バイオマーカーの多色発色検出
【課題】それほど複雑な機器を必要とせず、より速いスループットを可能にし、そして開業病理学者により多くの情報を提供し得る、バイオマーカーの検出のための代替的な方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、サンプル中(例えば、組織サンプル中)の複数の標的分子を検出するための組成物、キット、物品のアセンブリおよび方法論を提供する。特に、元素金属の部位特異的沈着が、生物学的サンプル中の複数の標的(例えば、遺伝子、タンパク質、および染色体)を同時に検出するために、他の検出手段(例えば、他の発色標識、放射標識、化学発光標識および蛍光標識)と併せて使用される。より詳細には、複数の標的が、特異的に沈着される金属および他の発色標識で標識され得、明視野光学顕微鏡を用いることによってインサイチュで発色免疫組織化学的(IHC)検出が可能になる。
【解決手段】本発明は、サンプル中(例えば、組織サンプル中)の複数の標的分子を検出するための組成物、キット、物品のアセンブリおよび方法論を提供する。特に、元素金属の部位特異的沈着が、生物学的サンプル中の複数の標的(例えば、遺伝子、タンパク質、および染色体)を同時に検出するために、他の検出手段(例えば、他の発色標識、放射標識、化学発光標識および蛍光標識)と併せて使用される。より詳細には、複数の標的が、特異的に沈着される金属および他の発色標識で標識され得、明視野光学顕微鏡を用いることによってインサイチュで発色免疫組織化学的(IHC)検出が可能になる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
DNAの構造の決定の後、15年後まで、プローブとして相補配列を用いて分子レベルでDNAまたはRNAを定位する(localize)ための方法は現れ始めなかった。その方法の開発は、化学的変性手順(例えば、高温または水酸化ナトリウム処理)が染色体に沿った様々な領域の染色特性を変化させ得、染色体の特徴を同定および定位するために使用され得るバンドプロフィールの発展をもたらし得るという発見によって推進された。非特許文献1。蛍光色素による示差的染色は、染色体内のバンド構造を解明するために使用された。非特許文献2。現代のインサイチュハイブリダイゼーションの起源は、特定の配列がこれらのバンドに定位されることの発見であった。当初は、検出は、放射性同位体で標識されたRNAプローブを利用して、組織切片および細胞の広がりにおける相補DNAをオートラジオグラフィを用いて定位した:最も初期の3件の報告のうちの1件において、PardueおよびGallは、培養したマウス細胞抽出物およびXenopus細胞抽出物から抽出したチミジン−3H標識RNA画分を使用して、変性させた組織切片において相補DNAを定位した。非特許文献3。放射能放射の散乱するコーン(cone)によって分解能においては扱いにくく制限されるが、これらの初期の実験は、染色体領域への特定のDNA画分の局在化を効果的に示した。
【0002】
インサイチュハイブリダイゼーションの技術は、多くの可能にする技術が発達するにつれて、より広範な用途を達成した。改良されたプローブ調製および標識方法(ランダムプライム標識、ニック翻訳反応、PCRベースの標識が挙げられる)、ならびに標的配列をクローニングするための改良された方法は、プローブ調製をより便利かつ手ごろにした。特に、蛍光標識は、より高い分解能およびより単純な視覚化を提供し、そして放射性プローブの危険性およびオートラジオグラフィシグナルを現像するために必要な長時間の遅延を回避するために導入された。蛍光標識は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、またはFISHの技術を可能にした。非特許文献4。標識化は直接的(蛍光標識が核酸ハイブリダイゼーションプローブに直接結合される)であっても、間接的(ハイブリダイゼーションプローブが標識された二次プローブ(例えば、蛍光標識された抗体または固有の特徴に対して標的されたタンパク質またはそのハイブリダイゼーションプローブに取り込まれたハプテン)によって順に結合される)であってもよい。FISHは、中期の染色体、間期の核、クロマチン繊維、および裸のDNA分子における反復DNA配列および単一コピーDNA配列をマッピングするため、ならびに大きな繰り返しファミリー(代表的には、rDNAおよび主要なタンデムアレイファミリー)の定位を通じての染色体同定および核型分析のために使用されている。しかし、多くのバイオマーカーの検出におけるFISHの広範な用法および感度にもかかわらず、FISHは、必ずしも臨床的な診断の実施に理想的であるとは限らない。なぜなら、複雑な機器を必要とし、蛍光シグナルがすぐに低下するからである。したがって、治療的処置とともにバイオマーカーを利用する臨床診断の迅速な発展に伴って、それほど複雑な機器を必要とせず、より速いスループットを可能にし、そして開業病理学者により多くの情報を提供し得る、バイオマーカーの検出のための代替的な方法の必要性が高まっている。
【非特許文献1】De Jong H.(2003)Genome,46:943−6
【非特許文献2】Caspersson et al.(1972)Int.Rev.Exp.Pathol 11:1−72
【非特許文献3】PardueおよびGall(1969)PNAS 64:600−4
【非特許文献4】Trask(1991)Trends in Genetics 7:149−154
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
(項目1)
試験サンプル中の複数の標的分子を検出するための方法であって、以下:
その複数の標的分子のうちの第1の標的分子を、i)酵素をその第1の標的分子に結合させる工程、ii)その酵素と金属イオンとを、酸化剤および還元剤の存在下で接触させ、それによってその金属イオンが元素金属に還元され、それによって、その元素金属をその酵素の周辺に沈着させる工程、およびiii)その第1の標的分子に結合したその酵素の周辺におけるその沈着した金属の存在、量またはレベルを決定する工程、によって検出する工程;ならびに
その試験サンプル中のその複数の標的分子のうちの少なくとも1種の第2の異なる標的分子を、その第2の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、その検出可能なシグナルは、その沈着した金属と識別可能である、工程
を包含する、方法。
(項目2)
上記第1の標的分子の少なくともいくつかの部分の標識と、上記少なくとも1種の第2の異なる標的分子の少なくともいくつかの部分の標識とが、同時に起こる、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記金属イオンが、銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記金属イオンが銀イオンである、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記酵素が酸化還元酵素である、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記酵素がペルオキシダーゼである、項目1に記載の方法。
(項目7)
上記酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼである、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記酵素が、アビジンまたはストレプトアビジンに結合体化している、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記酵素が抗体に結合体化している、項目1に記載の方法。
(項目10)
上記抗体が、第1の標的分子に対する抗体である、項目9に記載の方法。
(項目11)
上記酸化剤が、酸素を含有する酸化剤である、項目1に記載の方法。
(項目12)
上記還元剤が、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、没食子酸n−プロピル、硫酸4−メチルアミノフェノール、1,4フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、クロロキノン、ブロモキノン、2−メトキシヒドロキノン、ヒドラジン、1−フェニル−3−ピラゾリジノンおよび亜ジチオン酸塩からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目13)
上記第2の異なる標的分子の検出が、放射標識、比色標識、蛍光標識、および化学発光標識からなる群より選択される物質を用いて行われる、項目1に記載の方法。
(項目14)
上記物質が抗体に結合体化している、項目13に記載の方法。
(項目15)
上記第2の異なる標的分子の検出が、酵素を、その第2の異なる標的分子に特異的に結合する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その第2の標的分子に結合させる工程、を包含する、項目13に記載の方法。
(項目16)
酵素が、上記検出可能な物質の存在の検出を容易にする、項目13に記載の方法。
(項目17)
上記第2の異なる標的分子を検出する工程が、酵素を、その第2の異なる標的分子に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、その第2の異なる標的分子に結合させる工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目18)
上記酵素が、上記検出可能なマーカーに特異的に結合する抗体を介してその検出可能なマーカーに結合する、項目17に記載の方法。
(項目19)
上記検出可能なマーカーが、ビオチン、ジニトロフェニル、放射性同位体、または蛍光標識である、項目17に記載の方法。
(項目20)
上記蛍光標識が、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テキサスレッド、ローダミン、およびCy5からなる群より選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
上記酵素が、上記検出可能なマーカーに特異的に結合する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その検出可能なマーカーに結合する、項目17に記載の方法。
(項目22)
上記第2の異なる標的分子がポリヌクレオチド配列であり、そのポリヌクレオチド配列の検出が、酵素を、そのポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、そのポリヌクレオチド配列に結合する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目23)
上記第2の異なる標的分子がポリヌクレオチド配列である、項目1に記載の方法。
(項目24)
上記ポリヌクレオチド配列が、遺伝子、遺伝子産物、非コード配列、またはゲノムである、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記第2の異なる標的分子が、HER2/neu遺伝子もしくはHER2/neu遺伝子産物、または17番染色体のセントロメア配列である、項目23に記載の方法。
(項目26)
項目1に記載の方法であって、さらに以下:
上記第2の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、上記沈着した金属の存在、量またはレベルと比較する工程;
必要に応じて、その第2の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;
必要に応じて、その沈着した金属の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目27)
上記参照サンプルが、正常な健常個体に由来する細胞または組織を含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
上記疾患状態が、疾患の決定または分類、予後、薬物の効力、治療に対する患者の反応性、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、あるいは疾患の再発の可能性である、項目26に記載の方法。
(項目29)
上記疾患が、良性腫瘍、がん、血液学的障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患および糖尿病からなる群より選択される、項目26に記載の方法。
(項目30)
上記疾患状態が、治療に対する患者の反応である、項目26に記載の方法。
(項目31)
項目1に記載の方法であって、さらに以下:
上記試験サンプル中の上記複数の標的分子のうちの少なくとも1種の第3の異なる標的分子を、その第3の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、その検出可能なシグナルは、上記沈着した金属と識別可能であり、かつ上記第2の標的分子の部位における検出可能なシグナルと識別可能である、工程
を包含する、方法。
(項目32)
上記第3の標的分子の検出が、放射標識、比色標識、蛍光標識、および化学発光標識からなる群より選択される標識を用いて行われる、項目31に記載の方法。
(項目33)
上記標識が抗体に結合体化している、項目32に記載の方法。
(項目34)
酵素が上記検出可能な物質の存在の検出を容易にする、項目32に記載の方法。
(項目35)
上記第3の標的分子の検出が、酵素を、第3の標的分子に特異的に結合する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その第3の標的分子に結合させる工程を包含する、項目31に記載の方法。
(項目36)
項目31に記載の方法であって、さらに以下:
上記第3の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目37)
項目30に記載の方法であって、さらに以下:
上記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、沈着した金属の存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目38)
項目37に記載の方法であって、さらに以下:
上記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、上記第2の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目39)
項目31に記載の方法であって、さらに以下:
上記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、上記第2の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目40)
上記標的分子が予め決定されている、項目31に記載の方法。
(項目41)
上記第1の標的分子がHER2/neu遺伝子であり、上記第2の標的分子がHER2タンパク質であり、そして上記第3の標的分子が17番染色体のセントロメア配列である、項目40に記載の方法。
(項目42)
上記標的分子が、予め決定された幾何パターンで間隔があけられている、項目31に記載の方法。
(項目43)
上記第3の標的分子の検出によって生成される上記シグナルが、放射シグナル、比色シグナル、蛍光シグナル、および化学発光シグナルからなる群より選択される、項目31に記載の方法。
(項目44)
標識を上記第3の標的分子に結合させる工程によって生成される上記シグナルが、異なる蛍光の色、異なる明視野の色、異なる放射線放出、および異なる化学発光の色からなる群のうちの1つによって、上記金属沈着、および上記第2の標的分子に結合される上記標識によって生成される上記シグナルと識別可能である、項目43に記載の方法。
(項目45)
上記標的分子が予め決定されている、項目1に記載の方法。
(項目46)
上記標的分子が、HER2遺伝子、HER2タンパク質、および17番染色体のセントロメア配列からなる群より選択される、項目45に記載の方法。
(項目47)
上記標的分子が、フィブリンに対するレセプター、VEGFに対するレセプター、Flt4、VEGF−165に対するレセプター、Tie1、Tie2、エフリン A1−5に対するレセプター、エフリン B1−5に対するレセプター、上皮増殖因子レセプター(EGFR)、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)、神経成長因子レセプター(NGFR)、HER1、HER2/neu、HER3、HER4、Kit、c−Kit、Src、Fes、JAK、Fak、Btk、Syk/ZAP−70、およびAblからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目48)
上記第1の標的分子および第2の標的分子に由来するシグナルが、予め決定された幾何パターンで間隔があけられている、項目1に記載の方法。
(項目49)
標識を上記第2の標的分子に結合させる工程によって生成される上記シグナルが、放射シグナル、比色シグナル、蛍光シグナル、および化学発光シグナルからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目50)
標識を上記第2の標的分子に結合させる工程によって生成される上記シグナルが検出される、項目48に記載の方法。
(項目51)
サンプル中の複数の標的の検出のためのキットであって、以下:
i)銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオン、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属イオン;
ii)酸化剤;
iii)還元剤;ならびに
iv)サンブル中の2種の異なる標的分子に結合する少なくとも2種の結合部分
を備える、キット。
(項目52)
上記還元剤に対する上記金属イオンの重量比が、1:5〜5:1の範囲であり、そして上記酸化剤に対するその還元剤の重量比が、1:10〜10:1の範囲である、項目51に記載のキット。
(項目53)
上記結合部分が、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、核酸、核酸プローブ、炭水化物、薬物、ステロイド;植物、動物、ヒトおよび細菌に由来する生成物、ならびに合成分子からなる群より選択され、ここで、各メンバーは、上記標的分子に対する結合について親和性を有する、項目50に記載のキット。
(項目54)
少なくとも1種の標的分子が、標的遺伝子、非コード配列、またはゲノムであり、そして上記結合部分が、その標的遺伝子またはゲノムに結合する核酸プローブである、項目53に記載のキット。
(項目55)
さらに酵素を備える、項目54に記載のキット。
(項目56)
上記酵素が、上記標的分子に結合する一次抗体または上記結合部分に結合する一次抗体のいずれかを介して、その標的分子と結合される、項目54に記載のキット。
(項目57)
上記酵素がペルオキシダーゼであり;上記金属イオンが銀イオンであり;上記酸化剤が過酸化水素であり;そして上記還元剤がヒドロキノンである、項目56に記載のキット。
(項目58)
上記キットを用いて検出を行うための指示書をさらに備える、項目51に記載のキット。
【0004】
(摘要)
本発明は、サンプル中(例えば、組織サンプル中)の複数の標的分子を検出するための組成物、キット、物品のアセンブリおよび方法論を提供する。特に、元素金属の部位特異的沈着(deposition)が、生物学的サンプル中の複数の標的(例えば、遺伝子、タンパク質、および染色体)を同時に検出するために、他の検出手段(例えば、他の発色標識、放射標識、化学発光標識および蛍光標識)と併せて使用される。より詳細には、複数の標的が、特異的に沈着される金属および他の発色標識で標識され得、明視野光学顕微鏡を用いることによってインサイチュで発色免疫組織化学的(IHC)検出が可能になる。
【0005】
本発明は、サンプル中(例えば、組織サンプル中)の複数の標的分子を検出するための革新的な組成物、キット、物品のアセンブリおよび方法論を提供する。特に、元素金属の部位特異的沈着が、生物学的サンプル中の複数の標的(例えば、遺伝子、タンパク質、および染色体)を同時に検出するために、他の検出手段(例えば、他の発色標識、放射標識、化学発光標識および蛍光標識)と併せて使用される。より詳細には、複数の標的が、特異的に沈着される金属および他の発色標識で標識され得、明視野光学顕微鏡を用いることによってインサイチュで発色免疫組織化学的(IHC)検出が可能になる。生物学的サンプルとしては、液体、懸濁液、固体および固体支持体(例えば、スライド)に固定された形態の、細胞培養物または混合物、細胞学的標本、組織薄片または組織切片、生検、および細胞の核を含むサンプルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0006】
さらに、標的部位または標的分子における元素金属の部位特異的沈着および選択的沈着は、シグナルの発色検出を容易にするだけでなく、細胞の形態およびインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)シグナルを同時に眺めることを可能にし、標準的な機器(例えば、明視野顕微鏡)を用いて正確な結果を提供する。観察の際も、保管の際も、室内照明への曝露の際も、サンプルのフェーディング(fading)は存在しない。細胞および他の分子からの自己蛍光は、いかなる干渉も生じない。標準的な染料(例えば、nuclear fast red、ヘマトキシリンおよびエオシン)が使用され得、そして酵素に沈着した金属と同時に見られ得、組織サンプルの標識点を視覚化する。
【0007】
本発明の一局面において、方法は、インビトロで試験サンプル中の複数の標識分子を検出するための方法である。その方法は、以下:その複数の標的分子のうちの第1の標的分子を、i)酵素をその第1の標的分子に結合させる工程、ii)その酵素と金属イオンとを、酸化剤および還元剤の存在下で接触させ、それによってその金属イオンが元素金属に還元され、それによって、その元素金属をその酵素の周辺に沈着させる工程、およびiii)その第1の標的分子に結合したその酵素の周辺におけるその沈着した金属の存在、量またはレベルを決定する工程、によって検出する工程;ならびにその試験サンプル中の複数の標的分子のうちの第2の異なる標的分子を、その第2の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、その検出可能なシグナルは、上記沈着した金属と識別可能である、工程、を包含する。
【0008】
本明細書中で使用される場合、「金属沈着」は、酵素の周辺における金属(ゼロ酸化状態の金属元素)の集積(buildup)または蓄積(accumulation)と定義される。代表的に、金属沈着は、酵素から約1ミクロンの距離の範囲内で開始するが、沈着は、酵素から約0.005ミクロン、0.01ミクロン、0.1ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、1000ミクロンで開始し得る。当然、金属沈着が続くにつれて、金属蓄積はこの距離を越えて広がり得る。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明の酵素的金属沈着は、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)検出に対して高解像度と組み合わさった高感度および最小限のバックグラウンドで、ペルオキシダーゼおよび活性化剤の存在下での銀金属の沈着、ならびに油浸の必要性なしに従来の明視野顕微鏡での視覚化を可能にする。そのようなアッセイは、本明細書中で「銀インサイチュハイブリダイゼーション」(Silver In Situ Hybridization:SISH)と称される。特に、本発明の酵素的金属沈着は、油浸を必要とすることなく、従来の明視野顕微鏡による染色体中の標的遺伝子の単一コピーの検出を可能にする。本発明はまた、シグナル(例えば、個々の遺伝子コピーに対する別個の金属沈着点)の個々の計数を可能にする解像度で、遺伝子コピーの検出を可能にする。この実施形態のバリエーションにおいて、本発明は、別個の金属沈着点として、1つの核あたり標的遺伝子(例えば、ヒト17番染色体中のHER2遺伝子)の少なくとも2、3、4、5、6、7または8コピーの検出を可能にする。
【0010】
上記方法によると、酵素を第1の標的分子に結合させる工程は、その酵素を、その第1の標的分子に特異的に結合する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その第1の標的分子に結合させる工程、を包含する。
【0011】
必要に応じて、上記結合工程は、上記酵素を、上記第1の標的分子に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、その第1の標的分子に結合させる工程を包含し、ここで、その酵素は、その検出可能なマーカーに特異的に結合する抗体を介して、その検出可能なマーカーに結合する。上記検出可能なマーカーの例としては、ビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェニル(例えば、2,4−ジニトロフェニル(CNP))、放射性同位体または蛍光標識(例えば、フルオロセインイソチオシアネート(FITC))、テキサスレッド(Texas Red)、ローダミンおよびCy5が挙げられるが、これらに限定されない。上記酵素は、上記検出可能なマーカーに特異的に検出する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その検出可能なマーカーに結合し得る。
【0012】
上記標的分子は、標的遺伝子、遺伝子産物、染色体またはゲノムであり得る。例えば、標的遺伝子は、フィブリンに対するレセプター(VE−カドヘリン)、VEGFに対するレセプター(Flt1およびKDR)、VEGF−CおよびVEGF−Dに対するレセプター(Flt4)、VEGF−165に対するレセプター(NP−1およびNP−2)、アンジオポエチン−1,アンジオポエチン−2,アンジオポエチン−3,およびアンジオポエチン−4に対するレセプター(Tie1およびTie2)、FGFに対するレセプター(FGF−R1、−R2、−R3および−R4)、PDGFに対するレセプター(PDGF−R)、エフリン(ephrine)A1−5に対するレセプター(Eph A1−8)、ならびにエフリン B1−5に対するレセプター(Eph B1−8)からなる群より選択される血管新生増殖因子レセプターをコードする遺伝子である。随意的に、上記標的遺伝子は、上皮増殖因子レセプター(EGFR)、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)、血管内皮増殖因子レセプター(VEGFR)、神経成長因子レセプター(NGFR)、線維芽細胞増殖因子レセプター(FGFR)、インスリンレセプター、エフリンレセプター、Met、およびRorからなる群より選択されるレセプター型チロシンキナーゼをコードする遺伝子である。上記上皮増殖因子レセプターの例としては、HER1、HER2/neu(もしくはHER−2/neu)、HER3、またはHER4が挙げられる。また随意的に、上記標的遺伝子は、Kit(例えば、c−Kit)、Src、Fes、JAK、Fak、Btk、Syk/ZAP−70、およびAblからなる群より選択される非レセプター型チロシンキナーゼをコードする遺伝子である。上記方法はさらに、以下:上記沈着した金属の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程、を包含する。
【0013】
上記参照サンプルは、正常で健常な組織または既知の疾患状態を有する別の疾患組織(例えば、乳がん組織)に由来する細胞または組織を含み得る。
【0014】
上記疾患状態は、疾患の決定または分類、予後、薬物の効力、治療に対する患者の反応性、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、あるいは疾患の再発の可能性であり得る。疾患の例としては、良性腫瘍、がん、血液学的障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患および糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
随意的に、上記疾患状態は、治療に対する患者の反応性である。例えば、上記疾患は、乳がんであり;上記治療は、トラスツズマブ(trastruzumab)またはHERCEPTIN治療であり;そして上記標的分子は、HER2/neu遺伝子またはタンパク質である。別の例について、上記疾患は、消化管間質腫瘍(GIST)であり;上記治療は、メシル酸イマチニブまたはGLEEVEC治療であり;そして上記標的分子は、c−Kit遺伝子またはタンパク質である。
【0016】
上記方法によると、金属イオン対還元剤の重量比は、1:5〜5:1の範囲であり得、還元剤対酸化剤の重量比は、1:10〜10:1の範囲であり得る。
【0017】
必要に応じて、上記方法にしたがって、上記接触させる工程は、以下:a)上記酵素を上記金属イオンと組み合わせる工程;b)その酵素と金属イオンとの混合物を、約4〜40℃で約1〜10分間、2〜8分間または3〜5分間インキュベートする工程;c)そのインキュベートした酵素と金属イオンとの混合物を、上記還元剤および上記酸化剤と混合する工程;ならびにd)その酵素と、金属イオンと、還元剤と、酸化剤との混合物を、約4〜40℃で約1〜30分間、2〜20分間、5〜15分間、または8〜14分間インキュベートする工程、を包含する。
【0018】
必要に応じて、上記方法にしたがって、上記接触させる工程は、以下:a)上記金属イオンと上記金属イオンを混合する工程;b)その酵素と金属イオンとの混合物を、約4〜40℃で約1〜10分間、2〜8分間または3〜5分間インキュベートする工程;c)上記還元剤を工程b)の混合物に添加する工程;d)上記酸化剤を工程c)の混合物に添加し、約4〜40℃で約1〜30分間、2〜20分間、5〜15分間、または8〜14分間インキュベートする工程、を包含する。
【0019】
上記方法は、必要に応じて、以下:ある一定の期間の後、上記酵素の周辺への上記元素金属の沈着を停止させる工程、をさらに包含する。この停止させる工程は、残りの金属イオンを酵素から洗い流す工程を包含し得る。必要に応じて、上記停止させる工程は、上記酵素を、チオ硫酸ナトリウムと塩化アンモニウムとを混合した溶液、チオシアン酸カリウムの溶液、フェリシアン化カリウムとチオ硫酸ナトリウムとを混合した溶液、フェリシアン化カリウムの溶液、チオ硫酸ナトリウムの溶液、および過ヨウ素酸ナトリウムの溶液からなる群より選択される溶液でリンスする工程を包含する。
【0020】
上記方法は、必要に応じて、以下:上記酵素の周辺に沈着した元素金属を、オートメタログラフィー(automatallography)または明視野光学顕微鏡によって検出する工程、をさらに包含する。
【0021】
他の検出手段(例えば、別の発色標識(例えば、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、Bajoran Purple、Fast RedおよびFerangi Blue)、比色標識、放射標識および化学発光標識)と合わせる場合、生物学的サンプル中の複数の標的が同時に検出され得る。
【0022】
金属の部位特異的沈着をさらなる検出方法(X線、電子顕微鏡、電気化学的検出、光学的検出、磁気的検出を含む)と合わせることによって、従来の試験方法と比べて、生物学的サンプル中の標的のより高感度かつ/または迅速な検出が可能である。
【0023】
特に、本発明は、疾患および状態の研究、診断、予防および処置のための複数のバイオマーカーの検出のために、使用され得る。例えば、本発明の方法は、哺乳動物(好ましくは、ヒト被験体)の疾患状態を、その哺乳動物に由来するサンプル中の複数のバイオマーカーのレベルを検出することによって決定するために、使用され得る。そのような「疾患状態」は、疾患の決定または分類、診断、薬物の効力、治療(いわゆる「標的療法」)に対する患者の反応性、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、疾患の再発の可能性などと関連し得る。
【0024】
本発明はまた、サンプル中の複数の標的を検出するためのキットを提供し、そのキットは、以下:銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオンおよびそれらの混合物からなる群より選択される金属イオン;酸化剤;還元剤;ならびに酵素を備える。好ましくは、金属イオン対還元剤の重量比は、1:5〜5:1の範囲であり、還元剤対酸化剤の重量比は、1:10〜10:1の範囲である。
【0025】
上記キットはさらに、複数の結合部分または結合因子を備え得、これらの各々は、異なる標的分子(例えば、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、核酸、核酸プローブ、炭水化物、薬物、ステロイド;植物、動物、ヒトおよび細菌に由来する生成物;ならびに合成分子)に結合する。例えば、標的は、標的遺伝子またはゲノムであり、結合部分は、その標的遺伝子またはゲノムに結合する核酸プローブである。酵素は、標的に結合する一次抗体、または結合部分に結合する一次抗体を介して、標的に結合し得る。必要に応じて、酵素は、一次抗体に結合する二次抗体に結合体化される。好ましくは、酵素は、ペルオキシダーゼであり;金属イオンは、銀イオンであり;酸化剤は、過酸化水素であり;そして還元剤は、ヒドロキノンである。
【0026】
上記キットはさらに、酵素の周辺に元素金属を沈着させるプロセスを実行するための指示書を備え得る。
【0027】
本発明によると、上記金属イオンの例は、銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、金属イオンは銀イオンである。
【0028】
上記酵素の例としては、酸化還元酵素(例えば、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ);加水分解酵素(例えば、エステラーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ、ヌクレアーゼ、カルボヒドラーゼ、プロテアーゼ);トランスフェラーゼ;ホスホリラーゼ;脱炭酸酵素;ヒドラーゼ;およびイソメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、酵素は、ペルオキシダーゼである。より好ましくは、酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼである。ペルオキシダーゼは、そのペルオキシダーゼによって着色した基質に変換され得る無色の有機基質を利用し得る。着色した有機基質の例は、3,3’−ジアミノベンジジンまたは5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートである。酵素は、必要に応じて、ストレプトアビジン、または抗体に結合体化され得る。
【0029】
上記酸化剤は、酸素を含有する酸化剤(例えば、過酸化水素)であり得る。
【0030】
上記還元剤の例としては、ヒドロキノン、ヒヒドロキノン誘導体、没食子酸n−プロピル、硫酸4−メチルアミノフェノール、1,4フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、クロロキノン、ブロモキノン、2−メトキシヒドロキノン、ヒドラジン、1−フェニル−3−ピラゾリジノンおよび亜ジチオン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明によると、好ましくは、酵素は、ペルオキシダーゼであり;金属イオンは、酢酸銀の形態であり;酸化剤は、過酸化水素であり;そして還元剤は、ヒドロキノンである。酢酸銀対ヒドロキノンの重量比は、約1:2〜約4:1の範囲であり、必要に応じて、約1:1〜約3:1の範囲であるか、または必要に応じて、約1:1〜約2:1の範囲である。ヒドロキノン対過酸化水素の重量比は、1:2〜6:1の範囲であり、必要に応じて、約1:1〜4:1の範囲であるか、または約1:1〜約3:1の範囲であるか、または必要に応じて、約1:1〜約2:1の範囲である。
【0032】
(参考としての援用)
本明細書で言及されるすべての公報および特許出願は、あたかも各個々の公報または特許出願が参考として援用されると明確にかつ個々に示されているのと同程度に、本明細書中に参考として援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明は、サンプル中(例えば、組織サンプル中)の複数の標的分子を検出するための革新的な組成物、キット、物品のアセンブリおよび方法論を提供する。特に、元素金属の部位特異的沈着が、生物学的サンプル中の複数の標的分子(例えば、遺伝子、タンパク質、および染色体)を同時にかつ感度良く検出するために、他の検出手段(例えば、他の発色標識、放射標識、化学発光標識および蛍光標識)と併せて使用される。そのような標的部位または分子における元素金属の部位特異的かつ選択的な沈着は、シグナルの発色検出を容易にするだけでなく、細胞の形態およびインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)シグナルを同時に眺めることを可能にし、標準的な機器(例えば、明視野顕微鏡)を用いて正確な結果を提供する。
【0034】
(1.元素金属の部位指向性沈着)
本発明の一局面は、サンプル中の標的の周辺における元素金属の酵素触媒性沈着を利用することである。この方法論は、米国特許第6,670,113号および同第7,183,072、ならびに米国特許出願第11/714,682号(2007年3月5日出願)に詳細に記載されており、これらは、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0035】
酵素は、金属イオン自体を基質として受容し得、それらの金属イオンを金属に還元し得ることが見出されている。さらに、酵素はその還元された金属を沈着させ得る。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼが銀イオン(従来は酢酸銀が使用された)と組み合わされており、適切な還元剤(例えば、ヒドロキノン)が添加される場合、金属の酵素媒介性の還元は生じない。しかし、過酸化水素の添加により、酵素は銀イオンを基質として受容し、その銀イオンを銀の金属に還元し、金属沈着が生じる。
【0036】
酵素を金イオン(例えば、デトラブロモ金酸カリウム由来)、または銀イオン(例えば、酢酸銀由来)で前処理し、その後(過剰な前処理の金属イオン溶液を除去するために)任意で洗浄することにより、その後現像混合物が適用されたときに非常に向上された速度の銀沈着を生じる。本明細書中で使用される場合、用語「現像混合物(developing mix)」は、金属沈着を得るために酵素に適用される溶液、と定義される。代表的に、現像混合物は、pHを制御した緩衝液(例えば、0.1Mクエン酸ナトリウム、pH3.8)中に、金属イオン(例えば、酢酸銀)、還元剤(例えば、ヒドロキノン)および酸化剤(例えば、過酸化水素)を含む。上記の酵素的金属還元において、現像混合物は、約3.8のpHでクエン酸緩衝液中に、酢酸銀、ヒドロキノン、および過酸化水素を有利に含んでいた。酵素的金属還元および沈着は、酵素が、例えば、ニトロセルロース紙上に固定されるか、または標的抗原に免疫学的に結合されるかのいずれかで固定される場合に、都合よく観察され得る。
【0037】
本発明によると、任意の適切な銀イオン(例えば、酢酸銀、乳酸銀および硝酸銀)が、ペルオキシダーゼ触媒性銀沈着反応で使用され得る。他の金属イオン溶液(例えば、塩化第一水銀、塩化セシウム、硝酸鉛、硫酸ニッケル、硫酸銅、酢酸パラジウムおよびフェロシアン化カリウムの溶液)もまた、使用され得る。
【0038】
他の酵素もまた、金属イオンの塩に由来する金属イオンを還元することに関して活性である。例えば、デトラブロモ金酸カリウムの前処理を用いて、ヒドロキノンおよび過酸化水素がpH3.8でクエン酸ナトリウム緩衝液中に含まれる場合に、カタラーゼが銀イオンを銀の金属に還元することが見出された。さらに、ラクトペルオキシダーゼは、銀イオンに対して活性であることが見出された。
【0039】
ヒドロキノンは現在最もよく知られた還元剤であるが、他の還元剤もまた、本発明を実施するのに有用であると考えられる。他の還元剤としては、例えば、没食子酸n−プロピル、硫酸4−メチルアミノフェノール、1,4フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、クロロキノン、ブロモキノン、2−メトキシヒドロキノン、ヒドラジン、メトール、アスコルビン酸、1−フェニル−3−ピラゾリジノン(フェニドンアミノフェノール)および亜ジチオン酸塩(例えば、亜ジチオン酸ナトリウム)が挙げられる。1−フェニル−3−ピラゾリジノン、水素化ホウ素ナトリウムおよびボランは、H2O2の必要性を伴わずに還元剤として働き得る。
【0040】
酵素は、次々に連結して所望の金属沈着を生成し得る。例えば、グルコースは、グルコースオキシダーゼに対する基質としての役割を果たし、過酸化水素を生成する。次いで、過酸化水素は、ペルオキシダーゼに対する基質としての役割を果たし、ヒドロキノンの存在下で銀イオンを沈着させる。なぜなら、過酸化水素がその酵素反応で使用されるからである。
【0041】
酵素改変(altered)金属生成物は、水に可溶性であっても、不溶性であってもよい。当然のことながら、本発明の他の実施形態において、改変金属生成物は、有機溶媒に可溶性であり得る。例えば、アウロチオグルコースは、ヒドロキノンおよび過酸化水素がある状態で、ニトロセルロースに結合したホースラディッシュペルオキシダーゼに曝露されたとき、乱されないままの場合は、その酵素の位置で強い黄色になる。しかし、リンスするかまたは攪拌によりその色は容易に分散する。この反応は、光学密度読み取り器につながれ得るか、または新たに形成された有色の生成物を感知するマイクロタイタープレート読み取り器を備えるELISA形式で使用され得る。
【0042】
粒子またはイオンから形成される金属沈着物は、オートメタログラフィーを用いてさらに増強され得る。本明細書で使用される場合、「オートメタログラフィー(autometallography)」は、核となる金属(nucleating metal)の表面上で特異的に生じる、溶液中の金属イオンに由来する金属の沈着と定義される。例えば、約1nm〜50nmのサイズ範囲の金粒子が銀イオンおよび還元剤に曝露された場合、銀金属が金粒子上に沈着し、複合粒子を形成することが公知である。より多くの銀が沈着するにつれて、その複合粒子はサイズが増加する。複合粒子が大きくなるにつれて、その粒子はより可視的かつ検出可能になる。
【0043】
オートメタログラフィーは、酵素的金属沈着と組み合わされ得る。一旦金属が金属粒子として酵素的に沈着されると、金属粒子はオートメタログラフィー溶液に供される。オートメタログラフィーでの沈着物は複合粒子を形成し、酵素的に沈着した金属粒子のサイズを拡大し、その結果、酵素的金属沈着物はより嵩高く、それゆえ検出しやすい。オートメタログラフィーとタンデム(tandem)にした酵素的金属沈着の組み合わせは、増加した感度および/または迅速な検出を提供する。
