説明

バインダー非含有吸着剤とパラキシレンの吸着分離におけるそれらの使用

パラキシレンを、少なくとも1種の他のC芳香族炭化水素を含有する混合物(例えば、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、およびエチルベンゼンの混合物)から吸着分離するための吸着剤と方法が開示されている。適切なバインダー非含有吸着剤(例えば、通常は選択的細孔体積を減少させる非晶質物質が実質的に存在しない状態で作製される)、特に、含水量が3重量%〜5.5重量%であるバインダー非含有吸着剤は、容量および/または物質移動を向上させる。これらの特性は、擬似移動床モードでの、低温で短いサイクル時間の吸着分離動作における生産性を向上させる上で特に有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の他のCアルキル芳香族炭化水素を含有する混合物(例えば、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、およびエチルベンゼンの混合物)からパラキシレンを吸着分離するための吸着剤と方法に関する。特に、バインダー非含有吸着剤(特に、3〜5.5重量%の含水量を有する吸着剤)は改良された容量および/または物質移動特性を有しており、このことが吸着分離プロセスを有利なものにする。
【背景技術】
【0002】
アルキル芳香族炭化水素は、一般には有用な生成物であると考えられており、パラキシレンに対しては高い重要がある。特に、パラキシレンの酸化は、テレフタル酸(ポリエステル布帛の製造における原材料)を工業的に合成するのに使用されている。パラキシレンの主要な供給源としては、原油の精製から生じる混合キシレンストリームがある。このようなストリームの例としては、工業的なキシレン異性化プロセスから生じるストリーム、あるいは接触改質油から液体−液体抽出や分別蒸留によって誘導されるCアルキル芳香族炭化水素フラクションの分離から生じるストリームが挙げられる。パラキシレンは、パラキシレン含有供給材料ストリーム(通常は、3種すべてのキシレン異性体を含有する)から、結晶化および/または吸着分離によって分離することができる。後者の方法は、パラキシレンを製造すべく新たに建造されたプラントのマーケット・シェアの大部分を獲得した。
【0003】
したがって、非常に多くの特許が、Cアルキル芳香族炭化水素の混合物を含有する供給材料ストリームからのパラキシレンの吸着分離を目的としている。パラキシレンを選択的に吸着するのにゼオライトXとゼオライトYが使用されている。例えば、米国特許第3,686,342号、米国特許第3,903,187号、米国特許第4,313,015号、米国特許第4,899,017号、米国特許第5,171,922号、米国特許第5,177,295号、米国特許第5,495,061号、および米国特許第5,948,950号を参照。米国特許第4,940,830号は、第IB族もしくは第VII族の元素とイオン交換されるナトリウムゼオライトYまたはナトリウムゼオライトYを使用する、他のキシレン異性体やエチルベンゼンからのパラキシレンの拒絶的分離(a rejective separation)を開示している。キシレンの混合物からパラキシレンを回収するのに吸着分離を使用する気相法(吸着剤は、0.5〜20ミクロンの平均結晶サイズを有する結晶質のモレキュラーシーブを含む)がWO2008/033200に開示されている。
【0004】
当業界では、Cアルキル芳香族炭化水素の比較的不純な混合物からパラキシレンを効率的に分離するための改良された吸着剤と方法が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、混合物中に存在する1種以上の他のCアルキル芳香族化合物よりパラキシレンを選択的に吸着する吸着剤に関する。反応の平衡/選択性ならびに蒸発(蒸留)分離の実際的な制限により、石油精製プロセスから得られる典型的な混合物は、他のキシレン異性体(パラキシレンの他にオルトキシレンとメタキシレン)を種々の量にて含有し、一般にはさらにエチルベンゼンも含有する。通常はこのような混合物が、本発明に関連した方法にて使用される供給材料ストリームを構成する。
【0006】
したがって本発明の実施態様は、所望するパラキシレン以外の1種以上のCアルキル芳香族炭化水素の比較的不純な混合物からパラキシレンを分離するための方法に関する。該混合物を、吸着条件下にて、ゼオライトXを含む吸着剤と接触させる。本発明の態様は、3〜5.5%の含水量を有するバインダー非含有吸着剤の使用に関し、該吸着剤は、パラキシレンの吸着分離において極めて有利な性能特性をもたらすことができる。特に、吸着剤のパラキシレン選択性と吸着容量が増大する。さらに、幾つかの実施態様によれば、(i)吸着時における、ゼオライト細孔中へのパラキシレンの物質移動速度、および(ii)脱着時における、(吸着されたパラキシレンと置き換わるための)ゼオライト細孔中への脱着剤の物質移動速度が、ゼオライトXと非選択性の(例えば非晶質の)バインダーを含む従来の吸着剤と比較してかなり高い。物質移動速度は、ゼオライトXの微結晶サイズを変えることによって改良することができる(詳細については後述する)。
【0007】
したがって本明細書に記載のバインダー非含有吸着剤は、ゼオライトXから作製されるか、あるいはゼオライトXを含む。ゼオライトXは、従来の微結晶サイズ(例えば1.8ミクロンより大きい)を有するが、必要に応じてゼオライトXの少なくとも一部が、「小さな微結晶サイズのゼオライトX」(すなわち、ゼオライトXが1.8ミクロン未満の、そして典型的には500nm〜1.5ミクロンの平均微結晶サイズを有する)として、および/または、さらには「ナノサイズのゼオライトX」(すなわち、ゼオライトXが500nm未満の、そして典型的には20nm〜300nmの平均微結晶サイズを有する)として特徴づけられれば、物質移動速度を改良することができる、と考えられる。ゼオライトXの複数部分[特に、上記のような特定の平均微結晶サイズ(例えば小さな微結晶サイズ)を有する「調製された」(もしくは既に作製された)部分]が、少なくとも60重量%の量にて、そしてしばしば70〜90重量%の量にて吸着剤中に存在する。吸着剤の残部は、ゼオライトX前駆体のゼオライトXへの転化により生じる「転化された」部分を含んでよい。ゼオライトXの転化部分は、調製部分と同様に、従来の微結晶サイズを有していてもよいし、あるいは前述のように、小さな微結晶サイズもしくはナノサイズのゼオライトXであってもよい。
【0008】
ゼオライトXを含むバインダー非含有吸着剤(特に、上記のような含水量を有する吸着剤)は容量および/または物質移動速度が増大することから、低温操作[例えば、175℃(350°F)未満]の場合に特に有利である。低温操作では、従来の結合ゼオライトX含有吸着剤(相当量の非選択性細孔体積を有する)は、物質移動速度および/または容量の限界が付きものであり、こうした限界は工業的により重大となる。パラキシレンの吸着選択性と吸着容量がより一層高くなること、ならびに液体供給材料の密度が増大すること(これらはいずれも、パラキシレンの生産性を向上させる)、を含めた多くの理由から低温操作が望ましい。しかしながら、擬似移動床の動作モード(オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、およびエチルベンゼンの供給材料混合物からパラキシレンを吸着分離するための連続的な工業プロセスにおいてしばしば使用される)においては、より低い動作温度に関連したこれらの利点は、物質移動速度の限界がパラキシレンの吸着/脱着の速度に影響を及ぼすことから、サイクル時間が短くなるにつれて減じることが分かっている。したがって、改良された物質移動速度(例えば、後述のようなゼオライトXの平均微結晶サイズが減少することの結果として)を有する吸着剤は、より低い動作温度に関連した、上記のようなパラキシレン容量とパラキシレン選択性の向上を引き出すことができる。パラキシレン生産性の増大が、したがってプロセス経済性の向上が可能となる。
【0009】
ゼオライトXを含む「バインダー非含有」吸着剤を作製する際には、クレー(例えばカオリンクレー)等のゼオライトX前駆体と、ゼオライトXの調製された(もしくは既に作製された)部分とを混合し、次いでこの前駆体自体を実質的にゼオライトXに転化させる。ゼオライトXの転化部分は、調製部分と同様に、従来の平均微結晶サイズ(例えば、1.8ミクロンより大きい)を有してもよいし、あるいは必要に応じて、上記の関連した平均微結晶サイズを有する小さな微結晶サイズのゼオライトXもしくはナノサイズのゼオライトXであってもよい。いずれにしても、従来のバインダー(通常は、非選択性の細孔体積のみを構成する)を除去もしくは実質的に除去すると、(i)所望の抽出成分(例えばパラキシレン)および/または(ii)脱着剤(例えばパラジエチルベンゼン)に対する吸着容量を大幅に増大させることができる。
【0010】
本明細書に記載の範囲の含水量を有するバインダー非含有吸着剤はさらに、所望の生成物であるパラキシレンに対して同等以上の吸着選択性を有する。したがって、パラキシレン/メタキシレンとパラキシレン/オルトキシレンの吸着選択性は、従来の結合吸着剤と比較してほぼ同等であるか又は増大する。パラキシレン/エチルベンゼンの選択性も増大し、脱着剤濃度が保持される。選択性、容量、および/または物質移動速度に関するこれら利点は、4〜6重量%の含水量を有していて、同一の処理条件下(すなわち、供給材料の組成やプロセス変数等の、他のすべての動作パラメーターを一定に保持する)で動作させる従来の結合吸着剤と比較したときに、本明細書に記載のバインダー非含有吸着剤と関連したパラキシレンの生産性が15〜35%向上すると言い換えることができる。さらに、バインダー非含有吸着剤の摩耗特性と強度特性(水摩耗分析と破砕強度分析によって測定)は、従来の吸着剤を凌ぐさらなる物理的特性の改良を示す。
【0011】
カオリンクレーの他に、もう一つのゼオライトX前駆体としては、高温でのカオリンクレーの活性化により得られるメタカオリンクレーがある。スタートのゼオライトX前駆体としてカオリンが使用されようと、メタカオリンが使用されようと、このゼオライトX前駆体の転化(最初にゼオライトXの第1の部分を結合するのに使用される)により、第1の(例えば、既に作製もしくは調製された)部分とは異なるシリカ/アルミナモル比を有する、ゼオライトXの第2の(例えば転化された)部分が生成する。
【0012】
また、本発明の他の態様は、ゼオライトXの第2の部分のシリカ/アルミナモル比を、ゼオライトX前駆体のそれより高い値に、そしてしばしばゼオライトXの第1の部分のそれと同等の値に増大させるために、ゼオライトX前駆体の転化時にシリカ供給源を使用することに関する。したがって、転化後に得られる典型的な吸着剤は、ゼオライトXの第1と第2の部分を含み、どちらも2.3〜2.7のSiO/Alモル比を有する。前述のように、第1と第2の部分は、異なった平均微結晶サイズを有してよい。例えば、第1の部分は、500nm〜1.5ミクロンの平均微結晶サイズを有する小さな微結晶サイズのゼオライトXであってよく、そして第2の部分は、1.8ミクロンより大きい従来の微結晶サイズを有するゼオライトXであってよい。
【0013】
したがって、本発明の他の態様は、改良された容量および/または物質移動特性を有するバインダー非含有吸着剤の製造方法に関する。この方法は、ゼオライトXとゼオライトX前駆体(例えばカオリンクレー)を含む粒子を作製すること;該粒子のゼオライトX前駆体を500℃〜700℃(930°F〜1300°F)の温度で活性化させること;および活性化されたゼオライトX前駆体を含む粒子を苛性アルカリ溶液で温浸(digesting)してバインダー非含有吸着剤を得ること;を含む。苛性アルカリ溶液温浸工程をシリカ供給源(例えば、ケイ酸ナトリウムやコロイダルシリカ)の存在下で行って、吸着剤におけるゼオライトXの転化部分のシリカ/アルミナモル比をゼオライトX前駆体のそれより上に増大させることができる。シリカ供給源の使用とこれに対応した転化ゼオライトXのシリカ/アルミナモル比増大によりさらなる利点(例えば、脱着剤濃度の増大)が得られ、このことが、パラキシレンの吸着分離における全体的なプロセスパフォーマンスを利する。
【0014】
