説明

バイオマス固形燃料及びその製造方法

【課題】化石燃料に匹敵する高カロリーで、良好な燃焼効率が得られ、経済的であるばかりでなく、石油・石炭などの化石燃料使用量を削減でき、カーボンニュートラルによる地球温暖化防止(二酸化炭素削減)や循環型社会の構築に貢献できるバイオマス固形燃料とその製造方法を提供する。
【解決手段】魚油を原料として飼料油製造過程で生じる副産物であるダーク油1と木粉2を主原料とし、木粉2を乾燥して水分を蒸発させ含水率10〜20%とし、攪拌装置5に、この木粉2、ダーク油1と天かす3と油かす4とグリセリン5を投入する。天かす3は、食品加工場等から廃棄される使用済みの揚げ油から分離された残渣であり、遠心分離機により含油率20〜25%にして使用する。油かす4は、飼料製造施設の油脂タンクの残留物を加熱して含水率を0%にして使用する。グリセリン5は、食用廃油からバイオディーゼル燃料を抽出した残渣を中和して使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物由来の固形燃料に関し、とくに油脂と木粉を主原料としたバイオマス固形燃料とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、地球上の大気や海洋の平均温度は上昇を示しており、これに伴う海水面の上昇や気象の変化が観測され、生態系や人類活動への悪影響が懸念されている。この地球温暖化対策として最も重要なことは、化石燃料の使用に伴う二酸化炭素の排出抑制である。京都議定書の発効により国内外において二酸化炭素の排出削減が求められている。すなわち、化石燃料に替わる燃料の開発が切望されている。
【0003】
近年の原油価格の高騰により、農業経営を継続していく上での経済的な問題もある。ビニールハウス栽培(以下、単にハウス栽培という)では、時期によりハウス内を暖房する必要がある。燃料費は嵩むが、安価な輸入品との競争もあり、農家の負担コストを安易に小売価格に上乗せすることもできず経営継続が厳しい状況にある。ペレット燃料としては、近年、おが屑や鋸屑など製材から出る廃材、古紙といった木質系の廃棄物を粉砕、圧縮し、ペレット状に成型した木質系のペレット燃料が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、上記の木質系ペレット燃料はカロリーが低い、季節によってペレット材料の含水率が変化する。品質や火力が安定しない、などの多くの課題があり、いまだに広く普及するには至っていない。
【0004】
農業者のハウス栽培に要する負担の軽減や、カーボンニュートラルによる地球温暖化防止(二酸化炭素削減)や循環型社会の構築のためには、化石燃料由来の燃料を使用しないことが肝要である。そこで、地方自治体、農業、及び工業廃水の汚泥を生物処理して脂質を抽出し、アルコールベースのエステルへのエステル交換を用いて、抽出された脂質をエステル交換させることによる、バイオディーゼル燃料の生成方法(特許文献1参照。)、稲藁、刈草等の木質・草本系バイオマス、活性汚泥等の糞尿系バイオマス、食品産業廃棄物、古紙、生ゴミを含むバイオマスを硫酸糖化して得た糖化液を、燃料電池発電の電子供給源に用いる方法(特許文献2参照。)、有機汚泥・動植物性残渣・家畜糞尿及び工場濃厚廃液など木屑、生木、葉、雑草などをチップ化したものを加えて蒸発乾燥機で加温蒸発処理し、乾燥物をペレット化した後、ペレットを乾溜炉でガス化、炭化し、得られたガスは蒸発乾燥機及び乾溜炉での熱源として利用し、炭化物は燃料、土壌改質剤、水処理、脱臭処理に有効利用する方法(特許文献3参照。)、
食品会社やレストラン、病院等から排出される油脂分を多く含んだ廃液から油分を分離して、木粉と混合した混合物を乾燥させた後、ペレット状に成型した固形化燃料(特許文献4参照。)、紙、板紙、木材、天然繊維、樹の葉、枝、根などの植物組織、食用油脂などの油を混合してプレス成型して燃料ペレットを得る製造方法(特許文献5参照。)、タール状廃棄物、油泥状廃棄物と木くず、生木、葉、雑草等のチップと混合乾燥したペレット化燃料(特許文献6参照)等が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特表2007−508922号公報