【0044】
オートメタログラフィーとタンデムにした酵素的金属沈着の使用のさらなる利点は、オートメタログラフィーでの沈着物が酵素的に沈着した粒子の金属と異なる金属であり得ることである。これは、もともとの金属沈着物を1以上の異なるオートメタログラフィーで沈着した金属層でオーバーコーティングすることを可能にする。オートメタログラフィー層はまた、望ましい場合、複合粒子の大部分となり得る。オートメタログラフィーでのコーティングは、酵素的金属沈着物に新たな特性(例えば、変化した酸化率、磁気的特性、光学的特性および電気的特性)を与え得ることが留意されるべきである。例えば、金が酵素的銀沈着物上にオートメタログラフィーで沈着された場合、改良された化学的耐性を与える。なぜなら、金はコアの銀沈着物より酸化に対してより不活性(noble)でありかつより耐性であるからである。酵素的金属沈着物の上にオートメタログラフィーで沈着する銅は、その金属粒子に銅の導電特性および他の特性を与える。
【0045】
種々の方法が、酵素的金属沈着物を検出し観察するために使用され得る。酵素的金属沈着物を検出し観察するのに有用な方法のうちのいくつかとしては、以下が挙げられる:
(肉眼による目視観察)銀の酵素的沈着または金による前処理後の銀の酵素的沈着は、代表的に、微粉化した金属の存在に起因して黒色または褐色を生じる。その色は、肉眼で、特に、明るい色の背景に対して容易に確かめられる。
【0046】
(顕微鏡を用いる目視観察)より高い解像度またはより高感度な検出のために、金属沈着は、顕微鏡下で眺められ得る。金属は、非常に高密度でありかつ不透明であり、そして多くの状況において、明視野照明を用いてこの密度によって容易に検出され得る。この特徴は、サンプル中の標的部位または標的分子を検出するための発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)アッセイで有用である。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)と比べて、CISHは、FISHに必要とされるような蛍光顕微鏡の代わりに、明視野顕微鏡を用いてインサイチュハイブリダイゼーション法が実施および検出されるのを可能にする技術である。FISHが、60倍もしくは100倍の油浸対物レンズおよび最もありふれた診断の研究室で使用されない複数帯域通過蛍光フィルターを備える現代的かつ高価な蛍光顕微鏡を必要とする一方で、CISHは、診断の研究室で一般的に使用される標準的な光学(明視野)顕微鏡での検出を可能にする。また、FISHに関して、蛍光シグナルは数週間以内に消失し得、ハイブリダイゼーションの結果は代表的に高価なCCDカメラを用いて記録されるが、一方で、CISHの結果は、一般的に消失せず、組織サンプルを保管し、後に眺めることを可能にする。したがって、FISHデータの分析および記録は、高価でありかつ時間がかかる。最も重要なことには、組織切片形態学は、FISHには最適ではない。一般に、組織学的詳細は、明視野検出によってより良く理解され、この明視野検出は、CISH検出で可能である。CISHのさらなる利点は、CISH対比染色後に組織切片の広い領域が走査され得ることである。なぜなら、形態学的詳細は、低倍率の対物レンズ(例えば、10倍および20倍)を用いて迅速に明らかになり、一方で、FISH検出は一般的に実質的により高い倍率を必要とし、それゆえ視野を縮めるからである。効率的な処理および都合のよいビューイング(viewing)のような特徴は、自動サンプル処理・検出デバイス(例えば、自動化免疫組織化学スライド調製・染色デバイス)を用いることによって多数のサンプルのハイスループットで自動的なスクリーニングを可能にする。そのような自動化デバイスの代表的な例は、Ventana Medical Systems,Tucson,Arizonaによって提供されるBenchmarkTM XT自動化プラットホームである。BenchmarkTM XT自動化プラットホームの詳細は、製造業者のユーザーマニュアル、製品の説明書など、および米国特許第6,296,809号に記載されており、これらは、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0047】
(反射率)金属は光を反射するので、落射照明(epi−illumination)が、顕微鏡とともにまたは顕微鏡を伴わずに使用され得る。さらに、金属は、反射の際に光を再偏光(repolarize)するので、交差偏光子(crossed polarizer)が非金属性物質からの反射を除去するために使用され得、したがって、シグナル対ノイズ比が改良される。
【0048】
(電子顕微鏡)金属は、透過電子顕微鏡におけるその密度に起因して、電子顕微鏡を介して明瞭に見られる。金属はまた、高い後方散乱係数を有し、走査型電子顕微鏡における後方散乱検出器によって眺められ得る。金属はまた、電子衝撃の際に特徴的なX線を発するので、金属はX線検出器または電子エネルギー損失分光法によって検出され得る。他の方法としては、金属の特徴的な電子回折像の検出が挙げられる。
【0049】
(ポーラログラフ検出、電気化学的検出、または電気的検出)電極に沈着した金属は、その特性を変化させる。適切な電流および電圧を用いて探査することによって、金属が検出され得る。
【0050】
(X線分光法)金属は、X線誘起蛍光またはX線吸収によって検出され得る。
【0051】
(化学的試験)金属を、着色した生成物または他の方法で検出可能な生成物に化学的に変換するために、感度のよい試験が存在する。
【0052】
(質量検出)沈着した金属の質量は、例えば、水晶結晶板マスバランス(quartz crystal mass balance)を用いて検出され得る。交流電圧源を備えるインダクタンス−抵抗−キャパシタンス(LRC)電子回路における水晶は、いくつかの共鳴周波数で振動する。金属がその水晶の表面に沈着した場合、この沈着が水晶の質量およびその共鳴周波数を変化させる。これは、質量変化を測定するための非常に感度のよい方法を提供する。
【0053】
(光散乱)微細な金属沈着物は、溶液または表面の光散乱を変化させる。
【0054】
光を用いて金属の相互作用(吸収、偏光および蛍光を含む)を検出する他の光学的な方法が利用され得る。
【0055】
(磁気的検出)沈着した金属の磁気的特性は、適切な器具(例えば、磁石、コイル)を用いて、または光学・磁気的特性変化を走査して検出され得る。
【0056】
(オートメタログラフィー)シグナルのさらなる増幅は、追加の金属イオンと還元剤と他の添加物とを適用し、初期の酵素的金属沈着において特異的に核をなすさらなる金属沈着をもたらすことによって達成され得る。
【0057】
(走査型プローブ顕微鏡)金属沈着は、種々の走査型プローブ顕微鏡技術(走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡(NSOM)が挙げられる)ならびに圧電的に駆動される走査チップ(scanned tip)を用いる他の関連技術によって、高い空間分解能かつ高感度で認識され得る。
【0058】
酵素的金属沈着を実行するためのこれらの試薬は、キット中に集められ得る。本明細書中で使用される場合、「キット」とは、本発明の方法を実行するための物質または試薬を送達するための任意の送達システムを指す。反応アッセイの文脈において、そのような送達システムとしては、ある場所から別の場所まで、反応試薬(例えば、適切な容器中の酸化剤、還元剤、金属イオン溶液、プローブ、酵素など)および/またはサポーティングマテリアル(supporting material)(例えば、緩衝剤、アッセイを実行するためおよびトラブルシューティングのための指示書)の保存、輸送、または送達を可能にするシステムが挙げられる。例えば、キットは、関連する反応試薬および/またはサポーティングマテリアルを含む1種以上の筐体(例えば、ボックス)を備える。そのような内容物は、意図される受容者に一緒にまたは別々に送達され得る。例えば、第1の容器は、アッセイで使用するための酵素を含み得、一方で第2の容器は、プローブを含む。
【0059】
酵素的金属沈着は、本発明において、生物学的サンプル中の複数の標的を検出するために有用であり、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
(免疫組織化学および免疫細胞化学):
現在、一次抗体が、細胞学的検体、組織切片、および生検における抗原を標的するために広範に使用されている。次いで、抗体は、一般的に、種々の技術(ビオチニル化され、その後アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体(ABC複合体)となり、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)によって褐色を発する二次抗体の使用が挙げられる)によって検出される。必要に応じて他の検出方法(蛍光および化学発光が挙げられる)と合わせて、上記方法もしくは類似の方法によって抗原に局在化されたペルオキシダーゼに金属イオンおよび現像混合物(developing mix)を(好ましくは、金属イオンの前処理とともに)供給することによって、金属沈着法が検出スキームとして使用され得る。DABが沈着する代わりに、金属(例えば、銀)が沈着する。酵素的銀沈着は、明視野顕微鏡(黒色の沈着物が形成される場合)だけでなく、反射顕微鏡、電子顕微鏡および金属検出に適した他の方法によってより良く検出可能であるという利点を有する。したがって、感度は、従来の方法よりも非常に改良される。
【0061】
あるいは、上記の表面酵素基質との金属クラスターまたは金属コロイドが、酵素作用によって抗原特異的な沈着を形成するために使用され得る。金属の酵素的沈着は、電子顕微鏡、側方流動試験、および他の適用のために金−抗体結合体を用いて一般になされるような、抗体に結合した金属ナノ粒子を単に標的することを上回る大きな利点を有する。1つの主な利点は、より多くの基質が提供される限りは金属または金属粒子が酵素によって継続的に沈着されることである。このようにして、金属粒子の非酵素的標的と比べて多量の金属生成物が沈着され得、望ましい増幅効果を達成する。
【0062】
(インサイチュハイブリダイゼーション)
現在多数の実験室試験および病理学的試験がなされており、インタクトなゲノムまたはそのセグメントの一部のいずれかとして、インサイチュでDNA配列またはRNA配列を検出するための感度のよい方法を有することが望ましい。検出可能な部分を伴う相補プローブを標的配列にハイブリダイズさせることによって、これらの配列は見出され、定量され得る。しかし、単一の遺伝子コピーまたは低いレベルの発現を見るために必要とされる検出の制限は、多くの方法の能力を超える。本発明は、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)で標識された核酸プローブを有することによって、サンプル中の染色体中の複数の標的、単一のコピーまたは低レベルの増幅の感度のよい検出を達成するために、あるいは多段階標識(例えば、ビオチン化プローブ、その後アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体またはビオチン−抗体−複合体)を用いるために、使用され得る。次いで、ペルオキシダーゼは、上述のように、金属を沈着させるために利用される。酵素的に沈着された金属は、高度に検出可能であり、以下にさらに記載されるように、この方法を用いることによって信頼性のある単一遺伝子の感度が達成される。
【0063】
(側方流動、ブロット、および膜プロービング)
金属沈着法は、多くの有用な適用(例えば、側方流動診断(例えば、「ディップスティック」妊娠検査キット)、ウエスタンブロット、サザンブロットおよび他のブロット、ならびに膜上で行われる他の試験)で、必要に応じて他の検出スキーム(例えば、放射能、コロイド金、化学発光、比色、および他の検出スキーム)と併せて使用され得る。例えば、標的は、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)と結合されている結合部分でプローブ化され得る。有用な結合部分は、望ましい標的に依存し、例えば、特定の標的と結合する親和性を有する抗体、抗体フラグメント、抗原、ペプチド、核酸、核酸プローブ、炭水化物、薬物、ステロイド、植物および細菌由来の天然産物ならびに合成分子が挙げられる。次いで、酵素的金属沈着が、基質シェル(substrate shell)を有する金属粒子または金属イオンのいずれかと適切な現像混合物(developing mix)を用いて適用され、金属が特定の標的部位の周辺に沈着される。金属沈着は、付着した沈着物または溶液中に分散した形態であり得る。酵素的に沈着した金属は高度に検出可能であり、極めて感度のよい検出方法を提供する。
【0064】
(抗原および他の物質の感度のよい検出)
抗原および他の物質の検出のために他の多くの形式が考案された(例えば、ゲル、細胞培養物、組織切片、マイクロタイタープレートシステムおよび表面センサーの使用)。これらのうちのほとんどは、従来技術の代わりに本発明ならびに代替的な金属の酵素的沈着およびその後の検出に適応するように、容易に適合され得る。このことは、従来の形式を、望ましい特徴(例えば、より高い感度、より低いコスト、記録の持続性および他の利点)を有する新しい改良された形式に変える。従来技術の代わりに金属の酵素的沈着およびその後の検出に置き換えることはまた、従来のシステムに関する多くの不利な点(例えば、放射性物質の使用、漂白、一過性の生成物および高い費用)を排除する。
【0065】
(電子顕微鏡プローブ)
少量の金属が、それらの密度、後方散乱、X線放出またはエネルギー損失によって、電子顕微鏡で容易に検出される。本発明は、抗原または他の部位を特異的に標的するために使用され得、最初に酵素を用い、その後金属が沈着する。酵素的に沈着された検出可能な金属は、標的された部位が高い特異性でかつ高感度で分析されることを可能にする。
【0066】
(2.生物学的サンプルにおける標的分子の例)
本発明は、疾患および状態の研究、遺伝的プロファイリング、診断、予防および/または処置のために、広範な生物学的分子の検出に適用され得る。例えば、本発明の方法は、哺乳動物(好ましくは、ヒト被験体)由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを検出することによって、その哺乳動物の疾患状態を決定するために使用され得る。そのような「疾患状態」は、疾患の決定または分類、予後、薬物の効力、治療に対する患者の反応性(いわゆる「標的治療」)、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、疾患の再発の可能性などに関連し得る。例えば、臨床試験または処置における薬物に応じた患者のバイオマーカーのレベルの変化に関する情報は、患者を、特定の薬物に対してより反応性であるかまたはより反応性の低い下位集団(sub−population)、あるいはその薬物の副作用の影響を受けやすい下位集団に階層化するために利用され得る;正常細胞の参照サンプルと比べて患者のサンプル中の標的バイオマーカーの量が高いことは、その患者がそのバイオマーカーの異常な増幅および/または発現に関連する疾患を有することを示し得る。
【0067】
したがって、本発明は、複数の標的分子(例えば、試験サンプル中のバイオマーカー)
を、好ましくはインビトロで検出するための方法を提供し、その方法は、以下:複数の標的分子のうちの第1の標的分子を、i)酵素をその第1の標的分子に結合させる工程、ii)その酵素を酸化剤および還元剤の存在下で金属イオンと接触させ、それによってその金属イオンが元素金属に還元され、それによって、その元素金属を酵素の周辺に沈着させる工程、およびiii)その第1の標的分子に結合した酵素の周辺における沈着した金属の存在、量またはレベルを決定する工程、によって検出する工程;ならびにその試験サンプル中の複数の標的分子のうちの第2の異なる標的分子を、その第2の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、その検出可能なシグナルは沈着した金属のシグナルと異なる、工程、を包含する。
【0068】
例えば、上記沈着した金属および/または上記第2の標的分子によって生成される検出可能なシグナルは、試験サンプルおよび参照サンプル中の標的分子のプロフィールの相違を決定するために、参照サンプルのものと比較され得る。そのような情報は、その試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定するために使用され得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、上記参照サンプルは、代表的に、患者のサンプルでの測定がその患者のサンプル中にバイオマーカーが過剰量存在するかまたは減少した量で存在するかどうかを決定するために比較される正常な状態または非疾患状態を代表する、1種以上の細胞、異種移植片、または組織サンプルを有する。参照サンプルの性質は、特定のアッセイについて設計上選択できる問題であり、患者自身の正常組織、または健常な個体の集団に由来する組織に由来するかまたはそれによって決定され得る。好ましくは、参照サンプル中のバイオマーカーの量に関する値は、試験された患者のサンプルについて対応する値と本質的に同一の実験条件下で入手される。参照サンプルは、患者サンプルの種類と同じ種類の組織に由来しても、異なる組織型に由来してもよく、参照サンプルが入手される集団は、患者の特徴と適合する特徴(例えば、年齢、性別、人種など)について選択され得る。本発明の適用において、患者サンプルにおけるバイオマーカーの量は、以前に集計された参照サンプルの対応する値と比較され、測定値、平均範囲、平均値(標準偏差を伴う)、または同様の表現として提供される。
【0070】
一局面において、本発明で提供される方法は、レセプター型チロシンキナーゼのファミリーに属し、腫瘍の発達および転移に密接に関連する血管新生増殖因子に対するレセプターを検出するために使用され得る。そのような血管由来の成長因子の例としては、フィブリンに対するレセプター(VE−カドヘリン)、VEGFに対するレセプター(Flt1およびKDR)、VEGF−CおよびVEGF−Dに対するレセプター(Flt4)、VEGF−165に対するレセプター(NP−1およびNP−2)、アンジオポエチン−1、アンジオポエチン−2、アンジオポエチン−3、およびアンジオポエチン−4に対するレセプター(Tie1およびTie 2)、FGFに対するレセプター(FGF−R1、FGF−R2、FGF−R3およびFGF−R4)、PDGFに対するレセプター(PDGF−R)、エフリン(ephrine)A1−5に対するレセプター(Eph A1−8)、ならびにエフリンB1−5に対するレセプター(Eph B1−8)が挙げられるが、これらに限定されない。そのようなレセプターの感度のよい検出は、腫瘍(良性、悪性、または転移性)、および異常な新脈管形成または新生血管形成に関連する他の状態の初期の診断、予後、または病期分類(staging)を可能にする。
【0071】
本発明の方法を用いる検出に適した標的分子としてはまた、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)(例えば、スフィンゴシン−1−ホスフェートもしくはSPPに対するレセプター、リゾホスファチジン酸もしくはLSAに対するレセプター(edgレセプター))、サイトカインレセプター(例えば、腫瘍壊死因子−αもしくはTNF−αに対するレセプター(TNF−αレセプター)およびインターロイキン−8もしくはIL−8に対するレセプター(IL−8レセプター))、プロテアーゼレセプター(例えば、ウロキナーゼに対するレセプター(ウロキナーゼレセプター))、ならびにインテグリン(例えば、トロモスポンジン(thromospondin)−1およびトロモスポンジン−2に対するレセプター(αvβ3インテグリンおよびα2vβ1インテグリン)およびフィブロネクチンに対するレセプター(αvβ3インテグリン))、ならびにマトリックスメタロプロテアーゼが挙げられる。また、抗脈管形成効果を有するタンパク質因子に対するレセプター(例えば、アンギオスタチンに対するレセプター(アンギオスタチン−R(Annexin IIとも呼ばれる))、アンギオスタディン(angiostadin)に対するレセプター(アンギオスタディン結合タンパク質I)、グリピカンに対する低親和性レセプター、エンドスタチンに対するレセプター(エンドスタチン−R)、エンドセリン−1に対するレセプター(エンドセリン−Aレセプター)、アンギオシディン(angiocidin)に対するレセプター(アンギオシディン−R)、レセプターアンギオゲニン(アンギオゲニン−R)、トロモスポンジン−1およびトロモスポンジン−2に対するレセプター(CD36およびCD47)、ならびにタムスタチン(tumstatin)に対するレセプター(タムスタチン−R))も含まれる。さらに他の標的分子としては、T細胞マーカー(例えば、CD3、CD4、CD8、TCR)、B細胞マーカー(例えば、CD20)、細胞増殖指示物質(例えば、Ki−67)、アポトーシス関連指示物質(例えば、カスパーゼ−3、CK8/18、p63)、および系統特異的マーカー/腫瘍細胞指示物質(例えば、CALB2、CD5、CD10、CD31、CD34、CDX2、CHGA、CK5、CK7、CK17、CK20、HSA、MART−1、Pax−5、PSA、S−100、SYP)が挙げられる。
【0072】
別の局面において、本発明は、診断目的または治療目的のために、キナーゼ遺伝子またはその産物を検出するために適用され得る。例えば、キナーゼの異常な活性と関連する疾患を有し、キナーゼのインヒビターを用いる治療から利益を受け得る患者の評価を支援するために、遺伝子またはその産物のレベルが検出され得る。
【0073】
1つのバリエーションにおいて、上記キナーゼは、セリン/スレオニンキナーゼ(例えば、Rafキナーゼ)であり、;キナーゼインヒビターは、BAY 43−9006である。
【0074】
別のバリエーションにおいて、上記キナーゼは、プロテインキナーゼキナーゼ(例えば、Raf−マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)およびプロテインキナーゼB(Akt)キナーゼ)である。
【0075】
なお別のバリエーションにおいて、上記キナーゼは、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)である。ERKのインヒビターとしては、PD98059、PD184352、およびU0126が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
なお別のバリエーションにおいて、上記キナーゼは、ホスファチジルイノシトール 3’−キナーゼ(PI3K)である。PI3Kのインヒビターの例としては、LY294002が挙げられるが、これに限定されない。
【0077】
レセプター型チロシンキナーゼの例としては、上皮増殖因子レセプターファミリー(EGFR)、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)ファミリー、血管内皮増殖因子レセプター(VEGFR)ファミリー、神経成長因子レセプター(NGFR)ファミリー、線維芽細胞増殖因子レセプターファミリー(FGFR)、インスリンレセプターファミリー、エフリンレセプターファミリー、Metファミリー、およびRorファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
上皮増殖因子レセプターファミリーの例としては、HER1、HER2/neu(またはHER2/neu)、HER3、およびHER4が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
上皮増殖因子レセプターファミリーのインヒビターの例としては、トラスツズマブ(trastruzumab)(HERCEPTIN(登録商標))、ZD1839(IRESSA(登録商標)),PD168393、CI1033、IMC−C225、EKB−569、およびレセプター型チロシンキナーゼのCys残基に共有結合するインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
特に、膜貫通型チロシンキナーゼレセプターHER2/neuは、乳がんの約30%で過剰発現されるオンコジーンとして同定された。これらのHER2/neuを過剰発現する乳がんは、特徴的により侵攻性である(aggressive)乳房腫瘍のサブセットを規定し、これらを発症する女性は生存時間がより短い。さらに、HER2/neu遺伝子の増幅は、より大きい増幅および化学療法に対する耐性と関連がある。トラスツズマブ(HER2/neuに特異的なヒト化モノクローナル抗体)は、HER2/neuを過剰発現する転移性の乳がんのマネージメントにおいて広範に使用されている。単剤として、トラスツズマブは、転移性乳がんに活性な多くの単剤の化学療法剤の応答速度と同様の応答速度を生じ、かつ限られた毒性を有する。トラスツズマブと化学療法とを組み合わせることにより、相乗的な抗腫瘍活性を生じ得る。しかし、HER2過剰発現の非存在下では、トラスツズマブを用いるそのような処置はあまり有効ではなく、トラスツズマブは心臓毒性および出血を一緒に引き起こし得る。したがって、発現のレベル、増幅のレベルおよび/またはその2つの組み合わせを決定することは、予後および処置を決定するのに重要である。
【0081】
したがって、本発明の方法は、HER2遺伝子および/またはその産物を検出して、HER2タンパク質を標的する治療的介入(例えば、トラスツズマブの治療)により応答性であり得る患者の選択を導くために使用され得る。例えば、本発明は、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた乳がん組織サンプルにおいて、HER2遺伝子に特異的なヌクレオチドプローブを用いることによって、HER2遺伝子増幅を検出するために適用され得る(図14〜19を参照のこと)。さらに、本発明は、HER2遺伝子増幅およびHER2タンパク質レベルを検出するために適用され得る(図20〜23を参照のこと)。両方のアプローチが、トラスツズマブによる処置が検討される乳がん患者の評価に役立つ。
【0082】
血管内皮増殖因子レセプターファミリーの例としては、VEGFR1、VEGFR2、およびVEGFR3が挙げられるが、これらに限定されない。血管内皮増殖因子レセプターファミリーのインヒビターの例としては、SU6668が挙げられるが、これに限定されない。
【0083】
神経成長因子レセプターファミリーの例としては、trk、trkBおよびtrkCが挙げられるが、これらに限定されない。神経成長因子レセプターファミリーのインヒビターの例としては、CEP−701、CEP−751、およびインドカルバゾール化合物が挙げられるが、これらに限定されない。神経成長因子レセプターファミリーの異常な活性に関連する疾患の例としては、前立腺がん、結腸がん、乳頭がんおよび甲状腺がん、神経腫ならびに骨芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
Metファミリーの例としては、Met、TPR−Met、Ron、c−Sea、およびv−Seaが挙げられるが、これらに限定されない。Metファミリー由来のレセプター型チロシンキナーゼの活性に関連する疾患の例としては、侵襲的に陥入する(in−growing)腫瘍、がん腫、甲状腺の乳頭状がん、結腸がん、腎がん、膵臓がん、卵巣がん、頭部および頚部扁平上皮がんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、Kitファミリー(例えば、c−Kit)、Srcファミリー、Fesファミリー、JAKファミリー、Fakファミリー、Btkファミリー、Syk/ZAP−70ファミリー、およびAblファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
特に、Kitレセプター型チロシンキナーゼは、種々の組織で発現される膜貫通型レセプターであり、そのリガンドである幹細胞因子(SCF)を通じて多面的な生物学的効果を媒介する。Kitの散発性変異、ならびにSCF/Kit経路のオートクライン/パラクライン活性化機構は、種々の悪性腫瘍に関与しており、その転移への主な寄与は、腫瘍増殖を増強し、アポトーシスを減少することにおいての寄与である。例えば、Kitは、しばしば、消化管間質腫瘍(GIST)で変異および活性化され、いくつかの肺がんではKitのリガンド媒介性活性化が存在する。Kitは、Kit誘発性腫瘍の都合のよい標的であり、GISTにおける低分子薬Gleevec(登録商標)(メシル酸イマチニブ、STI571)でのこのレセプターの阻害は、劇的な効力を示している。したがって、本発明の方法は、Kit遺伝子またはその産物を検出し、Kitを標的する治療的発明(例えば、メシル酸イマチニブの治療)により応答性であり得る患者の選択を導くために使用され得る。例えば、本発明は、資格のある病理学者によって評価された患者の病歴、腫瘍形態学、および他の診断試験との関連におけるGISTの診断の補助として、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたGIST組織サンプルにおいてc−Kitに特異的な一次抗体(抗c−Kit抗体)を用いることによってc−Kitタンパク質を検出するために、適用され得る。
【0087】
Srcファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、Src、c−Src、v−Src、Yes、c−Yes、v−Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr、c−Fgr、v−Fgr、p56lck、Tkl、Csk、およびCtkが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
Srcファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、SU101およびCGP 57418Bが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
Srcファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの活性と関連する疾患の例としては、乳がん、がん腫、黒色腫、白血病、および神経芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
Fesファミリーに由来する非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、c−fes/fps、v−fps/fes、p94−c−fes関連タンパク質、およびFerが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
Fesファミリーに由来する非レセプター型チロシンキナーゼの活性に関連する疾患の例としては、間葉起源の腫瘍および造血起源の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
JAKファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、Jak1、Jak2、Tyk2、およびJak3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
JAKファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、tyrphostin、CIS/SOCS/Jabファミリーのメンバー、合成成分AG490、ジメトキシキナゾリン化合物、4−(フェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(3’−ブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、および4−(3’,5’−ジブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
JAKファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの活性に関連する疾患の例としては、間葉起源の腫瘍および造血起源の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
Fakファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、FakおよびCAKβ/Pyk2/RAFTKが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
Fakファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、ドミナントネガティブな変異体S1034−FRNK;Isaria sinclarii由来の代謝産物FTY720、およびFAKアンチセンスオリゴヌクレオチドISIS 15421が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
Fakファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの異常な活性に関連する疾患の例としては、ヒトがん腫、転移傾向性(metastasis−prone)の腫瘍、および造血起源の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
Btkファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、Btk/Atk、Itk/Emt/Tsk、Bmx/Etk、およびItk、Tec、Bmx、ならびにRlkが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
Btkファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、アルファ−シアノ−ベータ−ヒドロキシ−ベータ−メチル−N−(2,5−ジブロモフェニル)プロペンアミドが挙げられるが、これに限定されない。
【0100】
Btkファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの異常な活性に関連する疾患の例としては、B細胞性(B−lineage)白血病およびリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
Syk/ZAP−70ファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、SykおよびZAP−70が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
Syk/ZAP−70ファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、ピセアタンノール(piceatannol)、3,4−ジメチル−10−(3−アミノフェニル)−9−アクリドンオキサレート、およびアクリドン関連化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
Syk/ZAP−70ファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの異常な活性に関連する疾患の例としては、良性の乳がん、乳がん、および間葉起源の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
なお別の局面において、本発明は、核内ホルモンレセプター(例えば、エストロゲン、アンドロゲン、レチノイド、ビタミンD、グルココルチコイドおよびプロゲステロンレセプター)の遺伝子または遺伝子産物を検出するために適用され得る。核内ホルモンレセプタータンパク質は、DNAの特定の配列に結合した場合に細胞核内の転写のオン−オフスイッチの役割を果たすリガンド活性化タンパク質のクラスを形成する。これらのスイッチは、皮膚、骨および脳内の行動中枢の発達および分化、ならびに生殖組織の持続性調節を制御する。核内ホルモンレセプターとそれらの同族リガンドとの間の相互作用は、種々の形態のがん(例えば、乳がん、前立腺がん、骨のがん、および卵巣がん)の発生および発達に関与する。したがって、核内ホルモンレセプターの遺伝子または遺伝子産物を検出することによって、これらの疾患の診断、予後および/または処置が達成され得る。
【0105】
上記のバイオマーカーに関連する特定の疾患または状態以外に、本発明はまた、望ましくない、異常な細胞増殖に関連する疾患または障害の研究、診断、予後および/または処置においてバイオマーカーを検出するために使用され得る。そのような疾患または障害としては、再狭窄(例えば、冠状動脈、頚動脈、および脳の病変)、良性腫瘍、種々の型のがん(例えば、原発腫瘍および腫瘍転移)、血液学的障害、内皮細胞の異常な刺激(アテローム性動脈硬化症)、手術に起因する体組織の傷害、異常な創傷、異常な新脈管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復運動障害、高度に血管新生化していない組織の障害、および臓器移植に関連する増殖反応が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
良性腫瘍の例としては、血管腫、肝細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫(bile duct cystanoma)、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生過形成、トラコーマおよび化膿性肉芽腫が挙げられる。
【0107】
特定の型のがんとしては、乳がん、皮膚がん、骨のがん、前立腺がん、肝臓がん、肺がん、脳のがん、喉頭、胆嚢、すい臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭部および頸部、結腸、胃、気管支、腎臓のがん、基底細胞がん、潰瘍性および乳頭状の両方の扁平上皮がん、転移性皮膚がん、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫(veticulum cell sarcoma)、骨髄腫、巨細胞腫、巨細胞肺腫瘍、島細胞腫、原発性脳腫瘍、急性および慢性のリンパ球性および顆粒球性腫瘍、ヘアリーセル腫瘍、腺腫、過形成、髄様がん、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節細胞腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体質腫瘍(marfanoid habitus tumor)、ウィルムス腫、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫、子宮頸部形成異常およびインサイチュがん腫、神経芽腫、網膜芽腫、軟部組織の肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性肉腫および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性赤血球増加症(polycythermia vera)、腺がん、多形性膠芽腫、髄芽腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮がん、ならびに他のがんおよび肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
異常な新脈管形成に関連する疾患の例としては、関節リウマチ、虚血再灌流関連脳水腫および損傷、皮質虚血、卵巣過形成および血管過多、(多嚢胞性卵巣症候群)、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、ならびに他の眼の脈管形成疾患(例えば、未熟網膜症(水晶体後線維増殖症)、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生緑内障(neuroscular glaucoma)およびOster Webber症候群)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
網膜/脈絡膜新生血管形成の例としては、Bests病、近視、視神経乳頭外側部の限局性陥没(optic pits)、Stargarts病、Pagets病、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維仮黄色腫(pseudoxanthoma elasticum)頚動脈閉塞性疾患(carotid abostructive disease)、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎(vitritis)、ミコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟網膜症、イールズ病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、Bechets病、網膜炎またはchroiditisを引き起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷およびレーザー後合併症(trauma and post−laser complications)、rubesisに関連する疾患(angleの新生血管形成)ならびに血管結合組織または線維組織の異常な増殖によって生じる疾患(増殖性硝子体網膜症のすべての形態を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
角膜の新生血管形成の例としては、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの使い古し(contact lens overwear)、アトピー性角膜炎(atopic keratitis)、上輪部角膜炎、翼状片乾燥角膜炎(pterygium keratitis sicca)、シェーグレン(sjogrens)、酒さ性ざ瘡、フリクテン症(phylectenulosis)、糖尿病性網膜症、未熟網膜症、角膜移植拒絶、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁性表皮剥離(marginal keratolysis)、多発性動脈炎、Wegenerサルコイドーシス、強膜炎、天疱瘡(periphigoid)放射状角膜切開、血管新生緑内障および水晶体後線維増殖、梅毒、ミコバクテリア感染、脂質変性、化学的熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、原虫感染ならびにカポジ肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明はまた、核酸配列におけるバリエーションを検出するために適用され得る。核酸配列におけるバリエーションを検出する能力は、遺伝医学の分野において非常に重要な能力である:遺伝的バリエーションの検出は、とりわけ、遺伝的研究のために多型を同定するため、遺伝性疾患の分子的機序を決定するため、遺伝学カウンセリングのためにキャリアおよび出生前診断を提供するため、そして個別の医学(individualized medicine)を促進するために不可欠である。DNAレベルでの遺伝的バリエーションの検出および分析は、染色体分析(karyotyping)、制限フラグメント長多型(RFLP)または可変ヌクレオチド型多型(variable nucleotide type polymorphisms)(VNTR)の分析、そしてさらに最近は、一塩基多型(SNP)の分析によって行われている。例えば、Lai E,et al.,Genomics,1998,15;54(1):31−8;Gu Z,et al.,Hum Mutat.1998;12(4):221−5;Taillon−Miller P,et al.,Genome Res.1998;8(7):748−54;Weiss K M.,Genome Res.1998;8(7):691−7;Zhao LP,et al.,Am J Hum Genet.1998;63(1):225−40を参照のこと。
