説明

バイポーラ電池、組電池及びそれらの電池を搭載した車両

【課題】 絶縁性が良好なバイポーラ電池を形成する。
【解決手段】 集電体102の一方の面には正極層103が形成されその他方の面には負極層104が形成されたバイポーラ電極101と、バイポーラ電極相互間でイオン交換を行う不織布105とを交互に複数積層してなるバイポーラ電池100において、積層される複数のバイポーラ電極の端部は積層されるバイポーラ電極間でそれぞれ異なる位置から引き出された接続端子106を有し、バイポーラ電極の端部は絶縁層107、108を介して積層されると共に、絶縁層は接続端子の積層方向の電気的接続を形成する通電パス108a〜108mを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性が良好なバイポーラ電池、組電池及びそれらの電池を搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラ電池は、下記特許文献1にも記載されているように、複数のバイポーラ電極を積層して構成した電池であり、薄型、軽量で放熱性が良好であるなど、種々の優れた特性を備えている。
【0003】
バイポーラ電池を車両の動力源として使用する場合には、信頼性と安定性が要求されるため、バイポーラ電池を構成する複数の単電池(バイポーラ電極間で1つの単電池が形成される)がそれぞれ正常に機能しているか否かを常に監視する必要がある。このため、すべての単電池の電圧を電圧検出線によって常時監視し、劣化した単電池を検知できるようにしている。
【特許文献1】特開2000−195495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、各単電池の電圧を検出するための電圧検出線は、バイポーラ電極間に設けられた絶縁層から引き出されていたために、外部の電圧監視装置に接続するまでの間電圧検出線の絶縁性を確保しなければならず、これが製造工程の煩雑化を招いていた。
【0005】
本発明は、以上のような従来の技術の問題点を解消するために成されたものであり、絶縁性が良好なバイポーラ電池、組電池及びそれらの電池を搭載した車両の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るバイポーラ電池は、集電体の一方の面には正極層が形成されその他方の面には負極層が形成されたバイポーラ電極と、当該バイポーラ電極相互間でイオン交換を行う電解質層とを交互に複数積層してなるバイポーラ電池において、積層される複数のバイポーラ電極の端部は積層されるバイポーラ電極間でそれぞれ異なる位置から引き出された接続端子を有し、前記バイポーラ電極の端部は絶縁層を介して積層されると共に、当該絶縁層は前記接続端子の積層方向の電気的接続を形成する通電パスを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るバイポーラ電池においては、バイポーラ電極ごとに異なる位置から接続端子が引き出され、これらの接続端子が絶縁層に設けられている通電パスを介して積層方向に電気的接続を形成する。このため、電圧検出線(接続端子と通電パスにより構成される)の絶縁性が絶縁層によって保持され、絶縁性の確保が容易になる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成された本発明に係るバイポーラ電池によれば、積層される複数のバイポーラ電極の端部は積層されるバイポーラ電極間でそれぞれ異なる位置から引き出された接続端子を有し、前記バイポーラ電極の端部は絶縁層を介して積層されると共に、当該絶縁層は前記接続端子の積層方向の電気的接続を形成する通電パスを備えているので、接続端子と通電パスにより構成される電圧検出線の絶縁性を容易に確保することができ、製造工程の簡略化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係るバイポーラ電池、組電池及びそれらの電池を搭載した車両の実施形態を[実施の形態1]と[実施の形態2]に分けて図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態で引用する図面では、バイポーラ電池を構成する各層の厚みや形状を誇張して描いているが、これは発明の内容の理解を容易にするために行っているものであり、実際のバイポーラ電池の各層の厚みや形状と整合しているものではない。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態に係るバイポーラ電池の外観図である。バイポーラ電池100は、図に示すように長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ120A、負極タブ120Bが引き出されている。また、バイポーラ電池100の一側部からは、バイポーラ電池100の発電要素160を形成する各単電池の電圧検出線140が引き出されている。発電要素160はバイポーラ電池100の外装材(たとえばラミネートフィルム)180によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素160は正極タブ120A、負極タブ120B及電圧検出線140を引き出した状態で密封されている。