【特許文献2】特開2006−326562号公報
【特許文献3】特開2003−55666号公報
【特許文献4】特開2009−197204号公報
【特許文献5】特開2009−528393号公報
【特許文献6】特開2003−55666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記いずれの動植物系の燃料も単体では安定した燃焼が困難であり、また化石燃料と比較して格段に発熱量が低く、経済的に不利である。したがって、従来技術においても、動植物由来の油脂を燃料用ペレット化するに際し、木粉、紙、板紙、木材、天然繊維、樹の葉、枝、根などの植物組織、生木、葉、雑草等と混合する必要があることを謳っている。本発明もまた、上記のような従来技術の課題に鑑み、化石燃料に匹敵する高カロリーで、良好な燃焼効率が得られ、経済的であるばかりでなく、石油・石炭などの化石燃料使用量を削減でき、カーボンニュートラルによる地球温暖化防止(二酸化炭素削減)や循環型社会の構築に貢献できるバイオマス固形燃料とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明のバイオマス固形燃料は、魚油を原料とした飼料油製造過程で生じる副産物であるダーク油に木粉を混合したものを主原料とし、これを任意のペレット状に成型することを第1の特徴とし、天かす、油かす、グリセリンから選択される少なくとも一種を副原料とすることを第2の特徴とし、その製造方法を、木粉を加熱して水分を蒸発させ、水分を蒸発させた木粉とダーク油、天かす及び/又は油かす及び/又はグリセリンを添加し攪拌混合したものを任意のペレット形状に押し出し成型することを第3の特徴とする。
【0008】
ダーク油脂と木粉を均一に攪拌混合することで、木粉に油脂分が多量に吸着されると共に、木粉を囲み、有機廃棄物の油脂分が木粉どうしのバインダーとなって弾力性のある固形状の混合物となりペレット状に成型しやすくなる。また、ペレット状に成型した後の形状が崩れにくい。
【0009】
本発明によって得られる固形燃料は、その形状が特に限定されるものではないが、成型性や取扱性等から、直径が5〜100mm、より好ましくは10〜70mm程度、また、長さは5〜200mm、より好ましくは15〜150mm程度である円柱状又は角柱状のペレット製型体であることが望ましい。
【0010】
木粉を60℃以上100℃未満で乾燥させることにより、ダーク油と木粉の攪拌混合物中に含まれる含油率及び含水率の合計を、ペレット成型性の良好な10%〜20%程度の含水率に調整しやすくなる。乾燥雰囲気を60℃以上とすることにより、攪拌混合物に含まれる水分の蒸発を促進させて、乾燥処理時間の短縮化を図り、また、乾燥雰囲気を100℃未満とすることにより、混合物中に含まれる油脂分は乾燥気化させず、水分のみを蒸発させることができる。
【0011】
例えば、ペレットの材料構成全体を100%としたとき、油脂分20%、木粉80%の割合とすることにより、油脂分を含む攪拌混合物の固形化を確実なものにできる。木粉が80%未満であると、木粉に十分吸着されなかった油脂分の存在によって、成型不良が生じやすい(造粒機などの成型機に混合機が余分な油脂分によって十分に押し込まれず、ボロボロした状態のペレットが造粒される)。また、木粉の割合が90%を越えると、油脂分が少な過ぎて所定の高カロリーの固形燃料が得られない。木粉の割合を油脂に対して80%以上90%以下とすることにより、油脂分の過多による成型不良を防止すると同時に、木質系単独のペレット燃料よりも高カロリー(6000〜7000kcal)の固形燃料を得ることができる。
【0012】
ペレット成型前の攪拌混合物には、油分と、木粉がそもそも含有する水分が含まれている。このため、攪拌混合物を良好にペレット成型するには、乾燥工程において、含油率と含水率の合計が23%以上31%以下に調整することが望ましい。これにより、油脂分を固形化して高カロリーの燃料ペレットを得ることができる。また、従来の堆肥化では困難であった油脂(ダーク油)の有効活用、大量処理を可能とし、COの削減と資源循環型社会の実現を図ることができるという優れた効果を奏する。また、高カロリーで品質の安定した固形化燃料を安価に提供することができ、大量の廃棄油を効率よくリサイクル処理することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、下記の優れた効果がある。
