バイメタルを用いた弁装置およびスチームトラップ装置のエア抜き弁
【課題】簡単な構成で、生産コストの低廉化を図ることができるバイメタルを用いた弁装置およびスチームトラップ装置のエア抜き弁を提供する。
【解決手段】ハウジング10が内部に弁室11を有し、弁室11の底部に弁座13を備えている。弁座13は流体の出口14を有する。球形の弁体20が円形の出口14を開閉可能に弁室11の内部に配置されている。保持部材30がバイメタルから成り、弁座13の上に配置されている。保持部材30は、所定の温度より低いとき弁室11の壁面15側から出口14側に突出した形状を有して弁体20を出口14の外側に押し出し、所定の温度以上のとき出口14側から壁面15側に後退した形状を有して弁体20が出口14を閉鎖するよう変形可能である。ハウジング10は弁室11の開口12にスチームの流路を形成して弁体20および保持部材30を弁室11の内部に拘束するストッパ16を有する。
【解決手段】ハウジング10が内部に弁室11を有し、弁室11の底部に弁座13を備えている。弁座13は流体の出口14を有する。球形の弁体20が円形の出口14を開閉可能に弁室11の内部に配置されている。保持部材30がバイメタルから成り、弁座13の上に配置されている。保持部材30は、所定の温度より低いとき弁室11の壁面15側から出口14側に突出した形状を有して弁体20を出口14の外側に押し出し、所定の温度以上のとき出口14側から壁面15側に後退した形状を有して弁体20が出口14を閉鎖するよう変形可能である。ハウジング10は弁室11の開口12にスチームの流路を形成して弁体20および保持部材30を弁室11の内部に拘束するストッパ16を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイメタルを用いた弁装置およびスチームトラップ装置のエア抜き弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁として、トラップ本体内に流入してくる流体の温度によって開閉され、トラップ本体内に流入してきた空気を二次側に排出するエア抜き弁がある(特許文献1参照)。そのエア抜き弁は、温度で作動するダイヤフラム弁機構を備えており、ドレン貯室内に流入する高温のスチームの温度でダイヤフラム弁機構が作動して閉弁し、スチームが二次側に流出するのを阻止するようになっている。
【0003】
また、従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁として、図3に示すものがある。すなわち、バイメタルから成る支持体1の貫通孔2に弁体3を貫通させて止め輪4で止め、支持体1の縁部5を弁座6の付近で支持し、スチームの温度で支持体1が変形すると、弁体3で弁座6の出口7を塞ぐようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−188793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁では、ダイヤフラム弁機構を必要とするため、生産コストが嵩むという課題があった。
また、図3に示す従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁では、支持部材に弁体を通す内孔が必要となり、加工コストが嵩むという課題があった。さらに、初期復水や空気を排出するとき、支持部材自体にも差圧が発生するため、必要発生力を大きくしなければならないことから、差圧を発生させないようハウジングに切り込みや溝を付ける必要があり、加工コストが嵩むという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、構造が簡単で生産コストの低廉化を図ることができるバイメタルを用いた弁装置およびスチームトラップ装置のエア抜き弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るバイメタルを用いた弁装置は、ハウジングと弁体と保持部材とを有し、前記ハウジングは内部に弁室を有し、前記弁室の底部に弁座を備え、前記弁座は流体の出口を有し、前記弁体は前記出口を開閉可能に前記弁室の内部に配置され、前記保持部材はバイメタルから成り、前記弁体と分離して前記弁室の内部に配置され、所定の温度より低いときまたは高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のときまたは以下のとき前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、特徴とする。
【0008】