【0010】
図2から図5はバイポーラ電池100内部の概略構成図、図6は図1に示したバイポーラ電池100のA-A断面図、図7から図10はバイポーラ電池100の構成部品の概略構成図である。
【0011】
図2及び図3はバイポーラ電池100の内部構造を説明するための分解斜視図である。これらの図ではその内部構造の説明に必要な一部の構造のみを抜き出して示している。バイポーラ電極101は、集電体102の一方の面に正極層103が形成され、その他方の面に負極層104が形成されてなるものである。図示されているように、正極層103は集電体102の外周部に一定の幅の残り代を取って形成され、負極層104は集電体102の全面に形成される。図示されているように、バイポーラ電極101は、負極層104が形成されている側と正極層103が形成されている側とが向かい合わせにされて積層される。バイポーラ電極101同士を積層するに当たり、バイポーラ電極101間にはバイポーラ電極相互間でイオン交換が行えるようにするゲル状の電解質を含ませた不織布105(電解質層)が積層される。なお、本実施形態では電解質層としてゲル状の電解質を含ませた不織布105を用いたが、無機系または有機系の固体電解質を用いても良い。
【0012】
正極層103が形成される側の集電体102の端部(残り代の部分)には、2枚のバイポーラ電極101によって形成される単電池の電圧を検出するための平板状の接続端子106が接続され、接続端子106はその端部から突出するように引き出される。この接続端子106の平面形状は図8Aに示すような縦長の長方形であり、その断面は同図Bのように横長の長方形である。接続端子106は実際にはミクロン単位の非常に薄い膜状の銅箔である。接続端子106は、積層方向において他の接続端子106と重なることのないように、積層されるバイポーラ電極101間でそれぞれ少しずつ異なる位置に接続され引き出される。したがって、図2に示すように、最上層のバイポーラ電極101に接続される接続端子106の引き出し位置と積層方向その下に位置されることとなるバイポーラ電極101に接続される接続端子106の引き出し位置とは互いにオーバーラップしない位置になる。
【0013】
図では明確に示されていないが、本実施形態では合計13枚のバイポーラ電極101と12枚の不織布105とを用い、バイポーラ電極101と不織布105とを交互に積層することによってバイポーラ電池100の発電要素160を形成している。このため、接続端子106は発電要素160の図示左端から右端に向けてオーバーラップを避ける均等間隔に合計13本引き出されることになる。
【0014】
バイポーラ電極101の正極層103側には中央部に正極層103を露出させる開口部が形成された絶縁シート107が積層される。絶縁シート107が積層されると、バイポーラ電極101の集電体102の端部はその全周が覆われ、同時に接続端子106もその先端部を除いて覆われる。なお、絶縁シート107はバイポーラ電極101の端部において絶縁層として機能する。
【0015】
絶縁シート107の図示手前側においては、接続端子106を絶縁シート107との間に挟むようにして通電パス形成フィルム108が積層される。通電パス形成フィルム108は、図7Aに示すように13箇所から引き出される接続端子106の引き出し位置に対応してその幅方向に等間隔に設けられた13箇所の接続端子接触部108a〜108mを有している。これらの接続端子接触部108a〜108mは、その断面図である図7Bに示すように、導通部が通電パス形成フィルム108の厚み方向に裏側まで貫通するように形成されている。なお、本実施形態では、接続端子接触部108a〜108mの導電部を通電パス形成フィルム108の表側から裏側に貫通するようにその厚み分形成したが、通電パス形成フィルム108の表面に沿ってその表側と裏側との間で導通がとれるように導電膜を形成し接続端子接触部108a〜108mの導電部としても良い。
【0016】
