説明

バイオマス流動ガス化装置

【課題】バイオマスの粒子径や粒子密度に分布を持つ場合においても、ガス化流動床炉内でバイオマス粒子の十分な滞留時間を確保し、バイオマスのガス化効率を向上させることができるバイオマス流動ガス化装置を提供する
【解決手段】バイオマス流動ガス化装置101は、ガス化流動床炉18の底部から頂部に向かって移行するにしたがって漸次拡径する逆円錐形状のガス化流動床炉18を備えている。ガス化流動床炉18は、底部の断面積に対する頂部の断面積の比が2〜100であり、底部と頂部との間を結ぶガス化流動床炉18の内壁面が鉛直方向に対して0°よりも大きくかつ10°以下の傾斜角度で傾斜しており、底部から頂部に向かって加熱流動化ガスが流通されて、ガス化流動床炉18内における加熱流動化ガスのガス線流速が底部から頂部にかけて連続的に減少するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化流動床炉内に加熱流動化ガスを流通させて、ガス化流動床炉内でバイオマス粒子を流動させるバイオマス流動ガス化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオマスをガス化して、CO・H2などにガス化した後に、FT合成等によって炭化水素に変換する技術が知られている。
【0003】
特開2003−326241公報(特許文献1)および特開2008−101215公報(特許文献2)には、バイオマスガス化炉の下方側の水平方向の断面積が下方側ほど小さくなるように少なくとも一部の壁面が傾斜配向しているバイオマスのガス化装置が開示されている。バイオマスガス化炉の下方側のガス流速が1〜6m/s、上方側のガス流速が0.2〜1m/sであり、一部の壁面が傾斜角と垂直線とのなす角が10〜30°であり、その上部に形成される直胴部に突起状のデアーチを設け、炉内にガス循環流を形成させ、壁面が傾斜しているガス化炉の中間部位よりバイオマス粒子が供給されている。
【0004】
特開2007−231062公報(特許文献3)には、垂直円筒状のガス化炉の下部に流動化剤口から上向きにのびた上拡りテーパ状炉底部から形成されるバイオマスのガス化装置が開示されている。炉底部上端直径に対する炉底部下端直径の比は、0.01〜0.3であり、バイオマス粒子は垂直円筒状部側面より供給されている。
【0005】
特開2003−268388公報(特許文献4)には、円筒状のバイオマスの熱分解部のガス上昇流速を1〜15m/sとし、円筒状のガス分解部の下部にテーパ状部を設け、テーパ部の中心付近をガス上昇流、テーパ部壁面近傍にガス下降流を形成するバイオマス熱分解方法および装置が開示されている。バイオマス粒子は、垂直円筒状部側面より供給されている。
【0006】
特許3001190号(特許文献5)には、円筒状浮遊部の下部に逆錐型の噴流部を有する乾留装置が開示されている。円筒状浮遊部直径に対し、逆錐型の噴流部底部直径が0.3〜0.5、逆錐型の噴流部の高さが1.3〜1.7であり、原料である褐炭粒子1〜3mm)は垂直円筒状部側面より供給されている。
【0007】
特開2004−198011公報(特許文献6)には、流動層を形成するための炉本体が、外周部に空間を設けた別のベッセル内部に収納された流動床反応炉が開示されている。炉本体内に送る流動化ガスが、炉本体の外周とベッセルとの間を流れて炉本体の下部に至る。炉本体の温度より低い温度の供給ガスが炉本体を取り囲んでいるので、ベッセル外周に設ける保温材の量が少なくなるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−326241公報
【特許文献2】特開2008−101215公報
【特許文献3】特開2007−231062公報
【特許文献4】特開2003−268388公報
【特許文献5】特許3001190号
【特許文献6】特開2004−198011公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、バイオマスは、熱分解炉に供給される際に、原料として粒径にバラツキが多い可能性があり、これら粒径のバラツキを許容しつつ、ガス化効率を向上させる必要がある。
【0010】
上記特許文献1および2に記載された特徴を有するバイオマスのガス化装置の場合、逆錐部の垂直面に対する傾斜角が10〜30°と大きいために、逆錐部の中央に上昇流が形成され、壁面近傍に下降流が形成されて、逆錐部のガス化炉内に循環流が形成される。そのため、粒子径の小さなバイオマス粒子は、循環流で循環されることなく、上昇流によりガス化装置の頂部に達してしまい、ガス化炉内で十分に滞留することなくガス化炉から飛散してしまう。したがって、十分なガス化効率を得ることができない。
【0011】
上記特許文献3および4に記載された特徴を有するバイオマスのガス化装置の場合、逆錐部の上部に円筒状のガス化炉本体を有しているために、逆錐部上端の直径(円筒部の直径)に対する逆錐部高さを大きくすることができず、現実的に逆錐部の垂直面に対する傾斜角が10°以上となり、逆錐部の中央に上昇流が形成され、壁面近傍に下降流が形成され、逆錐部のガス化炉内に循環流が形成される。そのため、粒子径の小さなバイオマス粒子は、循環流で循環されることなく、上昇流によりガス化装置の頂部に達してしまい、ガス化炉内で十分に滞留することなくガス化炉から飛散してしまう。したがって、十分なガス化効率を得ることができない。
【0012】
上記特許文献5に記載された特徴を有する炭化水素系材料の乾留装置の場合、逆錐部上端直径に対する逆錐部下端直径が0.3〜0.5、逆錐部高さが1.3〜1.7であるので、逆錐部の垂直面に対する傾斜角は8.4〜13.1°となる。また、逆錐部の上部に円筒状のガス化炉本体を有しているため、逆錐部の中央に上昇流が形成され、壁面近傍に下降流が形成され、逆錐部の乾留装置内に循環流が形成される。そのため、粒子径の小さな原料粒子は、循環流で循環されることなく、上昇流により乾留装置の頂部に達してしまい、乾留装置内で十分に滞留することなく乾留装置から飛散してしまう。したがって、十分なガス化効率を得ることができない。
