説明

バイオメディカルデバイス、ポリマー材料及びそれを含むコンタクトレンズ

(a)可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物から形成されるシリコーンヒドロゲルなどのバイオメディカルデバイスが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
本発明は一般に眼科用レンズなどのバイオメディカルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
シロキシ含有材料から作られる眼科用レンズなどのバイオメディカルデバイスは長年にわたって研究されてきた。このような材料は、一般に、2つの主要なクラス、すなわち、ヒドロゲル及び非ヒドロゲルに細分することができる。ヒドロゲルは水を吸収しそして平衡状態で水を保持し、一方、非ヒドロゲルは評価可能な量の水を吸収しない。それらの含水率に関係なく、ヒドロゲル及び非ヒドロゲルの両方は、比較的に疎水性で非湿潤性の表面を有する傾向がある。
【0003】
ヒドロゲルはコンタクトレンズ及び眼内レンズを含む多くのバイオメディカル用途に望ましいクラスの材料である。ヒドロゲルは水和された架橋されたポリマー系であり、平衡状態で水を含有している。シリコーンヒドロゲルは既知のクラスのヒドロゲルであり、シリコーン含有モノマーを取り込んでいることを特徴とする。シリコーンヒドロゲルは、通常、少なくとも1種のシリコーン含有モノマー及び少なくとも1種の親水性モノマーを含む混合物を重合することにより調製されてきた。シリコーン含有モノマー又は親水性モノマーのいずれかが架橋剤として機能するか(架橋剤は複数の重合性官能価を有するモノマーとして規定される)、又は、別個の架橋剤を用いることができる。
【0004】
コンタクトレンズなどのバイオメディカルデバイスの分野において、たとえば、酸素透過性、湿潤性、材料強度及び安定性などの様々な物理的及び化学的特性は、まさに、使用可能なコンタクトレンズを提供するために注意深くバランスさせなければならない幾つかの要素である。たとえば、角膜は大気との接触から酸素供給を受けるので、良好な酸素透過性は特定のコンタクトレンズ材料にとって重要な特性である。もしレンズが十分な湿潤可能性を有しなければ、それが潤滑されず、それゆえ目に快適に装着できない点で湿潤性も重要である。したがって、最適なコンタクトレンズは少なくとも優れた酸素透過性及び優れた涙液湿潤性の両方を有する。
【0005】
非シリコーンヒドロゲルに対するシリコーンヒドロゲルの利点は、シリコーンヒドロゲルは、通常、シロキシ含有モノマーの取り込みのために酸素透過性が高いことである。シリコーンヒドロゲルの生成における使用のためのシリコーン含有モノマーはよく知られており、多数の例が、たとえば、米国特許第4,136,250号明細書、同第4,153,641号明細書、同第4,740,533号明細書、同第5,034,461号明細書、同第5,070,215号明細書、同第5,260,000号明細書、同第5,310,779号明細書及び同第5,358,995号明細書に開示されている。しかしながら、シリコーンレンズとの関係での1つの問題はレンズ上に疎水性領域を形成するシリコーン鎖が表面に現れることである。このことは湿潤性、眼運動及び使用者の快適性に悪影響を及ぼすであろう。
【0006】
Karunakaranら、"Synthesis, Characterization, and Crosslinking of Methacrylate-Telechelic PDMAAm-b-PDMS-b-PDMAAm Copolymers", Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 45, pp. 4284-4290 (2007) ("Karunakaran ら")は可逆的付加開裂連鎖移動重合(「RAFT」)による新規両親媒性メタクリレート-テレケリックペンタブロックコポリマーの製造を開示している。KarunakaranらのスキームIに示されるとおり、RAFT剤(2)の1つ以上のチオカルボニル断片を含むポリシロキサンモノマーは両親媒性メタクリレート-テレケリックペンタブロックコポリマーの調製において中間体として使用される。Karunakaranらは、さらに、新規両親媒性メタクリレート-テレケリックペンタブロックコポリマーはコンタクトレンズの形成などの眼科用途で使用できることを開示している。しかし、両親媒性メタクリレート-テレケリックペンタブロックコポリマーのその製造方法は時間がかかり、そして種々の試薬及びプロセス条件を使用する。これにより、また、再現性の問題が発生する可能性がある。さらに、Karanakaranらにより調製されるメタクリレート-テレケリックコポリマーは架橋剤であり、それが得られる製品の「有効」架橋密度を増加させ、製品のより高い弾性率をもたらしうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、高い酸素透過性、適切な含水率及び十分な弾性を有し、コンタクトレンズ装着者に快適であるソフトコンタクトレンズを製造するのに十分に柔軟である、改良されたシリコーンヒドロゲルを提供することがなおも必要である。また、簡単でコスト効率の高い様式で容易に製造することができる、改良されたシリコーンヒドロゲルを提供することも望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明の1つの実施形態によると、(a)可逆的付加開裂連鎖移動(「RAFT」)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物を含むバイオメディカルデバイスが提供される。
【0009】
本発明の第二の実施形態によると、(a)RAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のソフトコンタクトレンズ形成性モノマーを含む混合物の重合生成物を含むソフトコンタクトレンズが提供される。
【0010】
本発明の第三の実施形態によると、(a)RAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)親水性モノマーを含む混合物の水和された重合生成物を含むシリコーンヒドロゲルが提供される。
【0011】
本発明のシリコーンヒドロゲルなどのバイオメディカルデバイスは、有利には、RAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマーから形成される。Karunakaranらとは異なり、出願人は本開示中に記載されるRAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含むシロキサン含有ホモポリマーは、より低い弾性率を有しながら、高い酸素透過性を有すると信じられるバイオメディカルデバイスを形成するためのバイオメディカルデバイス形成用配合物中に容易に取り込まれうることを発見した。これにより、装着者に高レベルの快適性を提供するであろう。
【0012】
また、Karunakaranらとは異なり、本開示中に記載されるシロキサン含有ホモポリマーは、適切なモノマーとの反応の後に、得られる生成物中に共有結合架橋を形成することができず、むしろポリマー鎖を延長する。これにより、「有効」架橋密度が低くなり、それゆえ、比較的に低い弾性率を有する製品となるであろう。このように、シロキサン含有ホモポリマーRAFT剤は得られるネットワークにシロキサン含有ホモポリマーRAFT剤を共有結合させるラジカル重合に積極的に参加することができる。さらに、シロキサン含有ホモポリマーはバイオメディカルデバイス形成用配合物中に取り込まれる前に、簡単でコスト効率の高い様式で調製されうる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は生体組織又は体液と直接的に接触することが意図されたバイオメディカルデバイスに関する。本開示中に使用される際に、「バイオメディカルデバイス」とは、哺乳動物の組織又は体液の中又はその上で、そして好ましくはヒトの組織又は体液の中又はその上で使用されるように設計された任意の物品である。バイオメディカルデバイスの代表的な例として、限定するわけではないが、人工尿管、横隔膜、子宮内デバイス、心臓弁、カテーテル、義歯ライナー、プロテーゼデバイス、レンズが目の中又はその上に直接的に配置されることが意図された眼科レンズアプリケーション、たとえば、眼内デバイス及びコンタクトレンズが挙げられる。好ましいバイオメディカルデバイスは眼科デバイスである。
【0014】
本開示中で使用される際に、用語「眼科デバイス」は目の中に又は目の上に存在するデバイスを指す。これらのデバイスは光学補正、傷の手当、ドラッグデリバリー、診断機能又は美容向上もしくは効果、あるいは、これらの特性の組み合わせを提供することができる。有用な眼科デバイスとしては、限定するわけではないが、眼科レンズ、たとえば、ソフトヒドロゲルレンズ、ソフト非ヒドロゲルレンズなどのソフトコンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼科インサート、光学インサートなどが挙げられる。当業者に理解されるとおり、レンズは破壊することなく折り返すことができるならば、「ソフト」であると考えられる。好ましい眼科デバイスはソフトコンタクトレンズであり、そして最も好ましいのはシリコーンヒドロゲルで作られたソフトコンタクトレンズである。
【0015】
本発明のバイオメディカルデバイスは、(a)可逆的付加開裂連鎖移動(「RAFT」)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片(又はRAFT基)を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物から形成される。
【0016】
1つの実施形態において、本発明のバイオメディカルデバイスは、(a)可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片からなる1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物を含む。
【0017】
1つの実施形態において、本発明のバイオメディカルデバイスは、(a)可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片からなる1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーからなる混合物の重合生成物を含む。
【0018】
1つの実施形態において、本発明のバイオメディカルデバイスは、(a)可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物を含み、ここで、そのバイオメディカルデバイスは熱可塑性でない。
【0019】
1つの実施形態において、本発明のバイオメディカルデバイスは、(a)可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物を含み、ここで、そのバイオメディカルデバイスはヒドロゲルである。
【0020】
シロキサン含有ホモポリマー中のチオカルボニルチオ断片は当業者によく知られているチオカルボニルチオ化学に基づくものである。チオカルボニルチオ断片は、たとえば、各断片がチオカルボニル基を含み、好ましくはチオカルボニルチオ基を含む、キサンテート含有断片、トリチオカーボネート含有断片、ジチオカルバメート含有断片、ジチオエステル含有断片又はジチオもしくはトリチオカルボン酸断片であることができる。チオカルボニルチオ断片の1つのクラスは下記一般式のものである。
【0021】
【化1】