吸着分離のためのバインダー非含有吸着剤を作製するのに使用されるゼオライトXは一般に、1.0〜2.0の原子状Si/Al比に対応して、2.0〜4.0の分子状シリカ/アルミナ(SiO/Al)モル比を有する。これらの比は一般に、最初にゼオライトX前駆体(例えばメタカオリナイト)に結合されているゼオライトXの第1の部分もしくは「調製された」部分だけでなく、ゼオライトX前駆体の転化により生じる「転化された」ゼオライトXにも当てはまる。しかしながら、上記したように、バインダー非含有ゼオライトXは、最終的な吸着剤のこれら部分(すなわち、調製および/または転化された部分)に異なったタイプのゼオライトXが存在することの結果として、そして転化部分のシリカ/アルミナモル比を増大させるべく、ゼオライトX前駆体の転化時にシリカ供給源を加えることの結果として、幾らか異なったシリカ/アルミナモル比を有する部分を含んでよい。
【0015】
ゼオライトは通常、調製部分であるか転化部分であるかに関係なく、イオン交換可能な部位の95%以上が、そして典型的には実質的に全て(99%以上)がバリウムもしくはバリウムとカリウムとの組み合わせで交換されている。代表的な吸着剤は、バリウムで交換されているイオン交換可能な部位を60%〜100%、およびカリウムで交換されているイオン交換可能な部位を0%〜40%有するゼオライトXを含む。
【0016】
ゼオライトXを含んでいて、必要に応じて上記の含水量を有するバインダー非含有吸着剤は、従来の吸着条件を使用する固定床吸着分離プロセス、移動床吸着分離プロセス、または擬似移動床吸着分離プロセスにおいて使用される固体吸着剤において使用することができる。吸着は、液相でも気相でも行うことができるが、通常は液相の吸着条件が好ましい。上記吸着剤は、擬似移動床モードでのパラキシレンの吸着分離に使用される場合は、吸着容量/物質移動特性が高いことから、同じ全パラキシレン回収率で動作する従来の吸着剤と比べて比較的増大したパラキシレン生産性(特に、短いサイクル時間の動作の場合)が可能となる。すなわち、吸着剤床の濃度プロフィールは、サイクル時間が例えば34分未満(例えば、24分〜34分の範囲)であるときには悪影響を受けない。擬似移動床吸着分離プロセスのサイクル時間は、入口ストリームまたは出口ストリームのいずれかが最初の吸着剤床の位置に戻る時間を表わしている。したがって、24の吸着剤床(例えば、2つの容器がそれぞれ12の床を有する)を使用する典型的な擬似移動床の動作モードにおいては、サイクル時間は、例えば、入口供給材料ストリーム(最初は、時間ゼロにて第1の床に導入される)が再びこの床に導入されるのに必要とされる時間を表わしている。他のすべてのファクター(例えば、パラキシレンの純度と回収率)は同等であり、サイクル時間がより短いということは、生産性がより高いということになる。
【0017】
したがって本発明の特定の実施態様は、少なくとも1種の他のCアルキル芳香族炭化水素を含む混合物(該混合物は通常、キシレン異性体であるオルトキシレンとメタキシレン、およびエチルベンゼンを含有する)からパラキシレンを分離する方法に関する。この方法は、ゼオライトXを含んでいて、3〜5.5重量%の含水量を有するバインダー非含有吸着剤と該混合物とを接触させることを含む。ゼオライトXの調製部分と転化部分は、独立的に、(i)従来の微結晶サイズのゼオライトX、(ii)小さな微結晶サイズのゼオライトX、または(iii)ナノサイズのゼオライトXに特徴的である前記範囲の平均ゼオライト微結晶サイズを有してよい。典型的な吸着温度は、60℃(140°F)〜250℃(480°F)の範囲である。しかしながら、これらの吸着剤は、容量および/または物質移動特性が改良されていることから、低温動作の場合において、従来の吸着剤に関連したかなりの制限を課すことはない。したがって、前述したように、改良されたパラキシレン吸着選択性と吸着容量に関連したメリットを、比較的低温度において、より十分に達成することができる。上記吸着剤と共に使用する場合は、175℃(350°F)未満[例えば、130℃(270°F)〜165℃(330°F)]の吸着温度が特に有利である。吸着圧力は、大気圧よりやや高い圧力[例えば1barg(15psig)]〜40barg(580psig)の範囲であってよい。
【0018】
前記Cアルキル芳香族炭化水素の混合物(例えば、連続プロセスまたはバッチプロセスの供給材料ストリームとしての)とバインダー非含有吸着剤とを接触させると、少なくとも1種の他のCアルキル芳香族炭化水素に優先して、そして通常は、混合物中に存在するこのような炭化水素のすべてに優先して、ゼオライトXの細孔中へのパラキシレンの吸着を引き起こす。したがって、吸着相(すなわち、ゼオライトXの細孔内)は、Cアルキル芳香族化合物の混合物(例えば供給材料ストリーム)に関して、選択的にパラキシレンの含量が高い。混合物が、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、およびエチルベンゼンを含有する場合は、パラキシレンが吸着相中に、混合物に対して高い含量にて存在し、オルトキシレンとメタキシレンとエチルベンゼンが非吸着相中に、混合物に対して高い含量にて存在する。
【0019】
次いで非吸着相を、例えばラフィネートストリームにおいて、吸着剤との接触から外す(すなわちフラッシングする)ことができる。吸着相(パラキシレンの含量が高い)は、例えば抽出物ストリームにおいて、吸着剤から別個に脱着することができる。脱着剤(例えば、トルエン、ベンゼン、インダン、パラジエチルベンゼン、および1,4−ジイソプロピルベンゼン等の芳香環含有化合物、ならびにこれらの混合物)を含む脱着剤ストリームを、フラッシングに対しても脱着に対しても使用することができる。前記の吸着剤を使用する典型的な吸着分離プロセスは、擬似移動床モードにて行うことができる。この実施態様によれば、上記のCアルキル芳香族炭化水素供給材料ストリームと脱着剤ストリームを吸着剤の固定床中に装入する一方で、抽出物ストリームとラフィネートストリームを固定床から取り除く。これらストリームの装入と除去は連続的に行うことができる。
【0020】
擬似移動床モード式または他のタイプの吸着分離モードの実施時においては、吸着剤の含水量もしくは水和のレベルを確認するために、および/またはこの含水量を3〜5.5重量%(好ましくは3.5〜4.5重量%)の範囲に保持するために、出口ストリーム(例えば、抽出物ストリームやラフィネートストリーム等)の含水量をモニターするのが望ましい。必要に応じて、水を入口ストリーム(例えば、供給材料ストリームおよび/または脱着剤ストリーム)に連続的もしくは間欠的に加えて、吸着剤の所望の水和レベル(例えば、上記範囲での所望の含水量に関連した標的強熱減量に相当する水和レベル)を保持することができる。これとは別に、上記範囲での所望の吸着剤含水量に対応して、水を加えて、抽出物ストリームおよび/またはラフィネートストリームにおいて、例えば20重量ppm〜120重量ppmの絶対含水量を得ることができる。
【0021】
本発明に関係するこれらの態様と特徴ならびに他の態様と特徴は、下記の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、バリウム交換されたゼオライトXのシリカ/アルミナモル比を2.5から2.0に下げたときの、パラジエチルベンゼン脱着剤の濃度に及ぼす影響を示す。
【図2】図2は、ゼオライトXを含む吸着剤を使用するパルス試験から得られる、温度の関数としての、供給材料混合物の成分の選択性(すなわち、パラキシレン/メタキシレン選択性、「P/M」;パラキシレン/オルトキシレン選択性、「P/O」;およびパラキシレン/エチルベンゼン選択性、「P/E」)を示す。
【図3】図3は、破過(または動的)試験から得られる、温度の関数としての、ゼオライトXを含む吸着剤の容量、およびパラキシレン/パラジエチルベンゼン選択性、「PX/pDEB選択性」を示す。
【図4】図4は、ゼオライトXを含む吸着剤を使用するパルス試験から得られる、温度の関数としての「DW」または「デルタW」〔すなわち、パラキシレンピークの1/2幅(すなわち、1/2強度におけるピークエンベロープ幅)からノルマルノナン(n−C)トレーサーピークの1/2幅を引いて得られる値〕を示す。
【図5】図5は、擬似移動床モードにて150℃(302°F)と1770℃(350°F)の温度で動作するパラキシレン吸着分離プロセスの性能を示す。
【図6】図6は、従来のゼオライトX微結晶を含む吸着剤とより小さな微結晶サイズを有するゼオライトXを含む他の吸着剤に関して、擬似移動床モードにて動作するパラキシレン吸着分離プロセスにおける、パラキシレンの回収率に及ぼすサイクル時間の影響を示す。
【図7】図7は、従来のゼオライトX微結晶とより小さなサイズを有するゼオライトX微結晶のサイズ分布を示す。
【図8】図8は、バインダー非含有吸着剤に関して、パルス試験を使用して150℃(302°F)と177℃(350°F)の温度で測定される強熱減量(LOI)の関数としての、パラキシレン/メタキシレン選択性、「P/M」;パラキシレン/オルトキシレン選択性、「P/O」;およびパラキシレン/エチルベンゼン選択性、「P/E」;の比較を示す[P/Eはさらに、動的もしくは破過試験を使用して測定した(P/Edyn)]。
【図9】図9は、バインダー非含有吸着剤に関して、パルス試験を使用して150℃(302°F)と177℃(350°F)の温度で測定される吸着容量の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、少なくとも1種の他のCアルキル芳香族炭化水素を含む混合物からのパラキシレンの分離に関する。分離とは、高いパラキシレン含量(すなわち、混合物中に最初に存在しているより高い含量)を有するストリーム(例えば生成物ストリーム)またはフラクション中にパラキシレンを回収することを表わしている。分離は、ゼオライトXを含むバインダー非含有吸着剤と該混合物とを接触させることにより果たされる。吸着剤は、3.5〜5.5重量%(好ましくは3.5〜4.5重量%)の含水量を有してよい。前述したように、バインダー非含有吸着剤および/または比較的低い含水量での動作を使用することにより、パラキシレンと他のCアルキル芳香族炭化水素に対する選択的な微小孔容量が改良され、これにより所定の操作に対する生成速度の増大が可能となる。さらに、バインダー非含有吸着剤(特に、小さな微結晶サイズのゼオライトXおよび/またはナノサイズのゼオライトXの調製部分および/または転化部分を有する吸着剤)を使用すると、物質移動の限界に打ち勝って、熱力学的に好ましい動作レジーム(例えば、低温および短いサイクル時間における)の利点を十分に利用することができる。
【0024】
ゼオライトXの構造は、米国特許第2,882,244号に詳細に説明されている。小さな微結晶サイズのゼオライトXは、核形成もしくはゼオライト微結晶の成長の始まりの手段として使用される種物質または開始剤物質を最初に作製し、次いでこれを、標的微結晶サイズに対応するゲル組成物:種物質の比にてゲル組成物中にブレンドする、という種合成(a seeded synthesis)により製造することができる。ゲル組成物:種物質の比により、核形成部位の相対的な数もしくは濃度が決まり、このことが合成されるゼオライトXの微結晶サイズに影響を及ぼす。種の量もしくは濃度を増やすと、直ちに微結晶サイズが減少する。例えば、2ミクロンと0.5ミクロンの平均微結晶サイズを有するゼオライトXの製造は、それぞれ5400:1と85:1のゲル:種重量比を使用して行うことができる。本発明の開示内容を考慮して、当業者は、他の平均微結晶サイズを達成すべく容易に重量比を変えることができる。典型的なゲル組成物は、NaO、SiO、Al、および水を含む。ゲル中には、Al1モルに対して、1〜5モルのNaOとSiO、および100〜500モルの水を使用することができる。
【0025】
ゲル組成物は、ゲル構成溶液(a gel makeup solution)と、例えば12重量%のアルミナを含有するアルミン酸塩構成溶液(an aluminate makeup solution)とを混合することによって作製することができる。ゲル構成溶液は、水と苛性アルカリ溶液とケイ酸ナトリウムを混合し、この混合物を38℃(100°F)に冷却することによって作製される。アルミン酸塩構成溶液は、アルミナ三水和物を苛性アルカリ溶液中に溶解し(溶解に必要な場合は加熱しながら)、次いでこれを冷却し、ゲル構成溶液と混合する前に38℃(100°F)にてエージングすることによって作製される。次いで、ゲル構成溶液とアルミン酸塩溶液とを、激しい撹拌の条件下にて短時間(例えば30分)混合してから、必要量の種を加える。