【0013】
上記特許文献6に記載された特徴を有する流動床炉の場合、流動化ガスが炉本体の外周とベッセルとの間を流れたうえで炉本体の下部から流動床炉に供給され、炉本体の外周が炉本体より温度が低い供給ガス層で覆われるので、炉本体からの放熱が少なくできるとしている。しかし、バイオマスのガス化の場合はガス化反応が吸熱反応であることから、流動床炉に供給する流動ガスの温度はガス化温度に近い温度としなければならない。したがって、供給ガスを炉本体の外周を介して供給することは、放熱ロス低減の観点からは、放熱面積が増えてしまい、効果がない。
【0014】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、原料バイオマスの粒子径や粒子密度に分布を持つ、あるいは変化した場合においても、ガス化流動床炉内でバイオマス粒子の十分な滞留時間を確保し、バイオマスのガス化効率を向上させることができるバイオマス流動ガス化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討し、従来技術の現状に留意しつつ鋭意研究を重ねた結果、原料バイオマスの粒子径や粒子密度に分布を持つ、あるいは、変化した場合においても流動床内で十分な滞留時間を確保しバイオマスのガス化効率を向上させることができるバイオマス流動ガス化装置を見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は下記のバイオマス流動ガス化装置に関するものである。
本発明のバイオマス流動ガス化装置は、上記の課題を解決するために、ガス化流動床炉内に加熱流動化ガスを流通させて、前記ガス化流動床炉内でバイオマス粒子を流動させるバイオマス流動ガス化装置であって、ガス化流動床炉が、ガス化流動床炉の底部から頂部に向かって移行するにしたがって漸次拡径する逆円錐形状を有し、底部の断面積に対する頂部の断面積の比が2〜100であり、底部と頂部との間を結ぶガス化流動床炉の内壁面が鉛直方向に対して0°よりも大きくかつ10°以下の傾斜角度で傾斜しており、底部から頂部に向かって加熱流動化ガスが流通されて、ガス化流動床炉内における加熱流動化ガスのガス線流速が底部から頂部にかけて連続的に減少するように構成されていることを特徴としている。(請求項1)。
【0017】
上記の構成によれば、ガス化流動床炉内に、乱れの少ないガス上昇流が形成され、ガス線流速が低部から頂部にかけて連続的に減少するために、粒子径や密度が異なるバイオマス粒子がガス流速とバランスして静止する沈降速度が、バイオマス流動ガス化装置内に存在して、粒子径や密度が異なるバイオマス粒子をガス化流動床炉内に長時間滞留させることが可能となる。したがって、バイオマス粒子のガス化効率を向上させることができる。
【0018】
本発明のバイオマス流動ガス化装置は、ガス化流動床炉の頂部から流出するガスをガス化流動床炉の外面に沿って降下させるガス化流動床炉外面ガス流路を備えることを特徴としている(請求項2)。
【0019】
上記の構成によれば、ガス化流動床炉の頂部から流出するガスをガス化流動床炉の外面に沿って降下させることができるので、ガス化流動床炉内のガスの放熱ロスを低減させることができる。
【0020】
本発明のバイオマス流動ガス化装置は、加熱流動化ガスとガス化流動床炉外面ガス流路内のガスの一部を、ガス化流動床炉の底部からガス化流動床炉内に供給するガス循環供給部を有することを特徴としている(請求項3)。
【0021】
上記の構成によれば、ガス化流動床炉外面ガス流路内のガスの一部をガス化流動床炉内に流入させる流入面積と、外部から供給される加熱流動化ガスのガス線流速と流入面積を調節することにより、ガス化流動床炉内を上昇するガス流量を簡単に調節することができ、バイオマスの粒子径や密度が大きく変化した場合に対処することができる。
【0022】
本発明のバイオマス流動ガス化装置は、ガス化流動床炉の頂部から流出するガスを案内してガス化流動床炉外面ガス流路内においてガス化流動床炉の周りを旋回させながら降下させる螺旋状のガイドを有することを特徴としている(請求項4)。
【0023】
上記の構成によれば、螺旋状のガイドによって、ガス化流動床炉の頂部から流出するガスを案内してガス化流動床炉外面ガス流路内においてガス化流動床炉の周りを旋回させながら降下させることができるので、ガス化流動床炉内でガス化せずに残存しガス化流動床炉の頂部から流出した未反応の灰分などの固形粒子を遠心力の作用で気固分離することができる。
【0024】
本発明のバイオマス流動ガス化装置は、好ましくは、ガス化流動床炉外面ガス流路に、ガス化流動床炉外面ガス流路内のガスを取り出すための生成ガス取り出し口が設けられている構成を有する(請求項5)。
【0025】
本発明のバイオマス流動ガス化装置は、ガス化流動床炉の頂部からガス化流動床炉内にバイオマス粒子を供給するバイオマス粒子供給部を有することを特徴としている(請求項6)。
【0026】
上記の構成によれば、バイオマス粒子は、ガス化流動床炉の頂部からガス化流動床炉内に供給される。そして、ガス化流動床炉内でバイオマス粒子の沈降速度とバランスするガス流速となる位置まで沈降する。したがって、ガス化流動床炉の側面からバイオマスを供給する必要がなくなり、構造の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のバイオマス流動ガス化装置によれば、ガス化流動床炉内に、乱れの少ないガス上昇流が形成され、ガス線流速が低部から頂部にかけて連続的に減少するために、バイオマスの粒子径や粒子密度に分布を持つ、あるいは、変化した場合においてもガス化流動床炉内で十分な滞留時間を確保し、バイオマスのガス化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態におけるバイオマス流動ガス化装置が適用されるバイオマスガス化システムの全体構成を説明する図。
