説明

バイオリアクターからの機械的に敏感な物質の滅菌サンプリングを備えた工程分析システム

【課題】機械的に敏感な物質を含む試料が滅菌された方法でバイオリアクターから取り出されるサンプリング・バルブ、ならびに自動化されたバイオセンサーからの試料の滅菌取り出しおよび試料の穏やかな輸送を許容し、分析ステーションに、機械的に敏感な物質、特に細胞を含む、分析ステーション、特にクロマトグラフィー・システム、バイオセンサー、および細胞測定装置を備えた工程分析システムを提供する。
【解決手段】
規定された体積の試料を、試料の機械的負荷を小さくして、バイオリアクターから取り出すためのサンプリング・バルブであって、規定された容積の試料室、正面シーリング要素および後部シーリング要素を含み、正面シーリング要素が接続シャフトを介してバイオリアクターの内部の方向に開かれ、同時に、後部シーリング要素が試料室に対して閉じられている、サンプリング・バルブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的に敏感な物質を含有する試料をリアクターから取り出すサンプリング・バルブ(またはサンプル採取バルブ)、ならびに、バイオリアクターから自動かつ滅菌で試料を取り出すこと、および機械的に敏感な物質、特に細胞を含んでいる試料を分析ステーションへ穏やかに輸送することを可能にする分析ステーション、特にクロマトグラフィー・システム、バイオセンサーおよび細胞測定装置を備えた工程分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
滅菌サンプリングは発酵工程において標準的な手順である。それは、バイオプロセスの状態および品質、並びに特にその後者に起因する生成物の状態および品質を測定または検出するための、試料分析の過程における最初の操作工程である。この点について、実験室の技術者は従来、多くの場合、手動で試料を取り出す必要があった。試料の調製(即ちバイオマス分離および一定分量に分けること(またはアリコーティング(aliquoting)))、および、最後にいくつかの異なる分析装置による分析が、中央分析ステーションへ試料を送った後に行われる。分析結果は製品品質の文書化(ドキュメンテーション)のため印刷され、データベースに手動で入力され、格納される。さらに、適切に同定された予備試料は後の検出法のために低温で保存される。バイオプロセスにおいて得られた製品を販売する、または品質欠陥のため捨てる目的のために、分析結果は品質保証システムにおいてチェックされる。これらの工程はすべて非常に労働集約型であり、従ってその結果、高コストである。リアクターにおけるプロセスは通常、得られた分析結果の手動入力の後、制御および調節される。従って、プロセスの制御および調節の完全な自動化は可能でない。
【0003】
必要とされる人員の数を減らすために、多数の自動化された個別のコンポーネント(例えば滅菌サンプリング装置、ピペッティング・システム、および自動分析器)が市場において入手可能である。しかし、サンプリングと分析の完全な自動化は、試料が従来、生産地から、品質管理のための独立した研究所へ専ら人員によって輸送されてきたという事実、およびその結果、自動化の連鎖が途切れるため、不可能である。さらに、研究所での分析は、プロセス制御を可能にするリアルタイム情報を提供しない。
【0004】
欧州特許出願公開第1439472 A1号は、特にプロセス・クロマトグラフィーによる、滅菌であることに特別な要求が課されない化学および高分子科学における、自動の工程分析、制御、および調節について記載している。記載された解決方法は、機械的に敏感な物質、特に生物学的な物質、および特に生細胞の取り扱いに必要とされる条件を満たさない。記載された工程分析システムは、ほとんどのバイオ応用技術に適さない。
【0005】
バイオ応用技術のためのプロセス・クロマトグラフィーは、米国特許出願公開第2004/259241 A1号(グロートン(Groton)バイオシステムズ)に記載されている。記載されたサンプリング装置は、製造において通常の滅菌方法である、蒸気による滅菌がされないため、実験室規模のバイオリアクターに制限される。さらに、ダイオネクス(Dionex)株式会社は、バイオ応用技術のプロセス制御のために操作することができるDX−800プロセス・クロマトグラフ(製品パンフレット『DX−800プロセス・アナライザー、プロセス分析液体クロマトグラフィー』)を提示する。このシステムは自動クロマトグラフィーを提供するが、バイオリアクターにおける滅菌技術の厳密な要求に対応するサンプリングを提供しない。さらに、このシステムは無細胞の媒体の分析に限定されている。両方のシステムはいくつかのパラメーターを測定するために設計されている。しかしそれらは、特に剪断力に対して敏感な物質(例えば細胞)のサンプリングのための総合的な解決手段を提供せず、工程制御システムと接続するための重要な自動化ユニットが欠けているため、得られたデータによるバイオプロセスの制御および調節を提供しない。
【0006】
上述のバイオテクノロジー応用技術のための2つのシステムの更なる共通の欠点は、蒸気による減菌が可能でないことに加えて、それらが特定のバイオクロマトグラフィー工程のための試料調製にのみ適しているという事実である。かかるシステムは、他の分析法に柔軟に用いることができず、その代り、記載された特定のバイオクロマトグラフィー工程に、専ら用いられる。
【0007】
生物学的物質および特に細胞を取り出すためのバイオプロセスのためのサンプリング装置、および特にサンプリング・バルブは、先行技術として知られており、そのいくつかは商業的に入手可能でさえある。例えば、ケオフィット(Keofitt)社の国際公開第1990/012972 A1号は、2つの部分、即ちバルブ本体およびバルブ・ヘッドからなる、サンプリング・バルブについて記載する。バルブ本体の内部において、2個のコネクターが、ゴム膜の周りで環状チャンネルを経由して接続される。この構造は、バルブが使用前後に滅菌されることを可能にする。ザルトリウスBBIシステムズ社の国際公開第2004/044119 A1号は、円筒形のフロー・チャンネルおよびフロー・チャンネルを遮るためのラムを備えた冷却可能なサンプリング・バルブについて記載しており、前記サンプリング・バルブの壁面は、例えば蒸気滅菌の後に、バルブを迅速に冷却することを可能にするために薄い物質、通常は金属、特にステンレス鋼でできている。国際公開第1990/012972 A1号および国際公開第2004/044119 A1号は、取り出した試料の輸送について記載していない。国際公開第1990/012972 A1号および国際公開第2004/044119 A1号の、2つの上述のサンプリング・バルブの欠点は、両方がサンプリング・バルブのヘッドとバイオリアクターの間に金属−金属接触インターフェースを有し、サンプリング・バルブを蒸気滅菌する場合には、これがバイオリアクターにおいて媒体の局所的な加熱をもたらし、その結果、より多くの細胞凝集物がサンプリング・サイトで発生する(いわゆる生物付着)ことである。記載されたサンプリング・バルブが開かれると、かかる凝集物(それらはまた、バイオリアクターの通常の操作の間にも発生する)は、渦を巻いて上昇し、バルブ内へ移動することがある。従って、目詰りを回避するため、比較的大きな直径を備えた輸送導管が、取り出した細胞懸濁液の輸送に必要である。さらに、試料の体積は、専らサンプリング・バルブの開放時間の調節により決定される。その解決方法は、あらかじめ規定された体積、および特に小さな体積の厳密な取り出しを可能にしない。さらに、細胞を含む小さな体積の試料を、この試料が、輸送の間、例えば輸送の間の沈降分離、または剪断による細胞の破壊によって、不純物によりその品質を低下させることなく長距離にわたって輸送することは、従来知られていない。
