説明

バインダー、およびバインダー製の物質

【課題】バインダー、およびバインダー製の物質の提供。
【解決手段】非結合体または疎結合体において凝集を生じるかまたは促進するバインダー。このバインダーは、アミンおよび炭水化物を含むメイラード反応物であって;任意に、シリコン含有化合物および/または腐食抑制剤を含むメイラード反応物を含む。本発明のバインダーは、非結合的または疎結合的集合体において凝集を生じるかまたは促進する各種作成用途に利用可能である。1つの集合物は2つ以上の成分を含む。バインダーは、その集合物の少なくとも2つの成分の凝集を生じるかまたは促進する。例えば、当該バインダーは、集合体をまとめて保持することで、その物体が分離せずに固着するようにすることができる。本明細書中に記載のバインダーは、あらゆる物質の作成に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、35 U.S.C.§119(e)の下、2005年7月26日に出願された、米国仮特許出願第60/702,456号、および2005年12月22日に出願された、米国仮特許出願第743,701号に対する利益を主張する。これらの開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
背景
バインダーは、非結合体または疎結合体から物質を作成する際に有用である。例えば、バインダーは、2つ以上の表面を一体化することが可能である。バインダーは、大きく分けて、有機および無機の2つの主要グループに分類でき、有機物質は、動物、植物、および合成起源のものに細分化される。バインダーの他の分類法としては、(1)タンパク質またはタンパク質誘導体;(2)スターチ、セルロース、またはゴム質、およびそれらの誘導体;(3)熱可塑性合成樹脂;(4)熱硬化合成樹脂;(5)天然樹脂およびビチューメン;(6)天然および合成ゴム;ならびに(7)無機バインダーといった化合物の化学的性質に基づくものがある。バインダーはまた、(1)硬質プラスチックおよび金属等の剛性表面の結合;ならびに(2)特に、軟質プラスチックおよび金属薄膜等の柔軟性表面の結合といった使用目的によっても分類可能である。
【0003】
熱可塑性バインダーは、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、および他のポリビニル樹脂等の各種重合物質;ポリスチレン樹脂;アクリル酸エステル樹脂およびメタクリル酸エステル樹脂;シアノアクリレート;ならびにポリイソブチレンポリアミド、クルマロンイデン製品(courmarone−idene products)、およびシリコーン等の様々な他の合成樹脂等を含む。このような熱可塑性バインダーは、永久的な可溶性および可融性を有するために応力により変形したり、加熱時に軟化することがある。これらは、例えば、テープ等の様々な製品の製造に用いられる。
【0004】
熱硬化バインダーは、各種のフェノール−アルデヒド、尿素−アルデヒド、メラミン−アルデヒド、ならびにフランおよびポリウレタン樹脂のような他の縮合−重合物質を含む。熱硬化バインダーは、熱または触媒作用のいずれかによって不溶性および不融性物質に転換されることを特徴とする場合がある。フェノール−、レゾルシノール−、尿素−、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノールフルフラルデヒド等を含有するバインダー組成物は、織物、プラスチック、ゴム、および多くの他の物質の結合に用いられる。
【0005】
上記のとおり、バインダーは、非結合体または疎結合体から物質を作成する際に有用である。従って、バインダーとして機能可能な組成物が所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
本発明の具体的な実施形態に係る硬化または未硬化バインダーは、下記の特徴の1つ以上またはそれらの組み合わせを含み得る。また、本発明に係る物質は、下記の特徴の1つ以上またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0007】
まず、当然のことながら、本発明のバインダーは、非結合的または疎結合的集合体において凝集を生じるかまたは促進する各種作成用途に利用可能である。1つの集合物は2つ以上の成分を含む。バインダーは、その集合物の少なくとも2つの成分の凝集を生じるかまたは促進する。例えば、当該バインダーは、集合体をまとめて保持することで、その物体が分離せずに固着するようにすることができる。本明細書中に記載のバインダーは、あらゆる物質の作成に利用することができる。
【0008】
本バインダーの潜在的特徴の1つは、ホルムアルデヒドを含有しないことである。従って、このバインダーが塗布される物質もホルムアルデヒドを含有しないようにすることがある(例えば、繊維ガラス)。また、本バインダーは、他の公知のバインダーと比較してトリメチルアミン含有量が少ないことがある。
【0009】
本バインダーの化学成分に関しては、エステルおよび/またはポリエステル化合物を含んでもよい。これらのバインダーは、大豆油等の植物油とともにエステルおよび/またはポリエステル化合物を含んでもよい。さらに、これらのバインダーは、有機酸のナトリウム塩とともにエステルおよび/またはポリエステル化合物を含んでもよい。これらのバインダーは、無機酸のナトリウム塩を含んでもよい。これらのバインダーはまた、有機酸のカリウム塩を含んでもよい。またさらには、これらのバインダーは、無機酸のカリウム塩を含んでもよい。上述したバインダーは、モンモリロナイト等の粘土添加物とともにエステルおよび/またはポリエステル化合物を含んでもよい。
【0010】
さらに、本発明のバインダーは、メイラード反応産物を含んでもよい。例えば、図2を参照されたい。図2に示すように、メイラード反応によりメラノイジン、すなわち、反応物および調製条件に応じて構造が異なる高分子量フラン環および窒素含有重合体が産生される。メラノイジンは、加熱温度および時間とともに上昇するC:N比、不飽和度および化学的芳香族性を示す。(その開示内容を本明細書中において参考として援用するAmes,J.M.の”The Maillard Browning Reaction−an update,”Chemistry and Industry(英国),1988,7,558−561を参照)。従って、当該バインダーは、メイラード反応により作られるため、メラノイジンを含有し得る。当然のことながら、当該バインダーはメラノイジン、または個々の処理により生成され、バインダーを構成する組成物に単に添加される他のメイラード反応産物を含有する場合がある。バインダー中のメラノイジンは不水溶性であってもよい。またさらには、それらのバインダーは熱硬化バインダーであってもよい。
【0011】
メラノイジンを産生するメイラード反応物は、還元糖炭水化物反応物で反応させたアミン反応物を含んでもよい。例えば、単量体ポリカルボン酸のアンモニウム塩を、(i)アルドースまたはケトース形態の単糖類もしくは(ii)多糖類と、または(iii)それらの組み合わせと反応させてもよい。他の変形例では、高分子ポリカルボン酸のアンモニウム塩を、(i)アルドースまたはケトース形態の単糖類もしくは(ii)多糖類と、または(iii)それらの組み合わせと接触させてもよい。さらに他の変形例では、アミノ酸を、(i)アルドースまたはケトース形態の単糖類もしくは(ii)多糖類と、または(iii)それらの組み合わせと接触させてもよい。さらに、ペプチドを、(i)アルドースまたはケトース形態の単糖類もしくは(ii)多糖類と、または(iii)それらの組み合わせとを接触させてもよい。またさらには、タンパク質を、(i)アルドースまたはケトース形態の単糖類もしくは(ii)多糖類と、または(iii)それらの組み合わせと接触させてもよい。
【0012】
当然のことながら、本発明のバインダーがメイラード反応の非糖変異体中で生じたメラノイジンを含む場合がある。これらの反応では、アミン反応物を非炭水化物カルボニル反応物と接触させる。1つの具体的な変形例では、単量体ポリカルボン酸のアンモニウム塩を、ピルビンアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−フルアルデヒド、キノン、アスコルビン等の非炭水化物カルボニル反応物、またはそれらの組み合わせ等と接触させる。他の変形例では、高分子ポリカルボン酸のアンモニウム塩を、ピルビンアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−フルアルデヒド、キノン、アスコルビン酸等の非炭水化物カルボニル反応物、またはそれらの組み合わせと接触させてもよい。さらに他の具体的な変形例では、アミノ酸を、ピルビンアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−フルアルデヒド、キノン、アスコルビン酸等の非炭水化物カルボニル反応物、またはそれらの組み合わせと接触させてもよい。他の具体的な変形例では、ペプチドを、ピルビンアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−フルアルデヒド、キノン、アスコルビン酸等の非炭水化物カルボニル反応物、またはそれらの組み合わせと接触させてもよい。さらに他の具体的な変形例では、タンパク質を、ピルビンアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−フルアルデヒド、キノン、アスコルビン酸等の非炭水化物カルボニル反応物、またはそれらの組み合わせと接触させてもよい。
【0013】
本明細書中において議論するメラノイジンは、メラノイジン反応化合物から生成してもよい。これらの反応化合物は、アルカリ性pHの水溶液中に入れられるため腐食性ではない。すなわち、このアルカリ性溶液が、例えば、酸によって引き起こされる化学分解による金属等の物質の摩滅または磨耗を防いだり、抑制したりする。これらの反応化合物は、還元糖炭水化物反応物およびアミン反応物を含んでもよい。また、これらの反応化合物は、非炭水化物カルボニル反応物およびアミン反応物を含んでもよい。
【0014】
また、本明細書中に記載のバインダーは、メラノイジン反応化合物自体から作られてもよいことは言うまでもない。すなわち、メイラード反応物が混合されると、その混合物は本発明のバインダーとして機能可能である。それらのバインダーを利用して、繊維材料等のホルムアルデヒドを含有しない未硬化物質を作成してもよい。
【0015】
代替例では、メイラード反応物から作ったバインダーを硬化してもよい。それらのバインダーを用いて、繊維組成物等のホルムアルデヒドを含有しない硬化物質を作成してもよい。それらの組成物は耐水性であり、上記したように、不水溶性メラノイジンを含む。
【0016】
当然のことながら、本明細書中に記載のバインダーを非結合または疎結合集合体から製品を製造する際に用いてもよい。例えば、それらのバインダーを使って繊維製品を作成してもよい。それらの製品は、織布または不織布で作ってもよい。それらの繊維は、耐熱性または非耐熱性繊維またはそれらの組み合わせとすることができる。1つの具体的な実施形態では、それらのバインダーを用いてガラスファイバーを結合させて繊維ガラスが作られる。他の具体的な実施形態では、それらのバインダーを用いてセルロース組成物が作られる。セルロース組成物に関しては、上記バインダーを用いてセルロース物質を結合し、例えば、所望の物理特性(例えば、機械強度)を有する木質繊維板を作成してもよい。
【0017】
この発明の1つの実施形態は、非結合または疎結合集合体から製品を製造する方法に関する。この方法の1つの使用例としては、繊維ガラスの作成がある。しかしながら、上記したように、この方法は、その利用時に凝集を生じるかまたは促進する限りあらゆる物質の製造に用いることができる。この方法は、繊維と熱硬化可能な水性バインダーとの接触を包含してもよい。このバインダーは、(i)ポリカルボン酸反応物のアンモニウム塩、および(ii)還元糖炭水化物反応物を含んでもよい。これら2つの反応物はメラノイジン反応物である(すなわち、これらの反応物は、メイラード反応を開始する条件下で反応させるとメラノイジンを生じる。)。上記方法は、繊維と接触したバインダーからの水分除去(すなわち、バインダーは脱水される)をさらに包含するようにすることができる。上記方法はまた、ガラスファイバーと接触したバインダーの硬化(例えば、バインダーの熱硬化)を含むようにすることができる。
【0018】
この方法の他の利用例としては、セルロース物質の作成がある。この方法は、セルロース物質(例えば、セルロース繊維)と熱硬化可能な水性バインダーとの接触を包含してもよい。このバインダーは、(i)ポリカルボン酸反応物のアンモニウム塩、および(ii)還元糖炭水化物反応物を含んでもよい。上記したように、これら2つの反応物はメラノイジン反応化合物である。上記方法はまた、セルロース物質と接触させたバインダーからの水分除去も包含するようにすることができる。上述のように、上記方法はまた、バインダーの硬化(例えば、熱硬化)も包含するようにすることもできる。
【0019】
上記バインダーの1つの使用法としては、ガラスファイバーを一体的に結合して繊維ガラスマットとしてまとめることが挙げられる。この繊維ガラスマットを加工して、繊維ガラス断熱材等、数種類ある繊維ガラス物質の1つを形成してもよい。一例として、繊維ガラス物質は、ガラスファイバーが約80〜約99重量%の範囲で存在するようにしてもよい。未硬化バインダーは、ガラスファイバーを1つに束ねるように機能することが可能である。硬化バインダーは、ガラスファイバーを1つに束ねるように機能することが可能である。
【0020】
また、木屑またはおがくずマットと同様のセルロース繊維と接触させたバインダーを含む繊維製品を説明する。このマットを加工して、数種類ある木質繊維板製品の1つを形成してもよい。1つの変形例では、バインダーは硬化されない。この変形例では、その未硬化バインダーが、セルロース繊維を1つに束ねるように機能することが可能である。代替例では、硬化バインダーがセルロース繊維を1つに束ねるように機能することが可能である。
【0021】
現時点で認識している発明を実施する最良の形態を例示する以下の具体的な実施形態の詳細説明を考慮することで、本発明のさらなる特徴が当業者には明らかになる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
(i)アミンおよび(ii)炭水化物を含むメイラード反応物を含むバインダーであって、(i)硬化しておらず、かつ(ii)ホルムアルデヒドを含有しない、バインダー。
(項目2)
前記アミンは単量体ポリカルボン酸のアンモニウム塩を含む、項目1に記載のバインダー。
(項目3)
前記アミンは高分子ポリカルボン酸のアンモニウム塩を含む項目1に記載のバインダー。
(項目4)
前記炭水化物は単糖を含む、項目1に記載のバインダー。
(項目5)
前記単糖は還元糖を含む、項目4に記載のバインダー。
(項目6)
前記還元糖は、デキストロース、キシロース、フルクトース、およびジヒドロキシアセトンのうちの少なくとも1つを含む、項目5に記載のバインダー。
(項目7)
シリコン含有化合物をさらに含む、項目1に記載のバインダー。
(項目8)
前記シリコン含有化合物はアミノ置換されている、項目7に記載のバインダー。
(項目9)
前記シリコン含有化合物はシリルエーテルである、項目7に記載のバインダー。
(項目10)
前記シリコン含有化合物は、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびn−プロピルアミンシランのうちの少なくとも1つを含む、項目7に記載のバインダー。
(項目11)
腐食抑制剤をさらに含む、項目1に記載のバインダー。
(項目12)
前記腐食抑制剤は、脱塵油、リン酸モノアンモニウム、メタケイ酸ナトリウム五水和物、メラミン、シュウ酸スズ(II)、およびメチル水素シリコン乳液のうちの少なくとも1つを含む、項目11に記載のバインダー。
(項目13)
前記バインダーはアルカリ性pHを有する水溶液である、項目1に記載のバインダー。
(項目14)
前記バインダーは脱水されている、項目1に記載のバインダー。
(項目15)
(i)1つ以上のメイラード反応物および(ii)シリコン含有化合物を含むバインダーであって、該バインダーは(i)硬化しており、かつ(ii)ホルムアルデヒドを含有しない、バインダー。
(項目16)
前記シリコン含有化合物はアミノ置換されている、項目15に記載のバインダー。
(項目17)
前記シリコン含有化合物はシリルエーテルである、項目15に記載のバインダー。
(項目18)
前記シリコン含有化合物は、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびn−プロピルアミンシランのうちの少なくとも1つを含む、項目15に記載のバインダー。
(項目19)
(i)1つ以上のメイラード反応産物および(ii)腐食抑制剤を含むバインダーであって、該バインダーは(i)硬化しており、かつ(ii)ホルムアルデヒドを含有しない、バインダー。
(項目20)
前記腐食抑制剤は、脱塵油、リン酸モノアンモニウム、メタケイ酸ナトリウム五水和物、メラミン、シュウ酸スズ(II)、およびメチル水素シリコン乳液のうちの少なくとも1つを含む、項目19に記載のバインダー。
(項目21)
前記メイラード反応物は1つ以上のメラノイジンを含む、項目19に記載のバインダー。
(項目22)
1つ以上のポリエステル化合物をさらに含む、項目19に記載のバインダー。
(項目23)
集合体;および
該集合体上に置かれたバインダー
を含む物質であって、該物質はホルムアルデヒドを含有しておらず;該バインダーは(i)少なくとも2つのメイラード反応物および(ii)シリコン含有化合物を含む、物質。
(項目24)
前記集合体はガラスファイバーを含む、項目23に記載の物質。
(項目25)
前記集合体はセルロース繊維を含む、項目23に記載の物質。
(項目26)
集合体;および
該集合体上に置かれたバインダー
を含む物質であって、該物質はホルムアルデヒドを含有しておらず;該バインダーは(i)少なくとも2つのメイラード反応物および(ii)腐食抑制剤を含む、物質。
(項目27)
前記集合体はガラスファイバーを含む、項目26に記載の物質。
(項目28)
前記集合体はセルロース繊維を含む、項目26に記載の物質。
(項目29)
項目1に記載のバインダーと接触した集合体を含む物質であって、該バインダーは脱水されている、物質。
(項目30)
