説明

バイブロハンマ装置

【課題】バイブロハンマ装置において、杭打ちのための把持力を十分に確保すると共に、チャック装置の爪を着脱できるようにすることで杭の把持又は開放を行うようにして装置を小型化し、狭い作業現場での杭打作業を容易にしたバイブロハンマ装置を提供する。
【解決手段】杭を水平方向側から把持するチャック装置(100)を備えているバイブロハンマ装置であって、基体(1)と起震機(2)を有し、チャック装置(100)は、固定側把持爪(15)と、これに向けて進退する方向に駆動される可動側把持爪(14)を有しており、可動側把持爪(14)を駆動するアームレバー(19)と油圧シリンダー(18)は基体(1)に取り付けられ、固定側把持爪(15)及び可動側把持爪(14)は、基体(1)の上側から着脱できるよう取り付けられており、起震機(2)には、作業機の吊下具を取り付ける吊下具取付部(22)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイブロハンマ装置に係り、さらに詳しくは、杭を水平方向から把持して杭の打ち込み作業が可能なバイブロハンマ装置において、杭打ちのための把持力を十分に確保すると共に狭い作業区域にも対応できるよう小型化を図ったバイブロハンマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋梁の下等、上部作業空間の高さに制限がある場所で杭打作業を行う場合がある。このような場所では、大型クレーン等を使用し、吊り下げられたバイブロハンマで杭の上端を把持して杭打ち作業を行うことが困難である。そこで、杭を水平方向(横方向)から把持して杭の打ち込み作業を行うことが考えられる。このような作業を行う杭打装置としては、例えば特許文献1記載の杭打装置がある。
【0003】
特許文献1記載の杭打装置は、ベースマシンである油圧ショベル本体のフロントに取付けられ、従来から使用されている杭把み用の垂直チャック装置を有するバイブロハンマを備えた杭打装置を使用するものであり、杭側には、前記垂直チャック装置に把持される被チャック部と被チャック部に対して偏芯して設けられた杭横把み用水平チャック装置を備え、これにより長い鋼矢板等の杭を打つ場合、あるいはフロントの高さを高くできない作業現場で杭打を行なう場合に、施工性および作業能率良く作業できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−10349
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記杭横把み用水平チャック装置は、固定フレームと回動フレームとの間に鋼矢板やH型鋼のウエブを挟んで把持するものであるが、その把持力は締結用ボルトとナットによって行うものである。しかし、水平方向から杭を把持して杭打ち作業を行うには、数トンないしは数十トンの把持力を必要とするのであり、締結用ボルトとナットを使用した把持力では杭打ちのための把持力が不足する課題がある。
【0006】
前記課題は、チャック装置に油圧を利用することにより解決は可能である。油圧を利用したチャック装置は、特許文献1の〔0007〕〔0008〕及び図10にも記載されている。このチャック装置は、対向して配置された一対の油圧シリンダーのロッド先端にチャック用爪を設けたものであり、しかもチャック用爪で鋼矢板やH形鋼のウエブを把持するためにはチャック用爪間が十分に開くように油圧シリンダーのロッドのストロークを十分に確保する必要がある。このため、チャック装置の大型化は避けがたい。
しかし、上部作業空間の高さに制限がある場所は、多くの場合、作業に使用できる区域も狭いために、大型のチャック装置は使用できない課題がある。
【0007】
また、特許文献1記載の杭打装置は、ベースマシンに油圧ショベルが使用されている。油圧ショベルは、ブームとアーム及びアームと先端のアタッチメントとの間に関節があるために、先端にある垂直チャック装置を垂直に下降させる操作は非常に難しく、また、場合によっては杭を降下させるにつれてベースマシンの位置を動かす必要があり、作業性がよいとはいえなかった。
【0008】
