説明

バイオ燃料電池

【課題】本発明は、バイオ燃料電池に関するものである。
【解決手段】本発明のバイオ燃料電池は、少なくとも一つの電池単体を含む。該電池単体は、膜電極と、導流板と、陽極室と、を含む。前記膜電極は、プロトン交換膜と、該プロトン交換膜の一つの表面に設置された陰極電極と、該プロトン交換膜の一つの表面に対向する表面に設置された陽極電極と、を含む。前記陰極電極は、触媒層を含む。前記触媒層は、複数の管状キャリアと、該複数の管状キャリアの内壁に吸着された複数の触媒粒子と、該複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、を含む。前記複数の管状キャリアは、反応気体を直接前記複数の触媒粒子の表面に拡散させる。前記複数の管状キャリアの一端は、それぞれ前記プロトン交換膜に接続され、前記複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、前記プロトン交換膜と、を接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオ燃料電池とは、電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す装置の一つである。バイオ燃料電池は、軍事、国防、電力、自動車及び通信などの領域に広く応用されている(非特許文献1を参照)。
【0003】
バイオ燃料電池とは、酵素や微生物などの生体触媒により、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーへ変換するデバイスである。一般に、バイオ燃料電池は、膜電極と、陽極室と、導流板と、気体供給装置と、排気装置と、を含む。前記膜電極は、プロトン交換膜と、それぞれ該プロトン交換膜の対向する二つの表面に設置された陽極電極と、陰極電極と、を含む。前記陽極室は、バイオ燃料を含み、且つ前記陽極電極が、該バイオ燃料の中に浸漬される。前記導流板は、前記陰極電極の、前記プロトン交換膜に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記気体供給装置は、前記導流板と連通され、且つ該導流板を介して前記陰極電極へ反応気体を導入する。前記排気装置は、前記導流板と連通され、且つ該導流板を介して反応生成物を排出することができる。前記陽極電極は、炭素繊維紙及び該炭素繊維紙の表面に分散された酵素触媒を含む。前記陰極電極は、触媒層及び気体拡散層を含み、前記触媒層は、前記気体拡散層と前記プロトン交換膜との間に設置され、それぞれ前記気体拡散層及び前記プロトン交換膜に隣接する。前記触媒層は、触媒、触媒担体と、プロトン導体と、接着剤と、を含む。前記触媒担体は、炭素粒子である。前記触媒は、前記触媒担体内に高分散された貴金属ナノ粒子である。前記触媒層は、バイオ燃料電池において電気化学反応を生じる重要な場所であり、触媒効率はバイオ燃料電池の性能を決定する。前記触媒効率を高めるために、前記貴金属ナノ粒子の表面と、反応気体と、プロトン及び電子との反応のインターフェースを増加させる。具体的に、前記陽極電極から生成されたプロトン及び電子と、前記陰極電極へ導入された反応気体とは、全部前記触媒層に分散された触媒粒子の表面に転送されて反応する。前記プロトン、前記電子及び前記反応気体は、前記触媒粒子の表面に転送される通路がスムーズでない場合、前記バイオ燃料電池の電気化学反応に影響を与える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Recent advances in feul cell technology and its application,Journal of Power Sources,V100,P60−66(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術において、前記触媒層は、印刷法、噴霧法またはブラッシング法などの方法で触媒ペーストを前記気体拡散層の表面またはプロトン交換膜の表面に被覆させることによって形成される。前記方法で形成された触媒層は、複数の凝集体を含む不規則な構造体であるので、複数の貴金属触媒粒子は、前記複数の凝集体内に埋められるので、前記触媒の利用率が低い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、前記課題を解決するために、本発明はバイオ燃料電池を提供する。前記バイオ燃料電池において、陰極電極の触媒の利用率が高くなる。
【0007】
本発明のバイオ燃料電池は、少なくとも一つの電池単体を含む。該電池単体は、膜電極と、導流板と、陽極室と、を含む。前記膜電極は、プロトン交換膜と、該プロトン交換膜の一つの表面に設置された陰極電極と、該プロトン交換膜の一つの表面に対向する表面に設置された陽極電極と、を含む。前記陰極電極は、触媒層を含む。前記導流板は、前記陰極電極の、前記プロトン交換膜に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記陽極室は、バイオ燃料を含む。前記陽極電極が、前記バイオ燃料の中に浸漬される。前記触媒層は、複数の管状キャリアと、該複数の管状キャリアの内壁に吸着された複数の触媒粒子と、該複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、を含む。前記複数の管状キャリアは、複数の反応気体チャンネルとして、反応気体を直接前記複数の触媒粒子の表面に拡散させる。前記複数の管状キャリアは、電子伝導性を有する。前記複数の管状キャリアの一端は、それぞれ前記プロトン交換膜に接続され、前記複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、前記プロトン交換膜と、を接続させる。
【0008】