【0026】
種は、ゲル組成物と類似の方法にて作製される。したがって、典型的な種組成物はさらに、NaO、SiO、Al、および水を含む。Al1モルに対して、10〜20モルのNaOとSiO、および150〜500モルの水を使用することができる。種を作製する際に使用されるアルミン酸溶液は、例えば、アルミナを18重量%含有してよい。ゲル組成物と種を混合した後、この混合物を撹拌しながら加熱し、次いで撹拌条件下にて、25℃(75°F)〜150℃(300°F)の温度で5〜50時間にわたってエージングして、種核から所望の微結晶形成を達成する。次いで、得られた固体物質を濾過し、洗浄し、そして乾燥して、調製された小さな微結晶サイズのゼオライトXを得ることができる。
【0027】
上記範囲の平均微結晶サイズを有するナノゼオライトXは、米国特許公開第2007/0224113号(該特許出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)に記載の方法に従って製造することができる。ゼオライト微結晶とは、通常はゼオライト粒子と呼ばれる凝集結晶とは対照的に個々の結晶を表わしている。平均微結晶サイズは、ゼオライトX微結晶の走査電子顕微鏡法(SEM)分析から決定することができる。
【0028】
一般に、合成できるナノサイズゼオライトは、実験式:
(AlSi1−x)O
で示される組成を有するゼオライトのすべてを含む。式中、AlとSiは、四面体酸化物単位として存在する骨格構造元素であり、「x」は、0より大きい値から0.5までの値を有する。製造できる特定の構造タイプのゼオライトとしては、ゼオライトXのほかに、ゼオライトY、ならびにBEA、FAU、MFI、MEL、MTW、MOR、LTL、LTA、EMT、ERI、FER、MAZ、MEI、TON、およびMWW構造タイプ(これらに限定されない)を含む他の多くのゼオライト構造タイプがある。
【0029】
ナノサイズゼオライト合成プロセスの1つ必要な構成部分は開始剤である。開始剤は、透明であっても、あるいは濁っていてもよく、実験式:
Al:aSiO:bM2/mO:cH
で示される組成を有する、高濃度で高pHのアルミノケイ酸塩溶液である。式中、「a」は4〜30の値を有し、「b」は4〜30の値を有し、「c」は50〜500の値を有し、「m」はMの原子価であって+1または+2の値を有し、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらの混合物からなる群から選択される金属であって、好ましい金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびこれらの混合物である。開始剤は、Al、Si、およびMの反応性供給源と水とを混合することによって得られる。
【0030】
したがって、アルミニウム供給源としては、アルミニウムアルコキシド、沈降アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩、およびアルミニウム金属などがあるが、これらに限定されない。アルミニウムアルコキシドの特定の例としては、アルミニウムオルトsec−ブトキシドやアルミニウムオルトイソプロポキシドなどがあるが、これらに限定されない。シリカの供給源としては、テトラエチルオルトシリケート、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、およびコロイダルシリカなどがあるが、これらに限定されない。M金属の供給源としては、個々のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩、硝酸塩、酢酸塩および水酸化物などがあるが、これらに限定されない。Mがナトリウムであるとき、好ましい供給源はアルミン酸ナトリウムとケイ酸ナトリウムである。アルミン酸ナトリウムは、ギブサイトと水酸化ナトリウムを混ぜ合わせることにより、その場で合成される。開始剤が形成されたら、開始剤がチンダル現象を示すに足る時間にわたって0℃〜100℃の温度でエージングする。通常、時間は1時間〜14日間であり、好ましくは12時間〜10日間である。
【0031】
ナノサイズゼオライト合成プロセスの第2の構成部分は、所望のゼオライトが合成される反応溶液である。この溶液は、実験式:
Al:dSiO:eM2/mO:fR2/pO:gH
で示される組成を有する。式中、「d」は4〜30の値を有し、「e」は4〜30の値を有し、「f」は0〜30の値を有し、「g」は5〜500の値を有し、「p」はRの原子価であって、+1または+2の値を有し、Rは、第四級アンモニウムイオン、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、プロトン化アルカノールアミン、ジ第四級アンモニウムイオン、四級化アルカノールアミン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる有機アンモニウムカチオンである。該反応溶液は、Al、Si、MおよびRの反応性供給源と水とを混合することによって作製される。アルミニウム、ケイ素、およびMの供給源は上記のとおりであり、Rの供給源としては、水酸化物化合物、塩化物化合物、臭化物化合物、ヨウ化物化合物、およびフッ化物化合物などがあるが、これらに限定されない。特定の例としては、水酸化エチルトリメチルアンモニウム(ETMAOH)、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム(DEDMAOH)、水酸化プロピルエチルジメチルアンモニウム(PEDMAOH)、水酸化トリメチルプロピルアンモニウム、水酸化トリメチルブチルアンモニウム(TMBAOH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサメトニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化N,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,4−ブタンジアンモニウム、および水酸化メチルトリエチルアンモニウムなどがあるが、これらに限定されない。Rの供給源はさらに、中性のアミン、ジアミン、およびアルカノールアミンであってもよい。特定の例としては、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、およびN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンが挙げられる。
【0032】
反応混合物は、開始剤と反応溶液を混合することにより作製される。通常は、反応溶液に開始剤を徐々に加え、確実に均一にするためにさらなる時間撹拌する。こうして得られる反応混合物をオートクレーブ中に装入し、自生圧力下にて、25℃〜200℃の温度で1時間〜40日間にわたって反応させる。反応は、撹拌してもしなくても行うことができる。反応が完了した後、当業界によく知られている方法(例えば、濾過や遠心分離)によって反応混合物から固体ゼオライトを分離し、脱イオン水で洗浄し、そして最高100℃までの周囲温度で空気中にて乾燥する。交換可能なカチオンであるMとRは、他の所望のカチオンと交換することができ、Rの場合は、ナノサイズゼオライトの水素形が得られるよう、加熱によって除去することができる。
【0033】
従来のゼオライトX、小さな微結晶サイズのゼオライトX、またはナノサイズゼオライトXは、この「調製された」もしくは既に作製された部分とゼオライトX前駆体とを混合することによって、バインダー非含有吸着剤の合成において使用することができる。ゼオライトX前駆体は、クレー(例えば、カオリン、カオリナイト、およびハロイサイト等);他の鉱物(例えばハイドロタルサイト);固体シリカ供給源や固体アルミナ供給源[例えば、沈降シリカ、ヒュームド非晶質シリカ、沈降アルミナ、ギブサイト、ベーマイト、ベイエライト、および遷移アルミナ(例えば、γ−アルミナやη−アルミナ)等];ならびに、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、および類似の試剤から得られるゼオライトシード溶液やゼオライトシード懸濁液(ゼオライトXの調製部分の微結晶との均質混合物にて作製することができる);を含む。作製方法は、ゼオライトX前駆体(例えばカオリンクレー)と、ゼオライトXの調製部分のゼオライトX粉末とを、そして必要に応じて他の添加剤[例えば、細孔生成物質(例えば、マクロ空隙率(macroporosity)をもたらすためのコーンスターチ)や造形する上で適切なコンシステンシーを得るのに必要な水]とを混合することを含む。より大きなビーズ、球体、もしくはペレット等に造形または作製することは、より大きな粒子(例えば、標準米国メッシュサイズが16〜60の範囲)を作製するためのNautaミキシング、タンブリング、またはドラムローリング等のビーズ作製法を含む従来の方法を使用して行うことができる。次いでゼオライトXの調製部分とゼオライトX前駆体と含む作製された粒子を、一般には500℃〜700℃(930°F〜1300°F)の範囲の温度で活性化させる。カオリンクレーを含むゼオライトX前駆体の場合、活性化によりこの物質が吸熱脱ヒドロキシル化を受け、これによって無秩序なメタカオリン相が形成される。
【0034】
活性化の後、形成された粒子を苛性温浸(例えば水酸化ナトリウムを使用して)することにより、活性化ゼオライトX前駆体がゼオライトX自体に転化され、この結果、(i)従来のゼオライトX;(ii)小さな微結晶サイズのゼオライトX;または(iii)前述のようなナノサイズのゼオライトX;に関連した平均微結晶サイズを有するゼオライトを含むか、あるいは実質的に該ゼオライトからなるバインダー非含有吸着剤が得られる。さもなければ、バインダー非含有吸着剤は、(i)、(ii)、もしくは(iii)に関連した平均微結晶サイズのいずれかを有するゼオライトXの調製部分を、これら平均微結晶サイズの他のいずれかを有するゼオライトXの転化部分と組み合わせて含んでもよいし、あるいは実質的に該調製部分と該転化部分との組み合わせからなっていてもよい。
【0035】
ゼオライトXの転化部分のシリカ/アルミナモル比、ならびに最終的な吸着剤配合処方におけるこの物質の寄与は、形成される粒子中に組み込まれるゼオライトX前駆体の種類と量に応じて変動する。通常、ゼオライトX前駆体のシリカ/アルミナモル比は、ゼオライトXへの転化の際に実質的に維持される。したがって、2.0〜2.2のSiO/Alモル比を有する典型的なカオリンクレーは、この範囲内のゼオライト骨格比を有するゼオライトX部分に変わる。したがって、異なったシリカ/アルミナモル比を含むゼオライトXの第1(調製された)部分と第2(転化された)部分を有するバインダー非含有吸着剤を製造することができる。
【0036】
しかしながら、本発明の態様は、ゼオライトXのシリカ/アルミナモル比を、2.0〜2.2の範囲から2.1〜2.7の範囲に増大させると、パラキシレンの吸着分離において脱着剤濃度(例えば、パラジエチルベンゼン脱着剤)が増大する、という知見に関連している。これは、バリウム交換されたゼオライトXのシリカ/アルミナモル比を2.5から2.0に下げたときの、パラジエチルベンゼン脱着剤の濃度に及ぼす影響を示す図1に表わされている。図1におけるラインは、2.5のシリカ/アルミナモル比を有するバリウム交換ゼオライトXを含む吸着剤に対してパルス試験と破過(または動的)試験を使用して得たデータから生成させた。このラインは特に、相対的な脱着剤濃度の逆数と吸着剤床の温度との間の関係を示す。
【0037】
2.0のシリカ/アルミナモル比を有するゼオライトXを、吸着剤の配合処方においてより高い比のゼオライトXで置き換えると、より低い比のゼオライトXに対して得られるデータポイント(三角形)によって図1に示されているように、パラジエチルベンゼン脱着剤の濃度がかなり低下する(すなわち、相対的な脱着剤濃度の逆数の値が増大する)。脱着剤濃度のこうした低下(脱着剤が、所望のパラキシレン生成物を、抽出物ストリーム中に立ち退かせる能力に影響を及ぼす)は、高純度のパラキシレンと高い回収率を得ることに関して、そして特に、擬似移動床モードにて動作するパラキシレン吸着分離のための工業的プロセスにおいて悪影響を及ぼすことがある。