【0008】
従って、自動化システムへの統合された接続を備えたバイオプロセスの制御および調節のため、自動的で融通のきく工程分析システムを利用可能にする必要があり、その工程分析システムは、生物学的物質、特に生細胞のような機械的に敏感な物質を含む、小さな試料体積のサンプリング、穏やかな輸送および調製を可能にし、その工程分析システムへ、常套的なバイオクロマトグラフィー・システムおよび/または別の分析器が統合され得る。前記工程分析システムは、滅菌条件下で操作され得るだろう。また、バルブおよび輸送導管は、可能な限り蒸気を用いて、リアクター媒体の加熱をもたらさずに滅菌され得るだろう。
【0009】
本発明の第1の主題は、規定された体積(または所定の体積)の、特に生物学的物質、および特に生細胞物質の試料を、特に剪断力を原因とする機械的な負荷を減少させて取り出すためのサンプリング・バルブである。
【0010】
サンプリング・バルブの特定の実施態様は,好ましくは、前部シーリング要素および後部シーリング要素によって境界が定められた、規定された体積の円筒状の試料室(またはサンプル・チャンバー)を含む。前部シーリング要素は通常、接続シャフトによって作動する。前部シーリング要素はバイオリアクターの内部の方向に開かれ、そして好ましくは同時に、後部シーリング要素が試料室に対して閉じられる。このようにバルブが開いた状態において、試料室内に閉じこめられた気泡がリアクターの中へ逃げ、決められた体積の試料が、バイオリアクターから試料室へ流れ込む。後部シーリング要素はサンプリング体積を制限し、決められた体積の取り出しを可能にする。閉じる力は、バネ、好ましくは渦巻きバネ(または螺旋バネ)の予張力(またはプレテンション、pretension)によって、接続ロッドを介して、加圧板から後部シーリング要素へ伝達されることが可能であり、前記後部シーリング要素は、シーリングデバイス、好ましくはO−リングによってバルブ軸に対して圧迫される事により、シーリングを提供する。予張力は通常、試料室とリアクターの間の圧力差が少なくとも+1.5barとなるように調節される。従って、バネの前記予張力において、バイオリアクター内が加圧または真空状態であることによって、意図せずにバルブが開くようなことはなく、また、(例えばオートクレーブ(または加圧滅菌)中の)外圧と比較して、リアクターの内圧を増加させず、そのことがさらに閉じる力を強め得る。サンプリング・バルブは、好ましくはリフティング・シリンダー(または持ち上げシリンダー)の動作によって開かれる。空気圧によって(圧縮空気による制御)、または電気的に(インパルスによって)、好ましくは空気圧によって起こり得る制御により、リフティング・シリンダーを解除した後、バルブは閉鎖命令が発された後、1秒の何分の1かの間に閉じ、この短い遅れは、試料の厳密な体積を保証する。接続シャフトに据え付けられたガイドロッドは、シーリング面の安全な位置決めとして役立ち得る。サンプリング・バルブが開かれる時、バネの復元力に逆らって向けられた圧力は、ガイドロッドに伝達され得る。膜は通常、このガイドロッドに取り付けられ、2つの保持板の間で締め付けられておくことが可能である。ガイドロッドにおける圧力は膜のたわみを生ぜしめ、それは、試料室および後部バルブ内部を外界から密閉する。膜の負荷を減少させるために、後部バルブ内部は、好ましくは試料室よりも大きな直径を有する。
【0011】
本発明の特定の実施態様において、プローブ・ヘッド(リアクターへの開口部)上のサンプリング・バルブは、自浄式フィルターによって、大きな凝集物が試料室および輸送導管に入ることができないように保護される。このフィルターの気孔の幅は通常0.02μm〜2mmであるが、好ましくは0,45μm〜1mmである。サンプリング・バルブの特定の実施態様において、フィルターは、中空チャンバーを有し、その中空チャンバーは、閉じられた状態において、前部シーリング要素のまわりのキャップによって内部から充填され、即ち孔がキャップによって内部から閉じられる。開いた状態において、キャップはリアクターの方向に移動され、その結果、開放された領域が形成される。
【0012】
膜は、好ましくは、水蒸気に強い物質、好ましくはEPDM、シリコン、HNBRまたはPFRプラスチックで作られている。プローブ・ヘッドは、好ましくは、医薬的用途として認可されたプラスチック(好ましくはPVDF、PEEKまたはPOM)で作られており、それは、ステンレス鋼よりも低い熱伝導性を有し、細胞が著しく付着しにくい。このように、付属のリアクターに金属・金属接触インターフェースはなく、そのため、例えば蒸気滅菌による洗浄工程の間、バイオリアクターの局所的な加熱およびシーリングデバイス(それは好ましくはO−リングである)上の付着層を回避することが可能となる。
【0013】
小さなサンプリング体積が、頻繁なサンプリングには必須である。本発明のサンプリング・バルブにより、2ml〜200ml、好ましくは5ml〜20mlの正確に規定された体積を取り出すことが可能である。
【0014】
本発明によるサンプリング・バルブは、標準的なプローブに類似して、ねじ込み式接続により、好ましくはDN25の直径を有する標準化された発酵槽ノズルの中へ取り付けられ、通常、シーリングデバイス、好ましくはいわゆるO−リングと共に取り付けられる。試料および後の工程で用いられる洗浄液の流出挙動を改良するために、バイオリアクターの外壁に、サンプリング・バルブを下方に傾けて設置することが有利である。好都合な設置角度は水平方向に対して0°と90°との間であり、好ましくは1°と15°との間である。
【0015】
バルブの別の好ましい実施態様において、円筒形の試料室は、それ自体がノズルの軸に対して傾き得、好ましくは水平方向に対して1°と15°との間である。
【0016】
必要ならば、本発明によるサンプリング・バルブは温度制御され得、その目的のため、サンプリング・バルブは好ましくは容器に入れられ、ペルティエ素子によって温度制御される。
【0017】
バルブを閉じた後、取り付けられた輸送導管への経路が開放される。その後、試料は、ターゲットとなる位置、例えば試料調製および/または分析ステーションへ、実質的に連続的なプラグとして輸送される。試料を輸送するため、ガスおよび液体が通常、進入口およびチャンネルを通って導入され、試料室から後部バルブ内部および排出ノズルに向けて、試料をゆっくり移動させる。進入口はバルブ、好ましくは逆止弁によって保護され得る。