本発明のバイオ燃料電池は、複数の直列接続された電池単体を含む。前記単一の電池単体は、膜電極と、導流板と、陽極室と、を含む。前記膜電極は、プロトン交換膜と、該プロトン交換膜の一つの表面に設置された陰極電極と、該プロトン交換膜の一つの表面に対向する表面に設置された陽極電極と、を含む。前記陰極電極は、触媒層を含む。前記導流板は、前記陰極電極の、前記プロトン交換膜に隣接する表面とは反対の表面に設置され、前記陽極室は、バイオ燃料を含み、前記陽極電極が、前記バイオ燃料の中に浸漬され、隣接する二つの前記電池単体のうち、一方の前記電池単体の陽極電極と他方の前記電池単体の陰極電極とが電気的に接続される。前記複数の管状キャリアは、複数の反応気体チャンネルとして、反応気体を直接前記複数の触媒粒子の表面に拡散させる。前記複数の管状キャリアは、電子伝導性を有し、前記複数の管状キャリアの一端は、それぞれ前記プロトン交換膜に接続され、前記複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、前記プロトン交換膜と、を接続させる。
【0009】
本発明のバイオ燃料電池は、複数の並列接続された電池単体を含む。前記単一の電池単体は、膜電極と、導流板と、陽極室と、を含む。前記膜電極は、プロトン交換膜と、該プロトン交換膜の一つの表面に設置された陰極電極と、該プロトン交換膜の一つの表面に対向する表面に設置された陽極電極と、を含む。前記陰極電極は、触媒層を含む。前記導流板は、前記陰極電極の、前記プロトン交換膜に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記陽極室は、バイオ燃料を含み、前記陽極電極が、前記バイオ燃料の中に浸漬される。前記複数の電池単体の陽極同士間が電気的に接続され、それらの陰極同士間が電気的に接続され、または該複数の陰極に電気的に接続された複数の導流板同士間が電気的に接続され、前記複数の管状キャリアは、複数の反応気体チャンネルとして、反応気体を直接前記複数の触媒粒子の表面に拡散させる。前記複数の管状キャリアは、電子伝導性を有し、それぞれ前記複数の管状キャリアの一端は、それぞれ前記プロトン交換膜に接続され、前記複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、前記プロトン交換膜と、を接続させる。
【発明の効果】
【0010】
従来の技術と比べて、本発明のバイオ燃料電池において、陰極電極の触媒粒子は、均一に前記複数の管状キャリアの内壁に吸着される。前記複数の管状キャリアは、複数の反応気体チャンネルである。前記バイオ燃料電池が作動する場合、反応気体は、前記複数の反応気体チャンネルを介して、前記複数の管状キャリアの内壁に達して浸透して、前記触媒粒子と充分に接触することができる。前記管状キャリアの中に充填されたプロトン導体は、直接前記プロトン交換膜及び前記複数の管状キャリアの内壁に分散された複数の触媒粒子に接触するので、前記プロトン交換膜または前記プロトン導体を透過するプロトンを前記触媒粒子に充分に接触させることができる。且つ前記プロトン導体は、前記管状キャリアの中に充填されるので、前記プロトン導体は、前記反応気体をブロックせず、該反応気体を充分に前記触媒粒子に到達させることができる。更に、前記管状キャリアは、電子伝導性を有するので、該管状キャリアにより伝導された電子は、直接的に前記触媒粒子に接触することもできる。従って、前記バイオ燃料電池において、陰極電極の触媒粒子は、前記反応気体と、前記複数のプロトンと、前記複数の電子とに充分に作用するので、前記触媒の利用率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係るバイオ燃料電池の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る、相互に交叉して形成されたネットワーク構造を有する複数の管状キャリアを含むバイオ燃料電池の膜電極の構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る複数の異なる形状を有する管状キャリアを含むバイオ燃料電池の膜電極の構造を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る複数の相互に平行して離隔して設置された管状キャリアを含むバイオ燃料電池の膜電極の構造を示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係るバイオ燃料電池の陽極電極の構造を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係るバイオ燃料電池の構造を示す図である。
【図7】本発明の実施例3に係るバイオ燃料電池の構造を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係るバイオ燃料電池の製造工程のフローチャートである。
【図9】本発明の実施例に係るバイオ燃料電池の陰極電極の製造工程の各段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
(実施例1)
図1〜図4を参照すると、本実施例のバイオ燃料電池200は、少なくとも一つの電池単体100aを含む。前記電池単体100aは、膜電極10と、導流板22と、陽極室24と、を含む。前記膜電極10は、プロトン交換膜12と、該プロトン交換膜の一つの表面に設置された陰極電極14と、該プロトン交換膜12の一つの表面に対向する表面に設置された陽極電極13と、を含む。前記導流板22は、前記陰極電極14の、前記プロトン交換膜12に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記陽極室24は、バイオ燃料21を含む。前記陽極電極13は、前記バイオ燃料21の中に浸漬されている。
【0014】