他の本発明に係るバイメタルを用いた弁装置は、弁座と弁体と保持部材とを有し、前記弁座は流体の出口を有し、前記弁体は前記弁座の上に前記出口を開閉可能に配置され、前記保持部材はバイメタルから成り、前記弁体と分離して前記弁座の上に配置され、所定の温度より低いときまたは高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のときまたは以下のとき前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、特徴とする。
【0009】
本発明において、保持部材は、所定の温度より低いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のとき弁体が出口を閉鎖するよう変形可能であっても、所定の温度より高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以下のとき弁体が出口を閉鎖するよう変形可能であってもよい。弁体は、差圧のほか、重力またはばねなどの付勢力で出口を閉じるようになっていてもよい。保持部材が弁体の動きを妨げない形状となったとき、弁体が出口を閉鎖しても、保持部材が弁体を押し出す形状となったとき、弁体が出口を閉鎖してもよい。また、保持部材が弁体の動きを妨げない形状となったとき、弁体を出口の外側に位置付けても、保持部材が弁体を押し出す形状となったとき、弁体を出口の外側に押し出してもよい。
【0010】
本発明に係るバイメタルを用いた弁装置では、保持部材が所定の温度より低いときまたは高いとき、弁体は出口の外側に位置付けられ、出口が開く。このとき、流体は、弁座の出口から排出可能である。保持部材が所定の温度以上になったときまたは以下になったとき、保持部材は変形し、弁体が出口を閉鎖する。保持部材が所定の温度より低い状態または高い状態に戻ると、再び、出口が開く。このように、簡単な構成で、温度変化に基き、弁の開閉を行うことができる。特に、保持部材と弁体とは自由状態で、固定されていないため、加工コストの低廉化を図ることができる。
【0011】
本発明に係るスチームトラップ装置のエア抜き弁は、スチームトラップ装置の内部に流入するスチームの温度によって開閉するエア抜き弁であって、前記のバイメタルを用いた弁装置から成り、前記ハウジングは前記弁室の開口に前記スチームの流路を形成して前記弁体および前記保持部材を前記弁室の内部に拘束するストッパを有し、前記出口は円形であり、前記弁体は球形をなして前記スチームによる差圧で前記出口を閉鎖可能に設けられ、前記保持部材は、所定の温度より低いとき前記弁室の壁面側から前記出口側に突出した形状を有して前記弁体を前記出口の外側に押し出し、前記所定の温度以上のとき前記出口側から前記壁面側に後退した形状を有して前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、特徴とする。
【0012】
本発明に係るスチームトラップ装置のエア抜き弁で、弁体および保持部材はストッパによりハウジングの弁室の内部に拘束されている。保持部材は、所定の温度より低い温度のとき、球形の弁体を出口の外側に押し出し、出口が開いている。このとき、復水や空気は、弁座の出口から排出可能である。スチームトラップ装置の内部に流入したスチームが弁室の開口から弁室の内部に流入して、保持部材が所定の温度以上になったとき、保持部材は変形し、弁体がスチームによる差圧で出口を閉鎖する。保持部材が所定の温度より低い状態に戻ると、再び、出口が開く。このように、簡単な構成で、温度変化に基き、弁の開閉を行い、復水の排出およびエア抜きを行うことができる。特に、保持部材と弁体とは自由状態で、固定されていないため、加工コストの低廉化を図ることができる。また、初期復水や空気を排出するとき、保持部材に差圧が発生しないため、差圧を防ぐための構造を必要としない。さらに、保持部材は、開弁時に弁体を出口に対し横方向に転がすように押し出し、閉弁時には弁体に圧力を加えないため、必要荷重を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構造が簡単で生産コストの低廉化を図ることができるバイメタルを用いた弁装置およびスチームトラップ装置のエア抜き弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態のスチームトラップ装置のエア抜き弁を示している。
スチームトラップ装置のエア抜き弁は、スチームトラップ装置の内部に流入するスチームの温度によって開閉する弁装置から成っている。
【0015】
