説明

バインダー混合物及びこれを含有している被覆剤並びにこれから製造された高い耐引掻き性及び耐候性並びに良好な光学特性を有する被覆

本発明は、ヒドロキシル基含有化合物(A)少なくとも1種及びバインダー混合物の不揮発性成分に対して少なくとも1.0質量%の、シラン基架橋用リン及び窒素含有の−触媒(D)少なくとも1種を含有している、バインダー混合物に関し、これは、ヒドロキシル基含有化合物(A)として、少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル(ここで、このポリエステルの平均少なくとも1つのヒドロキシル官能基は、少なくとも1種のC〜C−モノカルボン酸でエステル化されている)及び式(I)[式中、Rは、少なくとも3個のC原子を有する非環式脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素であり、Rは、R及び/又はRと同じ又は異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族の炭化水素であり、Rは水素又はR及び/又はRと同じ又は異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族の炭化水素である]の第3級アミン少なくとも1種でブロックされている、触媒(D)少なくとも1種を含有していることを特徴としている。更に本発明の課題は、このバインダー混合物をベースとしている被覆剤並びにこの被覆剤の使用下における多段被覆法、並びに効果付与性及び又は発色性の複層塗装を製造するためのクリアコートとしてのこの被覆剤の使用もしくは自動車量産塗装及び自動車補修塗装のためのこの被覆法の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的物は、少なくとも1種のヒドロキシル基含有化合物(A)及び混合物の不揮発性成分に対して少なくとも10質量%の、シラン基架橋用リン及び窒素含有の触媒(D)少なくとも1種を含有しているバインダー混合物である。
【0002】
更に本発明は、このバインダー混合物をベースとする被覆剤並びにこの被覆剤の使用下における多段被覆法並びにクリアラッカーとしてのこの被覆剤の使用又は自動車量産塗装及び自動車補修塗装のためのこの被覆法の使用に関する。
【0003】
EP−A−1273640は、ポリオール成分及び脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネート(この際、当初に遊離のイソシアネート基の0.1〜95モル%がビスアルコキシシリルアミンと反応されている)から成っている架橋成分を含有している被覆剤を記載している。触媒として、この被覆剤は、慣用の触媒、例えば有機錫化合物、例えばジブチル錫ジラウレート、アミン又はスルホン酸ベースの触媒、例えばp−トルエンスルホン酸を含有している。EP−A−1273640中に記載の被覆剤は、OEM−量産塗装(Serienlackierung)のために使用することができ、環境作用に対して良好な安定性と同時に、良好な耐引掻き性を有している。しかしながらこの被覆剤は、適用後の熱硬化の際の変換率が不充分であるので、極めて強く後架橋する傾向がある。このことは、特に耐候性に対して負に作用する。
【0004】
WO2008/074489から、少なくとも1種のヒドロキシル基含有化合物(A)及び少なくとも1種のイソシアネート基含有化合物(B)を含有している被覆剤が公知であり、この際、被覆剤の1以上の成分が加水分解可能なシラン基を有している。そこに記載の被覆剤がシラン基架橋用触媒(D)として、リン含有触媒、殊にアミンブロックされたリン酸エチルヘキシル部分エステルを含有していることが発明にとって重要である。それでリン酸エステルがブロックされるアミンの例として、第3級アミン、好ましくはトリエチルアミンが挙げられている。そこに記載の被覆剤は、良好な耐候性と同時に高い耐引掻き性を有する被覆をもたらしている。しかしながら、この被覆剤は光学的特性、殊に外観に関しては、なお更に改良されるべきである。更にこの被覆剤は、不満足な電気抵抗を有しているにすぎない。
【0005】
殊に被覆材料(Beschichtungsmaterialien)が適用の範囲で静電気負荷される場合には、この被覆材料の電気抵抗が特別重要である。それぞれの設計に応じて、工業的安全性の理由から、被覆材料は、2K−被覆剤の場合には個々の塗装成分も、特定の電気抵抗値を下回ってはならないことが必要である。このような背景の下では、電気抵抗に関して特定の最低値を下回らない被覆材料を提供することが重要である。従って自動車量産塗装の分野では、通常、被覆材料は、又は2K−被覆剤の場合には個々のラッカー成分も、低くても200kΩ、有利には低くても250kΩ、特別好ましくは低くても300kΩを有することが要求される。それぞれ要求される限界値は、装置特異的な限界値であり、装置製造業者の基準(Vorgaben)に応じて変動することがありうる。従ってそれぞれの最大限界値は、それらが種々の装置の指示を満足するので、特別好ましい。
【0006】
電気抵抗は、Byk Gardner社製のLC2型の伝導度測定装置付き浸漬測定セルを用いて、DIN 55667に従い、25℃で測定される。
【0007】
最後に、未公開ドイツ特許出願DE102008060454.2−43明細書中には、DIN53240に従い測定されたOH価≧180mgKOH/gを有する超分枝された樹枝状ヒドロキシ官能性ポリエステル(A)少なくとも1種並びに少なくとも部分的に加水分解可能なシラン基を有しているポリイソシアネート(B)を含有している、被覆剤が記載されている。シラン基の架橋用触媒(D)として、リン含有触媒、殊にアミンブロックされたリン酸エチルヘキシル部分エステルが使用されている。これでリン酸エステルがブロックされるアミンの例としては、第3級アミン、例えばジメチルドデシルアミン又はトリエチルアミン並びに二環式アミン、例えばジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)が挙げられている。しかしながらこの文献中には、いかにしてバインダー混合物及び被覆剤の電気抵抗を調節できるかに関する記載は含まれていない。リン酸エステルのブロッキングのために、少なくとも1個の分枝した脂肪族炭化水素基を含有しているアミンを使用することも記載されていない。
【0008】
発明が解決しようとする課題
従って本発明は、バインダー混合物及びこれから製造された、殊にOEM−自動車量産塗装の場合及び自動車補修塗装の場合のクリアコート層を得るための被覆剤を提供することを課題としており、これは、良好な酸抵抗性及び良好な耐候性と同時に高い耐引掻き性並びに同時に非常に良好な光学的全体印象(いわゆる非常に良好な外観)を有する被覆をもたらす。
【0009】
従って、高度な耐候性の網状組織(Netzwerk)をもたらし、同時に高い耐酸性を保証する被覆剤が提供されるべきである。これと並んでこの被覆剤は、熱硬化の直後に既に高度に耐引掻き性であり、かつ殊に引掻き負荷の後にも高い光沢保持性を有している被覆をもたらすべきである。更に、この被覆及び塗装は、特に、>40μmの層厚でも応力亀裂を生じることなく製造することのできるクリアラッカー塗装を製造できるべきである。このことは、被覆及び塗装の使用のための、特に自動車量産塗装(OEM)の工業的及び美学的に特別要求される分野でのクリアラッカー塗装の使用のための重要な前提である。
【0010】
同時に、バインダー混合物及びこれから製造される被覆剤は、電気抵抗に関して特定の最低値を下回るべきではない。自動車塗装の分野では、通常、個々のラッカー成分、例えばバインダー混合物の及びこれから製造される被覆剤の電気抵抗は、低くても200kΩ、有利には低くても250kΩ、特別好ましくは低くても350kΩであることが要求される。
【0011】
最後に、この被覆剤は良好な透明性(低いヘイズ値)及び良好なレベリング性をも示し、かつ、良好な光学的な全体的印象を有する被覆をもたらすべきである。
【0012】
課題を解決するための手段
前記の課題の下で、ヒドロキシル基含有化合物(A)少なくとも1種及び混合物の不揮発性成分に対して少なくとも1.0質量%の、シラン基架橋用リン及び窒素含有の触媒(D)少なくとも1種を含有している、非プロトン性溶剤をベースとしているバインダー混合物が発見され:この混合物は、次の特徴を有している:
(i)ヒドロキシル基含有化合物(A)として、ポリエステルの平均して少なくとも1個のヒドロキシル官能基が異性体C〜C−モノカルボン酸の群から選択された少なくとも1種の酸でエステル化されている、ヒドロキシ官能性ポリエステル少なくとも1種を含有し、かつ
(ii)触媒(D)として、式(I)
【化1】