図2〜図4を参照すると、前記膜電極10において、前記陰極電極14は、触媒層16を含む。前記触媒層16は、複数の管状キャリア162と、該複数の管状キャリア162の内壁に吸着された複数の触媒粒子164と、該複数の管状キャリア162の中に充填されたプロトン導体166と、を含む。前記複数の管状キャリア162は、複数の反応気体チャンネルとして、反応気体を直接前記複数の触媒粒子164の表面に拡散させる。前記複数の管状キャリア162は、電子伝導性を有する。それぞれ前記複数の管状キャリア162の一端は、前記プロトン交換膜12に接続され、前記複数の管状キャリア162の中に充填されたプロトン導体166と、前記プロトン交換膜12と、を接続させる。
【0015】
前記プロトン交換膜12によって、複数のプロトンは、前記陽極電極13及び陰極電極14の間で移動または輸送される。且つ、前記プロトン交換膜12により、前記陽極電極13と陰極電極14とが接触することを防ぐことができる。前記プロトン交換膜12は、スルホン酸基を含むプロトン交換樹脂からなる。前記プロトン交換樹脂は、ペルフルオロスルホン酸樹脂、またはプロトン交換機能及び優れた熱安定性を有するスルホン化ポリマーである。前記スルホン化ポリマーは、ポリエーテルスルホン樹脂、スルホン化ポリフェニレンサルファイド樹脂、スルホン化ポリベンゾイミダゾール樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂及びスルホン化ポリスチレン−ポリエチレン共重合樹脂の一種または多種である。前記プロトン交換膜12の厚さは、10μm〜200μmであるが、18μm〜50μmであることが好ましい。本実施例において、前記プロトン交換膜12は、ペルフルオロスルホン酸樹脂からなり、その厚さが25μmである。
【0016】
前記触媒層16における複数の管状キャリア162は、チャネルとして、導電粒子及びプロトンを前記導流板22及び前記プロトン交換膜12に到達させる。具体的には、前記複数の管状キャリア162が配向し又は配向せずに配置されることができる。ここで、前記管状キャリア162は、反応気体チャンネルと定義される。前記複数の管状キャリア162の一端は、それぞれ前記プロトン交換膜12に接続され、前記複数の管状キャリア162の中に充填されたプロトン導体と、前記プロトン交換膜12と、を接続させる。それぞれ前記複数の管状キャリア162の間に、複数の隙間が形成され、該複数の管状キャリア162の壁は、複数の孔を有する。これにより、反応気体は、前記数の隙間及び前記複数の孔を介して、前記複数の管状キャリア162の内部及び該複数の管状キャリアの内壁に吸着された複数の触媒粒子まで拡散する。前記複数の管状キャリア162は、相互に離隔して設置され、または相互に交差し、複数の孔を有してネットワーク状構造体に形成される。単一の前記管状キャリア162の形状は、制限されず、例えば、直線形、曲線形またはY字形であることができる。図2を参照すると、前記膜電極10における複数の管状キャリア162は、相互に交差してネットワーク状構造体を形成する。図3を参照すると、前記膜電極10における複数の管状キャリア162は、相互に間隔を有して設置されている。本実施例において、図4を参照すると、前記複数の管状キャリア162は、直線形であり、該管状キャリア162は、前記プロトン交換膜12の表面に垂直する。前記複数の管状キャリア162は、均一に分散し、且つ相互に平行して離隔して設置される。
【0017】
前記複数の管状キャリア162の直径は、10nm〜10μmであるが、50nm〜300nmであることが好ましい。前記複数の管状キャリア162の直径が50nm〜300nmである場合、単位体積あたりの触媒層16において、前記触媒粒子164の数量が多い。且つ、前記複数の管状キャリア162の中に充填された複数のプロトン導体166の断面は大きくなり、前記複数のプロトン導体166の電気抵抗を小さくさせるので、該複数のプロトン導体166は、良好なプロトン伝導性を有する。前記複数の管状キャリア162は、カーボンナノチューブ、亜鉛酸化物ナノチューブ、コバルト酸化物ナノチューブまたは五酸化バナジウムのナノチューブであることができる。前記複数の管状キャリア162が、カーボンナノチューブである場合、前記複数のカーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記複数の管状キャリア162の壁の厚さは1nm〜50nmであるが、2nm〜15nmであることが好ましい。これにより、前記複数の管状キャリア162は、良好な電子伝導性を有すると同時に、前記反応気体が前記複数の管状キャリア162を透過する経路が短くなる。前記触媒層16の厚さは、1μm〜100μmである。前記複数の管状キャリア162の長さは、制限されない。前記複数の管状キャリア162は、直線形であり、且つ前記プロトン交換膜12に垂直する場合、前記複数の管状キャリア162の長さは、前記触媒層16の厚さと同じである。それぞれ前記複数の管状キャリア162の間の距離は制限されない。前記複数の管状キャリア162は、相互に平行して離隔して設置される場合、前記隣接する二つの管状キャリア162の間の距離は、50μm以下(0μmを含まず)である。本実施例において、前記複数の管状キャリア162は、カーボンナノチューブである。前記複数のカーボンナノチューブが非晶質炭素層からなり、単一のカーボンナノチューブの長さが、7μmであり、直径が、100nmであり、壁厚は3nmである。前記隣接する二つのカーボンナノチューブの間の距離は、100nm以下である。
【0018】
前記複数の触媒粒子164は、高い触媒活性を有する貴金属粒子である。例えば、前記複数の触媒粒子164は、プラチナ、パラジウム、金またはルテニウムからなるが、プラチナからなることが好ましい。前記複数の触媒粒子164の粒径は、1nm〜8nmであることが好ましい。前記複数の触媒粒子164は、均一に前記複数の管状キャリア162の内壁に吸着されている。単一の前記触媒層16に対して前記複数の触媒粒子164の吸着量は、0.5mg・cm−2以下である。更に、前記複数の管状キャリア162の直径が小さく、それらの管壁が一定の吸着力を有するので、前記複数の触媒粒子164を均一、安定に前記管状キャリア162の内壁に吸着される。本実施例において、単一の前記触媒層16に対して前記複数の触媒粒子164の吸着量が、0.1mg・cm−2であり、それらの粒径が、3nmである。
