説明

バイオ浄化循環システムトイレ

【課題】 汚水中の尿素を電解酸化で処理することにより、汚水を効率よく処理できるバイオ浄化循環システムトイレを提供する。
【解決手段】 汚水の一部又は全部の窒素処理を、電解酸化槽10でおこなうことにより、生物処理槽7での窒素処理すべき量を削減できる。電解酸化槽10では、汚水中の尿素を電解酸化することにより、アンモニアではなくヒドラジンが生成して、さらに窒素ガスとなって大気中に放出されるので、生物処理槽7での微生物による窒素処理に比べ、汚水中の尿素を迅速かつ容易に処理できる。これにより、生物処理槽7での汚水処理を、有機物分解を中心に設定することができるので、生物処理槽7の槽容量を小さくすることができる。そして、窒素処理と有機物分解とを各槽で分担してできるので、汚水を効率よく処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ浄化循環システムトイレに関し、詳細には微生物により汚水を浄化するバイオ浄化循環システムトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバイオ浄化循環システムトイレでは、水洗便器から排出される汚水を受け入れ、微生物により有機物分解および窒素処理をおこなう生物処理槽と、該生物処理槽で処理された一次処理水の固液分離をおこない、ろ過水を生成するろ過槽と、該ろ過槽で生成されたろ過水をオゾン又は活性炭等による脱色処理をおこなう脱色槽と、該脱色槽で脱色された処理水を汲み上げ、再度洗浄水として水洗便器に供給するポンプとを組み合わせたものが知られている。そして、前記生物処理槽での窒素処理では、汚水中のアンモニアを亜硝酸、硝酸の順に変換する硝化処理と、該硝化処理により変換された硝酸の脱窒をおこなう脱窒処理とがおこなわれる。さらに、生物処理槽で窒素処理を良好に維持するために、微生物が消費する酸素や、エネルギー源として利用する有機物を汚泥内に供給するのが一般的である。このようなバイオ浄化循環システムトイレの一例として、オゾン処理槽(脱色槽)が満水になった場合に、オゾン処理槽での余剰処理水を生物処理槽に戻す循環式水洗トイレシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、オゾンの酸化効果により、ろ過水中の難分解性有機物が易分解性有機物に変換され、その易分解性有機物は、余剰処理水とともに生物処理槽に流れ、微生物により分解されるので、汚水の有機物分解を効率よくできる。
【特許文献1】特開2003−247255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の循環式水洗トイレシステムでは、汚水の窒素処理は、生物処理槽で全ておこなわれるので、窒素処理をおこなう硝化菌および脱窒菌が消費する酸素や有機物を汚泥内に多量に供給する必要があり、処理性能の維持にコストがかかるという問題点があった。さらに、槽内の汚泥のpHやDO(溶存酸素濃度)などの条件において、硝化菌が活性化する最適条件と、脱窒菌が活性化する最適条件とが互いに異なるため、生物処理槽を複数に分割したり、経時的に槽内の汚泥条件を制御して、各処理を交互におこなう等の対策が必要であった。また、生物処理槽を分割すると、槽容量を大きくしないといけないので、システム全体が大きくなるという問題点もあった。さらに、生物処理槽で、硝化処理と脱窒処理とがバランスよくおこなわれないと、汚水中に尿素や有機物が分解されずに蓄積されてしまい、処理水の性状が悪化し、汚水を効率よく処理できないなどの問題点もあった。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、汚水中の尿素の一部又は全部を電解酸化で処理することにより、汚水を効率よく処理できるバイオ浄化循環システムトイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、水洗便器から排出される汚水中の有機物を分解するとともに、窒素成分を除去する生物処理槽と、当該生物処理槽で処理された生物処理水をろ過するろ過槽と、当該ろ過槽でろ過されたろ過水を脱色処理する脱色槽とを有し、当該脱色槽で脱色された処理水を洗浄水として、前記水洗便器に循環させるバイオ浄化循環システムトイレにおいて、前記水洗便器と前記生物処理槽との間に、前記水洗便器からの汚水を一時的に貯留する汚水貯留槽と、当該汚水貯留槽に貯留する汚水の一部又は全部を受け入れ、汚水中に含まれる尿素の電解酸化をおこなう電解酸化槽とを備えている。
