説明

バイオマス燃料製造装置

【課題】林業において用材採取後利用価値がなく放置廃棄される梢端部を主とする枝葉や若令間伐材等を森林資源としてバイオマス燃料に加工する技術と機械装置を提供する。
【解決手段】バイオマス燃料を製造する機械装置は、加熱蒸留器6、蒸気発生釜7、蒸気冷却器8、蒸気管9及び加圧機10から構成される。樹木の梢端部を主とする枝葉や若令間伐材を細断したバークを加熱蒸留器6に詰め、蒸気発生釜7で発生させた蒸気を蒸気管9Aで加熱蒸留器6に導き加熱と蒸留を行い、次いで、得られた蒸気を蒸気管9Bによって蒸気冷却器8に導き冷却することで、バイオマス液体燃料の精油を回収し、加熱蒸留器6からバークを取り出すことなく加圧成形できる加圧機10にて加圧成形して、バイオマス固形燃料として木質ブロック燃料。

【発明の詳細な説明】
【技術の分野】
【0001】
樹木よりバイオマス燃料を製造する技術に関する
【背景技術】
【0002】
本発明がバイオマス燃料として採取しようとする樹木精油はオーストラリア等外国ではすでに工業生産されている。日本では昭和50年代に自動車を中心とする燃料のための基礎研究が行なわれたが現在はこの分野での技術開発では途絶えている。しかし樹木精油に関しては生活資材の原料としての使用を目的として採取する技術が進歩しているが残滓物の利用技術はない。
【0003】
本発明が樹木精油の採取を工程の一部にして生産する木質ブロック燃料(以後ブロックと呼ぶ)に類似する技術として木質ペレット燃料(以後ペレットと呼ぶ)がある。従ってブロックの生産技術の面でペレットの生産技術の一部を応用することは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特願2007−168160号
【特許文献2】 特開平10−263303号公開
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】 昭和57年度農林水産省林業試験場機械化部業務報告書P37〜P40「針葉油のエンジンテスト」(独立行政法人森林総合研究所供与)
【非特許文献2】 「森林資源の新しい利用」下巻利用編P57〜P69「有用抽出成分の利用とその展望」(独立行政法人森林総合研究所供与)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
将来の日本の自動車等の燃料の中のバイオマス燃料は樹木精油の様な農産物以外の物を原料とするものが主流となると考えられる。そこで前述のバイオマス燃料として研究された森林資源の利用技術が研究の段階で途絶えてしまった原因を追究し実用技術として再開発するのが第一の課題である。
【0007】
又近年間伐材を中心に生産される木材チップを燃料とする火力発電やペレットによる暖房技術が発達してきているがチップ化できない主要木材部以外の梢端部を中心とする枝葉や若令間伐材は利用の手段がなく焼却処分されるか放置して自然廃棄されている。これ等の林業廃棄材を森林資源と位置付けしバイオマス燃料の原料として活用する技術を実行する機材を開発することが最大の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術の対象となる森林資源とは基本的には樹木と呼ばれている植物であるが他に竹、笹、篠、灌木類等1950年頃まで日本で生活用燃料として利用されていた植物は全て資源と考えてさしつかえない。しかし、ここでは針葉樹の杉又は桧の梢端部を中心とする枝葉を樹木と称して説明して行く。
【0009】
本発明の技術は樹木を工業的に加工して、ブロック状のバイオマス木質燃料として製造することを本来の目的とするものであるが一連の製造工程の中で樹木に含まれている精油と呼ばれている油脂も、バイオマス燃料として生産することを目的に開発した機械装置(以後装置と呼ぶ)である。
【0010】
この装置は予め樹木を森林の現場で粉砕しバークと呼ばれている状態にしたものを加工する技術であって類似する技術にペレット製造の技術が有り実質的に技術の応用は可能であるが製品に対する発想が根本から異るので結果は全く違った物になる。従って本発明が技術上認識する装置とは原料であるバークから精油を採取する機能と精油を採取した残滓物をブロック状に成形する機能を併せ持っていればそれぞれの機能を実施する手段にはこだわらない。
【0011】