【0018】
サンプリング・バルブは通常、輸送導管および供給導管、特に洗浄導管と連結される。前記連結は好ましくは、オートクレーブ可能で、かつ蒸気滅菌可能である急速閉止連結器(またはカップリング)を用いることによって実施され、それは係合していない状態において、閉止する機構を有し、当該機構は2つの連結部品の滅菌された内部表面を汚染から保護する。
【0019】
本発明の特定の実施態様により、コック(好ましくは三方コック)はサンプリング・バルブと輸送導管との間で統合され、試料が手動で取り出されることを可能にし、好ましくは制御ユニットを有し、分散して操作し得る。
【0020】
本発明の別の主題は、試料をリアクターから取り出すための少なくとも1個の装置、試料輸送装置、および少なくとも1個の試料分析ステーションを含む工程分析システムであって、所定の体積の試料物質がリアクターから取り出されかつ分析ステーションに輸送されることを可能にし、前記試料物質が機械的に敏感な物質、特に剪断力に対して敏感な物質の懸濁液であり、当該物質が小さい機械的負荷、特に小さい剪断力にさらされる、システムである。好ましくは、前記体積は正確に規定され、かつ/または凝集物がない。
【0021】
機械的に敏感な物質(または機械的な力に弱い物質)、特に、剪断力に対して敏感な(または弱い)物質は、本発明の意味において、特に生体物質であり、例えば細胞、バクテリア、酵母のような単細胞菌類、ウィルス、蛋白質沈殿の凝集物、蛋白質結晶、天然たんぱく、抗体、リポソーム、および、特に生きている動物および/または植物細胞である。
【0022】
工程分析システムは通常、少なくとも1つの試料調製および/または試料分析ステーションに接続した, 少なくとも1個のサンプリング装置および試料輸送装置を含む。
【0023】
前記工程分析システムの特定の実施態様において、自動サンプリングのための装置は、本発明のサンプリング・バルブである。
【0024】
本発明による工程分析システムは通常、少なくとも1個の試料分析ステーションを制御し、自動化システム、特に、リアクター、特にバイオリアクターにおける工程を管理(またはガイド)、制御および/または調節するためのプログラム可能な制御装置、もしくは工程制御システムへのリンクを有する。
【0025】
サンプリング装置および試料輸送装置、試料調製ステーションおよび工程分析ステーションは、好ましくは、モジュール設計のものである。
【0026】
試料調製ステーションは通常、サンプリング・バルブ、貯蔵器(またはタンク)、ビュレット、バルブ、バルブアイランド、ドージング(計量)・バルブおよびその他同種のものを含み、それらは輸送導管によって相互に連結され、試料が1工程またはそれより多くの工程で処理されることを可能にする。制御ユニットによる個々のモジュールの適切な操作によって、自動試料調製が行なわれ、かつ制御される。工程分析システムは好ましくは、少なくとも1個の試料調製ステーションを含む。そこで、試料を分析に用いるために必要な工程が行なわれる。それは、例えば、希釈、内部標準の添加、安定剤(例えばグリセリン)、マーカー、または洗浄剤の添加、温度制御(好ましくは4℃〜37℃に冷却する)、pH調節、ストリッピング、再バッファリング、濾過あるいは誘導体化である。これらの工程は完全に自動化された方法で行なわれ、いくつかのセンサーによって監視/制御される。言及され得る適切なセンサーは、例えばpH電極、導電率プローブ、光学濃度、不透明度、圧力、温度、流量を測定するためのセンサーである。
【0027】
本発明の好ましい実施態様によれば、工程分析システム、および特に試料調製ステーションは、試料特性(例えば細胞密度)が、規定された操作サイクル、および特に、必要とされる分析器の使用法に適合するか否か調査するための、センサーで制御された試料試験を含む。細胞密度が高すぎる場合、例えば、分析器は閉塞されることがある。さらに、細胞密度は分析器の測定範囲外にあることがある。この場合、試料の信頼できる定量化が可能となるまで、試料はセンサー制御の下で希釈される。対照的に、細胞密度が定量化するには低すぎる場合、センサー制御の下、試料濃度を増加させるためのプログラムが開始される。
【0028】
試料調製ステーションは好ましくは中央収集容器を有し、そこで、試料調製ステーションにおける試料の処理を調節および/または制御するために、試料をモニターするためのセンサーが統合される。試料が非常に薄められている場合、濃度を増加させるためプログラムが開始され、濃度が高すぎる場合、希釈工程が開始される。これは、分析ステーションの測定範囲、仕様書および/または有効領域外にある試料またはアリコートの測定が行なわれないことを保証する。
【0029】
この種の試料調製は、好ましくは、分析器において、最も高感度な測定範囲内で正確な分析を行なうことができるような方法で、試料を調製するために使用され得る。これは、試料のより広い濃度範囲にわたって、より高感度なパラメーターの測定を可能にし、従って、バイオプロセスの制御を向上させることを可能にする。
【0030】
サンプリング装置および試料分析ステーションは、好ましくは、輸送導管を経由して試料調製ステーションに接続される。これは、試料の取り出し、試料の輸送、試料調製および試料分析のためのモジュール式の総合されたシステムを与える。このモジュール式の構成は、多大な支出を要することなく、種々の分析器のための自動試料調製を設定し得るという長所を特に有する。
【0031】
前記工程分析システムの特定の実施態様において、試料は、アリコーティング・ステーションにおいて、いくつかのアリコートに分割される。これらのアリコートは、1個の試料調製ステーションを連続して通過するか、あるいはいくつかの試料調製ステーションの中へ並行して輸送され、そこでそれらは異なった方法で処理される。工程分析システムの別の実施態様において、アリコーティングは試料調製(例えば濾過、デカンテーション、濃縮、または希釈)の後に行なわれる。
【0032】
工程分析システムは好ましくは、前記アリコートが連続して通過する中央試料調製ステーションを有する。
【0033】
試料調製の後、試料またはアリコートは、輸送導管を経由して、種々の試料分析ステーションへ輸送される。
【0034】
工程分析システムは、好ましくは、自己モニター設備を有し、異なったモジュールの少なくとも1個において、試料特性、好ましくは温度、圧力、pH、流量、光学密度、導電率、不透明度を検出および監視する。
【0035】
工程分析システムの特定の実施態様において、試料の輸送、特に、流量、光学濃度または不透明度は、導管の閉塞を回避するために、輸送導管において監視および制御される。
【0036】
工程分析システムは、好ましくは、停電または故障の場合、接続されているバイオリアクターの内容物の汚染を防ぐ安全な状態で運転されるように、構築される。
【0037】