図1および図2に示すように、弁装置は、ハウジング10と弁体20と保持部材30とを有している。
ハウジング10は、円筒状の弁室11を内部に有している。弁室11は、上部に開口12を有している。ハウジング10は、弁座13を底部に一体的に有している。弁座13は、中央に流体の出口14を有し、周囲が平坦になっている。出口14は円形であって、初期復水や空気を外部に排出可能となっている。
弁体20は、出口14より直径が大きい鋼球から成り、弁座13の上に出口14を開閉可能に配置されている。
【0016】
保持部材30は、長方形の板状をなし、温度により変形可能なバイメタルから成っている。保持部材30は、予め、所定の温度で変形するように構成されている。保持部材30は、出口14からずれた位置で弁座13の上に配置されている。保持部材30は、所定の温度より低いとき、図1に示すように、弁室11の壁面15側から出口14側に中央31が突出した湾曲形状となって、弁体20を出口14の外側に押し出している。保持部材30は、所定の温度以上のとき、図2に示すように、図1に示す形状と反対に中央31が出口14側から壁面15側に後退して弁室11の内壁に沿った湾曲形状となって、弁体20の移動を妨げず、弁体20が出口14を閉鎖するのを可能にする。所定の温度は、例えば100℃である。
【0017】
弁体20および保持部材30は、弁室11に収容されている。ハウジング10は、弁室11の開口12にストッパ16を有している。ストッパ16は、リング状であって、弁室11の開口12に固定されている。ストッパ16の固定は、溶接、圧入、嵌合または螺合のいずれであってもよい。ストッパ16は、弁室11の開口12に、スチームトラップ装置の内部に流入するスチームの流路を形成して、弁体20および保持部材30を弁室11の内部に拘束している。このため、ストッパ16の内径は、弁体20の直径および保持部材30の直径より小さくなっている。
【0018】
次に、作用について説明する。
スチームトラップ装置のエア抜き弁で、弁体20および保持部材30はストッパ16によりハウジング10の弁室11の内部に拘束されている。このため、弁体20および保持部材30が弁室11から不用意に抜け出ることはない。保持部材30は、所定の温度より低い温度のとき、図1に示すように、弁体20を出口14に対し横方向に転がすように出口14の外側に押し出し、出口14が開いて開弁状態となる。このとき、蒸気配管系に発生する初期低温復水や空気は、弁座13の出口14から強制的に排出可能である。スチームトラップ装置の内部に流入したスチームが弁室11の開口12から弁室11の内部に流入して、保持部材30が所定の温度以上になったとき、図2に示すように、保持部材30は変形し、弁体20から離れて弁体20に圧力を加えない状態となり、弁体20がスチームによる差圧で出口14を閉鎖して閉弁状態となる。これにより、内部の流体を外部に漏らさないようにすることができる。保持部材30が所定の温度より低い状態に戻ると、再び、出口14が開く。このように、簡単な構成で、温度変化に基き、自動的に弁の開閉を行い、復水の排出およびエア抜きを行うことができる。
【0019】
エア抜き弁は、以下の特徴を有している。
(1)保持部材30を簡単な構造でかつ小さく製作することができる。
図3に示す従来のエア抜き弁に比べて、保持部材30に貫通孔などの加工を施す必要がないため、加工コストの低廉化を図ることができる。また、初期復水や空気を排出するとき、保持部材30に差圧が発生しないため、差圧を防ぐための構造を必要としない。
【0020】
(2)保持部材30の必要荷重を小さくすることができる。
弁開閉時、保持部材30に必要な力は、弁体20にかかる流体力(チャッキ力)を横方向に変換した荷重のため、小さくて済む。特に、弁閉時には、所定の温度になるまで、保持部材30は通常の形状を保っているので、弁体20にかかる差圧は微小となり、必要荷重が小さくて済む。
【0021】
(3)弁座13のシール性が良好でかつ生産コストの低廉化を図ることができる。
弁体20に鋼球を使用しているため、弁体20と弁座13とが線接触となり、シール性が良好となる。また、弁体20は、自由回転可能なため、シールポイントが作動のたびに変わる。このため、プラグ型弁体20に比べ、弁体20の磨耗による弁座漏れを発生しにくい。弁体20に市販の鋼球を使用することにより、生産コストを下げることができる。
【0022】
(4)全体の構造を簡単にできる。
保持部材30と弁体20とは自由状態で、固定されていないため、ハウジング10にストッパ16を取り付ける加工および弁座13の加工のみで生産することができる。このため、生産コストを大きく下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態のスチームトラップ装置のエア抜き弁の出口を開いた状態を示す(A)平面図、(B)縦断面図である。