【図2】本実施の形態におけるバイオマスガス化装置の構成を説明する図。
【図3】図2のB部を拡大して示す図。
【図4】図2のC部を拡大して示す図。
【図5】ガス化流動床炉におけるバイオマス粒子の流動状態を観察する方法を説明する図。
【図6】実験例1〜11の結果をグラフで示す図。
【図7】実験例1〜11の結果を表で示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態について、以下のとおり説明する。
本発明における原料バイオマスは、リグニン成分、セルロース成分、ヘミセルロース成分、油脂成分のいずれかを有したバイオマスであれば特に限定されないが、小麦、米、トウモロコシ、大豆、大麦、ソルガム、サトウキビ、ジャガイモ、キャッサバ、テンサイなどの食糧作物及びその食糧作物残渣、パーム椰子、ヒマワリ、ナタネ、ナンヨウアブラギリ、ラッカセイ、トウゴマなどの油脂作物及びその油脂作物残渣、アルマングラス、ダンチク、カルドン、ケナフ、ミスキャンタス、ポプラ、ヒロハロウシノイケグサ、ネピアグラス、ギニアグラス、ヤナギ、スイッチグラスなどのエネルギー作物、林地残材、間伐材、工場残廃材などの林産廃棄物、建築廃材、剪定残渣、古紙などの産業廃棄物及び一般廃棄物、リグノセルロースの糖化残渣、エタノール蒸留廃液を例示できる。
【0030】
原料バイオマスの成分は、炭素、水素、酸素を主成分としたものであれば、窒素、硫黄、無機成分(灰分)を含有してもかまわない。原料バイオマスに含まれる水分量はガス化流動装置内にて固形粒子を形成できれば特に限定されないが、ガス化の際のエネルギー効率の観点からは、50重量%以下であることが好ましく、バイオマス乾燥に要するエネルギー、バイオマス粉砕に関するエネルギーとガス化効率の観点からは、5重量%〜20重量%の水分量であることが特に好ましい。
【0031】
バイオマス粒子を流動化させる流動化ガスは、バイオマスをガス化する温度の気体であれば特に限定されない。流動化ガスとしては、酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気などの大気に含まれる成分のいずれか1つ以上を含むガス、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを含むガス、メタン、一酸化炭素、エタンなどの可燃性ガスを含むガスを例示し得る。バイオマスのガス化を促進するガスとしては、水蒸気、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素のいずれか1つ以上を含有するガスが好ましい。
【0032】
図1は、本実施の形態におけるバイオマス流動ガス化装置が適用されるバイオマスガス化システムの全体構成を説明する図である。
【0033】
バイオマスガス化システム100は、バイオマス流動ガス化装置101と、バイオマス流動ガス化装置101に付帯する周辺装置102とからなる。バイオマス流動ガス化装置101は、ガス化流動床炉18、ガス化流動床炉ヒーター19、ガス化流動床炉温度計20、ガス化流動床炉外面ガス流路21を備えている。ガス化流動床炉ヒータ19は、ガス化流動床炉18を加熱するものであり、ガス化流動床炉温度計20は、ガス化流動床炉18内の温度を計測するものである。なお、ガス化流動床炉18とガス化流動床炉外面ガス流路21の構成については後述する。
【0034】
周辺装置102は、バイオマス流動ガス化装置101に流動化ガス、水蒸気、バイオマスを供給するための各種装置や、生成ガスの冷却設備等により構成される。常温状態で気体である流動化ガスは、流動化ガスボンベ1に貯蔵されており、流動化ガス移送ライン2を介してバイオマス流動ガス化装置101に供給される。バイオマス流動ガス化装置101には、流動化ガス流量計3および流動化ガス流量調節弁4を通して所定量の流動化ガスが供給される。
【0035】
流動化ガスの供給源は、流動化ガスボンベ1に限定されず、ガスタンクからブロアー等により供給してもよく、また、流動化ガスが空気の場合は、直接空気をコンプレッサーやブロアーにより供給してもよい。
【0036】
常温状態で液体である水は、水タンク5から水蒸気発生器8に水移送ポンプ6により水供給ライン7)を介して供給され、水蒸気発生器8内で水加熱ヒーター9により水が水蒸気となり、水蒸気移送ライン11を介して、バイオマス流動ガス化装置101に供給される。
【0037】
水の貯蔵タンク5には、常温あるいは加熱昇温された水を貯蔵する。水の貯蔵タンク5は水を貯蔵できる構造、材質のものであればよく、特に限定されず、金属製、ガラス製、プラスチック製、セラミック製のいずれでもかまわない。
【0038】
水移送ポンプ6は、水を所定圧力まで加圧できるものであればよく、構成は特に限定されず、ギアポンプ、多段渦巻きポンプ、シリンダポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ロータリーポンプ、スネークポンプなどを例示できる。
【0039】
水蒸気発生器8は、水から水蒸気を発生できるものであればよく、構成は特に限定はされない。例えば、二重管式、シェル&チューブ式、Uチューブ式、スパイラル式、プレート式、電熱ヒーター加熱式、誘導加熱式などから選定される。また、一般的に販売されている炉筒煙管式、貫流式、水管式ボイラーを用いても問題ない。