【0038】
これらの結果は、ゼオライトXの転化部分が2.1〜2.7の範囲のシリカ/アルミナモル比(ゼオライトXの調製部分に対するモル比と同一であっても、あるいは実質的に同一であってもよい)を有するバインダー非含有吸着剤を使用することにより得られるプロセス効率を実証している。しかしながら、カオリンクレー等のゼオライトX前駆体は、しばしばより低いシリカ/アルミナモル比(例えば2.0)を有し、したがって通常は、所望のより高い比のゼオライトXに転化しない。
【0039】
しかしながら本発明の態様は、ゼオライトX前駆体をバインダー非含有吸着剤の合成においてゼオライトXに転化させて、ゼオライトXの転化部分のシリカ/アルミナモル比を増大させる、という手順を修正することが可能である、という知見に関連している。特に、ゼオライトX前駆体をバインダー非含有吸着剤の合成においてゼオライトXに転化させる、という手順を修正してゼオライトXの転化部分のシリカ/アルミナモル比を増大させることができる、ということが見出された。これは、コロイダルシリカゾル、ケイ酸、ケイ酸ナトリウム、シリカゲル、または反応性粒状シリカ(例えば、珪藻土やHi−Sil等)等のシリカ供給源を加えることにより果たすことができる。シリカ供給源は、吸着剤粒子の作製工程時に加えることも、または苛性温浸工程時に加えることも、あるいはその両方の工程時に加えることもできる。加えるシリカの量は、ゼオライトX前駆体(例えばメタカオリン)とシリカ供給源との反応混合物全体が、反応組成(reaction composition)が下記の範囲内:NaO/SiO=0.8〜1.5、SiO/Al=2.5〜5、HO/NaO=25〜60に入るように制御されるような量である。
【0040】
したがって、シリカの別個の供給源を使用することにより、ゼオライトXの調製部分と転化部分のシリカ/アルミナモル比が密接に適合していて(例えば、どちらも2.0〜3.0の範囲内、そして通常は2.1〜2.7の範囲内)、これによりパラキシレンの吸着分離においてより低い比のゼオライトXを使用することに関する上記欠点が克服されるバインダー非含有吸着剤の製造が可能となる。都合のよいことに、ゼオライトXの転化部分のシリカ/アルミナモル比の増大はさらに、得られるバインダー非含有吸着剤の水熱安定性を向上させることができる。
【0041】
バインダー非含有吸着剤中のゼオライトXの調製部分と転化部分の相対量は変えることができる。幾つかの実施態様によれば、形成される粒子の作製において使用されるゼオライトX前駆体の量は5〜40重量%の範囲であり、通常は10〜30重量%の範囲である。したがってこれらの範囲はさらに、本明細書に記載の典型的なバインダー非含有吸着剤中に存在する転化ゼオライトXの量に対応している。
【0042】
ゼオライトXを含むバインダー非含有吸着剤に関連した他の種々の実施態様が可能である。例えば、ゼオライトX前駆体が、所望の平均微結晶サイズ、シリカ/アルミナモル比、および他の特性を有するゼオライトXに転化する場合、バインダー非含有吸着剤は、主として又は完全にこの転化ゼオライトXを含んでもよいし、あるいは実質的にこの転化ゼオライトXからなっていてもよい。転化ゼオライトXをすべてにおいて又は実質的にすべてにおいて含む吸着剤を合成するために、より大きな粒子(例えば、16〜60の標準米国メッシュサイズの範囲の)を作製するための前記の従来の方法を使用して(但し、ゼオライトXの調製部分は加えない)、ゼオライトX前駆体を、より大きなビーズ、球体、およびペレット等に造形もしくは形成することができる。
【0043】
幾つかの実施態様によれば、ナノサイズゼオライトX(すなわち、500nm未満の、そして典型的には20nm〜300nmの平均微結晶サイズを有するゼオライトX)は、ゼオライトX前駆体からの転化部分として得ることができる。ゼオライトXの転化部分が小さな微結晶サイズもしくはナノサイズのゼオライトXであるという上記実施態様に関連して、これらの変更された微結晶サイズを有するゼオライトXに転化させることのできるゼオライトX前駆体の種類としては、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、および/または、ヒュームドシリコン、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミニウム、ヒュームドアルミナ、沈降シリコン、沈降シリカ、沈降アルコニウム、沈降アルミナ、コロイダルシリコン、コロイダルシリカ、コロイダルアルミニウム、コロイダルアルミナ、有機金属シリコン、有機金属シリカ、有機金属アルミニウム、有機金属アルミナ、またはケイ素(もしくはシリカ)もしくはアルミニウム(もしくはアルミナ)の他の固体もしくは液体供給源等があるが、これらに限定されない。このような他の供給源としては、クレーとその関連鉱物、およびアルミノケイ酸塩前駆体(例えば、非晶質のアルミノケイ酸塩共沈物、ゾル−ゲル、またはこれらから形成される他の固体)を形成するための、上記前駆体の2種以上の組み合わせから得られる物質がある。ゼオライトXの微結晶サイズは、反応pH、反応時間、反応温度、撹拌の程度、および前記試剤や他の試剤(例えば、水酸化ナトリウムや他の鉱化剤)を含めた試剤の濃度によって、小さな微結晶サイズのゼオライトXまたはナノサイズのゼオライトXに関して上記した範囲で制御される。転化部分のゼオライトXの微結晶サイズはさらに、ゼオライトX前駆体(例えば、カオリンクレーやハロイサイトクレー)の粒径を変えることによって変えることができる。バインダー非含有吸着剤の高分解能走査電子顕微鏡法(HR SEM)による顕微鏡写真により、ゼオライトX前駆体がナノサイズのゼオライトX前駆体に転化したことが確認された。
【0044】
したがって、本明細書に記載のバインダー非含有吸着剤は、ゼオライトXの調製部分とゼオライトXの転化部分を含んでよい。調製部分と転化部分は、上記の手順にしたがって(例えば、調製部分を作製するのに、上記の小さな微結晶サイズもしくはナノサイズのゼオライトXの合成手順を使用して、そして転化部分を作製するのに、上記の転化手順を使用して)作製することができる。次いでこれらの吸着剤を、本明細書に記載の手順にしたがって、パラキシレンの吸着分離にて使用することができる。当業者ならびに本発明の開示内容を調べる技術者には周知のことであるが、ゼオライトXの調製部分と転化部分に関して、シリカ/アルミナモル比、平均微結晶サイズ、相対的な量、および他の特性は、所定の用途に対する強度、イオン交換容量、吸着容量、脱着選択性、および物質移動等を含めた、得られる吸着剤の所望する特性に依存する。
【0045】
典型的なバインダー非含有吸着剤においては、非ゼオライト物質が実質的に存在しない(例えば、吸着剤中に、一般には2重量%未満の量にて、典型的には1重量%未満の量にて、そしてしばしば0.5重量%未満の量にて存在する)。非ゼオライト物質または非晶質物質が存在しないこと、あるいは実質的に存在しないことは、結晶構造を調べるためのX線回折法および/または高分解能走査電子顕微鏡法(HR−SEM)を使用するバインダー非含有吸着剤の分析によって確認することができる。マクロ孔と微小孔の構造と分布は、水銀ポロシメータ法または液体酸素吸着を使用して特徴づけし、確認することができる。
【0046】
バインダー非含有吸着剤中の調製されたゼオライトX(例えば、小さな微結晶サイズのゼオライトX)の部分と転化されたゼオライトXの部分は、最初はナトリウム形をとっていてよく、これらのナトリウムカチオンは、公知の手法を使用して、異なったカチオン(例えば、バリウム、カリウム、ストロンチウム、および/またはカルシウム)で部分的もしくは完全に交換することができる。例えば、ナトリウムイオン形におけるイオン交換可能部位の少なくとも一部を有するゼオライトXを使用して合成されたバインダー非含有吸着剤を、バリウムイオン含有溶液またはバリウムイオンとカリウムイオンを含有する溶液中に、ナトリウムイオンのバリウムイオンおよび/またはカリウムイオンによるイオン交換もしくはイオン置換を果たすことができる温度と時間の条件(例えば、20〜125℃で0.5〜10時間)にて含浸することができる。イオン交換はさらに、公知の手法にしたがって、例えば、予熱した塩化バリウム/塩化カリウム溶液を吸着剤粒子のカラムを通してポンプ送りして、小さな微結晶サイズのゼオライトXのナトリウムカチオンを完全に置き換えることによって、カラム操作にて行うこともできる。バインダー非含有吸着剤の濾過、溶液からの取り出し、および新たな溶液(例えば、同一もしくは異なった比のカチオン、または他の種類のカチオンを含有する)中への再浸漬は、所望の種類および比のカチオンとの所望のレベルの交換が達成されるまで繰り返すことができる。通常、典型的にゼオライトXの調製部分と転化部分の両方を含むバインダー非含有吸着剤は、ゼオライトXのイオン交換可能な部位の95%以上が、または実質的にすべて(例えば99%以上)がバリウムまたはバリウムとカリウムとの組み合わせで交換できる。一般には、ゼオライトXの調製部分(例えば、小さな微結晶サイズのゼオライトX)またはゼオライトXの転化部分のイオン交換可能部位を、吸着剤の吸着特性を変えるに十分な量で他の金属イオンが占めることはない。代表的な実施態様においては、バインダー非含有吸着剤のゼオライトXは、イオン交換可能部位の60%〜100%がバリウムで、そしてイオン交換可能部位の0%〜40%がカリウムで交換されている。
【0047】
イオン交換可能部位の数は、ゼオライトXの全体的なSiO/Alモル比が増大するにつれて減少する。この全体比は、ゼオライトXの調製部分と転化部分のどちらか又は両方の割合を変えることによって影響を受けることがある。さらに、単位格子当たりのカチオンの総数は、一価カチオン(例えばK)が二価カチオン(例えばBa++)で置換されるにつれて減少する。ゼオライトXの結晶構造内に多くのイオン交換可能な部位の場所が存在し、これらのうちの幾つかは、スーパーケージ(supercages)の外側に位置している。全体として、ゼオライトの結晶構造中のカチオンの数と場所は、存在するカチオンのサイズと数、ならびにゼオライトのSiO/Alモル比に依存する。
【0048】
当業者には周知のことであるが、吸着剤の性能(例えば、パラキシレンの純度および抽出物ストリーム中への回収率に関して)は、操作条件、供給材料ストリームの組成、含水量、および脱着剤の種類と組成、を含めた多くのプロセス変数によって影響を受ける。したがって最適の吸着剤組成は、相互に関係する多くの変数の数に依存する。一般に、前述のような1種以上の他のCアルキル芳香族炭化水素を含有する混合物からパラキシレンを吸着分離するためのプロセスは、供給材料ストリームからのパラキシレンの高い全回収率(例えば、90%以上、92%〜99.5%、あるいは95%〜99%)と共に、抽出生成物ストリームにおいて高いパラキシレン純度(例えば、99重量%以上、あるいはさらに99.5重量%以上)を達成することができる。
【0049】
全体的な吸着剤性能に関連した1つの考慮すべき点は含水量であり、これは、未使用吸着剤のサンプルを、一定の重量を達成するに足る時間(例えば2時間)にわたって窒素等の不活性ガスのパージ下にて900℃で乾燥することによって得られる重量差を測定する強熱減量(LOI)試験から見積もることができる。先ずサンプルを350℃で2時間、状態調節する。最初のサンプル重量を基準としたときの重量損失のパーセンテージが900℃でのLOIである。LOI値の増大は、密閉されたデシケーター中で、所望のLOI値より低いLOI値を有する吸着剤の固定量と水の固定量とを、平衡が確立されるまで平衡化することによって果たされる。ある吸着剤のLOI値は、不活性ガスのパージ下もしくは減圧状態下にて200〜350℃で所定時間(例えば2時間)乾燥することにより減少させることができる。
【0050】
周知のように、LOIは、典型的には0.5重量%のオーダーの他の揮発性成分(例えば有機物質)が分析時において失われるので、吸着剤の水和レベル(または含水量)の間接的もしくは相対的な実測値である。したがって、所望の吸着剤LOIは単純に、3〜5.5重量%(好ましくは3.5〜4.5重量%)の含水量に相当するLOIである。ゼオライト吸着剤サンプル中の水の絶対量は、公知の分析法[例えば、カールフィッシャー法(ASTM D1364)]によって測定することができる。所望する含水量は、吸着剤を前述のように合成した後に、最終的なバインダー非含有吸着剤の乾燥条件(例えば、時間と温度)を調節することによって容易に得られるか、あるいは制御される。