【0022】
上式中、Zは置換酸素(たとえば、キサンテート(−O−R))、置換窒素(たとえば、ジチオカルバメート(−NRR))、置換硫黄(たとえば、トリチオカーボネート(−S−R))、置換もしくは未置換C〜C20アルキル基、C〜C25不飽和又は部分的もしくは完全に飽和の環又はカルボン酸含有基(たとえば、ジチオエステル(−R))であり、Rは独立に直鎖もしくは枝分かれの置換もしくは未置換C〜C30アルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキルアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルケニル基、置換もしくは未置換C〜C30アリール基、置換もしくは未置換C〜C30アリールアルキル基、C〜C20カルボン酸基、C〜C20エステル基、エーテルもしくはポリエーテル含有基、アルキルもしくはアリールアミド基、アルキルもしくはアリールアミン基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリール基、置換もしくは未置換C〜C30複素環、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリールアルキル基及びそれらの組み合わせである。
【0023】
ここでの使用のためのアルキル基の代表的な例として、たとえば、分子の残りの部分への、1〜約30個の炭素原子、好ましくは1〜約12個の炭素原子及び水素原子を含み、不飽和を有しても又は有しなくてもよい直鎖又は枝分かれアルキル鎖の基が挙げられ、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、メチレン、エチレンなどが挙げられる。
【0024】
ここでの使用のためのシクロアルキル基の代表的な例として、たとえば、約3〜約30個の炭素原子、好ましくは3〜約6個の炭素原子の置換もしくは未置換の非芳香族単環系もしくは多環系、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ペルヒドロナフチル、アダマンチル及びノルボルニル基、橋架け環式基又はスピロ二環式基、たとえば、スピロ−(4,4)−ノン−2−イルなどであって、場合により1つ以上のヘテロ原子、たとえば、O及びNなどを含むものが挙げられる。
【0025】
ここでの使用のためのシクロアルキルアルキル基の代表的な例としては、たとえば、アルキル基に直接的に結合した約3〜約30個の炭素原子、好ましくは3〜約6個の炭素原子を含む置換もしくは未置換環含有基であって、安定な構造を形成するアルキル基の任意の炭素でモノマーの主構造に結合しているものが挙げられ、たとえば、シクロプロピルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチルなどで、その環が場合により1個以上のヘテロ原子、たとえば、O又はNなどを含むことができるものが挙げられる。
【0026】
ここでの使用のためのシクロアルケニル基の代表的な例としては、たとえば、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、約3〜約30個の炭素原子、好ましくは3〜約6個の炭素原子を含む、置換もしくは未置換の環含有基、たとえば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニルなどであって、その環が場合により1つ以上のヘテロ原子、たとえば、O及びNなどを含むことができるものが挙げられる。
【0027】
ここでの使用のためのアリール基の代表的な例としては、たとえば、約5〜約30個の炭素原子を含む、置換もしくは未置換の単環芳香族もしくは多環芳香族基、たとえば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、ビフェニルなどであって、場合により1つ以上のヘテロ原子、たとえば、O及びNなどを含むものが挙げられる。
【0028】
ここでの使用のためのアリールアルキル基の代表的な例としては、たとえば、本開示中で規定されるとおりのアルキル基に直接結合された、本開示中で規定されるとおりの置換もしくは未置換アリール基、たとえば、−CH、−Cなどが挙げられ、上記アリール基は場合により1つ以上のヘテロ原子、たとえば、O及びNなどを含むことができる。
【0029】
ここでの使用のためのカルボン酸含有基の代表的な例としては、たとえば、結合基を介して分子の残りの部分に結合されたカルボン酸基、たとえば、一般式−RC(O)OH(式中、Rは結合、本開示中に規定されるとおりの置換もしくは未置換アルキレン基、置換もしくは未置換シクロアルキレン、置換もしくは未置換シクロアルキルアルキレン基、置換もしくは未置換アリーレン又は置換もしくは未置換アリールアルキレン基である)のものであり、たとえば、−CH−(Ar)(C(O)OH)、−C(CH)(C(O)OH)などが挙げられる。
【0030】
ここでの使用のためのエステル基の代表的な例としては、たとえば、1〜20個の炭素原子を有するカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0031】
ここでの使用のためのエーテルもしくはポリエーテル含有基の代表的な例としては、たとえば、アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、シクロアルキルアルキルエーテル、シクロアルケニルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテルが挙げられ、ここで、上記のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、アリール及びアリールアルキル基は本開示中に規定されるとおりである。例示のエーテルもしくはポリエーテル含有基としては、たとえば、アルキレンオキシド、ポリ(アルキレンオキシド)、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ブチレンオキシド)及びそれらの混合物又はコポリマー、一般式−(ROR(式中、Rは上記の意味であり、Rは本開示中に規定されるとおりの置換もしくは未置換アルキル基、置換もしくは未置換シクロアルキル、置換もしくは未置換シクロアルキルアルキル基、置換もしくは未置換アリール基又は置換もしくは未置換アリールアルキル基であり、tは少なくとも1である)のエーテルもしくはポリエーテル基、たとえば、−CHCHOC及びCH−CH−CH−O−CH−(CF−H(式中、zは1〜6である)、−CHCHOCなどが挙げられる。
【0032】
ここでの使用のためのアルキルもしくはアリールアミド基の代表的な例としては、たとえば、一般式−RC(O)NR(式中、R、R及びRは独立にC〜C30炭化水素であり、たとえば、Rは本開示中に規定されるとおりのアルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基であってよく、そしてR及びRはアルキル基、アリール基及びシクロアルキル基であってよい)のアミドなどが挙げられる。
【0033】
ここでの使用のためのアルキルもしくはアリールアミン基の代表的な例としては、たとえば、一般式−RNR(式中、RはC〜C30アルキレン、アリーレン又はシクロアルキレン基であり、そしてR及びRは独立にC〜C30炭化水素、たとえば、本開示中に規定されるとおりのアルキル基、アリール基又はシクロアルキル基である)のアミンが挙げられる。
【0034】
ここでの使用のための複素環基の代表的な例として、たとえば、置換もしくは未置換の安定した3〜約30員環基であり、炭素原子及び1〜5個のヘテロ原子、たとえば、窒素、リン、酸素、硫黄及びそれらの混合物を含むものが挙げられる。ここでの使用に適した複素環基は単環、二環式もしくは三環系であることができ、その環系は縮合、橋かけ又はスピロ環系を含んでよく、そして複素環基中の窒素、リン、炭素、酸素又は硫黄原子は場合により様々な酸化状態に酸化されていてよい。さらに、窒素原子は、場合により第四級化されてよく、そして環基は部分的又は完全に飽和であってよい(すなわち、ヘテロ芳香族又はヘテロアリール芳香族)。このような複素環基の例としては、限定するわけではないが、アゼチジニル、アクリジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフルニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、インドリジニル、ナフチリジニル、ペルヒドロアゼピニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピリジル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾイル(tetrazoyl)、イミダゾリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、トリアゾリル、インダニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、キノリル、イソキノリル、デカヒドロイソキノリル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、テトラヒドロフルチル(tetrahydrofurtyl)、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジオキサホスホラニル、オキサジアゾリル、クロマニル、イソクロマニルなど及びそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
ここでの使用のためのヘテロアリール基の代表的な例としては、たとえば、本開示中に規定されるとおりの置換もしくは未置換複素環基が挙げられる。ヘテロアリール環基は、安定した構造の形成をもたらす任意のヘテロ原子又は炭素原子で主構造に結合されうる。
【0036】
ここでの使用のためのヘテロアリールアルキル基の代表的な例としては、たとえば、本開示中に規定されるとおりのアルキル基に直接結合された、本開示中に規定されるとおりの置換もしくは未置換ヘテロアリール環基が挙げられる。ヘテロアリールアルキル基は、安定した構造の形成をもたらす、アルキル基の任意の炭素原子で主構造に結合されうる。
【0037】
ここでの使用のための複素環基の代表的な例としては、たとえば、本開示中に規定されるとおりの置換もしくは未置換複素環が挙げられる。複素環基は、安定した構造の形成をもたらす任意のヘテロ原子又は炭素原子で主構造に結合されうる。
【0038】
ここでの使用のためのヘテロシクロアルキル基の代表的な例としては、たとえば、本開示中に規定されるとおりのアルキル基に直接結合した、本開示中に規定されるとおりの置換もしくは未置換複素環基が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、安定した構造の形成をもたらす、アルキル基中の任意の炭素原子で主構造に結合されうる。
【0039】
「置換酸素」、「置換窒素」、「置換硫黄」、「置換アルキル」、「置換アルキレン」、「置換シクロアルキル」、「置換シクロアルキルアルキル」、「置換シクロアルケニル」、「置換アリールアルキル」、「置換アリール」、「置換複素環」、「置換ヘテロアリール環」、「置換ヘテロアリールアルキル」、「置換ヘテロシクロアルキル環」、「置換環式環」中の置換基は同一であっても又は異なっていてもよく、そしてかかる置換基として、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオ(=S)、置換もしくは未置換アルキル、置換もしくは未置換アルコキシ、置換もしくは未置換アルケニル、置換もしくは未置換アルキニル、置換もしくは未置換アリール、置換もしくは未置換アリールアルキル、置換もしくは未置換シクロアルキル、置換もしくは未置換シクロアルケニル、置換もしくは未置換アミノ、置換もしくは未置換アリール、置換もしくは未置換ヘテロアリール、置換ヘテロシクロアルキル環、置換もしくは未置換ヘテロアリールアルキル、置換もしくは未置換複素環などの1つ以上の置換基が挙げられる。
【0040】
一般に、1種以上のシロキサンホモポリマーはホモポリマー中に少なくとも2つの[−Si−O−]繰り返し単位を含む。1つの実施形態において、1種以上のシロキサンホモポリマーはホモポリマー中に約2〜約100個、好ましくは約6〜約40個の[−Si−O−]繰り返し単位を含むであろう。
【0041】
1つのクラスのシロキサン含有ホモポリマーは下記一般式のものである。
【化2】

