説明

バイオマス燃料の製造方法

【課題】EFBを原料とするバイオマス燃料の製造工程を簡易化することができるバイオマス燃料の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のバイオマス燃料の製造方法は、バイオマス燃料の原料としてのEFBを破砕する破砕工程S101と、破砕工程で得られたEFB破砕物にリグニンを添加するリグニン添加工程S103と、リグニンが添加されたEFB破砕物を塊状にして圧縮し塊化させる塊化工程S105と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EFBを原料とするバイオマス燃料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバイオマス燃料に関する分野の技術として、下記特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1では、栽培用の合成樹脂製ネットに絡んだ状態の長芋のつるを巻取り・結束し、これを原料として、破砕、固形化してバイオマス固形燃料を製造するものである。また、近年では、パーム油の搾油後の残渣物として発生するEFB(Empty Fruit Bunch)をバイオマス燃料の原料として利用することが研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−270112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EFBのバイオマス燃料化においては、破砕・粉砕、乾燥、成型を経て固形燃料化することが考えられる。しかしながら、EFBは木材等と比較してかさ密度が小さく水分が多いといった性質のため、成型するためには、木材等に比べ更に手間をかけて破砕・粉砕や乾燥を行なう必要がある。その結果、破砕・粉砕工程や乾燥工程に大きい手間がかかり、製造コストが大きくなってしまう。
【0005】
このような事情に鑑み、本発明は、EFBを原料とするバイオマス燃料の製造工程を簡易化することができるバイオマス燃料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバイオマス燃料の製造方法は、バイオマス燃料の原料としてのEFBを破砕する破砕工程と、破砕工程で得られたEFB破砕物にリグニンを添加するリグニン添加工程と、リグニンが添加されたEFB破砕物を塊状にして圧縮し塊化させる塊化工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本来であれば、圧縮・成型の前にEFBを細かく粉砕しておくことにより、粉砕物同士が密に接触し易くなると共に、圧縮時にはEFB自体が含有するリグニン、糖分(セルロース等)、及びペクチン等が繊維細胞から円滑に浸出する。更に、粉砕物を十分に乾燥させ水分が少ない状態としておくことにより、圧縮時には浸出したリグニン等が接合剤としての機能を十分に発揮し、適切な塊化が可能になる。一方、EFBの粉砕や乾燥が不十分な場合には、リグニン等の浸出量や接合機能が不十分で塊化ができない場合もある。
【0008】
これに対し、上述した本発明の製造方法によれば、リグニン添加工程においてリグニンがEFB破砕物に添加される。これにより、EFB自体に含まれるリグニン等の浸出が少量である状態においても、添加で補われたリグニンの接合機能によってEFB破砕物の塊化が可能になる。また、EFB破砕物の水分が多い場合にも、添加で補われたリグニンの量により接合機能を確保することができる。すなわち、EFBを粉砕することなく破砕するにとどめ、更に乾燥を省略したとしても、EFB破砕物の適切な塊化が可能になる。よって、本発明の製造方法によれば、製造工程を簡易化することができる。
【0009】
具体的には、破砕工程では、EFBに含まれる繊維が所定の平均繊維長になるようにEFBを破砕し、所定の平均繊維長は50〜100mmの値であることとしてもよい。
【0010】
また、破砕工程における平均繊維長と、リグニン添加工程におけるリグニンの添加量と、は、平均繊維長と添加量との間の所定の相関関係に基づいて設定されることとしてもよい。
【0011】
破砕工程におけるEFBの破砕が粗いほどリグニンの浸出量が少ないので、リグニンの必要添加量が多くなるといった相関関係があると考えられる。よって、破砕工程における平均繊維長と、リグニン添加工程におけるリグニンの添加量と、を所定の相関関係の基で設定することにより、破砕工程のコストとリグニン添加工程のコストとの適切なバランスを図り、製造コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、リグニンは、リグニンスルホン酸塩を主成分とする高分子電解質を含むこととしてもよい。またこの場合、リグニン添加工程では、リグニンを含む溶液をEFB破砕物に混合させることとしてもよい。EFB破砕物に対してリグニンを含む溶液を供給することにより、EFB破砕物とリグニンとの混合性が良好になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバイオマス燃料の製造方法によれば、EFBを原料とするバイオマス燃料の製造工程を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るバイオマス燃料の製造方法の一実施形態を示すフロー図である。
