バイオ炭生産方法およびバイオ炭からの組成物
本発明は、陽イオン交換特性を有する酸素化されたバイオ炭物質を生産するための方法であって、バイオ炭源が不完全燃焼プロセスにおいて酸素含有陽イオン交換基を均質に獲得する様式で、1つまたは複数の酸素化化合物と反応させられる方法を対象とする。本発明は、酸素化されたバイオ炭組成物、および酸素化されたバイオ炭物質を含有する土壌配合物も対象とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省とUT-Battelle, LLCとの間の契約番号米国DE-AC05-00OR22725の下で、政府支援とともになされた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0002】
本発明は一般に、土壌中に二酸化炭素を隔離し、土壌を肥沃にするための方法、より具体的には、これらの目的のためのバイオ炭の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
光合成は、地球上のいずれの他のプロセスよりも大気から多くの二酸化炭素(CO2)を捕獲する。毎年、地上の緑色植物は、約403ギガトン(Gt)のCO2(110Gt Cy-1と等価)を大気からバイオマス中に捕獲する。しかし、バイオマスは、炭素物質の安定な形態でないので、バイオマスの相当な部分は、比較的短時間でCO2に分解する。結果として、バイオマス生産の増大(すなわち、樹木成長の増大)は、得られるバイオマスがすぐに吸収されたCO2に戻るので、炭素隔離にとって有用性が限定されている。
【0004】
未処理のバイオマスと異なり、炭素化されたバイオマス(すなわち、木炭または「バイオ炭」)は、高度に安定化された状態で、すなわち、元素の炭素として炭素を含有する。元素の炭素が不活性であることにより、これは、CO2に非常にゆっくりと分解する。一般に、バイオ炭がCO2に完全に分解するのに少なくとも数百年が必要である。結果として、大気のCO2生成を緩和するための手段として、バイオ炭を生産することに大いに興味が持たれている。生産されたバイオ炭を土壌中に取り込むこと(すなわち、土壌改良として)に特に興味が持たれており、この場合、バイオ炭は、CO2捕捉剤および土壌改良の両方として機能する。
【0005】
バイオ炭生産および土壌中への取込みは、古代から行われている。特に関連するのは、アマゾニアにおけるプレコロンビアン固有の農耕民によって形成された土壌、すなわち、いわゆる「Terra Preta」土壌中のバイオ炭粒子の最近の発見である。例えば、B. Liangら、Soil Science Society of America Journal、70巻(5)、Sept-Oct(2006)を参照。
【0006】
バイオ炭肥料の適用による炭素隔離の能力は、かなり大きいと見積もられている。土壌中に入れることができるバイオ炭物質の量は、土壌の10重量%もの高さとなり得る。したがって、米国耕作地土壌単独の最初の30cmの層内に、40Gtの炭素をバイオ炭粒子の形態で隔離することができる。農業土壌中にバイオ炭炭素を貯蔵するための世界的な能力は、400Gtの炭素を超え得る。年間の陸地の光合成産物(110gt Cy-1)の安定なバイオ炭物質への8%という低い変換で、化石燃料を使用して年間に大気中に放出されるCO2の全量(ほぼ8Gt Cy-1)を相殺するのに十分であろう。
【0007】
かなりの量のバイオ炭が現在、バイオマスから生物燃料への生産プロセスにおける副生成物として生産されている。最も一般的なバイオマスから生物燃料への生産プロセスには、低温および高温熱分解(すなわち、ガス化)プロセスが含まれる。熱分解操作は一般に、酸素の実質的な非存在下でバイオマスを燃やす工程を伴う。低温熱分解操作で一般に生産される生物燃料は、水素、メタン、およびエタノールを含む。ガス化プロセスは一般に、合成ガス(すなわち、H2およびCO)を生産するのに有用である。
【0008】
バイオ炭の重要な性質は、その陽イオン交換能力である。バイオ炭の陽イオン交換能力(cation-exchanging ability)またはその欠如は、その陽イオン交換能力(CEC)の規模によって明白である。特に、陽イオン交換能力が増大したバイオ炭は、一般に、より大きい栄養分保持能力を有することが知られている。より大きい陽イオン交換能力を伴うバイオ炭は一般に、かなりの量の親水性酸素含有基、例えば、フェノール基およびカルボン酸基などを有し、これらは、より大きい陽イオン交換能力を付与する(Liangら、2006、同頁)。
【0009】
CECは、土壌の試料に結合した交換可能な陽イオン(例えば、K+、Na+、NH4+、Mg2+、Ca2+、Fe3+、Al3+、Ni2+、およびZn2+)の量として定義される。CECは、土壌1キログラム当たりの全陽イオンまたは特定の陽イオンのセンチモル(centimole)(cmol)またはミリモル(mmol)として表されることが多い。陽イオン交換特性の実質的な欠如は、50mmol/kg未満のCECに反映されると一般に考えられている。中程度のCECは一般に、50超および250mmol/kg未満の範囲内であると考えられている。非典型的に、または例外的に高いCECは、少なくとも250mmol/kgである。
【0010】
バイオ炭は、CO2隔離に一般に有用であるが、古来の土壌中に見出され、または工業副生成物として生産されるバイオ炭の種類は、その物理的特徴および特性の特徴、例えば、化学組成、多孔度、電荷密度、およびCECにおいて高度に多様である。バイオ炭の最も一般的な生産プロセスの1つは、オープンピットでバイオマスを燃やすという古代から行われていることである。そのような制御されないプロセスは一般に、かなりの量の燃焼の酸化物ガス、例えばCO2およびCOなどを、一般にバイオ炭源の炭素含量の20重量パーセントより著しく大きい量で生成する。さらに、得られるバイオ炭は、組成が非常に不均一であり、例えば、バイオ炭のピットの特に内側部分で実質的に酸素化されていない部分、およびバイオ炭のピットの外側周辺部分で適度に酸素化された部分がある。さらに、制御されないプロセスは一般に、かなりのバッチ間のばらつきをもたらす。さらに、制御されないプロセスによって、得られるバイオ炭の特徴は、一般に予測不可能であり、調整または最適化することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】B. Liangら、Soil Science Society of America Journal、70巻(5)、Sept-Oct(2006)
【非特許文献2】Skjemstad, J. O.ら、「The Measurement of Cation Exchange Capacity of Organic Matter Fractions from Soils using a Modified Compulsive Exchange Method」、Communications in Soil Science and Plant Analysis、39(5〜6)、926〜937(2008)
【非特許文献3】Manahan, Stanley E.、Environmental Chemistry、6版、CRC Press、Boca Raton、Florida、80頁、123頁、128頁、118頁、443頁、449頁、480頁(1999)
【非特許文献4】Fratini E.ら、Langmuir 22、306〜312(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
中程度の陽イオン交換能力を有するバイオ炭物質は公知であるが、そのようなバイオ炭組成物は一般的でなく、さらに、散発的に、世界の予測不可能な位置で見出される。したがって、少なくとも中程度の陽イオン交換能力を有する酸素化されたバイオ炭組成物がより容易に入手可能であるように、そのようなバイオ炭組成物を製造するための方法の必要性が当技術分野において存在する。非典型的に高い陽イオン交換能力、より好ましくは、公知の土壌堆積物中に見出されるより著しく高い陽イオン交換能力を有する、酸素化されたバイオ炭組成物を生産するための方法の必要性がさらに存在する。そのようなバイオ炭物質は、土壌栄養分をより有効に保持し、したがって、炭素隔離を助長しながら優れた施肥物質/土壌改質物質として機能するという利点を有する。
【0013】
酸素化されたバイオ炭を生産するための方法であって、バイオ炭が、バイオ炭の1つまたは複数の特徴(例えば、陽イオン交換能力、粒径、多孔度、C:O比など)において低いバッチ間変動を伴って再現性よく製造される方法の必要性がさらに存在する。酸素化されたバイオ炭を生産するための方法であって、バイオ炭が、1つまたは複数の特徴、例えば、酸素と炭素の比、CEC、および化学組成などにおいて実質的に均一である方法の必要性がさらに存在する。そのような方法が、1つまたは複数のバイオ炭特性の対応する改良、調整、または最適化を行うために、適切に調整、改良、または最適化され得る、さらなる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様では、本発明は、陽イオン交換特性を有する酸素化されたバイオ炭物質を生産するための方法を対象とする。本発明は一般に、バイオ炭源が不完全燃焼プロセスにおいて酸素含有陽イオン交換基を均質に(すなわち均一に)獲得する様式で、バイオ炭源を1つまたは複数の酸素含有反応性化合物と反応させる工程を伴う。本方法は、バイオ炭物質に酸素添加することによって、その陽イオン交換能力を増大させる任意のプロセスを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、酸素化されたバイオ炭を対象とする。特定の実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、例外的に高い陽イオン交換能力、すなわち、公知の土壌堆積物のバイオ炭、または一般に入手可能なバイオ炭に見出されるより高い陽イオン交換能力を有する。酸素化されたバイオ炭は、本明細書に記載される方法などの任意の適当な方法によって生産することができる。さらなる態様では、本発明は、酸素化されたバイオ炭を含有する土壌配合物を対象とする。
【0016】
本明細書に記載される方法は、有利には、世界の選択された位置で散発的に、かつ乏しい供給量で見出される場合のあるような、少なくとも中程度の陽イオン交換能力を有するバイオ炭を、本質的に無限の供給量でより容易に入手可能にする。本方法はまた、有利には、現在探し求められているが、入手可能でない酸素化されたバイオ炭組成物、例えば、他の公知のバイオ炭より例外的に高い陽イオン能力を有するものなどの特殊化された、または最適化された特性を有するものを提供する。本方法はまた、多量(例えば、ポンドからトン)のそのようなバイオ炭物質、特に、現在公知のものより著しく高いCEC値を有するバイオ炭物質を生産することができる。
【0017】
本方法はまた、精密に目的に合わせられた一組の特徴(例えば、特定のCEC値もしくは範囲、および/または表面積、および/または電荷密度、および/または粒径、および/または化学組成)を有する酸素化されたバイオ炭物質を生産することができる。本明細書に記載される方法はまた、有利には、1つまたは複数のバイオ炭特性の対応する改良、調整、または最適化を行うために、適切に調整、改良、または最適化することができる。本明細書に記載される方法はまた、有利には、1つまたは複数の特徴が均一である酸素化されたバイオ炭を生産することができる。本明細書に記載される方法はまた、有利には、再現可能な様式で、すなわち、様々なバイオ炭堆積物にわたって見出される広い組成変動と対比した場合、バイオ炭の1つまたは複数の特徴(例えば、陽イオン交換能力、粒径、多孔度、C:O比など)の低いバッチ間変動を伴って、そのようなバイオ炭を生産することができる。
【0018】
そのような改善されたバイオ炭組成物を即座に無限に供給することは、そのようなバイオ炭組成物を大量に生産および使用することによって炭素隔離を促進し、同時に土壌の肥沃化を大いに増強するという著しい利益をもたらす。土壌の肥沃化の増強は、ひいては、より効率的で、より安価な農業経営を含めた、いくつかの利益をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の方法によって調製したいくつかのバイオ炭試料についての陽イオン交換能力の比較を示すチャートである。
【図2】5.0〜8.5のpH値について求めた場合の、4分間粉砕されたバイオ炭および土壌対照試料(#15)の陽イオン交換能力(CEC)を示すチャートである。
【図3】5.0〜8.5のpH値について求めた場合の、粉砕され、ふるいにかけられたバイオ炭および土壌対照試料(#15)の陽イオン交換能力(CEC)を示すチャートである。
【図4】置換のために使用したMgSO4の濃度を10倍して0.10Mに増大させ、伝導率の整合が0.015MのMgSO4溶液に準じた、トウモロコシ茎葉バイオ炭1Gおよび2G、ならびに対照試料#15に対して示した、CECアッセイに対するMgSO4濃度の効果を示すチャートである。
【図5】土壌対照試料#15と比較した場合の、トウモロコシ茎葉試料1Gおよび2GのpHに対する酸の添加の効果を示すチャートである。
【図6】2つのトウモロコシ茎葉バイオ炭からの水性抽出物の外観を示す写真である。
【図7】トウモロコシ茎葉由来の炭試料#1(ガス化)および炭試料#2(急速熱分解)の湿式ふるい手順からの水性抽出物のUV-可視吸光度スキャンを示すチャートである。
【図8】炭試料#1および#2のFTIRスペクトルである。KBrペレット10wt%。
【図9】炭試料#4、#5、および#6(Epridaからの落花生殻)のFTIRスペクトルである。
【図10】炭試料#8および#9(Epridaからのサザンイエローパイン)のFTIRスペクトルである。
【図11】炭試料#12および#13(Epridaからの落花生殻、それぞれ「高炭」および「活性炭」)のFTIRスペクトルである。
【図12】試料#1(トウモロコシ茎葉ガス化炭、700℃)の吸着-脱離等温線の図である。
【図13】160μmのフィルターで湿式ふるいにかけた、試料#1(トウモロコシ茎葉ガス化炭、700℃)の吸着-脱離等温線の図である。
【図14】試料#2(トウモロコシ茎葉高速熱分解炭(fast pyrolytic char)、450℃)の吸着-脱離等温線の図である。
【図15】160μmのフィルターで湿式ふるいにかけた、試料#2(トウモロコシ茎葉高速熱分解炭、450℃)の吸着-脱離等温線の図である。
【図16】試料#4、PNC-EP炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図17】試料#5、PNC-M炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図18】試料#6、PNC-B炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図19】試料#8、PIC-EP炭、Epridaのサザンイエローパインの吸着-脱離等温線の図である。
【図20】試料#9、PIC-M炭、Epridaのサザンイエローパインの吸着-脱離等温線の図である。
【図21】試料#12、「高」炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図22】試料#13、「活性」炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図23】イソプロパノール(IPA)を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#1のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下50μm、右上10μm、右下10μm。
【図24】水を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#1のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下50μm、右上5μm、右下10μm。
【図25】IPAを用いてシリコンウエハーに接着させた試料#1のSEM顕微鏡写真である。左上20μm、左下20μm、右上5μm、右下300nm。
【図26】水を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#1のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下20μm、右上5μm、右下2μm。
【図27】水を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#2のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下10μm、右上20μm、右下5μm。
【図28】IPAを用いてシリコンウエハーに接着させた試料#2のSEM顕微鏡写真である。左上10μm、左下50μm、右上2μm、右下5μm
【図29】水を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#2のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下10μm、右上5μm、右下5μm。
【図30】IPAを用いてシリコンウエハーに接着させた試料#2のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下50μm、右上10μm、右下10μm。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の態様では、本発明は、陽イオン交換特性を有する酸素化されたバイオ炭物質を生産するための方法を対象とする。バイオ炭の陽イオン交換能力は、バイオ炭中に存在する陽イオン交換基の密度に主に依存することが知られている。陽イオン交換基は一般に、ヒドロキシ(-OH)基およびカルボキシ(-COOH)基などの酸素含有化学基である。
【0021】
本方法では、バイオ炭源は、バイオ炭源が不完全燃焼プロセスにおいて酸素含有陽イオン交換基を均質に獲得するように制御された様式で、1つまたは複数の酸素化化合物と反応させられる。「不完全燃焼プロセス」であるとは、本明細書に記載される酸素化法が完了した後に、バイオ炭源中の全炭素含量のかなりの部分が残る(すなわち、燃焼の酸化物ガスに変換されない)ことを意味する。燃焼の酸化物ガスには一般に、例えば、CO2およびCOが含まれる。好ましくは、バイオ炭源中に含まれる炭素の約20重量パーセント以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される。より好ましくは、バイオ炭源中に含まれる炭素の約10、5、2、または1重量パーセント以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される。特定の実施形態では、本発明の方法は、無燃焼(combustionless)プロセスとして、すなわち、バイオ炭源の炭素含量のうち実質的に何も(例えば、0.5または0.1重量パーセント未満)燃焼の酸化物ガスに変換されないように行われる。
【0022】