【0112】
本発明によると、例えば、SNPに関する核酸プローブは、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)で共有的もしくは非共有的に標識され、そしてSNPの部位にハイブリダイズされる。次いで、上記酵素は、上記のように、金属をSNPの部位に特異的に沈着させるために利用される。複数のプローブが、本明細書に記載される一般的原理に従うのと同様に、標的ポリヌクレオチドの集団において複数のSNPを並行して検出するために利用され得る。
【0113】
他の実施形態において、本発明は、染色体上の遺伝子位置および/または異常を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態において、未知の染色体補体を含むサンプルは、沈着された金属および目的の遺伝子配列に特異的にハイブリダイズするプローブを用いる少なくとも第2の検出可能なシグナル(例えば、FITC)で標識される。次いで、染色体補体における第1および第2の標識の相対的位置が確認される。これらの相対的位置は、染色体補体において所定の標準的な幾何パターンを有する。他の実施形態において、同一の染色体上で互いに近接する遺伝子配列が、凝集した染色体が存在しない細胞周期の段階においてでさえ、第1および第2の標識の相対的位置を決定することによって検出され得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、用語「所定のパターン」とは、プローブ標的位置と正常な染色体補体の番号と異常な染色体補体における改変パターンとの間の予め同定された幾何学的関係を指す。適切な場合、「所定のパターン」は、間期核における異なるプローブ標的の空間的関係および量だけでなく、任意の染色体バンド手順によって一様に染色されるかまたはバンドにされる(band)中期染色体補体における異なるプローブ標的の空間的関係および量も含む。一般的に、目的の正常な各遺伝子型を保有する正常な染色体における単一の隣接するプローブ標的は、本発明のいくつかの実施形態において「所定の正常なパターン」を反映する。
【0115】
(3.複数のバイオマーカーの多色検出)
上に記載された金属の部位特異的酵素沈着は、サンプル中の複数の標的を検出するために、他の検出方法と併せて使用され得る。
【0116】
図9は、標的分子の周辺における金属の沈着の図示である。この図では、ハプテンで標識されたDNAプローブが、標的配列に結合されている。そのハプテンは、抗ハプテン一次抗体によって結合されている。その一次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼが結合体化した二次抗体によって結合されている。溶液中の金属イオンは、結合した酵素の周辺で元素金属に還元される。
【0117】
図10は、他のシグナルと併せて使用される金属沈着の図示である。パネルAは、適切な基質を添加した際に比色シグナルを生成するアルカリホスファターゼが結合体化した抗体によって結合された表面タンパク質を示す。パネルBは、標的配列にハイブリダイズされた蛍光マーカーで標識されたDNAプローブを示す。パネルCは、標的配列に結合されたハプテンで標識されたDNAプローブを示す。そのハプテンは、抗ハプテン一次抗体によって結合されている。その一次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素と多重結合体化した(multiply conjugated)二次抗体によって結合されており、これにより、結合した抗体の周辺における金属の沈着がもたらされる。Dは、3種の異なるプローブが結合されている細胞を示す。各シグナルが局在化しているので、3種すべての標的分子の同時検出が可能である。
【0118】
例えば、本発明の方法は、標的バイオマーカーの存在および/または量を決定するために使用され得る、一方で代替的な方法が他の標的バイオマーカーの存在および/または量を決定するために使用される。そのような代替的な方法の例は、以下に詳細に記載される。
【0119】
従来の多くの検出方法が酵素を利用する。感度のよい検出のために一般に使用される酵素基質の型は、代表的に、比色性基質、放射性基質、蛍光性基質または化学発光性基質である。従来の比色性基質は、発色基質における酵素活性の際に、新たな色を生成する(またはスペクトル吸収が変化する)。この型の検出は、生成されるクロモゲンが光ベースの顕微鏡によってまたはスペクトル機器を用いて容易に検出されるという点で有利である。検出のための機器の費用もまた、一般的に他の方法に伴うコストよりも低い;例えば、病理学において、基質の3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)に作用する酵素ホースラディッシュペルオキシダーゼによって生成される褐色は、生検切片の観察のために単純な明視野光学顕微鏡のみを必要とする。ホースラディッシュペルオキシダーゼと併せて使用され得る他のクロモゲンとしては、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)およびBajoran Purpleが挙げられるが、これらに限定されない。アルカリホスファターゼと併せて使用され得る他のクロモゲンとしては、Fast RedおよびFerangi Blueが挙げられるが、これらに限定されない。多くのクロモゲンが当業者に利用可能であり、Thermo Fisher Scientificのような企業によって提供されるカタログを通じて市販されている。
【0120】
従来の放射性基質は、測定のために放射能を酵素的に放出するかまたは留める。感度はよいが、この型の検出は、放射性物質の操作および処理の危険性、ならびに現在他の方法がその感度に匹敵するかまたは上回ることに起因して、あまり一般的ではなくなっている。組織化学的用途およびオートラジオグラフィのために放射標識することは、代表的に、低い比放射能に起因してフィルムを曝露するのに何ヶ月も必要とし、これは別の不利点である。
【0121】
蛍光性基質は一般的である。なぜなら、蛍光性基質は、合理的に感度がよく、一般的にバックグラウンドが低く、そして数種の異なる色のフルオロフォアが同時に使用され得るからである。
【0122】
化学発光は、十分に高い化学結合エネルギーを有する基質の使用に基づき、その結果、その結合が酵素によって破壊されたときに、エネルギーが可視光の形態で放出される。この方法は、光電子増倍管、アバランシェダイオードまたは他の感度のよい光検出器を用いて得られ得る低いバックグラウンドおよび非常に高い感度に起因して、評判を得ている。あるいは、写真用フィルムが、検出手段として使用され得る。
【0123】
当業者は、金属の部位特異的沈着と併せて使用される検出可能な分子が検出可能な物理的特定または化学的特性を有する任意の物質であり得ることを理解する。そのような検出可能な標識は、ゲル、カラム、および固体基板の分野で十分に開発されており、一般に、そのような方法において有用な標識は、本発明に適用され得る。したがって、標識は、
分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段または化学的手段によって検出可能な任意の組成物である。さらに、蛍光標識は、単一種の有機分子に限定されるのではなく、無機分子、有機分子および/または無機分子の多分子混合物(multi−molecular mixture)、結晶、ヘテロポリマーなどを含むことが理解される。したがって、例えば、シリカシェルに封入されるCdSe−CdSコア−シェルナノ結晶は、生物学的分子に対する結合について容易に誘導体化され得る。Bruchez et al.(1998)Science 281:2013−2016。同様に、高蛍光量子ドット(硫化亜鉛キャップドセレン化カドミウム)は、超高感度生物学的検出で使用するために、生体分子に共有結合されている。WarrenおよびNie(1998)Science 281:2016−2018。
【0124】
本発明において有用な標識としては、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、酵素(例えば、一般に検出可能な酵素として使用される、LacZ、CAT、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、I2−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびグルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼなど)、量子ドットの標識、発色団の標識、酵素の標識、アフィニティーリガンドの標識、電磁スピン標識、重原子標識、ナノ粒子光散乱標識または他のナノ粒子で標識されたプローブ、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、TRITC、ローダミン、テトラメチルローダミン、R−フィコエリトリン、Cy−3、Cy−5、Cy−7、Texas Red、Phar−Red、アロフィコシアニン(APC)、エピトープタグ(例えば、FLAGまたはHAエピトープ)、ならびに酵素タグおよびハプテン結合体(例えば、ジゴキシゲニンまたはジニトロフェニル)、あるいは複合体(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン、アビジン/ビオチンまたは抗原/抗体複合体(例えば、ウサギIgGおよび抗ウサギIgGが挙げられる))を形成し得る結合対のメンバー;フルオロフォア(例えば、ウンベリフェロン(umbelliferone)、フロオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、緑色蛍光タンパク質、エリトロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー(lucifer yellow)、Cascade Blue、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、フィコエリトリン、蛍光ランタニド複合体(例えば、ユーロピウムおよびテルビウムを含むもの)、分子ビーコンおよびそれらの蛍光誘導体、発光性物質(例えば、ルミノール));光散乱性またはプラスモン共鳴性物質(金もしくは銀粒子または量子ドット);あるいは放射性同位元素(14C、123I、124I、131I、125I、Tc99m、32P、35Sまたは3Hが挙げられる);あるいは球形シェル、ならびに例えば、Principles of Fluorescence Spectroscopy、Joseph R.Lakowicz(編者),Plenum Pub Corp,第2版(1999年7月)およびRichard P.HoaglandによるMolecular Probes Handbookの第6版に記載されるような、当業者に公知の任意の他のシグナル生成標識で標識されたプローブが挙げられる。
【0125】
半導体ナノ結晶(例えば、米国特許第6,207,392に記載される量子ドット(すなわち、Qドット))は、Quantum Dot Corporationから市販されており、II〜VI群の半導体のナノ結晶(例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、およびHgTeならびにそれらの混合組成物);ならびにIII〜V群の半導体のナノ結晶(例えば、GaAs、InGaAs、InP、およびInAsならびにそれらの混合組成物)を含む。IV群(例えば、ゲルマニウムもしくはシリコン)の使用、または有機半導体の使用もまた、特定の条件下で実行可能であり得る。半導体ナノ結晶はまた、上記のIII〜V群の化合物、II〜VI群の化合物、IV群の元素、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される2種以上の半導体を含む合金を含み得る。標識の例はまた、米国特許第4,695,554号;同第4,863,875号;同第4,373,932号;および同第4,366,241号に見出され得る。コロイド金属および色素粒子は、米国特許第4,313,734号および同第4,373,932号に開示されている。非金属性コロイドの調製および使用は、米国特許第4,954,452に開示されている。標識として使用するための有機ポリマーラテックス粒子は、米国特許第4,252,459号に開示されている。
【0126】
標的バイオマーカーが核酸である実施形態は、代表的に標的に特異的なプローブの生成を伴う。プローブは、数種の手段(インサイチュハイブリダイゼーションによるマッピング[Landegent et al,Nature 317:175−177,1985]、体細胞ハイブリッドパネル[Ruddle & Creagan,Ann.Rev.Genet.9:431,1981]、またはソートされた染色体のスポットブロット[Lebo et al,Science 225:57−59,1984];染色体の連結分析[Ott,Analysis of Human Genetic Linkage,Johns Hopkins Univ Press,pp.1−197,1985])によって生成され、選択されても;あるいはヒト染色体を含むヒト細胞株もしくは体細胞ハイブリッド[Deaven et al,Cold Spring Harbor Symp.LI:159−168,1986;Lebo et al.Cold Spring Harbor Symp.LI:169−176]、放射体細胞ハイブリッド[Cox et al,Am.J.Hum.Genet.43:A141,1988]、染色体領域の顕微解剖[Claussen et al,Cytometry 11:suppl 4 p.12,1990](これらのすべてはその全体が参考として援用される)、または固有の染色体座(配列タグ化部位もしくはSTS)に特異的なPCRプライマーまたは隣接YACクローンのような他の適切な手段によって同定された酵母人工染色体(YAC)に由来するソートされた染色体ライブラリーからクローン化され、単離されてもよい。
【0127】
プローブは、RNAまたはDNAオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのいずれかであり得、天然に存在するヌクレオチドだけでなくジゴキシゲニン(digoxygenin)dCTP、ビオチンdcTP 7−アザグアノシン、アジドチミジン、イノシン、またはウリジンのようなそれらのアナログを含み得る。プローブは、ゲノムDNA,cDNA、あるいはプラスミド、ファージ、コスミド、YACまたは任意の他の適切なベクター中でクローン化されたウイルスDNAであり得る。プローブは、クローン化されても化学的に合成されてもよい。クローン化される場合、単離されたプローブ核酸フラグメントは、代表的に複製ベクター(ラムダファージ、pBR322、M13、pJB8、c2RB、pcos1EMBL)またはSP6もしくはT7プロモーターを含むベクターに挿入され、そして細菌宿主においてライブラリーとしてクローン化される。一般的なプローブクローニング手順は、Arrand J.E.,Nucleic Acid Hybridization A Practical Approach,Hames B.D.,Higgins,S.J.,Eds.,IRL Press 1985,pp.17−45およびSambrook,J.,Fritsch,E.F.,Maniatis,T.,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,1989,pp.2.1−3.58(これらの両方が参考として本明細書に援用される)に記載されている。
【0128】
あるいは、オリゴヌクレオチドプローブは、蛍光色素、ヌクレオチド上で化学的に活性な基、または標識酵素を用いてまたはこれらを用いずに化学的に合成され得る。他の方法もまた、オリゴヌクレオチドプローブを合成するために使用され得る(例えば、約15〜250塩基のプローブを生成する固相ホスホロアミダイト法)。方法は、Caruthers et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,47:411−418,1982,およびAdams,et al.,J.Am.Chem.Soc.,105:661,1983(これらの両方が参考として本明細書に援用される)に詳述されている。ポリメラーゼ連鎖反応もまた、大量の単離されたプローブを得るために使用され得る。その方法は、米国特許第4,683,202号(参考として援用される)に概説されている。
【0129】
特定の核酸標的に対するプローブを合成する場合、核酸配列の選択が標的特異性を決定することが、当該分野において十分に理解される。代表的に、プローブは、その標的ポリヌクレオチドに対して十分な相補性を有し、その結果、安定かつ特異的な結合が、染色体とプローブとの間で生じる。安定なハイブリダイゼーションに必要とされる相同性の程度は、ハイブリダイゼーション媒体および/または洗浄媒体のストリンジェンシーによって変化する。好ましくは完全に相同なプローブが本発明において使用されるが、当業者は、相同性はより低いが十分な相同性を示すプローブが本発明において使用され得ることを容易に理解する。
【0130】
抗体を用いる標的バイオマーカーの多色検出の一般的な図式表示が、図1および図10に示されている。図1は、標識された一次抗体を用いるタンパク質標的の検出を示す。この一次抗体における標識は、当該分野で公知の、そして/または本明細書中に記載されるような任意の標識(例えば、蛍光指示物質)、適切な基質の添加の際に比色シグナルを生成する酵素、または放射性同位体)であり得る。図1はさらに、一次抗体および二次抗体の両方を利用する第1のポリヌクレオチド標的の検出を示す。この実施形態において、上記二次抗体は、複数の酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)または複数の標識に結合体化される。一般的に、そのような複数の結合は、そのような結合された抗体に由来するシグナルを増加させる。図1はまた、一次抗体および二次抗体を用いる第2のヌクレオチド標的の検出を示す。当業者は、一次抗体が特定の標的分子に特異的であっても、標的に特異的なプローブに結合されたハプテンもしくは他の標的に特異的であってもよいことを認識する。当業者はまた、この方法が複数のタンパク質標的および/または複数のポリヌクレオチド標的を検出するために使用され得ることを認識する。
【0131】
図10は、非標識および/または標識された抗体ならびに直接的なプローブを用いる標的バイオマーカーの直接的標識および間接的標識を示す。図10は、標識された一次抗体を用いるタンパク質標的の検出、標識したヌクレオチドプローブを用いる第1のポリヌクレオチド標的の検出、およびハプテンが結合体化したヌクレオチドプローブと、そのハプテンに特異的な一次抗体と、その一次抗体に特異的な多重結合体(multiple−conjugate)二次抗体とを用いる第2のポリヌクレオチド標的の検出を示す。3種の異なる標識/指示物質を使用することによって、様々な標的分子の存在/レベルを示すシグナルを識別し得る。3種の識別可能なシグナルが存在する細胞の例は、パネルDに図示されている。
【0132】
抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc)、キメラ抗体、一本鎖(scFV)、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および所望の特異性の抗原認識部位を含む任意の他のポリペプチドを包含し得る。抗体は、マウス、ラット、ウサギ、トリ、ヒト、または任意の他の起源のもの(ヒト化抗体を含む)であり得る。
【0133】
標識された抗体は、上記の任意の検出手段に結合体化され得る。ほとんどの実施形態において、上記抗体の少なくとも1つは、酵素に結合体化され、金属の酵素的沈着を可能にする。他の標識された抗体は、ある物質に結合体化され、シグナル(比色シグナル、放射性シグナル、蛍光シグナルおよび/または化学発光シグナルが挙げられるが、これらに限定されない)の検出を可能にする。例えば、一実施形態において、1つの標的バイオマーカーを検出するために使用される少なくとも1つの抗体は、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)と結合体化され、アルカリホスファターゼに対して適切な基質を添加した際の特定の結合の比色分析を可能にする。いくつかの実施形態において、複数の酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)が、標的バイオマーカーを検出するために使用される抗体(例えば、一次、二次、三次など)の少なくとも1つに結合体化される。当該分野で公知である多重結合体抗体を構築する方法、および好ましい方法は、米国特許出願番号第11/413,418号(2006年4月27日出願)に記載されており、その関連する部分は、参考として本明細書に援用される。
【0134】
核酸バイオマーカーの検出に関する実施形態において、直接的に検出可能な物質が核酸プローブに組み込まれ得る。また、上に記載されるように、核酸プローブは、酵素と共有結合もしくは非共有結合され、前述のように結合部位において金属を沈着させるために使用され得る。
【0135】
代表的に、異なるシグナルが標的バイオマーカーを標識するために使用され、それゆえ、同じサンプル中の複数のバイオマーカーの検出を可能にする。例えば、以下の3種の検出機構がいくつかの実施形態で使用され得る:1)第1のバイオマーカーが比色性の指示物質を用いて直接的もしくは間接的に検出される;2)第2のバイオマーカーが金属沈着の指示物質を用いて直接的もしくは間接的に検出される;そして3)第3のバイオマーカーが蛍光指示物質を用いて直接的もしくは間接的に検出される。当業者は、複数のバイオマーカーを検出するために併せて用いられる場合、個々の標識が代表的に互いに容易に識別可能であることを理解する。いくつかの実施形態において、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種またはそれ以上の種類の個々のバイオマーカーが検出される。
【0136】
一実施形態において、個々の標的バイオマーカーの検出は、連続して行われ得る。他の実施形態において、個々の標的バイオマーカーの検出は、同時または実質的に同時に行われ得る。さらに他の実施形態において、個々の標的バイオマーカーの連続的検出と同時もしくは実質的に同時の検出との組み合わせが行われ得る。細胞、細胞フラグメント、組織、および/または生物学的サンプルもしくは環境サンプル中のバイオマーカーの検出に関する実施形態において、適切な染色(例えば、ヘマトキシリン、クリスタルバイオレット、クマシーブルー、Nuclear Fast Red、Methyl Green、Methyl Blueなど)が、試験を補助するために使用され得る。
【0137】
異なるシグナルを用いるバイオマーカーの検出は、蛍光マーカーを用いて記載されている(FISH)(米国特許第5,665,540号)。触媒的銀沈着の後のNanogoldプローブの結合が、標的分子を検出するために使用されている(Hainfeld,J.F.およびF.R.Furuya,(1995)Silver Enhancement of Nanogold and Undecagoldにおける「Immunogold−Silver Staining:Principles,Methods and Applications」,,M.A.Hayat(編);pp.71−96)、一方で触媒的金沈着の後のNanogoldプローブの結合が記載されている(Hainfeld,J.F.およびR.D.Powell,(2002)「Gold and Silver Staining:Techniques in Molecular Morphology」における「Silver− And Gold−Based Autometallography Of Nanogold」,HackerおよびGu(編),pp.29−46。
【0138】
これらのアプローチの各々は、特定の欠点を有する。具体的には、FISHは、蛍光光学および高い倍率を必要とする。さらに、細胞形態学は、多くの場合決定するのが困難である。蛍光標識された標本は、蛍光が弱まり(fade)得、そして永久には保存され得ない。銀で増強されたNanogoldプローブ標識は、時間がかかり、反応条件が制限的であり、光感受性であり、そしていくらかの非特異性を示す。金で増強されたNanogoldプローブ標識は、定量的解釈が不可能である。本発明は、これらの制限のすべてを克服し、自動化方法に容易に適応され、ワークフロー、効率およびスループットを改良するという予想外の結果を有する。さらに、本発明は、高品質で定量的な結果をもたらし、その結果は容易に解釈される。
【0139】
本発明の特定の局面を一般的に記載してきたが、以下の実施例は、本発明がより容易に理解され得るように例示の目的で含まれ、他に明確に示されない限り本発明の範囲を制限することを全く意図しない。
【実施例】
【0140】
(実施例1 SISH検出による組織中のHER2遺伝子の単一コピーの検出)
本実施例では、本発明の方法を使用して、インサイチュで遺伝子(例えば、正常な組織および乳がん組織におけるHER2遺伝子)の単一コピーを、銀インサイチュハイブリダイゼーション(「SISH」)を用いて感度よくかつ選択的に検出した。
【0141】
ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた(FFPE)正常な乳房上皮を含むヒト乳がんを、ポジティブコントロールとして使用した。FFPE組織を含むスライドを調製し、標準的な手順に従って操作される自動染色システムBenchMarkTM XT(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を用いることによって、自動的に染色した。
【0142】
予めプログラム化したプロトコル「XT SISH iVIEWTM SILVER」を使用して、自動化インサイチュハイブリダイゼーションによってすべての組織を調製し、染色した。脱パラフィン化オプションを、EZ PrepTM溶液(Ventana P/N 950−102)下、75℃で20分間選択した。その溶液を、リンスノズルを通じて適用し、これにより、スライド上にその溶液の約200μl〜300μlの残留容積を残す。次いで、そのスライドをある温度で4分間インキュベートする。このプロセスを5回繰り返す。細胞コンディショニングオプションもまた選択し、CC2試薬(Ventana P/N 950−123、これは、高pH回復溶液であり、細胞膜を可溶化する役割を果たし、これにより遺伝物質を標的プローブハイブリダイゼーションに利用しやすくする)下で実行した。この溶液をEZ prepの残留容積に適用し、90℃で20分間加熱する。細胞のコンディショニング後、ISHプロテアーゼ3(Ventana P/N 780−4149,Bacillus licheniformusから単離されたVIII型プロテアーゼ)を用いてプロテアーゼ消化を選択した。約100μlのISHプロテアーゼ3を、200〜300μlの反応緩衝液に分配し、37℃で4時間インキュベートする。組織に適用した検出システムは、本明細書に記載されるiVIEWTM SILVER(Ventana,P/N 790−098)検出システムであった。簡単に述べると、HER2遺伝子の全コード配列にわたるビオチン化HER2遺伝子プローブ(Ventana,P/N 780−2840)を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて、正常組織およびがん組織の両方におけるHER2遺伝子にハイブリダイズさせた。続いて、抗体−ビオチンウサギポリクローナル抗体、次いで、ヒツジ抗体−ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体抗体を、その組織とともにインキュベートする。発色試薬の適用前に、スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液で洗浄した。試薬の適用前に、スライド上の約100μlの洗浄残留物、試薬A(0.18%酢酸銀)、試薬B(0.18%ヒドロキノン)、および試薬C(0.07%過酸化水素)(各100μl)をスライド上に分配した。試薬Aを、最初に適用し37℃で4分間インキュベートする。リンスせずに、試薬Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせる。最後に、試薬Cを試薬Aおよび試薬Bのプールに添加し、37℃で最後に4分間インキュベートする。
【0143】
図2は、100倍での顕微鏡写真であり、正常な乳管組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。1細胞あたり1〜2個のシグナル(通常の補体)が存在する。その組織を、ヘマトキシリンII(親油性の生物学的染料)で紫色に対比染色する。ヘマトキシリンIIは、ヘテロクロマチンの核酸およびヒストンタンパク質に対する媒染染料複合体(mordant dye complex)の結合によって、細胞核を紫色に染色する(Ventana P/N 790−2208)。リンスした後、ブルーイング試薬(bluing reagent)、高pH金属塩および炭酸塩溶液を適用し、ヘマトキシリンと反応させて、青色の対比染色を生じた(Ventana P/N 760−2037)。したがって、図2は、本発明の方法を使用することによって、HER2遺伝子の単一コピーが正常な乳房組織で検出され得ることを示す。
【0144】
図3は、100倍での顕微鏡写真であり、HER2について増幅していない乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。図3に示されるように、HER2遺伝子の2つの単一コピーの通常の補体が容易に識別可能である。したがって、図3は、本発明の方法を用いることによって、HER2遺伝子の単一コピーがHER2遺伝子を増幅していない乳房腫瘍組織で検出され得ることを示す。
【0145】
図4は、100倍での顕微鏡写真であり、低レベルでHER2遺伝子増幅した乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多数の(numerous)コピーとして沈着した銀金属のドットを示す(3〜5コピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。したがって、図4は、本発明の方法を用いることによって、HER2遺伝子の複数のコピーが、低レベルでHER2遺伝子増幅した乳房腫瘍組織で検出され得ることを示す。
【0146】
図5は、100倍での顕微鏡写真であり、相対的により高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図4に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多くの(many)コピーとして沈着した銀金属のドットを示す(6以上のコピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。高レベルのHER2遺伝子増幅に起因して、銀金属シグナルが未分解になり始め、銀金属の大きなクラスターへと融合するようである。したがって、図5は、本発明の方法を用いることによって、HER2の多数のコピーが、高いレベルでHER2遺伝子増幅した乳房腫瘍組織で検出され得、銀金属のドットのサイズは標的遺伝子の増幅のレベルに対応することを示す。
【0147】
図6は、100倍での顕微鏡写真であり、さらに高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図5に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多くのコピーとして沈着した銀金属のドットを示す。非常に高いレベルのHER2遺伝子増幅に起因して、銀金属シグナルが強すぎて融合した状態になり、銀金属の大きなドットを形成する。この実験は、本発明の方法が、インサイチュで標的遺伝子の単一コピーだけでなく標的遺伝子の複数のコピーを感度よくかつ選択的に検出し得ること;および金属シグナルの強度は標的遺伝子の増幅のレベルに対応することをさらに示した。
【0148】
別の実験では、HER2遺伝子の遺伝子コピーを検出し、バックグラウンド染色をさらに減少させるために、試薬A、BおよびCの濃度、ならびに銀染色反応条件を調整して、アッセイの感度をさらに改良した。簡単に述べると、DNP(2,4−ジニトロフェニル)標識HER2遺伝子プローブ(Ventana Medical Systems Product No.780−4332)を、アッセイで使用するために2mg/mlのヒトDNAを含む80% Hybrizolに配合した。本発明による銀インサイチュハイブリダイゼーション(「SISH」)を、BenchMarkTMシリーズの機器(Ventana Medical Systems,Tucson,AZ)と併せて利用可能な自動化ISHプロトコルを用いて、ガラス顕微鏡スライドに取り付けたホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた厚さ4ミクロンのヒト乳房腫瘍組織切片で行った。簡単に述べると、パラフィン除去およびプロテアーゼ処理の後、DNP標識HER2特異的プローブとのハイブリダイゼーションを、2×SSCおよび23%ホルムアミド中で52℃にて2時間行った。2×SSCで洗浄した後、ウサギ抗−DNP抗体(2μg/ml)を適用し、その後、37℃で20分間インキュベートした。洗浄後、ヤギHRP結合体化抗ウサギ抗体を適用し(15μg/ml)、さらに20分間インキュベートした。100mMのクエン酸緩衝液(pH3.9)で洗浄した後、酢酸銀の溶液(3.68mg/ml)を適用し、4分間インキュベートした。それを再び洗浄し、酢酸銀(3.68mg/ml)とともに2回目のインキュベーションをそのスライドに適用し、4分間インキュベートした。洗浄せずに、酢酸銀溶液の容積と等しい容積のヒドロキノン溶液(0.1Mクエン酸(pH3.8)中1.78mg/ml)を、そのスライドに適用し、その後、酢酸銀溶液の容積と等しい容積の0.09% w/v過酸化水素の溶液を適用した結果、酢酸銀の最終濃度は1.23mg/ml(または0.123% w/v)となり、ヒドロキノンは0.6mg/ml(または0.06% w/v)、そして0.03% w/v過酸化水素となった。12分後、そのスライドを、取り付けのために洗浄し、乾燥させた。銀染色後、製造業者の指示にしたがって、ブルーイング試薬(Ventana Medical Systems Product No.760−2037)とともに、核対比染色(ヘマトキシリン、Ventana PN 790−2208)を適用した。
【0149】
例示的なSISHの結果は、図7および8に示されており、これらは光照射野顕微鏡写真である。図7は、HER2標的配列が増幅されていない(2倍体)サンプルを示す。このサンプル中の細胞は、2もしくはそれ未満のハイブリダイゼーションシグナル(暗いドットとして見える)を示す。図8は、HER2標的配列が何倍もの2倍体コピー数に増幅されているサンプルを示す。ハイブリダイゼーションシグナルは、黒色点の多発性(multifocal)の集合体として見える。図2および3と比べて、図7で示されるHER2遺伝子の別個の単一コピーは、バックグラウンドレベルがより低く、さらにより識別可能である。
【0150】
(実施例2 SISHによる組織中のHER2遺伝子の単一コピーの検出)
なお別の実験では、本発明の方法を使用して、SISH検出とともに反復減損(repeat−depleted)HER2プローブを用いて、インサイチュで遺伝子の単一コピー(例えば、通常のHER2遺伝子および増幅されたHER2遺伝子)を感度良くかつ選択的に検出した。
【0151】
ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた(FFPE)ヒト乳がん細胞株異種移植腫瘍を、アッセイの最適化のために使用した。FFPE腫瘍切片を含むスライドを調製し、自動化染色システムBenchMarkTM XT(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を用いて標準的な手順に従って操作して染色した。
【0152】
予めプログラム化したプロトコル「XT SISH iVIEWTM SILVER」を使用して、自動化インサイチュハイブリダイゼーションによってすべての組織を調製し、染色した。脱パラフィン化オプションを、EZ PrepTM溶液(Ventana P/N 950−102)下、75℃で20分間選択した。その溶液を、リンスノズルを通じて適用し、これにより、スライド上にその溶液の約200〜300μlの残留溶液を残す。次いで、そのスライドを75℃で4分間インキュベートした。この溶液の適用およびインキュベーションをさらに4回繰り返した。細胞コンディショニングオプションもまた選択し、CC2試薬(Ventana P/N 950−123、これは、高pH回復溶液であり、細胞膜を可溶化する役割を果たし、これにより遺伝物質を標的プローブハイブリダイゼーションに利用しやすくする)を用いて実行した。この溶液をEZ prepの残留容積に適用し、90℃で20分間加熱した。細胞のコンディショニング後、ISHプロテアーゼ3(Ventana P/N 780−4149,Bacillus licheniformusから単離されたVIII型プロテアーゼ)を用いてプロテアーゼ消化を選択した。約100μlのISHプロテアーゼ3を200〜300μlの反応緩衝液(Ventana P/N 950−300)に分配し、37℃で4分間インキュベートした。
【0153】
銀沈着によるHER2遺伝子の検出を、本質的に上記の実施例に記載されるように(ただし、HER2プローブは、複合反復減損(CORD)プローブをジニトロフェノール(DNP)標識することによって構築した)行った。CORDプローブは、米国仮特許出願第60/841,896号(2006年9月1日出願)(その全体が参考として本明細書に援用される)に詳細に記載されている。簡単に述べると、CORDプローブは、反復性核酸エレメント(例えば、Alu反復、L1反復、およびアルファサテライトDNA)が完全にまたは実質的に完全に減損したものであり、セグメントごと(segment by segment)を基準にして、標的配列の固有のコードエレメントまたは非コードエレメントに対応する。
【0154】
HER2遺伝子の全コード配列にわたるDNP標識HER2遺伝子プローブ(Ventana P/N 780−4332)を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて、異種移植腫瘍切片中のHER2遺伝子にハイブリダイズさせた。次に、iVIEWTM SILVER(Ventana,P/N 790−098)検出システムをその組織に適用した。続いて、抗DNPウサギモノクローナル抗体、次いでヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体抗体を、その組織とともにインキュベートする。発色試薬の適用の前に、スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液(SISH Wash,Ventana P/N 780−002)で洗浄した。試薬の適用前に約100μlの洗浄物をスライドに残し、Silver Chromogen A(0.36%酢酸銀)、Silver Chromogen B(0.18%ヒドロキノン)、およびSilver Chromogen C(0.09%過酸化水素)(各100μl)を、スライド上に分配した。Silver Chromogen Aを最初に適用し、37℃で4分間インキュベートした。リンスせずに、Silver Chromogen Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせた。最後に、Silver Chromogen CをSilver Chromogen AおよびBのプールに添加し、37℃で最後に12分間インキュベートした。その組織をヘマトキシリンII(Ventana N/P 790−2208)およびブルーイング試薬(Ventana P/N 760−2037)を用いて青色に対比染色した。
【0155】
図11は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMDF7(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【0156】
図12は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【0157】
図13は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(遺伝子増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。容易に確認され得るように、各細胞においてHER2遺伝子シグナルの複数のコピーのクラスターが存在する。
【0158】
(実施例3 逐次ハイブリダイゼーション工程による組織中のHER2および17番染色体のセントロメアの同時検出)
本実施例では、本発明の方法を使用して、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた異種移植腫瘍組織切片において、インサイチュで17番染色体のセントロメア(CEP 17)標識と併せてHER2遺伝子のコピー数を、異なるストリンジェンシー特徴を有する二本鎖DNAプローブ(HER2)および一本鎖オリゴプローブ(CEP 17)を用いて、感度よくかつ選択的に検出した。CEP 17検出を含めることにより、HER2遺伝子の相対的なコピー数を決定することが可能になる。例えば、正常なサンプルは、2未満のHER2/CEP 17比を有し、一方で、HER2遺伝子が倍加されたサンプルは、2.0より大きいHER2/CEP 17比を有する。
【0159】
アッセイをVentana BenchMarkTM XTで完全に自動化した。固定細胞を備えるスライドを、65℃で20分間乾燥(bake)/加熱させ、EZ Prep(Ventana P/N 950−102)を用いて脱パラフィン化した。そのスライドをさらに、ハイブリダイゼーション工程の前に、反応緩衝液(Ventana P/N 950−300)およびプロテアーゼ3(Ventana P/N 760−2020)を用いて加熱前処理用に処理した。
【0160】