[式中、Rは、C原子少なくとも3個を有する非環式脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素基であり、Rは、R及び/又はRと同じ又は異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族の炭化水素基であり、Rは水素又はR及び/又はRと同じ又は異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族の炭化水素基である]のアミン少なくとも1種でブロックされている、リン含有触媒少なくとも1種を含有している。
【0013】
更に本発明は、バインダー混合物をベースとしている被覆剤並びにこの被覆剤の使用下での多段被覆法並びにクリアラッカーとしてのこの被覆剤の使用もしくは自動車量産塗装及び自動車補修塗装のための並びに自動車付属部材の被覆のためのこの被覆剤の使用に関する。
【0014】
技術水準を考慮すれば、本発明の根底にある課題を、本発明によるバインダー混合物を用いて又はこのバインダー混合物をベースとしている本発明による被覆剤を用いて解決できることは、当業者にとっては意想外であり、かつ予測可能なことではなかった。
【0015】
従って殊に、本発明によるバインダー混合物及び相応する本発明による被覆剤が、その比較的高い触媒(D)割合にも関わらず、自動車量産塗装(OEM)の分野で要求されるような、低くても200kΩ、特に低くても250kΩ、特別好ましくは低くても350kΩの電気抵抗を有することは、意想外のことである。
【0016】
同時に本発明による被覆剤は、新規の被覆及び塗装を、特に、高い耐引掻き性で、慣用の高度架橋された耐引掻き性系とは対照的に耐酸性であるクリアコート塗装を提供する。更に、本発明による被覆及び塗装は、特にクリアコート塗装を、>40μmの層厚でも、応力亀裂を生じることなしに製造することができる。それ故に、本発明による被覆及び塗装、殊にクリアコート塗装は、工業的及び美学的に特別要求の高い自動車量産塗装(OEM)の分野で使用することができる。この場合に、これらの塗装は特別高い洗車機安定性(Waschstrassenbestaendigkeit)及び耐引掻き性によって優れている。殊に被覆の最終硬化の直後の被覆の高い耐引掻き性が生じるので、この被覆は最終硬化の直後にも、問題なく取り扱うことができる。
【0017】
更にこのバインダー混合物及び被覆剤が、良好な透明性(低いヘイズ値)及び良好なレベリング性を示すと同時に良好な光学的全体印象を有する被覆をもたらすことは、意想外のことである。最後に本発明による成分は、特別簡単にかつ非常に良好な再現可能に製造することができ、ラッカー適用時に顕著な毒物学的及び環境学的問題を生じない。
【0018】
発明の記載
本発明によるバインダー混合物
ヒドロキシ官能性ポリエステル(A)
発明にとって重要なことは、本発明によるバインダー混合物が少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステルを含有し、この際、このヒドロキシ官能性ポリエステルの平均して少なくとも1個のヒドロキシ官能基が、異性体C〜C−モノカルボン酸の群から選択される少なくとも1種の酸でエステル化されていることである。こうして殊に、生じる被覆の満足しうる残留光沢が達成できる。少なくとも1種のC〜C−カルボン酸での前記のエステル化は、同義語で「酸変性(Saeremodifikation)」とも称される。
【0019】
異性体C〜C−モノカルボン酸の残基は飽和されていることが有利である。このようなクリアラッカー組成物は良好な耐候性を有する。
【0020】
〜C−モノカルボン酸の残基がオクタン酸又はイソノナン酸の残基である場合に、本発明における特別有利な特性が生じる。C〜C−モノカルボン酸として、イソノナン酸を使用することが特別好ましい。
【0021】
異性体C〜C−モノカルボン酸でのエステル化のために、超分枝した樹枝状ヒドロキシ官能性ポリエステルを使用することが好ましい。超分枝した樹枝状化合物、即ち超分枝した樹枝状巨大分子及びデンドリマーは、一般に樹枝状構造を有する3次元の高度分枝した分子と記載することができる。デンドリマーは、高度対称性であり、一方で、超分枝及び/又は樹枝状と称される類似の巨大分子は、特定の尺度で不対称性であることができ、それでもなお、高度分枝した樹枝状構造を保持している。超分枝した樹枝状の巨大分子は、通常は、1以上の反応性位置及びある数の分枝層(Generationen:ジェネレーション)及び場合によっては連鎖終端分子の1層を有する開始剤又は核(Nukleus)から出発して製造されていることができる(divergenter Syntheseansatz:分岐した合成バッチ)。分枝層の後続の反復は、通常は高い分枝多重性(Verzweigungsmultiplizitaet)及び場合によっては及び所望の場合には、多数の末端基を生じる。これらの層は、通常は、ジェネレーション(Generationen)と、かつ、枝(Zweige)はデンドロン(Dendrone)と称される。
【0022】
本発明により使用される、異性体C〜C−モノカルボン酸で変性されたポリエステル(A)は、好ましくは≧150mgKOH/gのヒドロキシル価、殊に>180mgKOH/g、好ましくは185〜240mgKOH/gのヒドロキシル価(DIN53240に従い測定)を有する。殊に、16より大きいヒドロキシ官能性(ヒドロキシ官能性ポリエステルの遊離又はエステル化されたヒドロキシル基の数によって示される)を有するポリエステルが使用される。このようなクリアラッカー組成物は、充分なマイクロ硬度(即ち、>90N/mm、DIN ISO 14577に従い、最大出力25.6mNを有するFirma Fischerのフィッシャースコープ測定装置(Fischerscope Messgeraetes)を用いて測定)を有し、耐引掻き性及び耐化学薬品性である。
【0023】
同様に、≦8.0、好ましくは0〜6.0の酸価(DIN 53402に従い測定)を有するヒドロキシ官能性ポリエステル(A)が好ましい。ポリエステルのこのような酸価は、このポリエステルと他のラッカー原料との良好な相容性及び改良されたレベリング性をもたらす。
【0024】
更に、1500〜4000g/モル、好ましくは2000〜3500g/モルの数平均分子量(0.1モル/酢酸lを有するTHF中のポリスチレン標準を用いるGPCで測定)を有するヒドロキシ官能性ポリエステル(A)が好ましい。樹枝状ポリエステルの相応する狭い分子量分布と結びついているこのような低い分子量は、一般に良好な相容性をもたらす。
【0025】
多分散性Mw/Mn<4を有するポリエステルを使用することが有利である。この場合に、ポリエステルがなお小さい多分散性、即ちMw/Mn<2.5、殊にMw/Mn≦2.0を有する場合に、特別良好な特性を生じる。
【0026】
簡単で信頼性のある再現可能に製造でき、その特性及び最終構造が容易かつ快適に適合させることのできる、一分散性の又は実質的に一分散性のポリエステルが特別好ましく使用される。
【0027】
このようなポリエステルは、EP991690B1におけるような、反応性で、かつ場合によっては保護されたヒドロキシル末端基を有する樹枝状ポリマーのポリアルコール(ポリエステルポリオール)の合成法によって製造可能である、ヒドロキシ官能性ポリエステルの部分的エステル化を介して製造することができる:
− この際、このポリマーのポリアルコールは、n個の樹枝状枝を有しており、これは、n個の反応性基(A1)を有するモノマー又はポリマーの開始剤分子に由来しており、ここで、各々の枝は、g個の分枝ジェネレーションを包含しており、この際、各ジェネレーションは、3個の官能基(その内の少なくとも2個は、反応性ヒドロキシル基(A2)であり、1個は、反応性基(A1)及び/又はヒドロキシル基(A2)と反応性であるカルボキシル基(A3)である)を有するポリマー又はモノマーの分枝鎖延長剤少なくとも1種を包含しており、かつ、場合によっては、2個の官能基(この1個は保護されたヒドロキシル基(A2'')であり、1個はヒドロキシル基と反応性である基(A4)である)を有するスペーサー(Abstandhalter)連鎖延長剤少なくとも1種を包含しているスペーサージェネレーション少なくとも1つを包含しており、ここで、n及びgは整数であり、少なくとも1である、
− この際、(i) 使用されているモノマー又はポリマーの連鎖分枝延長剤の2個のヒドロキシル基(A2)は、アセタール保護されたヒドロキシル基(A2’)であり、ここで、アセタールによる保護は、2個のヒドロキシル基(A2)と1個のアセタール形成性カルボニル化合物との間の反応によって得られる;及び
− (ii) 反応性基(A1)とカルボキシル基(A3)との少なくとも1のモル比での反応性基(A1)とカルボキシル基(A3)との間の反応によって、第一分枝ジェネレーションが開始剤分子に付加され、これによって、アセタール保護されたヒドロキシル基(A2’)及びn個の樹枝状枝(これは1ジェネレーションを包含)を有するポリマーのポリアルコールが得られ、この際に、アセタール保護されたヒドロキシル基(A2’)は、場合によってはアセタール分解によって脱保護され、これによって反応性ヒドロキシル基(A2)を有するポリマーのポリアルコールが得られる;及び、この際、
− (iii) 更なる分枝ジェネレーションが、g−1の繰り返し工程で、反応性ヒドロキシル基(A2)(これは、アセタール分解による脱保護により得られる)とカルボキシル基(A3)との間の、ヒドロキシル基(A2)とカルボキシル基(A3)との少なくとも1のモル比での反応によって付加され、これによって、アセタール保護されたヒドロキシル基(A2’)とn個の樹枝状枝(これは、2個以上のジェネレーションを包含)を有するポリマーのポリアルコールが得られ、この際に、このアセタール保護されたヒドロキシル基(A2’)は、場合によりアセタール分解によって脱保護され、これにより、反応性ヒドロキシル基(A2)を有するポリマーのポリアルコールが得られる;及び
− 場合により(iv) 工程(ii)に及び/又は工程(iii)の繰り返し工程に、引き続き、それぞれ、
(a)部分的な保護、例えば供給可能な反応性ヒドロキシル基(A2)のアセタール、ケタール及び/又はエステルとしての保護[これによって、工程(iii)での又は繰り返し工程(ii)での使用のための少なくとも1個の反応性ヒドロキシル基(A2)を有するポリマーのポリアルコールが得られる]及び/又は
(b)場合によるスペーサー連鎖延長剤の添加[これは、保護されたヒドロキシル基(A2'')の脱保護の後に、工程(iii)又は繰り返し工程(iii)での使用のための反応性ヒドロキシル基(A2)及びn個の樹枝状枝(これは1以上の分枝ジェネレーションを包含し、かつ、少なくとも1つのスペーサージェネレーションは少なくとも1つの部分ジェネレーションである)を有するポリマーのポリアルコールを生じる];
を行う。
【0028】
本発明によるバインダー混合物及び相応する本発明による被覆剤は、発明に重要なヒドロキシ官能性ポリエステル(A)と共に、場合により他のヒドロキシル基含有化合物(C)を含有することができる。他のヒドロキシル基含有化合物(C)としては、低分子量のポリオールをもオリゴマー及び/又はポリマーのポリオールをも使用することができる。成分(C)としては、成分(A)とは異なるポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリシロキサンポリオール及び殊にポリアクリレートポリオール及び/又はポリメタクリレートポリオール並びにこれらのコポリマーが特別好ましい。これらの場合による化合物(C)は、一般に被覆剤の全質量に対して0〜30質量%の量で使用される。
【0029】
触媒(D)
本発明によるバインダー混合物及び本発明による被覆剤は、少なくとも1種のリン及び窒素含有の触媒(D)を含有することが発明にとって重要である。この場合には、2種以上の異なる触媒(D)からの混合物を使用することもできる。
【0030】
好適な触媒(D)の例は、有利に、アミンブロックされた非環状ホスホン酸ジエステル、アミンブロックされた環状ホスホン酸ジエステル、アミンブロックされた非環状ジホスホン酸ジエステル及びアミンブロックされた環状ジホスホン酸ジエステルから成る群からのアミンブロックされ、置換されたホスホン酸ジエステル及びアミンブロックされたジホスホン酸ジエステルである。相応するブロックされていないリン含有触媒は、例えばドイツ特許出願DE−A−102005045228明細書中に記載されている。しかしながら、有利にはアミンブロックされた非環状リン酸ジエステル及びアミンブロックされた環状リン酸ジエステルから成る群からのアミンブロックされ、置換されたリン酸モノエステル及びリン酸ジエステルが使用される。生じる処方物の貯蔵安定性を確保することができるためには、リンベースのこの触媒のアミンでのブロッキングが必要である。
【0031】
本発明により使用されるアミンブロックされた触媒(D)の製造のためには、殊に、
一般式(II):
【化2】