【0006】
また、請求項2に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記電解酸化槽には、尿素分解酵素が固定化された第1電極と、当該第1電極と異なる電位が与えられる第2電極とが設けられ、前記第1電極と、前記第2電極との間に電流を流すことにより、汚水中に含まれる尿素の電解酸化をおこなうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、電解酸化槽では、汚水の一部又は全部を受け入れ、電解酸化により尿素を窒素ガスにまで直接変換できるので、生物処理槽にかかる窒素処理の負担を軽減することができる。そして、電解酸化槽で汚水の窒素処理をおこなうことにより、生物処理槽を汚水の有機物分解を中心に設定することができる。したがって、汚水処理を各槽で分担しておこなうことができるので、汚水の処理効率を向上させることができる。また、水洗便器から排出された汚水は汚水貯留槽に一旦貯留されるので、汚水貯留槽に貯留された汚水を生物処理槽と電解酸化槽とに各々振り分けることができる。よって、生物処理槽の汚水処理状況、電解酸化槽の汚水処理状況、汚水貯留槽内の汚水量等に応じて、生物処理槽および電解酸化槽への汚水供給量を調整することができる。
【0008】
また、請求項2に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、尿素分解酵素が固定化された第1電極と、第1電極と異なる電位が与えられる第2電極との間に電流を流すことにより、汚水中の尿素がヒドラジンに変換され、さらに酸素又は電極と反応して窒素ガスにまで変換され、大気中に放出される。よって、汚水中の尿素を微生物の働きでアンモニアに変換して、そのアンモニアを亜硝酸、硝酸の順に変換して脱窒する従来の微生物による硝化脱窒法に比べ、迅速かつ容易に窒素処理ができる。また、尿素分解酵素の本来の働きであるアンモニア分解能において、そのアンモニアの分解速度は、微生物のアンモニア分解速度よりも速い。よって、例えば、尿素分解酵素の本来の働きで、汚水中の尿素の一部がアンモニアに変換されても、後で従来の硝化脱窒法により、硝酸を経て窒素にすることができるので、結果的に処理を速めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の第1の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1について、図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1の構成を示すブロック図であり、図2は、バイオ浄化循環システムトイレ1の概念図であり、図3は、電解酸化槽10の概念図である。
【0010】
なお、第1の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1は、汚水ピット6に貯留された汚水の一部を受け入れ、電解酸化によって窒素処理をおこなう電解酸化槽10を備えたものであり、汚水の有機物分解および窒素処理を効率的におこなうことができるものである。
【0011】
はじめに、バイオ浄化循環システムトイレ1の概略構成について説明する。図1に示すように、バイオ浄化循環システムトイレ1は、水洗便器5と、当該水洗便器5から排出される汚水を一時的に貯留する汚水ピット6と、当該汚水ピット6に貯留された汚水を受け入れ、汚水に含まれる有機物を分解するととともに、窒素処理をおこなう生物処理槽7と、当該生物処理槽7で処理された一次処理水を固液分離するろ過槽8と、当該ろ過槽8で固液分離されたろ過水をオゾンによって酸化脱色処理をおこなう脱色槽9と、当該脱色槽9で脱色された処理水を洗浄水として、再度水洗便器5に循環させるポンプ12とを主体に構成され、さらに、汚水ピット6に貯留された汚水の一部を受け入れ、電解酸化により窒素処理をおこなう本発明の特徴である電解酸化槽10を備えている。また、ろ過槽8には、固液分離による残留高濃度汚泥を生物処理槽7に返送する返送汚泥管11が配設され、脱色槽9には、槽内の余剰分の処理水をオーバーフローさせて、生物処理槽7に返送する余剰水返送管13が配設されている。なお、図示しないが、脱色槽9とポンプ12との間には、処理水を洗浄水として貯留するための洗浄水タンクを設けてもよい。