HER2遺伝子の検出を、以下のとおりに行った。標的およびプローブをスライド上で95℃にて12分間同時に変性させた後、DNP標識HER2プローブ(Ventana P/N 780−4332)を、52℃で2時間ハイブリダイズさせた。ストリンジェンシー洗浄工程を、SSC(Ventana P/N 950−110)を用いて行った。続いて、抗DNPウサギポリクローナル抗体(Ventana P/N 780−4335)、次いで、ヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体化抗体(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)を、その組織とともにインキュベートした。スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液(SISH Wash(Ventana P/N 780−002))で洗浄した。試薬の適用前に約100μlの洗浄物をスライドに残した。Silver Chromogen A(0.36%酢酸銀)、Silver Chromogen B(0.18%ヒドロキノン)、およびSilver Chromogen C(0.09%過酸化水素)(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)(各100μl)を、スライド上に分配した。Silver Chromogen Aを最初に適用し、37℃で4分間インキュベートした。リンスせずに、Silver Chromogen Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせた。最後に、Silver Chromogen CをSilver Chromogen AおよびBのプールに添加し、37℃で最後に12分間インキュベートした。CEP 17を検出する前に、そのスライドを2×SSCで洗浄した。
【0161】
次に、CEP 17配列の検出を以下のとおりに行った。標的およびプローブをスライド上で95℃にて12分間同時に変性させた後、DNP標識した17番染色体のセントロメアオリゴプローブ(Ventana P/N 780−4331)を、44℃で1時間ハイブリダイズさせた。次いで、17番染色体のセントロメアの比色検出を、抗DNPウサギポリクローナル抗体(Ventana P/N 780−4335)、UltraMapTM 抗ウサギアルカリホスファターゼ結合体化抗体(Ventana P/N 760−4314)、およびファストレッド−ナフトールホスフェート(fast red−naphthol phosphate)基質(ultraVIEWTM Universal Alkaline Phosphatase Red Detection Kitの構成要素,Ventana PN 760−501)を用いて行った。すべての組織切片を、ヘマトキシリンII(Ventana PN 790−2208)およびブルーイング試薬(Ventana PN 760−2037)を用いて対比染色した。
【0162】
図14は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMCF7(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2遺伝子と同様に、1細胞あたり1〜3個のシグナル(通常の補体)が存在する。したがって、この結果は、2未満のHER2/CEP 17比が、本発明の方法を用いて容易に検出され得ることを示す。
【0163】
図15は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2遺伝子と同様に、細胞周期の段階および組織切片内でどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【0164】
比較して、図16は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。容易に確認されるように、各細胞において増幅されたHER2遺伝子シグナルが存在するが、1細胞あたりのCEP 17シグナルはごくわずかである。
【0165】
(実施例4 同時ハイブリダイゼーション工程による組織中のHER2遺伝子および17番染色体のセントロメアの同時検出)
本実施例では、本発明の方法を使用して、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた異種移植腫瘍組織切片において、インサイチュで17番染色体のセントロメア(CEP 17)標識と併せてHER2遺伝子のコピー数を、二本鎖DNAプローブを用いて感度よくかつ選択的に検出した。HER2プローブを、17番染色体のセントロメアに位置するアルファサテライトDNA(17p11.1−q11.1)にハイブリダイズするCEP 17プローブと併用して使用する。CEP 17プローブを含めることにより、HER2遺伝子の相対的なコピー数を決定することが可能になる。例えば、正常なサンプルは、2未満のHER2/CEP 17比を有し、一方で、HER2遺伝子が倍加されたサンプルは、2.0より大きいHER2/CEP 17比を有する。
【0166】
銀沈着によるHER2遺伝子の検出を、本質的に上記の実施例に記載されるとおりに行った。ただし、HER2プローブを、複合反復減損(CORD)プローブをジニトロフェノール(DNP)標識することによって構築した。CORDプローブは、米国仮特許出願第60/841,896号(2006年9月1日出願)(その全体が参考として本明細書に援用される)に詳細に記載されている。簡単に述べると、CORDプローブは、反復性核酸エレメント(例えば、Alu反復、L1反復、およびアルファサテライトDNA)が完全にまたは実質的に完全に減損したものであり、セグメントごとを基準にして、標的配列の固有のコードエレメントまたは非コードエレメントに対応する。
【0167】
HER2遺伝子を含む17番染色体の500,000塩基対領域にわたる固有の配列エレメントを同定し、PCRによって増幅した。反復性配列を同定し、次いで、増幅プライマーを選択して非反復配列を増幅した。オリゴヌクレオチドプライマーを、PCR産物のサイズを最大にするために、69℃にできるだけ近いTm、および固有の配列セグメントの各末端にできるだけ近い位置に対して選択した。フォワードプライマーを、5’リン酸を含めて合成し、一方、リバースプライマーには5’リン酸を含めなかった。得られた増幅産物は、一方の末端に5’リン酸を有した。
【0168】
得られたフラグメントを処理し、順序にも方向にも関係なく一緒に混合物として連結した。連結した物質を、Phi29 DNAポリメラーゼを用いてランダムプライミング増幅によって段階的に増幅した。HER2プローブDNAを、製造業者の指示にしたがってMIRUSキットを用いてDNPで標識した(P/N MIR 3800;Mirus Bio Corp.Madison,WI)。
【0169】
17番染色体のセントロメアプローブを、pUC19にクローニングした約2700塩基対インサート中にマイクロサテライト反復配列のコピーを含むプラスミドpYAM7−29(ATCC番号65442)から生成した。そのプラスミドの各末端から約1000塩基対の配列を、表1に示されるようなプライマーM13 FおよびM13 Rを用いて決定した。そのプラスミドを、製造業者の指示にしたがってMIRUSキットを用いてフルオレセインで標識した。
【0170】
アッセイを、Ventana BenchMarkTM XTで完全に自動化した。スライドを、65℃で20分間乾燥(bake)/加熱させ、EZ Prep(Ventana P/N 950−102)を用いて脱パラフィン化した。次いで、スライドをCC1(Ventana P/N 950−124)を用いて加熱前処理に供し、ホルマリンベースの固定剤であるRiboFixTM(RiboMapTM の構成要素(Ventana P/N 760−102)を用いて固定した。そのスライドをさらに、ハイブリダイゼーション工程の前に、反応緩衝液(Ventana P/N 950−300)およびプロテアーゼ3(Ventana P/N 760−2020)を用いて別の加熱前処理用に処理した。標的およびプローブをスライド上で95℃にて12分間同時に変性させた後、DNP標識二本鎖HER2プローブおよびフルオレセイン標識二本鎖17番染色体のセントロメアプローブを、52℃で2時間同時にハイブリダイズさせた。ストリンジェンシー洗浄工程を、SSC(Ventana P/N 950−110)を用いて行った。続いて、抗DNPウサギポリクローナル抗体(Ventana P/N 780−4335)、次いで、ヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体化抗体(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)を、その組織とともにインキュベートした。発色試薬の適用前に、スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液(SISH Wash(Ventana P/N 780−002))で洗浄した。試薬の適用前に約100μlの洗浄物をスライドに残した。Silver A(0.36%酢酸銀)、Silver B(0.18%ヒドロキノン)、およびSilver C(0.09%過酸化水素)(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)(各100μl)を、スライド上に分配した。Silver Aを最初に適用し、37℃で4分間インキュベートした。リンスせずに、Silver Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせた。最後に、Silver CをSilver AおよびBのプールに添加し、37℃で最後に12分間インキュベートした。
【0171】
17番染色体のセントロメアの比色検出を、マウス抗フルオレセイン抗体(ISH iVIEWTM Blue Detection Kitの構成要素、Ventana P/N 760−092)、ウサギ抗マウス(Amplification KitのAmplifier A、Ventana P/N 760−080),UltraMapTM 抗ウサギアルカリホスファターゼ結合体化抗体(Ventana P/N 760−4314)、およびファストレッド−ナフトール基質(ultraVIEWTM Universal Alkaline Phosphatase Red Detection Kitの構成要素、Ventana PN 760−501)を用いて行った。すべての組織切片を、上記の実施例に記載されるように、ヘマトキシリンII(Ventana PN 790−2208)およびブルーイング試薬(Ventana PN 760−2037)を用いて対比染色した。
【0172】
図17は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMCF7(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2遺伝子と同様に、1細胞あたり1〜3個のシグナル(通常の補体)が存在する。したがって、この結果は、2未満のHER2/CEP 17比が、本発明の方法を用いて容易に検出され得ることを示す。
【0173】
図18は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2遺伝子と同様に、細胞周期の段階および組織切片内でどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【0174】
比較して、図19は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。容易に確認されるように、各細胞において増幅されたHER2遺伝子シグナルが存在するが、1細胞あたりのCEP 17シグナルはごくわずかである。したがって、この結果は、2よりも大きいHER2/CEP 17比が、本発明の方法を用いて容易に検出され得ることを示す。
【0175】
【表1−1】
【0176】
【表1−2】
【0177】
【表1−3】
(実施例5 組織中のHER2タンパク質、HER2遺伝子および17番染色体のセントロメアの同時検出)
本実施例では、本発明の方法を使用して、乳がん細胞株異種移植腫瘍において、インサイチュで17番染色体のセントロメア(CEP 17)標識と併せてHER2遺伝子のコピー数を感度よくかつ選択的に検出し、さらに同じサンプル/スライドでHER2タンパク質を検出した。HER2プローブを、17番染色体のセントロメアに位置するアルファサテライトDNA(17p11.1−q11.1)にハイブリダイズするCEP 17プローブと併用して使用する。CEP 17プローブを含めることにより、HER2遺伝子の相対的なコピー数を決定することが可能になる。例えば、正常なHER2遺伝子サンプルは、2未満のHER2/CEP 17比を有し、一方で、HER2遺伝子が増幅されたサンプルは、2.0より大きいHER2/CEP 17比を有する。HER2タンパク質を、BCIP/NBTクロモゲンを用いて、ウサギモノクローナル抗体クローン4B5を用いて検出する。単一のサンプルスライドで形態学の保存と組み合わせたこの3重の検出は、2つのプローブに対するハイブリダイゼーション条件のバランスを保つことの複雑さ、およびHER2タンパク質の検出のための免疫組織化学(IHC)条件を考えると、当該分野において大きな進歩である。本実施例で使用されるプロトコルを表す図式は、図20に示される。
【0178】
銀沈着によるHER2遺伝子の検出を、本質的に実施例4に記載されるように行った。CEP17の検出もまた、本質的に実施例4に記載されるように行った。
【0179】
アッセイをVentana BenchMarkTM XTで完全に自動化した。スライドを、65℃で20分間乾燥(bake)/加熱させ、EZ Prep(Ventana P/N 950−102)を用いて脱パラフィン化した。次いで、HER2免疫化学染色を行う前に、スライドをCC1(Ventana P/N 950−124)を用いて加熱前処理に供した。組織切片を、ウサギモノクローナル抗HER2抗体、クローン4B5(Ventana P/N 790−2991)、UltraMap抗ウサギアルカリホスファターゼ標識抗体(Ventana P/N 760−4314)、およびBCIP−NBT基質(ISH iVIEW Blue Detection Kitの構成要素、Ventana P/N 760−092)とともにインキュベートした。
【0180】
HER2タンパク質免疫組織化学の後、組織切片をホルマリンベースの固定剤であるRiboFix(RiboMap(Ventana P/N 760−102))を用いて固定した。そのスライドをさらに、ハイブリダイゼーション工程の前に、反応緩衝液(Ventana P/N 950−300)およびプロテアーゼ3(Ventana P/N 760−2020)を用いて別の加熱前処理用に処理した。
【0181】
HER2遺伝子の銀沈着検出を以下のとおりに行った。標的およびプローブをスライド上で95℃にて12分間同時に変性させた後、DNP標識HER2プローブおよびフルオレセイン標識17番染色体のセントロメアプローブを、52℃で2時間同時にハイブリダイズさせた。ストリンジェンシー洗浄工程を、SSC(Ventana P/N 950−110)を用いて行った。続いて、抗DNPウサギポリクローナル抗体(Ventana P/N 780−4335)、次いで、ヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体化抗体(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)を、その組織とともにインキュベートした。発色試薬の適用前に、スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液(SISH Wash(Ventana P/N 780−002))で洗浄した。試薬の適用前に約100μlの洗浄物をスライドに残した。Silver A(0.36%酢酸銀)、Silver B(0.18%ヒドロキノン)、およびSilver C(0.09%過酸化水素)(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)(各100μl)を、スライド上に分配した。Silver Aを最初に適用し、37℃で4分間インキュベートした。リンスせずに、Silver Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせた。最後に、Silver CをSilver AおよびBのプールに添加し、37℃で最後に12分間インキュベートした。
【0182】
17番染色体のセントロメアの比色検出を、マウス抗フルオレセイン抗体(ISH iVIEWTM Blue Detection Kitの構成要素、Ventana P/N 760−092)、ウサギ抗マウス(Amplification KitのAmplifier A、Ventana P/N 760−080),UltraMapTM 抗ウサギアルカリホスファターゼ結合体化抗体(Ventana P/N 760−4314)、およびファストレッド−ナフトール基質(ultraVIEWTM Universal Alkaline Phosphatase Red Detection Kitの構成要素、Ventana PN 760−501)を用いて行った。すべての組織切片を、上記の実施例に記載されるように、ヘマトキシリンII(Ventana PN 790−2208)およびブルーイング試薬(Ventana PN 760−2037)を用いて対比染色した。
【0183】
図21は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMCF7(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドット、17番染色体のセントロメアとしてのファストレッドナフトール染色の赤色のドットを示す。MCF7異種移植腫瘍は、検出可能なHER2タンパク質を発現しない(レベル0)ことが公知である。予期されたように、HER2タンパク質はMCF7腫瘍切片において視覚化されなかった。
【0184】
図22は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドット、17番染色体のセントロメアとしてのファストレッドナフトール染色の赤色のドット、および限られた量のHER2の青色/紫色の染色を示す。ZR−75−1異種移植腫瘍は、「レベル1」のHER2タンパク質を発現することが公知である。
【0185】
比較して、図23は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスターとして沈着した銀金属のドット、17番染色体のセントロメアとしてのファストレッドナフトール染色の赤色のドット、および増幅された量のHER2の青色/紫色の染色を示す。BT−474は、増幅されたHER2タンパク質「レベル3」を発現することが公知である。増幅されたHER2タンパク質は、細胞膜において暗い青色/紫色として視覚化されている。
【0186】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示され、記載されているが、そのような実施形態は例示のみのために提供されることは当業者に明らかである。これから多くのバリエーション、変更、および置き換えが、本発明から逸脱することなく当業者に思い浮かぶ。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替物が、本発明を実施する上で利用され得ることが理解されるべきである。添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を規定し、それによってこれらの特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内で方法および構築物がカバーされることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0187】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に特に示される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す上記の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって達成される。
【図1】図1は、本発明の一実施形態の図示である。この図は、標識が結合体化した、および/または酵素が結合体化した一次抗体および二次抗体を用いる、3種の標的分子の検出を表す。
【図2】図2は、100倍での顕微鏡写真であり、正常な乳管組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。
【図3】図3は、100倍での顕微鏡写真であり、HER2について増幅されていない乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。
【図4】図4は、100倍での顕微鏡写真であり、低レベルでHER2遺伝子増幅した乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多数の(numerous)コピーとして沈着した銀金属のドットを示す(3〜5コピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。
【図5】図5は、100倍での顕微鏡写真であり、相対的により高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図4に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多くの(many)コピーとして沈着した銀金属のクラスターを示す(6以上のコピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。
【図6】図6は、100倍での顕微鏡写真であり、さらに高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図5に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多くのコピーとして沈着した銀金属のクラスターを示す。
【図7】図7は、顕微鏡写真であり、HER2について増幅されていない乳房腫瘍組織においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。
【図8】図8は、相対的により高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図4に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織においてHER2遺伝子の多くの(many)コピーとして沈着した銀金属のクラスターを示す(6以上のコピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。
【図9】図9は、標的分子の周辺における金属の沈着の図示である。この図では、ハプテンで標識されたDNAプローブが、標的配列に結合されている。そのハプテン(黒三角で表される)は、抗ハプテン一次抗体によって結合されている。その一次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼが結合体化した二次抗体によって結合されている。溶液中の金属イオンは、結合した酵素の周辺で元素金属に還元される。
【図10】図10は、他のシグナルと併せて使用される金属沈着の図示である。パネルAは、適切な基質を添加した際に比色シグナルを生成するアルカリホスファターゼが結合体化した抗体によって結合された表面タンパク質を示す。パネルBは、標的配列にハイブリダイズされた蛍光マーカーで標識されたDNAプローブを示す。パネルCは、標的配列に結合されたハプテンで標識されたDNAプローブを示す。そのハプテンは、抗ハプテン一次抗体によって結合されている。その一次抗体は、複数のホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素が結合体化した抗体によって結合されており、これにより、結合した抗体の周辺における金属の沈着がもたらされる。パネルDは、3種の異なるプローブが結合されている細胞を示す。各シグナルが局在化しているので、3種すべての標的分子の同時検出が可能である。
【図11】図11は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMCF7(「高度に再構成された、3倍体に近い」ヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【図12】図12は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。
【図13】図13は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスターとして沈着した銀金属のドットのクラスターを示す。容易に確認され得るように、各細胞において増幅されたHER2遺伝子シグナルが存在する。
【図14】図14は、100倍での顕微鏡写真であり、MCF7異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、17番染色体のセントロメア(CEP 17)の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図15】図15は、100倍での顕微鏡写真であり、ZR−75−1異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図16】図16は、100倍での顕微鏡写真であり、BT−474(ヒト乳管がん)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図17】図17は、100倍での顕微鏡写真であり、MCF7異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図18】図18は、100倍での顕微鏡写真であり、ZR−75−1異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図19】図19は、100倍での顕微鏡写真であり、BT−474(ヒト乳管がん)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のクラスターを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図20】図20は、実施例5に記載されるようなHER2遺伝子、CEP 17およびHER2タンパク質を検出するために使用される三重染色プロトコルの図示である。
【図21】図21は、100倍での顕微鏡写真であり、MCF7異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。このサンプルは、HER2タンパク質に対する免疫組織化学(IHC)染色にも供されている。
【図22】図22は、100倍での顕微鏡写真であり、ZR−75−1異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2タンパク質の免疫組織化学染色は、そのタンパク質の存在を示す。
【図23】図23は、100倍での顕微鏡写真であり、BT−474(ヒト乳管がん)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2タンパク質の免疫組織化学染色は、そのタンパク質の存在を示す。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
DNAの構造の決定の後、15年後まで、プローブとして相補配列を用いて分子レベルでDNAまたはRNAを定位する(localize)ための方法は現れ始めなかった。その方法の開発は、化学的変性手順(例えば、高温または水酸化ナトリウム処理)が染色体に沿った様々な領域の染色特性を変化させ得、染色体の特徴を同定および定位するために使用され得るバンドプロフィールの発展をもたらし得るという発見によって推進された。非特許文献1。蛍光色素による示差的染色は、染色体内のバンド構造を解明するために使用された。非特許文献2。現代のインサイチュハイブリダイゼーションの起源は、特定の配列がこれらのバンドに定位されることの発見であった。当初は、検出は、放射性同位体で標識されたRNAプローブを利用して、組織切片および細胞の広がりにおける相補DNAをオートラジオグラフィを用いて定位した:最も初期の3件の報告のうちの1件において、PardueおよびGallは、培養したマウス細胞抽出物およびXenopus細胞抽出物から抽出したチミジン−3H標識RNA画分を使用して、変性させた組織切片において相補DNAを定位した。非特許文献3。放射能放射の散乱するコーン(cone)によって分解能においては扱いにくく制限されるが、これらの初期の実験は、染色体領域への特定のDNA画分の局在化を効果的に示した。
【0002】
インサイチュハイブリダイゼーションの技術は、多くの可能にする技術が発達するにつれて、より広範な用途を達成した。改良されたプローブ調製および標識方法(ランダムプライム標識、ニック翻訳反応、PCRベースの標識が挙げられる)、ならびに標的配列をクローニングするための改良された方法は、プローブ調製をより便利かつ手ごろにした。特に、蛍光標識は、より高い分解能およびより単純な視覚化を提供し、そして放射性プローブの危険性およびオートラジオグラフィシグナルを現像するために必要な長時間の遅延を回避するために導入された。蛍光標識は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、またはFISHの技術を可能にした。非特許文献4。標識化は直接的(蛍光標識が核酸ハイブリダイゼーションプローブに直接結合される)であっても、間接的(ハイブリダイゼーションプローブが標識された二次プローブ(例えば、蛍光標識された抗体または固有の特徴に対して標的されたタンパク質またはそのハイブリダイゼーションプローブに取り込まれたハプテン)によって順に結合される)であってもよい。FISHは、中期の染色体、間期の核、クロマチン繊維、および裸のDNA分子における反復DNA配列および単一コピーDNA配列をマッピングするため、ならびに大きな繰り返しファミリー(代表的には、rDNAおよび主要なタンデムアレイファミリー)の定位を通じての染色体同定および核型分析のために使用されている。しかし、多くのバイオマーカーの検出におけるFISHの広範な用法および感度にもかかわらず、FISHは、必ずしも臨床的な診断の実施に理想的であるとは限らない。なぜなら、複雑な機器を必要とし、蛍光シグナルがすぐに低下するからである。したがって、治療的処置とともにバイオマーカーを利用する臨床診断の迅速な発展に伴って、それほど複雑な機器を必要とせず、より速いスループットを可能にし、そして開業病理学者により多くの情報を提供し得る、バイオマーカーの検出のための代替的な方法の必要性が高まっている。
【非特許文献1】De Jong H.(2003)Genome,46:943−6
【非特許文献2】Caspersson et al.(1972)Int.Rev.Exp.Pathol 11:1−72
【非特許文献3】PardueおよびGall(1969)PNAS 64:600−4
【非特許文献4】Trask(1991)Trends in Genetics 7:149−154
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
(項目1)
試験サンプル中の複数の標的分子を検出するための方法であって、以下:
その複数の標的分子のうちの第1の標的分子を、i)酵素をその第1の標的分子に結合させる工程、ii)その酵素と金属イオンとを、酸化剤および還元剤の存在下で接触させ、それによってその金属イオンが元素金属に還元され、それによって、その元素金属をその酵素の周辺に沈着させる工程、およびiii)その第1の標的分子に結合したその酵素の周辺におけるその沈着した金属の存在、量またはレベルを決定する工程、によって検出する工程;ならびに
その試験サンプル中のその複数の標的分子のうちの少なくとも1種の第2の異なる標的分子を、その第2の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、その検出可能なシグナルは、その沈着した金属と識別可能である、工程
を包含する、方法。
(項目2)
上記第1の標的分子の少なくともいくつかの部分の標識と、上記少なくとも1種の第2の異なる標的分子の少なくともいくつかの部分の標識とが、同時に起こる、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記金属イオンが、銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記金属イオンが銀イオンである、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記酵素が酸化還元酵素である、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記酵素がペルオキシダーゼである、項目1に記載の方法。
(項目7)
上記酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼである、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記酵素が、アビジンまたはストレプトアビジンに結合体化している、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記酵素が抗体に結合体化している、項目1に記載の方法。
(項目10)
上記抗体が、第1の標的分子に対する抗体である、項目9に記載の方法。
(項目11)
上記酸化剤が、酸素を含有する酸化剤である、項目1に記載の方法。
(項目12)
上記還元剤が、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、没食子酸n−プロピル、硫酸4−メチルアミノフェノール、1,4フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、クロロキノン、ブロモキノン、2−メトキシヒドロキノン、ヒドラジン、1−フェニル−3−ピラゾリジノンおよび亜ジチオン酸塩からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目13)
上記第2の異なる標的分子の検出が、放射標識、比色標識、蛍光標識、および化学発光標識からなる群より選択される物質を用いて行われる、項目1に記載の方法。
(項目14)
上記物質が抗体に結合体化している、項目13に記載の方法。
(項目15)
上記第2の異なる標的分子の検出が、酵素を、その第2の異なる標的分子に特異的に結合する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その第2の標的分子に結合させる工程、を包含する、項目13に記載の方法。
(項目16)
酵素が、上記検出可能な物質の存在の検出を容易にする、項目13に記載の方法。
(項目17)
上記第2の異なる標的分子を検出する工程が、酵素を、その第2の異なる標的分子に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、その第2の異なる標的分子に結合させる工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目18)
上記酵素が、上記検出可能なマーカーに特異的に結合する抗体を介してその検出可能なマーカーに結合する、項目17に記載の方法。
(項目19)
上記検出可能なマーカーが、ビオチン、ジニトロフェニル、放射性同位体、または蛍光標識である、項目17に記載の方法。
(項目20)
上記蛍光標識が、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テキサスレッド、ローダミン、およびCy5からなる群より選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
上記酵素が、上記検出可能なマーカーに特異的に結合する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その検出可能なマーカーに結合する、項目17に記載の方法。
(項目22)
上記第2の異なる標的分子がポリヌクレオチド配列であり、そのポリヌクレオチド配列の検出が、酵素を、そのポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、そのポリヌクレオチド配列に結合する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目23)
上記第2の異なる標的分子がポリヌクレオチド配列である、項目1に記載の方法。
(項目24)
上記ポリヌクレオチド配列が、遺伝子、遺伝子産物、非コード配列、またはゲノムである、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記第2の異なる標的分子が、HER2/neu遺伝子もしくはHER2/neu遺伝子産物、または17番染色体のセントロメア配列である、項目23に記載の方法。
(項目26)
項目1に記載の方法であって、さらに以下:
上記第2の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、上記沈着した金属の存在、量またはレベルと比較する工程;
必要に応じて、その第2の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;
必要に応じて、その沈着した金属の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目27)
上記参照サンプルが、正常な健常個体に由来する細胞または組織を含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
上記疾患状態が、疾患の決定または分類、予後、薬物の効力、治療に対する患者の反応性、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、あるいは疾患の再発の可能性である、項目26に記載の方法。
(項目29)
上記疾患が、良性腫瘍、がん、血液学的障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患および糖尿病からなる群より選択される、項目26に記載の方法。
(項目30)
上記疾患状態が、治療に対する患者の反応である、項目26に記載の方法。
(項目31)
項目1に記載の方法であって、さらに以下:
上記試験サンプル中の上記複数の標的分子のうちの少なくとも1種の第3の異なる標的分子を、その第3の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、その検出可能なシグナルは、上記沈着した金属と識別可能であり、かつ上記第2の標的分子の部位における検出可能なシグナルと識別可能である、工程
を包含する、方法。
(項目32)
上記第3の標的分子の検出が、放射標識、比色標識、蛍光標識、および化学発光標識からなる群より選択される標識を用いて行われる、項目31に記載の方法。
(項目33)
上記標識が抗体に結合体化している、項目32に記載の方法。
(項目34)
酵素が上記検出可能な物質の存在の検出を容易にする、項目32に記載の方法。
(項目35)
上記第3の標的分子の検出が、酵素を、第3の標的分子に特異的に結合する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その第3の標的分子に結合させる工程を包含する、項目31に記載の方法。
(項目36)
項目31に記載の方法であって、さらに以下:
上記第3の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目37)
項目30に記載の方法であって、さらに以下:
上記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、沈着した金属の存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目38)
項目37に記載の方法であって、さらに以下:
上記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、上記第2の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目39)
項目31に記載の方法であって、さらに以下:
上記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、上記第2の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルと比較する工程;および
上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
(項目40)
上記標的分子が予め決定されている、項目31に記載の方法。
(項目41)
上記第1の標的分子がHER2/neu遺伝子であり、上記第2の標的分子がHER2タンパク質であり、そして上記第3の標的分子が17番染色体のセントロメア配列である、項目40に記載の方法。
(項目42)
上記標的分子が、予め決定された幾何パターンで間隔があけられている、項目31に記載の方法。
(項目43)
上記第3の標的分子の検出によって生成される上記シグナルが、放射シグナル、比色シグナル、蛍光シグナル、および化学発光シグナルからなる群より選択される、項目31に記載の方法。
(項目44)
標識を上記第3の標的分子に結合させる工程によって生成される上記シグナルが、異なる蛍光の色、異なる明視野の色、異なる放射線放出、および異なる化学発光の色からなる群のうちの1つによって、上記金属沈着、および上記第2の標的分子に結合される上記標識によって生成される上記シグナルと識別可能である、項目43に記載の方法。
(項目45)
上記標的分子が予め決定されている、項目1に記載の方法。
(項目46)
上記標的分子が、HER2遺伝子、HER2タンパク質、および17番染色体のセントロメア配列からなる群より選択される、項目45に記載の方法。
(項目47)
上記標的分子が、フィブリンに対するレセプター、VEGFに対するレセプター、Flt4、VEGF−165に対するレセプター、Tie1、Tie2、エフリン A1−5に対するレセプター、エフリン B1−5に対するレセプター、上皮増殖因子レセプター(EGFR)、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)、神経成長因子レセプター(NGFR)、HER1、HER2/neu、HER3、HER4、Kit、c−Kit、Src、Fes、JAK、Fak、Btk、Syk/ZAP−70、およびAblからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目48)
上記第1の標的分子および第2の標的分子に由来するシグナルが、予め決定された幾何パターンで間隔があけられている、項目1に記載の方法。
(項目49)