【0040】
流動化ガスおよび水蒸気は、流動化ガス加熱器12に流入し、流動化ガス加熱ヒーター13にて、所定温度まで加熱される。加熱される温度は、ガス化流動床炉18のガス化温度付近まで加熱することが好ましいが、ガス化流動床炉18から生成するガスと熱交換する場合は、ガス化流動床炉18のガス化温度より低くなる。
【0041】
流動化ガス加熱器12は、流動化まで加熱できるものであればよく、構成は特に限定はされない。例えば、二重管式、シェル&チューブ式、Uチューブ式、スパイラル式、プレート式、電熱ヒーター加熱式、誘導加熱式などから選定される。
【0042】
また、生成ガスと熱交換する場合も、生成ガスと熱交換できるものであればよく、構成は特に限定はされない。例えば、二重管式、シェル&チューブ式、Uチューブ式、スパイラル式、プレート式などから選定される。
【0043】
バイオマス粒子供給装置16は、バイオマス粒子をガス化流動床炉18に供給可能なものであればよく、構成は特に限定はされない。例えば、スクリュー式、スネーク式、ロータリーバルブ式、2段バルブ切り換え式、振動式などの固体粒子供給装置が例示される。
【0044】
バイオマス粒子の粒子径は、ガス化流動床炉18内に滞留時間との関係で決定されるが、代表径が10mm以下であることが好ましい。ガス化の効率化、バイオマス粉砕の効率化の観点からは、バイオマス粒子の代表径は、0.5mm〜5mmであることが特に好ましい。
【0045】
流動化ガス加熱器12で所定温度まで加熱された流動化ガスは、加熱流動化ガス移送ライン15を通過して、ガス化流動床炉18に底部よりアップフローで供給され、ガス化流動床炉18内でバイオマス粒子を浮遊させガス化させる。
【0046】
ガス化流動床炉18内で流動ガスおよびバイオマスが分解して生成したガスは、ガス化流動床炉18の上部でガス流れが反転しダウンフローとなり、ガス化流動床炉外面ガス流路21を下降し、生成ガスライン22を介して、ガス冷却器(水凝縮器)23に導入され、ガス冷却器23内で水が凝縮分離され、生成ガス取り出しライン25より、生成ガスが取り出される。
【0047】
ガス化流動床炉18の内径が数10mm程度の実験装置の場合は、ガス化流動床炉外面ガス流路21の壁面からの放熱が大きいため、ガス化流動床ヒーター19が必要であるが、商業スケールの内径が1m規模の場合は、断熱施工するだけで十分である。
【0048】
図2にバイオマス流動ガス化装置101の詳細を示す。
バイオマス流動ガス化装置101は、互いに同軸上に配置されて鉛直方向に延在する内筒111と外筒112を備えており、内筒111の筒内にガス化流動床炉18が形成され、内筒111と外筒112との間にガス化流動床炉外面ガス流路21が形成される。
【0049】
内筒111は、下端から上端に移行するにしたがって漸次拡径する逆円錐形状を有している。内筒111の上端と下端は、それぞれ開放されており、流動化ガス流入口111aと流動化ガス流出口111bが形成されている。内筒111は、流動化ガス流出口(頂部)111bと流動化ガス流入口(底部)111aの開口面積比(頂部面積/底部面積)が2〜100となるように形成されている。内筒111の内壁面は、鉛直方向に対して0°よりも大きくかつ10°以下の一定の傾斜角度で傾斜している。
【0050】
ガス化流動床炉18は、底部(流動化ガス流入口111a)から加熱流動化ガスがアップフローで供給された場合に、加熱流動化ガスのガス線流速が底部(流動化ガス流入口111a)から頂部(流動化ガス流出口111b)にかけて連続的に減少される。そして、ガス化流動床炉18の中心を底部から頂部まで流動すると共にガス化流動床炉18の内壁面に沿って頂部から底部まで流動するようなガス化流動床炉18の全長に亘る循環流の形成が抑制される。
【0051】
外筒112は、一定径を有して上下に延在し、内筒111よりも若干下方に突出する長さを有している。外筒112の下端部には、ガス循環供給部30が取り付けられており、このガス循環供給部30によって閉塞されている。ガス循環供給部30は、加熱流動化ガス供給口31から供給される加熱流動化ガスを、内筒111の流動化ガス流入口から筒内に流入させる構成を有している。
【0052】
外筒112の上端部には、ガス流路反転部34とバイオマス粒子供給部32が取り付けられている。ガス流路反転部34は、外筒112の上端部を閉塞している。ガス流路反転部34は、内筒111の流動化ガス流出口111bから上方に向かうガス流れを反転させて内筒111と外筒112との間に形成されるガス化流動床炉外面ガス流路21に導入させるためのものであり、バイオマス粒子供給部32は、バイオマス粒子供給装置16から供給されるバイオマス粒子を、内筒111の流動化ガス流出口111bから内筒111内に流入させるためのものである。
【0053】
外筒112の下部には、ガス化流動床炉外面ガス流路21内のガスを取り出すための生成ガス取り出し口36が設けられている。
【0054】
加熱流動化ガスは、ガス循環供給部30によって、ガス化流動床炉18の底部からガス化流動床炉18内に供給され、ガス化流動床炉18内を上方に向かって移動するように流通される。加熱流動化ガスは、ガス化流動床炉18内において底部から頂部にかけて加熱流動化ガスのガス線流速が連続的に減少する。バイオマス粒子は、バイオマス粒子供給部32を介して、ガス化流動床炉18の上方からガス化流動床炉18内に供給されて、ガス化流動床炉18で加熱流動化ガスによって浮遊されてガス化される。
【0055】
流動ガスおよびバイオマスが分解して生成したガスは、ガス流路反転部34でガス流れが下降流に反転されて、ガス化流動床炉外面ガス流路21に導入され、ガス化流動床炉外面ガス流路21を下方に向かって移動し、生成ガス取り出し口36から取り出される。