【0019】
前記プロトン導体166は、前記複数の管状キャリア162の中に充填され、プロトンの輸送に用いられる。前記プロトン導体166は、スルホン酸基を含むプロトン交換樹脂からなる。前記プロトン交換樹脂は、ペルフルオロスルホン酸樹脂、またはプロトン交換機能及び優れた熱安定性を有するスルホン化ポリマーである。前記スルホン化ポリマーは、ポリエーテルスルホン樹脂、スルホン化ポリフェニレンサルファイド樹脂、スルホン化ポリベンゾイミダゾール樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂及びスルホン化ポリスチレン−ポリエチレン共重合樹脂の一種または多種である。前記プロトン導体166の材料は、前記プロトン交換膜12の材料と同じでも、異なってもよい。
【0020】
前記触媒層16において、前記複数の管状キャリア162の管壁は電子伝導性を有する。前記複数の管状キャリア162の中に充填された前記プロトン導体166は、プロトン伝導性を有する。前記複数のプロトン導体166及び前記複数の管状キャリア162の管壁の間には、前記複数の触媒粒子164からなる触媒活性層が設置される。それぞれ前記プロトン交換膜12及び前記複数の管状キャリア162の管壁は、直接前記複数の管状キャリア162におけるプロトン導体166に接続されている。前記複数の管状キャリア162の間に存在する隙間には、気体を輸送するためのチャンネルが形成される。前記プロトン導体166は、前記複数の管状キャリア162の中に充填されるので、該プロトン導体166は、反応気体をブロックせずに、該反応気体を前記複数の管状キャリア162の管壁に吸着された複数の触媒粒子164の表面まで到達させることができる。
【0021】
更に、前記陰極電極14は、気体拡散層18を含む。前記気体拡散層18は、前記触媒層16の、前記プロトン交換膜12に隣接する一端とは反対の一端に設置される。前記気体拡散層18は、前記触媒層16における前記複数の管状キャリア162の管壁に電気的に接続される。前記気体拡散層18は、導電性多孔質材料からなる。前記気体拡散層18は、前記触媒層16の支持、電流の収集、気体の輸送、及び水の排出という機能がある。前記気体拡散層18は、炭素繊維紙または複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムであり、その厚さは、100μm〜500μmである。
【0022】
図5を参照すると、前記陽極電極13は、複数の触媒担体132及び該複数の触媒担体132に吸着された複数の酵素触媒134を含む。前記触媒担体132は、直接前記プロトン交換膜12に接触する。前記触媒担体132は、前記複数の酵素触媒134を吸着し、電子を伝導することができる。前記触媒担体132は、石墨、炭素繊維紙または複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムである。前記複数の酵素触媒134は、均一に前記複数の触媒担体132に吸着される。前記複数の酵素触媒134は、バイオ燃料に対して触媒作用を有する酵素触媒である。例えば、前記複数の酵素触媒134は、FADを含む酸化酵素またはNAD(P)を含む脱水素酵素であることができる。本実施例において、前記触媒担体132は、複数の相互に絡み合ったカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムである。前記複数の酵素触媒134は、ブドウ糖酸化酵素である。前記陽極室24は、バイオ燃料21を含む。前記陽極電極13は、前記バイオ燃料21の中に浸漬される。本実施例において、前記バイオ燃料21は、ブドウ糖溶液である。更に、前記陽極電極13は、プロトン導体(図示せず)を含む。前記プロトン導体は、前記触媒担体132と、前記複数の酵素触媒134と、を均一に混合している。前記プロトン導体は、プロトンを輸送することができ、その材料は、前記陰極電極14におけるプロトン導体166と同じでも、異なってもよい。
【0023】
更に、前記陰極電極14の構造は、前記陽極電極13の構造と類似したものにすることもできる。前記陰極電極14における前記複数の管状キャリア162の構造と比べると、前記触媒担体132の構造は、次の異なる点がある。前記陰極電極14の触媒は、酵素触媒134である。該酵素触媒134は、前記触媒担体132の内壁に吸着されることができる。具体的には、前記陰極電極14は、前記プロトン交換膜12の表面に設置された前記触媒担体132と、均一に前記触媒担体132の内壁に吸着された前記複数の酵素触媒134と、前記触媒担体132の中に充填されたプロトン導体と、を含む。前記触媒担体132は、バイオ燃料のチャンネルとして、前記バイオ燃料を直接前記酵素触媒134の表面に拡散させる。前記複数の触媒担体132の一端は、前記プロトン交換膜12に接続されることによって、前記複数の触媒担体132におけるプロトン導体と、前記プロトン交換膜12と、を接触させる。
【0024】
前記導流板22は、前記陰極電極14の、前記プロトン交換膜12に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記陰極電極14が、拡散層18を含む場合、前記導流板22は、前記拡散層18の一つの表面に設置される。前記バイオ燃料電池200において、前記導流板22は、流体を通過させ及び電流を伝導させることができる。具体的には、前記導流板22を介して、前記陰極電極14へ反応気体を導入し、反応生成物を排出することができる。前記導流板22の、前記陰極電極14に隣接する表面は、少なくとも一つの導流溝220を有する。前記導流溝220は、反応気体を直接記陰極電極14に導入し、反応生成物を排出することができる。前記導流溝220の形状は制限せずに、直接前記陰極電極14と連通される。本実施例において、前記導流溝220は、方形スロットである。前記導流板22の、前記陰極電極14に隣接する表面(前記導流溝220の部分を含まず)は、前記陰極電極14に電気的に接続される。これにより、前記膜電極10から生成された電子が前記導流板22を介して、外部回路に輸送される。前記導流板22は、アルミニウム、銅若しくは鉄などの金属または導電性炭素材料からなる。