【図2】図1に示すスチームトラップ装置のエア抜き弁の出口を閉鎖した状態を示す(A)平面図、(B)縦断面図である。
【図3】従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁の(A)要部分解斜視図、(B)断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ハウジング
11 弁室
12 開口
13 弁座
14 出口
15 壁面
16 ストッパ
20 弁体
30 保持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイメタルを用いた弁装置およびスチームトラップ装置のエア抜き弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁として、トラップ本体内に流入してくる流体の温度によって開閉され、トラップ本体内に流入してきた空気を二次側に排出するエア抜き弁がある(特許文献1参照)。そのエア抜き弁は、温度で作動するダイヤフラム弁機構を備えており、ドレン貯室内に流入する高温のスチームの温度でダイヤフラム弁機構が作動して閉弁し、スチームが二次側に流出するのを阻止するようになっている。
【0003】
また、従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁として、図3に示すものがある。すなわち、バイメタルから成る支持体1の貫通孔2に弁体3を貫通させて止め輪4で止め、支持体1の縁部5を弁座6の付近で支持し、スチームの温度で支持体1が変形すると、弁体3で弁座6の出口7を塞ぐようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−188793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁では、ダイヤフラム弁機構を必要とするため、生産コストが嵩むという課題があった。
また、図3に示す従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁では、支持部材に弁体を通す内孔が必要となり、加工コストが嵩むという課題があった。さらに、初期復水や空気を排出するとき、支持部材自体にも差圧が発生するため、必要発生力を大きくしなければならないことから、差圧を発生させないようハウジングに切り込みや溝を付ける必要があり、加工コストが嵩むという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、構造が簡単で生産コストの低廉化を図ることができるバイメタルを用いた弁装置およびスチームトラップ装置のエア抜き弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るバイメタルを用いた弁装置は、ハウジングと弁体と保持部材とを有し、前記ハウジングは内部に弁室を有し、前記弁室の底部に弁座を備え、前記弁座は流体の出口を有し、前記弁体は前記出口を開閉可能に前記弁室の内部に配置され、前記保持部材はバイメタルから成り、前記弁体と分離して前記弁室の内部に配置され、所定の温度より低いときまたは高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のときまたは以下のとき前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、特徴とする。
【0008】
他の本発明に係るバイメタルを用いた弁装置は、弁座と弁体と保持部材とを有し、前記弁座は流体の出口を有し、前記弁体は前記弁座の上に前記出口を開閉可能に配置され、前記保持部材はバイメタルから成り、前記弁体と分離して前記弁座の上に配置され、所定の温度より低いときまたは高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のときまたは以下のとき前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、特徴とする。
【0009】