試料分析ステーションは、様々な試料分析器、例えば細胞計数器、バイオセンサー、分光システム、クロマトグラフィー・システム(例えばHPLC、イオン、アフィニティーおよび/またはゲル浸透クロマトグラフィー・システム)を含み得、それらは試料またはアリコートを検査するために用いられる。分析結果はプログラム可能な制御装置を経由して運ばれ、そして例えば、フィールドバスによって自動化ユニット(例えば工程管理システム)へ送られる。従って、後者は、工程をしかるべく制御および/または調節し得る。文書化は品質保証要求事項に従って管理される。
【0038】
特定の実施態様において、試料分析器は、反応生成物または二次成分の生化学的分析を行なう。反応生成物は一般に、製造されるべき蛋白質であり、二次成分の例は、ビメンチン、乳酸脱水素酵素またはDNAのような、細胞状態パラメーター(または要素)である。
【0039】
工程分析システムの特定の実施態様において、グルコースおよび乳酸塩のような栄養分および代謝生成物の制御のため、バイオセンサーが組込まれる。
【0040】
生化学分析については、生物学的、化学的、または生化学的認識要素(例えば、DNA、RNA、アプタマー、受容体)が、生物機能表面(例えばマイクロタイタープレートの表面、ガラス表面、バイオセンサー表面、ビーズまたは磁気ビーズ表面)と結合することが好ましい。それらの要素には、被検体が、検出の際に認識反応によって特異的に結合する。ここで広く用いられている方法はELISA法である。しかし、生化学の認識要素による生化学分析はまた、溶液における均一系フォーマット、例えば均一系時間分解蛍光(HTRF)の状況において、起こり得る。ここで、生化学の認識要素は信号発生分子、例えば蛍光染料またはナノ粒子と結合する。
【0041】
認識反応の例は、錯体へのリガンドの結合、イオン複合体形成、(生物学的)レセプター、膜レセプター、またはイオンチャンネルへのリガンドの結合、抗体への抗原または付着体の結合(免疫学的検定)、酵素への基質の結合、特定のタンパク質へのDNAまたはRNAの結合、アプタマーまたはスピーゲルマー(spiegelmer)のそれらのターゲットへの結合、DNA/RNA/PNAまたは別の核酸類似体(DNAアッセイ)のハイブリダイゼーション(hybridization)、または酵素による基質の処理である。DNAアッセイの下では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、特に好ましくは動的PCR法が有利に用いられ得る。免疫学的検定のための信号の増幅として、免疫PCR法が有利に用いられ得る。
【0042】
検出される被検体の例は、DNA、RNA、PNA、核酸類似体、酵素基質、ペプチド、蛋白質、潜在的な活性物質、薬剤、細胞、ウィルスである。
【0043】
検出される被検体が結合する認識要素の例は、DNA、RNA、PNA、核酸類似体、アプタマー、スピーゲルマー、ペプチド、蛋白質、金属/金属イオンのための錯化剤、シクロデキストリン、クラウンエーテル、抗体またはそれらのフラグメント、アンチカルシン(anticalcins)、酵素、レセプター、薄膜レセプター、イオンチャンネル、細胞接着蛋白質、ガングリオシド、単糖あるいはオリゴ糖である。
【0044】
種々の認識要素が、空間的に分離するように生化学的検出系の生物機能表面と結合する場合、多数の認識反応が1種の試料を用いて同時に実行され得る。これらのいわゆるアレイ技術は、核酸キャラクタリゼーション、およびまた抗体アレイを用いた蛋白質測定の両方で知られており、本発明の目的を達成するために使用され得る。
【0045】
生化学的検出系の認識反応は、光学的、電気的、機械的、または磁気的な信号変換法を用いることにより、検出され得る。化学発光、電気化学発光、酵素によって誘発された色彩変化の吸収(または吸光)検出、酵素によって誘発された蛍光基質の転化の蛍光検出、アルファ・スクリーン(Alpha Screen)、または均一系時間分解蛍光のような、光学的方法が特に好ましい。アルファ・スクリーンは、光で誘起された一重項酸素が、第1のビーズ上で生成され、生化学的結合反応を経由して、前記第1のビーズと結合した第2のビーズへ拡散した後、それを化学発光へと励起する、均一系検出法である。
【0046】
別の特定の実施態様において、試料を集めて冷却するオートサンプラーは統合される。
【0047】
本発明の好ましい実施態様により、このモジュラー式構造はまた、工程分析システムの制御プログラムに反映される。ドライバーソフトが、好ましくは各モジュールのために、分散された制御および供給ユニットにおいてイン・シトゥー(in−situ)操作されるシステムの制御ユニットに備えられる。自動化ユニットの制御プログラムは、ユーザーによって予め決められた作業手順に従って滅菌サンプリング、自動試料調製、分析、および洗浄の工程を行なうために、このドライバーソフトにアクセスする。供給および輸送導管を介して行う、圧縮空気、蒸気、洗浄液および輸送流体のサンプリング・バルブへの送出は、制御および供給ユニットによって保証かつ調節される。
【0048】
工程分析システムの特定の実施態様において、いくつかのリアクター、特にバイオリアクターは、互いに独立して操作される。各サンプリング装置は、それ自体の制御ユニットによって、従って独立して、分散された方法で操作され得る。更に、異なるセル・ラインで作動し、異なる生成物を生成する、いくつかのリアクターを、単一の工程分析システムを用いて操作し、かつ特に低費用で操作することが可能である。それは、精巧な洗浄管理システムが個々のリアクターに共通の汚染を防ぐことによる。工程分析システムは、各サンプリング装置において、イン・シトゥー操作される分散型自動化ユニットを有する。それは、全ての標準バス・システムによって中央のプログラム可能な制御装置に連結される。このように、個々のユニットは、何ら問題なく、オン/オフを切り替えることができる。
【0049】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、制御プログラムの手順は、ユーザーによって規定することが可能なパラメーターによって確立される。例えば、ユーザーは、従来のパソコンの図表で表されたユーザー・インターフェースによって、利用可能なモジュールおよびそれらによって実行される作用を選択することができる。このように、サンプリング、試料調製および試料分析のための手順の順序は、表になったモジュールによって確定され得る。
【0050】
その後、この手順を記述するパラメーターは、PCによってエクスポートされ、管理システムの制御ユニットに伝達される。そこで、これらのパラメーターは、制御プログラムのプログラム手順を確立する。パラメーターは、制御プログラムが個々のドライバープログラムを呼び出す順番を規定し、特定のモジュールに特定の機能を果たさせるために制御プログラムがドライバーソフトに与える制御パラメーターもまた、規定する。
【0051】