【0051】
パラキシレンの吸着分離におけるバインダー非含有吸着剤の使用時においては(例えば、擬似移動床モードの操作においては)、一般には、前述のような吸着容量と選択性に関して好ましい性能特性を得るために、吸着剤の含水量を上記の範囲に維持するのが望ましい。吸着剤の含水量は、適切な入口ストリーム(例えば、供給材料ストリームおよび/または脱着剤ストリーム)中に、水を連続的または間欠的に添加もしくは注入することにより、必要に応じて調節および/または維持することができる。1つの典型的な実施態様によれば、吸着剤の含水量または水和レベルは、抽出物ストリームおよび/またはラフィネートストリーム中の含水量をモニターし、必要に応じて、1つ以上の入口ストリームに加える水の量を調節することによって維持される。例えば、これらのストリームのどちらか又は両方における水の典型的な範囲[望ましい吸着剤含水量(例えば上記範囲における)に相当する]は、20重量ppm〜120重量ppmである。これら出口ストリームの一方または両方における所望の含水量は40〜80重量ppmである。
【0052】
他のCアルキル芳香族化合物からのパラキシレンの吸着分離は、液相または気相にて行うことができるが、通常は主として液相での操作が使用される。前述したように、バインダー非含有吸着剤(例えば、小さな微結晶サイズのゼオライトXを含む吸着剤)と共に使用するときには、物質移動の制限に打ち勝つために、175℃(350°F)未満の吸着温度[例えば、130℃(270°F)〜165℃(330°F)]が特に有利である(物質移動の制限は、従来の吸着剤が、これらの温度での改良されたパラキシレン吸着選択性と吸着容量を利用するのを妨げる)。吸着条件はさらに、大気圧〜600psigの範囲の圧力を含んでよく、1barg(15psig)〜40barg(580psig)の圧力が一般的である。脱着条件は、吸着に対して使用したのと実質的に同じ温度と圧力を含むことが多い。
【0053】
パラキシレンの分離は、パラキシレンと1種以上の他のCアルキル芳香族炭化水素との混合物と吸着剤とを、前述のような吸着条件下にて接触させることによって行われる。例えば、Cアルキル芳香族炭化水素の混合物を含む供給材料ストリームを、吸着相において、オルトキシレン、メタキシレン、およびエチルベンゼンに優先してパラキシレンを選択的に吸着するように吸着剤の床と接触させることができる。供給材料ストリームのこれら他のCアルキル芳香族成分は、非吸着相として吸着ゾーンを選択的に通過することができる。
【0054】
アルキル芳香族炭化水素の混合物を含む供給材料ストリームは、分離装置の生成物を含めた種々の製油所プロセスストリーム(例えば改質油)から分離することができる。このような分離は不正確であり、したがって供給材料は、限定量(例えば、5モル%未満、しばしば2モル%未満)の他の化合物(例えばCアルキル芳香族炭化水素)を含有すると推測される。ほとんどの場合、供給材料は、主としてCアルキル芳香族炭化水素であり、合計で10モル%未満の、一般には5モル%未満の、そして場合によっては1モル%未満の、他の種類の化合物を含有する。分離プロセスの1つのタイプにおいては、吸着剤が吸着容量に達した後、吸着剤への供給材料ストリーム入口流れを停止し、次いで非吸着相(最初は吸着剤を取り囲んでいる)を、吸着剤との接触から取り除くように吸着ゾーンをフラッシングする。次いで、吸着剤を脱着剤[通常は、環状炭化水素(例えば、トルエン、ベンゼン、インダン、パラジエチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、またはこれらの混合物等の芳香環含有炭化水素)を含む]で処理することによって、吸着相(所望のパラキシレンの含量が高い)を吸着剤の細孔から脱着させることができる。この同じ脱着剤が、(i)非吸着相を、脱着剤を含むラフィネートストリーム中にフラッシングすること、および(ii)吸着相を抽出物ストリーム(これも脱着剤を含む)中に脱着させること、に対して一般的に使用される。抽出物ストリームは吸着相(パラキシレンの含量が高い)を含有するので、抽出物ストリームも、脱着剤非含有を基準として考えたときに、供給材料ストリームと比較してパラキシレンの含量が高い。
【0055】
本明細書で使用している「供給材料ストリーム」とは、吸着分離プロセスによって分離しようとする、所望の抽出物成分(パラキシレン)と1種以上のラフィネート成分とを含有する混合物を表わしている。したがって「供給材料混合物」(すなわち、「供給材料混合物成分」を含む)は、抽出物成分とラフィネート成分との混合物[例えば、キシレン(前述のようなオルトキシレン、メタキシレン、およびパラキシレン)とエチルベンゼンとの混合物]を含む。供給材料ストリームは、プロセスにおいて使用される吸着剤(例えば、1つ以上の吸着剤床の形態をとっている)への入口ストリームである。「抽出物成分」とは、吸着剤によって選択的に吸着される化合物または化合物の種類を表わしている。「ラフィネート成分」とは、より低い程度に選択的に吸着される(すなわち選択的に拒絶される)化合物または化合物の種類を表わしている。「脱着剤」とは、一般には、吸着剤から抽出物成分を脱着することができるすべての材料を表わしており、「脱着剤ストリーム」とは、脱着剤を含有する、吸着剤への入口ストリームを表わしている。「ラフィネートストリーム」とは、ラフィネート成分が取り出される、吸着剤からの出口ストリームを表わしている。ラフィネートストリームの組成は、実質的に脱着剤100%から実質的にラフィネート成分100%まで変わってよく、このとき1種以上の抽出物成分の量は少ない。「抽出物ストリーム」とは、抽出物成分が取り出される、吸着剤からの出口ストリームを表わしている。抽出物ストリームの組成は、実質的に脱着剤100%から実質的に抽出物成分100%まで変わってよく、このとき1種以上のラフィネート成分の量は少ない。
【0056】
一般には、抽出物ストリームとラフィネートストリームの少なくとも一部を(例えば蒸留によって)精製して脱着剤を除去し、これにより抽出生成物ストリームとラフィネート生成物ストリームを生成させる。「抽出生成物ストリーム」および「ラフィネート生成物ストリーム」とは、それぞれ抽出物成分およびラフィネート成分を、それぞれ抽出物ストリームおよびラフィネートストリーム中に存在するより高い濃度にて、そしてさらには供給材料ストリーム中に存在するより高い濃度にて含有する、吸着分離プロセスによって得られる生成物を表わしている。
【0057】
抽出物成分の特定量を吸着するための吸着剤の容量は重要な特性である。なぜなら容量が増大すると、供給材料混合物のある特定の装入速度に対して、抽出物成分を分離するのに必要とされる吸着剤の量を(従ってコストを)減らすことができるからである。抽出物成分に対する良好な初期容量ならびに全吸着容量を、吸着分離プロセスにおける実際の使用時に、ある程度の経済的に望ましい寿命にわたって維持しなければならない。
【0058】
抽出物成分(パラキシレン)と脱着剤との交換速度は一般に、パルス試験時に得られる吸着ゾーン流出物中の種々の化学種の組成を時間に対してプロットすることで得られる、最大強さの半分(half intensity)でのピーク・エンベロープの幅によって特徴づけることができる。ピークの幅が狭くなるほど、脱着速度が速くなる。脱着速度はさらに、トレーサー・ピーク・エンベロープの中央と、まさに脱着された際の抽出物成分の消失との間の距離によって特徴づけることができる。この距離は時間依存性であり、したがってこの時間間隔の間に使用される脱着剤の体積の尺度となる。トレーサーは通常、分離しようとする物質より速く吸着剤カラムを移動する、比較的吸着されない化合物である。
【0059】
ラフィネート成分に対する抽出物成分への選択性(β)は、抽出物成分のピーク・エンベロープの中央とトレーサー・ピーク・エンベロープの中央(または他の基準点)との間の距離と、ラフィネート成分のピーク・エンベロープの中央とトレーサー・ピーク・エンベロープの中央(または他の基準点)との間の対応する距離との比によって特徴づけることができる。この選択性は、吸着相における2つの成分の比を、平行状態での非吸着相における同じ2つの成分の比で除したものに相当する。したがって選択性は、
選択性=(wt%C/wt%D)/(wt%C/wt%D
から算出することができる。式中、CとDは、供給材料混合物の2つの成分(重量%にて表示)であり、下付き文字AとUは、それぞれ吸着相と非吸着相を示す。平衡状態は、吸着剤床の上を通る供給材料が組成を変えないときに、言い換えると、非吸着相と吸着相との間で正味の物質移動が起こらないときに決まる。上記の式において、選択性が1.0より大きいということは、吸着剤内に成分Cが優先的に吸着されていることを示している。反対に、選択性が1.0未満であるということは、成分Dが優先的に吸着されていて、非吸着相は成分Cの含量が高く、吸着相は成分Dの含量が高い、ということを示している。
【0060】
2つの成分に関して選択性が1.0に近づく場合は、吸着剤による、他方の成分に関しての一方の成分に対する優先的な吸着はない(すなわち、2つの成分はどちらも、互いにほぼ同じ程度に吸着される)。選択性が1.0から離れるにつれて、吸着剤による、他方の成分に関しての一方の成分に対する優先的な吸着が増すようになる。選択性は、他方の供給材料ストリーム化合物に対する一方の供給材料ストリーム化合物に関して(例えば、パラタキシレン/メタキシレンの選択性)だけでなく、任意の供給材料ストリーム化合物と脱着剤との間(例えば、パラキシレン/パラジエチルベンゼンの選択性)でも表示することができる。
【0061】
ラフィネート成分からの抽出物成分の分離は、理論的には、ラフィネート成分に対する抽出物成分への吸着選択性が1よりほんのわずかに大きいときに可能であるが、この選択性は、プロセス経済の観点から2以上であるのが好ましい。分別蒸留における相対揮発度に類似して、選択性が高くなるほど、実施しようとする吸着分離は簡単になる。選択性がより高いと、取りも直さず、使用すべき吸着剤の量をより少なくすることができる。ちょうど、相対揮発度がより高いと、所定の供給材料に対して所定の蒸留分離を果たす上で蒸留理論段がより少なくて済む(そしてより小さな塔で済む)ように。
【0062】
吸着分離プロセスのための脱着剤は、幾つかの基準を満たすよう適切に選択しなければならない。脱着剤は、理想的には、その後の吸着サイクルにおいて抽出物成分が脱着剤に置き換わるのを妨げるほどの強さで吸着されることなく、抽出物成分を吸着剤から適度な質量流量にて完全にはずすに足る濃度を有していなければならない(すなわち、充分に強く吸着されなければならない)。選択性に関して、吸着剤は、ラフィネート成分に対する脱着剤に関してよりも、ラフィネート成分に対する抽出物成分に関してより選択的であるのが好ましい。脱着剤はさらに、吸着剤と供給材料混合物の両方に対して適合しなければならない。脱着剤は特に、ラフィネート成分に対する抽出物成分に関して、吸着剤の所望の選択性に悪影響を及ぼしてはならない。脱着剤はさらに、抽出物成分とラフィネート成分に対して実質的に化学的に不活性でなければならない。なぜなら、一般には、抽出ストリームとラフィネートストリームは、脱着剤との混合物の形で吸着剤から取り除かれるからである。脱着剤と抽出物成分もしくはラフィネート成分とが関与するいかなる化学反応も、生成物の回収を複雑にするか、あるいは妨げるおそれがある。
【0063】
したがって、脱着剤に関して考慮すべき性能パラメーターは、供給材料中の抽出物成分に対する交換速度、あるいは言い換えると、抽出物成分の相対的な脱着速度である。このパラメーターは、抽出物成分を吸着剤から脱着させるために、吸着分離プロセスにおいて使用しなければならない脱着剤の量に直接関係する。交換速度がより速くなると、必要とされる脱着剤の量が少なくて済み、したがって、脱着剤を含有するより大きなプロセスストリームに付きものの運転コスト(これらのストリームからの脱着剤の分離とリサイクルを含む)が低下する。抽出物成分に対する1またはそれよりやや低い脱着剤選択性は、すべての抽出物成分を適切な脱着剤流量で確実に脱着させるのに、そしてさらに、抽出物成分が、後続する吸着工程において脱着剤と置き換わることができるのに役立つ。