[式中、基R10及びR11は、次の群:
− 炭素原子数1〜20、有利には2〜16、殊に2〜10を有する置換又は非置換のアルキル基、炭素原子数3〜20、有利には3〜16、殊に3〜10を有するシクロアルキル基及び炭素原子数5〜20、有利には6〜14、殊に6〜10を有するアリール基、
− 置換及び非置換のアルキルアルキル基、アリールアルキル基、アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールシクロアルキル基、シクロアルキルアリール基、アルキルシクロアルキルアリール基、アルキルアリールシクロアルキル基、アリールシクロアルキルアルキル基、アリールアルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキルアリール基及びシクロアルキルアリールアルキル基(この際、ここに含有されているアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、それぞれ前記の炭素原子数を有している)及び
− 少なくとも1個の、殊に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子及び珪素原子から成る群から選択される1個のヘテロ原子、殊に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子を含有している、前記種類の置換又は非置換の基
から選択され、付加的に水素原子を表すこともできる(部分エステル化)]の非環状リン酸ジエステル(D)の群から選択される非環状リン酸ジエステル(D)が好適である。
【0032】
触媒(D)として、アミンブロックされたリン酸アルキルエステル及びリン酸フェニルエステル、全く特別に好ましくはアミンブロックされたリン酸フェニルエステルが特別好ましく使用される。
【0033】
この被覆剤又はバインダー混合物の必要な電気抵抗を達成するためには、この触媒(D)が、式(I):
【化3】

[式中、
は、C原子数少なくとも3を有する、非環式脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素基であり、
は、R及び/又はRと同じ又は異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素基であり、
は、水素又はR及び/又はRと同じ又は異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素基である]のアミン1種以上でブロックされていることが、発明にとって重要である。
【0034】
リンをベースとする触媒は、水溶液中で、殊にアニオンが、高リン酸塩(二リン酸塩、三リン酸塩及び高同族体)に縮合している場合には、David R.Lide, CRC Handbook of Chemistry and Physics, 73rd.Edition, 1992-1993, S,5-112中に記載のように、特別高いモル伝導性を示す。
【0035】
前記の触媒と式(I)のアミン少なくとも1個を含有しているブロッキング剤との本発明による組み合わせは、リンをベースとする触媒(D)が本発明によるバインダー混合物の不揮発性成分に対して少なくとも1質量%の濃度で使用される場合ですら、意外にも伝導性の明らかな低下を、即ち、生じる被覆の機械技術的特性の達成のために必要である電気抵抗の上昇をもたらす。
【0036】
式(I)中のRは、少なくとも3のC原子数を有する非環式脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素基である。Rは、R及び/又はRと同じ又は異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族基である。R、R及びRは、純粋な脂肪族の非環式構造と並んで、芳香族構造をも含有することができる。Rは水素又はRと同じであるか又はRと同じであるか又はR及びRとは異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素基を表す。Rは同様に、純粋な脂肪族構造と並んで芳香族構造を含有することもできる。
【0037】
式(I)の第3級アミンを使用することが好ましい。それというのも、これは被覆剤の他の成分、殊にイソシアネート基含有化合物(B)とは反応できない利点を有するからである。
【0038】
式中の基R、R及びRの少なくとも1個、好ましくは基R、R及びRの少なくとも2個が、C原子数6〜18、特別好ましくはC原子数8〜14を有する、式(I)のアミンを使用することが好ましい。
【0039】
殊に、式中の基R、R及びRの少なくとも1個が分枝脂肪族炭化水素基である、式(I)のアミンが使用される。式中の基R、R及びRの少なくとも2個、好ましくは基R、R及びRの全ての3個が分枝脂肪族炭化水素基である、式(I)のアミンが特別好ましい。式中の基R、R及びRの少なくとも1個、殊に2個、全く特別好ましくは全てが、C原子数少なくとも3、好ましくはC原子数6〜18、特別好ましくはC原子数8〜14を有する分枝脂肪族炭化水素基である、式(I)のアミンが全く特別好ましく使用される。
【0040】
式中の基R、R及びRの少なくとも1個が分枝脂肪族炭化水素基である、式(I)のアミンの使用によって、必要な電気抵抗を保証するのみならず、同時にブロックされた触媒の結晶化をも避ける、被覆剤の提供が成功する。勿論、ブロックされた触媒の結晶化をもたらすような、式(I)のアミンも本発明により使用することもできる。このことは、殊に基Rが水素であり、R及びRが線状脂肪族炭化水素基であるか、又は基R、R及びRの全てが線状脂肪族炭化水素基である、アミン(I)の場合に観察される。従って、ブロックされた触媒の沈殿を避けるために通常は、結晶化抑制剤の添加が必要である。しかしながら、好適な結晶化抑制剤の使用又は探求は困難であることが明らかでありうる。
【0041】
本発明によれば、触媒(D)を、もっぱら式(I)のアミン1種を用いてブロックするだけでなく、本発明により使用される触媒(D)のブロックのために、2種の異なるアミン(I)からの又は少なくとも1種の式(I)のアミンとこれとは異なるアミン少なくとも1種とからの混合物を使用することも可能である。従って例えば、線状の基R、R及び/又はRを有する第2級又は第3級アミン(I)と少なくとも1個の分枝した基を有する式(I)の第2級又は第3級アミン(I)、殊に基R、R及びRの少なくとも1個がC原子数6〜18、好ましくはC原子数8〜14を有する分枝脂肪族炭化水素基である、式(I)のアミンとの混合物を使用することができる。好適な混合物の使用は、同様に可能な結晶化を防止することができる。従ってこの分枝したアミン(I)は、結晶化抑制剤として作用する。
【0042】
1種又は複数種のアミンブロックされたリン含有触媒(D)は、ブロッキング剤として8pmより大きい輪郭長さ(Kontourlaenge)を有する、式(I)の第3級アミン少なくとも1種を含有することが特別好ましい。
【0043】
この場合に輪郭長さは、それぞれのアミンの全長が個々の原子のその都度の水素化及びその結果としての結合角度の考慮の下に、1平面に投影することによって査定される。その都度の分子の最大長さを1線上に投影する投影法が再び使用される。例示的にこのことを、ペンチルアミンの輪郭長さの査定を用いて示す。
【0044】
【化4】