【0025】
更に、前記バイオ燃料電池単体100aは、ガス供給排気装置30を含む。前記ガス供給排気装置30は、直接前記導流溝220と連通される。前記ガス供給排気装置30は、ブロワー(図示せず)と、ガス管路31と、弁ケッド(図示せず)と、を含む。それぞれ前記ブロワー及び前記ガス管路31は、前記導流板22に接続され、前記バイオ燃料電池単体100aに反応気体を提供する。前記反応気体は、酸化剤ガスであることができる。本実施例において、前記酸化剤ガスでは、純酸素ガスまたは酸素を含む空気である。
【0026】
更に、前記バイオ燃料電池単体100aは、集電板26を含む。前記集電板26は、前記導流板22の、前記陰極電極14に隣接する表面とは反対の表面に設置され、前記導流板22に電気的に接続される。前記集電板26は、前記バイオ燃料電池単体100aが電気化学反応を行う過程において、生成した電子を収集及び輸送することができる。前記集電板26は、アルミニウム、銅若しくは鉄などの金属または導電性炭素材料からなる。
【0027】
前記バイオ燃料電池200を動作する場合、前記陽極電極13の一端に配置された前記陽極室24において、前記バイオ燃料21(例えばブドウ糖溶液)は、前記複数の酵素触媒134の作用で、次のように反応する。
【0028】
ブドウ糖→ブドウ糖酸+2H+2e
【0029】
前記反応から生成された水素イオンは、前記陽極室24におけるブドウ糖溶液を介して、前記プロトン交換膜12によって、前記陰極電極14に到達する。前記反応から生成された電子は、前記触媒担体132によって、外部回路(図示せず)に輸送された後、前記陰極電極14に到達する。
【0030】
更に、前記陽極電極13の構造が、前記陰極電極14の構造と類似する場合、前記バイオ燃料21は、前記複数の酵素触媒134の間の隙間を介して、前記複数の触媒担体132の内壁に吸着された前記酵素触媒134に到達する。これにより、前記酵素触媒134の作用によって、前記バイオ燃料21は、電気化学反応を行って、複数のプロトン及び電子を生成する。前記複数のプロトンは、前記触媒担体132の中に充填されたプロトン導体を介して、前記プロトン交換膜12に到達した後、該プロトン交換膜12によって、前記陰極電極14に到達する。前記複数の電子は、前記触媒担体132によって、外部回路(図示せず)に輸送される。
【0031】
前記陰極電極14の一端に配置された前記ガス供給排気装置30を利用して、前記導流溝220を介して前記陰極電極14に酸化剤ガス(例えば酸素ガス)を導入する。前記膜電極10における複数の管状キャリア162が複数のカーボンナノチューブである場合、前記酸素ガスは、前記陰極電極14から導入された後、前記気体拡散層18を介して、前記触媒層16に接触する。前記触媒層16において、前記酸素ガスは、前記複数のカーボンナノチューブによって、該複数のカーボンナノチューブの内壁に吸着された複数の触媒粒子164に拡散する。具体的には、前記触媒層16において、複数のカーボンナノチューブの間に複数の隙間があるので、前記酸素ガスは、前記複数の隙間によって、前記複数のカーボンナノチューブに拡散することができる。前記複数のカーボンナノチューブは、多孔性の無定形炭素からなるので、前記酸素ガスを、前記複数のカーボンナノチューブの内壁を通して、前記触媒粒子164に接触させる。前記陽極電極13における反応から生成された複数の電子は、外部回路(図示せず)により前記導流板22に到達する。前記導流板22は、前記複数のカーボンナノチューブに接触するので、前記導流板22に到達した複数の電子は、前記複数のカーボンナノチューブの内壁を介して前記触媒粒子164に輸送される。同時に、前記複数のカーボンナノチューブの中に充填された複数のプロトン導体166は、直接前記プロトン交換膜12に接触するので、前記陽極電極13から生成された水素イオンは、前記複数のプロトン導体166を介して前記複数のカーボンナノチューブの内壁に吸着された複数の触媒粒子164に輸送されることができる。これにより、前記酸素ガス、前記水素イオン及び前記電子は、前記複数の触媒粒子164の作用によって、次のように反応する。
【0032】
1/2O+2H+2e→H
【0033】
前記反応から生成された水は、前記複数のカーボンナノチューブの管壁によって、前記隣接する二つのカーボンナノチューブの間の隙間に浸透した後、前記気体拡散層18及び前記導流溝220を介して、排出される。前記反応の過程において、前記陽極電極13及び前記陰極電極14の間に電位差が生じ、外部回路が負荷に接続された場合、電流を形成することができる。
【0034】
前記バイオ燃料電池200を動作させる場合、前記陽極電極14の触媒層16において、前記複数の触媒粒子164は、均一、安定に前記複数のカーボンナノチューブの内壁に吸着される。且つ前記プロトン導体166は、前記複数のカーボンナノチューブの中に充填されるので、前記反応気体は、前記複数のカーボンナノチューブの管壁から、該複数のカーボンナノチューブの中に浸透する。これにより、前記反応気体は、直接前記複数の触媒粒子164に接触して、前記複数の触媒粒子164の利用率は100%近くに達する。
【0035】
(実施例2)