【0042】
上式中、Lは、たとえば、結合、直鎖もしくは枝分かれC〜C30アルキル基、C〜C30フルオロアルキル基、C〜C20エステル含有基、アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、シクロアルケニルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテル、ポリエーテル含有基、アミド含有基、アミン含有基、置換もしくは未置換C〜C30アルコキシ基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキルアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルケニル基、置換もしくは未置換C〜C30アリール基、置換もしくは未置換C〜C30アリールアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリール基、置換もしくは未置換C〜C30複素環、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロシクロールアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリールアルキル基、C〜C30フルオロアリール基、又は、ヒドロキシル置換アルキルエーテル及びそれらの組み合わせを含む結合基であり、R10及びR11は独立に、水素、置換もしくは未置換C〜C30アルキル基、C〜C30フルオロアルキル基、C〜C20エステル含有基、アルキルエーテル基、シクロアルキルエーテル基、シクロアルケニルエーテル基、アリールエーテル基、アリールアルキルエーテル基、置換もしくは未置換C〜C30アルコキシ基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキルアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルケニル基、置換もしくは未置換C〜C30アリール基、置換もしくは未置換C〜C30アリールアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリール基、置換もしくは未置換C〜C30複素環、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリールアルキル基、フッ素、C〜C30フルオロアリール基、シロキシ基、たとえば、トリシロキシ基、たとえば、トリメチルシロキシ、又は、ヒドロキシル基であり、nは2〜100であり、Aは独立に、本開示に規定されるとおりのチオカルボニルチオ断片である。
【0043】
別のクラスのシロキサン含有ホモポリマーは下記一般式のものである。
【化3】

【0044】
上式中、L、A、R10は上記の意味である。
【0045】
RAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含むシロキサン含有ホモポリマーを形成するために使用される有機化学には特に限定がなく、当業者の範囲内である。また、以下の実施例は指針を提供する。シロキサン含有ホモポリマーを調製するための方法の一例を下記スキームIに示す。
【0046】
【化4】