当技術分野で公知の高度に制御されていない燃焼プロセスと対照的に、本明細書に記載される方法は、高度に制御された酸素化プロセスであり、これは、バイオ炭物質の部分的酸化(すなわち、部分的な酸素化)をもたらし、その結果、陽イオン交換特性を有するバイオ炭が生産されると同時に、有利には、はるかに低い量の燃焼の酸化物ガスを放出する。さらに、大部分において酸素化プロセスの制御された性質のために、本明細書に記載される方法により、一般に、実質的に均一な(すなわち、実質的に均質な)酸素化されたバイオ炭が生産される。「実質的に均一」であるとは一般に、最低でも、酸素化されたバイオ炭中に、酸素化されていないバイオ炭の領域(オープンピットなどにおいて制御されていない条件下で形成されるバイオ炭物質中に一般に見出されるような)が存在しないことを意味する。好ましくは、実質的に均一な酸素化されたバイオ炭は、少なくとも1つの特徴、例えば、CEC、酸素と炭素の比、および/または表面積などの変動が10%、5%、2%、1%、0.5%、または0.1%以下である様々な巨視的な領域(例えば、サイズが少なくとも100μm2、1mm2、10mm2、または1cm2の)を有する。酸素化されたバイオ炭の実質的な均一性は、有利には、容器に入れて、または地中で、土壌中に分布した場合、一貫した結果をもたらすバイオ炭物質をユーザーに提供する。さらに、酸素化されたバイオ炭の実質的な均一性は、バイオ炭の試験される特徴が、バイオ炭の全バッチを示していることを保証する。
【0023】
本方法において、実質的に均一なバイオ炭は、酸素化プロセスの間にバイオ炭の効果的なレベルの混合によって得られる。例えば、一実施形態では、バイオ炭は、酸素化プロセスの間に手作業で、または機械的に撹拌(agitated)、振盪、または撹拌(stirred)される。別の実施形態では、バイオ炭は、バイオ炭が酸素化反応の間に転がるような回転機構を含む、開いた、または閉じた容器(例えば、窯)内で反応させられる。
【0024】
本明細書で考慮されるバイオ炭源は、本発明の方法の酸素化プロセスによって恩恵を受けることができる任意のバイオ炭物質とすることができる。バイオ炭源は、例えば、熱分解もしくはガス化プロセスの副生成物、またはバイオ炭堆積物から得られる物質とすることができる。一般に、バイオ炭は、植物由来である(すなわち、セルロース性バイオマスまたは草木に由来する)。バイオ炭を得ることができる本明細書で考慮されるバイオマス物質のいくつかの特定の例として、例えば、トウモロコシ茎葉(例えば、トウモロコシ植物の葉、殻、柄、もしくは穂軸)、草(例えば、スイッチグラス、ススキ(miscanthus)、コムギわら、イネわら、オオムギわら、アルファルファ、竹、麻)、サトウキビ、外皮または莢物質(例えば、落花生、イネ、およびクルミの外皮)、木くず、鋸屑、紙または木材パルプ、食物廃棄物、農業廃棄物、および森林廃棄物が挙げられる。一実施形態では、バイオマス物質は、バイオ炭に変換される前に、その天然形態、すなわち、天然の分解プロセスを除いて未改変である。別の実施形態では、バイオマス物質は、例えば、バイオ炭に変換される間に、非バイオマス物質(例えば、プラスチック系物質もしくはゴム系物質)と混ぜ物をすること、または物理的改変(例えば、すりつぶし、粉砕、締固め、ブレンド、加熱、蒸らし、漂白、窒素化(nitrogenating)、酸素化、もしくは硫黄化(sulfurating))によって改変される。
【0025】
本明細書で考慮される1つまたは複数の酸素化化合物は、有機物質中に酸素原子を与えることによって反応性である傾向がある、当技術分野で公知の任意の化合物または物質である。この点において最も注目すべきものは、酸素ガス、またはより一般的には、空気の形態における酸素である。酸素ガスはまた、人工ガス混合物、例えば、酸素-窒素、酸素-アルゴン、酸素-ヘリウム、または酸素-二酸化炭素混合物などの形態であってもよい。人工ガス混合物は、酸素のレベルを精密に制御し、それによって燃焼を防止するように反応をさらに制御し、バイオ炭中の密度および酸素含有基の種類を最適化することができるという点で、本発明の目的に有利となり得る。例えば、異なる実施形態では、例えば、少なくとも重量または体積で0.1%、0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%、これらの割合未満、またはおよそこれらの割合、または前述の値の任意の2つを境界とする範囲の割合で酸素を有する酸素含有ガス混合物を使用することが好適である場合がある。別の実施形態では、酸素ガスの実質的に純粋な源、すなわち、99%超の酸素が使用される。他の酸素化化合物のいくつかの例として、次亜ハロゲン酸塩(例えば、NaOClなどの次亜塩素酸塩)、亜ハロゲン酸塩(例えば、亜塩素酸塩、または亜臭素酸塩、例えば、NaO2Cl、またはNaO2Brなど)、ハロゲン酸塩(例えば、塩素酸塩、または臭素酸塩、例えば、NaO3Cl、またはNaO3Brなど)、過ハロゲン酸塩(例えば、過塩素酸塩、過臭素酸塩、または過ヨウ素酸塩、例えば、NaO4Cl、NaO4Br、またはNaO4Iなど)、ハロゲン-酸素化合物(例えば、ClO2)、過酸化物(例えば、H2O2および尿素過酸化物)、スーパーオキシド(例えば、NaO2およびKO2)、オゾン、ピロ硫酸塩(例えば、NaS2O7)、ペルオキソ二硫酸塩(例えば、Na2S2O7、K2S2O7、および(NH4)2S2O7)、ペルカルボン酸(例えば、過酢酸)、過炭酸塩、ならびに過マンガン酸塩(例えば、K2MnO4)が挙げられる。あるいは、酸素化化合物は、互いに反応してインサイツで酸素ガスを形成する2つ以上の化学物質(例えば、過酸化水素と組み合わせた過マンガン酸塩または次亜ハロゲン酸塩)とすることができる。
【0026】
一実施形態では、本発明の方法は、バイオ炭源を酸素プラズマで処理することによって実行される。高温および低温プラズマプロセスを含めた、当技術分野で公知の酸素プラズマプロセスのいずれも、本明細書で考慮される。酸素プラズマ処理によってバイオ炭物質中に酸素を導入することにより、これらの物質のO:C比が増加する。陽イオン交換能力は、バイオ炭物質のO:C比とともに増大する。本方法は、バイオ炭物質の「部分的酸素化」の増強によって、陽イオン交換能力を改善する処理として、酸素プラズマ処理を含む。
【0027】
好ましくは、酸素プラズマは、表面修飾および洗浄のために当技術分野で一般に使用されるような低温プラズマ(例えば、15〜30℃)である。一般に、プラズマプロセスは、減圧(すなわち、真空チャンバー内)でバイオ炭を、イオン化された酸素または酸素ラジカルの源に曝す工程を伴う。イオン化された酸素源は一般に、イオン化源、例えば、イオン化マイクロ波、高周波、または電流源などに、約0.05〜2Torrの減圧で酸素を曝すことによって生成される。一般に、高周波源(例えば、約10〜100WのRFパワーで13.56MHzの)が、酸素をイオン化するのに使用される。特定の酸素プラズマ条件は、プラズマ発生器の型、ガス組成、電源の能力および特性、動作圧力および温度、要求される酸素化の程度、ならびに処理される特定のバイオ炭の特徴(すなわち、酸素化に対するその感受性または耐性)を含めたいくつかの要因に依存する。上述したものを含むいくつかの要因に依存して、バイオ炭は一般に、少なくとも約0.1、0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、または5分間、および最大6、8、10、12、15、20、30、40、50、または60分間、イオン化された酸素に曝される。バイオ炭は一般に、約15〜30℃の温度範囲内でプラズマ処理されるが、より低い温度(例えば、15℃未満)、またはより高い温度(例えば、30℃超、例えば、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、もしくは100℃など)を使用することができる。一般に、酸素プラズマプロセスは、無燃焼プロセスとして、すなわち、燃焼の酸化物ガスを生成することなく行われる。
【0028】
別の実施形態では、本方法は、1つまたは複数の酸素化化合物(一般に、空気の形態における酸素)を用いて、酸素化化合物が酸素含有陽イオン交換基をバイオマスに付与するのに十分反応性である温度、すなわち、適切に反応性の温度でバイオ炭源を処理することによって実行され、ここで、酸素化化合物の量および/または反応時間は、バイオ炭が不完全燃焼プロセスにおいて陽イオン交換基を獲得するように適切に調整される。特定の実施形態では、反応は、無燃焼プロセスとして行われる。高度に反応性の酸素化化合物は一般に、室温(例えば、15〜30℃)で、またはより低い温度(例えば、15℃未満)でさえ有効に機能することができる。適度に反応性の酸素化化合物(例えば、酸素)は一般に、少なくとも100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、もしくは950℃、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の温度で有効に機能することができる。より長い反応時間は一般に、より多く酸素化されたバイオ炭を生じ、一方、より短い反応時間は一般に、より少なく酸素化されたバイオ炭を生じることが理解される。したがって、適度に反応性または実質的に非反応性の酸素化化合物は、十分な期間の時間、例えば、約または少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、または3カ月が使用される場合、100℃または100℃未満の温度を使用することによって、バイオ炭を有効に酸素化することができることも理解される。
【0029】
一実施形態では、不完全燃焼プロセスは、酸素化化合物の量を、バイオ炭源の完全燃焼に必要とされる量未満の量に制限することによって達成される。酸素化化合物の許容できる量(すなわち、完全燃焼に必要とされるより少ない)は、バイオ炭源中に含まれる炭素の量を知り、これから、完全燃焼に必要とされるより少ない酸素化化合物の量を計算することによって見出すことができる。バイオ炭試料中に含まれる炭素の量は、正確な測定によって(例えば、元素分析によって)、または近似によって(例えば、計量し、重量のほとんどすべてが炭素由来となると仮定することによって)求めることができる。酸素化化合物の量は、バイオ炭の完全燃焼に必要とされる酸素化化合物のモルの約30%、25%、または20%以下であることが好ましい。より好ましくは、酸素化化合物の量は、バイオ炭の完全燃焼に必要とされる酸素化化合物のモルの約15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%、または0.1%以下である。
【0030】
特定の実施形態では、酸素化化合物は、測定された、かつ過不足のない酸素化化合物の意図された量がバイオ炭と反応させられることを保証するために、クローズドシステム(すなわち、閉じた容器)内でバイオ炭と反応させられる。酸素化固体または液体酸素化化合物(またはこれらの溶液)が使用される場合、固体または液体を計量してバイオ炭源とともに閉じた容器内に入れ、内容物を、バイオ炭の酸素化が起こるのに適した条件下で均質に混合またはブレンドすることができる。例えば、容器内の混合された反応物の温度を、固体または液体が、均一な(すなわち、均質な)様式でバイオ炭とのその反応を促進するために適切に蒸発した状態になるまで、適切に撹拌しながら上昇させることができる。酸素化ガス(例えば、酸素)が使用される場合、ガスの計算された重量またはモルに対応する選択された体積のガスを、バイオ炭源とともにクローズドシステム内に装填した後、バイオ炭のより効率的な酸素化のために温度を上昇させることができる。あるいは、このプロセスは、空気を使用することによって単純化され、ここで、ある量のバイオ炭を含む閉じた容器が、最初に開けられて容器が空気で満たされ、次いで加熱プロセスを進める前に閉じられ、それによって限定された量の空気がもたらされる。
【0031】
特に、空気または人工酸素ガス混合物が使用される場合、反応物は一般に、加熱可能なクローズドシステム(すなわち、熱的に絶縁されたチャンバー)、例えば、乾燥器、窯、または炉などの中に配置される。加熱可能なクローズドシステムは、例えば、火炎(例えば、天然ガス源から)、電気、またはマイクロ波によって稼働または補助される、当技術分野で公知の任意のシステムとすることができる。窯は、例えば、当技術分野で公知の倒炎窯、昇炎窯、登窯、流動床キルン、または回転窯のいずれかとすることができる。加熱可能なクローズドシステムはまた、バイオ炭の水分レベルを調整する、すなわち、バイオ炭の水分レベルを減少または増加させるように構成されたものであってもよい。水分レベルは、例えば、約、少なくとも、1%、2%、5%、10%、15、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは100%、もしくはこれらのそれぞれの値以下の湿度レベル、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の湿度レベルに適切に調整することができる。様々な実施形態では、反応物を、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、もしくは550℃の温度、または前述の温度の任意の2つを境界とする範囲内の温度に閉じたチャンバー内で加熱することができる。特定の実施形態では、加熱は、有利には、本発明の酸素化条件下で依然として熱いバイオ炭(すなわち、バイオマスからバイオ炭への生産プロセスによって熱くされたような)を反応させることによって、最小限にし、または完全に省くことができる。依然として熱いバイオ炭は、少なくとも450℃、400℃、350℃、300℃、250℃、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の温度を有することが好ましい。
【0032】
一実施形態では、バイオ炭および1つまたは複数の酸素化反応物は、閉じた容器内の酸素化反応物の実質的にすべてが消費されるのに必要な時間の期間反応させられる。別の実施形態では、温度および/または時間の条件は、閉じた容器内の酸素化反応物の一部が消費されるように選択される。
【0033】
別の特定の実施形態では、不完全燃焼プロセスは、開いた、または閉じた容器内で酸素化反応を行い、反応を迅速に停止することによって達成される。反応は、反応中のバイオ炭を、例えば、好ましくはバイオ炭物質が依然として熱い、例えば、バイオマスからバイオ炭へのプロセスから生じるような、少なくとも450℃、400℃、350℃、300℃、250℃、200℃、150℃、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の温度である際に、過剰な量の水および/または不活性物質と接触させることによって停止することができる。不活性物質は、例えば、二酸化炭素、またはバイオマスの形態(例えば、土壌、植物物質など)とすることができる。水および/または不活性物質の過剰な量は、好ましくは、反応中のバイオ炭のすべてを覆い、または代わりに、バイオ炭の全表面遮蔽物として機能し、酸素化プロセス(存在する場合、燃焼プロセスを含む)が、バイオ炭への酸素化化合物へのアクセスが制限されるために直ちに止められるという結果を伴う量である。高温が酸素化プロセスにおいて使用されている場合、反応停止工程はまた、一般に、バイオ炭の温度を急速に低下させる効果を有する。反応停止工程はあるいは、バイオ炭の空気燃焼が起こっている開いた容器を急速に密閉することによって実行することができる。
【0034】
本明細書に記載される方法は、バイオ炭が酸素化される前に、バイオマスからバイオ炭(すなわち、バイオ炭源または「生産されたバイオ炭」)を生産するための1つまたは複数の予備工程を含むこともできる。バイオマスからバイオ炭へのプロセスは、生産されたバイオ炭が酸素化される前の任意の適当な期間内に行うことができる。
【0035】
一実施形態では、バイオマスからバイオ炭へのプロセスは、バイオ炭酸素化プロセスと統合されていない様式で行われる。統合されていないプロセスでは、バイオマスからバイオ炭へのプロセスによって生産されたバイオ炭は、離れた位置に輸送され、そこでバイオ炭酸素化プロセスが行われる。輸送過程により、一般に、酸素化が行われる前にバイオ炭が周囲温度条件(例えば、15〜30℃)に冷却される。一般に、生産されたバイオ炭は、バイオ炭の酸素化の前に、統合されていないプロセスにおいて梱包および/または貯蔵される。
【0036】
別の実施形態では、バイオマスからバイオ炭へのプロセスは、バイオ炭酸素化プロセスと統合された様式で行われる。統合されたプロセスでは、バイオマスからバイオ炭へのプロセスによって生産されたバイオ炭は、最初に周囲温度に冷却されることなく、インサイツで酸素化される。例えば、統合された実施形態では、新たに生産されるバイオ炭は、酸素化プロセスにかけられる前に、例えば、約もしくは少なくとも450℃、400℃、350℃、300℃、250℃、200℃、150℃、100℃、もしくは50℃の温度、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の温度を有することができる。必要に応じて、新たに生産されるバイオ炭を、追加の加熱に付すことによって、酸素化工程の前のその温度を上昇させ、かつ/または維持することができる。
【0037】
バイオ炭酸素化プロセスは、例えば、低温または高温熱分解プロセスなどのバイオマスから燃料へのプロセスと統合することができる。そのようなプロセスでは、一般に、バイオマス炭素の約40%、50%、または60%がバイオ炭に変換される一方で、炭素の残りの60%、50%、または40%は、燃料(例えば、H2および/またはバイオオイル)に変換される。さらに、より低い温度の熱分解プロセスにより、一般に、さらにより改善された肥料保持特性を伴ったバイオ炭物質を生じることが見出されているので、特定の実施形態では、バイオ炭酸素化プロセスは、約450℃、400℃、または350℃以下の温度で行われるバイオマス熱分解プロセスと統合される。
【0038】
一実施形態では、統合されたプロセスは、バッチプロセスとして構成され、ここで、別個のバッチの生産されたバイオ炭が異なる時間で酸素化される。別の実施形態では、統合されたプロセスは、連続的なプロセスとして構成され、ここでバイオマスからバイオ炭へのプロセスによって生産されるバイオ炭は、これが生産されるについて連続的に酸素化プロセスにかけられる。例えば、生産されたバイオ炭は、手作業で、または自動コンベア機構によって、バイオ炭酸素化ゾーンを通して連続的に輸送することができる。自動コンベア機構は、例えば、コンベアベルト、重力送り機構、または空気圧機構とすることができる。
【0039】
別の態様では、本発明は、特定の、非常に優れた、または最適な一組の特性、例えば、特定の、非常に優れた、または最適な酸素と炭素のモル比、CEC、表面積、組成、および/またはこれらの特性もしくは他の特性のいずれかの均一性などを有する酸素化されたバイオ炭を対象とする。上述した方法は、これらのタイプのバイオ炭を生産するのに特に適している。
【0040】
一実施形態では、酸素化されたバイオ炭のCECは、少なくとも中程度、例えば、約もしくは少なくとも50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、もしくは240mmol/kg、または前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内である。別の実施形態では、酸素化されたバイオ炭のCECは、非典型的に、または例外的に高い、例えば、約もしくは少なくとも250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、もしくは850mmol/kg、または前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内である。別の実施形態では、酸素化されたバイオ炭のCECは、上記に与えた例示的な中程度のCEC値のいずれかから選択される最低値、および上記に与えた例示的な非典型的に高いCEC値のいずれかから選択される最大値を有する範囲内(例えば、50〜850mmol/kgまたは200〜850mmol/kg)である。好ましくは、CEC値は、バイオ炭物質全体にわたって実質的に均一である。
【0041】