本発明において、保持部材は、所定の温度より低いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のとき弁体が出口を閉鎖するよう変形可能であっても、所定の温度より高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以下のとき弁体が出口を閉鎖するよう変形可能であってもよい。弁体は、差圧のほか、重力またはばねなどの付勢力で出口を閉じるようになっていてもよい。保持部材が弁体の動きを妨げない形状となったとき、弁体が出口を閉鎖しても、保持部材が弁体を押し出す形状となったとき、弁体が出口を閉鎖してもよい。また、保持部材が弁体の動きを妨げない形状となったとき、弁体を出口の外側に位置付けても、保持部材が弁体を押し出す形状となったとき、弁体を出口の外側に押し出してもよい。
【0010】
本発明に係るバイメタルを用いた弁装置では、保持部材が所定の温度より低いときまたは高いとき、弁体は出口の外側に位置付けられ、出口が開く。このとき、流体は、弁座の出口から排出可能である。保持部材が所定の温度以上になったときまたは以下になったとき、保持部材は変形し、弁体が出口を閉鎖する。保持部材が所定の温度より低い状態または高い状態に戻ると、再び、出口が開く。このように、簡単な構成で、温度変化に基き、弁の開閉を行うことができる。特に、保持部材と弁体とは自由状態で、固定されていないため、加工コストの低廉化を図ることができる。
【0011】
本発明に係るスチームトラップ装置のエア抜き弁は、スチームトラップ装置の内部に流入するスチームの温度によって開閉するエア抜き弁であって、前記のバイメタルを用いた弁装置から成り、前記ハウジングは前記弁室の開口に前記スチームの流路を形成して前記弁体および前記保持部材を前記弁室の内部に拘束するストッパを有し、前記出口は円形であり、前記弁体は球形をなして前記スチームによる差圧で前記出口を閉鎖可能に設けられ、前記保持部材は、所定の温度より低いとき前記弁室の壁面側から前記出口側に突出した形状を有して前記弁体を前記出口の外側に押し出し、前記所定の温度以上のとき前記出口側から前記壁面側に後退した形状を有して前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、特徴とする。
【0012】
本発明に係るスチームトラップ装置のエア抜き弁で、弁体および保持部材はストッパによりハウジングの弁室の内部に拘束されている。保持部材は、所定の温度より低い温度のとき、球形の弁体を出口の外側に押し出し、出口が開いている。このとき、復水や空気は、弁座の出口から排出可能である。スチームトラップ装置の内部に流入したスチームが弁室の開口から弁室の内部に流入して、保持部材が所定の温度以上になったとき、保持部材は変形し、弁体がスチームによる差圧で出口を閉鎖する。保持部材が所定の温度より低い状態に戻ると、再び、出口が開く。このように、簡単な構成で、温度変化に基き、弁の開閉を行い、復水の排出およびエア抜きを行うことができる。特に、保持部材と弁体とは自由状態で、固定されていないため、加工コストの低廉化を図ることができる。また、初期復水や空気を排出するとき、保持部材に差圧が発生しないため、差圧を防ぐための構造を必要としない。さらに、保持部材は、開弁時に弁体を出口に対し横方向に転がすように押し出し、閉弁時には弁体に圧力を加えないため、必要荷重を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構造が簡単で生産コストの低廉化を図ることができるバイメタルを用いた弁装置およびスチームトラップ装置のエア抜き弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態のスチームトラップ装置のエア抜き弁を示している。
スチームトラップ装置のエア抜き弁は、スチームトラップ装置の内部に流入するスチームの温度によって開閉する弁装置から成っている。
【0015】
図1および図2に示すように、弁装置は、ハウジング10と弁体20と保持部材30とを有している。
ハウジング10は、円筒状の弁室11を内部に有している。弁室11は、上部に開口12を有している。ハウジング10は、弁座13を底部に一体的に有している。弁座13は、中央に流体の出口14を有し、周囲が平坦になっている。出口14は円形であって、初期復水や空気を外部に排出可能となっている。
弁体20は、出口14より直径が大きい鋼球から成り、弁座13の上に出口14を開閉可能に配置されている。
【0016】
保持部材30は、長方形の板状をなし、温度により変形可能なバイメタルから成っている。保持部材30は、予め、所定の温度で変形するように構成されている。保持部材30は、出口14からずれた位置で弁座13の上に配置されている。保持部材30は、所定の温度より低いとき、図1に示すように、弁室11の壁面15側から出口14側に中央31が突出した湾曲形状となって、弁体20を出口14の外側に押し出している。保持部材30は、所定の温度以上のとき、図2に示すように、図1に示す形状と反対に中央31が出口14側から壁面15側に後退して弁室11の内壁に沿った湾曲形状となって、弁体20の移動を妨げず、弁体20が出口14を閉鎖するのを可能にする。所定の温度は、例えば100℃である。