従ってここでの説明は装置の詳しい内部構造とその動作までは介入せず主要部の構成体形と働きを説明するに止めるがその目的が精油を採取する機構とブロックを成形する機構が連動するシステムとして工業的に実用化する基本条件を明らかにする事にある為である。
【0012】
装置の基本となる機械構成は従来の樹木精油採取技術(例えば特許文献2を参照)とブロック製造技術(特許文献1を参照)が違った分野で違った目的の独立した技術であったものをバイオマス燃料の生産と言う一つの目的の下に一体化させるものであるが機構的に精油の採取部とブロックの成形の役割を受け持つ部分に分けることはできない。それはブロック製造を目的に開発した装置に精油採取の機能が有ることを発見し技術化したと言うのが正しい由来にある。
【0013】
次に基本となる装置の構成と稼動形態を説明図1により説明していくと森林の現場より搬送されて来たバークは加熱蒸留部▲1▼に送入され蒸気ボイラー▲2▼で発生された高温の蒸気によって加熱されるこの作業の本来の目的は木質繊維を軟らかくしブロックに成形し易くする蒸かしであって同時にバークに含まれている揮発性の精油を揮発させる蒸気蒸留の作業も行うものであるがこの作業は蒸気に変わって熱湯によるものでも結果に差はない。
【0014】
ここではバークをバッチ式で加熱するイメージで説明しているが本格的な工業生産の場合にはバークをベルトコンベアやスリリューフィーダーの様な搬送機によって流動させながら加熱するのが効果的な手段と言える。この作業は現在行われている精油生産の技術そのものであるがブロック製造上の重要な作業工程の一つでもある。
【0015】
加熱処理されたバークは強力な圧力で加圧成形されるが加圧の手段は形枠に加熱後のバークを詰め直接的な加圧法で成形するか圧送機によって形枠に充填する手段を用いるが他にも手段が有るので結果としてブロックに成形する目的が達成できれば特定の機構による加圧成形の手段にこだわる必要はない。
【0016】
これ等の作業によって成形されるブロックの基本となる形状は方形であって本格的な工業生産に当たっては製品の取り扱い即ち利用目的、貯蔵、輸送等の条件による形状、大きさ、重量等需要の要求に合わせる計画的な生産が可能なものである。
【0017】
以上装置の構造と稼働形態等を詳細に説明できないのは最も効果的と判断できる手段がなく内部の構造に於いてはどの様な手段を選択しても結果に差がないと考えられるためである。
【発明の効果】
【0018】
この技術の発想の原点が森林資源である樹木を余すことなくバイオマス燃料化しようとするものなので効果的な森林の保全管理の下で林業にバイオマス生産と言う新しく大きな技術が提供される。
【0019】
この技術によってバイオマス燃料が生産されることは100%近く輸入に頼っている日本のエネルギー事情に大きく貢献することは間違いなく国内の森林は休むことなく生産を続ける油田となり炭田となることは確実なことである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は本発明の装置の機械構成を示す。
【図2】は図1の装置の機能構成を得るための実験装置の機能構成を示す。
【符号の説明】
▲1▼加熱蒸留部 ▲2▼蒸気ボイラー ▲3▼A▲3▼B蒸気管 ▲4▼蒸気冷却部 ▲5▼加圧成形部 ▲6▼加熱蒸留器 ▲7▼蒸気発生釜 ▲8▼蒸気冷却器 ▲9▼A▲9▼B蒸気管 ▲10▼加圧機
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図1によって説明する
【0022】
この装置についてこれまでの説明では精油を採取する機構とブロックを成形する機構が判別できると思われる様な説明であったが実際にはブロック成形の装置として製作し運転した中で工程の一つであるバークの加熱作業を蒸気によって行ったところ精油採取技術の一つである蒸気蒸留の一工程であると言う当初予想しなかった機能が現れたと言う経緯がある。
【0023】
従って精油採取の機構は装置の構造上は工程の最初の部所に位置し装置が稼働した場合最初の作業としてバークを取り込み加熱と共に精油の採取が始まる。この作業では目的をブロック成形のための加熱を優先するか精油採取を優先するか で加熱の時間的操作が異ってくる。
【0024】
加熱の本来の目的は前述にある様にバークの木質繊維を軟くし成形を用易にすることなので何れにしても前工程の加熱を終えたバークは直ちに成形されるが成形の手段は大別して型枠を用いる手段と型枠を使わない手段が有る。更にそれぞれの手段は加圧の方法によっていくつかに分けられるがそれ等の手段の選択は装置を製作する技術者の判断に委ねた方が良い。