【0047】
RAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマーに加えて、重合して本発明のバイオメディカルデバイスを形成する混合物は従来のバイオメディカルデバイス形成性もしくは眼科レンズ形成性モノマーを含む。本開示中に使用されるときに、「モノマー」又は「単量体」などの用語はフリーラジカル重合により重合可能な比較的低分子量の化合物、ならびに、「プレポリマー」、「マクロモノマー」及び関連用語としても参照される、より高分子量の化合物を意味する。一般に、バイオメディカルデバイス形成性コモノマーは少なくとも1個の重合性基又はフリーラジカル重合性基を含む。1つの実施形態において、適切なコモノマーとしては、疎水性モノマー、親水性モノマーなど及びそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
親水性コモノマーの代表的な例としては、限定するわけではないが、メタクリル酸及びアクリル酸などの不飽和カルボン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセリルメタクリレートなどの(メタ)アクリル置換アルコールもしくはポリオール、N−ビニルピロリドンなどのビニルラクタム及びメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。なおもさらなる例は、米国特許第5,070,215号明細書に開示されている親水性ビニルカーボネートもしくはビニルカルバメートモノマー、及び、米国特許第4,910,277号明細書に開示されている親水性オキサゾロンモノマーである。他の適切な親水性モノマーは当業者に明らかであろう。親水性モノマーは混合物の総質量に基づいて、約0.1〜約90質量%の範囲の量で混合物中に存在することができる。
【0049】
様々な好ましい実施形態によると、重合される当初混合物は、少なくとも1種の(メタ)アクリル置換アルコール、たとえば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びグリセリルメタクリレートの少なくとも1つを、好ましくは混合物の総質量を基準として少なくとも約0.1〜約50質量%の量で含むことができる。好ましくは、重合される混合物は、少なくとも1種のビニルラクタム、たとえば、N−ビニルピロリドン及び/又は少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド、たとえば、N,N−ジメチルアクリルアミドをさらに含む。
【0050】
適切な疎水性モノマーとしては、C〜C20アルキル及びC〜C20シクロアルキル(メタ)アクリレート、置換及び未置換C〜C30アリール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、フッ素化アルキルメタクリレート、オクチルアクリルアミドなどの長鎖アクリルアミドなどが挙げられる。疎水性モノマーは混合物の総質量に基づいて、約1〜約30質量%の範囲の量で混合物中に存在することができる。
【0051】
適切な疎水性モノマーとしては、C〜C20アルキル及びC〜C20シクロアルキル(メタ)アクリレート、置換及び未置換C〜C30アリール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、フッ素化アルキルメタクリレート、オクチルアクリルアミドなどの長鎖アクリルアミドなどが挙げられる。疎水性モノマーは混合物の総質量に基づいて、約0.1〜約90質量%の範囲の量で混合物中に存在することができる。
【0052】
所望ならば、重合される混合物は、RAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含むシロキサン含有ホモポリマーに加えて、シリコーン含有モノマーをさらに含んでよい。別の言い方をすると、たとえば、もし高酸素透過性を有するコポリマーを得ることを望むならば、RAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含むシロキサン含有ホモポリマーに加えて、1〜約60個のケイ素原子を含む別のシリコーン含有コモノマーが重合される当初混合物中に含まれていてよい。シリコーンヒドロゲルなどのバイオメディカルデバイスを製造するのに有用ないずれかの既知のシリコーン含有モノマーをシロキサン含有ホモポリマーと組み合わせて使用して、本発明のソフトコンタクトレンズなどのバイオメディカルデバイスを形成することができる。応用可能なシリコーン含有モノマーは当該技術分野でよく知られており、多数の例が、たとえば、米国特許第4,136,250号明細書、同第4,153,641号明細書、同第4,740,533号明細書、同第5,034,461号明細書、同第5,070,215号明細書、同第5,260,000号明細書、同第5,310,779号明細書及び同第5,358,995号明細書に提供されている。
【0053】
応用可能なシリコーン含有モノマーの代表的な例としては、嵩高なポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。嵩高なポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーの例は下記式Iの構造で表される。
【0054】
【化5】

【0055】
上式中、Xは−O−又は−NR−であり、Rは水素又はC〜Cアルキルであり、R12は独立に水素又はメチルであり、各R13は独立に低級アルキル基、フェニル基又は下記式の基
【0056】
【化6】

【0057】
であり、ここで、各R13'は独立に低級アルキル又はフェニル基であり、hは1〜10である。
【0058】
他の応用可能なシリコーン含有モノマーの代表的な例としては、限定するわけではないが、式Iaに一般に記載されるとおりの嵩高なポリシロキサニルアルキルカルバメートモノマーなどが挙げられる。
【0059】
【化7】

【0060】
上式中、Xは−NR−であり、Rは水素又はC〜Cアルキルであり、R12は水素又はメチルであり、各R13は独立に低級アルキル基、フェニル基又は下記式の基
【0061】
【化8】

であり、ここで、各R13'は独立に低級アルキル又はフェニル基であり、hは1〜10である。
【0062】
嵩高なモノマーの例は3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン又はトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(しばしばTRISと呼ばれる)及びトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルビニルカルバメート(しばしばTRIS−VCと呼ばれる)など及びそれらの混合物である。
【0063】
このような嵩高なモノマーはシリコーンマクロモノマーと共重合可能であり、それは分子の2つ以上の末端において不飽和基によってキャッピングされたポリ(オルガノシロキサン)である。米国特許第4,153,641号明細書は、たとえば、アクリルオキシ基又はメタクリルオキシ基などの様々な不飽和基を開示している。
【0064】
別のクラスの代表的なシリコーン含有モノマーとしては、限定するわけではないが、シリコーン含有ビニルカーボネートもしくはビニルカルバメートモノマー、たとえば、1,3−ビス[4−ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト−1−イル]テトラメチルジシロキサン、3−(トリメチルシリル)プロピルビニルカーボネート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート、t−ブチルジメチルシロキシエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルメチルビニルカーボネートなどが挙げられる。
【0065】
別のクラスのシリコーン含有モノマーとしては、ポリウレタン−ポリシロキサンマクロモノマー(時折、プレポリマーとも呼ぶ)が挙げられ、それは伝統的なウレタンエラストマーと同様のハード−ソフト−ハードブロックを有することができる。シリコーンウレタンの例はLai, Yu-Chin, “The Role of Bulky Polysiloxanylalkyl Methacrylates in Polyurethane-Polysiloxane Hydrogels,”Journal of Applied Polymer Science, Vol. 60, 1193-1199(1996)”を含む様々な文献中に開示されている。国際公開WO96/31792号明細書もこのようなモノマーの例を開示しており、その内容の全体を参照により本開示中に取り込む。シリコーンウレタンモノマーのさらなる例はII及びIIIによって表される。
E(G)E’ (II) 又は
E(A)E’ (III)
【0066】
Dはアルキル二価基、アルキルシクロアルキル二価基、シクロアルキル二価基、アリール二価基又はアルキルアリール二価基であり、6〜約30個の炭素原子を有し、
Gはアルキル二価基、シクロアルキル二価基、アルキルシクロアルキル二価基、アリール二価基又はアルキルアリール二価基であり、1〜約40個の炭素原子を有し、そしてそれは、エーテル、チオ又はアミン結合を主鎖に含むことができ、
*はウレタン又はウレイド結合基であり、
aは少なくとも1であり、
Aは式IVの二価ポリマー基であり、
【0067】
【化9】

【0068】
各Rは独立に1〜約10個の炭素原子を有するアルキル又はフルオロ置換アルキル基であり、それは炭素原子の間にエーテル結合を含むことができ、
m’は少なくとも1であり、pは約400〜約10,000の部分分子量を提供する数であり、
各E及びE’は独立に式Vにより表される重合性不飽和有機基であり、
【0069】
【化10】

【0070】
上式中、R14は水素又はメチルであり、
15は、独立に、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、又は、−CO−Y−R16基であり、ここで、Yは−O−、−S−又は−NH−であり、
17は1〜約10個の炭素原子を有する二価のアルキレン基であり、
16は1〜約12個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Xは−CO−又は−OCO−であり、
Zは−O−又は−NH−であり、
Arは約6〜約30個の炭素原子を有する芳香族基であり、
wは0〜6であり、xは0又は1であり、yは0又は1であり、zは0又は1である。
【0071】
好ましいシリコーン含有ウレタンモノマーは下記式VIにより表される。
【化11】