項目1に記載のバインダーと接触した集合体を含む物質であって、該バインダーを硬化している、物質。
(項目31)
セルロース集合体;
および該セルロース集合体上に配置されたバインダー
を含む物質であって、該バインダーは(i)硬化しておらず、(ii)少なくとも2つのメイラード反応物を含み;該物質はホルムアルデヒドを含有しない、物質。
(項目32)
アミン;
炭水化物;および
シリコン含有化合物
を含むバインダーであって、該バインダーは(i)硬化しておらず、かつ(ii)ホルムアルデヒドを含有しない、バインダー。
(項目33)
前記バインダーはアルカリ性pHを有する、項目32に記載のバインダー。
(項目34)
アミン;
炭水化物;および
腐食抑制剤
を含むバインダーであって、該バインダーは(i)硬化しておらず、かつ(ii)ホルムアルデヒドを含有しない、バインダー。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、メラノイジンを産生するための多数の具体的な反応物を示す。
【図2】図2は、還元糖とアミノ化合物とを反応させる際のメイラード反応概略図を示す。
【図3】図3は、本開示の乾燥バインダーの具体的な実施形態のFT−IRスペクトルを示す。
【図4】図4は、本開示の硬化バインダーの具体的な実施形態のFT−IRスペクトルを示す。
【図5】図5は、本開示のバインダーの具体的な実施形態で作成した繊維ガラスパイプ断熱材の650°Fでの熱面性能を示す。
【図6】図6は、本開示のバインダーの具体的な実施形態で作成した繊維ガラスパイプ断熱材の1000°Fでの熱面性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
この発明には種々の修正および代替的な形態を適用することが可能であるが、本明細書中では特定の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、この発明は、記載する特定の形態に限定されるものではなく、むしろ、発明の精神および範囲に該当する全ての修正、等価物、および代替物を包含するものであることは言うまでもない。
【0024】
本明細書中において用いるように、「ホルムアルデヒドを含有しない」という表現は、バインダーまたはバインダーを組み込んだ物質が乾燥および/または硬化すると、約1ppm未満のホルムアルデヒドを遊離することを意味する。1ppmは、ホルムアルデヒドの放出について測定したサンプルの重量を基準とする。
【0025】
硬化とは、化学変化を開始するような条件にバインダーを曝露したことを示す。それらの化学変化の例としては、バインダー成分の(i)共有結合、(ii)水素結合、およびバインダー中の重合体および/またはオリゴマーの化学的架橋結合が挙げられるがこれらに限定されない。これらの変化は、未硬化バインダーと比較して、バインダーの持続性および耐溶剤性を増強することが可能である。バインダーの硬化により熱硬化物質を形成することが可能である。さらに、硬化にはメラノイジンの生成が含まれ場合がある。それらのメラノイジンは、メラノイジン反応化合物のメイラード反応で生成することが可能である。また、未硬化バインダーと比較して、硬化バインダーは、集合体中の物質間の密着性を増加させることが可能である。硬化は、例えば、熱、電磁放射、または電子ビームによって開始することができる。
【0026】
バインダーの化学変化により水分の放出、例えば、重合および架橋結合が起こる状況では、乾燥だけで放出されるよりも多くの量の水分が放出された場合に硬化したと判定することができる。バインダーが硬化した場合と比較して乾燥時の水分放出量を測定する技術は当該分野では周知である。
【0027】
上述した段落に従えば、未硬化バインダーは硬化していないバインダーである。
【0028】
本明細書中において用いるように、「アルカリ性」という用語は、pHが約7以上である溶液を示す。例えば、そのような溶液のpHは、約10以下とすることができる。また、この溶液は、約7〜約10、約8〜約10、または約9〜約10のpHを有してもよい。
【0029】
本明細書中において用いるように、「アンモニウム」という用語は、+NH4、+NH3R1、および+NH2R1R2(ここで、R1およびR2は+NH2R1R2においてそれぞれ独立して選択され、かつR1およびR2はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールから選択される)を含むがこれらに限定されない。
【0030】
「アルキル」という用語は、任意に分岐させてもよい炭素原子の飽和一価鎖を指し;「シクロアルキル」という用語は、一部が環状をなす炭素原子の一価鎖を指し;「アルケニル」という用語は、任意に分岐させてもよい少なくとも1つの二重結合を含む炭素原子の不飽和一価鎖を指し;「シクロアルケニル」という用語は、一部が環状をなす炭素原子の不飽和一価鎖を指し;「ヘテロシクリル」という用語は、炭素およびヘテロ原子の一価鎖であって、ヘテロ原子が窒素、酸素、および硫黄から選択され、少なくとも1つのヘテロ原子を含む一部分が環状をなす一価鎖を指し;「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル等、炭素原子の芳香族単環または多環を指し;「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子ならびにピリジニル、ピリミジニル、インドリル、ベンゾオキサゾリル等の窒素、酸素、および硫黄から選択された少なくとも1つのヘテロ原子の芳香族単環または多環を指す。アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、およびヘテロシクリルの各々は、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボン酸、およびエステル、アミド、およびニトリルを含むそれらの誘導体、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルおよびジアルキルアミノ、アシルアミノ、チオ等、ならびにそれらの組み合わせ等の独立して選択された基と任意に置換されてもよいことは言うまでもない。さらに、アリールおよびヘテロアリールの各々は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルもしくはジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ等の1つ以上の独立して選択された置換基と任意に置換されてもよいことは言うまでもない。
【0031】
本明細書中において用いるように、「ポリカルボン酸」という用語は、ジカルボン、トリカルボン、テトラカルボン、ペンタカルボン、および同様の単量体ポリカルボン酸、および無水物、およびそれらの組み合わせ、ならびに高分子ポリカルボン酸、無水物、共重合体、およびそれらの組み合わせを示す。1つの局面では、上記ポリカルボン酸アンモニウム塩反応物は、そのメイラード反応の炭水化物反応物との反応に利用可能であり続ける(後述する)能力を最大化するために十分に不揮発性である。他の局面では、上記ポリカルボン酸アンモニウム塩反応物は、他の化学官能基と置換してもよい。
【0032】
具体的には、単量体ポリカルボン酸は、不飽和脂肪族ジカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、不飽和環状ジカルボン酸、飽和環状ジカルボン酸、それらのヒドロキシ置換誘導体等を含むがこれらに限定されないジカルボン酸であってもよい。または、具体的には、上記ポリカルボン酸自体が、不飽和脂肪族トリカルボン酸、飽和脂肪族トリカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、不飽和環状トリカルボン酸、飽和環状トリカルボン酸、それらのヒドロキシ置換誘導体等を含むがこれらに限定されないトリカルボン酸であってもよい。当然ながら、そのようないずれのポリカルボン酸もヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ等と任意に置換されてもよい。1つの変形例では、上記ポリカルボン酸は、飽和脂肪族トリカルボン酸、クエン酸である。他の適切なポリカルボン酸としては、アコニット酸、アジピン酸、アゼライン酸、ブタンテトラカルボン酸二水素化物、ブタントリカルボン酸、クロレンド酸、シトラコン酸、ジシクロペンタジエン−マレイン酸付加物、ジエチレントリアミン5酢酸、ジペンテンおよびマレイン酸の付加物、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、完全にマレイン酸化したロジン(fully maleated rosin)、マレイン酸化トール油脂肪酸(maleated tall−oil fatty acid)、フマル酸、グルタル酸、イソフタル酸、イタコン酸、過酸化カリウムで酸化してアルコールにし、次いでカルボン酸にしたマレイン酸化ロジン、マレイン酸、リンゴ酸、メサコン酸、コルベ−シュミット反応により二酸化炭素と反応させ3−4カルボキシル基を導入したビフェノールAまたはビスフェノールF、シュウ酸、フタル酸、セバシン酸、琥珀酸、酒石酸、テレフタル酸、テトラブロモフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸等、ならびにそれらの無水物および組み合わせを含むがこれらに限定されないものが考えられる。
【0033】
具体的には、高分子ポリカルボン酸は、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等の酸、ならびに同様の高分子ポリカルボン酸、それらの共重合体、それらの無水物、およびそれらの混合物であってもよい。市販のポリアクリル酸の例としては、AQUASET−529(Rohm&Haas,Philadelphia,PA,USA)、CRITERION2000(Kemira,Helsinki,Finland,Europe)、NF1(H.B.Fuller,St.Paul,MN,USA)、およびSOKALAN(BASF,Ludwigshafen,Germany,Europe)が挙げられる。SOKALANに関しては、これは分子量がおよそ4000のアクリル酸とマレイン酸の水溶性ポリアクリル酸共重合体である。AQUASET−529は、グリセロールと架橋結合したポリアクリル酸を含有する組成物であり、触媒として次亜リン酸ナトリウムも含有する。CRITERION2000は、ポリアクリル酸の部分塩の酸性溶液であり、およそ2000の分子量を有する。NF1に関しては、これは、カルボン酸官能価およびヒドロキシ官能価、ならびにいずれの官能価も有さない単位を含有する共重合体であり;NF1はまた、次亜リン酸ナトリウムまたは有機リン酸触媒等の連鎖移動剤も含有する。
【0034】
さらに、その開示内容を本明細書中において参考として援用する米国特許第5,318,990号、同第5,661,213号、同第6,136,916号、および同第6,331,350号に記載の組成物等、高分子ポリカルボン酸を含む組成物も本明細書中に記載のバインダーの調製に有用であると考えられる。特に、米国特許第5,318,990号および同第6,331,350では、高分子ポリカルボン酸、ポリオール、および触媒の水溶液が記載されている。
【0035】
米国特許第5,318,990号および同第6,331,350号に記載されるように、上記高分子ポリカルボン酸は、1つより多くのペンダントカルボキシ基を含有する有機重合体またはオリゴマーを含む。この高分子ポリカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、桂皮酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸等を含むが必ずしもこれらに限定されない不飽和カルボン酸から調製された単独重合体または共重合体であってもよい。あるいは、上記高分子ポリカルボン酸は、マレイン無水物、イタコン無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物等、およびそれらの混合物を含むが必ずしもこれらに限定されない不飽和無水物から調製されてもよい。これらの酸および無水物を重合させる方法は化学分野では周知である。上記高分子ポリカルボン酸は、上記不飽和カルボン酸または無水物のうちの1つ以上と、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルメチルエーテル、ビニルアセテート等を含むが必ずしもこれらに限定されない1つ以上のビニル化合物の共重合体をさらに含んでもよい。これらの共重合体を調製する方法は当該分野では周知である。上記高分子ポリカルボン酸は、ポリアクリル酸の単独重合体および共重合体を含んでもよい。この高分子ポリカルボン酸、および特にポリアクリル酸重合体の分子量は、10000未満、5000未満、または約3000以下であってもよい。例えば、この分子量は2000であってもよい。
【0036】
米国特許第5,318,990号および同第6,331,350号に記載されるように、(高分子ポリカルボン酸を含む組成物中の)ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する。このポリオールは、加熱および硬化作業時に上記組成物中の高分子ポリカルボン酸との反応に実質的に利用可能であり続けるように十分に不揮発性である必要がある。このポリオールは、エチレングリコール、グリセロール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、グルコース、レゾルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコール化尿素、1,4−シクロヘキサンジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、および例えば、ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジポアミド等のβ−ヒドロキシアルキルアミド等の特定の反応性ポリオール等、少なくとも2つのヒドロキシル基を持ち、分子量が約1000未満の化合物であってもよく、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリビニルアセテート、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の単独重合体または共重合体等、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する付加重合体であってもよい。
【0037】
米国特許第5,318,990号および同第6,331,350号に記載されるように、(高分子ポリカルボン酸を含む組成物中の)触媒は、アルカリ金属ポリリン酸塩、リン酸二水素アルカリ金属、ポリリン酸、およびアルキルホスフィン酸等の分子量が約1000未満の化合物であり得るリン含有促進剤であってもよく、リン含有基、例えば、次亜リン酸ナトリウムの存在下で形成されたアクリル酸および/またはマレイン酸の付加重合体、リン塩連鎖移動剤または停止剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーから調製された付加重合体、ならびに例えば、共重合ホスホエチルメタクリレート、および同様のホスホン酸エステル、および共重合ビニルスルホン酸モノマー、およびそれらの塩等の酸性官能モノマー残基を含有する付加重合体を有するオリゴマーまたは重合体であってもよい。上記リン含有促進剤は、高分子ポリカルボン酸およびポリオールの総重量を基準として約1〜約40重量%のレベルで用いてもよい。高分子ポリカルボン酸およびポリオールの総重量を基準として約2.5〜約10重量%のリン含有促進剤のレベルを用いてもよい。そのような触媒の例としては、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、ピロリン酸2ナトリウム、ピロリン酸4ナトリウム、トリボリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ソーダ、リン酸カリウム、ポリメタリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、およびテトラメタリン酸ナトリウム、ならびにそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0038】
本明細書中に記載のバインダーの調製に有用であると考えられる米国特許第5,661,213号および同第6,136,916号に記載の高分子ポリカルボン酸を含む組成物は、高分子ポリカルボン酸、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有するポリオール、およびリン含有促進剤の水溶液であって、カルボン酸基の等価物とヒドロキシル基の等価物の数の割合が約1:0.01〜約1:3である水溶液を含む。
【0039】
米国特許第5,661,213号および同第6,136,916号に開示されるように、上記高分子ポリカルボン酸は、少なくとも2つのカルボン酸基を含有するポリエステル、または少なくとも2つの共重合カルボン酸性官能モノマーを含有する付加重合体またはオリゴマーであってもよい。この高分子ポリカルボン酸は、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーから形成された付加重合体であることが好ましい。この付加重合体は、塩基性媒体中で可溶化されたアルカリ溶解性樹脂等の付加重合体を水媒体に溶解した形態;例えば、乳化重合分散液等の水分散液の形態;または水性懸濁液の形態であってもよい。上記付加重合体は、少なくとも2つのカルボン酸基、無水物基、またはそれらの塩を含有している必要がある。メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸、モノアルキルマレアート、およびモノアルキルフマレート等のエチレン性不飽和カルボン酸;例えば、マレイン無水物、イタコン無水物、アクリル酸無水物、およびメタクリル酸無水物等のエチレン性不飽和無水物;ならびにそれらの塩を、付加重合体の重量を基準として約1〜100重量%のレベルで用いてもよい。さらなるエチレン性不飽和モノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、およびヒドロキシプロピルメタクリレートを含むアクリル酸エステルモノマー;アクリルアミドまたは置換アクリルアミド;スチレンまたは置換スチレン;ブタジエン;ビニルアセテートまたは他のビニルエステル;アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル等を含んでもよい。上記少なくとも2つのカルボン酸基、無水物基、またはそれらの塩を含有する付加重合体は、約300〜約10,000,000の分子量を有してもよい。約1000〜約250,000の分子量を用いてもよい。上記付加重合体が、カルボン酸、無水物、またはそれらの塩を付加重合体の総重量を基準として、約5〜約30重量%の含有率で有するアルカリ溶解性樹脂である場合、約10,000〜約100,000の分子量を用いてもよい。これらの付加重合体を調整する方法は当該分野では周知である。
