説明

バイオマス貯留装置

【課題】バイオマスが保有する水分の影響により貯留槽周辺機器が腐食等の不具合を生じることを防止できるバイオマス貯留装置を提供する。
【解決手段】バイオマスを貯留する貯留槽1と、貯留槽1の底部から切り出されたバイオマスを搬送する搬送手段10とを有するバイオマス貯留装置において、貯留槽1の側壁に開口5を設け、開口5から延設した配管11をバイオマスが供給される負荷側に接続し、配管11上に開口5を介して貯留槽1内の空気を引き抜く吸引手段12を設けるとともに、該吸引手段12の吸込み側の配管11に、槽外から希釈空気を引き込み貯留槽1からの引抜空気に合流させる分岐管21を接続した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを貯留するバイオマス貯留装置に係り、特に、バイオマスが保有する水分の影響を受ける貯留槽内部の湿度管理を可能としたバイオマス貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用火力プラント等において燃料の多様化が急速に進み、従来多く用いられてきた化石燃料の他に、燃料の一つとしてバイオマスを用いる設備が増えている。バイオマスは、COの排出抑制に寄与し且つ非枯渇性資源であることなどからその活用が推進されており、これに応じて各種プラント設備では石炭等の化石燃料からバイオマスに切り替えたり、化石燃料等の他の燃料とバイオマスとの混焼に切り替えたりしている。
【0003】
例えば、バイオマスと石炭等の他の燃料とを混焼する設備では、運び込まれたバイオマスは一旦貯留槽に貯留され、あらかじめ設定された割合となるように他の燃料と混合され燃焼炉に供給される。
このような設備で利用される燃料の貯留槽は、従来バイオマスに特化した貯留槽はほとんど用いられておらず、石炭等の他の固形燃料用の貯留槽が多く用いられていた。その一般的な構造は、上部に燃料投入口を有し、底部に燃料を所定量切り出して排出する燃料排出口を有しており、燃料排出口から排出された燃料はベルトコンベア等の搬送手段により燃料利用先である負荷側へ運搬されるようになっている。
【0004】
ここで、バイオマス用の貯留槽として、特許文献1(実用新案登録第3123376号公報)に飲料用抽出粕の貯留タンクの構成が開示されている。この貯留タンクは、タンク内に設けられた撹拌部や圧空ブローノズル等により飲料用抽出粕が圧縮、固化することを防止し、飲料用抽出粕の円滑な排出を可能としている。また、特許文献2(特許第4402243号公報)には、貯留槽に撹拌手段とスクリューフィーダとを設け、均一且つ連続的にバイオマス等の粒状物を供給するようにした供給装置の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3123376号公報
【特許文献2】特許第4402243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バイオマスは石炭等の化石燃料よりも水分保有量が高く、これにより従来は燃料貯留装置でバイオマス特有の不具合が顕在化していた。
例えばバイオマスに多く用いられるバークは、平均20〜30重量%程度の水分を保有しており、貯留槽上部においてバークの水分は実測値で20重量%程度であるが、下部では50重量%程度になる。このことから、以下の現象により貯留槽で水の垂れ落ちが起きると考えられる。
【0007】
まず、貯留槽内のバイオマスの水分が蒸発し、貯留槽の天井または側壁で冷却され結露して再度水となり、貯留槽の内壁を伝って底部へ移行する。そして、貯留槽の底部に移行した水は、そのまま貯留槽から排出されるか、又は一旦底部のバイオマスが吸収し、バイオマスの自重により搾り出されて貯留槽から排出される。
このようにしてバイオマスが保有する水分が貯留槽から垂れ落ち、コンベアレール部の腐食を引き起こしたりして、コンベアが破損するという問題があった。
【0008】
一般の固形燃料用の貯留槽では水分保有量が高い固形燃料は想定しておらず、また特許文献1や特許文献2に開示される従来のバイオマス用貯留槽においても上記したような問題への対策は講じられていない。
よって、バイオマスの保有する水分に起因したコンベア等の貯留槽周辺機器の腐食等の問題を解消するために、貯留槽内部の湿度管理とそれに付随する技術を確立することが求められている。
【0009】