通電パス形成フィルム108は各バイポーラ電極101との間で積層されるが、発電要素160を構成するすべてのバイポーラ電極101間において通電パス形成フィルム108が積層されると、図4に示すように、接続端子接触部108a〜108mの導電部はすべての層に渡って個別に積層方向に電気的に接続され、積層方向の通電パスを形成する。つまり、最上層のバイポーラ電極101に接続された接続端子106は積層方向に接続された接続端子接触部108aの導電部で積層方向の通電パスが形成され、その下の層のバイポーラ電極101に接続された接続端子106は積層方向に接続された接続端子接触部108bの導電部で積層方向の通電パスが形成され、最下層のバイポーラ電極101に接続された接続端子106は積層方向に接続された接続端子接触部108mの導電部で積層方向の通電パスが形成されることになる。
【0017】
個々のバイポーラ電極101の負極側に不織布105を積層し、個々のバイポーラ電極101の端部の所定位置に接続端子106を接続し、個々のバイポーラ電極101の端部及び接続端子106を覆うように絶縁シート107を積層し、それぞれの接続端子106と通電パス形成フィルム108の接続端子接触部108a〜108mを個別に接触させて、それぞれの絶縁シート107の下に通電パス形成フィルム108を積層する。このような積層を行った状態ですべてのバイポーラ電極101の積層を13層に渡って行う。そして、バイポーラ電極101の外周部からはみ出した絶縁シート107の周縁部はその全周に渡って熱融着される。
【0018】
図6は、図1に示したバイポーラ電池100のA-A断面図を示しているが、上記の積層を行った状態の断面は、この図で示されているような状態になる。つまり、バイポーラ電極101の負極層104とその下側に位置するバイポーラ電極101の正極層103が不織布105を介して積層され、これらのバイポーラ電極101が1つの単電池を形成する。各バイポーラ電池101に積層されている絶縁シート107はその全周に渡って熱融着が施される(図5及び図6の×印部分において)ので、絶縁シート107はバイポーラ電極101間で不織布105を完全に密封することになり、不織布105に染み込ませている電解質が外に漏れて単電池同士が短絡してしまうようなことを回避できる。このように絶縁シート107は接続端子106の層間絶縁を行う機能と不織布105をバイポーラ電極101間で密封する機能とを併せ持つことから、製造工程の簡略化に寄与する。
【0019】
図5は以上の積層状態を上から見た図である。バイポーラ電極101の集電体102の端部の全周を覆うように絶縁シート107が積層される。絶縁シート107は集電体102よりも1回り大きく形成されているので、絶縁シート107の熱融着は図示されているように集電体102の外周からはみ出した部分(熱融着部分)において行う。絶縁シート107が熱融着されると、接続端子106が集電体102と絶縁シート107との間に挟まれた状態で固定され、通電パス形成フィルム108が上下に積層されている絶縁シート107に挟まれて仮固定される。また、この状態で、各層の接続端子106が通電パス形成フィルム108の各接続端子接触部108a〜108mと電気的に接触状態とされる。なお、各バイポーラ電極から引き出されている接続端子106は上下に位置する通電パス形成フィルム108の接続端子接触部108a〜108mに挟まれた状態で電気的な接触状態となる。なお、本発明では、絶縁シート107及び通電パス形成フィルム108の接続端子接触部108a〜108m以外の部分において絶縁層が形成されている。通電パスは以上のようにして形成されるため、特別な絶縁処理を施さなくとも各通電パス間の絶縁は確実なものとなり、部品点数の削減をしつつも絶縁の信頼性を保つことができ、長時間の使用に対しても電池の内部短絡の恐れがなくなる。
【0020】
図3に示すように、最下層に位置されることになる通電パス形成フィルム108には、積層方向に形成されている通電パスと電気的に接続され各通電パスの電圧を導出する電圧検出線を備えた電圧導出基板110が積層される。図9に示すように、電圧導出基板110は、通電パス形成フィルム108の各接続端子接触部108a〜108mに対応する位置に導電性のランド110a〜110mが形成されており、図示されていないが、各ランド110a〜110mからは個別に接続された電圧検出線140が基板上に形成されている。
【0021】
電圧導出基板110が通電パス形成フィルム108の最下層に積層されると、図4及び図5に示すように、積層されているすべての通電パス形成フィルム108と電圧導出基板110とが図示されている熱融着部分において熱融着される。この熱融着が終了すると、図3〜図5に示すように、各バイポーラ電極101の接続端子106が通電パス形成フィルム108に挟まれた状態で各接続端子接触部108a〜108mで導通状態となり、バイポーラ電極101間で形成される単電池の電圧が電圧導出基板110の電圧検出線140において外部から測定可能となる。