【0056】
ガス流路反転部34に、らせん状のガイド(図示せず)を設置して、ガス化流動床炉18の頂部から流出するガスを案内し、ガス流れを旋回流とし、ガス化流動床炉外面ガス流路21内においてガス化流動床炉18の周りを旋回させながら降下させることができる。
【0057】
このように、ガス化流動床炉外面ガス流路21でガス流れを旋回流とした場合には、ガス中に含有される固形物(未ガス化バイオマス粒子)を遠心力の作用によりガス流れから分離する気固分離ができる。
【0058】
図3を用いてガス循環供給部30の構成について説明する。図3は、図2のB部を拡大して示す図である。ガス循環供給部30は、加熱流動化ガスノズル41を有している。加熱流動化ガスノズル41は、太径の基端部122と、基端部122との間に段差を介して縮径された細径の先端部121を有している。加熱流動化ガスノズル41の基端部122は、加熱流動化ガス供給口31を介して加熱流動化ガス移送ライン15に接続されており、先端部121は、内筒111の流動化ガス流入口111aから内筒111内に挿入されている。
【0059】
加熱流動化ガスノズル41は、先端部121と内筒111の流動化ガス流入口111aとの間に隙間42が形成されるように、その大きさが設定されている。加熱流動化ガスは、加熱流動化ガスノズル41からガス化流動床炉18に供給される。この加熱流動化ガスの流れ45の作用により、ガス化流動床炉外面ガス流路21のガスの一部が、隙間42を介して内筒111内に吸引され、ガス化流動床炉18に導入される。
【0060】
この吸引されるガス化流動床炉外面ガスの流れ46と加熱流動化ガスの流れ45の流量比は、加熱流動化ガスの流速、加熱流動化ガスノズル面積(先端部121の開口面積)と隙間42の開口面積との比、ガス化流動床炉18とガス化流動床炉外面ガス流路21との差圧のバランスにより決定される。
【0061】
したがって、ガス化流動床炉外面ガスの一部をガス化流動床炉18の底部からガス化流動床炉18内に流入させる流入面積と、加熱流動化ガスノズル41から噴出される加熱流動化ガスの流れ45のガス線流速と流入面積を調節することにより、ガス化流動床炉18内を上昇するガスのガス流量を簡単に調節することができ、バイオマスの粒子径や密度が大きく変化した場合に対処することができる。
【0062】
ガス化流動床炉外面ガスの流れ46を多くとるには、加熱流動化ガスの流れ45の流速が50m/sから200m/sとすることが好ましい。50m/s以下の流速では、ガス化流動床炉外面ガスの流れ46を多くとることは難しく、200m/s以上の流速では、加熱流動化ガスの圧力損失が大きくなってしまう。
【0063】
図4を用いてガス流路反転部34とバイオマス粒子供給部32の構成について説明する。図4は、図2のC部を拡大して示す図である。ガス流路反転部34は、外筒112の上端部を閉塞する蓋体131を有している。蓋体131は、外筒112の上端部に連続して延在する円筒状の胴部131aと、胴部131aの上部を閉塞して内筒111の流動化ガス流出口111bに対向する平板状の鏡面部131bを有している。そして、内筒111の流動化ガス流出口111bから上方に向かって吹き出されたガスを鏡面部131bで反射させてガス流れを反転させ、内筒111と外筒112との間に形成されているガス化流動床炉外面ガス流路21の上部からガス化流動床炉外面ガス流路21内に流入させることができるようになっている。
【0064】
バイオマス粒子供給部32は、供給パイプ113を有している。供給パイプ113は、蓋体131の鏡面131bを貫通して設けられており、上端がバイオマス粒子供給装置16に接続され、下端が内筒111の流動化ガス流出口111bから内筒111内に挿入されている。そして、バイオマス粒子供給装置16から供給されるバイオマス粒子を通過させて内筒111の流動化ガス流出口111bから内筒111内に流入させることができるようになっている。
【0065】
上記構成を有するバイオマス流動ガス化装置101によれば、ガス化流動床炉18が逆円錐形状の内筒111の筒内に形成され、内筒111の流動化ガス流入口111aと流動化ガス流出口111bの開口面積比が2〜100であり、内筒111の内壁面が鉛直方向に対して0°よりも大きくかつ10°以下の一定の傾斜角度で傾斜しており、底部から頂部に向かって加熱流動化ガスが流通されて、ガス化流動床炉18内における加熱流動化ガスのガス線流速が底部から頂部にかけて連続的に減少するように構成されている。
【0066】
したがって、ガス化流動床炉18内に乱れの少ないガス上昇流を形成することができ、粒子径や密度が異なるバイオマス粒子がガス流速とバランスして静止する沈降速度がガス化流動床炉18内に存在して、粒子径や密度が異なるガス化流動床炉18内に長時間滞留させることが可能となる。したがって、粒子径の小さなバイオマス粒子をガス化流動床炉18内に十分に滞留させることができ、バイオマスのガス化効率を飛躍的に向上させることができる。
【0067】
そして、バイオマス流動ガス化装置101は、ガス化流動床炉18の頂部から流出するガスをガス化流動床炉18の外面に沿って降下させるガス化流動床炉外面ガス流路21を備えている。したがって、ガス化流動床炉18の頂部から流出するガスをガス化流動床炉18の外面に沿って降下させることができ、ガス化流動床炉18内のガスの放熱ロスを低減させることができる。
【0068】
バイオマス流動ガス化装置101は、加熱流動化ガスとガス化流動床炉外面ガス流路21内のガスの一部を、ガス化流動床炉18の底部からガス化流動床炉18内に供給するガス循環供給部30を有している。したがって、ガス循環供給部30によって、ガス化流動床炉外面ガス流路21内のガスの一部をガス化流動床炉18内に流入させる流入面積と、外部から供給される加熱流動化ガスのガス線流速と流入面積を調節することにより、ガス化流動床炉18内を上昇するガス流量を簡単に調節することができ、バイオマスの粒子径や密度が大きく変化した場合に対処することができる。