本発明者は、前記課題を解決する装置の開発に取り組み、杭を水平方向から把持する油圧チャック装置等、アクチュエータを使用したチャック装置を備えることにより上部空間の高さに制限を受ける作業現場での杭打作業を容易にし、前記チャック装置のチャック用爪を着脱することにより杭の把持又は開放を行うようにして装置全体を小型化できることを知見した。また、ベースマシーン(作業機)のアームやブーム側から振動を伝える必要がない構造として、装置を把持せずに、例えば撓み性を有するワイヤロープで吊っているだけで杭打作業ができるようにすれば作業性を高めることができることを知見した。
【0009】
(本発明の目的)
本発明の目的は、杭の把持力を水平方向から把持するアクチュエータを備えたチャック装置を備えることにより上部空間の高さに制限を受ける作業現場での杭打作業を容易にしたバイブロハンマ装置において、杭打ちのための把持力を十分に確保すると共に、前記アクチュエータを備えたチャック装置のチャック用爪を着脱できるようにすることで杭の把持又は開放を行うようにして装置全体を小型化し、狭い作業現場での杭打作業を容易にしたバイブロハンマ装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、前記目的に加えて、ベースマシーン(作業機)のアームやブーム側から振動を伝える必要がない構造として、装置を把持せずに、例えば撓み性を有するワイヤロープで吊っているだけで杭打作業ができるようにすることで作業性を高めたバイブロハンマ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、
杭打ち時に杭を水平方向側から把持するチャック装置を備えているバイブロハンマ装置であって、
前記チャック装置を備えている基体と、
該基体の上面側に取り付けられている起震機と、
を有し、
前記チャック装置は、
固定爪要素と、
該固定爪要素に向けて進退する方向に駆動される可動爪要素と、
を有し、
該可動爪要素を駆動するアームレバー及び該アームレバーを駆動するアクチュエータは、前記基体に取り付けられており、
前記固定爪要素及び可動爪要素は、前記基体の上側から基体に着脱できるよう取り付けられるものであり、
前記基体又は起震機の何れか一方又は双方には、作業機の吊下具を取り付ける吊下具取付部が設けられている、
バイブロハンマ装置である。
【0012】
(2)本発明は、
可動爪要素が、固定爪要素側と対向する側に、該固定爪要素へ向け進退できるように基体に取り付けられ、
アームレバーは、該アームレバーの作用点側に設けられた係合要素と、前記可動爪要素の係合要素とを係合して可動爪要素を前記固定刃要素から離れる方向へ移動させるようにしてあり、
前記可動爪要素は、前記アームレバーの作用点側の押出部で押し出されて前記固定爪要素へ向け移動し、杭を把持できるようにしてある、
前記(1)のバイブロハンマ装置である。
【0013】
(3)本発明は、
基体が杭を通して入れる杭入れ空間部を有し、該杭入れ空間部がチャック装置で鋼矢板又はH形鋼を把持したときに、鋼矢板とH形鋼のどちらでも収めることができる空間部形状を有しており、前記杭入れ空間部において入れ口と反対の奥側に、チャック装置で把持された鋼矢板又はH形鋼のフランジの縁部に当接させることができる当接部材を備えている、
前記(1)又は(2)のバイブロハンマ装置である。
【0014】
本発明にいう「アクチューエータ」の用語は、油圧や空気圧あるいは電気を利用した、物を機械的に動かしたり制御したりする装置の意味を有しており、アクチューエータとしては、例えば油圧シリンダ、空気圧シリンダ、電動シリンダ(電動アクチュエータ)等があげられる。
【0015】
(作用)
本発明に係るバイブロハンマ装置の作用を説明する。
バイブロハンマ装置は、杭に最初に取り付ける際には、あらかじめ基体からチャック装置の可動爪要素と固定爪要素が取り外してあり、トラックに搭載されているクレーン等でワイヤロープやチェーン等を介して吊られている。
【0016】
可動側把持爪と固定側把持爪を外しているバイブロハンマ装置を吊り降ろして、地面に置き、杭入れ空間部を杭に嵌め込むようにする。この状態で可動爪要素と固定爪要素を基体に取り付ける。この時点では、可動爪要素をアクチュエータで駆動することによる杭の把持はせずに、可動爪要素と固定爪要素は緩めた状態としておく。
【0017】