この場合における特別な利点は、モジュールおよび実行するべき機能を選択することによって、図表で表されたユーザー・インターフェースを用いて、プログラム手順が直感的に行われ得るので、制御プログラムのプログラム手順を確立するために、コンピュータの専門家が必要でないということである。特に、実験助手または技術者は、このように図表で表されたユーザー・インターフェースを用いて、前に彼または彼女が手動で行った工程について記述およびトレースすることができる。その後、この記述は、後の者が必要な順にそれぞれ必要なドライバーソフトをアドレスするような、制御プログラムのためのパラメーター化として用いられる。
【0052】
本発明の好ましい実施態様によれば、自動化コンポーネント(例えばシーメンス(SIEMENS)AG社のSimatic S7)が、制御ユニットとして用いられる。かかる自動化コンポーネントは、工業環境において問題なく連続使用するために設計されており、従って、通常のPCのように”クラッシュ”しない。この場合における特別な利点は、ユーザーが手順を入力するのを助けるPC、および制御ユニットが、システムの操作の間、互いに分離され得ることである。すなわち、プログラム手順を確立するパラメーターがPCから制御ユニットに伝達された後、PCを制御ユニットから切断することが可能である。従って、PCから独立させて、制御ユニットを操作することが可能である。
【0053】
本発明の工程分析システムの別の要素は、輸送装置であり、その目的は、規定された体積の敏感な試料が、サンプリング装置から調製または分析ステーションへ、穏やかに、遮断されることなく、かつ減損することなく、伝達されることを保証することである。
【0054】
輸送装置は通常、輸送導管、および輸送導管を通過する試料またはアリコートを穏やかに加速するための少なくとも1個のシステムを含む。
【0055】
従って、本発明の別の主題は、機械的に敏感な物質、および特に生細胞を含む懸濁液を輸送するための輸送装置であり、輸送導管、および、少なくとも2個のビュレットから輸送導管を通る試料またはアリコートを加速させるための、少なくとも1個のシステムを含み、前記ビュレットが下記の工程で操作される:

a) 第1のビュレットを充填し、
b) 第1のビュレットが限界に達する直前に、第2のビュレットを充填し、輸送を引き継がせて、試料を更に加速させず、また、途中で短時間の停止もさせず、
c) 第1のビュレットを輸送導管から分離し、再度利用可能となるように空にし、
d) 工程a)から工程c)を繰り返す。
【0056】
ビュレットは、好ましくは、少なくとも1個のバルブアイランドで輸送導管に接続し、ビュレットおよびバルブアイランドは、輸送速度の正確な調整が保証されるように自動化システムによって制御される。
【0057】
驚くべきことに、輸送導管が、0.5〜3mm、または好ましくは1〜2mmの標準径を有する場合、正確に調節され、かつ好ましくは常に1〜10m/minに、または好ましくは2.5〜3.5m/minに保持された輸送速度は、生体材料、特に生細胞材料のサンプルの穏やかな輸送を可能にすることが判明した。輸送速度の許容される変動量は30%であり、好ましくは最高で2%である。
【0058】
本発明による方法で、生体試料および特に生細胞材料は、いくつかのリアクターから、導管を通って、より長い距離にわたって、輸送速度の変動がより少ない状態で、中断無く、従って特に穏やかで、減損なく、輸送され得る。これはハイブリドーマ細胞およびSF9昆虫細胞に対して実証された。機械的に敏感な物質の懸濁液および特に生細胞の懸濁液を含む場合、規定された輸送速度を維持することが好ましい。なぜならば、輸送速度が速すぎると、例えば剪断力のために物質は破壊され、輸送速度が遅すぎると、物質は水平に走る(または延びる)導管において沈殿物として溜まり得るからである。その輸送は好ましくは空気圧により、または液体を用いて行われる。
【0059】
特定の実施態様において、ビュレットはまた、試料のアリコーティングを確保する。
【0060】
細胞を含まない試料の分析が望まれている場合、細胞は、サンプリング・バルブのプローブ・ヘッド上でフィルターの気孔幅を直接調節することによる濾過によって、分離され得る。あるいは、試料は調製ステーションで濾過することができ、または、沈殿物を容器内に形成するために、容器に集めることができる。沈降分離の後、細胞の少ない試料を上澄み液から取り出し、濾過し、分析器に送ることができる。フィルターを使わず、従ってメンテナンスがほとんど必要でない別法として、試料を<1m/minの速度で輸送する方法がある。5mより長い導管において、すべての細胞は輸送の間に沈殿物として溜まるため、更なる処理のために濾過されることを必要としない、細胞を含まない試料を、サンプリング容器に集めることが可能となる。
【0061】
輸送導管は、好ましくはペルティエ素子によって、0℃〜100℃、好ましくは4℃〜37℃の温度に、好ましくは温度調節可能である。あるいは、温度は熱せられた二重壁の導管によって制御される。
【0062】
試料輸送装置は好ましくは2個のビュレットを有する。ビュレットは、各々がバルブアイランドによって輸送導管に接続されており、次に、輸送導管は1個またはそれより多くのサンプリング・バルブ、調製および分析ステーション、ならびに、空気ならびに輸送および/または洗浄流体の供給源と接続される。
【0063】
輸送導管は好ましくは、少なくとも1個の制御ユニットを有し、それは特に、導管の閉塞を避けるために、輸送導管内において、流量、圧力、光学密度、または不透明度を監視および制御する。
【0064】
滅菌は、信頼性のある長い発酵工程にとって、最も重要である。本発明による工程分析システムの利点は、サンプリング・バルブがリアクター、特にバイオリアクターと共に、オートクレーブされ得、その供給導管は、滅菌(または無菌)接続によって閉じられることである。更に、サンプリング装置およびサンプル輸送装置は好ましくは、蒸気、滅菌された水、または滅菌溶液で洗浄される。分析後、サンプリング・バルブおよびサンプル輸送導管は通常、好ましくは蒸気によって洗い流され、残存する全ての細胞を除去し、システムを滅菌および洗浄するために、通常100〜135℃の温度に加熱される。あるいは、洗浄は、滅菌された水または滅菌洗浄溶液を用いることによってもまた、なされ得る。滅菌された乾燥空気は通常、サンプル輸送システムを冷却乾燥するために、サンプリング・バルブおよび導管を通って運ばれる。後部バルブ内部において、サンプリング・バルブは好ましくは、サンプリング・バルブのより良いイン・シトゥー洗浄のために作用する補助ノズルもまた有する。前記補助ノズルは、洗浄するのに不都合な気泡が後部バルブ内部において形成されないこと、および、その上部においてデッド・スペースが形成されないことを確実にするために使用され得る。
【0065】
試料が輸送され、そして分析およびドキュメンテーションされた後、サンプリング装置およびサンプル輸送装置、ならびに特にサンプリング・バルブおよび輸送導管は通常、定置洗浄(clean−in−place)媒体によって完全に洗浄され、滅菌された空気で乾燥される。
【0066】
