説明

バイオマーカー

本発明は、急性心臓障害、心臓移植拒絶を予測、診断、または監視するか、または、肺障害から心臓障害を区別するための方法であって、該障害または移植拒絶の開始後、または提示後間もなく対象から採取されるサンプルにおいてBNPシグナルペプチドレベルを測定することによって行う方法を提供する。一局面において、本発明は、対象において急性心臓障害(ACD)を予測、診断、または監視する方法を提供し、この方法は、ACDの開始の2時間以内、または、ACDの提示の2時間以内に該対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、前記BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、コントロールレベルよりも高いBNP−SP測定レベルはACDを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BNPシグナルペプチド(BNP−SP)、および、循環中にバイオマーカーの放出をもたらす、急性冠状動脈症候群を含む急性心臓障害の、対象における予後判定、診断、および監視における該BNP−SPの使用に関する。さらに詳細には、本発明は、対象における急性心臓障害を予測、診断、または監視する方法であって、その障害の開始後間もなく、またはその障害の臨床的な提示時に採取されたサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定することによって実行する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
急性冠状動脈症候群(ACS)を含む、急性心臓障害は、不安定狭心症から急性心筋梗塞(AMI)に亘る、広範囲の心臓虚血性事象を含む。AMIは、これらの事象の中でももっとも重大なものとして現れ、したがって、速やかで、正確な診断を必要とする。記載の特徴(虚血性胸部不快の既往歴、連続心電図(ECG)記録における進行性変化、および、血漿における心臓バイオマーカーの上昇および下降)の内の二つ以上を提示する患者は、AMIを罹患するものとはっきりと特定される。しかしながら、擬似AMIを提示する患者の相当の割合(40%−50%)が、典型的症状である、ECG上の連続変化を示さない。このため、正確な診断のために、大きな重点が、循環性バイオマーカー濃度に対して置かれている。2−4
心筋梗塞の、正確な早期診断は、再還流処置、例えば、効果的で、経皮的な、または血栓分解性の血流再開、および補助的な、抗凝固および抗血小板治療を含む処置の、すみやかな導入を促進する。このような処置は、診断および管理における遅延の時間毎に、死亡率および罹患率低減効果を漸次減少させる。2−4この臨床状況において最終的判断の加速が要求されるのであるから、急性心臓障害、特にAMIの、早期で、特異的診断を実現する、循環性バイオマーカーの特定については相当の関心がある。
【0003】
従来、この目的のためにいくつかのバイオマーカー、例えば、クレアチンキナーゼ−MB(CK−MB)、トロポニンT(TnT)、トロポニンI(TnI)、およびミオグロビンなどが提案されているが、これらの使用には限界がある。心臓バイオマーカー血漿レベルの、検出可能な、または異常な上昇が起こるまでの時間は、6時間(ミオグロビン、CK−MB)から12時間(TnT、TnI)であり、ピークレベルは、障害の開始から24−48時間後になって初めて起こる。これは、正確な診断および処置に対し、ある遅延枠を課す。1−4さらに、ミオグロビンおよびCK−MBは共に非特異的であり、心臓以外の起源から、特に、外傷または手術時分泌される可能性がある。この目的のために有用な他のバイオマーカーとして、BNP(preproBNP 103−134)、およびN−BNP(preproBNP(27−134)、別にNT−proBNPとも呼ばれる(図1参照)がある。両ペプチドとも循環の中に分泌される。
【0004】
AMI発生後早期における、BNPおよびN−BNP血漿濃度の測定は、強力な予後判定価値を有し2,6,7、治療処方の中にこれらのペプチドの血漿濃度を組み込むことによって、心不全患者の臨床結果の著明な改善を実現することが可能である。これは特に、BNPよりもほぼ14倍も長い半減期を持ち、したがって、AMI後の、長期の心臓機能に関してさらに余分の重要情報を提供するN−BNPについて当てはまる。
【0005】
前述の心臓バイオマーカー同様、BNPおよびN−BNPも、障害の開始後6から12時間は、検出可能な、または異常なレベルに達せず、ピークレベルは、開始後24から48時間まで出現しないことがある。したがって、BNPおよびN−BNPの、長期の診断/予後判定能力は、急性心臓外傷などの急性心臓障害について、臨床兆候の最初の数時間内に、早期の、特異的診断を提供するという付帯的能力には欠ける。したがって、このような早期マーカーが求められている。
【0006】
比較的最近、BNP−SPが、心臓病の診断に有用である可能性が示唆されている(米国特許出願公開第2005/0244904号、特許文献1)。概して、BNP−SPのレベルは、正常患者よりも心不全患者においてより高いことが示されている。BNP−SPレベルを測定すべき時点に関する経時情報は与えられていない。BNP−SPレベルは、N−BNPと共同して上昇することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第05/052593号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
急性心臓障害の早期マーカーに対する要求の実現へ向けて少しでも歩を進めること、および/または、少なくとも公衆に有用な一選択肢を提供することが本発明の目的である。
【0009】
ヒトのB型ナトリウム利尿シグナルペプチド(BNP−SP)、またはpreproBNP(1−26)は、preproBNP(1−134)配列番号1から切り離される26アミノ酸ペプチドである。BNP−SPは、別に配列番号21に示される。
【0010】
本出願人らは、急性冠状動脈症候群(ACS)が疑われる臨床症状の開始後最初の数時間に、または提示時に、BNP−SPの循環濃度が最高になるという驚くべき発見をした。この最初の数時間において、ピークは、正常なコントロール集団よりも4から10倍、通常、5から8倍のオーダーで高くなる。
【0011】
したがって、第1局面において、本発明は、対象において急性心臓障害(ACD)を予測、診断、または監視する方法であって:
ACDの開始の2時間以内、または、ACDの提示の2時間以内に該対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、前記BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、コントロールレベルよりも高いBNP−SP測定レベルはACDを示す、方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、対象において急性心臓障害(ACD)の処置に対する反応を監視する方法であって、ACDの開始の2時間以内、または、ACDの提示の2時間以内に該対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、前記BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、コントロールレベルに対するBNP−SP測定レベルの変化は、処置に対する反応を示す、方法を提供する。
【0013】
別の局面では、本発明はさらに、対象において心臓移植拒絶エピソードを予測、診断、または監視する方法であって、心臓移植後2時間以内に対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること、および、前記BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、コントロールレベルよりも高いBNP−SP測定レベルは、移植拒絶を示す、方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、対象において肺障害と、急性心臓障害(ACD)とを区別する方法であって、該障害による提示の2時間以内に対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、前記BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、コントロールレベルよりも高いBNP−SP測定レベルはACDを示す、方法を提供する。
【0015】
本発明はさらに、対象において急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測、診断、または監視する方法であって、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始、または提示後の最初の2時間以内に該対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定することを含む方法を提供する。
【0016】
好ましくは、BNP−SPの測定レベルは、コントロールのBNP−SPレベルと比較され、コントロールレベルよりも高い、BNP−SPの測定レベルは、ACDまたは心臓移植拒絶を示す。
【0017】
本発明の方法は、インビトロ法であることが好ましい。
【0018】
一実施態様では、BNP−SPレベルの測定は、開始または提示の1時間以内、好ましくは30分以内に行われる。
【0019】
生物学的なサンプルは、血液、唾液、腸液、血漿、尿、血清、または心臓組織であることが好ましい。
【0020】
一実施態様では、測定工程は、BNP−SPと、BNP−SPに選択的に結合する結合因子の間の結合を検出することを含む。この結合因子は、抗体、または抗体断片であることが好ましい。もっとも一般的には、抗体は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、またはヒト化抗体である。モノクロナール抗体が好ましい。
【0021】
別の実施態様では、BNP−SPレベルは、質量分析を用いて測定される。
【0022】
抗体によって選択的に結合されるBNP−SPは、ヒトの、完全長BNP−SP分子(配列番号21)、または、その抗原性変異体または断片である。断片は、少なくとも5アミノ酸長であることが好ましい。抗体は、BNP−SPのN−末端またはC−末端に結合することが望ましい。
【0023】
結合因子が、選択的に結合する特異的抗原性ペプチドとしては、ヒトのBNP−SP(1−10)(配列番号13)、BNP−SP(1−17)(配列番号15)、BNP−SP(3−15)(配列番号23)、BNP−SP(17−26)(配列番号19)、BNP−SP(12−23)(配列番号17)、およびBNP−SP(1−26)(配列番号21)、またはその変異体が挙げられる。
【0024】
BNP−SPの結合は、固相支持体に固定される抗体、または抗体断片を用いて測定することが好ましい。
【0025】
BNP−SPのレベルは、RIA、ELISA、蛍光免疫アッセイ、免疫蛍光アッセイ、質量分析、および免疫放射測定アッセイから選ばれるアッセイによって測定するのが有用である。
【0026】
したがって、本発明はさらに、ACD、心臓移植拒絶、または、ACD/肺障害の開始から2時間以内、またはその提示の2時間以内に対象から得た生物学的なサンプルにおけるBNP−SPのためのアッセイであって、任意の公知の方法を用いて、該サンプルにおけるBNP−SPのレベルを検出し、測定することを含むアッセイを提供する。
【0027】
アッセイは、インビトロアッセイであることが好ましい。
【0028】
本発明の方法はさらに、前記ACD、または心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の、一つ以上の、非BNP−SPマーカーのレベルを測定すること、および、該レベルを、コントロールのマーカーレベルと比較することを含んでもよく、その場合、該測定レベルの、非BNP−SPマーカーのコントロールレベルからの偏差は、BNP−SPのコントロールレベルよりも高いBNP−SPの測定レベルと組み合わせて、ACDの予測または診断を実行するか、または、前記ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の監視のために使用することが可能である。
【0029】
急性冠状動脈症候群の関連を意図して使用されるマーカーとしては、トロポニンT、トロポニンI、クレアチンキナーゼMB、ミオグロビン、BNP、NT−BNP、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、および心臓特異的脂肪酸結合タンパク(H−FABP)が挙げられる。
【0030】
別局面において、本発明はさらに、対象における急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の予測、診断、または監視に使用される、BNP−SP、またはその抗原性断片または変異体に選択的に結合する、BNP−SP結合因子であって、該急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害においては、該急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の開始の2時間以内、またはその提示の2時間以内に該対象から得られる生物学的なサンプルにおいてBNP−SPが出現することを特徴とする、BNP−SP結合因子を提供する。
【0031】
一実施態様では、結合因子は、抗体またはその断片であることが好ましい。
【0032】
別実施態様では、結合因子は、BNP−SPに結合することが可能な、任意の固体または非固体物質である。
【0033】
さらに本発明の主題とするものは、対象において急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を評価するための、予後判定、診断、または監視ツールの製造におけるBNP−SP結合因子の使用であって、該急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の開始の2時間以内、またはその提示の2時間以内に評価を実行する、使用である。
【0034】
本発明はさらに、予後判定、診断、または監視ツールが、0.1から500pmol/L、好ましくは1から400pmol/L、好ましくは10から350pmol/L、好ましくは20から300pmol/L、好ましくは25から250pmol/L、好ましくは30から180pmol/L、好ましくは35から150pmol/L、および好ましくは40から120pmol/Lの範囲のBNP−SPレベルを測定するように較正される、本発明の使用に関する。
【0035】
別局面では、本発明は、急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測、診断、または監視するための、本発明のBNP−SP結合因子を含むキットであって、急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の開始後、またはその提示の2時間以内に対象から得られる生物学的なサンプルとともに使用されるキットを提供する。
【0036】
本発明はさらに、急性心臓障害(ACD)を予測、診断、または監視するための、本発明のBNP−SP結合因子を含むキットであって、0.1から500pmol/L、好ましくは1から400pmol/L、好ましくは10から350pmol/L、好ましくは20から300pmol/L、好ましくは25から250pmol/L、好ましくは30から180pmol/L、好ましくは35から150pmol/L、および好ましくは40から120pmol/Lの範囲のBNP−SPレベルを測定するように較正されるキットを提供する。
【0037】
好ましくは、キットはさらに、急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害について、その開始後、または提示の2時間以内に取得された生物学的なサンプルにおいて測定されたBNP−SPレベルから、開始後、または提示の2時間以内の対象において急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測、診断、または監視するための指示を含む。
【0038】
別局面では、本発明は、本発明のBNP−SPをコードする核酸分子であって、
(a)配列番号14;
(b)配列番号16;
(c)配列番号18;
(d)配列番号20;
(e)(a)から(d)のいずれか一つの相補体;
(f)配列が、ccagtgcacaagctgcttggggaggcgagaか、または配列番号22ではない限りにおいて、ストリンジェントな条件下に、(a)から(e)のいずれか一つの配列にハイブリダイズすることが可能な、少なくとも15ヌクレオチド長の配列、
から選ばれる核酸分子に関する。
【0039】
本発明はさらに、本発明の核酸分子を含む遺伝子構築体、該遺伝子構築体を含むベクター、該遺伝子構築体またはベクターを含む宿主細胞、本発明の核酸分子によってコードされるポリペプチド、本発明のポリペプチドに選択的に結合する抗体、および、本発明のポリペプチドを組み換え的に生産するための方法を提供する。
【0040】
したがって、別局面において、本発明は、
(a)配列番号13;
(b)配列番号15;
(c)配列番号17;および、
(d)配列番号19;
から選ばれる、単離BNP−SPポリペプチドを提供する。
【0041】
次に、付属の図面の画像を参照しながら本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】遊離シグナル、N−BNP、およびBNPペプチドの生成をもたらす、ヒトpreproBNPの処理過程を概観する模式図である。
【図2A】7種の動物種におけるpreproBNP配列の、1文字略号表示式である。シグナルペプチド領域は、ボールド体で下線を施す。
【図2B】preproBNPシグナルペプチド配列の、Clustal W version 1.83 JALVIEW複数配列整列である。この整列では、下記のようにClustal Wのデフォールトパラメータを用いた:DNA Gap Open Penalty = 15.0;DNA Gap Extension Penalty = 6.66;DNA matrix = Identity;Protein Gap Open Penalty = 10.0;Protein Gap Extension Penalty = 0.2;Protein Matrix = Gonnet;Protein/DNA ENDGAP = −1;Protein/DNA GAPDIST = 4.アミノ酸は、ピアソン(fasta)方式で処理した。
【図3】BNP−SP標準曲線(黒丸)と平行な、ヒトの血漿抽出物(白四角)希釈物に関するラジオイムノアッセイの結果を示す。
【図4】健康なヒトにおけるBNP−SPの血漿濃度は、年齢とまったく相関を示さないことを実証するラジオイムノアッセイ結果である。
【図5】健康な正常ヒト(n=13)のBNPおよびN−BNPの血漿レベルは、緊密な相関を示すが(左パネル)、BNP−SP濃度は、N−BNPと相関しない(右パネル)ことを実証するラジオイムノアッセイの結果である。
【図6】ヒト血漿におけるBNP−SPの、ラジオイムノアッセイSEHPLC(上段パネル)およびRPHPLC(下段パネル)の結果であり、後者は、BNP−SPが、合成BNP−SPの近傍に溶出することを示唆する(下向き矢印、下段パネル)。
【図7】ラジオイムノアッセイ結果。上段:図示の入院後時点においてAMI患者(n=10)から採取された血漿におけるBNP−SP(白六角)、BNP(黒丸)、およびN−BNP(白四角)の濃度。入院後24時間でピークを示すBNPおよびN−BNPレベルとは対照的に、BNP−SPレベルの最高レベルは、入院時に見られ、平均して、健康な正常個人において測定されたレベル(白丸)よりもほぼ7倍高かった。下段パネル:上段と同じ患者における、CK−MB、ミオグロビン、およびTnTの、比較対照的、経時濃度プロフィール。