【0012】
また、図2に示すように、生物処理槽7の底部には、ブロワー17に接続された散気管17aが配設され、ろ過槽8の底部には、ブロワー18に接続された散気管18aが配設されている。そして、ブロワー17,18で発生した高圧の空気は、散気管17a,18aを通じて、生物処理槽7,ろ過槽8に送り込まれるようになっている。また、脱色槽9の底部には、オゾンを生成するオゾン発生装置19に接続された散気管19aが配設されている。そして、オゾン発生装置19で生成されたオゾンが、散気管19aを通じて、脱色槽9に送り込まれるようになっている。
【0013】
そして、生物処理槽7は、汚水ピット6に貯留された汚水を受け入れ、汚水中の有機物分解および窒素処理をおこなう。ここでいう窒素処理とは、汚水中の尿素をアンモニアに変換し、このアンモニアを硝化処理して、亜硝酸、硝酸の順に変換する硝化処理と、硝化処理された硝酸を窒素ガスに変換する脱窒処理とをいう。そして、生物処理槽7では、微生物の作用により、汚水中に含まれる尿素が加水分解されてアンモニアが生成される。次いで、そのアンモニアが、硝化菌および脱窒菌によって窒素処理される。よって、これら処理により、生物処理槽7に一次処理水が生成される。
【0014】
さらに、ろ過槽8は、生物処理槽7から供給された一次処理水を受け入れ、槽内に設けられたろ過装置15によって、固液分離をおこなう。ろ過装置15は内部に複数のろ過膜(図示外)を保持し、その膜面を一次処理水が通過することにより、ろ過水が生成される。一方、ろ過装置15でろ過されずに残存する残留高濃度汚泥は、返送汚泥管11によって、生物処理槽7に返送される。
【0015】
そして、脱色槽9は、ろ過槽8で固液分離されたろ過水を受け入れ、散気管19aから送り込まれるオゾンによってろ過水の酸化脱色処理をおこなう。なお、本実施形態では、オゾンの酸化効果によりろ過水を脱色しているが、例えば、活性炭の吸着作用により脱色してもよい。また、脱色槽9に貯留される処理水(脱色処理水)の水位が所定水位よりも高い場合は、その余剰分をオーバーフローさせることにより、余剰水返送管13を通じて、生物処理槽7に返送されるようになっている。
【0016】
次に、本発明の特徴である電解酸化槽10について説明する。図1,図2に示すように、電解酸化槽10は、汚水ピット6に貯留された汚水の一部を受け入れ、電解酸化による窒素処理をおこない、窒素処理水として生物処理槽7に戻すものである。図2に示すように、電解酸化槽10には、槽内に貯留された汚水中の尿素の電解酸化をおこなう電解酸化装置20が設けられている。
【0017】
ここで、尿素の電解酸化について説明する。尿素の電解酸化とは、ウレアーゼ(尿素分解酵素)と尿素とが共存する水溶液中で、カーボン材を電極として電解酸化をおこなうと、アンモニアではなくヒドラジンが生成され、このヒドラジンが酸素又は電極と反応して窒素ガスが生成する反応をいう。以下にその尿素の電解酸化の反応式を示す。
・CO(NH+HO−2e → N+CO+2H・・・(反応1)
・N+O → N↑+2HO・・・(反応2)
・N+4OH−4e → N↑+4HO・・・(反応3)
なお、CO(NHは尿素、Nはヒドラジン、Nは窒素ガスを示す。
【0018】
通常、水溶液中の尿素は、ウレアーゼの触媒効果により加水分解されて、アンモニアに変換されるが、上述した電解酸化をおこなうと、反応1に示すように、アンモニアではなく、ヒドラジンが生成される。さらに、反応2又は反応3に示すように、ヒドラジンは、酸素又は電極と反応することにより、窒素ガスに変換され、大気中に放出される。なお、水溶液中のウレアーゼは、電極に固定化された状態でも、同様の現象が見られることが確認されている。このことから、本実施形態では、尿素の電解酸化をバイオ浄化循環システムトイレに適用することにより、汚水中の尿素の一部又は全部を電解酸化して、直接窒素ガスにまで変換することにより、汚水の窒素処理を効率的におこなうこととした。
【0019】