標識を上記第2の標的分子に結合させる工程によって生成される上記シグナルが、放射シグナル、比色シグナル、蛍光シグナル、および化学発光シグナルからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目50)
標識を上記第2の標的分子に結合させる工程によって生成される上記シグナルが検出される、項目48に記載の方法。
(項目51)
サンプル中の複数の標的の検出のためのキットであって、以下:
i)銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオン、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属イオン;
ii)酸化剤;
iii)還元剤;ならびに
iv)サンブル中の2種の異なる標的分子に結合する少なくとも2種の結合部分
を備える、キット。
(項目52)
上記還元剤に対する上記金属イオンの重量比が、1:5〜5:1の範囲であり、そして上記酸化剤に対するその還元剤の重量比が、1:10〜10:1の範囲である、項目51に記載のキット。
(項目53)
上記結合部分が、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、核酸、核酸プローブ、炭水化物、薬物、ステロイド;植物、動物、ヒトおよび細菌に由来する生成物、ならびに合成分子からなる群より選択され、ここで、各メンバーは、上記標的分子に対する結合について親和性を有する、項目50に記載のキット。
(項目54)
少なくとも1種の標的分子が、標的遺伝子、非コード配列、またはゲノムであり、そして上記結合部分が、その標的遺伝子またはゲノムに結合する核酸プローブである、項目53に記載のキット。
(項目55)
さらに酵素を備える、項目54に記載のキット。
(項目56)
上記酵素が、上記標的分子に結合する一次抗体または上記結合部分に結合する一次抗体のいずれかを介して、その標的分子と結合される、項目54に記載のキット。
(項目57)
上記酵素がペルオキシダーゼであり;上記金属イオンが銀イオンであり;上記酸化剤が過酸化水素であり;そして上記還元剤がヒドロキノンである、項目56に記載のキット。
(項目58)
上記キットを用いて検出を行うための指示書をさらに備える、項目51に記載のキット。
【0004】
(摘要)
本発明は、サンプル中(例えば、組織サンプル中)の複数の標的分子を検出するための組成物、キット、物品のアセンブリおよび方法論を提供する。特に、元素金属の部位特異的沈着(deposition)が、生物学的サンプル中の複数の標的(例えば、遺伝子、タンパク質、および染色体)を同時に検出するために、他の検出手段(例えば、他の発色標識、放射標識、化学発光標識および蛍光標識)と併せて使用される。より詳細には、複数の標的が、特異的に沈着される金属および他の発色標識で標識され得、明視野光学顕微鏡を用いることによってインサイチュで発色免疫組織化学的(IHC)検出が可能になる。
【0005】
本発明は、サンプル中(例えば、組織サンプル中)の複数の標的分子を検出するための革新的な組成物、キット、物品のアセンブリおよび方法論を提供する。特に、元素金属の部位特異的沈着が、生物学的サンプル中の複数の標的(例えば、遺伝子、タンパク質、および染色体)を同時に検出するために、他の検出手段(例えば、他の発色標識、放射標識、化学発光標識および蛍光標識)と併せて使用される。より詳細には、複数の標的が、特異的に沈着される金属および他の発色標識で標識され得、明視野光学顕微鏡を用いることによってインサイチュで発色免疫組織化学的(IHC)検出が可能になる。生物学的サンプルとしては、液体、懸濁液、固体および固体支持体(例えば、スライド)に固定された形態の、細胞培養物または混合物、細胞学的標本、組織薄片または組織切片、生検、および細胞の核を含むサンプルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0006】
さらに、標的部位または標的分子における元素金属の部位特異的沈着および選択的沈着は、シグナルの発色検出を容易にするだけでなく、細胞の形態およびインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)シグナルを同時に眺めることを可能にし、標準的な機器(例えば、明視野顕微鏡)を用いて正確な結果を提供する。観察の際も、保管の際も、室内照明への曝露の際も、サンプルのフェーディング(fading)は存在しない。細胞および他の分子からの自己蛍光は、いかなる干渉も生じない。標準的な染料(例えば、nuclear fast red、ヘマトキシリンおよびエオシン)が使用され得、そして酵素に沈着した金属と同時に見られ得、組織サンプルの標識点を視覚化する。
【0007】
本発明の一局面において、方法は、インビトロで試験サンプル中の複数の標識分子を検出するための方法である。その方法は、以下:その複数の標的分子のうちの第1の標的分子を、i)酵素をその第1の標的分子に結合させる工程、ii)その酵素と金属イオンとを、酸化剤および還元剤の存在下で接触させ、それによってその金属イオンが元素金属に還元され、それによって、その元素金属をその酵素の周辺に沈着させる工程、およびiii)その第1の標的分子に結合したその酵素の周辺におけるその沈着した金属の存在、量またはレベルを決定する工程、によって検出する工程;ならびにその試験サンプル中の複数の標的分子のうちの第2の異なる標的分子を、その第2の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、その検出可能なシグナルは、上記沈着した金属と識別可能である、工程、を包含する。
【0008】
本明細書中で使用される場合、「金属沈着」は、酵素の周辺における金属(ゼロ酸化状態の金属元素)の集積(buildup)または蓄積(accumulation)と定義される。代表的に、金属沈着は、酵素から約1ミクロンの距離の範囲内で開始するが、沈着は、酵素から約0.005ミクロン、0.01ミクロン、0.1ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、1000ミクロンで開始し得る。当然、金属沈着が続くにつれて、金属蓄積はこの距離を越えて広がり得る。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明の酵素的金属沈着は、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)検出に対して高解像度と組み合わさった高感度および最小限のバックグラウンドで、ペルオキシダーゼおよび活性化剤の存在下での銀金属の沈着、ならびに油浸の必要性なしに従来の明視野顕微鏡での視覚化を可能にする。そのようなアッセイは、本明細書中で「銀インサイチュハイブリダイゼーション」(Silver In Situ Hybridization:SISH)と称される。特に、本発明の酵素的金属沈着は、油浸を必要とすることなく、従来の明視野顕微鏡による染色体中の標的遺伝子の単一コピーの検出を可能にする。本発明はまた、シグナル(例えば、個々の遺伝子コピーに対する別個の金属沈着点)の個々の計数を可能にする解像度で、遺伝子コピーの検出を可能にする。この実施形態のバリエーションにおいて、本発明は、別個の金属沈着点として、1つの核あたり標的遺伝子(例えば、ヒト17番染色体中のHER2遺伝子)の少なくとも2、3、4、5、6、7または8コピーの検出を可能にする。
【0010】
上記方法によると、酵素を第1の標的分子に結合させる工程は、その酵素を、その第1の標的分子に特異的に結合する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その第1の標的分子に結合させる工程、を包含する。
【0011】
必要に応じて、上記結合工程は、上記酵素を、上記第1の標的分子に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、その第1の標的分子に結合させる工程を包含し、ここで、その酵素は、その検出可能なマーカーに特異的に結合する抗体を介して、その検出可能なマーカーに結合する。上記検出可能なマーカーの例としては、ビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェニル(例えば、2,4−ジニトロフェニル(CNP))、放射性同位体または蛍光標識(例えば、フルオロセインイソチオシアネート(FITC))、テキサスレッド(Texas Red)、ローダミンおよびCy5が挙げられるが、これらに限定されない。上記酵素は、上記検出可能なマーカーに特異的に検出する一次抗体、およびその酵素と結合体化しておりかつその一次抗体に結合する二次抗体を介して、その検出可能なマーカーに結合し得る。
【0012】
上記標的分子は、標的遺伝子、遺伝子産物、染色体またはゲノムであり得る。例えば、標的遺伝子は、フィブリンに対するレセプター(VE−カドヘリン)、VEGFに対するレセプター(Flt1およびKDR)、VEGF−CおよびVEGF−Dに対するレセプター(Flt4)、VEGF−165に対するレセプター(NP−1およびNP−2)、アンジオポエチン−1,アンジオポエチン−2,アンジオポエチン−3,およびアンジオポエチン−4に対するレセプター(Tie1およびTie2)、FGFに対するレセプター(FGF−R1、−R2、−R3および−R4)、PDGFに対するレセプター(PDGF−R)、エフリン(ephrine)A1−5に対するレセプター(Eph A1−8)、ならびにエフリン B1−5に対するレセプター(Eph B1−8)からなる群より選択される血管新生増殖因子レセプターをコードする遺伝子である。随意的に、上記標的遺伝子は、上皮増殖因子レセプター(EGFR)、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)、血管内皮増殖因子レセプター(VEGFR)、神経成長因子レセプター(NGFR)、線維芽細胞増殖因子レセプター(FGFR)、インスリンレセプター、エフリンレセプター、Met、およびRorからなる群より選択されるレセプター型チロシンキナーゼをコードする遺伝子である。上記上皮増殖因子レセプターの例としては、HER1、HER2/neu(もしくはHER−2/neu)、HER3、またはHER4が挙げられる。また随意的に、上記標的遺伝子は、Kit(例えば、c−Kit)、Src、Fes、JAK、Fak、Btk、Syk/ZAP−70、およびAblからなる群より選択される非レセプター型チロシンキナーゼをコードする遺伝子である。上記方法はさらに、以下:上記沈着した金属の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および上記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程、を包含する。
【0013】
上記参照サンプルは、正常で健常な組織または既知の疾患状態を有する別の疾患組織(例えば、乳がん組織)に由来する細胞または組織を含み得る。
【0014】
上記疾患状態は、疾患の決定または分類、予後、薬物の効力、治療に対する患者の反応性、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、あるいは疾患の再発の可能性であり得る。疾患の例としては、良性腫瘍、がん、血液学的障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患および糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
随意的に、上記疾患状態は、治療に対する患者の反応性である。例えば、上記疾患は、乳がんであり;上記治療は、トラスツズマブ(trastruzumab)またはHERCEPTIN治療であり;そして上記標的分子は、HER2/neu遺伝子またはタンパク質である。別の例について、上記疾患は、消化管間質腫瘍(GIST)であり;上記治療は、メシル酸イマチニブまたはGLEEVEC治療であり;そして上記標的分子は、c−Kit遺伝子またはタンパク質である。
【0016】
上記方法によると、金属イオン対還元剤の重量比は、1:5〜5:1の範囲であり得、還元剤対酸化剤の重量比は、1:10〜10:1の範囲であり得る。
【0017】
必要に応じて、上記方法にしたがって、上記接触させる工程は、以下:a)上記酵素を上記金属イオンと組み合わせる工程;b)その酵素と金属イオンとの混合物を、約4〜40℃で約1〜10分間、2〜8分間または3〜5分間インキュベートする工程;c)そのインキュベートした酵素と金属イオンとの混合物を、上記還元剤および上記酸化剤と混合する工程;ならびにd)その酵素と、金属イオンと、還元剤と、酸化剤との混合物を、約4〜40℃で約1〜30分間、2〜20分間、5〜15分間、または8〜14分間インキュベートする工程、を包含する。
【0018】
必要に応じて、上記方法にしたがって、上記接触させる工程は、以下:a)上記金属イオンと上記金属イオンを混合する工程;b)その酵素と金属イオンとの混合物を、約4〜40℃で約1〜10分間、2〜8分間または3〜5分間インキュベートする工程;c)上記還元剤を工程b)の混合物に添加する工程;d)上記酸化剤を工程c)の混合物に添加し、約4〜40℃で約1〜30分間、2〜20分間、5〜15分間、または8〜14分間インキュベートする工程、を包含する。
【0019】
上記方法は、必要に応じて、以下:ある一定の期間の後、上記酵素の周辺への上記元素金属の沈着を停止させる工程、をさらに包含する。この停止させる工程は、残りの金属イオンを酵素から洗い流す工程を包含し得る。必要に応じて、上記停止させる工程は、上記酵素を、チオ硫酸ナトリウムと塩化アンモニウムとを混合した溶液、チオシアン酸カリウムの溶液、フェリシアン化カリウムとチオ硫酸ナトリウムとを混合した溶液、フェリシアン化カリウムの溶液、チオ硫酸ナトリウムの溶液、および過ヨウ素酸ナトリウムの溶液からなる群より選択される溶液でリンスする工程を包含する。
【0020】
上記方法は、必要に応じて、以下:上記酵素の周辺に沈着した元素金属を、オートメタログラフィー(automatallography)または明視野光学顕微鏡によって検出する工程、をさらに包含する。
【0021】
他の検出手段(例えば、別の発色標識(例えば、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、Bajoran Purple、Fast RedおよびFerangi Blue)、比色標識、放射標識および化学発光標識)と合わせる場合、生物学的サンプル中の複数の標的が同時に検出され得る。
【0022】
金属の部位特異的沈着をさらなる検出方法(X線、電子顕微鏡、電気化学的検出、光学的検出、磁気的検出を含む)と合わせることによって、従来の試験方法と比べて、生物学的サンプル中の標的のより高感度かつ/または迅速な検出が可能である。
【0023】
特に、本発明は、疾患および状態の研究、診断、予防および処置のための複数のバイオマーカーの検出のために、使用され得る。例えば、本発明の方法は、哺乳動物(好ましくは、ヒト被験体)の疾患状態を、その哺乳動物に由来するサンプル中の複数のバイオマーカーのレベルを検出することによって決定するために、使用され得る。そのような「疾患状態」は、疾患の決定または分類、診断、薬物の効力、治療(いわゆる「標的療法」)に対する患者の反応性、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、疾患の再発の可能性などと関連し得る。
【0024】
本発明はまた、サンプル中の複数の標的を検出するためのキットを提供し、そのキットは、以下:銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオンおよびそれらの混合物からなる群より選択される金属イオン;酸化剤;還元剤;ならびに酵素を備える。好ましくは、金属イオン対還元剤の重量比は、1:5〜5:1の範囲であり、還元剤対酸化剤の重量比は、1:10〜10:1の範囲である。
【0025】
上記キットはさらに、複数の結合部分または結合因子を備え得、これらの各々は、異なる標的分子(例えば、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、核酸、核酸プローブ、炭水化物、薬物、ステロイド;植物、動物、ヒトおよび細菌に由来する生成物;ならびに合成分子)に結合する。例えば、標的は、標的遺伝子またはゲノムであり、結合部分は、その標的遺伝子またはゲノムに結合する核酸プローブである。酵素は、標的に結合する一次抗体、または結合部分に結合する一次抗体を介して、標的に結合し得る。必要に応じて、酵素は、一次抗体に結合する二次抗体に結合体化される。好ましくは、酵素は、ペルオキシダーゼであり;金属イオンは、銀イオンであり;酸化剤は、過酸化水素であり;そして還元剤は、ヒドロキノンである。
【0026】
上記キットはさらに、酵素の周辺に元素金属を沈着させるプロセスを実行するための指示書を備え得る。
【0027】
本発明によると、上記金属イオンの例は、銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、金属イオンは銀イオンである。
【0028】
上記酵素の例としては、酸化還元酵素(例えば、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ);加水分解酵素(例えば、エステラーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ、ヌクレアーゼ、カルボヒドラーゼ、プロテアーゼ);トランスフェラーゼ;ホスホリラーゼ;脱炭酸酵素;ヒドラーゼ;およびイソメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、酵素は、ペルオキシダーゼである。より好ましくは、酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼである。ペルオキシダーゼは、そのペルオキシダーゼによって着色した基質に変換され得る無色の有機基質を利用し得る。着色した有機基質の例は、3,3’−ジアミノベンジジンまたは5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートである。酵素は、必要に応じて、ストレプトアビジン、または抗体に結合体化され得る。
【0029】
上記酸化剤は、酸素を含有する酸化剤(例えば、過酸化水素)であり得る。
【0030】
上記還元剤の例としては、ヒドロキノン、ヒヒドロキノン誘導体、没食子酸n−プロピル、硫酸4−メチルアミノフェノール、1,4フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、クロロキノン、ブロモキノン、2−メトキシヒドロキノン、ヒドラジン、1−フェニル−3−ピラゾリジノンおよび亜ジチオン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明によると、好ましくは、酵素は、ペルオキシダーゼであり;金属イオンは、酢酸銀の形態であり;酸化剤は、過酸化水素であり;そして還元剤は、ヒドロキノンである。酢酸銀対ヒドロキノンの重量比は、約1:2〜約4:1の範囲であり、必要に応じて、約1:1〜約3:1の範囲であるか、または必要に応じて、約1:1〜約2:1の範囲である。ヒドロキノン対過酸化水素の重量比は、1:2〜6:1の範囲であり、必要に応じて、約1:1〜4:1の範囲であるか、または約1:1〜約3:1の範囲であるか、または必要に応じて、約1:1〜約2:1の範囲である。
【0032】
(参考としての援用)
本明細書で言及されるすべての公報および特許出願は、あたかも各個々の公報または特許出願が参考として援用されると明確にかつ個々に示されているのと同程度に、本明細書中に参考として援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明は、サンプル中(例えば、組織サンプル中)の複数の標的分子を検出するための革新的な組成物、キット、物品のアセンブリおよび方法論を提供する。特に、元素金属の部位特異的沈着が、生物学的サンプル中の複数の標的分子(例えば、遺伝子、タンパク質、および染色体)を同時にかつ感度良く検出するために、他の検出手段(例えば、他の発色標識、放射標識、化学発光標識および蛍光標識)と併せて使用される。そのような標的部位または分子における元素金属の部位特異的かつ選択的な沈着は、シグナルの発色検出を容易にするだけでなく、細胞の形態およびインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)シグナルを同時に眺めることを可能にし、標準的な機器(例えば、明視野顕微鏡)を用いて正確な結果を提供する。
【0034】
(1.元素金属の部位指向性沈着)
本発明の一局面は、サンプル中の標的の周辺における元素金属の酵素触媒性沈着を利用することである。この方法論は、米国特許第6,670,113号および同第7,183,072、ならびに米国特許出願第11/714,682号(2007年3月5日出願)に詳細に記載されており、これらは、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0035】
酵素は、金属イオン自体を基質として受容し得、それらの金属イオンを金属に還元し得ることが見出されている。さらに、酵素はその還元された金属を沈着させ得る。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼが銀イオン(従来は酢酸銀が使用された)と組み合わされており、適切な還元剤(例えば、ヒドロキノン)が添加される場合、金属の酵素媒介性の還元は生じない。しかし、過酸化水素の添加により、酵素は銀イオンを基質として受容し、その銀イオンを銀の金属に還元し、金属沈着が生じる。
【0036】
酵素を金イオン(例えば、デトラブロモ金酸カリウム由来)、または銀イオン(例えば、酢酸銀由来)で前処理し、その後(過剰な前処理の金属イオン溶液を除去するために)任意で洗浄することにより、その後現像混合物が適用されたときに非常に向上された速度の銀沈着を生じる。本明細書中で使用される場合、用語「現像混合物(developing mix)」は、金属沈着を得るために酵素に適用される溶液、と定義される。代表的に、現像混合物は、pHを制御した緩衝液(例えば、0.1Mクエン酸ナトリウム、pH3.8)中に、金属イオン(例えば、酢酸銀)、還元剤(例えば、ヒドロキノン)および酸化剤(例えば、過酸化水素)を含む。上記の酵素的金属還元において、現像混合物は、約3.8のpHでクエン酸緩衝液中に、酢酸銀、ヒドロキノン、および過酸化水素を有利に含んでいた。酵素的金属還元および沈着は、酵素が、例えば、ニトロセルロース紙上に固定されるか、または標的抗原に免疫学的に結合されるかのいずれかで固定される場合に、都合よく観察され得る。
【0037】
本発明によると、任意の適切な銀イオン(例えば、酢酸銀、乳酸銀および硝酸銀)が、ペルオキシダーゼ触媒性銀沈着反応で使用され得る。他の金属イオン溶液(例えば、塩化第一水銀、塩化セシウム、硝酸鉛、硫酸ニッケル、硫酸銅、酢酸パラジウムおよびフェロシアン化カリウムの溶液)もまた、使用され得る。
【0038】
他の酵素もまた、金属イオンの塩に由来する金属イオンを還元することに関して活性である。例えば、デトラブロモ金酸カリウムの前処理を用いて、ヒドロキノンおよび過酸化水素がpH3.8でクエン酸ナトリウム緩衝液中に含まれる場合に、カタラーゼが銀イオンを銀の金属に還元することが見出された。さらに、ラクトペルオキシダーゼは、銀イオンに対して活性であることが見出された。
【0039】
ヒドロキノンは現在最もよく知られた還元剤であるが、他の還元剤もまた、本発明を実施するのに有用であると考えられる。他の還元剤としては、例えば、没食子酸n−プロピル、硫酸4−メチルアミノフェノール、1,4フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、クロロキノン、ブロモキノン、2−メトキシヒドロキノン、ヒドラジン、メトール、アスコルビン酸、1−フェニル−3−ピラゾリジノン(フェニドンアミノフェノール)および亜ジチオン酸塩(例えば、亜ジチオン酸ナトリウム)が挙げられる。1−フェニル−3−ピラゾリジノン、水素化ホウ素ナトリウムおよびボランは、H2O2の必要性を伴わずに還元剤として働き得る。
【0040】
酵素は、次々に連結して所望の金属沈着を生成し得る。例えば、グルコースは、グルコースオキシダーゼに対する基質としての役割を果たし、過酸化水素を生成する。次いで、過酸化水素は、ペルオキシダーゼに対する基質としての役割を果たし、ヒドロキノンの存在下で銀イオンを沈着させる。なぜなら、過酸化水素がその酵素反応で使用されるからである。
【0041】
酵素改変(altered)金属生成物は、水に可溶性であっても、不溶性であってもよい。当然のことながら、本発明の他の実施形態において、改変金属生成物は、有機溶媒に可溶性であり得る。例えば、アウロチオグルコースは、ヒドロキノンおよび過酸化水素がある状態で、ニトロセルロースに結合したホースラディッシュペルオキシダーゼに曝露されたとき、乱されないままの場合は、その酵素の位置で強い黄色になる。しかし、リンスするかまたは攪拌によりその色は容易に分散する。この反応は、光学密度読み取り器につながれ得るか、または新たに形成された有色の生成物を感知するマイクロタイタープレート読み取り器を備えるELISA形式で使用され得る。
【0042】
粒子またはイオンから形成される金属沈着物は、オートメタログラフィーを用いてさらに増強され得る。本明細書で使用される場合、「オートメタログラフィー(autometallography)」は、核となる金属(nucleating metal)の表面上で特異的に生じる、溶液中の金属イオンに由来する金属の沈着と定義される。例えば、約1nm〜50nmのサイズ範囲の金粒子が銀イオンおよび還元剤に曝露された場合、銀金属が金粒子上に沈着し、複合粒子を形成することが公知である。より多くの銀が沈着するにつれて、その複合粒子はサイズが増加する。複合粒子が大きくなるにつれて、その粒子はより可視的かつ検出可能になる。
【0043】
オートメタログラフィーは、酵素的金属沈着と組み合わされ得る。一旦金属が金属粒子として酵素的に沈着されると、金属粒子はオートメタログラフィー溶液に供される。オートメタログラフィーでの沈着物は複合粒子を形成し、酵素的に沈着した金属粒子のサイズを拡大し、その結果、酵素的金属沈着物はより嵩高く、それゆえ検出しやすい。オートメタログラフィーとタンデム(tandem)にした酵素的金属沈着の組み合わせは、増加した感度および/または迅速な検出を提供する。
【0044】
オートメタログラフィーとタンデムにした酵素的金属沈着の使用のさらなる利点は、オートメタログラフィーでの沈着物が酵素的に沈着した粒子の金属と異なる金属であり得ることである。これは、もともとの金属沈着物を1以上の異なるオートメタログラフィーで沈着した金属層でオーバーコーティングすることを可能にする。オートメタログラフィー層はまた、望ましい場合、複合粒子の大部分となり得る。オートメタログラフィーでのコーティングは、酵素的金属沈着物に新たな特性(例えば、変化した酸化率、磁気的特性、光学的特性および電気的特性)を与え得ることが留意されるべきである。例えば、金が酵素的銀沈着物上にオートメタログラフィーで沈着された場合、改良された化学的耐性を与える。なぜなら、金はコアの銀沈着物より酸化に対してより不活性(noble)でありかつより耐性であるからである。酵素的金属沈着物の上にオートメタログラフィーで沈着する銅は、その金属粒子に銅の導電特性および他の特性を与える。
【0045】
種々の方法が、酵素的金属沈着物を検出し観察するために使用され得る。酵素的金属沈着物を検出し観察するのに有用な方法のうちのいくつかとしては、以下が挙げられる:
(肉眼による目視観察)銀の酵素的沈着または金による前処理後の銀の酵素的沈着は、代表的に、微粉化した金属の存在に起因して黒色または褐色を生じる。その色は、肉眼で、特に、明るい色の背景に対して容易に確かめられる。
【0046】
(顕微鏡を用いる目視観察)より高い解像度またはより高感度な検出のために、金属沈着は、顕微鏡下で眺められ得る。金属は、非常に高密度でありかつ不透明であり、そして多くの状況において、明視野照明を用いてこの密度によって容易に検出され得る。この特徴は、サンプル中の標的部位または標的分子を検出するための発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)アッセイで有用である。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)と比べて、CISHは、FISHに必要とされるような蛍光顕微鏡の代わりに、明視野顕微鏡を用いてインサイチュハイブリダイゼーション法が実施および検出されるのを可能にする技術である。FISHが、60倍もしくは100倍の油浸対物レンズおよび最もありふれた診断の研究室で使用されない複数帯域通過蛍光フィルターを備える現代的かつ高価な蛍光顕微鏡を必要とする一方で、CISHは、診断の研究室で一般的に使用される標準的な光学(明視野)顕微鏡での検出を可能にする。また、FISHに関して、蛍光シグナルは数週間以内に消失し得、ハイブリダイゼーションの結果は代表的に高価なCCDカメラを用いて記録されるが、一方で、CISHの結果は、一般的に消失せず、組織サンプルを保管し、後に眺めることを可能にする。したがって、FISHデータの分析および記録は、高価でありかつ時間がかかる。最も重要なことには、組織切片形態学は、FISHには最適ではない。一般に、組織学的詳細は、明視野検出によってより良く理解され、この明視野検出は、CISH検出で可能である。CISHのさらなる利点は、CISH対比染色後に組織切片の広い領域が走査され得ることである。なぜなら、形態学的詳細は、低倍率の対物レンズ(例えば、10倍および20倍)を用いて迅速に明らかになり、一方で、FISH検出は一般的に実質的により高い倍率を必要とし、それゆえ視野を縮めるからである。効率的な処理および都合のよいビューイング(viewing)のような特徴は、自動サンプル処理・検出デバイス(例えば、自動化免疫組織化学スライド調製・染色デバイス)を用いることによって多数のサンプルのハイスループットで自動的なスクリーニングを可能にする。そのような自動化デバイスの代表的な例は、Ventana Medical Systems,Tucson,Arizonaによって提供されるBenchmarkTM XT自動化プラットホームである。BenchmarkTM XT自動化プラットホームの詳細は、製造業者のユーザーマニュアル、製品の説明書など、および米国特許第6,296,809号に記載されており、これらは、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0047】
(反射率)金属は光を反射するので、落射照明(epi−illumination)が、顕微鏡とともにまたは顕微鏡を伴わずに使用され得る。さらに、金属は、反射の際に光を再偏光(repolarize)するので、交差偏光子(crossed polarizer)が非金属性物質からの反射を除去するために使用され得、したがって、シグナル対ノイズ比が改良される。
【0048】
(電子顕微鏡)金属は、透過電子顕微鏡におけるその密度に起因して、電子顕微鏡を介して明瞭に見られる。金属はまた、高い後方散乱係数を有し、走査型電子顕微鏡における後方散乱検出器によって眺められ得る。金属はまた、電子衝撃の際に特徴的なX線を発するので、金属はX線検出器または電子エネルギー損失分光法によって検出され得る。他の方法としては、金属の特徴的な電子回折像の検出が挙げられる。
【0049】
(ポーラログラフ検出、電気化学的検出、または電気的検出)電極に沈着した金属は、その特性を変化させる。適切な電流および電圧を用いて探査することによって、金属が検出され得る。
【0050】
(X線分光法)金属は、X線誘起蛍光またはX線吸収によって検出され得る。
【0051】
(化学的試験)金属を、着色した生成物または他の方法で検出可能な生成物に化学的に変換するために、感度のよい試験が存在する。
【0052】
(質量検出)沈着した金属の質量は、例えば、水晶結晶板マスバランス(quartz crystal mass balance)を用いて検出され得る。交流電圧源を備えるインダクタンス−抵抗−キャパシタンス(LRC)電子回路における水晶は、いくつかの共鳴周波数で振動する。金属がその水晶の表面に沈着した場合、この沈着が水晶の質量およびその共鳴周波数を変化させる。これは、質量変化を測定するための非常に感度のよい方法を提供する。
【0053】
(光散乱)微細な金属沈着物は、溶液または表面の光散乱を変化させる。
【0054】
光を用いて金属の相互作用(吸収、偏光および蛍光を含む)を検出する他の光学的な方法が利用され得る。
【0055】
(磁気的検出)沈着した金属の磁気的特性は、適切な器具(例えば、磁石、コイル)を用いて、または光学・磁気的特性変化を走査して検出され得る。
【0056】
(オートメタログラフィー)シグナルのさらなる増幅は、追加の金属イオンと還元剤と他の添加物とを適用し、初期の酵素的金属沈着において特異的に核をなすさらなる金属沈着をもたらすことによって達成され得る。
【0057】
(走査型プローブ顕微鏡)金属沈着は、種々の走査型プローブ顕微鏡技術(走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡(NSOM)が挙げられる)ならびに圧電的に駆動される走査チップ(scanned tip)を用いる他の関連技術によって、高い空間分解能かつ高感度で認識され得る。
【0058】
酵素的金属沈着を実行するためのこれらの試薬は、キット中に集められ得る。本明細書中で使用される場合、「キット」とは、本発明の方法を実行するための物質または試薬を送達するための任意の送達システムを指す。反応アッセイの文脈において、そのような送達システムとしては、ある場所から別の場所まで、反応試薬(例えば、適切な容器中の酸化剤、還元剤、金属イオン溶液、プローブ、酵素など)および/またはサポーティングマテリアル(supporting material)(例えば、緩衝剤、アッセイを実行するためおよびトラブルシューティングのための指示書)の保存、輸送、または送達を可能にするシステムが挙げられる。例えば、キットは、関連する反応試薬および/またはサポーティングマテリアルを含む1種以上の筐体(例えば、ボックス)を備える。そのような内容物は、意図される受容者に一緒にまたは別々に送達され得る。例えば、第1の容器は、アッセイで使用するための酵素を含み得、一方で第2の容器は、プローブを含む。
【0059】
酵素的金属沈着は、本発明において、生物学的サンプル中の複数の標的を検出するために有用であり、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
(免疫組織化学および免疫細胞化学):
現在、一次抗体が、細胞学的検体、組織切片、および生検における抗原を標的するために広範に使用されている。次いで、抗体は、一般的に、種々の技術(ビオチニル化され、その後アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体(ABC複合体)となり、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)によって褐色を発する二次抗体の使用が挙げられる)によって検出される。必要に応じて他の検出方法(蛍光および化学発光が挙げられる)と合わせて、上記方法もしくは類似の方法によって抗原に局在化されたペルオキシダーゼに金属イオンおよび現像混合物(developing mix)を(好ましくは、金属イオンの前処理とともに)供給することによって、金属沈着法が検出スキームとして使用され得る。DABが沈着する代わりに、金属(例えば、銀)が沈着する。酵素的銀沈着は、明視野顕微鏡(黒色の沈着物が形成される場合)だけでなく、反射顕微鏡、電子顕微鏡および金属検出に適した他の方法によってより良く検出可能であるという利点を有する。したがって、感度は、従来の方法よりも非常に改良される。
【0061】
あるいは、上記の表面酵素基質との金属クラスターまたは金属コロイドが、酵素作用によって抗原特異的な沈着を形成するために使用され得る。金属の酵素的沈着は、電子顕微鏡、側方流動試験、および他の適用のために金−抗体結合体を用いて一般になされるような、抗体に結合した金属ナノ粒子を単に標的することを上回る大きな利点を有する。1つの主な利点は、より多くの基質が提供される限りは金属または金属粒子が酵素によって継続的に沈着されることである。このようにして、金属粒子の非酵素的標的と比べて多量の金属生成物が沈着され得、望ましい増幅効果を達成する。
【0062】
(インサイチュハイブリダイゼーション)
現在多数の実験室試験および病理学的試験がなされており、インタクトなゲノムまたはそのセグメントの一部のいずれかとして、インサイチュでDNA配列またはRNA配列を検出するための感度のよい方法を有することが望ましい。検出可能な部分を伴う相補プローブを標的配列にハイブリダイズさせることによって、これらの配列は見出され、定量され得る。しかし、単一の遺伝子コピーまたは低いレベルの発現を見るために必要とされる検出の制限は、多くの方法の能力を超える。本発明は、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)で標識された核酸プローブを有することによって、サンプル中の染色体中の複数の標的、単一のコピーまたは低レベルの増幅の感度のよい検出を達成するために、あるいは多段階標識(例えば、ビオチン化プローブ、その後アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体またはビオチン−抗体−複合体)を用いるために、使用され得る。次いで、ペルオキシダーゼは、上述のように、金属を沈着させるために利用される。酵素的に沈着された金属は、高度に検出可能であり、以下にさらに記載されるように、この方法を用いることによって信頼性のある単一遺伝子の感度が達成される。
【0063】
(側方流動、ブロット、および膜プロービング)
金属沈着法は、多くの有用な適用(例えば、側方流動診断(例えば、「ディップスティック」妊娠検査キット)、ウエスタンブロット、サザンブロットおよび他のブロット、ならびに膜上で行われる他の試験)で、必要に応じて他の検出スキーム(例えば、放射能、コロイド金、化学発光、比色、および他の検出スキーム)と併せて使用され得る。例えば、標的は、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)と結合されている結合部分でプローブ化され得る。有用な結合部分は、望ましい標的に依存し、例えば、特定の標的と結合する親和性を有する抗体、抗体フラグメント、抗原、ペプチド、核酸、核酸プローブ、炭水化物、薬物、ステロイド、植物および細菌由来の天然産物ならびに合成分子が挙げられる。次いで、酵素的金属沈着が、基質シェル(substrate shell)を有する金属粒子または金属イオンのいずれかと適切な現像混合物(developing mix)を用いて適用され、金属が特定の標的部位の周辺に沈着される。金属沈着は、付着した沈着物または溶液中に分散した形態であり得る。酵素的に沈着した金属は高度に検出可能であり、極めて感度のよい検出方法を提供する。
【0064】
(抗原および他の物質の感度のよい検出)
抗原および他の物質の検出のために他の多くの形式が考案された(例えば、ゲル、細胞培養物、組織切片、マイクロタイタープレートシステムおよび表面センサーの使用)。これらのうちのほとんどは、従来技術の代わりに本発明ならびに代替的な金属の酵素的沈着およびその後の検出に適応するように、容易に適合され得る。このことは、従来の形式を、望ましい特徴(例えば、より高い感度、より低いコスト、記録の持続性および他の利点)を有する新しい改良された形式に変える。従来技術の代わりに金属の酵素的沈着およびその後の検出に置き換えることはまた、従来のシステムに関する多くの不利な点(例えば、放射性物質の使用、漂白、一過性の生成物および高い費用)を排除する。
【0065】
(電子顕微鏡プローブ)
少量の金属が、それらの密度、後方散乱、X線放出またはエネルギー損失によって、電子顕微鏡で容易に検出される。本発明は、抗原または他の部位を特異的に標的するために使用され得、最初に酵素を用い、その後金属が沈着する。酵素的に沈着された検出可能な金属は、標的された部位が高い特異性でかつ高感度で分析されることを可能にする。
【0066】
(2.生物学的サンプルにおける標的分子の例)
本発明は、疾患および状態の研究、遺伝的プロファイリング、診断、予防および/または処置のために、広範な生物学的分子の検出に適用され得る。例えば、本発明の方法は、哺乳動物(好ましくは、ヒト被験体)由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを検出することによって、その哺乳動物の疾患状態を決定するために使用され得る。そのような「疾患状態」は、疾患の決定または分類、予後、薬物の効力、治療に対する患者の反応性(いわゆる「標的治療」)、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、疾患の再発の可能性などに関連し得る。例えば、臨床試験または処置における薬物に応じた患者のバイオマーカーのレベルの変化に関する情報は、患者を、特定の薬物に対してより反応性であるかまたはより反応性の低い下位集団(sub−population)、あるいはその薬物の副作用の影響を受けやすい下位集団に階層化するために利用され得る;正常細胞の参照サンプルと比べて患者のサンプル中の標的バイオマーカーの量が高いことは、その患者がそのバイオマーカーの異常な増幅および/または発現に関連する疾患を有することを示し得る。
【0067】
したがって、本発明は、複数の標的分子(例えば、試験サンプル中のバイオマーカー)
を、好ましくはインビトロで検出するための方法を提供し、その方法は、以下:複数の標的分子のうちの第1の標的分子を、i)酵素をその第1の標的分子に結合させる工程、ii)その酵素を酸化剤および還元剤の存在下で金属イオンと接触させ、それによってその金属イオンが元素金属に還元され、それによって、その元素金属を酵素の周辺に沈着させる工程、およびiii)その第1の標的分子に結合した酵素の周辺における沈着した金属の存在、量またはレベルを決定する工程、によって検出する工程;ならびにその試験サンプル中の複数の標的分子のうちの第2の異なる標的分子を、その第2の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、その検出可能なシグナルは沈着した金属のシグナルと異なる、工程、を包含する。
【0068】
例えば、上記沈着した金属および/または上記第2の標的分子によって生成される検出可能なシグナルは、試験サンプルおよび参照サンプル中の標的分子のプロフィールの相違を決定するために、参照サンプルのものと比較され得る。そのような情報は、その試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定するために使用され得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、上記参照サンプルは、代表的に、患者のサンプルでの測定がその患者のサンプル中にバイオマーカーが過剰量存在するかまたは減少した量で存在するかどうかを決定するために比較される正常な状態または非疾患状態を代表する、1種以上の細胞、異種移植片、または組織サンプルを有する。参照サンプルの性質は、特定のアッセイについて設計上選択できる問題であり、患者自身の正常組織、または健常な個体の集団に由来する組織に由来するかまたはそれによって決定され得る。好ましくは、参照サンプル中のバイオマーカーの量に関する値は、試験された患者のサンプルについて対応する値と本質的に同一の実験条件下で入手される。参照サンプルは、患者サンプルの種類と同じ種類の組織に由来しても、異なる組織型に由来してもよく、参照サンプルが入手される集団は、患者の特徴と適合する特徴(例えば、年齢、性別、人種など)について選択され得る。本発明の適用において、患者サンプルにおけるバイオマーカーの量は、以前に集計された参照サンプルの対応する値と比較され、測定値、平均範囲、平均値(標準偏差を伴う)、または同様の表現として提供される。