【図8】BNP−SP抗血清の交差反応データの表を示す。
【図9】患者におけるBNP−SPの循環濃度は、心臓起源のものであることを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義
急性心臓障害(ACD)としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、急性冠状動脈症候群:ECG記録においてST上昇を伴う(AMI)、不安定狭心症、および、急性、非ST上昇MI;心虚血症;急性心臓傷害;急性薬物中毒による急性心臓損傷、急性心筋症、および心臓移植拒絶が挙げられる。これらの障害の、完全な記述的定義は、文献1の中に見出される。
【0044】
ACD/肺障害とは、診断が確定されないか、または疑われるACDまたは肺障害を有する対象を指す。
【0045】
急性冠状動脈症候群(ACS)は、広汎な心虚血事象、例えば、不安定狭心症、心電図記録(ECG)においてST上昇を伴う急性心筋梗塞、不安定狭心症、および、ECGにおいてSTセグメントの上昇を伴わない急性心筋梗塞などの事象を含む。
【0046】
「抗体」という用語は、該抗体を合成するために使用される抗原、またはそれと近縁の抗原を含む分子に対し特異的相互作用を有する(結合する)特異的構造を有する免疫グロブリン分子を指す。抗体が、本発明のBNP−SPポリペプチドに対し選択的または特異的に結合するとは、該抗体が、該BNP−SPに対し優先的に結合する場合、例えば、非BNP−SPポリペプチドに対しては、例えば、25%未満、好ましくは10%未満、好ましくは1%未満の交差反応性しか持たない場合である。通常、抗体は、抗原に対し、10−7M以下、好ましくは10−8M以下、好ましくは10−9M以下の結合アフィニティー(解離定数(Kd)値)を有する。結合アフィニティーは、表面プラズモン共鳴を用いて評価してもよい。
【0047】
本明細書で用いる生物学的なサンプルとは、スクリーニングされる対象から得られる任意のサンプルを意味する。このサンプルは、BNP−SPが検出可能であれば、当該技術分野で既知のいずれのサンプルであってもよい。含まれるものは、いずれの体液であってもよく、例えば、血漿、血液、唾液、腸液、血清、尿、滑液、脳脊髄液、リンパ、精液、羊水、心膜液、および腹水の外、組織、例えば、ただし限定されないが、心臓組織がある。さらに含まれるものは、急性心臓傷害の既往歴を持たない、健康な正常対象からのサンプルがある。
【0048】
BNP−SPという用語は、ヒトのpreproBNP配列の、完全な26アミノ酸BNPシグナルペプチド(配列番号1)を指す。BNP−SPは、別に、配列番号21に示される。用語BNP−SPにさらに含まれるものは、BNP−SPの変異体または断片である。
【0049】
本明細書および特許請求項において使用される「含む(形容詞)」という用語は、「少なくとも部分的に...から成る」ことを意味する。すなわち、本明細書および特許請求項において、「含む」を含む文章を解釈する場合、各文章においてこの用語によって先行される特徴は全て存在する必要があるが、他の特徴も存在する可能性がある。「含む(動詞)」および「構成される」などの関連用語も同様に解釈しなければならない。
【0050】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド(単数または複数)」は、任意の長さの、1本鎖または2本鎖デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを意味し、非限定的例として、遺伝子のコードおよび非コード配列、センスおよびアンチセンス配列、エキソン、イントロン、ゲノムDNA、cDNA、pre−mRNA、mRNA、rRNA、siRNA、miRNA、tRNA、リボザイム、組み換えポリヌクレオチド、単離および精製された天然DNAまたはRNA配列、合成RNAおよびDNA配列、核酸プローブ、プライマー、断片、遺伝子構築体、ベクター、および修飾ポリヌクレオチドが挙げられる。核酸分子に対する参照も同様に理解しなければならない。
【0051】
本発明において提供されるポリヌクレオチドの「断片」とは、対象標的、例えば、少なくとも10ヌクレオチド長の配列に対し、特異的にハイブリダイズすることが可能な、連続ヌクレオチドのサブ配列である。本発明の断片は、配列番号22のポリヌクレオチドの内、10ヌクレオチド、好ましくは15ヌクレオチド、好ましくは16、好ましくは17、好ましくは18、好ましくは19、好ましくは21、好ましくは22、好ましくは23、好ましくは24、好ましくは25、好ましくは26、好ましくは27、好ましくは28、好ましくは29、好ましくは30、好ましくは31、好ましくは32、好ましくは33、好ましくは34、好ましくは35、好ましくは36、好ましくは37、好ましくは38、好ましくは39、好ましくは40、好ましくは41、好ましくは42、好ましくは43、好ましくは44、好ましくは45、好ましくは46、好ましくは47、好ましくは48、好ましくは49、好ましくは50、好ましくは51、好ましくは52、好ましくは53、好ましくは54、好ましくは55、好ましくは56、好ましくは57、好ましくは58、好ましくは59、好ましくは60、好ましくは61、好ましくは62、好ましくは63、好ましくは64、好ましくは65、好ましくは66、好ましくは67、好ましくは68、好ましくは69、好ましくは70、好ましくは71、好ましくは72、好ましくは73、好ましくは74、好ましくは75、好ましくは76、好ましくは77個の連続ヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドの断片は、マイクロアレイに含まれるプライマー、プローブとして、または、本明細書に記載される、ポリヌクレオチド使用の選択法において使用することが可能である。
【0052】
「プライマー」という用語は、短いポリヌクレオチドであって、鋳型にハイブリダイズする、遊離3’OH基を有し、標的に対して相補的なポリヌクレオチドの重合を提供するために使用されるポリヌクレオチドを指す。
【0053】
「プローブ」という用語は、短いポリヌクレオチドであって、ハイブリダイゼーション依存アッセイにおいて、該プローブに対して相補的なポリヌクレオチド配列を検出するために使用されるポリヌクレオチドを指す。このプローブは、本明細書において定義されるポリヌクレオチドの「断片」から成ってもよい。
【0054】
本明細書で用いる「ポリペプチド」という用語は、任意の長さのアミノ酸さを含むが、しかし、アミノ酸残基が共有ペプチド結合で連結される、完全長BNA−SPタンパク(配列番号21)の内の、好ましくは少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも9、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも11、好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも13、好ましくは少なくとも14、好ましくは少なくとも15、好ましくは少なくとも16、好ましくは少なくとも17、好ましくは少なくとも18、好ましくは少なくとも19、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも21、好ましくは少なくとも22、好ましくは少なくとも23、好ましくは少なくとも24、好ましくは少なくとも25、好ましくは少なくとも26を含む。本発明において有用なポリペプチドは、精製天然産物であってもよく、または、組み換えまたは合成技術によって部分的または全体的に生産されてもよい。本用語は、ポリペプチド、ポリペプチドの凝集体、例えば、ダイマーまたは他のマルチマー、融合ポリペプチド、ポリペプチド断片、ポリペプチド変異体、または、その誘導体を指してもよい。
【0055】
あるポリペプチドの「断片」とは、該ポリペプチドのサブ配列であって、該ポリペプチドの生物活性または結合のために必要な機能を実行する、および/または、その3次元構造を与える、サブ配列である。本用語は、前記シグナルペプチド活性を実行することが可能な、ポリペプチド、ポリペプチドの凝集体、例えば、ダイマーまたは他のマルチマー、融合ポリペプチド、ポリペプチド断片、ポリペプチド変異体、または、その誘導体を指してもよい。
【0056】
本明細書に開示されるポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に適用される「単離」という用語は、その天然の細胞環境から取り出された配列を指すために使用される。単離分子は、任意の方法で、または、生化学、組み換え、および合成技術を含む諸方法の任意の組み合わせによって取得してもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、少なくとも一つの精製工程によって調製することが可能である。
【0057】
「組み換え」という用語は、ポリヌクレオチド配列であって、その天然環境においてそれを取り巻く配列達から取り出される、および/または、その天然環境には存在しない配列達と組み換えられるポリヌクレオチド配列を指す。
【0058】
「組み換え」ポリペプチド配列は、「組み換え」ポリヌクレオチド配列から翻訳によって生産される。
【0059】
本明細書で用いる「変異体」という用語は、特に指定される配列とは異なるポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列であって、一つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が、欠失、置換、または付加されたポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を指す。変異体は、天然の対立遺伝子変異体か、または非天然変異体であってもよい。変異体は、同じか、または異なる動物種由来のものであってもよく、ホモローグ、パラローグ、およびオルソローグを含んでもよい。ある実施態様では、本発明において有用なポリペプチドの変異体は、親ポリペプチドまたはポリヌクレオチドのものと同一か、または同様の生物活性を示す。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドに対する「変異体」という用語は、本明細書に定義される全ての形態のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを包含する。
【0060】
変異ポリヌクレオチド配列は、本発明の配列に対し、少なくとも50%、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも71%、好ましくは少なくとも72%、好ましくは少なくとも73%、好ましくは少なくとも74%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも76%、好ましくは少なくとも77%、好ましくは少なくとも78%、好ましくは少なくとも79%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも81%、好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも83%、好ましくは少なくとも84%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも86%、好ましくは少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、好ましくは少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の同一性を示す。本発明のポリヌクレオチドに対し、少なくとも10ヌクレオチド位置、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド位置、好ましくは少なくとも20ヌクレオチド位置、好ましくは少なくとも27ヌクレオチド位置、好ましくは少なくとも40ヌクレオチド位置、好ましくは少なくとも50ヌクレオチド位置の比較ウィンドウにおいて、もっとも好ましくはその全長において、同一性が認められる。
【0061】
ポリヌクレオチド配列の同一性は、候補および対象ポリヌクレオチド配列間の重複の全長に亘って、グローバル配列整列プログラム(例えば、Needleman,S.B.and Wunsch,C.D.(1970)J.Mol.Biol.48,443−453)を用いて計算することが可能である。Needleman−Wunschグローバル整列プログラムの完全実装は、EMBOSSパッケージのneedleプログラムの中に見られる(Rice,P.Longden,I.and Bleasby,A.EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite,Trends in Genetics June 2000,vol 16,No 6.pp.276−277)。これは、http://www.hgmp.mrc.ac.uk/Software/EMBOSS/から取得することが可能である。このEuropean Bioinformatics Instituteサーバーはさらに、http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/において、二つの配列の間でEMBOSS−needleグローバル整列を実行するための設備を提供している。
【0062】
それとは別にGAPプログラムを用いてもよい。これは、末端ギャップにペナルティーを課すことなく、二つの配列の最適グローバル整列を計算する。GAPは、下記の論文に記載される:Huang,X.(1994)On Global Sequence Alignment.Computer Applications in the Biosciences 10,227−235。
【0063】
ポリヌクレオチド変異体はさらに、特別に指定した配列の一つ以上に対し、それらの配列の機能的等価性を保存すると見られるほどの類似性を示すが、普通に考えれば、ランダムな偶然では起こり得ないと予測される配列をも包含する。このプログラムは、配列間において類似性領域を見出し、その各類似領域について、固定参照サイズを含むランダム配列のデータベースにおいて偶然にそのようなマッチが現れることが予想される期待数である「E値」を報告する。bl2seqプログラムでは、このデータベースのサイズは、デフォールトで設定されている。1よりもはるかに小さい、小E値の場合、E値は、ほぼ、そのようなランダムなマッチの確率となる。
【0064】
変異ポリヌクレオチド配列は、特に指定した配列のいずれか一つと比較した場合、
好ましくは1×10−5、より好ましくは1×10−6、さらに好ましくは1×10−9、さらに好ましくは1×10−12、さらに好ましくは1×10−15、さらに好ましくは1×10−18、もっとも好ましくは1×10−21未満のE値を示す。
【0065】
本発明によるポリヌクレオチド変異体に対する配列同一性の決定には、BLASTNの使用が好ましい。
【0066】
ポリヌクレオチド配列同士の同一性は、下記のUNIX(登録商標)コマンドラインパラメータを用いて調べることが可能である:
bl2seq−i nucleotideseq1−j nucleotideseq2−FF−p blastn
パラメータ−FFは、低複雑度セクションのフィルタリングをスイッチオフする。パラメータ−pは、この配列ペアのために適切なアルゴリスムを選択する。bl2seqプログラムは、配列同一性を、“Identities=”の行の中に、同一ヌクレオチドの数およびパーセントとして報告する。
【0067】
ポリヌクレオチド配列の同一性および類似性はさらに、下記のようにして決定することも可能である。対象ポリヌクレオチド配列を、候補ポリヌクレオチド配列と比較する場合、配列整列アルゴリスム、および配列類似性探索ツール、例えば、Genbank、EMBL、Swiss−PROT、およびその他のデータベースに用意されているものなどが用いられる。Nucleic Acids Res.29:1−10および11−16,2001は、オンラインリソースの例を提供する。BLASTN(BLAST suite of programs,version 2.2.13 March 2007 in bl2seq(Tatiana A.et al,FEMS Microbiol Lett.174:247−250(1999),Altschul et al.,Nuc.Acis Res 25:3389−3402(1997))は、NCBIから一般的に(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)、またはNCBI at Bestheda,Maryland,USAから取得することが可能である。低複雑度部分のフィルタリングをスイッチオフしなければならない場合を除き、bl2seqのデフォールトパラメータが利用される。
【0068】
それとは別に、変異ポリペプチドは、該指定のポリヌクレオチド配列、またはその相補体に対し、ストリンジェントな条件下にハイブリダイズする。
【0069】
「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズする」という用語、および、それと文法的に等価な表現は、温度および塩濃度の定められた条件において、標的ポリヌクレオチド分子(例えば、DNAまたはRNAブロット、例えば、サザーンブロットまたはノーザンブロットにおいて固定される標的ポリヌクレオチド分子)に対し、あるポリヌクレオチド分子がハイブリダイズする能力を指す。ストリンジェントな条件下にハイブリダイズする能力は、比較的厳格でない条件下で先ずハイブリダイズさせ、次いで、厳格度を所望の厳格度に増大させることによって定量することが可能である。
【0070】
約100塩基長を超えるポリヌクレオチド分子に関しては、典型的に厳格なハイブリダイゼーション条件は、天然の2本鎖の融解温度(Tm)よりも25から30℃未満(例えば、10℃)低い(一般的案内として、Sambrook et al.,Eds,1987,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd Ed.Cold Spring Harbor Press;Ausubel et al.,1987,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishingを参照されたい、なお、参照によりこれらを本明細書に含める)。約100塩基よりも大きいポリヌクレオチド分子のTmは、式Tm=81.5+0.41%(G+C−log(Na+)(Sambrook et al.,Eds,1987,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd Ed.Cold Spring Harbor Press;Bolton and McCarthy,1962,PNAS 84:1390)によって計算することが可能である。100塩基長を超えるポリヌクレオチドの典型的ストリンジェントな条件は、例えば、6X SSC,0.2%SDSの溶液におけるプレ洗浄;65℃、6X SSC,0.2%SDSにおいて一晩ハイブリダイゼーション;次いで、65℃において、それぞれ1X SSC,0.1%SDSにおいて30分の、2回の洗浄;65℃において、それぞれ0.2X SSC,0.1%SDSにおいて30分の、2回の洗浄のハイブリダイゼーション条件と考えられる。
【0071】