【0064】
さらに、ラフィネートストリームと抽出物ストリームは通常脱着剤を含有するので、脱着剤は、供給材料ストリーム中に導入される抽出物成分とラフィネート成分との混合物から簡単に分離できなければならない。抽出物ストリームとラフィネートストリーム中の脱着剤を分離する方法がなければ、抽出生成物中の抽出物成分の濃度とラフィネート生成物中のラフィネート成分の濃度は、商業的に有利な濃度にはならず、また脱着剤をプロセスにおいて再使用することもできなくなる。したがって通常は、脱着剤の少なくとも一部を、吸着分離プロセスの抽出物ストリームとラフィネートストリームから蒸留もしくは蒸発によって回収するが、逆浸透等の他の分離方法も、単独にて、または蒸留もしくは蒸発と組み合わせて使用することができる。この点において、脱着剤は一般に、パラキシレン吸着分離プロセスの抽出物ストリームおよびラフィネートストリーム中のCアルキル芳香族炭化水素から、それぞれ蒸留オーバーヘッド生成物または蒸留ボトム生成物として簡単に分離することができる「軽質」または「重質」の脱着剤である。
【0065】
「パルス試験」は、ある特定の供給材料混合物及び脱着剤を使用して吸着剤を試験するのに、そして吸着容量、選択性、分解能、および交換速度等の吸着剤特性を測定するのに使用することができる。典型的なパルス試験装置は70cm(cc)の管状吸着剤チャンバーを含み、チャンバーの反対端に入口部分と出口部分を有する。チャンバーは、あらかじめ定められた一定の温度および圧力での操作ができるように装備されている。屈折計、偏光計、およびクロマトグラフ等の定量分析装置や定性分析装置をチャンバーの出口ラインに取り付けて、吸着剤チャンバーを出ていく流出物ストリーム中の1種以上の成分を定量的に検出するのに、および/または、定性的に測定するのに使用することができる。パルス試験時においては、ある特定の脱着剤を吸着剤チャンバーに通すことにより、最初に吸着剤が該脱着剤と平衡状態になるように充填される。少容量もしくは小パルスの供給材料混合物(脱着剤で希釈することができる)を、供給材料サンプルループへの脱着剤流れを時間ゼロにて切り換えることによって注入する。脱着剤流れを再開し、供給材料混合物成分を、液体−固体クロマトグラフィー操作の場合のように溶離する。この流出物をオン−ストリームで分析することもできるし、あるいはこれとは別に、流出物サンプルを定期的に採取して個別に分析し(オフラインで)、そして対応する成分ピークのエンベロープのトレースを、成分濃度対流出物の量に関してプロットすることもできる。
【0066】
パルス試験から得られる知見を利用して、吸着剤のボイド体積、抽出物成分またはラフィネート成分に対する保持容量、他方の成分に関しての一方の成分に対する選択性、工程時間(stage time)、成分間の分解能、および脱着剤による抽出物成分の脱着速度を決定することができる。抽出物成分またはラフィネート成分の保持容量は、抽出物成分またはラフィネート成分のピーク・エンベロープの中央と、トレーサー成分のピーク・エンベロープの中央もしくは他の公知の基準ポイントとの間の距離から決定することができる。保持容量は、ピーク・エンベロープ間の距離に対応した時間間隔時にポンプ送りされる脱着剤の体積(cm)で表示される。
【0067】
有望なシステムに対する保持容量は、商業的な設計に対する外挿によって設定される範囲内に含まれる。保持容量がかなり小さい場合、それは、2つの成分間の分離がほとんどなされない(すなわち、一方の成分が充分に強固には吸着されない)ということを示している。抽出物成分の保持容量が大きい場合、それは、保持されている抽出物成分を脱着剤が取り除くことが困難であるということを示している。
【0068】
固定床の液体−固体接触において使用される従来の装置を、上記のバインダー非含有吸着剤を組み込んだ吸着分離プロセスにおいて使用することができる。吸着剤は、供給材料ストリームおよび脱着剤ストリームと交互に接触する単一固定床の形で使用することができる。したがって吸着剤は、非連続のプロセス(例えばバッチプロセス)において、吸着工程と脱着工程に交互に付される単一固定床の形で使用することができる。所定の操作または工程に対して複数の床が周期的に使用される、というスイング床の動作モードも可能である。これとは別に、一組になった2つ以上の固定床を、適切な配管/弁とともに使用して、多くの吸着剤床のいずれか1つに対する供給材料ストリームの連続的な通過を可能にすると同時に、脱着剤ストリームを、一組の固定床における他の床の1つ以上に通すことができる。供給材料ストリームと脱着剤ストリームの流れは、吸着剤を上向きに通っても、あるいは下向きに通ってもよい。
【0069】
向流移動床の動作モードは、供給材料混合物成分の変化のない濃度プロフィールを達成することができる、という別の有望な動作モードをもたらし、したがって供給材料ストリームと脱着剤ストリームの導入の、ならびに抽出物ストリームとラフィネートストリームの取り出しの固定点を有する連続的な動作が可能となる。向流移動床または擬似移動床の向流フローシステムは、固定吸着剤システムよりはるかに高い分離効率を有し、したがって工業規模の吸着分離に対して極めて頻繁に使用される。擬似移動床のプロセスにおいては、通常は吸着と脱着が擬似移動床モードにて連続的に行われ、したがって抽出物ストリームとラフィネートストリーム(ともに出口ストリーム)の連続的な生成(取り出し)、ならびに供給材料ストリームと脱着剤ストリーム(ともに入口ストリーム)の連続的な使用(インプット)が可能となる。
【0070】
擬似移動床フローシステムの作動原理と工程順序が、米国特許第2,985,589号、米国特許第3,310,486号、および米国特許第4,385,993号(擬似移動床フローシステムについての開示内容に関して、これらの特許を参照により本明細書に含める)に記載されている。このようなシステムでは、1つ以上のチャンバー中に収容されている吸着剤の移動(液体アクセスポイントの動きとは反対への)をシミュレートするのは、吸着剤チャンバーに沿った複数のアクセスポイントの前進移動である。一般には、チャンバーへの多くの(16〜24またはそれ以上の)アクセスラインのうちの4つのみが常にアクティブであって、供給材料ストリーム、脱着剤ストリーム、ラフィネートストリーム、および抽出物ストリームを移送する。固体吸着剤のこの擬似移動(例えば上向き移動)と同時に起こるのが、装填された吸着剤床のボイド体積を占めている流体の移動(例えば下向き移動)である。この流体(例えば液体)流れの循環は、ポンプを使用して維持することができる。有効な液体アクセスポイントが、サイクルを移動するときに(すなわち、1つ以上のチャンバー中に収容されている各吸着剤床を通って移動するときに)、一般にはチャンバー循環ポンプが異なった流量をもたらす。これらの流量を設定および調整するように、プログラム化された流量制御器を設けることができる。
【0071】
有効なアクセスポイントは、吸着剤チャンバーを、それぞれが異なった機能を有する別個のゾーンに効果的に分割する。プロセスが行われるためには、通常3つの別個の動作ゾーンが存在するが、場合によっては任意の4つ目の動作ゾーンが使用される。擬似移動床のプロセスについての下記の説明において使用されているゾーン数は、米国特許第3,392,113号と米国特許第4,475,954号(擬似移動床の動作についての開示内容に関して、これらの特許を参照により本明細書に含める)に記載のゾーン数に対応している。
【0072】
吸着ゾーン(ゾーン1)は、入口供給材料ストリームと出口ラフィネートストリームとの間に配置された吸着剤として定義される。このゾーンにおいて、供給材料混合物が吸着剤と接触し、抽出物成分が吸着され、ラフィネートストリームが取り出される。ゾーン1を通る全体的な流れは、ゾーン中に入る供給材料ストリームから、ゾーンを出ていくラフィネートストリームまでの流れであり、このゾーンにおける流れは通常、入口の供給材料ストリームから出口のラフィネートストリームまで進むときの下流方向の流れであると考えられる。
【0073】
ゾーン1における流体流れに対してすぐ上流にあるのが精製ゾーン(ゾーン2)である。この精製ゾーンは、出口抽出物ストリームと入口供給材料ストリームとの間の吸着剤として定義される。このゾーンにおける基本的な動作は、ゾーン2中に移送されたラフィネート成分の、吸着剤の非選択的ボイド体積からの置き換え、および吸着剤の選択的細孔体積内に吸着された、もしくは吸着剤粒子の表面上に吸着されたラフィネート成分の脱着である。精製は、ゾーン3を出ていく抽出物ストリームの一部(抽出物出口ストリーム)を、その上流境界にてゾーン2中に送り込んで、ラフィネート成分の置き換えを起こさせることによって果たされる。ゾーン2における流れは、抽出物出口ストリームから供給材料入口ストリームへの下流方向の流れである。次いでこの材料が供給材料ストリームに加わり、ゾーン1を流れる。
【0074】
ゾーン2における流体流れに対してゾーン2のすぐ上流にあるのが脱着ゾーン(ゾーン3)である。この脱着ゾーンは、入口脱着剤ストリームと出口抽出物ストリームとの間の吸着剤として定義される。脱着ゾーンの機能は、このゾーンに送り込まれる脱着剤が、先行する動作サイクルにて、ゾーン1における供給材料混合物とのその前の接触時に吸着剤に吸着されていた抽出物成分と置き換わることを可能にすることである。ゾーン3における流体の流れは、ゾーン1と2における流れと実質的に同じ方向である。
【0075】
場合によっては、任意の緩衝ゾーン(ゾーン4)を使用することができる。このゾーンは、出口ラフィネートストリームと入口脱着剤ストリームとの間の吸着剤として定義され、使用される場合は、ゾーン3への流体流れに対してすぐ上流に配置される。ゾーン4を使用して、脱着に必要とされる脱着剤の量を保存することができる。なぜなら、ゾーン1から取り出されるラフィネートストリームの一部をゾーン4に送り込んで、該ゾーンからの脱着剤を脱着ゾーンに移すことができるからである。ゾーン4は、ゾーン1からゾーン4中へと送り込まれるラフィネートストリーム中のラフィネート成分が、ゾーン3中に送り込まれるのを防ぐことができるだけの、そしてこれによってゾーン3から取り出される抽出物ストリームが汚染されるのを防ぐことができるだけの充分な量の吸着剤を収容する。第4の動作ゾーンが使用されない場合は、ゾーン1からゾーン3へと送り込まれるラフィネートストリーム中に相当量のラフィネート成分が存在するときに、出口抽出物ストリームが汚染されないよう、ゾーン1からゾーン3への直接的な流れを停止することができるように、ゾーン1からゾーン4に送り込まれるラフィネートストリームを注意深くモニターする必要がある。
【0076】
擬似移動床モードにて行われる連続的プロセスを可能にするための、吸着剤固定床を通るインプット(供給材料と脱着剤)ストリームとアウトプット(抽出物とラフィネート)ストリームの循環的進行は、インプットストリームとアウトプットストリームの移動を起こさせ、これにより擬似向流態様での固体吸着剤に対する流体の流れがもたらされる、という仕方でマニホルドにおける弁が操作される、というマニホルドシステムを使用することによって行うことができる。固体吸着剤の向流流れをシミュレートすることができるもう一つのタイプの動作は、インプットストリームとアウトプットストリームのそれぞれを、当該弁によって、吸着剤チャンバーに連結された多くのラインのうちの1つに向け、そしてインプット供給材料ストリーム、アウトプット抽出物ストリーム、インプット脱着剤ストリーム、およびアウトプットラフィネートストリームがチャンバーに入るか又は出ていく場所を、脱着剤床に沿って同じ方向に前進させる、という回転弁の使用を含む。マニホルドの配置と回転円板弁は当業界に公知である。多重弁装置が米国特許第4,434,051号に詳細に開示されている。この動作において使用することができる回転円板弁が、米国特許第3,040,777号、米国特許第4,632,149号、米国特許第4,614,204号、および米国特許第3,422,848号に開示されている。これらの特許は、種々のインプットストリームとアウトプットストリームの、固定された供給源からの適切な前進を容易に達成することができる回転型の弁を開示している。
【0077】