【0072】
上式中、mは少なくとも1であり、好ましくは3又は4であり、aは少なくとも1であり、好ましくは1であり、pは約400〜約10,000の部分分子量を提供する数であり、好ましくは少なくとも約30であり、R12はイソシアネート基を取り除いた後のジイソシアネートの二価基であり、たとえば、イソホロンジイソシアネートの二価基であり、各E”は下記により表される基である。
【0073】
【化12】

【0074】
別のクラスの代表的なシリコーン含有モノマーとしては、フッ素化モノマーが挙げられる。このようなモノマーはフルオロシリコーンヒドロゲルの生成に使用されており、結果として、それから作られたコンタクトレンズ上の付着物の堆積を抑制し、そのことは米国特許第4,954,587号明細書、同第5,010,141号明細書及び同第5,079,319号明細書に記載されるとおりである。特定のフッ素化側基、すなわち、−(CF)−Hを有するシリコーン含有モノマーの使用は、親水性モノマー単位とシリコーン含有モノマー単位との相容性を改良することが発見されており、たとえば、米国特許第5,321,108号明細書及び同第5,387,662号明細書を参照されたい。
【0075】
上記のシリコーン材料は単なる例示であり、そして本発明に係るバイオメディカルデバイスを形成するのに使用され、様々な刊行物中に開示され、コンタクトレンズ及び他のバイオメディカルデバイスにおける使用のために継続的に開発されている他の材料も、また、使用できる。たとえば、バイオメディカルデバイス形成性コモノマーはカチオン性シリコーン含有モノマー又はカチオン性フッ素化シリコーン含有モノマーなどのカチオン性モノマーであることができる。
【0076】
混合物は、また、架橋性モノマー(架橋性モノマーは複数の重合性官能基を有するモノマーと規定される)をも含むことができる。代表的な架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、グリコールジメタクリレートのビニルカーボネート誘導体及びメタクリルオキシエチルビニルカーボネートが挙げられる。架橋剤を使用する場合には、このモノマー材料は、約0.1〜約20質量%で混合物中に含まれてよく、より好ましくは約0.2〜約10質量%で含まれる。
【0077】
必須ではないが、混合物は1種以上の補強剤を含むことができる。適切な補強剤の非限定的な例は米国特許第4,327,203号、同第4,355,147号及び同第5,270,418号明細書に記載されており、その各々の全体を参照によって本開示中に取り込む。このような補強剤の限定を意図しない具体例としては、たとえば、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート及びイソプロピルシクロペンチルアクリレートなどのシクロアルキルアクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
【0078】
重合される混合物は、必要な際には、本発明の目的及び効果を損なわない限度内で、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、潤滑剤内部湿潤剤などの各種添加剤など及び当該技術分野でよく知られている他の成分をさらに含んでよい。
【0079】
本発明のバイオメディカルデバイス、たとえば、ソフトコンタクトレンズ又は眼内レンズは、上記の混合物を重合して、次いで、たとえば、旋盤加工、射出成形、圧縮成形、切断などによって適当な形状に加工されうる生成物を生成することで調製することができる。たとえば、コンタクトレンズを製造するときに、初期の混合物をチューブ中で重合してロッド形状の製品を提供し、その後、それをボタンに切断する。その後、ボタンを旋盤加工してコンタクトレンズとすることができる。
【0080】
又は、コンタクトレンズなどのバイオメディカルデバイスは、たとえば、スピンキャスティング及び静的キャスティング法によって、混合物からモールド、たとえば、ポリプロピレンモールドに直接キャスティングされることができる。スピンキャスティング法は米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号明細書に開示されており、静的キャスティング法は米国特許第4,113,224号、同第4,197,266号及び同第5,271,875号明細書に開示されている。スピンキャスティング法は、混合物をモールドに装填し、そしてその混合物をUV光などの放射線源に暴露しながら制御した様式でモールドを回転させることを含む。静的キャスティング法は、1つのモールドセクションが前部レンズ表面を形成するような形状であり、他方のモールドセクションが後部レンズ表面を形成するような形状である、2つのモールドセクションの間に混合物を装填し、モールドアセンブリー中に混合物を保持しながら、たとえば、混合物のフリーラジカル重合によって硬化させてレンズを形成することを含む。レンズ材料を硬化させるためのフリーラジカル反応技術の例としては、熱照射、赤外線、電子ビーム線、γ線、紫外線(UV)などが挙げられ、このような技術の組み合わせも使用することができる。米国特許第5,271,875号明細書は前部モールド及び後部モールドによって画定される、モールドキャビティー中で最終のレンズの成形を行うことが可能である静的キャスト成形法を記載している。さらなる方法として、米国特許第4,555,732号明細書はモールド内でのスピンキャスティングによって過剰の混合物を硬化させ、前部レンズ表面及び比較的に厚い厚さを有する成形品を形成し、硬化したスピンキャスト製品の後部表面を、次いで、旋盤加工して、所望の厚さ及び後部レンズ表面を有するコンタクトレンズを提供する方法を開示している。
【0081】
重合は熱及び/又は紫外線光、可視光又は高エネルギー線などの放射線に混合物を暴露することにより促進されうる。重合開始剤は重合工程を促進するために混合物中に含まれることができる。代表的なフリーラジカル熱重合開始剤の例としては、有機過酸化物、たとえば、アセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、第三級ブチルペルオキシピバレート、ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。代表的なUV開始剤は当該技術分野に知られたものであり、たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ダロキュア(Darocure)(登録商標)1173, 1164, 2273, 1116, 2959, 3331 (EM Industries)及びイルガキュア(Irgacure)(登録商標)651及び184(Ciba-Geigy)などが挙げられる。一般に、開始剤は合計混合物の約0.01〜約5質量%の濃度で混合物中に使用されるであろう。
【0082】
重合は、一般に、溶剤、たとえば、水又は1〜12個の炭素原子を有するアルカノール、たとえば、メタノール、エタノール又はノナノールを用いた溶液又は分散液などの反応媒体中で行われる。又は、上記の任意の溶剤の混合物は使用されうる。
【0083】
一般に、重合は約15分間〜約72時間、窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気下に行うことができる。所望ならば、得られた重合生成物は、たとえば、約5〜約72時間、真空下に乾燥してよく又は使用前に水溶液中に入れておくことができる。
【0084】
混合物の重合によりポリマーを生じ、そのポリマーが水和されるときに好ましくはヒドロゲルを形成する。一般に、混合物は、混合物の合計質量を基準として、約0.1〜約40質量%、好ましくは約1〜約20質量%の範囲の量のRAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含むシロキサン含有ホモポリマーを含むであろう。バイオメディカル形成性コモノマーは混合物の合計質量を基準として、約0.1〜約90質量%、好ましくは約30〜約80質量%の範囲の量で混合物中に存在することができる。
【0085】
ヒドロゲルレンズを製造するときに、混合物は少なくとも1種の希釈剤をさらに含んでよく、その希釈剤は重合生成物が水和されてヒドロゲルを形成するときに最終的に水で置換される。一般に、ヒドロゲルの含水率は約5質量%より大きく、より一般的には約10質量%〜約80質量%である。使用される希釈剤の量は約50質量%未満とすべきであり、ほとんどの場合には希釈剤含有率は約30質量%未満であろう。しかしながら、特定のポリマー系では、実際の制限は希釈剤中の各種モノマーの溶解度によって決まるであろう。光学的に透明なコポリマーを製造するためには、視覚的な不透明性を生じさせる相分離がコモノマーと希釈剤の間又は希釈剤と最終コポリマーとの間に起こらないことが重要である。
【0086】
さらに、使用されうる希釈剤の最大量は希釈剤が最終のポリマーに生じさせる膨潤の量によって決まるであろう。過度の膨潤は水和時に希釈剤を水で置換するときにコポリマーを崩壊させる又は崩壊させうる。適切な希釈剤としては、限定するわけではないが、エチレングリコール、グリセリン、液体ポリ(エチレングリコール)、アルコール、アルコール/水混合物、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、低分子量直鎖ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、乳酸のグリコールエステル、ホルムアミド、ケトン、ジアルキルスルホキシド、ブチルカルビトールなど及びそれらの混合物が挙げられる。
【0087】
必要ならば、縁仕上げ操作の前に、レンズから残存希釈剤を除去することが望ましいことがあり、そのことは周囲圧力もしくはその付近又は真空下での蒸発によって行うことができる。希釈剤を蒸発させるのに必要な時間を短縮するために高温を用いることができる。溶剤除去工程の時間、温度及び圧力条件は、希釈剤及び特定のモノマー成分の揮発性などの因子によって様々であることができ、当業者によって容易に決定することができる。所望ならば、ヒドロゲルレンズを製造するために使用される混合物はヒドロゲル材料を製造するための従来技術で知られた架橋剤及び湿潤剤をさらに含むことができる。
【0088】
眼内レンズの場合には、重合される混合物は得られるコポリマーの屈折率を増加させるためのモノマーをさらに含むことができる。このようなモノマーの例は芳香族(メタ)アクリレート、たとえば、フェニル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートである。
【0089】
ここで得られるコンタクトレンズなどのバイオメディカルデバイスは、任意的に行う機械加工操作を受けることができる。たとえば、任意的に行う機械加工工程としては、レンズ縁及び/又は表面のバフ研磨又はポリッシングが挙げられる。一般に、このような機械加工処理は製品がモールド部品から解放される前又は後に行われてよく、たとえば、真空ピンセットを用いてモールドからレンズを持ち上げることによってレンズをモールドから乾燥解放し、その後、レンズを機械ピンセット手段によって第二の真空ピンセットに移し、そして回転表面に置くことで表面又は縁をなめらかにする。その後、レンズをひっくり返してレンズの反対面を機械加工することができる。
【0090】
その後、レンズを緩衝塩類溶液を含む個々のレンズパッケージに移すことができる。塩類溶液はレンズの輸送前又は後のいずれでもパッケージに添加することができる。適切なパッケージングデザイン及び材料は当該技術分野で知られている。プラスチックパッケージはフィルムによって解放可能にシールされる。適切なシーリングフィルムは当該技術分野で知られており、ホイル、ポリマーフィルム及びそれらの混合物が挙げられる。レンズを含むシール済みパッケージはその後、無菌化されて無菌製品とする。適切な無菌化手段及び条件は当該技術分野で知られており、たとえば、オートクレービングが挙げられる。
【0091】
当業者が容易に理解するとおり、上記のモールディング及びパッケージングプロセスに他の工程が含まれてよい。このような他の工程としては、たとえば、形成されたレンズのコーティング、(たとえば、モールド輸送による)形成の間のレンズの表面処理、レンズの検査、欠陥レンズの廃棄、モールドハーフのクリーニング、モールドハーフの再使用など及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【実施例】
【0092】
下記の実施例は当業者が本発明を実施することができるように提供されるものであって、本発明の単なる例示である。実施例は特許請求の範囲に規定されるとおりの発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【0093】
下記の実施例において、S,S'-ビス(α,α'-ジメチル-α"-酢酸)トリチオカーボネート(1)及びS-1-ドデシル-S'-(α,α'-ジメチル-α"- 酢酸)-トリチオカーボネート(2)をトリチオカルボニル基の源として使用する。両方の連鎖移動剤を、Lairaら, Macromolecules, 35, 6754 (2002)によって報告されたワンポット合成にしたがって合成した。(1)の対称的な構造は多官能ポリジメチルシロキサン(PDMS)RAFTマクロモノマーの合成に適しており、一方、連鎖移動剤(2)は一官能もしくは二官能PDMS RAFTホモポリマーの合成に適している。
【0094】
実施例において、下記の略語を使用する。
DMA:N,N−ジメチルアクリルアミド
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
NVP:N−ビニル−2−ピロリドン
THF:テトラヒドロフラン
TRIS−MA:トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート
TRIS−VC:トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルビニルカルバメート
D1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(Darocur(登録商標)1173開始剤として入手可能)
ビナール酸(vinal acid):以下の構造を有するβ−アラニンのビニルカルバメート
【0095】
【化13】