一実施態様では、ストリンジェントな条件は、42℃における、50%フォルムアミド、5xSSC、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5xデンハルト液、超音波処理サケ精液DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランに、42℃で0.2xSSC、55℃で50%フォルムアミドによる洗浄を加え、次いで、55℃において、EDTA含有0.1xSSCを含む洗浄を使用する。
【0072】
100塩基よりも低い長さを持つポリヌクレオチド分子に関しては、例示の厳格ハイブリダイゼーション条件は、Tmの下5から10℃である。平均して、100bp未満の長さを持つポリヌクレオチド分子のTmは、ほぼ、(500/オリゴヌクレオチド長)℃だけ下がる。
【0073】
ペプチド核酸(PNA)(Nielsen et al.,Science.1991 Dec 6;254(5037):1497−500)とも呼ばれるDNA擬似体に関しては、Tm値は、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリッドのものよりも高く、Giesen et al.,Nucleic Acids Res.1998 Nov 1;26(21):5004−6に記載される式を用いて計算することが可能である。100塩基未満の長さを持つDNA−RNAハイブリッドの、例示のハイブリダイゼーション条件は、Tmの下5から10℃である。
【0074】
変異ポリヌクレオチドはさらに、本発明の配列とは異なるが、遺伝子コードの縮重のために、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと類似の活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも包含する。ポリペプチドのアミノ酸配列を変えない配列変化は、「サイレント変動」である。ATG(メチオニン)およびTGG(トリプトファン)を除き、同じアミノ酸に対する他のコドン同士は、例えば、特定の宿主生物におけるコドン発現を最適化するために、当該技術分野で認識済みの技術を用いて変えることが可能である。
【0075】
コードされるポリペプチド配列において、その生物活性を顕著に変えることなく、一つ、またはいくつかのアミノ酸の保存的置換をもたらす、ポリヌクレオチド配列変化も本発明の中に含まれる。熟練した当業者であれば、表現型としてはサイレントなアミノ酸置換を実行するための方法を承知している(例えば、Bowie et al.,1990,Science 247,1306を参照されたい)。
【0076】
コードされたポリペプチド配列にサイレント変動および保存的置換をもたらすことによって得られる変異ポリヌクレオチドは、前述のようにtblastxアルゴリスムを介してbl2seqプログラムを使用することによって決めることが可能である。
【0077】
ポリペプチドに関して「変異」という用語はさらに、天然、組み換え、および合成的に生産されるポリペプチドを包含する。変異ポリペプチド配列は、本発明の配列に対し、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも71%、好ましくは少なくとも72%、好ましくは少なくとも73%、好ましくは少なくとも74%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも76%、好ましくは少なくとも77%、好ましくは少なくとも78%、好ましくは少なくとも79%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも81%、好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも83%、好ましくは少なくとも84%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも86%、好ましくは少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、好ましくは少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の同一性を示す。本発明において使用されるポリヌクレオチドに対し、少なくとも5アミノ酸位置、好ましくは少なくとも7アミノ酸位置、好ましくは少なくとも10アミノ酸位置、好ましくは少なくとも15アミノ酸位置、好ましくは少なくとも20アミノ酸位置の比較ウィンドウにおいて、もっとも好ましくはその全長において、同一性が認められる。
【0078】
ポリペプチド変異体はさらに、特別に指定した配列の一つ以上に対し、それらの配列の機能的等価性を保存すると見られるほどの類似性を示すが、普通に考えれば、ランダムな偶然では起こり得ないと予測される配列をも包含する。
【0079】
ポリペプチド配列の同一性および類似性は、下記のようにして決定することが可能である。対象ポリペプチド配列を、候補ポリペプチド配列と比較する場合、BLASTPが用いられる(BLAST suite of programs,version 2.2.14[May 2006]) in bl2seq。これは、一般向けに公開されるNCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から取得することが可能である。低複雑度領域のフィルタリングをスイッチオフしなければならない場合を除き、bl2seqのデフォールトパラメータが利用される。
【0080】
ポリペプチド配列同士の同一性は、下記のUNIX(登録商標)コマンドラインパラメータを用いて調べることが可能である:
bl2seq−i peptideseq1−j peptideseq2−FF−p blastp
変異ポリヌクレオチド配列は、特に指定した配列のいずれか一つと比較した場合、
好ましくは1×10−5、より好ましくは1×10−6、さらに好ましくは1×10−9、さらに好ましくは1×10−12、さらに好ましくは1×10−15、さらに好ましくは1×10−18、もっとも好ましくは1×10−21未満のE値を示す。
【0081】
パラメータ−FFは、低複雑度セクションのフィルタリングをスイッチオフする。パラメータ−pは、配列ペアのために適切なアルゴリスムを選択する。このプログラムは、配列間において類似性領域を見出し、その各類似領域について、固定参照サイズを含むランダム配列のデータベースにおいて偶然にそのようなマッチが現れることが予想される期待数である「E値」を報告する。1よりもはるかに小さい、小E値の場合、E値は、ほぼ、そのようなランダムなマッチの確率となる。
【0082】
ポリペプチド配列の同一性は、候補および対象ポリペプチド配列間の重複の全長に亘って、グローバル配列整列プログラムを用いて計算することが可能である。さらに、前述のように、EMBOSS−needle(http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/において入手可能)、およびGAP(Huang,X.(1994)On Global Sequence Alignment.Computer Applications in the Biosciences 10,227−235)も、ポリペプチド配列同一性を計算するのに好適な、グローバル配列整列プログラムである。
【0083】
本発明によるポリペプチド変異体の決定には、前述のBLASTPの使用が好ましい。
【0084】
好ましい変異体としては、ペプチドであって、その配列が、本明細書の、ヒトBNP−SP(1−26)とは、該ペプチドの生物活性に影響を及ぼさない、一つ以上の保存的アミノ酸置換、欠失、付加、または挿入によって異なるペプチドが挙げられる。通常、保存的置換は、一つのアミノ酸の、類似の特徴を持つ別のアミノ酸による置換、例えば、下記の群における置換:バリン、グリシン;グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン類、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン、である。保存的置換の例はさらに、図2Aおよび2BのBNP−SPの配列の中に見出すことが可能である。これらの図では、ヒトの配列と比べた場合の、様々な哺乳動物種における置換が示される。他の保存的置換として、下記の表1から取り上げることが可能である。
【0085】
【表1】

【0086】
天然残基は、一般的側鎖特性に基づいていくつかの群に分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖の方向性に影響を及ぼす残基:gly、pro;および、
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0087】
非保存的置換は、これらのクラスの一つにおけるメンバーの、別のクラスのメンバーとの交換を要求する。例えば、BNP−SP25において、RがHによって置換されるのを参照されたい。
【0088】
他の変異体として、ペプチドの安定性に影響を及ぼす修飾を有するペプチドが挙げられる。そのような類縁体は、例えば、ペプチド配列の中に、(ペプチド結合を置換する)一つ以上の、非ペプチド結合を含んでもよい。さらに含められるのは、天然のLアミノ酸以外の残基、例えば、Dアミノ酸、または、非天然の、合成アミノ酸、例えば、ベータまたはガンマアミノ酸、および環状類縁体を含む類縁体である。
【0089】
置換、欠失、付加、または挿入は、当該技術分野で既知の、突然変異誘発法によって実行してもよい。当業者であれば、表現型としてサイレントなアミノ酸置換を実行するための方法を承知している。例えば、Bowie et al.,1990,Science 247,130610を参照されたい。
【0090】
さらに本発明のポリペプチドの中に含まれるものは、例えば、ビオチニル化、ベンジル化、グリコシル化、リン酸化、アミド化による合成の際、またはその後、ブロック/保護基などによる誘導体形成によって修飾されるものである。このような修飾は、ポリペプチドの安定性または活性を増してもよい。
【0091】
「遺伝子構築体」という用語は、通常2本鎖DNAであるポリヌクレオチド分子であって、その中に、別のポリヌクレオチド分子(挿入ポリヌクレオチド分子)、例えば、ただしこれに限定されないが、cDNA分子を挿入させる場合のあるポリヌクレオチド分子を指す。遺伝子構築体は、この挿入ポリヌクレオチド分子の転写、かつ、必要に応じて、転写物のポリペプチドへの翻訳を可能とする必要要素を含んでもよい。挿入ポリヌクレオチド分子は、宿主細胞から得られてもよいし、あるいは、異なる細胞または生物から得られてもよいし、および/または、組み換えポリヌクレオチドであってもよい。一旦宿主細胞の中に入ると、この遺伝子構築体は、宿主の染色体DNAの中に組み込まれてもよい。遺伝子構築体はベクターに連結されてもよい。
【0092】
「ベクター」という用語は、宿主細胞の中に遺伝子構築体をトランスロケーションするために使用される、通常は2本鎖DNAであるポリヌクレオチド分子を指す。ベクターは、少なくとも一つの、さらに別の宿主システム、例えば、大腸菌において複製可能であってもよい。
【0093】
「発現構築体」という用語は、挿入ポリヌクレオチドの転写を可能とし、かつ、必要に応じて転写物のポリペプチドへの翻訳を可能とする必要要素を含む遺伝子構築体を指す。発現構築体は、5’から3’方向に向けて:
a)構築体が形質転換される宿主細胞において機能的なプロモーター、
b)発現されるポリヌクレオチド、および、
c)構築体が形質転換される宿主細胞において機能的なターミネーター
を含む。
【0094】
「コード領域」または「オープンリーディングフレーム」(ORF)という用語は、適切な制御配列の調節下において、転写産物および/またはポリペプチドを生産することが可能な、ゲノムDNA配列またはcDNA配列のセンス鎖を指す。コード配列は、5’翻訳開始コドンおよび3’翻訳終止コドンの存在によって特定される。遺伝子構築体の中に挿入されると、「コード配列」は、プロモーターおよびターミネーター配列、および/または他の制御要素に動作可能的に連結された場合、発現が可能とされる。
【0095】
「動作可能的に連結される」とは、発現される配列が、制御要素、例えば、プロモーター、転写調節配列、翻訳調節配列、複製起点、組織特異的制御要素、時間制御要素、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、リプレッサー、およびターミネーターなどの制御要素の調節下に置かれることを意味する。
【0096】
「非コード領域」という用語は、翻訳開始部位の上流、および翻訳終止部位の下流にある未翻訳配列を指す。これらの配列はまた、それぞれ、5’UTRおよび3’UTRとも呼ばれる。これらの領域は、転写開始および終止、および、翻訳効率の制御のために必要な要素を含む。
【0097】
ターミネーターとは、転写を終結する配列で、翻訳される配列の下流遺伝子の、3’未翻訳末端の中に見出される。ターミネーターは、mRNA安定性の重要な決定因子であり、ある場合には、空間制御機能を有することが認められている。
【0098】
「プロモーター」という用語は、コード領域の上流にあって、遺伝子の転写を制御する、非転写cis−制御要素を指す。プロモーターは、転写開始部位を特定するcis−イニシエーター要素、および、TATAボックスなどの保存ボックス、および、転写因子によって結合されるモチーフを含む。
【0099】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの「発現を変える」、および「変更発現」という用語は、本発明のポリヌクレオチドに相当するゲノムDNAが修飾されて、そのため、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現変化がもたらされる状況を含有することが意図される。ゲノムDNAの修飾は、遺伝子変換、または、突然変異誘発のための、当該技術分野で公知のその他の方法によって実行されてもよい。「発現変化」は、生産されるメッセンジャーRNAおよび/またはポリペプチドの量における増減に関わることが可能であり、生産されるポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列の変化によってポリペプチドの活性変化をもたらしてもよい。
【0100】
本明細書で用いる「対象」は、哺乳動物であることが好ましく、ヒト、および非ヒト哺乳動物、例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、シカ、マウス、ラット、霊長類(ゴリラ、赤毛ザル、およびチンパンジーを含む)、possums、および、その他の飼育または動物園動物を含む。この哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0101】
本明細書で用いる「提示(presentation)」という用語は、クリニックまたは病院などの医療施設における対象の提示を指す。
【0102】
「処置する」、「処置的」、または「処置」および「予防」とは、ACDまたは心臓移植拒絶、またはその作用、特にACSの緩和、寛解、管理、予防、抑制、停止、または進行逆転を実行する、治療的または予防的方策を指す。対象は、TnI、BNP、N−BNPの一つ以上、および、当業者に公知の、他の、通常の、臨床マーカーにおいて、改善を示す、観察可能、または測定可能な(統計的に有意な)低下を示してもよい。
【0103】
本明細書に開示される、ある範囲の数(例えば、1から10)に対する参照は、その範囲内の、全ての関連数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、および10)に対する参照を含み、さらに、その範囲内の、有理数の、任意の範囲(例えば、2から8、1.5から5.5、および3.1から4.7)を含む。したがって、本明細書において明言的に開示される全ての範囲の、そのサブ範囲も全て明言的に開示される。上記は、特異的に意図される事柄のほんの数例であり、数え上げられた最低値および最高値の間の数値同士の、可能な組み合わせが全て、同様に、本出願においてはっきりと明言されると見なされる。
【0104】
発明の詳細な説明
ヒトのB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、心臓のナトリウム利尿ペプチドファミリーのメンバーである。図1に示すように、preproBNPは、134アミノ酸分子である。シグナルペプチドBNP−SP(1−26)が切り離されて、preproBNP(27−134)を与える。次に、preproBNP(27−134)がさらに処理されて、生物活性形preproBNP(103−134)、およびpreproBNP(27−102)を与える。BNP−SPは、シグナルペプチダーゼ(SPP)によって、通常、BNP−SP(1−26)の疎水性中央領域近くで変性されて、さらに小さな断片になるようである。
【0105】
BNP−SPの機能的役割は、小胞体におけるBNP輸送の調節に限定されるものと長い間考えられてきた。これが達成されると、このシグナルペプチドは、細胞から全く分泌されることなく分解されるものと考えられていた。
【0106】
ごく最近、BNP−SPが循環中に現れることが認められた(国際公開第2005/052593号;米国特許出願公開第2005/0244904号)。この所見に基づいて、BNP−SPを心臓病の循環性バイオマーカーとして使用することが示唆された。本出願人らは、さらに別の、まったく思いがけない発見をした。急性心筋梗塞(AMI)では、患者の症状の開始後最初の数時間で−実際には、病院またはクリニックへの到着時、BNP−SPの循環濃度は最高になる。これは、BNP−SPレベルは、N−BNPレベルと相関すると考えられるから、ACD、心臓移植拒絶の開始後または提示後、あるいは未診断または疑わしいACDまたは肺障害による提示後、12から24時間においてそのピークに達するであろうとする予想とはまったく異なる。この最初の数時間に観察されるレベルは驚くほど高く、しばしば、正常なコントロール集団のレベルよりも約4から10倍、普通に5から8倍も高いピークに達する。
【0107】
BNP−SPレベルは、提示後の最初の測定から少なくとも6週間は、コントロール集団のBNP−SPレベルよりも最大3倍の高レベルを維持する。これらの所見は、BNP−SPが、心臓移植拒絶、AMI、特に非ST上昇MIなどの急性冠状動脈症候群(ACS)を含むACD、急性心虚血症の、ごく初期段階のマーカーとして有用であること、ACDを肺障害から区別するために使用することが可能であることを示唆する。
【0108】
これらの驚くべき所見に基づいて、本出願人らは、障害開始の2時間以内に、または提示時に対象から採取された生物学的なサンプルにおいて、循環性のBNP−SP、またはその変異体または断片、および、BNP−SPをコードするヌクレオチド配列、またはその変異体または断片に関してスクリーニングすることは有用であると考えられると始めて判断した。
【0109】
本発明において有用なのは、少なくとも5アミノ酸長の、BNP−SPの抗原性断片または変異体である。特に有用な断片は、BNP−SPのN末端またはC末端である。特異的抗原ペプチドの例として、BNP−SP(1−10)(配列番号13)、BNP−SP(1−17)(配列番号15)、BNP−SP(12−23)(配列番号17)、およびBNP−SP(17−26)(配列番号19)がある。対応するヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号14、16、18、および20に示される。これらの配列は、本出願人らによって始めて提供される。これらの核酸分子とペプチドは両方とも、本発明の局面を形成する。
【0110】
したがって、第1局面では、本発明は、本発明のBNP−SPをコードする核酸分子であって、
(a)配列番号14;
(b)配列番号16;
(c)配列番号18;
(d)配列番号20;
(e)(a)から(d)のいずれか一つの相補体;
(f)配列が、ccagtgcacaagctgcttggggaggcgagaではなく、または配列番号22ではない限りにおいて、ストリンジェントな条件下に、(a)から(e)のいずれか一つの配列にハイブリダイズすることが可能な、少なくとも15ヌクレオチド長の配列、