【0070】
一局面において、本発明で提供される方法は、レセプター型チロシンキナーゼのファミリーに属し、腫瘍の発達および転移に密接に関連する血管新生増殖因子に対するレセプターを検出するために使用され得る。そのような血管由来の成長因子の例としては、フィブリンに対するレセプター(VE−カドヘリン)、VEGFに対するレセプター(Flt1およびKDR)、VEGF−CおよびVEGF−Dに対するレセプター(Flt4)、VEGF−165に対するレセプター(NP−1およびNP−2)、アンジオポエチン−1、アンジオポエチン−2、アンジオポエチン−3、およびアンジオポエチン−4に対するレセプター(Tie1およびTie 2)、FGFに対するレセプター(FGF−R1、FGF−R2、FGF−R3およびFGF−R4)、PDGFに対するレセプター(PDGF−R)、エフリン(ephrine)A1−5に対するレセプター(Eph A1−8)、ならびにエフリンB1−5に対するレセプター(Eph B1−8)が挙げられるが、これらに限定されない。そのようなレセプターの感度のよい検出は、腫瘍(良性、悪性、または転移性)、および異常な新脈管形成または新生血管形成に関連する他の状態の初期の診断、予後、または病期分類(staging)を可能にする。
【0071】
本発明の方法を用いる検出に適した標的分子としてはまた、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)(例えば、スフィンゴシン−1−ホスフェートもしくはSPPに対するレセプター、リゾホスファチジン酸もしくはLSAに対するレセプター(edgレセプター))、サイトカインレセプター(例えば、腫瘍壊死因子−αもしくはTNF−αに対するレセプター(TNF−αレセプター)およびインターロイキン−8もしくはIL−8に対するレセプター(IL−8レセプター))、プロテアーゼレセプター(例えば、ウロキナーゼに対するレセプター(ウロキナーゼレセプター))、ならびにインテグリン(例えば、トロモスポンジン(thromospondin)−1およびトロモスポンジン−2に対するレセプター(αvβ3インテグリンおよびα2vβ1インテグリン)およびフィブロネクチンに対するレセプター(αvβ3インテグリン))、ならびにマトリックスメタロプロテアーゼが挙げられる。また、抗脈管形成効果を有するタンパク質因子に対するレセプター(例えば、アンギオスタチンに対するレセプター(アンギオスタチン−R(Annexin IIとも呼ばれる))、アンギオスタディン(angiostadin)に対するレセプター(アンギオスタディン結合タンパク質I)、グリピカンに対する低親和性レセプター、エンドスタチンに対するレセプター(エンドスタチン−R)、エンドセリン−1に対するレセプター(エンドセリン−Aレセプター)、アンギオシディン(angiocidin)に対するレセプター(アンギオシディン−R)、レセプターアンギオゲニン(アンギオゲニン−R)、トロモスポンジン−1およびトロモスポンジン−2に対するレセプター(CD36およびCD47)、ならびにタムスタチン(tumstatin)に対するレセプター(タムスタチン−R))も含まれる。さらに他の標的分子としては、T細胞マーカー(例えば、CD3、CD4、CD8、TCR)、B細胞マーカー(例えば、CD20)、細胞増殖指示物質(例えば、Ki−67)、アポトーシス関連指示物質(例えば、カスパーゼ−3、CK8/18、p63)、および系統特異的マーカー/腫瘍細胞指示物質(例えば、CALB2、CD5、CD10、CD31、CD34、CDX2、CHGA、CK5、CK7、CK17、CK20、HSA、MART−1、Pax−5、PSA、S−100、SYP)が挙げられる。
【0072】
別の局面において、本発明は、診断目的または治療目的のために、キナーゼ遺伝子またはその産物を検出するために適用され得る。例えば、キナーゼの異常な活性と関連する疾患を有し、キナーゼのインヒビターを用いる治療から利益を受け得る患者の評価を支援するために、遺伝子またはその産物のレベルが検出され得る。
【0073】
1つのバリエーションにおいて、上記キナーゼは、セリン/スレオニンキナーゼ(例えば、Rafキナーゼ)であり、;キナーゼインヒビターは、BAY 43−9006である。
【0074】
別のバリエーションにおいて、上記キナーゼは、プロテインキナーゼキナーゼ(例えば、Raf−マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)およびプロテインキナーゼB(Akt)キナーゼ)である。
【0075】
なお別のバリエーションにおいて、上記キナーゼは、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)である。ERKのインヒビターとしては、PD98059、PD184352、およびU0126が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
なお別のバリエーションにおいて、上記キナーゼは、ホスファチジルイノシトール 3’−キナーゼ(PI3K)である。PI3Kのインヒビターの例としては、LY294002が挙げられるが、これに限定されない。
【0077】
レセプター型チロシンキナーゼの例としては、上皮増殖因子レセプターファミリー(EGFR)、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)ファミリー、血管内皮増殖因子レセプター(VEGFR)ファミリー、神経成長因子レセプター(NGFR)ファミリー、線維芽細胞増殖因子レセプターファミリー(FGFR)、インスリンレセプターファミリー、エフリンレセプターファミリー、Metファミリー、およびRorファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
上皮増殖因子レセプターファミリーの例としては、HER1、HER2/neu(またはHER2/neu)、HER3、およびHER4が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
上皮増殖因子レセプターファミリーのインヒビターの例としては、トラスツズマブ(trastruzumab)(HERCEPTIN(登録商標))、ZD1839(IRESSA(登録商標)),PD168393、CI1033、IMC−C225、EKB−569、およびレセプター型チロシンキナーゼのCys残基に共有結合するインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
特に、膜貫通型チロシンキナーゼレセプターHER2/neuは、乳がんの約30%で過剰発現されるオンコジーンとして同定された。これらのHER2/neuを過剰発現する乳がんは、特徴的により侵攻性である(aggressive)乳房腫瘍のサブセットを規定し、これらを発症する女性は生存時間がより短い。さらに、HER2/neu遺伝子の増幅は、より大きい増幅および化学療法に対する耐性と関連がある。トラスツズマブ(HER2/neuに特異的なヒト化モノクローナル抗体)は、HER2/neuを過剰発現する転移性の乳がんのマネージメントにおいて広範に使用されている。単剤として、トラスツズマブは、転移性乳がんに活性な多くの単剤の化学療法剤の応答速度と同様の応答速度を生じ、かつ限られた毒性を有する。トラスツズマブと化学療法とを組み合わせることにより、相乗的な抗腫瘍活性を生じ得る。しかし、HER2過剰発現の非存在下では、トラスツズマブを用いるそのような処置はあまり有効ではなく、トラスツズマブは心臓毒性および出血を一緒に引き起こし得る。したがって、発現のレベル、増幅のレベルおよび/またはその2つの組み合わせを決定することは、予後および処置を決定するのに重要である。
【0081】
したがって、本発明の方法は、HER2遺伝子および/またはその産物を検出して、HER2タンパク質を標的する治療的介入(例えば、トラスツズマブの治療)により応答性であり得る患者の選択を導くために使用され得る。例えば、本発明は、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた乳がん組織サンプルにおいて、HER2遺伝子に特異的なヌクレオチドプローブを用いることによって、HER2遺伝子増幅を検出するために適用され得る(図14〜19を参照のこと)。さらに、本発明は、HER2遺伝子増幅およびHER2タンパク質レベルを検出するために適用され得る(図20〜23を参照のこと)。両方のアプローチが、トラスツズマブによる処置が検討される乳がん患者の評価に役立つ。
【0082】
血管内皮増殖因子レセプターファミリーの例としては、VEGFR1、VEGFR2、およびVEGFR3が挙げられるが、これらに限定されない。血管内皮増殖因子レセプターファミリーのインヒビターの例としては、SU6668が挙げられるが、これに限定されない。
【0083】
神経成長因子レセプターファミリーの例としては、trk、trkBおよびtrkCが挙げられるが、これらに限定されない。神経成長因子レセプターファミリーのインヒビターの例としては、CEP−701、CEP−751、およびインドカルバゾール化合物が挙げられるが、これらに限定されない。神経成長因子レセプターファミリーの異常な活性に関連する疾患の例としては、前立腺がん、結腸がん、乳頭がんおよび甲状腺がん、神経腫ならびに骨芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
Metファミリーの例としては、Met、TPR−Met、Ron、c−Sea、およびv−Seaが挙げられるが、これらに限定されない。Metファミリー由来のレセプター型チロシンキナーゼの活性に関連する疾患の例としては、侵襲的に陥入する(in−growing)腫瘍、がん腫、甲状腺の乳頭状がん、結腸がん、腎がん、膵臓がん、卵巣がん、頭部および頚部扁平上皮がんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、Kitファミリー(例えば、c−Kit)、Srcファミリー、Fesファミリー、JAKファミリー、Fakファミリー、Btkファミリー、Syk/ZAP−70ファミリー、およびAblファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
特に、Kitレセプター型チロシンキナーゼは、種々の組織で発現される膜貫通型レセプターであり、そのリガンドである幹細胞因子(SCF)を通じて多面的な生物学的効果を媒介する。Kitの散発性変異、ならびにSCF/Kit経路のオートクライン/パラクライン活性化機構は、種々の悪性腫瘍に関与しており、その転移への主な寄与は、腫瘍増殖を増強し、アポトーシスを減少することにおいての寄与である。例えば、Kitは、しばしば、消化管間質腫瘍(GIST)で変異および活性化され、いくつかの肺がんではKitのリガンド媒介性活性化が存在する。Kitは、Kit誘発性腫瘍の都合のよい標的であり、GISTにおける低分子薬Gleevec(登録商標)(メシル酸イマチニブ、STI571)でのこのレセプターの阻害は、劇的な効力を示している。したがって、本発明の方法は、Kit遺伝子またはその産物を検出し、Kitを標的する治療的発明(例えば、メシル酸イマチニブの治療)により応答性であり得る患者の選択を導くために使用され得る。例えば、本発明は、資格のある病理学者によって評価された患者の病歴、腫瘍形態学、および他の診断試験との関連におけるGISTの診断の補助として、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたGIST組織サンプルにおいてc−Kitに特異的な一次抗体(抗c−Kit抗体)を用いることによってc−Kitタンパク質を検出するために、適用され得る。
【0087】
Srcファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、Src、c−Src、v−Src、Yes、c−Yes、v−Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr、c−Fgr、v−Fgr、p56lck、Tkl、Csk、およびCtkが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
Srcファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、SU101およびCGP 57418Bが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
Srcファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの活性と関連する疾患の例としては、乳がん、がん腫、黒色腫、白血病、および神経芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
Fesファミリーに由来する非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、c−fes/fps、v−fps/fes、p94−c−fes関連タンパク質、およびFerが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
Fesファミリーに由来する非レセプター型チロシンキナーゼの活性に関連する疾患の例としては、間葉起源の腫瘍および造血起源の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
JAKファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、Jak1、Jak2、Tyk2、およびJak3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
JAKファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、tyrphostin、CIS/SOCS/Jabファミリーのメンバー、合成成分AG490、ジメトキシキナゾリン化合物、4−(フェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(3’−ブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、および4−(3’,5’−ジブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
JAKファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの活性に関連する疾患の例としては、間葉起源の腫瘍および造血起源の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
Fakファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、FakおよびCAKβ/Pyk2/RAFTKが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
Fakファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、ドミナントネガティブな変異体S1034−FRNK;Isaria sinclarii由来の代謝産物FTY720、およびFAKアンチセンスオリゴヌクレオチドISIS 15421が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
Fakファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの異常な活性に関連する疾患の例としては、ヒトがん腫、転移傾向性(metastasis−prone)の腫瘍、および造血起源の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
Btkファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、Btk/Atk、Itk/Emt/Tsk、Bmx/Etk、およびItk、Tec、Bmx、ならびにRlkが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
Btkファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、アルファ−シアノ−ベータ−ヒドロキシ−ベータ−メチル−N−(2,5−ジブロモフェニル)プロペンアミドが挙げられるが、これに限定されない。
【0100】
Btkファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの異常な活性に関連する疾患の例としては、B細胞性(B−lineage)白血病およびリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
Syk/ZAP−70ファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの例としては、SykおよびZAP−70が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
Syk/ZAP−70ファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼのインヒビターの例としては、ピセアタンノール(piceatannol)、3,4−ジメチル−10−(3−アミノフェニル)−9−アクリドンオキサレート、およびアクリドン関連化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
Syk/ZAP−70ファミリー由来の非レセプター型チロシンキナーゼの異常な活性に関連する疾患の例としては、良性の乳がん、乳がん、および間葉起源の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
なお別の局面において、本発明は、核内ホルモンレセプター(例えば、エストロゲン、アンドロゲン、レチノイド、ビタミンD、グルココルチコイドおよびプロゲステロンレセプター)の遺伝子または遺伝子産物を検出するために適用され得る。核内ホルモンレセプタータンパク質は、DNAの特定の配列に結合した場合に細胞核内の転写のオン−オフスイッチの役割を果たすリガンド活性化タンパク質のクラスを形成する。これらのスイッチは、皮膚、骨および脳内の行動中枢の発達および分化、ならびに生殖組織の持続性調節を制御する。核内ホルモンレセプターとそれらの同族リガンドとの間の相互作用は、種々の形態のがん(例えば、乳がん、前立腺がん、骨のがん、および卵巣がん)の発生および発達に関与する。したがって、核内ホルモンレセプターの遺伝子または遺伝子産物を検出することによって、これらの疾患の診断、予後および/または処置が達成され得る。
【0105】
上記のバイオマーカーに関連する特定の疾患または状態以外に、本発明はまた、望ましくない、異常な細胞増殖に関連する疾患または障害の研究、診断、予後および/または処置においてバイオマーカーを検出するために使用され得る。そのような疾患または障害としては、再狭窄(例えば、冠状動脈、頚動脈、および脳の病変)、良性腫瘍、種々の型のがん(例えば、原発腫瘍および腫瘍転移)、血液学的障害、内皮細胞の異常な刺激(アテローム性動脈硬化症)、手術に起因する体組織の傷害、異常な創傷、異常な新脈管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復運動障害、高度に血管新生化していない組織の障害、および臓器移植に関連する増殖反応が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
良性腫瘍の例としては、血管腫、肝細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫(bile duct cystanoma)、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生過形成、トラコーマおよび化膿性肉芽腫が挙げられる。
【0107】
特定の型のがんとしては、乳がん、皮膚がん、骨のがん、前立腺がん、肝臓がん、肺がん、脳のがん、喉頭、胆嚢、すい臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭部および頸部、結腸、胃、気管支、腎臓のがん、基底細胞がん、潰瘍性および乳頭状の両方の扁平上皮がん、転移性皮膚がん、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫(veticulum cell sarcoma)、骨髄腫、巨細胞腫、巨細胞肺腫瘍、島細胞腫、原発性脳腫瘍、急性および慢性のリンパ球性および顆粒球性腫瘍、ヘアリーセル腫瘍、腺腫、過形成、髄様がん、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節細胞腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体質腫瘍(marfanoid habitus tumor)、ウィルムス腫、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫、子宮頸部形成異常およびインサイチュがん腫、神経芽腫、網膜芽腫、軟部組織の肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性肉腫および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性赤血球増加症(polycythermia vera)、腺がん、多形性膠芽腫、髄芽腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮がん、ならびに他のがんおよび肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
異常な新脈管形成に関連する疾患の例としては、関節リウマチ、虚血再灌流関連脳水腫および損傷、皮質虚血、卵巣過形成および血管過多、(多嚢胞性卵巣症候群)、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、ならびに他の眼の脈管形成疾患(例えば、未熟網膜症(水晶体後線維増殖症)、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生緑内障(neuroscular glaucoma)およびOster Webber症候群)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
網膜/脈絡膜新生血管形成の例としては、Bests病、近視、視神経乳頭外側部の限局性陥没(optic pits)、Stargarts病、Pagets病、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維仮黄色腫(pseudoxanthoma elasticum)頚動脈閉塞性疾患(carotid abostructive disease)、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎(vitritis)、ミコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟網膜症、イールズ病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、Bechets病、網膜炎またはchroiditisを引き起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷およびレーザー後合併症(trauma and post−laser complications)、rubesisに関連する疾患(angleの新生血管形成)ならびに血管結合組織または線維組織の異常な増殖によって生じる疾患(増殖性硝子体網膜症のすべての形態を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
角膜の新生血管形成の例としては、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの使い古し(contact lens overwear)、アトピー性角膜炎(atopic keratitis)、上輪部角膜炎、翼状片乾燥角膜炎(pterygium keratitis sicca)、シェーグレン(sjogrens)、酒さ性ざ瘡、フリクテン症(phylectenulosis)、糖尿病性網膜症、未熟網膜症、角膜移植拒絶、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁性表皮剥離(marginal keratolysis)、多発性動脈炎、Wegenerサルコイドーシス、強膜炎、天疱瘡(periphigoid)放射状角膜切開、血管新生緑内障および水晶体後線維増殖、梅毒、ミコバクテリア感染、脂質変性、化学的熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、原虫感染ならびにカポジ肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明はまた、核酸配列におけるバリエーションを検出するために適用され得る。核酸配列におけるバリエーションを検出する能力は、遺伝医学の分野において非常に重要な能力である:遺伝的バリエーションの検出は、とりわけ、遺伝的研究のために多型を同定するため、遺伝性疾患の分子的機序を決定するため、遺伝学カウンセリングのためにキャリアおよび出生前診断を提供するため、そして個別の医学(individualized medicine)を促進するために不可欠である。DNAレベルでの遺伝的バリエーションの検出および分析は、染色体分析(karyotyping)、制限フラグメント長多型(RFLP)または可変ヌクレオチド型多型(variable nucleotide type polymorphisms)(VNTR)の分析、そしてさらに最近は、一塩基多型(SNP)の分析によって行われている。例えば、Lai E,et al.,Genomics,1998,15;54(1):31−8;Gu Z,et al.,Hum Mutat.1998;12(4):221−5;Taillon−Miller P,et al.,Genome Res.1998;8(7):748−54;Weiss K M.,Genome Res.1998;8(7):691−7;Zhao LP,et al.,Am J Hum Genet.1998;63(1):225−40を参照のこと。
【0112】
本発明によると、例えば、SNPに関する核酸プローブは、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)で共有的もしくは非共有的に標識され、そしてSNPの部位にハイブリダイズされる。次いで、上記酵素は、上記のように、金属をSNPの部位に特異的に沈着させるために利用される。複数のプローブが、本明細書に記載される一般的原理に従うのと同様に、標的ポリヌクレオチドの集団において複数のSNPを並行して検出するために利用され得る。
【0113】
他の実施形態において、本発明は、染色体上の遺伝子位置および/または異常を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態において、未知の染色体補体を含むサンプルは、沈着された金属および目的の遺伝子配列に特異的にハイブリダイズするプローブを用いる少なくとも第2の検出可能なシグナル(例えば、FITC)で標識される。次いで、染色体補体における第1および第2の標識の相対的位置が確認される。これらの相対的位置は、染色体補体において所定の標準的な幾何パターンを有する。他の実施形態において、同一の染色体上で互いに近接する遺伝子配列が、凝集した染色体が存在しない細胞周期の段階においてでさえ、第1および第2の標識の相対的位置を決定することによって検出され得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、用語「所定のパターン」とは、プローブ標的位置と正常な染色体補体の番号と異常な染色体補体における改変パターンとの間の予め同定された幾何学的関係を指す。適切な場合、「所定のパターン」は、間期核における異なるプローブ標的の空間的関係および量だけでなく、任意の染色体バンド手順によって一様に染色されるかまたはバンドにされる(band)中期染色体補体における異なるプローブ標的の空間的関係および量も含む。一般的に、目的の正常な各遺伝子型を保有する正常な染色体における単一の隣接するプローブ標的は、本発明のいくつかの実施形態において「所定の正常なパターン」を反映する。
【0115】
(3.複数のバイオマーカーの多色検出)
上に記載された金属の部位特異的酵素沈着は、サンプル中の複数の標的を検出するために、他の検出方法と併せて使用され得る。
【0116】
図9は、標的分子の周辺における金属の沈着の図示である。この図では、ハプテンで標識されたDNAプローブが、標的配列に結合されている。そのハプテンは、抗ハプテン一次抗体によって結合されている。その一次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼが結合体化した二次抗体によって結合されている。溶液中の金属イオンは、結合した酵素の周辺で元素金属に還元される。
【0117】
図10は、他のシグナルと併せて使用される金属沈着の図示である。パネルAは、適切な基質を添加した際に比色シグナルを生成するアルカリホスファターゼが結合体化した抗体によって結合された表面タンパク質を示す。パネルBは、標的配列にハイブリダイズされた蛍光マーカーで標識されたDNAプローブを示す。パネルCは、標的配列に結合されたハプテンで標識されたDNAプローブを示す。そのハプテンは、抗ハプテン一次抗体によって結合されている。その一次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素と多重結合体化した(multiply conjugated)二次抗体によって結合されており、これにより、結合した抗体の周辺における金属の沈着がもたらされる。Dは、3種の異なるプローブが結合されている細胞を示す。各シグナルが局在化しているので、3種すべての標的分子の同時検出が可能である。
【0118】
例えば、本発明の方法は、標的バイオマーカーの存在および/または量を決定するために使用され得る、一方で代替的な方法が他の標的バイオマーカーの存在および/または量を決定するために使用される。そのような代替的な方法の例は、以下に詳細に記載される。
【0119】
従来の多くの検出方法が酵素を利用する。感度のよい検出のために一般に使用される酵素基質の型は、代表的に、比色性基質、放射性基質、蛍光性基質または化学発光性基質である。従来の比色性基質は、発色基質における酵素活性の際に、新たな色を生成する(またはスペクトル吸収が変化する)。この型の検出は、生成されるクロモゲンが光ベースの顕微鏡によってまたはスペクトル機器を用いて容易に検出されるという点で有利である。検出のための機器の費用もまた、一般的に他の方法に伴うコストよりも低い;例えば、病理学において、基質の3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)に作用する酵素ホースラディッシュペルオキシダーゼによって生成される褐色は、生検切片の観察のために単純な明視野光学顕微鏡のみを必要とする。ホースラディッシュペルオキシダーゼと併せて使用され得る他のクロモゲンとしては、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)およびBajoran Purpleが挙げられるが、これらに限定されない。アルカリホスファターゼと併せて使用され得る他のクロモゲンとしては、Fast RedおよびFerangi Blueが挙げられるが、これらに限定されない。多くのクロモゲンが当業者に利用可能であり、Thermo Fisher Scientificのような企業によって提供されるカタログを通じて市販されている。
【0120】
従来の放射性基質は、測定のために放射能を酵素的に放出するかまたは留める。感度はよいが、この型の検出は、放射性物質の操作および処理の危険性、ならびに現在他の方法がその感度に匹敵するかまたは上回ることに起因して、あまり一般的ではなくなっている。組織化学的用途およびオートラジオグラフィのために放射標識することは、代表的に、低い比放射能に起因してフィルムを曝露するのに何ヶ月も必要とし、これは別の不利点である。
【0121】
蛍光性基質は一般的である。なぜなら、蛍光性基質は、合理的に感度がよく、一般的にバックグラウンドが低く、そして数種の異なる色のフルオロフォアが同時に使用され得るからである。
【0122】
化学発光は、十分に高い化学結合エネルギーを有する基質の使用に基づき、その結果、その結合が酵素によって破壊されたときに、エネルギーが可視光の形態で放出される。この方法は、光電子増倍管、アバランシェダイオードまたは他の感度のよい光検出器を用いて得られ得る低いバックグラウンドおよび非常に高い感度に起因して、評判を得ている。あるいは、写真用フィルムが、検出手段として使用され得る。
【0123】
当業者は、金属の部位特異的沈着と併せて使用される検出可能な分子が検出可能な物理的特定または化学的特性を有する任意の物質であり得ることを理解する。そのような検出可能な標識は、ゲル、カラム、および固体基板の分野で十分に開発されており、一般に、そのような方法において有用な標識は、本発明に適用され得る。したがって、標識は、
分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段または化学的手段によって検出可能な任意の組成物である。さらに、蛍光標識は、単一種の有機分子に限定されるのではなく、無機分子、有機分子および/または無機分子の多分子混合物(multi−molecular mixture)、結晶、ヘテロポリマーなどを含むことが理解される。したがって、例えば、シリカシェルに封入されるCdSe−CdSコア−シェルナノ結晶は、生物学的分子に対する結合について容易に誘導体化され得る。Bruchez et al.(1998)Science 281:2013−2016。同様に、高蛍光量子ドット(硫化亜鉛キャップドセレン化カドミウム)は、超高感度生物学的検出で使用するために、生体分子に共有結合されている。WarrenおよびNie(1998)Science 281:2016−2018。
【0124】
本発明において有用な標識としては、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、酵素(例えば、一般に検出可能な酵素として使用される、LacZ、CAT、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、I2−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびグルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼなど)、量子ドットの標識、発色団の標識、酵素の標識、アフィニティーリガンドの標識、電磁スピン標識、重原子標識、ナノ粒子光散乱標識または他のナノ粒子で標識されたプローブ、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、TRITC、ローダミン、テトラメチルローダミン、R−フィコエリトリン、Cy−3、Cy−5、Cy−7、Texas Red、Phar−Red、アロフィコシアニン(APC)、エピトープタグ(例えば、FLAGまたはHAエピトープ)、ならびに酵素タグおよびハプテン結合体(例えば、ジゴキシゲニンまたはジニトロフェニル)、あるいは複合体(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン、アビジン/ビオチンまたは抗原/抗体複合体(例えば、ウサギIgGおよび抗ウサギIgGが挙げられる))を形成し得る結合対のメンバー;フルオロフォア(例えば、ウンベリフェロン(umbelliferone)、フロオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、緑色蛍光タンパク質、エリトロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー(lucifer yellow)、Cascade Blue、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、フィコエリトリン、蛍光ランタニド複合体(例えば、ユーロピウムおよびテルビウムを含むもの)、分子ビーコンおよびそれらの蛍光誘導体、発光性物質(例えば、ルミノール));光散乱性またはプラスモン共鳴性物質(金もしくは銀粒子または量子ドット);あるいは放射性同位元素(14C、123I、124I、131I、125I、Tc99m、32P、35Sまたは3Hが挙げられる);あるいは球形シェル、ならびに例えば、Principles of Fluorescence Spectroscopy、Joseph R.Lakowicz(編者),Plenum Pub Corp,第2版(1999年7月)およびRichard P.HoaglandによるMolecular Probes Handbookの第6版に記載されるような、当業者に公知の任意の他のシグナル生成標識で標識されたプローブが挙げられる。
【0125】
半導体ナノ結晶(例えば、米国特許第6,207,392に記載される量子ドット(すなわち、Qドット))は、Quantum Dot Corporationから市販されており、II〜VI群の半導体のナノ結晶(例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、およびHgTeならびにそれらの混合組成物);ならびにIII〜V群の半導体のナノ結晶(例えば、GaAs、InGaAs、InP、およびInAsならびにそれらの混合組成物)を含む。IV群(例えば、ゲルマニウムもしくはシリコン)の使用、または有機半導体の使用もまた、特定の条件下で実行可能であり得る。半導体ナノ結晶はまた、上記のIII〜V群の化合物、II〜VI群の化合物、IV群の元素、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される2種以上の半導体を含む合金を含み得る。標識の例はまた、米国特許第4,695,554号;同第4,863,875号;同第4,373,932号;および同第4,366,241号に見出され得る。コロイド金属および色素粒子は、米国特許第4,313,734号および同第4,373,932号に開示されている。非金属性コロイドの調製および使用は、米国特許第4,954,452に開示されている。標識として使用するための有機ポリマーラテックス粒子は、米国特許第4,252,459号に開示されている。
【0126】
標的バイオマーカーが核酸である実施形態は、代表的に標的に特異的なプローブの生成を伴う。プローブは、数種の手段(インサイチュハイブリダイゼーションによるマッピング[Landegent et al,Nature 317:175−177,1985]、体細胞ハイブリッドパネル[Ruddle & Creagan,Ann.Rev.Genet.9:431,1981]、またはソートされた染色体のスポットブロット[Lebo et al,Science 225:57−59,1984];染色体の連結分析[Ott,Analysis of Human Genetic Linkage,Johns Hopkins Univ Press,pp.1−197,1985])によって生成され、選択されても;あるいはヒト染色体を含むヒト細胞株もしくは体細胞ハイブリッド[Deaven et al,Cold Spring Harbor Symp.LI:159−168,1986;Lebo et al.Cold Spring Harbor Symp.LI:169−176]、放射体細胞ハイブリッド[Cox et al,Am.J.Hum.Genet.43:A141,1988]、染色体領域の顕微解剖[Claussen et al,Cytometry 11:suppl 4 p.12,1990](これらのすべてはその全体が参考として援用される)、または固有の染色体座(配列タグ化部位もしくはSTS)に特異的なPCRプライマーまたは隣接YACクローンのような他の適切な手段によって同定された酵母人工染色体(YAC)に由来するソートされた染色体ライブラリーからクローン化され、単離されてもよい。
【0127】
プローブは、RNAまたはDNAオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのいずれかであり得、天然に存在するヌクレオチドだけでなくジゴキシゲニン(digoxygenin)dCTP、ビオチンdcTP 7−アザグアノシン、アジドチミジン、イノシン、またはウリジンのようなそれらのアナログを含み得る。プローブは、ゲノムDNA,cDNA、あるいはプラスミド、ファージ、コスミド、YACまたは任意の他の適切なベクター中でクローン化されたウイルスDNAであり得る。プローブは、クローン化されても化学的に合成されてもよい。クローン化される場合、単離されたプローブ核酸フラグメントは、代表的に複製ベクター(ラムダファージ、pBR322、M13、pJB8、c2RB、pcos1EMBL)またはSP6もしくはT7プロモーターを含むベクターに挿入され、そして細菌宿主においてライブラリーとしてクローン化される。一般的なプローブクローニング手順は、Arrand J.E.,Nucleic Acid Hybridization A Practical Approach,Hames B.D.,Higgins,S.J.,Eds.,IRL Press 1985,pp.17−45およびSambrook,J.,Fritsch,E.F.,Maniatis,T.,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,1989,pp.2.1−3.58(これらの両方が参考として本明細書に援用される)に記載されている。
【0128】
あるいは、オリゴヌクレオチドプローブは、蛍光色素、ヌクレオチド上で化学的に活性な基、または標識酵素を用いてまたはこれらを用いずに化学的に合成され得る。他の方法もまた、オリゴヌクレオチドプローブを合成するために使用され得る(例えば、約15〜250塩基のプローブを生成する固相ホスホロアミダイト法)。方法は、Caruthers et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,47:411−418,1982,およびAdams,et al.,J.Am.Chem.Soc.,105:661,1983(これらの両方が参考として本明細書に援用される)に詳述されている。ポリメラーゼ連鎖反応もまた、大量の単離されたプローブを得るために使用され得る。その方法は、米国特許第4,683,202号(参考として援用される)に概説されている。