【0017】
弁体20および保持部材30は、弁室11に収容されている。ハウジング10は、弁室11の開口12にストッパ16を有している。ストッパ16は、リング状であって、弁室11の開口12に固定されている。ストッパ16の固定は、溶接、圧入、嵌合または螺合のいずれであってもよい。ストッパ16は、弁室11の開口12に、スチームトラップ装置の内部に流入するスチームの流路を形成して、弁体20および保持部材30を弁室11の内部に拘束している。このため、ストッパ16の内径は、弁体20の直径および保持部材30の直径より小さくなっている。
【0018】
次に、作用について説明する。
スチームトラップ装置のエア抜き弁で、弁体20および保持部材30はストッパ16によりハウジング10の弁室11の内部に拘束されている。このため、弁体20および保持部材30が弁室11から不用意に抜け出ることはない。保持部材30は、所定の温度より低い温度のとき、図1に示すように、弁体20を出口14に対し横方向に転がすように出口14の外側に押し出し、出口14が開いて開弁状態となる。このとき、蒸気配管系に発生する初期低温復水や空気は、弁座13の出口14から強制的に排出可能である。スチームトラップ装置の内部に流入したスチームが弁室11の開口12から弁室11の内部に流入して、保持部材30が所定の温度以上になったとき、図2に示すように、保持部材30は変形し、弁体20から離れて弁体20に圧力を加えない状態となり、弁体20がスチームによる差圧で出口14を閉鎖して閉弁状態となる。これにより、内部の流体を外部に漏らさないようにすることができる。保持部材30が所定の温度より低い状態に戻ると、再び、出口14が開く。このように、簡単な構成で、温度変化に基き、自動的に弁の開閉を行い、復水の排出およびエア抜きを行うことができる。
【0019】
エア抜き弁は、以下の特徴を有している。
(1)保持部材30を簡単な構造でかつ小さく製作することができる。
図3に示す従来のエア抜き弁に比べて、保持部材30に貫通孔などの加工を施す必要がないため、加工コストの低廉化を図ることができる。また、初期復水や空気を排出するとき、保持部材30に差圧が発生しないため、差圧を防ぐための構造を必要としない。
【0020】
(2)保持部材30の必要荷重を小さくすることができる。
弁開閉時、保持部材30に必要な力は、弁体20にかかる流体力(チャッキ力)を横方向に変換した荷重のため、小さくて済む。特に、弁閉時には、所定の温度になるまで、保持部材30は通常の形状を保っているので、弁体20にかかる差圧は微小となり、必要荷重が小さくて済む。
【0021】
(3)弁座13のシール性が良好でかつ生産コストの低廉化を図ることができる。
弁体20に鋼球を使用しているため、弁体20と弁座13とが線接触となり、シール性が良好となる。また、弁体20は、自由回転可能なため、シールポイントが作動のたびに変わる。このため、プラグ型弁体20に比べ、弁体20の磨耗による弁座漏れを発生しにくい。弁体20に市販の鋼球を使用することにより、生産コストを下げることができる。
【0022】
(4)全体の構造を簡単にできる。
保持部材30と弁体20とは自由状態で、固定されていないため、ハウジング10にストッパ16を取り付ける加工および弁座13の加工のみで生産することができる。このため、生産コストを大きく下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態のスチームトラップ装置のエア抜き弁の出口を開いた状態を示す(A)平面図、(B)縦断面図である。
【図2】図1に示すスチームトラップ装置のエア抜き弁の出口を閉鎖した状態を示す(A)平面図、(B)縦断面図である。
【図3】従来のスチームトラップ装置のエア抜き弁の(A)要部分解斜視図、(B)断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ハウジング
11 弁室
12 開口
13 弁座
14 出口
15 壁面
16 ストッパ
20 弁体
30 保持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと弁体と保持部材とを有し、
前記ハウジングは内部に弁室を有し、前記弁室の底部に弁座を備え、前記弁座は流体の出口を有し、
前記弁体は前記出口を開閉可能に前記弁室の内部に配置され、