ワイヤロープを巻き上げ、バイブロハンマ装置を杭に沿って所要の高さまで上昇させる。アクチュエータを駆動し、可動爪要素と固定爪要素で杭を挟んで杭を水平方向から把持するようにしてバイブロハンマ装置を装着する。杭は、油圧シリンダ等のアクチュエータで駆動されるチャック装置で把持されているので、例えば作業者の手作業により締結用ボルトとナットで締め付けるものより十分な把持力が得られると共に把持力が安定している。
【0018】
そして、ワイヤロープを繰り出す等して緩めてバイブロハンマ装置の全体荷重が杭にかかるようにして起震機を作動させる。これにより、杭に十分な打ち込み方向の荷重と振動が加わり、杭が打ち込まれ、バイブロハンマ装置も杭と共に下降していく。また、これに伴って更にワイヤロープが繰り出されるので、従来のように作業機のアームやブーム等を操作して追従させるのと相違して、作業性が高い。
【0019】
前記のようにして杭が打ち込まれ、杭に取り付けられたバイブロハンマ装置が地面に近い所要の高さまで下降したら、起震機を停止させ、チャック装置による杭の把持を解除する。
【0020】
そして、ワイヤロープを巻き上げて、バイブロハンマ装置を杭に沿って上昇させ、前記と同様に可動爪要素と固定爪要素で杭を挟んで、杭の所要の高さに取り付ける。バイブロハンマ装置は、ワイヤロープで吊った状態では、前記したように基体がほぼ水平を保ってバランスが取れるようになっているので、可動爪要素と固定爪要素の把持部と杭との間に摩擦等による大きな抵抗を生じることなく、上昇させることができる。
【0021】
バイブロハンマ装置が地面まで降下した際に、杭の上端が地面近くに位置している場合は、必要に応じて次の杭を溶接して接ぎ足してから、バイブロハンマ装置を上昇させるようにする。また、その箇所での杭の打ち込みを終了する場合は、そのままバイブロハンマ装置を上昇させて杭から抜き取る。そして、前記と同様に作業を行い、この工程を必要なだけ繰り返して杭打作業を行う。
【0022】
可動爪要素が、固定爪要素側と対向する側に、固定爪要素へ向け進退できるように基体に取り付けられ、アームレバーは、アームレバーの作用点側に設けられた係合要素と、可動爪要素の係合要素とを係合して可動爪要素を固定刃要素から離れる方向へ移動させるようにしてあり、可動爪要素は、各係合要素に対し係合による負荷が作用しないか又は殆ど作用しない状態で、アームレバーの作用点側の押出部で押し出されて固定爪要素へ向け移動し、杭を把持できるようにしてあるものは、固定爪要素と可動爪要素で杭を把持する際にもアームレバーと可動爪要素にそれぞれ設けられた係合状態の各係合要素に大きな負荷がかからず、それらが破損するおそれがない。また、固定爪要素と可動爪要素を離して杭の把持を緩める作業も支障なくできる。
【0023】
また、杭入れ空間部がチャック装置で鋼矢板又はH形鋼を把持したときに、鋼矢板とH形鋼のどちらでも収めることができる空間部形状を有しており、杭入れ空間部においてチャック装置が設けられている側とは反対側に、チャック装置で把持された鋼矢板又はH形鋼のフランジの縁部に当接させることができる当接部材を備えているものは、鋼矢板とH形鋼のどちらの杭打ちでもできるので、各杭の建て込みが混在する作業現場においても、杭を替えるときにバイブロハンマ装置をその都度専用型に取り替える必要がなく、作業性が高い。また、チャック装置が杭のウェブを把持した状態で当接部材が鋼矢板又はH形鋼のフランジの縁部に当接することにより装置の姿勢が水平に保たれるので、起震機の振動がより効果的に作用する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は次の効果を有する。
(a)本発明は、アクチュエータで駆動されるチャック装置で杭を把持するため、把持力が十分で安定しており、起震機が作業機のアームやブーム側でなくハンマ側に取り付けられているので、作業機のアームやブーム側でハンマを把持せずに、例えばワイヤロープやチェーン等で吊っているだけで杭打作業ができる。したがって、バイブロハンマ装置が下降する際にはワイヤロープやチェーン等を繰り出せばよく、アームやブームを追従させて動かす必要はないので作業性が高い。
【0025】
(b)本発明は、アームレバーとアクチュエータを組み合わせ、かつ固定爪要素及び可動爪要素を取り外し可能にしたことで、従来のようにアクチュエータを向かい合わせに配置する構造と比較して杭の入れ口側の機械の幅をより狭くすることができ、装置を小型化できる。また、固定爪要素及び可動爪要素が上側から着脱できるので、杭に対する付け替え作業が比較的容易に効率よくできる。