後続の乾燥工程において生成物と接触することになる表面におけるコーティングの形成を防ぐため、最後の定置洗浄または定置滅菌手順の間、脱イオン水を用いた適切な洗浄を確実にすることが重要である。
【0067】
本発明は、完全に自動化された試料の分析を可能にし、これは、工程を調節および制御するための工程制御システムおよび/またはプログラム可能な制御器と直接接続することにより分析値を統合した、滅菌状態下での滅菌サンプリング、輸送、調製、および分析を含む。これにより、規定された体積の少量のサンプルの取り出し、および特に細胞を含むサンプルの穏やかな輸送が特に確実にされ、かつ適切ならば、細胞の分離、ならびに液体サンプルの調製および分析が確実にされる。本発明により、作業手順の融通のきく設定が可能となる。更に、作業手順およびシステムで利用可能な分析器の要求に対する、試料調製およびアリコーティングの自動的適合が可能となる。
【0068】
ここに記載された、バイオプロセスのための工程分析システムの大いなる利点はまた、いくつかのバイオリアクターが互いに独立して操作されうる点である。各々のバルブは分散して、従って独立して制御される。更に、精巧な洗浄管理システムが個々のバイオリアクターに共通の汚染を回避するので、種々の細胞ラインとともに作動し、種々の生成物を製造するいくつかの反応器が、単一の工程分析システムによって操作され、従って特に低い費用で操作されることが考えられる。
【0069】
いくつかのバイオリアクターからの異なる試料は、中央の“知能(またはインテリジェンス)”において集められ、処理され、かつ評価され、また、個々のバイオリアクターそれぞれに高価な分析システムを提供する必要がないので、これは非常により費用対効果の良い、より融通のきく、そしてより信頼性のある、市場で入手可能な従来のシステムの代替手段である。更に、統合された自動化ユニットはバイオプロセスが調節および制御されることを許容する。
【0070】
下記の図は本発明を限定することなく説明する。
図1aは、バイオリアクター(1)に取り付けられ、バルブが開いた時に試料が最初に流れ込む、規定された容積の試料室(3)を備えた、開いたサンプリング・バルブ(2)を示す。後部シーリング要素(17)はサンプリング体積の範囲を定め、小さい規定された体積の取り出しを可能にする。前部シーリング要素(16)は、液体がバイオリアクターからサンプリング・バルブの中へ更に流れ込むことを回避する。バルブを閉めた後(図1b)、接続した輸送導管(4)への経路が開放される。そこで、試料は実質的に連続しているプラグ(6)として、ターゲットとなる位置(7)、即ち中央試料調製および/または分析ステーションへ輸送される。2個のビュレット(8)が好ましくは使用され、これらは適切な相互作用によって、連続的な(または一定の)輸送速度、従って導管を通る、減損のない穏やかな輸送を特に可能にする。細胞懸濁液は試料収集容器に集められる。そこで、試料分析(10)のための様々な測定、例えばアリコーティング、細胞分離、種々の分析法の使用、または、保持された試料(9)の閉じ込め、同定、および冷凍が行われる。最後に、測定結果を解析した後に、データが出力され、品質保証のために適切な方法でコンピュータ・システム(12)のデータベースに格納される。分析結果はそこで自動化システム(13)に転送される。
【0071】
図2に図示された実施態様に示されるように、サンプリング・バルブ(2)は、標準的なプローブと同様に、ねじ込み式接続(27)により、DN25の直径を有する標準化された発酵ノズル(14)に取り付けられる。サンプリング・バルブ(2)はシーリングデバイス(29)、好ましくはいわゆるO−リングによって、ノズルの内側でシーリングされる。エネルギーのない状態において、サンプリング・バルブ(2)は、前部シーリング要素(16)によって、リアクターの空間に対して閉じられている。バネ(15)、好ましくは渦巻きバネの予張力により、閉じる力は、接続ロッド(18)を経由して、加圧板(21)から前部シーリング要素(16)へ伝達される。前部シーリング要素(16)は、シーリングデバイス(30)、好ましくはO−リングによって、バルブ軸(42)に当てられて押し付けられることにより、シーリングを提供する。オートクレーブ可能なリフティング・シリンダー(22)の作動によりバルブが開かれると、バネ(15)の復元力と反対方向の圧力がガイドロッド(18)に伝達される。膜(19)は、2枚の保持板(20)の間で締め付けられており、このガイドロッド(18)の上に設けられている。ガイドロッドにおける圧力は膜(19)のたわみを引き起こし、それが試料室(3)および後部バルブ内部(36)を外界から密封する。同時に、前部シーリング要素(16)はバイオリアクターの内部の方向に開き、そして後部シーリング要素(17)は円筒形の試料室(3)に対して閉じられ、シーリングデバイス(40)によって密封される。このバルブが開いた状態において、試料室(3)において封じ込められた気泡は、バイオリアクター(1)の中へ逃げ、規定された体積の試料がバイオリアクターから試料室(3)に流れ込む。プローブ・ヘッド(32)において、大きな凝集体が試料室(3)および輸送導管(4)に入ることができないように、サンプリング・バルブは自浄式フィルター(39)によって保護される。このフィルター(39)はプローブ・ヘッドの一部を取り囲み、凝集体がバルブ内に進入することを防ぐ。フィルターの気孔(43)の幅は、0.5mm〜2mmであり、好ましくは1mmである。細胞のない試料を取り出すため、0.02〜2μmの、好ましくは0.45μmの気孔幅のフィルター表面が使用され得る。開いた状態において、キャップ(41)は発酵槽の方向に引出され、従って開かれた領域を形成する。いくつかの気孔(43)は、白い箱として描かれ、それを通して、試料は全ての方向からバルブの中へ入り得る。リフティング・シリンダー(22)が空気圧により、制御機器(33)によって解除された後、バルブは閉じる。キャップ(41)はバルブの方向に移動し、フィルター(39)の中空チャンバーを内側から充填し、即ち、気孔(43)が内側からキャップ(41)によって閉じられる。接続シャフトに設けられたガイド(34)は、シーリング表面の確実な位置決めのために作用する。試料を輸送するために、ガスまたは液体は、進入口(24)および入口チャンネル(31)を通って導入され、試料を試料室(3)から後部バルブ内部(36)および流出ノズル(25)へゆっくり移動させる。進入口は、バルブ(35)、好ましくは逆止弁によって保護される。後部バルブ内部(36)に付加的に配置された補助ノズル(26)は、より良いイン・シテュー洗浄を許容する。膜への負荷を減少させるため、後部バルブ内部(36)は、試料室(3)よりも大きな直径を有する。補助ノズル(26)は、洗浄に不都合な気泡の形成を防ぎ、従って後部バルブ内部(36)の上方のデッド・スペースを防ぐ。試料の輸送のため、試料は、ガスの圧力の下で、または液体によって、流出ノズル(25)を通って輸送導管(4)に伝達される。
【0072】
図3aは、バイオリアクターの壁に、下方に傾けて設置されたサンプリング・バルブ(2)の好ましい実施態様を示す。