から選ばれる核酸分子を提供する。
【0111】
本発明はさらに、本発明の核酸分子によってコードされる単離BNP−SPポリペプチドを提供する。
【0112】
本発明の特異的ポリペプチドとしては、全て付属の配列リストに記載される、配列番号13、15、17、および19のアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。さらに考慮の対象とされるのは、本明細書に定義されるこれらのペプチドの、機能的に等価な変異体および断片である。
【0113】
本発明の核酸分子、またはその他の形で本明細書に記載される核酸分子は単離されるのが好ましい。これらの分子は、当業者に公知の様々な技術を用いて生物学的なサンプルから単離することが可能である。例示として挙げると、そのようなポリペプチドは、Mullis et al.,Eds.1994 The Polymerase Chain Reaction,Birkhauserに記載されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて単離することが可能である。本発明の核酸分子は、本発明のポリヌクレオチド配列から得られる、本明細書で定義する通りのプライマーを用いて増幅することが可能である。
【0114】
ポリヌクレオチドを単離するための別の方法としては、本発明のポリヌクレオチド、特に、配列番号19に記載される配列を有するポリヌクレオチドの全て、または部分をハイブリダイゼーションプローブとして用いることが挙げられる。ニトロセルロースフィルターまたはナイロン膜などの固体支持体の上に固定されたポリヌクレオチドに対して標識ポリヌクレオチドをハイブリダイズする技術は、ゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用することが可能である。同様に、プローブはビーズに結合させ、標的配列にハイブリダイズさせてもよい。単離は、磁気分離などの、当該技術分野で公知のプロトコールを用いて実行することが可能である。例示の厳格ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は前述した通りである。
【0115】
ポリヌクレオチド断片は、当該技術分野で周知の技術、例えば、制限エンドヌクレアーゼ消化およびオリゴヌクレオチド合成によって生産してもよい。
【0116】
サンプル中の対応する完全長ポリヌクレオチドを特定するには、当該技術分野で周知の方法にしたがって、部分的ポリヌクレオチド配列をプローブとして用いてもよい。そのような方法として、PCR利用法、5’RACE(Methods Enzymol.218:340−56(1993);Sambrook et al.,上記)、および、ハイブリダイゼーション利用法、コンピュータ/データベース利用法が挙げられる。検出をやり易くするために、放射性同位元素、蛍光標識、化学発光標識、および生物発光標識などの検出可能標識を用いてもよい。さらに逆PCRは、既知の領域に基づくプライマーで始めて、本明細書に開示されるポリヌクレオチドに側接する未知配列の取得を可能とする(Triglia et al.,Nucleic Acids Res 16,8186,(1998))。この方法は、遺伝子の既知領域の中に好適な断片を生成するためにいくつかの制限酵素を用いる。次に、この断片は、分子間連結によって環状とされ、PCR鋳型として使用される。この既知の領域から分岐プライマーが設計される。完全長クローンを物理的に集合するために、標準的分子生物学法の利用が可能である(Sambrook et al.,上記)。本発明のポリヌクレオチドの増幅を可能とするプライマーおよびプライマーペアも、本発明のさらに別の局面を形成する。
【0117】
変異体(オルソログを含む)は、記載の方法によって特定することが可能である。変異ポリヌクレオチドは、PCR利用法によって特定することが可能である(Mullis et al.,Eds.1994 The Polymerase Chain Reaction,Birkhauser)。通常、PCRによる、ポリヌクレオチド分子の変異体を増幅するのに有用な、プライマーのポリヌクレオチド配列は、対応するアミノ酸配列の保存領域をコードする配列に基づいてもよい。
【0118】
変異ポリヌクレオチドを特定するための、さらに別の方法は、前述のようにゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするためのハイブリダイゼーションプローブとして、特定のポリヌクレオチドの全て、または部分を使用することが挙げられる。通常、対応アミノ酸配列の保存領域をコードする配列に基づくプローブが使用される。ハイブリダイゼーション条件も、プローブと同一の配列を求めてスクリーニングする場合に用いられる条件よりも厳格度は低くてよい。
【0119】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの両変異体を含む、変異配列はさらに、前述のコンピュータ利用法によって特定してもよい。
【0120】
一群の関連配列の、複数の配列整列は、CLUSTALW(Thompson,et al.,Nucleic Acids Research,22:4673−4680(1994),http://www−igbmc.u.−strabg.fr/BioInfo/ClustalW/Top.html)、またはT−COFFEE(Cedric Notredame et al.,J.Mol.Biol.302:205−217(2000))、または、進行性ペア対向整列を用いるPILEUP(Feng et al.,J.Mol.Evol.25,351(1987))によって実行することが可能である。
【0121】
モチーフまたはシグナチャ配列を見出すためには、パターン認識ソフトウェアアプリケーションが市販されている。例えば、MEME(Multiple Em for Motif Elicitation)は、一組の配列の中にモチーフおよびシグナチャ配列を見出し、MAST(Motif Alignment and Search Tool)はこれらのモチーフを用いて、クエリ配列の中に類似か、または同じモチーフを特定する。MASTの結果は、適切な統計データを添えた、一連の整列、および、見出されたモチーフの視覚的概観として提供される。MEMEおよびMASTは、University of California,San Diegoで開発された。
【0122】
PROSTLE(Bairoch et al.,Nucleic Acids Res.22,3583(1994);Hofmann et al.,Nucleic Acids Res.27,215(1999))は、ゲノムまたはcDNA配列から翻訳された、特徴未解明タンパクの機能を特定する方法である。このPROSTLEデータベース(www.expasy,org/prosite)は、生物学的に重要なパターンおよびプロフィールを含み、かつ、既知のタンパクファミリーに新規配列を割り当てたり、または、配列の中にどの既知のドメイン(単数または複数)があるか(Falquet et al.,Nucleic Acids Res.30,235(2002))を判断するための、適切なコンピュータツールと共に使用することが可能となるように設計される。Prosearchは、任意の配列パターンまたはシグナチャを用いてSWISS−PROTおよべEMBLデータベースを探索することが可能なツールである。
【0123】
タンパクは、同じゲノム(パラローグ)、または別のゲノム(オーソローグ)の他のタンパクに対するその配列近縁性にしたがって分類することが可能である。オーソロガス遺伝子は、共通の先祖遺伝子から種分化によって進化した遺伝子であり、通常、それが進化してきたものと同じ機能を保持する。パラロガス遺伝子は、ゲノム内で重複する遺伝子であって、これらの遺伝子は、新規種分化、または、元の機能と関連する修飾機能を取得する可能性がある。系統発生分析法は、Tatusov et al.,Science 278,631−637,1997に総覧される)。
【0124】
前述のコンピュータ/データベース法の外に、ポリペプチドは、物理的方法、例えば、本発明のポリペプチドに対して惹起された抗体を用いて発現ライブラリーをスクリーニングすること(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.Cold Spring Harbor Press,1987)、これもSambrookらによって記載される組み換えDNA技術によって、または、上記のような抗体の助けを借りて天然供給源のポリペプチドを特定することによって特定してもよい。
【0125】
変異ポリペプチドを含むポリペプチドは、当該技術分野において周知の、ペプチド合成法、例えば、固相技術によるペプチドの直接合成(例えば、Merrifield,1963,in J.Am Chem.Soc.85,2149;Stewart et al.,1969,in Solid−Phase Peptide Synthesis,WH Freeman Co,San Francisco California;Matteucci et al.J.Am.Chem.Soc.103:3185−3191,1981)、自動化合成、例えば、Applied Biosystems(California,USA)から市販されるSynthesiserによる合成法を用いて調製してもよい。さらに、ポリペプチドの変異形は、合成法、例えば、Adelmen et al;DNA 2,183(1983)によって記載されるように、アミノ酸配列をコードするDNAの部位特異的突然変異誘発法を用いて生成してもよい。
【0126】
本発明のポリペプチドおよび変異ポリペプチドは単離されることが好ましい。これらのポリペプチドは、当該技術分野で周知の種々の技術(例えば、Deutscher,1990,Ed,Methods in Enzymology,Vol.182,Guide to Protein Purification)を用いて天然源から単離または精製されてもよい。技法としては、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、および免疫クロマトグラフィーが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0127】
それとは別に、ポリペプチドおよび変異ポリペプチドは、後述するように、適切な宿主細胞において組み換え的に発現され、該細胞から分離されてもよい。このポリペプチドおよび変異体は、いろいろある用途の中でも特に、抗体の生成、およびリガンドの生成に有用である。
【0128】
本明細書に記載される遺伝子構築体は、開示のポリヌクレオチド配列の一つ以上、および/または、本発明の開示のポリペプチドをコードするポリペプチドを含み、例えば、細菌、真菌、昆虫、哺乳類、または植物生物体を形質転換するのに有用であってもよい。本発明の遺伝子構築体は、本明細書に定義される発現構築体を含むように意図される。含まれるものは、ベクター(例えば、pBR322、pUC18、pU19、Mp18、Mp19、ColE1、PCR1、およびpKRC)、ファージ(例えば、ラムダgt10)、およびM13プラスミド(例えば、pBR322、pACYC184、pT127、RP4、p1J101、SV40、およびBPV)、コスミド、YACS、BACシャトルベクター、例えば、pSA3、PAT28トランスポゾン(例えば、米国特許第5,792,294号に記載されるもの)などである。
【0129】
構築体は、選択遺伝子、または選択可能マーカーを含んでいると好都合である。通常、アンピシリン、メトトレキセート、またはテトラサイクリンなどの抗生物質耐性マーカーが使用される。
【0130】
構築体において有用なプロモーターとしては、当該技術分野で周知の、β−ラクタマーゼ、アルカリフォスファターゼ、トリプトファン、およびtacプロモーターシステムが挙げられる。酵母プロモーターとしては、3−フォスフォグリセリン酸キナーゼ、エノラーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、グルコキナーゼ、およびグリセルアルデヒドレート−3−フォスフォネートデヒドロゲナーゼが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0131】
転写を強化するためにプロモーターに作用するようにエンハンサーを用いてもよい。本発明において使用するのに好適なエンハンサーとしては、SV40エンハンサー、サイトメガロウィルス早期プロモーターエンハンサー、グロビン、アルブミン、インスリンなどが挙げられる。
【0132】
遺伝子構築体およびベクターを生産し、使用するための方法は、当該技術分野で周知であり、その概略は、Sambrookら(上記)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing,1987に記載される。ベクターによって選ばれた宿主細胞を形質転換する方法も公知であり、例えば、塩化カルシウム処理は、Cohen,SN;PNAS 69,2110,1972によって記載される。
【0133】
記述される遺伝子構築体およびベクターを含む宿主細胞は、前核細胞起源または真核細胞起源、例えば、酵母、細菌、真菌、昆虫(例えば、バキュロウィルス)、動物、哺乳動物、または植物生物体から得られてもよい。一実施態様では、宿主細胞は、単離宿主細胞である。宿主細胞としてもっとも一般的に用いられる前核細胞は大腸菌株である。他の前核細胞宿主としては、Pseudomonas、Bacillus、Serratia、Klebsiella、Streptomyces、Listeria、Saccharomyces、Salmonella、およびMycobacteriaが挙げられるが、しかしこれらに限定されない。
【0134】
組み換えタンパクの発現用の真核細胞としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、Vero細胞、HeLa、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)、293、BHK細胞、MDCK細胞、およびCOS細胞の外、前立腺癌細胞系統、例えば、PrEC、LNCaP、Du145、およいPWPE−2が挙げられる。これらの細胞は、ATCC,Virginia,USAから取得することが可能である。
【0135】
本発明の核酸分子の発現に適合する前核細胞プロモーターとしては、当該技術分野で公知の構成的プロモーター(例えば、ラムダバクテリオファージのintプロモーター、および、pBR322のベータ−ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーター、および制御プロモーター(例えば、lacZ、recA、およびgal)が挙げられる。コード配列上流のリボソーム結合部位も、発現に必要とされる場合がある。
【0136】
発現構築体などの遺伝子構築体を含む宿主細胞は、ポリペプチドの組み換え生産法において有用である。このような方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Sambrookら、上記を参照されたい)。方法は、一般に、本発明のポリペプチドの発現および選択に好適な、または誘導的な適切な媒体中で宿主細胞を培養することを含む。さらに、選択可能マーカーを含む細胞を、本発明のポリペプチドを発現する宿主細胞の選択に好適な媒体の上で培養してもよい。本発明のポリペプチドを発現する、形質転換宿主細胞を選択し、該ポリペプチドの発現のために好適な条件下で培養する。この発現された組み換えポリペプチドは、当該技術分野において周知の方法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動など(例えば、Deutscher,Ed,1990,Methods in Enzymology,Vol 182,Guide to Protein Purification)を用いて、培養媒体から分離し、精製してもよい。宿主細胞は、本発明の発現ポリペプチドによって生成される産物の生産法において有用である場合がある。
【0137】
別局面では、本発明は、対象において急性心臓障害(ACD)を予測、診断、または監視する方法であって:ACDの開始の2時間以内、または、ACDの提示の2時間以内に採取された生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、前記BNP−SPレベルを、コントロールのBNS−SPレベルと比較することを含み、コントロールレベルよりも高いBNP−SPレベルはACDであることを示す、方法を提供する。
【0138】
別局面において、本発明は、対象において急性心臓障害(ACD)の処置に対する反応を監視する方法であって、ACDの開始の2時間以内、または、ACDの提示の2時間以内に該対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、前記BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、コントロールレベルに対する、BNP−SP測定レベルの変化は処置に対する反応を示す、方法を提供する。
【0139】
心臓移植拒絶エピソードの予測または診断、肺起因性の呼吸困難(呼吸窮迫)と循環起因性の区別に、proBNP27−102、proBNP27−47などのBNP前駆体の使用が可能であることは、当該技術分野で公知である。米国特許出願公開第2005/0244902を参照されたい。したがって、BNP−SPを、心臓組織分析に基づいて心臓移植拒絶の早期マーカーとして、かつ、肺障害と急性心臓障害とを区別するために使用することが可能であることは同様に予測が可能である。
【0140】
したがって、本発明はさらに、対象において心臓移植拒絶エピソードを予測、診断、または監視する方法であって、心臓移植後2時間以内に対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること、および、前記BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、コントロールレベルよりも高いBNP−SP測定レベルは、移植拒絶を示す、方法を提供する。
【0141】
本発明はさらに、対象において肺障害と、急性心臓障害(ACD)とを区別する方法であって、該障害による提示の2時間以内に対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、前記BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、コントロールレベルよりも高いBNP−SP測定レベルはACDを示す、方法を提供する。
【0142】
一実施態様では、本発明は、対象において急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測、診断、または監視する方法であって、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始、または提示後の最初の2時間以内に該対象から得た生物学的なサンプルのBNP−SPレベルを測定することを含む方法を提供する。
【0143】
好ましくは、BNP−SPの測定レベルは、コントロールのBNP−SPレベルと比較され、コントロールレベルよりも高い、BNP−SPの測定レベルは、ACDまたは移植拒絶を示す。
【0144】
熟練した読者であれば、評価目的のためには、マーカーは、参照値またはコントロール値との相関を必要とすることが了解されるであろう。
【0145】