【0040】
米国特許第5,661,213号および同第6,136,916号に記載されるように、(高分子ポリカルボン酸を含む組成物中の)ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有し、加熱および硬化作業時に上記組成物中の高分子ポリカルボン酸との反応に実質的に利用可能であり続けるように十分に不揮発性である必要がある。このポリオールは、例えば、エチレングリコール、グリセロール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、グルコース、レゾルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコール化尿素、1,4−シクロヘキサンジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ならびに特定の反応性ポリオール、例えば、ビス−[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジポアミド、ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)]アゼラミド、ビス[N−N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)]アジポアミド、ビス[N−N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)]グルタルアミド、ビス[N−N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)]スクシンアミド、およびビス[N−メチル−N−(β−ヒドロキシエチル)]オキサミド等のβ−ヒドロキシアルキルアミド等、少なくとも2つのヒドロキシル基を持ち、分子量が約1000未満の化合物であってもよく、またはポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリビニルアセテート、ならびにヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の単独重合体または共重合体等、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する付加重合体であってもよい。
【0041】
米国特許第5,661,213号および同第6,136,916号に記載されるように、(高分子ポリカルボン酸を含む組成物中の)リン含有促進剤は、アルカリ金属次亜リン酸塩、アルカリ金属亜リン酸塩、アルカリ金属ポリリン酸塩、アルカリ金属リン酸二水素、ポリリン酸、およびアルキルホスフィン酸等の分子量が約1000未満の化合物であってもよく、または次亜リン酸ナトリウムの存在下で形成されたアクリル酸および/またはマレイン酸の付加重合体、リン塩連鎖移動剤または停止剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーから調製された付加重合体、ならびに共重合ホスホエチルメタクリレート、および同様のホスホン酸エステル、および共重合ビニルスルホン酸モノマー、およびそれらの塩等の酸性官能モノマー残基を含有する付加重合体等のリン含有基を持ったオリゴマーまたは重合体であってもよい。上記リン含有促進剤は、多価酸およびポリオールの総重量を基準として、約1〜約40重量%のレベルで用いてもよい。多価酸およびポリオールの総重量を基準として約2.5〜約10重量%のリン含有促進剤のレベルを用いてもよい。
【0042】
本明細書中において用いるように、「アミン塩基」という用語は、本明細書中において定義するように、アンモニア、1級アミン、すなわち、NH2R1、および2級アミン、すなわち、NHR1R2(ここで、R1およびR2はNHR1R2においてそれぞれ独立して選択され、R1およびR2はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールから選択される)を含むがこれらに限定されない。具体的には、このアミン塩基は、熱硬化中に熱硬化バインダーの形成を促進するために十分な条件下で実質的に揮発性であっても、実質的に不揮発性であってもよい。具体的には、上記アミン塩基は、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、およびエチルプロピルアミン等、実質的に揮発性の塩基であってもよい。あるいは、上記アミン塩基は、例えば、アニリン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、およびパラアミノフェノール等、実質的に不揮発性の塩基であってもよい。
【0043】
本明細書中において用いるように、「還元糖」は、アルデヒド基を含有する1つ以上の糖か、または異性化、すなわち、互変異性化してメイラード反応条件下でアミノ基と反応し、例えば、Cu+2で酸化しカルボン酸を得ることが可能なアルデヒド基を含有し得る1つ以上の糖を示す。また、当然のことながら、そのような炭水化物反応物のいずれもが、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ等と任意に置換されてもよい。さらに、当然のことながら、そのような炭水化物反応物のいずれにおいても、1つ以上のキラル中心が存在し、各キラル中心に存在し得る光学異性体の両方が本明細書中に記載の発明に含まれることが企図される。さらに、ラセミ混合物、またはそのようなあらゆる炭水化物反応物の各種光学異性体ならびにそれらの各種幾何異性体の他のジアステレオマー混合物を含む各種混合物を本明細書中に記載の1つ以上の実施形態において用いてもよいことは言うまでもない。
【0044】
本明細書中において用いるように、「繊維ガラス」という用語は、高温に対抗するに適した耐熱性繊維を示す。そのような繊維の例としては、鉱物繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維、特定のポリエステル繊維、レーヨン繊維、およびガラスファイバーが挙げられるがこれらに限定されない。具体的には、そのような繊維は、約120℃よりも高い温度に曝露されても実質的に影響を受けない。
【0045】
図1は、メイラード反応のための反応物の例を示す。アミン反応物の例としては、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、高分子ポリカルボン酸のアンモニウム塩、および単量体ポリカルボン酸のアンモニウム塩が挙げられる。図示されるように、「アンモニウム」は、[+NH4]x、[+NH3R1]x、および[+NH2R1R2]x(ここで、xは少なくとも約1である)とすることができる。+NH2R1R2に関しては、R1およびR2は、それぞれ独立して選択される。またさらには、R1およびR2は、上述したように、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールから選択される。図1はまた、メラノイジンを産生するための還元糖反応物を例示しており、それらは、アルドースまたはケトースの形態の単糖類、多糖類、またはそれらの組み合わせを含む。メラノイジンを産生するための具体的な非炭水化物カルボニル反応物も図1に示されており、各種アルデヒド類、例えば、ピルビンアルデヒドおよびフルフラール、ならびにアスコルビン酸およびキノン等の化合物が含まれる。
【0046】
図2は、メラノイジンの産生に至るメイラード反応の概略図を示す。最初の段階では、メイラード反応には炭水化物反応物、例えば、還元糖が伴う(なお、この炭水化物反応物はメイラード反応条件下で還元糖を産生可能な物質から得てもよい)。この反応はまた、炭水化物反応物(例えば、還元糖)とアミン反応物、すなわち、アミノ基を有する化合物の縮合を伴う。換言すれば、炭水化物反応物およびアミン反応物がメイラード反応のためのメラノイジン反応物である。これら2つの構成物質の縮合によりN置換グリコシルアミンが産生される。メイラード反応のより詳細な説明については、その開示内容を本明細書中において参考として援用するHodge,J.E.Chemistry of Browning Reactions in Model Systems J.Agric.Food Chem.1953,1,928−943を参照されたい。メイラード反応において遊離アミノ基を有する化合物は、アミノ酸の形態で存在してもよい。この遊離アミノ基は、それらが、例えば、リジン残基のε−アミノ基および/または末端アミノ酸のα−アミノ基の形態で利用可能なタンパク質から得ることもできる。
【0047】
本明細書中に記載のメイラード反応を行う他の局面では、まず、上述した(バインダーでもある)メイラード反応物水溶液がアルカリ性のpHを有する。しかしながら、この溶液が非結合または疎結合集合体に塗布されて硬化が始まると、pHが低下する(すなわち、バインダーが酸性になる)。物質を作成する際、バインダーが硬化した後(すなわち、バインダーが酸性であるとき)と比較して、バインダーと、作成に用いる機械の構成要素との接触量が硬化前(すなわち、バインダー溶液がアルカリ性であるとき)の方がより多いことは言うまでもない。アルカリ性組成物は、酸性組成物よりも腐食性が低い。従って、作成過程での腐食性が低減する。
【0048】
当然のことながら、上述したように、メイラード反応物溶液のpHがアルカリ性であるため、本明細書中に記載のメイラード反応物水溶液を用いることにより、繊維ガラスを作成するために用いられる機械が酸性溶液に曝露されることはほとんどない。さらに、作成中に酸性条件が発達するのは、バインダーがガラスファイバーに適用されるときだけである。バインダーがガラスファイバーに適用されると、バインダーおよびバインダーを組み込んだ物質と機械の構成要素とが接触する機会は、バインダーをガラスファイバーに適用する前と比較して相対的に少ない。従って、繊維ガラスの作成(および他の物質の作成)の腐食性が低減する。
【0049】
理論にとらわれなければ、本明細書中に記載のように実質的に熱硬化中に発生し、各種構造の褐色の窒素重合体および共重合体メラノイジンを産生するメイラード反応のポリカルボン酸アンモニウム塩と還元糖反応物の共有反応では、図2に示すように、最初にアンモニアと還元糖炭水化物反応物のアルデヒド部分のメイラード反応を伴うことでN置換グリコシルアミンが得られると考えられる。アンモニアおよび還元糖炭水化物反応物の組み合わせが潜在的酸触媒として機能する状態で、そのようにアンモニアを消費することにより、pHが低減すると予期されるが、その低減がエステル化過程および/またはポリカルボン酸の脱水を促進して、対応する無水物誘導体を得ると思われる。pH≦7では、N置換グリコシルアミンのアマドリ転位産物、すなわち、1−アミノ−1−デオキシ−2−ケトースが、主に1,2−エノール化し、メラノイジンの産生の前兆として、例えば、ペントースが関与する場合にはフルフラールが形成され、例えば、ヘキソースが関与する場合には、ヒドロキシメチルフルフラールが形成されると予期される。メラノイジンの産生と同時に、同時期に、または連続して、メラノイジン、ポリカルボン酸および/またはそれが対応する無水物誘導体、ならびに残留炭水化物が関与するエステル化過程が発生し、それらの過程が大規模な架橋結合に繋がることがある。重合する可能性がある共役二重結合が生じる糖の脱水反応に伴って、炭素−炭素単結合ネットワークにより相互結合されたポリエステル付加物からなる耐水性熱硬化バインダーが産生される。上記反応のシナリオのとおり、本明細書中に記載の硬化バインダーのFT−IRスペクトルでは1734cm−1の近くで強力な吸収が生じるが、この吸収は、エステルカルボニルC−O振動について予期される1750〜1730cm−1の範囲内である。上述のスペクトルは図4に示している。
【0050】
以下の議論は、(i)メイラード反応に使用可能な炭水化物およびアミン反応物の例、および(ii)これらの反応物をどのように組み合わせることができるかに関する。まず、当然のことながら、メイラード反応において反応物として作用する1級または2級アミノ基を有するいずれの炭水化物および/または化合物も本発明のバインダーにおいて利用できる。そのような化合物は、当業者であれば、本明細書中に開示するガイドラインに沿って特定し利用することができる。
【0051】
例示的な反応物に関しては、当然のことながら、アミン反応物として使用するポリカルボン酸のアンモニウム塩はメイラード反応における有効な反応物である。ポリカルボン酸のアンモニウム塩は、酸性基をアミン塩基で中和してポリカルボン酸アンモニウム塩基を産生することにより生成することができる。完全な中和、すなわち、等価物を基準として算出して約100%の中和により、バインダー形成前にポリカルボン酸中の酸性基を滴定または部分的に中和する必要をなくしてもよい。しかしながら、完全中和未満では、バインダーの形成が抑制されないことが予期される。なお、ポリカルボン酸の酸性基の中和は、ポリカルボン酸と炭水化物の混合前または後のいずれかに実施可能であることに留意されたい。
【0052】
炭水化物反応物に関しては、1つ以上の還元糖を有する1つ以上の反応物を含んでもよい。1つの局面では、いずれの炭水化物反応物も、そのポリカルボン酸アンモニウム塩反応物との反応に利用可能であり続けるという能力を最大化するために十分に不揮発性でなければならない。この炭水化物反応物は、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、もしくはヘプトースを含むアルドースまたはケトースの形態の単糖類;または多糖類;またはそれらの組み合わせであってもよい。炭水化物反応物は還元糖であってもよく、熱硬化条件下においてそのままの状態で1つ以上の還元糖をもたらすものであってもよい。例えば、トリオースが炭水化物反応物として作用する場合、または他の還元糖および/または多糖類と組み合わせて用いられる場合、それぞれグリセルアルデヒドおよびジヒドロキシアセトン等のアルドトリオース糖またはケトトリオース糖を利用してもよい。テトロースが炭水化物反応物として作用する場合、または他の還元糖および/または多糖類と組み合わせて用いられる場合、エリトロースおよびトレオース等のアルドテトロース糖;ならびにエリトルロース等のケトテトロース糖を利用してもよい。ペントースが炭水化物反応物として作用する場合、または他の還元糖および/または多糖類と組み合わせて用いられる場合、リボース、アラビノース、キシロース、およびリキソース等のアルドペントース糖;ならびにリブロース、アラブロース、キシルロース、およびリキシロース等のケトペントース糖を利用してもよい。ヘキソースが炭水化物反応物として作用する場合、または他の還元糖および/または多糖類と組み合わせて用いられる場合、グルコース(すなわち、デキストロース)、マンノース、ガラクトース、アロース、アルトロース、タロース、グロース、およびイドース等のアルドヘキソース糖;ならびにフルクトース、プシコース、ソルボースおよびタガトース等のケトヘキソース糖を利用してもよい。ヘプトースが炭水化物反応物として作用する場合、または他の還元糖および/または多糖類と組み合わせて用いられる場合、セドヘプツトース等のケトヘプトース糖を利用してもよい。そのような炭水化物反応物の天然で発生することが知られていない他の立体異性体も、本明細書中に記載されるバインダー組成物の調製に有用であると考えられる。多糖類が炭水化物として作用する場合、または単糖類と組み合わせて用いられる場合、スクロース、ラクトース、マルトース、スターチ、およびセルロースを利用してもよい。
【0053】
さらに、メイラード反応における炭水化物反応物を非炭水化物ポリヒドロキシ反応物と組み合わせて用いてもよい。炭水化物反応物と組み合わせて用いることができる非炭水化物ポリヒドロキシ反応物の例としては、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリビニルアセテート、完全に加水分解されたポリビニルアセテート、およびそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。1つの局面では、上記非炭水化物ポリヒドロキシ反応物は、その単量体または高分子ポリカルボン酸反応物との反応に利用可能であり続けるという能力を最大化するために十分に不揮発性である。当然のことながら、上記非炭水化物ポリヒドロキシ反応物の疎水性が本明細書中に記載のとおり調製されるバインダーの物理的特性を決定するファクターであってもよい。
【0054】
部分的に加水分解されたポリビニルアセテートが非炭水化物ポリヒドロキシ反応物として作用する場合、87〜89%加水分解されたポリビニルアセテート等の市販の化合物(例えば、DuPont ELVANOL51−05等)を利用してもよい。DuPont