【図2】塊化工程で用いられるブリケットマシン等を示す図である。
【図3】EFB破砕物の平均繊維長、リグニン添加量、及び製造コストの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るバイオマス燃料の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態の製造方法は、EFB(Empty Fruit Bunch)を原料としてバイオマス燃料を製造するものである。当該バイオマス燃料は、主に、CFBボイラ(循環流動層ボイラ)の燃料として用いられ、CFBボイラの燃料搬送装置による円滑な搬送を可能とすべく、所定の塊形状に成型されている。ここでEFBとは、ヤシ(例えばアブラヤシ等)の果実からパーム油を搾油した後の残渣物として発生するヤシの空果房及び中果皮をいう。
【0016】
本実施形態のバイオマス燃料の製造方法は、破砕工程と、リグニン添加工程と、塊化工程と、を備えている。以下、各工程について図1を参照しながら順に説明する。
【0017】
(破砕工程)
原料としてのEFBを準備し、公知の破砕機を用いてEFBを破砕する(ステップS101)。ここでは、EFBに含まれる繊維が破断され、当該繊維の平均繊維長が50〜100mmになるように粗く破砕する。得られた破砕物を「EFB破砕物」と称する。なお、「平均繊維長」は、サンプリングした一定重量(例えば1kg)のEFB破砕物に含まれるすべての繊維を抽出し、各繊維の長さを測定し平均値を算出することで得られる。
【0018】
ここでは、EFB破砕物を粉末レベルまで粉砕することは行わない。また、EFB破砕物は比較的多く水分を含むと考えられるが、EFB破砕物の乾燥処理も行わない。従って、平均繊維長50〜100mmの繊維を含み、30〜65重量%の水分を含むEFB破砕物が、後段のリグニン添加工程に送られる。
【0019】
(リグニン添加工程)
次に、破砕工程で得られたEFB破砕物に対して、リグニン(lignin)を添加する(ステップS103)。リグニンは、木材、竹、ワラ等の木化した植物体の主成分の一つであるので、リグニン添加工程においては、木化した植物体に由来するリグニンを採用するものとする。例えばここでは、木化した植物体由来のリグニンとして、製紙工程において木屑の副産物として生成されるリグニンを採用する。製紙工程で生成されるリグニンは、リグニンスルホン酸塩を主成分とする高分子電解質を含み、液状物に溶解している。リグニン添加工程では、リグニンを含む液状物をEFB破砕物に対して混合する。このように、EFB破砕物に対しリグニンを含む溶液を供給することにより、EFB破砕物とリグニンとの混合性が良好になる。また、木化した植物体由来のリグニンを採用することにより、製造されるバイオマス燃料におけるCO排出量の増加が避けられる。
【0020】
(塊化工程)
次に、リグニン添加工程でリグニンが添加されたEFB破砕物を、塊状にして圧縮し塊化させる(ステップS105)。一例としては、図2に例示するような公知のブリケットマシン11を用いる。ブリケットマシン11には、対向して回転する一対のローラ13が設けられており、ローラ13の表面には、成型用の型となる多数の凹部13aが形成されている。ローラ13上方にあるホッパ15にEFB破砕物1が供給される。ホッパ15から下方に供給されるEFB破砕物1が、両ローラ13の凹部13a同士の間に挟み込まれ塊状となる。そして、塊状のEFB破砕物1が、両方の凹部13aにより左右から圧縮され所定形状に塊化される。
【0021】
EFB破砕物1が、凹部13a同士の間の空間で圧縮されると、EFB自身が含有しているリグニン、糖分(セルロース等)及びペクチン等が繊維細胞から浸出する。浸出したこれらの成分に、リグニン添加工程で添加されたリグニンが更に加わり、EFB破砕物同士を接合する接合剤として機能する。そして、EFB破砕物同士が接合され固形化されたEFB塊3が得られる。このEFB塊3が、本実施形態の製造方法により製造されたブリケット状のバイオマス燃料である。なお、EFB破砕物を塊状にして圧縮し塊化させる装置としては、ブリケットマシンに限らず、他の装置を用いてもよい。
【0022】
続いて、上記製造方法による作用効果について説明する。
【0023】
EFBは、木材等に比べて、かさ密度が小さく水分が多いという性質があるものの、木材等と同程度にリグニン、糖分及びペクチン等を含有している。従って本来であれば、木材等と同様に、EFBを細かく粉砕しておく(例えば、粒径8mm以下にする)ことにより、粉砕物同士が密に接触し易くなるとともに、圧縮時にはEFB自体が含有するリグニン等が繊維細胞から円滑に浸出する。更に、EFB粉砕物を十分に乾燥させ水分が少ない状態(例えば、水分が15重量%以下の状態)としておくことにより、圧縮時には浸出したリグニン等が接合剤としての機能を十分に発揮し、適切な塊化が可能になる。ところが、EFBは、かさ密度が小さく水分が多いという性質のために、粉砕や乾燥の負担が特に大きく、製造コストが大きくなってしまう。
【0024】