多くの場合、擬似移動床プロセスの1つの動作ゾーンは、他の動作ゾーンよりはるかに多量の吸着剤を収容している。例えば、幾つかの動作において、緩衝ゾーンは、吸着ゾーンや精製ゾーンに存在している吸着剤と比較して少量の吸着剤を収容する場合がある。他の例として、抽出物成分を吸着剤から簡単に脱着する脱着剤が使用される場合は、緩衝ゾーン、吸着ゾーン、精製ゾーン、またはこれらゾーンのすべてにおいて必要とされる吸着剤の量と比較して、脱着ゾーンにおいては比較的少量の吸着剤が必要とされる。さらに、吸着剤を単一のチャンバー(すなわち、カラムもしくは容器)中に配置する必要もなく、しばしば2つの吸着剤チャンバー(例えば、それぞれに12のアクセスラインが設けられている)が使用される。追加のチャンバーを使用することも考えられる。
【0078】
脱着剤の一部(例えば、吸着分離プロセスに脱着剤リサイクルストリームとしてリサイクルするための)を回収し、精製された抽出生成物ストリーム(例えば、減少した量の脱着剤を含有する)を生成させるために、通常は、アウトプット抽出物ストリームの少なくとも一部を分離プロセス(例えば分留塔)に送る。脱着剤の他の部分(例えばこの場合も、吸着分離プロセスにリサイクルするための)及びラフィネート生成物ストリーム(例えばこの場合も、減少した濃度の脱着剤を含有する)を回収するために、アウトプットラフィネートストリームの少なくとも一部を分離プロセスに送るのが好ましい。大規模な石油化学装置においては、脱着剤の実質的にすべてが再使用のために回収される。こうした回収のための分留設備の設計は、分離しようとする物質や脱着剤の組成等に依存する。
【0079】
上記の吸着分離プロセスにおいて使用するのに適した擬似移動床フローシステムの他のタイプは、米国特許第4,402,832号と米国特許第4,478,721号(交互動作モードの開示内容に関してこれらの特許を参照により本明細書に含める)に記載の並流高効率擬似移動床プロセスである。このプロセスは、製造業者にとって幾らか低い純度の生成物が容認できる場合には、エネルギー効率と資本コストの低減に関して利点を有する。
【0080】
パラキシレンを精製するための吸着分離装置の規模は、パイロットプラント規模(例えば、米国特許第3,706,812号を参照)から工業規模まで変わってよく、生成物の流量に関しては、1時間当たりわずか数ミリリットルから1時間当たり何百立方メートルまでの範囲であってよい。
【0081】
全体的には、本発明の態様は、吸着分離において(そして特に、工業的な擬似移動床の動作において)使用するためのバインダー非含有吸着剤のユニークな特性の利用に関するものである。本発明の開示内容を考慮すると、幾つかの利点を達成することができ、そして他の有利な結果を得ることができる、ということがわかるであろう。当業者であれば、本発明の開示内容から得られる知見に基づいて、上記の吸着剤組成物およびこれらの組成物を使用するプロセスに対し、本発明の開示内容の範囲を逸脱することなく種々の変更を施すことができる、ということがわかるであろう。理論的または実測の現象もしくは結果を説明するのに使用されている化学プロセス、メカニズム、および相互作用の様式等は、示されている通りにのみ解釈すべきであり、決して添付のクレームの範囲を限定してはいない。
【0082】
以下に代表的な実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例によって本発明の範囲が限定されることはない。なぜなら、これらの実施態様および他の等価な実施態様は、本発明の開示内容と添付のクレームを考慮すれば明らかだからである。
【実施例】
【0083】
実施例1
小さな微結晶サイズのゼオライトXを含むバインダー非含有吸着剤粒子の合成
本明細書に記載の手順に従って製造した小さな微結晶サイズのゼオライトX粉末を、既知量の市販カオリンおよび水と混合して押出可能なペーストを作製し、次いでこれを押し出して、カオリン中に50〜90%の小さな微結晶サイズのゼオライトXを含む複合ペレットを作製した。該複合物を100℃で乾燥し、バインダーであるカオリンをメタカオリンに転化させるために、最終的には600℃以上の温度で焼成した。次いで、バインダーであるメタカオリンを、5重量%未満のNaOH水溶液中において、>2Na/Al(メタカオリンから)にて、穏やかに撹拌しながら最大で10時間水熱処理することによってゼオライトXに転化させた。カオリンクレーのシリカ/アルミナモル比は2.0であったけれども、転化ゼオライトXにおけるこの比は、メタカオリンの苛性アルカリ温浸時に、シリカ供給源(例えば、コロイダルシリカゾル、ケイ酸、アルカリ金属ケイ酸塩、シリカゲル、または反応性粒状シリカ)を加えることによって増大させることができる、ということが見出された。シリカ供給源は、作製しようとする混合物に加えても、アルカリ反応媒体に加えても、あるいはこれらの両方に加えてもよい。得られたバインダー非含有吸着剤粒子は、ゼオライトXの調製部分と転化部分を有し、ゼオライトXのシリカ/アルミナモル比は2.5であった。ゼオライトXの調製部分は小さな微結晶サイズを有していた。ゼオライトXのナトリウム形をバリウム/カリウム形(イオン交換部位の99%以上がバリウムとカリウムとの組み合わせで置換されている)に転化させるために、吸着剤粒子を本明細書に記載のカラム中にてイオン交換した。
【0084】
実施例2
選択性試験
バリウムとカリウムで交換されたゼオライトXを含んでいて、LOIが6重量%である従来の吸着剤を、パラキシレンの吸着分離にて評価した。前記の標準的なパルス試験を、パラジエチルベンゼン脱着剤の雰囲気下にて、最初に吸着剤を70ccのカラム中に装入することによって行った。エチルベンゼンと3種のキシレン異性体のそれぞれを等量にて含有する供給材料パルスを、ノルマルノナン(n−C9)トレーサーとともに注入した。選択性に及ぼす温度の影響を調べるために、121℃〜177℃(250°F〜350°F)の範囲の種々のカラム温度にてパルス試験を行った。これらのパルス試験のそれぞれから得られる成分ピークからパラキシレンの選択性を決定した。得られた結果を図2に示す。
【0085】
これらの結果から、パラキシレン/メタキシレン選択性(「P/M」)とパラキシレン/オルトキシレン選択性(「P/O」)は、吸着温度が低くなると増大するが、パラキシレン/エチルベンゼン選択性(「P/E」)は、温度に関してほとんど変化しない、ということがわかる。このことは、熱力学的平衡の観点から(必ずしも動力学的な観点からではないが)、より低い吸着分離温度が好ましい、ということを示している。
【0086】
実施例3
容量試験
実施例2に記載の従来の吸着剤を使用してクロマトグラフィー分離(動的容量試験または破過試験)を行った。吸着剤を70cc収容するカラム(最初にパラジエチルベンゼンの雰囲気下にて装入)に、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、およびエチルベンゼンを含有する供給材料混合物サンプルを装入した。吸着容量とパラキシレン/パラジエチルベンゼン選択性(「PX/pDEB選択性」)に及ぼす温度の影響を調べるために、121℃〜177℃(250°F〜350°F)の範囲の種々のカラム温度にて破過試験を行った。得られた結果を図3に示す。さらにこれらの結果から、全吸着容量の観点からはより低い吸着分離温度が好ましく、吸着分離温度が低いことはパラキシレン/脱着剤の選択性に悪影響を及ぼさない、ということが確認される。
【0087】
実施例4
物質移動速度
実施例2に記載のパルス試験から得られたデータを使用して、「DW」または「デルタW」[すなわち、パラキシレンピークの1/2幅(すなわち、1/2強度におけるピークエンベロープ幅)からノルマルノナン(n−C)トレーサーピークの1/2幅を引いて得られる値(ばらつきを説明するためのもの)]を温度の関数として求めた。得られた結果を図4に示す。これらの結果から、従来のパラキシレン吸着分離プロセスにおいては177℃(350°F)未満の温度にて物質移動の制限が著しくなることがわかる。
【0088】
実施例5
擬似移動床モードにおけるパラキシレンの吸着分離、温度の影響
実施例2に記載の従来の吸着剤の、擬似移動床モードにて動作するパイロットプラントでのパラキシレンの吸着分離におけるパフォーマンスを図5に示す。分析したすべての条件において、抽出物ストリーム中に回収された全パラキシレンは95重量%であった。150℃(302°F)での実測パフォーマンス・パラメーター(実線の正方形記号)が、177℃(350°F)での実測パフォーマンス・パラメーター(実線の三角形記号)と比較して、プロセスのサイクル時間の関数として示されている。すべての場合において、より低い温度でのゼータの値(Y軸、左側)は、より高い温度での対応する値より低く、このことは、改良されたパラキシレン吸着選択性と改良された吸着容量により、より低い動作温度においてより高いパラキシレン生産性が達成された(実施例2と3に記載のパルス試験と破過試験にて確認される)、ということを示している。
【0089】
ゼータ値は、パラキシレン含有供給材料のユニット容積速度を処理するのに必要な選択的細孔容積の目安である。したがってより低いゼータ値は、直接的により高い処理量もしくは生産性を示す。特に、ゼータ値は、A/Fとθとの積として算出され、ここでAは選択的吸着剤細孔容積の擬似循環の速度であり、Fは、Cアルキル芳香族炭化水素の混合物を含有する供給材料ストリームの容積速度であり、θはサイクル時間である。量A/Fを、試験したサイクル時間と温度との各組み合わせに対して図5に示す。高温動作および低温動作にて得られる曲線の、短いサイクル時間での収束が近接しているということは、サイクル時間が短くなるにつれて(そして生産性もしくはゼータ値が最大に近づくにつれて)低温パフォーマンスの利点がそれほど顕著ではなくなる、ということを示している。
【0090】
実際問題として観察される、より一層高い生産性を得る上での障壁は、物質移動の制限によるものである。図5における一番下の曲線(オープンな菱形)は、各サイクル時間にて動作温度を177℃(350°F)から150℃(302°F)に下げることによって得られる供給材料ストリームの容積速度の推定される増大(Y軸、右側)に関して、生産性に及ぼす物質移動制限の影響を示している。例えば、34分のサイクル時間に対して、より低い動作温度のメリットは、Cアルキル芳香族炭化水素を含有する供給材料ストリームを処理できる容積速度の14%増大ということになる。しかしながら、生産性の利点は、物質移動の制限の結果として、24分のサイクル時間に対しては7%に低下する。これとは対照的に、図5における点線は、パラキレン吸着分離のパフォーマンス・パラメーターと、物質移動の制限が無ければ理論的に可能である供給生産性(feed productivity)の利点を示している。
【0091】
したがって、実施例2〜5に記載の実験室規模およびパイロットプラント規模の試験から、動作温度を低くすると、吸着容量、吸着選択性、および吸着剤の単位体積当たりの液体密度の増大に関してかなり有利になるが、物質移動速度も低下する、ということがわかる。したがって、Cアルキル芳香族炭化水素の比較的不純な混合物からのパラキシレンの吸着分離において、130℃(270°F)〜165℃(330°F)の範囲の温度にて、熱力学的に好ましい動作レジーム(operating regime)を十分に利用するのは困難である。図5に示すように、従来の吸着剤の場合は、サイクル時間が短くなるにつれて、150℃(300°F)での動作の生産性に対する利点が低下する。
【0092】
実施例6
擬似移動床モードでのパラキシレンの吸着分離、床の濃度分布
24の吸着剤床のそれぞれに対する供給材料成分と脱着剤の濃度分布[従来の吸着剤(実施例2に記載)を使用する擬似移動床モードにて動作するパイロットプラントにおけるパラキシレンの吸着分離時に得られる]を評価した。150℃(302°F)おける定常状態での動作時に、および抽出物ストリーム中のパラキシレンの95%回収率時に、液体組成物の「検査(survey)」(すなわち、それぞれの床における液体組成物の分析)を行った。それぞれ34分と24分のサイクル時間を使用して濃度分布を得た。これらの検査結果においても、物質移動の制限がかなり大きいと、該温度でのより好ましいパラキシレン吸着選択性と吸着容量の十分な達成が妨げられる、ということが確認された。物質移動が制限されることの悪影響は、吸着ゾーン(前述のゾーンI)におけるパラキシレンのフロントがより分散していることではっきり示されている。従来の吸着剤を使用した場合、低温動作に関連した理論的な生産性増大は、サイクル時間がより工業的に望ましい値(例えば24〜34分)に減少したときには達成することができない。