【0026】
(c)本発明は、固定爪要素と可動爪要素で杭を把持する際にもアームレバーと可動爪要素にそれぞれ設けられた係合状態の各係合要素に大きな負荷がかからず、それらが破損するおそれがない。また、固定爪要素と可動爪要素を離して杭の把持を緩める作業も支障なくできる。
【0027】
(d)本発明は、鋼矢板とH形鋼のどちらの杭打ちでもできるので、各杭の建て込みが混在する作業現場においても、杭を替えるときにバイブロハンマ装置をその都度専用型に取り替える必要がなく、作業性が高い。また、チャック装置が杭のウェブを把持した状態で当接部材が鋼矢板又はH形鋼のフランジの縁部に当接することにより、装置の姿勢が水平に保たれるので、起震機の振動がより効果的に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るバイブロハンマ装置の一実施の形態を示す斜視図。
【図2】バイブロハンマ装置を構成する基体の構造を示す分解斜視図。
【図3】基体の平面図。
【図4】基体の側面図。
【図5】バイブロハンマ装置の作用を示し、(a)はH形鋼を把持している状態の平面視説明図、(b)は鋼矢板を把持している状態の平面視説明図。
【図6】バイブロハンマ装置の使用状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施の形態〕
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図4を参照する。
【0030】
バイブロハンマ装置Aは、チャック装置100を有する基体1と、基体1に取り付けられている起震機2を備えている。起震機2は、例えば偏心させた重り(錘)をモータで回転させて振動力を発生させ、起震機2を取り付けた基体1に杭打ちのための振動を与えるものである。なお、チャック装置100は、後述する把持爪取付部11、12、杭入れ空間部13、可動側把持爪14、固定側把持爪15、油圧シリンダ18、アームレバー19により構成されている。
【0031】
基体1は、起震機2を取り付けたときに杭の建て込みに必要かつ十分な重量を有するように形成されている。基体1は、平面視でほぼコ字状で、鉄板を組んで溶接して形成されているフレーム10を有している。フレーム10には、前側(図2で右側)に突出するように把持爪取付部11、12が所要間隔をおいて平行に形成されている。把持爪取付部11、12の間には、鋼矢板やH形鋼等の杭を通して入れるための杭入れ空間部13が形成されている。なお、以下の説明で、前後左右の方向は、図2の上側に示した方向の説明を基準とする。
【0032】
杭入れ空間部13の後部、すなわち杭入れ空間部13において入れ口(図2において右側の開口側)と反対の奥側には、フレーム10に固着して当接部材130が設けられている。当接部材130は、前側の当接面131が平面であり、当接面131が鉛直方向となるように形成されている。当接部材130は、後述する可動側把持爪14と固定側把持爪15で鋼矢板又はH形鋼を把持したときに、それら杭の側部(フランジの外面や縁部)を当接面131に当接させることができ、これによりバイブロハンマ装置Aの姿勢を図6に示すように水平状態で安定させることができるものである。また、杭入れ空間部13の形状及び大きさは、可動側把持爪14と固定側把持爪15で把持される鋼矢板又はH形鋼のどちらでも収めることができるように形成されている。
【0033】
各把持爪取付部11、12の上面には、ほぼ中央部に取付ボルト110、120が立設されている。把持爪取付部11上面の取付ボルト110を挟んで前後側には、所要の間隔をおいて角棒状のガイド部材111、112が互いに平行になるように固定されている。取付ボルト110の基部には、取付ボルト110よりやや径大で所要高さの座金受け113が形成されている。また、把持爪取付部12上面の取付ボルト120を挟んで前後側にも同様に、所要の間隔をおいて角棒状のガイド部材121、122が互いに平行になるように固定されている。
【0034】
図2において、左側の把持爪取付部11には、杭を把持する際に動く可動側把持爪14が装着されており、右側の把持爪取付部12には、杭を把持する際に動かない固定側把持爪15が固定されている。なお、可動側把持爪14及び固定側把持爪15の構造及び取付構造については、後で説明する。