そこで、本実施形態の製造方法では、原料EFBを細かく粉砕するのではなく、含まれる繊維の平均繊維長が50〜100mmになる程度に粗く破砕することとしている。また、通常は塊化工程の前に行うべきEFB破砕物の乾燥工程を省略することとしている。また、通常は押出成型機を用いてEFB破砕物を押出成型してペレット化するところ、本実施形態の製造方法では、より簡易なブリケットマシンで塊化成型を行うことが可能である。以上により、バイオマス燃料の製造工程の簡略化を図ることができる。また、バイオマス燃料の製造に必要なエネルギーも低減することができる。
【0025】
その一方、原料のEFBを粗く破砕し、EFB破砕物の乾燥を行わない状態では、EFB自体に含まれるリグニン等の浸出量や接合機能が小さいと考えられ、塊化工程において塊化しにくい等の不具合が懸念される。ところが、本実施形態の製造方法では、リグニン添加工程においてリグニンがEFB破砕物に添加される。これにより、EFB自体に含まれるリグニン等の浸出が少量である状態においても、添加で補われたリグニンの接合機能によってEFB破砕物の塊化が可能になる。また、EFB破砕物の水分が多い場合にも、添加で補われたリグニンの量により接合機能を確保することができる。すなわち、平均繊維長50〜100mmになる程度に粗くEFBを破砕し、更に乾燥を省略し破砕EFBの水分が多い状態のままでも、リグニン添加により、EFB破砕物の適切な塊化が可能になる。
【0026】
以上のように、上述したバイオマス燃料の製造方法によれば、バイオマス燃料の塊化性を犠牲にすることなく、製造工程を簡易化することができる。また、バイオマス燃料が適切に塊化され所定の塊形状に成型されることにより、CFBボイラ等の燃料として用いられる場合に、燃料搬送装置によるバイオマス燃料の円滑な搬送が可能になる。
【0027】
続いて、破砕工程における破砕の程度やリグニン添加工程におけるリグニンの添加量(EFB破砕物の量に対するリグニンの量の割合)の設定について説明する。
【0028】
前述したEFB破砕物の塊化のメカニズムから理解されるように、破砕工程におけるEFBの破砕が粗いほど、リグニン添加工程におけるリグニン添加量を多くする必要があり、破砕工程におけるEFBの破砕が細かいほど、リグニン添加工程におけるリグニン添加量を少なく抑えることができる。すなわち、EFB破砕物の平均繊維長とリグニン添加量との間に、所定の正の相関関係を持たせて両者を設定することで、塊化工程における適切な塊化性を確保することができる。
【0029】
更に、破砕工程にかかるコストと、リグニン添加工程にかかるコストと、のバランスを考える。図3のグラフに示すように、EFB破砕物の平均繊維長及びリグニン添加量が大きいほど、破砕工程にかかるコスト(グラフA)は小さく、リグニン添加工程にかかるコスト(グラフB)は大きくなる。EFB破砕物の平均繊維長及びリグニン添加量が小さいほど、破砕工程にかかるコスト(グラフA)は大きく、リグニン添加工程にかかるコスト(グラフB)は小さくなる。以上のようなグラフA,Bに示される関係に基づいて、破砕工程とリグニン添加工程にかかるコスト合計の最小化条件を求めることができる。そして、当該最小化条件に基づいてEFB破砕物の平均繊維長とリグニン添加量とを設定すれば、バイオマス燃料の製造全体のコストを最小化することができる。例えば、グラフA,Bの交点に対応する平均繊維長とリグニン添加量とを選択する。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…EFB破砕物、3…バイオマス燃料、S101…破砕工程、S103…リグニン添加工程、S105…塊化工程。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス燃料の原料としてのEFBを破砕する破砕工程と、
前記破砕工程で得られたEFB破砕物にリグニンを添加するリグニン添加工程と、
前記リグニンが添加された前記EFB破砕物を塊状にして圧縮し塊化させる塊化工程と、を備えることを特徴とするバイオマス燃料の製造方法。
【請求項2】
前記破砕工程では、
前記EFBに含まれる繊維が所定の平均繊維長になるように前記EFBを破砕し、
前記所定の平均繊維長は50〜100mmの値であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマス燃料の製造方法。
【請求項3】
前記破砕工程における前記平均繊維長と、前記リグニン添加工程における前記リグニンの添加量と、は、
前記平均繊維長と前記添加量との間の所定の相関関係に基づいて設定されることを特徴とする請求項2に記載のバイオマス燃料の製造方法。
【請求項4】
前記リグニンは、
リグニンスルホン酸塩を主成分とする高分子電解質を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のバイオマス燃料の製造方法。
【請求項5】
前記リグニン添加工程では、
前記リグニンを含む溶液を前記EFB破砕物に混合させることを特徴とする請求項4に記載のバイオマス燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−255108(P2012−255108A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129460(P2011−129460)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】