【0045】
それぞれは垂直投影であるので、それぞれのコサイン変換(Kosinustransformationen)が計算のために利用される:
【表1】

【0046】
この場合に、これらの結合長さは文献から引用される(例えば、Marye A.Fox, James K.Whitesell:Organische Chemie.Spektrum Akademischer Verlag, 1995, ISBN 3860252496参照)。全輪郭長さは、表による個々の分担値の合計から得られる。この例では、ペンチルアミンの輪郭長さは、536pm+95pm+87pm=718pmであることが明らかである。
【0047】
この輪郭長さ及びこれから生じる流体力学的容積の相応する査定は、154pmの平均結合長さの採用(Annahme)並びにsp−水素化に基づく相応する有機結合に関する30°の投影角に基づいている。補足的には、H.-G-Eliasの教科書≫Makromole−kuele≪、Huethig & Wepf Verlag,Basel,Band 1,≫Grundlagen≪、51頁が参照される。
【0048】
これを用いてリン酸エステルがブロックされる好適なアミン(I)の例としては、線状脂肪族アミン、例えばトリオクチルアミン、ジオクチルアミン、オクチルジメチルアミン、ジノニルアミン、トリノニルアミン、ノニルジメチルアミン、トリドデシルアミン、ドデシルジメチルアミン等を挙げることができる。好ましくは分枝したアミン、例えばジ−(イソプロパノール)アミン、ジイソアミルアミン、ジイソブチルアミン、ジイソノニルアミン及び殊に分枝した第3級アミン、例えばイソドデシル−ジメチル−アミン、トリス−(2−エチルヘキシル)アミン、トリイソアミルアミン、トリイソノニルアミン、トリイソオクチルアミン及びトリイソプロピルアミンが、場合により線状脂肪族アミンと一緒に使用される。
【0049】
本発明によれば、触媒(D)として、アミンブロックされたリン酸フェニルエステルを、かつここでは殊に、トリス(2−エチルへキシル)アミン、ドデシルジメチルアミン及び/又はイソドデシルジメチルアミンで、全く特別好ましくはトリス−(2−エチルへキシル)アミンでブロックされたリン酸フェニルエステルが全く特別好ましく使用される。
【0050】
アミンでブロックされた特定のリン酸触媒は、市場でも入手可能である(例えば、King Industries社製のNacure−Typen)。
【0051】
触媒は、有利に本発明のバインダー混合物の不揮発性成分に対して低くても1.0質量%の割合で、好ましくは2.0〜5.0質量%の割合、特に好ましくは2.0〜5.0質量%の割合で使用される。この場合に、この触媒の低い作用効果は、相応する高い使用量によって、部分的に補償することができる。
【0052】
できるだけ釣合いのとれた特性像に達するために、通常はブロックされた触媒のできるだけ高い濃度を得る努力がなされる。このことは、シラン基の架橋ができるだけ完全に起こり、これに伴い高い網状組織密度(Netzwerkdichte)、結果的に高い耐引掻き性並びに良好な耐化学薬品性を達成する利点を有する。更に、この硬化過程の終了直後に既にシラン基のほぼ完全な変換が達成される場合には、後架橋処理のリスクは特別低い。使用すべき触媒量に関する上限は、装置製造者の指示に応じて特異的に変えることのできる電気抵抗値によって与えられる。
【0053】
本発明によるバインダー混合物及び/又は本発明による被覆剤は、二環式アミン、殊に不飽和の二環式アミンをベースとするもう1種のアミン−触媒を含有することができる。好適なアミン−触媒の例は、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセ−7−エンである。
【0054】
これらのアミン−触媒は、有利には本発明によるバインダー混合物の不揮発性成分に対して0.01〜20質量%の割合で、特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で使用される。
【0055】
バインダー混合物の更なる成分
このバインダー混合物は、通常はなお、少なくとも1種の有機溶剤を含有する。本発明によるバインダー混合物の溶剤としては、殊に、バインダー混合物中又は被覆剤中で、化合物(A)、(B)及び場合による(C)に対して化学的に不活性であり、かつ、被覆剤の硬化時にも(A)及び(B)と反応しないものが好適である。このような溶剤の例は、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ソルベッソ100又はHydrosol(登録商標)(ARAL社製)、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はメチルアミルケトン、エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル又はプロピオン酸エチルエトキシ、エーテル又は前記溶剤の混合物である。非プロトン性溶剤又は溶剤混合物は、溶剤に対して最大でも1質量%、特別好ましくは最大でも0.5質量%の水含有率を有することが好ましい。良好な外観を確保するために、溶剤として殊に高割合の酢酸ブチル、特別好ましくは溶剤混合物の全質量に対して最低でも60質量%の酢酸ブチルを使用することが好ましい。
【0056】
相応する所望の揮発度数に調節するために、更なる他の溶剤が使用される。
【0057】
本発明によるバインダー混合物の固体含有率は、有利には低くても50質量%、好ましくは低くても70質量%である。
【0058】
最後に、本発明によるバインダー混合物は、なお1種以上の下記の慣用かつ公知のラッカー添加物(F)を含有することができる。
【0059】
本発明による被覆剤
イソシアネート基含有化合物(B)
本発明による被覆剤は、前記の本発明によるバインダー混合物と共に、少なくとも部分的に加水分解可能なシランを含有しているイソシアネート基を有する飽和化合物(B)少なくとも1種を含有する。
【0060】
本発明により好ましく使用されるイソシアネート基含有化合物(B)の基体として作用するジ−及び/又はポリイソシアネートは、好ましくは、自体公知の置換又は非置換の飽和芳香族、脂肪族、脂環式及び/又はヘテロ環式ポリイソシアネートである。好ましいポリイソシアネートは、次のものである:2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロ−ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えば、Bayer AG社製のDesmodur(登録商標)W)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(例えば、American Cyanamid社製のTMXDI(登録商標))及び前記ポリイソシアネートの混合物。更に好ましいポリイソシアネートは、前記ジイソシアネートのビウレット−二量体及びイソシアヌレート−三量体である。
【0061】
特別好ましいポリイソシアネートPIは、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、これらのビウレット−二量体及び/又はイソシアヌレート−三量体である。
【0062】
本発明のもう一つの実施態様で、ポリイソシアネートは、ポリオールと化学量論的に過剰な前記ポリイソシアネートとの反応により得られる、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネート−プレポリマーである。このようなポリイソシアネート−プレポリマーは、例えば、US−A−4598131中に記載されている。
【0063】
イソシアネート基含有化合物(B)が少なくとも部分的に加水分解可能なシラン基を含有していることが、発明にとって重要である。この加水分解可能なシラン基は、最終硬化された被覆中に、統計的に分布しているSi−O−Si網状組織を形成させる。このことは、この被覆の特定範囲内のSi−O−Si網状組織の適切な増加又は減少をもたらことではないことを意味する。
【0064】
化合物(B)は、
式(III):
【化5】

[式中、R’=水素、アルキル又はシクロアルキル(ここで、炭素鎖は、非隣接の酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてよく、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル)、好ましいR’=エチル及び/又はメチル、
X、X’=炭素原子数1〜20を有する線状及び/又は分枝したアルキレン又はシクロアルキレン基、好ましいX、X’=炭素原子数1〜4を有するアルキレン基、
R''=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル(ここで、炭素鎖は、非隣接の酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてよく、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル)、好ましいR''=殊にC原子数1〜6を有するアルキル基、n=0〜2、m=0〜2、m+n=2及びx、y=0〜2]の構造単位少なくとも1個2.5〜97.5モル%(構造単位(III)及び(IV)の全体に対して)及び
式(IV):
Z−(X−SiR''(OR’)3−x) (IV)
[式中、Z=−NH−、−NR−、R=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル(ここで、炭素鎖は、非隣接の酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてよく、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル)、x=0〜2及び
X、R’、R''は式(III)中に記載のものを表す]の構造単位少なくとも1個2.5〜97.5モル%(構造単位(III)及び(V)の全体に対して)
を有していることが有利である。
【0065】
それぞれの好ましいアルコキシ基(OR’)は、同じ又は異なるものであってよいが、基の構成にとって、それらが加水分解可能なシラン基の反応性にどの程度影響するかが決定的である。
【0066】
R’は殊にC原子数1〜6を有するアルキル基であることが好ましい。シラン基の反応性を高める基R’、即ち良好な放出基(Abgangsgruppe)が特別好ましい。その限りにおいて、メトキシ基がエトキシ基に比べて、かつ、これがプロポキシ基に比べて好ましい。従って、R’=エチル及び/又はメチル、殊にメチルが特別好ましい。
【0067】
更に、有機官能性シランの反応性は、シラン官能基と有機官能基との間の、変性された成分との反応に作用するスペーサーXの長さによっても著しく影響されうる。この例としては、α−シランが挙げられ、これはFirma Wackerから入手され、ここでは、γ−シランの場合に存在するプロピレン基の代わりに1個のメチレン基が、Si−原子と官能基との間に存在している。
【0068】
本発明により特別好ましい、構造単位(III)及び(IV)で官能化されたイソシアネート基含有化合物(B)は、特別好ましくは前記のジ−及び/又はポリイソシアネートと式(IIIa):
【化6】