本明細書で用いるコントロールは、BNP−SPサンプルが採取され、BNP−SPの平均レベルが定量される個体または群であってもよい。通常、該個体または群は、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害に罹患することが知られていない、健康な正常個体、または個体群を含む。大抵の個体におけるBNP−SPレベルは、0−15pmol/Lの間にあり、平均コントロールレベルは、約10pmol/Lである。それとは別に、コントロールレベルは、以前に試験された個体または群から得られた、複数の読み取り値に基づいて評価することも可能である。コントロールレベルのもう一つの例は、心臓組織におけるBNP−SPおよびBNPレベルの間の放射性測定値である。対象のBNP−SPレベルは、前記コントロール集団の平均BNP−SPレベルと比べることが可能である。心臓病コントロール集団のBNP−SPレベルは、正常なコントロール集団のBNP−SPレベルよりも1.5から3倍、通常、2から3倍、または2.5から3倍高い場合がある。それとは別に、コントロールは、同じ対象から、より早い時期に得られた、一つ以上の読み取り値、またはそのような読み取り値の平均であってもよい。特定の方法について適切なコントロールおよびコントロールレベルを確認することは、当該技術分野において周知である。
【0146】
開始または提示の2時間以内の期間は、ACD、心臓移植拒絶、または、未診断または疑われるACD/肺障害の開始、または、医療施設における到着後1分から120分(120分を含む)までを含む。好ましくは、測定は、開始または提示後1時間以内(1分から60分(60分を含む)まで)に、開始または提示後、好ましくは5から45分、好ましくは15から40分、好ましくは20から35分、最適には25から30分以内に行われる。
【0147】
コントロール「よりも高い」レベル、すなわち、コントロールからの変化または偏差は、統計的に有意であることが好ましい。コントロールレベル、または平均コントロールレベルよりも高いレベル、それからの偏差または変化は、そのレベルが、コントロールレベルと比べ、5%以上、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上該コントロールレベルと異なる場合、存在すると見なすことが可能である。それとは別に、P≦0.05として統計的有意を計算してもよい。さらに別の方法として、より高レベル、偏差および変化は、アッセイの参照限界または参照間隔を用いることによって決めることが可能である。これらは、直感的評価またはノンパラメトリック法に基づいて計算することが可能である。大雑把に、これらの方法は、0.025および0.975フラクタイルを、0.025*(n+1)および0.975(n+1)として計算する。このような方法は、当該技術分野において周知である。23,24コントロールに不在の、マーカーの存在も、より高レベル、偏差または変化と見なされる。
【0148】
サンプルにおいてBNP−SPレベルを測定する工程は、単一サンプルに対する単一回測定であってもよいし、いくつかのサンプルに対する反復測定であってもよい。したがって、測定は、開始または提示後最初の2時間、好ましくは1時間以内に採取されたサンプルにおいて、BNP−SPの1から20回測定、好ましくは1から10回、好ましくは1から5回、好ましくは1から3回、好ましくは1または2回、好ましくは2または3回の測定を含んでもよい。さらに、前記2時間期間外の、単一回または反復測定も、BNP−SPレベルが、正常なコントロールレベルか、または心臓病コントロールレベルに納まるかを定めるために行ってよい。
【0149】
好ましい一実施態様では、方法は、開始または提示後の最初の1時間以内に採取された1または2サンプルにおいてBNP−SPレベルを測定し、次いで、開始または提示後、または、BNP−SPレベルの初回測定後2から4時間以内、好ましくは2から3時間以内に採取された1または2サンプルにおいてBNP−SPレベルを測定することを含む。
【0150】
前述のように、開始または提示後の最初の2時間以内に測定されるBNP−SPレベルは、正常なコントロールにおいて測定されるBNP−SPレベルよりも、通常4から10倍、よく見られるのは5から8倍高い。既述のように、さらにこの範囲に含まれるものは、4から9、4から8、4から7、4から6、4から5、5から10、5から9、5から8、5から7、5から6、6から10、6から9、6から8、6から7、7から10、7から9、7から8、8から10、8から9、および9から10倍の特異的範囲である。
【0151】
別の実施態様では、サンプルにおける、20から300pmol/L、好ましくは25から250pmol/L、好ましくは30から180pmol/L、好ましくは35から150pmol/L、好ましくは40から120pmol/L、好ましくは40から90pmol/L、および好ましくは45から80pmol/Lの範囲のBNP−SPレベルは、ACD、心臓移植拒絶を示すか、または、ACDを、肺障害から区別する。
【0152】
既述のように、前記範囲はさらに、前記範囲内の任意の数値、例えば、20から180pmol/L、50から200pmol/L、40から130pmol/L、50から100pmol/L、45から160pmol/Lなどを含む。
【0153】
生物学的なサンプルは、BNP−SPが存在するか、または分泌されることが可能である限り、いずれの生物物質であってもよい。サンプルは、任意の組織液または体液、例えば、血液、唾液、腸液、血清、血漿、尿、心膜液、および脳脊髄液を含んでもよいが、ただしこれらに限定されない。好ましくは、生物学的なサンプルは、循環性生物学的なサンプル、例えば、血液、血清、または血漿である。一実施態様では、生物学的なサンプルは心臓組織である。
【0154】
サンプルにおけるマーカーの存在およびその発現レベルは、当該技術分野で公知の方法、例えば、サザーンブロッティング、ノーザンブロッティング、FISH、または、mRNAの転写を定量化する定量的PCR[(Thomas,Pro.NAH,Acad.Sci.USA 77:5201−5205 1980)、(Jain KK,Med Device Technol.2004 May;15(4):14−7)]、または、本発明において提供されるマーカー配列に基づいて適切に標識されたプローブの使用による、インシトゥハイブリダイゼーションによって決定してもよい。
【0155】
したがって、本発明はさらに、サンプルにおいて本発明の核酸分子の存在を検出するアッセイであって:
(a)厳格ハイブリダイゼーション条件下に、該核酸配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブにサンプルを接触させること;および、
(b)サンプルにおいてハイブリダイゼーション複合体の存在を検出すること、
を含む方法を提供する。
【0156】
このハイブリダイゼーションプローブは標識プローブであることが好ましい。標識の例としては、蛍光、化学発光、放射性酵素、およびビオチン−アビジン標識が挙げられる。標識化、および標識プローブの可視化は、前述のものなど、当該技術分野で公知の方法にしたがって実行される。
【0157】
好都合とするため、核酸プローブは、固相支持体、例えば、樹脂(ポリサッカリドなど)、炭水化物(セファローズなど)、プラスチック(ポリカーボネートなど)、およびラテックスビーズなどの上に固定されてもよい。
【0158】
前述のように、核酸分子プローブは、RNA、cDNA、またはDNA分子であることが好ましい。好ましいプローブとしては、配列番号:14、16、18、20、および22が挙げられる。
【0159】
厳格ハイブリダイゼーション条件は前述の通りである。
【0160】
核酸マーカーの発現レベルは、当該技術分野で公知の技術、例えば、RT−PCR、および、SDS−PAGEを含む電気泳動技術を用いて決定してよい。これらの技術を用いて、対象サンプルにおける、本発明の核酸分子のDNAまたはcDNA配列は増幅され、DNAまたはcDNAまたはRNAのレベルは測定される。
【0161】
別法では、DNA、cDNA、またはRNAレベルは、増幅無しに直接サンプルにおいて測定してもよい。
【0162】
現在好ましい方法は、ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析である。ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析において使用されるプローブは、本発明において特定されるマーカー配列に基づいて調製してもよい。プローブは、好ましくは参照配列の内の、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも18、少なくとも24、少なくとも30、少なくとも36、好ましくは少なくとも42、好ましくは少なくとも51、好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも70以上の連続ヌクレオチドを含む。
【0163】
それとは別に、発現レベルは、該核酸配列に対して特異的なプライマーによる、逆転写利用PCR(RT−PCR)アッセイを用いて測定してもよい。望むなら、サンプル中のマーカーレベルの比較は、その発現が、測定されるパラメータまたは条件から独立する、コントロール核酸分子を参照して行うことも可能である。コントロール核酸分子とは、そのレベルが、障害または移植拒絶部位と、健康状態との間で変わらない分子を指す。コントロール分子のレベルは、比較される複数集団におけるレベルを正規化するために使用することが可能である。そのようなコントロール分子の一例は、GAP−DHである。本発明はマーカーは、障害と共にレベルを変える。
【0164】
一実施態様では、測定工程は、BNP−SPと、BNP−SP、またはその断片または変異体に選択的に結合する結合因子との間の結合を検出することを含む。結合因子は、生物事象の他のマーカー、より詳細にはBNPまたはNT−BNPとの交差反応性が低いことが好ましい。結合因子は、抗体またはその断片であることが好ましい。
【0165】
本発明はさらに、そのような抗体、または、該抗体の断片に関する。BNP−SPに結合する抗体、またはその断片または変異体は、いずれの形態をとってもよく、例えば、全てのクラスのポリクロナール、モノクロナール、単一鎖、ヒト、ヒト化抗体、および、遺伝子組み換えによって生産されるキメラ抗体などであってもよい。さらに含まれるのは、BNP−SP、またはその断片または変異体によって、マウス、ラット、またはウサギなどの動物を免疫化することによって得られる抗血清である。
【0166】
さらに、抗体の断片または修飾抗体も、それが、BNP−SP、またはその断片または変異体に結合する限り、本発明において使用してよい。抗体断片は、Fab、F(ab’)、F(ab’)、およびFc、またはFv断片、または、H鎖およびL鎖のFv断片が、適切なリンカーによって連結される単一鎖Fv(scFv)(Huston et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−83(1988))であってもよい。抗体の“Fc”部分とは、重鎖定常域ドメイン:CH1、CH2、およびCH3の、一つ以上を含むが、重鎖の可変域ドメインを含まない、免疫グロブリン重鎖の部分を指す。
【0167】
抗体の調製法は、当該技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane(1998)11を参照されたい)。もっとも普通に使用される抗体は、適切な宿主哺乳動物を免疫化することによって生産される。BNP−SPを含む融合タンパクも、免疫原として使用することが可能である。
【0168】
抗体は、種々の分子、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)に接合させることによって修飾してもよい。修飾抗体は、抗体を化学的に修飾することによって取得することも可能である。これらの修飾法は、当該技術分野では常法である。
【0169】
それとは別に、抗体は、非ヒト抗体から得られる可変域、および、ヒト抗体から得られる定常域の間のキメラ抗体、あるいは、非ヒト抗体由来の相補性決定域(CDR)、ヒト抗体由来の枠組み構造領域(FR)、および定常域を含む、ヒト化抗体として取得されてもよい。このような抗体は、当該技術分野で公知の方法を用いて調製することが可能である。
【0170】
簡単に言うと、ポリクロナール抗体の調製法は、熟練した当業者には公知である。哺乳動物において、例えば、免疫化因子と、要すればアジュバントを1回以上注入することによってポリクロナール抗体を惹起することが可能である。通常、この免疫化因子および/またはアジュバントは、複数回の皮下または腹腔内注射によって該哺乳動物に注入される。免疫化因子は、BNP−SP、またはその断片または変異体、またはその融合タンパクを含んでもよい。免疫化される哺乳動物において免疫原性であることが知られるタンパクに対し、この免疫化因子を接合することは有用である場合がある。このような免疫原性タンパクの例としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン、牛血清アルブミン、牛チログロブリン、および大豆トリプシンインビターが挙げられる。用いてもよいアジュバントの例としては、例えば、フロインドの完全アジュバント、およびMPL TDMアジュバント(モノフォスフォリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコール酸)が挙げられる。免疫化プロトコールは、当業者であれば、無用の実験を要することなく選択することが可能である。
【0171】
モノクロナール抗体は、当該技術分野で周知のハイブリドーマ法を用いて調製してよい。例えば、Kohler and Milstein,197512、および米国特許第4,196,265号を参照されたい。ハイブリドーマ細胞は、適切な培養媒体において培養してもよいが、それとは別に、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物において腹水としてインビボで育成してもよい。好ましい恒久細胞系統は、マウス骨髄細胞系統であるが、これは、American Type Culture Collection,Virginia,USAから入手することが可能である。対象抗体を分泌する恒久細胞系統を選別するためのスクリーニングに免疫アッセイを用いてもよい。BNP−SP、またはその断片または変異体の配列をスクリーニングに使用してもよい。
【0172】
したがって、本発明においてさらに考慮の対象となるものは、BNP−SP特異的モノクロナール抗体を分泌することが可能な恒久細胞系統である、ハイブリドーマである。
【0173】
ハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクロナール抗体の結合特異性を決めるための周知の手段としては、例えば、免疫沈降法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相酵素免疫測定法(ELISA)、およびウェスタンブロット(Lutz et al.,Exp.Cell.Res.175:109−124(1988))が挙げられる。免疫化された動物からのサンプルは、ポリクロナール抗体の存在に関して同様にスクリーニングされてもよい。
【0174】
検出をやり易くするために、本発明の抗体および断片は、検出可能マーカー、例えば、蛍光、生物発光、および化学発光化合物、並びに、放射性同位元素、磁気ビーズ、およびアフィニティー標識(例えば、ビオチンおよびアビジン)によって標識してもよい。結合の間接測定を可能にする標識の例としては、基質が、蛍光着色産物を提供する酵素が挙げられ、適切な酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼなどが挙げられる。蛍光色素(例えば、テキサスレッド、フルオレセイン、フィコビリタンパク、およびフィコエリスリン)は、蛍光活性化セルソーターと共に使用することが可能である。標識化技術は当該技術分野で周知である。
【0175】
細胞によって分泌されるモノクロナール抗体は、通例の免疫グロブリン精製手順、例えば、タンパクAセファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーによって、培養媒体または腹水から単離または精製することが可能である。
【0176】
モノクロナール抗体または断片はさらに、組み換えDNA手段によって生産することも可能である(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。DNA修飾、例えば、マウスの相同配列の代わりに、ヒトの重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列による置換も可能である(上記米国特許第4,816,567号)。抗体は、1価抗体であってもよい。1価抗体の調製法は当該技術分野で周知である。キメラ2価抗体の生産も、本発明の考慮の対象とされる。
【0177】
本発明の抗体はさらに、ヒト化抗体、またはヒト抗体を含んでもよい。ヒト化抗体は、ヒトの免疫グロブリンであって、該レシピエントの相補性決定域(CDR)の残基が、非ヒト動物種のCDRの残基によって置換される免疫グロブリンを含む。ウサギ、ラット、およびマウスなどの非ヒト起源のヒト化抗体の生産は周知である。13、14、15
ヒト抗体はさらに、当該技術分野で公知の種々の技術、例えば、ファージディスプレイライブラリー16;およびトランスジェニック法、例えば、Neuberger 199617;およびVaughan et al,199818を参照、を用いて生産することが可能である。
【0178】
二重特異性抗体も有用である場合がある。これらの抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対して結合特異性を有する、モノクロナールの、好ましくは、ヒト、またはヒト化抗体である。例えば、BNP−SP、またはその変異体または断片、および、preproBNP、BNP、CK−MB、TnT、TnI、およびミオグロビンからなる群より選択される抗原である。二つよりも大きい特異性を有する抗体、例えば、3重特異性も、本発明の考慮の対象とされる。
【0179】
2重特異性抗体の作製法は、当該技術分野において公知である。例えば、Milstein and Cuello 198319,Suresh et al.,198620、およびBrennan et al.,198521を参照されたい。
【0180】
この抗体によって特異的に結合されるBNP−SPは、前述のBNP−SP、またはその抗原性変異体または断片である。
【0181】
望ましくは、抗体は、BNP−SPのN末端またはC末端に結合する。結合因子が選択的に結合する、特異的抗原性ペプチドの例としては、BNP−SP(1−10)配列番号13、BNP−SP(1−17)配列番号15、BNP−SP(12−23)(配列番号17)、BNP−SP(17−26)配列番号19、およびBNP−SP(1−26)配列番号21が挙げられる。
【0182】
BNP−SPの結合は、当該技術分野で公知の任意の手段、例えば、特異的(抗体利用)および非特異的(例えばHPLC固相)を含む手段によって検出することが可能である。もっとも一般的には、本発明の抗体は、前述のELISAまたはRIAなどのアッセイによって検出される。単独、または、クロマトグラフィー方式などの非特異的結合と組み合わせた、競合結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、非競合アッセイ、蛍光免疫アッセイ、免疫蛍光アッセイ、またはラジオイムノアッセイ、発光アッセイ、化学発光アッセイ、および質量分析、例えば、表面強調レーザー脱離イオン化(SELDI)、エレクトロスプレイイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、フーリエ変換イオンサイクロトン共鳴質量分析(FTICR)も実行可能である。
【0183】