【0035】
フレーム10の上面のほぼ中央部には、起震機2を固定するための起震機取付部材16が固定されている。起震機取付部材16は、円板状の取付板160を多数の脚板161によって固定した構造である。取付板160の中央部には円孔(符号省略)が設けられ、その周りには多数のボルト孔162が形成されている。
【0036】
また、起震機取付部材16の位置は、後述する可動側把持爪14と固定側把持爪15により杭を把持する把持部(把持面141、151が近接対向する位置)に対し、各把持爪14、15で杭を締め付ける方向とは水平かつ直角に交差する方向に設けられている。なお、前記各方向が交差する角度は、特に限定するものではない。
【0037】
また、起震機2の下部には円板状の取付部材21が設けられており、起震機取付部材16には、取付部材21をボルト20で固定して起震機2が取り付けられている。なお、起震機2の上部には、作業機のワイヤロープ3先端の吊下具30を取り付ける吊下具取付部22が形成されている。
【0038】
フレーム10の厚み方向の中間部には、左右方向に貫通した空間部17が形成されている。空間部17には、油圧シリンダ18が左右方向に配され、シリンダの基端部が軸ロッド180によりフレーム10に対し水平方向に回動自在に取り付けられている。空間部17の左右方向の一方側(図2において左側)には、アームレバー19が取り付けられている。アームレバー19は、前部寄りを軸ロッド190によりフレーム10に対し水平方向に回動自在に取り付けられている。
【0039】
アームレバー19の基端部には、前記油圧シリンダ18のロッド先端部が軸ピン181により水平方向に回動自在に取り付けられている。また、アームレバー19の先端寄りには、一方側がフレーム10の縁部より外側へ突出し、他方側が前記把持爪取付部11の内側面114側へ突出できる進退部191が形成されている。進退部191において把持爪取付部11の内側面114側へ突出する側は押圧面192となっている。
【0040】
また、フレーム10の縁部より外側へ突出した部分の上面には、後述する可動側把持爪14の係合ピン147を差し込んで係合させる係合孔193が形成されている。この構造により、油圧シリンダ18のロッドが伸縮することによってアームレバー19が軸ロッド190を中心として回動し、進退部191部分はフレーム10の幅方向に進退動をする。
【0041】
前記したように、左側の把持爪取付部11には可動爪要素である可動側把持爪14が装着されており、右側の把持爪取付部12には固定爪要素である固定側把持爪15が固定されている。
可動側把持爪14は、ほぼ直方体状の爪ブロック140を有している。爪ブロック140の把持面141には全面に多数の突起142が設けられており、その反対側は前記進退部191の押圧面192で押される受け面140aとなっている。爪ブロック140の上面には、爪ブロック140とほぼ同じ幅で長尺に形成された板状のスライド部材143が固定されている。スライド部材143は、幅方向の両側に補強部144、144aが設けられている。
【0042】
スライド部材143は、爪ブロック140に補強部144、144aを介し固着されており、爪ブロック140の補強部144、144a間には、逆U字状の把手145が設けられている。また、スライド部材143の爪ブロック140から張り出した部分の中央部には、長方形状の長孔146が形成されている。スライド部材143の幅狭に窄まった先端寄りの下側には、前記アームレバー19に形成されている係合孔193に差し込み係合する係合ピン147が固定されている。
【0043】
可動側把持爪14は、係合ピン147をアームレバー19の係合孔193に差し込み、スライド部材143を把持爪取付部11のガイド部材111、112間にスライド自在に嵌め入れ、長孔146を取付ボルト110に嵌め入れ、さらに取付ボルト110に長方形状の座金148を嵌め入れ、最後に取付ボルト110にナット149を螺着して取り付けられる。このとき、座金148は前記取付ボルト110基部の座金受け113の上面に当たって止まるので、座金148がスライド部材143を抑えることはなく、ナット149を締め込んだ状態でもスライド部材143はスライドできる。