の化合物及び式(IV):
H−Z−(X−SiR''(OR’)3−x) (IVa)
[式中、置換基は前記のものを表す]の化合物との反応によって得られる。
【0069】
本発明により好ましい化合物(IIIa)は、ビス(2−エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4−ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2−エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリエトキシシリル)アミン及び/又はビス(4−ブチルトリエトキシシリル)アミンである。ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンが全く特別好ましい。このようなアミノシランは、例えば、DYNASYLAN(登録商標)なる商品名で、DEGUSSA社から、又はSilquest(登録商標)なる商品名でOSI社から入手可能である。
【0070】
本発明により好ましい化合物(IVa)は、アミノアルキル−トリアルコキシシラン、例えば、特に2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシランである。特別好ましい化合物(IVa)は、N−(2−(トリメトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アルキルアミン、N−(4−(トリメトキシシリル)ブチル)アルキルアミン、N−(2−(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アルキルアミン及び/又はN−(4−(トリエトキシシリル)ブチル)アルキルアミンである。N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンが全く特別好ましい。このようなアミノシランは、例えば、DYNASYLAN(登録商標)なる商品名でDEGUSSA社から、又はSilquest(登録商標)なる商品名でOSI社から入手可能である。
【0071】
本発明により全く特別好ましい構造(III)及び(IV)で官能化されたイソシアネート基含有化合物(B)は、特別好ましくは、前記のジ−及び/又はポリイソシアネートと前記化合物(IIIa)及び(IVa)との反応によって製造される:ここでは、
ポリイソシアネート基体中のイソシアネート基の2.5〜90モル%、好ましくは5〜85モル%、特別好ましくは7.5〜80モル%が少なくとも1種の化合物(IIIa)と反応され、かつ、
ポリイソシアネート基体中のイソシアネート基の2.5〜90モル%、好ましくは5〜85モル%、特別好ましくは7.5〜80モル%が少なくとも1種の化合物(IVa)と反応される。
【0072】
化合物(IIIa)及び(IVa)と反応したイソシアネート基の合計分は、ポリイソシアネート化合物(B)中に、ポリイソシアネート基体中のイソシアネート基の5〜95モル%、好ましくは10〜90モル%、特別好ましくは15〜85モル%で存在する。
【0073】
全く特別好ましいイソシアネート基含有化合物(B)は、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネート及び/又はこれらのイソシアヌレート−三量体とビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン及びN−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンとの反応生成物である。
【0074】
本発明により使用されるポリイソシアネート硬化剤(B)の固体含有率は、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%であることが有利である。
【0075】
本発明により使用されるポリイソシアネート硬化剤は、少なくとも1種の水捕獲剤、例えばイソシアネートよりも水に対してより高い反応性を有する反応性シランを含有することが有利である。水捕獲剤として殊にオルトギ酸トリアルキルエステルを使用することが有利である。水捕獲剤として、特別好ましくはオルトギ酸トリエチルが使用される。被覆剤の不揮発性分の全含分に対して0.01質量%〜10質量%、好ましくは0.03質量%〜5.0質量%の水捕獲剤少なくとも1種を添加することが有利である。
【0076】
イソシアネート基含有化合物(B)と化合物(IIIa)及び(IVa)との反応は、有利には不活性雰囲気中で、最大でも100℃、好ましくは最大でも60℃の温度で行われる。好ましくはイソシアネート基含有化合物(B)と化合物(IIIa)及び(IVa)とのこの反応は、少なくとも1種の水捕獲剤の存在下及び少なくとも1種のアミンの存在下に、好ましくは少なくとも1種の第3級アミン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミン、殊にトリエチルアミンの存在下に、1溶剤中又は溶剤混合物中で行われる。
【0077】
この合成の間に、反応混合物の不揮発性分の全含分に対して、少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも2質量%、特別好ましくは少なくとも3質量%、全く特別好ましくは少なくとも4質量%の水捕獲剤、好ましくはオルトギ酸トリエチルを添加することが好ましい。
【0078】
この合成の間に、アミンを、反応混合物の不揮発性分の全含分に対して少なくとも2〜6質量%の量で使用することが好ましい。この合成の間にトリエチルアミンを、反応混合物の不揮発性分の全含分に対して1.5〜3.5質量%の量で使用することが特別好ましい。
【0079】
その中でポリイソシアネート硬化剤が製造される溶剤又は溶剤混合物は、芳香族炭化水素、例えば1,2,4−トリメチルベンゼン、メシチレン、キシレン、プロピルベンゼン及びイソプロピルベンゼンから成っていることができる。芳香族炭化水素からの好適な溶剤混合物の例は、ソルベントナフサである。その中でポリイソシアネート硬化剤が製造される溶剤は、脂肪族炭化水素、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はメチルアミルケトン、エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル又はプロピオン酸エチルエトキシ、エーテル又は前記溶剤からの混合物から成っていることもでき、この際、溶剤混合物の全質量に対して高割合の酢酸ブチル、殊に少なくとも60質量%の酢酸ブチルを有する溶剤混合物が好ましい。この溶剤混合物は、少なくとも80質量%の酢酸ブチル、殊に少なくとも95質量%の酢酸ブチルを含有することが特別好ましい。純粋な酢酸ブチル中で操作することが全く特別有利である。
【0080】
選択的に、ポリイソシアネート硬化剤は、第1工程で、平均して1モル当たり、ポリイソシアネートのイソシアネート基の最大1個とアミノ官能性アルコキシシランとを反応させ、第2工程で、得られた中間生成物を、二量化、三量化、ウレタン形成、ビウレット形成又はアロファネート形成によってポリイソシアネートに変換させることによっても、有利に製造されうる。
【0081】
イソシアネート基含有化合物Bの遊離イソシアネート基は、ブロックされた形でも使用されうる。このことは、本発明による被覆剤が一成分系として使用される場合に好ましい。ブロッキングのためには、原則的に、ポリイソシアネートのブロッキングのために使用可能な、充分に低い脱ブロッキング温度を有する各々のブロッキング剤を使用することができる。このようなブロッキング剤は、当業者にとってはよく知られている。例えばEP−A−0626888及びEP−A−0692007中に記載されている様なブロッキング剤が好ましく使用される。
【0082】
被覆剤の成分A、B、場合によるC及びD並びに他の成分の組み合わせ
イソシアネート基含有化合物(B)の質量割合に対する使用すべきヒドロキシル基含有ポリエステル(A)の質量割合は、ポリエステルのヒドロキシ当量及びポリイソシアネートの遊離イソシアネート基の当量に依存する。
【0083】
本発明による被覆剤中では、構造単位(III)及び(IV)の合計に対して2.5〜97.5質量%の構造単位(III)及び構造単位(III)及び(IV)の合計に対して2.5〜97.5質量%の構造単位(IV)が存在することが好ましい。
【0084】
本発明による被覆剤は、好ましくは被覆剤中の不揮発性物質の含分に対して2.5〜97.5質量%、特別好ましくは5〜95質量%、全く特別好ましくは10〜90質量%、殊に20〜80質量%のヒドロキシル基含有ポリエステル(A)及び好ましくは被覆剤中の不揮発性物質の含分に対して、2.5〜97.5質量%、特別好ましくは5〜95質量%、全く特別好ましくは10〜90質量%、殊に20〜80質量%のイソシアネート基含有化合物(B)を含有する。
【0085】
本発明による被覆剤中での架橋のために決定的な、ヒドロキシル基分及びイソシアネート基分から並びに構造要素(III)及び(IV)の分から成っている官能基の合計に対して、構造要素(III)及び(IV)は、好ましくは2.5〜97.5モル%、特別好ましくは5〜95モル%、全く特別好ましくは10〜90モル%の割合で存在している。
【0086】
本発明による被覆の、熱硬化に引き続く直後の高い耐引掻き性、高い光沢及び露侯後の高い光沢保持と組み合わせて、CAM180−試験(DIN ISO 11341 Feb 98及びDIN EN ISO 4892−2 Nov 00)でのUV照射線及び湿−乾変換時の亀裂形成に対する更なる改良された安定性を確保するために、更に、構造単位(III)及び/又は(IV)の含分をできるだけ最大に選択して、本発明による被覆剤が、6.5質量%を下回る構造単位(III)及び/又は(IV)のSiを、全く特別には最大でも6.0質量%(それぞれ、被覆剤の固体含分に対して)の構造単位(III)及び/又は(IV)のSiを含有するように選択することが有利である。この場合に、Si質量%でのシラン含有率は、化合物(IIIa)及び(IVa)の使用量から算出される。
【0087】
ポリエステル(A)、場合により使用される化合物(C)及びポリイソシアネート(B)の質量割合は、有利に、イソシアネート基含有化合物(B)の反応しなかったイソシアネート基とポリエステル(A)及び場合により使用された化合物(C)のヒドロキシル基とのモル当量−比が0.9:1.0〜1.2:1.0の、好ましくは0.95:1.0〜1.1:1.0の、特別好ましくは0.98:1.0〜1.05:1.0の間に存在するように選択されることが有利である。
【0088】
1液形被覆剤に関する場合には、その遊離イソシアネート基が前記のブロッキング剤でブロックされているイソシアネート基含有化合物(B)が選択される。
【0089】
本発明による好ましい2液形(2K)被覆剤の場合には、この被覆剤の適用直前に、ヒドロキシル基含有ポリエステル(A)、場合による(C)、触媒(D)、溶剤の一部並びに場合による他の後記の成分を含有しているバインダー混合物と、イソシアネート基含有化合物(B)及び場合による他の後記の成分を含有している更なるラッカー成分とを、自体公知の方法で混合する。
【0090】
本発明による被覆剤用の溶剤としては、殊に、被覆剤中で、化合物(A)、(B)及び場合による(C)に対して化学的に不活性であり、被覆剤の硬化の際にも(A)及び(B)と反応しないものが好適である。このような溶剤の例は、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ソルベッソ100又はHydrosol(登録商標)(ARAL社)、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はメチルアミルケトン、エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル又はエチルエトキシプロピオネート、エーテル又は前記溶剤からの混合物である。非プロトン性溶剤又は溶剤混合物は、溶剤に対して最大でも1質量%、特別好ましくは最大でも0.5質量%の水含有率を有することが好ましい。良好な外観を保証するためには、殊に溶剤として高割合の酢酸ブチル、特に好ましくは、溶剤混合物の全質量に対して低くても60質量%の酢酸ブチルを使用することが特別好ましい。相応する望ましい蒸発度数に調節するために、更なる他の溶剤が使用される。
【0091】
化合物(A)、(B)及び(C)と並んでなお、有利にポリエステル(A)のヒドロキシル基と及び/又は化合物(B)の遊離イソシアネート基と及び/又は化合物(B)及び/又は(C)のアルコキシシル基と反応し、網状組織点を形成することのできる他のバインダー(E)を使用することができる。
【0092】
例えば成分(E)として、アミノプラスト樹脂及び/又はエポキシド樹脂が使用可能である。そのメチロール−及び/又はメトキシメチル基がカルバメート−又はアロファネート基によって部分的に脱官能化されていてよい、慣用で公知のアミノプラスト樹脂が、これに該当する。この種類の架橋剤は、US−A−4710542及びEP−B−0245700特許明細書中に、並びにB.Singh等による文献 "Carbamylmethylated Melamines, Novel Crosslinkers for the Coatings Industry" in Advanced Organic Coatings Science and Technology Series, 1991, Band 13,193〜207頁に記載されている。
【0093】
一般に、このような成分(E)は、被覆剤の不揮発性成分に対して40質量%まで、好ましくは30質量%まで、特別好ましくは25質量%までの割合で使用される。
【0094】
更に本発明によるバインダー混合物又は本発明による被覆剤は、少なくとも1種の慣用で公知のラッカー添加剤(F)を、有効量で、即ち、有利には30質量%まで、特別好ましくは25質量%まで、殊に20質量%までの量で(それぞれ、被覆剤の不揮発性成分に対して)含有することができる。
【0095】
好適なラッカー添加剤(F)の例は、次のものである:
− 殊にUV吸収剤;
− 殊に光安定剤、例えばHALS−化合物、ベンズトリアゾール又はオキサルアニリド;
− ラジカル捕捉剤;
− スリップ添加剤;
− 重合抑制剤;
− 消泡剤;
− 反応性希釈剤、例えば、技術水準から一般に公知であるような−Si(OR)−基に対して不活性であるもの;
− 湿潤剤、例えばシロキサン、弗素含有化合物、カルボン酸半エステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸及びこれらのコポリマー又はポリウレタン;
− 付着助剤、例えばトリシクロデカンジメタノール;
− レベリング剤;
− 膜形成助剤、例えばセルロース誘導体;
− 充填剤、例えば二酸化珪素、酸化アルミニウム又は一酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子;詳細については、なお、Roempp Lexikon ≫Lack und Druckfarben≪ Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1998,250〜252頁が参照される;
− レオロジーコントロール添加剤、例えば特許文献WO94/22968、EP−A−0276501、EP−A−0249201又はWO97/12945から公知の添加剤;例えばEP−A−0008127中に開示されているような、架橋されたポリマーのマイクロ粒子;無機フィロ珪酸塩、例えば珪酸アルミニウムマグネシウム、モンモリロナイト−型のナトリウム−マグネシウム−及びナトリウム−マグネシウム−弗素−リチウム−フィロ珪酸塩;珪酸、例えばエーロジル(登録商標);又はイオン性基及び/又は会合作用基を有する合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸−又はエチレン−無水マレイン酸−コポリマー及びこれらの誘導体又は疎水性に変性され、エトキシル化されたウレタン又はポリアクリレート;