BNP−SP/抗体複合体の洗浄および単離をやり易くするために、固相基質に対して抗体を固定可能とすると好都合である。固相支持体に対する抗体の結合は、当該技術分野で公知の技術を用いて実現することが可能である。例えば、Handbook of Experimental Immunology,4th edition,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1986)を参照されたい。抗体のために有用な固相基質としては、ガラス、ナイロン、紙、およびプラスチックが挙げられる。同様に、BNP−SPは、固相基質、例えば、吸着性シリカ、または樹脂粒子、または、必要に応じて、イオン交換、逆相(例えば、C18コーティング)、または他の物質をコートするか、誘導体形成させたシリコンチップに吸着させることも可能である。基質は、ビーズ、プレート、チューブ、スチック、またはバイオチップの形状を取ってもよい。番地割り当て可能な地点、および点状マイクロタイタープレートを有するバイオチップまたはプレートは特に有用である。使用に好ましいのはさらに、複数の分析対象を指向する抗体を含むビーズを用いて、単一サンプルにおいてそれら複数の分析対象のレベルを測定する、マルチシステムである。測定される分析対象は、BNP−SP、またはその変異体または断片ばかりでなく、他の心臓マーカーを含んでもよい。本発明において使用される、好適な多重ビーズシステムの一例は、Luminex Fluorokine Multianalyte Profiling systemである。
【0184】
抗体アッセイ法は、当該技術分野において周知であって、例えば、米国特許第5,221,685号、米国特許第5,310,687号、米国特許第5,480,792号、米国特許第5,525,524号、米国特許第5,679,526号、米国特許第5,824,799号、米国特許第5,851,776号、米国特許第5,885,527号、米国特許第5,922,615号、米国特許第5,939,272号、米国特許第5,647,124号、米国特許第5,985,579号、米国特許第6,019,944号、米国特許第6,113,855号、米国特許第6,143,576号を参照されたく、未標識アッセイについては、米国特許第5,955,377号および米国特許第5,631,171号を参照されたく、さらに、アッセイ方式および条件の記述に関しては、Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques pp147−158(CRC Press,Inc 1987),Harlow and Lane (1998)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Publications,New York、および米国特許出願公開第2005/0064511号を参照されたい。なお、上記文献全てについて、その全体を引用により本明細書に含める。
【0185】
免疫アッセイの分析専門業者は周知であり、中でも、十分に記載される22Beckman Access、Abbott AxSym、Roche ElecSys、およびDade Behring Status systemsが挙げられる。
【0186】
BNP−SPおよび抗体が結合して複合体を形成する様は、直接または間接に検出することが可能である。直接的検出は、標識、例えば、蛍光、発光、放射性核種、金属、染料などを用いて実行する。間接的検出としては、ジゴキシンなどの検出可能な標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリフォスファターゼなどの酵素を結合させ、標識されたBNP−SP抗体を形成し、次いで、検出試薬を加えることによって該標識を検出することを含む。
【0187】
当該技術分野で公知のように、西洋ワサビペルオキシダーゼは、例えば、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(OPD)などの基質、および過酸化水素と共にインキュベートして着色産物を生成し、その吸光度を測定することが可能であるし、あるいは、ルミノールおよび過酸化水素とインキュベートして化学発光を生成し、それを光度計で測定することが可能である。ビオチンまたはジゴキシンは、それに対し強力に結合する結合剤と反応させることが可能である。例えば、タンパク質アビジンおよびストレプトアビジンは、ビオチンに対して強力に結合する。次に、さらに別の、測定可能な標識を、該タンパクとの直接的反応によるか、または、一般的に利用が可能な、MCSおよびカルボジイミドなどの架橋剤の使用、またはキレート剤の添加によって、該タンパクに対し共有的に結合または連結させる。
【0188】
一般に、複合体は、複合体未形成試薬から、例えば、遠心によって分離される。抗体が標識される場合、複合体の量は、検出される標識の量に反映される。それとは別に、BNP−SPを、抗体に結合させることによって標識し、競合アッセイにおいて、該抗体標識BNP−SPを、未標識BNP−SPを含む生物学的なサンプルとインキュベートし、結合された標識BNP−SPの低下を測定することによって検出してもよい。他の免疫アッセイ、例えば、サンドイッチアッセイを使用してもよい。
【0189】
一例では、通常一晩18から25時間4℃で、または1から2から4時間25℃から40℃で抗体と接触させた後、該結合因子(抗体)と結合させた標識BNP−SPを、未結合標識BNP−SPから分離する。液相アッセイでは、分離は、セルロースまたは磁気物質などの固相粒子に結合させた、抗ガンマグロブリン抗体(二次抗体)の付加によって実現してもよい。この二次抗体は、一次抗体に使用される動物種とは異なる動物種において惹起され、この一次抗体に結合する。したがって、全ての一次抗体は、二次抗体を介して固相に結合する。この複合体は、遠心または磁気牽引によって溶液から取り出され、結合標識ペプチドは、それに結合した標識を用いて測定される。遊離標識から結合標識を分離するための他の選択肢としては、溶液から沈殿する、免疫複合体の形成、ポリエチレングリコールによる抗体の沈殿、遊離標識ペプチドの木炭に対する結合、および、ろ過の遠心による溶液からの取得が挙げられる。分離された結合または遊離相における標識は、上述のものなど適切な方法によって測定される。
【0190】
競合結合アッセイは、上述のものよりも簡単に実行され、したがって好ましい固相アッセイとして構成することが可能である。この種のアッセイは、ウェル付きプレート(一般に、ELISAまたは免疫アッセイプレートと呼ばれる)、固相ビーズ、またはチューブの表面を使用する。一次抗体は、プレート、ビーズ、またはチューブの表面に、吸着されるか、または共有的に結合されるか、あるいは、プレートに吸着または共有的に結合される、二次抗ガンマグロブリン、またはFc域抗体を介して間接的に結合される。サンプルおよび標識ペプチド(上述と同じ)は、一緒にまたは継時的にプレートに加えられ、サンプル中のBNP−SPと標識ペプチドの間で抗体結合をめぐる競合が起こることを可能とする条件下でインキュベートされる。次いで、未結合標識ペプチドは吸引除去され、プレートは洗い濯がれ、プレートに付着する、抗体結合標識ペプチドが残される。次に、この標識ペプチドは、前述の技術を用いて測定することが可能である。
【0191】
サンドイッチ型アッセイは、特異性、スピード、および比較的広い測定範囲のためにより好まれる。この種のアッセイでは、固相競合結合アッセイに関して前述したように、BNP−SPに対する一次抗体の過剰量が、吸着、共有結合、または、抗Fcまたはガンマグロブリン抗体を介して、ELISAプレート、ビーズ、またはチューブに付着される。サンプル液または抽出物を、固相に付着させた抗体に接触させる。抗体は過剰なので、この結合反応は通常急速である。さらに、BNP−SPに対する二次抗体が、サンプルと共に、一次抗体と同時に、または継時的にインキュベートされる。この二次抗体は、BNP−SPにおいて、一次抗体の結合部位とは異なる部位に結合するように選ばれる。これら二つの抗体反応によって、サンプルのBNP−SPが二つの抗体の間に挟まれるサンドイッチが得られる。二次抗体は、通常、競合結合アッセイで上に詳述したように、直ぐに測定できる化合物によって標識される。それとは別に、二次抗体に特異的に結合する標識三次抗体をサンプルに接触させてもよい。未結合物質を洗い流した後、結合標識抗体は、上に競合結合アッセイに関して概説した方法によって測定および定量することが可能である。
【0192】
さらに、ディップスティック型アッセイを使用してもよい。これらのアッセイは当該技術分野において周知される。このアッセイは、例えば、特異的抗体を付着させた小型の粒子、例えば、金、または着色ラテックス粒子を用いてもよい。該粒子をあらかじめ負荷させた膜または紙の一端に、測定される液体サンプルを加えて放置し、ストリップにそって移動するにまかせる。粒子に対する、サンプル中の抗原の結合は、粒子に対する結合因子、例えば、抗原または抗体を含む、捕捉部位に対する粒子の結合能を修飾し、さらにストリップにそって移動する。この部位における着色粒子の蓄積は、発色をもたらすが、サンプル中の競合抗原の濃度に依存する。他のディップスティック法は、サンプル中の抗原を捕捉するために、紙または膜ストリップに共有的に結合した抗体を用いてもよい。西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素と結合した二次抗体による後続反応、および基質とのインキュベーションは発色をもたらし、蛍光または化学発光のアウトプットによってサンプル中の抗原の定量化が可能となる。
【0193】
下記の実施例で論じるように、ラジオイムノアッセイ(RIA)は、近年好まれる検査技術である。一RIAでは、放射性標識抗原および未標識抗原が、抗体との競合結合に用いられる。一般的放射性標識としては、125I、131I、H、および14Cが挙げられる。
【0194】
特異的抗体によるBNP−SPの沈殿、および放射性標識抗体結合タンパクを含むラジオイムノアッセイは、サンプル中のBNP−SP量に比例するものとして、該沈殿物における標識抗体の量を測定することを可能とする。それとは別に、標識BNP−SPを生成し、未標識抗体結合タンパクを使用する。次に、試験される生物学的なサンプルを加える。標識BNP−SPのカウントの低下は、サンプル中のBNP−SPの量に比例する。
【0195】
RIAにおいてはさらに、遊離BNP−SPから結合したBNP−SPを分離することが可能である。これは、二次抗体によってBNP−SP/抗体複合体を沈殿することを含む。例えば、もしもBNP−SP抗体複合体が、ウサギ抗体を含むのであれば、ロバ抗ウサギ抗体を用いて該複合体を沈殿させ、標識の量をカウントすることが可能である。例えば、LKBでは、Gammamaster counterが使用される。Huntら22を参照されたい。
【0196】
本発明の方法はさらに、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の、一つ以上の非BNP−SPマーカーのレベルを測定することを含む。他の、一つまたは複数のマーカーのレベルは、コントロール集団の平均コントロールレベルと比較してもよい。平均コントロールレベルからの、測定レベルの偏差は、ACD、または心臓移植拒絶に関して予測的または診断的である。
【0197】
これまで本発明の方法は、ACDまたは心臓移植拒絶を示す、BNP−SPの比較的高いレベルまたは増加に関して記述されてきたが、ある事象または障害では、BNP−SPのレベルは降下することも可能である。平均レベルを下回る偏差を測定することも考慮の対象とされる。
【0198】
本発明において特に有用な、その他のマーカーとしては、トロポニンT、トロポニンI、クレアチンキナーゼMB、ミオグロビン、BNP、NT−BNP LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、H−FABP、エンドテリン、アドレノメジュリン、レニン、およびアンギオテンシンIIが挙げられる。これらのマーカーは全て、心不全または心臓病に関与する。BNP−SPを他のマーカーと相関させることは、BNP−SPの予測、診断、または監視価値を増大させることが可能である。
【0199】
ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の場合、既知の心臓マーカーとBNP−SPマーカーレベルを組み合わせることは、患者の、その後の結果に関する予測的または診断的価値を増す可能性がある。
【0200】
いくつかのペプチドマーカーの分析は、単一試験サンプルを用いて、同時に、または別々に実行することが可能である。同時で、二つ以上の複数部位方式アッセイが好ましい。多重の、ビーズ、マイクロアッセイ、またはバイオチップシステムは特に有用である。ビーズ、アッセイ、またはチップは、いくつかの、不連続で、多くの場合番地割り当て可能な地点であって、BNP−SPを含む一つ以上のマーカーに対する抗体を含む地点を有することが可能である。この一つ以上のマーカーは、一つを超えるBNP−SPマーカーを含む。例えば、BNP−SPのN末端およびC末端断片について定量し、その定量結果を組み合わせることは有用である場合がある。このような、他の、多くのマーカーの組み合わせが実行可能である。米国特許出願公開第2005/0064511号は、本発明において有用なチップおよび技術に関する記述を提供する。Luminexは、本発明において有用な多重ビーズシステムを提供する。
【0201】
対象を監視している際、時間経過と共にいくつかの生物学的なサンプルを採取してもよい。連続サンプリングによって、マーカーレベル、特にBNP−SPの経時的変化を測定することが可能になる。サンプリングによって、治療スケジュールを合わせてもよい、事象、事象の重度の近似開始時点、用いる治療スケジュールに対する反応、および長期の予後判定に関する情報を得ることが可能である。分析は、例えば、救急搬送、医師の診察室、提示、入院時、外来診療、または通例の健康診断における医療実施時点において実行してよい。
【0202】
本発明の方法はさらに、一つ以上の危険因子、例えば、ただしこれらに限定されないが、年齢、体重、性別、および、心臓病などの事象に関する家族歴の分析と組み合わせてもよい。試験結果はさらに、本発明の方法と組み合わせて使用することも可能である。例えば、ECG結果および臨床検査である。一つ以上の、別の危険因子または試験結果と一緒に、BNP−SPの循環レベルにおける統計的に有意な上昇を用いると、対象の状態をより正確に診断または予後判定できる場合がある。
【0203】
本発明の方法はさらに、治療ガイドとして使用することが可能である。例えば、最初にどの治療を行うべきか、治療監視、治療の陽性作用、または有害作用、例えば、抗有糸分裂剤の心臓毒性の検出、および、必要とされる場合の治療スケジュールの調整などを何時行うべきかは、結果に依存する。これは、患者における、短期的、中期的、および長期的結果を改善することが可能である。治療ガイドに関しては、Troughtonらを参照されたい。
【0204】
急性心臓障害
本出願人らは、完全長BNP−SP分子(1−26)、およびその各種断片の濃度が、急性心臓障害と関連することを示した。さらに、BNPレベルは、急性心筋梗塞(AMI)を疑われて提示した患者の場合、提示時にその最高点にある。急性心臓障害、特に、急性心虚血症を抱えて提示した患者は、その後、心筋梗塞(MI)を経験する場合もあるし、しない場合もある。MIを経験しない群は、現今の臨床技術およびマーカーではすぐには診断することができない。したがって、本出願人らは始めて、MIに相関する心筋傷害の、有用な、早期特異的マーカーを提供したことになる。これは、有害事象(AE)による心筋障害の早期診断を可能とし、医師が、他の急性冠状動脈症候群からばかりでなく、胸部痛の他の原因からも、これらの症例を区別することを可能とする。例えば、狭心症、消化器病、肺/胸膜障害など。これは、ミオグロビン、CK−MB、TnT、およびTnIなどの、現今の心臓バイオマーカーのレベル上昇を待つために現在経験される6から12時間のウィンドウを著明に短縮する。したがって、より正確な診断および処置をより早く実行することが可能となり、これは、罹患率および死亡率を下げ、よりよい予後結果を与える。
【0205】
本発明は、心臓病患者における再還流処置において特別用途を有する。再還流処置は、通常、経皮的冠状動脈処置(例えば、血管形成術)および/または薬理学的処置を含む。薬理学的処置では、血管再生のために血小板溶解剤が通常使用される。補助治療としては、抗凝固および抗血小板療法が挙げられる。再還流処理は、診断後できるだけ早く用いるともっとも効果的である。診断を加速するためのBNP−SP試験は、再還流処置の速やかな導入を可能とする。さらに、処置の有効性は、反復試験によって監視することが可能であり、治療は、適宜調整することが可能である。再還流処置の包括的議論については、本明細書におけるBraunwaldらを参照されたい。
【0206】
心臓病
本発明の方法はさらに、対象において心臓病を診断または予測するために使用することが可能である。
【0207】
本出願人らは、急性心臓障害を抱える患者において、BNP−SPレベルは、心臓事象後少なくとも6週間は上昇を保つことを示した。心臓病を抱えるか、または心臓病の危険性のある患者は、コントロール集団の、平均コントロールレベルよりも高レベルのBNP−SPを示すことも同様に予測可能である。本出願人らは、BNP−SPのレベルは、BNPと違って、集団の年齢によって左右されないことを示した。このことは、BNP−SPが、心臓病のマーカーとして広い用途を持つことを示唆する。
【0208】
心臓移植拒絶
本発明はさらに、心臓移植、一般に、心臓同種移植、通常の組織バイオプシーによる拒絶の、移植中および後におけるBNP−SP測定による監視において用途を有する。コントロールレベルに対する、心臓移植後2時間以内に測定されたBNP−SPレベルの増加は、拒絶発作について予測的または診断的である場合がある。
【0209】
本発明はさらに、急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の開始の2時間以内、または提示の2時間以内に対象から得られた生物学的なサンプルにおけるBNP−SPのアッセイであって、公知の任意の方法を用いて、該サンプルにおけるBNP−SPレベルを検出および測定することを含むアッセイを提供する。このアッセイはインビトロアッセイであることが好ましい。このような方法としては、前述の公知のアッセイ技術全ての外、ゲル電気泳動技術、ウェスタンブロット、気相スペクトロスコピー、原子間力顕微鏡検査、表面プラズモン共鳴、質量分析が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。23
一実施態様では、アッセイは、本発明のBNP−SP核酸配列の一つ以上に結合する、一つ以上の核酸配列を含む。本発明の核酸配列から、きわめて広範囲のセンスおよびアンチセンスプローブおよびプライマーを設計することが可能である。BNP−SP配列の発現レベルは、前述の、当該技術分野で公知の技術を用いて特定される。アレイは、固相基質、例えば、米国特許第5,744,305号に記載されるような「チップ」であってもよいし、ニトロセルロース膜であってもよい。
【0210】
さらに、本発明のBNP−SPマーカーによって発現されるタンパクは、アッセイで用い、結果を、正常なコントロールサンプルにおいて発現される同じタンパクの発現レベルと比較することも可能である。タンパクの有無および量は、当該技術分野で公知で、前述したアッセイ方式を用いて評価してもよい。
【0211】
サンプルにおけるBNP−SPの存在は、本発明の抗体などの結合因子に対してBNP−SPを結合させ、結合したBNP−SPの量の存在を測定することによって検出するのが好ましい。
【0212】
前述のように、その変異体および断片を含むBNP−SPに対して選択的な抗体は、本発明のさらに別の一局面を形成するが、該抗体は、前述の技術によって調製してもよい。抗体は、本発明の方法およびアッセイにおいて有用である。
【0213】