前記保持部材はバイメタルから成り、前記弁体と分離して前記弁室の内部に配置され、所定の温度より低いときまたは高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のときまたは以下のとき前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、
特徴とするバイメタルを用いた弁装置。
【請求項2】
弁座と弁体と保持部材とを有し、
前記弁座は流体の出口を有し、
前記弁体は前記弁座の上に前記出口を開閉可能に配置され、
前記保持部材はバイメタルから成り、前記弁体と分離して前記弁座の上に配置され、所定の温度より低いときまたは高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のときまたは以下のとき前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、
特徴とするバイメタルを用いた弁装置。
【請求項3】
スチームトラップ装置の内部に流入するスチームの温度によって開閉するエア抜き弁であって、
請求項1記載のバイメタルを用いた弁装置から成り、
前記ハウジングは前記弁室の開口に前記スチームの流路を形成して前記弁体および前記保持部材を前記弁室の内部に拘束するストッパを有し、
前記出口は円形であり、前記弁体は球形をなして前記スチームによる差圧で前記出口を閉鎖可能に設けられ、
前記保持部材は、所定の温度より低いとき前記弁室の壁面側から前記出口側に突出した形状を有して前記弁体を前記出口の外側に押し出し、前記所定の温度以上のとき前記出口側から前記壁面側に後退した形状を有して前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、
特徴とするスチームトラップ装置のエア抜き弁。
【請求項1】
ハウジングと弁体と保持部材とを有し、
前記ハウジングは内部に弁室を有し、前記弁室の底部に弁座を備え、前記弁座は流体の出口を有し、
前記弁体は前記出口を開閉可能に前記弁室の内部に配置され、
前記保持部材はバイメタルから成り、前記弁体と分離して前記弁室の内部に配置され、所定の温度より低いときまたは高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のときまたは以下のとき前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、
特徴とするバイメタルを用いた弁装置。
【請求項2】
弁座と弁体と保持部材とを有し、
前記弁座は流体の出口を有し、
前記弁体は前記弁座の上に前記出口を開閉可能に配置され、
前記保持部材はバイメタルから成り、前記弁体と分離して前記弁座の上に配置され、所定の温度より低いときまたは高いとき前記弁体を前記出口の外側に位置付け、前記所定の温度以上のときまたは以下のとき前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、
特徴とするバイメタルを用いた弁装置。
【請求項3】
スチームトラップ装置の内部に流入するスチームの温度によって開閉するエア抜き弁であって、
請求項1記載のバイメタルを用いた弁装置から成り、
前記ハウジングは前記弁室の開口に前記スチームの流路を形成して前記弁体および前記保持部材を前記弁室の内部に拘束するストッパを有し、
前記出口は円形であり、前記弁体は球形をなして前記スチームによる差圧で前記出口を閉鎖可能に設けられ、
前記保持部材は、所定の温度より低いとき前記弁室の壁面側から前記出口側に突出した形状を有して前記弁体を前記出口の外側に押し出し、前記所定の温度以上のとき前記出口側から前記壁面側に後退した形状を有して前記弁体が前記出口を閉鎖するよう変形可能であることを、
特徴とするスチームトラップ装置のエア抜き弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2006−112441(P2006−112441A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297097(P2004−297097)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000155056)株式会社本山製作所 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000155056)株式会社本山製作所 (3)
【Fターム(参考)】
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