ELVANOL51−05は、分子量が約22,000〜26,000Daであり、粘度が約5.0〜6.0センチポアズである。本明細書中に記載のバインダー組成物の調製に有用であると思われる他の部分的に加水分解されたポリビニルアセテートは、例えば、DuPont ELVANOL51−04、ELVANOL51−08、ELVANOL50−14、ELVANOL52−22、ELVANOL50−26、ELVANOL50−42等、ELVANOL51−05と分子量および粘度が異なる87〜89%加水分解されたポリビニルアセテート;ならびにDuPont ELVANOL51−03(86〜89%の加水分解)、ELVANOL70−14(95.0〜97.0%の加水分解)、ELVANOL70−27(95.5〜96.5%の加水分解)、ELVANOL60−30(90〜93%の加水分解)等、ELVANOL51−05と分子量、粘度、および/または加水分解度が異なる部分的に加水分解されたポリビニルアセテートを含むがこれらに限定されない。本明細書中に記載のバインダー組成物の調製に有用であると考えられる他の部分的に加水分解されたポリビニルアセテートは、Clariant MOWIOL15−79、MOWIOL3−83、MOWIOL4−88、MOWIOL5−88、MOWIOL8−88、MOWIOL18−88、MOWIOL23−88、MOWIOL26−88、MOWIOL40−88、MOWIOL47−88、およびMOWIOL30−92、ならびにCelanese CELVOL203、CELVOL205、CELVOL502、CELVOL504、CELVOL513、CELVOL523、CELVOL523TV、CELVOL530、CELVOL540、CELVOL540TV、CELVOL418、CELVOL425、およびCELVOL443を含むがこれらに限定されない。また、有用であると考えられるものとしては、他の民間製造業者から入手可能な同様または類似の部分的に加水分解されたポリビニルアセテートがある。
【0055】
完全に加水分解されたポリビニルアセテートが非炭水化物ポリヒドロキシ反応物として作用する場合、分子量が約27,000DaであるClariant MOWIOL4−98を利用してもよい。有用であると考えられる他の完全に加水分解されたポリビニルアセテートは、DuPont ELVANOL70−03(98.0〜98.8%の加水分解)、ELVANOL70−04(98.0〜98.8%の加水分解)、ELVANOL70−06(98.5〜99.2%の加水分解)、ELVANOL90−50(99.0〜99.8%の加水分解)、ELVANOL70−20(98.5〜99.2%の加水分解)、ELVANOL70−30(98.5〜99.2%の加水分解)、ELVANOL71−30(99.0〜99.8%の加水分解)、ELVANOL70−62(98.4〜99.8%の加水分解)、ELVANOL70−63(98.5〜99.2%の加水分解)、ELVANOL70−75(98.5〜99.2%の加水分解)、Clariant MOWIOL3−98、MOWIOL6−98、MOWIOL10−98、MOWIOL20−98、MOWIOL56−98、MOWIOL28−99、ならびにCelanese CELVOL103、CELVOL107、CELVOL305、CELVOL310、CELVOL325、CELVOL325LA、およびCELVOL350に加えて、他の民間製造業者からの同様または類似の完全に加水分解されたポリビニルアセテートを含むがこれらに限定されない。
【0056】
上記のメイラード反応物を組み合わせて炭水化物反応物およびアミン反応物を含む水性組成物を作ってもよい。これらの水性バインダーは未硬化バインダーの一例である。下記で議論するように、これらの水性組成物を本発明のバインダーとして用いることができる。これらのバインダーは、ホルムアルデヒドを含有しない硬化可能なアルカリ性の水性バインダー組成物である。さらに、上記したように、メイラード反応物の炭水化物反応物を、非炭水化物ポリヒドロキシ反応物と組み合わせて用いてもよい。従って、炭水化物反応物と呼ぶ場合には、非炭水化物ポリヒドロキシ反応物と組み合わせて使用可能であることは言うまでもない。
【0057】
1つの具体的な実施形態では、上記メイラード反応物の水溶液は、(i)1つ以上のポリカルボン酸反応物のアンモニウム塩、および(ii)還元糖を有する1つ以上の炭水化物反応物を含んでもよい。この溶液のpHは、結合すべき物質と接触させる前には約7以上とすることができる。また、この溶液は、pHを約10以下とすることができる。ポリカルボン酸反応物と炭水化物反応物のモル数の比は、約1:4〜約1:15の範囲とすることができる。一例としては、バインダー組成物におけるポリカルボン酸反応物と炭水化物反応物のモル数の比は約1:5である。他の例では、ポリカルボン酸反応物と炭水化物反応物のモル数の比は約1:6である。さらに他の例では、ポリカルボン酸反応物と炭水化物反応物のモル数の比は約1:7である。
【0058】
上述のとおり、上記水性バインダー組成物は、(i)1つ以上のポリカルボン酸反応物のアンモニウム塩、および(ii)還元糖を有する1つ以上の炭水化物反応物を含む。当然のことながら、単量体または高分子ポリカルボン酸のアンモニウム塩をアミン反応物として用いる場合、アンモニウムイオンの質量等価物は、ポリカルボン酸上に存在する酸性塩基の質量等価物と同じであってもなくてもよい。1つの具体的な例では、トリカルボン酸をポリカルボン酸反応物として用いる場合、アンモニウム塩は、一塩基、二塩基、または三塩基であってもよい。よって、アンモニウムイオンの質量等価物は、ポリカルボン酸中に存在する酸性塩基の質量等価物とほぼ同量以下の量で存在してもよい。従って、ポリカルボン酸反応物がジカルボン酸である場合、上記塩を一塩基または二塩基とすることができる。さらに、アンモニウムイオンの質量等価物は、高分子ポリカルボン酸中等に存在する酸性塩基の質量等価物とほぼ同量以下の量で存在してもよい。ジカルボン酸の一塩基性塩を用いる場合、もしくはトリカルボン酸の二塩基性塩を用いる場合、またはアンモニウムイオンの質量等価物が高分子ポリカルボン酸中に存在する酸性塩基の質量等価物より少ない量で存在する場合、バインダー組成物のpHをアルカリ性にするような調節を必要とすることがある。
【0059】
未硬化のホルムアルデヒドを含有しない熱硬化可能なアルカリ性の水性バインダー組成物を用いて多数の異なる物質を作成することができる。特に、これらのバインダーを用いることにより、結合すべき物質とバインダーとを接触させることでその非結合体または疎結合体に凝集を生じるかまたは促進することができる。任意の数の周知技術を採用することにより、結合すべき物質と水性バインダーを接触させることができる。例えば、ロールコーティング装置を介して、(例えば、ガラスファイバーの結合時に)上記水性バインダーを上に吹き付けたり、塗布することができる。
【0060】
これらの水性バインダーは、繊維ガラス断熱製品の製造中にガラスファイバーマットに塗布する(例えば、マット上に吹き付ける)ことができる。水性バインダーがガラスファイバーと接触すると、ガラスファイバーの残留熱(ガラスファイバーは溶融ガラスで構成されるため残留熱を有することに留意されたい)および繊維マットを通過した空気流がバインダーの水分を蒸発させる(すなわち、除去する)。水分を除去することで、繊維上に残ったバインダーの成分が粘着性または半粘着性のハイソリッド液コーティングとして残る。この粘着性または半粘着性ハイソリッド液コーティングは、バインダーとして機能する。この時、マットは硬化していない。換言すれば、未硬化バインダーがマット中のガラスファイバーを結合する機能をする。
【0061】
さらに、上述した水性バインダーは硬化可能であることは言うまでもない。例えば、上述した水性バインダーのいずれかを結合すべき物質上に塗布し(例えば、吹き付け)、加熱することができる。例えば、繊維ガラス断熱製品を作る場合、水性バインダーをマットに適用した後、バインダーでコーティングしたマットを硬化炉に移す。硬化炉内でマットを加熱し(例えば、約300°F〜約600°F)、バインダーを硬化する。この硬化バインダーは、マットのガラスファイバーを一体的にくっつけるホルムアルデヒドを含有しない耐水性熱硬化バインダーである。なお、乾燥および熱硬化は連続して、同時期に、または同時に行なってもよいことに留意されたい。
【0062】
硬化時に不水溶性になるバインダーの作製に関しては、当然のことながら、ポリカルボン酸反応物上に存在する酸性塩基の質量等価物と炭水化物反応物上に存在するヒドロキシル基の質量等価物の数の比は、約0.04:1〜約0.15:1の範囲であってもよい。硬化後、これらの調合物は耐水性熱硬化バインダーとなる。1つの変形例では、炭水化物反応物上に存在するヒドロキシル基の質量等価物の数は、ポリカルボン酸反応物上に存在する酸性塩基の質量等価物の数の約25倍多い。他の変形例では、炭水化物反応物上に存在するヒドロキシル基の質量等価物の数は、ポリカルボン酸反応物上に存在する酸性塩基の質量等価物の数の約10倍多い。さらに他の変形例では、炭水化物反応物上に存在するヒドロキシル基の質量等価物の数は、ポリカルボン酸反応物上に存在する酸性塩基の質量等価物の数の約6倍多い。
【0063】
この発明の他の実施形態では、すでに硬化したバインダーを結合すべき物質上に塗布することができる。上記したように、硬化バインダーの多くは、典型的には、不水溶性メラノイジンを含有する。従って、これらのバインダーも耐水性熱硬化バインダーとなる。
【0064】
下記で議論するように、各種添加物をバインダー組成物に組み込むことができる。それらの添加物は、本発明のバインダーにさらなる所望の特徴を与える。例えば、バインダーは、シリコン含有カップリング剤を含んでもよい。多くのシリコン含有カップリング剤がDow−Corning Corporation、Petrarch Systems、およびGeneral Electric Companyにより市販されている。具体的には、シリコン含有カップリング剤は、各々がハロゲン、アルコキシ、アミノ等と任意で置換され得るシリルエーテルおよびアルキルシリルエーテル等の化合物を含む。1つの変形例では、上記シリコン含有化合物は、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(General Electric Silicones,SILQUEST A−1101;Wilton,CT;USA)等のアミノ置換シランである。他の変形例では、上記シリコン含有化合物は、例えば、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(Dow Z−6020;Dow Chemical,Midland,MI;USA)等のアミノ置換シランである。他の変形例では、上記シリコン含有化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(General Electric Silicones,SILQUEST A−187)である。さらに他の変形例では、上記シリコン含有化合物は、n−プロピルアミンシラン(Creanova(旧HuIs America)HYDROSIL 2627;Creanova;Somerset,N.J.;U.S.A.)である。
【0065】
上記シリコン含有カップリング剤は、典型的には、溶解した固形バインダーを基準として約0.1〜約1重量パーセント(すなわち、水溶液に加えられた固体の重量を基準として約0.1〜約1パーセント)の範囲でバインダー中に存在する。1つの用途では、これらのシリコン含有化合物の1つ以上を未硬化の水性バインダーに加えることができる。そして、バインダーが結合すべき物質に適用される。その後、所望であれば、バインダーを硬化してもよい。これらのシリコン含有化合物は、バインダーが塗布されたガラスファイバー等の物質に対してバインダーが付着する能力を強化する。バインダーの物体に付着する能力を強化することにより、例えば、非結合または疎結合物質に凝集を生じるかまたは促進する能力が改善される。
【0066】
シリコン含有カップリング剤を含むバインダーは、アミン塩基ですでに中和されたまたはそのままの状態で中和された1つ以上のポリカルボン酸反応物の約10〜約50重量パーセント水溶液を、還元糖を有する1つ以上の炭水化物反応物の約10〜50重量パーセント水溶液および有効量のシリコン含有カップリング剤と混合することにより調製することができる。1つの変形例では、1つ以上のポリカルボン酸反応物および1つ以上の炭水化物反応物(後者は還元糖を有する)を固体として組み合わせて水と混合してから、その混合物をアミン塩基水溶液(1つ以上のポリカルボン酸反応物を中和するため)およびシリコン含有カップリング剤で処理し、各ポリカルボン酸反応物および各炭水化物反応物中において10〜50重量パーセントの水溶液を生成してもよい。
【0067】
他の具体的な実施形態では、本発明のバインダーは、1つ以上の腐食抑制剤を含んでもよい。それらの腐食抑制剤は、酸によって引き起こされる化学分解による金属等の物質の摩滅または磨耗を防止または抑制する。腐食抑制剤が本発明のバインダーに含まれる場合、このバインダーの腐食性は抑制剤が存在しないバインダーの腐食性と比較して低減する。1つの実施形態では、それらの腐食抑制剤を利用して本明細書中に記載のガラスファイバー含有組成物の腐食性を低減することができる。具体的には、腐食抑制剤は、以下の1つ以上を含む:脱塵油、またはリン酸モノアンモニウム、メタケイ酸ナトリウム五水和物、メラミン、シュウ酸スズ(II)、および/またはメチル水素シリコーン乳液。本発明のバインダーに含まれる場合、腐食抑制剤は、典型的には、溶解した固形バインダーを基準として、約0.5〜約2重量パーセントの範囲でバインダー中に存在する。
【0068】
当業者は、開示したガイドラインに従って、水性バインダーの反応物濃度を変更し、多様なバインダー組成物を産生することができる。特に、バインダー組成物水溶液をアルカリ性のpHを有するように調合することができる。例えば、約7以上〜約10以下の範囲のpH。操作できるバインダー反応物の例としては、(i)ポリカルボン酸反応物、(ii)アミン塩基、(iii)炭水化物反応物、(iv)シリコン含有カップリング剤、および(v)腐食抑制化合物が挙げられる。本発明の水性バインダー(例えば未硬化バインダー)のpHをアルカリ性の範囲内にすることにより、製造処理(例えば、繊維ガラスの製造)において用いられる機械等、バインダーが接触する物質の腐食が抑制される。なお、本発明のバインダーと比較した場合、酸性バインダーの腐食性に特にその傾向が強いことに留意されたい。従って、機械類の「寿命」が延びる一方で、それら機械の維持費が減少する。さらに、本発明のバインダーとともに、酸性バインダーと接触するステンレスの構成要素等の相対的に耐腐食性を有する機械の構成要素を利用する必要はなく、標準的な設備を用いることができる。それゆえ、本明細書中に記載するバインダーは、結合物質の製造費を低減する。
【0069】
以下の例では、特定の実施形態をさらに詳細に示す。これらの例は、例示目的のためだけに示されるものであり、発明または発明概念を特定の物理構成に限定するものでは決してない。例えば、実施例1においてクエン酸トリアンモニウムおよびデキストロース一水和物各々の25%(重量パーセント)水溶液を混合して水性バインダーを調製するが、本明細書中に記載の各実施形態の変形例では、ポリカルボン酸アンモニウム塩反応物水溶液の重量パーセント、還元糖炭水化物反応物水溶液の重量パーセントを、記載の発明の性質に影響を与えることなく変更可能なことは言うまでもない。例えば、重量パーセントが約10〜50重量パーセントの範囲内のポリカルボン酸アンモニウム塩反応物および還元糖炭水化物反応物の水溶液を混合する。さらに、実施例8〜12ではクエン酸トリアンモニウムおよびデキストロース一水和物溶解固体の10〜50%(重量パーセント)水溶液を用いてバインダー/ガラスファイバー組成物を調製したが、ポリカルボン酸アンモニウム塩反応物含有水溶液/還元糖炭水化物反応物含有水溶液の重量パーセントを、記載の発明の性質に影響を与えることなく変更可能であることは言うまでもない。例えば、重量パーセントが約10〜50重量パーセントの範囲外にあるポリカルボン酸アンモニウム塩反応物および還元糖炭水化物反応物を含む水溶液を調製する。また、以下の例では、ポリカルボン酸のアンモニウム(すなわち、+NH4)塩がポリカルボン酸アンモニウム塩反応物として含まれるが、記載の発明の性質に影響を与えることなく、ポリカルボン酸の1級アミン塩または2級アミン塩を含むような代替的なアミン反応物を使用可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0070】
実施例1
水性クエン酸トリアンモニウム−デキストロースバインダーの調製
水性クエン酸トリアンモニウム−デキストロースバインダーを以下の手順に従って調製した:クエン酸トリアンモニウム(クエン酸81.9g、水203.7g、および19%パーセントアンモニア溶液114.4g)およびデキストロース一水和物(水150.0g中にデキストロース一水和物50.0g)の水溶液(25%)を、室温にて以下の容積割合1:24、1:12、1:8、1:6、1:5、1:4、および1:3(ここで、クエン酸トリアンモニウムの相対容積を「1」とする)で組み合わせた。例えば、10mLの水性クエン酸トリアンモニウムと50mLの水性デキストロース一水和物とを混合して「1:5」溶液を得た(ここで、クエン酸トリアンモニウムとデキストロース一水和物の質量比は約1:5、クエン酸トリアンモニウムとデキストロース一水和物のモル比は約1:6、クエン酸トリアンモニウム上に存在する酸性塩基の質量等価物とデキストロース一水和物上に存在するヒドロキシル基の質量等価物の数の比は約0.10:1である)。この結果得られた溶液を室温で数分間かき混ぜたが、この時に、実施例2に示すように、2gのサンプルを取り出して熱硬化させた。
【0071】
実施例2
水性クエン酸トリアンモニウム−デキストロースバインダーからの硬化クエン酸トリアンモニウム−デキストロースバインダーサンプルの調製
実施例1で調製した各バインダーの2gのサンプルを3つの個別の1gアルミニウム製ベークアウトパンの各々に入れた。次いで、各バインダーを、予熱した温度調節付対流オーブンにおいて以下の3つの従来条件:400°Fで15分間、350°Fで30分間、および300°Fで30分間焼出/硬化し、対応する硬化バインダーサンプルを産生した。
【0072】
実施例3
水性クエン酸トリアンモニウム−デキストロースバインダーから産生した硬化クエン酸トリアンモニウム−デキストロースバインダーサンプルの試験/評価
実施例2で調製した各硬化クエン酸トリアンモニウム−デキストロースバインダーサンプルの湿潤強度を、アルミニウム製ベークアウトパンに水を加えてから室温にした後、硬化バインダーサンプルが完全な状態を維持し溶解していない状態で判定した。湿潤強度は、溶解(湿潤強度なし)、部分的溶解(低湿潤強度)、軟化(中湿潤強度)、または影響なし(高湿潤強度、不水溶性)で示した。硬化クエン酸アンモニウム−デキストロースバインダーサンプルと接触した水の色も判定した。下記の表1は、実施例1に従って調製したクエン酸トリアンモニウム−デキストロースバインダーの具体例、実施例2に従った硬化条件、実施例3に従った試験および評価結果を示す。
【0073】
実施例4
硬化クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーサンプルの元素分析