図6を参照すると、本実施例のバイオ燃料電池300は、複数の直列接続された電池単体300aを含む。前記電池単体300aの材料及び構造は、実施例1の電池単体100aと同じである。前記隣接する二つの電池単体300aの陽極電極13と陰極電極14とが電気的に接続される。具体的には、前記隣接する二つの電池単体300aにおいて、一つの前記電池単体300aの陽極電極13は、リードによって、もう一つの前記電池単体300aの導流板22に電気的に接続される。前記複数の電池単体300aが、直列接続される場合、前記バイオ燃料電池300の出力電圧は、前記複数の電池単体300aの出力電圧の合計である。
【0036】
(実施例3)
図7を参照すると、本実施例のバイオ燃料電池400は、複数の並列接続された電池単体400aを含む。前記複数の電池単体400aの陽極電極13同士間が電気的に接続される。それらの陰極電極14同士間が電気的に接続され、または該複数の陰極電極14に電気的に接続された複数の導流板22同士間が電気的に接続される。本実施例において、前記複数の電池単体400aの陽極電極13同士間が、リードによって、電気的に接続される。前記複数の陰極電極14に電気的に接続された複数の導流板22同士間が電気的に接続される。前記バイオ燃料電池400を動作させる場合、前記バイオ燃料電池400の出力電圧は、単一の前記電池単体400aの出力電圧であるが、その出力電流は、前記複数の電池単体400aの出力電流の合計である。
【0037】
図8及び図9を参照すると、前記陰極電極14の製造方法は、多孔膜20を提供する第一ステップと、前記多孔膜20における複数の穴の中に、複数の管状キャリア162を形成する第二ステップと、前記複数の管状キャリア162の内壁に複数の触媒粒子164を吸着させる第三ステップと、前記複数の触媒粒子164が吸着された複数の管状キャリア162の中に、プロトン導体166を充填する第四ステップと、プロトン交換膜12を提供し、該プロトン交換膜12を前記多孔膜20の一つの表面に設置して積層構造体を形成した後、該積層構造体を熱圧する第五ステップと、前記多孔膜20を除去して、前記プロトン導体166で充填された複数の管状キャリア162の一端を、前記プロトン交換膜12に接続させ、前記プロトン導体166と、前記プロトン交換膜12と、を接触させる第六ステップと、を含む。
【0038】
前記第一ステップにおいて、前記多孔膜20の材料は制限されない。例えば、前記多孔膜20は、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素からなる。本実施例において、前記多孔膜20は酸化アルミニウムからなる。前記多孔膜20においける複数の穴は、前記複数の管状キャリア162の形状、直径及び各々の前記複数の管状キャリア162の間の位置関係に基づいて設けられる。例えば、前記複数の管状キャリア162が、均一に分散し、且つ相互に平行して離隔して設置される場合、前記複数の穴は、前記複数の管状キャリア162に対応して、均一に分散し、且つ相互に平行して離隔して設置されることもできる。前記複数の管状キャリア162が、ランダムに分散する場合、前記複数の穴は、ランダムに分散することもできる。前記多孔膜20は、対向する二つの表面を有する。且つ前記多孔膜20においける複数の穴において、少なくとも一つの開口が該多孔膜20の一つの表面に形成される。前記複数の穴は、前記多孔膜20の対向する二つの表面間を貫通することが好ましい。前記多孔膜20の直径は、10nm〜10μmであるが、50nm〜300nmであることが好ましい。前記複数の穴は、均一に分散し、且つ相互に平行して離隔して設置された直線型の透過孔であり、且つ隣接する二つの穴の間の距離は、10nm〜50μmであることが好ましい。前記多孔膜20の厚さは、1μm〜100μmであることが好ましい。本実施例において、前記複数の穴の直径は、100nmであり、隣接する二つの穴の間の距離は、100nmであり、前記多孔膜20の厚さは、7μmである。
【0039】
前記第二ステップにおいて、前記複数の管状キャリア162は、カーボンナノチューブ、チタニアナノチューブ、亜鉛酸化物ナノチューブ、酸化コバルトナノチューブまたは五酸化バナジウムナノチューブであることができる。蒸鍍法、化学気相蒸着法、ゾル−ゲル法または浸漬法で前記複数の管状キャリア162を製造する。
【0040】
前記複数の管状キャリア162が、カーボンナノチューブである場合、その製造方法は炭素化合物溶液を提供し、前記多孔膜20を該炭素化合物溶液の中に浸漬するステップS11と、前記炭素化合物溶液の中から前記多孔膜20を取り出した後、アニーリングさせて、前記多孔膜20の複数の穴の中に、複数のカーボンナノチューブを形成するステップS12と、を含む。
【0041】
前記ステップS11において、前記炭素化合物溶液は、炭素化合物を水または揮発性有機溶剤に溶かすことによって形成される。前記溶剤は、水または揮発性有機溶剤であることが好ましい。前記水は、蒸留水または脱イオン水である。前記揮発性有機溶剤は、エタノール、プロパノールまたはアセトンであることができる。前記炭素化合物は、アニーリングされた後炭素に分解するが、無定形炭素に分解することが好ましい。前記炭素化合物は、シュウ酸、ショ糖、ブドウ糖、フェノール樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコールまたはポリビニルアルコールである。前記炭素化合物溶液の濃度は、前記複数の管状キャリア162の間の隙間に影響を与える。前記炭素化合物溶液の濃度が小さい場合、それぞれ前記複数の管状キャリア162の間の隙間が大きくなる。これとは反対に、前記炭素化合物溶液の濃度が大きい場合、それぞれ前記複数の管状キャリア162の間の隙間が小さくなる。前記炭素化合物溶液の濃度は、0.05g/ml〜1g/mlであることが好ましい。常圧で複数の穴を有するアルミナ板を、前記炭素化合物溶液の中に5分〜5時間浸漬させる。これにより、前記アルミナ板の穴の内壁を前記炭素化合物溶液で充分に浸漬させる。本実施例において、前記アルミナ板を、前記0.2g/ml炭素化合物溶液の中に1時間浸漬させる。更に、前記炭素化合物溶液を加圧することによって、アルミナ板の浸漬時間が短くなる。
【0042】