酸素含有陽イオン交換基の密度は、一般に、バイオ炭の測定された酸素と炭素のモル比に比例し、ここで、酸素と炭素のモル比が高いほど、バイオ炭中の陽イオン交換基の密度が大きい。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭の酸素と炭素のモル比は、約または少なくとも0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.3:1、0.35:1、0.4:1、または前述の比の任意の2つを境界とする範囲内に調整されることが好ましい。好ましくは、酸素化されたバイオ炭は、バイオ炭物質全体にわたって、実質的に均一な密度の酸素含有陽イオン交換基、および実質的に均一な酸素と炭素のモル比を含有する。
【0042】
酸素化されたバイオ炭は、一般にBET分析によって求められるような、任意の適当な比表面積(SSA)を有することができる。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、約もしくは少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、もしくは65m2/g、またはこれらのそれぞれの値以下のSSA値、あるいは前述の値の任意の2つを境界とする範囲内のSSA値を有する。
【0043】
酸素化されたバイオ炭は、任意の適当な電荷密度も有することができる。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、約もしくは少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、もしくは75mmol/m2、またはこれらのそれぞれの値以下の電荷密度、あるいは前述の値の任意の2つを境界とする範囲内の電荷密度を有する。
【0044】
酸素化されたバイオ炭は、任意の適当な炭素、窒素、酸素、水素、リン、カルシウム、硫黄、灰分、および揮発性物質の含量を有することもできる。炭素含量は、約、少なくとも、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、もしくは95モルパーセント、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。窒素含量は、約、少なくとも、例えば、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、もしくは8.0モルパーセント、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。酸素含量は、約、少なくとも、例えば、1、2、5、10、15、20、25、もしくは30モルパーセント、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。水素含量は、約、少なくとも、例えば、1、2、5、10、15、20、25、もしくは30モルパーセント、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。リンあるいはカルシウム含量は独立して、約、少なくとも、例えば、5、10、25、50、100、500、1000、5000、7500、10000、15000、20000、もしくは25000mg/kg、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。硫黄含量は、約、少なくとも、例えば、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、もしくは2000ppm、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。灰分含量は、約、少なくとも、例えば、1、2.5、5、10、15、20、30、40、50、60、もしくは70%、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。揮発性物質含量は、約、少なくとも、例えば、1、2.5、5、10、15、20、25、30、35、もしくは40%、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。
【0045】
酸素化されたバイオ炭は、任意の適当な粒径を有することもできる。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、約、少なくとも、例えば、50、100、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、もしくは5000μm、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいは前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内の粒径を有することができる。ある特定の用途では(例えば、バイオ炭物質が、風が強いおよび/または砂漠領域において風媒性となることに対して耐性であることを保証するために)、より大きいバイオ炭粒径、例えば、6000、7000、8000、9000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000μm、もしくはそれ以上(例えば、最大100,000μm)など、または前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内の粒径が好適となり得る。バイオ炭物質はまた、その上、このタイプの用途のために、バイオ炭粒子の集塊、圧縮、または融合の形態(例えば、ペレットまたはケーキ)であってもよい。ペレットまたはケーキのサイズは、例えば、上記に与えたより大きい粒径のいずれかに対応し得る。
【0046】
特定の値について上記で使用される用語「粒径」は、正確な、もしく実質的に単分散の粒径(例えば、値の±0〜5%内)、またはより分散した粒径(例えば、値の5%超、および最大、例えば、約50%もしくは100%)を意味することができる。さらに、バイオ炭粒子は、単峰性、二峰性、またはより多峰性であるサイズ分布を有することができる。用語「粒径」は、平均粒径を指す場合もある。必要に応じて、酸素化されたバイオ炭の粒径は、当技術分野で公知の技法によって適切に加減することができる。例えば、バイオ炭粒子は、当技術分野で公知の技法のいずれかによって、粉砕し、塊にし、またはふるいにかけることができる。さらに、粒子またはペレットが実質的に、または完全に球状である場合、上記例示的な粒子またはペレットのサイズは、粒子またはペレットの直径を指す。非球状(例えば、楕円、円柱状、ロッド様、板様、円板様、矩形、角錐、または非晶質)である粒子またはペレットについては、上記例示的な粒子またはペレットサイズは、粒子またはペレットの寸法の軸の少なくとも1つ、2つ、または3つを指すことができる。
【0047】
酸素化されたバイオ炭はまた、任意の適当な孔サイズを有することもできる。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、約、少なくとも、例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、250、500、750、1000、1500、2000、2500、5000、6000、7000、8000、9000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、もしくは100,000nm、またはこれらのそれぞれの値以下の孔サイズ、あるいは前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内の孔サイズを有することができる。
【0048】
上述した方法によって生産されたものなどの酸素化されたバイオ炭は、1つまたは複数の土壌肥沃化(soil-fertilizing)化合物または物質中に混合する(すなわち、富化させる)こともできる。土壌肥沃化化合物または物質は、例えば、窒素系(例えば、アンモニウム系)、炭酸塩系(例えば、CaCO3)、リン酸塩系(例えば、リン鉱石または重過リン酸石灰中などの公知のリン酸塩鉱物)、およびカリウム系(例えば、KCl)とすることができる。特定の実施形態では、1つまたは複数の土壌肥沃化化合物または物質は、少なくとも1つの窒素含有、より一般的には、NH4+含有化合物または物質を含む。窒素含有肥沃化化合物または物質のいくつかの例には、例えば、(NH4)2CO3、NH4HCO3、NH4NO3、(NH4)2SO4、(NH2)2CO、ビウレット、トリアジン系物質(例えば、メラミンもしくはシアヌル酸)、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、およびポリアミンまたはポリイミンポリマーが含まれる。肥料物質は、上記のような無機物であっても、または代わりに、有機物であってもよい。有機の肥料物質のいくつかの例には、ピートモス、堆肥、昆虫物質、海藻、汚水、およびグアノが含まれる。バイオ炭物質は、バイオ炭物質を肥料と組み合わせるために当技術分野で公知の方法のいずれかによって処理することができる。特定の実施形態では、バイオ炭物質は、バイオ炭物質を飽和させるために、水和したアンモニアのガスストリームで処理される。バイオ炭物質はまた、肥料化合物または物質でコーティングすることもできる。コーティングはまた、当技術分野で知られているように適切に改良または最適化することによって、土壌中への1つまたは複数の肥料化合物または物質の放出速度を調整することができる。別の実施形態では、上記の一般的な、または特定の土壌肥沃化化合物または物質の1つまたは複数が、酸素化されたバイオ炭組成から除外される。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、最低限でも、上述したバイオ炭組成物と混合された土壌を含有する土壌配合物を対象とする。土壌は、任意のタイプおよび組成とすることができる。例えば、土壌は、多数の、および多様な割合の粘土、砂、およびシルトのいずれも有することができる。砂、シルト、および粘土成分は、実質的に非存在(すなわち、0重量パーセント、または微量で)から、最大で正確に、または実質的に100重量パーセント(例えば、正確に100%、または少なくとも98もしくは99%)の範囲の量で独立して存在し得る。様々な実施形態では、1つまたは複数の砂、シルト、および粘土成分は、独立して、バイオ炭の存在しない土壌の全重量の約、少なくとも、例えば、0.1、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、もしくは95重量パーセント、またはこれらのそれぞれの値以下の量である。土壌はまた、前述の例示的な重量パーセンテージの任意の2つを境界とする範囲内の量で存在する砂、シルト、および粘土成分の1つまたは複数を有することが好ましい場合がある。土壌はまた、上記に与えた例示的な量または範囲のいずれかにおいて、任意の量の腐植土および腐植質物質(すなわち、有機物質)、フミン酸、フルボ酸、セルロース、リグニン、ピート、または他のそのような成分を含有することができる。
【0050】
実施例を、実例の目的で、かつ本発明のある特定の具体的な実施形態を説明するために以下に示す。しかし、本発明の範囲は、本明細書に示される実施例によって決して限定されるべきではない。
【実施例1】
【0051】
試料調製
すべての試料は、各手順について二通りにアッセイした。すべての溶液の調製およびガラス製品のすすぎに使用した水は、室内蒸留水ラインに取り付けたMilliTMQ水システム(Millipore Corporation、Bedford、Massachuetts)で精製した。溶液を用いた炭物質のすべてのインキュベーションは、周囲温度(21〜25℃)で実施した。ロータリーシェーカー(innova 2100プラットフォームシェーカー)を、インキュベーションの間試料を撹拌するのに使用した。100g未満の重量は、Mettler AE163分析用天秤で求め、一方、100gを超える重量は、Mettler PM4600 Deltaレンジトップローダー(loader)天秤で求めた。室内真空ラインに接続した真空乾燥器(Cole Parmer、Chicago、IL60648)を使用することによって試料を乾燥させた。遠心分離は、JLA 25.5ローターを使用して、Avanti J25I Centrifuge(Beckman Instruments、Palo Alto、California)で実施した。伝導率測定は、100.6および998μS/cmのOne Shot Traceable Conductivity Standardsでそれぞれ使用する前に較正された、ISO17025較正されたTraceable Portable Conductivity Meter(VWR International、Suwanee、Georgia)を用いて行った。試料懸濁液および溶液のpHは、Beckman Φ72pHメーター(Beckman Instruments Inc.、Fullerton、California)を用いて求めた。
【0052】
すべての試験物質を、1cmの鋼球を用いてSPEX CertiPrep 8000-D Mixer粉砕機で4分間粉砕した。それぞれの粉砕した物質の一部(5g)を、水20mL中に懸濁させ、106マイクロメートル(0.0041インチ)のメッシュサイズを有するNo.140 ASTM E-11試験ふるい(VWR Scientific、Westchester、Pennsylvania)を用いて湿式ふるいにかけた。粒子を、粉砕した試料5g当たり合計100mLの水を用いて、ふるいを通して洗浄した。炭粒子を、14℃で15分間、20,000rpm(48,384G)で遠心分離することによってふるい分けした後、水性スラリーからペレット化した。これらを最小体積の水中に再懸濁させ、ガラスサンプルジャーに移し、次いで70℃および21psiで40時間、真空乾燥器内で乾燥させた。
【0053】
1組2つの試験される各物質約0.5gの試料を、スクリューキャップの蓋を有する予め計量した遠心管(Beckmann, Inc.)中に入れた。次いで管を計量することによって、各試料の正確な重量を求めた。
【実施例2】
【0054】
バイオ炭試料のCEC値の測定
農業用炭試料および西テネシーの標準試験サイト(University of Tennessee C-サイト)からの土壌対照についてのCECを求めるために、改良塩化バリウム強制交換法を使用した。使用する方法は、Skjemstad, J. O.ら、「The Measurement of Cation Exchange Capacity of Organic Matter Fractions from Soils using a Modified Compulsive Exchange Method」、Communications in Soil Science and Plant Analysis、39(5〜6)、926〜937(2008)に記載された方法に従う。
【0055】
バリウム装填のために、0.5Mの塩化バリウム溶液30mLを各管に添加した。炭試料をボルテックスすることによって混合し、次いで、シェーカー上で2〜18時間インキュベートした。Beckman High Speed遠心分離機内で、20,000rpm(48,384G)および14℃で15分間遠心分離することによって炭をペレット化した。塩化バリウム平衡は、最後の2回の塩化バリウムインキュベーションの間、水酸化バリウム溶液を添加することによって、塩化バリウム溶液中のpHを8.5に調整して、合計4回繰り返した。
【0056】
次いで試料を、0.05Mの塩化バリウム30mL中で再懸濁によって2回、および0.002Mの塩化バリウムを用いて再懸濁によって3回洗浄し、その後シェーカー上で1時間インキュベートし、次いで遠心分離した。
【0057】
バリウム平衡化した試料を、70℃および21psiで40時間、管内で乾燥させた。乾燥した試料を含む管を再計量することによって、遠心分離の間の損失に関して試料重量を修正した。
【0058】
乾燥させた各試料を、0.01MのMgSO4溶液20mL中に再懸濁させた。添加されるMg2+の量をCEC計算のために正確に求めることができるように、管を再び計量することによって、各試料に添加した溶液の正確な量を求めた。試料を、MgSO4溶液とともに20時間インキュベートした。次いで各試料懸濁液の伝導率を求め、0.0015MのMgSO4標準液の伝導率と比較した。0.0015MのMgSO4溶液の伝導率より大きい場合、試料を予め計量した250mLのポリプロピレン瓶に移し、試料の伝導率が標準液の伝導率と一致するまで水を添加した。伝導率がより小さい場合、0.01MのMgSO4溶液を、伝導率が標準物質と一致するまで添加した。試料を保持している容器および溶液を計量した。
【0059】
pH8.5でバリウムを装填した炭についての最初のCEC測定の後、0.010MのH2SO4を添加することによって、懸濁液をより低いpH値に調整した。酸を添加した後、滴定容器を計量することによって、各pH調整に必要とされる酸の量を求めた。各試料懸濁液の伝導率を求め、測定した各pH値について、0.0015MのMgSO4の伝導率と一致するように調整した。
【0060】
バリウム置換のために10倍濃縮された(0.100M)MgSO4および伝導率滴定整合のために0.015MのMgSO4を使用する改良CEC手順も、炭試料1および2ならびに土壌対照15に対して実施した。
【0061】
各滴定についてのcmol(+)/kgでのCECを、以下の式を使用する手順の間に求めた重量から、記載されたように(Skjemstad, J. O.ら、同頁)計算した:
A=(gでのMgSO4溶液の重量)(1g/溶液1mL)(0.02Mの1/2MgSO4)
B=(W2-W1)(0.003)
(A-B)(100)/(gでの試料重量)
【0062】
上記式において、A=添加した1/2MgSO4のmmolおよびB=溶液中に残っている1/2MgSO4のmmol。Bは、伝導率滴定の最後での試料容器と溶液の合計重量(W2)から、滴定容器および試料の重量(W1)を差し引き、滴定終点での1/2MgSO4の濃度である(一価の陽イオンと等価である)0.003を乗じることによって計算される。cmol(+)/kgの単位で表されるCECの値は、mequiv/100gの単位で表される同じ値と等価であることに留意すべきである。
【実施例3】
【0063】
CEC分析の結果
低いCEC値についての伝導率アッセイ法の精度を試験するために、0.010MのMgSO4の4つの20mLのアリコートを計量し、0.0015MのMgSO4に対応する伝導率に対して滴定した。0.5gの模擬試料サイズを仮定して、-2.750±0.2903cmol(+)/kgの平均値を得た。
【0064】
農業用炭の観察される陽イオン交換能力は、熱分解処理のタイプに応じて変化する(Table 1(表1)、図1)。トウモロコシ茎葉試料について、ガス化炭は、高速熱分解炭よりCECが低かった。
【0065】
負のCEC値が7未満のpH値で観察された(図2、3、4)。CEC値についてのpH曲線は、炭が、腐植質物質について観察されるものと同様のイオン交換特性を有することを示す。酸性化は、7より低いpH値で、結合した陽イオン、おそらくCa2+の放出をもたらし、負のCEC値を生じるように思われる。土壌有機物質に結合したCa2+の存在による同様の結果が報告されている(Skemstadら、同頁)。負の値の推定原因は、バリウムが、pH8.5で装填される間に結合した陽イオンのすべてを置換することができないことである。炭試料は、腐植質物質について報告されたものと同様のMg2+に対する低い結合親和性を有する場合があり、これも、塩化バリウム-硫酸マグネシウム置換によるCEC測定に影響する場合がある(例えば、Manahan, Stanley E.、Environmental Chemistry、6版、CRC Press、Boca Raton、Florida、80頁、123頁、128頁、118頁、443頁、449頁、480頁(1999)を参照)。炭試料は、土壌対照が必要とするより、pHを調整するのにはるかに多い量の硫酸の添加を必要とした(図5)。バイオマスに由来する熱分解油の構造決定から得られた結果は、リグニン残基は熱分解に耐え、大部分は無傷であることを示す(例えば、Fratini E.ら、Langmuir 22、306〜312(2006)を参照)。