次に、電解酸化装置20の構造について説明する。図2,図3に示すように、汚水中に含まれる尿素の電解酸化は、電解酸化装置20によっておこなわれる。図3に示すように、電解酸化装置20は、直流電源22と、当該直流電源22に接続され、作用電極としてのカーボンフェルト電極23と、当該カーボンフェルト電極23と対向して設けられ、直流電源22に接続された白金電極24とで構成されている。
【0020】
ここで、カーボンフェルト電極23について説明する。このカーボンフェルト電極23は、100mm×100mm×400mmの略直方体状の電極である。そして、カーボンフェルト電極23は、カーボン材であるカーボンフェルトを電極とし、ウレアーゼを結合させたマレイミドペンダントポリスチレン膜を被膜させて製造されたものである。なお、使用するウレアーゼは、ナタ豆(Jackbean)ウレアーゼ、微生物(bacillus pasteurii)および酸性ウレアーゼからなる酵素群から選択されるウレアーゼを好適に使用することができる。また、カーボン材は、カーボンフェルトに限らず、クラッシーカーボン、プラスチック成形カーボン等でもよい。さらに、作用電極は、金電極でもよい。なお、図3に示すカーボンフェルト電極23が、「第1電極」に相当し、白金電極24が、「第2電極」に相当する。
【0021】
また、カーボンフェルト電極23のウレアーゼの固定化は、カーボンフェルト電極23を0.1mg/mlポリマレイミドスチレンのクロロホルム溶液に30分間浸漬した後、乾燥させ、次に、pH7.0の1mg/mlのウレアーゼの水溶液に10分間浸漬することによりおこなった。
【0022】
そして、図2,図3に示すように、電解酸化装置20を備えた電解酸化槽10の底部には、槽内の汚水を撹拌するための羽根型の撹拌装置25が設けられている。これにより、槽内の汚水がカーボンフェルト電極23の電極表面に均一に接触させることができる。そして、汚水中の尿素が、カーボンフェルト電極23に固定化されたウレアーゼに接触し、ムラなく一様に電解酸化される。
【0023】
次に、汚水ピット6について説明する。図1,図2に示すように、汚水ピット6は、水洗便器5から排出される汚水を全て受け入れて貯留し、その貯留された汚水を、生物処理槽7と、電解酸化槽10とにそれぞれ振り分けて供給するものである。この汚水の振り分けは、生物処理槽7の汚水処理状況や、電解酸化槽10の汚水処理状況等を考慮して調整される。さらに、トイレの使用頻度にともない、汚水ピット6内の汚水量は増減するため、例えば、処理すべき汚水量が多い場合は、電解酸化槽10への汚水供給量を多くするとよい。さらに、電解酸化槽10では有機物分解はおこなわれず、窒素処理のみがおこなわれるため、電解酸化槽10には、尿素含有量の高いし尿ができるだけ供給されるようにし、生物処理槽7には、糞などの固形物が供給されるように、汚水ピット6で振り分ける。なお、この振り分けは、メッシュ状になったスクリーン等でそれらを分離する方法などが考えられるが、とくに限定されない。なお、図1,図2に示す汚水ピット6が、「汚水貯留槽」に相当する。
【0024】
次に、上記構成からなるバイオ浄化循環システムトイレ1の窒素処理の流れについて説明する。まず、図1および図2に示すように、水洗便器5から排出された汚水は、汚水ピット6に貯留される。そして、汚水ピット6に貯留された汚水の一部は、電解酸化槽10へ供給され、その残りは、生物処理槽7へ供給される。
【0025】
そして、電解酸化槽10では、電解酸化装置20によって、槽内に貯留された汚水中の尿素の電解酸化がおこなわれる。まず、図3に示すように、直流電源22が、カーボンフェルト電極23に酸化電位を印加すると、カーボンフェルト電極23と白金電極24との間に電解電流が発生する。そして、汚水中の尿素はヒドラジンに変換され、そのヒドラジンが酸素と反応して窒素ガスに変換される。このとき、白金電極24の電極表面からは水素ガスが発生し、カーボンフェルト電極23の電極表面からは、無色無臭の窒素ガスが発生する。そして、この電解酸化装置20を備えた電解酸化槽10では、1時間当たり、約25gの尿素を窒素ガスに変換して処理することができることがわかっている。こうして、電解酸化槽10で処理された処理水は窒素処理水として、図示外のポンプを介して、生物処理槽7に供給される。
【0026】