【0129】
特定の核酸標的に対するプローブを合成する場合、核酸配列の選択が標的特異性を決定することが、当該分野において十分に理解される。代表的に、プローブは、その標的ポリヌクレオチドに対して十分な相補性を有し、その結果、安定かつ特異的な結合が、染色体とプローブとの間で生じる。安定なハイブリダイゼーションに必要とされる相同性の程度は、ハイブリダイゼーション媒体および/または洗浄媒体のストリンジェンシーによって変化する。好ましくは完全に相同なプローブが本発明において使用されるが、当業者は、相同性はより低いが十分な相同性を示すプローブが本発明において使用され得ることを容易に理解する。
【0130】
抗体を用いる標的バイオマーカーの多色検出の一般的な図式表示が、図1および図10に示されている。図1は、標識された一次抗体を用いるタンパク質標的の検出を示す。この一次抗体における標識は、当該分野で公知の、そして/または本明細書中に記載されるような任意の標識(例えば、蛍光指示物質)、適切な基質の添加の際に比色シグナルを生成する酵素、または放射性同位体)であり得る。図1はさらに、一次抗体および二次抗体の両方を利用する第1のポリヌクレオチド標的の検出を示す。この実施形態において、上記二次抗体は、複数の酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)または複数の標識に結合体化される。一般的に、そのような複数の結合は、そのような結合された抗体に由来するシグナルを増加させる。図1はまた、一次抗体および二次抗体を用いる第2のヌクレオチド標的の検出を示す。当業者は、一次抗体が特定の標的分子に特異的であっても、標的に特異的なプローブに結合されたハプテンもしくは他の標的に特異的であってもよいことを認識する。当業者はまた、この方法が複数のタンパク質標的および/または複数のポリヌクレオチド標的を検出するために使用され得ることを認識する。
【0131】
図10は、非標識および/または標識された抗体ならびに直接的なプローブを用いる標的バイオマーカーの直接的標識および間接的標識を示す。図10は、標識された一次抗体を用いるタンパク質標的の検出、標識したヌクレオチドプローブを用いる第1のポリヌクレオチド標的の検出、およびハプテンが結合体化したヌクレオチドプローブと、そのハプテンに特異的な一次抗体と、その一次抗体に特異的な多重結合体(multiple−conjugate)二次抗体とを用いる第2のポリヌクレオチド標的の検出を示す。3種の異なる標識/指示物質を使用することによって、様々な標的分子の存在/レベルを示すシグナルを識別し得る。3種の識別可能なシグナルが存在する細胞の例は、パネルDに図示されている。
【0132】
抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc)、キメラ抗体、一本鎖(scFV)、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および所望の特異性の抗原認識部位を含む任意の他のポリペプチドを包含し得る。抗体は、マウス、ラット、ウサギ、トリ、ヒト、または任意の他の起源のもの(ヒト化抗体を含む)であり得る。
【0133】
標識された抗体は、上記の任意の検出手段に結合体化され得る。ほとんどの実施形態において、上記抗体の少なくとも1つは、酵素に結合体化され、金属の酵素的沈着を可能にする。他の標識された抗体は、ある物質に結合体化され、シグナル(比色シグナル、放射性シグナル、蛍光シグナルおよび/または化学発光シグナルが挙げられるが、これらに限定されない)の検出を可能にする。例えば、一実施形態において、1つの標的バイオマーカーを検出するために使用される少なくとも1つの抗体は、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)と結合体化され、アルカリホスファターゼに対して適切な基質を添加した際の特定の結合の比色分析を可能にする。いくつかの実施形態において、複数の酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)が、標的バイオマーカーを検出するために使用される抗体(例えば、一次、二次、三次など)の少なくとも1つに結合体化される。当該分野で公知である多重結合体抗体を構築する方法、および好ましい方法は、米国特許出願番号第11/413,418号(2006年4月27日出願)に記載されており、その関連する部分は、参考として本明細書に援用される。
【0134】
核酸バイオマーカーの検出に関する実施形態において、直接的に検出可能な物質が核酸プローブに組み込まれ得る。また、上に記載されるように、核酸プローブは、酵素と共有結合もしくは非共有結合され、前述のように結合部位において金属を沈着させるために使用され得る。
【0135】
代表的に、異なるシグナルが標的バイオマーカーを標識するために使用され、それゆえ、同じサンプル中の複数のバイオマーカーの検出を可能にする。例えば、以下の3種の検出機構がいくつかの実施形態で使用され得る:1)第1のバイオマーカーが比色性の指示物質を用いて直接的もしくは間接的に検出される;2)第2のバイオマーカーが金属沈着の指示物質を用いて直接的もしくは間接的に検出される;そして3)第3のバイオマーカーが蛍光指示物質を用いて直接的もしくは間接的に検出される。当業者は、複数のバイオマーカーを検出するために併せて用いられる場合、個々の標識が代表的に互いに容易に識別可能であることを理解する。いくつかの実施形態において、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種またはそれ以上の種類の個々のバイオマーカーが検出される。
【0136】
一実施形態において、個々の標的バイオマーカーの検出は、連続して行われ得る。他の実施形態において、個々の標的バイオマーカーの検出は、同時または実質的に同時に行われ得る。さらに他の実施形態において、個々の標的バイオマーカーの連続的検出と同時もしくは実質的に同時の検出との組み合わせが行われ得る。細胞、細胞フラグメント、組織、および/または生物学的サンプルもしくは環境サンプル中のバイオマーカーの検出に関する実施形態において、適切な染色(例えば、ヘマトキシリン、クリスタルバイオレット、クマシーブルー、Nuclear Fast Red、Methyl Green、Methyl Blueなど)が、試験を補助するために使用され得る。
【0137】
異なるシグナルを用いるバイオマーカーの検出は、蛍光マーカーを用いて記載されている(FISH)(米国特許第5,665,540号)。触媒的銀沈着の後のNanogoldプローブの結合が、標的分子を検出するために使用されている(Hainfeld,J.F.およびF.R.Furuya,(1995)Silver Enhancement of Nanogold and Undecagoldにおける「Immunogold−Silver Staining:Principles,Methods and Applications」,,M.A.Hayat(編);pp.71−96)、一方で触媒的金沈着の後のNanogoldプローブの結合が記載されている(Hainfeld,J.F.およびR.D.Powell,(2002)「Gold and Silver Staining:Techniques in Molecular Morphology」における「Silver− And Gold−Based Autometallography Of Nanogold」,HackerおよびGu(編),pp.29−46。
【0138】
これらのアプローチの各々は、特定の欠点を有する。具体的には、FISHは、蛍光光学および高い倍率を必要とする。さらに、細胞形態学は、多くの場合決定するのが困難である。蛍光標識された標本は、蛍光が弱まり(fade)得、そして永久には保存され得ない。銀で増強されたNanogoldプローブ標識は、時間がかかり、反応条件が制限的であり、光感受性であり、そしていくらかの非特異性を示す。金で増強されたNanogoldプローブ標識は、定量的解釈が不可能である。本発明は、これらの制限のすべてを克服し、自動化方法に容易に適応され、ワークフロー、効率およびスループットを改良するという予想外の結果を有する。さらに、本発明は、高品質で定量的な結果をもたらし、その結果は容易に解釈される。
【0139】
本発明の特定の局面を一般的に記載してきたが、以下の実施例は、本発明がより容易に理解され得るように例示の目的で含まれ、他に明確に示されない限り本発明の範囲を制限することを全く意図しない。
【実施例】
【0140】
(実施例1 SISH検出による組織中のHER2遺伝子の単一コピーの検出)
本実施例では、本発明の方法を使用して、インサイチュで遺伝子(例えば、正常な組織および乳がん組織におけるHER2遺伝子)の単一コピーを、銀インサイチュハイブリダイゼーション(「SISH」)を用いて感度よくかつ選択的に検出した。
【0141】
ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた(FFPE)正常な乳房上皮を含むヒト乳がんを、ポジティブコントロールとして使用した。FFPE組織を含むスライドを調製し、標準的な手順に従って操作される自動染色システムBenchMarkTM XT(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を用いることによって、自動的に染色した。
【0142】
予めプログラム化したプロトコル「XT SISH iVIEWTM SILVER」を使用して、自動化インサイチュハイブリダイゼーションによってすべての組織を調製し、染色した。脱パラフィン化オプションを、EZ PrepTM溶液(Ventana P/N 950−102)下、75℃で20分間選択した。その溶液を、リンスノズルを通じて適用し、これにより、スライド上にその溶液の約200μl〜300μlの残留容積を残す。次いで、そのスライドをある温度で4分間インキュベートする。このプロセスを5回繰り返す。細胞コンディショニングオプションもまた選択し、CC2試薬(Ventana P/N 950−123、これは、高pH回復溶液であり、細胞膜を可溶化する役割を果たし、これにより遺伝物質を標的プローブハイブリダイゼーションに利用しやすくする)下で実行した。この溶液をEZ prepの残留容積に適用し、90℃で20分間加熱する。細胞のコンディショニング後、ISHプロテアーゼ3(Ventana P/N 780−4149,Bacillus licheniformusから単離されたVIII型プロテアーゼ)を用いてプロテアーゼ消化を選択した。約100μlのISHプロテアーゼ3を、200〜300μlの反応緩衝液に分配し、37℃で4時間インキュベートする。組織に適用した検出システムは、本明細書に記載されるiVIEWTM SILVER(Ventana,P/N 790−098)検出システムであった。簡単に述べると、HER2遺伝子の全コード配列にわたるビオチン化HER2遺伝子プローブ(Ventana,P/N 780−2840)を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて、正常組織およびがん組織の両方におけるHER2遺伝子にハイブリダイズさせた。続いて、抗体−ビオチンウサギポリクローナル抗体、次いで、ヒツジ抗体−ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体抗体を、その組織とともにインキュベートする。発色試薬の適用前に、スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液で洗浄した。試薬の適用前に、スライド上の約100μlの洗浄残留物、試薬A(0.18%酢酸銀)、試薬B(0.18%ヒドロキノン)、および試薬C(0.07%過酸化水素)(各100μl)をスライド上に分配した。試薬Aを、最初に適用し37℃で4分間インキュベートする。リンスせずに、試薬Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせる。最後に、試薬Cを試薬Aおよび試薬Bのプールに添加し、37℃で最後に4分間インキュベートする。
【0143】
図2は、100倍での顕微鏡写真であり、正常な乳管組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。1細胞あたり1〜2個のシグナル(通常の補体)が存在する。その組織を、ヘマトキシリンII(親油性の生物学的染料)で紫色に対比染色する。ヘマトキシリンIIは、ヘテロクロマチンの核酸およびヒストンタンパク質に対する媒染染料複合体(mordant dye complex)の結合によって、細胞核を紫色に染色する(Ventana P/N 790−2208)。リンスした後、ブルーイング試薬(bluing reagent)、高pH金属塩および炭酸塩溶液を適用し、ヘマトキシリンと反応させて、青色の対比染色を生じた(Ventana P/N 760−2037)。したがって、図2は、本発明の方法を使用することによって、HER2遺伝子の単一コピーが正常な乳房組織で検出され得ることを示す。
【0144】
図3は、100倍での顕微鏡写真であり、HER2について増幅していない乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。図3に示されるように、HER2遺伝子の2つの単一コピーの通常の補体が容易に識別可能である。したがって、図3は、本発明の方法を用いることによって、HER2遺伝子の単一コピーがHER2遺伝子を増幅していない乳房腫瘍組織で検出され得ることを示す。
【0145】
図4は、100倍での顕微鏡写真であり、低レベルでHER2遺伝子増幅した乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多数の(numerous)コピーとして沈着した銀金属のドットを示す(3〜5コピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。したがって、図4は、本発明の方法を用いることによって、HER2遺伝子の複数のコピーが、低レベルでHER2遺伝子増幅した乳房腫瘍組織で検出され得ることを示す。
【0146】
図5は、100倍での顕微鏡写真であり、相対的により高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図4に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多くの(many)コピーとして沈着した銀金属のドットを示す(6以上のコピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。高レベルのHER2遺伝子増幅に起因して、銀金属シグナルが未分解になり始め、銀金属の大きなクラスターへと融合するようである。したがって、図5は、本発明の方法を用いることによって、HER2の多数のコピーが、高いレベルでHER2遺伝子増幅した乳房腫瘍組織で検出され得、銀金属のドットのサイズは標的遺伝子の増幅のレベルに対応することを示す。
【0147】
図6は、100倍での顕微鏡写真であり、さらに高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図5に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多くのコピーとして沈着した銀金属のドットを示す。非常に高いレベルのHER2遺伝子増幅に起因して、銀金属シグナルが強すぎて融合した状態になり、銀金属の大きなドットを形成する。この実験は、本発明の方法が、インサイチュで標的遺伝子の単一コピーだけでなく標的遺伝子の複数のコピーを感度よくかつ選択的に検出し得ること;および金属シグナルの強度は標的遺伝子の増幅のレベルに対応することをさらに示した。
【0148】
別の実験では、HER2遺伝子の遺伝子コピーを検出し、バックグラウンド染色をさらに減少させるために、試薬A、BおよびCの濃度、ならびに銀染色反応条件を調整して、アッセイの感度をさらに改良した。簡単に述べると、DNP(2,4−ジニトロフェニル)標識HER2遺伝子プローブ(Ventana Medical Systems Product No.780−4332)を、アッセイで使用するために2mg/mlのヒトDNAを含む80% Hybrizolに配合した。本発明による銀インサイチュハイブリダイゼーション(「SISH」)を、BenchMarkTMシリーズの機器(Ventana Medical Systems,Tucson,AZ)と併せて利用可能な自動化ISHプロトコルを用いて、ガラス顕微鏡スライドに取り付けたホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた厚さ4ミクロンのヒト乳房腫瘍組織切片で行った。簡単に述べると、パラフィン除去およびプロテアーゼ処理の後、DNP標識HER2特異的プローブとのハイブリダイゼーションを、2×SSCおよび23%ホルムアミド中で52℃にて2時間行った。2×SSCで洗浄した後、ウサギ抗−DNP抗体(2μg/ml)を適用し、その後、37℃で20分間インキュベートした。洗浄後、ヤギHRP結合体化抗ウサギ抗体を適用し(15μg/ml)、さらに20分間インキュベートした。100mMのクエン酸緩衝液(pH3.9)で洗浄した後、酢酸銀の溶液(3.68mg/ml)を適用し、4分間インキュベートした。それを再び洗浄し、酢酸銀(3.68mg/ml)とともに2回目のインキュベーションをそのスライドに適用し、4分間インキュベートした。洗浄せずに、酢酸銀溶液の容積と等しい容積のヒドロキノン溶液(0.1Mクエン酸(pH3.8)中1.78mg/ml)を、そのスライドに適用し、その後、酢酸銀溶液の容積と等しい容積の0.09% w/v過酸化水素の溶液を適用した結果、酢酸銀の最終濃度は1.23mg/ml(または0.123% w/v)となり、ヒドロキノンは0.6mg/ml(または0.06% w/v)、そして0.03% w/v過酸化水素となった。12分後、そのスライドを、取り付けのために洗浄し、乾燥させた。銀染色後、製造業者の指示にしたがって、ブルーイング試薬(Ventana Medical Systems Product No.760−2037)とともに、核対比染色(ヘマトキシリン、Ventana PN 790−2208)を適用した。
【0149】
例示的なSISHの結果は、図7および8に示されており、これらは光照射野顕微鏡写真である。図7は、HER2標的配列が増幅されていない(2倍体)サンプルを示す。このサンプル中の細胞は、2もしくはそれ未満のハイブリダイゼーションシグナル(暗いドットとして見える)を示す。図8は、HER2標的配列が何倍もの2倍体コピー数に増幅されているサンプルを示す。ハイブリダイゼーションシグナルは、黒色点の多発性(multifocal)の集合体として見える。図2および3と比べて、図7で示されるHER2遺伝子の別個の単一コピーは、バックグラウンドレベルがより低く、さらにより識別可能である。
【0150】
(実施例2 SISHによる組織中のHER2遺伝子の単一コピーの検出)
なお別の実験では、本発明の方法を使用して、SISH検出とともに反復減損(repeat−depleted)HER2プローブを用いて、インサイチュで遺伝子の単一コピー(例えば、通常のHER2遺伝子および増幅されたHER2遺伝子)を感度良くかつ選択的に検出した。
【0151】
ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた(FFPE)ヒト乳がん細胞株異種移植腫瘍を、アッセイの最適化のために使用した。FFPE腫瘍切片を含むスライドを調製し、自動化染色システムBenchMarkTM XT(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を用いて標準的な手順に従って操作して染色した。
【0152】
予めプログラム化したプロトコル「XT SISH iVIEWTM SILVER」を使用して、自動化インサイチュハイブリダイゼーションによってすべての組織を調製し、染色した。脱パラフィン化オプションを、EZ PrepTM溶液(Ventana P/N 950−102)下、75℃で20分間選択した。その溶液を、リンスノズルを通じて適用し、これにより、スライド上にその溶液の約200〜300μlの残留溶液を残す。次いで、そのスライドを75℃で4分間インキュベートした。この溶液の適用およびインキュベーションをさらに4回繰り返した。細胞コンディショニングオプションもまた選択し、CC2試薬(Ventana P/N 950−123、これは、高pH回復溶液であり、細胞膜を可溶化する役割を果たし、これにより遺伝物質を標的プローブハイブリダイゼーションに利用しやすくする)を用いて実行した。この溶液をEZ prepの残留容積に適用し、90℃で20分間加熱した。細胞のコンディショニング後、ISHプロテアーゼ3(Ventana P/N 780−4149,Bacillus licheniformusから単離されたVIII型プロテアーゼ)を用いてプロテアーゼ消化を選択した。約100μlのISHプロテアーゼ3を200〜300μlの反応緩衝液(Ventana P/N 950−300)に分配し、37℃で4分間インキュベートした。
【0153】
銀沈着によるHER2遺伝子の検出を、本質的に上記の実施例に記載されるように(ただし、HER2プローブは、複合反復減損(CORD)プローブをジニトロフェノール(DNP)標識することによって構築した)行った。CORDプローブは、米国仮特許出願第60/841,896号(2006年9月1日出願)(その全体が参考として本明細書に援用される)に詳細に記載されている。簡単に述べると、CORDプローブは、反復性核酸エレメント(例えば、Alu反復、L1反復、およびアルファサテライトDNA)が完全にまたは実質的に完全に減損したものであり、セグメントごと(segment by segment)を基準にして、標的配列の固有のコードエレメントまたは非コードエレメントに対応する。
【0154】
HER2遺伝子の全コード配列にわたるDNP標識HER2遺伝子プローブ(Ventana P/N 780−4332)を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて、異種移植腫瘍切片中のHER2遺伝子にハイブリダイズさせた。次に、iVIEWTM SILVER(Ventana,P/N 790−098)検出システムをその組織に適用した。続いて、抗DNPウサギモノクローナル抗体、次いでヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体抗体を、その組織とともにインキュベートする。発色試薬の適用の前に、スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液(SISH Wash,Ventana P/N 780−002)で洗浄した。試薬の適用前に約100μlの洗浄物をスライドに残し、Silver Chromogen A(0.36%酢酸銀)、Silver Chromogen B(0.18%ヒドロキノン)、およびSilver Chromogen C(0.09%過酸化水素)(各100μl)を、スライド上に分配した。Silver Chromogen Aを最初に適用し、37℃で4分間インキュベートした。リンスせずに、Silver Chromogen Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせた。最後に、Silver Chromogen CをSilver Chromogen AおよびBのプールに添加し、37℃で最後に12分間インキュベートした。その組織をヘマトキシリンII(Ventana N/P 790−2208)およびブルーイング試薬(Ventana P/N 760−2037)を用いて青色に対比染色した。
【0155】
図11は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMDF7(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【0156】
図12は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【0157】
図13は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(遺伝子増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。容易に確認され得るように、各細胞においてHER2遺伝子シグナルの複数のコピーのクラスターが存在する。
【0158】
(実施例3 逐次ハイブリダイゼーション工程による組織中のHER2および17番染色体のセントロメアの同時検出)
本実施例では、本発明の方法を使用して、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた異種移植腫瘍組織切片において、インサイチュで17番染色体のセントロメア(CEP 17)標識と併せてHER2遺伝子のコピー数を、異なるストリンジェンシー特徴を有する二本鎖DNAプローブ(HER2)および一本鎖オリゴプローブ(CEP 17)を用いて、感度よくかつ選択的に検出した。CEP 17検出を含めることにより、HER2遺伝子の相対的なコピー数を決定することが可能になる。例えば、正常なサンプルは、2未満のHER2/CEP 17比を有し、一方で、HER2遺伝子が倍加されたサンプルは、2.0より大きいHER2/CEP 17比を有する。
【0159】
アッセイをVentana BenchMarkTM XTで完全に自動化した。固定細胞を備えるスライドを、65℃で20分間乾燥(bake)/加熱させ、EZ Prep(Ventana P/N 950−102)を用いて脱パラフィン化した。そのスライドをさらに、ハイブリダイゼーション工程の前に、反応緩衝液(Ventana P/N 950−300)およびプロテアーゼ3(Ventana P/N 760−2020)を用いて加熱前処理用に処理した。
【0160】
HER2遺伝子の検出を、以下のとおりに行った。標的およびプローブをスライド上で95℃にて12分間同時に変性させた後、DNP標識HER2プローブ(Ventana P/N 780−4332)を、52℃で2時間ハイブリダイズさせた。ストリンジェンシー洗浄工程を、SSC(Ventana P/N 950−110)を用いて行った。続いて、抗DNPウサギポリクローナル抗体(Ventana P/N 780−4335)、次いで、ヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体化抗体(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)を、その組織とともにインキュベートした。スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液(SISH Wash(Ventana P/N 780−002))で洗浄した。試薬の適用前に約100μlの洗浄物をスライドに残した。Silver Chromogen A(0.36%酢酸銀)、Silver Chromogen B(0.18%ヒドロキノン)、およびSilver Chromogen C(0.09%過酸化水素)(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)(各100μl)を、スライド上に分配した。Silver Chromogen Aを最初に適用し、37℃で4分間インキュベートした。リンスせずに、Silver Chromogen Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせた。最後に、Silver Chromogen CをSilver Chromogen AおよびBのプールに添加し、37℃で最後に12分間インキュベートした。CEP 17を検出する前に、そのスライドを2×SSCで洗浄した。
【0161】
次に、CEP 17配列の検出を以下のとおりに行った。標的およびプローブをスライド上で95℃にて12分間同時に変性させた後、DNP標識した17番染色体のセントロメアオリゴプローブ(Ventana P/N 780−4331)を、44℃で1時間ハイブリダイズさせた。次いで、17番染色体のセントロメアの比色検出を、抗DNPウサギポリクローナル抗体(Ventana P/N 780−4335)、UltraMapTM 抗ウサギアルカリホスファターゼ結合体化抗体(Ventana P/N 760−4314)、およびファストレッド−ナフトールホスフェート(fast red−naphthol phosphate)基質(ultraVIEWTM Universal Alkaline Phosphatase Red Detection Kitの構成要素,Ventana PN 760−501)を用いて行った。すべての組織切片を、ヘマトキシリンII(Ventana PN 790−2208)およびブルーイング試薬(Ventana PN 760−2037)を用いて対比染色した。
【0162】
図14は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMCF7(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2遺伝子と同様に、1細胞あたり1〜3個のシグナル(通常の補体)が存在する。したがって、この結果は、2未満のHER2/CEP 17比が、本発明の方法を用いて容易に検出され得ることを示す。
【0163】
図15は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2遺伝子と同様に、細胞周期の段階および組織切片内でどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【0164】
比較して、図16は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。容易に確認されるように、各細胞において増幅されたHER2遺伝子シグナルが存在するが、1細胞あたりのCEP 17シグナルはごくわずかである。
【0165】
(実施例4 同時ハイブリダイゼーション工程による組織中のHER2遺伝子および17番染色体のセントロメアの同時検出)
本実施例では、本発明の方法を使用して、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させた異種移植腫瘍組織切片において、インサイチュで17番染色体のセントロメア(CEP 17)標識と併せてHER2遺伝子のコピー数を、二本鎖DNAプローブを用いて感度よくかつ選択的に検出した。HER2プローブを、17番染色体のセントロメアに位置するアルファサテライトDNA(17p11.1−q11.1)にハイブリダイズするCEP 17プローブと併用して使用する。CEP 17プローブを含めることにより、HER2遺伝子の相対的なコピー数を決定することが可能になる。例えば、正常なサンプルは、2未満のHER2/CEP 17比を有し、一方で、HER2遺伝子が倍加されたサンプルは、2.0より大きいHER2/CEP 17比を有する。
【0166】
銀沈着によるHER2遺伝子の検出を、本質的に上記の実施例に記載されるとおりに行った。ただし、HER2プローブを、複合反復減損(CORD)プローブをジニトロフェノール(DNP)標識することによって構築した。CORDプローブは、米国仮特許出願第60/841,896号(2006年9月1日出願)(その全体が参考として本明細書に援用される)に詳細に記載されている。簡単に述べると、CORDプローブは、反復性核酸エレメント(例えば、Alu反復、L1反復、およびアルファサテライトDNA)が完全にまたは実質的に完全に減損したものであり、セグメントごとを基準にして、標的配列の固有のコードエレメントまたは非コードエレメントに対応する。
【0167】
HER2遺伝子を含む17番染色体の500,000塩基対領域にわたる固有の配列エレメントを同定し、PCRによって増幅した。反復性配列を同定し、次いで、増幅プライマーを選択して非反復配列を増幅した。オリゴヌクレオチドプライマーを、PCR産物のサイズを最大にするために、69℃にできるだけ近いTm、および固有の配列セグメントの各末端にできるだけ近い位置に対して選択した。フォワードプライマーを、5’リン酸を含めて合成し、一方、リバースプライマーには5’リン酸を含めなかった。得られた増幅産物は、一方の末端に5’リン酸を有した。
【0168】
得られたフラグメントを処理し、順序にも方向にも関係なく一緒に混合物として連結した。連結した物質を、Phi29 DNAポリメラーゼを用いてランダムプライミング増幅によって段階的に増幅した。HER2プローブDNAを、製造業者の指示にしたがってMIRUSキットを用いてDNPで標識した(P/N MIR 3800;Mirus Bio Corp.Madison,WI)。
【0169】
17番染色体のセントロメアプローブを、pUC19にクローニングした約2700塩基対インサート中にマイクロサテライト反復配列のコピーを含むプラスミドpYAM7−29(ATCC番号65442)から生成した。そのプラスミドの各末端から約1000塩基対の配列を、表1に示されるようなプライマーM13 FおよびM13 Rを用いて決定した。そのプラスミドを、製造業者の指示にしたがってMIRUSキットを用いてフルオレセインで標識した。
【0170】
アッセイを、Ventana BenchMarkTM XTで完全に自動化した。スライドを、65℃で20分間乾燥(bake)/加熱させ、EZ Prep(Ventana P/N 950−102)を用いて脱パラフィン化した。次いで、スライドをCC1(Ventana P/N 950−124)を用いて加熱前処理に供し、ホルマリンベースの固定剤であるRiboFixTM(RiboMapTM の構成要素(Ventana P/N 760−102)を用いて固定した。そのスライドをさらに、ハイブリダイゼーション工程の前に、反応緩衝液(Ventana P/N 950−300)およびプロテアーゼ3(Ventana P/N 760−2020)を用いて別の加熱前処理用に処理した。標的およびプローブをスライド上で95℃にて12分間同時に変性させた後、DNP標識二本鎖HER2プローブおよびフルオレセイン標識二本鎖17番染色体のセントロメアプローブを、52℃で2時間同時にハイブリダイズさせた。ストリンジェンシー洗浄工程を、SSC(Ventana P/N 950−110)を用いて行った。続いて、抗DNPウサギポリクローナル抗体(Ventana P/N 780−4335)、次いで、ヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体化抗体(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)を、その組織とともにインキュベートした。発色試薬の適用前に、スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液(SISH Wash(Ventana P/N 780−002))で洗浄した。試薬の適用前に約100μlの洗浄物をスライドに残した。Silver A(0.36%酢酸銀)、Silver B(0.18%ヒドロキノン)、およびSilver C(0.09%過酸化水素)(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)(各100μl)を、スライド上に分配した。Silver Aを最初に適用し、37℃で4分間インキュベートした。リンスせずに、Silver Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせた。最後に、Silver CをSilver AおよびBのプールに添加し、37℃で最後に12分間インキュベートした。
【0171】
17番染色体のセントロメアの比色検出を、マウス抗フルオレセイン抗体(ISH iVIEWTM Blue Detection Kitの構成要素、Ventana P/N 760−092)、ウサギ抗マウス(Amplification KitのAmplifier A、Ventana P/N 760−080),UltraMapTM 抗ウサギアルカリホスファターゼ結合体化抗体(Ventana P/N 760−4314)、およびファストレッド−ナフトール基質(ultraVIEWTM Universal Alkaline Phosphatase Red Detection Kitの構成要素、Ventana PN 760−501)を用いて行った。すべての組織切片を、上記の実施例に記載されるように、ヘマトキシリンII(Ventana PN 790−2208)およびブルーイング試薬(Ventana PN 760−2037)を用いて対比染色した。
【0172】
図17は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMCF7(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2遺伝子と同様に、1細胞あたり1〜3個のシグナル(通常の補体)が存在する。したがって、この結果は、2未満のHER2/CEP 17比が、本発明の方法を用いて容易に検出され得ることを示す。
【0173】
図18は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2遺伝子と同様に、細胞周期の段階および組織切片内でどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【0174】
比較して、図19は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。容易に確認されるように、各細胞において増幅されたHER2遺伝子シグナルが存在するが、1細胞あたりのCEP 17シグナルはごくわずかである。したがって、この結果は、2よりも大きいHER2/CEP 17比が、本発明の方法を用いて容易に検出され得ることを示す。
【0175】
【表1−1】
【0176】
【表1−2】
【0177】
【表1−3】
(実施例5 組織中のHER2タンパク質、HER2遺伝子および17番染色体のセントロメアの同時検出)
本実施例では、本発明の方法を使用して、乳がん細胞株異種移植腫瘍において、インサイチュで17番染色体のセントロメア(CEP 17)標識と併せてHER2遺伝子のコピー数を感度よくかつ選択的に検出し、さらに同じサンプル/スライドでHER2タンパク質を検出した。HER2プローブを、17番染色体のセントロメアに位置するアルファサテライトDNA(17p11.1−q11.1)にハイブリダイズするCEP 17プローブと併用して使用する。CEP 17プローブを含めることにより、HER2遺伝子の相対的なコピー数を決定することが可能になる。例えば、正常なHER2遺伝子サンプルは、2未満のHER2/CEP 17比を有し、一方で、HER2遺伝子が増幅されたサンプルは、2.0より大きいHER2/CEP 17比を有する。HER2タンパク質を、BCIP/NBTクロモゲンを用いて、ウサギモノクローナル抗体クローン4B5を用いて検出する。単一のサンプルスライドで形態学の保存と組み合わせたこの3重の検出は、2つのプローブに対するハイブリダイゼーション条件のバランスを保つことの複雑さ、およびHER2タンパク質の検出のための免疫組織化学(IHC)条件を考えると、当該分野において大きな進歩である。本実施例で使用されるプロトコルを表す図式は、図20に示される。
【0178】
銀沈着によるHER2遺伝子の検出を、本質的に実施例4に記載されるように行った。CEP17の検出もまた、本質的に実施例4に記載されるように行った。
【0179】
アッセイをVentana BenchMarkTM XTで完全に自動化した。スライドを、65℃で20分間乾燥(bake)/加熱させ、EZ Prep(Ventana P/N 950−102)を用いて脱パラフィン化した。次いで、HER2免疫化学染色を行う前に、スライドをCC1(Ventana P/N 950−124)を用いて加熱前処理に供した。組織切片を、ウサギモノクローナル抗HER2抗体、クローン4B5(Ventana P/N 790−2991)、UltraMap抗ウサギアルカリホスファターゼ標識抗体(Ventana P/N 760−4314)、およびBCIP−NBT基質(ISH iVIEW Blue Detection Kitの構成要素、Ventana P/N 760−092)とともにインキュベートした。
【0180】
HER2タンパク質免疫組織化学の後、組織切片をホルマリンベースの固定剤であるRiboFix(RiboMap(Ventana P/N 760−102))を用いて固定した。そのスライドをさらに、ハイブリダイゼーション工程の前に、反応緩衝液(Ventana P/N 950−300)およびプロテアーゼ3(Ventana P/N 760−2020)を用いて別の加熱前処理用に処理した。
【0181】
HER2遺伝子の銀沈着検出を以下のとおりに行った。標的およびプローブをスライド上で95℃にて12分間同時に変性させた後、DNP標識HER2プローブおよびフルオレセイン標識17番染色体のセントロメアプローブを、52℃で2時間同時にハイブリダイズさせた。ストリンジェンシー洗浄工程を、SSC(Ventana P/N 950−110)を用いて行った。続いて、抗DNPウサギポリクローナル抗体(Ventana P/N 780−4335)、次いで、ヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体化抗体(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)を、その組織とともにインキュベートした。発色試薬の適用前に、スライドを、界面活性剤と水とを含む非緩衝化溶液(SISH Wash(Ventana P/N 780−002))で洗浄した。試薬の適用前に約100μlの洗浄物をスライドに残した。Silver A(0.36%酢酸銀)、Silver B(0.18%ヒドロキノン)、およびSilver C(0.09%過酸化水素)(ultraVIEWTM SISH Kit(Ventana P/N 780−001)の構成要素)(各100μl)を、スライド上に分配した。Silver Aを最初に適用し、37℃で4分間インキュベートした。リンスせずに、Silver Bをそのスライドに適用し、37℃でさらに4分間インキュベートさせた。最後に、Silver CをSilver AおよびBのプールに添加し、37℃で最後に12分間インキュベートした。
【0182】
17番染色体のセントロメアの比色検出を、マウス抗フルオレセイン抗体(ISH iVIEWTM Blue Detection Kitの構成要素、Ventana P/N 760−092)、ウサギ抗マウス(Amplification KitのAmplifier A、Ventana P/N 760−080),UltraMapTM 抗ウサギアルカリホスファターゼ結合体化抗体(Ventana P/N 760−4314)、およびファストレッド−ナフトール基質(ultraVIEWTM Universal Alkaline Phosphatase Red Detection Kitの構成要素、Ventana PN 760−501)を用いて行った。すべての組織切片を、上記の実施例に記載されるように、ヘマトキシリンII(Ventana PN 790−2208)およびブルーイング試薬(Ventana PN 760−2037)を用いて対比染色した。