前記ステップS12において、前記多孔膜20は、前記炭素化合物溶液の中から取り出された後、水または揮発性有機溶剤で洗浄して乾燥処理させる。具体的には、前記洗浄された多孔膜20を真空中で60℃〜100℃で30分〜6時間加熱する。本実施例において、前記洗浄された多孔膜20を真空中で80℃で3時間加熱する。
【0043】
前記ステップS12において、前記多孔膜20をアニーリングする方法は、前記多孔膜20を保護ガスで充満された加熱炉の中に、所定の温度で一定の時間焼成して、前記炭素化合物を無定形炭素に分解し、該無定形炭素をカーボンナノチューブに形成する工程を含む。本実施例において、前記炭素化合物は、シュウ酸であり、前記多孔膜20をアニーリングする工程において、まず、1℃〜5℃/分の加熱速度で前記多孔膜20を100℃〜150℃まで加熱した後、1時間〜3時間保温する。次に、1℃〜5℃/分の加熱速度で前記多孔膜20を400℃〜600℃まで加熱して、2時間〜8時間保温した後、室温まで冷却する。
【0044】
前記第三ステップにおいて、前記複数の触媒粒子164は、プラチナ、金、パラジウムまたはルテニウムのような高触媒活性を有する貴金属粒子であるが、プラチナであることが好ましい。前記複数の触媒粒子164の製造方法は、前記複数の管状キャリア162が形成された多孔膜20を、触媒イオンを含む溶液に浸漬するステップa1と、前記触媒イオンを還元させた後、前記複数の管状キャリア162の内壁に吸着させるステップa2と、を含む。
【0045】
前記触媒イオンが、プラチナからなる場合、前記ステップa2は、塩化白金酸溶液(HPtCl)を提供し、前記複数の管状キャリア162が形成された多孔膜20を、前記塩化白金酸(HPtCl)溶液に浸漬して、前記塩化白金酸溶液のpH値を調整してアルカリ性にするステップa11と、前記アルカリ性の塩化白金酸溶液に還元性物質を添加して混合物とした後、該混合物を加熱することによって、前記塩化白金酸溶液と前記還元性物質との間で酸化還元反応を生じさせて、前記多孔膜20における複数の管状キャリア162の内壁に複数のプラチナからなる触媒粒子を形成するステップa12と、を含む。
【0046】
前記ステップa11において、前記塩化白金酸溶液は、塩化白金酸を蒸留水または揮発性有機溶剤に溶かすことによって形成される。前記塩化白金酸溶液の濃度は、前記複数の管状キャリア162の内壁に吸着された複数の触媒粒子164の数量と関連する。塩化白金酸溶液のモル濃度は、0.01mol/L〜1mol/Lであることが好ましい。本実施例において、前記塩化白金酸溶液のモル濃度は、0.01mol/Lである。前記塩化白金酸溶液のpH値を調整する方法は、前記塩化白金酸溶液の中にアルカリ性物質を添加することである。前記アルカリ性物質は、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、または水酸化カリウム(KOH)である。前記塩化白金酸溶液のpH値を8〜9に調整することが好ましい。
【0047】
前記ステップa12において、前記還元性物質は、ホルムアルデヒド(HCHO)、ギ酸(HCOOH)または水素化ホウ素カリウム(KBH)である。前記還元性物質の量は、前記塩化白金酸溶液におけるプラチナイオンを還元してプラチナを生じさせる量であってよい。前記アルカリ性の塩化白金酸溶液に還元性物質を添加して形成した混合物を加熱する温度は、50℃〜70℃である。更に、前記加熱する工程において、保護ガスを、前記加熱炉に導入することもできる。前記保護ガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスである。前記形成された複数の触媒粒子164の直径は、1nm〜8nmである。前記複数の触媒粒子164を形成した後、前記多孔膜20を取り出して、蒸留水または揮発性有機溶剤で該多孔膜20の表面上に生成された副産物を洗浄して、乾燥する。
【0048】
前記第四ステップにおいて、前記複数のプロトン導体166を前記多孔膜20の穴に注入する前に、プロトン導体166を熔融状態とし、または前記プロトン導体166を溶媒に溶かし、プロトン導体溶液を形成する。前記プロトン導体166を前記多孔膜20の穴に注入するためには、次の二つ方法がある。一つの方法は、前記多孔膜20の厚さ方向と長さ方向とを有する複数の穴を有する平面を、直接前記熔融状態のプロトン導体または前記プロトン導体溶液の液面に平行するように接触させて、前記多孔膜20における複数の管状キャリア162を前記プロトン導体166で充填させることである。もう一つの方法は、前記多孔膜20の複数の穴を有する表面で漏斗の広い開口部を覆わせて、前記熔融状態のプロトン導体または前記プロトン導体溶液を、前記多孔膜20の、前記漏斗の開口部に連接する表面とは反対の表面から注入して、前記多孔膜20の複数の穴の中に浸漬させた後、蒸留水または脱イオン水で洗浄して乾燥させることである。前記熔融状態のプロトン導体または前記プロトン導体溶液を、前記多孔膜20の、前記漏斗の開口部に連接する表面とは反対の表面から注入する工程において、真空ポンプで前記熔融状態のプロトン導体または前記プロトン導体溶液を吸引して、前記熔融状態のプロトン導体または前記プロトン導体溶液を速く前記複数の穴に注入させる。前記複数の管状キャリア162を前記プロトン導体166で充填する時に、前記プロトン導体166を固化する。前記プロトン導体166の材料によって、その固化方法を選択する。前記プロトン導体166が、熔融状態のプロトン導体である場合、前記熔融状態のプロトン導体を静置し、または低温で前記熔融状態のプロトン導体を所定の時間の間加熱することによって、前記プロトン導体166を固化する。前記プロトン導体166が、前記プロトン導体溶液である場合、前記プロトン導体溶液の溶媒を除去した後、所定の時間の間静置するまたは低温加熱することによって、前記プロトン導体16を前記多孔膜20の穴の内壁に固化させる。
【0049】