本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、バイオマスが保有する水分の影響により貯留槽周辺機器に腐食等の問題が生じることを防止できるバイオマス貯留装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るバイオマス貯留装置は、バイオマスを貯留する貯留槽と、前記貯留槽の底部から切り出された前記バイオマスを搬送する搬送手段とを有するバイオマス貯留装置において、前記貯留槽の側壁に開口を設け、前記開口から延設した配管を前記バイオマスが供給される負荷側に接続し、前記配管上に前記開口を介して貯留槽内の空気を引き抜く吸引手段を設けるとともに、該吸引手段の吸込み側の前記配管に、槽外から希釈空気を引き込み前記貯留槽からの引抜空気に合流させる分岐管を接続したことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、貯留槽内の空気を側壁の開口から引き抜く構成としているため、貯留槽内を飽和蒸気圧未満に保つことができる。よって、バイオマスから蒸発した水分による貯留槽内の結露を防止でき、貯留槽からの水分の垂れ落ちが発生しないことから搬送手段等の貯留槽周辺機器の腐食や摩耗、破損等の不具合を防止できる。
このとき、開口からの引抜空気は湿度が高いため引抜空気が通過する配管や吸引手段等が結露して不具合を生じることが考えられるが、本発明では吸引手段より上流側で引抜空気に希釈空気を合流させ湿度を下げるようにしたため、分岐管より下流側の配管や吸引手段等の機器の結露を防止可能である。なお、希釈空気とは、槽内の引抜空気よりも湿度が低い空気であり、好適には外気である。
【0012】
また、前記貯留槽から前記バイオマスを供給される前記負荷が燃焼炉であって、前記燃焼炉に前記配管が接続され、前記引抜空気と前記希釈空気の合流空気を燃焼用空気の少なくとも一部として用いることが好ましい。
これは、貯留槽内にはバイオマスの煤塵や微量の臭気成分が含まれるが、これらを含む引抜空気を希釈空気とともに燃焼炉に投入することで煤塵や臭気成分を燃焼させ無害化することができる。したがって、引抜空気を処理するための空気浄化装置等を新たに設置する必要がなくなりコストの増加を防げる。
【0013】
さらに、前記分岐管上に、前記希釈空気の供給量を調整する希釈空気量調整手段を設けることが好ましい。この希釈空気量調整手段は、手動制御であっても自動制御であってもよい。
一般にバイオマスはその水分保有量が一定ではなく、これにより引抜空気の湿度が変動したり、また引抜空気若しくは希釈空気の温度も変動することがあるが、本構成のように希釈空気量調整手段を設けることで、上記したような条件変動に対応して希釈空気の供給量を調整することが可能となり、合流空気が配管上で結露することを確実に防止できる。
【0014】
さらにまた、前記引抜空気又は前記引抜空気と前記希釈空気の合流空気の湿度を検出する湿度検出手段を設け、前記湿度検出手段で検出した湿度に基づいて前記合流空気が結露しない湿度範囲となるように前記希釈空気量調整手段を制御することが好ましい。
なお、合流空気が結露しない湿度範囲とは、分岐管の接続部から負荷までの配管上で合流空気が結露しない湿度範囲をいう。
このように、湿度検出手段で検出した湿度に基づいて希釈空気量調整手段を制御する構成とすることにより、希釈空気量調整手段を精度良く制御でき、合流空気が配管上で結露することをより確実に防止できる。
【0015】
また、前記貯留槽の前記開口に、空気通過部を有し、槽内部に向けて下方に傾斜した板状のバイオマス流出防止手段を設けることが好ましい。
このように、バイオマス流出防止手段を設けることにより、開口から主として貯留槽内の空気のみを吸引し、バイオマスが開口から槽外へ流出することを防止できる。さらにこのバイオマス流出防止手段は槽内部に向けて下方に傾斜した板状の構成を有するため、貯留槽内部で結露水が生じた場合であっても、結露水は側壁からバイオマス流出防止手段を伝って槽内部へ流下するため、貯留槽外部へ水分が流出することがなく貯留槽周辺機器の流出水分による不具合の発生を防止できる。
【0016】
上記した構成に加えて、前記バイオマス流出防止手段の傾斜角が、前記バイオマスの安息角を超える角度に設定されていることが好ましく、これによりバイオマス流出防止手段上にバイオマスが堆積することを防止できる。
【0017】