さらに別局面では、本発明は、急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測、診断、または監視するためのキットであって、本発明のBNP−SP結合因子を含み、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始後、またはその提示の2時間以内に対象から得た生物学的なサンプルとともに使用されるキットを提供する。
【0214】
本発明はさらに、急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測、診断、または監視するためのキットであって、0.1から500pmol/L、好ましくは1から400pmol/L、好ましくは10から350pmol/L、好ましくは20から300pmol/L、好ましくは25から250pmol/L、好ましくは30から180pmol/L、好ましくは35から150pmol/L、好ましくは40から120pmol/Lの範囲のBNP−SPレベルを測定するように較正されるキットを提供する。
【0215】
アッセイの較正は、当該技術分野で公知の技術、例えば、既知レベルのBNP−SPを含有する血液サンプル、または、それぞれに、異なる既知のレベルのBNP−SPを含有する、一組の較正体にしたがって実行することが可能である。診断キットに使用される試験ストリップは、通常、製造時に較正される。例えば、米国特許第6,780,645号を参照されたい。このキットは、生物学的なサンプルにおけるBNP−SPレベルを測定するのに有用である。検出試薬は、BNP−SP、または該BNP−SPマーカーの断片に対して相補的なオリゴヌクレオチド配列であってもよいし、あるいは、該マーカーによってコードされるポリペプチドに結合する抗体であってもよい。試薬は、前述の固相基質に結合されていてもよいし、あるいは、それらを基質に結合させるための試薬と共にパックされてもよい。固相マトリックスまたは基質は、全て前述した通りの、ビーズ、プレート、チューブ、ディップスティック、ストリップ、またはバイオチップ形状を取ってもよい。
【0216】
検出試薬は、洗浄試薬、および結合抗体の検出が可能な試薬(例えば、標識二次抗体)、または、標識抗体との反応が可能な試薬を含む。
【0217】
キットはさらに、コントロール試薬(陽性および/または陰性)、および/または、核酸または抗体を検出するための手段を含むと好都合である。キットにはさらに、使用案内、例えば、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始後または提示の2時間以内に対象から生物学的なサンプルを採取すること、該サンプルにおいてBNP−SPのレベルを測定すること、それをコントロールレベルと比較すること、および、結果を心臓状態と関連させることが含められてもよい。一般に、コントロールに対する、BNP−SPマーカーレベルの上昇は、ACD、または心臓移植拒絶、または、肺障害ではなくACDであることを示す。
【0218】
もっとも一般的には、キットは、当該技術分野で公知のアッセイに相応しい方式を取るが、比較的一般的には、当該技術分野で公知の、PCR、ノーザンハイブリダイゼーション、またはサザーンELISAアッセイ用の方式を取る。
【0219】
キットはさらに、ACD、移植拒絶、またはACD/肺障害のための、一つ以上の追加マーカーを含んでもよい。ACSの場合、追加マーカーとしては、トロポニンT、トロポニンI、クレアチンキナーゼMB、ミオグロビン、BNP、NT−BNP、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、H−FABP、エンドテリン、アドレノメジュリン、レニン、およびオングロテンシンIIが挙げられる。一実施態様では、これらのマーカーの全てがキットの中に含まれる。
【0220】
キットは、一つ以上の容器から構成され、さらに、採集装置、例えば、瓶、バッグ(例えば、静脈内輸液バッグ)、バイアル、シリンジ、および試験管を含んでもよい。少なくとも一つの容器は、ACD(特にACS)、移植拒絶、またはACD/肺障害を予測、診断、監視するのに有効な産物を保持する。この産物は、通常、本発明の核酸分子、ポリペプチド、または結合因子、または、これらの内のいずれかを含む組成物である。好ましい実施態様では、容器の上の、または容器と関連づけられる案内またはラベルは、組成物が、ACD(特に、ACS)、移植拒絶、またはACD/肺障害の予測、診断、または監視のために使用されることを示す。他の成分として、針、希釈剤、およびバッファーを含んでもよい。通常、キットは、薬学的に受容可能なバッファー、例えば、リン酸バッファー生理的食塩水、リンゲル液、およびデキストロース液を含む少なくとも一つの容器を含んでもよい。
【0221】
BNP−SPに選択的に結合する結合因子が、キットに含まれることが望ましい。好ましくは、この結合因子は抗体である。アッセイおよびキットに使用される抗体は、モノクロナールでもポリクロナールでもよく、前述の、任意の哺乳動物において調製されてもよい。抗体は、本発明のBNP−SP核酸配列、BNP−SP(1−26)によってコードされるか、または示される天然ペプチド、またはそれに基づく合成ペプチドに対して調製されてもよく、あるいは、本発明のBNP−SPペプチドをコードする核酸配列に対して融合される外来配列に対して惹起されてもよい。
【0222】
一キット実施態様では、BNP−SP検出試薬は、少なくとも一つのBNP−SP検出部位を形成するために、多孔性ストリップなどの固相基質の上に固定される。多孔性ストリップの測定または検出領域は、複数の検出部位、例えば、BNP−SP検出試薬を含む検出部位を含んでもよい。これらの部位は、バー、クロス、ドット、またはその他の配列として配置してもよい。試験ストリップはさらに、陰性および/または陽性コントロール用の部位を含んでもよい。それとは別に、コントロール部位は、異なるストリップの上に設けてもよい。この異なる検出部位は、異なる量の、固定核酸または抗体、例えば、第一検出部位には比較的高い量、後続部位にはより低い量を含んでもよい。試験生物学的なサンプルを添加した場合、検出可能な信号を示す部位の数は、該サンプル中に存在するBNP−SPの量に関する定量的表示を与える。
【0223】
さらにキットの中に含まれてもよいものとして、サンプル分析用デバイスであって、サンプル試験を実行するための適切な成分(マーカー、抗体、および試薬)を含む、ディスポーザブル試験カートリッジを含むデバイスがある。このデバイスは、試験ゾーンおよび試験結果ウィンドウを含むと好都合である。免疫クロマトグラフィーカートリッジは、このようなデバイスの例である。例えば、米国特許第6,399,398号;米国特許第6,235,241号、および米国特許第5,504,013号を参照されたい。
【0224】
それとは別に、デバイスは、測定されるマーカーのインプット、保存、および、コントロールレベルおよび他のマーカーレベルに対する該測定マーカーレベルの評価を可能とする電子デバイスであってもよい。米国特許出願公開第2006/0234315号は、そのようなデバイスの例を提示する。
【0225】
本明細書では、特許明細書、他の外部文書、またはその他の情報源に対して参照がなされてきたが、これは、一般に、本発明の特徴を議論するための背景を示すためである。特に別様に発言しない限り、このような外部文書に対する参照は、このような文書、または、このような情報源が、いかなる法的措置においても、従来技術である、または、当該技術分野における、通常の一般的知識の一部を形成するものであることの承認と見なしてはならない。
【実施例】
【0226】
次に、下記の実施例を非限定的に参照しながら、本発明を具体的に説明する。
【0227】
(実施例1)
方法
ヒト・プロトコールは全て、ニュージーランド保健省のUpper South Regional Ethics Committeeによって承認され、ヘルシンキ宣言にしたがって実行された。
【0228】
化学薬品
合成ヒトBNPシグナルペプチドBNP−SP(1−10)、BNP−SP(17−26)、およびBNP−SP(1−26)(配列番号1)は、Mimotopes(オーストラリア)によって合成された。バッファー試薬は全て、BDHおよび/またはSigmaから購入した。BNP−SP(17−26)は、指向性担体結合のためにC末端をシステインによって伸長させて合成した。BNP−SP(17−26)も、同じペプチドにおいてトレーサー調製のために、C末端をチロシル残基によって伸長させた。
【0229】
ヒト実験
健康なボランチアによる参照範囲実験のために、13名の健康なボランチア(6名の女性、平均年齢43±12歳(範囲22−60歳)、BMI 24.4±3.9kg/m)から、一晩の絶食後、血液サンプルを得た。
【0230】
急性心臓傷害におけるBNP−SP濃度の分析のために、我々は、Christchurch HospitalのCoronary Care Unitの外来に現れた連続10名の患者を調べた(4名の女性、平均年齢70±8歳(範囲59−79歳))。患者は、胸痛の開始後、および、血漿トロポニンT(TnT)の上昇および下降を伴う、ST上昇急性MIの明白な兆候の出現後6時間以内に外来に到着した。5名の患者は以前に高脂質血症と診断され、4名は高血圧、1名は比較的初期のMIを患い、1名は心不全で治療されたことがあり、2名は糖尿病を患っていた。到着時の投薬は、利尿剤(2名の患者)、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(2名の患者)、アスピリン(7名の患者)、βブロッカー(2名の患者)であった。1名の患者は、一次的経皮経管環状動脈形成術(前部MIのためのPTCA)を受け、9名の患者は、血栓溶解術を受けていた。7名の患者は、病院滞在中ECGを受けた。全ての患者について見ると、平均駆出割合は54%であった(範囲、24−75%)。平均入院期間は6.6日であった(範囲、3−15日)。胸痛の開始と、基準線(時間0)の静脈血サンプルの採取の間の時間は、3.9±0.3時間であった。採血のために、18ゲージの静脈カニューレを前腕静脈に挿入した。Coronary Care Unitへの提示時に静脈血サンプル(10ml)を採取し、その後、入院患者として0.5、1、4、8、12、24、および72時間目、および、通院患者として1、6、および12週目に採取した。サンプルは氷上の試験管に取り、+4℃において2700gで5分遠心し、血漿は、分析時まで−80℃で保存した。
【0231】
血漿抽出
血漿サンプルは全て、以前に記載する通り22、SepPakメーカー水、USAカートリッジで抽出し、乾燥し、−20℃で保存し、RIAおよびHPLCに備えた。
【0232】
ホルモン濃度分析
血漿サンプルは、Elecsys2010において不均一免疫アッセイを用い、TnT、CK−MB、およびミオグロビンに関して定量した。そのために、メーカーの標準的プロトコール、Roche Diagnostics18にしたがってルテニウム標識ビオチニル化抗体を用いた。免疫反応性(IR)の、BNPおよびN−BNP濃度を、我々が以前に記載したアッセイ6−8を用いて測定した。BNP−SPは、特異的RIAによって下記のように測定した。
【0233】
BNP−SP RIA
候補のヒトBNP−SP IRペプチドを測定するために、我々は、ヒトのpreproBNP(1−26)シグナル配列(配列番号1)のアミノ酸17−26を指向する新規で、特異的なRIAを作製した。
【0234】
抗体作製
preproBNP Cys25(17−26)を、室温で穏やかに攪拌することによって、PBS(pH7.0)においてマレミド処理N−e−マレイミドカプロイルオキシスクシニミドエステル(EMCS)誘導体形成BSAに結合させた。結合ペプチドを、フロインドのアジュバントで乳化し、2匹のニュージーランド白ウサギに対し、一月間隔で4−5箇所において皮下注射した。注射12日後に、抗体力価を評価するためにウサギから採血し、これを十分なレベルが実現されるまで行った。RIAにおいて、IRは、抗血清を1:6000の最終希釈度で用いて定量した。この抗血清は、ヒトのproBNP(1−13)、proBNP(1−76)、proANP(1−30)、ANP、BNP、エンドテリン1、アンギオテンシンII、アンギオテンシン(1−7)、ウロテンシンII、CNP、proCNP(1−15)、アドレノモジュリン、ウロコルチンIおよびウロコルチンIIと検出可能な交差反応性を持たない(全て<0.01%)。
【0235】
ヨウ素化およびアッセイ法
preproBNP Tyr25(17−26)は、以前に記載した通りに22、クロラミンT法によってヨウ素化し逆相HPLCで精製した。サンプル、標準、放射性トレーサー、および抗血清液は全て、カリウム系アッセイバッファーで希釈した。22100μLの抗血清と混ぜ合わせた、100μLのサンプルまたは標準(0−640pmolのヒトpreproBNP(17−26))から成るアッセイインキュベーション体を、渦巻き攪拌し、4℃で24時間インキュベートした。次に、100μLのトレーサー(4000−5000cpm)を加え、さらに4℃で24時間インキュベートした。遊離および結合免疫活性体は、最終的に、固相二次抗体法(ロバ抗ウサギSac−Cel)によって分離し、Gammamasterカウンター(LKB,Uppsala,Sweden)でカウントした。
【0236】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
血漿抽出物に対し、TSK−Gel G2000SWペプチドカラム(Toyosoda,Tokyo,Japan)において、0.25/ml/分の流速下60%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸のイソクラティック条件を用い、室温でサイズ排除HPLC(SE−HPLC)を行った。分画を1分間隔で収集し、これに対しBNP−SP RIAを行った。SE−HPLCカラムは、デキストランブルー(Vo)、チトクロームC(約Mr 12,400)、ラットBNP45(約Mr 5,000)、アンギオテンシンII(約Mr 1,045)、およびグリシン(Vt)を用いて較正した。次に、SE−HPLC/RIAによって特定されたBNP−SP IRについてさらに、その特性を、Brownlee C18逆相HPLC(RP−HPLC)カラム(Applied Biosystems,CA)で解明した。溶出は、1ml/分の流速下、12%−48%アセトニトリル/0.1%TFAの直線的溶出勾配40分であった。1分時分画を収集し、気流で乾燥し、SE−HPLCと同様にしてRIAを行った。RP−HPLCは、合成preproBNP(17−26)を用いて較正した。
【0237】
統計学的分析
結果は全て平均±SEMで表した。経時データは、反復測定については二元配置分散分析、次いで最小有意差多重比較を用いて分析した。血漿のホルモン濃度の相関分析は、一般的直線回帰モデルを用いて実行した。全ての分析においてP値<0.05を有意と見なした。
【0238】
結果
BNPの26アミノ酸SP、またはそれから得られる断片が、ヒトの循環中に存在するかどうかを決めるために、我々は、preproBNP(1−26)の残基17−26(BNP−SP、図2)を指向する、特異的ラジオイムノアッセイ(RIA)を開発した。血漿抽出物の希釈は、標準曲線と平行関係を示し(図3)、健康なヒトにおけるBNP−SPの血漿濃度は、9.6±2.2pmol/L(n=13)であった。健康なヒトでは、BNP−SP IRの血中濃度は、年齢との有意な相関を示さない(図4)。しかしながら、BNP−SPの血漿レベルは、その近縁ペプチドBNPおよびN−BNPのものと似てはいるものの、いずれのペプチドとも相関しない(図5)。
【0239】
逆相(RP)およびサイズ排除(SE)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるIR血漿BNP−SPの生化学的分析から、我々の特異的RIAは、SE−HPLCでは、ほぼMr 1,000−2,000において、RP−HPLCでは、合成BNP−SPの溶出時間と近似して溶出する、BNP−SP断片(単数または複数)を検出することが示唆される(図6)。
【0240】
IR BNP−SPペプチドがヒトの血漿に存在することを確かめたので、次に我々は、AMIと診断された患者(n=10、図7)においてIR BNP−SPの経時濃度を測定した。IR BNP−SPの最高濃度は、入院時に観察され、6週間に亘って安定レベルにゆっくりと降下した。重要なことは、入院時の平均ピークレベルは、健康な正常ボランチアのレベルよりも7倍高く(範囲4−12倍)、6週まで3倍の高値を持続した。このパターンは、そのピークレベルが、入院後24時間にして始めて現れるBNPおよびN−BNPのそれと対照的である(図7)。ミオグロビンのピーク濃度は、入院後1−2時間で出現したが、一方、TnTおよびCK−MBのピークレベルは、入院後8−12時間まで達成されなかった。
【0241】
(実施例2)
臨床的に安定な、ACSを疑われる32名の患者にカテーテルを挿入し、複数の器官部位から血液サンプルを採取した:挿入部位は、大腿動脈(FA)、肝静脈(HV、下大静脈(IVC)、心臓冠状洞静脈(CS)、および肺動脈(PA)である。血液は、冷却EDTAチューブに採取し、遠心によって血漿から調製し、この血漿に対してBNP−SP RIAを行った。図9は、BNP−SP濃度の、もっとも高い部位が、心臓、特に心室からの血液を排出する静脈、CSであることをはっきりと示す。これは、心臓が、BNP−SP分泌の主要部位であることの強力な証拠であり、従来から心臓でもっとも高いとされているBNPの遺伝子発現パターンと一致する。
【0242】
結論
臨床的に安定な患者におけるBNP−SPの循環濃度は、心臓に由来する。この顕著な心臓分泌は、BNP−SPが心臓ホルモンであるとする考えと一致する。
【0243】
考察
本証拠は、preproBNPのシグナルペプチドが、ACD患者の提示の2時間以内、またはACDの開始の2時間以内に、循環および細胞外空間に存在することを記録する最初のものである。我々は、第1例として、血中のBNP−SPの測定は、急性心臓虚血症および/またはその後の傷害に関する高速バイオマーカーとなる可能性を有すること、第2例として、その事象後のBNP−SP測定は、長期の予後および結果判定に関するマーカーとして有益に利用される可能性を有することを示す。
【0244】
当業者であれば、上述の説明は、例示のために与えられるものであり、本発明はこれらに限定されるものではないことを当然了解されるであろう。
【0245】
(参考文献)
【0246】
【化1】

【0247】
【化2】

【0248】
【化3】

【0249】
このリストおよび本明細書全体を通しての全ての参考文献および引用文献(特許明細書を含む)は、それらの全体が本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において急性心臓障害(ACD)を予測、診断、または監視するための方法であって:
該ACDの開始の2時間以内、または、ACDによる提示の2時間以内に該対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、該BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、該コントロールレベルよりも高いBNP−SP測定レベルはACDを示す、方法。
【請求項2】
対象において急性心臓障害(ACD)の処置に対する反応を監視するための方法であって、該ACDの開始の2時間以内、または、該ACDによる提示の2時間以内に該対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、該BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、該コントロールレベルからのBNP−SP測定レベルの変化は、該処置に対する反応を示す、方法。
【請求項3】