【0022】
以上の積層が終了したら、図2に示した最上層のバイポーラ電極101の正極層103の上に正極タブ120Aを積層し、また、図3に示した最下層のバイポーラ電極101の負極層104の下に負極タブ120Bを積層する。そして、バイポーラ電極101と不織布105との積層体からなる発電要素160と電圧導出基板110は、外装材を形成するラミネートフィルム180で覆われ、図1に示したように、正極タブ120A、負極タブ120B及電圧検出線140を引き出した状態でラミネートフィルム180の外周部分が熱融着される。
【0023】
電圧導出基板110の電圧検出線140はラミネートフィルム180から露出しているが、電圧検出線140には、ラミネート電池100を構成する13個の単電池ごとの電圧バランスを調整する回路、ラミネート電池100の電圧異常の有無を判定する回路、検出されたこれらの電圧値に基づいてバイポーラ電池100の使用状態を制御するコントローラが接続される。
【0024】
なお、以上の実施形態では、単電池の電圧バランスを調整する回路を外部に設けるようにしたが、図10に示すように、電圧導出基板115の一部に回路形成部117を設けておき、この回路形成部117上に単電池の電圧バランスを調整する回路またはラミネート電池100の電圧異常の有無を判定する回路のいずれか一方または双方を形成するようにしても良い。回路形成部117に単電池の電圧バランスを調整する回路のみを形成した場合には、電圧検出線140にはラミネート電池100の電圧異常の有無を判定する回路及び検出された電圧値に基づいてバイポーラ電池100の使用状態を制御するコントローラが接続される。
【0025】
図11は、電圧検出線140に接続されて単電池の電圧バランスを調整したり、ラミネート電池100の電圧異常の有無を判定したりする回路の一例を示している。図において、LAND1〜LAND13は、電圧導出基板110のランド110a〜110mにそれぞれ対応する接続端子である。図示点線で囲まれている3個の抵抗器と1個のシャントレギュレータとで構成される回路は、各単電池の電圧バランスを調整するための電圧調整回路200である。電圧調整回路200はすべての単電池に対して設けられるが、電圧調整回路200は、たとえば充電時に単電池の電圧が規定の電圧(たとえば2.5V)を超えたら、シャントレギュレータが通電して過電圧となっている単電池の電力を抵抗器で放電し、その単電池の電圧を他の単電池の電圧に合わせる。また、各単電池の電圧異常を検出する半導体チップ210と検出された電圧異常に基づいて異常信号を出力する異常信号出力回路220は、ラミネート電池100の電圧異常の有無を判定する回路を構成する。半導体チップ210は各単電池の電圧が電池寿命を考慮して設定された上下限電圧以内に収まっているか否か(電圧異常の有無)を常に監視するものである。異常信号出力回路220は半導体チップ210がいずれかの単電池の電圧異常の有無を検知したときに動作し、電圧異常の発生を外部に出力するものである。電圧検出線140にはコントローラが接続されているが、コントローラは電圧異常の信号を受けると、電圧異常の生じたバイポーラ電池100を切り離し、そのバイポーラ電池100の使用を禁止する。
【0026】
上記のように、本実施形態では図11に示す回路を電圧検出線140に外部から接続する例を示したが、回路形成部117を有する電圧導出基板115を用いた場合には、図11に示す回路のうち、少なくとも電圧調整回路200と半導体チップ210を回路形成部117上に形成する。このようにすれば、回路形成部117は外装材としてのラミネートフィルム180内に位置されるので、電圧検出線140から引き出す電線の本数を極端に少なくすることができ、その分電圧検出線140の幅を狭くすることができるため、熱融着部のシール性が向上する。
【0027】
以上説明してきたバイポーラ電池は、複数、直列に又は並列に接続して組電池モジュール250(図12参照)を形成し、この組電池モジュール250をさらに複数、直列に又は並列に接続して組電池300を形成することもできる。図12は、組電池300の平面図(図A)、正面図(図B)、側面図(図C)を示しているが、作成した組電池モジュール250は、相互にバスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、組電池モジュール250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個のバイポーラ電池110を接続して組電池モジュール250を作成するか、また、何段の組電池モジュール250を積層して組電池300を作成するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。もちろん、組電池モジュール250や組電池300には、図11に示した監視回路が搭載され、バイポーラ電池100、組電池モジュール250、組電池300はこの監視回路やコントローラによって監視回路から出力される信号に基づいて電池の使用状態が制御される。ここで言う電池の使用状態とは、バイポーラ電池100を構成する単電池をバイパスしたり、組電池モジュール単位で使用を制限したり、組電池の使用を制限したりすることを言う。