【0069】
バイオマス流動ガス化装置101は、ガス化流動床炉18の頂部から流出するガスを案内してガス化流動床炉外面ガス流路21内においてガス化流動床炉18の外面の周りを旋回させながら降下させる螺旋状のガイドを有している。したがって、ガス化流動床炉内でガス化せずに残存しガス化流動床炉の頂部から流出した未反応の灰分などの固形粒子を遠心力の作用で気固分離することができる。
【0070】
バイオマス流動ガス化装置101は、ガス化流動床炉18の頂部からガス化流動床炉18内にバイオマス粒子を供給するバイオマス粒子供給部32を有している。したがって、ガス化流動床炉18の頂部からガス化流動床炉18内にバイオマス粒子を供給することができ、ガス化流動床炉内でバイオマス粒子の沈降速度とバランスするガス流速となる位置まで沈降させることができる。したがって、ガス化流動床炉18の側面からバイオマスを供給する必要がなくなり、構造の簡素化を図ることができる。
【0071】
〔実施例1〕
次に、本発明の実施例について以下に説明する。本実施例では、具体例1と比較例1を下記の条件で実施した。
【0072】
(具体例1)
頂部面積/底部面積=7.29
ガス化流動床炉長さ/底部面積=20
加熱流動化ガスのガス密度:0.166〜0.142kg/m3
加熱流動化ガスのガス粘度:2.05×10-5〜2.62×10-5Pa・s
バイオマス密度:330kg/m3(バルサ)
バイオマス粒子径:1.25〜2.93mm
【0073】
一般的なバイオマス粒子として代表粒子径2mm(密度500kg/m)をガス化流動床炉18の底部から20%の高さ位置にバランス流動させる場合、代表粒子径2mmのバイオマス粒子の終末沈降速度計算値は、7.6m/sであるが、実測値は、4.8m/sであり、計算値の約63%である。
計算ut=7.6m/s→実際u=4.8m/s
【0074】
ここから、ガス化流動床炉18の頂部(流動化ガス流出口111b)における実際のガス流速(頂部流速)を求めると、1.2m/sと計算される。そして、ガス化流動床炉18の頂部(流動化ガス流出口111b)まで達するバイオマス粒子径を逆算すると、代表径0.6mmのバイオマス粒子径となる。
頂部流速u=4.8×(1.34/2.7)2=1.2m/s→逆算ut=2.4m/s→計算D=0.6mm
【0075】
また、ガス化流動床炉18の底部(流動化ガス流入口111a)における実際のガス流速(底部流速)を求めると、8.6m/sと計算される。そして、ガス化流動床炉18の底部(流動化ガス流入口111a)に到達するバイオマス粒子径を逆算すると、代表径3.6mmのバイオマス粒子径となる。
底部流速u=4.8×(1.34/1.0)2=8.6m/s→逆算ut=13.7m/s→計算D=3.6mm
【0076】
したがって、0.6mm〜3.6mmまでの代表径を持つバイオマス粒子52をガス化流動床炉18内で流動させることが可能となる。
【0077】
(比較例1)
具体例1は、頂部面積/底部面積が7.29であるのに対して、比較例1では、頂部面積/底部面積を1.0として実施した。
【0078】
一般的なバイオマス粒子として代表粒子径2mm(密度500kg/m)をガス化流動床炉18の底部から20%の高さ位置にバランス流動させる場合、代表粒子径2mmのバイオマス粒子の終末沈降速度計算値は、7.6m/sであり、この値の1.3倍の流速までは流出しないので、その流速は、7.6×1.3=9.9m/sとなる。
【0079】
ここから、ガス化流動床炉18の頂部(流動化ガス流出口111b)まで達するバイオマス粒子径を逆算すると、代表径2.6mmのバイオマス粒子径となる。
計算ut=7.6m/s→1.3倍までの流量では流出しないu=9.9m/s→計算D=2.6mm
【0080】
したがって、2.0mm〜2.6mmまでの代表径を持つバイオマス粒子52がガス化流動床炉18内で流動される 。
【0081】
具体例1と比較例1とを比較すると、具体例1はバイオマス粒子の大きさの範囲が広く、比較例1はバイオマス粒子の大きさの範囲が狭い。すなわち、ガス化流動床炉18内を流動させることができるバイオマス粒子の大きさの範囲は、比較例1よりも具体例1の方が広いことがわかる。
【0082】
〔実施例2〕
図5は、ガス化流動床炉におけるバイオマス粒子の流動状態を観察する方法を説明する図である。
【0083】
ガス化流動床炉18は、バイオマス粒子52の流動状態を観察するために、アクリル樹脂製の内筒111によって構成されている。内筒111は、流動化ガス流入口(底部)111aの内径が20mm、流動化ガス流出口(頂部)111bの内径が54mm、軸長さが1000mmの逆錐型で、底部の断面積に対する頂部の断面積の比が7.29であり、ガス化流動床炉18の底部と頂部を結ぶ内壁面と鉛直方向とのなす角が1°となるように構成されている。そして、ガス化流動床炉18の底部から上方に向かって加熱流動化ガスを流通させて、ガス化流動床炉18を流動する加熱流動化ガスのガス線流速が底部から頂部にかけて連続的に減少するようになっている。
【0084】
木質バイオマスを1kg/h、93mol%酸素と7%窒素の混合ガスを0.435kg/h、水蒸気を1.25kg/h、生成ガスを1.25kg/hで循環し、900℃にて平衡組成までガス化した場合、プロセスシミュレーターの平衡計算では、4.04kg/hのガス化生成し、そのガス物性は、動粘度1.8×10−4/sと推算される。
【0085】
流動化ガスとして67℃ヘリウムガス(動粘度1.8×10−4/s)を模擬ガスとして供給し、バイオマス粒子52の高密度流動上限高さHおよびバイオマス粒子52の流動上限高さHを観察し、その高さ位置におけるガス流動速度(V、V)を供給ガス流量より算出した。