一方、図1および図2に示すように、生物処理槽7には、汚水ピット6から汚水が供給され、電解酸化槽10からは窒素処理水が供給され、汚水と窒素処理水とが混合されて槽内に貯留される。この混合された汚水は、所定のレベルまで窒素処理がされているため、通常の汚水よりも尿素含有量が減少している。したがって、その汚水中に残存する尿素は、汚泥中の微生物により、加水分解されてアンモニアに変換され、そのアンモニアは硝化菌および脱窒菌によって、硝化・脱窒処理され、窒素ガスとして大気中に放出される。そして、汚水中の尿素含有量が少ないため、生物処理槽7内の汚水は確実に窒素処理される。また、生物処理槽7では、窒素処理すべき尿素含有量が減少しているので、有機物分解を中心にして処理をおこなうことができる。したがって、バイオ浄化循環システムトイレ1では、汚水の窒素処理は主に電解酸化槽10でおこなわれ、有機物分解は主に、生物処理槽7でおこなわれるので、汚水処理を分担する形態をとることができ、汚水処理を効率的にすすめることができる。
【0027】
以上説明したように、第1の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1によれば、汚水の一部又は全部の窒素処理を、電解酸化槽10でおこなうことにより、生物処理槽7での窒素処理量を減少することができる。これにより、生物処理槽7での汚水処理を、有機物分解を中心に設定することができ、窒素処理と有機物分解とを各槽で分担しておこなうことができるので、汚水を効率よく処理することができる。さらに、生物処理槽7を有機物分解を中心に設定することができるので、例えば、硝化・脱窒処理に合わせて槽を複数に分割したりする必要がなく、槽容量を小さくすることができる。また、電解酸化槽10では、汚水中の尿素を電解酸化することにより、アンモニアではなくヒドラジンが生成して、さらに窒素ガスとなって大気中に放出される。よって、汚水中の尿素を迅速かつ容易に処理することができる。また、生物処理槽7には、汚水ピット6の汚水と、電解酸化槽10で処理された窒素処理水とが混合して供給されるため、混合された汚水中に含まれる尿素は減少している。したがって、生物処理槽7での窒素処理すべき量は少ないため、窒素処理(硝化・脱窒処理)にともない微生物が消費する酸素や有機物の汚泥内への供給量を減らすことができる。また、ウレアーゼの本来の働きであるアンモニア分解能において、そのアンモニアの分解速度は、微生物のアンモニア分解速度よりも速い。よって、例えば、ウレアーゼの本来の働きで、汚水中の尿素の一部がアンモニアに変換されても、後で、生物処理槽7の汚泥中の微生物により、硝酸を経て窒素にすることができるので、結果的に処理を速めることができる。
【0028】
次に、第2の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ100について説明する。図4は、第2の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ100の構成を示すブロック図である。図4に示すように、第2の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ100は、第1の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1の変形例であり、汚水ピット6(図1参照)を省略したものである。
【0029】
図4に示すように、バイオ浄化循環システムトイレ100は、水洗便器50と、当該水洗便器50から排出される汚水を受け入れ、電解酸化により窒素処理をおこなう本発明の特徴である電解酸化槽101と、当該電解酸化槽101で処理された窒素処理水を受け入れ、汚水に含まれる有機物を分解する生物処理槽70と、当該生物処理槽70で処理された一次処理水を固液分離するろ過槽80と、当該ろ過槽80で固液分離されたろ過水をオゾンによって酸化脱色処理をおこなう脱色槽90と、当該脱色槽90で脱色された処理水を洗浄水として、再度水洗便器50に循環させるポンプ120とを主体に構成されている。また、ろ過槽80には、固液分離による残留高濃度汚泥を生物処理槽70に返送する返送汚泥管110が配設され、脱色槽90には、槽内の余剰分の処理水をオーバーフローさせて、生物処理槽70に返送する余剰水返送管130が配設されている。
【0030】