【0044】
この構造によれば、油圧シリンダ18のロッドの伸張によってアームレバー19の進退部191が後述する固定側把持爪15側へ移動すると、進退部191の押圧面192で爪ブロック140の受け面140aが押され、可動側把持爪14が固定側把持爪15側へ移動して固定側把持爪15との間で杭を把持する。このときは、進退部191がきわめて強い力で可動側把持爪14を押し出すが、この押し出しは押圧面192と受け面140aの接触によって行われるため、係合要素である係合孔193と係合ピン147の係合部に無理な力が作用することはなく、それらが破損するおそれもない。
【0045】
そして、油圧シリンダ18のロッドの収縮によってアームレバー19の進退部191が前記とは逆方向へ移動すると、押圧面192による受け面140aの押圧は解除されて可動側把持爪14は緩み、さらに係合孔193と係合ピン147の係合によりスライド部材143が進退部191に引かれて可動側把持爪14が固定側把持爪15と離れる方向へ移動して、杭の把持は解除される。
【0046】
また、固定側把持爪15は、ほぼ直方体状の爪ブロック150を有し、爪ブロック150の把持面151には全面に多数の突起152が設けられており、その反対側は前記把持爪取付部12の内側面123と当接する当接面150aとなっている。爪ブロック150の上面には、爪ブロック150とほぼ同じ幅で長尺に形成された板状の取着部材153が固定されている。取着部材153は、幅方向の両側に補強部154、154aが設けられている。
【0047】
取着部材153は、爪ブロック150に補強部154、154aを介し固着されており、爪ブロック150の補強部154、154a間には、逆U字状の把手155が設けられている。また、取着部材153の爪ブロック150から張り出した部分の中央部には、ボルト孔156が形成されている。
【0048】
そして、固定側把持爪15は、取着部材153を把持爪取付部12のガイド部材121、122間に嵌め入れ、ボルト孔156を取付ボルト120に嵌め入れ、さらに取付ボルト120に長方形状の座金158を嵌め入れ、最後に取付ボルト120にナット159を螺着して取り付けられる。前記構造により、前記各把持爪14、15の何れも、それぞれ把持爪取付部11、12に対し着脱が自在である。
【0049】
バイブロハンマ装置Aは、チャック装置100の構造を、前記したようにアームレバー19を油圧シリンダ18で駆動するようにし、かつ固定側把持爪15と可動側把持爪14を着脱可能にしたことで、従来のように油圧シリンダ等のアクチュエータを向かい合わせに配置する構造と比較して、杭入れ空間部13の入れ口側の装置の幅をより狭くすることができ、装置を小型化できる。
【0050】
(作用)
図5、図6を主に参照して、バイブロハンマ装置Aの使用方法及び作用を説明する。
まず、バイブロハンマ装置Aは、図5(a)に示すようにH形鋼5を水平方向から把持することもできるし、図5(b)に示すように鋼矢板4を水平方向から把持(抱持、保持又は挟持)することもできる。H形鋼5を把持する場合は、一方のフランジ51を杭入れ空間部13に位置させてフランジ51外面を当接部材130の当接面131に当接させ、他方のフランジ52は可動側把持爪14及び固定側把持爪15の外側に位置させて、ウェブ50を可動側把持爪14及び固定側把持爪15で把持する。
【0051】
また、鋼矢板4を把持する場合は、一方のフランジ41先端縁の継手43を杭入れ空間部13に位置させて、継手43の外縁部を当接部材130の当接面131に当接させ、他方のフランジ42と継手44は可動側把持爪14及び固定側把持爪15の外側に位置させて、中間部のウェブ40を可動側把持爪14及び固定側把持爪15で把持する。なお、以下の作用の説明では、杭がH形鋼5である場合で説明する。
【0052】
まず、H形鋼5を打ち込む位置には、上部空間に制限がある場所でも施工が可能な公知手段により、あらかじめ所要の深さまで先行掘削をすることによって、地盤を軟らかく解しておく。この先行掘削部にH形鋼5を所要深さに入れて立て、H形鋼5を水平方向から把持してH形鋼5の所要の高さにバイブロハンマ装置Aを取り付ける。
【0053】