本実施例において、前記プロトン導体166は、ペルフルオロスルホン酸樹脂である。前記ペルフルオロスルホン酸樹脂は、前記複数の管状キャリア162に注入する前に、該ペルフルオロスルホン酸樹脂を熔融させる。
【0050】
前記第五ステップにおいて、前記積層構造体を熱圧することによって、前記積層構造体を一体化し、前記管状キャリア162の中に充填された前記プロトン導体166と、前記プロトン交換膜12とを接続させる。
【0051】
前記第六ステップにおいて、前記熱圧された積層構造体における前記多孔膜20を除去する方法は、前記多孔膜20の材料によって選択する。例えば、腐食方法で前記多孔膜20を除去する。本実施例において、前記多孔膜20は、アルミナからなる。この場合、前記多孔膜20を溶解する。具体的には、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液またはリン酸(HPO)溶液に前記積層構造体を浸漬することによって、前記アルミナからなる多孔膜20を除去する。前記水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度は、0.5mol/L〜4mol/Lで、前記リン酸(HPO)溶液の濃度は、3mol/L〜15mol/Lであることが好ましい。前記多孔膜20を除去した後、前記配向して配列された複数の管状キャリア162が、前記プロトン交換膜12の表面に設置される。
【符号の説明】
【0052】
100a、300a、400a バイオ燃料電池単体
10 膜電極
12 プロトン交換膜
13 陽極電極
132 触媒担体
134 酵素触媒
14 陰極電極
16 触媒層
162 管状キャリア
164 触媒粒子
166 プロトン導体
18 気体拡散層
20 多孔膜
21 バイオ燃料
22 導流板
220 導流溝
24 陽極室
26 集電板
30 ガス供給排気装置
31 ガス管路
200、300、400 バイオ燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電池単体を含むバイオ燃料電池において、
前記電池単体は、膜電極と、導流板と、陽極室と、を含み、
前記膜電極は、プロトン交換膜と、該プロトン交換膜の一つの表面に設置された陰極電極と、該プロトン交換膜の一つの表面に対向する表面に設置された陽極電極と、を含み、
前記陰極電極は、触媒層を含み、
前記導流板は、前記陰極電極の、前記プロトン交換膜に隣接する表面とは反対の表面に設置され、
前記陽極室は、バイオ燃料を含み、前記陽極電極が、前記バイオ燃料の中に浸漬され、
前記触媒層は、複数の管状キャリアと、該複数の管状キャリアの内壁に吸着された複数の触媒粒子と、該複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、を含み、
前記複数の管状キャリアは、複数の反応気体チャンネルとして、反応気体を直接前記複数の触媒粒子の表面に拡散させ、
前記複数の管状キャリアは、電子伝導性を有し、
前記複数の管状キャリアの一端は、それぞれ前記プロトン交換膜に接続され、前記複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、前記プロトン交換膜と、が接続されることを特徴とするバイオ燃料電池。
【請求項2】
複数の直列接続された電池単体を含むバイオ燃料電池において、
単一の前記電池単体は、膜電極と、導流板と、陽極室と、を含み、
前記膜電極は、プロトン交換膜と、該プロトン交換膜の一つの表面に設置された陰極電極と、該プロトン交換膜の一つの表面に対向する表面に設置された陽極電極と、を含み、
前記陰極電極は、触媒層を含み、
前記導流板は、前記陰極電極の、前記プロトン交換膜に隣接する表面とは反対の表面に設置され、
前記陽極室は、バイオ燃料を含み、前記陽極電極が、前記バイオ燃料の中に浸漬され、 隣接する二つの前記電池単体のうち、一方の前記電池単体の陽極電極と他方の一方の前記電池単体の陰極電極とが電気的に接続され、
前記複数の管状キャリアは、複数の反応気体チャンネルとして、反応気体を直接前記複数の触媒粒子の表面に拡散させ、
前記複数の管状キャリアは、電子伝導性を有し、
前記複数の管状キャリアの一端は、それぞれ前記プロトン交換膜に接続され、前記複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、前記プロトン交換膜と、が接続されることを特徴とするバイオ燃料電池。
【請求項3】
複数の並列接続された電池単体を含むバイオ燃料電池において、
単一の前記電池単体は、膜電極と、導流板と、陽極室と、を含み、
前記膜電極は、プロトン交換膜と、該プロトン交換膜の一つの表面に設置された陰極電極と、該プロトン交換膜の一つの表面に対向する表面に設置された陽極電極と、を含み、
前記陰極電極は、触媒層を含み、
前記導流板は、前記陰極電極の、前記プロトン交換膜に隣接する表面とは反対の表面に設置され、
前記陽極室は、バイオ燃料を含み、前記陽極電極が、前記バイオ燃料の中に浸漬され、
前記複数の電池単体の陽極同士間が電気的に接続され、それらの陰極同士間が電気的に接続され、または該複数の陰極に電気的に接続された複数の導流板同士間が電気的に接続され、
前記複数の管状キャリアは、複数の反応気体チャンネルとして、反応気体を直接前記複数の触媒粒子の表面に拡散させ、
前記複数の管状キャリアは、電子伝導性を有し、前記複数の管状キャリアの一端は、それぞれ前記プロトン交換膜に接続され、前記複数の管状キャリアの中に充填されたプロトン導体と、前記プロトン交換膜と、が接続されることを特徴とするバイオ燃料電池。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51191(P2013−51191A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243600(P2011−243600)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】