− 難燃剤及び/又は
− 既に前記の水捕獲剤及び/又は結晶化抑制剤。
【0096】
殊に、立体障害アミンをベースとする光安定剤(HALS)、UV吸収剤をベースとする光安定剤、例えばベンズトリアゾール又はオキサアニリド並びにレオロジー助剤は、同様にそれらを含有するラッカー成分又は被覆剤の電気抵抗に不利に影響することがあり、すなわち低下させるので、それらの使用量を高すぎて選択すべきではない。他方、これら添加剤を、被覆剤又は被覆の所望の機械工業的特性を保証するために、特定の最小量で使用することも好ましい。しかしながら、これらの使用量は、当業者によって僅かな慣用実験により容易に決めることができる。
【0097】
従って、立体障害アミンをベースとする光安定剤(HALS)少なくとも1種を含有しているバインダー混合物又は被覆剤が好ましく、この際、立体障害アミンをベースとする光安定剤(HALS)少なくとも1種を、0.5質量%より多く最大でも3.0質量%までの濃度(それぞれ、被覆剤の不揮発性成分に対して)で含有しているバインダー混合物又は被覆剤が特に好ましい。
【0098】
同様に、UV吸収剤少なくとも1種を含有しているバインダー混合物又は被覆剤が好ましく、この際、UV吸収剤少なくとも1種を0.5質量%より多く最大でも3.0質量%まで(それぞれ、被覆剤の不揮発性成分に対して)の濃度で含有しているバインダー混合物又は被覆剤が特別好ましい。
【0099】
立体障害アミンをベースとする光安定剤(HALS)少なくとも1種及びUV吸収剤少なくとも1種を含有しているバインダー混合物又は被覆剤が特別好ましい。
【0100】
同様に、レオロジー助剤少なくとも1種を、特別好ましくは被覆剤の不揮発性成分に対して2質量%を上回り最大10質量%までの濃度で含有している、バインダー混合物又は被覆剤が好ましい。
【0101】
本発明のもう一つの実施形においては、本発明によるバインダー混合物又は本発明による被覆剤は、更なる顔料及び/又は充填物質を含有し、顔料着色されたトップコートを製造するために用いることができる。このために使用される顔料及び/又は充填剤は、当業者にとって公知である。
【0102】
本発明による被覆剤から製造された本発明による被覆は、既に硬化された電着塗装、プライマーサーフェーサー塗装、ベースコート塗装又は慣用で公知のクリアコート塗装の上にも優れて付着するので、これは、自動車連続(OEM)塗装での使用と並んで、自動車補修塗装又は既に塗装された自動車車体のモジュール耐引掻き性仕上げのために極めて好適である。
【0103】
本発明による被覆剤の適用は、慣用の全ての適用法で、例えば、スプレー、ドクターブレード塗り、刷毛塗り、フローコーティング、浸漬、浸透、滴下又はローラ塗りによって行うことができる。この場合には、被覆すべき基材そのものを静止させ、その際には、適用装置又は−設備を動かす。しかしながら、被覆すべき基材、殊にコイルを動かすこともでき、この際には、適用装置は基材に対して相対的に静止しているか又は適切に動かされる。
【0104】
有利には、吹き付け適用法、例えば圧縮空気スプレー塗装、エアレス−スプレー、高速回転塗装、静電塗装(ESTA)を、場合により熱スプレー適用、例えばホット−エア−熱スプレーと組み合わせて使用することが有利である。
【0105】
適用された本発明による被覆剤の硬化は、一定の静止時間の後に行うことができる。この静止時間は、例えばラッカー層のレベリング及び脱ガスのため又は揮発性成分、例えば溶剤の蒸発のために作用する。この静止時間は、その場合にラッカー層の損傷又は変化が起こらず、ほぼ尚早な完全架橋が起こる限りにおいて、高い温度の使用及び/又は減少された空中湿気によって支持され及び/又は短縮されることができる。
【0106】
被覆剤の熱硬化は、方法的な特殊性を有さず、慣用の公知の方法、例えば循環空気炉中での加熱又はIR−ランプでの照射によって行うことができる。この場合にこの熱硬化は、段階的に行うこともできる。もう一つの好ましい硬化法は、近赤外線(NIR−線)を用いる硬化である。
【0107】
30〜200℃、特別好ましくは40〜190℃、殊に50〜180℃の温度で、1分から10時間まで、特別好ましくは2分から5時間まで、殊に3分から3時間までの時間にわたってこの熱硬化を行うことが有利であり、この際に、自動車補修塗装のために使用される、好ましくは30〜90℃の温度の場合には、より長い加熱時間を使用することもできる。
【0108】
本発明による被覆剤は、新規の硬化された被覆、殊に高い耐引掻き性及び殊に化学薬品安定性及び露侯安定性であり、非常に良好な光学的全体印象を有する塗装、特別なクリアコート塗装、成形部材、特別な光学的成形部材及び自立シート(freitragende Folien)を提供する。殊に本発明による被覆及び塗装は、特にクリアコート塗装を、>40μmの層厚でも、応力亀裂を生じることなく製造することができる。
【0109】
従って本発明による被覆剤は、遠距離移動手段(殊に原動機付き車両、例えばオートバイ、バス、トラック又は乗用車)の車体又はこれらの部品の;屋内−及び屋外分野の建造物の;家具、窓及び扉の;プラスチック成形品、殊にCD及び窓の;工業用小部品の、コイル、コンテナ及び梱包(Emballagen)の;白色商品の;シートの;光学的、電気工学的及び機械構成部材の;並びにガラス中空体及び日用品の、装飾性、保護性及び/又は効果付与性の、高い耐引掻き性の被覆及び塗装として極めて優れて好適である。
【0110】
殊に本発明による被覆剤及び塗装、殊にクリアコート塗装は、自動車量産塗装(OEM)並びに自動車補修塗装の工業的及び美学的に特別要求の高い分野で使用される。本発明による被覆剤を多段被覆法で使用する方法で、殊に場合により前被覆された基材上に差し当たり顔料着色されたベースコート層が、かつその後に本発明による被覆剤を有する層が施与される方法において特別好ましく使用される。従って、本発明の課題は、少なくとも1つの顔料着色されたベースコート層及びその上に施された少なくとも1つのクリアコート層からの効果付与性及び/又は発色性の複層塗装でもあり、これは、クリアコート層を本発明による被覆剤から製造していることを特徴としている。
【0111】
水希釈可能なベースコートも有機溶剤をベースとするベースコートも使用することができる。好適なベースコートは、例えばEP−A−0692007中に及びその中の第3欄、50行以降に挙げられている文献中に記載されている。塗布されたベースコートを差し当たり乾燥させ、即ちベースコートフィルムから、蒸発相で、有機溶剤又は水の少なくとも一部分を除去することが好ましい。乾燥は、有利に室温から80℃までの温度で行なわれる。この乾燥の後に、本発明による被覆剤を施与する。引き続きこの2層塗装を、好ましくは自動車量産塗装時に使用される条件下で、30〜200℃、特別好ましくは40〜190℃、殊に50〜180℃の温度で、1分〜10時間、特別好ましくは2分〜5時間、殊に3分〜3時間にわたって焼き付けを行い、この際、自動車補修塗装のために使用される好ましくは30〜90℃の間の温度で、より長い硬化時間を使用することもできる。
【0112】
本発明による被覆剤を用いて得られた層は、特に特別高い耐化学薬品性及び耐候性及び非常に良好な洗車機安定性及び耐引掻き性において優れており、同時に非常に良好な光学的全体印象(非常に良好な外観)を示す。
【0113】
この発明のもうひとつの好ましい実施形では、本発明による被覆剤を、透明なクリアコートとして、プラスチック基材の、殊に透明なプラスチック基材の被覆のために使用することができる。この場合には、この被覆剤は、プラスチック基材の有効なUV保護のために量及び種類も調整されているUV吸収剤を含んでいる。ここでも、この被覆剤は、非常に良好な外観と同時に、耐引掻き性と耐候性の優れた組み合わせによって優れている。このように被覆されたプラスチック基材は、有利に自動車構造中のガラス構成要素の代替えのために使用され、この際、このプラスチック基材は、好ましくはポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートから成っている。
【0114】
実施例
本発明によるポリエステルポリオールA1の製造
攪拌機、還流冷却器及び水滴分離器を備えている反応器中に、イソノナン酸1215.4質量部を加え、キシレン140質量部を添加する。この混合物を、注意深い撹拌下に、80℃まで加熱する。次いでこれに、樹枝状ヒドロキシ官能性ポリエステル(Bolton H30,Perstorpから入手)2284.6質量部を、団塊形成を避けるようにゆっくり加える。添加後に、この反応混合物を200℃まで加熱する。反応経過の観察のために、この縮合物の容積を記録し、時折、ヒドロキシル価測定のために試料を取り出す。予め計算された完全反応に相応する縮合物の量に達した後に、キシレン分を蒸留により除去する。この反応混合物を、200℃で、5mgKOH/g(DIN 53402により測定)を下回る酸価に達するまで撹拌する。この混合物を145℃まで冷却させ、酢酸ブチル840質量部中に溶解させる。
【0115】
生じたポリエステル樹脂は、78.8質量%の固体分を有する。生じたヒドロキシル価は190mgKOH/g(DIN 53240により測定)、酸価は5.8mgKOH/g(DIN 53402)である。
【0116】
リンをベースとする本発明によりブロックされた触媒(D1)の製造(ブロッキング剤 トリス−(2−エチルへキシル)アミン)
1000mlガラスフラスコ中に、酢酸ブチル226.34g及びリン酸フェニルエステル(75%、ブタノール中、Isle Chem社から入手)94.65gを装入する。この混合物を室温で撹拌し、均質化させる。引き続き、トリス−(2−エチルへキシル)アミン(BASF SEから入手)179.02gを、60℃を超えない程度にゆっくり滴加する。流入終了後に、生成物を、40℃でなお3時間撹拌する。
【0117】
リンをベースとする本発明によりブロックされた触媒(D2)の製造(ブロッキング剤 ジイソプロパノールアミン)
1000mlガラスフラスコ中に、酢酸ブチル211.90g及びリン酸フェニルエステル(75%、ブタノール中、Isle Chem社から入手)187.00gを装入する。この混合物を、室温で撹拌し、均質化させる。引き続き、ジイソプロパノールアミン(=DOPA、BASF SEから入手)148.00gを、60℃を超えない程度にゆっくり滴加する。流入終了後に、生成物を、40℃でなお3時間撹拌する。
【0118】
リンをベースとする本発明によりブロックされた触媒(D3)の製造(ブロッキング剤 ジメチルドデシルアミン)
500mlガラスフラスコ中に、酢酸ブチル42.00g及びリン酸フェニルエステル(75%、ブタノール中、Isle Chem社から入手)32.00gを装入する。この混合物を、室温で撹拌し、均質化させる。引き続き、ジメチルドデシルアミン(=DDA、ABCR,Karlsruheから入手)26.00gを、60℃を超えない程度にゆっくり滴加する。流入終了後に、生成物を、40℃でなお3時間撹拌する。
【0119】
リンをベースとする本発明によりブロックされた触媒(DV1)の製造(ブロッキング剤 DBU)
500mlガラスフラスコ中に、ヘキサノール53.25g及び酢酸ブチル17.75g及びリン酸フェニルエステル(75%、ブタノール中、Isle Chem社から入手)16.0gを装入する。この混合物を室温で撹拌し、均質化させる。引き続き、Lupragen N 700(1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7=DBU、BASF SEから入手)13.0gを、60℃を超えない程度にゆっくり滴加する。流入終了後に、生成物を、40℃でなお3時間撹拌する。
【0120】
リンをベースとする本発明によりブロックされた触媒(DV2)の製造(ブロッキング剤 DMEA)
1000mlガラスフラスコ中に、酢酸ブチル195.2g及びリン酸フェニルエステル(75%、ブタノール中、Isle Chem社から入手)219.1gを装入する。この混合物を、室温で撹拌し、均質化させる。引き続き、ジメチルエタノールアミン(=DMEA、BASF SEから入手)85.7gを、60℃を超えない程度にゆっくり滴加する。流入終了後に、生成物を、40℃でなお3時間撹拌する。
【0121】
リンをベースとする本発明によりブロックされた触媒(DV3)の製造(ブロッキング剤 モルホリン)
1000mlガラスフラスコ中に、酢酸ブチル198.6g及びリン酸フェニルエステル(75%、ブタノール中、Isle Chem社から入手)205.6gを装入する。この混合物を、室温で撹拌し、均質化させる。引き続き、モルホリン(BASF SEから入手)95.8gを、60℃を超えない程度にゆっくり滴加する。流入終了後に、生成物を、40℃でなお3時間撹拌する。
【0122】
こうして得られた溶液は、差し当たり貯蔵安定であった。4週後に、物質は晶出したが、なお60℃までの短時間加熱及びこの結晶の完全溶解の後にのみ、純粋物質として使用できた。
【0123】
尿素−ベースのレオロジー助剤F1の製造
加熱ジャケット、温度計、攪拌機及び取付け冷却器を備えた5リットルJuvo−反応容器に、芳香族溶剤875.7gを装入した。撹拌下及び保護ガス雰囲気(窒素200cm/min)下に、この芳香族溶剤を、減圧(最大3.5バール)下に160℃まで加熱した。測定ポンプを用いて、ジ−t−ブチルペルオキシド37.5g及び芳香族溶剤138.6gからの混合物を、4.75時間かかって一様に滴加した。この添加開始後0.25時間に、測定ポンプを用いて、スチレン848.4g、アクリル酸n−ブチル600.0g、アクリル酸ヒドロキシエチル418.2g及びメタクリル酸38.4gを、4時間かかって一様に添加した。この添加終了後に、この温度をなお2時間保持し、次いで生成物を60℃まで冷却させ、5μmGAF−Bagを通して濾過した。得られた樹脂は、15mgKOH/gの酸価(DIN 53402による)、65%+/−1の固体含分(60分、130℃)及び8.5dPasの粘度(DIN ISO 2884−1に従う実験処方により、ソルベントナフサ中55%で)を有した。
【0124】
1リットル反応器に樹脂溶液423.5gを充填し、酢酸ブチル29.4gで希釈した。その後、ベンジルアミン11.2gを添加し、混合物を30分間撹拌した。この時間の後に、高い剪断力の使用下に、ヘキサメチレンジイソシアネート8.8g及び酢酸ブチル17.1gの混合物を、反応温度が40℃を超えない程度の速度で添加導入した。こうして得られた混合物は、>800mPas(10s-1)の粘度(Z3)(DIN ISO 2884−1)及び59.0%の固体含有率(60分、130℃)を有した。
【0125】
本発明により部分シラン化されたポリイソシアネートB1(IVa 10モル%及びIIIa 90モル%を有するHDI、イソシアネート基の変換率=30モル%)の製造
還流冷却器を備えた丸底フラスコ中に、三量化されたヘキサメチレンジイソシアネート(BASF SE Ludwigshafenの市販品Basonat HI 100)36.296質量部、酢酸ブチル36.093質量部及びオルトギ酸トリエチル2.458質量部を装入した。N−(3−トリメトキシシリルプロパン−1−イル)−N−n−ブチルアミン(Evonik社製の市販品DYNASYLAN 1189)1.786質量部及びN,N−ビス(3−トリメトキシシリルプロパン−1−イル)−アミン(Evonik社製の市販品DYNASYLAN 1124)23.367質量部を予め混合し、室温で、還流及び窒素遮蔽下に、生成物温度が60℃を超えない程度にゆっくり添加した。引き続き反応混合物を60℃まで加熱し、基−NCO−含有率4.9%に達するまで(滴定によりNCO測定)保持した。こうして製造されたシラン化されたイソシアネートB1の電気抵抗の測定を、Byk Gardner社製のLC2型の伝導度測定装置付き浸漬測定セルを用いて(DIN 55667により)実施すると、1080kΩが得られた。従ってこの結果は、明らかに要求されている200kΩの値を超えている。
【0126】
バインダー混合物の処方
例1〜4のバインダー混合物並びに比較例1〜4のバインダー混合物を、第1表に記載の成分から混合によって製造した。
【0127】
【表2】