【0066】
バリウムを置換するのに0.1MのMgSO4を使用したアッセイにより、文献に記載された濃度(0.01M)で得られたものの約2倍のCEC値を得た(Table 4(表4)および図4)。この知見は、より低い濃度のMg2+は、炭物質から装填されたBa2+のすべてを交換させるのに十分でないことを示すように思われる。
【0067】
CEC値を、湿式ふるいにかけた炭および土壌試料について求めた(Table 2(表2))。CECに対する湿式ふるい処理の効果は、試料に応じて変化した。得られたCEC値は、炭2、4、5、6、および13については、ふるい分け前のものと同様であったが、炭1、8、9、10、12、14、および土壌15については2分の1以下に減少した。湿式ふるい分け手順からの炭試料および土壌の回収率を、106μmより小さいサイズを有するふるいにかけられた粒子、およびふるい上に残っている106μmより大きい残りを乾燥させ、計量することによって求めた(Table 3(表3))。粉砕後に106μmよりサイズが大きい粒径のためにふるい分けの間に失われた物質の量と、ふるい分け後のCEC値との間の相関は、まったく明らかでなかった。湿式ふるい手順の後に、炭2からの水性抽出物は、暗褐色を有していた一方で、他の炭からの抽出物は、ほとんど、またはまったく色がなかったことが注目された(図6)。炭1および2からの水性抽出物を、200nmから800nmまでUV可視分光光度計(Unicam)でスキャンした(図7)。炭2からの抽出物は、フェノール基およびカルボニル基に特徴的な、UV領域における強い吸光度を有しており、これは、熱分解後のバイオマス中のリグニンの部分の残存と一致する。
【0068】
いくつかの最新のバイオ炭および土壌対照のCEC値について本明細書で報告した結果は、-0.5〜72cmol kg-1の範囲である。バイオ炭物質を生産するのに使用されるバイオマス供給原料およびプロセス条件の両方が、結果として生じるCECを決定することが、これらの結果から明らかである。この情報は、土壌改良および炭素隔離を生じさせることにおける有用性について、可能性のあるバイオ炭プロセスの評価を助ける。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
粉砕したトウモロコシ茎葉炭試料および土壌対照をまた、改良CEC方法によってアッセイし、この方法において、置換工程に使用されるMgSO4の濃度を、0.100Mまで10倍増大させ、滴定終点に対する最終的なMgSO4の濃度を、0.015Mに同時に増大させた。CECの結果をTable 4(表4)中に、以下に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
バリウムを置換するのに0.1MのMgSO4を使用したアッセイにより、文献に記載された濃度(0.01M)で得られたものの約2倍のCEC値を得た(Table 4(表4)および図4)。この知見は、より低い濃度のMg2+は、炭物質から装填されたBa2+のすべてを交換させるのに十分でないことを示すように思われる。
【実施例4】
【0075】
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析および結果
赤外スペクトルを、透過率で収集され、4cm-1の分解能、200スキャンのDigilab FTS 7000 FTIR分光計で記録した。試料を、10wt%でKBr中に調製し、圧縮してペレットにした。示したスペクトルは、1800cm-2において正規化されている。
【0076】
ガス化炭(700℃)および高速熱分解炭(450℃)ISUトウモロコシ茎葉の試料1および2は、セルロースの特性バンドと同様の特性バンドを示す(図8)。3600〜3175cm-1(OH伸縮)での中程度の強度の広いピーク、1725cm-1でのショルダー(C=O伸縮)、1595cm-1(OH変角)、1424cm-1での弱い、広いピーク(CH2変角-結晶化度の程度によって影響される強度)1、1095cm-1(おそらくC-O伸縮)、792cm-1(CH2変角)。
【0077】
図9および10において、Epridaの落花生殻の試料4、5、および6は、サザンイエローパインの試料8および9が持つように、トウモロコシ茎葉の試料1および2のものと同様の多くの異なる特徴的なOH振動数およびC=O振動数を持つことが分かる。図11において、試料12および13のFTIRは、その特徴的なOH(3500cm-1)ピークおよびCHピーク(1700〜800cm-1の間で欠いているいくつかのピーク強度)を緩めている。
【0078】
定性的に、試料1において、C-OおよびO-H(3500cm-1)は、試料2と比較した場合、強度が減少するように思われ、これは、以下に論じる元素分析および表面分析のいくつかに関連付けることができる。予期することができるように、より高い熱分解温度で、有機組成のうちのより多くが燃えてなくなり、したがって、有機部分の光吸収がより低くなる。
【実施例5】
【0079】
元素分析および結果
以下のTable 5(表5)およびTable 6(表6)はそれぞれ、本発明の方法によって調製された、選択された酸素化されたバイオ炭試料の元素分析および近似分析を示す。分析は、1回の分析からのものである乾燥による損失(%)を除いて、2つの分析の平均百分率として行った。標準偏差は10%未満である。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
Table 5(表5)およびTable 6(表6)中のデータによって立証されるように、全体的に、トウモロコシ茎葉試料1および2は、すべての落花生殻およびサザンイエローパイン試料4、5、6、8、9、12、13(4.5〜14.6%)より高い灰分含量(58%)を有するが、最低のC(%)(約33%(1および2)対約73%(4〜6、8〜9、および12〜13))、ならびに7.5%の試料12を除いて、最低のO(%)(5〜8.6%(1および2)対約12〜20%(4〜6、8〜9および13))を有する。以下のTable 5(表5)およびTable 6(表6)を参照。サザンイエローパインは、非常にわずかな窒素(<0.5%)を有する一方で、落花生殻およびトウモロコシ茎葉は、0.5〜2.0%の窒素を有することも注目すべきである。
【0083】
試料1および2の比較は、ともに非常に高い灰分含量(>58%)、同様の固定された炭素、およびC(%)を有することを示す。試料2(450℃)中に1.7倍多くの揮発性物質が存在し、これは、より低い熱分解温度と相関する。試料2中にはまた、一貫してより高いO(%)が存在し(1.7倍)、これは、試料1のほとんど2倍である、より高いO:Cモル比に関連する。これはまた、図8中のFTIRスペクトルと相関し、スペクトルが正規化される場合、OH強度およびC=O強度は試料2の方がより高い。興味深いことに、CEC値も、試料2について最大2の係数まで一貫してより高い(試料2=26.4[cmol(+)kg-1]、試料1=10.28[cmol(+)kg-1])。
【0084】
試料4、5、および6の比較は、6についてO:C比がより高いことを示す。FTIR分析も、やはり、5のものより定性的に強いC=O光吸収およびOH光吸収が存在することを示す。6のCEC値は、4および5(それぞれ12.4および6.2[cmol(+)/kg])より、著しく大きい(60.1[cmol(+)/kg])ことに注目することも興味深い。
【0085】
試料12および13は、同様の灰分含量を示す。試料13は、12よりわずかに高い揮発性物質(%)(8.86%対6.15)を有するが、より低い計算された固定された炭素(67.8対75.1)を有する。しかし、12および13のC(%)は非常に類似するという事実にもかかわらず、13は、有意な量のより多くの0(%)を有し、これは計算して、12より13について1.7倍の係数でより大きいO:C比になる。これはやはりCEC比と相関し、13は、66.6cmol(+)/kgという著しくより高いCECを有し、試料12は、約12.0cmol(+)/kgを有する。さらに、試料13は、12の表面積の約3.3倍であるより大きい表面積を有する。以下を参照。
【0086】
サザンイエローパインである試料8および9は、すべての元素分析および近似分析において同様の値を有し、灰分(%)のみが、8の方がわずかにより高いが、両試料についての結果として生じるO:C比は、0.15:1である。8および9のCEC値は同様であり、約-(4.7〜3.8)の負のCECを有することは注目すべきである。
【0087】
CEC値は、試料のO:C比とよく相関するように思われる。一般に、0:C比が高いほど、CEC値が高いことが見出された。試料13は、試料6または2ほど高いO:C比を有さないが、表面積の増加は、CEC値の増加に役割を果たす場合がある。SEMスペクトルも、試料1および2の表面積とよく相関し、試料2中に孔のサイズ分布を示している。
【実施例6】
【0088】
表面積分析および結果
BET比表面積を、すべての試料を分析の前に200℃で最低8時間脱ガスして、Quantachrome Autosorb-1分析器で、77Kで測定した窒素吸着-脱離等温線から得た。孔サイズ分布をBJH法によって分析し、BETを、P/Po範囲0.05〜0.35にわたる多点プロットから取得した。
【0089】
BET分析のために、すべての試料を200℃で最低8時間脱ガスした。図12〜22を参照すると、一般に、等温線は、I型特性を示し、これは、比較的小さい外部表面を有する微孔性固体を示す。9、12、および13を除くすべての試料で、表面積は、粉砕した試料について4〜57m2/gであった。ふるい分けは、試料1および2の表面積を増大させるように思われることが観察された。吸着質の限定的な取込みは、内部表面積ではなく、アクセス可能なマイクロ孔体積によって支配される。しかし、いくらかのヒステリシスが試料中に観察され、これは、ボトルネックまたはスリット形状の孔を示す。いくつかの場合では、脱着ブランチが非常に低いP/Poで閉じるが、閉じない場合もあり、これはおそらく、高圧で窒素を脱着することができないマイクロ孔の効果である。低い相対圧力(P/Po)での明確な曲率、または等温線の中央の直線的なセクションもまったく存在せず、これは、吸着質-吸着剤(N2-基質)ではなく、強い吸着質間(N2-N2ガス)相互作用を示す。13を除く等温線のすべては、脱着プロセスにおいて0.3未満の相対圧力に到達する前に閉じず、したがって、微孔性が存在することを示す。試料2(粉砕)は、1.5〜5.0nmの間の孔サイズの分布を示す。
【0090】
粉砕した試料1のBET表面積は、試料2のBET表面積より一貫して高い。これはまた、SEM画像と相関し(以下に論じるように)、試料1は、大きな開放された領域を伴った不規則な、画定されていない構造を示すのに対し、「孔の壁構造」または「細管」が、試料2について無傷なままであることが分かり、より大きい多孔度および表面積を可能にしている。
【0091】
意外にも、試料12および13は、非常に大きい表面積を有し、試料13は、0.3P/Poより上でほぼ閉じたループヒステリシスを示し、可能性がある「インク瓶」孔を示すが、孔の分析は、マイクロ孔の直径が1.5nm未満であることを示す。
【実施例7】
【0092】
走査型電子顕微鏡(SEM)分析および結果
SEM画像をHitachi S-4700で撮った。試料を5wt%で水またはイソプロパノール(IPA)中に混合し、次いで500μmのp-ドープシリコンウエハー(これは、非常に低い抵抗、すなわち、0.005ohm-cm未満を有する)の上部に配置し、乾燥させてウエハー上に炭試料を固定した。
【0093】
試料1のSEM画像を図23〜26に示す。図23〜26の顕微鏡写真によって示されるように、試料1のセル壁のほとんどは、痕跡がなくなっており、感知できる孔構造はまったく残されていない。試料2のSEM画像を図27〜30に示す。図27〜30の顕微鏡写真によって示されるように、細管は無傷のままであることが示され、これは、大きい孔サイズ分布が上記ガス吸着法において見られることとよく相関する。顕微鏡写真は、SEMグリッド上に移し、広げるために試料を懸濁させるのに使用した溶媒(すなわち、IPAまたは水)で標識されている。各顕微鏡写真の下部に、指定された長さを分割する規模線とともに、指定された長さの長さスケール(例えば、ミクロン(μm)またはナノメートル(nm)で)がある。
【0094】
現在のところ本発明の好適な実施形態と考えられるものを示し、説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に残る様々な変更および改変を行うことができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省とUT-Battelle, LLCとの間の契約番号米国DE-AC05-00OR22725の下で、政府支援とともになされた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0002】
本発明は一般に、土壌中に二酸化炭素を隔離し、土壌を肥沃にするための方法、より具体的には、これらの目的のためのバイオ炭の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
光合成は、地球上のいずれの他のプロセスよりも大気から多くの二酸化炭素(CO2)を捕獲する。毎年、地上の緑色植物は、約403ギガトン(Gt)のCO2(110Gt Cy-1と等価)を大気からバイオマス中に捕獲する。しかし、バイオマスは、炭素物質の安定な形態でないので、バイオマスの相当な部分は、比較的短時間でCO2に分解する。結果として、バイオマス生産の増大(すなわち、樹木成長の増大)は、得られるバイオマスがすぐに吸収されたCO2に戻るので、炭素隔離にとって有用性が限定されている。
【0004】
未処理のバイオマスと異なり、炭素化されたバイオマス(すなわち、木炭または「バイオ炭」)は、高度に安定化された状態で、すなわち、元素の炭素として炭素を含有する。元素の炭素が不活性であることにより、これは、CO2に非常にゆっくりと分解する。一般に、バイオ炭がCO2に完全に分解するのに少なくとも数百年が必要である。結果として、大気のCO2生成を緩和するための手段として、バイオ炭を生産することに大いに興味が持たれている。生産されたバイオ炭を土壌中に取り込むこと(すなわち、土壌改良として)に特に興味が持たれており、この場合、バイオ炭は、CO2捕捉剤および土壌改良の両方として機能する。
【0005】
バイオ炭生産および土壌中への取込みは、古代から行われている。特に関連するのは、アマゾニアにおけるプレコロンビアン固有の農耕民によって形成された土壌、すなわち、いわゆる「Terra Preta」土壌中のバイオ炭粒子の最近の発見である。例えば、B. Liangら、Soil Science Society of America Journal、70巻(5)、Sept-Oct(2006)を参照。
【0006】
バイオ炭肥料の適用による炭素隔離の能力は、かなり大きいと見積もられている。土壌中に入れることができるバイオ炭物質の量は、土壌の10重量%もの高さとなり得る。したがって、米国耕作地土壌単独の最初の30cmの層内に、40Gtの炭素をバイオ炭粒子の形態で隔離することができる。農業土壌中にバイオ炭炭素を貯蔵するための世界的な能力は、400Gtの炭素を超え得る。年間の陸地の光合成産物(110gt Cy-1)の安定なバイオ炭物質への8%という低い変換で、化石燃料を使用して年間に大気中に放出されるCO2の全量(ほぼ8Gt Cy-1)を相殺するのに十分であろう。
【0007】
かなりの量のバイオ炭が現在、バイオマスから生物燃料への生産プロセスにおける副生成物として生産されている。最も一般的なバイオマスから生物燃料への生産プロセスには、低温および高温熱分解(すなわち、ガス化)プロセスが含まれる。熱分解操作は一般に、酸素の実質的な非存在下でバイオマスを燃やす工程を伴う。低温熱分解操作で一般に生産される生物燃料は、水素、メタン、およびエタノールを含む。ガス化プロセスは一般に、合成ガス(すなわち、H2およびCO)を生産するのに有用である。
【0008】
バイオ炭の重要な性質は、その陽イオン交換能力である。バイオ炭の陽イオン交換能力(cation-exchanging ability)またはその欠如は、その陽イオン交換能力(CEC)の規模によって明白である。特に、陽イオン交換能力が増大したバイオ炭は、一般に、より大きい栄養分保持能力を有することが知られている。より大きい陽イオン交換能力を伴うバイオ炭は一般に、かなりの量の親水性酸素含有基、例えば、フェノール基およびカルボン酸基などを有し、これらは、より大きい陽イオン交換能力を付与する(Liangら、2006、同頁)。
【0009】
CECは、土壌の試料に結合した交換可能な陽イオン(例えば、K+、Na+、NH4+、Mg2+、Ca2+、Fe3+、Al3+、Ni2+、およびZn2+)の量として定義される。CECは、土壌1キログラム当たりの全陽イオンまたは特定の陽イオンのセンチモル(centimole)(cmol)またはミリモル(mmol)として表されることが多い。陽イオン交換特性の実質的な欠如は、50mmol/kg未満のCECに反映されると一般に考えられている。中程度のCECは一般に、50超および250mmol/kg未満の範囲内であると考えられている。非典型的に、または例外的に高いCECは、少なくとも250mmol/kgである。
【0010】
バイオ炭は、CO2隔離に一般に有用であるが、古来の土壌中に見出され、または工業副生成物として生産されるバイオ炭の種類は、その物理的特徴および特性の特徴、例えば、化学組成、多孔度、電荷密度、およびCECにおいて高度に多様である。バイオ炭の最も一般的な生産プロセスの1つは、オープンピットでバイオマスを燃やすという古代から行われていることである。そのような制御されないプロセスは一般に、かなりの量の燃焼の酸化物ガス、例えばCO2およびCOなどを、一般にバイオ炭源の炭素含量の20重量パーセントより著しく大きい量で生成する。さらに、得られるバイオ炭は、組成が非常に不均一であり、例えば、バイオ炭のピットの特に内側部分で実質的に酸素化されていない部分、およびバイオ炭のピットの外側周辺部分で適度に酸素化された部分がある。さらに、制御されないプロセスは一般に、かなりのバッチ間のばらつきをもたらす。さらに、制御されないプロセスによって、得られるバイオ炭の特徴は、一般に予測不可能であり、調整または最適化することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】B. Liangら、Soil Science Society of America Journal、70巻(5)、Sept-Oct(2006)
【非特許文献2】Skjemstad, J. O.ら、「The Measurement of Cation Exchange Capacity of Organic Matter Fractions from Soils using a Modified Compulsive Exchange Method」、Communications in Soil Science and Plant Analysis、39(5〜6)、926〜937(2008)
【非特許文献3】Manahan, Stanley E.、Environmental Chemistry、6版、CRC Press、Boca Raton、Florida、80頁、123頁、128頁、118頁、443頁、449頁、480頁(1999)