【0028】
このように、組電池モジュール250を複数直並列接続されてなる組電池300は、高容量、高出力を得ることができ、一つ一つの組電池モジュール250の信頼性が高いことから、組電池300としての長期的な信頼性の維持が可能である。また一部の組電池モジュール250が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能になる。
【0029】
組電池300を、電気自動車400に搭載するには、図13に示したように、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
【0030】
なお、本発明では、組電池300だけではなく、使用用途によっては、組電池モジュール250のみを搭載するようにしてもよいし、これら組電池300と組電池モジュール250を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明の組電池または組電池モジュールを搭載することのできる車両としては、上記の電気自動車やハイブリッドカーが好ましいが、これらに制限されるものではない。
[実施の形態2]
図14は本実施の形態に係るバイポーラ電池の外観図である。本実施の形態に係るバイポーラ電池は、実施の形態1のように各層を構成することになる要素を用意しておきこれを積層して作成するのではなく、インクジェットプリンタを用いて画像を印刷するように、1層ずつ絵を描くようにして下の層から順番に形成していくものである。
【0031】
本実施の形態に係るバイポーラ電池500は、図に示すように長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ520A、負極タブ520Bが引き出されている。また、バイポーラ電池500の一側部からは、バイポーラ電池500の発電要素560を形成する各単電池の電圧検出線540が引き出されている。発電要素560はバイポーラ電池500の外装材(たとえばラミネートフィルム)580によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素560は正極タブ520A、負極タブ520B及電圧検出線540を引き出した状態で密封されている。
【0032】
本実施形態においては、発電要素560を、インクジェットプリンタ方式によって層ごとに所定の付着パターンを重ね塗りすることによって形成している。つまり、本実施形態では図15に示すように基材600に第1層目から第5層目に示す付着パターンをインクジェットプリンタでカラー画像を形成するときのように順番に重ね塗りする。
【0033】
すなわち、図15に示す基材600には、図示してあるとおり、その基材600上に銅層610が印刷されると共に、絶縁層620、銅層からなる接続端子630a〜630gが印刷されている。基材600のどの部分に銅層、絶縁層、接続端子を印刷するのかといった付着パターンは層ごとにあらかじめ設定しておき、材料の噴射を制御するプリンタはこの付着パターンに応じて導電材や絶縁材をそれぞれの領域において選択的に噴射する。
【0034】
なお、基材600の銅層610と接続パターン630aは導通状態となるように印刷されている。この基材600の上には第1層目の印刷が施される。つまり、銅層610の対応位置に負極活物質640が重ね印刷され、同様に、絶縁層620及び接続端子630a〜630g上に絶縁層620及び接続端子630a〜630gが印刷される。次に、この第1層の上に第2層の印刷が施される。つまり、負極活物質640の対応位置にイオン導電材650が重ね印刷され、絶縁層620及び接続端子630a〜630g上に絶縁層620及び接続端子630a〜630gが印刷される。さらに、この第2層の上に第3層の印刷が施される。つまり、イオン導電材650の対応位置に正極活物質660が重ね印刷され、絶縁層620及び接続端子630a〜630g上に絶縁層620及び接続端子630a〜630gが印刷される。さらに、この第3層の上に第4層の印刷が施される。つまり、正極活物質660の対応位置に銅層610が重ね印刷され、絶縁層620及び接続端子630a〜630g上に絶縁層620及び接続端子630a〜630gが印刷される。なお、銅層610と接続パターン630aは導通状態となるように印刷されている。さらに、第1層目と同様に、銅層610の対応位置に負極活物質640が重ね印刷され、同様に、絶縁層620及び接続端子630b〜630g上に絶縁層620及び接続端子630b〜630gが印刷される。なお、第5層目の絶縁層620に接続端子630aを印刷しないのは、1つの単電池を構成することになる基材600の銅層610と第4層の銅層610との間にだけ電気的導通状態を形成させ、1つの単電池の電圧を形成するための積層方向の通電パスを形成したいからである。