実施例1に記載のとおり調製し、下記のとおり硬化させた15%クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーの5gのサンプルであって、その0.75gの硬化サンプルが約1:6のモル比でクエン酸トリアンモニウムおよびデキストロース一水和物を含んだ、サンプルに、炭素、水素、および窒素(すなわち、C、H、N)についての元素分析を行なった。バインダーサンプルを以下の温度および時間に応じて硬化した:300°Fで1時間;350°Fで0.5時間;および400°Fで0.33時間。Knoxville,TNのGalbraith Laboratories,Inc.で元素分析を行なった。表2に示すように、元素分析により、300°F〜350°Fの範囲ではC:N比が温度上昇に応じて上昇することが明らかになったが、これらの結果は調製したメラノイジン含有バインダーと一致している。さらに、温度上昇に応じたC:N比の上昇も表2に示しているが、これらの結果は、バインダー硬化時に発生するメラノイジンの形成時に発生することが分かっている過程である脱水と一致している。
【0074】
実施例5
ガラスビーズシェルボーン(Glass Bead Shell Bones)、ガラスファイバー含有マット、および木質繊維板組成物の構築に用いられるアンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダーの調製
ガラスビーズシェルボーンおよびガラスファイバー含有マットの構築に用いられたバインダーである水性クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーを以下の基本手順に従って調製した:880gの蒸留水を加えた1ガロン反応槽内で粉末デキストロース一水和物(915g)および粉末無水クエン酸(152.5g)を組み合わせた。この混合物に265gの19%アンモニア水溶液を撹拌しながら加え、数分間撹拌を継続して固体を完全に溶解させた。この結果得られた溶液に3.3gのSILQUEST
A−1101シランを加えてpHが〜8から9の溶液(pH試験紙を使用)を産生したが、この溶液はおよそ50%(溶液の総重量におけるパーセンテージ)の溶解デキストロース一水和物およびクエン酸アンモニウム固体を含有しており;この溶液の2gのサンプルは、400°Fで30分間熱硬化した際に30%の固体をもたらした(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーにSILQUEST A−1101以外のシランが含まれる場合、SILQUEST A−187シラン、HYDROSIL 2627シラン、またはZ−6020シランで置換した。クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーに添加物を含めてバインダーの変形例を産生する場合、基準となる溶液を300gアリコートで数本のボトルに分けてから個別に添加物を与えた。
【0075】
真空乾燥した30%(溶解したバインダー固体)バインダーの10gのサンプルから顕微鏡薄膜として得た、乾燥(未硬化)クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーのFT−IRスペクトルを図3に示す。硬化後の30%バインダー(溶解したバインダー固体)の10gのサンプルから顕微鏡薄膜として得た、硬化クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)メイラードバインダーのFT−IRスペクトルを図4に示す。
【0076】
クエン酸以外のポリカルボン酸、デキストロース以外の糖、および/または添加物を用いて水性アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダーの変形例を調製し、上述したものと同じ基本手順を用いて水性クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーを調製した。アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダーの変形例に対して、必要に応じて調節を行ない、クエン酸の代わりに、例えば、ジカルボン酸または高分子ポリカルボン酸、またはデキストロースの代わりに、例えば、トリオースを含めることを容易にしたり、または、例えば、1つ以上の添加物を含めることを容易にした。このような調節には、例えば、アンモニウム塩の生成に必要なアンモニア水溶液の容積調節、アンモニウムポリカルボキシレートと糖を所望のモル比にするために必要な反応物のグラム量調節、および/または所望の重量パーセントで添加物を含むことが含まれる。
【0077】
実施例6
アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダーで調製したガラスビーズシェルボーン組成物の調製/風化/試験
乾燥および「風化」引張強度について評価した際、所与のバインダーで調製したガラスビーズ含有シェルボーン組成物は、その特定のバインダーで調製した繊維ガラス断熱材の適切な引張強度および適切な持続性をそれぞれ示す。予想持続性はシェルボーンの風化引張強度対乾燥引張強度の比に基づく。シェルボーンの調製、風化および試験は以下のとおりに行った:
シェルボーンの調製手順:
シェルボーンモールド(Dietert Foundry Testing Equipment;Heateded Shell Curing Accessory,Model 366、およびShell Mold Accessory)を所望の温度(概ね425°F)に設定し、少なくとも1時間過熱した。シェルボーンモールドを加熱している間、およそ100gの水性アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダー(バインダー固体中で概ね30%)を実施例5に記載のとおりに調製した。大型のガラスビーカーを用いて、727.5gのガラスビーズ(Potters Industries,inc.のQuality Ballotini Impact Beads,Spec.AD,US Sieve 70−140,106−212 micron−#7)の重量差を測定した。清潔かつ乾燥したミキシングボウルにガラスビーズを入れ、そのボウルを電動ミキサースタンドに載せた。およそ75gの水性アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダーが得られ、次いで、そのバインダーをミキシングボウル内のガラスビーズにゆっくりと注いだ。次いで、電動ミキサーの電源を入れ、ガラスビーズ/アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダー混合物を1分間撹拌した。大型のへらを用いて、泡立て器(ミキサー)の側面を擦ってバインダーの固まりをなくすとともに、ガラスビーズがあるボウルの底のへりも擦った。次いで、再度ミキサーの電源をさらに1分間入れて、泡立て器(ミキサー)を装置から外した後、ガラスビーズ/アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダー混合物が入ったミキシングボウルを取り外した。大型のへらを用いて、泡立て器(ミキサー)に付着したバインダーおよびガラスビーズをできる限り少なくしてから撹拌してミキシングボウル内にガラスビーズ/アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダー混合物を得た。次いで、ボウルの側面を擦って側面に溜まった残りのバインダーを混合した。この時点で、ガラスビーズ/アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダー混合物をシェルボーンモールドで成形する準備ができた。
【0078】
下側モールド取付盤内でのシェルボーンモールドのスライド部の位置合わせを確認した。次いで、大型のへらを用いて、シェルボーンモールド内の3つの型穴にガラスビーズ/アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダー混合物を迅速に加えた。各穴の混合物の表面を平坦にする一方、余分な混合物を擦り取り、シェルボーンに対する表面領域を均一にした。いずれかの穴に不均一部分またはギャップが存在する場合には、ガラスビーズ/アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダー混合物をさらに充填して平坦にした。ガラスビーズ/アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダー混合物をシェルボーンの穴に入れ、混合物を熱に暴露すると、硬化が始まった。操作時間は試験結果に影響する可能性があり、例えば、異なる方法で硬化された2つの層を有するシェルボーンが産生される可能性があるため、シェルボーンを連続して素早く調製した。シェルボーンモールドを充填した状態で、上側取付盤を下側取付盤上に迅速に置いた。同時に、またはすぐ直後に、ストップウォッチを用いて硬化時間の測定を開始したが、この硬化時の下側取付盤の温度は約400°F〜約430°Fの範囲であり、上側取付盤の温度は約440°F〜約470°Fの範囲であった。7分間経過した後、上側取付盤を取り外し、スライド部を引き出して3つのシェルボーン全てを取り出した。次いで、その新たに作ったシェルボーンをシェルボーンモールド取付盤に隣接するワイヤーラック上に置き、室温まで冷却した。その後、各シェルボーンにラベルを付して、それぞれ適切なラベルを付けた保存用ビニール袋に入れた。シェルボーンを調製した日に試験ができない場合には、シェルボーンを入れたビニール袋をデシケータユニットに入れた。
【0079】
シェルボーンの調整(風化)手順:
Blue M湿度室の電源を入れて、90°Fおよび相対湿度90%の風化条件(すなわち、90°F/90%rH)に設定した。通常、電源投入毎に湿度室横の貯水槽を定期的に確認して満水にした。典型的には平衡期間1日で、湿度室は、少なくとも4時間で指定の風化条件に達することができた。開放した湿度室の扉から風化すべきシェルボーンを湿度室の上部スロット棚に一度に1つずつ迅速に載せた(扉を開けている間に湿度および温度の両方が低下するため)。シェルボーンを湿度室に入れた時間を記録し、24時間風化を行なった。その後、湿度室の扉を開けて、シェルボーンを一度に1セットずつ迅速に取り出し、完全密封したそれぞれの保存用ビニル袋に個別に入れた。一般に、シェルボーンを一度に1〜4セットずつ上述のとおりに風化させた。すぐに風化シェルボーンをInstron室に入れ試験した。
【0080】
シェルボーンの破断試験手順:
Instron室において、シェルボーン試験方法を5500 R Instron装置にロードしながら、適切なロードセル(すなわち、Static Load Cell
5kN)を確実に設置し、装置を15分間暖気運転させた。この間に、シェルボーン試験グリップが装置に設置されているかを確かめた。ロードセルをゼロに合わせてバランスをとり、シェルボーンを以下のように一度1セットずつ試験した:保存用ビニル袋からシェルボーンを取り出して重量を測った。次いで、重量(グラム単位)をInstron装置に繋げたコンピュータに入力した。次いで、測定したシェルボーンの厚さ(インチ単位)を試験片厚さとして、Instron装置に繋げたコンピュータに3回入力した。次いで、シェルボーン試験片をInstron装置のグリップに置き、Instron装置のキーパッドを介して試験を開始した。シェルボーン試験片を取り出した後、測定した破断点をInstron装置に繋げたコンピュータに入力し、セット内の全てのシェルボーンが試験されるまで試験を継続した。
【0081】
試験結果を表3〜6に示しているが、これらの結果は、平均乾燥引張強度(psi)、平均風化引張強度(psi)、および風化対乾燥引張強度の比である。
【0082】
実施例7
アンモニウムポリカルボキシレート−糖(1:6)バインダーで調製したガラスファイバー含有マットの調製/風化/試験
乾燥および「風化」引張強度について評価した際、所与のバインダーで調製したガラスファイバー含有マットは、その特定のバインダーで調製した繊維ガラス断熱材の適切な引張強度および適切な持続性をそれぞれ示す。予想持続性は、ガラスファイバーマットの「風化」引張強度対乾燥引張強度の比に基づく。ガラスファイバーマットの調製、風化、および試験は以下のとおりに行った:
ガラスファイバー含有マットの調製手順:
「デッケルボックス」(高さ13インチ×幅13インチ×奥行14インチ)を透明アクリル板で作製し、ヒンジ付金属フレームに取り付けた。デッケルボックスの下には、ボックスから3インチ排水管までの移行部として、多孔板および粗い金属網からなる系が設置された。プラスチックの編みベルト(「ワイヤ」と呼ぶ)をデッケルボックスの下に固定した。混合のために、内部に縦リブを設けた5ガロンバケツおよび高速せん断空気圧モーターミキサーを用いた。典型的には、4ガロンの水およびEガラス(すなわち、高温ガラス)ファイバー(11g、22g、または33g)を2分間混合した。典型的なEガラスは、以下の重量パーセントの組成を有した:SiO2、52.5%;Na2O、0.3%;CaO、22.5%;MgO、1.2%;Al2O3、14.5%;FeO/Fe2O3、0.2%;K2O、0.2%;およびB2O3、8.6%。ワイヤの下の排水管および移行部には、デッケルボックスの底が濡れるように予め水を張った。ガラスファイバー混合物水溶液をデッケルボックスに注ぎ、四十九(49)個の1インチ穴を有するプレートで垂直方向に撹拌した。排水線下部のスライド弁を素早く開き、ワイヤ上にガラスファイバーを集めた。すでにワイヤの下に設置した網で覆ったフレームによりガラスファイバーサンプルの移動を容易にした。25〜40インチの水柱吸入管を備えた抽出スロット上を通過させることによりサンプルの水分を取り除いた。11gのサンプルには1つのパスを用い、22gのサンプルには2つのパスを用い、33gのサンプルには3つのパスを用いた。第2の網で覆ったフレームにサンプルを移動し、成形ワイヤを取り外した。次いで、サンプルを乾燥させ網から剥がした。続いて、ガラスファイバーがバインダーで飽和した(実施例5に記載のとおり調製した15%溶解バインダー固体を含有する)水性アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダーが入った水槽内で回転する3インチ径のアプリケータロール上をサンプルを通過させた。再度抽出スロット上を通過させて余分なバインダーを抽出しガラスファイバー含有マットを産生し、そのマットを上昇対流空気を生じる炉中において375°Fにて30分間硬化した。
【0083】
ガラスファイバーマットの調整(風化)手順:
調整すべきガラスファイバー含有マットサンプルをテフロン(登録商標)加工したコース織ベルト(course−weave belt)上に載せ、重しをして浮き上がりを防止した。評価中のアンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダーごとに1対のサンプルマットを調製した。空気調節しているが湿度調節していない部屋において少なくとも1日間周囲温度および湿度でこれらのマットを調整した。適切な形状のダイを用いて各マットから7つの試験片を切り出し;6つの試験片を一方向に切断し、1つの試験片を直交方向に切断して各試験片を分離した。各試験片は幅2インチであり、中央部が1インチ幅まで狭まっており、長さがおよそ12インチであった。各マットからの3つの試験片を37〜38℃および相対湿度90%の「風化」チャンバに24時間留置した。それら風化試験片をチャンバから取り出し、それぞれ湿ったペーパータオルを入れた密封可能なビニール袋に試験直前まで保存した。
【0084】
ガラスファイバーマットの破断試験手順:
引張試験機のクロスヘッド速度を0.5インチ毎分に設定した。締め付け金具は2インチ幅で、およそ1.5インチのグリップを有していた。各マットから3つの乾燥試験片および3つの風化試験片を試験した。乾燥試験片を用いて、強熱減量(LOI)で判定するバインダー含有量測定を行なった。
【0085】
試験結果を表7に示すが、これらの結果は平均%LOI、平均乾燥引張強度(Ib力)、平均風化引張強度(Ib力)、および風化対乾燥引張強度の比である。
【0086】
実施例8
クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー/ガラスファイバー組成物の調製:未硬化ブランケットおよび硬化ブランケット
粉末デキストロース一水和物(300ポンド)および粉末無水クエン酸(50ポンド)を260ガロンのトート内で組み合わせた。次いで、軟水を加えて容積を235ガロンにした。この混合物に9.5ガロンの19%アンモニア水溶液を加え、その結果得られた混合物を撹拌して固体を完全に溶解した。その結果得られた溶液に0.56ポンドのSILQUEST A−1101シランを加え、溶解デキストロース一水和物および溶解クエン酸アンモニウム固体中に15.5%溶液(溶液の総重量におけるパーセンテージ)を産生し;この溶液の2gのサンプルは、400°Fにて30分間の熱硬化時に、9.3%の固体をもたらした(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。この溶液を数分間撹拌した後、バインダーポンプに移して、ガラスファイバー断熱材の製造、詳細には、「ウェットブランケット」(すなわち、未硬化ブランケット)、および「アンバーブランケット」(すなわち、硬化ブランケット)と呼ばれる物質の形成に用いた。
【0087】
従来の繊維ガラス製造手順を用いて未硬化ブランケットおよび硬化ブランケットを調製した;そのような手順は下記、およびその開示内容を本明細書中において参考として援用する米国特許第5,318,990号に一般的に記載されている。典型的には、ガラスファイバーを産生してマットを形成しているときにバインダーを適用し、水分をバインダーから揮発させ、ハイソリッドバインダーでコーティングした繊維ガラスマットを加熱してバインダーを硬化することで、例えば、断熱または防音製品、続いて産生される複合材用の強化材等として使用可能な完成繊維ガラスバットを産生する。
【0088】