【0073】
図3bは、円筒形の試料室(3)自体が、ノズルの軸に対して傾いている、バルブの別の好ましい実施態様を示す。
【0074】
図3cは、バイオリアクターの壁に、90℃下方に傾けて設置されたサンプリング・バルブ(2)の、別の好ましい実施態様を示す。
【0075】
図4は、係合していない状態において、2個の連結部分(38)の滅菌された内部表面を汚染から防ぐ閉鎖メカニズムを有する、オートクレーブ可能かつ蒸気滅菌可能な急速閉止連結器(37)によって、サンプリング・バルブを、供給導管、洗浄導管、および輸送導管で構成される導管システムと連結させる、可能な方法を示す。試料は中央試料調製および/または分析ステーション(7)へ輸送される。更に、互いに独立して働く幾つかのバイオリアクターが使用され得る。各々のバルブは分散して、そして独立して動かされ得る。
【0076】
図5は、明確さのため、1個のサンプリング・システム(45)のみを備えた、中央試料調製および/または試料分析ステーションを示す。供給導管は実線で示され、一方、コンポーネントの制御は破線で表現される。これらの線の矢印はそれぞれの場合において、伝達の方向を指す。工程分析システムは、それぞれのサンプリング・システムにて、分散した(または集中排除された)現場でのオペレーション(47)とともに、分散した(または集中排除された)制御および供給ユニット(46)を有する。これは、中央自動化ユニット(48)を経由して通信する。分散した制御および供給ユニット(46)は圧縮空気、蒸気、洗浄液、および輸送液の供給を調節する。制御ユニット(49)は、サンプリング・システム(2)と三方コック(44)との間で輸送導管に統合される。三方コック(44)は手動サンプリング(50)を許容する。2個のビュレット(51、52)は、試料の輸送およびアリコーティング(70)を確実にするために、自動化システムによって作動させられる。試料は中央収集容器(53)に輸送される。そこで、プローブ(54)は試料の特性を決定し、攪拌器(55)が追加的に統合される。試料が別の処理のために希釈され得るかどうか、濃縮され得るかどうか、または処理されないままであり得るかどうかを決めるために、信号が自動化システムに伝達される。試料は収集容器から様々な分析器へ分配され、濾過されていない試料は細胞計数器(56)または分析器1(57)で検査される。試料の別の部分は、フィルター(62)を通過し、分析器2(58)、クロマトグラフィー(59)、および/またはバイオセンサー(60)に分配される。全ての分析器(56〜60)は廃液容器(61)に接続されるが、明確さのため、その接続は図示していない。分析器は、いずれの所望の数および配列でも、結合され得る。異なる分析器のために異なる予備的工程が必要とされる場合、中央収集容器(53)の試料は、各々個別の分析器のために、適切に調製され得る。全ての測定値は、バイオプロセスを調節および/または制御するために自動化システムに送られる。全ての試料は廃液容器(61)に収集される。
【0077】
図6はフローチャートを示す。試料がバイオリアクターから取り出された後、全ての試料は穏やかに中央収集容器へ輸送される。予備試験において、センサーが試料の特徴を決定する。濃度が高すぎる場合、センサーにより制御された試料希釈プログラムが開始される。これは、試料が所望の濃度範囲内になるまで繰り返される。その後、試料調製プログラムが開始され、試料は様々な分析器にて測定される。分析結果は工程制御システムへ送られる。全ての測定の完了後、バルブおよび導管の蒸気滅菌および洗浄が開始される。工程制御システムは、プロセスを調節するために分析結果を使用する。
【0078】
下記の実施例は、本発明による試料分析システムの有用性を確認するが、システムをこの使用法に限定するものではない。
【実施例1】
【0079】
本発明によるサンプリング・バルブを用いて、SF9昆虫細胞の試料12mlを、バイオリアクターから取り出し、ホース(内径1.5mm、長さ10m)を通って、3m/minの速度で、図5の試料分析システムへ輸送した。1つの試料は手でバイオリアクターから取り出されて測定され、1つの試料はサンプリング・バルブで取り出されて試料輸送デバイスによって輸送され、測定された。CEDEX分析器(イノバティス(Innovatis)社)を用いて、そこで、死んだ細胞に対する生細胞の割合が、輸送前後で等しいことが測定された。更に、細胞測定ステーション(56)において、CEDEX分析器を使用して、細胞の回収率が90%を越えることを立証した。これによって、本発明の試料分析システムの、生細胞の取り出しおよび輸送に対する有用性が確認された。
【実施例2】
【0080】
本発明のサンプリング・バルブを用いて、腫瘍と闘うための抗体を生成するハイブリドーマ細胞の試料10mlが、バイオリアクターから取り出され、ホース(内径1.5mm、長さ5m)を通って、3m/minの速度で、図5の試料分析システムに輸送された。1つの試料は、手動でバイオリアクターから取り出されて測定され、別の試料はサンプリング・バルブを用いて取り出され、試料輸送装置によって工程分析システムに輸送され、測定された。CEDEX分析器(Innovatis AG)を用いて、そこで、死んだ細胞に対する生細胞の割合が、輸送前後で等しいことが測定された。更に、細胞測定ステーション(56)において、CEDEX分析器を用いて、細胞の回収率が95%を越えることを立証した。これにより、本発明の試料分析システムの、生細胞の取り出しおよび輸送に対する有用性が確立された。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1a】バイオリアクターにおける開口状態のサンプリング・バルブ
【図1b】バイオリアクターにおける閉口状態のサンプリング・バルブ
【図2】開口状態のサンプリング・バルブの側面図
【図3a】サンプリング・バルブの下方に傾いた設置
【図3b】ノズルの軸に対して試料室が傾いた、サンプリング・バルブの水平な設置
【図3c】サンプリング・バルブの90℃下方に傾いた設置
【図4】数個のバイオリアクターの中央分析ステーションへの接続
【図5】試料の輸送、調製、および分析、ならびにバイオリアクターの制御および調節
【図6】フローチャート
【符号の説明】
【0082】
1 バイオリアクター
2 サンプリング・バルブ
3 試料室
4 輸送導管
5 穏やかなガス圧力
6 連続的なプラグ
7 ターゲットとなる位置
8 ビュレット
9 保持された試料
10 試料分析
11 データの出力およびデータベースへの格納
12 コンピューター・システム
13 自動化システム
14 標準化された発酵ノズル
15 バネ
16 前部シーリング要素
17 後部シーリング要素
18 接続シャフト
19 膜
20 保持板
21 加圧板
22 リフティング・シリンダー
23 シーリングデバイス
24 進入口
25 流出ノズル
26 予備ノズル
27 ねじ込み式接続
28 シーリングデバイス
29 シーリングデバイス
30 シーリングデバイス