また、前記貯留槽の側壁外側に前記開口を囲繞するようにバッファ空間を形成するケーシングを設け、前記ケーシングに前記配管を接続した構成とすることが好ましい。
このように、開口と配管との間にバッファ空間を設けることにより、開口からバイオマスが流出した場合であってもこのバッファ空間に留まり、配管が閉塞することを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上記載のように本発明によれば、貯留槽内の空気を側壁の開口から引き抜く構成としたためバイオマスから蒸発した水分による貯留槽内の結露を防止でき、貯留槽からの水分の垂れ落ちが発生しないことから貯留槽周辺機器の腐食や摩耗、破損等の不具合を防止でき、且つ、貯留槽からの引抜空気に希釈空気を合流させて湿度を下げるようにしたため、配管や吸引手段等の機器の結露を防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るバイオマス貯留装置の基本構成図である。
【図2】ダンパの開度制御を説明する図である。
【図3】貯留槽の開口付近を拡大した図であり、(A)は側断面図で、(B)は(A)のX−X断面図である。
【図4】バイオマス流出防止手段を説明する図である。
【図5】バイオマス流出防止手段の他の構成例を示す図であり、(A)は側断面図で、(B−1)は(A)のY方向矢視図(他の構成例1)で、(B−2)はY方向矢視図(他の構成例2)である。
【図6】本発明の実施形態の一例であり、火力発電プラントの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0021】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るバイオマス貯留装置の基本構成を説明する。
バイオマス貯留装置の主要構成は、バイオマスを貯留する貯留槽1と、貯留槽1から負荷側へバイオマスを搬送する搬送コンベア10とを有するとともに、貯留槽1の側壁に設けた開口5から負荷側へ延設した配管11と、配管11上に設けた小型ファン12と、小型ファン12の吸込み側の配管11に接続した分岐管21とを有する。
なお、バイオマスとは、光合成によって作り出される生物由来の資源でエネルギー利用可能なものをいい、その中でも本実施形態では特に、バーク、間伐材、建設廃材、製材残材等の木質系バイオマスを所定大きさ以下まで破砕したものであることが好ましい。
【0022】
貯留槽1は、槽本体2の上部に燃料投入口3が設けられ、底部に燃料排出部4が設けられ、側壁に開口5が形成されている。槽本体2は、バイオマスから発生する煤塵や臭気成分が飛散することを防止するために密閉型となっている。燃料投入口3は開閉可能となっており、ここから適宜バイオマスが投入される。燃料排出部4は、槽内のバイオマスを所定量ずつ切り出して排出する構成となっており、切り出し量調整手段と排出口とを有する。切り出し量調整手段には、例えば図1に示すような旋回スクリューレクレーマや特許文献2に開示されるようなスクリューフィーダを用いることができる。開口5は、槽本体2の側壁に設けられ、より好ましくは槽本体2の側壁の下部に設けられる。開口5の形状は方形であっても円形であってもよい。また、この開口5は、槽本体2に対して一つだけ設けてもよいし、周方向に複数設けてもよい。なお、図1では一例として、開口5を槽本体2に一つだけ設けた場合を示している。
【0023】
搬送コンベア10は、貯留槽1の燃料排出部4の近傍に設けられ、この燃料排出部4より排出されたバイオマスを負荷側へ搬送する。この搬送コンベア10には、例えばベルトコンベアが用いられる。
ここで、本実施形態において負荷とは、バイオマスを少なくとも原料の一部として用いてエネルギーを生成する装置であり、例えば燃焼炉や生物処理装置やバイオエタノール製造装置等であるが、好適には、少なくとも燃料の一部として木質系バイオマスを用いる燃焼炉(乾留、炭化炉を含む)であるとよい。
【0024】
配管11は、一端側が貯留槽1の開口5に接続され、他端側が負荷へ接続される。この配管11上には、開口5を介して貯留槽1内の空気を引き抜く吸引手段として小型ファン12が設けられており、槽内から引き抜いた引抜空気を負荷へ導くようになっている。小型ファンは、貯留槽1内が飽和蒸気圧未満に保たれるように連続的に又は適宜断続的に作動される。