【0096】
V2D25:以下の構造を有するPDMSジオールのジビニルカーボネート
【化14】

【0097】
Ma2D37:以下の構造を有するPDMSジアミンのジメタクリルアミド
【化15】

【0098】
MCR−C12:以下の構造を有するモノヒドロキシエトキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン
【化16】

【0099】
上式中、nは平均で12である。
【0100】
例1
多官能エステルをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(4)の調製
塩化オキサリル(5.0mL, mmol)を室温にて窒素下に維持したS,S’-ビス(α,α’-ジメチル-α”-酢酸)トリチオカーボネート1(1.0g, 3.6mmol)に攪拌下に添加した。添加の最後に、得られた不均一混合物を60℃に3時間温め、鮮明な黄色の溶液を形成した。過剰の塩化オキサリルを減圧下に蒸発させ、1.05gのS,S’-ビス(α,α’-ジメチル-α”-アセチルクロリド)トリチオカーボネートを白色固形分として生じた。
塩化アセチルを乾燥塩化メチレン(50mL)中に溶解させ、0℃で激しく攪拌しながら、ヒドロキシプロピル末端PDMSジオール(6.77g, 3.22mmol)の無水塩化メチレン200mL中の溶液中に滴下して加えた。反応混合物を室温にて24時間攪拌した後に、溶剤を減圧下に除去し、6.59gの黄色の粘性オイルを提供し、それを、ヘキサンを用いて短シリカゲルカラムをとおして溶離し、純粋な多官能エステルをベースとするPDMSマクロRAFT剤(4)(4.90g)を生じた。本例の多官能エステルをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(4)を提供するための反応を下記スキームIIに概略的に示す。
【0101】
【化17】

【0102】
例2
多官能アミドをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(6)の調製
3つ口丸底フラスコにおいて、8.52g(3.4mmol)のPDMS前駆体を塩化メチレン(150mL)中に溶解した。トリエチルアミン(1.43g, 14.2mmol)を添加し、溶液を氷水浴中で冷却した。その間、塩化オキサリル(6mL)を、1.0g(3.6mmol)のトリチオカーボネート二酸(1)を含む別の1口丸底フラスコに添加した。60℃で2時間攪拌した後に、過剰の塩化オキサリルを減圧下に蒸発させた。残留物を乾燥塩化メチレン50mL中に溶解し、激しく攪拌しながらPDMSジアミン溶液に滴下して加えた。反応混合物を室温で18時間攪拌した。真空により溶剤を除去し、得られた黄色オイルをシリカゲルの短プラグをとおしてろ過した(溶離剤:CH2Cl2/MeOH 3:1)。画分を合わせたものを蒸発させ、7.92gの多官能アミドをベースとするPDMS RAFTマクロモノマー(6)を提供した。本例の多官能エステルをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(6)を提供するための反応を下記スキームIIIに概略的に示す。
【0103】
【化18】