【非特許文献4】Fratini E.ら、Langmuir 22、306〜312(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
中程度の陽イオン交換能力を有するバイオ炭物質は公知であるが、そのようなバイオ炭組成物は一般的でなく、さらに、散発的に、世界の予測不可能な位置で見出される。したがって、少なくとも中程度の陽イオン交換能力を有する酸素化されたバイオ炭組成物がより容易に入手可能であるように、そのようなバイオ炭組成物を製造するための方法の必要性が当技術分野において存在する。非典型的に高い陽イオン交換能力、より好ましくは、公知の土壌堆積物中に見出されるより著しく高い陽イオン交換能力を有する、酸素化されたバイオ炭組成物を生産するための方法の必要性がさらに存在する。そのようなバイオ炭物質は、土壌栄養分をより有効に保持し、したがって、炭素隔離を助長しながら優れた施肥物質/土壌改質物質として機能するという利点を有する。
【0013】
酸素化されたバイオ炭を生産するための方法であって、バイオ炭が、バイオ炭の1つまたは複数の特徴(例えば、陽イオン交換能力、粒径、多孔度、C:O比など)において低いバッチ間変動を伴って再現性よく製造される方法の必要性がさらに存在する。酸素化されたバイオ炭を生産するための方法であって、バイオ炭が、1つまたは複数の特徴、例えば、酸素と炭素の比、CEC、および化学組成などにおいて実質的に均一である方法の必要性がさらに存在する。そのような方法が、1つまたは複数のバイオ炭特性の対応する改良、調整、または最適化を行うために、適切に調整、改良、または最適化され得る、さらなる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様では、本発明は、陽イオン交換特性を有する酸素化されたバイオ炭物質を生産するための方法を対象とする。本発明は一般に、バイオ炭源が不完全燃焼プロセスにおいて酸素含有陽イオン交換基を均質に(すなわち均一に)獲得する様式で、バイオ炭源を1つまたは複数の酸素含有反応性化合物と反応させる工程を伴う。本方法は、バイオ炭物質に酸素添加することによって、その陽イオン交換能力を増大させる任意のプロセスを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、酸素化されたバイオ炭を対象とする。特定の実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、例外的に高い陽イオン交換能力、すなわち、公知の土壌堆積物のバイオ炭、または一般に入手可能なバイオ炭に見出されるより高い陽イオン交換能力を有する。酸素化されたバイオ炭は、本明細書に記載される方法などの任意の適当な方法によって生産することができる。さらなる態様では、本発明は、酸素化されたバイオ炭を含有する土壌配合物を対象とする。
【0016】
本明細書に記載される方法は、有利には、世界の選択された位置で散発的に、かつ乏しい供給量で見出される場合のあるような、少なくとも中程度の陽イオン交換能力を有するバイオ炭を、本質的に無限の供給量でより容易に入手可能にする。本方法はまた、有利には、現在探し求められているが、入手可能でない酸素化されたバイオ炭組成物、例えば、他の公知のバイオ炭より例外的に高い陽イオン能力を有するものなどの特殊化された、または最適化された特性を有するものを提供する。本方法はまた、多量(例えば、ポンドからトン)のそのようなバイオ炭物質、特に、現在公知のものより著しく高いCEC値を有するバイオ炭物質を生産することができる。
【0017】
本方法はまた、精密に目的に合わせられた一組の特徴(例えば、特定のCEC値もしくは範囲、および/または表面積、および/または電荷密度、および/または粒径、および/または化学組成)を有する酸素化されたバイオ炭物質を生産することができる。本明細書に記載される方法はまた、有利には、1つまたは複数のバイオ炭特性の対応する改良、調整、または最適化を行うために、適切に調整、改良、または最適化することができる。本明細書に記載される方法はまた、有利には、1つまたは複数の特徴が均一である酸素化されたバイオ炭を生産することができる。本明細書に記載される方法はまた、有利には、再現可能な様式で、すなわち、様々なバイオ炭堆積物にわたって見出される広い組成変動と対比した場合、バイオ炭の1つまたは複数の特徴(例えば、陽イオン交換能力、粒径、多孔度、C:O比など)の低いバッチ間変動を伴って、そのようなバイオ炭を生産することができる。
【0018】
そのような改善されたバイオ炭組成物を即座に無限に供給することは、そのようなバイオ炭組成物を大量に生産および使用することによって炭素隔離を促進し、同時に土壌の肥沃化を大いに増強するという著しい利益をもたらす。土壌の肥沃化の増強は、ひいては、より効率的で、より安価な農業経営を含めた、いくつかの利益をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の方法によって調製したいくつかのバイオ炭試料についての陽イオン交換能力の比較を示すチャートである。
【図2】5.0〜8.5のpH値について求めた場合の、4分間粉砕されたバイオ炭および土壌対照試料(#15)の陽イオン交換能力(CEC)を示すチャートである。
【図3】5.0〜8.5のpH値について求めた場合の、粉砕され、ふるいにかけられたバイオ炭および土壌対照試料(#15)の陽イオン交換能力(CEC)を示すチャートである。
【図4】置換のために使用したMgSO4の濃度を10倍して0.10Mに増大させ、伝導率の整合が0.015MのMgSO4溶液に準じた、トウモロコシ茎葉バイオ炭1Gおよび2G、ならびに対照試料#15に対して示した、CECアッセイに対するMgSO4濃度の効果を示すチャートである。
【図5】土壌対照試料#15と比較した場合の、トウモロコシ茎葉試料1Gおよび2GのpHに対する酸の添加の効果を示すチャートである。
【図6】2つのトウモロコシ茎葉バイオ炭からの水性抽出物の外観を示す写真である。
【図7】トウモロコシ茎葉由来の炭試料#1(ガス化)および炭試料#2(急速熱分解)の湿式ふるい手順からの水性抽出物のUV-可視吸光度スキャンを示すチャートである。
【図8】炭試料#1および#2のFTIRスペクトルである。KBrペレット10wt%。
【図9】炭試料#4、#5、および#6(Epridaからの落花生殻)のFTIRスペクトルである。
【図10】炭試料#8および#9(Epridaからのサザンイエローパイン)のFTIRスペクトルである。
【図11】炭試料#12および#13(Epridaからの落花生殻、それぞれ「高炭」および「活性炭」)のFTIRスペクトルである。
【図12】試料#1(トウモロコシ茎葉ガス化炭、700℃)の吸着-脱離等温線の図である。
【図13】160μmのフィルターで湿式ふるいにかけた、試料#1(トウモロコシ茎葉ガス化炭、700℃)の吸着-脱離等温線の図である。
【図14】試料#2(トウモロコシ茎葉高速熱分解炭(fast pyrolytic char)、450℃)の吸着-脱離等温線の図である。
【図15】160μmのフィルターで湿式ふるいにかけた、試料#2(トウモロコシ茎葉高速熱分解炭、450℃)の吸着-脱離等温線の図である。
【図16】試料#4、PNC-EP炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図17】試料#5、PNC-M炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図18】試料#6、PNC-B炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図19】試料#8、PIC-EP炭、Epridaのサザンイエローパインの吸着-脱離等温線の図である。
【図20】試料#9、PIC-M炭、Epridaのサザンイエローパインの吸着-脱離等温線の図である。
【図21】試料#12、「高」炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図22】試料#13、「活性」炭、Epridaの落花生殻の吸着-脱離等温線の図である。
【図23】イソプロパノール(IPA)を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#1のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下50μm、右上10μm、右下10μm。
【図24】水を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#1のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下50μm、右上5μm、右下10μm。
【図25】IPAを用いてシリコンウエハーに接着させた試料#1のSEM顕微鏡写真である。左上20μm、左下20μm、右上5μm、右下300nm。
【図26】水を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#1のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下20μm、右上5μm、右下2μm。
【図27】水を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#2のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下10μm、右上20μm、右下5μm。
【図28】IPAを用いてシリコンウエハーに接着させた試料#2のSEM顕微鏡写真である。左上10μm、左下50μm、右上2μm、右下5μm
【図29】水を用いてシリコンウエハーに接着させた試料#2のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下10μm、右上5μm、右下5μm。
【図30】IPAを用いてシリコンウエハーに接着させた試料#2のSEM顕微鏡写真である。左上50μm、左下50μm、右上10μm、右下10μm。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の態様では、本発明は、陽イオン交換特性を有する酸素化されたバイオ炭物質を生産するための方法を対象とする。バイオ炭の陽イオン交換能力は、バイオ炭中に存在する陽イオン交換基の密度に主に依存することが知られている。陽イオン交換基は一般に、ヒドロキシ(-OH)基およびカルボキシ(-COOH)基などの酸素含有化学基である。
【0021】
本方法では、バイオ炭源は、バイオ炭源が不完全燃焼プロセスにおいて酸素含有陽イオン交換基を均質に獲得するように制御された様式で、1つまたは複数の酸素化化合物と反応させられる。「不完全燃焼プロセス」であるとは、本明細書に記載される酸素化法が完了した後に、バイオ炭源中の全炭素含量のかなりの部分が残る(すなわち、燃焼の酸化物ガスに変換されない)ことを意味する。燃焼の酸化物ガスには一般に、例えば、CO2およびCOが含まれる。好ましくは、バイオ炭源中に含まれる炭素の約20重量パーセント以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される。より好ましくは、バイオ炭源中に含まれる炭素の約10、5、2、または1重量パーセント以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される。特定の実施形態では、本発明の方法は、無燃焼(combustionless)プロセスとして、すなわち、バイオ炭源の炭素含量のうち実質的に何も(例えば、0.5または0.1重量パーセント未満)燃焼の酸化物ガスに変換されないように行われる。
【0022】
当技術分野で公知の高度に制御されていない燃焼プロセスと対照的に、本明細書に記載される方法は、高度に制御された酸素化プロセスであり、これは、バイオ炭物質の部分的酸化(すなわち、部分的な酸素化)をもたらし、その結果、陽イオン交換特性を有するバイオ炭が生産されると同時に、有利には、はるかに低い量の燃焼の酸化物ガスを放出する。さらに、大部分において酸素化プロセスの制御された性質のために、本明細書に記載される方法により、一般に、実質的に均一な(すなわち、実質的に均質な)酸素化されたバイオ炭が生産される。「実質的に均一」であるとは一般に、最低でも、酸素化されたバイオ炭中に、酸素化されていないバイオ炭の領域(オープンピットなどにおいて制御されていない条件下で形成されるバイオ炭物質中に一般に見出されるような)が存在しないことを意味する。好ましくは、実質的に均一な酸素化されたバイオ炭は、少なくとも1つの特徴、例えば、CEC、酸素と炭素の比、および/または表面積などの変動が10%、5%、2%、1%、0.5%、または0.1%以下である様々な巨視的な領域(例えば、サイズが少なくとも100μm2、1mm2、10mm2、または1cm2の)を有する。酸素化されたバイオ炭の実質的な均一性は、有利には、容器に入れて、または地中で、土壌中に分布した場合、一貫した結果をもたらすバイオ炭物質をユーザーに提供する。さらに、酸素化されたバイオ炭の実質的な均一性は、バイオ炭の試験される特徴が、バイオ炭の全バッチを示していることを保証する。
【0023】
本方法において、実質的に均一なバイオ炭は、酸素化プロセスの間にバイオ炭の効果的なレベルの混合によって得られる。例えば、一実施形態では、バイオ炭は、酸素化プロセスの間に手作業で、または機械的に撹拌(agitated)、振盪、または撹拌(stirred)される。別の実施形態では、バイオ炭は、バイオ炭が酸素化反応の間に転がるような回転機構を含む、開いた、または閉じた容器(例えば、窯)内で反応させられる。
【0024】
本明細書で考慮されるバイオ炭源は、本発明の方法の酸素化プロセスによって恩恵を受けることができる任意のバイオ炭物質とすることができる。バイオ炭源は、例えば、熱分解もしくはガス化プロセスの副生成物、またはバイオ炭堆積物から得られる物質とすることができる。一般に、バイオ炭は、植物由来である(すなわち、セルロース性バイオマスまたは草木に由来する)。バイオ炭を得ることができる本明細書で考慮されるバイオマス物質のいくつかの特定の例として、例えば、トウモロコシ茎葉(例えば、トウモロコシ植物の葉、殻、柄、もしくは穂軸)、草(例えば、スイッチグラス、ススキ(miscanthus)、コムギわら、イネわら、オオムギわら、アルファルファ、竹、麻)、サトウキビ、外皮または莢物質(例えば、落花生、イネ、およびクルミの外皮)、木くず、鋸屑、紙または木材パルプ、食物廃棄物、農業廃棄物、および森林廃棄物が挙げられる。一実施形態では、バイオマス物質は、バイオ炭に変換される前に、その天然形態、すなわち、天然の分解プロセスを除いて未改変である。別の実施形態では、バイオマス物質は、例えば、バイオ炭に変換される間に、非バイオマス物質(例えば、プラスチック系物質もしくはゴム系物質)と混ぜ物をすること、または物理的改変(例えば、すりつぶし、粉砕、締固め、ブレンド、加熱、蒸らし、漂白、窒素化(nitrogenating)、酸素化、もしくは硫黄化(sulfurating))によって改変される。
【0025】
本明細書で考慮される1つまたは複数の酸素化化合物は、有機物質中に酸素原子を与えることによって反応性である傾向がある、当技術分野で公知の任意の化合物または物質である。この点において最も注目すべきものは、酸素ガス、またはより一般的には、空気の形態における酸素である。酸素ガスはまた、人工ガス混合物、例えば、酸素-窒素、酸素-アルゴン、酸素-ヘリウム、または酸素-二酸化炭素混合物などの形態であってもよい。人工ガス混合物は、酸素のレベルを精密に制御し、それによって燃焼を防止するように反応をさらに制御し、バイオ炭中の密度および酸素含有基の種類を最適化することができるという点で、本発明の目的に有利となり得る。例えば、異なる実施形態では、例えば、少なくとも重量または体積で0.1%、0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%、これらの割合未満、またはおよそこれらの割合、または前述の値の任意の2つを境界とする範囲の割合で酸素を有する酸素含有ガス混合物を使用することが好適である場合がある。別の実施形態では、酸素ガスの実質的に純粋な源、すなわち、99%超の酸素が使用される。他の酸素化化合物のいくつかの例として、次亜ハロゲン酸塩(例えば、NaOClなどの次亜塩素酸塩)、亜ハロゲン酸塩(例えば、亜塩素酸塩、または亜臭素酸塩、例えば、NaO2Cl、またはNaO2Brなど)、ハロゲン酸塩(例えば、塩素酸塩、または臭素酸塩、例えば、NaO3Cl、またはNaO3Brなど)、過ハロゲン酸塩(例えば、過塩素酸塩、過臭素酸塩、または過ヨウ素酸塩、例えば、NaO4Cl、NaO4Br、またはNaO4Iなど)、ハロゲン-酸素化合物(例えば、ClO2)、過酸化物(例えば、H2O2および尿素過酸化物)、スーパーオキシド(例えば、NaO2およびKO2)、オゾン、ピロ硫酸塩(例えば、NaS2O7)、ペルオキソ二硫酸塩(例えば、Na2S2O7、K2S2O7、および(NH4)2S2O7)、ペルカルボン酸(例えば、過酢酸)、過炭酸塩、ならびに過マンガン酸塩(例えば、K2MnO4)が挙げられる。あるいは、酸素化化合物は、互いに反応してインサイツで酸素ガスを形成する2つ以上の化学物質(例えば、過酸化水素と組み合わせた過マンガン酸塩または次亜ハロゲン酸塩)とすることができる。
【0026】
一実施形態では、本発明の方法は、バイオ炭源を酸素プラズマで処理することによって実行される。高温および低温プラズマプロセスを含めた、当技術分野で公知の酸素プラズマプロセスのいずれも、本明細書で考慮される。酸素プラズマ処理によってバイオ炭物質中に酸素を導入することにより、これらの物質のO:C比が増加する。陽イオン交換能力は、バイオ炭物質のO:C比とともに増大する。本方法は、バイオ炭物質の「部分的酸素化」の増強によって、陽イオン交換能力を改善する処理として、酸素プラズマ処理を含む。
【0027】
好ましくは、酸素プラズマは、表面修飾および洗浄のために当技術分野で一般に使用されるような低温プラズマ(例えば、15〜30℃)である。一般に、プラズマプロセスは、減圧(すなわち、真空チャンバー内)でバイオ炭を、イオン化された酸素または酸素ラジカルの源に曝す工程を伴う。イオン化された酸素源は一般に、イオン化源、例えば、イオン化マイクロ波、高周波、または電流源などに、約0.05〜2Torrの減圧で酸素を曝すことによって生成される。一般に、高周波源(例えば、約10〜100WのRFパワーで13.56MHzの)が、酸素をイオン化するのに使用される。特定の酸素プラズマ条件は、プラズマ発生器の型、ガス組成、電源の能力および特性、動作圧力および温度、要求される酸素化の程度、ならびに処理される特定のバイオ炭の特徴(すなわち、酸素化に対するその感受性または耐性)を含めたいくつかの要因に依存する。上述したものを含むいくつかの要因に依存して、バイオ炭は一般に、少なくとも約0.1、0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、または5分間、および最大6、8、10、12、15、20、30、40、50、または60分間、イオン化された酸素に曝される。バイオ炭は一般に、約15〜30℃の温度範囲内でプラズマ処理されるが、より低い温度(例えば、15℃未満)、またはより高い温度(例えば、30℃超、例えば、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、もしくは100℃など)を使用することができる。一般に、酸素プラズマプロセスは、無燃焼プロセスとして、すなわち、燃焼の酸化物ガスを生成することなく行われる。
【0028】