【0093】
ゼオライトXを含むバインダー非含有吸着剤の高分解能走査電子顕微鏡法(HR SEM)による顕微鏡写真により、ゼオライトX微結晶が、物質移動速度を制限する主要な拡散経路をもたらす、ということが実証された。
【0094】
実施例7
擬似移動床モードでのパラキシレンの吸着分離を改良するための、吸着剤におけるゼオライトX微結晶サイズの減少
図6は、平均微結晶サイズが1.8〜2.0ミクロンのゼオライトXを含む従来の吸着剤のパフォーマンスと、平均微結晶サイズが1.4ミクロンのゼオライトXを含む従来の吸着剤のパフォーマンスとを比較している。代表的な従来のゼオライトXサンプルと、減少した微結晶サイズを有する他のサンプル(例えば、試験した吸着剤において使用されたもの)に対する、ゼオライトX微結晶のサイズ分布を表7に示す。ここで従来のゼオライトXに対する平均微結晶サイズは1.8〜2.0ミクロンである。擬似移動床モードで動作するパラキシレン吸着分離プロセスにおいて他のすべての条件を一定に保持しつつ、減少した微結晶サイズのゼオライトXを含む吸着剤は、より高い全パラキシレン回収率を可能にした。ゼオライトXの微結晶サイズを小さくすることに関連した利点(特に、関連していて改良された物質移動)は、サイクル時間を短くしたときにより顕著になった(上記の理由から、および図6に示したように)。
【0095】
したがって、吸着剤におけるゼオライトX微結晶サイズを減少させると、物質移動経路の短縮化がもたらされ、この結果、改良された物質移動速度がもたらされる。このことは、工業的に重要な意味をもつ。なぜなら、パラキシレンの製造業者は、擬似移動床モードで動作する吸着分離プロセスにおいて、サイクル時間を標準的な34分の動作パラメーター未満に短くすることによって、生産性を向上させるべく努力しているからである。例えば、多くの工業的な操作は、30分の、あるいはさらに27分のサイクル時間を使用して行われている。
【0096】
これらのケースでは、小さな微結晶サイズのゼオライトXまたはナノサイズのゼオライトXを含む吸着剤を使用することは、物質移動速度の制限[特に、175℃(350°F)未満の動作温度に対して観察される]を克服する上で特に有利である。小さな微結晶サイズのゼオライトXは、0.5ミクロン(500nm)〜1.4ミクロンの範囲の平均微結晶サイズを有するゼオライトXが合成されており、このことにより、所定の用途に対するゼオライト微結晶サイズの最適化が、従って吸着剤の配合処方と全体的なプロセスの最適化が可能となる。
【0097】
実施例8
バインダー非含有吸着剤の選択性と容量、温度の影響
図8は、吸着剤の水和レベルを変えたときの(あるいは前述のLOI値を変えたときの)、177℃(350°F)の場合と比較した、150℃(302°F)でのパラキシレン/メタキシレン(「P/M」)選択性、パラキシレン/オルトキシレン(「P/O」)選択性、およびパラキシレン/エチルベンゼン(「P/E」または「P/E dyn」)選択性の利点を示す。選択性値P/M(四角形)、P/O(三角形)、およびP/E(菱形)は、実施例2に記載の標準的なパルス試験から得たが、選択性値P/E dyn(星形)は、実施例3に記載の動的もしくは破過試験により得た。図9は、これらの試験時に測定される全吸着容量を示す。図8と9では、より低い温度で得られたデータ点は実線でつなぎ合わさっているが、より高い温度で得られたデータ点は点線でつなぎ合わさっている。
【0098】
図8と9におけるデータはさらに、より低温での動作が有利であることを示している(この場合は、バインダー非含有吸着剤を使用)。他のキシレン異性体およびエチルベンゼンに対するパラキシレン選択性は、150℃(302°F)と177℃(350°F)でのパルス試験結果と破過試験結果に基づいて動作温度もしくは吸着温度を下げることによって、大幅に(例えば、15%〜20%のオーダーで)増大させることができる。さらに、吸着容量は、動作温度をより低くすると増大する。より低温での動作に関連したこれらの利点は、本明細書に記載の、そして特に、例えば、小さな微結晶サイズのゼオライトXを少なくとも一部にて含むバインダー非含有吸着剤に関連した改良された物質移動とより高い容量の結果として、より充分に利用することができる。
【0099】
実施例9
結合していてバリウム交換されたゼオライトXを含む従来の吸着剤と、本明細書に記載の、実質的にすべてバリウム交換されたゼオライトXを含むバインダー非含有吸着剤とを使用して、パルス試験と破過(または動的)試験を、それぞれ実施例2と3に記載のように行った。従来の吸着剤のLOI値は6重量%で、バインダー非含有吸着剤のそれは4.6重量%であった。試験から得られたデータは、(i)パラジエチルベンゼン脱着剤(PX/pDEB)、(ii)エチルベンゼン(PX/EB)、(iii)オルトキシレン(PX/OX)、および(iv)メタキシレン(PX/MX)に対する、相対的なパラキシレン容量(PX Cap)、相対的な全吸着容量(Total Cap)、およびパラキシレン選択性を含んでいる。
【0100】
さらに、破過試験のデータから、パラキシレンの物質移動速度(Rate)を「吸着破過勾配(adsorption breakthrough slope)」{米国特許第4,886,929号[この量(体積としての)の算出の開示内容に関して参照により本明細書に含める]に記載されており、単位時間を得るために、パラキシレンピークを生成させるのに使用される体積流量で除されている}として算出した。物質移動速度のさらなる指標、すなわち、パルス試験から得られる、パラキシレンピークの1/2幅に対応する脱着剤体積(すなわち、1/2強度でのピーク・エンベロープ幅、HW)も求めた。
【0101】
これらの試験から得られたデータを表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示すように、バインダー非含有吸着剤は、ゼオライトXを含む従来の結合吸着剤と比較して、改良されたパラキシレン選択性、パラキシレン容量、および全吸着容量を示す。パラキシレン容量が従来の吸着剤より全体として29%改良されるのは、バインダー非含有吸着剤が、パラキシレンの吸着分離をより低い水レベル(より低いLOI値に対応する)にて行うことができることによるものである。従来の結合吸着剤は、物質移動と選択性に関連した重大な問題のため、こうしたより低い水レベルにて同様に機能することはできない。
【0104】
より低いLOI値にて動作するバインダー非含有吸着剤の物質移動速度は、表1における「Rate」値と「HW」値によると、従来の吸着剤と比較してやや減少している。しかしながら、バインダー非含有吸着剤に対し、小さな微結晶サイズのゼオライトXを、あるいはさらにはナノサイズのゼオセイトXを組み込む(例えば、前述のような、ゼオライトXの調製部分および/または結合部分として)という改良を施すと、こうした物質移動の欠点を克服すると考えられる。
【0105】
実施例10
実施例9に記載の従来の吸着剤とバインダー非含有吸着剤を、擬似移動床モードで動作するパイロットプラントでのパラキシレンの吸着分離にて評価した。表2は、カール・フィッシャー(ASTM D1364)分析(KF水%)の使用によるこれら吸着剤の実測含水量、および定常状態の条件下で異なった動作周期に対して測定されたパイロットプラント動作パラメーター(1〜5)、すなわち、サイクル時間;実施例5において定義の量A/F;パラキシレンの純度(PX純度,%);およびパラキシレンの回収率(PX回収率,5);を示す。
【0106】
【表2】

【0107】
表2の第1列と第2列の結果から、バリウム交換ゼオライトXを含むバインダー非含有吸着剤を使用すると、従来の結合吸着剤と比較して、パラキシレン容量において23%の改良が達成されたということがわかる。第3列における結果は、バインダー非含有吸着剤を使用すると、悪影響をもたらすことなく動作のサイクル時間が減少した、ということを示している。第4列における結果は、バインダー非含有吸着剤の含水量を増やしても、パイロットプラントの動作をそれほどには向上させなかった、ということを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラキシレンを、少なくとも1種の他のCアルキル芳香族炭化水素を含む混合物から分離するための方法であって、ゼオライトXを含んでいて3重量%〜5.5重量%の含水量を有するバインダー非含有吸着剤と該混合物とを吸着条件下にて接触させることを含む、方法。
【請求項2】
バインダー非含有吸着剤が3.5重量%〜4.5重量%の含水量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バインダー非含有吸着剤が、ゼオライトX前駆体の転化によって生じるゼオライトXの転化部分を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ゼオライトXの転化部分が、吸着剤に関して5重量%〜40重量%の量にて存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ゼオライトXの転化部分が2.3〜2.7のシリカ/アルミナモル比を有する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
混合物が、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、およびエチルベンゼンを含み、混合物と吸着剤とを接触させることで、吸着相中に存在するパラキシレンの吸着が、非吸着相中に存在するオルトキシレン、メタキシレン、およびエチルベンゼンに優先して果たされ、
非吸着相を吸着剤との接触からフラッシングすること;および
吸着相中のパラキシレンを吸着剤から脱着すること;をさらに含み、
吸着相中のパラキシレンが、脱着剤を含む抽出物ストリーム中に脱着され、非吸着相が、脱着剤を含むラフィネートストリーム中にフラッシングされ、
脱着剤が、トルエン、ベンゼン、インダン、パラジエチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる芳香環含有化合物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
擬似移動床モードにて行われ、
ここで、供給材料ストリームと脱着剤ストリームが吸着剤床中に装入され、供給材料ストリームが、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、およびエチルベンゼンを含んでなる混合物を含み、脱着剤ストリームが脱着剤を含み;
抽出物ストリームとラフィネートストリームが吸着剤床から取り除かれ;そして
34分未満のサイクル時間を有する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抽出物ストリーム又はラフィネートストリーム中に20重量ppm〜120重量ppmの含水量が得られるよう、供給材料ストリームと脱着剤ストリームのどちらか又は両方に水を加える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
2.3〜2.7のSiO/Alモル比を有するゼオライトXの第1の部分、および2.0〜2.2のSiO/Alモル比を有するゼオライトXの第2の部分を含み、含水量が3重量%〜5.5重量%である吸着剤。
【請求項10】
第2の部分が吸着剤中に5重量%〜40重量%の量にて存在していて、バインダー非含有である、請求項9に記載の吸着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−526901(P2011−526901A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516451(P2011−516451)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/047630
【国際公開番号】WO2010/002590
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】