【0086】
バイオマス粒子の形状は角柱形状(a×b×c)であるため、代表長さは、以下の式(1)に示す体面積平均径dを採用した。
=6abc/(2ab+2ac+2ca) (1)
【0087】
また、サンプル粒子の終末沈降速度uは、以下の式(2)に示すように計算した。レイノズル数を以下のように定義する。
【0088】

ここで、
dp:粒子径 [m]
u:粒子の沈降速度 [m/s]
ρf:流体の密度 [kg/m3]
μf:流体の粘度 [Pa・s]
である。Stokes式(層流域)、Allen式(層流域)、Newton式(遷移域)での終末沈降速度は以下の式(3)で表される。
【0089】
Re<5.8の場合(Stokes式)

【0090】
5.8≦Re<500の場合(Allen式)

【0091】
500≦Re<200,000の場合(Newton式)

ここで、
ρp:粒子の密度 [kg/m3]
である。
【0092】
[実験例1]
1mm×1mm×2.5mmに切り分けたバルサ粒子(代表径1.25mm、密度330kg/m)0.6cmを、ガス化流動床炉18(底部内径20mm、頂部内径50mm)に投入し、67℃ヘリウムガスを流通させ、ガス流量を50〜200SL/minまで変化させ、バイオマス粒子52の高密度流動上限高さHおよびバイオマス粒子52の流動上限高さHの位置からガス流動速度(V、V)を供給ガス流量より算出した。ガス流動速度(V、V)は、ガス化流動床炉18の高さに依存せずほぼ一定となり、V=2.7m/s、V=1.9m/sとなった。
【0093】
[実験例2]
1mm×1mm×5mmに切り分けたバルサ粒子(代表径1.36mm、密度330kg/m)を使用し、ガス流量を50〜250SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=3.2m/s、V=2.3m/sを得た。
【0094】
[実験例3]
1mm×2mm×5mmに切り分けたバルサ粒子(代表径1.76mm、密度330kg/m)を使用し、ガス流量を50〜350SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=4.1m/s、V=3.1m/sを得た。
【0095】
[実験例4]
2mm×2mm×3mmに切り分けたバルサ粒子(代表径2.25mm、密度330kg/m)を使用し、ガス流量を100〜400SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=5.4m/s、V=3.8m/sを得た。
【0096】
[実験例5]
2mm×2mm×5mmに切り分けたバルサ粒子(代表径2.50mm、密度330kg/m)を使用し、ガス流量を100〜400SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=6.0m/s、V=4.4m/sを得た。
【0097】
[実験例6]
2.9mm×2.9mm×3mmに切り分けたバルサ粒子(代表径2.93mm、密度330kg/m)を使用し、ガス流量を100〜400SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=6.3m/s、V=5.0m/sを得た。
【0098】
[実験例7]
3.2mm×3.2mm×2mmに切り分けたヒノキ粒子(代表径2.62mm、密度420kg/m)を使用し、ガス流量を100〜400SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=6.6m/s、V=5.2m/sを得た。
【0099】
[実験例8]
3.2mm×3.2mm×3mmに切り分けたヒノキ粒子(代表径3.07mm、密度420kg/m)を使用し、ガス流量を100〜400SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=7.9m/s、V=6.4m/sを得た。
【0100】
[実験例9]
2.1mm×2.1mm×2mmに切り分けたヒノキ粒子(代表径2.07mm、密度485kg/m)を使用し、ガス流量を100〜400SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=6.4m/s、V=5.1m/sを得た。
【0101】
[実験例10]
2.1mm×2.1mm×3mmに切り分けたヒノキ粒子(代表径2.33mm、密度485kg/m)を使用し、ガス流量を100〜400SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=7.3m/s、V=5.6m/sを得た。
【0102】
[実験例11]
2.1mm×2.1mm×5mmに切り分けたヒノキ粒子(代表径2.60mm、密度485kg/m)を使用し、ガス流量を100〜400SL/minまで変化させた以外は実験例1と同じ方法でバイオマスの流動試験を行い、V=7.8m/s、V=6.3m/sを得た。
【0103】
図6および図7に実験例1〜11の結果を示す。
図6より、バイオマス粒子52の高密度流動上限高さHにおけるガス流速Vとバイオマス粒子の終末沈降速度計算値uとの比V/uは63%程度、バイオマス粒子の流動上限高さHにおけるガス流速Vとバイオマス粒子の終末沈降速度計算値uとの比V/uは48%程度となる。
【0104】
ここで、一般的なバイオマス粒子として代表粒子径2mm(密度500kg/m)をガス化流動床炉18の下部から25%の高さ位置にバランス流動させることを考える。すなわち、バイオマス粒子の自重による下向きの力と、加熱流動化ガスのアップフローによる上向きの力とをバランスさせて、ガス化流動床炉18の下部から25%の高さ位置にバイオマス粒子を浮遊させる。