さらに、小型ファン12の吸込み側の配管11、すなわち開口5と小型ファン12の間の配管11には分岐管21が接続されており、槽外から希釈空気を引き込み貯留槽からの引抜空気に合流させるようになっている。なお、希釈空気とは、槽内の引抜空気よりも湿度が低い空気であり、好適には外気である。
【0025】
このように本実施形態によれば、貯留槽1内の空気を側壁の開口5から引き抜く構成としているため、貯留槽1内を飽和蒸気圧未満に保つことができる。よって、バイオマスから蒸発した水分による貯留槽1内の結露を防止でき、貯留槽1からの水分の垂れ落ちが発生しないことから搬送コンベア10等の貯留槽周辺機器の腐食や摩耗、破損等の不具合を防止できる。
このとき、開口5からの引抜空気は湿度が高いため引抜空気が通過する配管11や小型ファン12等が結露して不具合を生じることが考えられるが、本実施形態では小型ファン12より上流側で引抜空気に希釈空気を合流させ湿度を下げるようにしたため、分岐管21より下流側の配管11や小型ファン12等の機器の結露を防止可能である。
【0026】
また、本実施形態において好適には、分岐管21上に、希釈空気の供給量を調整する希釈空気量調整手段としてダンパ22を設ける。このダンパ22は、手動制御であっても自動制御であってもよい。
一般にバイオマスはその水分保有量が一定ではなく、これにより引抜空気の湿度が変動したり、また引抜空気若しくは希釈空気の温度も変動することがあるが、本構成のようにダンパ22を設けることで、上記したような条件変動に対応して希釈空気の供給量を調整することが可能となり、合流空気が配管11上で結露することを確実に防止できる。
【0027】
さらにまた、本実施形態において好適には、引抜空気又は引抜空気と希釈空気の合流空気の湿度を検出する湿度検出手段23を設け、この湿度検出手段23で検出した湿度に基づいて、合流空気が結露しない湿度範囲となるようにダンパ22を制御する。なお、合流空気が結露しない湿度範囲とは、分岐管21の接続部から負荷までの配管11上で合流空気が結露しない湿度範囲をいう。
【0028】
図1では好ましい構成例として、湿度検出手段23を小型ファン12より下流側に設け、合流空気の湿度を検出するようにしている。このように合流後の合流空気の湿度を検出することで合流空気が結露しない湿度範囲となったことを確認することもできる。この湿度検出手段の他に、合流空気の温度又は引抜空気と希釈空気のそれぞれの温度を検出する温度検出手段(図示略)を設けてもよく、温度検出手段で検出された空気温度に基づいて配管11内で合流空気が結露しない正確な湿度範囲を算出することが好ましい。これに加えて、負荷近傍における合流空気の温度を検出する温度検出手段を設け、最も温度低下して結露しやすい合流空気の温度を検出し、合流空気が結露しない正確な湿度範囲を算出することがより好ましい。このようにして求められた湿度範囲となるように、ダンパ22を制御して希釈空気の供給量を調整する。
【0029】
しかしこの構成に限定されるものではなく、湿度検出手段23を開口5から分岐管21の接続部の間に設けてもよい。この場合、引抜空気と希釈空気のそれぞれの湿度と温度に基づいて引抜空気と希釈空気の混合割合を算出し、希釈空気の供給量をダンパ22で調整する。例えば、抜き出し空気が温度30℃(相対湿度100%)、希釈空気が温度15℃(相対湿度50%)であり、合流後の合流空気が配管11下流側で15℃(希釈空気と同様)まで温度低下する場合、希釈空気を引抜空気の約3倍以上で混合させればよい。
【0030】
このように、湿度検出手段23で検出した湿度に基づいてダンパ22を制御する構成とすることにより、ダンパ22を精度良く制御でき、合流空気が配管11上で結露することをより確実に防止できる。
【0031】
ここで、図2を参照して、ダンパ22の具体的な制御方法を説明する。
湿度検出手段23で合流空気の湿度を検出する場合(図1参照)、合流空気の湿度があらかじめ設定した湿度H1となるまでは、ダンパ22は一定の基準開度に制御する。この湿度H1は、配管11終端(負荷側)においても合流空気が結露しない湿度の上限値である。なお、この上限値は誤差等による安全域を含む。
一方、合流空気の湿度が湿度H1以上となったら、検出湿度に対して比例的にダンパ22の開度を開くように制御する。
このように、設定した湿度H1を基準として、湿度H1以下ではダンパ22を基準開度に維持し、湿度H1以上ではダンパ22を開側に制御する2段階制御を行なうことにより、ダンパ22の制御を容易にし、且つ確実な結露防止が可能となる。