【0104】
例3
二官能エステルをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(9)の調製
塩化オキサリルをRAFT-CTA(2)(2.05g, 5.6mmol)に室温にて急速に攪拌しながら、窒素雰囲気下に添加した。4時間の攪拌の後に、ガスの放出が止まり、反応物は均一になった。過剰の塩化オキサリルを減圧下に除去し、塩化アシル(10)(2.1g)を生じ、それを20mLの無水塩化メチレン中に溶解した。この溶液を、PDMSジオール3(4.48g, 2.2mmol)の無水塩化メチレン80mL中の溶液に徐々に滴下して加えた。反応混合物を室温にて14時間攪拌した。反応の最後に、メタノール(2mL)を添加して、残りの塩化アシルをクエンチした。減圧下に溶剤を除去し、6.50gの赤っぽいオイルを提供し、それを、溶離剤として塩化メチレン/ヘキサン(勾配溶離5→50v/v%のCHCl2/ヘキサン)を用いてシリカゲルカラムをとおして溶離し、副生成物として得られた単官能性RAFT剤(0.6g)ならびに未反応出発二酸から二官能マクロRAFT剤(4.5g)を分離した。本例の二官能エステルをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(9)を提供するための反応を下記スキームIVに概略的に示す。
【0105】
【化19】

【0106】
例4
二官能アミドをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(5)の調製
アミドをベースとするPDMS RAFT剤(5)を、例3のエステルをベースとするマクロRAFT剤(9)と実質的に同様に合成した。溶離剤としてヘキサン/CHCl2(勾配溶離50〜100v/v%ヘキサン/CHCl2)を用いたシリカゲル上での粗反応混合物のフラッシュクロマトグラフィーにより、80%分離収率で二官能アミドをベースとするPDMS RAFTマクロモノマー(5)を提供した。二官能アミドをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(5)を提供するための反応を下記スキームVに概略的に示す。
【0107】
【化20】

【0108】
例5
キサンテート-PDMS-キサンテート-RAFTホモポリマー(9)の調製
ヒドロキシプロピル末端PDMS(20g, 10mmol)を無水テトラヒドロフラン(200mL)中に溶解した。トリエチルアミン(5.58mL, 40mmol)を攪拌している溶液に添加し、次いで、ブロモ-i-プロピオニルブロミド(3.18mL, 30mmol)を滴下して加えた。その後、溶液を室温にて一晩放置した。得られた溶液をろ過し、溶剤を減圧下に除去した。得られた黄色オイルを塩化メチレン(150mL)中に溶解し、次いで、飽和炭酸水素ナトリウム(2×100mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下に溶剤を除去し、所望の生成物を黄色粘性オイルとして提供した。収量:22.3g。
次に、PDMSジイソプロピルブロミド(4g, 1.44mmol)をエタノール(5mL)中に溶解した。キサントゲン酸カリウム(1.0g, 6.24mmol)を攪拌している溶液に添加し、そして溶液を60℃で一晩、緩やかに還流した。反応混合物を水を添加することによりクエンチし、次いで、塩化メチレンで抽出した。溶剤を蒸発した後に、残留物を、溶離剤としてヘキサン/塩化メチレン(0〜50%v/v)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーに付し、1.82gの純粋なジキサンテートを提供した。純粋な画分を合わせたものをGPC分析及びNMR分光分析により分析した。本例のキサンテート-PDMS-キサンテート-RAFTホモポリマー(9)を提供するための反応を下記スキームVIに概略的に示す。
【0109】
【化21】

【0110】
例6
キサンテート-PDMS-RAFTホモポリマーの調製
窒素インレット、マグネティックスターバー、0℃氷水浴及びフリードリヒコンデンサーを装備した、火炎乾燥した500mL3つ口丸底フラスコに、30.12gのMCR-C12(0.026moles)、5.88gのトリエチルアミン(0.0581moles)及び200mLのTHFを0℃で攪拌しながら添加した。9.48gのブロモ-i-プロピオニルブロミド(0.0439moles)及び50mLのTHFを、1時間かけて添加漏斗をとおして滴下して加えた。室温に平衡化しながら反応を一晩(16〜18時間)進行させた。塩をろ過し、30mLのTHF中の10mLの脱イオン水を添加し、30分間攪拌した。溶剤を圧力下に除去した。追加の100mLのトルエンを添加し、溶剤及び残留水を減圧下に除去した。25mLのヘキサンを添加し、溶液をシリカカラム(200g)にとおし、2-ブロモプロプリオネートMCR-C12をロータリーエバポレータ上で分離した(25.19g:76%収率)。生成物を1H-NMRを用いて確認した。
次に、窒素インレット、マグネティックスターラ、フリードリヒコンデンサー及び0℃氷水浴を装備した250mL丸底フラスコに、10.02gの2-ブロモプロプリオネートMCR-12(7.82x10-3moles)を25mLのEtOH:THFとともに添加し、氷水浴中で攪拌した。一旦、0℃に到達したら、1.51gのカリウムエチルキサントゲネート(9.38x10-3moles)を漏斗を用いてゆっくりと添加し、追加の25mLのEtOH:THFで濯いだ。反応を自発的に室温に順化させながら18時間進行させた。100mLの脱イオン水を反応フラスコに添加した。フラスコの内容物を100mLのヘキサンで4回抽出し、有機層を残した。有機層を合わせ、そして無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過しそして減圧下に溶剤を除去し、MCR-C12(エチルキサンチルプロプリオネート)を得た(8.31g, 81%収率)。生成物の構造を1H-NMRを用いて確認した。本例のキサンテート-PDMS-RAFTホモポリマーを提供するための反応を下記スキームVIIに概略的に示す。
【0111】
【化22】

【0112】
単官能エステルをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(13)の調製
13mLの塩化オキサリルをRAFT-CTA(2)(3.33g, 8.2mmol)に室温にて急速に攪拌しながら、窒素雰囲気下に添加した。4時間の攪拌の後に、ガスの放出が止まり、反応物は均一になった。過剰の塩化オキサリルを減圧下に除去し、塩化アシル(10)(3.4g)を生じ、それを20mLの無水塩化メチレン中に溶解した。この溶液を、MCR-C12(7.67g, 7.2mmol)の無水塩化メチレン50mL中の溶液に徐々に滴下して加えた。反応混合物を室温にて14時間攪拌した。反応の最後に、メタノール(2mL)を添加して、残りの塩化アシルをクエンチした。その後、反応混合物を500mL分液漏斗に移し、2x50mLのHCl洗浄液、2x50mLの重炭酸ナトリウム及び1x50mLのブライン溶液で抽出した。ジクロロメタンを減圧下に除去し、残留物をヘキサン中に再溶解し、酢酸エチル/ヘキサン(5/95v/v%EA/ヘキサン)を用いてシリカゲルカラムの短プラグをとおして溶離した。生成物をNMR及びMALDIにより確認した。本例単官能エステルをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(13)を提供するための反応を下記スキームVIIIに概略的に示す。
【0113】
【化23】

【0114】
比較例A及び例8〜10
コンタクトレンズの調製
例3の二官能エステルをベースとするPDMS RAFTホモポリマー(9)を用いてコンタクトレンズを調製した。比較例A及び例8〜10の各配合物の量及び成分を下記の表1に示す。表1に示す量は質量部である。
【0115】
【表1】