対象において心臓移植拒絶エピソードを予測、診断、または監視するための方法であって、心臓移植後2時間以内に対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること、および、該BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、該コントロールレベルよりも高いBNP−SP測定レベルは、移植拒絶を示す、方法。
【請求項4】
対象において肺障害と、急性心臓障害(ACD)とを区別する方法であって、該障害による提示の2時間以内に対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定すること;および、該BNP−SPのレベルを、コントロールのBNP−SPレベルと比較することを含み、該コントロールレベルよりも高いBNP−SP測定レベルはACDを示す、方法。
【請求項5】
対象において急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測、診断、または監視するための方法であって、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始から最初の2時間以内またはACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害による臨床提示から最初の2時間以内に該対象から得た生物学的なサンプルにおいてBNP−SPレベルを測定することを含む、方法。
【請求項6】
BNP−SPの前記測定レベルが、コントロールのBNP−SPレベルと比較され、該コントロールレベルよりも高いBNP−SPの測定レベルは、ACDまたは移植拒絶を示す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記高いBNP−SPレベルが、前記コントロールレベルに対し統計的に有意な増加を表す、請求項1、3、4、および6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
インビトロ法である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記BNP−SPレベルが、ACDの開始の最初の1時間、または、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害による臨床提示の最初の1時間以内に測定される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記BNP−SPレベルが、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始の最初の30分以内、またはACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害による臨床提示の最初の30分以内に測定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
BNP−SPレベルの反復測定が、好ましくは2から4回の測定で行われる、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
反復測定が、開始または臨床提示または初回測定の2から3時間以内に行われる、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルにおける、20から300pmol/L、好ましくは25から250pmol/L、好ましくは30から180pmol/L、好ましくは35から150pmol/L、好ましくは40から120pmol/L、好ましくは40から90、好ましくは45から80の範囲のBNP−SPレベルは、ACD、または心臓移植拒絶を示すか、あるいは、ACDを肺障害と区別する、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記コントロールレベルよりも4から10倍高い、前記サンプルのBNP−SPレベルは、ACDまたは心臓移植拒絶を示すか、あるいは、ACDを肺障害と区別する、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記コントロールレベルよりも5から8倍高い、前記サンプルのBNP−SPレベルは、ACD、または心臓移植拒絶を示すか、あるいは、ACDを肺障害と区別する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ACDが、急性冠状動脈症候群:ECG記録においてST上昇を伴うAMI、不安定狭心症、および、非ST上昇MI;心虚血症、急性心臓傷害、急性薬物中毒による急性心臓損傷、急性心筋症、および心臓移植拒絶からなる群より選択される、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ACDが、非ST上昇MIである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ACDが、急性心虚血症である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記生物学的なサンプルが、血液、血漿、血清、唾液、間質液、尿、または心臓組織サンプルである、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記測定工程が、BNP−SPと、BNP−SPに選択的に結合する結合因子との間の結合を検出することを含む、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記結合因子が、抗体または抗体断片である、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、またはヒト化抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記結合因子が、モノクロナール抗体、またはモノクロナール抗体断片である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が選択的に結合する前記BNP−SPは、BNP−SP、または、その任意の抗原性断片または変異体である、請求項20から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記断片が、少なくとも5アミノ酸長である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体が、BNP−SPのN−末端またはC−末端に結合する、請求項24または請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記結合因子が選択的に結合する前記BNP−SPが、BNP−SP(1−10)(配列番号13)、BNP−SP(1−17)(配列番号15)、BNP−SP(3−15)(配列番号23)、BNP−SP(12−23)(配列番号17)、BNP−SP(17−26)(配列番号19)、およびBNP−SP(1−26)(配列番号21)からなる群より選択される抗原性ペプチドを含む、請求項24または請求項25に記載の方法。
【請求項28】
BNP−SPの結合が、固相の上に固定される抗体または抗体断片を用いて測定される、請求項20から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
BNP−SPのレベルが、RIA、ELISA、質量分析、蛍光免疫アッセイ(fluoroimmunoassay)、免疫蛍光アッセイ、および免疫放射測定アッセイから選ばれるアッセイを用いて測定される、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
BNP−SPのレベルが、質量分析を用いて測定される、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記質量分析が、SELDI、ESI、MALDI、またはFTICRである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記ACD、または心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の、一つ以上の非BNP−SPマーカーのレベルを測定すること、および、該レベルを、コントロールのマーカーレベルと比較することをさらに含み、該測定レベルの、該コントロールレベルからの偏差は、BNP−SPの該コントロールレベルよりも高いBNP−SPの測定レベルと共に、該ACDに関して予測または診断となるか、あるいは、該ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害を監視するために使用され得る、請求項1から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記非BNP−SPマーカーが、トロポニンT、トロポニンI、クレアチンキナーゼMB、ミオグロビン、BNP、NT−BNP、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、およびH−FABPからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記コントロールレベルからの、測定レベルの前記偏差が、前記非BNP−SPマーカーの、より高い測定レベルを含む、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ACD、心臓移植拒絶、または、ACD/肺障害の開始から2時間以内、または、ACD、心臓移植拒絶、または、ACD/肺障害による臨床提示の2時間以内に対象から得た生物学的なサンプルにおけるBNP−SPのためのアッセイであって、任意の公知の方法を用いて該サンプルにおけるBNP−SPのレベルを検出し、測定することを含む、アッセイ。
【請求項36】
インビトロアッセイである、請求項35に記載のアッセイ。
【請求項37】
BNP−SPの存在が、BNP−SPに選択的に結合する結合因子に対してBNP−SPを結合させることを通じて前記サンプルにおいて検出される、請求項35または請求項36に記載のアッセイ。
【請求項38】
BNP−SPのレベルが質量分析を用いて測定される、請求項37に記載のアッセイ。
【請求項39】
前記質量分析が、SELDI、ESI、MALDI、またはFTICRである、請求項38に記載のアッセイ。
【請求項40】
BNP−SPのレベルが、RIA、ELISA、免疫蛍光アッセイ、および免疫放射測定アッセイから選ばれるアッセイを用いて測定される、請求項37に記載のアッセイ。
【請求項41】
前記測定が、基質に付着するBNP−SP抗体を含むSELDIプローブを提供すること;該抗体を前記生物学的なサンプルに接触させること;および、SELDIを用いて結合したBNP−SPのレベルを測定することを含む、請求項40に記載のアッセイ。
【請求項42】
対象における急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の予測、診断、または監視に使用される、BNP−SP、またはその抗原性断片または変異体に選択的に結合する、BNP−SP結合因子であって、該ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害が、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始の2時間以内、またはACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害による臨床提示の2時間以内に該対象から得られる生物学的なサンプルにおけるBNP−SPの出現によって特徴づけられる、BNP−SP結合因子。
【請求項43】
前記サンプルにおいて、BNP−SPが、20から300pmol/L、好ましくは25から250pmol/L、好ましくは30から180pmol/L、好ましくは35から150pmol/L、および好ましくは40から120pmol/Lの範囲にある、請求項42に記載のBNP−SP結合因子。
【請求項44】
前記サンプルにおいて、BNP−SPが、BNP−SPの平均コントロールレベルよりも4から10倍高いレベルで存在する、請求項42に記載のBNP−SP結合因子。
【請求項45】
BNP−SP(1−10)(配列番号13)、BNP−SP(1−17)(配列番号15)、BNP−SP(12−23)(配列番号17)、またはBNP(17−26)(配列番号19)に選択的に結合する、BNP−SP結合因子。
【請求項46】
前記結合因子が抗体または抗体断片である、請求項42から45のいずれか1項に記載のBNP−SP結合因子。
【請求項47】
前記結合因子が、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、またはヒト化抗体である、請求項46に記載のBNP−SP結合因子。
【請求項48】
対象において急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を評価するための、予後判定、診断、または監視ツールの製造におけるBNP−SP結合因子の使用であって、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始の2時間以内、またはACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害による臨床提示の2時間以内に評価が実行される、使用。
【請求項49】
前記予後判定、診断、または監視ツールが、0.1から500pmol/L、好ましくは1から400pmol/L、好ましくは10から350pmol/L、好ましくは20から300pmol/L、好ましくは25から250pmol/L、好ましくは30から180pmol/L、好ましくは35から150pmol/L、および好ましくは40から120pmol/Lの範囲のBNP−SPレベルを測定するように較正される、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
前記予後判定、診断、または監視ツールが、BNP−SPのコントロールレベルよりも4から10倍高い範囲のBNP−SPレベルを測定するように較正される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
対象における急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の予測、診断、または監視のためのBNP−SP結合因子の使用であって、該予後判定、診断、または監視が、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始の2時間以内、またはACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害による臨床提示の2時間以内に行われる、使用。
【請求項52】
前記予測、診断、または監視が、請求項1から32のいずれか1項に記載の方法を用いて実行される、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記結合因子が、請求項42から47のいずれか1項に記載の結合因子である、請求項48から52のいずれか1項に記載の使用。
【請求項54】
請求項42から47のいずれか1項に記載のBNP−SP結合因子を含む、急性心臓障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測、診断、または監視するためのキットであって、該キットは、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害の開始の2時間以内、またはACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害による臨床提示の2時間以内に対象から得られる生物学的なサンプルとともに使用される、キット。
【請求項55】
請求項42から47のいずれか1項に記載の結合因子を含む、急性心臓障害(ACD)を予測、診断、または監視するためのキットであって、0.1から500pmol/L、好ましくは1から400pmol/L、好ましくは10から350pmol/L、好ましくは20から300pmol/L、好ましくは25から250pmol/L、好ましくは30から180pmol/L、好ましくは35から150pmol/L、好ましくは40から120pmol/Lの範囲のBNP−SPレベルを測定するように較正される、キット。
【請求項56】
前記結合因子が固定される固相をさらに含む、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
開始または臨床提示の2時間以内に得られた前記生物学的サンプルにおいて測定されたBNP−SPレベルから、開始または臨床提示の2時間以内の被験体における、ACD、心臓移植拒絶もしくはACD/肺障害を予測、診断、または監視するための指示をさらに含む、請求項54から56のいずれか1項に記載のキット。
【請求項58】
請求項27に記載されるBNP−SPをコードする核酸分子であって、
該核酸が、
(a)配列番号14;
(b)配列番号16;
(c)配列番号18;
(d)配列番号20;
(e)(a)から(d)のいずれか一つの相補体;
(f)ストリンジェントな条件下に、(a)から(e)のいずれか一つの配列にハイブリダイズすることが可能な、少なくとも15ヌクレオチド長の配列、ただし、その配列は、ccagtgcacaagctgcttggggaggcgagaでも、配列番号22でもない、配列
から選ばれる、核酸分子。
【請求項59】
請求項58の核酸分子を含む遺伝子構築体。
【請求項60】
発現構築体である、請求項59に記載の遺伝子構築体。
【請求項61】
請求項59または請求項60の遺伝子構築体を含むベクター。
【請求項62】
請求項58から61のいずれか1項に記載の遺伝子構築体またはベクターを含む宿主細胞。
【請求項63】
請求項58の核酸分子によってコードされるBNP−SPポリペプチド。
【請求項64】
(a)配列番号13;
(b)配列番号15;
(c)配列番号17;および、
(d)配列番号19;
から選ばれる、BNP−SPポリペプチド。
【請求項65】
請求項64のポリペプチドに選択的に結合する抗体。
【請求項66】
検出可能マーカーによって標識される、請求項65に記載の抗体。
【請求項67】
請求項64に記載のポリペプチドの組み換え生産法であって、
(a)請求項61のポリペプチドを発現することが可能な、請求項59または請求項60の遺伝子構築体を含む宿主細胞を培養する工程;
(b)本発明のポリペプチドを発現する細胞を選択する工程;
(c)該細胞から該発現ポリペプチドを分離する工程;および、必要に応じて、
(d)該発現ポリペプチドを精製する工程、
を含む、方法。
【請求項68】
前記構築体によって前記宿主細胞をトランスフェクトする先行工程を含む、請求項67の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−506145(P2010−506145A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527316(P2009−527316)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/NZ2007/000265
【国際公開番号】WO2008/030122
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(509066477)ユニバーシティー オブ オタゴ (1)
【出願人】(310000989)
【出願人】(310000990)
【出願人】(310001001)
【出願人】(310001012)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
【Fターム(参考)】