別の実施形態では、本方法は、1つまたは複数の酸素化化合物(一般に、空気の形態における酸素)を用いて、酸素化化合物が酸素含有陽イオン交換基をバイオマスに付与するのに十分反応性である温度、すなわち、適切に反応性の温度でバイオ炭源を処理することによって実行され、ここで、酸素化化合物の量および/または反応時間は、バイオ炭が不完全燃焼プロセスにおいて陽イオン交換基を獲得するように適切に調整される。特定の実施形態では、反応は、無燃焼プロセスとして行われる。高度に反応性の酸素化化合物は一般に、室温(例えば、15〜30℃)で、またはより低い温度(例えば、15℃未満)でさえ有効に機能することができる。適度に反応性の酸素化化合物(例えば、酸素)は一般に、少なくとも100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、もしくは950℃、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の温度で有効に機能することができる。より長い反応時間は一般に、より多く酸素化されたバイオ炭を生じ、一方、より短い反応時間は一般に、より少なく酸素化されたバイオ炭を生じることが理解される。したがって、適度に反応性または実質的に非反応性の酸素化化合物は、十分な期間の時間、例えば、約または少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、または3カ月が使用される場合、100℃または100℃未満の温度を使用することによって、バイオ炭を有効に酸素化することができることも理解される。
【0029】
一実施形態では、不完全燃焼プロセスは、酸素化化合物の量を、バイオ炭源の完全燃焼に必要とされる量未満の量に制限することによって達成される。酸素化化合物の許容できる量(すなわち、完全燃焼に必要とされるより少ない)は、バイオ炭源中に含まれる炭素の量を知り、これから、完全燃焼に必要とされるより少ない酸素化化合物の量を計算することによって見出すことができる。バイオ炭試料中に含まれる炭素の量は、正確な測定によって(例えば、元素分析によって)、または近似によって(例えば、計量し、重量のほとんどすべてが炭素由来となると仮定することによって)求めることができる。酸素化化合物の量は、バイオ炭の完全燃焼に必要とされる酸素化化合物のモルの約30%、25%、または20%以下であることが好ましい。より好ましくは、酸素化化合物の量は、バイオ炭の完全燃焼に必要とされる酸素化化合物のモルの約15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%、または0.1%以下である。
【0030】
特定の実施形態では、酸素化化合物は、測定された、かつ過不足のない酸素化化合物の意図された量がバイオ炭と反応させられることを保証するために、クローズドシステム(すなわち、閉じた容器)内でバイオ炭と反応させられる。酸素化固体または液体酸素化化合物(またはこれらの溶液)が使用される場合、固体または液体を計量してバイオ炭源とともに閉じた容器内に入れ、内容物を、バイオ炭の酸素化が起こるのに適した条件下で均質に混合またはブレンドすることができる。例えば、容器内の混合された反応物の温度を、固体または液体が、均一な(すなわち、均質な)様式でバイオ炭とのその反応を促進するために適切に蒸発した状態になるまで、適切に撹拌しながら上昇させることができる。酸素化ガス(例えば、酸素)が使用される場合、ガスの計算された重量またはモルに対応する選択された体積のガスを、バイオ炭源とともにクローズドシステム内に装填した後、バイオ炭のより効率的な酸素化のために温度を上昇させることができる。あるいは、このプロセスは、空気を使用することによって単純化され、ここで、ある量のバイオ炭を含む閉じた容器が、最初に開けられて容器が空気で満たされ、次いで加熱プロセスを進める前に閉じられ、それによって限定された量の空気がもたらされる。
【0031】
特に、空気または人工酸素ガス混合物が使用される場合、反応物は一般に、加熱可能なクローズドシステム(すなわち、熱的に絶縁されたチャンバー)、例えば、乾燥器、窯、または炉などの中に配置される。加熱可能なクローズドシステムは、例えば、火炎(例えば、天然ガス源から)、電気、またはマイクロ波によって稼働または補助される、当技術分野で公知の任意のシステムとすることができる。窯は、例えば、当技術分野で公知の倒炎窯、昇炎窯、登窯、流動床キルン、または回転窯のいずれかとすることができる。加熱可能なクローズドシステムはまた、バイオ炭の水分レベルを調整する、すなわち、バイオ炭の水分レベルを減少または増加させるように構成されたものであってもよい。水分レベルは、例えば、約、少なくとも、1%、2%、5%、10%、15、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは100%、もしくはこれらのそれぞれの値以下の湿度レベル、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の湿度レベルに適切に調整することができる。様々な実施形態では、反応物を、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、もしくは550℃の温度、または前述の温度の任意の2つを境界とする範囲内の温度に閉じたチャンバー内で加熱することができる。特定の実施形態では、加熱は、有利には、本発明の酸素化条件下で依然として熱いバイオ炭(すなわち、バイオマスからバイオ炭への生産プロセスによって熱くされたような)を反応させることによって、最小限にし、または完全に省くことができる。依然として熱いバイオ炭は、少なくとも450℃、400℃、350℃、300℃、250℃、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の温度を有することが好ましい。
【0032】
一実施形態では、バイオ炭および1つまたは複数の酸素化反応物は、閉じた容器内の酸素化反応物の実質的にすべてが消費されるのに必要な時間の期間反応させられる。別の実施形態では、温度および/または時間の条件は、閉じた容器内の酸素化反応物の一部が消費されるように選択される。
【0033】
別の特定の実施形態では、不完全燃焼プロセスは、開いた、または閉じた容器内で酸素化反応を行い、反応を迅速に停止することによって達成される。反応は、反応中のバイオ炭を、例えば、好ましくはバイオ炭物質が依然として熱い、例えば、バイオマスからバイオ炭へのプロセスから生じるような、少なくとも450℃、400℃、350℃、300℃、250℃、200℃、150℃、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の温度である際に、過剰な量の水および/または不活性物質と接触させることによって停止することができる。不活性物質は、例えば、二酸化炭素、またはバイオマスの形態(例えば、土壌、植物物質など)とすることができる。水および/または不活性物質の過剰な量は、好ましくは、反応中のバイオ炭のすべてを覆い、または代わりに、バイオ炭の全表面遮蔽物として機能し、酸素化プロセス(存在する場合、燃焼プロセスを含む)が、バイオ炭への酸素化化合物へのアクセスが制限されるために直ちに止められるという結果を伴う量である。高温が酸素化プロセスにおいて使用されている場合、反応停止工程はまた、一般に、バイオ炭の温度を急速に低下させる効果を有する。反応停止工程はあるいは、バイオ炭の空気燃焼が起こっている開いた容器を急速に密閉することによって実行することができる。
【0034】
本明細書に記載される方法は、バイオ炭が酸素化される前に、バイオマスからバイオ炭(すなわち、バイオ炭源または「生産されたバイオ炭」)を生産するための1つまたは複数の予備工程を含むこともできる。バイオマスからバイオ炭へのプロセスは、生産されたバイオ炭が酸素化される前の任意の適当な期間内に行うことができる。
【0035】
一実施形態では、バイオマスからバイオ炭へのプロセスは、バイオ炭酸素化プロセスと統合されていない様式で行われる。統合されていないプロセスでは、バイオマスからバイオ炭へのプロセスによって生産されたバイオ炭は、離れた位置に輸送され、そこでバイオ炭酸素化プロセスが行われる。輸送過程により、一般に、酸素化が行われる前にバイオ炭が周囲温度条件(例えば、15〜30℃)に冷却される。一般に、生産されたバイオ炭は、バイオ炭の酸素化の前に、統合されていないプロセスにおいて梱包および/または貯蔵される。
【0036】
別の実施形態では、バイオマスからバイオ炭へのプロセスは、バイオ炭酸素化プロセスと統合された様式で行われる。統合されたプロセスでは、バイオマスからバイオ炭へのプロセスによって生産されたバイオ炭は、最初に周囲温度に冷却されることなく、インサイツで酸素化される。例えば、統合された実施形態では、新たに生産されるバイオ炭は、酸素化プロセスにかけられる前に、例えば、約もしくは少なくとも450℃、400℃、350℃、300℃、250℃、200℃、150℃、100℃、もしくは50℃の温度、またはこれらの値の任意の2つを境界とする範囲内の温度を有することができる。必要に応じて、新たに生産されるバイオ炭を、追加の加熱に付すことによって、酸素化工程の前のその温度を上昇させ、かつ/または維持することができる。
【0037】
バイオ炭酸素化プロセスは、例えば、低温または高温熱分解プロセスなどのバイオマスから燃料へのプロセスと統合することができる。そのようなプロセスでは、一般に、バイオマス炭素の約40%、50%、または60%がバイオ炭に変換される一方で、炭素の残りの60%、50%、または40%は、燃料(例えば、H2および/またはバイオオイル)に変換される。さらに、より低い温度の熱分解プロセスにより、一般に、さらにより改善された肥料保持特性を伴ったバイオ炭物質を生じることが見出されているので、特定の実施形態では、バイオ炭酸素化プロセスは、約450℃、400℃、または350℃以下の温度で行われるバイオマス熱分解プロセスと統合される。
【0038】
一実施形態では、統合されたプロセスは、バッチプロセスとして構成され、ここで、別個のバッチの生産されたバイオ炭が異なる時間で酸素化される。別の実施形態では、統合されたプロセスは、連続的なプロセスとして構成され、ここでバイオマスからバイオ炭へのプロセスによって生産されるバイオ炭は、これが生産されるについて連続的に酸素化プロセスにかけられる。例えば、生産されたバイオ炭は、手作業で、または自動コンベア機構によって、バイオ炭酸素化ゾーンを通して連続的に輸送することができる。自動コンベア機構は、例えば、コンベアベルト、重力送り機構、または空気圧機構とすることができる。
【0039】
別の態様では、本発明は、特定の、非常に優れた、または最適な一組の特性、例えば、特定の、非常に優れた、または最適な酸素と炭素のモル比、CEC、表面積、組成、および/またはこれらの特性もしくは他の特性のいずれかの均一性などを有する酸素化されたバイオ炭を対象とする。上述した方法は、これらのタイプのバイオ炭を生産するのに特に適している。
【0040】
一実施形態では、酸素化されたバイオ炭のCECは、少なくとも中程度、例えば、約もしくは少なくとも50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、もしくは240mmol/kg、または前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内である。別の実施形態では、酸素化されたバイオ炭のCECは、非典型的に、または例外的に高い、例えば、約もしくは少なくとも250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、もしくは850mmol/kg、または前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内である。別の実施形態では、酸素化されたバイオ炭のCECは、上記に与えた例示的な中程度のCEC値のいずれかから選択される最低値、および上記に与えた例示的な非典型的に高いCEC値のいずれかから選択される最大値を有する範囲内(例えば、50〜850mmol/kgまたは200〜850mmol/kg)である。好ましくは、CEC値は、バイオ炭物質全体にわたって実質的に均一である。
【0041】
酸素含有陽イオン交換基の密度は、一般に、バイオ炭の測定された酸素と炭素のモル比に比例し、ここで、酸素と炭素のモル比が高いほど、バイオ炭中の陽イオン交換基の密度が大きい。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭の酸素と炭素のモル比は、約または少なくとも0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.3:1、0.35:1、0.4:1、または前述の比の任意の2つを境界とする範囲内に調整されることが好ましい。好ましくは、酸素化されたバイオ炭は、バイオ炭物質全体にわたって、実質的に均一な密度の酸素含有陽イオン交換基、および実質的に均一な酸素と炭素のモル比を含有する。
【0042】
酸素化されたバイオ炭は、一般にBET分析によって求められるような、任意の適当な比表面積(SSA)を有することができる。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、約もしくは少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、もしくは65m2/g、またはこれらのそれぞれの値以下のSSA値、あるいは前述の値の任意の2つを境界とする範囲内のSSA値を有する。
【0043】
酸素化されたバイオ炭は、任意の適当な電荷密度も有することができる。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、約もしくは少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、もしくは75mmol/m2、またはこれらのそれぞれの値以下の電荷密度、あるいは前述の値の任意の2つを境界とする範囲内の電荷密度を有する。
【0044】
酸素化されたバイオ炭は、任意の適当な炭素、窒素、酸素、水素、リン、カルシウム、硫黄、灰分、および揮発性物質の含量を有することもできる。炭素含量は、約、少なくとも、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、もしくは95モルパーセント、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。窒素含量は、約、少なくとも、例えば、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、もしくは8.0モルパーセント、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。酸素含量は、約、少なくとも、例えば、1、2、5、10、15、20、25、もしくは30モルパーセント、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。水素含量は、約、少なくとも、例えば、1、2、5、10、15、20、25、もしくは30モルパーセント、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。リンあるいはカルシウム含量は独立して、約、少なくとも、例えば、5、10、25、50、100、500、1000、5000、7500、10000、15000、20000、もしくは25000mg/kg、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。硫黄含量は、約、少なくとも、例えば、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、もしくは2000ppm、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。灰分含量は、約、少なくとも、例えば、1、2.5、5、10、15、20、30、40、50、60、もしくは70%、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。揮発性物質含量は、約、少なくとも、例えば、1、2.5、5、10、15、20、25、30、35、もしくは40%、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいはその中の特定の範囲内である場合がある。
【0045】
酸素化されたバイオ炭は、任意の適当な粒径を有することもできる。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、約、少なくとも、例えば、50、100、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、もしくは5000μm、またはこれらのそれぞれの値以下、あるいは前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内の粒径を有することができる。ある特定の用途では(例えば、バイオ炭物質が、風が強いおよび/または砂漠領域において風媒性となることに対して耐性であることを保証するために)、より大きいバイオ炭粒径、例えば、6000、7000、8000、9000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000μm、もしくはそれ以上(例えば、最大100,000μm)など、または前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内の粒径が好適となり得る。バイオ炭物質はまた、その上、このタイプの用途のために、バイオ炭粒子の集塊、圧縮、または融合の形態(例えば、ペレットまたはケーキ)であってもよい。ペレットまたはケーキのサイズは、例えば、上記に与えたより大きい粒径のいずれかに対応し得る。
【0046】
特定の値について上記で使用される用語「粒径」は、正確な、もしく実質的に単分散の粒径(例えば、値の±0〜5%内)、またはより分散した粒径(例えば、値の5%超、および最大、例えば、約50%もしくは100%)を意味することができる。さらに、バイオ炭粒子は、単峰性、二峰性、またはより多峰性であるサイズ分布を有することができる。用語「粒径」は、平均粒径を指す場合もある。必要に応じて、酸素化されたバイオ炭の粒径は、当技術分野で公知の技法によって適切に加減することができる。例えば、バイオ炭粒子は、当技術分野で公知の技法のいずれかによって、粉砕し、塊にし、またはふるいにかけることができる。さらに、粒子またはペレットが実質的に、または完全に球状である場合、上記例示的な粒子またはペレットのサイズは、粒子またはペレットの直径を指す。非球状(例えば、楕円、円柱状、ロッド様、板様、円板様、矩形、角錐、または非晶質)である粒子またはペレットについては、上記例示的な粒子またはペレットサイズは、粒子またはペレットの寸法の軸の少なくとも1つ、2つ、または3つを指すことができる。
【0047】
酸素化されたバイオ炭はまた、任意の適当な孔サイズを有することもできる。様々な実施形態では、酸素化されたバイオ炭は、約、少なくとも、例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、250、500、750、1000、1500、2000、2500、5000、6000、7000、8000、9000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、もしくは100,000nm、またはこれらのそれぞれの値以下の孔サイズ、あるいは前述の値の任意の2つを境界とする特定の範囲内の孔サイズを有することができる。
【0048】