【0035】
本実施形態では、以上のような印刷を7個の単電池が形成されるまで行う。図16に示すように、積層方向に形成される通電パスは、最下層の単電池700については、各層の絶縁層に形成される接続端子630a〜630gの7箇所であり、その上の単電池710については、各層の絶縁層に形成される接続端子630b〜630gの6箇所であり、その上の単電池720については、各層の絶縁層に形成される接続端子630c〜630gの5箇所であり、その上の単電池730については、各層の絶縁層に形成される接続端子630d〜630gの4箇所であり、通電パスの数は上側に位置する単電池ほど少なくなる。なお単電池同士の通電パスは積層方向において導通状態になっている。
【0036】
最上層と最下層に位置される単電池には正極タブ520Aと負極タブ520Bとがそれぞれ接続される。また、最下層に位置する単電池700の基材600には、図17に示すような電圧導出基板750が積層される。電圧導出基板750は、通電パスと電気的に接続され各通電パスの電圧を導出する電圧検出線770を備えると共に、その表面に集電箔755が形成されている。図17に示すように、電圧導出基板750は、各接続端子630a〜630gの対応位置に導電性のランド760a〜760gが形成されており、図示されていないが、各ランド760a〜760gからは個別に接続された電圧検出線770が基板上に形成されている。したがって、各ランド間の電圧を検出することによって単電池700、710、720などの電圧を知ることができる。
【0037】
上記のようにして形成した単電池の集合体である発電要素560と電圧導出基板750とは実施の形態1と同様にラミネートフィルム580で覆われ、図14に示したように、正極タブ520A、負極タブ520B及電圧検出線540を引き出した状態でラミネートフィルム580の外周部分が熱融着される。
【0038】
なお、単電池の電圧を監視する回路としては、実施形態1の図11で示したような回路と同様の回路を使用することができる。この回路は、実施の形態1と同様、電圧検出線770の外側に接続して外部から電圧を監視するようにしても良いし、電圧導出基板750上に形成し、ラミネートフィルム580内に内蔵させるようにしても良い。
【0039】
以上のように、本実施形態のバイポーラ電池500も、第1実施形態のバイポーラ電池100と同様、発電要素を構成する各単電池の電圧を、積層方向(電池の厚み方向)に形成した通電パスを介し、積層方向一方端に位置する電圧検出線によって検出することが可能となる。このため、ラミネートフィルムの封止性が良好になり、耐久性、信頼性の高いバイポーラ電池となる。また、電圧を監視するための回路をラミネートフィルム内に形成することによって、バイポーラ電池、組電池などの小型化を図ることが可能になる。
【0040】
なお、本実施形態では、バイポーラ電池のみの構造を説明してきたが、第1実施形態と同様に、このバイポーラ電池から組電池ユニット又は組電池を形成し、これらの電池を車両に搭載するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、接続端子と通電パスにより構成される電圧検出線の絶縁性を容易に確保することができ、製造工程の簡略化が可能なため、バイポーラ電池の量産化に大いに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係るバイポーラ電池の外観図である。
【図2】バイポーラ電池内部の概略構成図である。
【図3】バイポーラ電池内部の概略構成図である。
【図4】バイポーラ電池内部の概略構成図である。
【図5】バイポーラ電池内部の概略構成図である。
【図6】図1に示したバイポーラ電池のA-A断面図である。
【図7】バイポーラ電池の構成部品の概略構成図である。
【図8】バイポーラ電池の構成部品の概略構成図である。
【図9】バイポーラ電池の構成部品の概略構成図である。
【図10】バイポーラ電池の構成部品の概略構成図である。
【図11】バイポーラ電池に内蔵される又は外部接続される監視回路図である。
【図12】組電池の概略構成図である。