31 入口チャンネル
32 プローブ・ヘッド
33 制御(コントロール)
34 接続シャフトに設けられたガイド
35 バルブ
36 後部バルブ内部
37 急速閉止連結器
38 連結部品
39 フィルター
40 シーリングデバイス
41 キャップ
42 バルブ軸
43 気孔
44 3方コック
45 サンプリング・バルブ
46 分散した制御および供給ユニット
47 手動サンプリングの分散した局所的制御
48 中央自動化ユニット
49 逆止ユニット
50 手動サンプリング
51 ビュレット1
52 ビュレット2
53 中央収集容器
54 プローブ
55 攪拌器
56 細胞計数器
57 分析器1
58 分析器2
59 クロマトグラフィー・システム
60 バイオセンサー
61 廃液容器
62 フィルター
63 圧縮空気
64 水
65 洗浄媒体
66 輸送媒体
67 蒸気発生器
68 バルブ
69 バルブ
70 アリコーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定された体積の試料を、試料の機械的負荷を小さくして、バイオリアクターから取り出すためのサンプリング・バルブであって、規定された容積の試料室、前部シーリング要素および後部シーリング要素を含み、前部シーリング要素が接続シャフトを介してバイオリアクターの内部の方向に開かれ、同時に、後部シーリング要素が試料室に対して閉じられている、サンプリング・バルブ。
【請求項2】
前記サンプリング・バルブがリフティング・シリンダーの作動により開かれる、請求項1に記載のサンプリング・バルブ。
【請求項3】
前記リフティング・シリンダーが空気圧により、または電気的に駆動される、請求項2に記載のサンプリング・バルブ。
【請求項4】
閉じる力が、バネ、好ましくは渦巻きバネによって、加圧板から後部シーリング要素へ、接続シャフトを介して伝達される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンプリング・バルブ。
【請求項5】
シーリング要素の確実な位置決めのために、ガイドロッドが接続シャフトに取り付けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のサンプリング・バルブ。
【請求項6】
膜が前記ガイドロッドに取り付けられている、請求項5に記載のサンプリング・バルブ。
【請求項7】
前記サンプリング・バルブが、リアクターの内部に対する開口部にて、より大きな凝集体の侵入に対して、自浄式フィルターによって保護されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のサンプリング・バルブ。
【請求項8】
規定された体積が2〜200mlである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のサンプリング・バルブ。
【請求項9】
試料をリアクターから取り出すための装置、試料輸送装置、もし適切であればアリコーティングおよび/または試料調製ステーション、ならびに少なくとも1個の試料分析器、好ましくは細胞計数器、クロマトグラフィー・システム、およびバイオセンサーを含み、試料を取り出すための装置が請求項1〜8のいずれか1項に記載のサンプリング・バルブであることを特徴とする、工程分析システム。
【請求項10】
リアクターにおける工程をガイドする、制御する、および/または調節する、自動化システム、好ましくは工程制御システムまたはプログラム可能な制御装置と接続されていることを特徴とする、請求項9に記載の工程分析システム。
【請求項11】
前記工程分析システムが自己監視設備を有することを特徴とする、請求項8および9のいずれか1項に記載の工程分析システム。
【請求項12】
前記自己監視設備が、試料特性を分析ステーションの要求と比較し、試料調製を制御することを特徴とする、請求項10に記載の工程分析システム。
【請求項13】
機械的に敏感な物質、および特に生細胞を含む懸濁液を輸送するための試料輸送装置が、
輸送導管、および
少なくとも2個のビュレットから輸送導管を通って試料またはアリコートを加速するための、少なくとも1個のシステム
を有し、前記ビュレットが下記の工程:
a) 第1のビュレットを充填する工程、
b) 第1のビュレットが限界に達する直前に、第2のビュレットを充填し、輸送を引き継がせて、試料を更に加速させず、また、途中で短時間の停止もさせない工程、
c) 第1のビュレットを輸送導管から分離して、再度利用可能となるように、再び空にする工程、
d) 工程a)から工程c)を繰り返し、0.5〜3mmの内径を有する輸送導管によって、試料またはアリコートを1〜10m/minの予め決められた輸送速度で伝達させる工程、
で操作されることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載の工程分析システム。
【請求項14】
1またはそれより多くの、独立して作動する反応器、特に、異なる細胞ラインを有するバイオリアクターを制御するための、請求項8〜13のいずれか1項に記載の工程分析システムの使用方法。
【請求項15】
試料分析器が反応生成物および二次成分の生化学的分析を行うことを特徴とする、請求項8〜14のいずれか1項に記載の工程分析システム。
【請求項16】
機械的に敏感な物質および特に生細胞を含む懸濁液を輸送する方法であって、前記輸送を、
輸送導管、および
少なくとも2個のビュレットから輸送導管を通って試料またはアリコートを加速させるための、少なくとも1個のシステム
を含む試料輸送装置によって実施し、前記ビュレットを下記の工程:
a) 第1のビュレットを充填する工程、
b) 第1のビュレットが限界に達する直前に、第2のビュレットを充填し、輸送を引き継がせて、試料を更に加速させず、また、途中で短時間の停止もさせない工程、
c) 第1のビュレットを輸送導管から分離し、再度利用可能となるように、再び空にする工程、
d) 工程a)から工程c)を繰り返し、0.5〜3mmの内径を有する輸送導管によって、試料またはアリコートを1〜10m/minの予め決められた輸送速度で伝達させる工程、
で操作する方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11618(P2013−11618A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−203358(P2012−203358)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2009−505763(P2009−505763)の分割
【原出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(504109610)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Technology Services GmbH
【Fターム(参考)】