【0128】
第1表の説明:
1)Dynoadd F1、Firma DYNEA ASAの市販レベリング添加剤
2)Tinuvin(登録商標)384、Ciba社製の市販のベンズトリアゾールベースの光安定剤
3)Tinuvin(登録商標)152、Ciba社製の市販の立体障害アミンベースの光安定剤
4)ブタノール中のDBN(ジアザビシクロノネン)の30%溶液
5)イソトリデシルアルコール。
【0129】
それぞれのバインダー混合物を、酢酸ブチルの添加によって、DIN−4−ビーカー中での流出時間33秒まで調節し、Byk Gardner社製のLC2型の伝導度測定装置付き浸漬測定セルを用いて(DIN 55667により)、25℃で電気抵抗を検査した。第2表中に挙げられている値は、それぞれ3回測定からの平均値である。
【0130】
【表3】

【0131】
結果は、電気抵抗が一方では添加された触媒の量に著しく依存していることを明らかに示している。DBUを用いる比較例1中では、比較的高い分子量を有するブロッキング剤が使用されていたにもかかわらず、課題で申告されている限界>200kΩの目標値を達成できない。
【0132】
このことは、本発明により記載されているブロッキング剤を用いてのみ成功している。クリアコートの充分な耐候性及びシラン架橋反応のできるだけ高い変換率及び良好な機械技術的特性をも達成するためには、できるだけ多量の触媒を使用することが有利である。
【0133】
被覆剤の処方及び被覆の製造
機械技術的特性の検査のために、例2〜4のバインダー混合物の使用下に、並びに比較例V1〜V4のバインダー混合物の使用下に製造された、例2〜4又はV1〜V4の被覆剤を、それらの耐引掻き性について検査した。被覆剤を製造するために、それぞれバインダー混合物100質量部を、部分シリル化されたイソシアネートB1の記載質量部と混合させ、均質化させた。
【0134】
【表4】

【0135】
被覆の耐引掻き性の評価のために、被覆剤を、均質化の直後に3つのスプレー経路(Spritzgaenge)で、2.5バール空気圧下に、BASF Coatings AG社製の市販の水性ベースコートブラックユニ(Wasserbasislack schwarz uni)上に適用した。その後、それぞれ得られた被覆を室温で5分間排気し、引き続き135℃で20分間焼き付けた。その後、生じた被覆を、マイクロ侵入硬度につき、DIN EN ISO 14577−1に従がい、並びにその耐引掻き性につき、クロックメーター試験[EN ISO 105−X12に従い、9um研磨紙(3M281Q wetordry TM production TM)の使用下で10回往復ストローク及び9N荷重を用い、引き続く、イソヘキサン.0でのプレートの清浄化後の市販の光沢測定器を用いる20°での残留光沢の測定下に]及びAMTEC−試験[イソヘキサン.0を用いるプレート(Tafel)の清浄化後の、EN ISO 20566:2006に従う]を用いて評価した。得られた結果が、第4表中にまとめられている。
【0136】
【表5】

【0137】
これらの結果は、200kΩを上回っている電気抵抗値で存在する本発明によるバインダー混合物を有する本発明による処方物は、良好な機械特性を有することを示している。殊に、クロックメータの結果は、比較実験の値よりも良好な水準上に存在している。
【0138】
例2〜4のバインダー混合物と同様に、第5表中に記載の成分から、比較例V5〜V8のバインダー混合物を製造する
【表6】

【0139】
第5表の説明:
1)Dynoadd F1、Firma DYNEA ASAの市販のレベリング添加剤
2)Tinuvin(登録商標)384、Ciba社製の市販のベンズトリアゾールベースの光安定剤
3)Tinuvin(登録商標)152、Ciba社製の市販の立体障害アミンベースの光安定剤
4)ブタノール中のDBN(ジアザビシクロノネン)の30%溶液
5)イソトリデシルアルコール。
【0140】
この処方物の電気抵抗の検査は、次の第6表中に記載の結果を生じた:
【表7】