【0183】
図21は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMCF7(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドット、17番染色体のセントロメアとしてのファストレッドナフトール染色の赤色のドットを示す。MCF7異種移植腫瘍は、検出可能なHER2タンパク質を発現しない(レベル0)ことが公知である。予期されたように、HER2タンパク質はMCF7腫瘍切片において視覚化されなかった。
【0184】
図22は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドット、17番染色体のセントロメアとしてのファストレッドナフトール染色の赤色のドット、および限られた量のHER2の青色/紫色の染色を示す。ZR−75−1異種移植腫瘍は、「レベル1」のHER2タンパク質を発現することが公知である。
【0185】
比較して、図23は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスターとして沈着した銀金属のドット、17番染色体のセントロメアとしてのファストレッドナフトール染色の赤色のドット、および増幅された量のHER2の青色/紫色の染色を示す。BT−474は、増幅されたHER2タンパク質「レベル3」を発現することが公知である。増幅されたHER2タンパク質は、細胞膜において暗い青色/紫色として視覚化されている。
【0186】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示され、記載されているが、そのような実施形態は例示のみのために提供されることは当業者に明らかである。これから多くのバリエーション、変更、および置き換えが、本発明から逸脱することなく当業者に思い浮かぶ。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替物が、本発明を実施する上で利用され得ることが理解されるべきである。添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を規定し、それによってこれらの特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内で方法および構築物がカバーされることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0187】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に特に示される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す上記の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって達成される。
【図1】図1は、本発明の一実施形態の図示である。この図は、標識が結合体化した、および/または酵素が結合体化した一次抗体および二次抗体を用いる、3種の標的分子の検出を表す。
【図2】図2は、100倍での顕微鏡写真であり、正常な乳管組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。
【図3】図3は、100倍での顕微鏡写真であり、HER2について増幅されていない乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。
【図4】図4は、100倍での顕微鏡写真であり、低レベルでHER2遺伝子増幅した乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多数の(numerous)コピーとして沈着した銀金属のドットを示す(3〜5コピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。
【図5】図5は、100倍での顕微鏡写真であり、相対的により高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図4に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多くの(many)コピーとして沈着した銀金属のクラスターを示す(6以上のコピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。
【図6】図6は、100倍での顕微鏡写真であり、さらに高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図5に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織の4ミクロン切片においてHER2遺伝子の多くのコピーとして沈着した銀金属のクラスターを示す。
【図7】図7は、顕微鏡写真であり、HER2について増幅されていない乳房腫瘍組織においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。
【図8】図8は、相対的により高いレベルでHER2遺伝子増幅した(図4に示される乳房腫瘍組織の増幅レベルよりも高い)乳房腫瘍組織においてHER2遺伝子の多くの(many)コピーとして沈着した銀金属のクラスターを示す(6以上のコピーのHER2遺伝子が腫瘍細胞中に存在する)。
【図9】図9は、標的分子の周辺における金属の沈着の図示である。この図では、ハプテンで標識されたDNAプローブが、標的配列に結合されている。そのハプテン(黒三角で表される)は、抗ハプテン一次抗体によって結合されている。その一次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼが結合体化した二次抗体によって結合されている。溶液中の金属イオンは、結合した酵素の周辺で元素金属に還元される。
【図10】図10は、他のシグナルと併せて使用される金属沈着の図示である。パネルAは、適切な基質を添加した際に比色シグナルを生成するアルカリホスファターゼが結合体化した抗体によって結合された表面タンパク質を示す。パネルBは、標的配列にハイブリダイズされた蛍光マーカーで標識されたDNAプローブを示す。パネルCは、標的配列に結合されたハプテンで標識されたDNAプローブを示す。そのハプテンは、抗ハプテン一次抗体によって結合されている。その一次抗体は、複数のホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素が結合体化した抗体によって結合されており、これにより、結合した抗体の周辺における金属の沈着がもたらされる。パネルDは、3種の異なるプローブが結合されている細胞を示す。各シグナルが局在化しているので、3種すべての標的分子の同時検出が可能である。
【図11】図11は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたMCF7(「高度に再構成された、3倍体に近い」ヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。細胞周期の段階およびどのように各細胞が切断されたかに依存して、1細胞あたり1〜3個のシグナルが存在する。
【図12】図12は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたZR−75−1(高度に再構成された、3倍体に近いヒト乳がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。
【図13】図13は、100倍での顕微鏡写真であり、ホルマリンで固定してパラフィンに包埋させたBT−474(ヒト乳管がん細胞株)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスターとして沈着した銀金属のドットのクラスターを示す。容易に確認され得るように、各細胞において増幅されたHER2遺伝子シグナルが存在する。
【図14】図14は、100倍での顕微鏡写真であり、MCF7異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、17番染色体のセントロメア(CEP 17)の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図15】図15は、100倍での顕微鏡写真であり、ZR−75−1異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図16】図16は、100倍での顕微鏡写真であり、BT−474(ヒト乳管がん)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図17】図17は、100倍での顕微鏡写真であり、MCF7異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図18】図18は、100倍での顕微鏡写真であり、ZR−75−1異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図19】図19は、100倍での顕微鏡写真であり、BT−474(ヒト乳管がん)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のクラスターを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。
【図20】図20は、実施例5に記載されるようなHER2遺伝子、CEP 17およびHER2タンパク質を検出するために使用される三重染色プロトコルの図示である。
【図21】図21は、100倍での顕微鏡写真であり、MCF7異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。このサンプルは、HER2タンパク質に対する免疫組織化学(IHC)染色にも供されている。
【図22】図22は、100倍での顕微鏡写真であり、ZR−75−1異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子の別個の単一コピーとして沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2タンパク質の免疫組織化学染色は、そのタンパク質の存在を示す。
【図23】図23は、100倍での顕微鏡写真であり、BT−474(ヒト乳管がん)異種移植腫瘍の5μm切片においてHER2遺伝子のクラスター(コピー数の増幅に起因する)として沈着した銀金属のドットを示す。また、CEP 17の単一コピーを示すファストレッドナフトール染色により生じる赤色のドットが示されている。HER2タンパク質の免疫組織化学染色は、そのタンパク質の存在を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験サンプル中の複数の標的分子を検出するための方法であって、以下:
該複数の標的分子のうちの第1の標的分子を、i)酵素を該第1の標的分子に結合させる工程、ii)該酵素と金属イオンとを、酸化剤および還元剤の存在下で接触させ、それによって該金属イオンが元素金属に還元され、それによって、該元素金属を該酵素の周辺に沈着させる工程、およびiii)該第1の標的分子に結合した該酵素の周辺における該沈着した金属の存在、量またはレベルを決定する工程、によって検出する工程;ならびに
該試験サンプル中の該複数の標的分子のうちの少なくとも1種の第2の異なる標的分子を、該第2の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、該検出可能なシグナルは、該沈着した金属と識別可能である、工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記第1の標的分子の少なくともいくつかの部分の標識と、前記少なくとも1種の第2の異なる標的分子の少なくともいくつかの部分の標識とが、同時に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属イオンが、銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属イオンが銀イオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素が酸化還元酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素がペルオキシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素が、アビジンまたはストレプトアビジンに結合体化している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素が抗体に結合体化している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、第1の標的分子に対する抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤が、酸素を含有する酸化剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記還元剤が、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、没食子酸n−プロピル、硫酸4−メチルアミノフェノール、1,4フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、クロロキノン、ブロモキノン、2−メトキシヒドロキノン、ヒドラジン、1−フェニル−3−ピラゾリジノンおよび亜ジチオン酸塩からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の異なる標的分子の検出が、放射標識、比色標識、蛍光標識、および化学発光標識からなる群より選択される物質を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記物質が抗体に結合体化している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の異なる標的分子の検出が、酵素を、該第2の異なる標的分子に特異的に結合する一次抗体、および該酵素と結合体化しておりかつ該一次抗体に結合する二次抗体を介して、該第2の標的分子に結合させる工程、を包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
酵素が、前記検出可能な物質の存在の検出を容易にする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の異なる標的分子を検出する工程が、酵素を、該第2の異なる標的分子に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、該第2の異なる標的分子に結合させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記酵素が、前記検出可能なマーカーに特異的に結合する抗体を介して該検出可能なマーカーに結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記検出可能なマーカーが、ビオチン、ジニトロフェニル、放射性同位体、または蛍光標識である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記蛍光標識が、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テキサスレッド、ローダミン、およびCy5からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記酵素が、前記検出可能なマーカーに特異的に結合する一次抗体、および該酵素と結合体化しておりかつ該一次抗体に結合する二次抗体を介して、該検出可能なマーカーに結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の異なる標的分子がポリヌクレオチド配列であり、該ポリヌクレオチド配列の検出が、酵素を、該ポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、該ポリヌクレオチド配列に結合する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の異なる標的分子がポリヌクレオチド配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチド配列が、遺伝子、遺伝子産物、非コード配列、またはゲノムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の異なる標的分子が、HER2/neu遺伝子もしくはHER2/neu遺伝子産物、または17番染色体のセントロメア配列である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法であって、さらに以下:
前記第2の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、前記沈着した金属の存在、量またはレベルと比較する工程;
必要に応じて、該第2の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;
必要に応じて、該沈着した金属の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項27】
前記参照サンプルが、正常な健常個体に由来する細胞または組織を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患状態が、疾患の決定または分類、予後、薬物の効力、治療に対する患者の反応性、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、あるいは疾患の再発の可能性である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患が、良性腫瘍、がん、血液学的障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患および糖尿病からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患状態が、治療に対する患者の反応である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法であって、さらに以下:
前記試験サンプル中の前記複数の標的分子のうちの少なくとも1種の第3の異なる標的分子を、該第3の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、該検出可能なシグナルは、前記沈着した金属と識別可能であり、かつ前記第2の標的分子の部位における検出可能なシグナルと識別可能である、工程
を包含する、方法。
【請求項32】
前記第3の標的分子の検出が、放射標識、比色標識、蛍光標識、および化学発光標識からなる群より選択される標識を用いて行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記標識が抗体に結合体化している、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
酵素が前記検出可能な物質の存在の検出を容易にする、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記第3の標的分子の検出が、酵素を、第3の標的分子に特異的に結合する一次抗体、および該酵素と結合体化しておりかつ該一次抗体に結合する二次抗体を介して、該第3の標的分子に結合させる工程を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
請求項31に記載の方法であって、さらに以下:
前記第3の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項37】
請求項30に記載の方法であって、さらに以下:
前記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、沈着した金属の存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、さらに以下:
前記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、前記第2の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項39】
請求項31に記載の方法であって、さらに以下:
前記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、前記第2の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項40】
前記標的分子が予め決定されている、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の標的分子がHER2/neu遺伝子であり、前記第2の標的分子がHER2タンパク質であり、そして前記第3の標的分子が17番染色体のセントロメア配列である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記標的分子が、予め決定された幾何パターンで間隔があけられている、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記第3の標的分子の検出によって生成される前記シグナルが、放射シグナル、比色シグナル、蛍光シグナル、および化学発光シグナルからなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
標識を前記第3の標的分子に結合させる工程によって生成される前記シグナルが、異なる蛍光の色、異なる明視野の色、異なる放射線放出、および異なる化学発光の色からなる群のうちの1つによって、前記金属沈着、および前記第2の標的分子に結合される前記標識によって生成される前記シグナルと識別可能である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記標的分子が予め決定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記標的分子が、HER2遺伝子、HER2タンパク質、および17番染色体のセントロメア配列からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記標的分子が、フィブリンに対するレセプター、VEGFに対するレセプター、Flt4、VEGF−165に対するレセプター、Tie1、Tie2、エフリン A1−5に対するレセプター、エフリン B1−5に対するレセプター、上皮増殖因子レセプター(EGFR)、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)、神経成長因子レセプター(NGFR)、HER1、HER2/neu、HER3、HER4、Kit、c−Kit、Src、Fes、JAK、Fak、Btk、Syk/ZAP−70、およびAblからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の標的分子および第2の標的分子に由来するシグナルが、予め決定された幾何パターンで間隔があけられている、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
標識を前記第2の標的分子に結合させる工程によって生成される前記シグナルが、放射シグナル、比色シグナル、蛍光シグナル、および化学発光シグナルからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
標識を前記第2の標的分子に結合させる工程によって生成される前記シグナルが検出される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
サンプル中の複数の標的の検出のためのキットであって、以下:
i)銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオン、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属イオン;
ii)酸化剤;
iii)還元剤;ならびに
iv)サンブル中の2種の異なる標的分子に結合する少なくとも2種の結合部分
を備える、キット。
【請求項52】
前記還元剤に対する前記金属イオンの重量比が、1:5〜5:1の範囲であり、そして前記酸化剤に対する該還元剤の重量比が、1:10〜10:1の範囲である、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記結合部分が、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、核酸、核酸プローブ、炭水化物、薬物、ステロイド;植物、動物、ヒトおよび細菌に由来する生成物、ならびに合成分子からなる群より選択され、ここで、各メンバーは、前記標的分子に対する結合について親和性を有する、請求項50に記載のキット。
【請求項54】
少なくとも1種の標的分子が、標的遺伝子、非コード配列、またはゲノムであり、そして前記結合部分が、該標的遺伝子またはゲノムに結合する核酸プローブである、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
さらに酵素を備える、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記酵素が、前記標的分子に結合する一次抗体または前記結合部分に結合する一次抗体のいずれかを介して、該標的分子と結合される、請求項54に記載のキット。
【請求項57】
前記酵素がペルオキシダーゼであり;前記金属イオンが銀イオンであり;前記酸化剤が過酸化水素であり;そして前記還元剤がヒドロキノンである、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
前記キットを用いて検出を行うための指示書をさらに備える、請求項51に記載のキット。
【請求項1】
試験サンプル中の複数の標的分子を検出するための方法であって、以下:
該複数の標的分子のうちの第1の標的分子を、i)酵素を該第1の標的分子に結合させる工程、ii)該酵素と金属イオンとを、酸化剤および還元剤の存在下で接触させ、それによって該金属イオンが元素金属に還元され、それによって、該元素金属を該酵素の周辺に沈着させる工程、およびiii)該第1の標的分子に結合した該酵素の周辺における該沈着した金属の存在、量またはレベルを決定する工程、によって検出する工程;ならびに
該試験サンプル中の該複数の標的分子のうちの少なくとも1種の第2の異なる標的分子を、該第2の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、該検出可能なシグナルは、該沈着した金属と識別可能である、工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記第1の標的分子の少なくともいくつかの部分の標識と、前記少なくとも1種の第2の異なる標的分子の少なくともいくつかの部分の標識とが、同時に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属イオンが、銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属イオンが銀イオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素が酸化還元酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素がペルオキシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素が、アビジンまたはストレプトアビジンに結合体化している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素が抗体に結合体化している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、第1の標的分子に対する抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤が、酸素を含有する酸化剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記還元剤が、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、没食子酸n−プロピル、硫酸4−メチルアミノフェノール、1,4フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、クロロキノン、ブロモキノン、2−メトキシヒドロキノン、ヒドラジン、1−フェニル−3−ピラゾリジノンおよび亜ジチオン酸塩からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の異なる標的分子の検出が、放射標識、比色標識、蛍光標識、および化学発光標識からなる群より選択される物質を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記物質が抗体に結合体化している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の異なる標的分子の検出が、酵素を、該第2の異なる標的分子に特異的に結合する一次抗体、および該酵素と結合体化しておりかつ該一次抗体に結合する二次抗体を介して、該第2の標的分子に結合させる工程、を包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
酵素が、前記検出可能な物質の存在の検出を容易にする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の異なる標的分子を検出する工程が、酵素を、該第2の異なる標的分子に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、該第2の異なる標的分子に結合させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記酵素が、前記検出可能なマーカーに特異的に結合する抗体を介して該検出可能なマーカーに結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記検出可能なマーカーが、ビオチン、ジニトロフェニル、放射性同位体、または蛍光標識である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記蛍光標識が、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テキサスレッド、ローダミン、およびCy5からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記酵素が、前記検出可能なマーカーに特異的に結合する一次抗体、および該酵素と結合体化しておりかつ該一次抗体に結合する二次抗体を介して、該検出可能なマーカーに結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の異なる標的分子がポリヌクレオチド配列であり、該ポリヌクレオチド配列の検出が、酵素を、該ポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識されている核酸プローブを介して、該ポリヌクレオチド配列に結合する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の異なる標的分子がポリヌクレオチド配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチド配列が、遺伝子、遺伝子産物、非コード配列、またはゲノムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の異なる標的分子が、HER2/neu遺伝子もしくはHER2/neu遺伝子産物、または17番染色体のセントロメア配列である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法であって、さらに以下:
前記第2の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、前記沈着した金属の存在、量またはレベルと比較する工程;
必要に応じて、該第2の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;
必要に応じて、該沈着した金属の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項27】
前記参照サンプルが、正常な健常個体に由来する細胞または組織を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患状態が、疾患の決定または分類、予後、薬物の効力、治療に対する患者の反応性、アジュバント療法または併用療法が推奨されるかどうか、あるいは疾患の再発の可能性である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患が、良性腫瘍、がん、血液学的障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患および糖尿病からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患状態が、治療に対する患者の反応である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法であって、さらに以下:
前記試験サンプル中の前記複数の標的分子のうちの少なくとも1種の第3の異なる標的分子を、該第3の標的分子の部位において検出可能なシグナルを生成することによって検出する工程であって、該検出可能なシグナルは、前記沈着した金属と識別可能であり、かつ前記第2の標的分子の部位における検出可能なシグナルと識別可能である、工程
を包含する、方法。
【請求項32】
前記第3の標的分子の検出が、放射標識、比色標識、蛍光標識、および化学発光標識からなる群より選択される標識を用いて行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記標識が抗体に結合体化している、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
酵素が前記検出可能な物質の存在の検出を容易にする、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記第3の標的分子の検出が、酵素を、第3の標的分子に特異的に結合する一次抗体、および該酵素と結合体化しておりかつ該一次抗体に結合する二次抗体を介して、該第3の標的分子に結合させる工程を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
請求項31に記載の方法であって、さらに以下:
前記第3の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、参照サンプルの存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項37】
請求項30に記載の方法であって、さらに以下:
前記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、沈着した金属の存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、さらに以下:
前記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、前記第2の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項39】
請求項31に記載の方法であって、さらに以下:
前記第3の異なる標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルを、前記第2の標的分子を検出するために使用される物質の存在、量またはレベルと比較する工程;および
前記試験サンプルを得た患者の疾患状態を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項40】
前記標的分子が予め決定されている、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の標的分子がHER2/neu遺伝子であり、前記第2の標的分子がHER2タンパク質であり、そして前記第3の標的分子が17番染色体のセントロメア配列である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記標的分子が、予め決定された幾何パターンで間隔があけられている、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記第3の標的分子の検出によって生成される前記シグナルが、放射シグナル、比色シグナル、蛍光シグナル、および化学発光シグナルからなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
標識を前記第3の標的分子に結合させる工程によって生成される前記シグナルが、異なる蛍光の色、異なる明視野の色、異なる放射線放出、および異なる化学発光の色からなる群のうちの1つによって、前記金属沈着、および前記第2の標的分子に結合される前記標識によって生成される前記シグナルと識別可能である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記標的分子が予め決定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記標的分子が、HER2遺伝子、HER2タンパク質、および17番染色体のセントロメア配列からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記標的分子が、フィブリンに対するレセプター、VEGFに対するレセプター、Flt4、VEGF−165に対するレセプター、Tie1、Tie2、エフリン A1−5に対するレセプター、エフリン B1−5に対するレセプター、上皮増殖因子レセプター(EGFR)、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)、神経成長因子レセプター(NGFR)、HER1、HER2/neu、HER3、HER4、Kit、c−Kit、Src、Fes、JAK、Fak、Btk、Syk/ZAP−70、およびAblからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の標的分子および第2の標的分子に由来するシグナルが、予め決定された幾何パターンで間隔があけられている、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
標識を前記第2の標的分子に結合させる工程によって生成される前記シグナルが、放射シグナル、比色シグナル、蛍光シグナル、および化学発光シグナルからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
標識を前記第2の標的分子に結合させる工程によって生成される前記シグナルが検出される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
サンプル中の複数の標的の検出のためのキットであって、以下:
i)銀イオン、金イオン、鉄イオン、水銀イオン、ニッケルイオン、銅イオン、白金イオン、パラジウムイオン、コバルトイオン、イリジウムイオン、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属イオン;
ii)酸化剤;
iii)還元剤;ならびに
iv)サンブル中の2種の異なる標的分子に結合する少なくとも2種の結合部分
を備える、キット。
【請求項52】
前記還元剤に対する前記金属イオンの重量比が、1:5〜5:1の範囲であり、そして前記酸化剤に対する該還元剤の重量比が、1:10〜10:1の範囲である、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記結合部分が、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、核酸、核酸プローブ、炭水化物、薬物、ステロイド;植物、動物、ヒトおよび細菌に由来する生成物、ならびに合成分子からなる群より選択され、ここで、各メンバーは、前記標的分子に対する結合について親和性を有する、請求項50に記載のキット。
【請求項54】
少なくとも1種の標的分子が、標的遺伝子、非コード配列、またはゲノムであり、そして前記結合部分が、該標的遺伝子またはゲノムに結合する核酸プローブである、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
さらに酵素を備える、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記酵素が、前記標的分子に結合する一次抗体または前記結合部分に結合する一次抗体のいずれかを介して、該標的分子と結合される、請求項54に記載のキット。
【請求項57】
前記酵素がペルオキシダーゼであり;前記金属イオンが銀イオンであり;前記酸化剤が過酸化水素であり;そして前記還元剤がヒドロキノンである、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
前記キットを用いて検出を行うための指示書をさらに備える、請求項51に記載のキット。
【図1】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−298654(P2008−298654A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−146339(P2007−146339)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507179346)ベンタナ メディカル システムズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146339(P2007−146339)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507179346)ベンタナ メディカル システムズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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