【0032】
また、本実施形態に係るバイオマス貯留装置は、図3乃至図5に示すように、貯留槽1の開口5にバイオマス流出防止手段6を設けることが好ましい。
バイオマス流出防止手段6は、空気を通過させる空気通過部7を有し、貯留槽内部に向けて下方に傾斜した板状に形成される。このバイオマス流出防止手段6は、空気通過部7から主として空気のみを通過させる構成となっており、バイオマスが空気に巻き込まれて槽外へ流出することを阻止する。さらに、バイオマス流出防止手段6は貯留槽内部に向けて下方に傾斜した板状に形成されているため、槽内に結露水が生じた場合であってもこの結露水は側壁からバイオマス流出防止手段6を伝って槽内部へ流下する。したがって、貯留槽外部へ水分が流出することがなく貯留槽周辺機器の流出水分による不具合の発生を防止できる。
【0033】
図3を参照して、バイオマス流出防止手段6の具体的な構成例を説明する。ここで図3は、貯留槽の開口付近を拡大した図であり、(A)は側断面図で、(B)は(A)のX−X断面図である。
バイオマス流出手段6は、開口5に水平方向に架け渡された長尺な板部材6aが鉛直方向に多段に配設された構成を有する。板部材6a同士の間には間隙が形成され、この間隙が空気通過部7となっている。板部材6aは、貯留槽内部に向けて下方に傾斜して設置されている。
【0034】
図4は図3に示したバイオマス流出手段を詳細に説明する図である。
同図に示すように、水平面に対する板部材6aの傾斜角度θ1は、バイオマスの安息角を超える角度に設定されていることが好ましい。これにより板部材6a上にバイオマスが堆積することを防止できる。
また、バイオマス流出手段6は、空気通過部7からのバイオマスの流出を防止するために以下の条件を満たすように設計することが好ましい。
隣接する2つの板部材6aの面の距離dをバイオマスの粒径未満に設定するか、若しくは板部材6aの上端とこれに隣接する板部材6aの下端とを結ぶ面と、水平面とでなす角度θ2がバイオマスの安息角未満となるように設定する。これらの少なくとも一方、好ましくは両方の条件を満たすようにバイオマス流出手段6を設計することで、空気通過部7からのバイオマスの流出を確実に防止できる。
さらにまた、板部材6aは、貯留槽内部に向けて下方に傾斜して設置されていることから、槽外への水分の流出を防止可能である。
【0035】
また、図3に示すように、貯留槽1の側壁外側に開口5を囲繞するようにバッファ空間9を形成するケーシング8を設け、このケーシング8に配管11を接続する構成としてもよい。このように、開口5と配管11との間にバッファ空間9を設けることにより、開口5からバイオマスが流出した場合であってもこのバッファ空間9に留まり、配管11が閉塞することを防止できる。
このとき、ケーシング8に開閉自在な清掃口8aを設けて、バイオマスのダスト等により空気通過部7に詰まりが発生した場合にこれを除去できる構造とすることが好ましい。
【0036】
図5はバイオマス流出防止手段の他の構成例を示す図であり、(A)は側断面図で、(B−1)は(A)のY方向矢視図(他の構成例1)で、(B−2)はY方向矢視図(他の構成例2)である。
図5(A)に示すように、このバイオマス流出防止手段6は、開口5の全面を覆うように配置された一枚の板状に形成されている。
【0037】
さらに、図5(B−1)の他の構成例1に示すように、バイオマス流出防止手段6は鉛直方向に櫛歯が並んだ櫛型に形成されていてもよい。この場合、櫛歯間の隙間が空気通過部7となる。櫛歯は貯留槽内部に向けて下方に傾斜して配置され、水分は櫛歯を伝って槽内部に流れ落ちるようになっている。
さらにまた、図5(B−2)の他の構成例2に示すように、バイオマス流出防止手段6を、枠型にメッシュが嵌め込まれた構成としてもよい。この場合、メッシュが空気通過部7となる。枠型及びメッシュは貯留槽内部に向けて下方に傾斜して配置され、水分は枠型又はメッシュを伝って槽内部に流れ落ちるようになっている。
【0038】
次に、図6を参照して、本実施形態のバイオマス貯留装置が適用されるプラントの一例を説明する。図6は火力発電プラントの全体構成図である。なお、バイオマス貯留装置の詳細な構成については、既に説明しているため省略する。
火力発電プラントは、主に、バイオマス貯留装置と、燃焼炉30と、フィルタ33を含む排ガス処理装置と、誘引送風機34と、煙突35とを備える。
【0039】