上述した方法によって生産されたものなどの酸素化されたバイオ炭は、1つまたは複数の土壌肥沃化(soil-fertilizing)化合物または物質中に混合する(すなわち、富化させる)こともできる。土壌肥沃化化合物または物質は、例えば、窒素系(例えば、アンモニウム系)、炭酸塩系(例えば、CaCO3)、リン酸塩系(例えば、リン鉱石または重過リン酸石灰中などの公知のリン酸塩鉱物)、およびカリウム系(例えば、KCl)とすることができる。特定の実施形態では、1つまたは複数の土壌肥沃化化合物または物質は、少なくとも1つの窒素含有、より一般的には、NH4+含有化合物または物質を含む。窒素含有肥沃化化合物または物質のいくつかの例には、例えば、(NH4)2CO3、NH4HCO3、NH4NO3、(NH4)2SO4、(NH2)2CO、ビウレット、トリアジン系物質(例えば、メラミンもしくはシアヌル酸)、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、およびポリアミンまたはポリイミンポリマーが含まれる。肥料物質は、上記のような無機物であっても、または代わりに、有機物であってもよい。有機の肥料物質のいくつかの例には、ピートモス、堆肥、昆虫物質、海藻、汚水、およびグアノが含まれる。バイオ炭物質は、バイオ炭物質を肥料と組み合わせるために当技術分野で公知の方法のいずれかによって処理することができる。特定の実施形態では、バイオ炭物質は、バイオ炭物質を飽和させるために、水和したアンモニアのガスストリームで処理される。バイオ炭物質はまた、肥料化合物または物質でコーティングすることもできる。コーティングはまた、当技術分野で知られているように適切に改良または最適化することによって、土壌中への1つまたは複数の肥料化合物または物質の放出速度を調整することができる。別の実施形態では、上記の一般的な、または特定の土壌肥沃化化合物または物質の1つまたは複数が、酸素化されたバイオ炭組成から除外される。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、最低限でも、上述したバイオ炭組成物と混合された土壌を含有する土壌配合物を対象とする。土壌は、任意のタイプおよび組成とすることができる。例えば、土壌は、多数の、および多様な割合の粘土、砂、およびシルトのいずれも有することができる。砂、シルト、および粘土成分は、実質的に非存在(すなわち、0重量パーセント、または微量で)から、最大で正確に、または実質的に100重量パーセント(例えば、正確に100%、または少なくとも98もしくは99%)の範囲の量で独立して存在し得る。様々な実施形態では、1つまたは複数の砂、シルト、および粘土成分は、独立して、バイオ炭の存在しない土壌の全重量の約、少なくとも、例えば、0.1、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、もしくは95重量パーセント、またはこれらのそれぞれの値以下の量である。土壌はまた、前述の例示的な重量パーセンテージの任意の2つを境界とする範囲内の量で存在する砂、シルト、および粘土成分の1つまたは複数を有することが好ましい場合がある。土壌はまた、上記に与えた例示的な量または範囲のいずれかにおいて、任意の量の腐植土および腐植質物質(すなわち、有機物質)、フミン酸、フルボ酸、セルロース、リグニン、ピート、または他のそのような成分を含有することができる。
【0050】
実施例を、実例の目的で、かつ本発明のある特定の具体的な実施形態を説明するために以下に示す。しかし、本発明の範囲は、本明細書に示される実施例によって決して限定されるべきではない。
【実施例1】
【0051】
試料調製
すべての試料は、各手順について二通りにアッセイした。すべての溶液の調製およびガラス製品のすすぎに使用した水は、室内蒸留水ラインに取り付けたMilliTMQ水システム(Millipore Corporation、Bedford、Massachuetts)で精製した。溶液を用いた炭物質のすべてのインキュベーションは、周囲温度(21〜25℃)で実施した。ロータリーシェーカー(innova 2100プラットフォームシェーカー)を、インキュベーションの間試料を撹拌するのに使用した。100g未満の重量は、Mettler AE163分析用天秤で求め、一方、100gを超える重量は、Mettler PM4600 Deltaレンジトップローダー(loader)天秤で求めた。室内真空ラインに接続した真空乾燥器(Cole Parmer、Chicago、IL60648)を使用することによって試料を乾燥させた。遠心分離は、JLA 25.5ローターを使用して、Avanti J25I Centrifuge(Beckman Instruments、Palo Alto、California)で実施した。伝導率測定は、100.6および998μS/cmのOne Shot Traceable Conductivity Standardsでそれぞれ使用する前に較正された、ISO17025較正されたTraceable Portable Conductivity Meter(VWR International、Suwanee、Georgia)を用いて行った。試料懸濁液および溶液のpHは、Beckman Φ72pHメーター(Beckman Instruments Inc.、Fullerton、California)を用いて求めた。
【0052】
すべての試験物質を、1cmの鋼球を用いてSPEX CertiPrep 8000-D Mixer粉砕機で4分間粉砕した。それぞれの粉砕した物質の一部(5g)を、水20mL中に懸濁させ、106マイクロメートル(0.0041インチ)のメッシュサイズを有するNo.140 ASTM E-11試験ふるい(VWR Scientific、Westchester、Pennsylvania)を用いて湿式ふるいにかけた。粒子を、粉砕した試料5g当たり合計100mLの水を用いて、ふるいを通して洗浄した。炭粒子を、14℃で15分間、20,000rpm(48,384G)で遠心分離することによってふるい分けした後、水性スラリーからペレット化した。これらを最小体積の水中に再懸濁させ、ガラスサンプルジャーに移し、次いで70℃および21psiで40時間、真空乾燥器内で乾燥させた。
【0053】
1組2つの試験される各物質約0.5gの試料を、スクリューキャップの蓋を有する予め計量した遠心管(Beckmann, Inc.)中に入れた。次いで管を計量することによって、各試料の正確な重量を求めた。
【実施例2】
【0054】
バイオ炭試料のCEC値の測定
農業用炭試料および西テネシーの標準試験サイト(University of Tennessee C-サイト)からの土壌対照についてのCECを求めるために、改良塩化バリウム強制交換法を使用した。使用する方法は、Skjemstad, J. O.ら、「The Measurement of Cation Exchange Capacity of Organic Matter Fractions from Soils using a Modified Compulsive Exchange Method」、Communications in Soil Science and Plant Analysis、39(5〜6)、926〜937(2008)に記載された方法に従う。
【0055】
バリウム装填のために、0.5Mの塩化バリウム溶液30mLを各管に添加した。炭試料をボルテックスすることによって混合し、次いで、シェーカー上で2〜18時間インキュベートした。Beckman High Speed遠心分離機内で、20,000rpm(48,384G)および14℃で15分間遠心分離することによって炭をペレット化した。塩化バリウム平衡は、最後の2回の塩化バリウムインキュベーションの間、水酸化バリウム溶液を添加することによって、塩化バリウム溶液中のpHを8.5に調整して、合計4回繰り返した。
【0056】
次いで試料を、0.05Mの塩化バリウム30mL中で再懸濁によって2回、および0.002Mの塩化バリウムを用いて再懸濁によって3回洗浄し、その後シェーカー上で1時間インキュベートし、次いで遠心分離した。
【0057】
バリウム平衡化した試料を、70℃および21psiで40時間、管内で乾燥させた。乾燥した試料を含む管を再計量することによって、遠心分離の間の損失に関して試料重量を修正した。
【0058】
乾燥させた各試料を、0.01MのMgSO4溶液20mL中に再懸濁させた。添加されるMg2+の量をCEC計算のために正確に求めることができるように、管を再び計量することによって、各試料に添加した溶液の正確な量を求めた。試料を、MgSO4溶液とともに20時間インキュベートした。次いで各試料懸濁液の伝導率を求め、0.0015MのMgSO4標準液の伝導率と比較した。0.0015MのMgSO4溶液の伝導率より大きい場合、試料を予め計量した250mLのポリプロピレン瓶に移し、試料の伝導率が標準液の伝導率と一致するまで水を添加した。伝導率がより小さい場合、0.01MのMgSO4溶液を、伝導率が標準物質と一致するまで添加した。試料を保持している容器および溶液を計量した。
【0059】
pH8.5でバリウムを装填した炭についての最初のCEC測定の後、0.010MのH2SO4を添加することによって、懸濁液をより低いpH値に調整した。酸を添加した後、滴定容器を計量することによって、各pH調整に必要とされる酸の量を求めた。各試料懸濁液の伝導率を求め、測定した各pH値について、0.0015MのMgSO4の伝導率と一致するように調整した。
【0060】
バリウム置換のために10倍濃縮された(0.100M)MgSO4および伝導率滴定整合のために0.015MのMgSO4を使用する改良CEC手順も、炭試料1および2ならびに土壌対照15に対して実施した。
【0061】
各滴定についてのcmol(+)/kgでのCECを、以下の式を使用する手順の間に求めた重量から、記載されたように(Skjemstad, J. O.ら、同頁)計算した:
A=(gでのMgSO4溶液の重量)(1g/溶液1mL)(0.02Mの1/2MgSO4)
B=(W2-W1)(0.003)
(A-B)(100)/(gでの試料重量)
【0062】
上記式において、A=添加した1/2MgSO4のmmolおよびB=溶液中に残っている1/2MgSO4のmmol。Bは、伝導率滴定の最後での試料容器と溶液の合計重量(W2)から、滴定容器および試料の重量(W1)を差し引き、滴定終点での1/2MgSO4の濃度である(一価の陽イオンと等価である)0.003を乗じることによって計算される。cmol(+)/kgの単位で表されるCECの値は、mequiv/100gの単位で表される同じ値と等価であることに留意すべきである。
【実施例3】
【0063】
CEC分析の結果
低いCEC値についての伝導率アッセイ法の精度を試験するために、0.010MのMgSO4の4つの20mLのアリコートを計量し、0.0015MのMgSO4に対応する伝導率に対して滴定した。0.5gの模擬試料サイズを仮定して、-2.750±0.2903cmol(+)/kgの平均値を得た。
【0064】
農業用炭の観察される陽イオン交換能力は、熱分解処理のタイプに応じて変化する(Table 1(表1)、図1)。トウモロコシ茎葉試料について、ガス化炭は、高速熱分解炭よりCECが低かった。
【0065】
負のCEC値が7未満のpH値で観察された(図2、3、4)。CEC値についてのpH曲線は、炭が、腐植質物質について観察されるものと同様のイオン交換特性を有することを示す。酸性化は、7より低いpH値で、結合した陽イオン、おそらくCa2+の放出をもたらし、負のCEC値を生じるように思われる。土壌有機物質に結合したCa2+の存在による同様の結果が報告されている(Skemstadら、同頁)。負の値の推定原因は、バリウムが、pH8.5で装填される間に結合した陽イオンのすべてを置換することができないことである。炭試料は、腐植質物質について報告されたものと同様のMg2+に対する低い結合親和性を有する場合があり、これも、塩化バリウム-硫酸マグネシウム置換によるCEC測定に影響する場合がある(例えば、Manahan, Stanley E.、Environmental Chemistry、6版、CRC Press、Boca Raton、Florida、80頁、123頁、128頁、118頁、443頁、449頁、480頁(1999)を参照)。炭試料は、土壌対照が必要とするより、pHを調整するのにはるかに多い量の硫酸の添加を必要とした(図5)。バイオマスに由来する熱分解油の構造決定から得られた結果は、リグニン残基は熱分解に耐え、大部分は無傷であることを示す(例えば、Fratini E.ら、Langmuir 22、306〜312(2006)を参照)。
【0066】
バリウムを置換するのに0.1MのMgSO4を使用したアッセイにより、文献に記載された濃度(0.01M)で得られたものの約2倍のCEC値を得た(Table 4(表4)および図4)。この知見は、より低い濃度のMg2+は、炭物質から装填されたBa2+のすべてを交換させるのに十分でないことを示すように思われる。
【0067】
CEC値を、湿式ふるいにかけた炭および土壌試料について求めた(Table 2(表2))。CECに対する湿式ふるい処理の効果は、試料に応じて変化した。得られたCEC値は、炭2、4、5、6、および13については、ふるい分け前のものと同様であったが、炭1、8、9、10、12、14、および土壌15については2分の1以下に減少した。湿式ふるい分け手順からの炭試料および土壌の回収率を、106μmより小さいサイズを有するふるいにかけられた粒子、およびふるい上に残っている106μmより大きい残りを乾燥させ、計量することによって求めた(Table 3(表3))。粉砕後に106μmよりサイズが大きい粒径のためにふるい分けの間に失われた物質の量と、ふるい分け後のCEC値との間の相関は、まったく明らかでなかった。湿式ふるい手順の後に、炭2からの水性抽出物は、暗褐色を有していた一方で、他の炭からの抽出物は、ほとんど、またはまったく色がなかったことが注目された(図6)。炭1および2からの水性抽出物を、200nmから800nmまでUV可視分光光度計(Unicam)でスキャンした(図7)。炭2からの抽出物は、フェノール基およびカルボニル基に特徴的な、UV領域における強い吸光度を有しており、これは、熱分解後のバイオマス中のリグニンの部分の残存と一致する。
【0068】
いくつかの最新のバイオ炭および土壌対照のCEC値について本明細書で報告した結果は、-0.5〜72cmol kg-1の範囲である。バイオ炭物質を生産するのに使用されるバイオマス供給原料およびプロセス条件の両方が、結果として生じるCECを決定することが、これらの結果から明らかである。この情報は、土壌改良および炭素隔離を生じさせることにおける有用性について、可能性のあるバイオ炭プロセスの評価を助ける。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
粉砕したトウモロコシ茎葉炭試料および土壌対照をまた、改良CEC方法によってアッセイし、この方法において、置換工程に使用されるMgSO4の濃度を、0.100Mまで10倍増大させ、滴定終点に対する最終的なMgSO4の濃度を、0.015Mに同時に増大させた。CECの結果をTable 4(表4)中に、以下に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
バリウムを置換するのに0.1MのMgSO4を使用したアッセイにより、文献に記載された濃度(0.01M)で得られたものの約2倍のCEC値を得た(Table 4(表4)および図4)。この知見は、より低い濃度のMg2+は、炭物質から装填されたBa2+のすべてを交換させるのに十分でないことを示すように思われる。
【実施例4】
【0075】
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析および結果
赤外スペクトルを、透過率で収集され、4cm-1の分解能、200スキャンのDigilab FTS 7000 FTIR分光計で記録した。試料を、10wt%でKBr中に調製し、圧縮してペレットにした。示したスペクトルは、1800cm-2において正規化されている。
【0076】
ガス化炭(700℃)および高速熱分解炭(450℃)ISUトウモロコシ茎葉の試料1および2は、セルロースの特性バンドと同様の特性バンドを示す(図8)。3600〜3175cm-1(OH伸縮)での中程度の強度の広いピーク、1725cm-1でのショルダー(C=O伸縮)、1595cm-1(OH変角)、1424cm-1での弱い、広いピーク(CH2変角-結晶化度の程度によって影響される強度)1、1095cm-1(おそらくC-O伸縮)、792cm-1(CH2変角)。
【0077】
図9および10において、Epridaの落花生殻の試料4、5、および6は、サザンイエローパインの試料8および9が持つように、トウモロコシ茎葉の試料1および2のものと同様の多くの異なる特徴的なOH振動数およびC=O振動数を持つことが分かる。図11において、試料12および13のFTIRは、その特徴的なOH(3500cm-1)ピークおよびCHピーク(1700〜800cm-1の間で欠いているいくつかのピーク強度)を緩めている。
【0078】
定性的に、試料1において、C-OおよびO-H(3500cm-1)は、試料2と比較した場合、強度が減少するように思われ、これは、以下に論じる元素分析および表面分析のいくつかに関連付けることができる。予期することができるように、より高い熱分解温度で、有機組成のうちのより多くが燃えてなくなり、したがって、有機部分の光吸収がより低くなる。
【実施例5】
【0079】
元素分析および結果
以下のTable 5(表5)およびTable 6(表6)はそれぞれ、本発明の方法によって調製された、選択された酸素化されたバイオ炭試料の元素分析および近似分析を示す。分析は、1回の分析からのものである乾燥による損失(%)を除いて、2つの分析の平均百分率として行った。標準偏差は10%未満である。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
Table 5(表5)およびTable 6(表6)中のデータによって立証されるように、全体的に、トウモロコシ茎葉試料1および2は、すべての落花生殻およびサザンイエローパイン試料4、5、6、8、9、12、13(4.5〜14.6%)より高い灰分含量(58%)を有するが、最低のC(%)(約33%(1および2)対約73%(4〜6、8〜9、および12〜13))、ならびに7.5%の試料12を除いて、最低のO(%)(5〜8.6%(1および2)対約12〜20%(4〜6、8〜9および13))を有する。以下のTable 5(表5)およびTable 6(表6)を参照。サザンイエローパインは、非常にわずかな窒素(<0.5%)を有する一方で、落花生殻およびトウモロコシ茎葉は、0.5〜2.0%の窒素を有することも注目すべきである。
【0083】
試料1および2の比較は、ともに非常に高い灰分含量(>58%)、同様の固定された炭素、およびC(%)を有することを示す。試料2(450℃)中に1.7倍多くの揮発性物質が存在し、これは、より低い熱分解温度と相関する。試料2中にはまた、一貫してより高いO(%)が存在し(1.7倍)、これは、試料1のほとんど2倍である、より高いO:Cモル比に関連する。これはまた、図8中のFTIRスペクトルと相関し、スペクトルが正規化される場合、OH強度およびC=O強度は試料2の方がより高い。興味深いことに、CEC値も、試料2について最大2の係数まで一貫してより高い(試料2=26.4[cmol(+)kg-1]、試料1=10.28[cmol(+)kg-1])。
【0084】
試料4、5、および6の比較は、6についてO:C比がより高いことを示す。FTIR分析も、やはり、5のものより定性的に強いC=O光吸収およびOH光吸収が存在することを示す。6のCEC値は、4および5(それぞれ12.4および6.2[cmol(+)/kg])より、著しく大きい(60.1[cmol(+)/kg])ことに注目することも興味深い。
【0085】