溶融ガラスを繊維に分解して、移動するコンベア上ですぐに繊維ガラスマットを形成することで繊維ガラスの有孔マットを産生した。ガラスをタンク内で溶融し、紡績機またはブッシング等の繊維形成デバイスに供給した。ガラス繊維をデバイスから引き出してから、成形チャンバ内で概ね下方向に向けて広げた。ガラスファイバーは、典型的には、直径が約2〜約9ミクロンであり、長さが約0.25インチ〜約3インチである。典型的には、ガラスファイバーは、直径が約3〜約6ミクロンの範囲であり、長さが約0.5インチ〜約1.5インチである。ガラスファイバーを多孔環状成形コンベア上に載せた。ガラスファイバーの形成中に、適切な噴霧機を用いてバインダーを適用し、形成した繊維ガラスマット全体にバインダーを分布させた。成形コンベアの下方からマットを介して真空を引くことにより、成形チャンバ内で未硬化バインダーが付着したガラスファイバーを集めて環状コンベア上でマットを形成した。ガラスファイバー内に閉じ込められた残留熱およびマットを介した空気流により、成形チャンバから出る前に大部分の水分がマットから揮発した。(未硬化バインダーがバインダーとして機能する範囲で水分が除去される;当業者は特定の用途のために除去すべき水分量を通常の実験により判断することができる)
ハイソリッドバインダーでコーティングされた繊維ガラスマットが成形チャンバから現れると、ガラスファイバーの弾力性により縦方向に伸張した。次いで、伸張したマットを硬化炉に送り、その中を通過させることにより、加熱された空気がマット内を通過してバインダーが硬化する。マットの上側および下側のフライトがマットを僅かに圧縮し、所定の厚さで表面仕上げした完成品が得られる。典型的には、硬化炉は約350°F〜約600°Fの範囲の温度で稼働させた。一般に、約0.5分から約3分の間、マットを炉内に留置した。従来の断熱または防音製品の製造では、この時間は約0.75分〜約1.5分間の範囲である。硬化した剛体バインダー基材を有する繊維ガラスが炉から現れたときには、梱包および配送のために圧縮されており、その後圧縮を解いた際に実質的に完成時の垂直寸法に戻るバットの形態をしている。一例として、成形チャンバから出たときの厚さが約1.25インチである繊維ガラスマットは、移送ゾーンでは垂直厚が約9インチに広がり、硬化炉内で僅かに圧縮されて約6インチの垂直厚になる。
【0089】
上述のとおり調製した硬化ブランケット製品の基準仕様は、重量が約0.09ポンド/平方フィート、密度が約0.7ポンド/立方フィート、厚さが約1.5インチ、繊維径が約220万分の1インチ(5.6ミクロン)、硬化後のバインダー含有量が約11%、および脱塵用鉱油(脱塵油)含有量が約0.7%であった。硬化炉温度は約460°Fに設定した。成形チャンバを出た未硬化ブランケットの見た目の色は白〜オフホワイトであり、炉から出た硬化ブランケットの見た目の色は暗褐色であり良好に結合していた。数ロール分の硬化ブランケットを回収した後、炉の前でマットを破断し、未硬化ブランケットも実験のために回収した。
【0090】
実施例9
クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー/ガラスファイバー組成物の調製:エアダクトボード
粉末デキストロース一水和物(1800ポンド)および粉末無水クエン酸(300ポンド)を743.2ガロンの軟水が入った2000ガロンの混合タンク内で組み合わせた。この混合物に52.9ガロンの19%アンモニア水溶液を撹拌しながら加え、およそ30分間撹拌を継続して固体を完全に溶解した。この結果得られた溶液に9ポンドのSILQUEST A−1101シランを加え、pHが〜8の溶液(pH試験紙を使用)を産生したが、この溶液はおよそ25%の溶解デキストロース一水和物および溶解クエン酸アンモニウム固体(溶液の総重量におけるパーセンテージ)を含んでおり;この溶液の2gのサンプルは、400°Fにて30分間熱硬化したときに、15%の固体がもたらした(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。この溶液を数分間撹拌してからバインダー貯蔵タンクに移し、そこからガラスファイバー断熱材の製造、詳細には、「エアダクトボード」と呼ばれる製品の形成に使用した。
【0091】
従来の繊維ガラス製造手順を用いてエアダクトボードを調製した;そのような手順は、実施例8に一般的に記載されている。このエアダクトボード製品の基準仕様は、密度が約0.4ポンド/平方フィート、1インチ厚での密度が約4.5ポンド/立方フィートで、繊維径が約320万分の1インチ(8.1ミクロン)であり、バインダー含有量が約14.3%で、脱塵用鉱油(脱塵油)が0.7%であった。硬化炉温度は約550°Fに設定した。炉から出した製品の見た目の色は暗褐色であり良好に結合していた。
【0092】
実施例10
クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー/ガラスファイバー組成物の調製:R30家庭用ブランケット
粉末デキストロース一水和物(1200ポンド)および粉末無水クエン酸(200ポンド)を1104ガロンの軟水が入った2000ガロンの混合タンク内で組み合わせた。この混合物に42.3ガロンの19%アンモニア水溶液を撹拌しながら加え、およそ30分間撹拌を継続して固体を完全に溶解した。この結果生じた溶液に6ポンドのSILQUEST A−1101シランを加えてpHが〜8の溶液(pH試験紙を使用)を産生したが、この溶液はおよそ13.4%の溶解デキストロース一水和物および溶解クエン酸アンモニウム固体(溶液の総重量におけるパーセンテージ)を含んでおり;この溶液の2gのサンプルは、400°Fにて30分間の熱硬化時に、8%の固体をもたらした(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。この溶液を数分間撹拌してからバインダー貯蔵タンクに移し、そこからガラスファイバー断熱材の製造、詳細には、「R30家庭用ブランケット」と呼ばれる製品の形成に使用した。
【0093】
従来の繊維ガラス製造手順を用いてR30家庭用ブランケットを調製した;そのような手順は、実施例8に一般的に記載されている。このR30家庭用ブランケット製品の基準仕様は、重量が約0.4ポンド/平方フィート、巻き終り位置での目標復元厚さが10インチであり、繊維径が180万分の1インチ(4.6ミクロン)、バインダー含有率が3.8%、脱塵用鉱油(脱塵油)の含有量が0.7%であった。硬化炉温度は約570°Fに設定した。炉から出した製品の見た目の色は褐色であり良好に結合していた。
【0094】
実施例11
クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー/ガラスファイバー組成物の調製:R19家庭用ブランケット
束A−1:
粉末デキストロース一水和物(1200ポンド)および粉末無水クエン酸(200ポンド)を1104ガロンの軟水が入った2000ガロンの混合タンクで組み合わせた。この混合物に35.3ガロンの19%アンモニアを撹拌しながら加え、撹拌をおよそ30分間継続して固体を完全に溶解した。この結果生じた溶液に6ポンドのSILQUEST A−1101シランを加えて、pHが〜8の溶液(pH試験紙を使用)を産生したが、この溶液は約13.3%の溶解デキストロース一水和物およびクエン酸アンモニウム固体(溶液の総重量におけるパーセンテージ)を含んでおり;この溶液の2gのサンプルは、400°Fにて30分間熱硬化時に、8%の固体をもたらす(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。この溶液を数分間撹拌してからバインダー貯蔵タンクに移し、そこからガラスファイバー断熱材の製造、詳細には、「R19家庭用ブランケット」と呼ばれる製品の形成に使用した。
【0095】
従来の繊維ガラス製造手順を用いてR19家庭用ブランケット(束A−1)を調製した;そのような手順は、実施例8に一般的に記載されている。このR19家庭用ブランケット製品の基準仕様は、重量が約0.2ポンド/平方フィート、密度が0.2ポンド/立方フィート、巻き終り位置での目標復元厚さが6.5インチ、繊維径が180万分の1インチ(4.6ミクロン)、バインダー含有率が3.8%、(脱塵用)鉱油の含有量が0.7%であった。硬化炉温度は約570°Fに設定した。炉から出した製品の見た目の色は褐色であり良好に結合していた。
【0096】
束A−2:
粉末デキストロース一水和物(1200ポンド)および粉末無水クエン酸(200ポンド)を558ガロンの軟水が入った2000ガロンの混合タンク内で組み合わせた。この混合物に35.3ガロンの19%アンモニアを撹拌しながら加え、およそ30分間撹拌を継続して固体を完全に溶解した。この結果生じた溶液に5ポンドのSILQUEST A−1101シランを加えて、pHが〜8の溶液(pH試験紙を使用)を産生したが、この溶液は約20.5%の溶解デキストロース一水和物およびクエン酸アンモニウム固体(溶液の総重量におけるパーセンテージ)を含んでおり;この溶液の2gのサンプルは、400°Fにて30分間の熱硬化時に、12%の固体をもたらした(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。この溶液を数分間撹拌してからバインダー貯蔵タンクに移し、そこからガラスファイバー断熱材の製造、詳細には、「R19家庭用ブランケット」と呼ばれる製品の形成に使用した。
【0097】
従来の繊維ガラス製造手順を用いてR19家庭用ブランケット(束A−2)を調製した;そのような手順は、実施例8に一般的に記載されている。このR19家庭用ブランケット製品の基準仕様は、重量が約0.2ポンド/平方フィート、密度が0.4ポンド/立方フィート、巻き終り位置での目標復元厚さが6.5インチ、繊維径が180万分の1インチ(4.6ミクロン)、バインダー含有率が3.8%、(脱塵用)鉱油の含有量が0.7%であった。硬化炉温度は約570°Fに設定した。炉から出した製品の見た目の色は褐色であり良好に結合していた。
【0098】
束B:
粉末デキストロース一水和物(300ポンド)および粉末無水クエン酸(50ポンド)をすでに167ガロンの蒸留水が入った260ガロンのInternational Bulk Container(IBC)内で組み合わせた。この混合物に10.6ガロンの19%アンモニアを撹拌しながら加え、撹拌をおよそ30分間継続して固体を完全に溶解した。この結果生じた溶液に1.5ポンドのSILQUEST A−1101シランを加えて、pHが〜8の溶液(pH試験紙を使用)を産生したが、この溶液はおよそ20.1%の溶解デキストロース一水和物およびクエン酸アンモニウム固体(溶液の総重量におけるパーセンテージ)を含有しており;この溶液の2gのサンプルは、400°Fにて30分間の熱硬化時に、12%の固体をもたらす(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。この水性バインダーを入れたIBCを移動し、その場所で、バインダーを成形フード内のバインダースプレーリングに送り、蒸留水で希釈して、ガラスファイバー断熱材の製造、詳細には、「R19家庭用ブランケット」と呼ばれる製品の形成に使用した。
【0099】
従来の繊維ガラス製造手順を用いてR19家庭用ブランケット(束B)を調製した;そのような手順は、実施例8に一般的に記載されている。作ったR19家庭用ブランケット製品の基準仕様は、重量が約0.2ポンド/平方フィート、密度が0.4ポンド/立方フィート、巻き終り位置での目標復元厚さが6.5インチ、繊維径が180万分の1インチ(4.6ミクロン)、バインダー含有率が3.8%、(脱塵用)鉱油の含有量が0.7%であった。硬化炉温度は約570°Fに設定した。炉から出した製品の見た目の色は褐色であり良好に結合していた。
【0100】
束C:
粉末デキストロース一水和物(300ポンド)および粉末無水クエン酸(50ポンド)をすでに167ガロンの蒸留水が入った260ガロンのInternational Bulk Container(IBC)内で組み合わせた。この混合物に10.6ガロンの19%アンモニアを撹拌しながら加え、撹拌を約30分間継続して固体を完全に溶解した。この結果生じた溶液に1.5ポンドのSILQUEST A−1101シランを加えた後、1.80ガロンのメチル水素乳剤BS 1040(Wacker Chemical Corporation製)を加えて、pHが〜8の溶液(pH試験紙を使用)を産生したが、この溶液はおよそ20.2%の溶解デキストロース一水和物およびクエン酸アンモニウム固体(溶液の総重量におけるパーセンテージ)を含有しており;この溶液の2gのサンプルは、400°Fにて30分間の熱硬化時に、12%の固体をもたらした(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。この水性バインダーを入れたIBCを移動し、その場所で、バインダーを成形フード内のバインダースプレーリングに送り、蒸留水で希釈して、ガラスファイバー断熱材の製造、詳細には、「R19家庭用ブランケット」と呼ばれる製品の形成に使用した。
【0101】
従来の繊維ガラス製造手順を用いてR19家庭用ブランケット(束C)を調製した;そのような手順は、実施例8に一般的に記載されている。作ったR19家庭用ブランケット製品の基準仕様は、密度が約0.2ポンド/平方フィート、重量が0.4ポンド/立方フィート、巻き終り位置での目標復元厚さが6.5インチ、繊維径が180万分の1インチ(4.6ミクロン)、バインダー含有率が3.8%、(脱塵用)鉱油の含有量が0.7%であった。硬化炉温度は約570°Fに設定した。炉から出した製品の見た目の色は褐色であり良好に結合していた。
【0102】
束D:
粉末デキストロース一水和物(300ポンド)および粉末無水クエン酸(50ポンド)をすでに167ガロンの蒸留水が入った260ガロンのInternational Bulk Container(IBC)内で組み合わせた。この混合物に10.6ガロンの19%アンモニアを撹拌しながら加え、撹拌をおよそ30分間継続して固体を完全に溶解した。この結果生じた溶液に1.5ポンドのSILQUEST A−1101シランを加えた後、22ポンドの粘度製品Bentalite L10(Southern Clay Products製)を加えて、pHが〜8の溶液(pH試験紙を使用)を産生したが、この溶液は約21.0%の溶解デキストロース一水和物およびクエン酸アンモニウム固体(溶液の総重量におけるパーセンテージ)を含有しており;この溶液の2gのサンプルは、400°Fにて30分間の熱硬化時に、12.6%固体をもたらした(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。この水性バインダーを入れたIBCを移動し、その場所で、バインダーを成形フード内のバインダースプレーリングに送り、蒸留水で希釈して、ガラスファイバー断熱材の製造、詳細には、「R19家庭用ブランケット」と呼ばれる製品の形成に使用した。
【0103】
従来の繊維ガラス製造手順を用いてR19家庭用ブランケット(束D)を調製した;そのような手順は、実施例8に一般的に記載されている。この日に作ったR19家庭用ブランケット製品の基準仕様は、重量が約0.2ポンド/平方フィート、密度が0.4ポンド/立方フィート、巻き終り位置での目標復元厚さが6.5インチ、繊維径が180万分の1インチ(4.6ミクロン)、バインダー含有率が3.8%、(脱塵用)鉱油の含有量が0.7%であった。硬化炉温度は約570°Fに設定した。炉から出した製品の見た目の色は褐色であり良好に結合していた。
【0104】
実施例12
クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー/ガラスファイバー組成物の調製:未硬化パイプ断熱材
粉末デキストロース一水和物(1200ポンド)および粉末無水クエン酸(200ポンド)を215ガロンの軟水が入った2000のガロン混合タンク内で組み合わせた。この混合物に42.3ガロンの19%アンモニア水溶液を撹拌しながら加え、撹拌をおよそ30分間継続して固体を完全に溶解した。この結果生じた溶液に6ポンドのSILQUEST A−1101 シランを加えて、pHが〜8の溶液(pH試験紙を使用)を産生したが、この溶液はおよそ41.7%の溶解デキストロース一水和物および溶解クエン酸アンモニウム固体(溶液の総重量におけるパーセンテージ)を含有しており;この溶液の2gのサンプルは、400°Fにて30分間熱硬化時に、25%の固体をもたらした(重量損失は熱硬化バインダー形成時の脱水による)。この溶液を数分間撹拌してからバインダー貯蔵タンクに移し、そこからガラスファイバー断熱材の製造、詳細には、「未硬化パイプ断熱材」と呼ばれる製品の形成に使用した。
【0105】
従来の繊維ガラス製造手順を用いて未硬化パイプ断熱材を調製した;そのような手順は、実施例8に一般的に記載されている。この未硬化パイプ断熱製品の基準仕様は、重量が約0.07ポンド/平方フィート、密度が0.85ポンド/立方フィート、推定厚さが1インチ、繊維径が300万分の1インチ(7.6ミクロン)、硬化時のバインダー含有量が7%であった。未硬化パイプ断熱材をパイプ断熱材成形エリアに移し、パイプ断熱材として使用するために、6インチの壁部、および3インチ径の穴、および4ポンド/立方フィートの密度を有する円筒シェルに流した。これらのシェルをおよそ450°Fに設定した硬化炉で硬化し、暗褐色で良好に結合したパイプ断熱製品を産生した。より高い温度で硬化させたシェルは焼損し、試験用にさらに使用することができなかった。
【0106】
実施例13
クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー/セルロース繊維組成物の調製:木質繊維ボード
いくつかの方法を用いてクエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーで結合した木質繊維ボード/シートを作製した。強靭で均一のサンプルを産生した代表的な方法は以下のとおりである:様々な松の木屑およびおがくず状の木材を近くの農機具店で購入した。木質繊維ボードサンプルを「そのままの状態」の木材、ならびに木屑およびおがくず成分に分離した物質で作った。まず、木材を炉内でおよそ200°Fにて一晩乾燥させ、この乾燥により、木屑については14〜15%の脱湿、おがくずについては約11%の脱湿ができた。その後、乾燥した木材を高さ8インチ×幅12インチ×奥行10.5インチのプラスチック容器(概寸)に入れた。クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーを実施例5に記載のとおり調製し(バインダー固体中36%)、160gのバインダーを散水ノズルを介してプラスチック容器内の400gのサンプル木材上に噴霧しながら容器を鉛直方向から30〜40度傾けてゆっくりと回転させた(およそ5〜15rpm)。この処理の間、木材を軽く転がし均一にコーティングした。