燃焼炉30は、一例として流動床ボイラを図示しているが、燃焼炉30の種類はこれに限定されるものではない。バイオマス貯留装置の貯留槽1から切り出されたバイオマスは搬送コンベア10により搬送され、他の燃料と混合されて燃焼炉30に投入される。
また、貯留槽1の開口5から延設された配管11は燃焼炉30の底部に接続され、この配管11上には前述したように分岐管21、小型ファン12が設けられている。さらに、小型ファン12より下流側の配管11上には押し込み送風機15が設けられ、その吸込み側の配管11に燃焼用空気の主空気を引き込む分岐管25が接続されている。
【0040】
この構成により、貯留槽1から引き抜かれた引抜空気は希釈空気と混合された後、主空気とさらに混合されて燃焼炉30の底部より炉内に投入され、燃焼用空気として用いられる。ここで合流空気は主燃焼用空気として用いられる場合を示しているが、燃焼炉30の上部空間に合流空気を投入して二次燃焼用空気として用いることもできる。
【0041】
このように、小型ファン12の下流側に、燃焼用空気の主空気を引き込む分岐管25と押し込み送風機15とを設ける構成としたため全体としての配管構造を小型化できる。また、貯留槽1からの引抜空気を希釈空気や主空気とともに燃焼炉30に投入するようにしたため、引抜空気に含まれる煤塵や臭気成分を燃焼させ無害化することができる。したがって、引抜空気を処理するための空気浄化装置等を新たに設置する必要がなくなりコストの増加を防げる。
【符号の説明】
【0042】
1 貯留槽
2 槽本体
5 開口
6 バイオマス流出防止手段
6a 板部材
7 空気通過部
8 ケーシング
8a 清掃口
9 バッファ空間
10 搬送コンベア
11 配管
12 小型ファン
15 押し込み送風機
21、25 分岐管
22 ダンパ
23 湿度検出手段
30 燃焼炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを貯留する貯留槽と、前記貯留槽の底部から切り出された前記バイオマスを搬送する搬送手段とを有するバイオマス貯留装置において、
前記貯留槽の側壁に開口を設け、前記開口から延設した配管を前記バイオマスが供給される負荷側に接続し、前記配管上に前記開口を介して貯留槽内の空気を引き抜く吸引手段を設けるとともに、該吸引手段の吸込み側の前記配管に、槽外から希釈空気を引き込み前記貯留槽からの引抜空気に合流させる分岐管を接続したことを特徴とするバイオマス貯留装置。
【請求項2】
前記貯留槽から前記バイオマスを供給される前記負荷が燃焼炉であって、
前記燃焼炉に前記配管が接続され、前記引抜空気と前記希釈空気の合流空気を燃焼用空気の少なくとも一部として用いることを特徴とする請求項1に記載のバイオマス貯留装置。
【請求項3】
前記分岐管上に、前記希釈空気の供給量を調整する希釈空気量調整手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオマス貯留装置。
【請求項4】
前記引抜空気又は前記引抜空気と前記希釈空気の合流空気の湿度を検出する湿度検出手段を設け、前記湿度検出手段で検出した湿度に基づいて前記合流空気が結露しない湿度範囲となるように前記希釈空気量調整手段を制御することを特徴とする請求項3に記載のバイオマス貯留装置。
【請求項5】
前記貯留槽の前記開口に、空気通過部を有し、槽内部に向けて下方に傾斜した板状のバイオマス流出防止手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバイオマス貯留装置。
【請求項6】
前記バイオマス流出防止手段の傾斜角が、前記バイオマスの安息角を超える角度に設定されていることを特徴とする請求項5に記載のバイオマス貯留装置。
【請求項7】
前記貯留槽の側壁外側に前記開口を囲繞するようにバッファ空間を形成するケーシングを設け、前記ケーシングに前記配管を接続したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のバイオマス貯留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−255941(P2011−255941A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133241(P2010−133241)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】