【0105】
代表粒子径2mm(密度500kg/m)の終末沈降速度計算値は9.7m/sであり、この値の60%が実際のバランス速度を考慮すると、9.7×0.6=5.8m/sとなる。ここから、ガス化流動床炉18の頂部(流動化ガス流出口111b)における実際のガス速度を求めると、1.6m/sと計算される。
【0106】
そして、ガス化流動床炉18の頂部(流動化ガス流出口111b)まで達するバイオマス粒子径を逆算すると、代表径0.7mmのバイオマス粒子径となる。また、ガス化流動床炉18の底部(流動化ガス流入口111a)での実際のガス流速は11.8m/sとなり、代表計4.6mmのバイオマス粒子が流動可能となる。すなわち、図2に示すガス化流動床炉18を用いた場合、0.7mm〜4.6mmまでの代表径を持つバイオマス粒子がガス化流動床炉18内で流動可能となる。
【0107】
[実験例12]
実験例12では、ガス化流動床炉18は、流動化ガス流入口111a(底部)の内径が20mm、流動化ガス流出口111b(頂部)の内径が50mm、軸長さが1000mmの内筒111によって構成されている。
【0108】
この内筒111の外側に、下部内径40mm、上部内径70mmの外面ガス流路管(図示せず)を設けた場合、内筒111と外面ガス流路管のすきまは10mmとなる。この内筒111と外面ガス流路管のすきまの流路にガス流れが5回旋回するようにらせん状のガイドを取り付けた場合、流路面積は0.002mとなり、ガス流速は1.57m/sで、内筒111と外面ガス流路管のすきまの流路を流れることになる。
【0109】
この場合の内筒111の頂部における遠心効率は8.4、底部の遠心効率は16.8となり、外面ガス流路管を旋回して流通するガスの滞留時間は約0.2sと計算される。遠心力で外面ガス流路管の外壁面に沈降する粒子の移動距離は最大0.01m(10mm)であり、ガス滞留時間が0.2sであることを考慮すれば、0.01/0.2=0.05m/s以上の粒子沈降速度があれば遠心力で粒子分離できる。
【0110】
この内筒111と外面ガス流路管のすきまの流路に流入する粒子は、バイオマスの未ガス化部分である灰分が主成分であると考えられ、その密度を2000kg/mとすると、20μmの粒子の沈降速度は、内筒111の頂部で0.1m/s、底部で0.2m/sとなるため、内筒111の外面を利用して旋回流を形成させた場合は、20μm程度の未ガス化粒子をサイクロン分離できることになる。
【符号の説明】
【0111】
18 ガス化流動床炉
21 ガス化流動床炉外面ガス流路
30 ガス循環供給部
31 加熱流動化ガス供給口
32 バイオマス粒子供給部
34 ガス流路反転部
36 生成ガス取り出し口
41 加熱流動化ガスノズル
42 隙間
45 加熱流動化ガスの流れ
46 ガス化流動床炉外面ガスの流れ
52 バイオマス粒子
100 バイオマスガス化システム
101 バイオマス流動ガス化装置
102 周辺装置
111 内筒
111a 流動化ガス流入口
111b 流動化ガス流出口
112 外筒
バイオマス粒子の高密度流動上限高さ
バイオマス粒子の流動上限高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化流動床炉内に加熱流動化ガスを流通させて、前記ガス化流動床炉内でバイオマス粒子を流動させるバイオマス流動ガス化装置であって、
前記ガス化流動床炉は、
該ガス化流動床炉の底部から頂部に向かって移行するにしたがって漸次拡径する逆円錐形状を有し、
前記底部の断面積に対する前記頂部の断面積の比が2〜100であり、
前記底部と前記頂部との間を結ぶ前記ガス化流動床炉の内壁面が鉛直方向に対して0°よりも大きくかつ10°以下の傾斜角度で傾斜しており、
前記底部から前記頂部に向かって前記加熱流動化ガスが流通されて、前記ガス化流動床炉内における前記加熱流動化ガスのガス線流速が前記底部から前記頂部にかけて連続的に減少するように構成されていることを特徴とするバイオマス流動ガス化装置。
【請求項2】
前記ガス化流動床炉の頂部から流出するガスを前記ガス化流動床炉の外面に沿って降下させるガス化流動床炉外面ガス流路を備えることを特徴とする請求項1に記載のバイオマス流動ガス化装置。
【請求項3】
前記加熱流動化ガスと前記ガス化流動床炉外面ガス流路内のガスの一部を、前記ガス化流動床炉の底部から前記ガス化流動床炉内に供給するガス循環供給部を有することを特徴とする請求項2に記載のバイオマス流動ガス化装置。
【請求項4】
前記ガス化流動床炉の頂部から流出するガスを案内して前記ガス化流動床炉外面ガス流路内において前記ガス化流動床炉の周りを旋回させながら降下させる螺旋状のガイドを有することを特徴とする請求項2又は3に記載のバイオマス流動ガス化装置。
【請求項5】
前記ガス化流動床炉外面ガス流路に、該ガス化流動床炉外面ガス流路内のガスを取り出すための生成ガス取り出し口が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のバイオマス流動ガス化装置。
【請求項6】
前記ガス化流動床炉の頂部から前記ガス化流動床炉内にバイオマス粒子を供給するバイオマス粒子供給部を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のバイオマス流動ガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−168642(P2011−168642A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31300(P2010−31300)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】