【0107】
樹脂加工した木材のサンプルを折畳フレームに入れ、以下の条件で、加熱した取付盤の間で圧縮した:樹脂加工した木屑300psi;樹脂加工したおがくず600psi。樹脂加工したサンプル各々について、硬化条件は、350°Fにて25〜30分間であった。この結果生じたサンプルボードは、整形前において、およそ長さ10インチ×幅10インチ、および約0.4インチの厚さであり、内部が良好に結合し、滑らかな表面をしており、帯のこで整形した際にはきれいに切断できた。整形後のサンプル密度および整形した各サンプルボードの大きさは以下のとおりである:木屑のサンプルボード、密度〜54pcf、サイズ長さ〜8.3インチ×幅9インチ×厚さ0.36インチ;おがくずのサンプルボード、密度〜44pcf、サイズ長さ〜8.7インチ×幅8.8インチ×厚さ0.41インチ。各サンプルボードの推定バインダー含有量は〜12.6%であった。
【0108】
実施例14
クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー/ガラスファイバー組成物の試験/評価
実施例8〜12のクエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー/ガラスファイバー組成物、すなわち、硬化ブランケット、エアダクトボード、R30家庭用ブランケット、R19家庭用ブランケット、および未硬化パイプ断熱材を、対応するフェノール−ホルムアルデヒド(PF)バインダー/ガラスファイバー組成物と対比して、以下の1つ以上について試験した:製品放出量、密度、強熱減量、厚さ復元、塵、引張強度、分断強度、分断強度の持続性、結合強度、吸水率、熱面性能、鉄腐食性、曲げ剛性、剛柔度−剛性、耐圧縮性、調整耐圧縮性、圧縮率、調整圧縮率、および強熱時の煙発生量。これらの試験結果を表8〜13に示す。実施例8の硬化ブランケットの熱分解時に産生した気体化合物、および実施例12の未硬化パイプ断熱材の熱硬化時に産生した気体化合物についても判定を行なっており;これらの試験結果は表14〜15に示す。硬化パイプ断熱材の熱面性能を図5および図6に示す。実施した特定の試験およびこれらの試験の実施条件は以下のとおりである:
製品放出量試験
実施例8の硬化ブランケットおよび実施例9のエアダクトボードの製品放出量は、AQS Greenguard Testingの手順に従って判定した。断熱製品を総揮発性有機化合物(TVOC)の放出物、ホルムアルデヒド、全選択アルデヒドについて、ASTM D5116(”Standard Guide for Small−Scale Environmental Chamber Determinations of Organic Emissions from Indoor Materials/Products”),the United States Environmental Protection Agency(USEPA)、およびthe State of Washington IAQ Specification of January,1994に従って観察した。放出物データを1週間の曝露期間に収集し、その結果得られた大気中濃度を上記の各物質について判定した。標準的な室内設置およびASHRAE Standard 62−1999の通気条件を含むワシントン州の要件に基づいて、推定大気中濃度をコンピュータで観察した。製品の設置は、32mの室内における28.1mの標準的壁の使用に基づく。
【0109】
放射物試験−選択アルデヒド
容積が0.0855mの小型の環境室で化学放出物を分析的に測定して断熱製品を試験した。ホルムアルデヒドを含む選択アルデヒドの放出をASTM D5197(”Standard Test Method for Determination of Formaldehyde and Other Carbonyl Compounds in Air(Active Sampler Methodolology))に従って高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)の固体吸着剤カートリッジを用いて室内空気中のホルムアルデヒドおよび他の低分子量カルボニル化合物を収集した。カートリッジ内のDNPH試薬を、収集したカルボニル化合物と反応させ、安定したヒドラゾン誘導体を形成してカートリッジに保持した。このヒドラゾン誘導体を、HPLC等級のアセトニトリルのカートリッジから溶出した。逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてUV検出法によりサンプルのアリコートを低分子量アルデヒドヒドラゾン誘導体について解析した。誘導体の吸収度の測定値は360nmであった。この結果得られたピークの質量応答を、ヒドラゾン誘導体の基準溶液で用意した多点較正曲線を用いて判定した。測定値は、45Lの基準気積収集に基づいて0.2ugの定量化可能なレベルまで報告する。
【0110】
放射物試験−揮発性有機化合物(VOC)
ガスクロマトグラフィーを用いて質量分析検出法(GC/MS)によりVOC測定を行なった。室内空気を固体吸着剤上に集めてGC/MSに熱脱離した。USEPAおよび他の研究所により提供される技術から吸着剤収集技術、分離、および検出解析法を適合させた。この技術は、USEPA Method 1P−1Bに従っており、35℃〜250℃の範囲の沸点でC5−Ci6有機化学品に対して一般的に適用可能である。測定値は、18Lの基準気積収集に基づいて0.4ugの定量化可能なレベルまで報告する。個々のVOCを分離して、GC/MS法により検出した。質量分析計で得られた個々のVOC応答の全てを加え、トルエンに関して総質量を較正することにより総VOC測定を行なった。
【0111】
放射物試験−大気中濃度判定
コンピュータ曝露モデルにおいて、ホルムアルデヒド、全アルデヒド、およびTVOCの放出率を用いて物質の潜在的な大気中濃度を判定した。このコンピュータモデルでは、測定した放出率の1週間での変化を使用して、それに応じて発生する大気中濃度の変化を判定した。以下の仮定を元にモデル測定を行なった:建物内の開けたオフィスエリアの空気は、占有された空間の呼吸を行なう高さの位置では十分に混ざっている;環境条件は、50%の相対湿度および73°F(23℃)に維持される;これらの物質にはさらなる発生源が存在しない;上記空間内にこれらの物質の掃溜めまたは潜在的な再放出源が存在しない。USEPAのIndoor Air Exposure Model,Version 2.0を特異的に改変してこの製品および該当する化学品に合わせた。通気および占有パラメータは、ASHRAE Standard 62−1999において規定された。
【0112】
密度
ASTM C 167と実質的に同一の試験法である内部試験法PTL−1、”Test Method for Density and Thickness of Blanket or Batt Thermal Insulation”に従って、実施例8の硬化ブランケットの密度を判定した。ASTM C 303と実質的に同一の試験法である内部試験法PTL−3、”Test Procedure for Density Preformed Block−Type Thermal Insulation”に従って、実施例9のエアダクトボードの密度を判定した。
【0113】
強熱減量(LOI)
内部試験法K−157、”Ignition Loss of Cured Blanket(LOI)”に従って、実施例8の硬化ブランケットおよび実施例9のエアダクトボードの強熱減量を判定した。この試験を1000°F+/−50°Fにて15〜20分間ファーネスに入れたワイヤトレイ内のサンプルに実施して確実に完全酸化させ、この処理の後、この結果生じたサンプルの重量を測定した。
【0114】
分断強度
ASTM C 686、”Parting Strength of Mineral
Fiber Batt and Blanket−Type Insulation”と実質的に同一の試験法である内部試験法KRD−161に従って、実施例8の硬化ブランケット、実施例10のR30家庭用ブランケット、および実施例11のR19家庭用ブランケットの分断強度を判定した。
【0115】
分断強度の持続性
ASTM C 686、”Parting Strength of Mineral
Fiber BattおよびBlanket−Type Insulation”に従って、実施例10のR30家庭用ブランケットおよび実施例11のR19家庭用ブランケットについての分断強度の持続性を、90°Fおよび相対湿度95%で1週間調整した後に判定した。
【0116】
引張強度
内部試験法KRD−161、”Tensile Strength TestProcedure”に従って、実施例8の硬化ブランケットおよび実施例11のR19家庭用ブランケットの引張強度を判定した。この試験を流れ方向および横断流れ方向の両方向にダイス切断したサンプルに実施した。75°Fおよび相対湿度50%で24時間サンプルを調整した。75°F、相対湿度50%の試験環境で、各流れ方向において10個のサンプルを試験した。ドッグボーン試験片をASTM D638、”Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics”で示されるとおりにした。全ての試験について2インチ/分のクロスヘッドスピードを用いた。
【0117】
結合強度
内部試験法KRD−159、”Bond Strength of Fiberglass Board and Blanket Products”を用いて、実施例8の硬化ブランケット、実施例10のR30家庭用ブランケット、および実施例11のR19家庭用ブランケットの層間結合強度を判定した。6インチ×6インチの断面積を有する成形試験片を6インチ×7インチの試験片取付板に接着し、試験片の表面に直交する力を働かせる固定具に載せた。全ての試験について12インチ/分のクロスヘッドスピードを用いた。
【0118】
厚さ復元
内部試験法K−123、”Recovered Thickness−End of Line Dead Pin Method−Roll Products”、およびK−109、”Test Procedure for Recovered Thickness of Roll Products−Rollover Method”を用いて、実施例8の硬化ブランケットにパッケージ外巻厚試験(Out−of−package and rollover thickness tests)を実施した。梱包15分後またはそれ以降の時点のいずれかにおいて、ピンがサンプルの下にある平坦な硬質面と接触するまでロール製品の硬化ブランケットのサンプルにピンゲージを突き刺し、鋼尺を用いて復元厚さを測定することにより復元厚さを測定した。ともにASTM C 167、”Standard Test Methods for Thickness
and Density of Blanket or Batt Thermal Insulations”と同様の試験法である内部試験法K−120、”Test Procedure for Determining End−of−Line Dead−Pin Thickness−Batts”、およびK−128、”Test Procedure for Recovered Thickness of Batt Products−Drop Method”を用いて、実施例10のR30家庭用ブランケットおよび実施例11のR19家庭用ブランケットに厚さ試験を実施した。
【0119】
塵試験
内部試験手順K−102、”Packaged Fiber Glass Dust Test,Batt Method”を用いて、実施例8の硬化ブランケット、実施例10のR30家庭用ブランケット、および実施例11のR19家庭用ブランケットに塵試験を行なった。集塵箱に入れた硬化ブランケット、R30家庭用ブランケット、およびR19家庭用ブランケットの無作為に選択したサンプル(バット)から遊離した塵をフィルター上に集めて、差分計量により塵の量を判定した。
【0120】
吸水率
ASTM C 1104、”Test Method for Determining the Water Vapor Absorption of Unfaced Mineral Fiber Insulation”を用いて、実施例8の硬化ブランケットおよび実施例11のR19家庭用ブランケットに吸水率(重量%)試験を実施した。
【0121】
曲げ剛性(EI)
NAIMA AHS 100−74、”Test Method for Flexural Rigidity of Rectangular Rigid Duct Materials”に従って、剛性エアダクトボードを曲げるために必要な偶力、すなわち、E(弾性係数)とI(曲げ慣性モーメント)の積である実施例9のエアダクトボードの曲げ剛性を判定した。
【0122】
剛柔度−剛性
内部試験手順K−117、”Test Procedure for Rigidity of Building Insulation”を用いて、実施例11のR19家庭用ブランケットに剛柔度−剛性試験を実施した。中心支持棒の真後ろに分度器を含む装置である剛柔度試験装置の中心支持棒上に、長さがおよそ47.5インチ(±0.5インチ)のR19家庭用ブランケットのサンプルを載せた。サンプルの端部を固定せずにぶら下げた状態で、サンプルの下端に沿って観察しながら分度器の目盛りを読んでサンプルの各端部の角(度数)を記録した。
【0123】
耐圧縮性
ASTM C 165、”Standard Test Method for Measuring Compressive Properties of Thermal Insulations”に従って、実施例9のエアダクトボードの耐圧縮性を判定した。
【0124】
調整耐圧縮性
ASTM C 165、”Standard Test Method for Measuring Compressive Properties of Thermal insulations”に従って、90°Fおよび相対湿度95%で1週間後の実施例9のエアダクトボードの調整耐圧縮性を判定した。
【0125】
圧縮率
ASTM C 165、”Standard Test Method for Measuring Compressive Properties of Thermal Insulations”に従って、実施例9のエアダクトボードの圧縮率を判定した。
【0126】
調整圧縮率
ASTM C 165、”Standard Test Method for Measuring Compressive Properties of Thermal Insulations”に従って、90°Fおよび相対湿度95%で1週間後の実施例9のエアダクトボードの調整圧縮率を判定した。
【0127】
熱面性能
ASTM C 411、”Test Method for Hot Surface
Performance of High Temperature Thermal
Insulation”を用いて、実施例8の硬化ブランケット、実施例10のR30家庭用ブランケット、および実施例11のR19家庭用ブランケットに熱面性能試験を行なった。ASTM C 411、”Test Method for Hot Surface Performance of High Temperature Thermal Insulation”を用いて、650°Fおよび1000°Fにて実施例12の硬化パイプ断熱製品の3×6インチ切片の熱面性能試験を行なった。断熱材にはパイプ熱面温度より高い測定可能な内部温度上昇はなかった。
【0128】
鉄腐食性
ASTM C 665と実質的に同一である内部試験手順Knauf PTL−14を用いて、実施例10のR30家庭用ブランケットおよび実施例11のR19家庭用ブランケットの腐食性試験をスティールクーポンと対比して行なった。
【0129】
強熱時の煙発生量
ASTM E 1354、”Test Method for Heat and Visible Smoke Release Rates for Materials
and Products Using an Oxigen Consumption Calorimeter”を用いて、コーン熱量測定法により、比消化面積(specific extinction area)(SEA)を計算して実施例8の硬化ブランケットの強熱時の煙発生量を判定した。
【0130】
熱分解時発生気体化合物
実施例8の硬化ブランケットの熱分解時発生気体化合物を以下のように判定した:およそ10gの硬化ブランケットを試験管に入れて2.5分間1000°Fまで加熱した時点でヘッドスペースからサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)法により以下の条件で分析を行なった:炉、50℃にて1分間(10℃/分で10分間300℃まで;注入口、280℃のスプリットレス;カラム、HP−5 30mm×0.32mm×0.25um;カラム流量、1.11mL/分(ヘリウム);検出器、MSD 280℃;注入量、1mL;検出器モード、スキャン34〜700amu;閾値、50;および抽出率、22スキャン/秒。Wiley質量スペクトルライブラリーでサンプルのクロマトグラフピークの質量スペクトルをコンピュータ検索した。最良一致を報告した。0〜99の範囲の品質指数(ライブラリスペクトルに対する一致度の近さ)を生成した。品質指数が90以上の同一性のピークのみ報告した。
【0131】
熱硬化時発生気体化合物
実施例12の未硬化パイプ断熱材の熱硬化時発生気体化合物を以下のように判定した:およそ0.6gの未硬化パイプ断熱材を試験管内に入れて2.5分間540°Fまで加熱した時点でヘッドスペースからサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィー/質量分析法により以下の条件で分析を行なった:炉、50℃にて1分間(10℃/分で10分間300℃まで;注入口、280℃のスプリットレス;カラム、HP−5 30mm×0.32mm×0.25um;カラム流量、1.11mL/分(ヘリウム);検出器、MSD 280℃;注入量、1mL;検出器モード、スキャン34〜700amu;閾値、50;および抽出率、22スキャン/秒。Wiley質量スペクトルライブラリーでサンプルのクロマトグラフピークの質量スペクトルをコンピュータ検索した。最良一致を報告した。0〜99の範囲の品質指数(ライブラリスペクトルに対する一致度の近さ)を生成した。品質指数が90以上の同一性のピークのみ報告した。
【0132】
【化1】