【図13】組電池が車両に搭載された状態を示す図である。
【図14】他の実施形態に係るバイポーラ電池の外観図である。
【図15】バイポーラ電池内部の概略構成図である。
【図16】バイポーラ電池内部の概略構成図である。
【図17】バイポーラ電池内部の概略構成図である。
【符号の説明】
【0043】
100 バイポーラ電池、
101 バイポーラ電極、
102 集電体、
103 正極層、
104 負極層、
105 不織布、
106 接続端子、
107 絶縁シート、
108 通電パス形成フィルム、
108a〜108m 接続端子接触部、
110 電圧導出基板、
110a〜110m ランド、
115 電圧導出基板、
115a〜115m ランド、
117 回路形成部、
120A 正極タブ、
120B 負極タブ、
140 電圧検出線、
160 発電要素、
180、580 ラミネートフィルム、
200 電圧調整回路、
210 半導体チップ、
220 異常信号出力回路、
250 組電池モジュール、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車、
500 バイポーラ電池、
520A 正極タブ、
520B 負極タブ、
540 電圧検出線、
560 発電要素、
600 基材、
610 銅層、
620 絶縁層、
630a〜630g 接続端子、
640 負極活物質、
650 イオン導電材、
660 正極活物質、
700 単電池、
710 単電池、
720 単電池、
730 単電池、
750 電圧導出基板、
755 集電箔、
760a〜760g ランド、
770 電圧検出線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の一方の面には正極層が形成されその他方の面には負極層が形成されたバイポーラ電極と、当該バイポーラ電極相互間でイオン交換を行う電解質層とを交互に複数積層してなるバイポーラ電池において、
積層される複数のバイポーラ電極の端部は積層されるバイポーラ電極間でそれぞれ異なる位置から引き出された接続端子を有し、
前記バイポーラ電極の端部は絶縁層を介して積層されると共に、当該絶縁層は前記接続端子の積層方向の電気的接続を形成する通電パスを備えていることを特徴とするバイポーラ電池。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記バイポーラ電極の端部全周に形成されており、前記バイポーラ電極間の電解質層を密封することを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項3】
前記絶縁層には、前記通電パスと電気的に接続され前記通電パスの電圧を導出する電圧検出線を備えた基板が積層されることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項4】
前記基板の一部は、前記バイポーラ電極と電解質層との積層体を密封する外装材から露出していることを特徴とする請求項3に記載のバイポーラ電池。
【請求項5】
前記外装材の内側に位置する基板には、前記電圧検出線間の電圧に基づいて前記バイポーラ電極間の電圧バランスを調整する回路または電圧異常の有無を判定する回路のいずれか一方または双方が備えられていることを特徴とする請求項4に記載のバイポーラ電池。
【請求項6】
前記外装材の外部に露出している基板には、前記電圧異常の有無を判定する回路からの判定結果に基づいて前記バイポーラ電池の使用状態を制御するコントローラが接続されることを特徴とする請求項5に記載のバイポーラ電池。
【請求項7】
前記外装材の外部に露出している基板には、外部に設けられた、前記電圧検出線間の電圧に基づいて前記バイポーラ電極間の電圧バランスを調整する回路または電圧異常の有無を判定する回路のいずれか一方または双方が接続されることを特徴とする請求項4に記載のバイポーラ電池。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のバイポーラ電池が複数接続されて構成されることを特徴とする組電池。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のバイポーラ電池、または請求項8に記載の組電池を電源として搭載したことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−127857(P2006−127857A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312839(P2004−312839)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】