バイブロハンマ装置Aは、地面に鉛直方向に立てられているH形鋼5に最初に取り付ける際には、チャック装置100の可動側把持爪14と固定側把持爪15をあらかじめ取り外しておく。次に、トラックに搭載されているクレーン等でワイヤロープ3を介して所要の高さで吊る。なお、バイブロハンマ装置Aは、ワイヤロープ3で吊った状態で、基体1がほぼ水平を保ってバランスが取れるように各部の重量配分がされている。
【0054】
可動側把持爪14と固定側把持爪15を外しているバイブロハンマ装置Aを吊り降ろして、地面に置き、杭入れ空間部13を前記H形鋼5に嵌め込むようにする。この状態で可動側把持爪14と固定側把持爪15を把持爪取付部11、12に取り付ける。この時点では、まだ可動側把持爪14を油圧シリンダ18で駆動することによるH形鋼5の把持はせずに、可動側把持爪14と固定側把持爪15は緩めた状態としておく。
【0055】
クレーンを操作して、ワイヤロープ3を巻き上げ、バイブロハンマ装置AをH形鋼5に沿って所要の高さまで上昇させる。油圧シリンダ18を駆動し、可動側把持爪14を固定側把持爪15側へ動かし、可動側把持爪14と固定側把持爪15でH形鋼5のウェブ50を挟んでH形鋼5を水平方向から把持するようにしてバイブロハンマ装置Aを装着する。
【0056】
なお、H形鋼5は、油圧シリンダ18で駆動される可動側把持爪14と固定側把持爪15で把持されているので、前記従来公報に示されているような作業者の手作業により締結用ボルトとナットで締め付けるものとは相違して、バイブロハンマ装置Aを取り付けたときに十分な把持力が得られると共に、その把持力は安定している。
【0057】
そして、クレーンを操作して、ワイヤロープ3を繰り出して緩め、バイブロハンマ装置Aの全体荷重がH形鋼5にかかるようにして起震機2を作動させる。これにより、H形鋼5に十分な打ち込み方向の荷重と振動が加わり、H形鋼5が打ち込まれ、バイブロハンマ装置AもH形鋼5と共に下降していく。
【0058】
また、これに伴って更にワイヤロープ3が繰り出されるので、従来のように作業機のアームやブーム等を操作して追従させるのと相違して、作業性が高い。また、バイブロハンマ装置AをH形鋼5に装着した際、当接部材130がH形鋼5のフランジ51の外面と当たることにより、バイブロハンマ装置Aの姿勢が図6に示すように水平に保たれるので、起震機2の振動がより効果的に作用する。
【0059】
前記のようにしてH形鋼5が打ち込まれ、H形鋼5に取り付けられたバイブロハンマ装置Aが地面に近い所要の高さ又は地面に接するまで下降したら、起震機2を停止させ、可動側把持爪14と固定側把持爪15によるH形鋼5の把持を前記したように解除する。
【0060】
そして、ワイヤロープ3を巻き上げて、バイブロハンマ装置AをH形鋼5に沿って上昇させ、前記と同様に可動側把持爪14と固定側把持爪15でH形鋼5のウェブ50を挟んで、H形鋼5の所要の高さに取り付ける。バイブロハンマ装置Aは、ワイヤロープ3で吊った状態では、前記したように基体1がほぼ水平を保ってバランスが取れるようになっているので、可動側把持爪14と固定側把持爪15の把持部とH形鋼5のウェブ50との間に摩擦等による大きな抵抗を生じることなく、上昇させることができる。
【0061】
バイブロハンマ装置Aが地面まで降下した際に、H形鋼5の上端が地面近くに位置している場合は、必要に応じて次のH形鋼5を溶接して接ぎ足してから、バイブロハンマ装置Aを上昇させるようにする。そして、前記と同様に作業を行い、この工程を必要なだけ繰り返して杭打作業を行う。なお、その箇所でのH形鋼5の打ち込みを終了する場合は、次のH形鋼5を接ぎ足さずに、そのままバイブロハンマ装置Aを上昇させてH形鋼5から抜き取る。
【0062】
可動側把持爪14と固定側把持爪15の取り外し及び取り付けは、基体1の上側から行うことができるので、作業者は作業がしやすい。また、これにより、装置の下部が地面に接するところまで下降させた状態でも作業が可能であり、特に杭を長尺に深く打ち込む場合においては、付け替えの手間を最小限に抑えることができるので、作業効率にすぐれている。
【0063】
また、バイブロハンマ装置Aでは、起震機2の荷重がかかる起震機取付部16と各把持爪14、15のH形鋼5を把持する部分の位置が、各把持爪14、15の締付方向とは交差する方向(本実施の形態では直交する方向)となっているので、起震機取付部16にかかる起震機2による荷重モーメントが、H形鋼5を挟む可動側把持爪14と固定側把持爪15が開く方向に作用することはなく、起震機2の振動が各把持爪14、15による把持力を弱めてしまうおそれはない。