表2 温度および時間に応じた硬化クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーサンプルaの元素分析結果
【0133】
【化2】

実施例4
表3 クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーで調製したガラスビーズシェルボーン組成物対基準PFバインダーの測定引張強度
【0134】
【化3】

実施例6 実施例5 9個のシェルボーンサンプルの平均値
5ヶ月かけて作ったクエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーの7つの異なる束のうちの1つ
5ヶ月かけて作ったクエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーの7つの異なる束の平均値
表4 クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー変形例bで調製したガラスビーズシェルボーン組成物a対基準PFバインダーの測定引張強度
【0135】
【化4】

【0136】
【化5】

実施例6
実施例5
9個のシェルボーンサンプルの平均値
5ヶ月かけて作ったクエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーの7つの異なる束の平均値
メチル水素ポリシロキサンの50%固体乳剤となるSilres BS 1042
同型サンプル
同型サンプル
ポリジメチルシロキサンの35%固体乳剤となるLE 46
アルキルシランの40%乳剤となるTPX5688/AQUA−TRETE BSM40
PGN、Nanocorの粘土(モンモリロナイト)の等級
Cloisite NA+、Southern Clay Productsの粘土のナトリウム塩
吹込大豆乳剤(25%)、PEG 400ジオレート(4%固体)およびグアーガム(1%固体)を有する大豆油の25%固体乳剤
Bentolite L−10、Southern Clay Productsの粘土
Michem 45745 PE乳剤(50%)、低分子量ポリエチレンの25%固体乳剤
ボーン接着溶液、30%固体溶液
Axel INT−26−LF95、脂肪系離型剤/乳剤
ISO Chill Whey 9010
計算なし
測定なし
表5 アンモニウムポリカルボキシレート−デキストロースバインダー変形例bで調製したガラスビーズシェルボーン組成物a対ポリカルボン酸系バインダー対基準PFバインダーの測定引張強度
【0137】
【化6】

実施例6
実施例5
9個のシェルボーンサンプルの平均値
5ヶ月かけて作ったクエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダーの7つの異なる束の平均値
30%溶液となる200gのAQUASET−529+87gの19%アンモニア+301gのデキストロース+301gの水
バインダーe+0.32gのSILQUEST A−1101の300mL溶液
200gのAQUASET−529+87gの19%アンモニア+101gの水+0.6gのSILQUEST A−1101
AQUASET−529+SILQUEST A−1101(0.5%のバインダー固体)を30%固体に希釈
136gのペンタエリトリトール+98gのマレイン無水物+130gの水を30分間還流;この結果得られた232gの溶液を170gの水および0.6gのSILQUEST A−1101と混合
136gのペンタエリトリトール+98gのマレイン無水物+130gの水+1.5mLの66%ρ−トルエンスルホン酸を30分間還流;この結果得られた232gの溶液を170gの水および0.6gのSILQUEST A−1101と混合
220gのバインダーi+39gの19%アンモニア+135gのデキストロース+97gの水+0.65gのSILQUEST A−1101
128gのクエン酸+45gのペンタエリトリトール+125gの水を20分間還流;この結果得られた混合物を30%固体に希釈、0.5%固体のSILQUEST A−1101を添加
200gのKemira CRITERION 2000+23gのグリセロール+123gの水+0.5gのSILQUEST A−1101
200gのKemira CRITERION 2000+30gのグリセロール+164gの水+0.6gのSILQUEST A−1101
100gのBASF SOKALAN CP 10 S+57gの19%アンモニア+198gのデキストロース+180gの水+0.8gのSILQUEST A−1101211gのH.B.Fuller NF1+93gの19%アンモニア+321gのデキストロース+222gの水+1.33gのSILQUEST A−1101
表6 アンモニウムポリカルボキシレート−糖バインダー変形例bで調製したガラスビーズシェルボーン組成物a対基準PFバインダーの測定引張強度
【0138】
【化7】

実施例6
実施例5
9個のシェルボーンサンプルの平均値
7つの異なる束の平均値
DHA=ジヒドロキシアセトン
モノカルボキシレート
非カルボン酸
pH≧7
表7 アンモニウムポリカルボキシレート−糖(1:6)バインダー変形例bで調製したガラスビーズシェルボーン組成物a対基準PFバインダーの測定引張強度および強熱減量
【0139】
【化8】

実施例7
実施例5
3つのガラスファイバーマットの平均値
Dex=デキストロース
Fruc=フルクトース
DHA=ジヒドロキシアセトン
25%重量のDHAと置換されたグリセロール
PETol=25%重量のDHAと置換されたペンタエリトリトール
PVOH=20%重量のDHAと置換されたポリビニルアルコール(86〜89%加水分解されたポリビニルアセテート、MW〜22Kから26K)
Ductlinerバインダー
【0140】
【化9】

表9 実施例8の硬化ブランケットの強熱時の煙発生量:クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー対基準PFバインダー
【0141】
【化10】

SEA=比消化面積
【0142】
【化11】

表11. 実施例10のR30家庭用ブランケットの試験結果:クエン酸トリアンモニウム−デキストロース(1:6)バインダー対基準PFバインダー
【0143】
【化12】

メラノイジンバインダー;5%の強熱減量を生じる基準機械条件
メラノイジンバインダー;強熱減量を6.3%に上昇させる機械調整
メラノイジンバインダー;強熱減量を6.6%に上昇させる機械調整
測定なし
【0144】
【化13】

【0145】
【化14】

【0146】
【化15】

本発明の特定の実施形態について説明および/または例示したが、それらの有意な変形および修正が可能であると考えられる。よって、本発明は、本明細書中に記載および/または例示した特定の実施形態に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−64151(P2013−64151A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−278015(P2012−278015)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2008−524086(P2008−524086)の分割
【原出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(508025655)クナウフ インシュレイション ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】