試料12および13は、同様の灰分含量を示す。試料13は、12よりわずかに高い揮発性物質(%)(8.86%対6.15)を有するが、より低い計算された固定された炭素(67.8対75.1)を有する。しかし、12および13のC(%)は非常に類似するという事実にもかかわらず、13は、有意な量のより多くの0(%)を有し、これは計算して、12より13について1.7倍の係数でより大きいO:C比になる。これはやはりCEC比と相関し、13は、66.6cmol(+)/kgという著しくより高いCECを有し、試料12は、約12.0cmol(+)/kgを有する。さらに、試料13は、12の表面積の約3.3倍であるより大きい表面積を有する。以下を参照。
【0086】
サザンイエローパインである試料8および9は、すべての元素分析および近似分析において同様の値を有し、灰分(%)のみが、8の方がわずかにより高いが、両試料についての結果として生じるO:C比は、0.15:1である。8および9のCEC値は同様であり、約-(4.7〜3.8)の負のCECを有することは注目すべきである。
【0087】
CEC値は、試料のO:C比とよく相関するように思われる。一般に、0:C比が高いほど、CEC値が高いことが見出された。試料13は、試料6または2ほど高いO:C比を有さないが、表面積の増加は、CEC値の増加に役割を果たす場合がある。SEMスペクトルも、試料1および2の表面積とよく相関し、試料2中に孔のサイズ分布を示している。
【実施例6】
【0088】
表面積分析および結果
BET比表面積を、すべての試料を分析の前に200℃で最低8時間脱ガスして、Quantachrome Autosorb-1分析器で、77Kで測定した窒素吸着-脱離等温線から得た。孔サイズ分布をBJH法によって分析し、BETを、P/Po範囲0.05〜0.35にわたる多点プロットから取得した。
【0089】
BET分析のために、すべての試料を200℃で最低8時間脱ガスした。図12〜22を参照すると、一般に、等温線は、I型特性を示し、これは、比較的小さい外部表面を有する微孔性固体を示す。9、12、および13を除くすべての試料で、表面積は、粉砕した試料について4〜57m2/gであった。ふるい分けは、試料1および2の表面積を増大させるように思われることが観察された。吸着質の限定的な取込みは、内部表面積ではなく、アクセス可能なマイクロ孔体積によって支配される。しかし、いくらかのヒステリシスが試料中に観察され、これは、ボトルネックまたはスリット形状の孔を示す。いくつかの場合では、脱着ブランチが非常に低いP/Poで閉じるが、閉じない場合もあり、これはおそらく、高圧で窒素を脱着することができないマイクロ孔の効果である。低い相対圧力(P/Po)での明確な曲率、または等温線の中央の直線的なセクションもまったく存在せず、これは、吸着質-吸着剤(N2-基質)ではなく、強い吸着質間(N2-N2ガス)相互作用を示す。13を除く等温線のすべては、脱着プロセスにおいて0.3未満の相対圧力に到達する前に閉じず、したがって、微孔性が存在することを示す。試料2(粉砕)は、1.5〜5.0nmの間の孔サイズの分布を示す。
【0090】
粉砕した試料1のBET表面積は、試料2のBET表面積より一貫して高い。これはまた、SEM画像と相関し(以下に論じるように)、試料1は、大きな開放された領域を伴った不規則な、画定されていない構造を示すのに対し、「孔の壁構造」または「細管」が、試料2について無傷なままであることが分かり、より大きい多孔度および表面積を可能にしている。
【0091】
意外にも、試料12および13は、非常に大きい表面積を有し、試料13は、0.3P/Poより上でほぼ閉じたループヒステリシスを示し、可能性がある「インク瓶」孔を示すが、孔の分析は、マイクロ孔の直径が1.5nm未満であることを示す。
【実施例7】
【0092】
走査型電子顕微鏡(SEM)分析および結果
SEM画像をHitachi S-4700で撮った。試料を5wt%で水またはイソプロパノール(IPA)中に混合し、次いで500μmのp-ドープシリコンウエハー(これは、非常に低い抵抗、すなわち、0.005ohm-cm未満を有する)の上部に配置し、乾燥させてウエハー上に炭試料を固定した。
【0093】
試料1のSEM画像を図23〜26に示す。図23〜26の顕微鏡写真によって示されるように、試料1のセル壁のほとんどは、痕跡がなくなっており、感知できる孔構造はまったく残されていない。試料2のSEM画像を図27〜30に示す。図27〜30の顕微鏡写真によって示されるように、細管は無傷のままであることが示され、これは、大きい孔サイズ分布が上記ガス吸着法において見られることとよく相関する。顕微鏡写真は、SEMグリッド上に移し、広げるために試料を懸濁させるのに使用した溶媒(すなわち、IPAまたは水)で標識されている。各顕微鏡写真の下部に、指定された長さを分割する規模線とともに、指定された長さの長さスケール(例えば、ミクロン(μm)またはナノメートル(nm)で)がある。
【0094】
現在のところ本発明の好適な実施形態と考えられるものを示し、説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に残る様々な変更および改変を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.1:1の酸素と炭素のモル比を有する酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項2】
酸素と炭素のモル比が少なくとも0.2:1である、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項3】
酸素と炭素のモル比が少なくとも0.25:1である、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項4】
酸素と炭素のモル比が少なくとも0.3:1である、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項5】
少なくとも140mmol/kgの陽イオン交換能力を有する酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項6】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも300mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項5に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項7】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも500mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項5に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項8】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも140mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項9】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも300mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項10】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも500mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項11】
酸素化されたバイオ炭が窒素含有肥沃化化合物で富化されている、請求項1に記載のバイオ炭組成物。
【請求項12】
酸素化されたバイオ炭が窒素含有肥沃化化合物で富化されている、請求項5に記載のバイオ炭組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物と混合された土壌を成分として含有する土壌配合物。
【請求項14】
請求項5に記載の酸素化されたバイオ炭組成物と混合された土壌を成分として含有する土壌配合物。
【請求項15】
陽イオン交換特性を有する酸素化されたバイオ炭物質を生産するための方法であって、バイオ炭源を少なくとも1つの酸素化化合物と反応させる工程を含み、バイオ炭源は、不完全燃焼プロセスにおいて、酸素含有陽イオン交換基を均質に獲得する方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの酸素化化合物が酸素ガスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
酸素含有陽イオン交換基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、またはこれらの組合せから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
バイオ炭を少なくとも1つの酸素化化合物と反応させる工程が、バイオ炭を酸素プラズマプロセスで処理することによって行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
バイオ炭を少なくとも1つの酸素化化合物と反応させる前記工程が、不完全燃焼プロセスにおいて、前記酸素含有陽イオン交換基でバイオ炭源を機能化するのに効果的な温度および時間で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
バイオ炭を反応させる前記工程が、前記バイオ炭および前記バイオ炭の完全燃焼に必要とされる量未満の量の酸素化化合物を含有する閉じた容器内で反応を実施することによって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
バイオ炭を反応させる前記工程が、完全な酸化が起こり得る前に、反応を急速に停止することによって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
反応が、反応中のバイオ炭を水と接触させることによって停止される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
反応が、反応中のバイオ炭を不活性物質で覆うことによって停止される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、バイオマスから生物燃料へのプロセスに統合されている、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
バイオ炭源中に含まれる炭素の10重量%以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
バイオ炭源中に含まれる炭素の5重量%以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
バイオ炭源中に含まれる炭素の2重量%以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
バイオ炭源中に含まれる炭素の1重量%以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも0.2:1の酸素と炭素のモル比を有する、請求項15に記載の方法によって生産される酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項30】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも300mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項15に記載の方法によって生産される酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項1】
少なくとも0.1:1の酸素と炭素のモル比を有する酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項2】
酸素と炭素のモル比が少なくとも0.2:1である、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項3】
酸素と炭素のモル比が少なくとも0.25:1である、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項4】
酸素と炭素のモル比が少なくとも0.3:1である、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項5】
少なくとも140mmol/kgの陽イオン交換能力を有する酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項6】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも300mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項5に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項7】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも500mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項5に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項8】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも140mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項9】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも300mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項10】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも500mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項11】
酸素化されたバイオ炭が窒素含有肥沃化化合物で富化されている、請求項1に記載のバイオ炭組成物。
【請求項12】
酸素化されたバイオ炭が窒素含有肥沃化化合物で富化されている、請求項5に記載のバイオ炭組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の酸素化されたバイオ炭組成物と混合された土壌を成分として含有する土壌配合物。
【請求項14】
請求項5に記載の酸素化されたバイオ炭組成物と混合された土壌を成分として含有する土壌配合物。
【請求項15】
陽イオン交換特性を有する酸素化されたバイオ炭物質を生産するための方法であって、バイオ炭源を少なくとも1つの酸素化化合物と反応させる工程を含み、バイオ炭源は、不完全燃焼プロセスにおいて、酸素含有陽イオン交換基を均質に獲得する方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの酸素化化合物が酸素ガスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
酸素含有陽イオン交換基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、またはこれらの組合せから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
バイオ炭を少なくとも1つの酸素化化合物と反応させる工程が、バイオ炭を酸素プラズマプロセスで処理することによって行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
バイオ炭を少なくとも1つの酸素化化合物と反応させる前記工程が、不完全燃焼プロセスにおいて、前記酸素含有陽イオン交換基でバイオ炭源を機能化するのに効果的な温度および時間で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
バイオ炭を反応させる前記工程が、前記バイオ炭および前記バイオ炭の完全燃焼に必要とされる量未満の量の酸素化化合物を含有する閉じた容器内で反応を実施することによって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
バイオ炭を反応させる前記工程が、完全な酸化が起こり得る前に、反応を急速に停止することによって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
反応が、反応中のバイオ炭を水と接触させることによって停止される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
反応が、反応中のバイオ炭を不活性物質で覆うことによって停止される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、バイオマスから生物燃料へのプロセスに統合されている、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
バイオ炭源中に含まれる炭素の10重量%以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
バイオ炭源中に含まれる炭素の5重量%以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
バイオ炭源中に含まれる炭素の2重量%以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
バイオ炭源中に含まれる炭素の1重量%以下が、1つまたは複数の燃焼酸化物ガスに変換される、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも0.2:1の酸素と炭素のモル比を有する、請求項15に記載の方法によって生産される酸素化されたバイオ炭組成物。
【請求項30】
酸素化されたバイオ炭が、少なくとも300mmol/kgの陽イオン交換能力を有する、請求項15に記載の方法によって生産される酸素化されたバイオ炭組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公表番号】特表2013−517204(P2013−517204A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548974(P2012−548974)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2011/020306
【国際公開番号】WO2011/087947
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(509125992)ユーティー−バッテル・エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2011/020306
【国際公開番号】WO2011/087947
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(509125992)ユーティー−バッテル・エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】
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