【0025】
その中で本発明の装置に採用できると思われるのは次に挙げる3つの手段である。1つ目は型枠にバークを詰め直接加圧する直圧成形、2つ目は圧送機によってバークを型枠に充填する充填成形、3つ目は所定量のバークを前後左右上下に分けた任意の加圧面によって加圧成形する型締りであるがそれぞれ特長が異なるのでバークの状態や目的とするブロックの形状等の条件によって手段を選択しすることが必要である。
【0026】
加圧の手段としては以上3つの手段が効果的と思われるが何れの手段を持っても絶対条件は、バークの原料の木質を形成する組織を破壊し組織の復元力を失わせるだけの大きさの圧力を加えることである。この圧力の大きさは加熱の状態によって反比例して変わるので装置の製作に当っては特に配慮する必要が有る。
【0027】
以上が本発明の装置の実施形態であるが前述の様に結果の主目的を精油の採取におくか、ブロックの生産におくかで機構の構成上精油採取型とブロック製造型に分けた装置の形態となる。例えば精油を多く含むバークを加工する精油採取型の装置では加熱蒸留の能力を強くすることで成形に要する加圧力は必要なだけに小さく止めることができる。又精油の含有量の少ないバークを加工するブロック製造型では加熱を必要最小限に止め加圧力を強力にすることで効率的な機能構成ができる。
【0028】
以上の説明によって理解できる様に基本となる機能の構成を守れば特定の機械的構造にこだわらず多様な手段によって多様な条件に合わせた装置が製作できる。例えば特許文献2の技術によって蒸気蒸留を行った後プラスチックの成形で行われている様な機構によって型枠に予圧充填した後直圧で加圧すると言う様な装置も考えられる。
【実施例】
【0029】
ここではわかり易く説明するために図2の研究初期段階の実験装置によって説明する。この実験で使用したバークは桧の採取直後の太さ5ミリ以下の生の枝葉を細断したものである。このバークを加熱蒸留器▲6▼に詰め蒸気発生釜▲7▼で発生させた蒸気を蒸気管▲9▼Aで加熱蒸留器▲6▼に導き加熱と蒸留を行い目的とする作業を経た蒸気は蒸気管▲9▼Bによって蒸気冷却器▲8▼に導き冷却することで精油を含む水になり自然に分離する。これ等一連の作業の結果を次に示す。
・使用したバーク 樹種 桧 重量 2kg
・加熱蒸留器 形状 円筒状 内容量 6.1リットル
・蒸気発生釜 内容量 10リットル圧力釜
・蒸気温度及び加熱時間 103〜104℃で50分
・蒸気冷却方式 水冷コンデンサ式 冷却水温度20℃+−1
・採取した精油量 約5.2ミリリットル
【0030】
この加熱蒸留器▲6▼は加熱後のバークを取り出すことなく加圧成形できる加圧成形器の型枠の機能を持たせてあるので加熱終了後そのまま加圧成形の作業をする。次に結果を示す。
・加熱前のバークの体積 約6000cm
・加圧方式及び加圧力 油圧による単純直接加圧 圧力170kg/cm
・成形後のブロックの形状、体積 1400cm 円柱状
・精油を含む有機搾汁 約16リットル
・ブロックの硬度は未測定
【産業上の利用可能性】
【0031】
発想の原点が森林資源の活用であるので自然的に林業の新技術として利用されると考えられる。従って生産される樹木精油とブロックのバイオマス燃料は林産物として林業の一翼を坦う可能性が大きい。
【0032】
又林業の段階で生産される精油は粗精油なので石油精製の様な技術が必要となる。従って石油を含めた燃料供給業界が介入する可能性も高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木よりバイオマス燃料となる樹木精油を採取し残滓物をブロック状の木質ブロック燃料に加工することを一貫して行える機械装置の基本となる機能構成。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−102377(P2011−102377A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274944(P2009−274944)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(504207237)
【Fターム(参考)】