炭素数6〜36のα−オレフィン(c)を含有し、スチレンもしくはスチレン誘導体を含有しない共重合成分をラジカル開始剤(d)の存在下で共重合させてなる分散剤(A)、およびポリオレフィン樹脂(B)、バイオマス由来の粉末(C)を含有してなるバイオマス含有樹脂組成物。
【請求項2】
(a)が、炭素1,000個当たり0.1〜20個の二重結合を有する請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(a)が、数平均分子量30,000〜400,000のポリオレフィンを熱減成してなる請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(a)、(b)および(c)の合計重量に基づく割合が、(a)が30〜98%、(b)が0.03〜40%、(c)が0.6〜65%である請求項1〜3のいずれか記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)、(B)、(C)の合計重量に基づく割合が、(A)が0.5〜15%、(B)が5〜90%、(C)が5〜85%である請求項1〜4のいずれか記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(B)と(C)の重量比が10/90〜90/10である請求項1〜5のいずれか記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項8】
請求項7記載の成形品に塗装および/または印刷を施してなる成形物品。
【請求項9】
分散剤(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、バイオマス由来の粉末(C)を含有成分として混合するバイオマス含有樹脂組成物の製造方法において、(A)が、数平均分子量800〜50,000のポリオレフィン(a)、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(b)および炭素数6〜36のα−オレフィン(c)を含有し、スチレンもしくはスチレン誘導体を含有しない共重合成分をラジカル開始剤(d)の存在下で共重合させてなることを特徴とするバイオマス含有樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−49840(P2013−49840A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−164933(P2012−164933)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】