このような構成からなるバイオ浄化循環システムトイレ100では、第1の実施形態で説明した汚水ピット6(図1,図2参照が)設けられていないため、水洗便器50から排出される汚水は、全て電解酸化槽101に供給される。そして、汚水中に含まれる尿素は、電解酸化により窒素ガスに変換され、窒素処理水として槽内に貯留される。なお、槽内に貯留された処理水には糞なども含まれ、それら処理水は、窒素処理水として全て生物処理槽70に供給される。そして、生物処理槽70には、有機物分解されていない窒素処理水が貯留されるため、汚泥中の微生物による有機物分解がおこなわれる。
【0031】
以上説明したように、第2の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ100によれば、第1の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1の効果と同様の効果を生み出すことができ、さらに汚水ピット6(図1,図2参照)を設けないことで、バイオ浄化循環システムトイレ100の設置スペースを小さくすることができる。
【0032】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されることなく、各種の変形が可能である。例えば、第1の実施形態の電解酸化槽10の底部には、槽内の汚水を撹拌するための羽根型の撹拌装置25が設けられているが、水中ポンプで槽内の汚水を撹拌してもよい。
【0033】
さらに、電解酸化槽10にDOセンサを設け、電解酸化にともなって低下する汚水中の酸素濃度を計測し、DOを所定レベルに維持するために、槽内の汚水を曝気する曝気手段を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のバイオ浄化循環システムトイレは、トイレに限らず、生活排水および工業排水などの排水処理にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1の構成を示すブロック図である。
【図2】バイオ浄化循環システムトイレ1の概念図である。
【図3】電解酸化槽10の概念図である。
【図4】第2の実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ100の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1 バイオ浄化循環システムトイレ(第1の実施形態)
5 水洗便器
6 汚水ピット
7 生物処理槽
8 ろ過槽
9 脱色槽
10 電解酸化槽
23 カーボンフェルト電極
24 白金電極
50 水洗便器
70 生物処理槽
80 ろ過槽
90 脱色槽
100 バイオ浄化循環システムトイレ(第2の実施形態)
101 電解酸化槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器から排出される汚水中の有機物を分解するとともに、窒素成分を除去する生物処理槽と、当該生物処理槽で処理された生物処理水をろ過するろ過槽と、当該ろ過槽でろ過されたろ過水を脱色処理する脱色槽とを有し、当該脱色槽で脱色された処理水を洗浄水として、前記水洗便器に循環させるバイオ浄化循環システムトイレにおいて、
前記水洗便器と前記生物処理槽との間に、
前記水洗便器からの汚水を一時的に貯留する汚水貯留槽と、
当該汚水貯留槽に貯留する汚水の一部又は全部を受け入れ、汚水中に含まれる尿素の電解酸化をおこなう電解酸化槽と
を備えていることを特徴とするバイオ浄化循環システムトイレ。
【請求項2】
前記電解酸化槽には、
尿素分解酵素が固定化された第1電極と、
当該第1電極と異なる電位が与えられる第2電極と
が設けられ、
前記第1電極と、前記第2電極との間に電流を流すことにより、汚水中に含まれる尿素の電解酸化をおこなうことを特徴とする請求項1に記載のバイオ浄化循環システムトイレ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−124918(P2006−124918A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310350(P2004−310350)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】