【0064】
なお、バイブロハンマ装置Aは、前記のように鋼矢板4とH形鋼5のどちらでも水平方向から把持して取り付けることができ、鋼矢板4用とH形鋼5用の兼用型であるので、例えば鋼矢板4とH形鋼5の建て込みが混在する作業現場においても、杭を替えるときにバイブロハンマ装置をその杭の専用型に取り替える必要がなく、作業性が高い。
【0065】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
A バイブロハンマ装置
1 基体
10 フレーム
100 チャック装置
11 把持爪取付部
110 取付ボルト
111、112 ガイド部材
113 座金受け
114 内側面
12 把持爪取付部
120 取付ボルト
121、122 ガイド部材
123 内側面
13 杭入れ空間部
130 当接部材
131 当接面
14 可動側把持爪
140 爪ブロック
140a 受け面
141 把持面
142 突起
143 スライド部材
144、144a 補強部
145 把手
146 長孔
147 係合ピン
148 座金
149 ナット
15 固定側把持爪
150 爪ブロック
150a 当接面
151 把持面
152 突起
153 取着部材
154、154a 補強部
155 把手
156 ボルト孔
158 座金
159 ナット
16 起震機取付部材
160 取付板
161 脚板
162 ボルト孔
17 空間部
18 油圧シリンダ
180 軸ロッド
181 軸ピン
19 アームレバー
190 軸ロッド
191 進退部
192 押圧面
193 係合孔
2 起震機
20 ボルト
21 取付部材
22 吊下具取付部
3 ワイヤロープ
30 吊下具
4 鋼矢板
40 ウェブ
41、42 フランジ
43、44 継手
5 H形鋼
50 ウェブ
51、52 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打ち時に杭を水平方向側から把持するチャック装置(100)を備えているバイブロハンマ装置であって、
前記チャック装置(100)を備えている基体(1)と、
該基体(1)の上面側に取り付けられている起震機(2)と、
を有し、
前記チャック装置(100)は、
固定爪要素(15)と、
該固定爪要素(15)に向けて進退する方向に駆動される可動爪要素(14)と、
を有し、
該可動爪要素(14)を駆動するアームレバー(19)及び該アームレバー(19)を駆動するアクチュエータ(18)は、前記基体(1)に取り付けられており、
前記固定爪要素(15)及び可動爪要素(14)は、前記基体(1)の上側から基体(1)に着脱できるよう取り付けられるものであり、
前記基体(1)又は起震機(2)の何れか一方又は双方には、作業機の吊下具を取り付ける吊下具取付部(22)が設けられている、
バイブロハンマ装置。
【請求項2】
可動爪要素(14)が、固定爪要素(15)側と対向する側に、該固定爪要素(15)へ向け進退できるように基体(1)に取り付けられ、
アームレバー(19)は、該アームレバー(19)の作用点側に設けられた係合要素(193)と、前記可動爪要素(14)の係合要素(147)とを係合して可動爪要素(14)を前記固定刃要素(15)から離れる方向へ移動させるようにしてあり、
前記可動爪要素(14)は、前記アームレバー(19)の作用点側の押出部(192)で押し出されて前記固定爪要素(15)へ向け移動し、杭を把持できるようにしてある、
請求項1記載のバイブロハンマ装置。
【請求項3】
基体(1)が杭を通して入れる杭入れ空間部(13)を有し、該杭入れ空間部(13)がチャック装置で鋼矢板又はH形鋼を把持したときに、鋼矢板とH形鋼のどちらでも収めることができる空間部形状を有しており、前記杭入れ空間部(13)において入れ口と反対の奥側に、チャック装置で把持された鋼矢板又はH形鋼のフランジの縁部に当接させることができる当接部材(130)を備えている、
請求項1又は2記載のバイブロハンマ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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