【0116】
表1の各処方の混合物をポリプロピレンコンタクトレンズモールドにキャスティングした。キャスティングの前に、すべてのモールド部品を窒素チャンバー中に少なくとも18時間入れた。キャスティング手順において、窒素下に、前部モールドを特定体積の混合物で充填し、その後、後部モールドでキャッピングした。モールドをホールディングプレートに入れ、窒素パージされた炉に移し、そこで、周囲温度又は55℃で1〜18時間連続窒素パージ下にUV光に暴露することにより硬化した。モールドを手で分離し、レンズをイソプロピルアルコール/水の30%溶液中に一晩解放した。レンズを100%イソプロピルアルコール中で4時間膨潤させることにより取り出した。イソプロピルアルコール濃度を水で50%に低減し、その後、レンズを100%水中に入れた。
【0117】
比較例B及び例11〜13
コンタクトレンズの調製
例5のキサンテート-PDMS-キサンテート-RAFTホモポリマー(9)を用いてコンタクトレンズを調製した。比較例B及び例11〜13の各配合物の量及び成分を下記の表2に示す。表2に示す量は質量部である。
【0118】
【表2】

【0119】
表2の各処方の混合物をポリプロピレンコンタクトレンズモールドにキャスティングした。キャスティングの前に、すべてのモールド部品を窒素チャンバー中に少なくとも18時間入れた。キャスティング手順において、窒素下に、前部モールドを特定体積の混合物で充填し、その後、後部モールドでキャッピングした。モールドをホールディングプレートに入れ、窒素パージされた炉に移し、そこで、周囲温度又は55℃で1〜18時間連続窒素パージ下にUV光に暴露することにより硬化した。モールドを手で分離し、レンズをイソプロピルアルコール/水の30%溶液中に一晩解放した。レンズを100%イソプロピルアルコール中で4時間膨潤させることにより取り出した。イソプロピルアルコール濃度を水で50%に低減し、その後、レンズを100%水中に入れた。
【0120】
本開示中に開示される実施形態に様々な変更がなされうることは理解されるであろう。それゆえ、上記の記載は限定するものと解釈されるべきでなく、好ましい実施形態の単なる例示と解釈されるべきである。たとえば、上記の本発明を実施するための最適な形態として用いられる機能は例示の目的のみである。本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、当業者によって他の仕組み及び方法が実施されてもよい。さらに、ここに示した特徴及び利点の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者は他の変更を考えるであろう。
【0121】
他の特徴及び実施形態
(a)可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物を含むバイオメディカルデバイスであって、上記のシロキサン含有ホモポリマーは下記一般式
【0122】
【化24】

【0123】
(上式中、Lは結合基であり、R10は独立に直鎖もしくは枝分かれC〜C30アルキル基であり、nは2〜100であり、Aは独立にRAFT剤のチオカルボニル断片である)のものである、バイオメディカルデバイス。
【0124】
(a)可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物を含むバイオメディカルデバイスであって、上記の混合物は疎水性モノマー、親水性モノマー又はその両方をさらにを含む、バイオメディカルデバイス。
【0125】
(a)可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物を含むバイオメディカルデバイスであって、ここで、上記の1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーはメタクリル酸、アクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート及びそれらの混合物からなる群より選ばれる親水性モノマーである、バイオメディカルデバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーを含む混合物の重合生成物を含むバイオメディカルデバイス。
【請求項2】
前記1つ以上のチオカルボニルチオ断片はジチオエステル断片、キサンテート断片、ジチオカルバメート断片又はトリチオカーボネート断片を含む、請求項1記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項3】
前記シロキサン含有ホモポリマーはRAFT剤のチオカルボニル断片によりエンドキャッピングされている、請求項1又は2記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項4】
前記シロキサン含有ホモポリマーは下記一般式
【化1】

(上式中、Lは結合基であり、R10及びR11は独立に、水素、直鎖もしくは枝分かれC〜C30アルキル基、C〜C30フルオロアルキル基、C〜C20エステル含有基、アルキルエーテル基、シクロアルキルエーテル基、シクロアルケニルエーテル基、アリールエーテル基、アリールアルキルエーテル基、置換もしくは未置換C〜C30アルコキシ基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキルアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルケニル基、置換もしくは未置換C〜C30アリール基、置換もしくは未置換C〜C30アリールアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリール基、置換もしくは未置換C〜C30複素環、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリールアルキル基、フッ素、C〜C30フルオロアリール基、シロキシ基又はヒドロキシル基であり、nは2〜100であり、AはRAFT剤のチオカルボニルチオ断片である)のものである、請求項1〜3のいずれか1項記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項5】
10は独立に直鎖もしくは枝分かれC〜C30アルキル基であり、R11はシロキシ基であり、Aは独立にジチオエステル断片、キサンテート断片、ジチオカルバメート断片又はトリチオカーボネート断片である、請求項4記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項6】
前記シロキサン含有ホモポリマーは下記一般式
【化2】

(上式中、Lは結合基であり、R10は独立に、水素、置換もしくは未置換C〜C30アルキル基、C〜C30フルオロアルキル基、C〜C20エステル含有基、アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、シクロアルケニルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテル、ポリエーテル含有基、置換もしくは未置換C〜C30アルコキシ基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルキルアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30シクロアルケニル基、置換もしくは未置換C〜C30アリール基、置換もしくは未置換C〜C30アリールアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリール基、置換もしくは未置換C〜C30複素環、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは未置換C〜C30ヘテロアリールアルキル基、フッ素、C〜C30フルオロアリール基、シロキシ基又はヒドロキシル基であり、nは2〜100であり、Aは独立にRAFT剤のチオカルボニル断片である)のものである、請求項1〜5のいずれか1項記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項7】
前記1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーはシリコーン含有モノマーである、請求項1〜6のいずれか1項記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項8】
前記1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーは親水性モノマー又は疎水性モノマーである、請求項1〜7のいずれか1項記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項9】
前記1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーは不飽和カルボン酸、アクリルアミド、ビニルラクタム、ポリ(アルキレンオキシ)(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート、親水性ビニルカーボネート、親水性ビニルカルバメートモノマー、親水性オキサゾロンモノマー及びそれらの混合物からなる群より選ばれる親水性モノマーである、請求項1〜8のいずれか1項記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項10】
前記1種以上のシロキサン含有ホモポリマーは前記混合物の約0.1〜約40質量%を占め、そして前記1種以上のバイオメディカルデバイス形成性モノマーは前記混合物の約0.1〜約90質量%を占める、請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項11】
前記混合物は(c)架橋剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項12】
前記バイオメディカルデバイスはコンタクトレンズ、硬質ガス透過性コンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、ヒドロゲルコンタクトレンズ、眼内レンズ及び角膜インプラントからなる群より選ばれる、請求項1〜11のいずれか1項記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項13】
前記バイオメディカルデバイスはヒドロゲルである、請求項1〜11のいずれか1項記載のバイオメディカルデバイス。
【請求項14】
(a)RAFT剤の1つ以上のチオカルボニルチオ断片を含む1種以上のシロキサン含有ホモポリマー及び(b)1種以上の親水性モノマーを含む混合物の水和された重合生成物を含むシリコーンヒドロゲル。
【請求項15】
前記1種以上の親水性モノマーは不飽和カルボン酸、アクリルアミド、ビニルラクタム、ポリ(アルキレンオキシ)(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート、親水性ビニルカーボネート、親水性ビニルカルバメートモノマー、親水性オキサゾロンモノマー及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項14記載のシリコーンヒドロゲル。

【公表番号】特表2012−530280(P2012−530280A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516150(P2012−516150)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/038463
【国際公開番号】WO2010/147874
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】