(1)資源循環型であり二酸化炭素削減への貢献が可能である安価なバイオマス燃料を提供できる。
(2)石油・石炭などの発電用化石燃料使用量を削減でき、カーボンニュートラルによる地球温暖化防止(CO)削減や循環型社会の構築に貢献できる。
(3)得られたバイオマス燃料は各種熱エネルギー源として活用でき、燃焼後の灰の発生は木質材に比べて半分程度で済み、容積も大幅に減少するため、流通や保管が容易になる。また、リン酸・カリに富む肥料として活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るバイオマス燃料の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例】
【0016】
本発明に係るバイオマス固形燃料の製造工程について概略説明すると、おが屑や鋸屑等の木粉を加熱して水分を蒸発させる木粉乾燥工程、天かすや脂カスから余剰の油水を分離する油水分離工程、食用廃油からバイオディーゼル燃料を抽出した残渣であるグリセリンを希硫酸で中和する工程、乾燥後の木粉と所定量のダーク油、油水分離後の天かすや油かす及びグリセリンを均一に攪拌混合する工程と、この攪拌混合物をペレット状に成型するペレット成型工程から構成されている。
【0017】
図1に示すように、本実施例では、原料として、魚油を原料として飼料油製造過程で生じる副産物であるダーク油(9,400Kcal)1と木粉(4,000〜4,500Kcal)2を主原料として用いた。まず、木粉2を60℃以上100℃未満で乾燥させ水分を蒸発させ含水率10〜20%とする。攪拌装置5に、この木粉2と、ダーク油1を投入すると共に、副原料としての天かす3と油かす4及びグリセリン5を添加投入する。ここで、天かす3は、食品加工場や飲食店から廃棄される使用済みの揚げ油から分離された残渣であり、一斗缶やドラム缶等に一旦貯留保管されたものを遠心分離機により油分をある程度除去し含油率20〜25%にして使用する(7,000Kcal)。油かす4は、飼料製造施設の飼料用油脂タンクの残留物を120℃に加熱して含水率を0%にして使用する(9,000Kcal)。グリセリン5は、食用廃油からバイオディーゼル燃料を抽出した残渣として得られ、6000〜7000kcalの高い燃焼カロリーを有するが、アルカリ性である。したがって、ペレット燃焼灰の肥料化を考慮するとグリセリンを希硫酸でpH7程度に中和しておく必要がある。
【0018】
本実施例では、最終製品であるバイオマス固形燃料8の材料構成を100%としたときに、木粉80%、油脂20%(ダーク油15%、残り5パーセントを天かす3、油かす4及びグリセリン5)という割合にしている。攪拌装置6に投入したダーク油1と木粉2、天かす3、油かす4及びグリセリン5を攪拌装置6に投入後、ペレット成型機7に搬送して任意形状にペレット加工してバイオマス固形燃料8を得る。
【符号の説明】
【0019】
1 ダーク油
2 木粉
3 天かす
4 油かす
5 グリセリン
6 攪拌装置
7 ペレット成型機
8 バイオマス固形燃料(ペレット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚油を原料とした飼料油製造過程で生じる副産物であるダーク油に木粉を混合したものを主原料とし、これを任意のペレット状に成型することを特徴とするバイオマス固形燃料。
【請求項2】
天かす、油かす、グリセリンから選択される少なくとも一種を副原料とすることを特徴とする請求項1記載のバイオマス固形燃料。
【請求項3】
木粉を加熱して水分を蒸発させ、水分を蒸発させた木粉とダーク油、天かす及び/又は油かす及び/又はグリセリンを添加し攪拌混合したものを任意のペレット形状に押し出し成型することを特徴とする請求項2記載のバイオマス固形燃料の製造方法。

【図1】
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