【0141】
この結果は、むしろ低い分子量を有するアミンは、電気抵抗に関する課題で要求される値を達成するためには好適ではないことを示している。
【0142】
本発明による好適なブロッキング剤の使用に関する特性値として、流体力学的容積の評価を利用することができる:Vhydr〜(rkontour/2)。輪郭長さ及びこれから生じる流体力学的容積の相応する査定が、次の第7表中に記載されており、155pmの平均結合長さの採用並びに30°の投影角に基づいている。補足的に、H.-G-Eliasの教科書≫Makromolekuele≪ Huethig & Wepf Verlag,Basel,Band 1,≫Grundlagen≪51頁が参照される。
【0143】
【表8】

【0144】
例2〜4のバインダー混合物と同様に、第8表に記載の成分から、本発明による例5〜10のバインダー混合物を製造する。
【0145】
【表9】

【0146】
第8表の説明:
1)Dynoadd F1、Firma DYNEA ASAの市販のレベリング添加剤
2)Tinuvin(登録商標)384、Ciba社製の市販のベンズトリアゾールベースの光安定剤
3)Tinuvin(登録商標)152、Ciba社製の市販の立体障害アミンベースの光安定剤
4)ブタノール中のDBN(ジアザビシクロノネン)の30%溶液
5)イソトリデシルアルコール。
【0147】
例5及び6のそれぞれのバインダー混合物を、酢酸ブチルの添加によって、DIN−4−ビーカー中で33秒の流出時間まで調節し、−例1に記載と同様に−LC2型のByk Gardner社製の伝導度測定装置付き浸漬測定セルを用いて(DIN 55667による)、電気抵抗について検査した。第9表中に記載されている値が得られた。
【0148】
【表10】

【0149】
例7〜10のバインダー混合物は、確かに触媒の結晶化の傾向を示すので、なお結晶抑制剤を添加することが好ましい。同様に、触媒をドデシルジメチルアミンとイソドデシルジメチルアミンとからの混合物でブロックすることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基含有化合物(A)少なくとも1種及び混合物の不揮発性成分に対して少なくとも1.0質量%の、シラン基架橋用のリン及び窒素含有の触媒(D)少なくとも1種を含有している、非プロトン性溶剤をベースとしているバインダー混合物において、前記混合物は、
(i)ヒドロキシル基含有化合物(A)として、ポリエステルの平均して少なくとも1個のヒドロキシル官能基が、異性体C〜C−モノカルボン酸の群から選択された酸少なくとも1種でエステル化されている、ヒドロキシ官能性ポリエステル(A)少なくとも1種及び
(ii)触媒(D)として、式(I)
【化1】

[式中、Rは、少なくとも3個のC原子を有する非環式脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素基であり、Rは、R及び/又はRと同じ又はこれらとは異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族の炭化水素基であり、Rは水素又はR及び/又はRと同じ又はこれらとは異なる非環式脂肪族又は芳香脂肪族の炭化水素基である]のアミン少なくとも1種でブロックされている、リン含有触媒少なくとも1種を含有していることを特徴とする、非プロトン性溶剤をベースとしているバインダー混合物。
【請求項2】
基R、R及びRの少なくとも1個は、C原子数6〜18を有する、好ましくはC原子数8〜14を有する脂肪族炭化水素基であり、及び/又は基R、R及びRの少なくとも1個、好ましくは基R、R及びRの少なくとも2個、特別好ましくは基R、R及びRの3個の全ては、分枝した脂肪族炭化水素基であり、及び/又は基R、R及びRの少なくとも1個は、C原子数6〜18、好ましくはC原子数8〜14を有する分枝した脂肪族炭化水素基であることを特徴とする、請求項1に記載のバインダー混合物。
【請求項3】
1種又は複数種のアミンブロックされたリン含有触媒(D)は、ブロッキング剤として、8pmを上回る輪郭長さを有する式(I)の第3級アミン少なくとも1種を含有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバインダー混合物。
【請求項4】
1種又は複数種のアミンブロックされたリン含有触媒(D)は、アミンブロックされ、置換されたホスホン酸ジエステル及び/又はジホスホン酸ジエステル、アミンブロックされ、置換されたリン酸モノエステル及び/又はリン酸ジエステルからの群から、有利にはアミンブロックされた非環状リン酸ジエステル及び/又はアミンブロックされた環状リン酸ジエステルから成る群から、かつ、特別好ましくはアミンブロックされたリン酸アルキルエステル及び/又はアミンブロックされたリン酸フェニルエステルの群から選択されており、殊にアミンブロックされたリン酸フェニルエステル、全く特別好ましくはトリス(エチルヘキシル)アミンでブロックされたリン酸フェニルエステルであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のバインダー混合物。
【請求項5】
バインダー混合物は、結晶化抑制剤1種を含有しており、その場合、アミン(I)中の
(i)Rは水素であり、R並びにRは線状脂肪族炭化水素基であるか、又は
(ii)全ての基R、R及びRは線状脂肪族炭化水素基である
ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のバインダー混合物。
【請求項6】
バインダー混合物は、立体障害アミンをベースとしている光安定剤(HALS)少なくとも1種及びUV吸収剤少なくとも1種を含有していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のバインダー混合物。
【請求項7】
ヒドロキシ官能性ポリエステル(A)は、超分枝した樹枝状ヒドロキシ官能性ポリエステルであり、ここで、このポリエステルの平均して少なくとも1個のヒドロキシル官能基は、異性体C〜C−モノカルボン酸の群から選択された少なくとも1種の酸、好ましくは飽和モノカルボン酸、殊にオクタン酸又はイソノナン酸、全く特別好ましくはイソノナン酸でエステル化されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のバインダー混合物。
【請求項8】
ヒドロキシ官能性ポリエステル(A)は、≧150mgKOH/gのOH価、好ましくは>180mgKOH/g、特別好ましくは185〜240mgKOH/gのヒドロキシル価(それぞれ、DIN 53240により測定)及び/又は16より大きいヒドロキシ官能性(ポリエステルの遊離の及びエステル化されたヒドロキシル基の数によって与えられる)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のバインダー混合物。
【請求項9】
前記ポリエステルは、酸価≦8.0、好ましくは0〜6.0(DIN 53402により測定)を有し、及び/又はこのポリエステルは数平均分子量1500〜4000g/モル、好ましくは2000〜3500g/モル(THF中でのポリスチレン標準を用いるGPCによって、0.1質量%酢酸を用いて測定)を有し、かつ/又はこのポリエステルは、多分散性Mw/Mn<4、好ましくはMw/Mn<2.5、特別好ましくはMw/Mn≦2.0を有していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のバインダー混合物。
【請求項10】
バインダー混合物は、低くても200kΩのDIN 55667による25℃での電気抵抗を有し、及び/又はバインダー混合物は、混合物の不揮発性成分に対して2.0質量%〜7.0質量%、好ましくは2.0質量%〜5.0質量%のリン及び窒素含有の−触媒(D)少なくとも1種を含有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のバインダー混合物。
【請求項11】
バインダー混合物1種及び少なくとも部分的に加水分解可能なシラン基を含有しているイソシアネート基を有する飽和化合物(B)少なくとも1種を含有している被覆剤において、前記被覆剤は、請求項1から10までのいずれか1項に記載のバインダー混合物を含有していることを特徴とする、被覆剤。
【請求項12】
被覆剤は、溶剤として酢酸ブチル又は酢酸ブチル含有溶剤混合物、殊に溶剤混合物の全質量に対して低くとも60質量%の酢酸ブチルを含有している溶剤混合物を含有しており、
及び/又は化合物(B)は、構造単位(III)及び(IV)の全体に対して2.5〜97.5モル%の、式(III):
【化2】

[式中、R’は水素、アルキル又はシクロアルキルであり、ここで、炭素鎖は非隣接の酸素基、硫黄基又はNRa基で中断されていてよく、Raはアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、好ましくはR’はエチル及び/又はメチルであり、
X、X’は炭素原子数1〜20を有する線状の及び/又は分枝したアルキレン又はシクロアルキレン基であり、好ましくはX、X’は炭素原子数1〜4を有するアルキレン基であり、R''はアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、ここで、炭素鎖は非隣接の酸素基、硫黄基又はNRa基で中断されていてよく、Raはアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル基であり、好ましくはR''は殊にC原子数1〜6を有するアルキル基であり、n=0〜2、m=0〜2、m+n=2、並びにx、y=0〜2である]の構造単位少なくとも1個及び
構造単位(III)及び(IV)の全体に対して2.5〜97.5モル%の、
式(IV):
−Z−(X−SiR''(OR’)3−x) (IV)
[式中、Zは−NH−、−NR−、−O−であり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、ここで、炭素鎖は非隣接の酸素基、硫黄基又はNRa基で中断されていてよく、Raはアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、x=0〜2であり、X、R’、R''は、式(III)に記載のものを表す]の構造単位少なくとも1個を有していることを特徴とする、請求項11に記載の被覆剤。
【請求項13】
場合により予め被覆された基材上に、顔料着色されたベースコート層を、かつその後に、請求項11又は12に記載の被覆剤からの1層を塗布することを特徴とする、多段被覆法。
【請求項14】
クリアコートとしての請求項11又は12に記載の被覆剤の使用もしくは自動車量産塗装及び自動車補修塗装のための請求項13に記載の方法の使用。
【請求項15】
顔料着色されたベースコート層少なくとも1つ及びこの上に配置されたクリアコート層少なくとも1つからなる効果付与性及び/又は発色性の複層塗装において、クリアコート層は、請求項11又は12に記載の被覆剤から製造されていることを特徴とする、効果付与性及び/又は発色性の複層塗装。

【公表番号】特表2013−504633(P2013−504633A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528237(P2012−528237)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004747
【国際公開番号】WO2011/029502
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】